説明

生体組織工学のためのデバイスおよび方法

生体活性ガラス繊維から製造された吸収性組織スキャフォールドは、生体活性組成を有する強固な三次元多孔性マトリックスを形成する。相互接続されている細孔空間形状の多孔性は、多孔性マトリックスの生体活性ガラス繊維間の空間によって提供される。生体吸収性マトリックスの強度は、生体活性ガラス繊維を溶融し、接着して強固な三次元マトリックスとなる生体活性ガラスによって提供される。吸収性組織スキャフォールドは、組織内殖を支持し、損傷骨組織および/または患部骨組織の修復のために使用される吸収性組織スキャフォールドとして、骨伝導を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、多孔性繊維状医療用移植片の分野に関する。より具体的には、本発明は、インビボ環境の用途において、骨刺激特性を有する生体活性繊維状移植片に関する。
【背景技術】
【0002】
人工器官デバイスは、外科手術および整形外科的処置において、骨組織の欠損を修復するためにしばしば必要とされる。人工器官は、高齢者の病気にかかったまたは悪化した骨組織の置換術または修復のために、および体が持つメカニズムを増強して重度の外傷または変性疾患に起因する筋骨格障害を迅速に治癒するために、ますます必要とされている。
【0003】
骨欠損の修復のために、自己移植術および同種移植術が開発されている。自己移植術では、骨組織の再生を促進するために、移植される骨が患者の供与部位例えば腸骨稜から採取され、修復部位に移植される。しかし、自己移植術は、特に侵襲的であり、感染症の危険性があり、採取部位での不必要な痛みおよび不快感を起こす。同種移植術では、移植する骨として同種のドナーのものを使用するが、これらの材料の使用は、感染、疾患の伝播および免疫反応の危険性および宗教的な反対が高まる可能性がある。したがって、自己移植および同種移植に代わるものとして、合成材料および合成材料を移植する方法が求められている。
【0004】
骨組織の欠損の修復のための合成人工器官デバイスは、骨組織の成長を促進し、耐久性のある永久的な修復を提供しながら、自然骨材料の力学的特性を持つ材料を提供するために開発されている。骨の構造および生体力学的特性の知識、および骨の治癒過程の理解により、骨修復用の理想的な合成人工器官デバイスの望ましい特性および性質に関する指針が提供される。これらの性質として、有害な副作用なしにデバイスが体内に溶解する生体内吸収性と、傷を治癒しながら、デバイスに骨組織内殖を促進する骨刺激および/または骨伝導と、傷を治癒し耐久性のある修復を促進しながら、組織を動かし、修復部位を支持する耐荷重性または重量分担性とが挙げられるが、これらに限定されない。
【0005】
今日まで開発された材料は、所望の性質の少なくとも一部の実現には成功しているが、大半の材料は、理想的な硬組織スキャフォールドの生体力学的要件の少なくともある面が犠牲になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】(特になし)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生体吸収性、骨刺激性および耐荷重性を持つ材料を提供することにより、骨欠損の修復のために効果的な合成人工骨の目的を達成する。本発明は、少なくとも繊維の一部を接着し、強固な三次元多孔性マトリックスを成形する生体活性ガラスにより、生体活性ガラス繊維の生体吸収性(すなわち吸収性)組織スキャフォールドを提供する。多孔性マトリックスは、骨組織に移植されると骨伝導を提供するために、空隙率が40%と85%との間で、約10μmから約500μmの範囲の孔径分布の相互接続されている細孔空間を有する。本発明の実施形態は、二峰性孔径分布を有する細孔空間を含む。
【0008】
また、本発明による合成人工骨を製造する方法であって、塑性形成可能なバッチを得るために、生体活性繊維を、孔形成剤および液体を含む揮発成分と混合するステップと、生体活性繊維を、絡み合い重なり合う生体活性繊維の実質的に均質な固まりに分散するために、形成可能なバッチを混練するステップとを含む方法も提供される。形成可能なバッチを乾燥し、加熱して揮発成分を除去し、孔形成剤の発熱反応を使用して、絡み合い重なり合う生体活性ガラス繊維の間に接着(ないし結合)を形成する。本発明の実施形態では、加熱ステップの間、生体活性繊維の失透温度未満の温度で発熱反応を開始し、繊維が失透温度になる前に発熱反応を完了する。本発明の実施形態では、加熱ステップの間、生体活性繊維の失透温度未満の温度で孔形成剤の発熱反応を開始し、繊維がその失透温度を超えた後に発熱反応を完了する。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴は、以下の記述を読めば明らかになり、特に添付する請求項で指摘する手段および組合せによって実現することができる。
【0010】
本発明の前記および他の目的、特徴および利点は、以下の本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明、同時に添付されている図面での説明から、明らかになるだろう。なお、異なる図面を通して、同じ引用符号は、同じ部分を示す。図面は、必ずしも縮尺が正しいわけではなく、本発明の本質を説明する際はそれが強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による生体活性組織スキャフォールドの一実施形態を示す、約1000倍に拡大された光学顕微鏡写真である。
【図2】図1の生体活性組織スキャフォールドを形成するための、本発明の方法の一実施形態のフローチャートである。
【図3】図2の発明の方法による、硬化ステップの一実施形態のフローチャートである。
【図4】本発明の方法により製造された目的物の一実施形態の概略図である。
【図5】本発明の方法の揮発成分除去ステップの完了時の図4の目的物の概略図である。
【図6】本発明の方法の接着形成ステップの完了時の図5の目的物の概略図である。
【図7】公知のサンプルと比較した、本発明の吸収性組織スキャフォールドの種々の実施形態の比較分析のグラフである。
【図8】脊椎移植片に作製された、本発明による生体活性組織スキャフォールドの斜視図である。
【図9】椎間腔に移植された図8の脊椎移植片を有する、脊椎の一部の側面透視図である。
【図10】骨切断術で使用される楔型に作製された、本発明による生体活性組織スキャフォールドの等角図を示す模式図である。
【図11】骨切断術による骨の開口部に挿入されるように処置できる、図10の骨切断術で使用される楔についての分解図を示す模式図である。
【図12】本発明の方法の実施形態の硬化ステップの代表的な熱プロファイルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先に記載した図面は、本明細書で開示する実施形態を説明しているが、明細書で述べるように、他の実施形態も意図されるものである。本開示は、代表するものとして説明的な実施形態を述べているものであり、限定ではない。当業者は、ここで開示された実施形態の原理の範囲および精神の範囲に包含される、数多くの他の変形および実施形態を考案することができる。
【0013】
[発明の詳細説明]
本発明は、組織欠損の修復のための、合成人工器官組織スキャフォールドを提供する。本明細書で使用される、種々の形態での用語「合成人工器官組織スキャフォールド」および「骨組織スキャフォールド」および「組織スキャフォールド」および「合成人工骨」は、本明細書全体を通して相互互換的に使用される場合がある。一実施形態では、合成人工器官組織スキャフォールドは、生体組織に移植された場合、生体吸収性のあるものである。一実施形態では、合成人工器官組織スキャフォールドは、生体組織に移植された場合、骨伝導性のあるものである。一実施形態では、合成人工器官組織スキャフォールドは、生体組織に移植された場合、骨刺激性のあるものである。一実施形態では、合成人工器官組織スキャフォールドは、生体組織に移植された場合、耐荷重性のあるものである。
【0014】
自然の骨組織の特性を模倣し、組織の治癒および修復を促進する合成人工器官デバイスを提供することを目的として、種々の種類の合成移植片が生体組織工学用途のために開発されている。新しい組織の成長を促進する多孔性構造体で、高強度を提供するため、金属製の生体内で難分解性の構造体が開発されている。しかし、これらの材料は生体吸収性がなく、その後の外科手術で取除かなければならないか、または患者が生きている間体内に残されたままになっている。体内で難分解性の金属製の生体適合性移植片の欠点は、高い耐荷重力が、移植片を取り囲む再生組織に伝わらないことである。硬組織が成形される時、応力負荷により、より強い組織ができるが、金属製移植片は、新しく形成する骨をこの応力から遮蔽する。したがって、骨組織の応力遮蔽により、実際は体に吸収される可能性のある弱い骨組織ができ、人工器官不全の開始因子となる。
【0015】
生体組織への移植により、移植片の組成のような数多くの要因に応じて、生物学的応答が誘発される。生物学的に不活性な材料は、通常、宿主から移植片を離すために、繊維状組織で被包される。金属およびほとんどの重合体は、アルミナまたはジルコニアのようなほぼ不活性セラミックと同じように、この界面応答を示す。生物学的に活性な材料または生体活性材料は、自然の組織が自己修復する時形成される界面と酷似して、移植片材料を生体組織に固定する界面接着を造りだすことができる生物学的応答を誘発する。この界面接着により、スキャフォールドまたは移植片を骨床中に安定化する界面ができ、スキャフォールドから接着された界面を越えて骨組織へ応力を伝達することができる。修復箇所に荷重をかけると、再生骨組織を含む骨組織は応力を受け、そのため、応力遮蔽により骨組織の吸収が制限される。生体吸収性材料は、生体活性材料と同じ応答を誘発することができるが、体液により完全に化学分解する可能性もある。
