説明

生体成分分画方法および分画装置

【課題】
MS分析を行うための試料調整において、短い処理時間でアルブミン以上の分子量を有する成分を高い除去率で除去し、迅速かつ効率よく試料を調整する分画方法および分画装置を提供する。
【解決手段】
生体成分含有液から分離膜モジュールを用いて生体成分を分画する生体成分分画方法において、式(1)
X/(Y×Z)≧700 (1)
X:供給生体成分含有液の分離膜表面流れ方向線流速(cm/s)
Y:分離膜の濾過流速(cm/s)
Z:分離膜モジュールの有効長(cm)
の関係を満たすことを特徴とする生体成分分画方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体成分含有液から特定の成分を分離する生体成分分画方法および分画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物化学、薬学、細胞生物学、分子生物学の領域では、例えば生体組織の抽出液の中から特定のたんぱく質を分離・精製したり、細胞が産生した細胞培養液中のタンパク質を精製したり、細胞抽出液から遺伝子を分離するなど、混合物の中から目的の物質を分離する操作が行われてきた。分離装置には、分子量の違いを利用して分離するゲルクロマトグラフィーや分離膜を用いて目的タンパク質を分離・精製する技術が知られている。
【0003】
分離膜を用いた分離技術については、ろ過または吸着ユニットと除水ユニットからなる分画装置を用いる方法があり、ろ過または吸着ユニットにおいて、目的タンパク質を移動相からろ過液または素通り液に分離して取り出すしくみとなっている。この分離膜を用いた分離技術において、分離効率を最大にするためには、移動相の流れ方向線速度を上げることにより、濃度分極層を形成しやすい膜表面の高分子量タンパク質濃度を低下させる方法がある。ところが、線速度が高すぎるとモジュール内圧の上昇により膜の目詰まりや装置の液漏れなどが発生し、線速度の上限があるため、これが分離効率を上げる際の障害となっていた。
【0004】
ここで、分画用の半透膜としては天然素材であるセルロース、合成高分子膜素材であるポリスルホン、ポリメチルメタクリル酸(PMMA)、ポリアクリロニトリルなどが今日まで幅広く使用され、より簡便で効率の高い分離を実現すべく様々な技術開発がなされてきた。近年、これらの膜素材の中で分離技術の進歩に合致したものとして透水性能が高いポリスルホンが注目を浴びている。ポリスルホンは元来、熱可塑性の耐熱性エンジニアリングプラスチックとして自動車、電気、医療用具の分野で幅広く用いられているものであるが、ポリスルホン単体で半透膜を製造した場合、分子間凝集力が強く、また、疎水性であるために血液との親和性に乏しく、そのままで血液処理用に用いることはできない。従って、孔形成材として親水性高分子、無機塩などを混入し、溶脱する事によって孔を形作り、同時にポリマ表面を親水化し、これを半透膜、逆浸透膜として用いる方法が考案され、出願されている。
【0005】
分画装置としては、遠心力を利用して、一方の端部を封止した中空糸型フィルターの内部から外部へ液体を濾過する微量液体用フィルター、中空糸膜をプラスチック成型品の中に複数本充填することによって得られる血液浄化用モジュール、などが公開されている。
【0006】
しかし、特許文献1のように一方の端部を封止した中空糸型フィルターを用いると、処理時間が短い場合には大きな影響はないが、処理時間が長くなると膜表面でのタンパク質濃縮、目詰まりのために濾過抵抗が増大し、圧力上昇が起こって処理が困難になる可能性がある。
【0007】
また、膜表面で極端なタンパク質の濃縮がおこり、特に除去を目的とする拡散性の低い高分子量のタンパク質、例えばアルブミンの漏洩量が増大することがある。特許文献2では複数本の中空糸膜をプラスチック成型品の中に充填したものをモジュールとしているが、本方法では分離対象タンパク質であるβ2−マイクログロブリンとアルブミンの分離比率は100:1程度であり、高精度の分析のためには十分な分離比率とはいえない。
【特許文献1】特開昭61−8150号公報
【特許文献2】特開平10−108907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明においては、生体成分含有液から、アルブミン以上の分子量を有する成分を迅速・効率よく除去でき、MS分析(質量分析装置(mass spectrometer)による分析)等を行うための試料を迅速かつ効率よく調整する分画方法および分画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は下記の構成を有する。
【0010】
生体成分含有液から分離膜モジュールを用いて生体成分を分画する生体成分分画方法において、式(1)の関係を満たすことを特徴とする生体成分分画方法。
【0011】
X/(Y×Z)≧700 (1)
X:供給生体成分含有液の分離膜表面流れ方向線流速(cm/s)
Y:分離膜の濾過流速(cm/s)
Z:分離膜モジュールの有効長(cm)
【発明の効果】
【0012】
