生体情報測定装置
【課題】被験者を自動的に特定でき、適切な特定の測定部位が選択された共通の測定条件で必要に応じて比較的長時間の連続測定を高いSN比で行うことができ、レーザー出力光の利用効率も改善できる生体情報測定装置を実現すること。
【解決手段】レーザーを光源とする共焦点光学系を用いた生体情報測定装置において、
前記レーザーからパルス光が出力されるように交流駆動するレーザー駆動手段が設けられ、前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の皮膚と爪を識別して指の爪上皮から第1間接までの皮膚部分を測定部位として指示するように構成され、前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の静脈パターンを識別して被験者を特定することを特徴とするもの。
【解決手段】レーザーを光源とする共焦点光学系を用いた生体情報測定装置において、
前記レーザーからパルス光が出力されるように交流駆動するレーザー駆動手段が設けられ、前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の皮膚と爪を識別して指の爪上皮から第1間接までの皮膚部分を測定部位として指示するように構成され、前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の静脈パターンを識別して被験者を特定することを特徴とするもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置に関し、詳しくは共焦点光学系を用いた生体情報測定装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近赤外光を利用した分光法などにより、光源から被測定対象に照射すると、被測定対象に含まれる成分に特有の波長域においてその成分の量に応じた吸光特性を示すことから、被測定対象からの反射光などの測定光から吸光度(特定成分による光の吸収度)を算出し、その吸光スペクトルに基づいて被測定対象に含まれる成分を分析する手法が知られている。
【0003】
特に生体の内部組織(たとえば人体・動物の血管中血液や組織中の組織液に含まれる各種物質(血液中の血糖値などの成分の濃度など)など)の成分の測定を行う生体情報測定装置では、特許文献1のように波長可変レーザーと共焦点光学系を用いて、波長可変レーザーから出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光や生体を透過した光を測定して生体の内部組織の成分の測定を行う生体情報測定装置が提案されている。
【0004】
具体的には、被測定対象としての生体の内部組織に2波長以上の波長の各レーザー光を照射し、その生体の内部組織で反射した光や生体を透過した光から吸光度スペクトルを求めた後、生体の内部組織の成分を周知の試験にて算出し、吸光度スペクトルと生体の内部組織の成分との相関関係を表す式(以下、相関式という)を作成し、これをあらかじめ記憶するとともに、生体の内部組織の反射光や生体を透過した光から算出された吸光度を相関式に代入することで、その生体の内部組織の成分が測定されていた。
【0005】
さらに、特許文献1の生体情報測定装置は、共焦点光学系と生体とを相対的に3次元的に移動させる移動駆動機構を備えるものであり、移動駆動機構により前記共焦点光学系と前記生体とを相対的に3次元的に移動させることで前記生体に対して前記共焦点光学系の焦点位置を相対的に3次元的に移動させて、生体の内部組織の3次元的なデータを得ることにより、測定を行う生体の部位を確実に特定し、当該部位における生体の成分の測定を非侵襲でかつ確実に行うことが可能な生体情報測定装置について提案されている。
【0006】
図19は、特許文献1に記載されている生体情報測定装置の構成図である。
図19において、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光は、コリメートレンズ2で平行光に整形され、コリメートレンズ2の光軸に対してほぼ45°の傾斜を有する状態で配置されたハーフミラー3に入射される。なお、レーザーダイオード1としては、たとえばグルコースの吸収が比較的大きい1600nm〜1700nmの波長領域のレーザー光を出力できる可変波長レーザーを用いる。
【0007】
ハーフミラー3を透過した平行光は、対物レンズ4により集光されて載置台T上に載置されている生体BLの内部組織に照射される。生体BLの内部組織で反射されたレーザー光は再び対物レンズ4に入射されて平行光に整形され、ハーフミラー3に入射されてほぼ90°の方向に反射するように光路変換される。
【0008】
ハーフミラー3で光路変換されて反射されたレーザー光は、レンズ5により集光されてピンホール6に入射される。ピンホール6を通過したレーザー光は、受光素子7に入射されて電気信号に変換される。
【0009】
受光素子7は、受光したレーザー光の光量に応じて強さや大きさが増減する電気信号に変換し、A/D変換器8に入力する。A/D変換器8は、受光素子7から入力される電気信号をデジタルデータに変換し、データ解析部9に入力する。
【0010】
データ解析部9は、波長の異なる2波長以上の各レーザー光が生体BLに照射されたときに受光素子7から変換出力される複数の電気信号に基づいて生体BLの成分の定量解析を行う。
【0011】
具体的には、血糖値すなわち血液内のグルコース濃度の定量を行う場合、データ解析部9にはあらかじめ測定された血液内のグルコース濃度とレーザー光の吸光度との検量線が記憶されていて、データ解析部9は、この検量線に基づいて生体BLの血液内のグルコース濃度の定量を行う。
【0012】
このような従来の生体情報測定装置に関連する先行技術文献として下記の特許文献1がある。そして、生体情報の指の測定部位に関連する先行技術文献として下記の特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−301944号公報
【特許文献2】特開2005−296635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、このような従来の生体情報測定装置によれば、共焦点光学系の光源として用いるレーザー1は連続駆動されていることから、比較的長時間の連続測定を行ったり、検出信号のSN比を向上させるためにレーザー1の出力光量を増大させると生体BLの測定部位の温度が高くなってしまい、測定部位の測定対象成分が変質したり、測定部位を損傷してしまうおそれがある。
【0015】
また、従来の装置では、測定部位については「載置台上に腕等の生体が載置される」と記載されているのみであり、腕のどの部分が適切なのかなどの具体的な部位特定はしていない。
【0016】
このため、測定によっては必ずしも適切な特定の測定部位が選択されない可能性があるとともに、測定部位が異なることにより、共通の測定条件に基づく測定結果が得られないおそれがある。
【0017】
また、被験者から採血して血液内のグルコース濃度を測定するとともに、同時にレーザー1を調整してその被験者に固有の検量線データを入手し、CPUは検量線に基づいて生体BLの生体成分の定量を行うことが記載されているが、被験者を特定することについては記載されていない。
【0018】
この場合には、被験者ごとに検量線データや測定データを保存管理するために、これらの測定を行う前に被験者を特定するための情報を別途入手して入力しておき、測定時に被験者の特定情報に基づいて被験者当人であることを確認しなければならず、測定作業者にかなりの負担を強いることになる。
【0019】
さらに、共焦点光学系のピンホール6を通過して受光素子7に入射される反射光はそのほとんどが焦点位置Fで特定される内部組織の位置における反射光であるが、それ以外の散乱光は生体BLの測定部位周辺の生体情報を含むにもかかわらずピンホール6を通過できないことから処理されることなくそのまま放置されており、生体情報測定におけるレーザー1の出力光の利用効率は必ずしも高くはないといえる。
【0020】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、その目的は、被験者を自動的に特定でき、適切な特定の測定部位が選択された共通の測定条件で必要に応じて比較的長時間の連続測定を高いSN比で行うことができ、レーザー出力光の利用効率も改善できる生体情報測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
レーザーを光源とする共焦点光学系を用いた生体情報測定装置において、
前記レーザーからパルス光が出力されるように交流駆動するレーザー駆動手段が設けられたことを特徴とする。
【0022】
請求項2は、請求項1記載の生体情報測定装置において、
前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の皮膚と爪を識別し、指の爪上皮から第1間接までの皮膚部分を測定部位として指示するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項3は、請求項1または請求項2記載の生体情報測定装置において、
前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の静脈パターンを識別して被験者を特定することを特徴とする。
【0024】
請求項4は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体情報測定装置において、
前記共焦点光学系の共焦点位置の反射光を受光する受光素子とその周辺の反射光を受光する受光素子を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
