説明

生体用電極ユニット包装体およびその良否判定検査方法

【課題】 生体用電極ユニットを完全に密封包装して、電極部材の劣化進行を十分にかつ確実に抑制することができると共に、この密封包装された生体用電極ユニットに対し、定期的または非定期的にそれぞれ密封状態を開封することなく、簡便かつ容易に行うことができ、しかもその良否判定を適正かつ迅速に達成することができる生体用電極ユニット包装体およびその良否判定検査方法を提供する。
【解決手段】 生体に対する接触面を導通かつ分離可能に接合した一対の電極部材20a、20bと、前記各電極部材の一端部からそれぞれ導出されるリード線22a、22bと、これらのリード線の他端部に結合して外部接続端子部を構成する電気的接続手段24とを備えた生体用電極ユニットを備え、前記電気的接続手段において前記リード線を相互に短絡接続して、前記一対の電極部材の導通を含む1つの閉回路を形成し、前記リード線を外部磁界により電圧(起電力)を発生し得るコイル形状に巻回して、これらの生体用電極ユニット全体を密封包装材26により密封包装して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動器用電極等に適用される生体用電極を、生体用電極ユニットとして密封包装した包装体に係り、特にこのような生体用電極ユニットを包装状態から開封する前に、定期的または非定期的に、包装状態の電極の良否判定検査を簡便かつ容易に行うことができ、しかも包装状態の電極の良否について適正かつ迅速に判定することができる生体用電極ユニット包装体およびその良否判定検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医用電子装置として、例えば医用電極については、電極を安定した状態で保存するために密封して包装状態とすることが行われている。また、このように密封された包装体として保存されている医用電極は、保存状態において開封することなく、定期的に電極の電気的な使用可能性を検査することも行われている。
【0003】
そこで、例えば、電極の電気的な使用可能性を、開封することなく定期的に検査することを可能にする、電子医療装置に使用されるシール包装された医用電極システムとして、(1)-a- 平らで薄い非導電性ベース層、 -b- 前記ベース層の側に配置された患者に接触する導電性半液体のゲル層、 -c- 前記ゲル層に通電可能に接続された導電性接続手段とからなる患者の体に配置され電子医療装置に接続する第1の使い捨て電極と、(2)-a- 平らで薄い非導電性ベース層、 -b- 前記ベース層の側に配置された患者に接触する導電性半液体のゲル層、 -c- 前記ゲル層に通電可能に接続された導電性接続手段とからなる患者の体に配置され電子医療装置に接続する第2の使い捨て電極と、(3) 前記第1および第2の電極を囲むために内部空間を形成するように構成され配置された、薄くて通常平らで柔軟性があり、完全な非ガス透過性の高分子材料で構成されたパッケージと、(4) 前記第1および第2の電極の接続手段は、前記パッケージを通って外面に延び、前記第1および第2の電極のゲル層は、それぞれの間で電気通信を行えるように対向した関係を持って方向付けられており、これによりパッケージを開封することなく、電流ループが前記第1の電極の接続手段、第1の電極のゲル層、第2の電極のゲル層、第2の電極の接続手段の間に形成されるようにしたシール包装された医用電極システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
前記と同様に、使い捨ての除細動器用電極の包装体として、(1) ベース層と、(2) ベース層に上塗りされた患者と接触するゲル層と、(3) 第1の電極に取り付けられて導電性ゲル層に電気的に内部接続される第1端部と、除細動器に電気的に内部接続される第2端部とを備えた第1のリード線と、(4) 使用前に第1の電極を保護するために第1の電極と第1のリード線の第1端部とを通常ガス非透過性のパッケージで覆っており、(5) パッケージの開封と第1の電極の使用に先立って、第1のリード線の第2端部が除細動器に内部接続できるように、第1のリード線がパッケージから延出している構成からなる第1の使い捨て除細動器用電極が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、この特許文献2には、(1) ベース層と、(2) ベース層に上塗りされた患者と接触するゲル層と、(3) 第2の電極に取り付けられて導電性ゲル層に電気的に内部接続される第1端部と、除細動器に電気的に内部接続される第2端部とを備えた第2のリード線と、(4) 使用前に第2の電極を保護するために第2の電極と第2のリード線の第1端部とを通常ガス非透過性のパッケージで覆っており、(5) パッケージの開封と第2の電極の使用に先立って、第2のリード線の第2端部が除細動器に内部接続できるように、第2のリード線がパッケージから延出している構成からなる第2の使い捨て除細動器用電極が開示されている。そして、前記第1の電極と第2の電極の導電性ゲル層は、パッケージ内で互いに電気的に内部接続されており、これにより前記第1のリード線と第2のリード線の第2端部間で電気回路を形成し、パッケージの開封に先立って前記第1の電極と第2の電極の電気特性を検査することを可能にしていることが開示されている。
