説明

生体情報測定システム

【課題】
確実に個人認証を行うことができる生体情報測定システムを提供する。
【解決手段】
被験者の生体情報を測定する生体情報測定システムにおいて、個人の特定を行うための個人認証情報を含む個人情報を記録した記録手段と、個人情報を送信する送信手段とを有し、被験者に装着される認証用装着装置と、認証用装着装置との間で無線通信を行うことにより、被験者の個人情報の授受を行う個人認証装置と、被験者の生体情報を測定する生体情報測定手段を有する便器装置と、この便器装置の機能を起動させるための起動信号を発生する起動信号発生装置とよりなり、個人認証装置は、所定の起動信号を発生させるための被験者による起動信号発生装置を操作する動作に伴って、認証用装着手段との距離が、所定距離まで接近したときに、認証用装着装置から個人情報の取得を行う生体情報測定システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレブース内で被験者の個人認証を行うと共に、被験者の生体情報を測定する生体情報測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、トイレにおいて被験者の尿から尿糖、たんぱく等の生体情報を測定することができるトイレ装置が考案されている。
【0003】
このトイレ装置は、一般家庭にも設置されるが、病院等の公共施設に設置されることも多く、その場合は特に不特定の複数の被験者の生体情報を測定することになるため、測定した生体情報がどの被験者のものであるのかを特定しておく必要があり、生体情報の測定に際し、必ず被験者の個人認証を行わなければならない。
【0004】
そのため、このトイレ装置は、被験者の個人認証を行う個人認証装置を備えており、以下のようなシステムによって生体情報の測定を行うようにしていた。
【0005】
すなわち、被験者は、生体情報の測定を行うに際し、自分の個人認証情報を記憶させた個人認証手段となるICカードを、トイレブースの壁面に設置された個人認証装置に挿入し、この個人認証装置により自分の個人認証情報を読取らせることによって個人認証を行った後、生体情報の測定を行う。
【0006】
そして、生体情報の測定を行った後、測定結果をICカードに記録させ、その後、個人認証装置からICカードを取り出して生体情報の測定を終了するようにしていた(たとえば、特許文献1参照。)。
【0007】
ところが、上記従来のトイレ装置では、被験者が自分の個人認証情報を記憶させたICカードを忘れてトイレブースに入った場合に、個人認証を行うことができないという問題が生じる。
【0008】
さらに、被験者が個人認証装置にICカードを挿入して生体情報の測定を行ったとしても、生体情報の測定後、個人認証装置からICカードを持ち帰ることを忘れてしまう場合も予想される。
【0009】
このような問題は、個人認証手段として、被験者が携帯しているにも関わらず、個人認証に関する行為を行うに際して、被験者の身体から離されて使用されるというICカードの形態に起因するものである。
【0010】
したがって、近年は、個人認証手段の別な形態として、指紋、音声、虹彩などといった被験者の個人的特長を利用するものも利用され始めてきている。
【0011】
また、ICカードと同じく個人認証情報を記録した携帯型の個人認証手段の形態に関しても、個人認証行為時にも被験者の身体に装着されたまま使用されるICタグと呼ばれる形態のものが個人認証手段として利用され始めている。
【0012】
ICタグを個人認証手段として採用した場合、被験者の身体に常時装着することが前提となるため、前述したような個人認証手段の取り忘れ等といった被験者の不注意による不具合は解消されるが、このような常時装着タイプのものを生体情報測定システムに使用する場合では、次のような問題が生じる。
【特許文献1】特開平7−207736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
不特定多数の利用も想定され個人認証行為が不可欠な生体情報測定システムの場合、常時装着するICタグにも種々の通信距離を持つものがあるが、病院等の公共施設に設置された機器の個人認証手段として用いる場合は、心臓ペースメーカーを装着した患者への電磁波の影響や、連設されたトイレへの設置時の隣接する同種の機器間での混信を防止するため、必然的にその通信距離は短く設定されたものを使用せざるを得ない。
【0014】
このように常時装着する個人認証手段の通信距離を最小限に抑えたことにより新たな問題が生じる。
【0015】
