説明

生体情報測定装置

【課題】肥満度指標や排便量を非接触で推定するのに好適な人の生体情報を測定する生体情報測定装置を提供。
【解決手段】着座して排便する洋式大便器と、洋式大便器に搭載され、被験者の排便時に併発され便器のボウル内に排出される排泄ガスが混合されたボウル内の雰囲気を検体として採取する検体採取手段と、採取された検体に含まれる所定成分の濃度を所定成分濃度として計測する所定成分濃度算出手段と、予め求めた所定成分濃度と生体情報指標との関係を生体情報指標算出データとして記憶する生体情報指標算出データ記憶手段と、計測された所定成分濃度を生体情報指標算出データに適用することによって、被験者の生体情報指標の値を算出する生体関連情報指標算出手段と、を有し、排泄ガスの成分濃度計測によって生体情報指標を求める生体情報測定装置において、所定成分濃度が炭酸ガス濃度であり、生体情報指標が排泄大便量または肥満度指数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の生体情報を測定する生体情報測定装置に係り、特に肥満度指標や排便量を非接触で推定するのに好適な生体情報測定装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
人間の生体関連情報を表す生体情報指標は各種あり、その例の一つとして肥満度があり、体重、ボディマスインデックス(BMI)、体脂肪率などの数値で示される。その測定方法としては、例えば体脂肪率は、体脂肪が他の体組成に比べてインピーダンスが高いことを利用して身体のインピーダンスの計測から被験者の体脂肪率を算出する技術が知られている(特許文献1)。特許文献1で開示された体脂肪測定機能付重量計は、被験者が体重測定と同じ感覚で体脂肪やBMIを測定することができる装置である。
【0003】
また、インピーダンスを測定する電極を壁に取り付け、両手で電極を握ることで体脂肪率を測定する装置も知られている(特許文献2)。
【0004】
また、生体情報指標の別の例の一つとして、排泄される大便量があり、この大便量を計測する技術としては、便器のトラップの重量を検出する重量検出装置を便器に設置し、排便前後のトラップの重量排便量を推定する装置が提案されている(特許文献3)。また、便鉢部内に可動式受け皿を持つ計重器を便器に設置し、受け皿に落下した大便を測定する排便量技術が開示されている。(特許文献4)。これらの技術は、いずれも大便の重量を直接測定する装置を便器に設けることで排便量を測定する技術に基いている。
【0005】
なお、本発明が対象とする生体情報指標を得るものではないが、排便時に併発される排泄ガス中の所定成分を計測し、計測されたガス濃度情報に基づいて被験者の腸内状態を知る技術が知られている(特許文献5)。この技術は、便鉢部に排出された排泄ガスの所定成分濃度値から便中成分に代表される腸内状態パラメータを推定して使用者に報知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−128198号公報。
【特許文献2】特開2006−263390号公報。
【特許文献3】特開平08−299348号公報
【特許文献4】特開2006−125090号公報
【特許文献5】特開2007−089857号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上述べたような肥満度関連指標を測定する技術では、測定装置に接触するため、測定のためだけの特定の測定動作を被験者が行なうことが必要で、測定行為自体が日常生活の中で負担になるという問題がある。
一方、大便量測定技術も、装置が複雑な構成を要することに加え、外観上通常の便器とは異なり、一般家庭では使用者に違和感を与えるという問題もある。また、直接検体に接触するため、洗浄等の後処理が発生するため装置が複雑になり、動作信頼性も確保することが困難となることが予想される。
【0008】