【0016】
生物学的に活性で吸収性のある材料を使用して吸収性組織スキャフォールドを開発する挑戦は、骨組織の成長の促進に十分な空隙率とともに、耐荷重強度を達成するものである。従来の多孔性形状の生体活性バイオガラスおよびバイオセラミック材料が、合成人工器官または移植片のように、耐荷重強度を提供するのに十分な強さを本来持っていることは知られていない。骨刺激性を示すように十分な空隙率を持つ組織スキャフォールド内に作成された従来の生体活性材料は、耐荷重強度を示さない。同じように、十分な強度を提供する形状の従来の生体活性材料は、骨刺激性であると考えることのできる細孔構造を示さない。
【0017】
繊維ベースの構造体は、一般的に、個々の繊維の強度が、同じ組成の粉末または粒子ベースの材料より有意に大きくできる場合は、重量比に対して、本来、本質的により高い強度を提供することが知られている。繊維は、不具合の伝播に関する、応力集中形成の一因となる不連続性を、比較的少なく生産することができる。これに反して、粉末または粒子ベースの材料は、各接着界面で応力集中を起こす可能性があり、隣接する各粒子間は接着されていることが必要である。さらに、繊維ベースの構造体は応力緩和を提供し、そのため、任意の独立した一つの繊維の不具合が隣接する繊維を通って伝播しない点で、繊維ベースの構造体が応力を受けた場合、より大きな強度を提供する。したがって、繊維ベースの構造体は、同等の寸法および空隙率で同じ組成を持つ粉末ベースの材料より優れた力学的強度特性を示す。
【0018】
生体活性繊維ベースの材料が、生体組織工学用途のために提案されているが、これらの従来技術の材料は、耐荷重要件または骨刺激特性のどちらかを譲歩させている。例えば、Marcolongoら(米国特許第5,645,934号)の教示では、耐荷重力を提供するが、骨刺激を提供するには空隙率が不十分な熱可塑性重合体で作られた、編込まれた生体活性複合ガラス繊維構造が開示されている。同様に、Dunnら(米国特許第4,655,777号)の教示では、周囲の骨の治癒に従って骨組織の内殖を促進する生体活性重合体の溶解に依存する、耐荷重性硬組織スキャフォールドを提供するために、生体活性ガラス繊維で補強された生体活性重合体マトリックスが開示されている。Pirhonen(米国特許第7,241,486号)の教示では、生体活性ガラス繊維を焼結して作成された多孔性骨フィラー材料が開示されているが、得られた細孔形態は、潜在的に耐荷重性用途用に高強度を有する形状に製造された場合、骨伝導および/または骨刺激を確保するためにうまく制御されない。
【0019】
本発明は、生体組織工学用途のための、生体吸収性であり、耐荷重力を持ち、骨刺激性であり、骨の内殖を促進するように制御され最適化されうる細孔構造を持つ材料を提供する。
【0020】
図1は、本発明の生体活性組織スキャフォールド100の一実施形態を示す、約1000倍に拡大された光学顕微鏡写真である。生体活性組織スキャフォールド100は、強度および細孔形態において、骨構造を模倣する構造体を成形する、強固な三次元マトリックス110である。本明細書で使用する用語「強固な」は、構造体に応力がかかった時、その構造体が、自然の骨が強固な構造体であると考えられるのと同じように骨折するまで、有意に壊されないことを意味する。スキャフォールド100は、一般的に相互接続されている細孔120のネットワークを有する多孔性材料である。一実施形態では、細孔120が相互接続されているネットワークにより骨伝導が提供される。本明細書で使用される用語「骨伝導性」は、材料が骨組織の内殖を促進することができることを意味する。典型的なヒトの海綿骨の圧縮破壊強度は、約4から約12MPaの間の範囲であり、弾性率は約0.1から約0.5GPaの間の範囲である。本明細書の以下で示すように、本発明の生体活性組織スキャフォールド100は、50%を超える空隙率、および4MPaより大きく22MPaまでおよびこれを超える圧縮破壊強度を持つ生体活性材料における多孔性骨刺激性構造を提供することができる。
【0021】
一実施形態では、三次元マトリックス110は、接着、溶融して強固な構造体となる繊維から成形され、生体内吸収性を示す組成を持つ。三次元マトリックス110を造るための原材料として繊維を使用することにより、従来の生体活性または生体吸収性粉末ベースの原材料を使用するより、際立った利点がある。一実施形態では、繊維ベースの原材料により、ある空隙率で、粉末ベースの構造より、より強い強度を持つ構造体が提供される。一実施形態では、主要原材料材料として繊維を使用することにより、体液中で、より均一で制御された溶解速度を発揮する生体活性材料がもたらされる。
【0022】
一実施形態では、三次元マトリックス110の繊維ベースの材料は、同じ組成で、粉末ベースまたは粒子ベースの系より優れた生体内吸収性質を示す。例えば、材料が、粉末ベースの材料形状のように材料が結晶粒界を示す場合、または材料が結晶相である場合、溶解速度は、ますます変化しやすく、したがって予想が付かない。粒子ベースの材料は、体液で溶解した場合、強度が急激に減少することが示されていて、粒子の結晶粒界で、亀裂成長による疲労に起因する不具合を示す。繊維形態の生体活性ガラスまたはセラミック材料は一般的に非晶質であり、本発明の方法の熱処理過程では、規則構造および結晶性の量および程度をよりよく制御することができるので、本発明の組織スキャフォールド100は、より高い強度で、より制御された溶解速度を示すことができる。
【0023】
本発明の生体活性組織スキャフォールド100は、骨伝導を促進するための細孔形態と組み合わせて、所望の力学的および化学的性質を提供する。細孔120のネットワークは、自然の骨の構造を模倣する構造で絡み合う不織繊維材料の間にある空間に起因する、自然に存在する、相互接続されている空隙である。さらに、スキャフォールド100および再生骨内部の血液および体液の流れを高めるために、本明細書に記載する方法を使用して孔径を制御し、最適化することができる。例えば、スキャフォールド100の成形中に揮発する孔形成剤および有機バインダを選択することによって、孔径および孔径分布を制御することができる。孔径および孔径分布は、シングルモードの孔径、二峰性孔径分布および/または多峰性孔径分布を含む、孔形成剤の粒径および粒度分布によって決定することができる。スキャフォールド100の空隙率は、約40%から約85%の範囲が可能である。一実施形態では、この範囲は、耐荷重強度を示しながら、生体組織に移植されると、再生組織の骨誘導過程を促進する。
【0024】
スキャフォールド100は、原材料として繊維を使用して製造される。繊維は、生体内吸収性を発揮する生体活性材料で構成されうる。本明細書で使用される用語「繊維」は、アスペクト比が1を超え、繊維形成過程、例えば、延伸、紡績、ブロー、または繊維状材料の形成において一般的に使用される他の類似の過程で形成される、連続または不連続形状のフィラメントを表すものである。生体活性繊維は、繊維形状に形成することができる生体活性組成物、例えば、生体活性ガラス、セラミック、およびガラスセラミックから製造することができる。繊維は、スキャフォールド100を成形すると同時に、三次元マトリックス110の成形時に生体活性組成を成形する、生体活性組成物の前駆体から製造することができる。
【0025】
生体活性および生体吸収性ガラス材料は、一般的に、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、五酸化リンおよびシリカの組成を有するガラス、例えば、約45〜60モル%のシリカを含み、リンに対するカルシウムのモル比が2〜10であるガラス組成物として知られている。このような組成または類似の組成を有するガラス材料は、ガラス材料が骨に容易に接着される水性環境で、シリカが豊富な層およびリン酸カルシウムフィルムが材料の表面に形成されることを示す。マグネシウム、酸化カリウム、酸化ホウ素および他の化合物のような成分の添加により組成を変化させることが可能であるが、一般的に、界面層でのシリカ含量が45〜60モル%の間であるのが、スキャフォールドと自然の骨材料との間の接着の形成を促進するリン酸カルシウムフィルムを有するシリカが豊富な層の形成に有利であることが知られている。例えば、刊行物、Ogino,OhuchiおよびHench「Compositional Dependence of the Formation of Calcium Phosphate Films on Bioglass:,J Biomed Mater Res.1980,14:55−64(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0026】
