説明

生体試料観察システムおよび生体試料の観察方法

【課題】 生体試料の蛍光強度などを正確、かつ、リアルタイムに測定できるとともに、外部の環境の影響を緩和することにより、生体試料へのダメージを低減できる生体試料観察システムおよび生体試料の観察方法を提供する。
【解決手段】 培養される生体試料の経時的変化を観察する生体試料観察システム10であって、内部が所定の環境に維持されるとともに、当該環境の下で前記生体試料の培養が行われる培養空間110と、前記培養空間の外側に形成される空間であって、前記培養空間に対する当該空間の外部からの影響を緩和する、実質的に前記外部と隔離された空間である緩衝空間100と、前記緩衝空間100の少なくとも一部を介して前記培養空間内の前記生体試料を観察する観察手段40と、を備えることを特徴とする生体試料観察システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料を培養すると同時にその生体試料を経時的に観察する生体試料観察システムおよびそれを用いた生体試料観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子解析技術の進歩に伴って、人を含む多くの生物における遺伝子配列が明らかになると共に解析されたタンパク質等の遺伝子産物と疾病との因果関係も少しずつ解明され始めている。また、今後さらに、各種タンパク質や遺伝子等を網羅的且つ統計的に解析するため、生体試料、特に細胞を用いた様々な検査方法や装置が考えられ始めている。
【0003】
通常、細胞は、プラスチック製又はガラス製のディッシュやフラスコ等に播種され、インキュベータ内で培養されている。このインキュンベータは、内部が例えば、二酸化炭素濃度5%、温度37℃、湿度100%に設定され、細胞の育成に適した環境に保たれている。
更に、インキュベータは、細胞に養分を与えると共に培養に適したpHを保つために2〜3日毎に培養液の交換がなされている。
【0004】
このような培養中の細胞を観察する方法は、いくつかの方法が知られているが、その一つとして、インキュベータから上述したディッシュやフラスコ等を取り出し、位相差顕微鏡等の倒立型顕微鏡を用いて観察を行う方法が知られている。
上記の方法では、可能な限り速やかに細胞の観察を行い、観察終了後、細胞をインキュベータ内に戻す必要がある。これは、細胞が通常環境(培養に適した環境とは異なる環境)下に長く置かれることにより、細胞の活性が損なわれるのを防止するためである。
即ち、細胞の活性が不安定であると、正確な評価を行うことが困難になるためである。また、細胞をインキュベータから取り出す際は、コンタミネーション等が起こらないように十分注意して行われている。
また、別の細胞観察方法として、各種の細胞の培養条件を設定可能な顕微鏡観察用透明恒温培養容器を使用する方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−28576号公報(第図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した倒立型顕微鏡を用いた観察では、観察の毎に細胞をインキュベータから出し入れする必要があった。そのため、細胞を出し入れする際に、細胞の観察位置が異なってしまい、毎回同じ細胞群の観察を行うことは困難であった。
【0006】
また、上述の特許文献1に記載された顕微鏡観察用透明恒温培養容器は、温度調節器により所定温度に制御可能な一対の透明発熱プレートと、二酸化炭素濃度を調整するための二酸化炭素供給口及び排出口を有する密閉容器と、密閉された容器内に湿度を保つための蒸発皿と、から概略構成されている。
そのため、この顕微鏡観察用透明恒温培養容器を用いることで、容器内部の温度、二酸化炭素濃度及び湿度の制御が可能となり、細胞培養しながら観察を行うことが可能となっていた。即ち、例えば、透明発熱プレートの下方から対物レンズで観察することにより、細胞の培養状態の経時変化を連続的且つ簡単に観察及び記録することが可能であった。
【0007】
しかしながら、顕微鏡観察用透明恒温培養容器を用いた観察では、容器内の培養液の交換を行なった場合に、細胞の位置ズレが生じてしまうので、毎回同じ細胞群の観察を行うことは困難であった。
即ち、この方法では、培養液の交換を要しない2〜3日くらいの間の細胞培養の観察を行うことは可能であるが、それ以上の期間、細胞培養を行う場合、同じ細胞の追跡を行うには困難があった。
【0008】
また、更に別の細胞観察方法として、測定の毎に異なるディッシュの細胞を評価する観察方法も知られている。即ち、細胞の経時的変化を検出する場合に、同条件で細胞を播種したディッシュ等を多数用意し、所定の測定時間毎に各ディッシュをインキュベータから取り出して評価を行う方法である。
この方法では、1回の観察で、1つ若しくは数ディッシュの細胞を使用するのだが、観察のための諸操作により細胞の活性が損なわれる恐れがあった。そのため、1つのディッシュは1回の測定にしか使用しない、つまり、1回測定された細胞は廃棄されていた。
【0009】