このように構成することにより、被験者を自動的に特定でき、適切な特定の測定部位が選択された共通の測定条件で必要に応じて比較的長時間の連続測定を高いSN比で行うことができ、レーザー出力光の利用効率も改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】レーザー出力光のパターン図である。
【図2】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図3】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図4】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図5】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図6】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図7】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図8】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図9】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図10】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図11】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図12】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図13】図12で用いる受光素子7の具体例を示す構成説明図である。
【図14】図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図である。
【図15】図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図である。
【図16】図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図である。
【図17】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図18】図17で用いる受光素子21の具体例を示す構成説明図である。
【図19】従来の生体情報測定装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は図19に示すような共焦点光学系を構成するレーザーダイオード1の出力光のパターン図であって、(A)は従来のパターンを示し、(B)〜(D)は本発明の一実施例のパターンを示している。
【0028】
従来の構成におけるレーザーダイオード1は、前述のように、(A)に示すような連続発光状態で駆動されていた。これに対し、本発明では、(B)〜(D)に示すようなパルス発光状態になるように交流駆動される。すなわち、(B)の例では幅の狭い突起状パルス光を出力するように駆動され、(C)の例ではデューティ50%の矩形パルス光を出力するように駆動され、(D)の例では正負が半円状で繰り返す交流パルス光を出力するように駆動される。
【0029】
レーザーダイオード1を(B)〜(D)に示すようなパルス発光状態になるように交流駆動することにより、長時間の連続測定を行ったり、検出信号のSN比を向上させるためにレーザー1の出力光量を増大させても、(A)に示すような連続発光状態の駆動に比べて生体BLの測定部位に与えられるエネルギーの増加量は大幅に減少する。すなわち、(C)および(D)の駆動例では最大で(A)の場合の1/2に減少し、(B)の駆動例では(A)の場合の1/10以上に減少する。
【0030】
このように、レーザーダイオード1を(B)〜(D)に示すようなパルス発光状態になるように交流駆動することにより、長時間の連続測定を行ったり、検出信号のSN比を向上させるためにレーザー1の出力光量を増大させても、生体BLの測定部位の測定対象成分を変質させたり、測定部位を損傷することはなく、安定した測定動作を行う生体情報測定装置が実現できる。
【0031】
本発明に基づくレーザーダイオード1の交流駆動は、図19のように構成される生体情報測定装置のみに実施できるものではなく、以下に示す各種の構成の生体情報測定装置にも実施できるものである。
【0032】
図2の生体情報測定装置は、レーザー1の出力光を平行光に整形することなく対物レンズ4で集光して測定対象としての生体BLの内部組織に照射するように構成されている。
【0033】
図2において、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光は、レーザーダイオード1の光軸に対してほぼ45°の傾斜を有する状態で配置されたハーフミラー3に入射される。なお、レーザーダイオード1としては、たとえばグルコースの吸収が比較的大きい1500nm〜1700nmの波長領域のレーザー光を出力できる可変波長レーザーを用いる。1個のレーザーダイオードで1500nm〜1700nmの波長領域のレーザー光を出力できない場合には、複数のレーザーダイオードを組み合わせて用いればよい。ハーフミラー3を透過したレーザー光は、対物レンズ4で集光されて生体BLの内部組織に照射される。これらレーザーダイオード1とハーフミラー3と対物レンズ4は、生体BLの内部組織を照射する照射系を構成するものであり、これらの光軸が生体BLと正対するように配置されている。
【0034】
生体BLの内部組織で反射されたレーザー光は、再び対物レンズ4を介してハーフミラー3に入射され、ほぼ90°の方向に反射するように光路変換される。ハーフミラー3で反射されて光路変換されたレーザー光は、レンズを介することなく直接ピンホール6に入射される。ピンホール6を通過したレーザー光は、受光素子7に入射されて電気信号に変換される。
【0035】
受光素子7は、受光したレーザー光の光量に応じて強さや大きさが増減する電気信号に変換し、A/D変換器8に入力する。A/D変換器8は、受光素子7から入力される電気信号をデジタルデータに変換し、データ解析部9に入力する。これらピンホール6と受光素子7は受光系を構成するものであり、その光軸が照射系の光軸と直交する方向に配置されている。なお、これらレーザーダイオード1と対物レンズ4とピンホール6と受光素子7は、共焦点光学系を構成している。
【0036】
データ解析部9は、波長の異なる2波長以上の各レーザー光が生体BLに照射されたときに受光素子7から変換出力される複数の電気信号に基づいて生体BLの成分の定量解析を行う。
【0037】
このように構成することにより、図19の装置におけるレンズ2と5が不要になり、図19に比べて光学部品間の光軸合わせなど、組立調整を簡略化できる。
【0038】
また、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光を平行光に整形することなく対物レンズ4で集光して生体内における測定位置に照射するので、生体BL内における所望の測定位置の測定データを的確に取り込むことができる。
【0039】
図3は、本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。図3の生体情報測定装置は、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光の光束を、平凸レンズ10で拡大したものである。これにより、図2よりも光路長を短くでき、光路長を短くできる分だけ小型化が図れる。
【0040】
図4も、本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。図4の実施例は、生体BLと正対するようにピンホール6と受光素子7よりなる受光系を配置し、この受光系の光軸と直交する方向にレーザーダイオード1を配置したものである。これにより、図2と同様な成分測定が行える。
【0041】
なお、図4の構成においても、図3と同様な平凸レンズ10を、レーザーダイオード1の前面および受光素子7側のピンホール6とハーフミラー3との間に設けることによりレーザー光の光束を拡大できて光路長を短くでき、装置の小型化が図れる。
【0042】
図5も、本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。図5の生体情報測定装置では、対物レンズ4は光軸Aの方向に沿って移動可能に構成されている。これにより、生体BL内での結像位置を深さ方向に移動させることができる。
【0043】
なお、対物レンズ4の移動に合わせて、ピンホール6を光軸Bの方向に沿って移動させ、受光素子7を光軸Cの方向に沿って移動させるようにしてもよい。
【0044】
また、図5の構成において、これら照射系と受光系で構成される生体情報測定装置と生体BLを、相対的にX軸およびY軸方向に移動させる機構を組み込むことにより、生体BL内の3次元情報を得ることができる。
【0045】
また、図5の生体情報測定装置では対物レンズ4を光軸Aの方向に沿って移動可能に構成しているが、対物レンズ4は固定としてレーザーダイオード1を光軸Dの方向に沿って移動可能とし、ピンホール6と受光素子7をレーザーダイオード1の移動と同期してそれぞれの光軸方向B、Cに移動させるようにしてもよい。
【0046】
図6も、本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。図6の生体情報測定装置では、図3のように構成された生体情報測定装置をユニットとして構成し、これら複数n個のユニットをアレイ化して一体化したものである。各測定ユニットをアレイ構造にすることにより、それぞれ異なる波長で生体BL内の異なる焦点位置の信号を一括で取得できる。なお、各受光素子7の出力信号はマルチプレクサ11を介して共通のA/D変換器8に入力されてデジタルデータに変換されるが、より高速処理が必要な場合には受光素子それぞれに専用のA/D変換器を設けてもよい。