ガラス化合物は、材料を溶融し、非晶形の繊維に延伸できる場合、より簡単に繊維形状となる。繊維延伸過程の間、失透することなく、繊維形状に製造できる生体活性および生体吸収性材料は、繊維を形成する時、非晶構造を保つ混合アルカリ効果を得るために、高シリカ含量と、酸化ナトリウムおよび酸化カリウムの両方とが必要である。簡単に繊維にできる、混合アルカリおよび高シリカ含量ガラスの種々の化合物は、生物活性および生体内吸収性の両方を示す。例えば、簡単に繊維に延伸することができ、生体活性であることを示すNaO−KO−MgO−CaO−B−P−SiO系で、少なくとも十種の異なる組成を記載する、刊行物、Brink,Turunen,HapponenおよびYli−Urpo,「Compositional Dependence of Bioactivity of Glasses in the System NaO−KO−MgO−CaO−B−P−SiO」,J Biomed Mater Res.1997;37:114−121(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。一実施形態では、6%のNaO、7.9%のKO、7.7%のMgO、22.1%のCaO、0%のB、1.7%のPおよび54.6%のSiO(ここで、%は、それぞれモル%)の組成を有する生体活性、生体吸収性材料(13−93ガラスとも言う)は、生体活性および生体内吸収性の性能を提供する。
【0027】
さらに図1を参照して、三次元マトリックス110内の細孔120のネットワークは、吸収性スキャフォールド100として、骨組織の内殖に特に有利な特性を持つ独特の構造を有する。細孔空間120の性質は、本明細書の以下に記載するように、揮発成分の選択によって、制御することができる。孔径および孔径分布は、細孔120のネットワークの重要な性質であり、特定し、制御することができ、したがって、耐荷重性用途のために強度を保持しつつ、骨伝導性である構造を提供する、特定の粒径および分布を有する揮発成分の選択によって、予め決められる。さらに、細孔120のネットワークは、本発明の吸収性組織スキャフォールド100の骨伝導をさらに増強する、従来の材料を超えるバインダおよび孔形成剤の繊維の位置により、細孔間の大きな相対的孔隙径を持つ相互接続性の改善を示す。細孔120のネットワークは、繊維状材料の自然充填密度に起因する空間と、吸収性スキャフォールド100の成形中に繊維と混合された揮発成分により繊維が変位した結果できた空間により形成される。以下でさらに記載するように、三次元マトリックス110を成形する生体活性材料は、重なり合い、絡み合う繊維をガラスと溶融し、接着することにより製造する。繊維とガラスおよび/またはガラス前駆体は、非揮発成分であり、これらは、得られる孔径、細孔分布および細孔間の孔隙サイズを予め決めるために、例えば、有機材料を含むバインダおよび孔形成剤のような揮発成分との均質な混合物を形成することによって予め配置される。さらに、揮発成分は、細孔間の孔隙サイズを増やすことにより、細孔の相互接続の数を効果的に増やし、複数の細孔と連絡する細孔を造ることになる。嵩高繊維は、混合物全体に解凝集および分散され、揮発性有機材料内の重なり合い絡み合う関係で、繊維状材料の相対的配置を取る。揮発成分を除去し、繊維およびガラスを溶融し接着して三次元マトリックス110を成形する際、細孔120のネットワークは、揮発成分によって占められていた空間によって生じる。
【0028】
本発明の吸収性スキャフォールドの目的は、生体組織内で移植片として、その場で組織の生成を促進することである。骨組織修復のための理想的なスキャフォールドの基準はたくさんあるが、重要な性質は、細胞遊走、流体交換および、最終的には、組織内殖および血管新生(例えば、血管の貫通)のために十分な大きさの孔径および細孔相互接続を持つ、高度に相互接続された多孔性ネットワークである。本発明の吸収性組織スキャフォールド100は、骨組織の内殖に特に適している孔径および細孔相互接続性を持つ多孔性構造体である。細孔120のネットワークは、吸収性組織スキャフォールド100を製造するために使用される揮発成分の選択によって制御することができる孔径を有し、平均孔径は少なくとも100μmである。いくつかの実施形態の吸収性組織スキャフォールド100の平均孔径は、約10μmから約600μmの範囲であり、あるいは平均孔径は、約100μmから約500μmの範囲である。有機バインダおよび孔形成剤を始めとする細孔を形成する揮発成分は、三次元マトリックス内に、大きな細孔孔隙サイズを持つ高度の相互接続性を確保する。三次元マトリックス120が溶解し体内に吸収されるにつれ、孔径が大きくなるという点から、インビトロ分析で測定される孔径より小さい孔径分布を有することが望ましいこともある。このように、この材料の耐荷重力は、初期移植時に高められ、吸収性組織スキャフォールド100は、体内に溶解しながら、再生骨組織は、再生するにつれ荷重が増える。
【0029】
図2を参照して、生体活性組織スキャフォールド100を成形する方法200の実施形態を示す。一般的に、嵩高繊維210を、バインダ230および液体250と混合し、塑性形成可能な材料を形成し、次いでこれを硬化し、生体活性組織スキャフォールド100を成形する。硬化ステップ280では、混合物の揮発成分が選択的に除去され、開いた相互接続されている細孔空間120が残り、繊維210は効果的に溶融、接着され、強固な三次元マトリックス110となる。
【0030】
嵩高繊維210は、嵩高形状でまたは切断された繊維として提供される。繊維210の直径は、約1から約200μmの範囲が可能であり、通常、約5から約100μmの間である。この種類の繊維210は、通常、比較的狭く、制御された繊維直径分布で生産され、所定の直径の繊維を使用してもよく、またはさまざまな繊維直径の繊維の混合物を使用することもできる。繊維210の直径は、得られる多孔性構造体の孔径および孔径分布、ならびに三次元マトリックス110の寸法および厚さに影響を与え、これらは、スキャフォールド100の骨伝導ばかりでなく、生体組織に移植された時、スキャフォールド100が体液によって溶解される時の速度にも影響し、圧縮強度および弾性率を始めとする、得られる強度性質にも影響する。
【0031】
バインダ230および液体250を繊維210と混合すると、後続の形成ステップ270で所望の形への成形を可能にする生強度を持ちつつ、繊維210がバッチ全体に均一に分散された塑性形成可能なバッチ混合物が得られる。有機バインダ材料は、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロースおよびこれらの組合せが、バインダ230として使用することができる。バインダ230としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、ポリスルホン、ポリアセタール重合体、ポリメチルメタクリレート、フマロン−インダン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ポリビニルブチラール、アイオノマー樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン、フェノールホルムアルデヒド、フェノールフルフラール、パラフィンワックス、ワックスエマルジョン、微結晶質ワックス、セルロース、デキストリン、塩素化炭化水素、精製アルギネート、デンプン類、ゼラチン、リグニン、ゴム、アクリル樹脂、ビチューメン、カゼイン、ガム、アルブミン、タンパク質、グリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリエーテルイミン、アガー、アガロース、糖みつ、デキストリン、デンプン、リグニンスルホン酸、リグニン液、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、キサンタンガム、トラガカントガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アイルランドゴケ、スクレログルカン、アクリル樹脂およびカチオン性ガラクトマンナン、またはこれらの組合せのような材料を挙げることができる。いくつかのバインダ230を先に列挙したが、他のバインダを使用してもよいことは理解されるであろう。バインダ230は、生体活性材料に関して不活性のままで、所望の目的物を形成するために、塑性バッチ材料の所望のレオロジーを提供し、目的物を成形しながら、混合物中の繊維210の相対位置を維持する。バインダ230の物性は、スキャフォールド100の細孔空間120の孔径および孔径分布に影響を与えることになる。バインダ230は、繊維210を始めとする生体活性成分の化学組成に影響を与えることなく、熱で崩壊しうる、または選択的に溶解しうることが好ましい。
【0032】
液体250は、後続の形成ステップ270で塑性バッチ材料を所望の目的物に形成するのに適した塑性バッチ材料の所望のレオロジーを達成するために、必要に応じて加えられる。通常、水が使用されるが、種々の種類の溶剤を利用することもできる。レオロジーの測定は、形成ステップ270前の混合物の可塑性および凝集強度を評価するために、混合ステップ260の間に行うことができる。
【0033】