【0006】
さらに、医療用消耗品等において、導電性を有する内容物を電気絶縁性被膜で被包した密封包装物についての検査方法として、密封包装物のピンホールを検査するように構成した密封包装物の検査方法および装置が提案されている(特許文献3参照)。
すなわち、この密封包装物の検査方法は、(1) 血液製剤その他各種の導電性を有する内容物を、電気絶縁性被膜で被包した密封包装物を搬送しながら、その搬送路の片側に配置した導電子とその他方の側に配置した前後二つの導電子のうち内容物が存する部分における対向両面に同時に接触させつつ高電圧で密封包装物に帯電させ、(2) 導電子が接触している部分と二つの導電子のうちの少なくとも一方が接触している部分に、電流変化が起こっているか否かを検知すると共に、(3) 各導電子と密封包装物の電気絶縁性被膜との接触部の前後の側方に光ファイバーの入光端面を対面させて前記光ファイバーを介して各導電子が接触している部分にスパーク放電による発光が起こっているか否かを検知し、(4) 導電子と電気絶縁性被膜の接触部の電流変化の検知と放電による発光の有無の検知とにより、密封包装物のピンホールを確実に検出する一方、(5) 電流変化の検知と発光の有無の検知のいずれか一方のみの検知により、検知手段の不良を判別可能にしたことが開示されている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5402884号明細書
【特許文献2】米国特許第5579919号明細書
【特許文献3】特開2003−35626号公報
【0008】
前記特許文献1および特許文献2に記載の発明は、使い捨ての医用電極の密封包装体に関するものであって、前記密封包装された電極を使用する場合に、前記密封包装体を開封することなく、定期的に密封包装されている電極の電気特性を検査することができる特徴を備えるものである。
【0009】
しかるに、前記特許文献1および特許文献2に記載の発明においては、密封包装されている電極の電気特性を検査する手段として、電極を電子医療装置に接続するため、電極に接続されている接続手段としてのリード線の一部を、予め密封包装体の外部に導出させ、しかもこれらのリード線と共に、電極に対する検査用の導電線ないし導電片をさらに設けて、その一端を密封包装体の外部に導出させた構成からなるものである。
【0010】
このように、電極を密封包装することにより、電極面に塗着されたゲル物質と共に安全かつ適正な保存を維持することができるが、前記のように電極に対してそれぞれ接続されるリード線および検査用の導電線ないし導電片の一端を、それぞれ密封包装体の外部に導出させることから、これらリード線等の密封包装体からの引き出し個所およびリード線等の内部の密封を確実にしなければならない。このため、密封包装に際しての構成が複雑になると共に、密封包装体はリード線等が外部に引き出してあるために取扱い中などにおいてリード線等に無理な力が加わって、密封が破壊される惧れがある。
【0011】
また、特許文献3に記載の発明は、導電性を有する内容物を電気絶縁性被膜で被包した密封包装物を対象とし、この密封包装物に対して一対の電極を接触ないし近接対面させて、前記電極間に直流高電圧を印加することにより、前記内容物を被包する電気絶縁性被膜におけるピンホールの存在を、このピンホールと電極との間に発生する火花放電により検出するように構成したものである。従って、このような密封包装物の対象として、使い捨ての医用電極等に適用することは不適当である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、生体用電極ユニットを完全に密封包装して、電極部材の劣化進行を十分にかつ確実に抑制することができると共に、この密封包装された生体用電極ユニットに対し、定期的または非定期的にそれぞれ密封状態を開封することなく、簡便かつ容易に行うことができ、しかもその良否判定を適正かつ迅速に達成することができる生体用電極ユニット包装体およびその良否判定検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の生体用電極ユニット包装体は、生体に対する接触面を導通かつ分離可能に接合した一対の電極部材と、前記各電極部材の一端部からそれぞれ導出されるリード線と、これらのリード線の他端部に結合して外部接続端子部を構成する電気的接続手段とを備えた生体用電極ユニットを備え、