本発明の分画方法を、MS分析を行うための試料調整に用いた場合、同じ処理時間でアルブミン以上の分子量を有する成分を高い除去率で除去させることが出来、迅速かつ効率よく試料を調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明でいう分画とは溶液(本発明では生体成分含有液)中の溶質を分離することであり、溶質が複数含まれている場合には、その全部または一部を分離することを指す。特に体液のMSによるプロテオーム分析の前処理の場合には、回収目的のタンパク質と廃棄目的のタンパク質を弁別することをいう。
【0014】
本発明の溶液は、タンパク質、核酸、糖、脂質、ビタミン、無機塩類等の生体成分含有液や、血液、血清、血漿、尿、リンパ球、脳精髄液等の体液や、体液を含む液体であればよく特に限定されないが、細胞を含有しないことが好ましい。
【0015】
本発明において、分離膜とは二つ以上の分離対象物質からある特定の物質(複数種でもよい)のみを選択的に透過させ分離する機能を持つ膜である。
【0016】
分離膜を備えた濾過器(分離膜モジュール)は、タンパク質関係では従来より人工腎臓(透析カラム)として多く利用されているが、いずれもアルブミン等のタンパク質を漏れさせないように保持され、クレアチニンや尿素などの低分子成分を漏出させて血液を浄化する目的で使用される。一方、本発明においては、分離膜の供給生体成分含有液側から漏出する画分を分析のために収集する方法で用い、供給生体成分含有液側にはアルブミン等の高分子量成分を保持しながら、主に分子量5kDa以下のタンパク質成分を漏出させる方法を取る。
【0017】
アルブミンとはヒト、ウシ、その他哺乳動物及び鳥類由来のアルブミンのことをいう。分子量が大きいとは、主にアルブミン(分子量6〜7万)より高分子量のタンパク質のことをいう。アルブミンより高分子量であるか否かはSDS-PAGE(sodium dodecylsulphate - polyacrylamide gel electrophoresis:ドデシル硫酸ナトリウムを含むポリアクリルアミドゲル電気泳動)という方法により判別可能である。
【0018】
本発明の分画方法における濾過流量および循環流量は分離膜モジュールの濾過流速および分離膜表面流れ方向線流速を考慮して決定される。X,Y,Zを以下に定めるものとして、下記式(1)の関係を満たす条件で分離膜モジュールの有効長に応じて分離膜の濾過流速と分離膜表面流れ方向線流速を設定したときに、回収対象物質であるβ2−マイクログロブリンと除去対象物質であるアルブミンの分離比率が驚くほど向上することを見出した。
【0019】
X/(Y×Z)≧700 (1)
X:供給生体成分含有液の分離膜表面流れ方向線流速(cm/s)
Y:分離膜の濾過流速(cm/s)
Z:分離膜モジュールの有効長(cm)
ここで、分離膜モジュールの有効長とは供給生体成分含有液の流れ方向の分離膜の長さのうち、実質的に分離膜が濾過機能を有する部分の長さをいう。
【0020】
Xを大きくすることは、特に高分子量物質の濃度分極を抑え、結果的に低分子量物質と高分子量物質の分離比率を高くするが、大きすぎると回路内の圧力が高くなり操作が困難になったり、液漏れが発生する可能性がある。Xの上限については供給生体成分含有液によっても変化するが、10cm/s以下であることが好ましい。
【0021】
また、Yを小さくすることも高分子量物質の濃度分極を抑え、低分子量物質と高分子量物質の分離比率を高くするが、小さすぎると回収液量が少なくなるため、処理効率が悪くなる。
【0022】
Zを小さくすることによる分離比率の向上については、分離膜モジュールの入り口と出口の高分子量物質濃度の違いにより説明できると考えられる。すなわち、除去された物質が分離膜モジュールの出口方向に向かって、徐々に蓄積し濃度が高くなる濃縮効果により、分離膜モジュール入り口付近は出口に比べて除去対象物質の濃度が低く、特に高分子量物質ほど入り口と出口の濃度差が大きくなる現象が知られている。本発明では分離膜モジュールの有効長を短くすることにより、このような分離膜モジュール出口での濃縮効果の影響を抑え、高分子量物質の漏洩を小さくすることにより、分離比率を向上できたと考えられる。
【0023】
濾過流量は濾過流速に膜面積を乗じた値、循環流量は供給生体成分含有液の分離膜表面流れ方向線流速に供給生体成分含有液流れ方向に垂直な流れ断面積を乗じた値に設定する。
【0024】
ここで、膜面積とは実際に分離膜が濾過機能を有する部分の面積であり、中空糸膜の場合、全内表面積からポッティング剤等によって膜外から封止された部分を除いた部分の面積のことをいう。式で表すならば、中空糸一本の全長からポッティング剤によって膜外から封止された部分を除いた長さを有効長として、(膜面積)=(糸本数)×π×(中空糸内径)×(有効長)となる。このうち、中空糸内径と有効長は実測して求められる。
【0025】
一方平膜の場合は、分離膜と供給生体成分含有液が接触する表面積のうち、ポッティング剤などによって、封止された部分を除いた部分の面積となる。また、流れ断面積とは、供給生体成分含有液の流れに対して垂直に交わる部分の面積のことをいう。中空糸膜の場合、式で表すならば、(流れ断面積)=π×(中空糸内径)となる。中空糸内径は実測した値である。また長方形平膜の場合は、(流れ断面積)=(ホールドアップボリューム)/(有効長)となる。ここで、ホールドアップボリュームとはモジュール内の膜外および濾過側部分以外の供給生体成分含有液量をいう。
