説明

生体測定用プローブ

【課題】光の混合による測定スペクトルへの影響をより軽減しつつ、外乱の影響をより軽減することのできる生体測定用プローブを得る。
【解決手段】照射ファイバ35および受光ファイバ34は、当該照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aが生体の皮膚表面43aに略平行に当接するように配置される垂直部35b、34bと、生体の皮膚表面43aに略平行に延在するように配置される平行部35c、34cと、垂直部35b、34bと平行部35c、34cとを連設する屈曲部35d、34dと、が形成されるようにプローブ本体30に取り付けられている。そして、照射ファイバ35および受光ファイバ34を、少なくとも屈曲部35d、34dにおいて光学的に隔離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の皮膚組織に近赤外光を照射すると共に、前記皮膚組織からの拡散反射あるいは透過光を受光し、得られた皮膚組織からの信号の測定を行い、生体成分や性状の定性・定量分析を行う生体成分センシング技術に関するもので、特に、皮膚組織中のグルコース濃度変化を代用特性として生体の血糖値を測定する血糖値モニタリング装置において皮膚組織スペクトルを測定する生体測定用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
血糖値測定あるいは血糖値モニタリングについては、以前より糖尿病患者の血糖値管理へのニーズが高かったが、近年、集中治療室(ICU)で血糖値を適切な範囲に管理することで死亡率の低下、合併症の発生率の低下等の医療効果が医学的に検証され、その応用分野が広がっている。
【0003】
血糖値の測定手法は、採血した血液を用い、グルコースオキシダーゼ等の酵素反応を利用して定量する侵襲的手法(酵素電極法…GOD法、GDH法等、酵素比色法…HX法等)と、採血のような体を傷つける操作を行わないで、生体から得られる何らかの情報をもとに血糖値を推定する非侵襲的手法に大別できる。
【0004】
測定装置としては、臨床検査用の大型装置のみならず侵襲的手法による携帯型血糖計が糖尿病患者の自己血糖値測定(SMBG)に広く利用されており、患者の指等の身体部位を針(ランセット)で穿刺し、1滴程度の血液を採取して血糖値測定を行う。このような採血による血糖値測定の信頼性は高く、自己血糖値測定に用いられる携帯型血糖計でも市販されているほとんどの機種において測定誤差は15%以下である。
【0005】
非侵襲的に血糖値を推定する手法としては様々なものが提案されているが、推定精度や信頼性に課題を残しており、今の時点で、日本国の薬事承認や米国のFDA認可を得た製品はない。提案されている手法の中では近赤外光を用いる手法が最も知られている。近赤外光により非侵襲的に血糖値を測定する手法は、生体組織に近赤外光を照射し、生体組織内を拡散反射した光を測定して得られる信号やスペクトルから生体組織を定性・定量分析を行う。
【0006】
その一例を示すと、特許文献1に開示されるような生体組織から得られた近赤外スペクトルから血糖値を測定する手法が提案されている。図13(A)及び(B)は、特許文献1に開示された非侵襲式の光学式血糖値測定システムを示すもので、ハロゲンランプ1から発光された近赤外光は熱遮蔽板2、ピンホール3、レンズ4、光ファイババンドル5を介して生体組織6に入射される。
【0007】
光ファイババンドル5には、測定用光ファイバ7の一端とリファレンス用光ファイバ8の一端が接続されている。測定用光ファイバ7の一端は、皮膚組織用測定用プローブ9に接続されており、リファレンス用光ファイバ8の他端はリファレンス用プローブ10に接続されている。さらに、皮膚組織測定用プローブ9およびリファレンスプローブ10は、光ファイバ7を介して測定側出射体11、リファレンス側出射体12にそれぞれ接続されている。
【0008】
人体の前腕部など生体組織6の表面に皮膚組織測定用プローブ9の先端面を接触させて近赤外スペクトル測定を行う時、ハロゲンランプ1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光は、この光ファイババンドル5内を伝達し、図13(B)に示すような皮膚組織測定用プローブ9の先端から同心円周上に配置された12本の発光ファイバ20より生体組織6の表面に照射される。
【0009】
生体組織6に照射された測定光は、生体組織6内で拡散反射した後に、拡散反射光の一部が皮膚組織測定用プローブ9の先端中心に配置されている受光ファイバ19に受光される。受光された光は、この受光ファイバ19を介して、測定側出射体11から出射される。測定側出射体11から出射された光は、レンズ13を通して回折格子14に入射し、分光された後、受光素子15において検出される。
【0010】
受光素子15で検出された光信号は、A/Dコンバーター16でAD変換された後、パーソナルコンピュータなどの演算装置17に入力される。血糖値は、このスペクトルデータを解析することによって算出される。リファレンス測定は、セラミック板などの基準板18を反射した光を測定し、これを基準光として行う。すなわち、ハロゲンランプ1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光は、リファレンス用光ファイバ8を通して、リファレンス用プローブ10の先端から基準板18の表面に照射される。
【0011】
基準板に照射された光の反射光は、リファレンス用プローブ10の先端中心に配置された受光ファイバ19を介してリファンレス側出射体12から出射される。前記測定側出射体11とレンズ13の間、及びこのリファンレス側出射体12とレンズ13の間にはそれぞれシャッター22が配置してあり、シャッター22の開閉によって測定側出射体11からの光とリファンレス側出射体12からの光のいずれか一方が選択的に通過するようになっている。
【0012】
皮膚組織測定用プローブ9とリファレンス用プローブ10の端面は、図13(B)のように円上に配置された12本の発光ファイバ20と、その中心に配置された1本の受光ファイバ19で構成されている。発光ファイバ20と受光ファイバ19の中心間距離Lは、0.65mmである。測定側出射体11とリファレンス側出射体12の端面は、図示を省略するが、出射ファイバが中心に配置されている。
【0013】
