説明

生体情報計測装置及びその校正方法

【課題】 光源に供給する出力の校正を簡便に行うことができる生体情報計測装置及びそ
の校正方法を提供する。
【解決手段】 光源部21を発光させる出力を設定する電源部1と、電源部1により第1
の出力が供給された光源部21からの校正光を検出して第1の検出データを生成する第1
検出部24と、前記第1の出力を独立変数とし、前記第1の検出データを従属変数とする
関数の最大の傾きを有する直線領域に対応する出力範囲を算出するデータ処理部32と、
前記出力範囲内に設定された第2の出力が供給された光源部21からの測定光を被検体P
に照射し、受光した測定光を検出して第2の検出データを生成する第2検出部25とを備
え、データ処理部32は、第1検出部24で光源部21からの測定光を検出して生成した
参照データ及び前記第2の検出データに基づいて、生体データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康管理、疾病の診断や治療、美容などのために、血液、生体組織細胞内外
の体液中の物質濃度や生体組織の光物性情報などを光学的に測定する生体情報計測装置及
びその校正方法に係り、特に可視光、近赤外光、中間赤外光などを用いて、生体内の血中
成分濃度、ガス濃度、生体組織の物性情報等に関する生体情報を非侵襲的に測定する生体
情報計測装置及びその校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内に存在する物質の成分や濃度を測定するための代表的な装置としては、血液中
のグルコース濃度(血糖値)を測定する血糖計がある。現在、広く用いられている血糖計
は、被検体の指や腕などの部位に針を刺して採取した少量の血液などの被検試料を利用す
るもので、この被検試料のグルコースを化学反応させてその濃度を測定する。
【0003】
そして、標準的なグルコース濃度の計測法の1つに、酵素センサを用いた方法がある。
グルコース検知に使用される酵素としては、例えばグルコースオキシダーゼ(GOD)が
ある。この酵素を高分子膜などに固定化しておき、被検体物質中のグルコースがそのGO
D固定化膜に接触することによって酸素が消費され、この酸素の変化を捕らえることでグ
ルコース濃度を測定することができる。このような採血式の血糖計は、携帯可能な大きさ
であり、糖尿病患者の血糖値の管理に利用されている。
【0004】
しかしながら、上記方法では採血のために指や腕などに針を刺す必要があり、被検体の
皮膚を損傷すると共に苦痛を伴う。糖尿病患者の血糖値を厳密に管理するためには、一日
に5、6回以上の測定が望ましいにもかかわらず、被検体への負荷を考慮して現状では一
日に2、3回程度の測定回数に留まっている。
一方、グルコース等の被検体内に存在する物質の成分や濃度を、採血や細胞間質液の抽
出によらず非侵襲的に測定する生体情報計測装置が知られている(例えば、特許文献1参
照。)。この生体情報計測装置は、被検体の皮膚表面などに半導体レーザからの異なる複
数の波長の近赤外光を照射し、被検体内を拡散、透過、若しくは反射した光を検出して生
成された検出データを演算処理することにより、被検体内に存在する物質の濃度等を測定
するものである。
【特許文献1】特開平11−128176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光源が半導体レーザなどの場合、光出力−電流特性が光源毎に異なるの
で、装置への装着毎に光源の光出力特性に合わせて光源に供給する出力の校正を行う必要
があるため、その校正作業に手間が掛かる問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、光源に供給する出力の校正を
簡便に行うことができる生体情報計測装置及びその校正方法を提供することを目的とする

【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に係る本発明の生体情報計測装置は、被検体に光
源からの光を照射し、前記被検体内を拡散、透過、若しくは反射した光を検出して前記被
検体に関する生体情報を非侵襲的に計測する生体情報計測装置において、前記光源を発光
させるための出力を設定する出力設定手段と、前記出力設定手段により設定された複数の
第1の出力が供給される前記光源からの校正光を検出して第1の検出データを生成する第