本発明は、このような諸問題を解決し、被験者の日常生活活動である大便排泄時に併発される排泄ガスの成分濃度計測を行なうことによって、被験者に特別な動作的負担をかけずに有用な生体情報指標を求めることが可能で、高い動作信頼性のある生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明による生体情報測定装置は、
着座して排便する洋式大便器と、
前記洋式大便器に搭載され、被験者の排便時に併発され前記便器のボウル内に排出される排泄ガスが混合された前記ボウル内の雰囲気を検体として採取する検体採取手段と、
採取された前記検体に含まれる所定成分の濃度を所定成分濃度として計測する
所定成分濃度算出手段と、
予め求めた前記所定成分濃度と生体情報指標との関係を生体情報指標算出データとして記憶する生体情報指標算出データ記憶手段と、
計測された前記所定成分濃度を前記生体情報指標算出データに適用することによって、前記被験者の前記生体情報指標の値を算出する生体関連情報指標算出手段と、を有し、排泄ガスの成分濃度計測によって生体情報指標を求める生体情報測定装置において、
前記所定成分濃度が炭酸ガス濃度であり、前記生体情報指標が排泄大便量であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2記載の発明のよよる生体情報測定装置は、
着座して排便する洋式大便器と、
前記洋式大便器に搭載され、被験者の排便時に併発され前記便器のボウル内に排出される排泄ガスが混合された前記ボウル内の雰囲気を検体として採取する検体採取手段と、
採取された前記検体に含まれる所定成分の濃度を所定成分濃度として計測する
所定成分濃度算出手段と、
予め求めた前記所定成分濃度と生体情報指標との関係を生体情報指標算出データとして記憶する生体情報指標算出データ記憶手段と、
計測された前記所定成分濃度を前記生体情報指標算出データに適用することによって、前記被験者の前記生体情報指標の値を算出する生体情報指標算出手段と、を有し、排泄ガスの成分濃度計測によって生体情報指標を求める生体情報測定装置において、
前記所定成分濃度が炭酸ガス濃度であり、前記生体関連情報指標が肥満度指数であることを特徴とする。
【0011】
好適な一実施形態に係る本発明の生体情報測定装置は、前記肥満度指数がボディマスインデックス(BMI)であることを特徴とする。
【0012】
好適な一実施形態に係る本発明の生体情報測定装置さらに、前記肥満度指数が体脂肪率であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、日常生活において必ず発生する排便行為の際に、特別な動作をせずに肥満度指標と大便量などの生体情報指標を測定するので、日々の測定が負担とならず継続したデータ蓄積ができ、長期的観察に基く健康管理や健康増進への取り組みが容易となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る生体情報測定装置を具備した着座式便器を示す斜視図である。
【図2】本発明の生体情報測定装置を示す構成図である
【図3】排便時に発生したガス中の二酸化炭素ガス濃度を測定した出力例を示すグラフである。
【図4】二酸化炭素ガス濃度と排便量との相関を示すグラフのモデルである。
【図5】二酸化炭素ガス濃度と排便量との相関データを例示する図である。
【図6】二酸化炭素ガス濃度とBMIとの相関を示すグラフのモデルである。
【図7】二酸化炭素ガス濃度とBMIとの相関データを例示する図である。
【図8】二酸化炭素ガス濃度と体脂肪率との相関を示すグラフのモデルである。
【図9】二酸化炭素ガス濃度と体脂肪率との相関データを例示する図である。
【図10】本発明の生体情報測定装置を使用した生体情報測定の手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した第1の実施形態について、図面に基づき具体的に説明する。図1は本実施形態に係る生体情報測定装置を具備した着座式便器を示す斜視図、図2は生体情報測定装置を示す構成図である。
【0016】