この装置では、皮膚表面より表皮、真皮、皮下組織の層状構造を有する皮膚組織のうち真皮部分のスペクトルを選択的に測定するため、図13(B)に示すように、中心間距離L=0.65mmに受光ファイバ19を配置し、入射点と検出点とする皮膚組織測定用プローブ9を用いている。この皮膚組織測定用プローブ9を皮膚表面に接触させスペクトル測定を行うと、入射光ファイバより照射された近赤外光は皮膚組織内を拡散反射し、入射された光の一部が検出用光ファイバに到達し、その光の伝播経路はバナナ・シェイプと呼ばれる経路をとり、真皮部分を中心に伝播する。したがって、吸光信号のSN比が向上し、精度よく生体成分濃度の測定ができる。
【0014】
また、従来の皮膚組織測定用プローブとして、例えば特許文献2に開示された構造がある。この皮膚組織測定用プローブは、皮膚表面に光ファイババンドルの先端部であるプローブを固定し、該プローブから近赤外光を該皮膚に照射することで皮膚組織の光学的信号を測定するものである。そして、プローブから10cm以内の位置に、光ファイババンドルの任意の部位を支持して固定する支持固定手段を設け、プローブから支持固定手段間に配策する光ファイババンドルを屈曲自在としている。
【0015】
また、従来の皮膚組織測定用プローブとして、例えば特許文献3に開示された構造がある。この皮膚組織測定用プローブは、皮膚表面に当接する皮膚当接面を有するプローブ本体と、通信用ケーブルを介して発光源及び受光処理部にそれぞれ接続された射光面及び受光面を有する受発光部とを備えている。そして、受発光部がプローブ本体の一側面から一体に延設されており、受発光部の射光面及び受光面を皮膚当接面と平行で且つ皮膚当接面と離間方向に1〜3mm偏位させた構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−087913号公報
【特許文献2】特開2011−062402号公報
【特許文献3】特開2003−079589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
採血によらず非観血的、非侵襲的に血糖値を推定する手法は、患者に負担をかけず血糖値を測定できるためにそのニーズは高く、多くの研究開発が行われ、検討に用いられた測定手法としても様々なものが提案されている。しかしながら、推定精度や信頼性に課題を残しており、今の時点で、日本国の薬事承認や米国のFDA認可を得た製品はない。
【0018】
また、本発明が対象とする近赤外光を用いた非侵襲血糖値測定においても推定精度や信頼性に課題を残しているが、推定精度や信頼性を低下させる一つの要因として測定中の体動に伴う皮膚組織測定用プローブ9と皮膚との接触状態の変化がある。体動による皮膚組織測定用プローブ9と皮膚との接触状態変化を軽減させるには、体が動かないように厳格に固定するか、体が動いても皮膚組織測定用プローブ9と皮膚との接触状態が変化しにくい構造とするかの何れかの対応をとる必要がある。
【0019】
しかしながら、特許文献1のような非侵襲血糖測定に適した近赤外波長用の光ファイバには、直径200μm程度のガラス製のものを使用する必要があり、そのため剛性が比較的強く、曲がりにくい特性を有する。そのため、皮膚組織測定用プローブ9付近では、光ファイバを可能な限り曲げないように皮膚表面に対して垂直方向に光ファイババンドル5を長く伸ばす傾向があり、それによって体動等による力が光ファイババンドル5の先端部に伝わり易く、その影響を受け易い。
【0020】
そこで、特許文献2では、プローブから10cm以内の位置に、光ファイババンドルの任意の部位を支持して固定する支持固定手段を設け、体動等による力が光ファイババンドル5の先端部に伝わりにくくしている。
【0021】
しかしながら、この特許文献2の構造では、光ファイババンドルを測定プローブから測定皮膚と垂直方向に突出するように設置し、光ファイババンドルを逆U字状となるように屈曲させた状態で、光ファイババンドルの任意の部位を支持固定手段で支持している。
【0022】
そのため、光ファイババンドルの逆U字状の部位に物やヒトが接触した際に、外乱が発生して測定条件が不安定となり、測定スペクトルに影響してしまうおそれがある。
【0023】
これに対する解決手段として、特許文献3のように、測定プローブ内でファイバを屈曲させ、測定皮膚と平行方向にファイバを引き出す方法が提案されている。
【0024】
ところで、体動等による力の影響を受けないようにするには、測定皮膚と平行方向に引き出すファイバの測定皮膚との距離が小さい方が好ましい。
【0025】
しかしながら、上述したように、非侵襲血糖測定に適した近赤外波長用の光ファイバは、剛性が比較的強く、曲がりにくい特性を有する。そのため、光ファイバを数ミリ程度の小さな曲率半径で屈曲させると光ファイバが折れてしまうおそれがある。
【0026】
さらに、特許文献3の構造では、受発光部の射光面及び受光面を皮膚当接面と平行で且つ皮膚当接面と離間方向に1〜3mm偏位させている。
【0027】
このように、特許文献3の構造では、測定皮膚と平行方向に引き出すファイバの測定皮膚との距離をあまり小さくすることができず、外乱の影響をより軽減することが難しいという課題がある。
【0028】
また、ファイバを屈曲させると、屈曲部からファイバ外部に漏れた光が、他のファイバの屈曲部から内部に浸入し、光の混合が生じてしまい、測定スペクトルに影響してしまうおそれもある。
【0029】
そこで、本発明は、光の混合による測定スペクトルへの影響をより軽減しつつ、外乱の影響をより軽減することのできる生体測定用プローブを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、近赤外光を生体の皮膚組織に照射する照射ファイバと、前記皮膚組織からの拡散反射あるいは透過光を受光する受光ファイバとを有する生体測定用プローブであって、前記照射ファイバおよび受光ファイバは、当該照射ファイバの照射面および受光ファイバの受光面が生体の皮膚表面に略平行に当接するように配置される垂直部と、生体の皮膚表面に略平行に延在するように配置される平行部と、前記垂直部と平行部とを連設する屈曲部と、が形成されるようにプローブ本体に取り付けられており、前記照射ファイバおよび受光ファイバが、少なくとも前記屈曲部において光学的に隔離されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、照射ファイバおよび受光ファイバは、当該照射ファイバの照射面および受光ファイバの受光面が生体の皮膚表面に略平行に当接するように配置される垂直部と、生体の皮膚表面に略平行に延在するように配置される平行部と、垂直部と平行部とを連設する屈曲部と、が形成されるようにプローブ本体に取り付けられている。すなわち、照射ファイバおよび受光ファイバを屈曲させることで、測定皮膚表面と略平行方向に照射ファイバおよび受光ファイバを引き出すようにしている。そのため、照射ファイバおよび受光ファイバが測定皮膚と垂直方向に突出する場合に比べて、物やヒトなどの接触等の影響を受けにくくすることができる。