1検出手段と、前記出力設定手段により設定された第1の出力及び前記第1検出手段によ
り生成された第1の検出データからデータ伝送に有効な直線領域に対応する第1の出力の
出力範囲を算出するデータ処理手段と、前記データ処理手段により算出された前記出力範
囲内に設定された第2の出力が供給される前記光源からの測定光を前記被検体に照射し、
前記被検体内を拡散、透過、若しくは反射した光を検出して第2の検出データを生成する
第2検出手段とを備え、前記データ処理手段は、前記第1検出手段により前記光源からの
測定光を検出して生成された参照データ、及び前記第2検出手段により生成された第2の
検出データに基づいて、前記被検体の生体情報である生体データを生成するようにしたこ
とを特徴とする。
【0008】
また、請求項5に係る本発明の生体情報計測装置の校正方法は、被検体に光源からの光
を照射し、前記被検体内を拡散、透過、若しくは反射した光を検出して前記被検体に関す
る生体情報を非侵襲的に計測する生体情報計測装置の校正方法において、前記光源を発光
させるための出力を出力設定手段により設定し、前記出力設定手段により設定された複数
の第1の出力が供給される前記光源からの校正光を検出して第1の検出データを第1検出
手段により生成し、前記出力設定手段により設定された第1の出力及び前記第1検出手段
により生成された第1の検出データからデータ伝送に有効な直線領域に対応する第1の出
力の出力範囲をデータ処理手段により算出し、前記データ処理手段により算出された前記
出力範囲内に設定された第2の出力が供給される前記光源からの測定光を被検体に照射し
、前記被検体内を拡散、透過、もしくは反射した光を検出して第2の検出データを第2検
出手段により生成し、前記第1検出手段により前記光源からの測定光を検出して生成され
た参照データ、及び前記第2検出手段により生成された第2の検出データに基づいて、前
記被検体の生体情報である生体データを前記データ処理手段により生成することを特徴と
する。
【0009】
更に、請求項6に係る本発明の生体情報計測装置は、被検体に光を照射し、前記被検体
内を拡散、透過、若しくは反射した光を検出して前記被検体に関する生体情報を非侵襲的
に計測する生体情報計測装置において、前記光源を発光させるための出力を設定する出力
設定手段と、前記出力設定手段により設定された複数の第1の出力が供給される前記光源
からの校正光を検出して第1の検出データを生成する第1検出手段と、前記出力設定手段
により設定された第1の出力及び前記第1検出手段により生成された第1の検出データか
らデータ伝送に有効な直線領域に対応する第1の出力の出力範囲を算出するデータ処理手
段と、前記データ処理手段により算出された前記出力範囲の情報に基づいて、前記出力設
定手段からの出力を所定の周波数に変調し、変調した出力の振幅が前記出力範囲内に設定
された第2の出力が供給される前記光源からの測定光を前記被検体に照射して検出した光
から第2の検出データを生成する第2検出手段とを備え、前記データ処理手段は、前記第
1検出手段により前記光源からの測定光を検出して生成された参照データ、及び前記第2
検出手段により生成された第2の検出データに基づいて、前記被検体の生体情報である生
体データを生成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、校正のために光源に供給する第1の出力を独立変数とし、第1の出力
を供給した光源からの光を検出して生成した第1の検出データを従属変数とする関数の最
大の傾きを有する直線領域に対応する第1の出力の出力範囲を算出することにより、測定
のために光源に供給する第2の出力の出力範囲を簡便に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
以下に、本発明に係る生体情報計測装置の実施例を、図1乃至図5を参照して説明する

【0013】
図1は、本発明の実施例に係る生体情報計測装置の構成を示したブロック図である。こ
の生体情報計測装置10は、電力を供給する電源部1と、電源部1からの電力の供給によ
り被検体Pに光を照射し、被検体Pから受光した光を検出して検出データを生成する光学
部2と、光学部2から出力した検出データを処理して被検体Pの体内に存在する物質の濃
度、生体組織の物性情報等の生体情報である生体データを生成する処理部3とを備えてい
る。
【0014】
また、生体情報計測装置10は、被検体Pの測定部位の温度を制御する温度制御部5と