上述のように、測定毎に異なるディッシュの細胞を評価する方法では、各ディッシュが完全に同一条件を有しているとは限らないので、異なるディッシュの細胞群を同一の細胞群と仮定して観察を行うには無理があった。
特に、細胞は、タンパク質等の発現がセルサイクルによって異なるため、評価対象によっては細胞のセルサイクルを合わせた後に測定を行う必要があった。しかし、異なる細胞同士のセルサイクルは、せいぜい2サイクル程度しか一致せず、それ以後サイクルを重ねる毎にズレが大きくなっていた。そのため、実験プロトコルが制限されるという不都合が生じていた。
【0010】
上述したように細胞の活性には、環境因子が強く作用するため、常時顕微鏡下において同じ細胞群を観察することは困難であった。そのため、常時顕微鏡下で観察するために、例えば、顕微鏡全体を箱等で覆い、温度及び湿度環境を保つタイプの顕微鏡等を使用する方法も考えられる。
しかし、この場合には、二酸化炭素が存在しない環境では培養最適なpHを保つことが困難であるため、細胞の活性を数時間程度しか維持することができなかった。
【0011】
また、高湿度環境の下で二酸化炭素を導入することも考えられる。しかしながら、この場合には、非常に高価な顕微鏡が腐食によりその寿命を損なう恐れがあった。
さらには、細胞の種類によっては、外部環境の変化に対して非常に弱い種も存在し、例えば温度の急激な昇温動作や、偏った温度分布などにより簡単に死滅する恐れがあった。具体的には、細胞の種類にもよるが、一般に温度では37℃±0.5℃、二酸化炭素濃度では3%から8%の範囲で一定に維持する必要があった。
【0012】
さらには、複数の細胞を観察する際には、細胞を播種したディッシュなどをインキュベータボックス内に収納してステージに保持し、ステージにより細胞を移動させることで複数の細胞を観察する技術が知られている。このようなステージの移動機構においては駆動モータなど磁石、電磁石を用いることが多く、また、ディッシュを収めるインキュベータボックスの蓋部の固定にも磁石を用いることがある。そのため、インキュベータボックスには、上述した磁石、電磁石による微弱な電気や、静電気や、磁気などが発生する場合がある。
【0013】
このとき、培養・観察に用いられる生体試料が、例えば細胞、特に小児細胞などのように刺激に対して極めて敏感な細胞である場合、そのままインキュベータボックス内に収容すると、上記電気や静電気や磁気が生体試料に影響を与えるため、正確な観察結果を得ることが困難になる、という問題があった。
具体的には、細胞は、細胞膜を介して外界と物質の授受を行っており、この物質の授受は微量な電気により調節されている。細胞が、上述のように微量電気や磁気の影響を受けた場合、電磁力により細胞膜の調節が変化するため細胞の活性に変化が生じ、測定値に狂いが生じる恐れがあった。
また、細胞の活性に変化が生じるために、細胞の培養可能時間が短縮されてしまう恐れがあった。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、生体試料(生細胞)の蛍光強度などを正確、かつ、リアルタイムに測定できるとともに、外部の環境の影響を緩和することにより、生体試料(生細胞)へのダメージを低減できる生体試料観察システムおよび生体試料の観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、培養される生体試料の経時的変化を観察する生体試料観察システムであって、内部が所定の環境に維持されるとともに、当該環境の下で前記生体試料の培養が行われる培養空間と、前記培養空間の外側に形成される空間であって、前記培養空間に対する当該空間の外部からの影響を緩和する、実質的に前記外部と隔離された空間である緩衝空間と、前記緩衝空間の少なくとも一部を介して前記培養空間内の前記生体試料を観察する観察手段と、を備えることを特徴とする生体試料観察システムを提供する。
【0016】
本発明によれば、培養空間により所定の環境が維持されるとともに、培養空間の外側に緩衝空間が設けられる。この緩衝空間は、実質的に外部の空間と隔離された状態、例えば外部の空間との空気の導通を抑制された状態になるように設けられ、培養空間に対する緩衝空間の外部からの影響を緩和するので、生体試料にダメージを与えるような環境の急激な変化や不均一等は、緩衝空間を介することで緩和されるため、培養空間内の生体試料へのダメージを低減することができる。
また、培養空間は、緩衝空間と比較して、容積が小さいため、内部の環境を維持・制御しやすくなり、生体試料へダメージを与えにくくすることができる。
【0017】
また、緩衝空間の少なくとも一部を介して生体試料を観察するため、生体試料を培養しながら観察することができる。そのため、培養過程で起きる生体試料内の挙動を正確、かつ経時的に測定することができる。
例えば、培養条件を変化させながら観察対象の生体試料の反応をリアルタイムで測定することができ、タンパク質の発現の有無や発現量の測定、時間経過に伴う発現量の変化等を正確に測定することができる。
