説明

生体吸収性材料およびその製造方法

【課題】 従来の生体吸収性材料と比較してより低毒性でありかつ硬度を有する生体吸収性材料を提供すること。
【解決手段】 本発明は、生体吸収性材料の製造方法を提供し、該方法は、ゼラチン水溶液を加温してゾル状にする工程;該ゾル状のゼラチンをガットに成形する工程;および該ガットを80から190℃で加熱する工程;を含む。こうして得られた生体吸収性材料は、手術用縫合針、留置針、人工腱、細胞・組織の培地、硬組織固定用具(ボルト、ナット、ピンなど)、釣り針、疑似餌などとして応用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体吸収性材料およびその製造方法に関する。より詳細には、例えば、手術用縫合針、釣り針などの比較的硬さを必要とする生体吸収性材料ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンは、牛骨、牛皮、豚皮、魚皮、魚骨などから得られるコラーゲンの三重螺旋をほどいて1本の分子として得られたものであり、従来から水に溶けることが知られている。ゼラチンは、例えば、医療分野においてスポンジ状の局所止血材(山之内製薬製、商品名;スポンゼル)として利用されている。しかし、耐水性が悪いため、水と接触するとすぐに形態を失ってしまう。それにもかかわらず、ゼラチンはスポンジ状の止血材として長い間好ましく使用されている。その理由は、生体内での抗原性が低くかつ従来の生体吸収性材料(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、コラーゲンなど)に比べて迅速に生体に吸収されるため、安全性が高いという、生体吸収性材料として極めて優れた性質を有しているからである。
【0003】
ゼラチンを水に溶解して得られたゼラチン水溶液は、低濃度では延糸性が低く、高濃度ではゲル化してしまうため、従来は、繊維を製造することは困難であった。しかし、近年、湿式紡糸によってゼラチン繊維を製造する方法が開示された(特許文献1)。具体的には、ゼラチンを溶解させる溶剤として、アミド化合物、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属のハロゲン塩を含む溶液を用い、このゼラチン溶液を凝固液であるアルコール溶液中へ押し出すことによって、ゼラチンを凝固させて紡糸する。この場合、得られたゼラチン繊維は、毒性を有する架橋剤などの添加成分を洗浄する必要がある。さらに、このような工程を経て得られるゼラチン繊維は、強度が低いという問題があった。
【0004】
より低毒性でありかつ強度の高いゼラチン繊維の製造方法が開発されている(特許文献2)。この方法は、ゼラチン水溶液をゾル状態となるように加温し、該加温されたゼラチン水溶液を空気中で紡糸することを特徴とする。このような方法によって得られるゼラチン繊維は、高強度でかつ不純物が少なく毒性も低い。しかし、このゼラチン繊維は柔軟であるため、比較的硬さを必要とする針(例えば、手術用縫合針)として応用することはできない。
【特許文献1】特許第3086822号
【特許文献2】特開2005−163204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の生体吸収性材料と比較してより低毒性でありかつ硬度を有する生体吸収性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生体吸収性材料の製造方法を提供し、該方法は、
ゼラチン水溶液を加温してゾル状にする工程;
該ゾル状のゼラチンをガットに成形する工程;および
該ガットを80から190℃で加熱する工程;
を含む。
【0007】
1つの実施態様では、上記成形工程は、上記ゾル状のゼラチンをノズルから空気中に押し出すことによって行われる。
【0008】
好適な実施態様では、上記ゼラチン水溶液中のゼラチン濃度は30から90質量%である。
【0009】
1つの実施態様では、上記ゼラチン水溶液は多価グリシジル化合物または糖質を含む。
【0010】
さらなる実施態様では、上記方法は、さらに、上記加熱後のガットの一端を尖鋭に加工する工程を含む。
【0011】
本発明はまた、上記のいずれかの方法により得られる、生体吸収性材料を提供する。
【0012】
本発明はさらに、上記の方法により得られる、生体吸収性針を提供する。
【0013】
1つの実施態様では、上記生体吸収性針は、ゼラチン繊維でなる生体吸収性糸を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の生体吸収性材料と比較してより低毒性でありかつ硬度を有する生体吸収性材料が提供される。本発明の生体吸収性材料は、一端を針先状に加工した場合、手術用縫合針、留置針、釣り針などとして応用できる。例えば、手術用縫合針は、万が一体内に放置せざるを得ない場合においても、生体吸収性であるため安全である。また、釣り針は、魚が捕食の際に飲み込みこんでしまっても、体内に蓄積しないので内臓障害などを生じず、水中に放棄された釣り針が、河川、湖沼、海などの水底に蓄積することも防止できる。あるいは、本発明の生体吸収性材料は、例えば、硬組織固定用具としても利用され得、組織の再生後に再度手術によって固定用具を取り出す必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、ガットとは、例えば、テニスやバドミントンのラケットに用いられるガットのような、糸よりも硬度を有する細紐状物をいう。本発明において生体吸収性材料として用いられ得るガットは、通常φ0.5〜3mm径であり、好ましくはφ0.7〜1.5mm径である。ガットは、その一端を尖鋭に針先状に加工した場合に、皮膚や軟骨に突き刺すことが可能な硬度を有することが好ましい。