、光学部2の一部を機械的に保持すると共に温度制御部5からの熱を被検体Pの測定部位
に伝達するインターフェース部6と、処理部3において生成された生体データを表示する
表示部7と、被検体Pの被検体情報を入力する操作、光学部2が正常範囲の光を発するた
めの校正操作、生体データを生成するための測定操作、各種コマンド信号の入力操作等の
操作を行う操作部8と、上述の各ユニットを制御する制御部9とを備えている。
【0015】
電源部1は、被検体Pに照射するN種類の波長からなる光を発光させるための出力を供
給する電源回路11と、電源回路11の出力を制御する電源制御部12とを備えている。
【0016】
電源回路11は、操作部8から校正操作が行われると、制御部9から供給される各波長
に対応する第1の出力の情報に基づいて、電源回路11からの出力である所定範囲の順電
圧を例えば均等に分割した複数の第1の出力に設定し、設定した各波長に対応する第1の
出力を電源制御部12に出力する。また、操作部8から測定操作が行われると、制御部9
から供給される各波長の出力範囲の情報に基づいて、各波長に対応する順電圧を電源制御
部12に出力する。
【0017】
電源制御部12は、サイン波発生回路121及び加算回路122を備えている。そして
、操作部8から校正操作が行われると、制御部9から供給される各波長に対応する第1の
出力を光学部2に供給する。
【0018】
また、操作部8から測定操作が行われると、制御部9から供給される各波長の出力範囲
の情報に基づいて、電源回路11からの各波長に対応する順電圧である第2の出力をサイ
ン波発生回路121で所定の周波数に変調し、変調した第2の出力の振幅をその波長の出
力範囲に応じて調節する。更に、調節した第2の出力を加算回路122で加算して出力範
囲内に設定して光学部2に供給する。
【0019】
光学部2は、N種類の波長からなる光を発する光源部21と、光源部21から発したN
種類の波長の光を合波する合波部22と、合波部22で合波された光を被検体Pとの間で
照射及び受光する照射・受光部23と、合波部22からの光を検出して第1の検出データ
等を生成する第1検出部24と、照射・受光部23で受光した光を検出して第2の検出デ
ータを生成する第2検出部25とを備えている。
【0020】
光源部21は、単色光あるいはそれに近い光を発生させる半導体レーザや発光ダイオー
ド等のN種類(N≧1)の波長に対応したN個の発光素子21a(21a1乃至21aN
)で構成される。
【0021】
そして、各発光素子21aは、操作部8からの各波長に対応した校正操作により電源部
1から供給される各第1の出力に応じて電流が流れたときに光(校正光)を発する。また
、操作部8からの測定操作により電源部1から供給される各波長に対応した第2の出力に
応じた周波数の光(測定光)を発する。
【0022】
なお、グルコース濃度は、400nm〜2500nmの領域における複数の波長を用い
て測定が行われ、ヘモグロビン濃度は、ヘモグロビンの濃度に依存して変化する500n
m〜1600nmの領域における複数の波長を用いて測定が行われる。
【0023】
合波部22は、ミラーを有し、光源部21の各発光素子21aからの校正光を所定の反
射率で反射し、反射した校正光を第1検出部24に出力する。また、各発光素子21aか
らの測定光を合波して同一光軸に重ね合わせた後、所定の反射率で反射した測定光(反射
測定光)を第1検出部24に出力すると共に、所定の透過率で透過した測定光(透過測定
光)を照射・受光部23に出力する。
【0024】
照射・受光部23は、合波部22から出力された透過測定光を被検体Pの測定部位に照
射し、その照射され被検体P内を拡散、透過、若しくは反射した透過測定光を受光して第
2検出部25に出力する。
【0025】
図2は、照射・受光部23の構成を示した図である。照射・受光部23は、インターフ
ェース部6に保持され、合波部22からの透過測定光を被検体Pに照射する照射用光ファ
イバ231と、被検体Pからの透過測定光を受光する受光用光ファイバ233と、照射用
光ファイバ231及び受光用ファイバ233を保持する保持部234とを備えている。そ
して、照射・受光部23の端面である照射・受光面236を被検体Pに接触させて透過測
定光の照射及び受光を行う。
【0026】
照射用光ファイバ231は、一端部が保持部234により保持され、他端部が合波部2
2に接続されている。そして、合波部22からの透過測定光を伝達して被検体Pの皮膚表