さらに、1回の観察における諸操作により生体試料の活性が損なわれることを防止することができ、同じ生体試料を複数回観察することができる。また、同じ生体試料を、時間間隔を空けて複数回観察することができるため、実験プロトコルを制限する必要がない。
【0018】
また、観察手段は、緩衝空間の少なくとも一部を介して培養空間内の生体試料を観察するため、観察の際に生体試料を培養空間から出し入れする必要がない。そのため、測定のたびに正確に同じ位置を観察することができる。また、観察する際のコンタミネーションを防止することができるとともに、生体試料に対して負荷をかけることを防止することができる。
さらには、培養空間内の環境により観察手段の機能が損なわれることを防止することができる。
【0019】
さらには、生体試料が緩衝空間内に形成された培養空間内に収納されているので、緩衝空間を形成していない場合と比較して、生体試料と緩衝空間外の環境との距離を確保でき、生体試料が受ける緩衝空間外の環境条件による影響を緩和することができる。
生体試料に影響を与える上記環境条件としては、例えば生体試料を保持するステージを駆動するモータから発生する磁界や電界を挙げることができる。
【0020】
また、上記環境条件による影響を緩和するために、培養空間および緩衝空間の少なくとも一方に上記環境条件の影響を遮断する遮断処理が施されていても良い。特に、磁界を遮断する防磁処理や、発生した静電気を除去する静電除去処理が施されていることが望ましい。
【0021】
上記発明においては、前記培養空間内は、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、培養空間内に形成される環境は例えば生体試料の培養に適した環境に維持されるので、生体試料へのダメージを低減しながら長期間の生体試料の培養を行うことができる。
【0022】
上記発明においては、前記緩衝空間内は、少なくとも温度に関して前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、培養空間によって維持される培養環境が温度環境であるため、生体試料へダメージを与えるような温度環境の急激な変化や不均一等は、緩衝空間を介することにより緩和され、生体試料へのダメージを低減することができる。
例えば、温度の急激な昇温動作や偏った温度分布などにより、生体試料が死滅することを防止することができる。
【0023】
上記発明においては、前記培養空間は、少なくとも温度に関して前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、培養空間によって少なくとも温度環境を維持するため、温度環境の急激な変化や不均一等による生体試料へのダメージを低減することができる。
例えば、温度の急激な昇温動作や偏った温度分布などにより、生体試料が死滅することを防止することができる。
【0024】
上記発明においては、前記培養空間内は、少なくとも湿度に関して前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、培養空間によって維持される培養環境が、生体試料の培養を行うために必要な湿度環境に維持されるため、生体試料へのダメージを低減することができる。
また、観察手段と直接接触しない培養空間において湿度を維持しているため、観察の際におけるコンタミネーションを防止することができる。
さらに、緩衝空間内は生体試料の培養に適した湿度に必ずしも維持する必要がないため、その場合、観察手段のうち緩衝空間内に配置される部分が湿度により機能を損なうことや、観察手段の寿命が短縮することも防止することができる。
【0025】
上記発明においては、前記培養空間内は、少なくとも前記生体試料の雰囲気に含まれる培養ガスの濃度に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、培養空間によって維持される培養環境が、生体試料の培養を行うために必要な培養ガスの濃度となる環境に維持されるため、生体試料へのダメージを低減することができる。
また、観察手段と直接接触しない培養空間において培養ガスの濃度を維持しているため、観察の際におけるコンタミネーションを防止することができる。
さらに、緩衝空間内は生体試料の培養に適した培養ガスの濃度に必ずしも維持する必要がないため、その場合、観察手段のうち緩衝空間内に配置される部分が培養ガスにより機能を損なうことや、観察手段の寿命が短縮することも防止することができる。
【0026】
上記発明においては、前記培養ガスは二酸化炭素を含むことが望ましい。
本発明によれば、培養ガスには二酸化炭素が含まれるため、活性を保つのに二酸化炭素が必要な生体試料を培養、観察することができる。
【0027】
上記発明においては、前記培養空間は、少なくとも、前記生体試料に直接接する培養液の状態に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、培養空間によって維持される培養環境が、生体試料の培養を行うために必要な培養液の状態となる環境に維持されるため、生体試料へのダメージを低減することができる。
