説明

生体細胞の分離方法及び培養装置

【課題】培養した細胞を含む液体培地から細胞を分離するにあたり、装置構成が簡単でスケールアップも容易であり、かつ分離操作を長期間継続することを可能とする。
【解決手段】液体培地を貯留することができ、細胞を当該液体培地内で培養する培養槽と、上記培養槽に連結され、上記培養槽内から供給された液体培地に含まれる細胞とその他の成分とを分離するフィルタ手段を有する分離装置と、上記分離装置に連結され、内部に貯留した液体培地を上記分離装置の上記フィルタ手段の表面に対して平行な方向に供給する培地移送槽とを備え、上記培地移送槽と上記培養槽との間で液体培地を往復流動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を液体培地において培養するとともに、液体培地に含まれる細胞を細胞以外の成分から分離することができる培養装置及び当該培養装置を用いた細胞分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の培養では、目的生産物の生産性向上のために生体細胞を高密度で培養することが望まれており、これを達成する培養手法として連続培養法がある。動物細胞の連続培養では、液体培地中の細胞を分離して液成分のみを培養槽から抜き出し、新たな培地を供給する操作が必須であり、これまでに種々の細胞分離手段が開発されている。非特許文献1および特許文献1には、重力沈降法を用いた連続培養装置に関する記載がある。特許文献2および特許文献3には、遠心分離により細胞を沈降分離する手法が記載されている。特許文献4には、培養槽内に細胞の通過を阻止するろ過材で囲った培養領域を設け、培養領域外に通過してきたろ過液を引き抜くことを特徴とする培養装置が記載されている。特許文献5には、ろ過膜として多孔質中空糸膜を使用し、培地を用いて逆洗することが記載されている。特許文献6には二対のろ過膜を設置し、一方を通気手段、残る一方をろ過手段として使用し、これを交互に切り替えることによってろ過と逆洗を繰り返し行なうことが記載されている。特許文献7には培養槽内に回転するろ過膜を設けた培養装置が述べられている。特許文献8には培養槽外に回転するろ過膜を設置する培養装置が記載されている。
【0003】
しかし、これら従来の手法にはそれぞれ大きな課題がある。すなわち、重力沈降法は、細胞の沈降速度が小さいために静置領域を大きくする必要があり、大型培養装置への適用がきわめて困難である。また、遠心分離装置は装置構成が複雑であり、大型化が難しい。
【0004】
これらに対して、ろ過分離装置は装置構成が簡単であってスケールアップも容易であるが、ろ過フィルタの目詰まりが実質的に不可避であるといった問題がある。このため、培養槽内にろ過膜を収容する方式では、ろ過フィルタの目詰りが発生した時点で培養を終了せざるを得ず、長期間の培養を実施することが困難である。一方で、培養槽外にろ過フィルタを設置する方式では、目詰りしたろ過フィルタを交換することによって長期間の培養が可能になるが、培養槽と細胞分離装置の間での液体培地循環操作が必要になる。しかしながら、この液体培地循環の操作を実プラント規模にて実施する場合、使用できるポンプが実質的にないという問題がある。
【0005】
培養槽外にろ過フィルタを設置して液体培地循環を行う方式を培養プラントに適用するためには、微生物の侵入を防止するための高度な密閉性を有し、強アルカリもしくは強酸を主成分とする洗浄液を用いた洗浄操作に耐え、例えば130℃、0.2MPaの蒸気を通じることで内部の完全殺菌を行ない得る構造と素材から構成されたポンプが必須となる。
【0006】
上記条件を満たすものとしてチューブローラーポンプが挙げられるが、これは卓上規模の装置に多用されてはいるものの、構造的に大容量化が困難であること及びチューブ破損の虞があることから、実プラント規模に適用することは困難である。
【0007】
【非特許文献1】組織培養 第15巻第8号283頁〜287頁(1989年発行)
【特許文献1】特開平6-209761公報
【特許文献2】特開平5-192607公報
【特許文献3】特開平6-90737公報
【特許文献4】特開平5-95778公報
【特許文献5】特開平1-281072公報
【特許文献6】特開平6-98758公報
【特許文献7】特表平03-505041公報
【特許文献8】特開平06-237754公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した実情に鑑み、培養した細胞を含む液体培地から細胞を分離するにあたり、装置構成が簡単でスケールアップも容易であり、かつ分離操作を長期間継続することが可能な培養装置及び細胞分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明は、以下の内容を包含する。
【0010】