【0032】
さらに、本発明によれば、照射ファイバおよび受光ファイバの少なくとも屈曲部を光学的に隔離させている。そのため、照射ファイバおよび受光ファイバの光の混合による測定スペクトルへの影響をより軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、皮膚組織測定用プローブで測定する皮膚組織を模式的に示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態の皮膚組織測定用プローブを装着させる生体部位を示す図である。
【図3】図3は、第1実施形態の皮膚組織測定用プローブを示す図であって、(A)は断面図、(B)は図3(A)のA部を拡大して示す図である。
【図4】図4は、第1実施形態の光ファイバの変形例を示す断面図である。
【図5】図5は、第1実施形態の皮膚組織測定用プローブおよび従来の皮膚組織測定用プローブの応力発生状態を説明する図であって、(A)は従来の皮膚組織測定用プローブの応力発生状態を示す図、(B)は第1実施形態の皮膚組織測定用プローブの応力発生状態を示す図である。
【図6】図6は、第1実施形態の光ファイバとその変形例の光ファイバを模式的に示す図であって、(A)は第1実施形態の光ファイバを示す図、(B)は変形例の光ファイバを示す図である。
【図7】図7は、第2実施形態の皮膚組織測定用プローブを示す図であって、(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【図8】図8は、第3実施形態の皮膚組織測定用プローブを示す断面図である。
【図9】図9は、第4実施形態の皮膚組織測定用プローブを示す斜視図である。
【図10】図10は、第4実施形態の第1変形例の皮膚組織測定用プローブを示す斜視図である。
【図11】図11は、第4実施形態の第2変形例の皮膚組織測定用プローブを示す図であって、(A)は光ファイバの先端を離脱させた状態を示す斜視図、(B)は先端を離脱させた光ファイバをプローブ本体に固定させようとしている状態を示す斜視図である。
【図12】図12は、第4実施形態の第3変形例の皮膚組織測定用プローブを示す斜視図である。
【図13】図13は、従来の皮膚組織測定装置を示す図であって、(A)は全体構成図、(B)は光ファイババンドルの先端部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0035】
(第1実施形態)
非侵襲的に血糖値を推定するには、波長が1300nm以上2500nm以下の近赤外光を皮膚に照射することで皮膚組織の光学的信号(拡散反射スペクトル)を測定することで推定できる。生体の皮膚組織は、図1に示すように、大きく分類すると表皮組織S1、真皮組織S2、皮下組織S3の3層の組織で構成される。
【0036】
表皮組織S1は、角質層を含む組織で、組織内に毛細血管はあまり発達していない。皮下組織S3は、主に脂肪組織で構成されている。したがって、この二つの組織内に含まれる水溶性の生体成分濃度、特に、グルコース濃度と血中グルコース濃度(血糖値)との相関は低いと考えられる。
【0037】
一方、真皮組織S2については、毛細血管が発達していることと、水溶性の高い生体成分、特にグルコースが組織内で高い浸透性を有することから、組織内生体成分濃度、特に間質液(ISF: Interstitial Fluid)中のグルコース濃度は血糖値に追随して変化すると考えられる。したがって、真皮組織S2を標的としたスペクトル測定を行えば、生体成分濃度、特に血糖値変動と相関するスペクトル信号の測定が可能となる。
【0038】
波長が1300nm以上2500nm以下の近赤外光を用いる場合、発光部100と受光部101を中心間距離L=0.65mmとして両者を離して構成した近赤外スペクトル皮膚組織測定用プローブを皮膚に接触させて近赤外スペクトル測定を行うと、発光部100から照射された近赤外光Hvは照射面より皮膚組織に照射され、皮膚組織内を拡散反射してその一部が受光部101に到達する。この際の光の伝播経路は、真皮組織S2を中心として、皮膚組織内伝播し、バナナ・シェイプと呼ばれる形状をとるので、皮膚組織の深さ方向の選択的測定を可能とし、精度良い測定ができる。
【0039】
次に、本実施形態にかかる皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)について説明する。
【0040】
図3に示す本実施形態の皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aは、近赤外光Hvを生体の皮膚組織に照射する照射ファイバ35と、皮膚組織からの拡散反射あるいは透過光を受光する受光ファイバ34と、を有する光ファイバ33を備えている。
【0041】
この受光ファイバ34および照射ファイバ35としては、直径50μm以上300μm未満のものを用いるのが好ましい。本実施形態では、直径200μmの受光ファイバ34および照射ファイバ35を用いている。このように、直径200μmの受光ファイバ34および照射ファイバ35を用いることで、測定時の光学的なロスを最小限に抑えつつ、当該ファイバを容易に屈曲させることができるようになる。
【0042】
また、本実施形態では、光ファイバ33は、受光ファイバ34または照射ファイバ35の同心円上に、照射ファイバ35または受光ファイバ34を複数配置することで形成されている。
【0043】
具体的には、光ファイバ33は、図13(B)と同様に、同心円上に配置された12本の照射ファイバ35と、その中心に配置された1本の受光ファイバ34とで構成されている。なお、照射ファイバ35と受光ファイバ34の中心間距離Lも、図13(B)と同様に、0.65mmとなっている。
【0044】
また、皮膚組織測定用プローブ30Aは、照射ファイバ35および受光ファイバ34を固定支持するプローブ本体30を備えている。
【0045】
本実施形態では、プローブ本体30は、内部に空間31aが形成された有底筒状のハウジング31と、当該ハウジング31の空間31aを塞ぐように取り付けられる蓋部32と、を備えている。
【0046】
ハウジング31は、略筒状の側壁部31bと、略円板状の底壁部31cと、側壁部31bの上部から略平行に延設され、蓋部32が取り付けられるフランジ部31dと、を備えている。
【0047】
そして、底壁部31cの略中央部には、照射ファイバ35および受光ファイバ34の先端(照射面35aおよび受光面34aが形成された先端部:後述する垂直部34b、35b)を内側から外側に挿通させた状態で固定する挿通孔31eが形成されている。