面に照射する。
【0027】
受光用光ファイバ233も、一端部が保持部234により保持され、他端部が第2検出
部25に接続されている。そして、照射用光ファイバ231から被検体Pの皮膚表面に照
射され、被検体P内の図2の斜線部で示した例えば表皮から真皮にかけて侵入し、拡散、
透過、若しくは反射した透過測定光を受光して第2検出部25へ出力する。
【0028】
保持部234は、アルミニウムなどの熱伝導性の高い材料からなり、照射用光ファイバ
231及び受光用光ファイバ233を保持する。また、保持部234は、インターフェー
ス部6を介して、加温時には温度制御部5から伝達された熱を被検体Pの測定部位に伝達
し、冷却時には被検体Pの測定部位の熱を吸収して温度制御部5へ伝達する。
【0029】
図1の第1検出部24は、合波部22から出力された校正光を例えばフォトダイオード
等の光検出素子で検出し、検出した信号を信号増幅回路で増幅する。更に、増幅した信号
をA/D変換回路でデジタル信号に変換して第1の検出データを生成し、生成した第1の
検出データを処理部3に出力する。
【0030】
また、合波部22から出力された反射測定光を前記光検出素子で検出し、検出した信号
を前記信号増幅回路で増幅する。更に、増幅した信号を前記A/D変換回路でデジタル信
号に変換して参照データを生成し、生成した参照データを処理部3に出力する。
【0031】
第2検出部25は、第1検出部24と同様の光検出素子、信号増幅回路、及びA/D変
換回路を有し、照射・受光部23の受光用光ファイバ233からの透過測定光を光検出素
子で検出し、検出した信号を増幅する。更に、増幅した信号をデジタル信号に変換して第
2の検出データを生成し、生成した第2の検出データを処理部3に出力する。
【0032】
処理部3は、光学部2の第1検出部24から出力された第1の検出データや、第1検出
部24から出力された参照データ及び光学部2の第2検出部25から出力された第2の検
出データを収集するデータ収集部31と、データ収集部31で収集された第1の検出デー
タや、参照データ及び第2の検出データを処理して出力範囲の算出や生体データの生成を
行うデータ処理部32と、データ処理部32で生成された生体データを保存するデータ記
憶部33とを備えている。
【0033】
データ収集部31は、操作部8からの校正操作により第1検出部24から出力された第
1の検出データを収集してデータ処理部32に出力する。
【0034】
また、操作部8からの測定操作により第1及び第2検出部24,25から出力された参
照データ及び第2の検出データを、例えばフーリエ変換により光学部2の光源部21にお
ける各発光素子21aの波長に対応した周波数の参照データ及び第2の検出データを抽出
し、抽出した各参照データ及び第2の検出データを収集してデータ処理部32に出力する

【0035】
データ処理部32は、制御部9から供給される各第1の出力の情報、及びこの第1の出
力に対応するデータ収集部31から出力される第1の検出データに基づいて、出力範囲を
算出する。そして、算出した出力範囲の情報を制御部9に出力する。
【0036】
また、データ収集部31から出力される参照データ及びこの参照データに対応する第2
の検出データに基づいて、生体データを生成する。そして、生成した生体データをデータ
記憶部33に保存すると共に表示部7に出力する。
【0037】
なお、データ処理部32には、予め多数の被験者群から生体情報計測装置10の参照デ
ータを基準としたときの第2の検出データと、標準的な手法の測定から得られたデータと
が統計的に解析され、その統計的解析により数理モデル化された両者間の相関式の演算プ
ログラムが格納されている。そして、被検体Pの生体データは、この演算プログラムを用
いて生成される。
【0038】
温度制御部5は、被検体Pの測定部位に対して加温或いは冷却を行うペルチェ素子など
の加温・冷却部51と、測定部位近傍の温度を測定する熱伝対やサーミスタなどの温度セ
ンサ52と、温度センサ52からの検出信号に基づいて加温・冷却部51を制御する温度
制御回路53とを備えている。
【0039】
インターフェース部6は、保持部234と同様に熱伝導性の高いアルミニウム材などか
らなり、光学部2の照射・受光部23を保持すると共に、温度制御部5からの熱を伝達し
て被検体Pの測定部位を所定の温度に保つために設けられている。そして、インターフェ
ース部6に被検体Pの測定部位を接触させた状態で、照射・受光部23による透過測定光