(1)液体培地を貯留することができ、細胞を当該液体培地内で培養する培養槽と、上記培養槽に連結され、上記培養槽内から供給された液体培地に含まれる細胞とその他の成分とを分離するフィルタ手段を有する分離装置と、上記分離装置に連結され、内部に貯留した液体培地を上記分離装置の上記フィルタ手段の表面に対して平行な方向に供給する培地移送槽とを備え、上記培地移送槽と上記培養槽との間で液体培地を往復流動できることを特徴とする培養装置。
【0011】
(2)上記培地移送槽は、内部に貯留した液体培地の液面位置を検出する液面検出手段と、槽内部の圧力を検出する圧力計と、槽内部の圧力を調節する圧力調節手段とを備えることを特徴とする(1)記載の培養装置。
【0012】
(3)上記培養槽の内圧と上記培地移送槽の内圧との差を調節することで、上記培地移送槽と上記培養槽との間で液体培地を往復流動させることを特徴とする(1)記載の培養装置。
【0013】
(4)上記培地移送槽に接続され、上記培地移送槽の内圧を調整する調圧槽を更に備えることを特徴とする(4)記載の培養装置。
【0014】
(5)上記分離装置に連結され、細胞分離後の液体培地を貯留するろ過液貯槽を更に備えることを特徴とする(1)記載の培養装置。
【0015】
(6)上記培地移送槽及び上記ろ過液貯槽に接続され、上記培地移送槽及び上記ろ過液貯槽の内圧を調整する調圧槽を更に備えることを特徴とする(5)記載の培養装置。
【0016】
(7)上記分離手段は、細胞の通過を阻止するろ過フィルタを用いたろ過方式により細胞分離を行うものであることを特徴とする(1)記載の培養装置。
【0017】
(8)上記分離手段は、円筒型回転体の外周面に細胞の通過を阻止するフィルタを設けた回転ろ過フィルタであることを特徴とする(1)記載の培養装置。
【0018】
(9)上記分離手段のフィルタ手段は、中空部材の外周面に細胞の通過を阻止する細孔を形成せしめた中空糸フィルタであることを特徴とする(1)記載の培養装置。
【0019】
(10)液体培地を貯留することができ、細胞を当該液体培地内で培養する培養槽と、上記培養槽に連結され、上記培養槽内から供給された液体培地に含まれる細胞とその他の成分とを分離するフィルタ手段を有する分離装置と、上記分離装置に連結され、内部に貯留した液体培地を上記分離装置の上記フィルタ手段の表面に対して平行な方向に供給する培地移送槽とを備える培養装置を用い、液体培地に含まれる細胞を上記分離装置で分離する方法であって、上記フィルタ手段の表面に対して平行な方向に液体培地が往復流動している際に、細胞を含む液体培地を上記フィルタ手段に通過させることで細胞と細胞以外の成分とを分離し、液体培地の流動方向が変更する時点において上記フィルタ手段に対する液体培地の通過を停止することを特徴とする細胞分離方法。
【0020】
(11)上記培地移送槽は、内部に貯留した液体培地の液面位置を検出する液面検出手段と、槽内部の圧力を検出する圧力計と、槽内部の圧力を調節する圧力調節手段とを備え、上記圧力調節手段により槽内部の圧力を調整することで槽内部に貯留した液体培地を上記培養槽との間で往復流動させることを特徴とする(10)記載の細胞分離方法。
【0021】
(12)上記培養槽の内圧と上記培地移送槽の内圧との差を調節することで、上記培地移送槽と上記培養槽との間で液体培地を往復流動させることを特徴とする(10)記載の細胞分離方法。
【0022】
(13)上記培地移送槽に接続され、上記培地移送槽の内圧を調整する調圧槽を更に備え、上記調圧槽により槽内部の圧力を調整することで槽内部に貯留した液体培地を上記培養槽との間で往復流動させることを特徴とする(10)記載の細胞分離方法。
【0023】
(14)上記分離装置に連結され、細胞分離後の液体培地を貯留するろ過液貯槽を更に備え、細胞以外の成分を上記ろ過液貯槽に回収することを特徴とする(10)記載の細胞分離方法。
【0024】
(15)上記培地移送槽及び上記ろ過液貯槽に接続され、上記培地移送槽及び上記ろ過液貯槽の内圧を調整する調圧槽を更に備え、上記調圧槽により上記培地移送槽内部の圧力を調整することで槽内部に貯留した液体培地を上記培養槽との間で往復流動させ、上記調圧槽により上記ろ過液貯槽内部の圧力を調整することで細胞以外の成分を上記ろ過液貯槽に回収することを特徴とする(14)記載の細胞分離方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る培養装置及び細胞分離方法においては、培養槽と培地移送槽との間で液体培地を往復流動させることによって、培養槽と培地移送槽との間に配設された分離装置のフィルタ表面に対して略平行な方向に液体培地を流動させることができる。このため本発明に係る培養装置及び細胞分離方法によれば、微生物汚染リスクを高めることなく培養槽外に設置した分離装置に液体培地を供給することでき、実スケールでの長期間の連続培養が可能となる。また、培養装置及び細胞分離方法を用いることによって、目的物質の生産性および生産物の安全性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係る培養装置及び細胞分離方法について、図面を参照して以下詳細に説明する。本発明に係る細胞培養方法は、医薬品等の主原料となる物質を生産する細胞の培養に適用することができる。本発明において、生産対象の物質としては、例えば抗体や酵素等のタンパク質、低分子化合物及び高分子化合物等の生理活性物質を挙げることができる。また、培養対象の細胞としては、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、細菌、酵母、真菌及び藻類等を挙げることができる。特に、抗体や酵素等のタンパク質を生産する動物細胞を培養対象とすることが好ましい。
