説明

生体活性因子を含有する処方物およびそれを使用する方法

【課題】沈殿した生体活性因子を含有する微粒子を提供する。
【解決手段】生体活性BMP−2微粒子を作製する方法およびこの微粒子を使用する方法を開示する。本発明はまた、沈殿した生体活性BMP−2微粒子および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。このBMP−2は、ヒトBMP−2のアミノ酸配列を有し、組換え的に発現されたタンパク質である。被験体において、BMP−2レベルを増加する本発明の方法は、再可溶化されたBMP−2ポリペプチドを含む水性BMP−2懸濁液を提供する工程;および該被験体に、該被験体においてBMP−2レベルを増加するために十分な量で、該水性懸濁液を導入する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、骨形成(morphogenetic)タンパク質−2(BMP−2)のような生体活性因子を含有する組成物ならびにこれらの組成物を作製および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
治療剤として使用されるタンパク質は、代表的に、薬学的組成物として提供され、例えば、タンパク質の特性およびそれが患者に導入される様式に依存して変化し得る。
【0003】
タンパク質の不安定性は、これらの薬学的組成物の調製における主要な問題点であり得る。薬学的処方物の調製の間のタンパク質に対する望まれないストレスは、タンパク質変性、沈殿、または表面に対する吸着のような望まれない効果を生じ得る。
【0004】
骨形成タンパク質2(BMP−2)を含有する薬学的組成物は、非常に興味深い。なぜなら、このタンパク質は、骨成長の開始および創傷治癒の促進のような種々の生物学的に重要なプロセスに関与することが示されてきたからである。例えば、BMP−2は、脛骨、顎顔面骨、および脊髄骨に関連する障害を含む、種々の骨関連障害を処置するかまたは予防するために使用されてきた。
【0005】
BMP−2は、トランスホーミング増殖因子βスーパーファミリーのメンバーである。成熟タンパク質は、32キロダルトン(kDa)のジスルフィド連結されたホモダイマー糖タンパク質である。BMP−2は、水中で限られた溶解度を示す。この限られた溶解度は、このタンパク質を含有する薬学的組成物を開発するための試みを妨げ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、沈殿した生体活性因子を含有する微粒子(micorparticle)が、被験体に対する投与の前に、都合よく調製され、そして水溶液中に再懸濁され得るという発見に、一部基づく。本明細書中に開示される例示的な生体活性因子は、BMP−2タンパク質である。BMP−2ポリペプチドは、生体活性形態で水溶液中に再溶解されるかまたは再懸濁されるかのいずれかであり得、従って、再溶解されるかまたは再懸濁されるBMP−2微粒子は、BMP−2が、有効であると示された障害または状態を処置または予防するために使用され得る。
【0007】
所望される場合、添加された沈殿溶液のBMP−2溶液は、適切な生体分解性ポリマーを含み得、この生体分解性ポリマーとしては、ヒアルロン酸、コラーゲン、カルメロース(carmellose)ナトリウム、ポリビニルアルコール、キトサンまたはカチオン性デンプンが挙げられるが、これらに限定されない。従って、1つの局面において、本発明は、沈殿された生体活性骨形成タンパク質を含む精製された微粒子を提供する。好ましい骨形成タンパク質は、骨形成タンパク質2(BMP−2)である。いくつかの実施形態において、BMP−2タンパク質は、ヒトBMP−2のアミノ酸配列を有し、そして/または組換え発現されたタンパク質である。好ましいBMP−2タンパク質は、組換えヒトBMP−2タンパク質(rhBMP−2)である。微粒子は、骨欠損および/もしくは軟骨欠損、創傷、または組織の処置に対して有益なさらなる因子を、さらに含有し得る。
【0008】
種々の実施形態において、微粒子は、約0.1μm〜2000μmの直径を有する。例えば、適切な微粒子直径は、0.5μmから約1500μm、1μmから約1000μm、5μmから約750μm、10μmから約500μm、15μmから約250μm、25μmから約125μm、および37μmから約75μmの範囲にわたり得るが、これらに限定されない。他の適切な範囲は、0.5μmから約140μm、5μmから約85μm、約15μmから約75μm、または約25μmから約50μmが挙げられるがこれらに限定されない。
【0009】
所望の場合、BMP−2微粒子は、凍結乾燥された処方物として提供され得る。いくつかの実施形態において、微粒子は、水性処方物として提供される。
【0010】
いくつかの実施形態において、微粒子は、ポリマーキャリアと共同して提供される。ポリマーキャリアは、好ましくは、生体分解性である。
【0011】
適切なポリマーキャリアとしては、ポリラクチド、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリエチレンビニルアセテート、またはナイロンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0012】
沈殿された生体活性骨形成タンパク質2(BMP−2)微粒子および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物はまた、本発明内に含まれる。薬学的組成物はまた、好ましくは、再溶解されたBMP−2タンパク質を含む。
【0013】
被験体における骨形成タンパク質−2(BMP−2)レベルを上昇させる方法がまた、本発明によって特徴付けられる。本方法は、再溶解されたBMP−2ポリペプチドを含む水性BMP−2懸濁物を提供する工程を包含し、この水性BMP−2懸濁物は、被験体におけるBMP−2レベルを増大するのに十分な量で被験体に水性懸濁物を導入する。
【0014】
好ましい実施形態において、水性懸濁物は、沈殿された生体活性骨形成タンパク質2(BMP−2)を含む微粒子を、水溶液に導入することによって調製され、沈殿されたBMP−2タンパク質が、懸濁物を形成するかまたは再溶解され、それによって、水性BMP−2懸濁物を調製する。
【0015】
いくつかの実施形態において、微粒子は、凍結乾燥された微粒子として水性懸濁物に導入される。