前記電気的接続手段において前記リード線を相互に短絡接続して、前記一対の電極部材の導通を含む1つの閉回路を形成し、前記リード線を外部磁界により電圧(起電力)を発生し得るコイル形状に巻回して、これらの生体用電極ユニット全体を密封包装材により密封包装してなることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2に記載の生体用電極ユニット包装体は、可撓性シート電極の一側面に導電性ゲル層を設けると共に他側面に非導電性部材を接着させてなる一対の電極部材と、前記各電極部材の導電性ゲル層を相互に対向させて接合する接合間に設けるセパレータと、前記各電極部材の一端部から導出される所要長さのリード線と、これらのリード線の他端部に結合して外部接続端子部を構成する電気的接続手段とを備えた生体用電極ユニットを備え、
前記セパレータには複数の小孔を設けて対向する導電性ゲル層を部分的に相互に接触させ、前記生体用電極ユニットの各リード線の他端部に結合された外部接続端子部を構成する電気的接続手段において各リード線を相互に短絡接続して前記一対の電極部材の導通を含む1つの閉回路を形成し、さらにこの閉回路を形成するリード線を外部磁界により電圧(起電力)を発生し得るコイル形状に巻回して、前記接合した一対の電極部材の一側面に配置し、これらの生体用電極ユニット全体を密封包装材により密封包装してなることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3に記載の包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法は、請求項1または2記載の生体用電極ユニット包装体に対し、前記リード線を巻回して形成したコイルに近接させて発振コイルと受信コイルとを配置し、前記発振コイルに所要の周波数、電圧からなる交流電圧を印加し、前記受信コイルに発生する電圧を検出することにより、電極部材等の良否判定を可能とすることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4に記載の包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法は、請求項1または2記載の生体用電極ユニット包装体に対し、前記リード線を巻回して形成したコイルに近接させて検出コイルを配置し、前記検出コイルに抵抗器を介して所要の周波数の交流電圧を印加し、前記検出コイルの電圧を検出することにより、電極部材等の良否判定を可能とすることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5に記載の包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法は、前記検出された電圧が、所要の基準値以下では電極部材等を適正であると判定し、また前記基準値より増大した際には、電極部材等を不良と判定するように設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1および2に記載の生体用電極ユニット包装体によれば、生体用電極ユニットの全体を簡便にかつ容易に完全密封包装することができ、電極部材の劣化の進行を抑制して、生体用電極ユニットの有効保存期間を延長することができる。しかも、密封包装された生体用電極ユニットは、開封することなく容易かつ簡便に電極等の電極部材の良否を適正かつ迅速に判定することができる。
【0019】
本発明の請求項3ないし5に記載の包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法によれば、包装状態の生体用電極ユニットを開封することなく、定期的または非定期的に、電極等の電極部材の良否判定のための検査を簡便かつ容易に行うことができ、しかも電極等の電極部材の良否について適正かつ迅速に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係る生体用電極ユニット包装体およびその良否判定検査方法の実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る生体用電極ユニット包装体の要部断面概略構成図を示すものであり、生体用電極ユニット包装体は除細動器に使用されるものである。すなわち、図1において、参照符号10a、10bはそれぞれ可撓性シート電極を示し、これらの可撓性シート電極10a、10bの一側面には導電性ゲル層12a、12bを設けると共に、その他側面には非導電性部材14a、14bを粘着剤により接着させて、一対の電極部材20a、20bが構成されている。
