説明

生体情報検出装置

【課題】簡素な構造で生体情報を取得することが可能な生体情報検出装置を提供する。
【解決手段】生体情報検出装置100は、予め着座方向が定められてあるシートクッション31に対し、伸縮方向もしくは曲げの変形を検出する長尺状の一つの圧電フィルムが着座者の大腿部に対向する位置に亘って大腿部と交差する方向と長尺方向とを一致させて配設され、荷重の変化を検出するセンサ部12と、荷重の変化に基づいて生体情報を演算する演算部70と、備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部に着座する着座者の生体情報を検出する生体情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人や動物等の生体の呼吸や心拍等からなる生体情報を検出する生体情報検出装置が利用されている。このように検出された生体情報は、当該生体情報が検出された生体の状態を特定するのに利用される。具体的には、このような生体情報は、生体の精神状態がリラックス状態であるか否かを判定したり、睡眠状態であるか否かを判定したりするのに利用される。このような生体の呼吸や心拍を検出する技術として下記に出典を示す特許文献1及び2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の荷重検出装置は、人又は動物の体を支持する支持体に複数の荷重センサを分散して配置される。これらの複数の荷重センサのうち、夫々の荷重センサの出力、又は夫々の荷重センサの出力及び夫々の荷重センサが配置される位置に基づいて選択された複数の荷重センサの中の一部の出力を用いて支持体に加わる荷重及び振動を検出する。
【0004】
特許文献2に記載の生体情報検出装置は、生体の情報を検出する第1の振動検出手段と、当該第1の振動検出手段に対向し、振動減衰手段を介して配設される第2の振動検出手段とを備えて構成される。当該生体情報検出装置は、第1の振動検出手段のパワースペクトルと第2の振動検出手段のパワースペクトルとを演算し、その差を周波数毎に演算する。予め設定した心拍の基本周波数領域で、演算された差が最大となる周波数を心拍情報として求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−3227号公報
【特許文献2】特開2005−74059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術のように支持体に多数の荷重センサを配置すると、夫々の荷重センサからの出力信号線も多くなるので、それに伴って配線が複雑になってしまう。このため、配線の使用量が多くなるので部材コストが増大する。また、配線の総重量が重くなるので燃料の消費が多くなる。また、複数の荷重センサの中から選択するロジックが複雑なものとなってしまい、演算処理を高速に行うために高性能な演算処理装置が必要となる場合があり、コストアップの要因となってしまう。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術においても、第1の振動検出手段のパワースペクトルと第2の振動検出手段のパワースペクトルとの差を周波数毎に演算する構成であると演算負荷が大きくなるため、演算処理を高速に行いたい場合には高性能な演算処理装置が必要となる場合がある。このため、コストアップの要因となってしまう。また、第1の振動検出手段と振動減衰手段と第2の振動検出手段の3層構造であるので、配線が複雑になると共に、厚さが厚くなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、簡素な構造で生体情報を取得することが可能な生体情報検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る生体情報検出装置の特徴構成は、予め着座方向が定められてある座部に対し、伸縮方向もしくは曲げの変形を検出する長尺状の一つの圧電フィルムが着座者の大腿部に対向する位置に亘って前記大腿部と交差する方向と長尺方向とを一致させて配設され、荷重の変化を検出するセンサ部と、前記荷重の変化に基づいて生体情報を演算する演算部と、を備えている点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、着座者の大腿部と交差する方向の動きに対して圧電フィルムに曲げ力が作用し易くなるので、当該大腿部と交差する方向の曲げ力に対する信号レベル(例えば出力電圧)を大きくすることができる。したがって、大腿部と交差する方向の荷重の変化が検出し易くなるため、生体情報を容易に取得できる。また、センサ部が一つの圧電フィルムから構成されるので、配線や構造を簡素にすることができると共に、演算部の演算処理も簡素化することが可能となる。
【0011】
また、前記センサ部が、前記座部の平面視において、前記着座者の大腿筋と交差するように一対で配設されてあると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、大腿筋を介してセンサ部と着座者とを確実に接触させることができる。したがって、着座者の生体情報を適切に取得することが可能となる。
【0013】