の照射及び受光が行われる。
【0040】
表示部7は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、処理部3のデータ処理部32で
生成された生体データや、処理部3のデータ記憶部33から読み出された生体データを表
示する。
【0041】
操作部8は、操作パネル上にキーボード、マウス、タッチキーパネル、校正ボタン、測
定ボタン等の入力デバイスを備えている。そして、被検体Pの被検体情報の入力操作、校
正ボタンを押す校正操作、測定ボタンを押す測定操作などが行われる。
【0042】
制御部9は、操作部8からの入力信号に基づいて、電源部1、光学部2、処理部3、温
度制御部5などの各ユニットの制御、システム全体の制御を統括して行う。また、予め保
存されている第1の出力の情報や、処理部3のデータ処理部32から出力される出力範囲
の情報を電源部1の電源制御部12に供給する。
【0043】
以下、図1乃至図5を参照して、実施例に係る生体情報計測装置10の動作の一例を説
明する。図3は、校正操作が行われたときの生体情報計測装置10の校正動作を示したフ
ローチャートである。図4は、出力範囲を説明するための図である。図5は、測定操作が
行われたときの生体情報計測装置10の測定動作を示したフローチャートである。
【0044】
図3において、光学部2における光源部21の例えば発光素子21a1を交換した後に
、正常範囲の発光を得るために発光素子21a1に供給する電源部1からの第2の出力を
校正する操作を行う。そして、操作部8から校正操作が行われると、生体情報計測装置1
0は、校正の動作を開始する(ステップS1)。
【0045】
制御部9は、電源部1、光学部2、及び処理部3に校正動作を指示する。電源部1の電
源回路11は、制御部9から供給される発光素子21a1の波長に対応する第1の出力の
情報に基づいて、例えば0V〜PVの順電圧をM等分(M>2)に分割した(M+1)種
類の第1の出力V0,V1,・・・,V(M−1),VMに設定する。そして、第1の出
力V(k−1)(k=1)を、電源制御部12を介して発光素子21a1に供給する(ス
テップS2)。
【0046】
発光素子21a1は、電源部1から供給された第1の出力V(k−1)に応じた校正光
を発する。合波部22は、発光素子21a1からの校正光を所定の反射率で反射し、反射
した校正光を第1検出部24に出力する。第1検出部24は、合波部22から出力された
校正光を検出し、検出した信号を増幅する。そして、増幅信号をデジタル信号に変換して
第1の検出データD(k−1)を生成し、生成した第1の検出データD(k−1)を処理
部3に出力する(ステップS3)。
【0047】
処理部3のデータ収集部31は、第1検出部24から出力された第1の検出データD(
k−1)を収集してデータ処理部32に出力する。データ処理部32は、データ収集部3
1から出力された第1の検出データD(k−1)をデータ記憶部33に保存する。
【0048】
そして、kが(M+1)である場合(ステップS4のはい)、ステップS5に移行する
。また、kが(M+1)よりも小さい場合(ステップS4のいいえ)、ステップS2に戻
る。
【0049】
ステップS5の「はい」の後に、データ処理部32は、データ記憶部33に保存されて
いる第1の検出データD0乃至DMを読み出す。そして、読み出した各第1の検出データ
D0乃至DM及びこの第1の検出データに対応する第1の出力V0乃至VMに基づいて、
出力範囲を算出して制御部9に出力する(ステップS5)。
【0050】
図4(a)は、出力範囲を説明するための図である。x,y軸に表された関数y=f(
x)は、第1の出力を独立変数とし、第1の検出データを従属変数とする関数であって、
各補間関数y=S1(x)乃至y=SM(x)により構成される。各補間関数y=S1(
x)乃至y=SM(x)は、各第1の出力V0乃至VMをx座標とし、第1の検出データ
D0乃至DMをy座標とする各座標P0(V0,D0)乃至PM(VM,DM)の隣り合
う2つの座標を用いて求められる。
【0051】
そして、補間関数y=Si(x)(M≧i≧1)は、座標P(i―1)とこの座標の隣
に位置する座標Piを用いて、傾きを[{(Di−D(i−1)}/{Vi−V(i−1)}
](ai)とする一次式で表わされる。
【0052】
ここで、関数y=f(x)を所定範囲内のほぼ同じ傾きaiを有する補間関数y=Si