【0016】
本発明の生体吸収性材料は、ゼラチンガットでなる。この生体吸収性材料(ゼラチンガット)は、ゼラチン水溶液を加温してゾル状にする工程;該ゾル状のゼラチンをガットに成形する工程;および、該ガットを80から190℃で加熱する架橋工程;を含む方法によって製造される。
【0017】
本発明に用いられるゼラチンは、牛骨、牛皮、豚皮、魚の鱗・皮・骨などから得られたコラーゲンの三重螺旋をほぐし、一本の分子として得られるものである。ゼラチンの製造方法としては、ゼラチン原料の酸処理方法、石灰処理法などが挙げられる。本発明において使用するゼラチンは、いずれの方法によって製造されたゼラチンであってもよく、または市販されているゼラチンであってもよい。市販されているゼラチンは、その製造工程において、抽出されるまでに種々の精製工程を経るため、タンパク質以外の成分は少なく、通常は、タンパク質85%以上、水分8〜14%、灰分2%以下、その他(脂質、多糖類など)1%以下という組成が一般的である。本発明においては、このような一般的なゼラチンを使用し得る。また、該ゼラチンの分子量も、特に限定されない。
【0018】
本発明の方法においては、まず、ゼラチンを水に溶解させて、ゼラチン水溶液とする。ここで用いる水は、好ましくは、蒸留水または脱イオン水である。ゼラチンの濃度は、30〜90質量%、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%である。この水溶液は、ゼラチンの粘稠液であり、ゾル状である。一般的に、ゼラチン水溶液がゾル状態となるのは40℃以上であるため、加温する温度としては、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい。ただし、長時間高温にすると変性が起こるため、通常100℃以下、好ましくは80℃以下とする。
【0019】
また、ゼラチン水溶液に親水溶媒を添加することが好ましい。親水溶媒を添加する場合、親水溶媒の濃度は、5〜30v/v%とすることが好ましく、10〜20v/v%とすることがより好ましい。また、親水溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、酢酸エチルなどを使用することができる。中でも、親水溶媒としては、炭素数1〜4のアルコール類が好ましい。ゼラチン水溶液が親水溶媒を含むと、粘稠液であるゼラチン水溶液とノズル内壁との摩擦が低減されるため、ノズル先端から空気中または凝固液中への押し出しがスムーズとなり、ゼラチン分子の配向性が良くなる結果、より高強度のゼラチンガットを得ることができる。
【0020】
また、ゼラチン水溶液には、多価グリシジル化合物または糖質を添加することが好ましい。多価グリシジル化合物としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。中でも、直鎖状アルキル基を有する2官能性グリシジル化合物を使用することが好ましい。このような多価グリシジル化合物としては、市販のものを使用してもよく、例えば、ナガセケムテックス(株)製の「デナコールEX−931」、「デナコールEX−841」、「デナコールEX−411」、「デナコールEX−252」、「デナコールEX−314」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−201」、「デナコールEX−211」などが挙げられる。
【0021】
糖質としては、グルコース、N−アセチルグルコサミン、グルコサミンHCl塩などが挙げられる。
【0022】
多価グリシジル化合物または糖質の添加量は、ゼラチン水溶液100質量部に対し0.01〜0.1質量部が好ましい。多価グリシジル化合物または糖質をゼラチン水溶液に添加すると、ゼラチンが架橋してゼラチン水溶液の粘性が増加する。そのため、ガットに成形しやすい粘度に調整しながら添加するのがよい。
【0023】
多価グリシジル化合物は、いわゆる架橋剤として作用する。多価グリシジル化合物は、従来の架橋剤と比べて、架橋点がより安定なエーテル結合となるためにゼラチン繊維が高強度となる。しかもアルキル鎖長の長さを選択することによって架橋マトリックスサイズを調節できるので、用途に応じた弾性のゼラチンガットを得ることが可能となる。
【0024】
溶媒にゼラチンを溶解させる方法は、特に限定されない。ゼラチンが水に溶解しやすい性質を考慮すれば、水とゼラチンとを、例えば50℃以上で混合して溶解させた後に、親水溶媒または多価グリシジル化合物を添加し、均一な溶液となるように練り混ぜる方法が好ましい。
【0025】
次に、ゼラチン水溶液からゼラチンガットを製造する方法について説明する。
【0026】