ここで、特に着座状態においては、大腿部膝よりの部位では心拍や呼吸による体の動きは殆ど伝達されず、血流に応じた荷重の変化がセンサ部に作用する。この時のセンサ部からの出力信号の基本周波数は1〜2Hz程度であり、心拍の基本周波数と同様である。したがって、上述のように着座方向と長尺方向とを一致させてセンサ部を配設することにより、前記演算部が、前記荷重の変化に応じて前記着座者の心拍情報を演算することが可能となる。
【0014】
また、前記大腿部に対向する位置が、前記座部における前記着座方向の前方側にある位置であると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、通常の着座形態で着座することにより、大腿部を介して着座者の生体情報を適切に取得することが可能となる。
【0016】
また、前記圧電フィルムの長尺方向の長さが、前記座部の着座方向に直交する方向の長さの1/4以上1/2未満であると好適である。
【0017】
このようなサイズの圧電フィルムであれば、十分に荷重の変化を検出することができる。また、二つのセンサ部を一対で用いる場合に互いに重なり合うことなく配設することが可能となる。
【0018】
また、前記座部が車両に備えられるシートのシートクッションであると好適である。
【0019】
このような構成とすれば、車両の運転者の生体情報を適切に取得することが可能となる。
【0020】
また、前記圧電フィルムはPVDFを延伸して形成され、前記センサ部は、前記延伸する方向と前記長尺方向とが一致するように形成されていると好適である。
【0021】
このように、PVDFを延伸した方向とセンサ部の長尺方向とを一致させて形成することにより、長尺方向の伸縮や曲げが発生した場合に出力される出力電圧を大きくすることができる。したがって、微小な荷重の変化であっても検出し易くなるので、適切に生体情報を演算することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】生体情報検出装置が備えるセンサ部を示す図である。
【図2】生体情報検出装置が備えられるシートの概略を示す図である。
【図3】センサ部の配置例について示す図である。
【図4】センサ部に加わる荷重を示す図である。
【図5】センサ部から得られる出力信号について示す図である。
【図6】センサ部から得られる出力信号について示す図である。
【図7】図5に示される出力信号の周波数解析結果について示す図である。
【図8】センサ部から得られる出力信号について示す図である。
【図9】図8に示される出力信号の周波数解析結果について示す図である。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る生体情報検出装置100は、生体から発せられる生体情報を検出する機能を有する。生体とは人や動物等の生命体が相当し、生体情報とはこのような生命体の呼吸や心拍が相当する。以下の説明では、本生体情報検出装置100を用いて人の呼吸や心拍を検出する場合の例を挙げて説明する。
【0024】
図1は、生体情報検出装置100が備えるセンサ部10の構造を模式的に示した図である。特に図1(a)には、センサ部10の斜視図が示される。本実施形態に係るセンサ部10は長尺状で形成され、センサ部10からの出力を外部に出力する出力端子20を有して構成される。ここで、センサ部10は圧電フィルム10a(圧電体)(図1(d)参照)を備えて構成される。圧電フィルム10aは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF:PolyVinylidene DiFluoride)等の高分子圧電材料を用いて構成することが可能である。
【0025】
圧電フィルム10aを、PVDFを用いて構成する場合には、当該PVDFは所定の方向に延伸して形成される。そして、センサ部10は、圧電フィルム10aを形成する際にPVDFが延伸された方向と、長尺方向とを一致するように形成すると好適である。このようにセンサ部10を構成することにより、長尺方向の伸縮や曲げが発生した場合に出力される出力電圧を大きくすることができる。したがって、微小な荷重の変化であっても検出し易くなる。
【0026】
このような圧電フィルム10aは、伸縮方向もしくは曲げの変形を検出する。図1(b)に示されるように伸縮方向に力が作用した場合や、図1(c)に示されるように曲げ力が作用した場合に出力信号(出力電圧)を出力する。このような出力信号(出力電圧)は、圧電フィルム10aに力(荷重)が作用した瞬間のみ出力される。すなわち、一定の力(荷重)が継続して作用している状態では、出力電圧は出力されない。また、力(荷重)が作用した際に出力される出力電圧の大きさは、当該力(荷重)が作用した場合の圧電フィルム10aのひずみ率に応じた大きさとなる。ひずみ率とは単位時間当たりのひずみ量に相当するものである。このような圧電フィルムの特性は、公知であるため詳細な説明は省略する。
【0027】
図1(d)には、センサ部10の一部断面図が示される。断面視において、中央部分の圧電フィルム10aを挟むように一対の電極10b、10cが配設される。上述のように、圧電フィルム10aは、長尺状で形成される。したがって、長尺方向に直交する方向(短尺方向)に伸縮させられた場合よりも長尺方向に伸縮させられた場合の方が伸縮量が大きくなり、その結果大きな出力電圧が出力される。同様に、短尺方向の両端部を近づけるように曲げる場合よりも長尺方向の両端部を近づけるように曲げる場合の方が曲げ量が大きくなり、その結果大きな出力電圧が出力される。