【0016】
被験体は、好ましくは、哺乳動物である。哺乳動物としては、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、またはネコが挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0017】
BMP−2微粒子、または再溶解された微粒子を含有する処方物の投与は、任意の所望の経路を介し得る。例えば、投与は、BMP−2レベルの上昇が所望される部位で、局所的であり得る。
【0018】
骨関連障害は、BMP−2微粒子、または再溶解された微粒子を含有する処方物が使用され得る適応症である。例えば、適切な被験体は、骨折しているかまたは骨折の危険にある。骨としては、脛骨、口/顎顔面骨、または脊髄骨が挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0019】
さらなる適応症としては、歯周疾患、および他の歯修復プロセスの処置が挙げられる。このような薬剤は、骨形成細胞を誘引する環境、骨形成細胞の増殖を刺激する環境または骨形成細胞の前駆体(progenitor)の分化を誘導する環境を提供し得る。さらなる適応症としては、骨粗鬆症、ニューロン生存の上昇が所望される疾患、創傷治癒、および関連する組織修復が挙げられる。この型の創傷としては、火傷、切開、および潰瘍が挙げられるがこれらに限定されない。
【0020】
生体活性BMP−2微粒子の集団を作製する方法もまた、本発明内にある。本方法は、BMP−2ポリペプチドを含む第1の溶液を提供する工程、この第1の溶液を既知のpHおよびイオン強度を有する第2の溶液と混合する工程であって、第2の溶液と接触する際に、この第2の溶液が、BMP−2ポリペプチドの沈殿を生じる工程、それによって混合された第1の溶液および第2の溶液を形成する工程を包含する。BMP−2ポリペプチドは、沈殿させられ、それによって、BMP−2微粒子の集団を形成する。
【0021】
BMP−2タンパク質は、好ましくは、約0.1〜約20mg/ml(例えば、約0.5〜約10mg/ml、または約0.75〜約2.5mg/ml)の濃度で第1の溶液中に存在する。第1の溶液は、約1.5〜8のpH(例えば、約3〜5、または約4.2〜4.8)で提供される。特に好ましいpHは、約4.5である。混合を容易にするために、第1の溶液は、第2の溶液と混合される場合、乱流溶液として提供され得る。
【0022】
混合された第1の溶液および第2の溶液の最終pHは、好ましくは約4.0〜約10.0である。より好ましいpH範囲は、約5.0〜約9.5、または約6.0〜約9.0である。混合された第1の溶液および第2の溶液の特に好ましい最終pHは、約7.4である。
【0023】
所望される場合、BMP−2微粒子は、濃縮され得る。濃縮の方法は、遠心分離および濾過が挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0024】
約7.4のpHは、合わせた第1の溶液および第2の溶液について目標とされる場合、この第2の溶液は、混合された第1の溶液および第2の溶液のイオン強度が、5〜1000mMの範囲にあり、より好ましくは、20〜350mM、例えば、以下の組成物について約140mMであるように処方される:107mM NaCl、27mM NaHCO、1.0mM NaHPO、0.5mM NaSO
【0025】
他に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が所属する当該分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および物質と類似するかまたは等価である方法および物質が、本発明の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および物質が、以下に記載される。本明細書中に示される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考は、その全体を参考として援用される。矛盾の場合、定義を含む本明細書は、制御する。さらに、物質、方法、および実施例は、例示のみであり、限定することを意図されない。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0027】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
沈殿した生体活性骨形成タンパク質2(BMP−2)を含む、精製微粒子。
(項目2)
上記BMP−2が、ヒトBMP−2のアミノ酸配列を有する、項目1に記載の微粒子。
(項目3)
上記BMP−2が、組換え的に発現されたタンパク質である、項目1に記載の微粒子。
(項目4)
上記BMP−2が、組換え的に発現されたタンパク質である、項目2に記載の微粒子。
(項目5)
上記微粒子が、約0.1μm〜約2000μmの直径を有する、項目1に記載の微粒子。
(項目6)
上記微粒子が、約5μm〜約750μmの直径を有する、項目1に記載の微粒子。
(項目7)
上記微粒子が、約15μm〜約250μmの直径を有する、項目1に記載の微粒子。
(項目8)
上記微粒子が、約25μm〜約50μmの直径を有する、項目1に記載の微粒子。
(項目9)
上記微粒子が、凍結乾燥処方物として提供される、項目1に記載の微粒子。
(項目10)
上記微粒子が、水性処方物として提供される、項目1に記載の微粒子。
(項目11)
上記微粒子が、ポリマーキャリアと結合して提供される、項目1に記載の微粒子。
(項目12)
上記ポリマーキャリアが、生分解性である、項目11に記載の微粒子。
(項目13)
上記ポリマーキャリアが、ポリラクチド、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリエチレンビニルアセテート、またはナイロンである、項目11に記載の微粒子。
(項目14)
沈殿した生体活性骨形成タンパク質2(BMP−2)微粒子および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目15)
再可溶化されたBMP−2タンパク質をさらに含む、項目14に記載の薬学的組成物。
(項目16)
被験体において、骨形成タンパク質2(BMP−2)レベルを増加する方法であって、その方法は、