先ず、本実施形態に係る生体情報測定装置1の概要について説明する。本実施形態に係る生体情報測定装置1は、被験者の排便時における便器ボウル内に放出される併発ガスを便器ボウル内の雰囲気ごと採取して、当該併発ガス中の所定成分濃度を計測することによって被験者の生体情報指標を判別するものであり、図1に示すように、着座式便器10に搭載されている。
【0017】
便器10の便座2と便鉢3周縁の頂部との間に設けたスペースを利用して脱臭ファン用排気通路4が設置されている。脱臭ファン用排気通路4内には、脱臭ファン5、およびガスセンサ7が取り付けられている。制御部8は便座2の後部内に組み込まれている。本実施形態においては、検体採取手段50は脱臭ファン用排気通路4および脱臭ファン5から構成されている。
【0018】
また、かかる着座式便器10の設置された室内の横側壁Wには、着座式便器10の各種操作及び生体情報測定装置1の操作を行うための操作表示部30が設置されている。操作表示部30には表示部28と、操作部29とが設けられている。この操作部29には、例えば測定開始ボタンや測定を強制的に終わらせる測定終了ボタンや複数の被験者毎に割り付けられる測定の開始及び終了のトリガーとなる個人認識ボタンなどが設けられている。
【0019】
ガスセンサ7と制御部8とのデータ交換は結線により、また制御部9と操作表示部30とのデータ交換は赤外線により行っている。
【0020】
図2は本発明の生体情報測定装置を示す構成図である。脱臭ファン用排気通路4内に、風上側から順に脱臭ファン5、脱臭カートリッジ6、二酸化炭素センサのガスセンサ7が配置されている。
【0021】
制御部8が測定開始信号をガスセンサ7に送信しガスセンサが作動し始めると、脱臭ファンによって搬送されてきたガスのガス濃度に応じた出力信号が得られる。ガスセンサ7で得られたセンサ出力信号が制御部8の所定成分濃度算出手段81に送られ、時系列的に記憶される。また、制御部8の測定終了信号によってガスセンサの作動が終了し、センサ出力の信号の記録が終了する。続いて、所定成分濃度算出手段81では後述の方法にしたがって記憶されたセンサの出力信号から所定ガス成分の濃度を求め、その結果を生体情報指標算出手段82に送信する。生体情報指標算出手段82は、受信されら所定ガス成分の濃度データ、および生体情報指標算出データ記憶手段83に記憶されている生体情報指標算出データに基いて生体情報指標を推算し、得られた生体情報指標が表示部28で表示される。
【0022】
本実施例では、濃度計測の対象となるガス成分、すなわち、被験者の排便時に体内から排出される併発ガス中の所定成分としては、無臭ガスである二酸化炭素(CO2)ガスとしている。併発ガスの中には多くの成分が含まれているが、二酸化炭素は含有量が多く、測定が容易な上、本発明が対象とする生体情報指標の排便量および肥満指標との相関関係も強く、好都合である。
【0023】
以下、本発明の制御部に含まれる所定成分濃度算出手段81、生体情報指標算出手段82、および生体情報指標算出データ記憶手段83について具体的に説明する。
【0024】
所定成分濃度算出手段81は、ガスセンサの動作を制御するガスセンサ制御部、ガスセンサ7からの出力値を記憶する第一記憶部、ガスセンサの出力値を処理し、所定成分ガス濃度を算出する所定濃度演算部より構成されている。
【0025】
以下、図面を用いて所定成分濃度算出手段81によって所定成分濃度を算出する方法を具体的に説明する。図3に示したグラフは、計測時間中のセンサ出力値の変化を表わした一例であり、縦軸にガスセンサ7から出力されるセンサ出力値を、横軸に計測時間をとっている。本実施形態では図中に示すように、ガスセンサ7の出力値のピーク値群の中で最大のピーク値Vmaxから出力の最小値Vminを引いた値をセンサ出力値の最大ピーク値Vpとする。
【0026】
そして、所定成分濃度演算部では、この最大ピーク値Vpと所定成分濃度との換算式(検量線)Cp=f(Vp)に基づいて所定の所定成分濃度の最大ピーク値Cpを算出する。即ち、濃度計測値の最大ピーク値に対応する濃度(最大ピーク値Cp)を本実施形態の測定における所定成分濃度(本実施形態では二酸化炭素ガス濃度)とすることになる。
【0027】