【0022】
このように構成された一対の電極部材20a、20bは、セパレータ16を介して前記導電性ゲル層12a、12bを相互に対向させて接合離反可能に接合する。この場合、セパレータ16は複数の小孔を設けた構成とすることにより、前記導電性ゲル層12a、12bが部分的に接触して電気的に導通し、生体用電極ユニットの使用時には容易に離反させることができる。また、前記可撓性シート電極10a、10bの一端部には、圧着ピン18a、18bを介してリード線22a、22bの一端を電気的に接続する。なお、参照符号15a、15bは、前記可撓性シート電極10a、10bとリード線22a、22bとのそれぞれの接続部を覆う非導電性部材を示す。
【0023】
前記各電極部材20a、20bの一端部からそれぞれ導出された所要長さのリード線22a、22bは、図2に示すように、他端がそれぞれ外部接続端子部24a、24bを備える電気的接続手段としてのコネクタ24に結合されると共に、このコネクタ24の外部接続端子部24a、24b間をショートピン25により短絡接続して、前記一対の電極部材20a、20bの導通を含む1つの閉回路を形成するように設定する。そして、前記閉回路を形成するリード線22a、22bを、外部磁界により起電力を発生し得るコイル形状に巻回し、前記接合した一対の電極部材20a、20bの一側面に配置して、生体用電極ユニット全体を非磁性体で非導電性の密封包装材26により密封包装して、本発明に係る生体用電極ユニット包装体30を構成する。なお、前記密封包装材26としては、各種の医療用資材を密封包装する公知の各種包装材料を適用することができる。
【0024】
図3は、前述した生体用電極ユニット包装体30における生体用電極ユニットの包装に際してのセッティング状態を示すものである。すなわち、前述した一対の電極部材20a、20bを、それぞれ導電性ゲル層を対向させると共に、セパレータ16を介して相互に接合する。次いで、前記各電極部材20a、20bからそれぞれ導出されるリード線22a、22bは、コネクタ24の外部接続端子部24a、24b間をショートピン25により短絡接続され、前記接合した一対の電極部材20a、20bの導通を含む1つの閉回路を形成する。そして、前記短絡接続されたリード線22a、22bを、図示のように一定方向に巻回して、前記接合した一対の電極部材20a、20bの一側面に配置する。このようにセッティングした生体用電極ユニットは、図1に示すように、全体を密封包装材26により密封包装される。
【0025】
次に、前記構成からなる生体用電極ユニット包装体30に対する生体用電極ユニットの可撓性シート電極10a、10b等の良否判定検査方法について説明する。
【0026】
図4は、前述した本発明に係る生体用電極ユニット包装体30を、開封することなく、定期的または非定期的に、包装状態にある生体用電極ユニットの可撓性シート電極10a、10b等について良否判定を行うための検査方法を実施する装置構成の一実施例を示すものである。すなわち、本実施例の検査方法を実施する装置は、図4において、前記生体用電極ユニット包装体30に対し、リード線22a、22bを一定方向に巻回して形成されたコイルと同心的に、その上方位置および下方位置にそれぞれ発振コイル32と受信コイル36とを対向配置し、前記発振コイル32を発振器34に接続して所要の周波数、電圧からなる交流電圧を印加し、前記受信コイル36をオシロスコープ等の電圧(起電力)検出手段38に接続して発生する電圧(起電力)を検出するように構成される。可撓性シート電極10a、10b等が劣化すると、内部抵抗が高くなるため、前記受信コイル36に発生する電圧(起電力)は高くなる。従って、前述したように構成することにより、前記オシロスコープ等の電圧(起電力)検出手段38の電圧(起電力)検出出力に基づいて、可撓性シート電極10a、10b等の良否判定が可能となる。
【0027】
次に、前記一対の電極部材20a、20bの導通を含む閉回路の内部抵抗の変化に対して、前記受信コイル36に発生する電圧の変化の一例を具体例で説明する。なお、前記内部抵抗を可変するために、前記閉回路中に直列に可変抵抗器を挿入して測定した。