再可溶化されたBMP−2ポリペプチドを含む水性BMP−2懸濁液を提供する工程;および
その被験体に、その被験体においてBMP−2レベルを増加するために十分な量で、その水性懸濁液を導入する工程、
を包含する、方法。
(項目17)
上記水性懸濁液が、
水溶液に、沈殿した生体活性骨形成タンパク質2(BMP−2)を含む微粒子を導入する工程;および
その沈殿したBMP−2タンパク質が、再可溶化し、それにより、上記水溶性BMP−2懸濁液を調製する工程、
により調製される、項目16に記載の方法。
(項目18)
上記微粒子が、上記水性懸濁液に、凍結乾燥微粒子として導入される、項目16に記載の方法。
(項目19)
上記被験体がヒトである、項目16に記載の方法。
(項目20)
上記投与が、BMP−2レベルの増加が所望される部位に、局所的である、項目16に記載の方法。
(項目21)
上記被験体が骨の破損を有するか、または骨の破損の危険がある、項目16に記載の方法。
(項目22)
上記骨が脛骨である、項目21に記載の方法。
(項目23)
上記骨が口/顎顔面の骨である、項目21に記載の方法。
(項目24)
上記骨が脊髄骨である、項目21に記載の方法。
(項目25)
生体活性BMP−2微粒子の集団を作製する方法であって、その方法は、
約0.75mg/ml〜約2.5mg/mlの濃度、約4.2〜約4.8のpHで、BMP−2ポリペプチドを含む、第1の溶液を提供する工程;
その第1の溶液と既知のpHおよびイオン濃度を有する第2の溶液を混合する工程であって、この工程は、その第2の溶液と接触する際、BMP−2ポリペプチドの沈殿を生じ、それにより、その第1の溶液およびその第2の溶液の混合物を形成する工程;および
そのBMP−2ポリペプチドを沈殿させ得る工程であって、それにより、そのBMP−2微粒子の集団の形成する工程、
を包含する、方法。
(項目26)
上記BMP−2微粒子を濃縮する工程をさらに包含する、項目25に記載の方法。
(項目27)
上記第1の溶液および上記第2の溶液が、10:1の相対容量で混合される、項目25に記載の方法。
(項目28)
上記第1の溶液が、約pH4.5を有する、項目25に記載の方法。
(項目29)
上記第1の溶液が、上記第2の溶液と接触する場合、乱流溶液である、項目25に記載の方法。
(項目30)
上記混合された第1の溶液および第2の溶液が、約pH4.0〜約pH10.0を有する、項目25に記載の方法。
(項目31)
上記混合された第1の溶液および第2の溶液が、約pH7.4を有する、項目25に記載の方法。
(項目32)
上記混合された第1の溶液および第2の溶液が、107mM NaCl、27mM NaHCO、1.0mM NaHPO、0.5mM NaSOである、項目25に記載の方法。
(項目33)
上記混合された第1の溶液および第2の溶液が、約5mM〜約1000mMのイオン強度を有する、項目25に記載の方法。
(項目34)
上記混合された第1の溶液および第2の溶液が、約20mM〜約250mMのイオン強度を有する、項目25に記載の方法。
(項目35)
上記混合された第1の溶液および第2の溶液が、約140mMのイオン強度を有する、項目25に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、10分未満の形成期間の間に形成されるBMP−2微粒子の粒子直径分布を示すグラフである。
【図2】図2は、10〜110分の形成期間の間に形成されるBMP−2微粒子の粒子直径分布を示すグラフである。
【図3】図3は、160分までの形成期間の間に形成されるBMP−2微粒子の粒子直径分布を示すグラフである。
【図4】図4は、BMP−2粒子直径に対する遠心分離の影響を示すグラフである。
【図5】図5は、凍結乾燥に供された微粒子の、経時的な乾燥速度および累積的水損失を示すグラフである。
【図6】図6は、BMP−2粒子直径に対する凍結乾燥の影響を示すグラフである。
【図7】図7は、720mgのBMP−2微粒子調製物における粒子直径分布を示すグラフである。
【図8】図8は、微量混合デバイスを使用して調製されるBMP−2微粒子の直径分布を示すグラフである。
【0029】
(発明の詳細な説明)
本発明のBMP−2微粒子は、BMP−2タンパク質の任意の都合の良い供給源を使用して形成される。BMP−2タンパク質は、当該分野で公知であり、いくつかの特許、特許出願、刊行物において開示される。代表的な特許としては、米国特許第5,013,649号、同第6,150,328号、同第6,187,742号および同第6,190,880号が挙げられるがこれらに限定されない。BMP−2は、組換え的に産生され得る(組換えヒト骨形成−2(rhBMP−2)タンパク質)か、またはタンパク質組成物から精製され得る。BMP−2は、ホモダイマーであり得るか、または他のBMP(BMP−2およびBMP−6の各々1つのモノマーから構成されるヘテロダイマーが挙げられるがこれらに限定されない)とのヘテロダイマーであり得るか、もしくはTGF−βスーパーファミリーの他のメンバー(アクチビン、インヒビンおよびTGF−β1)とのヘテロダイマー(BMPの各々の1つのモノマーから構成されるヘテロダイマーおよびTGF−βスーパーファミリーの関連するメンバーが挙げられるがこれらに限定されない)であり得る。これらのヘテロダイマー性タンパク質の例は、例えば公開されたPCT特許出願WO93/09229に記載され、この明細書は、本明細書中に参考として援用される。好ましいBMP−2は、米国特許第5,013,649号に開示されるBMP−2ポリペプチドのアミノ酸配列を有する。
【0030】