【0047】
上記各生体情報測定装置において、レーザーダイオード1から測定対象に照射される光強度を所定の値に維持するように、レーザーダイオード1を自動出力制御ループで駆動することにより、安定した測定が行える。
【0048】
図7は、このような構成を前述図2の生体情報測定装置に適用した例を示す構成図である。図7の生体情報測定装置では、レーザーダイオード1の出力光の一部を光ファイバ12を介して測定対象である生体BLの表面に照射させてその反射光を第2の受光素子13で検出し、この第2の受光素子13の出力信号をレーザーダイオード駆動回路14に与えてレーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0049】
これにより、レーザーダイオード1の温度変化および空間強度変動に起因する出力光強度変化を抑制でき、安定した成分測定結果が得られる。
【0050】
また、第2の受光素子13の出力信号をA/D変換器15を介してデータ解析部9に加え、第1の受光素子7の出力信号を第2の受光素子13の出力信号で除算して規格化することにより、レーザーダイオード1の出力変動分や測定対象LBの表面反射による変動分を補償できる。
【0051】
図8は、図7のレーザーダイオード1として、その出力光をモニタする図示しない第3の受光素子が内蔵されたものを用いた生体情報測定装置を示す構成図である。第3の受光素子の出力信号もレーザーダイオード駆動回路14に入力され、レーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0052】
また、第3の受光素子の出力信号もA/D変換器16を介してデータ解析部9に入力され、第1の受光素子7の出力信号を第3の受光素子の出力信号で除算して規格化する。これにより、データ解析部9は、2つの規格化信号を線形結合して多変量解析により結合係数を求め、これらの値に基づきレーザーダイオード1の出力変動分や測定対象LBの表面反射による変動分を高精度に補償する。
【0053】
図9は、図8の実施例に、さらにハーフミラー3で反射された反射光を検出する第4の受光素子17と、この第4の受光素子17の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器18を追加したものである。第4の受光素子17は、レーザーダイオード1の出力光の空間変動分を検出する。第4の受光素子17の出力信号もレーザーダイオード駆動回路14に入力され、レーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0054】
また、第4の受光素子17の出力信号もA/D変換器18を介してデータ解析部9に入力され、第1の受光素子7の出力信号を第4の受光素子17の出力信号で除算して規格化する。これにより、データ解析部9は、3つの規格化信号を線形結合して多変量解析により結合係数を求め、これらの値に基づきレーザーダイオード1の出力変動分と空間変動分および測定対象LBの表面反射による変動分をさらに精度よく補償する。
【0055】
図10は図9の生体情報測定装置から、光ファイバ12と第2の受光素子13およびA/D変換器15からなる信号系統を省いたものである。図10の構成によれば、レーザーダイオード駆動回路14は、第3の受光素子と第4の受光素子17の出力信号に基づいてレーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。そしてデータ解析部9は、第1の受光素子7の出力信号を第3の受光素子の出力信号で除算した規格化信号と第1の受光素子7の出力信号を第4の受光素子17の出力信号で除算した規格化信号に基づき、レーザーダイオード1の出力変動分および空間変動分を精度よく補償する。
【0056】
なお、図9および図10の生体情報測定装置ではレーザーダイオード1としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用いているが、装置に求められる補償精度に応じて、図6のように第3の受光素子が内蔵されていないものを用いてもよい。
【0057】
これら図7〜図10の構成は、図2に示す生体情報測定装置にのみ適用できるものではなく、図3〜図6に示す生体情報測定装置にも適用できるものである。
【0058】
上記各生体情報測定装置では、対物レンズ4として固定焦点レンズを用いる例を示したが、可変焦点レンズを用いてもよい。可変焦点レンズとしては、たとえばレンズ状に形成された空間に液晶が封入され、印加電圧を調整して見かけ上の液晶の屈折率を変化させるように構成された液晶レンズを用いることができる。液晶レンズによれば、同じレンズ形状でありながら、構成材料の屈折率が変化することにより、焦点距離が変化することになる。
【0059】
このような可変焦点レンズを対物レンズ4として用いることにより、対物レンズ4の位置を光軸方向に移動させずに可変焦点レンズに対する印加電圧を調整することで、生体BLの組織内における深さ方向の測定位置を任意に設定でき、レンズ移動機構が簡略化できる。
【0060】
上記各生体情報測定装置では、光源として可変波長レーザーを用いる例を説明したが、測定成分が特定されている場合には、単波長レーザーであってもよい。
【0061】
図11も本発明の他の実施例を示すブロック図であり、図19と共通する部分には同一の符号を付けている。図11において、生体BLは指FGであり、共焦点光学系は、指FGの爪上皮bから第1間接cまでの皮膚部分を測定部位として特定して測定する。
【0062】
一方、データ解析部9には、血糖値測定部91、測定部位判定部92、静脈パターン検出部93、静脈パターン照合部94などが設けられている。
【0063】
血糖値測定部91は、前述のように、A/D変換器8を介して出力される共焦点光学系の検出信号に基づいて、血糖値の測定を行う。
【0064】
測定部位判定部92は、A/D変換器8を介して出力される共焦点光学系の検出信号に基づいて、指FGの皮膚と爪aを識別し、指FGの爪上皮bから第1間接cまでの皮膚部分の範囲を検出すると、測定部位として適切である旨を図示しない表示部の表示メッセージやランプの表示色をたとえば赤から青に切り換えて可視化する。
【0065】
このように、共焦点光学系の検出信号に基づいて指FGの爪上皮bから第1間接cまでの皮膚部分の範囲を適切な測定部位として可視化表示することにより、別途測定部位決定手段を設けることなく血糖値測定と共通の手段を用いて適切な測定部位を決定指示することができ、血糖値測定時の測定部位のバラツキを防止できるとともに、共通の測定条件に基づく測定誤差の少ない信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0066】
静脈パターン検出部93は、A/D変換器8を介して出力される共焦点光学系の検出信号に基づいて、生体情報の一種としての指の静脈パターンを検出する。
【0067】
静脈パターン照合部94は、静脈パターン検出部93で検出した指FGの静脈パターンをあらかじめ静脈パターン登録部95に登録されている既知の被験者の指FGの静脈パターンと照合する。そして、静脈パターンが合致した場合には登録されているデータに基づいて被験者を特定し、合致する静脈パターンデータがない場合には以降の照合に備えて被験者の氏名や生年月日や性別などの個人データとともに静脈パターン登録部95に新規登録する。
【0068】
このように、共焦点光学系の検出信号に基づいて指FGの静脈パターンを検出照合して被験者を特定することにより、別途被験者特定手段を設けることなく血糖値測定と共通の手段を用いて被験者を自動的に特定することができる。
この結果、血糖値の測定データを被験者別に自動的に保存管理することができ、必要に応じて血糖値測定時に被験者に固有の検量線データに基づく高精度の補正を行うことができる。
【0069】
図12も本発明の他の実施例を示すブロック図であり、図19と共通する部分には同一の符号を付けている。図19の装置と図12の装置の相違点は、受光素子7の構造を工夫してピンホール6を省略していることと、受光素子7の出力信号をマルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力していることにある。
【0070】
図12において、ハーフミラー3を透過した平行光は、対物レンズ4により集光されて生体LBの内部組織に照射される。生体LBの内部組織で反射されたレーザー光は、再び対物レンズ4に入射されて平行光に整形され、ハーフミラー3に入射されてほぼ90°の方向に反射するように光路変換される。
【0071】
ハーフミラー3で光路変換されて反射されたレーザー光は、レンズ5により集光され、複数の受光体よりなる受光素子7に入射されて電気信号に変換される。
【0072】
受光素子7は、受光したレーザー光の光量に応じて強さや大きさが増減する電気信号に変換し、複数の受光体の出力信号をマルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力する。A/D変換器8は、受光素子7の複数の受光体から入力される電気信号をデジタルデータに変換し、データ解析部9に入力する。
【0073】
データ解析部9は、波長の異なる2波長以上の各レーザー光が生体LBに照射されたときに受光素子7の各受光体から変換出力される複数の電気信号に基づいて生体LBの成分の定量解析を行う。
【0074】
図12のように構成することにより、図19の構成に比べて光学部品間の光軸合わせなど、組立調整を簡略化できる。
【0075】
図13は、図12で用いる受光素子7の具体例を示す構成説明図であり、(A)は斜視図、(B)〜(D)はそれぞれ(A)のA−A’線に沿った断面図である。
