説明

生体測定装置

【課題】手首、足首、首部などに装着して測定する生体測定装置にあって、個人差によって形状、大きさの異なる被装着部位に対して、また、運動中、トレーニング中などにセンサが生体に密着せず正確な測定がむずかしい。
【解決手段】生体の情報を測定する生体測定装置において、少なくとも1つのセンサ素子を有する複数のセンサブロックからなる、生体の情報を測定するセンサと、生体にセンサを押圧する押圧手段と、を有し、押圧手段は、複数の独立した押圧機構で構成され、それぞれの押圧機構が独立してセンサブロックを生体に押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の情報を測定する生体測定装置、例えば脈波を測定するための脈波測定センサ、体温を測定するための体温測定センサ、発汗度を測定するための発汗測定センサなどを搭載し、手首、足首、首部などに装着して心拍数、体温、発汗度を測定する生体測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、適宜な運動トレーニングを実現する方法の1つとして、運動強度から算出される心拍数を運動トレーニング指標として用い、運動量を調整する方法が知られている。
【0003】
心拍数の測定にあっては、指を手首の内側や首に当てて、動脈上の皮膚が心臓の鼓動に応じて振動する様子をその指で感じることをもって測ることができるが、目標心拍数を自分なりに設定して心拍数を運動トレーニング指標とすることが盛んに行われるようになってくると、運動中やトレーニング直後であっても心拍数を測りたいという要望があり、そのような状況にあっても簡便に心拍数を測定できる心拍計が求められるようになってきた。このような事情から、近年、多くの電子心拍計の提案がなされている。
【0004】
このような電子心拍計としては、一般に心電位検出方式が広く知られており、例えば、指や胸部に脈波を検出する電極を持ったベルト状の脈波検出部を装着し、これとは独立した表示部に有線または無線で情報を送信し、表示するものがある。表示部は、腕などに装着して脈波検出部が検出した脈波の周期から心拍数を求めて表示する。もちろん、脈波検出部と表示部を一体化したものもある。
【0005】
脈波検出部には、このような電極を用いた電極式の他に、血流の変化を光で捕らえる光学式や、血圧の変化を、静電式圧力センサを用いて圧力で測定する圧力式などもある。
ところで、このような電子心拍計において、運動中やトレーニング直後であっても心拍数を測定することができるようにするために、脈波を測定するための脈波測定用センサなどを搭載した手首装着型の生体測定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1に示した従来技術を、図7を用いて説明する。
図7において、200は健康管理腕時計、202は腕時計ケース、208は腕時計バンド、210は表示装置である。腕時計バンド208を用いて、被測定部位である手首に健康管理腕時計200を装着する。図示しないが、腕時計ケース202の裏面(通常の腕時計でいうならば、裏蓋側)に脈波測定用センサと体温測定用センサとを有しており、使用者の生態情報である、脈波(心拍数)と体温とを測定する。そして、表示装置210にその情報を表示する。
【0007】
また、生体に対して、センサが密着するように工夫された技術も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献2に示した従来技術を、図8を用いて説明する。図8において、300は頸動脈波検出装置、302は把持装置、304は第1アーム、306はヒンジ機構、308は第2アーム、310は脈波検出プローブ、311は圧力検出素子である。
【0008】
特許文献2に示した従来技術は、頸動脈の脈波を検出する装置であり、首などに装着する。頸動脈波検出装置300は、弾性復帰力により縮径方向に付勢された把持装置302を備えている。この把持装置302は、湾曲した第1アーム304と、この第1アーム304に対してヒンジ機構306によって、回動可能に連結された第2アーム308とを備
えている。この第1アーム304の一端部分に、それぞれに一個の圧力検出素子311を先端に保持する複数の脈波検出プローブ310が、突出方向に摺動可能で、かつ揺動可能なように連結されている。従って、3個の圧力検出素子311が首などの生体に対して均等に圧着するようになっている。
【0009】