(x)が集合する領域で区分すると、傾きが0近傍の小さい傾きを有する第1の領域、第
1の領域から第1の領域の傾きよりも大きい傾きを有する第2の領域に変化する第1の変
化領域、第2の領域、第2の領域から第2の領域の傾きよりも小さい傾きを有する第3の
領域に変化する第2の変化領域、及び第3の領域に区分される。
【0053】
そして、第1の領域及び第1の変化領域では、第1の検出データが発光素子21a1の
光出力が0である第1の検出データD0及びその近傍になっている。これにより、発光素
子21a1はほとんど発光しておらず、発光素子21a1にはほとんど電流が流れていな
いことがわかる。測定時に発光素子21a1に供給する第2の出力の一部が第1の領域又
は第1の変化領域に含まれると、その波長に対応するデータの検出や収集が不十分となり
正しく測定できないことになる。
【0054】
また、第2の領域では、第1の出力の増大に比例して第1の検出データが上昇している
。これにより、第1の出力の増大に比例して発光素子21a1の光出力が上昇し、電流が
増大していることがわかる。
【0055】
更に、第2の変化領域及び第3の領域では、第1の出力が増大しても第1の検出データ
が頭打ちになっている。これにより、発光素子21a1は発光しているが、例えば第1検
出部24のA/D変換回路が頭打ちになり、A/D変換回路に入力した増幅信号に応じた
デジタル信号に変換できない状態になっていると推測できる。測定時に発光素子21a1
に供給する第2の出力の一部が第2の変化領域及び第3の領域に含まれると、その波長に
対応するデータ検出や収集が不十分となり正しく測定できないことになる。
【0056】
従って、第1の出力の増大に比例して第1の検出データが上昇し、データ伝送に有効な
最大の傾きを有する第2の領域に対応する第1の出力の出力範囲を、正常範囲の発光を得
るための出力範囲として算出する。
【0057】
図3に戻り、データ処理部32は、算出した出力範囲の情報を制御部9に出力する。制
御部9は、内部の記憶回路に発光素子21a1の波長に対応する出力範囲の情報を保存す
る(図3のステップSS6)。
【0058】
そして、電源部1、光学部2、及び処理部3に校正動作の停止を指示することにより、
生体情報計測装置10は校正動作を終了する(図3のステップS7)。
【0059】
図5は、測定操作が行われたときの生体情報計測装置10の測定動作を示したフローチ
ャートである。図4に示した校正操作の後に、生体情報計測装置10の操作者が操作部8
から被検体Pの被検体情報を入力することにより、生体情報計測装置10は、動作を開始
する(ステップS11)。
【0060】
そして、被検体Pの例えば指の腹面をインターフェース部6に接触させた後、被検体P
の生体情報を測定するための測定操作が操作部8から行われると、制御部9は、電源部1
、光学部2、処理部3、及び温度制御部5に測定動作を指示する。温度制御部5は、イン
ターフェース部6に熱を伝達して被検体Pの測定部位を所定の温度に保つ。
【0061】
電源部1の電源回路11は、制御部9から供給される各波長の出力範囲の情報に基づい
て、各波長に対応する第2の出力を電源制御部12に出力する。電源制御部12のサイン
波発生回路121は、制御部9から供給される各波長の出力範囲の情報に基づいて、電源
回路11からの各波長に対応する第2の出力を所定の周波数に変調し、変調した第2の出
力の振幅をその波長の出力範囲に応じて調節する。更に、調節した第2の出力を加算回路
122で加算して出力範囲内に設定する(ステップS12)。
【0062】
そして、各波長に対応した出力範囲内の第2の出力を各発光素子21aに供給する。各
発光素子21aは、電源部1から供給される各第2の出力に応じた周波数の測定光を発す
る(ステップS13)。
【0063】
合波部22は、各発光素子21aからの測定光を合波して同一光軸に重ね合わせた後、
所定の反射率で反射した反射測定光を第1検出部24に出力すると共に、所定の透過率で
透過した透過測定光を照射・受光部23に出力する。照射・受光部23は、合波部22か
ら出力された透過測定光を被検体Pの測定部位に照射し、その照射され被検体P内を拡散
、透過、若しくは反射した透過測定光を受光して第2検出部25に出力する。
【0064】
第2検出部25は、照射・受光部23の受光用光ファイバ233からの透過測定光を検
出し、その検出した信号を増幅する。そして、増幅した信号をデジタル信号に変換して第