生体活性スキャフォールド100の細孔空間120を増大するために、混合物に孔形成剤240を含めることができる。孔形成剤は、混合ステップ260および形成ステップ270の間、塑性バッチ材料で体積を占める非反応性材料である。使用する場合、孔形成剤240の粒径および粒度分布は、得られるスキャフォールド100の細孔空間120の孔径および孔径分布に影響を与えることになる。粒径は、通常、約25μm以下から約450μm以上の間の範囲が可能であり、あるいは、孔形成剤の粒径は、繊維210に対して、繊維210の直径の約0.1から約100倍の範囲の直径が可能である。孔形成剤240は、回りの繊維210の相対位置を大きく乱すことなく、硬化ステップ280の間に簡単に除去できるものでなければならない。本発明の一実施形態では、孔形成剤240は、硬化ステップ280で、熱分解または熱劣化、あるいは高温での蒸発によって除去することができる。例えば、マイクロワックスエマルジョン、フェノール製樹脂粒子、小麦粉、デンプン、または炭素粒子を、孔形成剤240として混合物に含ませることができる。他の孔形成剤240として、カーボンブラック、活性炭、片状黒鉛、合成黒鉛、木粉、加工デンプン、セルロース、ヤシ殻、ラテックス粒子、鳥餌、オガクズ、熱分解可能な重合体、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリテトラヒドロフラン、ポリ(1,3−ジオキソラン)、ポリ(アルカレンオキサイド)、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、メタクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリトリメチレンカーボネート、ポリエチレンオキサレート、ポリβ−プロピオラクトン、ポリΔ−バレロラクトン、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ビニルトルエン/α−メチルスチレン共重合体、スチレン/α−メチルスチレン共重合体、およびオレフィン−二酸化イオウ共重合体を挙げることができる。孔形成剤240は、一般的に、有機または無機物として定義してもよく、有機物は、通常、無機物より低い温度で燃え尽きる。いくつかの孔形成剤240を先に列挙したが、他の孔形成剤240を使用してもよいことは理解されるであろう。孔形成剤240は、完全に生体適合性であってもよいが、加工中にスキャフォールド100から除去されるので、必ずしも生体適合性である必要はない。
【0034】
得られる生体活性スキャフォールド100の強度および性能を促進するために、混合物に接着剤220を含めることができる。接着剤220として、嵩高繊維210と同じ組成の粉末ベースの材料を挙げることができ、または異なる組成の粉末ベース材料を挙げることもできる。本明細書に以下に詳細に説明するように、接着剤220がベースの添加剤は、隣接する繊維210と交差する繊維210との間に接着を形成することにより、三次元マトリックス110を形成する、絡み合う繊維210の接着強度を高める。接着剤220としては、生体活性ガラス、ガラス−セラミック、セラミックまたはこれらの前駆体が可能である。
【0035】
嵩高繊維210、バインダ230および液体250を始めとするそれぞれの材料の相対量は、生体活性組織スキャフォールド100で望ましい全空隙率に依存する。例えば、空隙率が約60%のスキャフォールド100を得るためには、繊維210のような非揮発成分275は、混合物の約40体積%となる。バインダ230および液体250のような揮発成分285の相対量は、混合物の所望のレオロジーによって測定した、液体に対するバインダの相対量で、混合物の約60体積%となる。さらに、孔形成剤240によって高められる空隙率を有するスキャフォールド100を生産するためには、揮発成分285の量を、揮発性孔形成剤240を含むように調整する。同様に、接着剤220によって高められる強度を有するスキャフォールド100を生産するためには、非揮発成分275の量を、非揮発性接着剤220を含めるように調整する。材料密度が硬化ステップ280での成分の反応により変化するように、非揮発成分275および揮発成分285の相対量、および得られるスキャフォールド100の空隙率は、変化することは理解されるであろう。具体的な例は、本明細書の後に掲載する。
【0036】
混合ステップ260では、繊維210、バインダ230、液体250、孔形成剤240および/または接着剤220(含まれている場合)を混合し、塑性的に変形可能で均一な混合物の均質な固まりにする。混合ステップ260として、乾式混合、湿式混合、せん断混合、混練が挙げられ、繊維210をばらばらにし、非繊維材料と分散または解凝集するのに必要なせん断力をあたえながら、材料を均一に分散して均質な固まりにできる必要がある。混合、せん断および混練の量、ならびにそのような混合過程の持続時間は、後続の形成ステップ270での目的物の成形に所望のレオロジー特性で、混合物の材料の均一で終始一貫した分散を得るために、混合ステップ260で使用される混合装置の選択とともに、繊維210および非繊維材料の選択に依存する。混合は、工業用の混合装置、例えば、バッチ混合機、せん断混合機、および/または混練機を使用して行うことができる。
【0037】
形成ステップ270で、混合ステップ260の混合物を生体活性組織スキャフォールド100になる目的物に形成する。硬化ステップ280で硬化することができるほぼ成形品となった目的物を得てスキャフォールド100を得るために、形成ステップ270として、押し出し、圧延、加圧鋳造、または成形が挙げられ、任意の所望の形状に近いものとする。スキャフォールド100の最終的な寸法は、硬化ステップ280で予想される目的物の収縮のため、形成ステップ270で形成された目的物とは異なることがあり、具体的な寸法要求に合わせるために、さらに機械加工および最終成形が必要な場合があることは、理解しうる。力学的なインビトロおよびインビボ試験のためのサンプルを提供するための、例示的な実施形態では、形成ステップ270で、混合物を丸型ダイに押通すピストン押出し機を使用して、混合物を押出し、円筒形ロッドとする。
【0038】
図3に関連して、さらに記載するように、次いで、硬化ステップ280で、目的物を硬化して生体活性組織スキャフォールド100とする。図3で示される実施形態では、硬化ステップ280は、連続する3段階、すなわち乾燥ステップ310、揮発成分の除去ステップ320および接着形成ステップ330として行うことができる。最初の段階、乾燥310では、強制対流を伴いまたはなしで、徐々に液体を除去する、僅かに高い温度の熱を使用して液体を除去することにより、形成された目的物を乾燥する。目的物を加熱する種々の方法を使用することができ、加熱空気対流加熱、真空凍結乾燥、溶剤抽出、マイクロ波または電磁気/無線周波数(RF)乾燥方法が挙げられるが、これらに限定されない。形成された目的物内の液体は、収縮による乾燥亀裂を避けるために、あまり早急に除去されないのが好ましい。通常、水ベースの系については、約90℃と約150℃との間の温度に1時間曝露されると、形成された目的物を乾燥することができるが、実際の乾燥時間は目的物の寸法および形状により変化し、大きな固まりの目的物ほど、乾燥時間が長くなる。マイクロ波またはRFエネルギ乾燥の場合、目的物の液体それ自身および/または他の成分が照射されたエネルギを吸収し、材料全体により均一な熱が発生する。乾燥ステップ310の間、揮発成分として使用される材料の選択により、バインダ230が凝結し、またはゲル化し、より大きな生強度を提供し、後続の操作で目的物に硬直性および強度を与えることができる。
【0039】
乾燥ステップ310によって、目的物が乾燥、または液体成分250が実質的になくなれば、硬化ステップ280の次の段階として、揮発成分除去ステップ320に進む。この段階では、揮発成分(例えば、バインダ230および孔形成剤240)を目的物から除去し、組織スキャフォールド100の三次元マトリックス110を形成する非揮発成分のみを残す。揮発成分は、例えば、熱分解、熱劣化または溶剤抽出により、除去することができる。揮発成分の除去ステップ320は、揮発成分除去ステップ320で成分が順番に除去されるように揮発成分285を選択している場合、連続する成分除去ステップ、例えば、バインダ燃焼ステップ340、次いで孔形成剤の除去ステップ350に分けることができる。例えば、バインダ230として使用されるHPMCは、約300℃で熱分解する。黒鉛孔形成剤220は、酸素の存在下で約600℃に加熱されると、酸化して二酸化炭素になる。同様に、小麦粉またはデンプンを孔形成剤220として使用する場合、これらは、約300℃と約600℃との間の温度で熱分解する。したがって、HPMCのバインダ230および黒鉛粒子の孔形成剤220で構成された形成目的物は、揮発成分除去ステップ320で、バインダ230、次いで孔形成剤220を除去する二段階燃焼工程に目的物を供することによって加工することが可能である。この例では、バインダ燃焼ステップ340を、少なくとも約300℃、約600℃未満の温度で一定時間行うことができる。次いで、孔形成剤除去ステップ350を、加熱室に酸素を入れ、温度を少なくとも約600℃に上げることによって行うことができる。この順番に熱をかける揮発成分除去ステップ320により、形成された目的物中の非揮発成分275の相対位置を保ちながら、揮発成分285の制御された除去が得られる。
【0040】
図4は、揮発成分の除去ステップ320前の形成された目的物の種々の成分の概略図を示す。繊維210は、バインダ230と孔形成剤240との混合物内で絡み合っている。場合によっては、接着剤220は、さらに混合物中に分散されうる(明確化のために示さず)。図5は、揮発成分除去ステップ320が完了した時の形成された目的物の概略図である。繊維210は、揮発成分285が除去されると、繊維210と揮発成分285との混合物から決定された相対位置を保持する。揮発成分285の除去が完了した時の目的物の力学的強度は、非常にもろい場合があり、この状態での目的物の取り扱いは、注意深く行うべきである。一実施形態では、硬化ステップ280の各段階は、同じオーブンまたは炉で行われる。一実施形態では、操作による損傷を最小限にするように目的物を加工することができる操作トレイが付いている。