【0027】
図1は、本発明を適用した培養装置の構成を模式的に示すフロー図である。図1に示す培養装置は、液体培地を貯留した移送タンク1、液体培地を貯留して細胞を培養することができる培養槽2、移送タンク1及び培養槽2に接続された分離装置3、分離装置3で分離した細胞以外の成分を貯留するろ過液貯槽4を備えている。分離装置3は、表面にフィルタ5を設けたろ過フィルタ6、該ろ過フィルタ6を収容するろ過フィルタ収容容器7から構成されており、ろ過フィルタ収容容器7の一方端部近傍にて移送タンク1と接続され、ろ過フィルタ収容容器7の他の一方端部近傍にて培養槽2と接続されている。ここでフィルタ5としては、一般的に用いられるろ布、メンブランフィルタ、金属フィルタなど、細胞の通過を阻止できるものであれば特に限定するものではない。特に、ろ過フィルタ内部に蒸気を吹き込んでの殺菌や洗浄の際の洗浄液注入に耐えられる機械的強度と耐熱性および耐腐食性を有するものを選定することが好ましい。また、液体培地中には死んだ細胞が崩壊して生じる微細な細胞断片が多数存在することから、健全な細胞の通過を阻止し、微細な細胞断片を通過させるろ過特性を有するフィルタが特に好ましい。
【0028】
本培養装置において、移送タンク1とろ過フィルタ収容容器7は移送管路8aによって、培養槽2とろ過フィルタ収容容器7は移送管路8bによって、及びろ過フィルタ6とろ過液貯槽4は移送管路8cによってそれぞれ連通されている。それぞれの移送管路には弁21、弁22および弁23が設けられている。弁21、弁22および弁23としては、例えば全開または全閉の二段階の動作を行なうものを使用することができる。
【0029】
本発明に係る培養装置においては、移送タンク1と培養槽2との間で液体培地を往復流動させる構成を有している。一例として、図1に示した培養装置における移送タンク1に、内部の液面を検出するレベルセンサ31及びレベル検出器32と、内部圧力を計測する圧力計33と、内部圧力を調節する弁24及び圧力調節弁25とを設けることができる。なお、圧力調節弁25と移送タンク1との間には除菌フィルタ36を配設することができる。これらレベルセンサ31、レベル検出器32及び圧力計33を用いることによって移送タンク1内部の液面位置及び内圧を測定することができ、弁24及び圧力調節弁25により移送タンク1内部の圧力を調整することができる。これにより、培養槽2内の液体培地10の液面を所定の範囲に調節することができる。すなわち、移送タンク1の内部圧力を培養槽2との平衡圧より低く調整することによって、培養槽2から液体培地10を受け入れて液面を上昇させ、又は移送タンク1の内部圧力を培養槽2の平衡圧より高く調整することによって液体培地10を排出して液面を低下させることができる。ここで平衡圧とは、移送タンク1と培養槽2とを連通させたときに移送タンク1内部の液面位置が実質的に変化しないときの圧力である。移送タンク1内部の液面を上限と下限の間で往復させることは、培養槽2と移送タンク1との間で液体培地10が往復することに他ならない。移送タンク1の容積を、移送管路8a、ろ過フィルタ収容容器7及び移送管路8bのそれぞれの容積を足し合わせたものより十分に大きくすれば、培養槽2とろ過フィルタ収容容器5との間での液体培地10の循環と同等の作用が得られる。なお、圧力の調整用に使用される空気はあらかじめ細菌等の微粒子を除去した無菌空気を使用することが望ましい。
【0030】
ここで、液面レベルセンサ31およびレベル検出器32としては特に限定するものではないが、蒸気を吹き込んでの殺菌や洗浄の際の洗浄液注入に耐えられる機械的強度と耐熱性および耐腐食性を有するものを選定することが好ましい。また、液体培地中には細胞や細胞が崩壊して生じた微細な細胞断片が多数存在し、液面には泡沫が滞留する恐れがあることから、センサの汚れによって誤動作を起こす恐れないものを選定することが好ましい。本培養装置においては、通電式のレベルセンサを使用することができる。
【0031】
また、本培養装置において、ろ過液貯槽4には、内部圧力を計測する圧力計34と、内部圧力を調節する弁26及び圧力調節弁27とを設けることができる。なお、圧力調節弁27とろ過液貯槽4との間には除菌フィルタ37を配設することができる。弁26及び圧力調節弁27によりろ過液貯槽4内部を所望の圧力に調節することができる。
【0032】
以上のように構成された培養装置を用いた細胞培養においては、以下のように細胞を分離することができる。なお、培養槽2における細胞培養については、連続培養や流加培養など定法を適宜適用できるためその説明を省略する。