また、手首などに装着して生体情報を測定する装着装置ではないものの、被装着部位にセンサを密着させるように、付勢手段を用いた押圧機構を工夫した技術も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
特許文献3に示した従来技術を、図9を用いて説明する。
心拍計のセンサ400は、円筒状をした可動片402がケース401の中で上下に摺動できるように嵌合し、スプリング403によって押し上げられ、発光部404と受感部405とが可動片402の上面に取り付けられている。このセンサに指406の先を当てたときは可動片402が押し下げられ、指先はケース405の上面周縁によって停止する。
【0011】
指先の圧下力(押し下げる力)の大小にかかわらず、受感部405と指406との腹の圧接力はスプリング403の復元力だけしか働かないので一定であり、その部分の毛細血管への圧力は指先の圧下力の如何にかかわらずほぼ一定である。従って、センサ部分をこのように可動にしておけば指先の圧下力の如何にかかわらず脈動に比例した光電流が流れ安定したセンサを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭53−32765号公報(第2頁、第2図)
【特許文献2】特開平10−146322号公報(第3頁、第1図)
【特許文献3】実開昭54−59786号公報(第2頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に示した従来技術は、図7に示したように、この健康管理腕時計200では、腕時計ケース202の裏面(通常の腕時計でいうならば、裏蓋側)に脈波測定用センサと体温測定用センサとを有しているだけであって、生体情報を得るため、これらのセンサが被装着部位に対して密着するための技術がなんら開示されていない。
【0014】
すなわち、装着者の手首の太さが腕時計バンド208と合わない場合には、腕時計ケース202の手首側の裏面に配置した脈波測定用センサ、体温測定用センサが、手首の手の平側に密着せず適度な押圧力で押圧されずに、センサによる正確な測定ができない。
また、腕時計ケース202が運動中、トレーニング中などにおいて位置がずれて、脈波測定用センサによる脈波の測定が行えないこともある。
【0015】
また、特許文献2に示した従来技術は、図8に示したように、脈波検出プローブ310の先端にそれぞれ1個の圧力検出素子311が、設置されているが、検出ポイントが少ないため、運動中、トレーニング中などにおいて、被装着部位が少し動いただけで検出ポイントの位置がずれて、脈波の検出が難しくなるという問題があった。
【0016】
更に、複数の脈波検出プローブ310が連動して突出方向に摺動可能で、かつ揺動可能な機構であるため、構造が複雑で、大型になってしまい、コストが高くつくことになるとともに、首などの比較的大径の部分には適用できても、例えば、手首、足首などの生体の比較的小径の部分に適用するには不向きである。
【0017】
特許文献3に示した従来技術は、図9に示したように、生体の指先に関しては、一定の付勢力を掛けて安定な検出を行うことは提案されているが、1つのスプリング403によって発光部404と受感部405とが生体の方向に押し上げられているに過ぎず、運動中、トレーニング中などに使用すると、それらが被装着部位から位置ずれを生じやすく、又、受感部が1個なので位置ずれに対応できない。そして、そもそも手首や足首、首部への適用ができる構造にもなっていない。
【0018】
本発明の目的は、上記のような課題を解決するためになされたものである。手首、足首、首部などに装着して測定する生体測定装置にあって、個人差によって形状、大きさの異なる被装着部位に装着しても、センサが被装着部位に密着して適度な押圧力で押圧され、しかも、運動中、トレーニング中などにおいて、多少の位置ずれが生じてもセンサによる正確な測定を実施することができる生体測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の生体測定装置は、上記目的を達成するために、下記記載の構成を採用するものである。
【0020】
生体の情報を測定する生体測定装置において、
少なくとも1つのセンサ素子を有する複数のセンサブロックからなる、生体の情報を測定するセンサと、生体に前記センサを押圧する押圧手段と、を有し、押圧手段は、複数の独立した押圧機構で構成され、それぞれの押圧機構が独立してセンサブロックを生体に押圧することを特徴とする。
【0021】