また、観察手段と直接接触しない培養空間において培養液の状態(培養液の蒸発等による培養液の濃度や新しさ等)を維持しているため、観察の際におけるコンタミネーションを防止することができる。
さらに、緩衝空間内は生体試料の培養に適した培養液の状態に必ずしも維持する必要がないため、その場合、観察手段のうち緩衝空間内に配置される部分が培養液により機能を損なうことや、観察手段の寿命が短縮することも防止することができる。
【0028】
上記発明においては、前記培養空間は、更に前記生体試料の培養時前記生体試料の雰囲気に含まれる培養ガスの濃度に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されるとともに、前記培養ガスは、前記培養液内に溶解していることが望ましい。
本発明によれば、培養空間によって維持される培養環境が、生体試料の培養を行うために必要な培養ガスの濃度となる環境に維持されるため、生体試料へのダメージを低減することができる。
また、観察手段と直接接触しない培養空間において培養ガスの濃度を維持しているため、観察の際におけるコンタミネーションを防止することができる。
緩衝空間内は生体試料の培養に適した培養ガスの濃度に必ずしも維持する必要がないため、その場合、観察手段のうち緩衝空間内に配置される部分が培養ガスにより機能を損なうことや、観察手段の寿命が短縮することを防止することができる。
さらに、培養ガスを培養液内に溶解させることにより、培養ガスを介して培養液の状態を維持・制御することができる。
例えば、培養ガスの種類、濃度を制御することにより、培養液のpH値などを維持・制御することができる。
【0029】
上記発明においては、前記培養空間は、内部に前記培養液を保持した状態で前記生体試料を収容する培養容器の内部空間であることが望ましい。
本発明によれば、生体試料を収容した培養容器ごと移動させることができるため、例えば移動時等に生体試料にかかる負荷を低減することができる。また、生体試料を移動させる際のコンタミネーションを防止することができる。
【0030】
上記発明においては、前記培養容器内の前記培養液を新しいものに交換する培養液交換手段を更に含むことが望ましい。
本発明によれば、培養液交換手段により培養容器内の培養液を新しいものに交換することができるので、培養液を交換できないものと比較して、生体試料の培養できる期間をより長くすることができる。
【0031】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、前記生体試料の培養中に、前記培養容器内の所定量の培養液を連続的に交換することが望ましい。
本発明によれば、培養容器内の培養液を常にほぼ一定の状態に維持・制御することができる。
【0032】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、前記生体試料の培養中に、所定のタイミング毎に前記培養容器内の培養液を所定量交換することが望ましい。
本発明によれば、生体試料から培養液に放出される代謝物を培養液交換のタイミングまでは培養容器内に留めることができる。そのため、生体試料の培養への悪影響を防止することができる。
【0033】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、前記培養液を交換するタイミングを、必要に応じて適宜変更することが望ましい。
本発明によれば、生体試料から培養液に放出される代謝物を培養液交換のタイミングまでは培養容器内に留めることができる。そのため、培養液中の代謝物の濃度を制御できるため、生体試料の培養への悪影響をより防止することができる。
【0034】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、前記培養液を交換するタイミングを、前記培養される前記生体試料の特性を記憶したテーブルに基づいて決定することが望ましい。
本発明によれば、培養液を交換するタイミングの自由度をより向上させることができる。
また、例えば生体試料の特性(例えばセルサイクルなど)に基づいたテーブルを用いることにより、培養液中の代謝物の濃度をより制御しやすくなるため、生体試料の培養への悪影響をより防止しやすくなる。
【0035】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、前記培養液を交換するタイミングを、前記培養液の自家蛍光に基づいて決定することが望ましい。
本発明によれば、培養液の自家蛍光に基づいて培養液を交換することにより、培養液中の代謝物の濃度が所定の濃度以上になることを防止することができるとともに、培養液中の代謝物の濃度が所定の濃度以下になることを防止することができる。
【0036】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、交換する前記培養液の量を、必要に応じて適宜変更することが望ましい。
本発明によれば、培養液中の代謝物の濃度が所定の濃度以上になることを防止することができるとともに、培養液中の代謝物の濃度が所定の濃度以下になることを防止することができる。