【0028】
圧電フィルム10aの表裏双方の面は、夫々電極10b、10cが配設される。したがって、圧電フィルム10aは、一対の電極10b、10cにより挟持されることとなる。この一対の電極10b、10cは夫々上述の出力端子20に接続される。このため、圧電フィルム10aから出力される出力電圧を出力端子20を介して適切に外部へ出力することが可能となる。
【0029】
ここで、一対の電極10b、10cは、電極としての使用態様から導電体により形成される。このため、一対の電極10b、10cを外部から絶縁するために、一対の電極10b、10cの外側部分(上面、下面、側面等)は絶縁体10dで覆われる。このような絶縁体の一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET: Polyethylene Terephthalate)が挙げられる。このようなポリエチレンテレフタレートで一対の電極10b、10cを覆うことにより、当該一対の電極10b、10cを絶縁しつつ、外部からの荷重を適切に圧電フィルム10aに伝達することが可能となる。もちろん、このような絶縁体としてポリエチレンテレフタレート以外の材料を用いることは当然に可能である。
【0030】
本実施形態では、生体情報検出装置100は、上述のように人の呼吸や心拍を検出する場合の例を挙げて説明している。このような場合、例えば車両に備えられるシート30に適用することが可能である。係る場合には、当該シート30のシートクッション31(図2参照)が本発明に係る座部に相当する。本生体情報検出装置100を車両のシート30に適用した場合には、当該車両のシート30に着座する着座者の呼吸や心拍を検出することが可能であり、検出された結果を適宜、車両の運転を支援する装置に伝達して利用することができる。このような利用形態についての説明は省略する。
【0031】
図2は、生体情報検出装置100が備えられるシート30の概略を示す図である。シート30は、シートクッション31とシートバック32とヘッドレスト33とを備えて構成される。シートクッション31は、着座者の臀部を支持する。シートバック32は、着座者がもたれることが可能な背もたれとして機能する。ヘッドレスト33は、着座者の頭部を車両後方に働く荷重から保護する機能を備えている。
【0032】
ここで、本発明に係る生体情報検出装置100は、予め着座方向が定められてある座部に備えられる。上述のように、座部とは車両に備えられるシート30のシートクッション31が相当する。着座方向とは、着座者が着座する方向であり、シートクッション31に着座する着座者の背中と膝とを結ぶ仮想線に添った方向である。本生体情報検出装置100は、このように着座方向が定められてあるシートクッション31に利用することができる。
【0033】
また、センサ部10は、一つの圧電フィルム10aが着座者の臀部に対向する位置に亘って着座方向と長尺方向とを一致させて配設される。着座者の臀部に対向する位置とは、シートクッション31における着座方向の後方側にある位置であり、着座者の臀部が接するシートクッション31の部分が相当する。上述のようにセンサ部10は長尺方向に対する変形を容易に検出することができるので、着座方向の荷重の変化を適切に検出することが可能となる。
【0034】
また、センサ部10は、シートクッション31に着座する着座者の大腿部に対向する位置に亘って大腿部と交差する方向と長尺方向とを一致させて配設される。着座者の大腿部に対向する位置とは、シートクッション31における着座方向の前方側にある位置であり、着座者の大腿部が接するシートクッション31の部分が相当する。これにより、大腿部を横切る方向の荷重の変化を適切に検出することが可能となる。
【0035】
ここで、上述のように、センサ部10は、着座者の臀部に対向する位置に亘って配設されると共に、着座者の大腿部に対向する位置に亘っても配設される。したがって、以下の説明では、理解を容易にするために、上述の臀部に対向するように配設されるセンサ部10に符号11を付して説明し、大腿部に対向するように配設されるセンサ部10に符号12を付して説明する。
【0036】
このようなセンサ部11、12が配設されたシートクッション31の平面図が図3に示される。図3には、着座者も模式的に示される。ここで、上述のように、センサ部11(10)は、長尺状の圧電フィルム10aを有して構成される。このセンサ部11は、図3に示されるように、シートクッション31の平面視において、着座者の大殿筋に対向するように一対で配設すると好適である。このようにセンサ部11を一対で配設することにより、着座者の体が左右いずれかに傾いて着座している状態であっても適切に荷重の変化を検出することが可能となる。なお、係る場合には、圧電フィルム10aの長尺方向の長さが、シートクッション31の着座方向の長さの1/4以上1/2未満とすると好適である。圧電フィルム10aをこのようなサイズで形成することにより、適切に荷重を検出しつつ互いに重なり合うことなく配設することが可能となる。もちろん、いずれか一方にのみ(即ち片方のみ)配設する構成とすることも可能である。
【0037】