【0076】
図13において、受光素子7の受光面には、(A)に示すように、同心円状に複数の受光体が設けられている。ここで、本実施例では4個の受光体PD1〜PD4が設けられた例を示しているが、同心円状の受光体パターンの個数およびピッチはこの実施例に限るものではなく、半導体製造プロセスや装置に要求される解析処理能力などを勘案して適切な仕様が選定される。
【0077】
(A)に示す受光素子7の断面形態としては、(B)に示すように基板上にN型拡散層とP型拡散層が積層された受光体パターンが物理的に同心円状に分離されたもの、(C)に示すように基板上の全面に形成されたN型拡散層上にP型拡散層が同心円状に積層されて受光体パターンとして形成されたもの、(D)に示すようにN型拡散基板の表面近傍にP型拡散層が同心円状に形成されたものなどが考えられる。
【0078】
図13のように、同心円状に複数の受光体PD1〜PD4が設けられた受光素子7を用いることにより、受光素子7の各受光体PD1〜PD4はレンズ5により集光された結像パターンに応じた光量を検出する。
【0079】
すなわち、図13に示すような受光素子7を用いることにより、受光素子7が共焦点結像位置になくても、同心円状の各受光体PD1〜PD4の信号強度を測定して信号強度が大きい受光体PD1の信号を積算することで、目的とする対物レンズ4の焦点位置からの散乱信号のみを検出できる。
【0080】
なお、共焦点位置以外の散乱信号は、信号が大きく取れている受光体PD1よりさらに外周に位置する受光体PD2〜PD4の信号として得られ、これらは皮膚の表面情報や指の静脈パターンなどの生体情報の検出に活用できる。
【0081】
図14は、図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図であり、(A)は斜視図、(B)〜(D)はそれぞれ(A)のB−B’線に沿った断面図である。
【0082】
図14において、受光素子7の受光面には、(A)に示すように、全面にわたってマトリクス状に複数の受光体が設けられている。
【0083】
(A)に示す受光素子7の断面形態としては、(B)に示すように基板上に形成されたN型拡散層とP型拡散層の積層パターンがマトリクス状に設けられたもの、(C)に示すように基板上の全面に形成されたN型拡散層上にP型拡散層パターンがマトリクス状に設けられたもの、(D)に示すようにN型拡散基板の表面近傍にP型拡散層がマトリクス状に設けられたものなどが考えられる。
【0084】
図14に示すような受光素子7を用いることにより、受光素子7が共焦点結像位置になくてさらに光学系に収差があっても、検出信号の大きい受光体の信号を選択して積算することで、目的とする対物レンズ4の焦点位置からの散乱信号のみを検出できる。そして、共焦点位置以外の散乱信号は、検出信号が大きく取れている受光体以外の受光体の信号として得られ、これらも皮膚の表面情報や指の静脈パターンなどの生体情報の検出に活用できる。
【0085】
図15も、図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図であり、図14における受光体の縦方向の配列パターンを横方向に1/2ピッチずつずらしたものである。このように配列された受光素子7を用いることにより、図14の場合には隣接する受光体間に規則的な格子状のマトリクスパターンとして存在する光信号検出に対する不感帯の影響を分散軽減できる。
【0086】
図16も、図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図であり、中心領域の受光体PD1とその外周領域の受光体PD2とが電気的に分離するように設けられている。
【0087】
図16(A)に示す受光素子7の断面形態としては、(B)に示すように基板上にN型拡散層とP型拡散層が積層された受光体パターンが物理的に分離されたもの、(C)に示すように基板上の全面に形成されたN型拡散層上にP型拡散層が物理的に分離されたもの、(D)に示すようにN型拡散基板の表面近傍にP型拡散層が分離して形成されたものなどが考えられる。
【0088】
図16のように、中心領域の受光体PD1とその外周領域の受光体PD2とが電気的に分離するように設けられた受光素子7を用いることにより、受光素子7の各受光体PD1、PD2はレンズ5により集光された結像パターンに応じた光量を検出する。
【0089】
すなわち、図16に示すような受光素子7を用いることにより、中心領域の受光体PD1は対物レンズ4の焦点位置からの散乱光のみを受光でき、その外周領域の受光体PD2は対物レンズ4の焦点位置以外から散乱された光を受光できる。
【0090】
図17も本発明の他の実施例を示すブロック図であり、図19と共通する部分には同一の符号を付けている。図19の装置と図17の装置の相違点は、共焦点光学系を構成するレーザーダイオード1とコリメートレンズ2とハーフミラー3と対物レンズ4を筒状に形成されたハウジング20に組み込み一体化し、ハウジング20の他端を生体BLの表面の測定部位に接触させるように構成していることである。
【0091】
ハウジング20の一端にはレーザーダイオード1が取り付けられ、生体BLの表面の測定部位に接触するハウジング20の他端には図18に示すような円板状に形成された受光素子21が取り付けられている。そして、ハウジング20の側面にはハーフミラー3で光路変換されて反射されたレーザー光をレンズ5に出射するための窓部22が設けられている。
【0092】
図18において、(A)の受光素子21の中央部には生体BL内の焦点位置からの反射光を通過させるための開口部が設けられ、その開口部を中心とする円周方向には生体BLの内部組織で散乱されたレーザー光を検出するための8個の受光体PDが等角度間隔で設けられている。(B)の受光素子21の中央部には生体BL内の焦点位置からの反射光を通過させるための開口部が設けられ、その開口部を中心とする全面には生体BLの内部組織で散乱されたレーザー光を検出するためのPDが設けられている。
【0093】
図17の構成において、レーザーダイオード1から出力された光は、レンズ2でコリメートされた後、ハーフミラー3と対物レンズ4を通って生体BLに到達する。生体BL内で散乱反射された光は、再び対物レンズ4とハーフミラー3を通り、レンズ5で集光された後、ピンホール6を通り、受光素子7に入射される。なお、このピンホール6は場合によっては省略できる。受光素子7の出力信号は、マルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力される。A/D変換器8の出力データはデータ解析部9に入力されて所定の信号処理が実行される。
【0094】
受光素子21が図18(A)の場合、対物レンズ4から出射されるレーザー光は受光素子21の開口部を通って生体BL内に入射され、焦点を結ぶ。開口部の外周に設けられている8個の受光体PDは、生体BLの内部で散乱されるほぼすべての光を受光する。これら受光体PDの出力信号はマルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力されてデジタル信号に変換され、A/D変換器8の出力データはデータ解析部9に入力されて所定の信号処理が実行される。
【0095】
受光素子21が図18(B)の場合、生体BLの表面の測定部位に接触するハウジング20の端面は中心部に穴のあいた大口径の受光体PDとなる。受光素子21の中央の開口部から出射されたレーザー光は生体BL内に入射され、焦点を結ぶ。大口径の受光体PDは、生体BLの内部で散乱されるほぼすべての光を受光する。受光体PDの出力信号はマルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力されてデジタル信号に変換され、A/D変換器8の出力データはデータ解析部9に入力されて所定の信号処理が実行される。
【0096】
なお、図17では示していないが、共焦点光学系にx、y軸方向にスキャンできる機構を設けることにより、生体BL内の3次元情報を得ることができる。
【0097】
また、共焦点光学系をz軸方向に可変できるように構成することにより、同じ光学系を用いて異なる波長(たとえば目的物質の吸収波長と吸収の少ない波長)で散乱反射光を測定し、グルコース吸収の検量線に基づく血糖値測定が行える。
【0098】
上記各生体情報測定装置では、人体の血液中の血糖値を測定する例について説明したが、血糖値以外の血液成分や組織液成分の定量測定にも有効である。
【0099】
また、測定対象は人体に限るものではなく、動物や植物などの内部物質の定量測定にも有効である。
【0100】
また、測定対象は生体に限るものではなく、農産物、水産物、食品、有機材料などの構造、組成の非破壊検査、化学物質の定量測定にも有効である。
【0101】
以上説明したように、本発明によれば、組立調整が比較的容易で、測定対象における所望の測定位置の測定データを的確に取り込むことができる生体情報測定装置を実現することができ、人体の血液中の血糖値をはじめとする各種の成分測定に好適である。
【符号の説明】
【0102】
1 レーザーダイオード
2 コリメートレンズ
3 ハーフミラー
4 対物レンズ
5 レンズ
6 ピンホール
7、21 受光素子
8 A/D変換器
9 データ解析部
91 血糖値測定部
92 測定部位判定部
93 静脈パターン検出部
94 静脈パターン照合部
95 静脈パターン登録部
10 平凸レンズ
11、19 マルチプレクサ
12 光ファイバ
14 レーザーダイオード駆動回路
20 ハウジング
22 窓部
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置に関し、詳しくは共焦点光学系を用いた生体情報測定装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近赤外光を利用した分光法などにより、光源から被測定対象に照射すると、被測定対象に含まれる成分に特有の波長域においてその成分の量に応じた吸光特性を示すことから、被測定対象からの反射光などの測定光から吸光度(特定成分による光の吸収度)を算出し、その吸光スペクトルに基づいて被測定対象に含まれる成分を分析する手法が知られている。