【0037】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、交換する前記培養液の量を、前記培養される前記生体試料の特性を記憶したテーブルに基づいて決定することが望ましい。
本発明によれば、交換する培養液の量の自由度をより向上させることができる。
例えば生体試料の特性(例えばセルサイクルなど)に基づいたテーブルを用いることにより、培養液中の代謝物の濃度をより制御しやすくなるため、生体試料の培養への悪影響をより防止しやすくなる。
【0038】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、交換する前記培養液の量を、前記培養液の自家蛍光に基づいて決定することが望ましい。
本発明によれば、培養液の自家蛍光に基づいて培養液の交換量を決定することにより、培養液中の代謝物の濃度が所定の濃度以上になることを防止することができるとともに、培養液中の代謝物の濃度が所定の濃度以下になることを防止することができる。
【0039】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、前記生体試料の培養中に、前記培養容器内の培養液を全て交換することが望ましい。
本発明によれば、培養容器内を新しい培養溶液で満たすことができる。
【0040】
上記発明においては、前記培養液交換手段は、前記生体試料の培養中に、所定のタイミング毎に前記培容器内の培養液を全て交換することが望ましい。
本発明によれば、培養容器内を所定のタイミング毎に新しい培養溶液で満たすことができる。
【0041】
上記発明においては、前記緩衝空間の更に外側に、第2の緩衝空間が形成され、当該第2の緩衝空間は、前記緩衝空間および培養空間に対する当該第2の緩衝空間の外部からの環境の影響を緩和することが望ましい。
本発明によれば、培養空間内の培養環境は、緩衝空間内の環境および第2の緩衝空間内の環境の影響を受けている。そのため、生体試料にダメージを与えるような外部環境の急激な変化や不均一等は、緩衝空間を介することで緩和され、第2の緩衝空間を介することで更に緩和されるため、生体試料へのダメージをより低減することができる。
つまり、緩衝空間内における、培養空間内の生体試料にダメージを与えるような環境の急激な変化や不均一等は、第2の緩衝空間を介することで緩和されるため、生体試料へのダメージをより確実に低減することができる。
例えば、温度の急激な昇温動作や偏った温度分布などにより、生体試料が死滅することを防止することができる。
【0042】
上記発明においては、前記培養空間は、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、培養空間内に形成される環境は例えば生体試料の培養に適した環境に維持されるので、生体試料へのダメージを低減しながら長期間の生体試料の培養を行うことができる。
【0043】
上記発明においては、前記第2の緩衝空間は、少なくとも温度に関して前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、培養空間によって維持される培養環境が温度環境であるため、生体試料へダメージを与えるような温度環境の急激な変化や不均一等は、第2の緩衝空間を介することにより緩和され、生体試料へのダメージを低減することができる。
例えば、温度の急激な昇温動作や偏った温度分布などにより、生体試料が死滅することを防止することができる。
【0044】
上記発明においては、前記緩衝空間は、前記生体試料の培養に用いられる培養ガスの濃度に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、緩衝空間によって維持される培養環境が、生体試料の培養を行うために必要な培養ガスの濃度となる環境に維持されるため、培養空間内の生体試料へのダメージを低減することができる。
【0045】
上記発明においては、前記培養ガスは二酸化炭素を含むことが望ましい。
本発明によれば、培養液等、培養が行われる環境のpHを安定に保つことができ、生体試料の活性を保つことができる。
【0046】
上記発明においては、前記培養空間内は、前記生体試料に直接接する培養液の状態に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることが望ましい。
本発明によれば、培養空間によって維持される培養環境が、生体試料の培養を行うために必要な培養液の状態となる環境に維持されるため、生体試料へのダメージを低減することができる。
また、観察手段と直接接触しない培養空間において培養液の状態(培養液の蒸発等による培養液の濃度や新しさ等)を維持しているため、観察の際におけるコンタミネーションを防止することができる。
さらに、緩衝空間内は生体試料の培養に適した培養液の状態に必ずしも維持する必要がないため、その場合、観察手段のうち緩衝空間内に配置される部分が培養液により機能を損なうことや、観察手段の寿命が短縮することも防止することができる。