【0048】
本実施形態では、接着剤50を用いて垂直部34b、35bの先端側(照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍)をハウジング31(プローブ本体30)に固定している。
【0049】
このとき、照射面35aおよび受光面34aを底壁部31cから若干突出させた状態で、垂直部34b、35bの先端側をハウジング31(プローブ本体30)に固定している。
【0050】
さらに、底壁部31cの外側外周部には、切欠部31fが形成されており、この切欠部31fを形成することで、プローブ本体30の嵌合凸部30aが形成されている。このように、プローブ本体30の嵌合凸部30aを形成することで、嵌合凸部30aを後述する装着補助部材36の嵌合穴36aに挿通させ、プローブ本体30を装着補助部材36の装着できるようにしている。
【0051】
また、フランジ部31dには、内側および外側に開口する溝部31gが形成されており、この溝部31g内に光ファイバ33(照射ファイバ35および受光ファイバ34)を収容できるようにしている。
【0052】
そして、本実施形態では、図3(A)に示すように、接着剤50によって、溝部31g内に光ファイバ33(照射ファイバ35および受光ファイバ34)を収容した状態で、ハウジング31および蓋部32(プローブ本体30)に固定している。
【0053】
なお、溝部は、蓋部32に設けるようにしてもよいし、フランジ部31dと蓋部32の両方に設けるようにしてもよい。
【0054】
このように、光ファイバ33(照射ファイバ35および受光ファイバ34)を、溝部31f内に収容した状態で固定することで、照射ファイバ35および受光ファイバ34に、生体の皮膚表面43aに略平行に延在するように配置される平行部35c、34cが形成されるようにしている。
【0055】
そして、照射ファイバ35および受光ファイバ34の先端部(垂直部35b、34b)を、皮膚表面43aに対して略垂直となるようにプローブ本体30に固定し、照射ファイバ35および受光ファイバ34の先端部とは反対側を屈曲させて、平行部35c、34cが形成されるようにプローブ本体30に固定することで、垂直部35b、34bと平行部35c、34cとを連設する屈曲部35d、34dが形成されるようにしている。
【0056】
すなわち、照射ファイバ35および受光ファイバ34を屈曲させることで、測定用の皮膚表面43aと略平行方向に照射ファイバ35および受光ファイバ34を引き出すようにしている。
【0057】
なお、本実施形態では、プローブ本体30の高さHが約8mm、屈曲部の曲率半径が4mm〜6mm程度となるようにしている。この曲率半径は、照射ファイバ35および受光ファイバ34が破損しない範囲でできるだけ小さくなるように設定するのが好適である。
【0058】
そして、本実施形態では、上述したように、照射ファイバ35および受光ファイバ34を、当該照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍および平行部35c、34cの屈曲部35b、34b近傍の2点のみでプローブ本体30に固定させている。
【0059】
さらに、照射ファイバ35および受光ファイバ34の屈曲部35d、34dが、プローブ本体30に対して自由状態となるようにしている。
【0060】
すなわち、本実施形態では、屈曲部35d、34dが形成される空間31aに樹脂等を充填しないようにしている。
【0061】
なお、図3では、便宜上、照射ファイバ35および受光ファイバ34は、先端側でばらけているものを例示したが、照射ファイバ35および受光ファイバ34の先端側も、図13(B)に示すように、束ねるようにしてもよい。このように、照射ファイバ35および受光ファイバ34の先端側も束ねるようにすれば、ハウジング31(プローブ本体30)への固定が容易になるとともに、照射ファイバ35および受光ファイバ34が相対的に位置ずれしてしまうのを抑制することができる。
【0062】
さらに、上述したように、本実施形態では、皮膚組織測定用プローブ30Aは、照射ファイバ35および受光ファイバ34を固定支持したプローブ本体30を取り付けることで、照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aを皮膚の測定部位に装着保持させる装着補助部材36を備えている。
【0063】
この装着補助部材36は、照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aを皮膚の測定部位に装着保持させるもので、ドーナツ状をしている。かかる装着補助部材36は、測定部位周辺の皮膚に密着して受光面34aおよび照射面35aが皮膚表面43aに略平行に当接するように保つフレキシブルな部材で形成されている。例えば、柔軟性に富んだポリウレタンやシリコンゴム等の素材で形成されている。
【0064】
このように、装着補助部材36をフレキシブルな装着部材とすることで、曲面を有する柔軟組織である生体部位を測定する場合であっても、その柔軟な素材特性によって曲面に密着して装着補助部材36を貼り付けることができる。その結果、受光面34aおよび照射面35aの皮膚表面43aへの当接状態を安定なものにすることができる。
【0065】
なお、皮膚組織測定用プローブ30Aは、例えば、両面テープ(図示せず)にて腕43の皮膚表面43aに装着固定される(図2参照)。
【0066】
ここで、本実施形態では、照射ファイバ35および受光ファイバ34を、少なくとも屈曲部35d、34dにおいて光学的に隔離されるようにしている。
【0067】
具体的には、照射ファイバ35および受光ファイバ34のうち少なくとも一方である受光ファイバ34を、遮光チューブ37により被覆することで、光学的に隔離されるようにしている。なお、ファイバ表面のコーティングなどによって光学的に隔離することも可能である。また、図4に示すように、ファイバ間への吸光体37aの充填によって光学的に隔離することも可能である。図4では、中心に1本の受光ファイバ34を配置し、同心円上に12本の照射ファイバ35を配置した状態で、空間31a内に吸光体37aを充填することで、それぞれのファイバ間に吸光体37aを充填させたものを示している。
【0068】