【0026】
本発明の分離膜の形態としては、限定されるものではなく、平膜、中空糸膜などの形態で用いられるが処理量が高く、圧力損失が小さいという理由で中空糸膜がより好ましく用いられる。
【0027】
本発明においては、Z、すなわちモジュールに充填される分離膜の有効長を短くすることにより、分画処理において、アルブミンの除去率が高いモジュールを得ることができる。具体的にはモジュールの有効長は、9cm未満であることが好ましく、4cm未満であるとより好ましい。9cm以上であると、分画処理におけるアルブミン除去率が低下する場合がある。ただし、逆に0.5cmよりも短いとモジュール作成が困難となり、また操作性の低下が生じることがあるので、0.5cm以上であることが好ましい。
【0028】
本発明において、モジュールに充填される分離膜の膜面積は1cm以上500cm未満であることが好ましい。1cm未満の場合、処理性能が低下する場合がある。また、500cm以上の場合は膜へのタンパク質吸着により、分析対象物質の回収率が低下する恐れがある。
【0029】
本発明の分画方法の目的は、生体成分含有液からアルブミン以上の分子量を有するタンパク質を除去し、アルブミンより小さい分子量を有するタンパク質を濾過・回収することであり、そのためアルブミン分子量付近でシャープな分画特性を有する分離膜を使用することが好ましい。
【0030】
分離膜の分画特性は主に細孔径と空隙率、さらには膜厚に左右されるが、それらを総合的に評価する方法としてデキストランふるい係数を測定する方法がある。ふるい係数の測定は有効長や供給液・濾過液の流量に左右されるため、所定の有効長および膜面積のモジュールを用いて所定の供給液流量および濾過流量で行う必要がある。
【0031】
本発明では有効長10cm、膜面積63cmのモジュールを用いて、供給液流量20ml/min、濾過流量0.6ml/minでデキストランふるい係数の測定を行う。本発明の分離膜は、上記条件で測定した分子量67,000のデキストランふるい係数が0.02未満である。0.02以上であるとアルブミンの除去率が低下する。
【0032】
本発明において、分離膜を形成するために用いられる原液は疎水性高分子、親水性高分子、溶媒、および添加剤を少なくとも含有する。
【0033】
この中で疎水性高分子としては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどほとんどのエンジニアリングプラスチックを用いることができるが、ポリスルホン系高分子が特に好ましい。
【0034】
また、かかる親水性高分子は、特に限定されるものではないが、疎水性高分子と原液中で不可視のミクロ相分離構造を形作るものが好ましく用いられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどがあるが、これらを単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。中でも、工業的に比較的入手しやすい点でポリビニルピロリドンが好ましく用いられる。
【0035】
また、かかる溶媒については、疎水性高分子、親水性高分子、添加剤の3者を良く溶かす両性溶媒が用いられる。具体的にはジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトアルデヒド、2−メチルピロリドンなどであるが、危険性、安定性、毒性の面からジメチルアセトアミドが好ましい。
【0036】
添加剤としては、疎水性高分子の貧溶媒で親水性高分子と相溶性を持つものが用いられ、具体的には、アルコール、グリセリン、水、エステル類等が挙げられ、プロセス適性の面から特に水が好ましい。
【0037】
これらの溶媒、添加剤は、2種以上の化合物の混合系でもよい。
【0038】
中空糸分離膜の場合、分離膜の製造方法としては、まず疎水性高分子、親水性高分子を溶媒に混合溶解する。そこへ、添加剤を添加するが、かかる添加剤として特に水を用いる場合であって、疎水性高分子がポリスルホン系樹脂の場合、添加剤としての水はポリスルホン系樹脂を凝固性させる作用が高いため、その添加量は原液全体に対して1.8重量%以下が望ましく、特に1.05〜1.70重量%がより望ましい。
【0039】
また、疎水性高分子がポリアクリロニトリルの場合は、水の添加量は2〜6重量%が好ましく、さらに2〜4重量%であることがより好ましい。また、疎水性高分子がポリアミドの場合、水の添加量は、8重量%以下が好ましく、さらには2.5〜5重量%であることが好ましい。
【0040】
次に製膜原液のポリマ濃度について述べる。ポリマ濃度は増加するに従って製膜性は良くなるが逆に空孔率が減少し、透水性能が低下するため最適範囲が存在する。かかる最適範囲としては、疎水性高分子の濃度については10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%であり、親水性高分子の濃度については2〜20重量%、好ましくは3〜15重量%である。