センサは、センサ素子をマトリクス状に配設してなるマトリクスセンサアレイであってもよい。
【0022】
センサは、センサブロック間に、スリットまたは溝部を備えて分割され、押圧手段は、分割されたセンサブロックごとに少なくとも1つの押圧機構が平面的に重なり、生体に押圧するようにしてもよい。
【0023】
押圧機構は、センサを生体の方向に押圧する押圧部材と、押圧部材をセンサに付勢する付勢部材により形成されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の生体測定装置は、個人差により形状、大きさの異なる被装着部であっても、また、部分的に凹凸がある被装着部であっても、複数の独立した押圧手段でセンサを押圧するので、被装着部に対してセンサの密着性が良好であるから、生体情報を確実に測定することが可能であり、運動中、トレーニング中に被装着部とセンサの多少の位置ずれが生じても、それぞれの押圧手段が複数個のセンサを配置しているため、測定範囲に余裕があり、生体情報の正確な測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の生体測定装置を生体の左手首に装着した状態の斜視図である。
【図2】本発明の生体測定装置の図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の生体測定装置の図2の押圧機構を説明するC部拡大図である。
【図4】本発明の実施例1におけるセンサと押圧機構の構成を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の実施例2におけるセンサと押圧機構の構成を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の実施例3における押圧部材の構成を示す斜視図である。
【図7】特許文献1に示した従来技術を説明する斜視図である。
【図8】特許文献2に示した従来技術を説明する側面図であって、頚動脈波検出装置の構成を説明する図である。
【図9】特許文献3に示した従来技術を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の生体測定装置の実施例を図面に基づき説明する。なお、以下に説明する実施形態については、生体の被装着部位を人体の手首として、生体測定装置は、この手首に装着して脈波を測定する例で説明する。
【実施例1】
【0027】
まず、図1から図4を用いて第1の実施形態の構成を説明する。図1は、第1の実施形態を生体の左手首に装着した状態の斜視図、図2は、生体測定装置の図1のA−A断面図であり、人体の肘側から見た図である。図3は、押圧機構を説明する図2のC部の部分拡大図、図4は、センサと押圧機構の構成を説明する分解斜視図である。
【0028】
[第1の実施形態の全体:図1、図2]
まず、図1、図2を用いて全体構成を説明する。
図1を用いて左手首に生体測定装置を装着した状態で生体情報、脈波を測定するセンサについて説明し、図2も用いて生体測定装置の全体構成について説明する。なお、各図において同一の構成部材には同一の番号を付して、重複する説明は省略する。
【0029】
図1に示すように、生体の左手首に装着された生体測定装置1に搭載されたセンサ13は、点線で示している。これは、センサ13がケース11の内側の裏蓋19(図2参照)から突設して被測定部位側にあり、手首の撓骨動脈に沿った位置に接するようになっているためである。表示部20はケース11の表面側にあるため、使用者が目視することができる。
【0030】
図1において、矢印Bの先に示した表は、センサ13を構成するセンサ素子群を示すものであって、マトリクスタイプのセンサアレイである。
センサ13は、例えば、6×7マトリクスタイプであり、手首の長さ方向に6つのセンサ素子が並び、手首の幅方向7つのセンサ素子が並ぶ、計42個のセンサ素子131から構成されている。各センサ素子には便宜上1〜42の番号を付与している。
【0031】
センサ13は、接触圧を検出する接触圧センサなどが知られており、そのセンサ素子としては、圧電型検出素子や抵抗型検出素子、そして静電型検出素子などが知られている。
センサ13は、特には限定しないが、FPC(Flexible Printed Circuit)で構成されているような薄型のセンサが望ましい。
【0032】