以上説明したように、本実施形態では、照射ファイバ35および受光ファイバ35は、当該照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aが生体の皮膚表面43aに略平行に当接するように配置される垂直部35b、34bと、生体の皮膚表面43aに略平行に延在するように配置される平行部35c、34cと、垂直部35b、34bと平行部35c、34cとを連設する屈曲部35d、34dと、が形成されるようにプローブ本体30に取り付けられている。すなわち、照射ファイバ35および受光ファイバ34を屈曲させることで、測定用の皮膚表面43aと略平行方向に照射ファイバ35および受光ファイバ34を引き出すようにしている。そのため、照射ファイバ35および受光ファイバ34が測定用の皮膚と垂直方向に突出する場合に比べて、物やヒトなどの接触等の影響を受けにくくすることができる。
【0069】
すなわち、物やヒトなどの接触や体動等、外乱の影響をより軽減することができるようになる。
【0070】
また、本実施形態によれば、照射ファイバ35および受光ファイバ34の少なくとも屈曲部35d、34dを光学的に隔離させている。そのため、照射ファイバ35および受光ファイバ34の光の混合による測定スペクトルへの影響をより軽減することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、皮膚接触部近傍(照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍)およびプローブ本体30からの引き出し部近傍(平行部35c、34cの屈曲部35b、34b近傍)の2点のみで、照射ファイバ35および受光ファイバ34をプローブ本体30に固定させている。その結果、照射ファイバ35および受光ファイバ34のプローブ本体30への固定箇所が少なくなるため、加工が容易になってより簡単に製造することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、照射ファイバ35および受光ファイバ34の屈曲部35d、34dが、プローブ本体30に対して自由状態となるようにしている。
【0073】
すなわち、本実施形態では、屈曲部35d、34dが形成される空間31aに樹脂等を充填しないようにしている。
【0074】
ところで、屈曲部35d、34dを形成する場合、光ファイバの内力を出来る限り軽減し、発生する最大主応力などを光ファイバの破断閾値より十分小さくすることが望ましい。特に、残留応力などの内力が小さくなるよう、設計することが求められる。
【0075】
例えば、従来のように、光ファイバ周囲を樹脂200などで完全に固着した場合、図5(A)に示すように、屈曲部35d、34dが元の真っ直ぐな状態に戻ろうとして生じる内部応力F、M、Pの他に、樹脂200による残留応力t、wが生じてしまう。
【0076】
しかしながら、本実施形態では、照射ファイバ35および受光ファイバ34の屈曲部35d、34dが、プローブ本体30に対して自由状態となるようにしているため、図5(B)に示すように、樹脂200による残留応力t、wが生じない。その結果、樹脂などにより光ファイバ周囲を完全に固着する従来の場合に比べて、製造時の残留応力など、光ファイバの各部に発生する内力を小さくすることができ、屈曲部35d、34dの曲率半径をより小さくすることができるようになる。
【0077】
また、光ファイバの各部に発生する内力が小さくなることで、ファイバ屈曲部の製造が簡便になる上、同じ曲率半径とした場合、光ファイバ33に発生する内力をより一層軽減することができる。したがって、光ファイバ33の劣化(破損など)の可能性をより小さくすることができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、受光ファイバ34または照射ファイバ35の同心円上に、照射ファイバ35または受光ファイバ34を複数配置することで、光ファイバ33を形成しているため、皮膚組織測定用プローブ30Aを接触させる皮膚特性を平均化させることができ、ベースライン変動やスペクトル形状の変化を軽減させることができる。
【0079】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0080】
本変形例では、図6(B)に示すように、受光ファイバ34および照射ファイバ35のうち同心円上に複数配置されているファイバ(照射ファイバ35)は、屈曲部35dが螺旋状にねじられている。
【0081】
具体的には、照射ファイバ35は、屈曲部35dにおいて、螺旋状に180度(1周)以上ねじられている。なお、照射ファイバ35のねじり角度は、180×n度(n=1,2,3・・・)となるように設定するのが好適である。
【0082】
以上の本変形例によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0083】
また、本変形例によれば、照射ファイバ35の屈曲部35dが螺旋状にねじられている。
【0084】
ところで、上記第1実施形態では、図6(A)に示すように、照射ファイバ35の屈曲部35dはねじられていない。このように、照射ファイバ35をねじらずにそのまま屈曲させると、内側の照射ファイバ35と外側の照射ファイバ35とで屈曲部35dの曲率半径が異なってしまう。そのため、光ファイバ33の内側と外側とで、光学特性にバラつきが生じてしまう。具体的には、外側の照射ファイバ35では、曲率半径が大きく、光の減衰が小さくなってしまう。そして、内側の照射ファイバ35では、曲率半径が小さく、光の減衰が大きくなってしまう。
【0085】
しかしながら、本変形例では、照射ファイバ35の屈曲部35dが螺旋状にねじられている。そのため、ねじる前に内側と外側に配置される照射ファイバ35間の曲率半径差を出来る限り小さくすることができる。特に、ねじり角を、180度(1周)以上、より好ましくは、180×n度(n=1,2,3・・・)となるように設定すれば、照射ファイバ35の屈曲部35dにおける平均曲率半径をほぼ同じにすることができ、光の減衰もほぼ同じにすることができる。
【0086】
このように本発明によれば、照射ファイバ35の屈曲部35dの曲率半径のばらつきを軽減することができ、照射ファイバ35間の光学特性のバラつきを軽減することができるようになる。
【0087】
(第2実施形態)
本実施形態にかかる皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aは、基本的に上記第1実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aは、近赤外光Hvを生体の皮膚組織に照射する照射ファイバ35と、皮膚組織からの拡散反射あるいは透過光を受光する受光ファイバ34と、を有する光ファイバ33を備えている。
【0088】
また、本実施形態では、光ファイバ33は、受光ファイバ34または照射ファイバ35の同心円上に、照射ファイバ35または受光ファイバ34を複数配置することで形成されている。