【0041】
製膜の方法としては、従来知られている方法などが用いられるが、一方法として、次のような方法がある。初めにポリマ・溶媒・添加剤を均一溶解して得た原液を二重管状口金から吐出する際に内側の管に芯液を流し、乾式部を走行させた後に凝固浴へ導き、中空糸膜を成形する。その後、所定の水洗、保湿工程を経た後、中空糸膜を巻き取る。更に、モジュール化し、水充填して、架橋する。
【0042】
モジュール化の際、ケースに充填した中空糸膜の両端部をポッティング剤によって封止することで、中空糸膜を固定化することが可能である。ここで、乾式部走行の際、乾式部の湿度に影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分を補給することによって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として濾過の際の濾過・拡散抵抗を減らすこともできる。
【0043】
ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液の凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の濾過・拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%程度が好適である。芯液は、原液に用いた溶媒と水を基にした組成からなるものを用いることが好ましい。芯液の溶媒濃度としては35重量%以上、65重量%未満、さらには40重量%以上、55重量%未満の水溶液が好適に用いられる。
【0044】
また、水可溶性親水性高分子を用いる場合、特に医療・診断用途においては、該親水性高分子の分析系への溶出が問題となる。親水性高分子の溶出をできるだけ低減するためには、親水性高分子を不溶化処理することが好ましい。ここで不溶化処理とは、架橋により、架橋前の高分子の良溶媒に溶解しなくなるようにする処理を施すことを意味する。
【0045】
不溶化方法としては、限定されるものではないが、例えばγ線、電子線、熱、化学的方法などにより、架橋を行うことが好ましい。特に、水の存在下でのγ線照射が好ましく、照射量は10〜50KGy、さらには20〜40KGyであることが好ましい。不溶化架橋処理により、疎水性高分子と親水性高分子が結合し、親水性高分子の溶出が減少する。また、このような処理を行うと性能、構造に変化が生じると考えられるが、中高分子量蛋白を積極的に透過させるための網目構造は架橋処理によって構造が保持、補強されるため、若干の性能低下は見られるもののほとんど変化しない。
【0046】
本発明の分画装置は、分離膜モジュールを含み、生体成分含有液から生体成分を分画する装置であって、該分離膜モジュールの有効長が9cm未満である。本発明の分画装置は、生体成分を膜分離する濾過ユニットと生体成分を吸着する吸着ユニットの少なくとも1つを含み、該有効長が9cm未満の分離膜モジュールは、濾過ユニットと吸着ユニットの少なくとも1つを構成することが好ましい。
【0047】
本発明の分画装置は生体成分含有液を投入するユニットをさらに有し、生体成分含有液を投入するユニットと、その下流の濾過ユニットまたは吸着ユニットとが回路を構成していることが好ましい。
【0048】
本発明の回路とは移動相の液体が搬送される流路のことである。生体成分含有液が投入された後、濾過または吸着の分画処理が行われて回収されるという一連の工程が円滑に行われるためには、生体成分含有液を投入するユニットと、その下流の濾過ユニットまたは吸着ユニットとが回路を構成していることが好ましい。具体的にはシリコン、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックチューブや金属製のパイプ等を使って各ユニットを接続すればよい。濾液を搬送する生体成分を分離する上においては開放系、すなわち回路のいずれかの場所が開放されており、そこから任意の時点で任意の量だけ自由に移動相・試料・回収液を投入・補充・回収できる系であっても良いし、閉鎖系、すなわち回路のいずれの場所も開放されていない系であっても良い。
【0049】
本発明の分画装置において、供給生体成分含有液(以下、「原液」という)は供給ユニットにおいて外部から投入されることが好ましい。原液を投入する方法は特に限定されるものではないが、注射器に採取した原液を手動あるいはシリンジポンプ等を用いて、回路内に設置された三方活栓あるいはゴムボタンを通してに投入する方法や、液の入ったバックに接続された送管を、回路内に設置された三方活栓に接続してローラーポンプで投入する方法は密閉性が高く、投入速度を制御できる点で好ましい。
【0050】
原液を投入する速度は、濾過ユニット、吸着ユニットと除水ユニットにおける抵抗と、分離膜や回路の耐圧性から規定される回路の循環流量から決定される。投入速度が速すぎると回路の圧が上昇し回路からのリークや分離膜の破損を引き起こす。また、遅すぎると原液の処理に長時間を要する。
【0051】