【0003】
特に生体の内部組織(たとえば人体・動物の血管中血液や組織中の組織液に含まれる各種物質(血液中の血糖値などの成分の濃度など)など)の成分の測定を行う生体情報測定装置では、特許文献1のように波長可変レーザーと共焦点光学系を用いて、波長可変レーザーから出射される2波長以上の波長の各レーザ光が被測定対象である生体の内部組織により反射される各反射光や生体を透過した光を測定して生体の内部組織の成分の測定を行う生体情報測定装置が提案されている。
【0004】
具体的には、被測定対象としての生体の内部組織に2波長以上の波長の各レーザー光を照射し、その生体の内部組織で反射した光や生体を透過した光から吸光度スペクトルを求めた後、生体の内部組織の成分を周知の試験にて算出し、吸光度スペクトルと生体の内部組織の成分との相関関係を表す式(以下、相関式という)を作成し、これをあらかじめ記憶するとともに、生体の内部組織の反射光や生体を透過した光から算出された吸光度を相関式に代入することで、その生体の内部組織の成分が測定されていた。
【0005】
さらに、特許文献1の生体情報測定装置は、共焦点光学系と生体とを相対的に3次元的に移動させる移動駆動機構を備えるものであり、移動駆動機構により前記共焦点光学系と前記生体とを相対的に3次元的に移動させることで前記生体に対して前記共焦点光学系の焦点位置を相対的に3次元的に移動させて、生体の内部組織の3次元的なデータを得ることにより、測定を行う生体の部位を確実に特定し、当該部位における生体の成分の測定を非侵襲でかつ確実に行うことが可能な生体情報測定装置について提案されている。
【0006】
図19は、特許文献1に記載されている生体情報測定装置の構成図である。
図19において、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光は、コリメートレンズ2で平行光に整形され、コリメートレンズ2の光軸に対してほぼ45°の傾斜を有する状態で配置されたハーフミラー3に入射される。なお、レーザーダイオード1としては、たとえばグルコースの吸収が比較的大きい1600nm〜1700nmの波長領域のレーザー光を出力できる可変波長レーザーを用いる。
【0007】
ハーフミラー3を透過した平行光は、対物レンズ4により集光されて載置台T上に載置されている生体BLの内部組織に照射される。生体BLの内部組織で反射されたレーザー光は再び対物レンズ4に入射されて平行光に整形され、ハーフミラー3に入射されてほぼ90°の方向に反射するように光路変換される。
【0008】
ハーフミラー3で光路変換されて反射されたレーザー光は、レンズ5により集光されてピンホール6に入射される。ピンホール6を通過したレーザー光は、受光素子7に入射されて電気信号に変換される。
【0009】
受光素子7は、受光したレーザー光の光量に応じて強さや大きさが増減する電気信号に変換し、A/D変換器8に入力する。A/D変換器8は、受光素子7から入力される電気信号をデジタルデータに変換し、データ解析部9に入力する。
【0010】
データ解析部9は、波長の異なる2波長以上の各レーザー光が生体BLに照射されたときに受光素子7から変換出力される複数の電気信号に基づいて生体BLの成分の定量解析を行う。
【0011】
具体的には、血糖値すなわち血液内のグルコース濃度の定量を行う場合、データ解析部9にはあらかじめ測定された血液内のグルコース濃度とレーザー光の吸光度との検量線が記憶されていて、データ解析部9は、この検量線に基づいて生体BLの血液内のグルコース濃度の定量を行う。
【0012】
このような従来の生体情報測定装置に関連する先行技術文献として下記の特許文献1がある。そして、生体情報の指の測定部位に関連する先行技術文献として下記の特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−301944号公報
【特許文献2】特開2005−296635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、このような従来の生体情報測定装置によれば、共焦点光学系の光源として用いるレーザー1は連続駆動されていることから、比較的長時間の連続測定を行ったり、検出信号のSN比を向上させるためにレーザー1の出力光量を増大させると生体BLの測定部位の温度が高くなってしまい、測定部位の測定対象成分が変質したり、測定部位を損傷してしまうおそれがある。
【0015】
また、従来の装置では、測定部位については「載置台上に腕等の生体が載置される」と記載されているのみであり、腕のどの部分が適切なのかなどの具体的な部位特定はしていない。
【0016】
このため、測定によっては必ずしも適切な特定の測定部位が選択されない可能性があるとともに、測定部位が異なることにより、共通の測定条件に基づく測定結果が得られないおそれがある。
【0017】
また、被験者から採血して血液内のグルコース濃度を測定するとともに、同時にレーザー1を調整してその被験者に固有の検量線データを入手し、CPUは検量線に基づいて生体BLの生体成分の定量を行うことが記載されているが、被験者を特定することについては記載されていない。
【0018】
この場合には、被験者ごとに検量線データや測定データを保存管理するために、これらの測定を行う前に被験者を特定するための情報を別途入手して入力しておき、測定時に被験者の特定情報に基づいて被験者当人であることを確認しなければならず、測定作業者にかなりの負担を強いることになる。
【0019】
さらに、共焦点光学系のピンホール6を通過して受光素子7に入射される反射光はそのほとんどが焦点位置Fで特定される内部組織の位置における反射光であるが、それ以外の散乱光は生体BLの測定部位周辺の生体情報を含むにもかかわらずピンホール6を通過できないことから処理されることなくそのまま放置されており、生体情報測定におけるレーザー1の出力光の利用効率は必ずしも高くはないといえる。
【0020】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、その目的は、被験者を自動的に特定でき、適切な特定の測定部位が選択された共通の測定条件で必要に応じて比較的長時間の連続測定を高いSN比で行うことができ、レーザー出力光の利用効率も改善できる生体情報測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
レーザーを光源とする共焦点光学系を用いた生体情報測定装置において、
前記レーザーからパルス光が出力されるように交流駆動するレーザー駆動手段が設けられたことを特徴とする。
【0022】
請求項2は、請求項1記載の生体情報測定装置において、
前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の皮膚と爪を識別し、指の爪上皮から第1間接までの皮膚部分を測定部位として指示するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項3は、請求項1または請求項2記載の生体情報測定装置において、
前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の静脈パターンを識別して被験者を特定することを特徴とする。
【0024】
請求項4は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体情報測定装置において、
前記共焦点光学系の共焦点位置の反射光を受光する受光素子とその周辺の反射光を受光する受光素子を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
このように構成することにより、被験者を自動的に特定でき、適切な特定の測定部位が選択された共通の測定条件で必要に応じて比較的長時間の連続測定を高いSN比で行うことができ、レーザー出力光の利用効率も改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】レーザー出力光のパターン図である。
【図2】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図3】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図4】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図5】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図6】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図7】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図8】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図9】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図10】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図11】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図12】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図13】図12で用いる受光素子7の具体例を示す構成説明図である。