2の検出データを生成し、その生成した第2の検出データを処理部3に出力する(ステッ
プS14)。
【0065】
第1検出部24は、合波部22から出力された反射測定光を検出し、その検出した信号
を増幅する。そして、増幅した信号をデジタル信号に変換して参照データを生成し、その
生成した参照データを処理部3に出力する(ステップS15)。
【0066】
ここで、第1検出部24で生成された参照データには、図4(a)に示した出力範囲内
の第2の出力が供給された発光素子21a1からの反射測定光の検出により生成された図
4(b)の検出データが含まれている。この検出データは、図4(a)の正常範囲内に入
り、発光素子21a1に供給された第2の出力の周波数に対応している。
【0067】
処理部3のデータ収集部31は、第1及び第2検出部24,25から出力された参照デ
ータ及び第2の検出データをフーリエ変換により各波長に対応した周波数の参照データ及
び第2の検出データを抽出し、その抽出した各参照データ及び第2の検出データを収集し
てデータ処理部32に出力する(ステップS16)。
【0068】
データ処理部32は、データ収集部31から出力された参照データ及びこの参照データ
に対応する第2の検出データに基づいて、被検体Pの生体データを生成し、その生成した
生体データをデータ記憶部33に保存すると共に表示部7に出力する(ステップS17)

【0069】
表示部7に、生体データが表示された時点で、制御部9は、電源部1、光学部2、処理
部3、及び温度制御部5に測定動作の停止を指示する。そして、生体情報計測装置10は
、測定動作を終了する(ステップS18)。
【0070】
以上述べた本発明の実施例によれば、校正ボタンを押す校正操作により、複数の第1の
出力が供給された各発光素子21aからの校正光を検出して第1の検出データを生成し、
第1の出力を独立変数とし、生成した第1の検出データを従属変数とする関数のデータ伝
送に有効な最大の傾きを有する直線領域に対応する第1の出力の出力範囲を算出すること
ができる。
【0071】
そして、算出した出力範囲内に設定した第2の出力が供給された各発光素子21aから
の透過測定光を被検体Pに照射し、その照射され被検体P内を拡散、透過、若しくは反射
した透過測定光を検出して生成した第2の検出データ、及び各発光素子21aからの反射
測定光を検出して生成した参照データに基づいて、被検体Pの生体情報である生体データ
を生成することができる。
【0072】
これにより、簡単な操作で、正常範囲で各発光素子21aを発光させるための出力の校
正を行うことができ、この校正により精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例に係る生体情報計測装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る照射・受光部の構成を示す図。
【図3】本発明の実施例に係る生体情報計測装置の校正動作を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施例に係る出力範囲を説明するための図。
【図5】本発明の実施例に係る生体情報計測装置の測定動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0074】
P 被検体
1 電源部
2 光学部
3 処理部
5 温度制御部
6 インターフェース部
7 表示部
8 操作部
9 制御部
10 生体情報計測装置
11 電源回路
12 電源制御部
21 光源部
21a,21a1乃至21aN 発光素子
22 合波部
23 照射・受光部
24 第1検出部
25 第2検出部
31 データ収集部
32 データ処理部
33 データ記憶部
51 加温・冷却部
52 温度センサ
53 温度制御回路
121 サイン波発生回路
122 加算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に光源からの光を照射し、前記被検体内を拡散、透過、若しくは反射した光を検
出して前記被検体に関する生体情報を非侵襲的に計測する生体情報計測装置において、
前記光源を発光させるための出力を設定する出力設定手段と、
前記出力設定手段により設定された複数の第1の出力が供給される前記光源からの校正光
を検出して第1の検出データを生成する第1検出手段と、
前記出力設定手段により設定された第1の出力及び前記第1検出手段により生成された第