このようなセンサ素子131を用いて、測定する人体の脈波は、心臓の鼓動により伸縮した血管の振動として人体の皮膚に現れる。脈波の測定は、それを検出する。皮膚に現れる振動は、ある程度の面積に広がって発生するものであるから、マトリクスタイプのセンサアレイを用いると、所定の皮膚面積全体の振動を測定することができるため、脈波を検出し損なうことが少ない。そして、ケース11に内蔵している図示しない制御回路によって、測定した脈波から心拍数を測定し、その結果を表示部20に表示する。
【0033】
図2に示すように、生体測定装置1は、ケース11とバンド16と補助バンド17が連結してリングを形成し、生体の被装着部位、例えば手首に締めつけて固定される。そして、手首に密着したセンサ13が生体情報、つまり脈波を測定する。
【0034】
ケース11において、外側は、一般的な腕時計のケースと同じように表面側に風防ガラス112を配している。裏面側は、裏蓋19と、裏蓋19の一部分から僅かに突設したカバー18とその内側にセンサ13が配置され、内部は、センサ13と、センサ13を押圧する押圧手段と、この押圧手段を構成する押圧機構の一部を支持するガイドプレート12と、表示部20と、制御手段(図示せず)や信号処理する手段(図示せず)を実装する基板201と、を内蔵する構造で形成されている。
【0035】
押圧手段140は、押圧部材14、コイルバネ15、止め輪146で押圧機構を構成しており、この押圧機構を複数設けたものである。なお、押圧機構の詳細は、図3にて後述する。
【0036】
カバー18は、センサ13に橈骨動脈211の脈波を良好に伝播する薄さで形成され、かつ、手首21と直接接触して汗や埃からセンサ13を保護する構成になっている。その材質は、各種エラストマなど、射出成型可能な可撓性部材を採用するのが望ましい。
【0037】
センサ13は、カバー18と押圧部材14との間に位置し、押圧部材14の下面と平面的に重なり当接している。従って、カバー18とセンサ13と押圧部材14は、それぞれが重なり密着した状態に配置設定されている。センサ13からの信号線は、図示はしないが配線などにより基板201と電気的に接続され、検出信号が制御手段で処理され、生体情報が表示部20に表示される。センサ13の詳細については、図4にて後述する。
【0038】
押圧部材14、コイルバネ15、止め輪146で構成する押圧機構は、ガイドプレート12に、それぞれが独立して複数個配置されている。従って、センサ13は、複数個の押圧機構で構成される押圧手段140により生体に押圧される。
【0039】
バンド16は、その一端をケース11の前面側の回転軸111と回動可能に連結され、他端は補助バンド17と連結する連結軸161を有している。材質としては、手首の形状にフィットさせて装着感を良好にするためには各種合成樹脂、各種エラストマなど、弾性力を有する可撓性部材を採用するのが望ましい。
【0040】
補助バンド17は、一端をバンド16の連結軸161と回動可能に連結され、他端は面ファスナー171を備えており、ケース11の後端のフック113に巻き込むようにして折り返し、面ファスナー171にて固定するようになっている。従って、補助バンド17はバンド16より更に柔軟な部材で構成し、特に限定しないが、例えば、各種エラストマ、ゴムなどの弾性部材から構成するのが望ましい。
【0041】
以上のように、生体測定装置1は、押圧手段140、センサ13、カバー18で形成された脈波の検出部分が裏蓋19より若干突設して設けられているから、ケース11とバンド16と補助バンド17で手首21に装着固定したとき、センサ13が生体の手首に圧接するように形成され、そして、橈骨動脈211から脈波を検出することが可能となる。
【0042】
表示部20は、センサ13が測定した結果(例えば、脈波)を基にして生体情報(例えば、運動強度、心拍数)として、風防ガラス112を通して表示する。表示部20は、生体情報を、絵、文字、図形のいずれか1つ、またはそれらの組み合わせで表示することができる。表示部20は、特に限定しないが液晶表示装置で構成する。
【0043】
そして、表示部20と電気的に接続している基板201は、センサ13と電気的に接続して、その出力を制御する制御手段(図示せず)や測定結果を演算する信号処理手段(図示せず)も搭載して、運動強度や心拍数などを表示部20に出力することが可能であり、その他に、計時機能、通信機能(例えば、携帯電話機能)などの機能を併せ持っていても
よい。
【0044】
なお、ケース11には電池などの電源手段、操作ボタンなども搭載しており、基板201にも電源や操作ボタンの入力を制御する制御回路等も搭載しているが、このような説明に関係のない部分は省略している。