原液を回路の外部から供給ユニットに投与する場合に、回路内で投与された原液の体積に等しい体積変化が起こる。この変化を吸収できる部分が無いと回路や膜に過剰な圧力がかかる可能性があるため、この変化を吸収する緩衝部を設置することが好ましい。T字コネクターを介して気密性良く回路に接続されたバックあるいはピストン付きシリンジ等の機構が好ましく用いられる。
外部から投入された原液はポンプにより濾過ユニットに送られる。濾過ユニットでは濾過により溶質の分子量に従って溶質が分離される。
【0052】
本発明の分離膜モジュールを少なくとも1つ含む回路が濾過ユニットを構成する。
【0053】
吸着ユニットでは、吸着により溶質の一部がリガンドとの親和性に従って分離される。デキストランやアガロースなどからなるゲル、シリカやポリエチレンやアパタイトやポリメチルメタクリレートなどからなる粒子、フィルターあるいは中空糸などの担体に、抗体やそのフラグメント、ポリエチレンイミン、アミノメチルピリジン、ポリフェノール、ブルー色素、2価金属イオン(Zn2+, Ni2+, Co2+, Cu2+等)および疎水性化合物(メチル基、ベンジル基、フェニル基、クロロメチル基、オクチル基、ラウリル基等)からなる群より1種類以上選択される物質(リガンド)を固定化することにより、担体に溶質への親和性を付与できる。リガンドを固定化したゲルや粒子を充填したカラムやフィルターや中空糸を固定化したモジュールを少なくとも1つ含む回路が吸着ユニットを構成する。
【0054】
MS分析用の試料の前処理に使用する場合には、アルブミンをはじめとする、MS分析に不要なタンパク質を吸着除去する機能を付与することができる。抗体やそのフラグメントを用いる場合には、血液中で多量に存在するアルブミン、グロブリン、トランスフェリン、ハプトグロビン、α1−アンチトリプシン、アクチン、ミオシン、ケラチンの少なくともいずれか一つから選択されるタンパク質に対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体あるいはそのフラグメントを用いることが特に好ましく、これらのタンパク質を除去することによって、血液中の微量成分のMS分析の感度を上昇させることができる。抗体やそのフラグメントは、先述のように膜に固定化してもよいが、回路内の移動相に添加するだけでもよい。抗体やそのフラグメントはある程度の分子量を持ったタンパク質であるので、分離膜の孔径を制御することによってによって膜分離除去できる。
【0055】
本発明の分画装置の濾過ユニットにおいては、本発明の分離膜モジュールを備えた回路が分離手段として用いられ、外部から供給された原液はまずこのユニットに送られる。この回路に送液ポンプが設置されていることが好ましく、ポンプによってカラム内の中空糸の中を処理液が循環出来る構造になっている。分離効率を上げるために多段構成にした場合には、複数個の回路を横に配列して、前段のカラムの濾液出口と後段回路とを送管で連結し、処理液が多段のカラムに順次送られ分離が繰り返し行われる。本発明の装置においては、滞留なく送液し最大の分離効率を得るために、多段の回路のそれぞれに送液ポンプが設置されていることが好ましい。これらのポンプは別々の駆動で運転されても良いし、同一の駆動で同軸運転されても良いが、滞留なく送液し最大の分離効率を得るために、同一の流量を維持するように運転されることが好ましい。
【0056】
本発明の分画装置において、濾過ユニット、吸着ユニットに設置されているポンプは前段回路の濾液を送液する送管と回路の合流部分と、濾過器の移動相流入側との間に設置されていることが好ましい。移動相の流出側に設置されていると、濾過器前後で有効な圧力差が得られず、更には前段の濾過器の濾液出口に過剰な圧力をかけることになるため、分離効率が著しく落ちる。
【0057】
本発明の分画装置において、供給ユニットと濾過ユニットまたは吸着ユニットとの間、濾過ユニットに設置される送液ポンプは、別々の駆動で運転されても良いし、同一の駆動で同軸運転されても良い。同軸で運転する場合には、分離膜の分離効率に応じて、各部分の運転速度およびシーケンスを適宜選択できる。
【0058】
本発明の分画装置において、回路の送管はそれぞれ単独でも装着しえるが、装着の利便性と安定性の確保のために、供給ユニット、濾過ユニットまたは吸着ユニット一体化したカートリッジを構成していることが好ましい。カートリッジは送液ポンプのローラー駆動部に着脱可能で、ディスポーザブルであることがより好ましい。供給ユニット、濾過ユニットまたは吸着ユニット内の送液ポンプを設置すべき送管の一部をカートリッジ内からカートリッジ外壁に露出させて、露出した送管をポンプロータによって圧搾するのが最も好ましい。このとき濾過ユニットまたは吸着ユニットの各膜モジュールのポートの方向は圧搾板にチューブを取り付ける方向と一致させる。また圧搾板にはチューブを圧搾する以外の面にカラムと同数の溝が形成されており、この溝にチューブを埋めることによってチューブの位置がしっかりと固定出来る。各カラムの両端ポートに接続されたチューブは圧搾板を介して、サンプル処理液が循環出来るようになっている。圧搾の精度を維持するためにチューブは支持体(機側)のより近くに位置していることが好ましい。精度が狂うとチューブが押さえつけられなくなり定量送りができなくなる。カートリッジを本体に簡便かつ正確に装着させるために、圧搾板にガイド穴を備え、このガイド穴をポンプ駆動装置のガイド軸に貫通させることで容易に装着が行われる。続いて、圧搾板を固定させることによって複数本のチューブが蠕動ローラーポンプの回転ローラーと適正な距離を保持させ、ローラーポンプを作動させることによって、複数本のカラム処理液は順次送液される。予め、複数本のカラムを収納した収納箱と圧搾板とを一体化してチューブを配管接続したものを用意しておけば、ローラーポンプ部分への装着と脱着はより簡便に行うことができる。