ガットを得るためには、任意の手段でゾル状のゼラチン水溶液の一部を空気中または凝固液中に引き出すことによって行われる。任意の手段としては、例えば、ゾル状のゼラチン水溶液をノズルから空気中または凝固液中に押し出す手段が挙げられる。ノズル径は、通常φ0.5〜3mm、好ましくはφ0.7〜1.5mm程度である。
【0027】
空気中に引き出す場合について、具体的に説明する。まず、脱イオン水100質量部に対して、ゼラチン粉末50〜500質量部、好ましくは100〜200質量部を加えて懸濁させ、40〜100℃、好ましくは45〜80℃に加温してゼラチン粉末を脱イオン水に溶解させる。さらに、ゼラチン水溶液に、好ましくは親水溶媒または多価グリシジル化合物を添加し、均一な溶液となるように撹拌してゾル状にする。次いで、このゼラチンゾルを、加温した温度に保ちながら、例えば、直径1mm程度の細孔から15〜20℃、好ましくは15〜17℃の空気中に0.4〜0.6kg/cm2の圧力で押し出し、空気中でしばらく放置することにより、ゼラチンガットを得ることができる。ノズルから押し出されたガットを成形のためにすぐに巻き取ると、扁平なガットになる。そのため、断面が円形のガットを得るためには、一旦空気中に放置して外周部をある程度まで硬化させることが好ましい。
【0028】
凝固液中に引き出す場合は、まず、600〜2000メッシュ程度のステンレス製フィルターを用いて、上述のようにして得られたゼラチン水溶液を加圧濾過する。濾過後のゼラチン溶液を減圧下または常圧下で脱泡し、5〜10kg/cm2で加圧したタンクからギヤーポンプで輸送し、パイプラインを経て、0.1〜1.0mm程度の口径の複数本のノズルから、凝固液を貯めた凝固槽中に押し出す。凝固液中に押し出されて凝固したゼラチンガットは、そのまま約1〜5m/分の速度でボビンなどで巻き取り、乾燥させて凝固液を除去する。
【0029】
凝固液としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類などの有機溶剤が挙げられる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノールが挙げられ、ケトン類としては、アセトン、2−ケトプロピルアルコール、シクロヘキサノンが挙げられ、そしてエーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。また、凝固液の温度は、ゼラチン溶液の粘性によっても異なるが、通常は30〜50℃程度に加温することが好ましい。
【0030】
次いで、得られたガットを適切な形状に成形した後、通常80〜190℃で、好ましくは100〜120℃で加熱する。この加熱によって、所望の硬度を有するガットが得られる。得られたガットは、外周部と内部との架橋の進行に差があるため、均一ではない。具体的には、外周部は架橋が早く進行するため硬く、内部は架橋が遅いため比較的軟らかい。そのため、こうして得られたガットは、均一なものよりも強度の面で優れている。さらに、内部は軟らかいため、外周部と比較して生体吸収性が良好である。
【0031】
得られたガットは、その使用目的に応じて、さらに所望の形状に加工される。使用目的としては、手術用縫合針、留置針、人工腱、細胞・組織の培地、硬組織固定用具(ボルト、ナット、ピンなど)、釣り針、疑似餌などが挙げられる。
【0032】
針として用いる場合は、一端を尖鋭に加工して針先とし、他端は、例えば、糸を保持または固定できるように加工される。糸を保持する手段としては、ガットを加熱する前に、ガットの端部を平らに潰して、その平らな部分に糸を置いて糸を包み込み、その後加熱する手段;加熱後のガットの切断面から数mmの長さにわたって切り込みを設け、この切り込み部分に糸を挿入して挟み込む手段;ガットの他端に生分解性接着剤を用いて接着する手段などが挙げられる。
【0033】
本発明の生体吸収性材料が針(縫合針、釣り針)である場合は、生体吸収性の糸が備えられた状態で提供されてもよい。備えられる糸は、生体吸収性の糸であれば特に限定されない。例えば、ゼラチン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸などの生体吸収性ポリマーが挙げられる。ノズル径が変更可能である場合は、針と糸とをゼラチン水溶液から一体的に製造してもよい。糸の製造については、特許文献2の記載を参照して行われ得る。例えば、以下のように製造できる:比較的太いノズル径でゼラチン水溶液を押し出した後、径を細くしてさらにゼラチン水溶液を押し出し;太いノズル径から押し出された部分のみ成形および加熱し;次いで、加熱した部分の先端を尖鋭に加工する。
【0034】
あるいは、本発明の生体吸収性材料は、留置針として加工され得る。留置針は、組織を固定する目的あるいは薬剤を長期にわたって放出させる目的で、体内に留置される。後者の場合、所望の形状に加工された留置針は、所望の薬剤を浸み込ませるか、または所望の薬剤がガット内部に注入される。
【0035】
あるいは、固定用ボルトの場合は、ネジ山を設けてもよい。具体的には、これらの加工は、研磨、切削、穿孔などの当業者が通常用いる手段によって行われる。人工腱、細胞・組織の培地、疑似餌などの場合も、このような手段によって、所望の形状に加工され得る。必要に応じて、着色または着香されてもよい。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