【0047】
上記発明においては、少なくとも前記培養空間を含み、当該第1の空間の内部において前記生体試料の培養が行われる第1の区画と、前記観察手段を備える第2の区画と、を少なくとも含み、前記第1の区画と、前記第2の区画とは、前記観察手段が前記生体試料を観察できる状態のうえで互いに仕切られていることが望ましい。
本発明によれば、生体試料を観察手段により観察する際に、生体試料を第1の区画(培養空間がある区画)から取り出すことなく観察することができ、生体試料にかかる負担を低減することができる。
さらに、生体試料を第1の区画から取り出さなくてもよいため、コンタミネーションの発生を防止することができる。
また、観察手段は、第1の区画から仕切られた第2の区画から生体試料を観察しているため、第1の区画の影響を受けることなく観察を行うことができる。
つまり、観察手段の機能が、生体試料の培養を行うための環境により損なわれることや、観察手段の寿命が短縮することを防止することができる。
【0048】
上記発明においては、前記第2の区画の内部では、少なくとも温度の管理が行われていることが望ましい。
本発明によれば、生体試料へダメージを与えるような温度の急激な変化や不均一等が、第1の区画を介することにより緩和され、生体試料へのダメージを低減することができる。
例えば、温度の急激な昇温動作や偏った温度分布などにより、生体試料が死滅することを防止することができる。
【0049】
上記発明においては、前記第1の区画と、前記第2の区画との間には、両区画の間で気体または温度が導通することを抑制する抑制手段が更に設けられていることが望ましい。
本発明によれば、抑制手段の作用により、気体または温度の生体試料へダメージを与えるような急激な変化や不均一等が緩和され、生体試料へのダメージを低減することができる。
【0050】
上記発明においては、前記観察手段は、前記緩衝空間の外側に配置されるとともに、前記緩衝空間を通して当該緩衝空間内に配置される対物レンズを含むことが望ましい。
本発明によれば、実質的に緩衝空間内には緩衝空間の少なくとも一部を介して培養空間内の生体試料を観察する対物レンズだけが入ることになるため、培養空間内の環境により観察手段本体の機能が損なわれることを防止できる。
【0051】
上記発明においては、前記生体試料観察システムは、顕微鏡に対して一体に設けられることが望ましい。
本発明によれば、一体に設けられた顕微鏡を用いて生体試料を観察することができる。そのため、顕微鏡が設けられていない場合と比較して、より微細な観察を行うことができる。
【0052】
上記発明においては、前記生体試料観察システムは、顕微鏡に対して着脱できるように構成されることが望ましい。
本発明によれば、必要に応じて生体試料観察システムを既存または専用の顕微鏡に対して着脱することができる。例えば、顕微鏡を用いて生体試料を観察する際には、生体試料観察システムを顕微鏡に取り付けることができ、それ以外の時(例えば生体試料の培養時)には、生体試料観察システムを顕微鏡から取り外すことができる。
【0053】
また、本発明は、培養される生体試料の経時的変化を観察する生体試料の観察方法であって、内部が所定の環境に維持されるとともに、当該環境の下で前記生体試料の培養が行われる培養空間を形成するステップと、前記培養空間の外側に形成される空間であって、前記培養空間に対する当該空間の外部からの影響を緩和する、実質的に前記外部と隔離された空間である緩衝空間を形成するステップと、前記培養空間内において前記生体試料の培養を行うステップと、観察手段を用いて、前記緩衝空間の少なくとも一部を介して前記培養空間内の前記生体試料を観察するステップと、を含むことを特徴とする生体試料観察システムを提供する。
【0054】
本発明によれば、培養空間により所定の環境が維持されるとともに、培養空間の外側に緩衝空間が設けられる。この緩衝空間は、実質的に外部の空間と隔離された状態、例えば外部の空間との空気の導通を抑制された状態になるように設けられ、培養空間に対する緩衝空間の外部からの影響を緩和するので、生体試料にダメージを与えるような環境の急激な変化や不均一等は、緩衝空間を介することで緩和されるため、培養空間内の生体試料へのダメージを低減することができる。
【0055】
また、緩衝空間の少なくとも一部を介して生体試料を観察するため、生体試料を培養しながら観察することができる。そのため、培養過程で起きる生体試料内の挙動を正確、かつ経時的に測定することができる。
例えば、培養条件を変化させながら観察対象の生体試料の反応をリアルタイムで測定することができ、タンパク質の発現の有無や発現量の測定、時間経過に伴う発現量の変化等を正確に測定することができる。
さらに、1回の観察における諸操作により生体試料の活性が損なわれることを防止することができ、同じ生体試料を複数回観察することができる。また、同じ生体試料を、時間間隔を空けて複数回観察することができるため、実験プロトコルを制限する必要がない。
【0056】