ヒトBMP−2タンパク質は、米国特許第190,880 6,190,880号の図1に開示されるアミノ酸配列またはDNA配列を含む。この図の内容は、その全体を参考として本明細書中に援用される。ヒトBMP−2タンパク質は、成熟BMP−2サブユニットのジスルフィド連結されたダイマーおよびホモダイマーとしてさらに特徴付けられる。組換え発現されたBMP−2サブユニットは、異種アミノ末端を有するタンパク質種を含む。1つのBMP−2サブユニットは、米国特許第190,880 6,190,880号の図1(特に、図中の配列番号1および2を参照のこと)のアミノ酸番号249(Ser)−−396(Arg)を含むことによって特徴付けられる。別のBMP−2サブユニットは、米国特許第190,880 6,190,880号の図1のアミノ酸番号266(Thr)−−396(Arg)を含むことによって特徴付けられる。別のBMP−2サブユニットは、米国特許第190,880 6,190,880号の図1のアミノ酸番号296(Cys)−−396(Arg)を含むことによって特徴付けられる。成熟BMP−2サブユニットは、米国特許第6,190,880号の図1のアミノ酸番号283(Gln)−−396(Arg)を含むことによって特徴付けられる。この後者のサブユニットは、BMP−2(米国特許第6,190,880号の図1)の組換え発現から生じる、現在最も豊富なタンパク質種である。しかし、産生されたBMP−2の特定の種の集団は、培養条件を操作することによって変更され得る。BMP−2はまた、米国特許第6,190,880号の図1の配列の改変を含み得、この改変としては、他の変化の中で、アミノ酸番号241〜280の欠失およびアミノ酸番号245のアルギニンのIleへの変化が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
米国特許第6,150,328号(本明細書中に参考として援用される)において詳細に記載されるように、ヒトBMP−2は、BMP−2で形質転換された細胞を培養し、上で同定されたタンパク質種の1つ以上を培養培地から回収し、そして精製することによって産生され得、共産生された他のタンパク質様物質を実質的に含まない。
【0032】
(生物活性BMP−2微粒子の調製)
生物活性BMP−2微粒子を、BMP−2を含有する溶液と、BMP−2の沈澱を生じるイオン濃度およびpHを有する第二の溶液とを混合することによって、調製し得る。
【0033】
第一の溶液中のBMP−2の濃度は、重要ではないが、この濃度は、好ましくは、沈澱の間に可能な凝集を排除するために十分に低い。他方で、この濃度は、好ましくは、可溶性BMPの高度な損失を回避するため、および不十分に小さいBMP−2の粒子の形成を回避するために、十分に高い。いくつかの実施形態において、BMP−2ポリペプチドは、第一の溶液において、約0.1mg/mL〜20mg/mlの濃度で存在する。BMP−2についての好ましい濃度範囲は、0.75mg/ml〜2.5mg/mlである。望ましい場合、懸濁液が、さらに濃縮され得る。
【0034】
第一の溶液のpHは、約1.5〜約8(例えば、約3〜約5、好ましくは、約4.2〜約4.8)である。言及されるpHは、約4.5である。好ましい第一の溶液は、5mMのL−グルタミン酸、5mMの塩化ナトリウム、0.5%のスクロース、2.5%のグリシン、0.01%のポリソルベート80(pH4.5)をさらに含有する。第二の溶液は、第一のBMP−2含有溶液と混合される場合に、第二の溶液との接触の際にBMP−2ポリペプチドの沈澱を生じる、既知のpHおよびイオン濃度を有する。BMPの溶解度は、イオン強度、他の塩および/または緩衝液の関数であるので、調節されたイオンの強度を有する緩衝液が使用され得る。第二の溶液が高いイオン強度の溶液である場合、沈澱は、広範なpH範囲(pH4〜pH10が挙げられるが、これに限定されない)にわたって実施され得る。しかし、好ましい目標pH(すなわち、第一の溶液および第二の溶液の混合から生じる溶液のpH)は、約pH7.4である。第二の溶液が、第一の溶液の10分の1の体積で提供される場合、pHを4.5〜目標値の7.4に上昇させるために適切な組成は、1120mMのNaCl、300mMのNaHCO、11mMのNaHPO、5.5mMのNaSO、40mMのNaOH、および精製水を含有し、その結果、第二の溶液の相体積は、第一の溶液の10%である。沈澱は、代表的に、時間に依存するプロセスであるので、混合された溶液は、所望の微粒子を得るために十分に長い時間にわたって、平衡にされる。
【0035】
沈澱した微粒子は、好ましくは、当該分野において公知の方法を使用して濃縮される。好ましい方法は、遠心分離である。遠心分離条件は、微粒子の構造的一体性が損なわれないように選択される。
【0036】
BMP−2の第一の溶液または両方の沈澱溶液のいずれかは、適切なポリマー(ヒアルロン酸、コラーゲン、カルメロースナトリウム(carmellose sodium)、ポリビニルアルコール、キトサンまたはカチオン性デンプンが挙げられるが、これらに限定されない)を含有し得る。
【0037】
望ましい場合、微粒子は、凍結乾燥され得る。一般に、当該分野において公知の任意の凍結乾燥方法が使用され得る。例えば、凍結乾燥は、凍結または乾燥させることによって、実施され得る。凍結のためには、衝撃凍結または通常の凍結のいずれかが使用され得る。凍結のための好ましい処方は、液体窒素中への微粒子の90秒間の浸漬であり、その後、凍結したバイアルが−80℃で貯蔵される。
【0038】
凍結乾燥した微粒子を生成するための適切な乾燥レジメンは、一次乾燥段階および二次乾燥段階を包含する。一次乾燥段階において、BMP−2粒子含有バイアルは、減圧の非存在下で−30℃で平衡化される。次いで、バイアルが1mbarで24〜48時間、−30℃に維持される。二次乾燥段階において、このバイアルは、0.04mbarの圧力で2時間以内、20℃に加熱され、次いで、さらに5時間、同じ温度および圧力にされる。
【0039】
BMP−2ポリペプチドの構造的一体性は、当該分野において公知の方法を使用して実施され得る。例えば、分析は、フーリエ変換赤外分光学を介して実施され得る。さらに、粒子を再溶解した後に、ゲル電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ペプチドマッピングを実施して、BMP−2ポリペプチドの構造的一体性を検証し得る。非対称場のフロー分別が挙げられる技術を使用して、BMP−2微粒子の溶解の程度を決定し得る。
【0040】
BMP−2微粒子は、好ましくは、生物活性な形態で提供される。生物活性とは、BMP−2が、再可溶化された場合に、BMP−2ポリペプチドに関連する少なくとも1つの生物学的化性を維持することを意味する。例えば、BMP−2タンパク質は、骨形成を誘導する能力によって特徴付けられ得る。ヒトBMP−2はまた、W20バイオアッセイにおいてインビトロ活性を有する(米国特許第6,190,880号およびそこに記載される参考文献を参照のこと)。ヒトBMP−2は、軟骨形成を誘導する能力によって、さらに特徴付けられ得る。ヒトBMP−2は、上記出願に記載されるラット骨形成アッセイにおいて、軟骨および/または骨の形成を示す能力によって、さらに特徴付けられ得る。