ウシ骨由来のゼラチン粉末(新田ゼラチン株式会社)30gを蒸留水30mLに加えて懸濁させ、約80℃に加温し、ゼラチンを溶解させてゾル状の粘稠液を得た。このゼラチンゾルを、約100℃のホットプレート上に12時間静置して脱泡させた。次いで、ゼラチンゾルの一部をピンセットで摘み取って引き上げて1時間室温に放置することにより、約1.5mm径の約1mの長さのゼラチンガットを得た。このガットを直径30mmの円筒に巻きつけ、常温下で24時間放置して湾曲させた。次いで、ガットを約100℃で加熱軟化し、約1.5cmの長さに切断するとともに、ゼラチンガットの一端を、ハサミ状工具を用いて尖鋭に針先状に加工した。最後に120℃で24時間加熱して硬化させた。また、糸を挟むために、他端の切断面から約2mmの長さにわたって切り込みを設けた。最後に、得られた針状に加工したガットの両端をチャックで固定し、引っ張り速度1mm/分でガットが切断するまで加重をかけ、その間に記録された最大の荷重を、引張時最大荷重として求めた。
【0037】
得られた針は、径φ1.5mmおよび長さ1.5cmのサイズであり、引張時最大荷重は150Nであった。
【0038】
(実施例2)
ゼラチン粉末150gを150mLの脱イオン水に加えて懸濁させ約80℃に加温して溶解させた。このゼラチン水溶液に多価グリシジル化合物としてナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−931」3gおよびエチルアルコール30gを加えてさらによく練り合わせた後、約60℃の加温状態で24時間静置して架橋反応と脱泡とを十分に行った。
【0039】
この粘稠液を約80〜100℃に保ちながらステンレスシングルノズル(1mm径)を通して15〜18℃の空気中に0.2〜0.4kg/cm2の圧力で押し出し、約4mの空間で凝固させるよう毎分33メートルの速度でカセット(直径30cm)に巻取ることによりゼラチンガットを得た。次いで、約1.5cmの長さに切断した後、120℃で24時間加熱して硬化させた。硬化させたゼラチンガットの一端を、ハサミ状工具を用いて尖鋭に針先状に加工した。得られたガットについて、上記実施例1と同様にして引張時最大荷重を測定した。
【0040】
得られた針は、径φ1.5mmおよび長さ1.5cmのサイズであり、引張時最大荷重は160Nであった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、従来の生体吸収性材料と比較してより低毒性でありかつ硬度を有する生体吸収性材料が提供される。本発明の生体吸収性材料は、一端を針先状に加工した場合、手術用縫合針、留置針、人工腱、細胞・組織の培地、硬組織固定用具(ボルト、ナット、ピンなど)、釣り針、疑似餌などとして応用できる。
【0042】
針状物として提供される場合、例えば、手術用縫合針は、万が一体内に放置された場合においても、生体吸収性であるため安全である。また、釣り針は、魚が捕食の際に飲み込みこんでしまっても、体内に蓄積ないので内臓障害などを生じず、水中に放棄された釣り針が、河川、湖沼、海などの水底に蓄積することも防止できる。このような針は、生体吸収性の糸が備えられた状態で提供されてもよい。
【0043】
あるいは、本発明の生体吸収性材料は、硬組織固定用具や細胞・組織の培地としても利用され得る。例えば、生体内に挿入・設置されて細胞・組織が再生した場合、これらの材料は既に生体に吸収されているため、再度手術によって取り出す必要がない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体吸収性材料の製造方法であって:
ゼラチン水溶液を加温してゾル状にする工程;
該ゾル状のゼラチンをガットに成形する工程;および
該ガットを80から190℃で加熱する工程;
を含む、方法。
【請求項2】
前記成形工程が、前記ゾル状のゼラチンをノズルから空気中に押し出すことによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼラチン水溶液中のゼラチン濃度が30から90質量%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼラチン水溶液が多価グリシジル化合物または糖質を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
さらに、前記加熱後のガットの一端を尖鋭に加工する工程を含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法により得られる、生体吸収性材料。
【請求項7】
請求項5に記載の方法により得られる、生体吸収性針。
【請求項8】
ゼラチン繊維でなる生体吸収性糸を備える、請求項7に記載の生体吸収性針。

【公開番号】特開2007−75271(P2007−75271A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265281(P2005−265281)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(597067404)クラスターテクノロジー株式会社 (17)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】