【0089】
また、皮膚組織測定用プローブ30Aは、照射ファイバ35および受光ファイバ34を固定支持するプローブ本体30を備えている。
【0090】
このプローブ本体30は、内部に空間31aが形成された有底筒状のハウジング31と、当該ハウジング31の空間31aを塞ぐように取り付けられる蓋部32と、を備えている。
【0091】
ハウジング31は、略筒状の側壁部31bと、略円板状の底壁部31cと、側壁部31bの上部から略平行に延設され、蓋部32が取り付けられるフランジ部31dと、を備えている。
【0092】
そして、底壁部31cの略中央部には、照射ファイバ35および受光ファイバ34の先端(照射面35aおよび受光面34aが形成された先端部:垂直部34b、35b)を内側から外側に挿通させた状態で固定する挿通孔31eが形成されている。
【0093】
本実施形態においても、接着剤50を用いて垂直部34b、35bの先端側(照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍)をハウジング31(プローブ本体30)に固定している。
【0094】
また、フランジ部31dには、内側および外側に開口する溝部31gが形成されており、この溝部31g内に光ファイバ33(照射ファイバ35および受光ファイバ34)を収容できるようにしている。
【0095】
ここで、本実施形態にかかる皮膚組織測定用プローブ30Aが、上記第1実施形態と主に異なる点は、図7に示すように、照射ファイバ35および受光ファイバ34が、当該照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍の1点のみでプローブ本体30に固定されている点にある。なお、図7(A)では、受光ファイバ34を遮光チューブ37により被覆したものを例示し、図7(B)では、ファイバ間に吸光体を充填させたものを例示している。
【0096】
具体的には、蓋部32に、照射ファイバ35および受光ファイバ34の屈曲部35d、34dの外側に対応する形状のガイド壁部32aを形成している。そして、垂直部34b、35bの先端側を固定した状態の照射ファイバ35および受光ファイバ34をガイド壁部32aでガイドしながら、フランジ部31dの溝部31g内に収容されるように蓋部32にて蓋をすることで、屈曲部35d、34dが形成されるようにしている。このとき、平行部35c、34cの屈曲部35b、34b近傍は、溝部31g内に収容されることで、移動が規制されるようになってはいるが、上記第1実施形態のように、プローブ本体30には固定されていない。
【0097】
このように、本実施形態では、照射ファイバ35および受光ファイバ34は、皮膚接触部近傍をプローブ本体30に固定し、プローブ本体30上部の内部構造(蓋32、ガイド壁部32aおよび空間31a)を利用して屈曲部35d、34dを形成している。
【0098】
なお、ガイド壁部の形状を筒状にしてもよいし、ガイド壁部を底壁31cに設けるようにしてもよい。
【0099】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0100】
また。本実施形態によれば、照射ファイバ35および受光ファイバ34が、当該照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍の1点のみでプローブ本体30に固定されている。このように、照射ファイバ35および受光ファイバ34の固定箇所を少なくすることで、皮膚組織測定用プローブ30Aの製造が簡便になる。また、プローブ本体30上部の内部構造(蓋32、ガイド壁部32aおよび空間31a)を利用して屈曲部35d、34dを形成することで、プローブ本体30の内部空間を有効に利用することができるため、決められた高さHの条件下で、屈曲部35d、34dに大きな曲率半径を与えることができる。
【0101】
なお、上記第1実施形態の変形例に本実施形態の構成を適用することも可能である。
【0102】
(第3実施形態)
本実施形態にかかる皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aは、基本的に上記第1実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aは、近赤外光Hvを生体の皮膚組織に照射する照射ファイバ35と、皮膚組織からの拡散反射あるいは透過光を受光する受光ファイバ34と、を有する光ファイバ33を備えている。
【0103】
また、本実施形態では、光ファイバ33は、受光ファイバ34または照射ファイバ35の同心円上に、照射ファイバ35または受光ファイバ34を複数配置することで形成されている。
【0104】
また、皮膚組織測定用プローブ30Aは、照射ファイバ35および受光ファイバ34を固定支持するプローブ本体30を備えている。
【0105】
このプローブ本体30は、内部に空間31aが形成された有底筒状のハウジング31と、当該ハウジング31の空間31aを塞ぐように取り付けられる蓋部32と、を備えている。
【0106】
ハウジング31は、略筒状の側壁部31bと、略円板状の底壁部31cと、側壁部31bの上部から略平行に延設され、蓋部32が取り付けられるフランジ部31dと、を備えている。
【0107】
そして、底壁部31cの略中央部には、照射ファイバ35および受光ファイバ34の先端(照射面35aおよび受光面34aが形成された先端部:垂直部34b、35b)を内側から外側に挿通させた状態で固定する挿通孔31eが形成されている。
【0108】
本実施形態においても、接着剤50を用いて垂直部34b、35bの先端側(照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍)をハウジング31(プローブ本体30)に固定している。
【0109】
また、フランジ部31dには、内側および外側に開口する溝部31gが形成されており、この溝部31g内に光ファイバ33(照射ファイバ35および受光ファイバ34)を収容できるようにしている。
【0110】
ここで、本実施形態にかかる皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aが、上記第1実施形態と主に異なる点は、図8に示すように、プローブ本体30が計測手段39で計測した生体の温度に基づいて加熱手段38を制御する温度制御手段を有する点にある。
【0111】
また、照射ファイバ35および受光ファイバ34が、当該照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍の1点のみでプローブ本体30に固定されている点も上記第1実施形態と異なっている。