【0041】
望ましい場合、BMP−2微粒子は、ポリマーキャリアに会合して提供され得る。いくつかの実施形態において、このポリマーキャリアは、生分解性である。このポリマーキャリアは、天然または合成であり得る。適切な生分解性キャリアとしては、ポリラクチド、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリエチレン酢酸ビニル、またはナイロンが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーキャリアは、除放マトリックスを提供するように処方され得る。徐放マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、Lグルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドから構成される、注射可能なマイクロスフィア))、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーは、100日間にわたる分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルは、より短期間でタンパク質を放出する。適切な天然ポリマーキャリアとしては、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸、およびセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。望ましい場合、微粒子は、治療量の少なくとも1種のさらなる骨形成タンパク質、あるいは骨および/もしくは軟骨の欠損、損傷、または問題の組織の処置のために有用な別の薬剤を含有し得る。これらの薬剤としては、種々の増殖因子(例えば、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子(TGF)、およびインスリン様増殖因子(IGF))が挙げられる。
【0042】
種々のサイズのBMP−2微粒子が、それらの製造において使用される条件を変化させることによって、調製され得る。種々の実施形態において、微粒子は、約0.1μm〜約2000μmの直径を有する。例えば、適切な微粒子直径は、0.5μm〜約1500μm、1μm〜約1000μm、5μm〜約750μm、10μm〜約500μm、15μm〜約250μm、25μm〜約125μm、および37μm〜約75μmの範囲であり得るが、これらに限定されない。他の適切な範囲としては、0.5μm〜約140μm、5μm〜約85μm、約15μm〜約75μm、または約25μm〜約50μmが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
微粒子のサイズは、当該分野において公知の方法およびデバイスを使用して、評価され得る。これらとしては、MASTERSIZER(登録商標)X(Malvern Instruments Ltd.,Malvern,United Kingdom)が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、粒子の濃度は、4〜5mlのサンプルセル体積に対して最適化される。
【0044】
BMP−2微粒子は、これらを水溶液中に入れることによって、再溶解または再懸濁され得る。処方物緩衝液は、好ましくは、生理学的濃度またはその近くのナトリウムおよびイオンを含有する。水性懸濁液の適切な組成は、107mMのNaCl、27mMのNaHCO、1mMのNaHPO、0.5mMのNaSOを含有する。
【0045】
(BMP−2微粒子を含有する薬学的組成物およびBMP−2微粒子を使用する方法)
BMP−2微粒子は、種々の適応症を処置するための薬学的組成物を調製するために使用され得る。いくつかの実施形態において、微粒子は、合成され、そして水性懸濁液において利用される。他の実施形態において、薬学的組成物は、被験体への送達の直前に微粒子を再懸濁させることによって、調製される。望ましい場合、BMP−2粒子は、その意図される作用部位に、粉末として、直接局所的な適用で送達され得る。BMP−2微粒子は、さらに、所望であれば、他の非水性ビヒクル(油または生体適合性有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない)中での懸濁液として送達され得る。
【0046】
本発明のBMP−2微粒子ベースの薬学的組成物および治療方法は、BMP−2タンパク質を溶液に導入する際に起こる、BMP−2の再可溶化または再懸濁を利用する。従って、本発明は、再可溶化または再懸濁されたBMP−2ポリペプチドを含有する水性BMP−2懸濁液を提供すること、およびこの水性懸濁液を、この被験体におけるBMP−2レベルを上昇させるために十分な量で、この被験体に導入することによって、被験体における骨形態タンパク質−2(BMP−2)のレベルを上昇させる方法を包含する。BMP−2レベルの上昇は、投与後の被験体においてBMP−2ポリペプチドのレベルを評価することによって、決定され得る。BMP−2レベルは、試薬(抗BMP−2抗体が挙げられるが、これに限定されない)を使用して、直接決定され得る。いくつかの実施形態において、5×10倍、1×10倍、1×10倍、1×10倍、または1×10倍、あるいはそれより大きい、BMP−2レベルの上昇が、投与後に起こる。
【0047】
好ましくは、BMP−2タンパク質レベルの上昇は、治療有効量である。治療有効量は、BMP−2タンパク質での処置から利益を受けることが既知の条件における改善を同定することによって、決定され得る。例えば、BMP−2タンパク質は、軟骨および/または骨の形成を誘導する能力によって、ならびに米国特許第5,066,058号に記載されるラット骨形成アッセイにおいて軟骨および/または骨の形成を示す能力によって、さらに特徴付けられる。好ましい実施形態において、本発明のタンパク質は、このラット骨形成アッセイにおいて、0.5μg〜100μg/骨のグラム数の濃度で、活性を示す。より好ましい実施形態において、これらのタンパク質は、このアッセイにおいて、1μg〜50μg/骨のグラム数の濃度で、活性を示す。より好ましくは、これらのタンパク質は、1μgのタンパク質が、米国特許第5,066,058号の実施例VIIに記載される改変されたスコア付けを使用して、実施例IIIに記載されるラット骨形成アッセイにおいて、少なくとも+1のスコアを有することによって特徴付けられ得る。