すなわち、常時装着しても日常活動に与える影響が少なく、かつ、個人認証手段自体を個人認証装置に接近させて個人認証情報の授受が可能な装着部位として、例えば手又は足が考えられる。
【0016】
この場合、本来必要な測定装置自体の使用操作のための動作に加えて個人認証を行う時や、測定終了後の測定結果の書き込みを行う場合は、書き込み時にも動作が必要となり、被験者に余分な動作負担をかけることとなっていた。
【0017】
また、被験者のそのような動作自体のばらつきによって読み取りに失敗したり、測定結果を書き込みできないといった、情報の授受に不確実性が生じることとなった。
【0018】
本発明の課題は、被験者に生体情報測定機能を備えたトイレ装置特有性に根ざす特別な動作である個人認証やデータ授受のためだけの動作を求めずに、かつ、より確実な個人認証を行うことができる生体情報測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そこで、請求項1に係る本発明では、被験者の生体情報を測定する生体情報測定システムにおいて、個人の特定を行うための個人認証情報を含む個人情報を記録した記録手段と、個人情報を送信する送信手段とを有し、被験者に装着される認証用装着装置と、認証用装着装置との間で無線通信を行うことにより、被験者の個人情報の授受を行う個人認証装置と、被験者の生体情報を測定する生体情報測定手段を有する便器装置と、この便器装置の機能を起動させるための起動信号を発生する起動信号発生装置とよりなり、個人認証装置は、所定の起動信号を発生させるための被験者による起動信号発生装置を操作する動作に伴って、認証用装着手段との距離が、所定距離まで接近したときに、認証用装着装置から個人情報の取得を行うことを特徴とする生体情報測定システムを提供することとした。
【0020】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の生体情報測定システムにおいて、所定の起動信号が、生体情報測定手段に生体情報の測定を開始させるための起動信号及び/又は生体情報の測定を終了させるための起動信号であることを特徴とする。
【0021】
また、請求項3に係る本発明では、請求項1に記載の生体情報測定システムにおいて、所定の起動信号が、生体情報測定手段に生体情報の測定を開始させるための起動信号と、生体情報測定手段に生体情報の測定を終了させるとともに便器装置に便器洗浄を開始させるための起動信号とであることを特徴とする。
【0022】
また、請求項4に係る本発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体情報測定システムにおいて、認証用装着装置がさらに個人情報を受信する受信手段を有し、個人認証装置との間で、生体情報測定手段で測定された生体情報の測定結果情報を含む個人情報を授受するものであることを特徴とする。
【0023】
また、請求項5に係る本発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体情報測定システムにおいて、個人認証情報によって個人認証を行った結果に基づいて、便器装置の所定の起動信号に対応した機能の起動を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、以下に記載するような効果を奏する。
【0025】
すなわち、請求項1に係る本発明では、被験者が便器装置の機能を起動させるために必須の動作を行った際に個人認証情報の授受が行われるため、被験者に特別な動作を意識させることなく、被験者の生体情報の測定を行うときに必須の個人認証情報の授受の機会を、確実に得ることができる。
【0026】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の発明の効果に加えて、測定開始、測定終了という、被験者が生体情報の測定を行う際に、必ず行わなければならない操作に関連付けて個人認証情報の授受を行うため、被験者の意思にかかわらず確実に個人認証を行うことができる。
【0027】
また、請求項3に係る本発明では、請求項1に記載の発明の効果に加えて、測定開始、測定終了という、被験者が生体情報の測定を行う際に必ず行わなければならない操作に関連付けて個人認証情報の授受を行うため、被験者の意思にかかわらず確実に個人認証を行うことができ、さらに被験者が生体情報の測定を行った後、忘れることなく確実に便器洗浄を行うことができる。
【0028】
また、請求項4に係る本発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、生体情報の測定結果情報の認証用装着装置への記録や、過去の測定結果情報の認証用装着装置からの参照ができる。