【図14】図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図である。
【図15】図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図である。
【図16】図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図である。
【図17】本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。
【図18】図17で用いる受光素子21の具体例を示す構成説明図である。
【図19】従来の生体情報測定装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は図19に示すような共焦点光学系を構成するレーザーダイオード1の出力光のパターン図であって、(A)は従来のパターンを示し、(B)〜(D)は本発明の一実施例のパターンを示している。
【0028】
従来の構成におけるレーザーダイオード1は、前述のように、(A)に示すような連続発光状態で駆動されていた。これに対し、本発明では、(B)〜(D)に示すようなパルス発光状態になるように交流駆動される。すなわち、(B)の例では幅の狭い突起状パルス光を出力するように駆動され、(C)の例ではデューティ50%の矩形パルス光を出力するように駆動され、(D)の例では正負が半円状で繰り返す交流パルス光を出力するように駆動される。
【0029】
レーザーダイオード1を(B)〜(D)に示すようなパルス発光状態になるように交流駆動することにより、長時間の連続測定を行ったり、検出信号のSN比を向上させるためにレーザー1の出力光量を増大させても、(A)に示すような連続発光状態の駆動に比べて生体BLの測定部位に与えられるエネルギーの増加量は大幅に減少する。すなわち、(C)および(D)の駆動例では最大で(A)の場合の1/2に減少し、(B)の駆動例では(A)の場合の1/10以上に減少する。
【0030】
このように、レーザーダイオード1を(B)〜(D)に示すようなパルス発光状態になるように交流駆動することにより、長時間の連続測定を行ったり、検出信号のSN比を向上させるためにレーザー1の出力光量を増大させても、生体BLの測定部位の測定対象成分を変質させたり、測定部位を損傷することはなく、安定した測定動作を行う生体情報測定装置が実現できる。
【0031】
本発明に基づくレーザーダイオード1の交流駆動は、図19のように構成される生体情報測定装置のみに実施できるものではなく、以下に示す各種の構成の生体情報測定装置にも実施できるものである。
【0032】
図2の生体情報測定装置は、レーザー1の出力光を平行光に整形することなく対物レンズ4で集光して測定対象としての生体BLの内部組織に照射するように構成されている。
【0033】
図2において、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光は、レーザーダイオード1の光軸に対してほぼ45°の傾斜を有する状態で配置されたハーフミラー3に入射される。なお、レーザーダイオード1としては、たとえばグルコースの吸収が比較的大きい1500nm〜1700nmの波長領域のレーザー光を出力できる可変波長レーザーを用いる。1個のレーザーダイオードで1500nm〜1700nmの波長領域のレーザー光を出力できない場合には、複数のレーザーダイオードを組み合わせて用いればよい。ハーフミラー3を透過したレーザー光は、対物レンズ4で集光されて生体BLの内部組織に照射される。これらレーザーダイオード1とハーフミラー3と対物レンズ4は、生体BLの内部組織を照射する照射系を構成するものであり、これらの光軸が生体BLと正対するように配置されている。
【0034】
生体BLの内部組織で反射されたレーザー光は、再び対物レンズ4を介してハーフミラー3に入射され、ほぼ90°の方向に反射するように光路変換される。ハーフミラー3で反射されて光路変換されたレーザー光は、レンズを介することなく直接ピンホール6に入射される。ピンホール6を通過したレーザー光は、受光素子7に入射されて電気信号に変換される。
【0035】
受光素子7は、受光したレーザー光の光量に応じて強さや大きさが増減する電気信号に変換し、A/D変換器8に入力する。A/D変換器8は、受光素子7から入力される電気信号をデジタルデータに変換し、データ解析部9に入力する。これらピンホール6と受光素子7は受光系を構成するものであり、その光軸が照射系の光軸と直交する方向に配置されている。なお、これらレーザーダイオード1と対物レンズ4とピンホール6と受光素子7は、共焦点光学系を構成している。
【0036】
データ解析部9は、波長の異なる2波長以上の各レーザー光が生体BLに照射されたときに受光素子7から変換出力される複数の電気信号に基づいて生体BLの成分の定量解析を行う。
【0037】
このように構成することにより、図19の装置におけるレンズ2と5が不要になり、図19に比べて光学部品間の光軸合わせなど、組立調整を簡略化できる。
【0038】
また、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光を平行光に整形することなく対物レンズ4で集光して生体内における測定位置に照射するので、生体BL内における所望の測定位置の測定データを的確に取り込むことができる。
【0039】
図3は、本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。図3の生体情報測定装置は、レーザーダイオード1から出力されるレーザー光の光束を、平凸レンズ10で拡大したものである。これにより、図2よりも光路長を短くでき、光路長を短くできる分だけ小型化が図れる。
【0040】
図4も、本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。図4の実施例は、生体BLと正対するようにピンホール6と受光素子7よりなる受光系を配置し、この受光系の光軸と直交する方向にレーザーダイオード1を配置したものである。これにより、図2と同様な成分測定が行える。
【0041】
なお、図4の構成においても、図3と同様な平凸レンズ10を、レーザーダイオード1の前面および受光素子7側のピンホール6とハーフミラー3との間に設けることによりレーザー光の光束を拡大できて光路長を短くでき、装置の小型化が図れる。
【0042】
図5も、本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。図5の生体情報測定装置では、対物レンズ4は光軸Aの方向に沿って移動可能に構成されている。これにより、生体BL内での結像位置を深さ方向に移動させることができる。
【0043】
なお、対物レンズ4の移動に合わせて、ピンホール6を光軸Bの方向に沿って移動させ、受光素子7を光軸Cの方向に沿って移動させるようにしてもよい。
【0044】
また、図5の構成において、これら照射系と受光系で構成される生体情報測定装置と生体BLを、相対的にX軸およびY軸方向に移動させる機構を組み込むことにより、生体BL内の3次元情報を得ることができる。
【0045】
また、図5の生体情報測定装置では対物レンズ4を光軸Aの方向に沿って移動可能に構成しているが、対物レンズ4は固定としてレーザーダイオード1を光軸Dの方向に沿って移動可能とし、ピンホール6と受光素子7をレーザーダイオード1の移動と同期してそれぞれの光軸方向B、Cに移動させるようにしてもよい。
【0046】
図6も、本発明を実施できる他の生体情報測定装置を示す構成図である。図6の生体情報測定装置では、図3のように構成された生体情報測定装置をユニットとして構成し、これら複数n個のユニットをアレイ化して一体化したものである。各測定ユニットをアレイ構造にすることにより、それぞれ異なる波長で生体BL内の異なる焦点位置の信号を一括で取得できる。なお、各受光素子7の出力信号はマルチプレクサ11を介して共通のA/D変換器8に入力されてデジタルデータに変換されるが、より高速処理が必要な場合には受光素子それぞれに専用のA/D変換器を設けてもよい。
【0047】
上記各生体情報測定装置において、レーザーダイオード1から測定対象に照射される光強度を所定の値に維持するように、レーザーダイオード1を自動出力制御ループで駆動することにより、安定した測定が行える。
【0048】
図7は、このような構成を前述図2の生体情報測定装置に適用した例を示す構成図である。図7の生体情報測定装置では、レーザーダイオード1の出力光の一部を光ファイバ12を介して測定対象である生体BLの表面に照射させてその反射光を第2の受光素子13で検出し、この第2の受光素子13の出力信号をレーザーダイオード駆動回路14に与えてレーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0049】
これにより、レーザーダイオード1の温度変化および空間強度変動に起因する出力光強度変化を抑制でき、安定した成分測定結果が得られる。
【0050】
また、第2の受光素子13の出力信号をA/D変換器15を介してデータ解析部9に加え、第1の受光素子7の出力信号を第2の受光素子13の出力信号で除算して規格化することにより、レーザーダイオード1の出力変動分や測定対象LBの表面反射による変動分を補償できる。
【0051】
図8は、図7のレーザーダイオード1として、その出力光をモニタする図示しない第3の受光素子が内蔵されたものを用いた生体情報測定装置を示す構成図である。第3の受光素子の出力信号もレーザーダイオード駆動回路14に入力され、レーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0052】