【0048】
BMP−2微粒子から再懸濁または再可溶化されたBMP−2タンパク質を含有する水性懸濁液は、水溶液に、沈澱した生物活性骨形成タンパク質2(BMP−2)を含有する微粒子を導入すること、および沈澱したBMP−2タンパク質を再可溶化させることによって、調製され得る。
【0049】
他の実施形態において、微粒子は、凍結乾燥された微粒子として水性懸濁液に導入される。
【0050】
BMP−2微粒子およびその懸濁液は、骨折ならびに軟骨および/または骨の欠損または歯周病に関連する他の状態を修復するための方法ならびに組成物において、使用され得る。さらに、本発明は、創傷治癒および組織修復のための、治療方法および組成物を包含する。このような組成物は、微粒子由来の治療有効量のBMP−2ポリペプチドを、薬学的に受容可能なビヒクル、キャリアまたはマトリックスとの混合物中で含有する。微粒子から放出されるBMP−2ポリペプチドは、他の関連するタンパク質および増殖因子と協奏的に、またはおそらく相乗的に作用し得る。
【0051】
BMP−2微粒子は、治療量の少なくとも1種のさらなる骨形成タンパク質と共に使用され得る。さらに、BMP−2微粒子は、骨および/または軟骨の欠損、創傷または問題の組織の処置のために有利な、他の薬剤と混合され得る。この薬剤としては、種々の増殖因子(例えば、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子(TGF)、およびインスリン様増殖因子(IGF))が挙げられる。このような生理学的に受容可能なタンパク質組成物の調製および処方(pH、等張性、安定性などに対する当然の考慮を有する)は、当該分野の技術範囲内である。治療組成物はまた、獣医学の応用に対して、現在価値がある。特に、ヒトに加えて家畜動物および純血種のウマは、微粒子から調製されたBMP−2の微粒子または処方物を含有する治療組成物でのこのような処置のために望ましい患者である。
【0052】
さらなる適応症としては、歯周病の処置、および他の歯の修復プロセスが挙げられる。このような薬剤は、骨形成細胞を誘引する環境を提供し得るか、骨形成細胞の成長を刺激し得るか、または骨形成細胞の子孫の分化を誘導し得る。さらなる適応症としては、骨粗鬆症、ニューロンの生存の増加が望ましい状態、創傷治癒および関連する組織修復が挙げられる。創傷の型としては、火傷、切開および潰瘍が挙げられるが、これらに限定されない。(創傷治癒および関連組織修復の議論について、本明細書中に参考として援用される、PCT公開WO84/01106を参照のこと)。
【0053】
治療方法は、BMP−2微粒子(または再懸濁されたBMP−2微粒子から調製された処方物)を投与する工程を包含する。本発明の薬学的組成物は、意図される投与経路と適合性の処方物である。投与の様式は、生物活性薬剤および意図される適用部位に基づいて、選択される。再可溶化または再懸濁される場合、BMP−2微粒子の使用は、全身的または局所的であり得る。投与経路の例としては、局所、非経口(静脈内、皮内、皮下が挙げられるが、これらに限定されない)、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜、ならびに直腸投与が挙げられる。局所、非経口、皮内、または皮下の適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含有し得る:滅菌希釈剤(例えば、注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または重硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩);等張性を調節するための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはブドウ糖);および界面活性剤(例えば、Cremophor EL、ポリソルベート20、ポリソルベート60、またはポリソルベート80)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて調整され得る。非経口調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または多用量バイアルに収容され得る。投与が全身である場合、BMP−2微粒子、またはBMP−2微粒子を含有するかもしくはBMP−2に由来する組成物は、被験体における所望の部位の標的化および/またはその部位での保持を容易にする、会合した物質をさらに含有し得る。
【0054】
注射可能用途に適切な薬学的組成物としては、滅菌水溶液(水溶性である場合)、または分散物、および滅菌注射用溶液および分散物の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与について、適切なキャリアとしては、生理学的生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、この組成物は、無菌でなければならず、そして容易にシリンジ中に存在する程度まで流動性でなければならない。この組成物は、製造条件および貯蔵条件下で安定であるべきであり、かつ微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用から保護されるべきである。このキャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)を含む溶媒または分散媒体、ならびにそれらの適切な混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング(例えば、レクチン)を使用することによって、分散物の場合は、必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウム)がこの組成物中に含まれることが好ましい。注射可能組成物の延長した吸収は、この組成物中に、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによって、もたらされ得る。
【0055】