【0029】
また、請求項5に係る本発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、単に用便を行う便器として使用される場合に誤って測定操作されても、不用な生体情報の測定をすることがなくなる。また、被験者の体調や症状に合わせた生体情報の測定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る生体情報測定システムの実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0031】
この生体情報測定システムは、図1に示すように、被験者1の右手首に装着される認証用装着装置2と、トイレブース3の壁面に配置された個人認証装置4と、被験者1の生体情報を測定する機能を備えた便器装置5と、被験者1の操作により便器装置5の各機能を起動させる起動信号を発生させる起動信号発生装置6とによりなり、トイレブース3内で被験者1の個人認証を行うと共に、その被験者1の生体情報を測定するシステムである。
【0032】
認証用装着装置2は、被験者1の手首に装着されるリストバンド7により構成しており、生体情報の測定時、非測定時を問わず、常時被験者1の身体に装着することができるものである。
【0033】
そして、このリストバンド7の内部に、個人認証装置4との間で無線通信を行うことにより情報の授受を行うことができる無線通信装置(以下、「ICタグ8」という。)を備えている。
【0034】
このICタグ8は、被験者1個人の特定を行うための個人認証情報を含む個人情報を記録する記録手段として、また、測定結果情報をはじめとする個人情報を記録する測定結果記録手段として機能するRAM(Random Access Memory)9と、被験者1の個人情報を個人認証装置4に送信する送信手段10と、個人認証装置4から検査結果情報を受信する受信手段11と、これら送信手段10、受信手段11、RAM9の動作を制御するタグ制御手段12と、タグ制御手段12を動作させるためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)とを備えている。
【0035】
なお、本実施形態におけるICタグ8は、個人認証装置4が発信する電波を受信し、その電波により発電して動作するものを用いているが、リチウムイオンバッテリーなどの電池により動作するものを用いることもできる。
【0036】
起動信号発生装置6は、図2に示すように、生体情報の測定を開始する際に被験者1が操作する検査開始スイッチ18と、生体情報の測定を終了する際に被験者1が操作する検査終了スイッチ19と、生体情報の測定を終了した後や、便器装置5を単に用便のためだけに使用した後に、便器を洗浄する際に被験者が操作する便器洗浄スイッチ20と、これら検査開始スイッチ18、検査終了スイッチ19、便器洗浄スイッチ20が操作されると、その操作に応じて便器装置5の各種機能を起動させるための起動信号を便器装置5に入力する起動信号発生手段21とを備えている。
【0037】
さらに、この起動信号発生装置6は、前回の測定が終了してから次回の測定準備動作が終了すると点灯して測定可能なことを使用者に知らせる測定準備ランプ28と、個人認証を終えて測定を実施している間点灯して測定中であることを使用者に知らせる測定ランプ29と、これら測定準備ランプ28及び測定ランプ29の点灯、消灯、点滅を行うランプ駆動手段30を備えている。
【0038】
これにより、被験者1が、生体情報測定システムがどのような動作状態であるかということを確実に認識して、測定のための適切な動作が取れるようにすることができるようにしている。
【0039】
また、この個人認証装置4は、認証用装着装置2のICタグ8との通信可能距離を短く(本実施形態の場合は15cm以下)なるように設定し、前述した起動信号発生装置6と近接する位置に設けている。
【0040】
こうすることにより、被験者1が起動信号を発生させるため起動信号発生装置6の操作を行なったときに、装着している認証用装着装置2と、この個人認証装置4との距離が所定距離まで近接して通信が行なえるようにしている。
【0041】
そのため、この生体情報測定システムにおいて被験者1は、生体情報の測定を行なう際に必須の動作である検査開始スイッチ18の操作や検査終了スイッチ19の操作を行ったときに、意識することなく個人認証情報や測定結果情報等の生体情報の測定に伴う各種情報の授受をすることができる。
【0042】
また、変形例として、個人認証装置4からICタグ8へ、この被験者1が過去に行った生体情報測定の測定結果情報を送信してRAM9に記録することもできる。