【0041】
図6は、硬化ステップ280の最終ステップ、接着形成330が完了した時の形成された目的物の概略図を示す。バインダ230および孔形成剤240が除去された細孔空間120が作られ、繊維210は、溶融、接着され、三次元マトリックス110となっている。孔形成剤240の寸法および/または孔形成剤240の粒度分布および/またはバインダ230の相対量を始めとする、揮発成分285の特質は、共に協働して、得られる組織スキャフォールド100の孔径、孔径分布および細孔相互接続性を予め決定する。接着剤220および三次元マトリックス110の重なり合うノード610および隣接するノード620でできるガラス接着により、得られる三次元マトリックス110の構造的完全性が得られる。
【0042】
本発明の特徴の組合せによる効果を示すために、比較分析700を図7に示す。五種類の比較サンプル(710、720、730、740および750)を作成し、圧縮強度(単位Mpa)および空隙率(%として)について分析した。サンプル710は、13−93生体活性ガラスの粉末ベースの多孔性構造体に関する強度/空隙率関係を示す。サンプル710は、5グラムの13−93生体活性ガラス粉末と、2グラムのHPMC有機バインダおよび水との混合物から塑性バッチを得、これを押出して直径14mmのロッドとし、複数の焼結温度で焼結し、多孔性形状として作成した。サンプル720は、図3に関連して先に記載したように、13−93生体活性ガラス繊維と、2グラムのHPMC有機バインダおよび水との混合物から塑性バッチを得、これを押出して直径14mmのロッドとし、複数の接着形成温度で硬化し、多孔性形状として作成した。サンプル710もサンプル720も孔形成剤240を含んでいなかった。先に記載したように、サンプル720の繊維ベースの系に関する強度/空隙率の関係は、粉末ベースのサンプル710より改善している。サンプル720では、揮発成分285としての有機バインダにより、揮発成分285(ここでは、有機バインダ230)によって予め決められた繊維間の空間で、繊維が配置され、同じ効果の強度を持つ粉末ベースのサンプルより空隙率が増えている。
【0043】
孔形成剤240の添加による効果を示すために、サンプル730を、13−93生体活性ガラス粉末と、2グラムのHPMC有機バインダ、孔形成剤240として粒径が100μmのPMMA1.5グラムおよび水との混合物から塑性バッチを得、これを押出して直径14mmのロッドとし、複数の焼結温度で硬化し、多孔性形体として作成した。サンプル740は、5グラムの13−93生体活性ガラス繊維と、2グラムのHPMC有機バインダ、孔形成剤240として粒径が100μmのPMMA1.5グラムおよび水との混合物から塑性バッチを得、これを押出して直径14mmのロッドとし、複数の接着形成温度で硬化し、多孔性形体として作成した。サンプル750は、5グラムの13−93生体活性ガラス繊維と、2グラムのHPMC有機バインダ、孔形成剤240として粒径分布が約150から約425μmの4015黒鉛粉末7グラム、および接着剤220として種々の量の13−93生体活性ガラス粉末を添加した混合物から、これを約800℃の接着形成温度で硬化して作成した。再び、繊維ベースの比較サンプル740および750は、サンプル710および730の性能を超える強度/空隙率関係を示している。孔形成剤240およびバインダ230は、協働して、サンプルの得られる孔径、孔径分布および細孔相互接続性を、ある空隙率に関し従来の方法およびデバイスより高い強度で、予め決定する。
【0044】
図3に戻って参照して、接着形成ステップ330では、揮発成分275の除去により作られた細孔空間120は維持されながら、嵩高繊維210を始めとする非揮発成分275が、生体活性組織スキャフォールド100の強固な三次元マトリックス110に変換される。接着形成ステップ330では、非揮発成分275は、嵩高繊維210が隣接し重なり合う繊維210に接着する温度に加熱され、繊維210が溶融することなく接着を形成するのに十分な時間加熱され、これによって、非揮発成分275の相対的配置を破壊する。接着形成温度および持続時間は、嵩高繊維210を始めとする非揮発成分275の化学組成に依存する。特定の組成生体活性ガラス繊維または粉末により、ガラス転移温度で破損されることなく、軟化および塑性変形能力が発揮される。ガラス材料は、通常、非晶ガラス構造が結晶化する失透温度を有する。本発明の一実施形態では、接着形成ステップ330における接着形成温度は、ガラス転移温度と失透温度との間の動作範囲内である。例えば、13−93生体活性ガラス組成物に関する接着形成温度は、ガラス転移温度の約606℃を超え、失透温度の約851℃未満であることが可能である。
【0045】
接着形成ステップ330では、形成された目的物を接着形成温度に加熱し、繊維構造の重なり合うノード610および隣接するノード620でガラス接着を形成させる。接着は、繊維210の周りに流れる接着剤220の反応によって、繊維構造の重なり合うノード610および隣接するノード620で形成され、繊維210と反応して、ガラス被覆および/またはガラス接着を形成する。接着形成ステップ330では、繊維210の材料が接着剤220との化学反応に関与してもよく、または繊維210は、接着剤220の反応に関して不活性を保ってもよい。さらに、嵩高繊維210は、繊維成分と、接着を形成する反応に関与し三次元マトリックス110を作る繊維210の一部または全部との混合物であってもよい。
【0046】
接着形成ステップ330の持続時間は、繊維210の接着形成温度での時間が、嵩高繊維210を始めとする非揮発成分275の相対位置が大きく変化しないように比較的短い持続時間に限定されるという点から、接着形成ステップ330の間の温度プロファイルに依存する。形成された目的物の孔径、孔径分布および細孔間の相互接続性は、揮発成分285による嵩高繊維210の相対位置によって決定される。揮発成分285は、接着形成温度に達する時間までに、形成された目的物からたいてい燃焼され除去されるが、繊維210および非揮発成分275の相対位置は、大きく変わらない。形成された目的物は、接着形成ステップ330の間に僅かなまたは軽微な緻密化を起こすことが多いが、孔径の制御および孔径分布を維持することはでき、したがって、僅かに大きな寸法の孔形成剤240の粒径を選択することによって、または揮発成分285の相対量を調整し、予測される緻密化を考慮することによって、予め決めることができる。
【0047】
本発明の一実施形態では、接着剤220は、生体活性ガラス材料を微粉末またはナノ粒径(例えば、1〜100ナノメートル)に粉砕したものである。この実施形態では、小さな粒径が材料組成のガラス転移温度またはその近くでより素早く反応し、繊維材料が、ガラス転移温度またはその近くの温度に曝されることによりかなり影響を受ける前に、繊維構造の重なり合うノード610および隣接するノード620を被覆し接着するガラスを形成する。この実施形態では、嵩高繊維210より反応性がある接着剤220の粒径は、繊維210の直径の1から1/1000の範囲が可能であり、例えば、直径10ミクロンの嵩高繊維210を使用する場合、10ミクロン〜10ナノメートルの範囲が可能である。ナノ粒径の粉末は、ボールミルまたはメディアミルを使用した衝撃粉砕または摩擦粉砕のような粉砕または微粉砕方法で生体活性ガラス材料を粉砕することにより生産することができる。
【0048】
接着形成ステップ330の温度プロファイルは制御することができ、それにより、結晶化の量を制御しおよび/または得られた三次元マトリックス110の失透を最小に抑えることができる。先に記載したように、生体活性ガラスおよび生体吸収性ガラス化合物は、材料の接近可能な結晶粒界の量を最小限にした場合、生体組織において、より制御され、予測可能な溶解速度を示す。これらの生体活性および生体吸収性材料は、繊維210に製造した場合、材料の非晶構造に起因する生体活性デバイスとして優れた性能、および接着形成ステップ330中の加熱処理過程で起こる結晶化の制御された結晶化度を示す。したがって、本発明の方法の一実施形態では、接着形成ステップ330の温度プロファイルは、非揮発性材料275で結晶粒界を増やすことなく、繊維構造を接着するように適合される。
【0049】
本発明の方法の一実施形態では、接着形成ステップ330の間、接着形成温度は、嵩高繊維210の失透温度を超える。生体活性ガラスの成分は、そのガラス転移温度と結晶化温度との間に狭い動作範囲を示すことができる。この実施形態では、構造体中の繊維210の重なり合うノードと隣接するノードとの間で接着の形成を促進するために、繊維210の結晶化が避けられないかもしれない。例えば、45S5組成の生体活性ガラスは、初期ガラス転移温度が約550℃、失透温度が約580℃であり、約610、約800および約850℃の温度で種々の相の結晶化温度を有する。このように狭い動作範囲で、接着剤220として同じ組成を使用してガラス接着を形成することは難しく、そのため、ガラス接着を形成するためには、接着形成温度として、約900℃を超える接着形成温度が必要であるかもしれない。代替の実施形態では、接着形成温度は、繊維210の結晶化温度を超える可能性があるが、それでも、接着剤220として粉末形態の生体活性ガラスの組成の動作範囲内にある。この実施形態では、第1組成のガラス繊維210は結晶性であり、第2塑性のガラス接着が、繊維構造体の重なり合うノードおよび隣接するノードで形成される。例えば、接着剤220として粉末形態の13−93組成物を、45S5組成物の生体活性ガラス繊維とともに使用して、13−93組成物のガラス転移温度を超えるが13−93組成物の失透温度未満であり、45S5ガラス繊維組成物の失透温度を超えるガラス接着を行い、複合形成目的物を形成することができる。