生体情報指標算出手段82は、所定成分濃度算出手段81で得られた二酸化炭素濃度のデータ信号を受信し、受信され二酸化炭素の濃度データを、生体情報指標算出データ記憶手段83に記憶されたいる生体情報指標算出データ、すなわち、二酸化炭素の濃度と生体情報指標との対応表(検量線)に基いて生体情報指標を算出する。
【0028】
以下、本実施例の生体情報指標算出データ記憶手段83について説明する。本実施例では、生体情報指標を排便量とした。排便量は体からの「お便り」として、摂取情報や便秘傾向や体調を反映する、総合的な生体情報指標として健康管理や健康増進に有用である。
【0029】
また、排便量は健康関連指標だけではなく、水洗式便器の便器洗浄制御に利用し、洗浄を効率的に行い節水を図ることに利用することができる。水洗式便器では排泄された大便を洗浄水流によって排出するため、必要な洗浄水量は大便量によって影響を受けるが、その大便量は生体情報指標のため使用者によってそれぞれ異なる。従って、現在ではどんな場合でも確実な大便の排出を記するために排泄大便量の想定される最大値に合わせた水量を設定しているが、省資源化を背景とした洗浄水量の更なる最少化を図るためには、この大便量に合わせた洗浄水量の制御が必要となっている。すなわち、排便量に応じて洗浄水の量を変えるように制御することで、洗浄効率の向上と節水とを実現できるのである。
【0030】
図4は二酸化炭素ガス濃度(CO2濃度最大ピーク値)と排便量との相関を示すグラフのモデルである。この相関グラフは、本発明による装置で排便時に併発される二酸化炭素ガス濃度を測定し、同時に排便量を別の方法で測定して、両者の相関を分析することによって得られる。図5にはその一例を示す。
【0031】
図5に示すように、排便時に併発されるガス中の二酸化炭素ガス濃度(CO2濃度最大ピーク値)と排便量との間に良好な相関があることがわかる。その理由はかならずしも明確になってないが、二酸化炭素は小腸での消化を逃れた老廃物が大腸内の腸内細菌により代謝される際に産生されるので、その産生量が老廃物の量と正比例する。一方、排便量が大腸内に到達する老廃物との間に正の相関関係が成立する故、二酸化炭素ガス濃度と排便量との間に正の相関関係が成立つことが推測される。
【0032】
以上のことから、排便時に排出される排便ガス中の二酸化炭素濃度を測定することによって二酸化炭素濃度に対応する排便量を推定することができることが判る。
【0033】
生体情報指標算出データ記憶手段83には、以上のように事前の測定に基いて決定された検量線データ、すなわち二酸化炭素濃度と排便量との対応データである排便量算出データが生体情報指標算出データとして記憶されている。生体情報指標算出手段82が所定成分濃度算出手段81から所定成分濃度を受信するたびに、生体情報指標算出データ記憶手段83にアクセスし、排便量算出データを読み出して二酸化炭素濃度から排便量を算出する。算出された排便量は表示部に送信して表示し使用者に報知する。同時に制御部に排便時刻とともに制御部に記憶する。
【0034】
つづいて本発明を適用した第2の実施形態について説明する。
本実施例の装置構成は図2に示す第1実施形態と同様であるが、生体情報指標がボディマスインデックス(BMI)であり、制御部8の生体情報指標算出データ記憶手段83に記憶されている生体情報指標算出データが二酸化炭素濃度とBMIとの対応データである点について異なる。BMIはよく認知されており、男女の別なく同じ基準で利用できるので、肥満度指標として好ましい。ここで生体情報指標算出データ記憶手段83に記憶されている二酸化炭素濃度とBMIとの対応データについて説明する。
【0035】
図6は二酸化炭素ガス濃度(CO2濃度最大ピーク値)とBMIとの相関を示すグラフ、すなわち二酸化炭素ガス濃度からBMIを算出する検量線のモデルである。この検量線は、以下の手順によって求めることができる。
【0036】