【0059】
本発明における移動相は水または水溶液が好ましい。水溶液は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、アセトニトリル、塩化ナトリウム、塩化カリウムの少なくとの一つを含有する。特に原液が体液であり、溶質がタンパク質である場合には移動相にpH緩衝液を用いることが好ましい。さらに本装置により得られる試料をMS分析装置に適用する場合には、分析を阻害しない揮発性の物質から構成される緩衝液を用いることが好ましく、例えば炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウムが好ましく用いられる。移動相の水溶液には、界面活性剤、乳化剤、有機溶媒、アルコール、エチレングルコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンイミン、アミノメチルピリジン、硫酸プロタミン、硫酸アンモニウム、ポリフェノール、ブルー色素、カオトロピック塩および疎水性化合物からなる群より1種類以上選択される物質を含むことにより、高分子成分のタンパク質の凝集による巨大分子化を促進し、吸着の促進や分画膜からの漏出を抑制し、高分子成分を効率的にカットオフし最終的な分離性能を向上させることができる。界面活性剤(両性界面活性剤や陰イオン性海面活性剤等)はタンパク質間の相互作用を抑制する効果があり、分子分画を効率的に行うことができる。
【0060】
上記のリガンドの選択ならびに水溶液溶質の選択は、目的とするタンパク質群の分離の程度を勘案しながら行うことができる。
【0061】
本発明の分画装置における各ユニットを接続する送管は柔軟な弾性体から成っていることが好ましく、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、フッ素樹脂、天然ゴム、合成ゴムが好ましく用いられるが目的の生体成分の吸着が少ないという点でシリコーン樹脂、フッ素樹脂が特に好ましい。
【0062】
本発明の濾過液を採取する回収容器は目的の生体成分の吸着の少ない材質から成ることが好ましく、ポリプロピレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が好ましく用いられる。その他にもポリスチレン、ガラスなどが用いられるが、目的の生体成分の吸着を抑制するために内表面に吸着を抑制するための処理が施してあるものが好ましい。吸着を抑制するための処理とは、例えば親水性化処理であり、プラズマ処理や、親水性ポリマーのコーティングや表面グラフトがこれに相当する。
【0063】
本発明は生体成分、特にヒトの血漿、血清、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、腹水、胸水、羊水、リンパ液等からの生体分子の分離に適する。
【0064】
本発明の分画装置に設置される回路の回路内容積は、大きすぎると装置自体が大きくなり運搬することが難しい。卓上サイズで運転者が容易に運搬・操作することができるためには回路内容積が1L以下であることが好ましく、更には500mL以下、とりわけ100mL以下がもっとも好ましい。
【0065】
本発明の生体成分分画方法または分画装置を用いて得られた分析検体は、液体クロマトグラフ、電気泳動、MS等の各種のタンパク質分析に有用であるが、特に好ましくは電気泳動やMSを用いたプロテオーム解析に有用である。
【0066】
本分画装置の後に直接あるいは間接的に適用できるMSは特に限定されないが、イオン化部分として、電子スプレーイオン化型、大気圧イオン化型、高速原子衝突型、四重極型、サイクロトロン共鳴型、磁気セクター型、マトリックス支援レーザー破壊イオン化型などが、イオン補足型、飛行時間型、フーリエ変換型などの質量分析部と適宜組み合わせて用いられる。この場合、MS/MS、MSnなどのタンデムMSやFT-MSとして用いることもできる。タンデムMSの場合は、全てのタイプのMSが適用可能であるが、特にイオン捕捉型、四重極−飛行時間(Q-TOF)型、FT-MSなどの組合せで使用することが効率がよい。
【0067】
本分画装置との組み合わせによる分析により、各種微量タンパク質成分の構造情報を集めることができるが、それらはペプチド・マスフィンガープリント(peptide-mass fingerprint: PMF)のみならず、各ペプチドの一次構造情報(アミノ酸配列)も含まれる。
【0068】