【0043】
さらに、個人認証装置4と認証用装着装置2との通信可能距離を前述したように短く制限したことにより、本発明に係る生体情報測定システムは、例えば、隣設されたトイレブース3で同じ生体情報測定システムを使用して生体情報の測定を行っていても、そちらの認証用装着装置2や個人認証装置4との間で誤って情報の授受を行うおそれがない。
【0044】
次に、この生体情報測定システムの第1の実施形態における構成の詳細を図3を使用して以下に説明する。なお、本実施形態は測定する生体情報として被験者の排泄する尿(排尿)に関する情報である尿量の測定を行なう場合の構成である。
【0045】
個人認証装置4は、ICタグ8から送信される個人認証情報を受信する受信手段14と、ICタグ8へ測定結果情報を送信する送信手段15とを備えている。
【0046】
また、この個人認証装置4は、ICタグ8から送信された個人認証情報、便器装置5から入力される測定結果情報、過去の測定結果情報などを、個人認証を行った被験者1毎に記録するメモリ16と、これら個人認証装置4が備える受信手段14、送信手段15、メモリ16の動作を制御する認証制御手段17とを備えている。
【0047】
便器装置5は、便器本体22と、被験者1の生体情報を測定する生体情報測定手段23とにより構成している。
【0048】
生体情報測定手段23は、便器本体22が備えている水圧センサ22aが検知した水圧に基づいて便器本体22内部の水位を測定する水位計測部24と、測定前の基準水位と測定後の水位とに基づいて被験者1が排泄した尿量を算出する尿量換算部25と、この尿量換算部25により算出した尿量を測定結果情報として記録すると共に管理する測定結果管理部26と、これら水位計測部24、尿量換算部25、測定結果管理部26の各動作及び便器本体22の洗浄や給水の動作を制御する制御部27とを備えている。
【0049】
このように構成した認証用装着装置2、個人認証装置4、便器装置5、起動信号発生装置6よりなる生体情報測定システムの第1の実施形態における生体情報の測定の手順を、図4に示す動作フローチャートにより以下に説明する。
【0050】
まず、被験者1がトイレブース3に入ったときの状態において、起動信号発生装置6は、直前に使用されたときに測定準備動作が行われて測定準備ランプ28が点灯された状態となっている。
【0051】
この状態のときに、生体情報の測定を行うためにトイレブース3に入った使用者が検査を行なう被験者1の場合はまず、起動信号発生装置6に設けている検査開始スイッチ18を押圧操作する(ステップS2)。
【0052】
なお、使用者が検査を行なわず本生体情報測定システムを単なる便器として使用する場合は、用便を終えて便器洗浄スイッチ20を押圧操作すると、直ちに便器洗浄が行なわれる(ステップS1)。
【0053】
この押圧操作に基づいて、起動信号発生手段21が生体情報測定を開始させるため起動信号を便器装置5の制御部27へ入力して便器装置5は測定予約状態となる。
【0054】
このとき、被験者1による検査開始スイッチ18の押圧操作という動作により、被験者1の手首に装着している認証用装着装置2と個人認証装置4とが、個人認証装置4とICタグ8との通信可能距離になるところまで近接する。
【0055】
そのため、ICタグ8は、個人認証装置4から発信される電波により発電して、この被験者1の個人認証情報を個人認証装置4へ送信する。
【0056】
個人認証装置4は、受信した個人認証情報と、予めメモリ16に記録している個人認証情報とを照合することにより、この被験者1の個人認証を行う(ステップS3)。
【0057】
個人認証の結果、使用者が測定対象者と確認できたところで、測定動作を開始するとともに、便器装置5からの測定動作開始の動作確認信号に基づいて、測定準備ランプ28を消灯させ、測定ランプ29を点灯させて測定中であることを表示する。個人認証の結果、使用者が測定対象者でないならば測定の待機状態は破棄して、測定準備ランプ28の点灯を継続する(ステップS4)。
【0058】
また、このとき同時に、個人認証装置4からICタグ8のRAM9へ、この被験者1の過去の測定結果情報を記録することもできる。
【0059】
そのため、認証用装着装置2に、RAM9に記録した情報を表示する表示手段を設けておけば、被験者1は、測定終了後に、過去の測定結果情報と、今回の測定結果情報とをその場で比較することができる。
【0060】
次にその被験者1に必要とされる測定項目を装置が自動的に設定する。即ち、本実施形態の排尿情報に関しては、尿量や排尿速度の指標である尿流率や排尿が開始されるまでの時間であるためらい時間などの複数の測定項目から、被験者1の身体状態に合わせた測定項目として自動設定される(ステップS5)。