まず、複数の人に対して本発明による装置で排便時に併発される二酸化炭素ガス濃度を一定期間(本実施例では4週間)測定し、そのデータを平均化処理してそれぞれの人の二酸化炭素ガス濃度として取得し、同時に測定期間における体重を測定し、得られた体重データを平均処理してからBMIを周知の方法(BMI=体重/(身長*身長))に基いてを算出する。次に両データをプロットして、相関分析を行うことで検量線を求める。
【0037】
図7にはその一例を示す。図7に示すように、排便時に併発されるガス中の二酸化炭素ガス濃度(CO2濃度最大ピーク値)とBMIとの間に強い相関があることがわかる。その理由はかならずしも明確になってないが、二酸化炭素は小腸での消化を逃れた老廃物が大腸内の腸内細菌により代謝される際に産生されるので、その産生量が老廃物の量と正比例する。
【0038】
一方、大腸内に到達する老廃物の量は摂取量との間に正の相関関係が成立する故、二酸化炭素ガス濃度と摂取量との間に正の相関関係が成立つことが推測される。また、摂取量が多い人ほど、過摂取によってエネルギーが体内に蓄積され、結果的に肥満傾向、すなわちBMIが高くなることが考えられる。
【0039】
以上のことから、排便時に排出される排便ガス中の二酸化炭素濃度を測定することによって肥満度指標であるBMIを推定することができることが判る。
【0040】
生体情報指標算出データ記憶手段83には、以上のように事前の測定に基いて決定された検量線データ、すなわち二酸化炭素濃度とBMIとの対応データである排便量算出データが生体情報指標算出データとして記憶されている。生体情報指標算出手段82が所定成分濃度算出手段81から所定成分濃度を受信するたびに、生体情報指標算出データ記憶手段83にアクセスし、BMI算出データを読み出して二酸化炭素濃度からBMIを算出する。
【0041】
算出されたBMIデータは表示部に送信して表示し使用者に報知する。同時に制御部にて排便時刻とともに記憶部に記憶する。なお、BMIが日々大きく変動することが少ないことを考慮し、測定するたびのデータを報知するのではなく、一定期間内のデータを平均処理して報知する、或いは明らかに変化が認められた、すなわち新しいトレンドが見られた場合に表示し報知することができる。
【0042】
次に、本発明を適用した第3の実施形態について説明する。
本実施例の装置構成は図2に示す第1実施形態と同様であるが、生体情報指標が体脂肪率であり、制御部8の生体情報指標算出データ記憶手段83に記憶されている生体情報指標算出データが二酸化炭素濃度と体脂肪率との対応データである点について異なる。
【0043】
体脂肪率は、健康診断項目の一つとして最近普及・認知されており、また、BMIのように、骨太体格や筋肉体質などにより肥満ではない人も肥満傾向と誤判断される可能性が低く肥満度指標としてより好ましい。ここで生体情報指標算出データ記憶手段83に記憶されている二酸化炭素濃度と体脂肪率との対応データについて説明する。
【0044】
図8は二酸化炭素ガス濃度(CO2濃度最大ピーク値)と体脂肪率との相関を示すグラフ、すなわち二酸化炭素ガス濃度から体脂肪率を算出する検量線のモデルである。この検量線は、以下の手順によって求めることができる。
【0045】
まず、前記実施形態2と同様に、複数の人に対して本発明による装置で排便時に併発される二酸化炭素ガス濃度を一定期間(本実施例では4週間)測定し、そのデータを平均化処理してそれぞれの人の二酸化炭素ガス濃度として取得するとともに、同時に測定期間における体脂肪率を別の測定手段、例えば市販の体組成計で測定し、得られた体脂肪率データを平均処理してそれぞれの人の体脂肪率として取得する。次に一人一人についての両データをプロットして、相関分析を行うことで二酸化炭素ガス濃度と体脂肪率との検量線を求める。
【0046】
図9にはその一例である。を示す。図9に示すように、排便時に併発されるガス中の二酸化炭素ガス濃度(CO2濃度最大ピーク値)と体脂肪率との間に強い相関があることがわかる。その理由はかならずしも明確になってないが、上記実施形態2のBMIの場合と同様な理由が考えられる。
【0047】