本発明においては、上記により、目的とする分画方法および分画装置を得ることができる。すなわち、本発明においては、膜面積を維持したまま、分離膜モジュールの有効長を短くすることによって、MS等の分析に用いる試料調整において、β2ミクログロブリンなど、中分子量および5kDa以下の低分子量の分析対象タンパク質の回収率を維持しつつ、高分子量の除去対象タンパク質であるアルブミンの除去率が増大することを見出した。
【0069】
本発明において、用いた測定法は以下のとおりである。
(デキストランふるい係数の測定)
有効長を10cmとし、膜面積が63cmとなるようにミニモジュールを作成する。分子量1000〜300,000の範囲で、すくなくとも67,000を含む分子量分布を有するデキストランをそれぞれ所定の濃度になるように限外濾過水に溶解する。この溶液をミニモジュールの血液側(中空糸の場合内側)にポンプを用いて20ml/minで流し、0.6ml/minで20分間膜を馴染ませた後、原液、血液側出口(中空糸の場合いずれも内側)、濾過側出口(中空糸の場合外側)から流れる溶液をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてかかるサンプリング液のデキストラン濃度を測定し、分子量67,000のデキストランふるい係数を下記式(2)より算出する。
【0070】
ふるい係数Sc(%)={2×CF/(CBi+CBo)}×100 (2)
ここでCBi:分子量67,000のデキストランのモジュール血液側入口濃度、CBo:分子量67,000のデキストランのモジュール血液側出口濃度、CF:分子量67,000のデキストランのモジュール濾過側出口濃度(ml/min)を示す。
【実施例】
【0071】
次に実施例に基づき本願発明を説明する。
【0072】
実施例1
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)18重量部、ポリビニルピロリドン(BASF K90)3重量部、ポリビニルピロリドン(BASF K30)6重量部をジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部に加え、90℃で加熱溶解し、製膜原液とした。この原液を温度50℃の紡糸口金部へ送り、外側の内径0.35mm、内側の内径0.25mmの2重スリット管から芯液としてジメチルアセトアミド51重量部、水49重量部からなる溶液を内側の管より吐出させ中空糸膜を形成させた後、温度30℃、露点28℃に調湿したドライゾーン雰囲気を有する長さ250mmの空間を経て、ジメチルアセトアミド20wt%、水80wt%からなる温度40℃の凝固浴を通過させて中空糸膜を得た。その後、80℃の水で20秒行う水洗工程、グリセリンによる保湿工程を経て得られた中空糸膜を巻き取り束とした。中空糸の内径は巻き取る前の中空糸を断面方向にフェザー剃刃株式会社製片刃でカットし、キーエンス社製マイクロスコープで100倍に拡大した16点の画像について、内径を画面上で物差しを使用して測定し、平均値を求めたところ、200μmであった。
【0073】
この中空糸膜のデキストランふるい係数を測定した。分子量分布の異なる6種類のデキストラン(FULKA社製 平均分子量1,200(No.31394),6,000(No.31388),15,000〜20,000(No.31387),40,000(No.31389),56,000(No.31397),222,000(No.31398))をそれぞれ濃度が0.5mg/mlになるように限外濾過水に溶解した。この溶液を血液側(中空糸内側)にポンプを用いて流量20ml/minで流し、濾過流量を0.6ml/minとして20分間膜を馴染ませた後、血液側入口、血液側出口、濾過側出口(中空糸外側)から流れる溶液をサンプリングし、東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてかかるサンプリング液のデキストラン濃度を測定し、分子量67,000のデキストランふるい係数を算出した。デキストランふるい係数を測定したところ、分子量67,000のふるい係数は0.00893であった。
【0074】
この中空糸膜について膜内表面積63cmとなるように300本分を5cmのポリカーボネート製ケース(昭和丸筒社)に充填し、ケースの両端部をポリウレタン樹脂からなるポッティング剤によって封止して、端部における中空糸が両面とも外側に向かって開口するようにポッティング剤をケース断面と平行な方向に沿ってカットし、ポッティング剤カット後のケース両端にヘッダーを取り付けてモジュールとした。かかるモジュール内の中空糸膜に対して、線量を25kGyとしてγ線照射を行った。該中空糸分離膜モジュールの有効長は3.3cmであった。また、膜内表面積25cmとなるように120本分を同様に充填し、同様に中空糸分離膜モジュールを作成した。該中空糸分離膜モジュールの有効長は3.3cmであった。
【0075】