【0033】
まず、培養装置においては、ろ過液貯槽4の内部圧力を圧力計34で測定し、あらかじめ計測してある培養槽2の内部圧力と平衡圧に調節する。培養槽2との平衡圧は、ろ過液貯槽4とろ過フィルタ収容容器7とを連通させたときにろ過液貯槽4内部の液面位置が実質的に変化しないときの圧力である。なお、弁22が開放された状態では、ろ過フィルタ収容容器7の内圧は培養槽2の内圧と実質的に同一である。ついで、ろ過液貯槽4の圧力を圧力計34で計測しながら平衡圧より低く調節する。内圧の調節は、弁26を開いて圧縮空気の注入、または除菌フィルタ37を介して接続された圧力調整弁27によって行う。ついで、弁23を開放することにより、移送管路8cによってろ過液貯槽4と連通しているろ過フィルタ6内部の圧力が平衡圧より低下する。これによってフィルタ5の細孔を通じて液体培地がろ過フィルタ6の内部に流入する。このとき、フィルタ5の細孔より大きな生体の細胞は通過を阻止されることから、ろ過フィルタ6に流入した液、すなわちろ過液には細胞が除かれている。なお、細胞の分離操作の停止は、弁23を閉塞することで行うことができる。このとき、弁23の開閉は断続的に行うことができる。その開閉頻度は、目標とするろ過速度とろ過液貯槽4内圧と平衡圧との差圧によって決定することができる。平衡圧との差圧を大きくすると大きなろ過速度が得られるが、フィルタ5でのろ過液への生体の細胞の漏出や細孔への目詰りを起こす原因となる虞がある。また、弁23の開放時間を大きくすることは圧力変動を大きくすることになり、目詰まりを促進させる場合があるため好ましくない。
【0034】
上述したように、液体培地に含まれる細胞をろ過フィルタ6によって分離することができるが、本発明に係る培養装置においては、このときに移送タンク1と培養槽2との間で液体培地を往復流動させる。具体的には、以下のようにして移送タンク1と培養槽2との間で液体培地を往復流動させることができる。すなわち、移送タンク1と培養槽2とを連通した状態で、移送タンク1内に液体培地を注入する注入工程、及び移送タンク1内からの液体培地の排出工程を繰り返すことで、移送タンク1と培養槽2との間で液体培地を往復流動させることができる。
【0035】
このとき、先ず、移送タンク1に設置された圧力計33で移送タンク1内圧を計測し、0.01〜0.05MPaに加圧された培養槽2と平衡する圧力に調節する。移送タンク1の内圧の調節は、弁24を開いて圧縮空気の注入、または除菌フィルタ36を経て接続された圧力調整弁25によって行うことができる。移送タンク1の液体培地10の液面位置をレベルセンサ31、レベル検出器32によって検出する。
【0036】
注入工程
圧力調整弁25を開いて移送タンク1内部の圧力を培養槽2との平衡圧よりわずかに低く調節する。この状態で、弁21及び弁22を開放すると、培養槽2中の液体培地が移送管路8b及び8aを介して移送タンク1に流入し、移送タンク1の液面レベルが上昇する。これにより、培養槽2から移送タンク1に向かって液体培地を流動させることができ、ろ過フィルタ6におけるフィルタ5の表面と平行な方向に液体培地を流動させることができる。
【0037】
排出工程
移送タンク1の液面レベルが上限に到達した時点で弁24を短時間開放することで、移送タンク1の内圧を培養槽2との平衡圧よりも高くする。これにより、移送タンク1中の液体培地10が培養槽2に排出されて液面レベルが下降する。これにより、移送タンク1から培養槽2に向かって液体培地を流動させることができ、ろ過フィルタ6におけるフィルタ5の表面と平行な方向に液体培地を流動させることができる。
【0038】
上述した注入工程及び排出工程を繰り返し実行することによって、フィルタ5の表面と平行な方向に液体培地を往復流動させることができる。このとき、注入工程及び排出工程の切り替えタイミングは、移送タンク1の液面レベルを基準として行うことができる。すなわち、当該液面レベルをレベルセンサ31及びレベル検出器32で検出し、液面レベルを予め設定した範囲の上限になった時点で注入工程から排出工程へと切り替え、液面レベルが当該範囲の下限となった時点で肺注す工程から注入工程へと切り替える。なお、移送タンク1の液面レベルが当該範囲の上限又は下限を超えるなどの異常な事態が生じた場合には直ちに弁21を閉じるとともに、上述した細胞分離操作も停止することが好ましい。この場合、速やかに移送タンク1、移送管路8a、ろ過フィルタ収容容器7および移送管路8b内部の液体培地を培養槽2に戻すことが望ましい。すなわち、移送タンク1の内圧を培養槽2との平衡圧より高く設定した後、弁21を開いて液体培地を培養槽2側に押し出す。これにより、液体培地の循環が停止した状態で細胞が酸素欠乏や栄養成分欠乏の状況に陥ることを防止ことができる。ただし、停止が数分以内ですむことが確実な場合、この操作は不必要であることは言うまでもない。当然のことながら、できるだけ速やかに不調原因を取り除いて再稼動させることが望ましい。
【0039】