生体情報指標算出データ記憶手段83には、以上のように事前の測定に基いて決定された検量線データ、すなわち二酸化炭素濃度と体脂肪率との対応データである排便量算出データが生体情報指標算出データとして記憶されている。生体情報指標算出手段82が所定成分濃度算出手段81から所定成分濃度を受信するたびに、生体情報指標算出データ記憶手段83にアクセスし、BMI算出データを読み出して二酸化炭素濃度から体脂肪率を算出する。
【0048】
なお、体脂肪率に関しては属性、特に性別によって異なるので、本実施例においては、二酸化炭素濃度から体脂肪率を推定する検量線は属性別で作成することが望ましい。すなわち、生体情報指標算出データ記憶手段83には属性別の対応データが記憶されており、装置が使用者の属性を認識または事前登録することで使用者の属性を識別し、識別さらた属性に応じてが生体情報指標算出手段82が生体情報指標算出データ記憶手段83から検量線データを選択して読み出して、二酸化炭素濃度から体脂肪率を算出する。図9に示す例は男性のデータに基いた相関図である。
【0049】
算出された体脂肪率は表示部に送信して表示し使用者に報知する。同時に制御部に排便時刻とともに制御部に記憶する。なお、体脂肪率が日々大きく変動することが少ないことを考慮し、測定するたびのデータを報知するのではなく、一定期間内のデータを平均化処理して報知する、或いは明らかに変化が認められた、すなわち新しいトレンドが見られた場合に表示し報知することができる。
【0050】
以上、肥満度指標としてBMIおよび体脂肪率を例として説明したが、他の指標、例えば腹囲、内蔵脂肪割合などを指標としてもよい。これらの指標を使用した場合、装置の構成は上記実施例と同様であり、生体情報指標算出手段82が利用する、生体情報指標算出データ記憶手段83に記憶されている生体情報指標算出データの生体情報指標が異なるだけになる。
【0051】
最後に、本発明の生体情報測定装置を使用した生体情報指標を測定する手順を例示して説明する。
【0052】
図10は、本発明の生体情報測定装置を洋式便器に付設された衛生洗浄便座装置に内蔵して使用する生体情報測定方法法の手順を示す一例である。生体情報測定装置の測定対象者となる使用者(以後、「被験者」と呼ぶ。)の動作を左側に、便座装置が行う処理(健康状態測定装置の処理を含む)を右側に別けて表示した。
【0053】
本図の流れの通り、被験者はトイレ内に入室し排便をして退室するのであるが、このトイレには本発明の生体情報測定装置が取り付けてあるため、退室する前には自分の生体情報指標地を表示部10に表示されることで、その日の体調を知り、あるいは継続的に測定していた場合は経時的な体調の変化を知ることができる。
【0054】
まず被験者が入室すると人体検知センサによって入室が検知され、制御部8によって二酸化炭素ガスセンサ7が起動される。人体検知センサを使わない場合には、被験者が生体情報の電源を手動で入れてもよい。
【0055】
被験者が着座すると着座センサが着座を検知し、制御部8によって脱臭ファン5および二酸化炭素ガスセンサ7が作動を開始する。ここで稼動開始時のセンサの時刻をt1とし、その時刻に対応する二酸化炭素ガスセンサ7の出力信号値をV1と呼ぶ。なお、ガスセンサの始動は着座センサを使わずに被験者がセンサの始動スイッチを押してもよい。
【0056】
被験者が排便を開始し終了するまで、二酸化炭素ガスセンサ7は一定時間tx、たとえば1秒おきにデータVxを検出し、それらを制御部8に書き込む。
【0057】
排便終了後、被験者が人体洗浄を開始する。このとき、洗浄ボタンと連動させて二酸化炭素ガスセンサ7の記録を終了させる。排便終了時の時間t2と二酸化炭素ガスセンサ7のそのときの検知データV2が記憶される。なお、排便前または排便中に洗浄ボタンが使われるケースもあることを考慮する場合は、洗浄ボタンと連動させずに被験者が手動で記憶終了させる形式としてもよい。
【0058】
次に、制御部8の所定成分濃度算出手段81ではt1〜t2の範囲で二酸化炭素ガス出力信号値の最大値Vmaxを検索する。そしてVmaxから二酸化炭素ガス出力信号値の最小値を引いた値を排泄ガス対応の二酸化炭素ガスセンサの出力値(最大値Vp)として記録する。そしてVp値から二酸化炭素ガス最大濃度Cpを算出する。