また、センサ部12(10)も、図3に示されるように、シートクッション31の平面視において、着座者の大腿筋と交差するように一対で配設すると好適である。このようにセンサ部12aを一対で配設することにより、着座者の体が左右いずれかに傾いて着座している状態であっても適切に荷重の変化を検出することが可能となる。なお、係る場合には、圧電フィルム10aの長尺方向の長さが、シートクッション31の着座方向に直交する方向の長さの1/4以上1/2未満とすると好適である。圧電フィルム10aをこのようなサイズで形成することにより、適切に荷重を検出しつつ互いに重なり合うことなく配設することが可能となる。もちろん、いずれか一方にのみ(即ち片方のみ)配設する構成とすることも可能である。
【0038】
ここで、上述のようにセンサ部11、12は、圧電フィルム10aを備えて構成され、圧電フィルム10aにかかる荷重に変化があった場合に出力電圧を出力する。この出力電圧は、演算部70に伝達される。演算部70は、荷重の変化に基づいて生体情報を演算する。荷重の変化は、上述のようにセンサ部11、12から伝達される出力電圧の変化が相当する。生体情報とは、本実施形態では、着座者の呼吸や心拍が相当する。したがって、演算部70は、荷重の変化に応じて着座者の呼吸情報を演算すると共に、心拍情報を演算する。呼吸情報とは所定時間内の呼吸数である。また、心拍情報とは所定時間内の心拍数である。もちろん、夫々の周期や周波数の形で演算することも可能である。
【0039】
このようにセンサ部11、12が配設されたシートクッション31に着座者が着座した場合にセンサ部11、12に与えられる荷重の形態が図4に示される。図4(a)は、着座者の心拍を検出する場合の形態を示している。図4(a)において、符号Sを付して示した矢印が着座者の臀部から受ける心拍に基づく荷重を示している。係る場合には、臀部を流れる血流に応じた心拍(即ち、臀部の血管の収縮に応じた心拍)が検出される。また、符号Tを付して示した矢印が着座者の大腿部から受ける心拍に基づく荷重を示している。係る場合には、大腿部を流れる血流に応じた心拍(即ち、大腿部の血管の収縮に応じた心拍)が検出される。
【0040】
図4(b)は、着座者の呼吸を検出する場合の形態を示している。図4(b)において、符号Uを付して示した矢印が着座者の臀部から受ける呼吸に基づく荷重を示している。ここで、人は呼吸をする際、体には呼吸に応じて揺れが生じる。この揺れにより、臀部に対向して設けられたセンサ部11に荷重が与えられる。このように、センサ部11は着座者の心拍と共に呼吸も検出することが可能である。
【0041】
次に、本生体情報検出装置100で検出された出力を用いて説明する。図5は、臀部に対向して配設された一対のセンサ部11のうち一方から得られた出力電圧である。横軸が時間であり、縦軸は出力電圧である。図5に示される出力電圧には着座者の呼吸及び心拍に係る荷重の変化が含まれる。図5において、周期が約3秒程度の振幅が呼吸による荷重の変化である。また、周期が約1秒程度の振幅が心拍による荷重の変化である。
【0042】
なお、参考として、着座者が呼吸を止めて心拍による荷重の変化を検出した場合の結果が図6に示される。上述のように、心拍による荷重の変化が、約1秒程度の周期で確認できる。しかしながら、通常、車両の運転している際、着座者は呼吸を止めておくことはない。また、図5に示されるように、心拍に係る周期は呼吸に係る周期に重畳する形態であるため、心拍に係る周期を演算するためには呼吸の周期を考慮する必要がある。このため、演算部70が行う演算が複雑なものとなってしまう。したがって、臀部に対向して配設されたセンサ部11は主として呼吸による荷重を検出するのに適している。
【0043】
図7には、図5に示された出力電圧に係る波形の周波数解析を行った波形が示される。図7は、横軸が周波数であり、縦軸は強度である。なお、今回の周波数解析は高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を用いて行われた。高速フーリエ変換については公知技術であるため、説明は省略する。ここで、例えば車両が時速30〜50kmで走行している場合においては、道路等から受ける走行ノイズとして主に4〜7Hzの振動が人体に伝達される。このため、図7に示されるように、人体の共振周波数が重畳される。したがって、この結果からも、上述のように臀部に対向して配設されたセンサ部11は主として呼吸による荷重を検出するのに適していることがわかる。
【0044】
図8には、大腿部に対向して配設された一対のセンサ部12のうち一方から得られた出力電圧が示される。横軸が時間であり、縦軸は出力電圧である。図8に示される出力電圧は着座者の心拍に係る荷重の変化に相当する。呼吸による揺れは、大腿部には伝わり難いため、心拍に係る荷重のみが検出される。上述の臀部に対向して配設された一対のセンサ部11により得られた出力電圧と同様に、周期が約1秒程度の振幅が得られている。
【0045】
図9には、図8に示された出力電圧に係る波形の周波数解析を行った波形が示される。図9は、横軸が周波数であり、縦軸が強度である。なお、図9の周波数解析も図7と同様に、高速フーリエ変換を用いて行っている。図9に示される波形では、図7に示される波形と異なり約4〜7Hzの人体の共振周波数の領域における出力電圧の強度が小さいことがわかる。したがって、大腿部に対向して配設されたセンサ部12は心拍による荷重を検出するのに適している。