【0112】
本実施形態では、皮膚組織測定用プローブ30Aは、生体の皮膚(測定部)の温度を計測する計測手段39と、プローブ本体30を加熱する加熱手段38を備えている。
【0113】
また、本実施形態では、温度制御手段によって、計測手段39による計測結果(生体の皮膚温度:生体の温度)に基づきプローブ本体30の温度を一定に保つようにしている。
【0114】
具体的には、計測手段39によって計測された温度を図示せぬ演算部(温度制御手段)に出力し、当該出力に基づいて、加熱手段38の熱量を制御するようにしている。
【0115】
なお、計測手段39は、例えば、生体の皮膚表面温度を計測するものである。
【0116】
また、温度制御手段によって一定に保つ温度は、体深部温度とほぼ同じ温度、もしくは、体温に比べて常に高い温度に設定することが可能である。
【0117】
また、プローブ本体30を加熱する加熱手段38としてヒータを用いることができる。
【0118】
なお、温度制御手段が、測定部に一定の熱量を与え続けるように加熱手段38の熱量を制御するようにしてもよい。
【0119】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0120】
また、本実施形態によれば、皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aは、プローブ本体30が計測手段39で計測した生体の皮膚の温度(生体の温度)に基づいて加熱手段38を制御する温度制御手段を有している。
【0121】
ところで、測定皮膚の温度は、周囲環境や生理状態に応じて変化する熱代謝の影響により、変動する。そして、測定スペクトルは、測定皮膚の温度に影響されるものである。したがって、上記第1実施形態および第2実施形態のように、温度制御手段を有していないと、測定スペクトルが測定皮膚の温度に影響されてしまう。
【0122】
しかしながら、本実施形態では、皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aが温度制御手段を有しているため、測定皮膚の温度の影響を受けることなく生体測定を行なうことができるようになる。このように、本実施形態によれば、測定皮膚の温度変化を無視した、あるいは、考慮した生体測定を行なうことができるようになる。
【0123】
なお、上記第1実施形態の変形例および上記第2実施形態に本実施形態の構成を適用することも可能である。
【0124】
(第4実施形態)
本実施形態にかかる30Aは、基本的に上記第2実施形態とほぼ同様の構成をしている。すなわち、皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aは、近赤外光Hvを生体の皮膚組織に照射する照射ファイバ35と、皮膚組織からの拡散反射あるいは透過光を受光する受光ファイバ34と、を有する光ファイバ33を備えている。
【0125】
また、本実施形態では、光ファイバ33は、受光ファイバ34または照射ファイバ35の同心円上に、照射ファイバ35または受光ファイバ34を複数配置することで形成されている。
【0126】
また、皮膚組織測定用プローブ30Aは、照射ファイバ35および受光ファイバ34を固定支持するプローブ本体30を備えている。
【0127】
このプローブ本体30は、内部に空間31aが形成された有底筒状のハウジング31と、当該ハウジング31の空間31aを塞ぐように取り付けられる蓋部32と、を備えている。
【0128】
ハウジング31は、略筒状の側壁部31bと、略円板状の底壁部31cと、側壁部31bの上部から略平行に延設され、蓋部32が取り付けられるフランジ部31dと、を備えている。
【0129】
そして、底壁部31cの略中央部には、照射ファイバ35および受光ファイバ34の先端(照射面35aおよび受光面34aが形成された先端部:垂直部34b、35b)を内側から外側に挿通させた状態で固定する挿通孔31eが形成されている。
【0130】
本実施形態においても、接着剤50を用いて垂直部34b、35bの先端側(照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍)をハウジング31(プローブ本体30)に固定している。
【0131】
また、フランジ部31dには、内側および外側に開口する溝部31gが形成されており、この溝部31g内に光ファイバ33(照射ファイバ35および受光ファイバ34)を収容できるようにしている。
【0132】
また、蓋部32に、照射ファイバ35および受光ファイバ34の屈曲部35d、34dの外側に対応する形状のガイド壁部32aが形成されている。
【0133】
また、照射ファイバ35および受光ファイバ34が、当該照射ファイバ35の照射面35aおよび受光ファイバ34の受光面34aの近傍の1点のみでプローブ本体30に固定されている。
【0134】
ここで、本実施形態にかかる皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)30Aが、上記第2実施形態と主に異なる点は、図9に示すように、生体測定用プローブ30Aが、生体の皮膚表面43aに当接する部位の少なくとも一部を離脱させることができるように形成されている点にある。
【0135】
本実施形態では、光ファイバ33に、互いに嵌合して光学的に接続可能なコネクタ50,51を設け、当該コネクタ50,51を外すことで、皮膚組織測定用プローブ30A全体を交換できるようになっている。
【0136】
以上の本実施形態によっても、上記第2実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0137】
また、本実施形態によれば、皮膚組織測定用プローブ30A全体を交換できるようにしたため、測定皮膚に直接接触する測定プローブ接触側の各部を、より容易に衛生的に保つことができるようになる。また、定期的に部材交換を行うことができるようになり、定期的に部材交換を行えば、長期間の使用によって光ファイバの屈曲部の強度低下の影響をなくすことができる。
【0138】
次に、本実施形態の変形例を説明する。
【0139】
(第1変形例)
本変形例にあっても、生体測定用プローブ30Aが、生体の皮膚表面43aに当接する部位の少なくとも一部を離脱させることができるように形成されている。
【0140】
本変形例では、装着補助部材36を交換できるようにしている。
【0141】
以上の本変形例によっても、上記第4実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0142】