また、観察手段は、緩衝空間の少なくとも一部を介して培養空間内の生体試料を観察するため、観察の際に生体試料を培養空間から出し入れする必要がない。そのため、測定のたびに正確に同じ位置を観察することができる。また、観察する際のコンタミネーションを防止することができるとともに、生体試料に対して負荷をかけることを防止することができる。
さらには、培養空間内の環境により観察手段の機能が損なわれることを防止することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明の生体試料観察システムおよび生体試料観察方法によれば、第1の空間と第2の空間との内部にそれぞれ異なる環境を維持・制御するとともに、第1の空間および第2の空間を介して生体試料を観察することにより、生体試料を培養するとともに生体試料の活性を維持しつつ正確な観察を行うことを可能にするという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態である生体試料観察システムについて図1から図14を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る生体試料観察システムの概略を示す斜視図である。図2は、同じく生体試料観察システムのシステム構成を示す概略図である。
【0059】
生体試料観察システム10は、図1および図2に示すように、検出ユニット20と培養ユニット70とから概略構成されている。これら検出ユニット20および培養ユニット70は、接近して配置されることが望ましく、より好ましくは両ユニット20、70が接して配置されることが望ましい。
【0060】
検出ユニット20は、図1および図2に示すように、生体試料を内部に収納する保温箱(第1の区画)21と、細胞(生体試料)CEを測定する検出部(観察手段、第2の区画)40とから概略構成されている。
保温箱21には、保温箱21内を所定の温度に保温するヒータ21Hと、後述するインキュベータボックス(培養空間、第2の空間、第1の区画)100を保持するステージ(可動ステージ)22と、細胞CEに光を照射する透過光源23と、保温箱21内の温度を均一にするファン24と、保温箱21内を殺菌するUVランプ25と、後述する培養液循環配管77や培養ガス供給配管97などを保護するキャリア26と、インキュベータボックス100などを保温箱21から出し入れする際に用いる開閉扉27と、検出ユニット20の主電源をON・OFFする主電源スイッチ28が備えられている。
【0061】
ステージ22は、互いに直交方向に相対移動するX軸動作ステージ(可動ステージ)22Xと、Y軸動作ステージ(可動ステージ)22Yと、を有し、ステージ走査部29により走査制御されている。
ステージ走査部29は、X軸動作ステージ22XのX軸座標値を検出するX軸座標検出部30と、X軸動作ステージ22Xの動作(走査)を制御するX軸走査制御部31と、Y軸動作ステージ22YのY軸座標値を検出するY軸座標検出部32と、Y軸動作ステージ22Yの動作(走査)を制御するY軸走査制御部33と、から構成されている。
X軸座標検出部30およびY軸座標検出部32は、それぞれ検出したX軸動作ステージ22XのX座標と、Y軸動作ステージ22YのY座標と、をコンピュータPCに出力するように配置されている。X軸走査制御部31およびY軸走査制御部33は、それぞれコンピュータPCからの指示に基づきX軸動作ステージ22Xの走査と、Y軸動作ステージ22Yの走査とを制御するように配置されている。
【0062】
なお、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを駆動する機構としては、例えばモータおよびボールネジの組み合わせを挙げることができる。
コンピュータ(解析手段)PCは、上述のように、X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yの走査と、を制御するとともに、後述するように、細胞CEの検出系の制御、撮像した細胞CEの画像の解析なども行い、X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yと検出系と解析系とを連動して制御している。
【0063】
透過光源23とインキュベータボックス100との間に、透過光源23から射出された光を細胞CEに集光するコンデンサレンズ34が配置されている。
なお、コンデンサレンズ34とインキュベータボックス100との間には、シャッタ35を設けなくても良いし、シャッタ35を設けても良い。
ファン24は保温箱21の壁面に配置されている。このファン24を動作させることにより、保温箱21内の空気を対流させ、保温箱21内の温度を均一かつ一定に保ちやすくすることができる。
【0064】
UVランプ25は、検出ユニット20の壁面に配置されたUVランプスイッチ36と接続され、UVランプ25とUVランプスイッチ36との間には、UVランプ25の動作を時間的に制御するタイマ37が配置されている。さらに、UVランプ25の点灯を表示する滅菌中表示ランプ(図示せず)が配置されている。