前記リード線22a、22bは、直径約100mm、巻回数10ターンのコイル形状とし、前記発振コイル32と受信コイル36とをそれぞれ直径約120mm、巻回数20ターンのコイルとして構成し、前記コイル32と36とを約20mm離間させて対向配置し、これらコイル32と36との間に厚さ約10mmの生体用電極ユニット包装体30を、前記リード線22a、22bを一定方向に巻回して形成されたコイルが前記コイル32、36と同心的となるように挿入配置した。また、前記発振コイル32、前記受信コイル36および前記生体用電極ユニット包装体30は、それぞれの相対位置がずれないように適宜の治具等で固定した。このようにして、前記発振コイル32に対して発振器34により周波数500KHz、出力(p−p)2Vの電圧を印加した。
【0028】
正常状態においては、前記生体用電極ユニットにおける一対の電極部材20a、20bの導通を含む1つの閉回路の内部抵抗は約4Ωであるが、可撓性シート電極10a、10b等の劣化により、電気的特性の低下に伴って前記内部抵抗が増大する。そこで、前記生体用電極ユニットにおける閉回路中に挿入した前記可変抵抗器を0〜25Ω(トータルの内部抵抗は4〜29Ω)の範囲で変化させ、その時のオシロスコープ等の電圧(起電力)検出手段38により検出される電圧(起電力)について測定した結果、図5に示すように、内部抵抗の増大に伴って検出電圧が増大(200〜600mV)する特性が得られた。
【0029】
従って、本実施例によれば、前記電圧(起電力)検出手段38により検出される電圧(起電力)の検出値が所要の基準値以下であれば、可撓性シート電極10a、10b等は適正と判定し、また前記検出値が所要の基準値より増大した際には、可撓性シート電極10a、10b等の不良と判定するように設定することができる。前記検出値は、生体用電極ユニットの種類および発振コイル、受信コイル等の検査方法を実施する装置等によって異なるため、前記基準値は適切な値に設定される。
【0030】
前述した生体用電極ユニット包装体30の良否判定を行うための検査方法を実施する装置構成の実施例においては、前記発振コイル32および前記受信コイル36を、前記生体用電極ユニット包装体30と同心的に上方および下方に配置したが、各コイル32、36の配置はこれに限定されることはない。例えば、前記発振コイル32および前記受信コイル36の両コイルを上下方向に近接させ、これら近接させた両コイルを、前記生体用電極ユニット包装体30の上方または下方のいずれかに近接させて配置してもよい。この場合も、前記両コイル32、36および生体用電極ユニット包装体30のそれぞれの相対位置がずれないように適宜の治具等で固定する。なお、このような構成例の場合は、前述した実施例に比べて、前記内部抵抗の変化に対する前記受信コイル36に発生する電圧(起電力)の変化が小さくなる。
【0031】
次に、前記包装状態にある生体用電極ユニットの可撓性シート電極10a、10b等について、良否判定を行うための検査方法を実施する装置構成の別の実施例について、図6に基づいて説明する。前述の実施例においては、発振コイル32、受信コイル36の二つのコイルを使用したが、本実施例においては、一つのコイルを使用する。すなわち、図6において、前記生体用電極ユニット包装体30の上方に近接させると共に、前記生体用電極ユニット包装体30との相対位置がずれないようにして、検出コイル40を配置する。この検出コイル40の端子40aは抵抗器42を介して発振器34に接続され、端子40bは直接発振器34に接続される。前記発振器34は、所要の周波数、電圧からなる交流電圧を前記抵抗器42を介して前記検出コイル40に印加する。さらに、前記検出コイル40の前記端子40a、40bは、オシロスコープ等の電圧(起電力)検出手段38に接続されて、前記両端子間の電圧を検出するように構成される。
このように構成することにより、前述したように、可撓性シート電極10a、10b等が劣化すると、前記接合した一対の電極部材20a、20bの導通を含む1つの閉回路の内部抵抗が高くなるため、前記検出コイル40の端子電圧が高くなる。従って、本実施例によれば、前記検出手段38の検出出力に基づいて、可撓性シート電極10a、10b等の良否判定が可能となる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は前記実施例に限定されることなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内において、多くの設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る生体用電極ユニット包装体の一実施例を示す要部断面概略構成図である。