なお、移送タンク1の内圧変動は、0.01〜0.05MPaに加圧された培養槽2との平衡圧に対して注入工程ではわずかに低く、かつ大気圧よりは高くすることが好ましく、また、排出工程では培養槽2との平衡圧に対してわずかに高くすることが好ましい。その圧力変化量はろ過フィルタ6の細胞分離能力と構造特性によって決定される。
【0040】
以上で説明したように、本培養装置によれば、ろ過フィルタ6におけるフィルタ5の表面と平行な方向に液体培地を流動させた状態を維持しながら細胞の分離操作を実施することができる。これにより、細胞の分離操作におけるフィルタ5の目詰まりを大幅に遅延させることができ、長時間にわたって細胞の分離操作を行うことができる。特に、本培養装置においては、上述した注入工程及び排出工程の切り替えタイミングにおいてフィルタ5表面における液体培地の流動が僅かに停止することとなるため、液体培地の停止した状態では上述した細胞の分離操作を停止する。これにより、本培養装置においては、フィルタ5の目詰まりを確実に防止することができる。換言すれば、細胞の分離操作において、フィルタ5の表面に平行な方向に液体培地を往復流動させない場合には、フィルタ5により分離された細胞がフィルタ5近傍に集積することとなり直ちに目詰まりを生じることになる。
【0041】
このように、本培養装置によれば、フィルタ5の目詰まりを大幅に遅延させることができる。しかしながら、不測の事態により、又は長時間の分離操作の継続によりフィルタ5の目詰まりが生じ、所定のろ過速度が得られなくなって培養に支障が生じる場合には、ろ過フィルタ6の交換を行うことが望ましい。なお、図1には記載していないが、本培養装置には定置洗浄及び定置殺菌が実施できる設備が備わっている。
【0042】
ろ過フィルタ6の交換作業は、まず、弁21を閉じ、移送タンク1の内圧を培養槽2との平衡圧より高く設定する。弁21を開いて移送タンク1、移送管路8a、ろ過フィルタ収容容器7および移送管路8b内部の液体培地を培養槽2側に押し出す。弁21、弁22及び弁23を閉じ、ろ過フィルタ収容容器7を取り外す。なお、必要な場合には、取り外す前に洗浄、不活化、殺菌の操作を実施する。ついで、新しいろ過フィルタ収容容器7を取り付け、蒸気を吹き込んでの定置殺菌を実施する。
【0043】
ところで、本発明を適用した培養装置は、図1に示したように、移送タンク1の内圧及びろ過液貯槽4の内圧をそれぞれ弁24、26及び圧力調節弁25、27を用いて調節する構成に限定されず、例えば移送タンク1及びろ過液貯槽4を調圧槽と接続することでそれぞれの内圧を調節するような構成であっても良い。この場合の培養装置としては、移送タンク1及びろ過液貯槽4に対してそれぞれ異なる調圧槽が接続されても良いが、例えば、図2に示すように、移送タンク1及びろ過液貯槽4に対して共通の調圧槽9を接続しても良い。図2に示した培養装置において調圧槽9は、移送タンク1及びろ過液貯槽4に対してそれぞれ移送管路11及び移送管路12を介して連通されている。また、移送管路11及び移送管路12の中途部には、それぞれ弁27及び弁28が配設されている。また、調圧槽9には、内圧を測定する圧力計35及び内圧を調節する圧力調整弁29が配設されている。なお、圧力調整弁29は、除菌フィルタ38を介して調圧槽9と接続されている。弁27及び弁28は全開または全閉の二段階の動作を行なうものを使用することができる。
【0044】
以上のように構成された培養装置では、調圧槽9の内圧を、上述した注入工程及び排出工程における培養槽2と移送タンク1の内圧、及びろ過操作時におけるろ過液貯槽4の内圧のうち、より低いほうの圧力に調整されている。なお、調圧槽9の内圧の調節は、圧力計35で圧力を計測しながら除菌フィルタ38を経て接続された圧力調整弁29によって行うことができる。図2に示した培養装置においては、移送タンク1及びろ過液貯槽4の内圧をそれぞれ調圧槽9により調節することができ、上述した注入工程及び排出工程並びにろ過操作を上述した原理に準じて実施することができる。図2に示した培養装置によれば、高価な圧力調整弁と除菌フィルタの使用数量を低減することができるため、機器コストの低減に有効である。また、図2に示した培養装置では、図1に示した培養装置と比較して除菌フィルタ数を減少できるため、微生物によるコンタミネーションリスクを低減することができる。
【0045】
一方、本発明は、流加培養及び/又は連続培養に使用する培養装置に適用することも可能である。例えば、図3に示すように、流加培地又は液体培地を貯留する緩衝槽51及び培地槽52を備える培養装置に適用することができる。なお、図1に示した培養装置及び図2に示した培養装置と同一の構成及び部材については、図3において同符号を付することにより詳細な説明は省略する。
【0046】
図3に示す培養装置において培養槽2は、内部に貯留した液体培地を撹拌する撹拌翼40、液体培地に通気ガスを供給する散気手段57、内部の圧力を測定する圧力計58及び内部の圧力を調整する圧力調整弁59を備えている。
【0047】