【0059】
続いて生体情報指標算出手段82では生体情報指標を推定する。算出した生体情報指標値は制御部8に書き込み、同時に結果を被験者に表示部10等により報知する。
【0060】
なお、生体情報指標算出手段82は一つの生体情報指標を算出するか、複数の生体情報指標を算出するか、使用者の操作部29に対する操作によって選択することができる。または、使用者が事前に登録して置くこともできる。
【0061】
被験者が離座すると、それを着座センサが感知し脱臭ファン5が停止する。そして被験者が退室すると人体検知センサによって退室が検知されその信号が第一演算部8のガスセンサ制御部に送られ二酸化炭素ガスセンサ7の電源が切られる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は健康管理装置、および住宅関連設備、特にトイレ関連設備に関する分野の産業に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1…生体情報測定装置
2…便座
3…便鉢部
4…脱臭ファン用通路
5…脱臭ファン
6…脱臭カートリッジ
7…ガスセンサ
8…制御部
10…着座式便器
28…表示部
29…操作部
30… 操作表示部
50…検体採取手段
81…所定成分濃度算出手段
82…生体情報指標算出手段
83…生体情報指標算出データ記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座して排便する洋式大便器と、
前記洋式大便器に搭載され、被験者の排便時に併発され前記便器のボウル内に排出される排泄ガスが混合された前記ボウル内の雰囲気を検体として採取する検体採取手段と、
採取された前記検体に含まれる所定成分の濃度を所定成分濃度として計測する
所定成分濃度算出手段と、
予め求めた前記所定成分濃度と生体情報指標との関係を生体情報指標算出データとして記憶する生体情報指標算出データ記憶手段と、
計測された前記所定成分濃度を前記生体情報指標算出データに適用することによって、前記被験者の前記生体情報指標の値を算出する生体関連情報指標算出手段と、を有し、排泄ガスの成分濃度計測によって生体情報指標を求める生体情報測定装置において、
前記所定成分濃度が炭酸ガス濃度であり、前記生体情報指標が排泄大便量であることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
着座して排便する洋式大便器と、
前記洋式大便器に搭載され、被験者の排便時に併発され前記便器のボウル内に排出される排泄ガスが混合された前記ボウル内の雰囲気を検体として採取する検体採取手段と、
採取された前記検体に含まれる所定成分の濃度を所定成分濃度として計測する
所定成分濃度算出手段と、
予め求めた前記所定成分濃度と生体情報指標との関係を生体情報指標算出データとして記憶する生体情報指標算出データ記憶手段と、
計測された前記所定成分濃度を前記生体情報指標算出データに適用することによって、前記被験者の前記生体情報指標の値を算出する生体情報指標算出手段と、を有し、排泄ガスの成分濃度計測によって生体情報指標を求める生体情報測定装置において、
前記所定成分濃度が炭酸ガス濃度であり、前記生体関連情報指標が肥満度指数であることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項3】
前記肥満度指数がBMIであることを特徴とする請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
肥満度指数が体脂肪率であることを特徴とする請求項2に記載の生体情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−230359(P2010−230359A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75834(P2009−75834)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】