【0061】
このように、検査開始スイッチ18の押圧操作という、被験者1が生体情報測定を開始する際に必ず行う検査開始スイッチ18の操作をするときに、同時に個人認証がなされるため、被験者1の不注意により個人認証が行われないといった問題を解消でき、常に確実な個人認証を行うことができる。
【0062】
また、上記したように、認証用装着装置2は、ICタグ8をリストバンド7に内蔵させたものであるので、被験者1は、生体情報の測定時、非測定時を問わず常時身に付けておくことができ、この認証用装着装置2を忘れてトイレブース3に入ることがなく、生体情報を測定する際に確実に個人認証を行うことができる。
【0063】
次に、被験者1は、測定ランプ29が点灯していることを確認した後、図6に示すように排尿し、便器装置5の生体情報測定手段23により被験者1が排泄する尿に関する排尿情報の測定が行われる(ステップS6)。
【0064】
このとき被験者1は、図6に示すように、起動信号発生装置6を操作しないため、個人認証装置4と認証用装着装置2とは通信可能距離以上離隔した状態となり、個人認証装置4と認証用装着装置2との間で情報の授受は行われない。
【0065】
ここで、便器装置5の生体情報測定手段23では、制御部27の制御に基づいて水位計測部24により便器本体22内部の水位を計測し、その計測値を尿量換算部25へ入力する。
【0066】
尿量換算部25は、水位計測部24から入力された計測値に基づいて被験者1のその時点での尿量値を算出し、その尿量値を測定結果管理部26へ入力する。
【0067】
測定結果管理部26は、被験者1により検査終了スイッチ19が操作されるまでの間継続して計測されるこの尿量値を記録する。
【0068】
このようにして、生体情報測定手段23は検査開始スイッチ18が操作されてから検査終了スイッチ19が操作されるまでの間の尿量値の時間的変化挙動の測定を行い、排尿量、最大排尿速度、排尿時間、排尿待機時間(ためらい時間)等の排尿に関する各種の情報を得る。
【0069】
次に、被験者1が、図7に示すように、排尿を終えた後、検査終了スイッチ19を押圧操作すると、起動信号発生手段21が尿量の測定を終了させるための起動信号を便器装置5の制御部27へ入力する(ステップS7)。
【0070】
このとき、図7に示すように、被験者1による検査終了スイッチ19の押圧操作という動作により、被験者1の手首に装着している認証用装着装置2と個人認証装置4とが、個人認証装置4とICタグ8との通信可能距離になるところまで近接する。
【0071】
そのため、ICタグ8は、再び個人認証装置4から発信される電波により発電して、この被験者1の個人認証情報を再度個人認証装置4へ送信し、個人認証を行なう(ステップS8)
個人認証装置4は、受信した個人認証情報と、生体情報の測定開始時にメモリ16に記録した個人認証情報とを照合することにより、両者が同一人物かどうかの確認を行う(ステップS9)。
【0072】
このように、被験者1が測定を終了したときに、再度個人認証を行うことにより、この被験者1が測定開始時に個人認証した人物と同一人物かどうかの確認を行なう。
【0073】
そして、便器装置5の制御部27は、再度の個人認証の結果、この被験者1が測定開始時に個人認証した人物と同一人物であると確認されると、測定結果管理部26に保持している被験者1の測定結果を読み出して個人認証装置4へ送信する。このようにして、測定情報の取り違えが致命的な事態に繋がりかねない生体情報関連機器に特有な配慮を行なっている。
【0074】
個人認証装置4は、便器装置5から送信された測定結果と被験者1の個人認証情報とを対応させた測定結果情報を生成してメモリ16に記録するとともに、この測定結果情報を認証用装着装置2へ送信する。
【0075】
認証用装着装置2では、ICタグ8のタグ制御手段12の制御により、個人認証装置4から受信した測定結果情報をRAM9に記録する(ステップS10)。
【0076】
このように、検査終了スイッチ19の押圧操作という、被験者1が生体情報測定を終了する際に必ず行う操作をするときに、同時に測定結果情報の記録を行なうため、被験者1は、特別な記録のための動作を行なわなくても、生体情報測定システムは確実に被験者1の測定結果情報を取得することができる。
【0077】
また、すべての測定に必要な動作が終了したときには便器装置5の制御部27から終了確認信号が起動信号発生装置6に送信されて、測定ランプ29は消灯して測定終了したことを表示する。
【0078】