滅菌注射用溶液は、活性化合物(BMP−2微粒子から再可溶化または再懸濁されたBMP−2タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない)を、必要な量で、上で列挙された成分の1つまたはこれらの成分の組合せを含む適切な溶媒中に組み込み、必要に応じて滅菌濾過することによって、調製され得る。
【0056】
この薬学的組成物は、容器、パック、またはディスペンサ中に、投与のための指示書と共に含まれ得る。
【0057】
再懸濁または再可溶化された生体活性剤を含む経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用キャリアを含む。これらは、ゼラチンカプセル中に封入され得るか、または錠剤に圧縮され得る。経口治療投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ得、そして錠剤、トローチまたはカプセル剤の形態で使用され得る。経口組成物はまた、うがい薬として使用するための液体キャリアを使用して調製され得、ここで、流体キャリア中の化合物は、経口的に適用され、そしてかみ砕かれ(swish)、そして吐き出されるかまたは嚥下される。薬学的に適合性の結合剤および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチなどは、以下の成分または類似の性質の化合物のうちの任意のものを含み得る:結合剤(例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース);崩壊剤(例えば、アルギニン酸、Primogelまたはコーンスターチ);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes);滑沢剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);または香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバー)。
【0058】
生体活性剤の吸入による投与について、これらの化合物は、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素のようなガス)を含む加圧容器またはディスペンサ、あるいはネブライザーから、エアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0059】
全身投与はまた、経粘膜投与または経皮投与により得る。経粘膜投与または経皮投与について、透過されるバリアに適切な透過剤が、処方物において使用される。このような透過剤は、一般に当該分野で公知であり、これには、例えば、経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフジシン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用によって達成される。経粘膜投与について、活性化合物は、当該分野で一般的に公知のような軟膏剤(ointmentまたはsalve)、ゲルまたはクリームに処方される。
【0060】
これらの化合物はまた、直腸送達のための坐剤(例えば、従来の坐剤基剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドを含む)または保持浣腸の形態で調製され得る。
【0061】
投与される場合、本発明における使用のための薬学的組成物は、代表的に、発熱物質を含まない薬学的に受容可能な形態で送達される。さらに、この組成物は、望ましくは、骨の軟骨または組織の損傷の部位に送達するために、粘性形態でカプセル化されるかまたは注射され得る。局所投与は、創傷治癒および組織修復のために適切であり得る。好ましくは、骨および/または軟骨の形成について、この組成物は、BMPタンパク質を骨および/または軟骨の損傷部位に送達し得、骨および軟骨を発達させるための構造を提供し得、そして必要に応じて身体に再吸収され得るマトリクスを含む。このようなマトリクスは、他の移植された医療適用のために現在使用される材料から形成され得る。
【0062】
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、表面的な外見および界面特性に基づく。BMP−2組成物の特定の適用は、適切な処方物を規定する。この組成物に潜在的な材料は、生分解性で化学的に規定された、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であり得る。他の潜在的な材料(例えば、骨または皮膚のコラーゲン)は、生分解性であり、生物学的に十分に規定されている。さらなるマトリクスは、純タンパク質または細胞外マトリクス成分から構成される。他の潜在的なマトリクス(例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、または他のセラミック)は、非生分解性であり、化学的に規定されている。マトリクスは、上記のタイプの材料の任意のものの組合せ(例えば、ポリ乳酸とヒドロキシアパタイト、またはコラーゲンとリン酸三カルシウム)から構成され得る。バイオセラミックの組成は変更され得る(例えば、カルシウム−アルミン酸塩−リン酸塩)、そして孔サイズ、粒子サイズ、粒子形状および生分解性を変更するように処理される。
【0063】
投薬レジメンは、担当の医師により、BMP−2タンパク質の作用を変更する種々の要因を考慮して決定される。これらの要因としては、形成されることが所望される骨の重量、骨の損傷部位、損傷した骨の状態、創傷のサイズ、損傷した組織の型、患者の年齢、性別および食餌、任意の感染の重篤度、投与時間および他の臨床的要因が挙げられるが、これらに限定されない。投薬量は、再構築に使用されるマトリクスの型と共に変化し得る。他の公知の成長因子(例えば、IGFI(インシュリン様成長因子I))の最終組成物への添加はまた、投薬量に影響を与え得る。進行は、骨の成長および/または修復の定期的な評価によってモニタリングされ得る。骨の成長または修復を評価する1つの方法は、X線画像化による方法である。
【0064】
本発明は、以下の非限定的な実施例でさらに例示される。
【実施例】
【0065】
(実施例1:BMP−2微粒子の調製)
BMP−2微粒子を、BMP−2タンパク質を含む第1の溶液と、第2の沈殿溶液とを混合することによって調製する。