【図2】本発明に係る生体用電極ユニット包装体における生体用電極ユニットのリード線を短絡接続する電気的接続手段(コネクタ)の一実施例を示す要部斜視図である。
【図3】本発明に係る生体用電極ユニット包装体における生体用電極ユニットの包装に際してのセッティング状態を示す概略斜視図である。
【図4】本発明に係る包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法を実施する装置構成の一実施例を示す概略説明図である。
【図5】本発明に係る包装された生体用電極ユニットの良否判定検査を行う場合における生体用電極ユニットが形成する閉回路の内部抵抗と検出電圧(起電力)との関係を示す特性線図である。
【図6】本発明に係る包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法を実施する装置構成の別の実施例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0034】
10a、10b 可撓性シート電極
12a、12b 導電性ゲル層
14a、14b 非導電性部材
15a、15b 非導電性部材
16 セパレータ
18a、18b 圧着ピン
20a、20b 電極部材
22a、22b リード線
24 電気的接続手段(コネクタ)
24a、24b 外部接続端子部
25 ショートピン
26 密封包装材
30 生体用電極ユニット包装体
32 発振コイル
34 発振器
36 受信コイル
38 電圧(起電力)検出手段
40 検出コイル
40a、40b 端子
42 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に対する接触面を導通かつ分離可能に接合した一対の電極部材と、前記各電極部材の一端部からそれぞれ導出されるリード線と、これらのリード線の他端部に結合して外部接続端子部を構成する電気的接続手段とを備えた生体用電極ユニットを備え、
前記電気的接続手段において前記リード線を相互に短絡接続して、前記一対の電極部材の導通を含む1つの閉回路を形成し、前記リード線を外部磁界により電圧(起電力)を発生し得るコイル形状に巻回して、これらの生体用電極ユニット全体を密封包装材により密封包装してなることを特徴とする生体用電極ユニット包装体。
【請求項2】
可撓性シート電極の一側面に導電性ゲル層を設けると共に他側面に非導電性部材を接着させてなる一対の電極部材と、前記各電極部材の導電性ゲル層を相互に対向させて接合する接合間に設けるセパレータと、前記各電極部材の一端部から導出される所要長さのリード線と、これらのリード線の他端部に結合して外部接続端子部を構成する電気的接続手段とを備えた生体用電極ユニットを備え、
前記セパレータには複数の小孔を設けて対向する導電性ゲル層を部分的に相互に接触させ、前記生体用電極ユニットの各リード線の他端部に結合された外部接続端子部を構成する電気的接続手段において各リード線を相互に短絡接続して前記一対の電極部材の導通を含む1つの閉回路を形成し、さらにこの閉回路を形成するリード線を外部磁界により電圧(起電力)を発生し得るコイル形状に巻回して、前記接合した一対の電極部材の一側面に配置し、これらの生体用電極ユニット全体を密封包装材により密封包装してなることを特徴とする生体用電極ユニット包装体。
【請求項3】
請求項1または2記載の生体用電極ユニット包装体に対し、前記リード線を巻回して形成したコイルに近接させて発振コイルと受信コイルとを配置し、前記発振コイルに所要の周波数、電圧からなる交流電圧を印加し、前記受信コイルに発生する電圧を検出することにより、電極部材等の良否判定を可能とすることを特徴とする包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の生体用電極ユニット包装体に対し、前記リード線を巻回して形成したコイルに近接させて検出コイルを配置し、前記検出コイルに抵抗器を介して所要の周波数の交流電圧を印加し、前記検出コイルの電圧を検出することにより、電極部材等の良否判定を可能とすることを特徴とする包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法。
【請求項5】
前記検出された電圧が、所要の基準値以下では電極部材等を適正であると判定し、また前記基準値より増大した際には、電極部材等を不良と判定するように設定したことを特徴とする請求項3または4記載の包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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