検査終了スイッチ19を操作した後、被験者1は必要ならば局部の洗浄等の用便後の後始末を行なう。なお、図示しない便器洗浄待機ランプを設け、この間点滅させることで次の便器洗浄動作を喚起させる表示を行っても良い。
【0079】
次に、被験者1が便器洗浄スイッチ20を押圧操作することによって、起動信号発生装置6は便器を洗浄するための起動信号を便器装置5の制御部27に送信する(ステップS11)。
【0080】
その後、便器装置5の制御部27はこの起動信号に基づいて便器本体22の洗浄機能を駆動させて便器の洗浄を行う。
【0081】
便器の洗浄が開始されると、便器装置5は、起動信号発生装置6へ便器洗浄の開始を示す確認信号を送信する。
【0082】
起動信号発生装置6は、この確認信号が送信されると、測定準備ランプ28を点滅開始させて次回の生体情報測定に必要な測定準備動作が開始されたことを表示する(ステップS12)。
【0083】
便器の洗浄が終了すると、便器装置5の制御部27は次回の生体情報測定に必要な測定準備動作を開始させる。
【0084】
便器の測定準備動作が終了すると、便器装置5は、起動信号発生装置6へ測定準備動作が終了を示す確認信号を送信する。
【0085】
起動信号発生装置6は、この確認信号が入力されると、測定準備ランプ28を点滅から点灯に変化させて次回の生体情報測定に必要な測定準備動作が整ったことを表示して、一連の生体情報の測定が終了する(ステップS13)。
【0086】
このようにして認証用装着装置2内部のRAM9に記録させた被験者1の生体情報は、その後、専用の測定情報読み取り装置(図示略。)により読み出して、パソコンなどの情報処理装置に入力して管理するようにする。
【0087】
また、プリンタ機能付きの測定情報読み取り装置を用いて、その場で読み出した測定情報を印刷し、被験者1に手渡すようにすることもできる。
【0088】
ここで、この測定結果情報は認証用装着装置2のICタグ8に記録するだけでなく、起動信号発生装置6にプリンタや画面表示装置を設けて出力しても良く、あるいはまた、起動信号発生装置6から集中管理センター等に設置されたサーバに転送する等その取り扱いは種々考えられ、測定結果情報の活用方法に対応してこれらを任意に組み合わせて実施することも可能である。
【0089】
次に、別の第2の実施形態について以下に説明する。なお、前述した第1の実施形態では検査開始スイッチ18、検査終了スイッチ19、便器洗浄スイッチ20の3つのスイッチを備えていたが、第2の実施形態は検査スイッチと便器洗浄スイッチの2つのスイッチのみで生体情報の測定を行う点が異なるだけで、その他のシステム構成は同じであるため説明は省略して、その動作フローを説明する。
【0090】
本実施形態の動作フローは図5に示すとおりで、ステップT1〜ステップT6までの処理動作は、図4に示す第1の実施形態におけるステップS1〜ステップS6までの処理動作と同じであるため、前述した第1の実施形態の動作フローの説明において、検査開始スイッチ18を検査スイッチに読み替えれば良い。したがって、ここではステップT7以降に行う処理動作を説明する。
【0091】
本実施形態では、測定が行われた後に被験者1が、図7に示すように便器洗浄スイッチ20を押圧操作すると、起動信号発生手段21が尿量の測定を終了させるための起動信号と、便器を洗浄するための起動信号とを同時に便器装置5の制御部27へ入力する。(ステップT7)。
【0092】
次に、再度の個人認証を行い(ステップT8)、得られた個人認証情報を最初の個人認証情報と照合を行なう(ステップT9)。その結果、測定開始時と同じ被験者1であった場合は、便器洗浄動作とともに測定結果の出力動作も同時に開始される(ステップT10)。
【0093】
また、このとき便器装置5は、起動信号発生装置6へ照合完了を示す確認信号を入力する。
【0094】
起動信号発生装置6は、この確認信号が入力されると、測定ランプ29を消灯させると共に、測定準備ランプ28を点滅させて生体情報の測定動作の終了と次回の測定のための準備動作中であることを表示する。
【0095】
また一方、測定開始時と異なる被験者1であった場合は、測定結果の出力動作は行わずに直ちに便器洗浄動作を開始する。(ステップT11)。
【0096】
次に、便器洗浄動作が完了すると次回の測定のための準備動作を開始し(ステップT12)、このとき測定準備ランプ28の点滅は継続して行ない、準備動作が完了すると測定準備ランプ28を点灯に切り替えて準備動作が終了して測定待機状態であることを表示してすべての動作を終了する。
【0097】
また、第3の実施形態を以下に説明する。なお、この実施形態では以上述べてきた第1及び第2の実施形態における起動信号発生装置6の操作受付機能を個人認証装置4に担わせる点が異なるだけで、他の構成は同じなため以下ではそれらの説明は省略する。