1の検出データからデータ伝送に有効な直線領域に対応する第1の出力の出力範囲を算出
するデータ処理手段と、
前記データ処理手段により算出された前記出力範囲内に設定された第2の出力が供給され
る前記光源からの測定光を前記被検体に照射し、前記被検体内を拡散、透過、若しくは反
射した光を検出して第2の検出データを生成する第2検出手段とを備え、
前記データ処理手段は、前記第1検出手段により前記光源からの測定光を検出して生成さ
れた参照データ、及び前記第2検出手段により生成された第2の検出データに基づいて、
前記被検体の生体情報である生体データを生成するようにしたことを特徴とする生体情報
計測装置。
【請求項2】
前記光源は、レーザダイオード又は発光ダイオードであることを特徴とする請求項1に
記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記生体情報は、前記被検体の体液中に含まれるグルコース濃度であって、前記グルコ
ースの定量にあたって、少なくとも400〜2500nmの領域から選択された波長の光
を用いることを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記生体情報は、前記被検体の血液中に含まれるヘモグロビン濃度であって、前記ヘモ
グロビンの定量にあたって、少なくとも500〜1600nmの領域から選択された波長
の光を用いることを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
被検体に光源からの光を照射し、前記被検体内を拡散、透過、若しくは反射した光を検
出して前記被検体に関する生体情報を非侵襲的に計測する生体情報計測装置の校正方法に
おいて、
前記光源を発光させるための出力を出力設定手段により設定し、
前記出力設定手段により設定された複数の第1の出力が供給される前記光源からの校正光
を検出して第1の検出データを第1検出手段により生成し、
前記出力設定手段により設定された第1の出力及び前記第1検出手段により生成された第
1の検出データからデータ伝送に有効な直線領域に対応する第1の出力の出力範囲をデー
タ処理手段により算出し、
前記データ処理手段により算出された前記出力範囲内に設定された第2の出力が供給され
る前記光源からの測定光を被検体に照射し、前記被検体内を拡散、透過、もしくは反射し
た光を検出して第2の検出データを第2検出手段により生成し、
前記第1検出手段により前記光源からの測定光を検出して生成された参照データ、及び前
記第2検出手段により生成された第2の検出データに基づいて、前記被検体の生体情報で
ある生体データを前記データ処理手段により生成することを特徴とする生体情報計測装置
の校正方法。
【請求項6】
被検体に光を照射し、前記被検体内を拡散、透過、若しくは反射した光を検出して前記
被検体に関する生体情報を非侵襲的に計測する生体情報計測装置において、
前記光源を発光させるための出力を設定する出力設定手段と、
前記出力設定手段により設定された複数の第1の出力が供給される前記光源からの校正光
を検出して第1の検出データを生成する第1検出手段と、
前記出力設定手段により設定された第1の出力及び前記第1検出手段により生成された第
1の検出データからデータ伝送に有効な直線領域に対応する第1の出力の出力範囲を算出
するデータ処理手段と、
前記データ処理手段により算出された前記出力範囲の情報に基づいて、前記出力設定手段
からの出力を所定の周波数に変調し、変調した出力の振幅が前記出力範囲内に設定された
第2の出力が供給される前記光源からの測定光を前記被検体に照射して検出した光から第
2の検出データを生成する第2検出手段とを備え、
前記データ処理手段は、前記第1検出手段により前記光源からの測定光を検出して生成さ
れた参照データ、及び前記第2検出手段により生成された第2の検出データに基づいて、
前記被検体の生体情報である生体データを生成するようにしたことを特徴とする生体情報
計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−67914(P2008−67914A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249555(P2006−249555)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】