【0050】
本発明の一実施形態では、接着形成ステップ330の温度プロファイルは、素早く、簡単に接着形成温度に達し、急激に冷却して得られる生体活性材料の失透を回避するように設計される。この加熱プロファイルには種々の加熱方法を利用することができ、例えば、炉内での強制対流、炎やレーザで直接目的物を加熱、または他の集中加熱方法がある。この実施形態で、集中加熱方法は、炉またはオーブン加熱装置のような第1の加熱方法を補足する第2の加熱方法である。第2の加熱方法により、接着形成温度に短時間の熱変動を起こし、得られる三次元マトリックス110の失透を避けるために、ガラス転移温度未満の温度に素早く回復する。
【0051】
本発明の一実施形態では、孔形成剤240の燃焼を使用して、接着形成ステップ330の間、目的物全体を迅速かつ均一に加熱することができる。この実施形態では、一般的に、孔形成剤除去ステップ350を接着形成ステップ330の間に行う。孔形成剤240は、可燃性材料であり、例えば、炭素または黒鉛、デンプン、ポリメチルメタクリレートのような有機物もしくは重合体、または生体活性ガラス繊維材料210の失透温度以下の高温で発熱的に酸化する他の材料がある。一般的に、孔形成剤240は、熱分析、例えば、熱重量分析(TGA)または示差熱分析(DTA)、または質量損失および熱応答の両方を検出する同時DTA/TGAのようなTGAおよびDTAの組合せによって測定することができるので、材料が燃焼し始める温度を基準に選択される。例えば、表1は、材料の発熱燃焼点を測定した種々の材料のDTA/TGA分析の結果を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
孔形成剤除去ステップ350は一般的に接着形成ステップ330で起こるように採用されているが、硬化ステップ280の間、孔形成剤燃焼により、形成目的物の温度は、目的物全体を通して実質的に均一および増加した速度で上がる。このようして、所望の接着形成温度を合理的、迅速に達成することができる。孔形成剤が完全に燃焼すると、孔形成剤燃焼で得られる形成された目的物の内部温度と、炉またはオーブン中の周辺環境の温度との間の温度勾配のため、成形体の内部温度は下がる。その結果、硬化過程280の熱プロファイルは、生体活性繊維210の失透温度またはその近傍で急な短時間の熱変動を含む可能性がある。
【0054】
図12を参照して、孔形成剤除去ステップ350が一般的に接着形成ステップ330中で起こる場合の硬化過程280の一部の代表的な熱プロファイルを示す。炉の熱プロファイルを、炉作動制御によって典型的に設定されたプロファイル910として表す。プロファイル910は、加熱上昇時、保持時および冷却下降時として表された、時間に伴う炉の内部の温度を記載する。第1の例示的な熱応答熱応答920は、硬化ステップ280中の、成形された目的物の炉内での内部温度を示す。この例では、孔形成剤は、温度が増加する速度が線940で速度変化を示す燃焼温度Tc1を有し、線950で表される所望の接着形成温度Tbに迅速に達し、繊維の失透温度Td930は超えない。孔形成剤の燃焼の完了により、炉温度910に向かって温度が下がる。同様に、第2の例示的な熱応答915は、硬化ステップ280中の、成形された目的物の炉中での内部温度を示す。この例では、第2孔形成剤は、第1の孔形成剤の燃焼温度Tc1より低い燃焼温度Tc2を有する。この第2の例では、成形された目的物の内部温度は、線945の燃焼温度Tc2で急激に増加し、所望の接着形成温度950に迅速に達する。孔形成剤の燃焼が完了すると、温度は炉温度910に減少する。
【0055】
この実施形態では、炉温度プロファイル910は、燃焼温度に到達し、燃焼が完了するように孔形成剤の性質および相対量に従って設定され、そのため、最高温度およびその温度での持続時間は、繊維の失透温度に対して制御される。硬化ステップ280の間、成形された目的物を素早く加熱し冷却する性能のため、結晶化の量は、失透温度を超えないようにすることによって、または目的物が失透温度を超える時間を最小にすることによって、最小化される。加熱効果が目的物全体を通して均一に分散されるので、温度変動は、孔形成剤の燃焼により、良好に制御される。該方法は、従来法の本来ある待ち時間および/または炉またはオーブンからの放射伝熱を回避する。
【0056】
炉の環境を制御することにより、硬化ステップ280を追加的に制御する。例えば、炉またはオーブン環境の不活性または停滞空気により、揮発成分285が除去される時点を遅らせることができる。さらに、孔形成剤除去ステップ340は、温度が、孔形成剤の燃焼温度より高く、所望の接着形成温度に近くなるまで、窒素のような不活性ガスでパージされた環境により、さらに制御することができる。孔形成剤が酸化する時、非揮発性材料の温度が、局所的に、ガラス転移温度または接着形成温度以上に上がるように、孔形成剤が完全に燃焼するまで、酸素を高温で導入する。この時点で、得られる構造体またはその内部の失透および/または結晶粒界の成長を避けるため、温度を下げることができる。
【0057】
本発明のさらに別の実施形態では、硬化ステップ280は、炉やオーブンのような第1熱源を該炉やオーブンを補足する第2熱源とともに使用して、目的物を、接着形成ステップとして望ましい温度に迅速および均一に加熱し、時間および温度に応じて起こる結晶化の度合いを制御して行うことができる。この実施形態では、目的物を炉またはオーブン中に置き、炎の熱源を目的物に直接当てることができる。
【0058】
三次元マトリックス110を形成する絡み合う繊維の重なり合うノードと隣接するノードとの間で形成される接着(結合)は、嵩高繊維210の組成と実質的に同じ組成を有するガラス接着である可能性がある。また、接着は、嵩高繊維210と接着剤220との間の反応し、嵩高繊維210の組成とは実質的に異なる組成を持つガラス接着を形成する結果である可能性もある。医療デバイスまたは移植片として使用するための材料の認可に関連する法的規制のため、デバイス製造方法および過程で大きく変わらない材料として認可された材料組成を使用することが望ましい場合もある。あるいは、認可された材料の、デバイス製造および過程で所望の組成を形成する前駆体である原材料を使用することが望ましい場合もある。本発明は、種々の医学用に認可された材料を使用して製造することができ、または医学用に認可された材料組成に製造することもできる生体活性および吸収性組織スキャフォールドデバイスを提供する。
【0059】
本発明の一実施形態では、吸収性組織スキャフォールドの強度および耐久性は、硬化ステップ280の後またはその間に成形目的物にアニールを行うことによって、高めることができる。接着形成ステップ330で、非揮発成分275を接着形成温度に加熱し次いで冷却すると、後続の冷却段階で、材料内で熱勾配が起こる場合がある。冷却中の材料内での熱勾配は、応力で構造体に予め荷重をかける内部応力を引き起こす場合があり、この内部応力により、力学的に破損される前に目的物が耐えることができる外部応力の量は、実際には減少する。吸収性組織スキャフォールドのアニーリングには、目的物を、材料の応力開放温度、すなわち、ガラス材料は、まだその形状を保つ程度に硬いが、内部応力が開放されるのに十分な温度に加熱することが含まれる。アニーリング温度は、得られる構造体の組成によって決定され(すなわち、材料の粘度が応力を開放する点まで軟らかくなる温度)、アニーリング工程の持続時間は、内部構造体の相対寸法および厚さにより決定される(すなわち、温度が目的物全体を通して安定な状態に達する時間)。アニーリング工程は、材料の熱容量、熱伝導率および熱膨張率によって制限される速度で、ゆっくりと冷却する。本発明の例示的な実施形態では、直径が14ミリメートルの円筒状押出成型品の13−93組成を有する多孔性吸収性組織スキャフォールドは、炉またはオーブン内で目的物を500℃で6時間加熱し、約4時間かけて室温に冷却することによりアニーリングすることができる。
【0060】
本発明の吸収性組織スキャフォールドは、骨切断術(例えば、腰、ひざ手および顎)、脊椎の構造的破損の修復(例えば、脊間人工器官、薄片人工器官、仙骨人工器官、椎体人工器官および小関節人工器官)、骨欠損フィラー、骨折矯正外科手術、腫瘍切除外科手術、股関節およびひざ人工器官、骨造成、抜歯、長骨の関節固定術、距骨下関節移植片を始めとする足首および足関節固定術、および固定化ネジ、ピンのような処置において使用することができる。本発明の吸収性組織スキャフォールドは、長骨において使用することができ、例えば、長骨として、肋骨、鎖骨、大腿骨、下肢の脛骨および腓骨、腕の上腕骨、橈骨および尺骨、手および足の中手骨および中足骨、ならびに指およびつま先の指節骨を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明の吸収性組織スキャフォールドは、短骨でも使用することができ、短骨として、手根骨および足根骨、漆蓋骨、他の種子骨を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明の吸収性組織スキャフォールドは、他の骨でも使用することができ、他の骨として、頭蓋、下顎骨、胸骨、椎骨および仙骨が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本発明の組織スキャフォールドは、従来のデバイスと比べて、高い耐荷重力を有する。一実施形態では、本発明の組織スキャフォールドは、従来のデバイスと比べて、少ない量の移植材料しか必要でない。さらに、本発明の組織スキャフォールドを使用することにより、材料の強度のため、捕助的な固定をほとんど必要としない。このように、該デバイスを移植する外科手術は、より低浸潤性であり、より簡単に行え、装置の除去および補助的な固定のための後続の外科手術を必要としない。