また、本培養装置においてろ過液貯槽4は、移送管路8eを介して緩衝槽51と接続されている。また、緩衝槽51は、移送管路8dを介してろ過フィルタ6と接続されている。さらに、緩衝槽51は、移送管路56を介して、流加培地又は液体培地を貯留する培地槽52に接続されている。なお、移送管路8d、8e及び56には、その中途部にそれぞれ弁53、54及び55が配設されている。弁53、54及び55は全開または全閉の二段階の動作を行なうものを使用することができる。
【0048】
本培養装置において緩衝槽51は、内部に貯留した流加培地又は液体培地等の液面を検出する液面センサ41、内部の圧力を測定する圧力計42及び内部の圧力を調節するための弁62を有している。本培養装置において培地槽52は、内部に貯留した流加培地又は液体培地を撹拌する撹拌翼43、内部の圧力を測定する圧力計60及び内部圧力を調節する弁61が配設されている。
【0049】
本培養装置において調圧槽9は、移送タンク1、ろ過液貯槽4、緩衝槽51及び培地槽52とそれぞれ接続されている。なお、調圧槽9と移送タンク1の間の管路、調圧槽9とろ過液貯槽4の間の管路、調圧槽9と緩衝槽51の間の管路及び調圧槽9と培地槽52の間の管路には、その中途部にそれぞれ、弁27、28、44及び59が配設されている。弁27、28、44及び59は全開または全閉の二段階の動作を行なうものを使用することができる。なお、図3中には図示していないが、培養設備には不可欠であるところの、空気、酸素、窒素及び炭酸ガス等のガス供給設備、温水冷水供給設備、蒸気供給設備、給排水設備及び各種の計測手段を具備している。
【0050】
なお、培養槽2は圧力計58の計測結果をもとに、圧力調整弁59によって一定の圧力に保持さすることができる。また、培養槽2は、通常は外部からの細菌等の侵入を防ぐため、例えば0.01〜0.05MPaに加圧されている。
【0051】
本培養装置におけるろ過フィルタ6には、円筒型回転体の外周面に細胞の通過を阻止するフィルタ5を設けた回転ろ過フィルタを用いた。本培養装置におけるろ過フィルタ6は、回転円筒側面にフィルタ5をとりつけ、上端と下端を封止部材で封じた構造となっており、回転ろ過フィルタ内部の圧力を外部より低くすることによってろ過が行なわれ、フィルタ5の細孔を通過したろ過液が得られる。本培養装置において、ろ過操作を行なうにあたっては、まず、緩衝槽51に設けられた弁53、弁54、弁44、弁55及び弁62を閉じる。ついで、移送管路8eに設けられた弁54を短時間開放して直ちに閉じ、緩衝槽51内部の液または空気もしくはこれらの混合物をろ過液貯槽4に排出する。この操作によって緩衝槽51内部の圧力はわずかに低下する。ついで、移送管路8dに設けられた弁53を短時間開放して直ちに閉じ、移送管路8d内部の液又は空気若しくはこれらの混合物を緩衝槽51に排出する。この操作によって移送管路8d内部の圧力がわずかに低下する。この結果、移送管路8dに連通しているろ過フィルタ6の内部の圧力がろ過フィルタ収容容器7の圧力よりわずかに低下し、フィルタ5の細孔を通じて液体培地がろ過フィルタ6の内部に流入する。このとき、フィルタ5の細孔より大きな生体の細胞は通過を阻止されることから、ろ過フィルタ6に流入した液、すなわちろ過液からは細胞が除かれている。すなわち、弁53及び弁54の開閉動作を繰り返すことによって液体培地から細胞を除いたろ過液を得ることが可能となる。
【0052】
本培養装置では、フィルタ5として、ステンレス細線を所定の間隔をあけて円筒状に巻きつけてスリット状の開口部を形成させた金属フィルタを使用することができる。通常のフィルタでは、阻止しようとする粒子径よりも小さな細孔が多数存在しており、微細な細胞断片をも阻止することによって目詰りの原因となっていた。本フィルタ5には形成させたスリット以外の細孔は実質的に存在しない。これにより、本フィルタ5では細胞の通過を阻止し、細胞より小さい細胞断片等の微細な粒子は通過させることができる。スリット幅は培養する細胞の大きさによって決定されるものであり、通常は5〜30μmとする。なお、本フィルタ5を使用するに当たっては、ろ過差圧を適正に管理することが望ましい。スリット幅が細胞の直径よりも小さい場合であっても、大きなろ過差圧が加わると細胞が変形してスリットを通過したり、目詰りを引き起こす虞があるためである。
【0053】
ろ過にあたって、ろ過フィルタ6をろ過フィルタ収容容器7内部で回転させるとフィルタ5表面に平行な液体培地の流れが生じ、いわゆる直交流ろ過の状態となる。フィルタ5表面での流れを乱流状態とすれば、ろ過液が抜き出されることによって形成される細胞や微細粒子の高密度化層を拡散させることができる。これによって、フィルタ5の目詰りを抑制でき、より高速でより多量のろ過液を得ることが可能となる。ろ過フィルタ6の回転速度は、培養する生体の細胞の物理的な外力に対する耐性と、分離装置の形状とによって決定される。通常は100〜1000rpmにて運用される。
【0054】