【0046】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、生体情報検出装置100を車両に備えられるシート30に適用した場合の例について説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。他のシート30に適用することも当然に可能である。
【0047】
上記実施形態では、センサ部11が、シートクッション31の平面視において、着座者の大殿筋に対向するように一対で配設されてあるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。着座者の大殿筋に対向するように、左右いずれか片方のみ配設することも当然に可能である。
【0048】
上記実施形態では、センサ部12が、シートクッション31の平面視において、着座者の大腿筋と交差するように一対で配設されてあるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。着座者の大腿筋と交差するように、左右いずれか片方のみ配設することも当然に可能である。
【0049】
上記実施形態では、センサ部11が着座者の臀部に対向する位置に亘って着座方向と長尺方向とを一致させて配設されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。臀部に対向する位置には、センサ部11を配設しない構成とすることも当然に可能である。
【0050】
上記実施形態では、演算部70が、着座方向の揺れに基づく荷重の変化に応じて着座者の呼吸情報を演算するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。着座者の呼吸情報と共に、心拍情報を演算することも当然に可能である。
【0051】
上記実施形態では、センサ部12が配設される位置が、シートクッション31における着座方向の前方側にある位置であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。センサ部12をシートクッション31における着座方向の後方側にも配設することは当然に可能である。
【0052】
上記実施形態では、センサ部11が有する圧電フィルム10aの長尺方向の長さが、シートクッション31の着座方向の長さの1/4以上1/2未満であるとして説明した。また、センサ部12が有する圧電フィルム10aの長尺方向の長さが、シートクッション31の着座方向に直交する方向の長さの1/4以上1/2未満であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。圧電フィルム10aの長尺方向の長さを上記とは異なる長さで形成することも当然に可能である。
【0053】
本発明は、座部に着座する着座者の生体情報を検出する生体情報検出装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10:センサ部
11:センサ部
12:センサ部
30:シート
31:シートクッション
32:シートバック
33:ヘッドレスト
70:演算部
100:生体情報検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め着座方向が定められてある座部に対し、
伸縮方向もしくは曲げの変形を検出する長尺状の一つの圧電フィルムが着座者の大腿部に対向する位置に亘って前記大腿部と交差する方向と長尺方向とを一致させて配設され、荷重の変化を検出するセンサ部と、
前記荷重の変化に基づいて生体情報を演算する演算部と、
を備えた生体情報検出装置。
【請求項2】
前記センサ部が、前記座部の平面視において、前記着座者の大腿筋と交差するように一対で配設されてある請求項1に記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記演算部が、前記荷重の変化に応じて前記着座者の心拍情報を演算する請求項1又は2に記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
前記大腿部に対向する位置が、前記座部における前記着座方向の前方側にある位置である請求項1から3のいずれか一項に記載の生体情報検出装置。
【請求項5】
前記圧電フィルムの長尺方向の長さが、前記座部の着座方向に直交する方向の長さの1/4以上1/2未満である請求項1から4のいずれか一項に記載の生体情報検出装置。
【請求項6】
前記座部が車両に備えられるシートのシートクッションである請求項1から5のいずれか一項に記載の生体情報検出装置。
【請求項7】
前記圧電フィルムはPVDFを延伸して形成され、前記センサ部は、前記延伸する方向と前記長尺方向とが一致するように形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の生体情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−156197(P2011−156197A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20993(P2010−20993)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】