(第2変形例)
本変形例にあっても、生体測定用プローブ30Aが、生体の皮膚表面43aに当接する部位の少なくとも一部を離脱させることができるように形成されている。
【0143】
本変形例では、光ファイバの先端部を離脱させることができるようにしている。
【0144】
具体的には、図11(A)に示すように、光ファイバ33を複数回切り取り可能に構成し、使用後に、光ファイバ33の先端部分を切り取り、その後、図11(B)に示すように、残りの部分の先端を、プローブ本体30のハウジング31に嵌合(固定)させることで、新しい照射面35aおよび受光面34aを皮膚表面43aに当接させることができる。
【0145】
なお、ハウジング31への固定は、上記第4実施形態と同様、接着剤50によって行ってもよい。
【0146】
以上の本変形例によっても、上記第4実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0147】
(第3変形例)
本変形例にあっても、生体測定用プローブ30Aが、生体の皮膚表面43aに当接する部位の少なくとも一部を離脱させることができるように形成されている。
【0148】
本変形例では、生体測定用プローブ30Aの皮膚表面43aに当接する面の全面を順次切り捨てるようにしている。この切り捨ては、切り捨てる部位を積層させて順次切り捨てるようにしてもよいし、使用後に皮膚表面43aに当接した面の全面を削り取るようにしてもよい。
【0149】
以上の本変形例によっても、上記第4実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0150】
なお、上記第1実施形態およびその変形例ならびに上記第3実施形態に本実施形態もしくはその変形例の構成を適用することも可能である。
【0151】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0152】
例えば、上記各実施形態では、中心部に受光ファイバが配置されたものを例示したが、中心部に照射ファイバが配置されるようにしてもよい。
【0153】
また、上記各実施形態では、受光ファイバを遮光チューブにより被覆したものを例示したが、照射ファイバを遮光チューブにより被覆してもよいし、受光ファイバおよび照射ファイバの両方を遮光チューブにより被覆してもよい。
【0154】
また、上記第3実施形態では、計測手段、加熱手段および温度制御手段によって、プローブ本体(測定部)の温度を制御するようにしたものを例示したが、計測手段を用い、計測温度に基づいて、測定血糖値の補正を行うようにしてもよい。また、計測手段および加熱手段のうち加熱手段のみ有する構成とすることも可能である。
【0155】
また、上記第3実施形態では、計測手段が生体の温度としての生体の皮膚の温度を計測するものを例示したが、計測手段が生体の温度としての体深部温度を計測するようにしてもよい。
【0156】
また、ハウジングや蓋部、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0157】
30A 皮膚組織測定用プローブ(生体測定用プローブ)
30 プローブ本体
34 受光ファイバ
34a 受光面
34b 垂直部
34c 平行部
34d 屈曲部
35 照射ファイバ
35a 照射面
35b 垂直部
35c 平行部
35d 屈曲部
37 遮光チューブ
38 加熱手段
39 計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外光を生体の皮膚組織に照射する照射ファイバと、前記皮膚組織からの拡散反射あるいは透過光を受光する受光ファイバとを有する生体測定用プローブであって、
前記照射ファイバおよび受光ファイバは、当該照射ファイバの照射面および受光ファイバの受光面が生体の皮膚表面に略平行に当接するように配置される垂直部と、生体の皮膚表面に略平行に延在するように配置される平行部と、前記垂直部と平行部とを連設する屈曲部と、が形成されるようにプローブ本体に取り付けられており、
前記照射ファイバおよび受光ファイバが、少なくとも前記屈曲部において光学的に隔離されていることを特徴とする生体測定用プローブ。
【請求項2】
前記照射ファイバおよび受光ファイバは、当該照射ファイバの照射面および受光ファイバの受光面の近傍および前記平行部の前記屈曲部近傍の2点のみが前記プローブ本体に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の生体測定用プローブ。
【請求項3】
前記照射ファイバおよび受光ファイバは、当該照射ファイバの照射面および受光ファイバの受光面の近傍の1点のみが前記プローブ本体に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の生体測定用プローブ。
【請求項4】
前記照射ファイバおよび受光ファイバの屈曲部が自由状態であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の生体測定用プローブ。
【請求項5】
前記受光ファイバまたは照射ファイバの同心円上に、前記照射ファイバまたは受光ファイバが複数配置されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の生体測定用プローブ。
【請求項6】
前記受光ファイバおよび照射ファイバのうち同心円上に複数配置されているファイバは、屈曲部が螺旋状にねじられていることを特徴とする請求項5に記載の生体測定用プローブ。
【請求項7】
前記生体測定用プローブは、生体の温度を計測する計測手段および前記プローブ本体を加熱する加熱手段のうち少なくともいずれか一方を有することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の生体測定用プローブ。
【請求項8】
前記生体測定用プローブは、前記計測手段と、前記加熱手段と、前記プローブ本体が前記計測手段で計測した生体の温度に基づいて前記加熱手段を制御する温度制御手段と、を有することを特徴とする請求項7に記載の生体測定用プローブ。
【請求項9】
前記生体測定用プローブは、生体の皮膚表面に当接する部位の少なくとも一部を離脱させることができるように形成されていることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の生体測定用プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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