なお、本培養装置においては、ろ過フィルタ6を回転させながら、液体培地の流出を防ぎ、かつ外部からの雑菌等の侵入を防ぐため、ろ過フィルタ6の回転軸にはメカニカルシールを配設することが好ましい。また、ろ過フィルタ6の回転軸は、ろ過液を抜出すために中空構造となっており、回転軸の一端が移送管路8dに相対する位置に開口し、他端をろ過フィルタ6内部に開口させることによって、ろ過フィルタ6の内部と移送管路8aとを連通する。なお、メカニカルシールとしては、特に限定するものではなく、通常の培養装置に使用されるシール水を供給するタイプのメカニカルシールやドライタイプのメカニカルシールなど気密性を保持できるものであれば用いることができる。また、メカニカルシールの使用方法及び配置等についても特に限定するものではない。
【0055】
本培養装置においてろ過液貯槽4は、ろ過フィルタ6で分離した、生産目的物質を溶解しているろ過液を保管するため、圧力計23の計測結果をもとに、調圧槽9に接続された弁28によって一定の圧力に保持されるとともに、通常は外部からの細菌等の侵入を防ぐため、0.01〜0.05MPaに加圧されている。また、ろ過液貯槽4は、目的物質が変質するのを防ぐため、例えば5℃〜10℃に冷却されている。
【0056】
本培養装置において培地槽52は、培養槽2に供給する流加培地又は液体培地を保管するタンクであるため、培地槽52は圧力計60の計測結果をもとに、圧力調整弁59によって一定の圧力に保持されるとともに、通常は外部からの細菌等の侵入を防ぐため、0.01〜0.05MPaに加圧されている。また、培地槽52は、培地の保管中の変質を防ぐため、例えば5℃〜10℃に冷却されている。
【0057】
以上のように構成された培養装置において、培養槽2内に張り込まれた液体培地10を攪拌機40で均一に混合しながら細胞培養を行う。細胞培養に必要な酸素は、酸素含有ガスを槽底部に配置された散気手段57から液中に供給する液中通気法と槽上部気相部に通気する上面通気法の二つの方法により供給される。液中及び上面への通気系統のそれぞれに空気、酸素、炭酸ガスの各ガスについての流量制御機能と供給量計測機能を具備している。上面への通気はとしては、空気を一定量で通気し、液体培地のpHに対応して炭酸ガスを混合した。炭酸ガス濃度の制御はpHを制御量とし、炭酸ガス流量を操作因子とする通常の比例制御で実施した。散気手段57からの液体培地中への通気は、液体培地の溶存酸素濃度を制御量とし、酸素通気量を操作因子とすることができる。
【0058】
また、本培養装置においても、図1に示した培養装置と同様に、移送タンク1と培養槽2との間に液体培地を往復流動させることで、ろ過フィルタ6におけるフィルタ5の表面と平行な方向に液体培地を流動させた状態を維持しながら細胞の分離操作を実施することができる。これにより、細胞の分離操作におけるフィルタ5の目詰まりを大幅に遅延させることができ、長時間にわたって細胞の分離操作を行うことができる。特に、本培養装置においては、上述した注入工程及び排出工程の切り替えタイミングにおいてフィルタ5表面における液体培地の流動が僅かに停止することとなるため、液体培地の停止した状態では上述した細胞の分離操作を停止する。これにより、本培養装置においては、フィルタ5の目詰まりを確実に防止することができる。換言すれば、細胞の分離操作において、フィルタ5の表面に平行な方向に液体培地を往復流動させない場合には、フィルタ5により分離された細胞がフィルタ5近傍に集積することとなり直ちに目詰まりを生じることになる。
【0059】
また、本培養装置によれば、培地槽52から供給された流加培地又は液体培地を緩衝槽51を介してろ過フィルタ6に供給することによって、ろ過操作時の流動方向とは反対方向に流加培地又は液体培地を流動させることができる(一般に逆洗工程と呼称される)。この逆洗工程を実施することによってもフィルタ5の目詰まりを遅延させることができる。また、逆洗操作に付随して行なわれる培養槽内への空気の急速吹き込みによって液面上に形成されていた泡沫層を破壊することができる。
【0060】
なお、本発明は、移送タンク1と培養槽2との間に液体培地を往復流動させることで、ろ過フィルタ6におけるフィルタ5の目詰まりを遅延乃至防止することができるが、フィルタ5としては図4に示すように、中空糸膜フィルタを使用することも可能である。この場合も、移送タンク1と培養槽2との間に液体培地を往復流動させることで、ろ過フィルタ6におけるフィルタ5の表面と平行な方向に液体培地を流動させた状態を維持しながら細胞の分離操作を実施することができる。これにより、細胞の分離操作におけるフィルタ5の目詰まりを大幅に遅延させることができ、長時間にわたって細胞の分離操作を行うことができる。特に、フィルタ5として中空糸膜フィルタを用いた場合には、装置構造が簡便になることに加え、微生物によるコンタミネーションのリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明を適用した培養装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明を適用した培養装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】本発明を適用した培養装置の他の例を示す概略構成図である。