また、第3の受光素子の出力信号もA/D変換器16を介してデータ解析部9に入力され、第1の受光素子7の出力信号を第3の受光素子の出力信号で除算して規格化する。これにより、データ解析部9は、2つの規格化信号を線形結合して多変量解析により結合係数を求め、これらの値に基づきレーザーダイオード1の出力変動分や測定対象LBの表面反射による変動分を高精度に補償する。
【0053】
図9は、図8の実施例に、さらにハーフミラー3で反射された反射光を検出する第4の受光素子17と、この第4の受光素子17の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器18を追加したものである。第4の受光素子17は、レーザーダイオード1の出力光の空間変動分を検出する。第4の受光素子17の出力信号もレーザーダイオード駆動回路14に入力され、レーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。
【0054】
また、第4の受光素子17の出力信号もA/D変換器18を介してデータ解析部9に入力され、第1の受光素子7の出力信号を第4の受光素子17の出力信号で除算して規格化する。これにより、データ解析部9は、3つの規格化信号を線形結合して多変量解析により結合係数を求め、これらの値に基づきレーザーダイオード1の出力変動分と空間変動分および測定対象LBの表面反射による変動分をさらに精度よく補償する。
【0055】
図10は図9の生体情報測定装置から、光ファイバ12と第2の受光素子13およびA/D変換器15からなる信号系統を省いたものである。図10の構成によれば、レーザーダイオード駆動回路14は、第3の受光素子と第4の受光素子17の出力信号に基づいてレーザーダイオード1の出力光強度を所定の値に維持するように駆動する。そしてデータ解析部9は、第1の受光素子7の出力信号を第3の受光素子の出力信号で除算した規格化信号と第1の受光素子7の出力信号を第4の受光素子17の出力信号で除算した規格化信号に基づき、レーザーダイオード1の出力変動分および空間変動分を精度よく補償する。
【0056】
なお、図9および図10の生体情報測定装置ではレーザーダイオード1としてその出力光をモニタする第3の受光素子が内蔵されたものを用いているが、装置に求められる補償精度に応じて、図6のように第3の受光素子が内蔵されていないものを用いてもよい。
【0057】
これら図7〜図10の構成は、図2に示す生体情報測定装置にのみ適用できるものではなく、図3〜図6に示す生体情報測定装置にも適用できるものである。
【0058】
上記各生体情報測定装置では、対物レンズ4として固定焦点レンズを用いる例を示したが、可変焦点レンズを用いてもよい。可変焦点レンズとしては、たとえばレンズ状に形成された空間に液晶が封入され、印加電圧を調整して見かけ上の液晶の屈折率を変化させるように構成された液晶レンズを用いることができる。液晶レンズによれば、同じレンズ形状でありながら、構成材料の屈折率が変化することにより、焦点距離が変化することになる。
【0059】
このような可変焦点レンズを対物レンズ4として用いることにより、対物レンズ4の位置を光軸方向に移動させずに可変焦点レンズに対する印加電圧を調整することで、生体BLの組織内における深さ方向の測定位置を任意に設定でき、レンズ移動機構が簡略化できる。
【0060】
上記各生体情報測定装置では、光源として可変波長レーザーを用いる例を説明したが、測定成分が特定されている場合には、単波長レーザーであってもよい。
【0061】
図11も本発明の他の実施例を示すブロック図であり、図19と共通する部分には同一の符号を付けている。図11において、生体BLは指FGであり、共焦点光学系は、指FGの爪上皮bから第1間接cまでの皮膚部分を測定部位として特定して測定する。
【0062】
一方、データ解析部9には、血糖値測定部91、測定部位判定部92、静脈パターン検出部93、静脈パターン照合部94などが設けられている。
【0063】
血糖値測定部91は、前述のように、A/D変換器8を介して出力される共焦点光学系の検出信号に基づいて、血糖値の測定を行う。
【0064】
測定部位判定部92は、A/D変換器8を介して出力される共焦点光学系の検出信号に基づいて、指FGの皮膚と爪aを識別し、指FGの爪上皮bから第1間接cまでの皮膚部分の範囲を検出すると、測定部位として適切である旨を図示しない表示部の表示メッセージやランプの表示色をたとえば赤から青に切り換えて可視化する。
【0065】
このように、共焦点光学系の検出信号に基づいて指FGの爪上皮bから第1間接cまでの皮膚部分の範囲を適切な測定部位として可視化表示することにより、別途測定部位決定手段を設けることなく血糖値測定と共通の手段を用いて適切な測定部位を決定指示することができ、血糖値測定時の測定部位のバラツキを防止できるとともに、共通の測定条件に基づく測定誤差の少ない信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0066】
静脈パターン検出部93は、A/D変換器8を介して出力される共焦点光学系の検出信号に基づいて、生体情報の一種としての指の静脈パターンを検出する。
【0067】
静脈パターン照合部94は、静脈パターン検出部93で検出した指FGの静脈パターンをあらかじめ静脈パターン登録部95に登録されている既知の被験者の指FGの静脈パターンと照合する。そして、静脈パターンが合致した場合には登録されているデータに基づいて被験者を特定し、合致する静脈パターンデータがない場合には以降の照合に備えて被験者の氏名や生年月日や性別などの個人データとともに静脈パターン登録部95に新規登録する。
【0068】
このように、共焦点光学系の検出信号に基づいて指FGの静脈パターンを検出照合して被験者を特定することにより、別途被験者特定手段を設けることなく血糖値測定と共通の手段を用いて被験者を自動的に特定することができる。
この結果、血糖値の測定データを被験者別に自動的に保存管理することができ、必要に応じて血糖値測定時に被験者に固有の検量線データに基づく高精度の補正を行うことができる。
【0069】
図12も本発明の他の実施例を示すブロック図であり、図19と共通する部分には同一の符号を付けている。図19の装置と図12の装置の相違点は、受光素子7の構造を工夫してピンホール6を省略していることと、受光素子7の出力信号をマルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力していることにある。
【0070】
図12において、ハーフミラー3を透過した平行光は、対物レンズ4により集光されて生体LBの内部組織に照射される。生体LBの内部組織で反射されたレーザー光は、再び対物レンズ4に入射されて平行光に整形され、ハーフミラー3に入射されてほぼ90°の方向に反射するように光路変換される。
【0071】
ハーフミラー3で光路変換されて反射されたレーザー光は、レンズ5により集光され、複数の受光体よりなる受光素子7に入射されて電気信号に変換される。
【0072】
受光素子7は、受光したレーザー光の光量に応じて強さや大きさが増減する電気信号に変換し、複数の受光体の出力信号をマルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力する。A/D変換器8は、受光素子7の複数の受光体から入力される電気信号をデジタルデータに変換し、データ解析部9に入力する。
【0073】
データ解析部9は、波長の異なる2波長以上の各レーザー光が生体LBに照射されたときに受光素子7の各受光体から変換出力される複数の電気信号に基づいて生体LBの成分の定量解析を行う。
【0074】
図12のように構成することにより、図19の構成に比べて光学部品間の光軸合わせなど、組立調整を簡略化できる。
【0075】
図13は、図12で用いる受光素子7の具体例を示す構成説明図であり、(A)は斜視図、(B)〜(D)はそれぞれ(A)のA−A’線に沿った断面図である。
【0076】
図13において、受光素子7の受光面には、(A)に示すように、同心円状に複数の受光体が設けられている。ここで、本実施例では4個の受光体PD1〜PD4が設けられた例を示しているが、同心円状の受光体パターンの個数およびピッチはこの実施例に限るものではなく、半導体製造プロセスや装置に要求される解析処理能力などを勘案して適切な仕様が選定される。
【0077】
(A)に示す受光素子7の断面形態としては、(B)に示すように基板上にN型拡散層とP型拡散層が積層された受光体パターンが物理的に同心円状に分離されたもの、(C)に示すように基板上の全面に形成されたN型拡散層上にP型拡散層が同心円状に積層されて受光体パターンとして形成されたもの、(D)に示すようにN型拡散基板の表面近傍にP型拡散層が同心円状に形成されたものなどが考えられる。
【0078】
図13のように、同心円状に複数の受光体PD1〜PD4が設けられた受光素子7を用いることにより、受光素子7の各受光体PD1〜PD4はレンズ5により集光された結像パターンに応じた光量を検出する。
【0079】
すなわち、図13に示すような受光素子7を用いることにより、受光素子7が共焦点結像位置になくても、同心円状の各受光体PD1〜PD4の信号強度を測定して信号強度が大きい受光体PD1の信号を積算することで、目的とする対物レンズ4の焦点位置からの散乱信号のみを検出できる。
【0080】
なお、共焦点位置以外の散乱信号は、信号が大きく取れている受光体PD1よりさらに外周に位置する受光体PD2〜PD4の信号として得られ、これらは皮膚の表面情報や指の静脈パターンなどの生体情報の検出に活用できる。
【0081】
図14は、図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図であり、(A)は斜視図、(B)〜(D)はそれぞれ(A)のB−B’線に沿った断面図である。
【0082】
図14において、受光素子7の受光面には、(A)に示すように、全面にわたってマトリクス状に複数の受光体が設けられている。