【0045】
[第1の実施形態の押圧手段の説明:図2〜図3]
次に、図2、図3を用いて押圧手段140の構成を説明する。
図3は、図2に示すC部分の部分拡大図であり、押圧手段140を構成する押圧機構を説明する図である。
図3に示すように、押圧機構は、押圧部材14、コイルバネ15、止め輪146から形成され、ガイドプレート12に支持されている。押圧部材14は、2段の円柱の一端に矩形形状のフランジである矩形平板フランジ141が形成され、他端には、溝145が形成されている。一段目の円柱の摺動部144は、ガイドプレート12のガイド孔121と摺動可能に嵌合するように形成されている。摺動部144と矩形平板フランジ141との間にある二段目の円柱のバネガイド部143は、コイルバネ15の内径に相当する直径で形成され、コイルバネ15がガイドプレート12との間で安定した形状で保持されるように構成されている。
【0046】
止め輪146は、押圧部材14の溝145に取り付けられ、生体測定装置1が手首から外されているとき、センサ13とカバー18を押し過ぎて変形させないように、ガイドプレート12に当接し、ストッパとして機能する。
生体測定装置1を手首に装着したとき、手首21がカバー18を介してセンサ13、押圧部材14を押し上げるから、止め輪146がガイドプレート12から浮き上がる。その結果、コイルバネ15が押圧部材14に付勢力を作用させ、その付勢力で押圧部材14の矩形平板フランジ141の下面でセンサ13を、カバー18を介して手首21に密着させることとなる。そして、コイルバネ15の安定した付勢力でセンサ13が手首21に向かって押圧される。
【0047】
押圧手段140は、このような押圧機構を複数備えており、この複数の押圧機構がそれぞれ独立してセンサ13を手首21の被測定部位に押圧する。複数の押圧機構が独立して作用することにより、運動などにより、手首21の表面が変形しても、それに追従してセンサ13を押圧することができる。
【0048】
[第1の実施形態のセンサと押圧機構の構成:図4]
次に、第1の実施形態の押圧機構の詳細を図4を用いて説明する。
図4は、センサ13と押圧機構とを説明する分解斜視図であるが、理解しやすいように押圧機構については押圧部材14だけを示して説明する。また、センサ13には検出信号を出力する出力端子があるのであるが、それも省略してある。
【0049】
図4に示すように、各押圧部材14−1〜14−4のフランジ部の矩形平板フランジ141−1〜141−4は、下面の押圧面が平面で、隣り合った矩形平板同士が4隅でのみ当接し、中間部には逃げが形成されている。つまり、矩形平板フランジ141−1〜141−4は、平面視で、角の部分を除いた辺の部分に逃げ加工が施されている。
【0050】
センサ13は、図1で示したようにセンサ素子131が42個ある6×7マトリクスタイプのマトリクスセンサアレイを構成している。
図4に示すように、このマトリクスセンサアレイは、各矩形平板フランジが平面的に覆う領域を4つのセンサブロック132−1、132−2、132−3、132−4に分けることができる。
【0051】
各々のセンサブロックは、図1で示したセンサ素子の番号と対比すると、次のようになる。
センサブロック132−1は、センサ素子の番号1〜3、7〜9、13〜15であり、センサブロック132−2は、番号4〜6、10〜12、16〜18であり、センサブロック132−3は、番号25〜27、31〜33、37〜39であり、センサブロック132−4は、番号28〜30、34〜36、40〜42である。
なお、センサ素子番号19〜24は、各矩形平板フランジの平面視で間にあるものであって、上述のセンサブロックの中間に位置する。
【0052】
したがって、センサブロック132−1に作用する押圧機構の矩形平板フランジは14−1、センサブロック132−2に作用する押圧機構の矩形平板フランジは14−2、センサブロック132−3に作用する押圧機構の矩形平板フランジは14−3、センサブロック132−4に作用する押圧機構の矩形平板フランジは14−4となる。
【0053】
それぞれのセンサブロックが独立した押圧機構との組み合わせで、独立した押圧力を受けている。したがって、センサ13の面積内で皮膚表面の凹凸があったとしても、押圧機構がそれぞれ独立しているから、その凹凸に順応してセンサ素子或いはセンサブロックを生体に圧接することが可能である。