該中空糸分離膜モジュールを図1に示す分画装置に取り付けて、血清中のβ2ミクログロブリンおよびアルブミンの回収率を測定した。膜内表面積63cmの中空糸分離膜モジュールを第1段目の分離ユニットに、膜内表面積25cmの中空糸分離膜モジュールを第2、第3段目の分離膜ユニットに装着した。回収率は第3段目の中空糸分離膜モジュールの濾過液を採取して求めた。ヒト正常血清(SIGMA, No.H1388,lot.113K0485)を300mM炭酸水素ナトリウム水溶液で4倍に希釈し、その4mlを分画装置に0.48ml/分の速度でシリンジより投入した。第1段目中空糸分離膜モジュールの分離膜表面流れ方向線流速を1.59cm/s、濾過流速を1.59×10−4cm/s、第2,第3段目の中空糸分離膜モジュールの分離膜表面流れ方向線流速を3.98cm/s、濾過流速を3.98×10−4cm/s、処理温度25℃の条件で循環開始から1時間、回収容器に上記濾過液を回収した。
【0076】
この回収液について、ヒト血清アルブミン(分子量:69,000)をAlbumin, Human, ELISA Quantitation Kit (BETHYL社)で、ヒトβ2ミクログロブリン(分子量:11,500)の濃度をグラザイムβ2−Microglobulin-EIA TEST(和光純薬)でそれぞれ測定した結果、投入した血清中に含まれるアルブミンとβ2ミクログロブリンの総量に対する、回収液中に含まれるアルブミンとβ2ミクログロブリンの総量の割合を表す回収率はそれぞれ、0.000597%、46.9%となり、アルブミンに対するβ2ミクログロブリンの分離比率は78,500であった。
実施例2
血清中のβ2ミクログロブリンおよびアルブミンの回収率測定において、第1段目中空糸分離膜モジュールの分離膜表面流れ方向線流速を0.53cm/s、第2,第3段目の中空糸分離膜モジュールの分離膜表面流れ方向線流速を1.33cm/sに変更する以外は実施例1と同様にして実施した。その結果、アルブミンとβ2ミクログロブリンの回収率はそれぞれ、0.000747%、60.4%となり、アルブミンに対するβ2ミクログロブリンの分離比率は80,900であった。
【0077】
比較例1
ポリカーボネート製ケースの長さを12cm、モジュールの有効長を10cm、中空糸膜の充填本数を第1段目を100本、第2段目を40本、第3段目を40本に変更する以外は実施例1と同様であり、各分離膜モジュールの膜面積も実施例1と同様にして実施した。血清中のβ2ミクログロブリンおよびアルブミンの回収率を実施例1と同様にして実施した結果、アルブミンとβ2ミクログロブリンの回収率はそれぞれ、0.00958%、60.2%となり、アルブミンに対するβ2ミクログロブリンの分離比率は6,290であった。
【0078】
比較例2
ポリカーボネート製ケースの長さを17cm、モジュールの有効長を15cm、中空糸膜の充填本数を第1段目を67本、第2段目を27本、第3段目を27本に変更する以外は実施例1と同様であり、各分離膜モジュールの膜面積も実施例1と同様にして実施した。血清中のβ2ミクログロブリンおよびアルブミンの回収率を実施例1と同様にして実施した結果、アルブミンとβ2ミクログロブリンの回収率はそれぞれ、0.011%、57.9%となり、アルブミンに対するβ2ミクログロブリンの分離比率は5,264であった。
【0079】
実施例1、2および比較例1、2をまとめたものを表1に示す。
【0080】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】分画装置の例である。
【符号の説明】
【0082】
1:第1段目分離膜モジュール
2:第2段目分離膜モジュール
3:第3段目分離膜モジュール
4:バッファ溜め
5:血清注入用シリンジ
6:濾過用ポンプ
7:第1段目循環用ポンプ
8:第2段目循環用ポンプ
9:第3段目循環用ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体成分含有液から分離膜モジュールを用いて生体成分を分画する生体成分分画方法において、式(1)の関係を満たすことを特徴とする生体成分分画方法。
X/(Y×Z)≧700 (1)
X:供給生体成分含有液の分離膜表面流れ方向線流速(cm/s)
Y:分離膜の濾過流速(cm/s)
Z:分離膜モジュールの有効長(cm)
【請求項2】
該分離膜が中空糸膜である請求項1に記載の生体成分分画方法。
【請求項3】
Zが9cm未満である請求項1または2に記載の生体成分分画方法。
【請求項4】
該分離膜モジュールのデキストランふるい係数において、分子量67,000のふるい係数が0.02未満である請求項1〜3のいずれかに記載の生体成分分画方法。
【請求項5】
該分離膜がポリスルホン系高分子を含む請求項1〜4のいずれかに記載の生体成分分画方法。
【請求項6】
該分離膜がポリビニルピロリドンを含む請求項1〜5のいずれかに記載の生体成分分画方法。
【請求項7】
分離膜モジュールを含み、生体成分含有液から生体成分を分画する装置において、該分離膜モジュールの有効長が9cm未満であることを特徴とする分画装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−82728(P2008−82728A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260156(P2006−260156)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】