【0061】
特定の一用途で、先に記載したように製造された本発明の組織スキャフォールドを、図8および図9に示すように、脊椎移植片800として使用することができる。図8および図9を参照して、脊椎移植片800は、空間Sを保つために、隣接する椎骨Vの間の空間S内に係合する大きさとされた壁820を有する本体810を含む。デバイス800は、押出し法を使用して所望の形状に成形することができる生体活性ガラス繊維から形成され、円筒形とし、これを切断または機械加工することにより所望の寸法とすることができる。壁820の高さhは、空間Sの高さHに相当する。一実施形態では、壁820の高さは、椎間腔Sの高さHより僅かに大きい。壁820は、図9に示すように、隣接する椎骨Vに係合するように形作られた上部係合面840および下部係合面850に隣接しこれらの間にある。
【0062】
別の特定の用途では、先に記載したように製造された本発明の組織スキャフォールドを、図10および11に示すような楔型骨切移植片1000として使用することができる。図10および図11を参照して、骨切断術移植片1000は、例えば脛骨の解剖学的断面と一致するように設計された楔として一般的に説明し、これにより、力学的な支持を脛骨表面の実質的な部分に提供している。骨切断術移植片は、生体活性ガラス繊維を接着および溶融した多孔性材料から成形され、該材料は、押出し加工された長方形のブロックから成形することができ、切断または機械加工で、所望の寸法の輪郭に合致した楔型にする。移植片1000の近位面1010は、曲線の輪郭を特質とする。遠位面1020は、それが移植される場所の脛骨の形状に一致する。移植片1000の厚さは、患者の大きさおよび変形の度合いに従って、約5ミリメートルから約20ミリメートルで変化してもよい。楔の上部面および下部面の間の角度も変化してもよい。
【0063】
図11で、異常な角のある膝を再調整するために、楔型骨切移植片1000を使用する一方法を図示する。脛骨の側面部はそのままにし、脛骨の上部1050および下部1040を予め決められた角度で整列させながら、脛骨の内側面に横切開を入れ、空間1030を造る。実質的に楔型をした移植片1000を空間1030に挿入し、本明細書で記載するように、移植片1000が体に溶解することで、治癒して所望の位置に配置されるにつれ、脛骨の位置が安定化する。必要に応じて固定ピンを使用し、骨が再生し、移植部位が治癒するにつれ、脛骨を安定化させる。
【0064】
一般的に、本発明の吸収性骨組織スキャフォールドの骨移植としての用途として、自家移植片または同種移植片の骨移植の使用に類似する外科的処置が挙げられる。移植部位を充填し、安定化するのに十分な材料を使用すれば、骨移植を、しばしば、単一処理として行うことができる。一実施形態では、固定ピンを、周辺の自然の骨および/または吸収性骨組織スキャフォールドの中および貫通して挿入することができる。吸収性骨組織スキャフォールドを、部位に挿入し、適切な位置に固定する。その後、その部分は塞がり、ある程度治癒し、十分に成長した後、骨は再生し、しっかりと融合し始める。
【0065】
本発明の吸収性骨組織スキャフォールドの骨欠損フィラーとしての用途として、修復の段階または時期における単一処置または複数の処置として行うことができる外科的処置が挙げられる。一実施形態では、本発明の吸収性組織スキャフォールドを、骨欠損部位に置き、固定ピンまたはネジを使用して骨に付ける。あるいは、吸収性組織スキャフォールドは、固定具を使用して、外側から適所に固定することができる。その後、その部分は塞がり、ある程度治癒し、十分に成長した後、骨は再生し、欠損を修復する。
【0066】
骨の欠損を充填する方法は、骨中の空間を、多孔性マトリックスに接着、溶融した生体活性繊維(ここで、多孔性マトリックスは促進する骨組織の内殖を促進する孔径分布を有している)を含む吸収性組織スキャフォールドで充填するステップと、吸収性組織スキャフォールドを骨に付着するステップとを含む。
【0067】
骨切断術を治療する方法は、骨の空間を、多孔性マトリックスに接着した生体活性繊維を含む(ここで、多孔性マトリックスは、促進する骨組織の内殖を促進する孔径分布を有する)を含む吸収性組織スキャフォールドで充填するステップと、該吸収性組織スキャフォールドを骨に付着するステップとを含む。
【0068】
椎骨の構造的な不全を治療する方法は、骨の空間を、多孔性マトリックスに接着した生体活性繊維(ここで、多孔性マトリックスは、促進する骨組織の内殖を促進する孔径分布を有する)を含む吸収性組織スキャフォールドで充填するステップと、吸収性組織スキャフォールドを骨に付着するステップとを含む。
【0069】
合成人工骨を製造する方法は、塑性形成可能なバッチを得るために生体活性繊維をバインダ、孔形成剤および液体と混合するステップと、生体活性繊維を孔形成剤およびバインダで分散するために該形成可能なバッチを混練するステップ(ここで、形成可能なバッチは絡み合い重なり合う生体活性繊維の均質な固まりとなる)と、形成体を得るために形成可能なバッチを所望の形態に形成するステップと、液体を除去するために該形成体を乾燥するステップと、バインダおよび孔形成剤を除去するために該形成体を加熱するステップと、絡み合い重なり合う生体活性ガラス繊維の間に接着を形成するために、第1熱源および第2熱源を使用して、該形成体を接着形成温度に加熱するステップと、を含む。
【0070】
一実施形態では、本発明は、多孔性マトリックスに接着した生体活性繊維の、骨欠損の治療のための使用を開示し、該多孔性マトリックスは、促進する骨組織の内殖を促進する孔径分布を有する。
【0071】
一実施形態では、本発明は、多孔性マトリックスに接着した生体活性繊維の、骨切断術の治療のための使用を開示し、該多孔性マトリックスは、骨組織の内殖を促進する孔径分布を有する。
【0072】
一実施形態では、本発明は、多孔性マトリックスに接着した生体活性繊維の、脊柱の種々の部分の構造的不全の治療のための使用を開示し、該多孔性マトリックスは骨組織の内殖を促進する孔径分布を有する。
【実施例】
【0073】
[実施例](Examples、英文P28)
本開示をさらに説明し、その理解を促進するために以下の実施例を掲載する。これらの特定の実施例は、本開示の説明のためのものであり、いかなる方法でも限定を意図するものではない。
【0074】
第1の例示的な実施形態では、非揮発成分として、Mo−Sci社、Rolla、MO65401から入手した、平均径が約34μmの嵩高い13−93繊維75グラムに、有機バインダとしてHPMC16グラム、および孔形成剤として粒径25〜30μmのPMMA20グラム、および必要により調整された、脱イオン水約40グラムを混合し、塑性形成可能な混合物を得ることによって、13−93繊維から吸収性スキャフォールドを形成する。混合物を押出して直径14mmのロッドとし、マイクロ波乾燥機で乾燥した。空気をパージしたオーブン中で揮発成分を燃焼させて除去し、次いで720℃で1時間熱処理し、13−93繊維を接着および溶融し、生体吸収性組織スキャフォールドとした。PMMA孔形成剤は約346℃で燃焼を開始し、一方オーブンは、スキャフォールドの内部温度を迅速に上げるために加熱する。この実施例での空隙率は、69.4%と測定された。
【0075】
第2の例示的な実施形態では、非揮発成分として、Mo−Sci社、Rolla、MO65401から入手した、平均径が約34μmの嵩高い13−93繊維5グラムおよび粉末状の13−93生体活性ガラス(これもMo−Sci社から入手)1グラムに、有機バインダとしてHPMC2グラム、および孔形成剤として粒径25〜30μmのPMMA5グラム、および必要により調整される脱イオン水約8グラムを混合し、塑性形成可能な混合物を得ることにより、吸収性スキャフォールドを13−93繊維から形成する。混合物を押出して、直径14mmのロッドとし、マイクロ波乾燥機で乾燥した。空気をパージしたオーブン中で揮発成分を燃焼させて除去し、690℃で45分熱処理し、13−93繊維を接着および溶融して生体吸収性組織スキャフォールドとし、生体活性ガラス材料を使用して、隣接し、重なり合う繊維をガラスで被覆した。PMMA孔形成剤は、約346℃で燃焼を開始し、一方オーブンは、スキャフォールドの内部温度を迅速に上げるために加熱する。この実施例での空隙率は、76%と測定された。
【0076】
第3の例示的な実施形態では、非揮発成分として、Mo−Sci社、Rolla、MO65401から入手した、平均径が約34μmの嵩高い13−93繊維5グラムおよび粉末状の13−93生体活性ガラス(これもMo−Sci社から入手)2グラムに、有機バインダとしてHPMC2グラム、および孔形成剤としてAsbury Carbons、Asbury、NJから入手した、粒径分布が150から425μmの間の4015黒鉛粉末5グラム、および必要により調整される脱イオン水約10グラムを混合し、塑性形成可能な混合物を得ることにより、吸収性スキャフォールドを13−93繊維から形成する。混合物を押出して、直径14mmのロッドとし、125℃で30分乾燥した。空気をパージしたオーブン中で揮発成分を燃焼させて除去し、800℃で45分熱処理し、13−93繊維を接着および溶融して生体吸収性組織スキャフォールドとし、生体活性ガラス材料を使用して、隣接し重なり合う繊維をガラスで被覆した。黒鉛の孔形成剤は約603℃で燃焼を開始し、一方オーブンは、スキャフォールドの内部温度を迅速に上げるために加熱する。この実施例での空隙率は66.5%と測定され、圧縮強度は7.0MPaであった。