このような構成であるので、運動などにより手首21が動いてしまっても、皮膚の被測定部位にセンサ13が密着し、生体情報を確実に測定することが可能となる。
仮に、運動トレーニング中に被測定部位とセンサとが多少の位置ずれを生じても、それぞれの押圧機構が複数個のセンサを押圧しているため、押圧力が逃げることなく、測定することができる。
このような構成であるから、マトリクスセンサアレイを構成するセンサ素子は、多い方が測定範囲に余裕が出るのであるが、マトリクスセンサアレイのサイズと信号処理の処理能力などを鑑みて、適するセンサ素子を選択することができる。
【0054】
なお、各センサブロックの中間に位置していたセンサ素子番号19〜21は、矩形平板フランジの真下に位置しているものではないが、隣り合う2つの押圧機構のどちらかで付勢されるので、問題は無い。
【実施例2】
【0055】
[第2の実施形態の押圧手段の説明:図5]
次に、第2の実施形態の押圧手段について説明する。
第2の実施形態の押圧手段は、すでに説明した第1の実施形態の押圧手段と、センサ13の形状と押圧部材のフランジ部の形状だけが異なる構成であり、それ以外の構成については、同じである。従って、異なる部分だけ図5を用いて説明する。
【0056】
図5は、センサと押圧機構を説明する分解斜視図であるが、図4に示す第1の実施形態と同様な方向から見た図である。図4と同様に、理解しやすいように押圧機構については押圧部材だけを示している。また、センサ13には検出信号を出力する出力端子があるのであるが、それも省略してある。
【0057】
図5において、センサ13−1は、図4に示す第1の実施形態のセンサ13とは異なり、6×6マトリクスタイプであり、手首の長さ方向と手首の幅方向とにそれぞれ6つのセンサ素子が並ぶ、計36個のセンサ素子131を備えている。
このセンサ13−1には、センサ素子131の間に4つのスリット133を有しており、マトリクスセンサアレイを4つのセンサブロックに分割している。
即ち、センサブロック132−5、132−6、132−7、132−8が9つずつの
センサ素子131で形成されている。
【0058】
押圧機構は、図4に示す押圧部材14−1〜14−4の矩形平板フランジ141−1〜141−4と異なり、フランジ部が平板の円板に形成され、押圧面が平面の円板フランジ141−5〜141−8を有する押圧部材14−5〜14−8で構成している。
【0059】
各々の押圧部材14−5〜14−8とセンサブロック132−5〜132−8との位置関係は、各々の押圧部材の中心軸がセンサブロックを形成している9個のセンサ素子131の中央に位置するセンサ素子131の中心を通るように形成されている。
従って、押圧部材のフランジ部が円板フランジ141−5〜141−8で形成されていても、9個のセンサ素子131をカバーして、センサブロック毎に独立して生体の方向に付勢力を働かせ、生体にそれぞれのセンサブロックを圧接することが可能である。
【0060】
センサ13−1は、スリット133でマトリクスセンサアレイを4つのセンサブロックに分割しているから、センサ13−1自体はしなやかに動くようになる。つまり、生体の動きに追従すると共に、生体の僅かな凹凸の変化にも対応可能である。
従って、生体測定装置としては、対応能力が更に向上して、被装着部位の個人差による形状のばらつきや、筋肉や骨や筋の形状などによる皮膚表面の凹凸などがあっても、脈波を検出することが可能で、生体情報の正確な測定が可能となる。
【0061】
図5に示す例では、センサ13−1は、スリット133を用いてマトリクスセンサアレイを4つのセンサブロックに分割しているが、もちろんこれに限定するものではない。スリット133の替わりに溝部を設けてもよいのである。
【実施例3】
【0062】
[第3の実施形態の押圧手段の説明:図6]
次に、第3の実施形態の押圧手段について説明する。
第3の実施形態の押圧手段は、すでに説明した第1および第2の実施形態の押圧手段と、押圧部材のフランジ部の形状だけが異なる構成であり、それ以外の構成の構成については、同じである。従って、異なる部分だけ図6を用いて説明する。
【0063】
図6は、センサと押圧機構を説明する分解斜視図であるが、図4に示す第1の実施形態と同様な方向から見た図である。図4と同様に、理解しやすいように押圧機構については押圧部材だけを示している。また、センサ13には検出信号を出力する出力端子があるのであるが、それも省略してある。
【0064】