【図4】本発明を適用した培養装置の他の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1…移送タンク、2…培養槽、3…分離装置、4…ろ過液貯槽、5…フィルタ、6…ろ過フィルタ、7…ろ過フィルタ収容容器、8a、8b、8c、8d、8e…移送管路、9…調圧槽、51…緩衝槽、52…培地槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体培地を貯留することができ、細胞を当該液体培地内で培養する培養槽と、
上記培養槽に連結され、上記培養槽内から供給された液体培地に含まれる細胞とその他の成分とを分離するフィルタ手段を有する分離装置と、
上記分離装置に連結され、内部に貯留した液体培地を上記分離装置の上記フィルタ手段の表面に対して平行な方向に供給する培地移送槽とを備え、
上記培地移送槽と上記培養槽との間で液体培地を往復流動できることを特徴とする培養装置。
【請求項2】
上記培地移送槽は、内部に貯留した液体培地の液面位置を検出する液面検出手段と、槽内部の圧力を検出する圧力計と、槽内部の圧力を調節する圧力調節手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の培養装置。
【請求項3】
上記培養槽の内圧と上記培地移送槽の内圧との差を調節することで、上記培地移送槽と上記培養槽との間で液体培地を往復流動させることを特徴とする請求項1記載の培養装置。
【請求項4】
上記培地移送槽に接続され、上記培地移送槽の内圧を調整する調圧槽を更に備えることを特徴とする請求項1記載の培養装置。
【請求項5】
上記分離装置に連結され、細胞分離後の液体培地を貯留するろ過液貯槽を更に備えることを特徴とする請求項1記載の培養装置。
【請求項6】
上記培地移送槽及び上記ろ過液貯槽に接続され、上記培地移送槽及び上記ろ過液貯槽の内圧を調整する調圧槽を更に備えることを特徴とする請求項5記載の培養装置。
【請求項7】
上記分離手段は、細胞の通過を阻止するろ過フィルタを用いたろ過方式により細胞分離を行うものであることを特徴とする請求項1記載の培養装置。
【請求項8】
上記分離手段は、円筒型回転体の外周面に細胞の通過を阻止するフィルタを設けた回転ろ過フィルタであることを特徴とする請求項1記載の培養装置。
【請求項9】
上記分離手段のフィルタ手段は、中空部材の外周面に細胞の通過を阻止する細孔を形成せしめた中空糸フィルタであることを特徴とする請求項1記載の培養装置。
【請求項10】
液体培地を貯留することができ、細胞を当該液体培地内で培養する培養槽と、上記培養槽に連結され、上記培養槽内から供給された液体培地に含まれる細胞とその他の成分とを分離するフィルタ手段を有する分離装置と、上記分離装置に連結され、内部に貯留した液体培地を上記分離装置の上記フィルタ手段の表面に対して平行な方向に供給する培地移送槽とを備える培養装置を用い、液体培地に含まれる細胞を上記分離装置で分離する方法であって、
上記フィルタ手段の表面に対して平行な方向に液体培地が往復流動している際に、細胞を含む液体培地を上記フィルタ手段に通過させることで細胞と細胞以外の成分とを分離し、液体培地の流動方向が変更する時点において上記フィルタ手段に対する液体培地の通過を停止することを特徴とする細胞分離方法。
【請求項11】
上記培地移送槽は、内部に貯留した液体培地の液面位置を検出する液面検出手段と、槽内部の圧力を検出する圧力計と、槽内部の圧力を調節する圧力調節手段とを備え、上記圧力調節手段により槽内部の圧力を調整することで槽内部に貯留した液体培地を上記培養槽との間で往復流動させることを特徴とする請求項10記載の細胞分離方法。
【請求項12】
上記培養槽の内圧と上記培地移送槽の内圧との差を調節することで、上記培地移送槽と上記培養槽との間で液体培地を往復流動させることを特徴とする請求項10記載の細胞分離方法。
【請求項13】
上記培地移送槽に接続され、上記培地移送槽の内圧を調整する調圧槽を更に備え、上記調圧槽により槽内部の圧力を調整することで槽内部に貯留した液体培地を上記培養槽との間で往復流動させることを特徴とする請求項10記載の細胞分離方法。
【請求項14】
上記分離装置に連結され、細胞分離後の液体培地を貯留するろ過液貯槽を更に備え、細胞以外の成分を上記ろ過液貯槽に回収することを特徴とする請求項10記載の細胞分離方法。
【請求項15】
上記培地移送槽及び上記ろ過液貯槽に接続され、上記培地移送槽及び上記ろ過液貯槽の内圧を調整する調圧槽を更に備え、上記調圧槽により上記培地移送槽内部の圧力を調整することで槽内部に貯留した液体培地を上記培養槽との間で往復流動させ、上記調圧槽により上記ろ過液貯槽内部の圧力を調整することで細胞以外の成分を上記ろ過液貯槽に回収することを特徴とする請求項14記載の細胞分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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