【0077】
第4の例示的な実施形態では、非揮発成分として、Mo−Sci社、Rolla、MO65401から入手した、平均径が約34μmの嵩高い13−93繊維45グラムおよび平均径が14μmの45S5繊維(これもMo−Sci社から入手)30グラムに、有機バインダとしてHPMC16グラム、および孔形成剤として平均粒径が50μmのデンプン20グラム、および必要により調整される脱イオン水約40グラムを混合し、塑性形成可能な混合物を得ることにより、吸収性スキャフォールドを、45S5繊維および13−93繊維の混合物から形成する。混合物を押出して、直径14mmのロッドとし、マイクロ波乾燥機で乾燥した。空気をパージしたオーブン中で揮発成分を燃焼させて除去し、715℃で1時間熱処理し、13−93および45S5繊維を接着および溶融して生体吸収性組織スキャフォールドとし、繊維からのガラス材料で、隣接し重なり合う繊維を被覆した。デンプンの孔形成剤は約292℃で燃焼を開始し、一方オーブンは、スキャフォールドの内部温度を迅速に上げるために加熱する。この実施例での空隙率は40.4%と測定された。
【0078】
第5の例示的な実施形態では、非揮発成分として、Mo−Sci社、Rolla、MO65401から入手した、平均径が約34μmの嵩高い13−93繊維5グラムおよび粉末状の13−93生体活性ガラス(これもMo−Sci社から入手)2グラムに、有機バインダとしてHPMC2グラム、および孔形成剤として粒径が100μmのPMMA1.5グラム、および必要により調整される脱イオン水約7グラムを混合し、塑性形成可能な混合物を得ることにより、吸収性スキャフォールドを13−93繊維から形成する。混合物を押出して、直径14mmのロッドとし、マイクロ波乾燥機で乾燥した。空気をパージしたオーブン中で揮発成分を燃焼させて除去し、680℃で45分熱処理し、13−93繊維を接着および溶融して生体吸収性組織スキャフォールドとし、生体活性ガラス材料を使用して、隣接し重なり合う繊維をガラスで被覆した。PMMA孔形成剤は、約346℃で燃焼を開始し、一方オーブンは、スキャフォールドの内部温度を迅速に上げるために加熱する。この実施例での空隙率は58.5%と測定され、圧縮強度は4.7MPaであった。
【0079】
第6の例示的な実施形態では、非揮発成分として、Mo−Sci社、Rolla、MO65401から入手した、平均径が約34μmの嵩高い13−93繊維5グラムに、有機バインダとしてHPMC2グラム、および孔形成剤として粒径が100μmのPMMA1.5グラム、および必要により調整される脱イオン水約8グラムを混合し、塑性形成可能な混合物を得ることにより、吸収性スキャフォールドを13−93繊維から形成する。混合物を押出して、直径14mmのロッドとし、マイクロ波乾燥機で乾燥した。空気をパージしたオーブン中で揮発成分を燃焼させて除去し、700℃で90分熱処理し、13−93繊維を接着および溶融して生体吸収性組織スキャフォールドとし、繊維からの生体活性ガラス材料を使用して、隣接し、重なり合う繊維をガラスで被覆した。PMMA孔形成剤は、約346℃で燃焼を開始し、一方オーブンは、スキャフォールドの内部温度を迅速に上げるために加熱する。この実施例での空隙率は47.0%と測定され、圧縮強度は22.5MPaであった。
【0080】
第7の例示的な実施形態では、非揮発成分として、Mo−Sci社、Rolla、MO65401から入手した、平均径が約34μmの嵩高い13−93繊維5グラムおよび粉末状の13−93生体活性ガラス(これもMo−Sci社から入手)3グラムに、有機バインダとしてHPMC2グラム、および孔形成剤として粒径が25〜30μmのPMMA5グラム、および必要により調整される脱イオン水約8グラムを混合し、塑性形成可能な混合物を得ることにより、吸収性スキャフォールドを13−93繊維から形成する。混合物を押出して、直径14mmのロッドとし、マイクロ波乾燥機で乾燥した。空気をパージしたオーブン中で揮発成分を燃焼させて除去し、710℃で45分熱処理し、13−93繊維を接着および溶融して生体吸収性組織スキャフォールドとし、生体活性ガラス材料を使用して、隣接し、重なり合う繊維をガラスで被覆した。PMMA孔形成剤は、約346℃で燃焼を開始し、一方オーブンは、スキャフォールドの内部温度を迅速に上げるために加熱する。この実施例での空隙率は50.2%と測定され、圧縮強度は20.1MPaであった。
【0081】
本明細書では、本発明を、そのある例示的な特定の実施形態に関して詳細に記載したが、これらに限定されると考えるべきではなく、添付の請求項の精神および範囲を逸脱しない限り、数多くの修正が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成人工骨を製造する方法であって、
塑性形成可能なバッチを得るために、生体活性繊維を孔形成剤および液体と混合するステップと、
絡み合い重なり合う生体活性繊維の均質な固まりの形成可能なバッチを得るために、前記形成可能なバッチを混練し、前記生体活性繊維を前記孔形成剤とともに分散するステップと、
成形体を得るために前記形成可能なバッチを所望の形状に形成するステップと、
液体を除去するために前記成形体を乾燥するステップと、
前記絡み合い重なり合う生体活性ガラス繊維の間に接着ないし結合を形成するために、前記孔形成剤の発熱反応を使用して前記成形体を接着形成温度に加熱するステップと、
を備える合成人工骨の製造方法。
【請求項2】
前記生体活性繊維は失透温度を有し、前記成形体が失透温度以下の時に前記孔形成剤の発熱反応が開始し、前記成形体が前記失透温度に達する前に、前記孔形成剤の前記発熱反応が完了する、請求項1に記載の合成人工骨の製造方法。
【請求項3】
前記生体活性繊維は失透温度を有し、前記成形体が前記失透温度以下の時に前記孔形成剤の前記発熱反応が開始し、前記成形体が前記失透温度を超えた後、前記孔形成剤の前記発熱反応が完了する、請求項1に記載の合成人工骨の製造方法。
【請求項4】
前記成形体を接着形成温度に前記加熱するステップが、空気をパージした炉内で行われる、請求項1に記載の合成人工骨の製造方法。
【請求項5】
前記孔形成剤が、活性炭、片状黒鉛、HPMC、PMMA、木粉、およびトウモロコシデンプンからなる群から選択される、請求項1に記載の合成人工骨の製造方法。
【請求項6】
前記混合ステップが、さらにバインダを含む、請求項1に記載の合成人工骨の製造方法。
【請求項7】
前記混合ステップが、さらに接着剤を含む、請求項6に記載の合成人工骨の製造方法。
【請求項8】
前記混合ステップが、さらに接着剤を含む、請求項1に記載の合成人工骨の製造方法。
【請求項9】
前記加熱ステップの後、前記合成人工骨をアニーリングするステップをさらに含む、請求項1に記載の合成人工骨の製造方法。
【請求項10】
絡み合う生体活性ガラス繊維と、
強固な三次元組織スキャフォールドを形成する、前記絡み合う生体活性ガラス繊維の間の接着ないし結合と、
前記絡み合う生体活性繊維内に分散されると共に前記接着の形成中に除去される揮発成分によって予め決められた前記強固な三次元組織スキャフォールド内にある細孔空間と、を備え、
前記接着ないし結合は、前記揮発成分の発熱反応を使用して形成されている、
ことを特徴とする合成人工骨。
【請求項11】
前記揮発成分が孔形成剤を含む、請求項10に記載の合成人工骨。
【請求項12】
前記細孔空間の空隙率は、前記合成人工骨中の約40%と約85%との間である、請求項10に記載の合成人工骨。
【請求項13】
前記細孔空間の孔径は、約10μmと約500μmとの間である、請求項10に記載の合成人工骨。
【請求項14】
前記孔径は、二峰性のサイズ分布を有する、請求項10に記載の合成人工骨。
【請求項15】
前記絡み合う生体活性ガラス繊維は、炭酸ナトリウムと、炭酸カルシウムと、五酸化リンと、約45モル%から約60モル%シリカとを含み、リンに対するカルシウムのモル比が約2〜約10である組成を有する、請求項10に記載の合成人工骨。
【請求項16】
前記絡み合う生体活性ガラス繊維が、13〜93ガラス繊維を含む、請求項10に記載の合成人工骨。
【請求項17】
前記絡み合う生体活性ガラス繊維が、異なる組成を有する生体活性ガラス繊維の混合物を含む、請求項10に記載の合成人工骨。
【請求項18】
前記絡み合う生体活性ガラス繊維の直径が、約1μmから約200μmの範囲にある、請求項10に記載の合成人工骨。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−532680(P2012−532680A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519719(P2012−519719)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/041333
【国際公開番号】WO2011/005935
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512005690)バイオ2 テクノロジーズ,インク. (3)
【Fターム(参考)】