図6は、押圧機構をフランジ部の側から見た斜視図である。即ち、押圧部材のセンサを押圧する面を説明する斜視図である。押圧部材14−9〜14−12は、それぞれのフランジ部の押圧面の形状が偏肉の半径Rを持ったシリンドリカルな面の異形フランジ141−9〜141−12を形成している。そして、図6のように、押圧部材14−9〜14−12を組み合わせて、全体で半径Rのシリンドリカルな面が押圧面として形成されるようにも構成されている。
【0065】
上記のように、4つの押圧部材が集合した4つ組みで一面が形成できる点に着眼して、フランジ部の押圧面を全体で、適宜な半径Rを持ったシリンドリカルな面に形成することで、生体測定装置の装着場所、つまり、例えば、被装着部位が手首の場合、足首の場合、首部等のそれぞれの場合に応じて、押圧部材のフランジ部の押圧面の形状をその装着部の曲面に合わせることが可能である。
【0066】
従って、第3の実施形態では、被装着部位に応じた広範囲な適応が可能であり、その上
で、4つの押圧部材が独立しているから、被装着部位の細かい凹凸にも追従可能で、たとえ運動中であっても、生体情報を正確に測定が可能な生体測定装置を提供できる。
【0067】
なお、図6に示すような構成に限定するものではなく、押圧部材のフランジ部の押圧面の形状は、全体として曲面を形成する以外に、個々に完全に独立してそれぞれが球面或いは曲面を形成しても良いことは明らかである。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、押圧機構の矩形平板フランジ、円板フランジ、異形フランジと、センサのスリットや溝部との有無の組み合わせは、自由に行うことができる。例えば、図4に示す矩形平板フランジ141−1〜141−4とスリット133とを組み合わせたセンサとしてもよいのである。
【0069】
以上、の説明では、生体測定装置1を手首に装着するようにしたが、例えば、腕、足首、膝部、指、首などその他の生体部位に装着するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 生体測定装置
11 ケース
12 ガイドプレート
13 センサ
13−1 センサ
14 押圧部材
14−1〜14−12 押圧部材
15 コイルバネ
16 バンド
17 補助バンド
18 カバー
19 裏蓋
20 表示部
21 手首
111 回転軸
112 風防ガラス
113 フック
121 ガイド孔
131 センサ素子
132−1〜132−8 センサブロック
133 スリット
140 押圧手段
141 矩形平板フランジ
141−1〜141−4 矩形平板フランジ
141−5〜141−8 円板フランジ
141−9〜141−12 異形フランジ
143 バネガイド部
144 摺動部
145 溝部
146 止め輪
161 連結軸
171 ファスナー
201 基板
211 橈骨動脈


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の情報を測定する生体測定装置において、
少なくとも1つのセンサ素子を有する複数のセンサブロックからなる、前記生体の情報を測定するセンサと、
前記生体に前記センサを押圧する押圧手段と、を有し、
前記押圧手段は、複数の独立した押圧機構で構成され、それぞれの前記押圧機構が独立して前記センサブロックを前記生体に押圧することを特徴とする生体測定装置。
【請求項2】
前記センサは、前記センサ素子をマトリクス状に配設してなるマトリクスセンサアレイであることを特徴とする請求項1に記載の生体測定装置。
【請求項3】
前記センサは、前記センサブロック間に、スリットまたは溝部を備えて分割され、
前記押圧手段は、分割された前記センサブロックごとに少なくとも1つの前記押圧機構が平面的に重なり、前記生体に押圧することを特徴とする請求項2に記載の生体測定装置。
【請求項4】
前記押圧機構は、前記センサを前記生体の方向に押圧する押圧部材と、前記押圧部材をセンサに付勢する付勢部材により形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の生体測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−220949(P2010−220949A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74067(P2009−74067)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】