【0098】
第3の実施形態においては、実際の操作受付機能を持った操作スイッチ(例えば、第1実施形態における検査開始スイッチ18や検査終了スイッチ19の代わりに、被験者1の操作位置の目安となる表示だけのダミー操作スイッチをこの個人認証装置4と近接する位置に設ける。
【0099】
さらに、ダミー操作スイッチを操作する被験者1の動作に伴い個人認証装置4と認証用装着装置2とが通信可能な距離まで近接したときに個人認証を行い、この個人認証が行われたことを被験者1のスイッチ操作の意思表示があったとみなして、起動信号発生手段21が便器装置5にダミー操作スイッチの操作対象としている便器装置5の動作(例えば検査開始動作や便器洗浄動作)に対応した起動信号を出力するように構成する。
【0100】
この場合には、前記のダミーの操作スイッチは、個人認証装置4との通信可能な距離以内であれば個人認証装置4または起動信号発生装置6のいづれに設けても良い。また、前述した実施形態のような測定ランプ29といった動作表示ランプを設けておき、被験者1にシステムの動作状態を示すことによって装置動作に対する安心感を与えるように構成しても良い。
【0101】
このように個人認証装置4を構成した場合、このダミー操作スイッチには電子部品などを設ける必要がないため、この生体情報測定システムを構築するためのコストを低減することができる。
【0102】
さらに、本実施形態の変形例として、認証用装着装置2と個人認証装置4との間の情報の授受に使用する通信デバイスを、より指向性の強い組み合わせに置き換えることにより、複数の操作スイッチをすべてダミー操作スイッチとして起動信号発生装置6の操作受付機能をすべて個人認証装置4に担わせることも可能である。この場合は、使用するデバイスの指向性に対応したピッチ距離に複数のダミー操作スイッチを配設するようにして、相互の干渉による誤動作を防止するように配慮する。
【0103】
ここまでに説明した各実施形態では、測定準備動作状態や測定動作状態を示す測定準備ランプ28や測定ランプ29を設置して被験者1に生体情報測定システムの現在の動作状態を認識させるようにしているが、コスト面を重視して設置を省略することも可能である。
【0104】
また、認証用装着装置2として、ICタグ8を備えたリストバンド7を例に挙げて説明を行ったが、認証用装着装置2は、これに限らず、被験者1が起動信号を発生させるための所定の動作を行うときに、その動作に伴って、個人認証装置4との距離が近接するような部位であれば、被験者1の手首以外の部位に装着できるものを用いてもよい。
【0105】
例えば、被験者1の足首に装着可能なアンクレットにICタグ8を内蔵した認証用装着装置2などを用いても本生体情報測定システムを実現することができる。
【0106】
この場合には、トイレブース3内の床面近くに、被験者1が足を動かすことにより操作することができる起動信号発生装置6を設け、この起動信号発生装置6と近接する位置に個人認証装置4を配置する。
【0107】
こうすることによって、手の不自由な被験者1であっても個人認証と生体情報の測定とを確実に行うことができる生体情報測定システムを提供することができる。
【0108】
また、ここまでに説明した各実施形態では説明を簡単にするため、起動信号発生装置6と、個人認証装置4とを別体とし、互いに近接する位置に配置しているが、両者を一個の筐体の中に配置させて外観を見映え良くする構成とすることも可能である。
【0109】
また、同じく測定する生体情報として、被験者1の尿量値の時間的変化挙動を測定する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されることなく、測定する生体情報として、尿糖、尿塩、たんぱく、被験者の体温、体重など様々な生体情報の測定する際の個人認証についても適用することができるものである。
【0110】
この場合には、便器装置5に尿糖、尿塩、たんぱく等の成分を分析する成分分析手段を設けると共に、便座に重量センサと温度センサとを設けることにより実現することができる。
【0111】
そして、成分分析手段、重量センサ、温度センサにより測定した各測定結果情報を便器装置5の測定結果管理部26で管理すれば、測定終了時に認証用装着装置2に記録することができる。
【0112】