【0066】
この第1の溶液は、rhBMP−2を、0.1〜2mg/mlの濃度で含み、pH 4.5である。第2の溶液は、10分の1の容量(第1の溶液の容量に対して)で添加された際、BMP−2タンパク質が沈殿し、そして合わせた溶液の最終pHがpH7.4になるように処方される。この第2の溶液は、1120mMのNaCl、300mMのNaHCO、11mMのNaHPO、5.5mMのNaSO、40mMのNaOHおよび純水を含む。
【0067】
沈殿を、10%(容量/容量)の沈殿溶液(これは、生理学的塩およびpH調整剤の両方を含む)を添加することによって実施する。この沈殿は、必要な容量に依存して、滅菌チューブ(15または50ml)中で実施される。BMPストック溶液で50mlのチューブを満たすことは、撹拌を使用することによって流動溶液を作製するために十分な空間を有するために、30mlに制限される。
【0068】
迅速かつ均一な分布を達成するために、流動BMPバルク溶液を、沈殿溶液の添加の10秒前の撹拌によって、および沈殿溶液の添加の10秒後の撹拌によって作製する。さらに、50mlのチューブバッチにおいて、元のキャップを、全直径約3mmの中心を有するキャップと交換して、沈殿溶液をピペッティングする。沈殿溶液を添加した後、このチューブを、元のキャップで密閉し、そして所望の時間の間平衡化する(実施例2を参照のこと)。
【0069】
次いで、BMP−2微粒子を、遠心分離によって濃縮し、その後、これらの微粒子を凍結乾燥する。
【0070】
(実施例2.BMP−2微粒子サイズの評価)
BMP−2微粒子の直径を、MALVERN MASTERSIZER X(登録商標)機器(Malvern Instruments Ltd.,Malvern,UK)を使用して、4〜5mlの容量に対して設計されたサンプルセルを用いて、評価した。rhBMP−2溶液とストック溶液の混合を使用して、生理学的塩濃度を作成した。
【0071】
種々の時間の間の平衡化に供された微粒子の集団中の粒子直径の範囲を、図1〜3に示す。図1は、10分未満の間平衡化された微粒子の、2つのバッチにおいて得られたサイズ分布を示す。ほとんどの粒子の直径は、10μmより小さく、ピークは、直径5μm〜6μmの微粒子でピークが検出された。
【0072】
図2は、10分と110分との間平衡化された微粒子の3つのバッチについて得られたサイズ分布を示す。6μm〜9μmが、最も一般的なサイズ範囲であるが、図1で観察された分布と比較して、10μmより大きい直径を有するより多数の微粒子が、観察された。
【0073】
図3は、160分までの間平衡化された粒子の4つのバッチを使用した結果を示す。最も一般的なサイズ範囲は、6μm〜9μmであるが、第2のピークが、30μm〜40μmのサイズ範囲で検出される。
【0074】
これらの結果は、1〜100μmの範囲の微粒子が、これらの研究で得られることを示し、そして最大約6±1μmおよび31±5μmの二峰性分布を示した。
【0075】
粒子サイズに対する遠心分離の影響を決定した。以下の3つの条件下における遠心分離の後の結果を、図4に示す:230Gで15分;2550Gで10分、または3990Gで15分。これらの研究において、粒子サイズは、後の遠心分離によってわずかにしか影響を受けなかった。
【0076】
微粒子サイズに対する凍結乾燥の影響を試験した。凍結乾燥の程度を、乾燥速度および累積的水分損失を測定することによって評価した。凍結乾燥の程度を、図5に示す。粒子サイズに対する凍結乾燥の影響を、図6に示す。凍結乾燥は、35μmのd50値および85μmのd90値を有する広い単峰性分布への変化を引き起こした。
【0077】
多量(720mg)のタンパク質を含む溶液を使用して得られた粒子サイズを試験した。粒子サイズを、沈殿、遠心分離および凍結乾燥の後に決定した。その結果を、図7に示す。遠心分離および凍結乾燥は、沈殿のみに供された微粒子の直径と比較して、微粒子の直径における変化を引き起こした。
【0078】
BMP−2含有溶液と沈殿溶液との混合を、インターデジタルシグナル混合デバイス(MICROMIXER(登録商標)デバイス、Institut fur Mikrotechnik,Mainz,Germany)を使用して実施した。このデバイスは、薄い壁を有するラメラを介する拡散を使用して、少ない容量の組合せを可能にする。平衡化を、0.1mg/ml、0.5mg/ml、および2.5mg/mlのBMP−2濃度を使用して、20〜480分間実施した。直径分布を、図8に示す。3つ全ての濃度について、二峰性のサイズ分布が得られ、ここで、ピークは、約6〜9μm付近であり、第2のより広い分布は、約40〜60μmに中心があった。
【0079】
タンパク質の完全性を、微粒子の溶解後に分析した。BMP−2は、溶解後、インタクトであることが見出された。
【0080】
(他の実施形態)
示される記載は、例示することを意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない。上記の本発明は、BMP−2を参照して記載されているが、本明細書中に記載される方法が、他の生体活性剤のための微粒子、およびこれらの微粒子に基づく薬学的組成物を作製するために使用され得ることが理解される。これらの生体活性剤としては、さらなる骨形成タンパク質、トランスフォーミング成長因子−βスーパーファミリーのメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。この方法はまた、BMP−2と類似した溶解性およびpI特性を有する治療用ポリペプチドを含む微粒子を作製するために使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−59211(P2010−59211A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284564(P2009−284564)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2003−565426(P2003−565426)の分割
【原出願日】平成15年2月10日(2003.2.10)
【出願人】(504299748)
【出願人】(504301889)ザ ユニバーシティー オブ エアランゲン−ニュルンベルク (1)
【Fターム(参考)】