【0083】
(A)に示す受光素子7の断面形態としては、(B)に示すように基板上に形成されたN型拡散層とP型拡散層の積層パターンがマトリクス状に設けられたもの、(C)に示すように基板上の全面に形成されたN型拡散層上にP型拡散層パターンがマトリクス状に設けられたもの、(D)に示すようにN型拡散基板の表面近傍にP型拡散層がマトリクス状に設けられたものなどが考えられる。
【0084】
図14に示すような受光素子7を用いることにより、受光素子7が共焦点結像位置になくてさらに光学系に収差があっても、検出信号の大きい受光体の信号を選択して積算することで、目的とする対物レンズ4の焦点位置からの散乱信号のみを検出できる。そして、共焦点位置以外の散乱信号は、検出信号が大きく取れている受光体以外の受光体の信号として得られ、これらも皮膚の表面情報や指の静脈パターンなどの生体情報の検出に活用できる。
【0085】
図15も、図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図であり、図14における受光体の縦方向の配列パターンを横方向に1/2ピッチずつずらしたものである。このように配列された受光素子7を用いることにより、図14の場合には隣接する受光体間に規則的な格子状のマトリクスパターンとして存在する光信号検出に対する不感帯の影響を分散軽減できる。
【0086】
図16も、図12で用いる受光素子7の他の具体例を示す構成説明図であり、中心領域の受光体PD1とその外周領域の受光体PD2とが電気的に分離するように設けられている。
【0087】
図16(A)に示す受光素子7の断面形態としては、(B)に示すように基板上にN型拡散層とP型拡散層が積層された受光体パターンが物理的に分離されたもの、(C)に示すように基板上の全面に形成されたN型拡散層上にP型拡散層が物理的に分離されたもの、(D)に示すようにN型拡散基板の表面近傍にP型拡散層が分離して形成されたものなどが考えられる。
【0088】
図16のように、中心領域の受光体PD1とその外周領域の受光体PD2とが電気的に分離するように設けられた受光素子7を用いることにより、受光素子7の各受光体PD1、PD2はレンズ5により集光された結像パターンに応じた光量を検出する。
【0089】
すなわち、図16に示すような受光素子7を用いることにより、中心領域の受光体PD1は対物レンズ4の焦点位置からの散乱光のみを受光でき、その外周領域の受光体PD2は対物レンズ4の焦点位置以外から散乱された光を受光できる。
【0090】
図17も本発明の他の実施例を示すブロック図であり、図19と共通する部分には同一の符号を付けている。図19の装置と図17の装置の相違点は、共焦点光学系を構成するレーザーダイオード1とコリメートレンズ2とハーフミラー3と対物レンズ4を筒状に形成されたハウジング20に組み込み一体化し、ハウジング20の他端を生体BLの表面の測定部位に接触させるように構成していることである。
【0091】
ハウジング20の一端にはレーザーダイオード1が取り付けられ、生体BLの表面の測定部位に接触するハウジング20の他端には図18に示すような円板状に形成された受光素子21が取り付けられている。そして、ハウジング20の側面にはハーフミラー3で光路変換されて反射されたレーザー光をレンズ5に出射するための窓部22が設けられている。
【0092】
図18において、(A)の受光素子21の中央部には生体BL内の焦点位置からの反射光を通過させるための開口部が設けられ、その開口部を中心とする円周方向には生体BLの内部組織で散乱されたレーザー光を検出するための8個の受光体PDが等角度間隔で設けられている。(B)の受光素子21の中央部には生体BL内の焦点位置からの反射光を通過させるための開口部が設けられ、その開口部を中心とする全面には生体BLの内部組織で散乱されたレーザー光を検出するためのPDが設けられている。
【0093】
図17の構成において、レーザーダイオード1から出力された光は、レンズ2でコリメートされた後、ハーフミラー3と対物レンズ4を通って生体BLに到達する。生体BL内で散乱反射された光は、再び対物レンズ4とハーフミラー3を通り、レンズ5で集光された後、ピンホール6を通り、受光素子7に入射される。なお、このピンホール6は場合によっては省略できる。受光素子7の出力信号は、マルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力される。A/D変換器8の出力データはデータ解析部9に入力されて所定の信号処理が実行される。
【0094】
受光素子21が図18(A)の場合、対物レンズ4から出射されるレーザー光は受光素子21の開口部を通って生体BL内に入射され、焦点を結ぶ。開口部の外周に設けられている8個の受光体PDは、生体BLの内部で散乱されるほぼすべての光を受光する。これら受光体PDの出力信号はマルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力されてデジタル信号に変換され、A/D変換器8の出力データはデータ解析部9に入力されて所定の信号処理が実行される。
【0095】
受光素子21が図18(B)の場合、生体BLの表面の測定部位に接触するハウジング20の端面は中心部に穴のあいた大口径の受光体PDとなる。受光素子21の中央の開口部から出射されたレーザー光は生体BL内に入射され、焦点を結ぶ。大口径の受光体PDは、生体BLの内部で散乱されるほぼすべての光を受光する。受光体PDの出力信号はマルチプレクサ19を介してA/D変換器8に入力されてデジタル信号に変換され、A/D変換器8の出力データはデータ解析部9に入力されて所定の信号処理が実行される。
【0096】
なお、図17では示していないが、共焦点光学系にx、y軸方向にスキャンできる機構を設けることにより、生体BL内の3次元情報を得ることができる。
【0097】
また、共焦点光学系をz軸方向に可変できるように構成することにより、同じ光学系を用いて異なる波長(たとえば目的物質の吸収波長と吸収の少ない波長)で散乱反射光を測定し、グルコース吸収の検量線に基づく血糖値測定が行える。
【0098】
上記各生体情報測定装置では、人体の血液中の血糖値を測定する例について説明したが、血糖値以外の血液成分や組織液成分の定量測定にも有効である。
【0099】
また、測定対象は人体に限るものではなく、動物や植物などの内部物質の定量測定にも有効である。
【0100】
また、測定対象は生体に限るものではなく、農産物、水産物、食品、有機材料などの構造、組成の非破壊検査、化学物質の定量測定にも有効である。
【0101】
以上説明したように、本発明によれば、組立調整が比較的容易で、測定対象における所望の測定位置の測定データを的確に取り込むことができる生体情報測定装置を実現することができ、人体の血液中の血糖値をはじめとする各種の成分測定に好適である。
【符号の説明】
【0102】
1 レーザーダイオード
2 コリメートレンズ
3 ハーフミラー
4 対物レンズ
5 レンズ
6 ピンホール
7、21 受光素子
8 A/D変換器
9 データ解析部
91 血糖値測定部
92 測定部位判定部
93 静脈パターン検出部
94 静脈パターン照合部
95 静脈パターン登録部
10 平凸レンズ
11、19 マルチプレクサ
12 光ファイバ
14 レーザーダイオード駆動回路
20 ハウジング
22 窓部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーを光源とする共焦点光学系を用いた生体情報測定装置において、
前記レーザーからパルス光が出力されるように交流駆動するレーザー駆動手段が設けられたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の皮膚と爪を識別し、指の爪上皮から第1間接までの皮膚部分を測定部位として指示するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の静脈パターンを識別して被験者を特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記共焦点光学系の共焦点位置の反射光を受光する受光素子とその周辺の反射光を受光する受光素子を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体情報測定装置。
【請求項1】
レーザーを光源とする共焦点光学系を用いた生体情報測定装置において、
前記レーザーからパルス光が出力されるように交流駆動するレーザー駆動手段が設けられたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の皮膚と爪を識別し、指の爪上皮から第1間接までの皮膚部分を測定部位として指示するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記共焦点光学系の検出信号に基づき指の静脈パターンを識別して被験者を特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記共焦点光学系の共焦点位置の反射光を受光する受光素子とその周辺の反射光を受光する受光素子を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体情報測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−55454(P2012−55454A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200535(P2010−200535)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
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