以上説明してきたように、本発明の生体情報測定システムでは、被験者1がトイレブース3において、生体情報の測定を行う際に、必ず行う操作に必要なスイッチを設けた起動信号発生装置6と個人認証装置4とを近接して配設する構成として、これらのスイッチ(検査開始スイッチ18、検査スイッチ、検査終了スイッチ19、便器洗浄スイッチ20)の操作を行うときに、個人認証装置4と認証用装着装置2とが通信可能な距離まで近接することを利用して、情報の授受を行うようにしたため、被験者1の不注意などのために個人認証が行われないといった事態を招くことがなく、しかも、被験者1に個人認証を行うための動作を強いることなく確実に個人認証を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明に係る生体情報測定システムの実施形態を示す説明図である。
【図2】起動信号発生装置及び個人認証装置を示す説明図である。
【図3】本実施形態に係る生体情報測定システムを構成する装置を示すブロック図である。
【図4】生体情報測定システムの第1の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。
【図5】生体情報測定システムの第2の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】生体情報測定中の被験者の動作を示す説明図。
【図7】生体情報測定終了時の被験者の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0114】
1 被験者
2 個人認証用装着装置
3 トイレブース
4 個人認証装置
5 便器装置
6 起動信号発生装置
7 リストバンド
8 ICタグ
9 RAM
10 送信手段
11 受信手段
12 タグ制御手段
13 ROM
14 受信手段
15 送信手段
16 メモリ
17 認証制御手段
18 検査開始スイッチ
19 検査終了スイッチ
20 便器洗浄スイッチ
21 起動信号発生手段
22 便器本体
22a 水圧センサ
23 生体情報測定手段
24 水位計測部
25 尿量換算部
26 測定結果管理部
27 制御部
28 測定準備ランプ
29 測定ランプ
30 ランプ駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の生体情報を測定する生体情報測定システムにおいて、
個人の特定を行うための個人認証情報を含む個人情報を記録した記録手段と、前記個人情報を送信する送信手段とを有し、前記被験者に装着される認証用装着装置と、
前記認証用装着装置との間で無線通信を行うことにより、前記被験者の前記個人情報の授受を行う個人認証装置と、
前記被験者の生体情報を測定する生体情報測定手段を有する便器装置と、
この便器装置の機能を起動させるための起動信号を発生する起動信号発生装置とよりなり、
前記個人認証装置は、所定の前記起動信号を発生させるための前記被験者による前記起動信号発生装置を操作する動作に伴って、前記認証用装着手段との距離が、所定距離まで接近したときに、前記認証用装着装置から前記個人情報の取得を行うことを特徴とする生体情報測定システム。
【請求項2】
前記所定の起動信号が、前記生体情報測定手段に生体情報の測定を開始させるための起動信号及び/又は前記生体情報の測定を終了させるための起動信号であることを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定システム。
【請求項3】
前記所定の起動信号が、前記生体情報測定手段に生体情報の測定を開始させるための起動信号と、前記生体情報測定手段に前記生体情報の測定を終了させるとともに前記便器装置に便器洗浄を開始させるための起動信号とであることを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定システム。
【請求項4】
前記認証用装着装置がさらに前記個人情報を受信する受信手段を有し、前記個人認証装置との間で、前記生体情報測定手段で測定された生体情報の測定結果情報を含む前記個人情報を授受するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体情報測定システム。
【請求項5】
前記個人認証情報によって個人認証を行った結果に基づいて、前記便器装置の前記所定の起動信号に対応した機能の起動を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体情報測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−284232(P2006−284232A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101600(P2005−101600)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】