例えば、細胞CEの非測定時にUVランプスイッチ36が押されると、タイマ37のカウントが開始されるとともに、UVランプ25に電力が供給され、UV光(紫外線光)が保温箱21内に照射される。これと同時に滅菌中表示ランプも点灯する。そして、所定の時間(例えば30分)が経過して、タイマ37のカウントが終了すると、タイマ37はUVランプ25への電力供給を停止し、UV光の照射が終了される。また、滅菌中表示ランプも消灯される。
なお、UVランプ25は、主電源スイッチ28とは別個に制御されており、主電源がOFFされていても動作することができる。
なお、UVランプ25の点灯時間は、上述した30分でも良いし、保温箱21内の雑菌類などを死滅させることができる時間であれば、30分未満でも良いし、30分よりも長くても良い。
【0065】
開閉扉27はアルマイト処理を施されたアルミなどの金属、または遮光性の高い半透明の樹脂により構成されている。
開閉扉27の構造としては、中空の二重構造としたものや、さらには、内側が上記金属とされ外側が樹脂とされるものが考えられる。開閉扉27の外側に樹脂を用いることにより、開閉扉27から保温箱21内の熱が外部に逃げることを防止することができる。また、開閉扉27の内側をアルマイト処理された金属とすることにより、UVランプ25により開閉扉27の寿命が損なわれることを防止することができる。
なお、開閉扉27が金属または金属と樹脂との二重構造とされたときには、完全に遮光されるため、インキュベータボックス100を覗く位置に覗き窓を設けることが望ましい。覗き窓には透明樹脂またはガラスがはめ込まれ、外側には、開閉可能なカバーが配置されていることが望ましい。
【0066】
検出部40には、図1および図2に示すように、検出部40内を所定の温度に保温するヒータ40Hと、検出部40側から細胞CEを照射する落射光源41A、41Bと、落射光源41A、41Bからの光路を切り替える光路切替部42と、照射光の光量を調節する光量調整機構43と、照射光を細胞CEに向けて集光するレンズ系44と、照射光の波長および検出光の波長を制御するフィルタユニット45と、細胞CEに対して合焦動作を行うオートフォーカス(AF)ユニット46と、複数の倍率や性質の異なる対物レンズ48を備えたレボルバ47と、細胞CEからの検出光を検出する検出器49と、検出光の光量を測定する光量モニタ50と、検出部40内の温度を均一にするファン51と、検出部40内を冷却する冷却ファン52と、が備えられている。
【0067】
落射光源41A、41Bは、例えば水銀ランプなどからなり、検出部40の外部に配置されており、それぞれ電力を供給する電源53に接続されている。
また、通常は1つの落射光源、例えば落射光源41Aを用いるが、落射光源41Aの光量が所定の規定値以下に減少した場合には、落射光源41Bから照明光が照射され、落射光源41Aの電源はOFFされる。
【0068】
光路切替部42は、落射光源41Aまたは落射光源41Bどちらか一方の照明光を光量調整機構43に導くように形成されている。また、光路切替部42には、後述のコンピュータPCに接続され、コンピュータPCの指示に基づき光路切替部42を制御する光路制御部54が配置されている。
光路切替部42の照明光射出側にはシャッタ42Sが配置され、照明光の透過・遮断制御を行っている。
【0069】
シャッタ42Sの照明光射出側には光量調整機構43が配置され、シャッタ42Sを透過した照明光の光量を調整している。その機構としては、例えば公知の絞り機構などを用いても良いし、その他の光量を調節できる公知の機構、技術を用いても良い。
また、光量調整機構43には、後述のコンピュータPCに接続され、コンピュータPCの指示に基づき光量調整機構43を制御する光量制御部55が配置されている。
光量調整機構43の照明光射出側にはレンズ系44が配置されている。レンズ系44は、一対のレンズ44A、44Bと、レンズ44Aおよびレンズ44Bの間に配置された絞り44Cと、から構成されている。
【0070】
フィルタユニット45は、励起フィルタ56と、ダイクロイックミラー57と、吸収フィルタ58とから構成されている。励起フィルタ56は、照明光の中から細胞CEの蛍光発光に寄与する波長(励起光)を透過するフィルタであり、レンズ系44から射出された照明光が励起フィルタ56に入射するように配置されている。ダイクロイックミラー57は、励起光と蛍光とを分離する光学素子であり、励起フィルタ56を透過した励起光を、細胞CEに向けて反射するとともに、細胞CEからの蛍光を透過するように配置されている。吸収フィルタ58は、細胞CEからの蛍光とその他の不要な散乱光とを分離する光学素子であり、ダイクロイックミラー57を透過した光が入射するように配置されている。
フィルタユニット45には、後述するコンピュータPCの指示に基づき、フィルタユニット45から射出される励起光や検出光(蛍光)の波長を制御するフィルタ制御部46Cが配置されている。
なお、励起フィルタ56、ダイクロイックミラー57、吸収フィルタ58は1枚ずつ用いられてもよいし、複数枚用いられてもよい。
【0071】
AFユニット46はフィルタユニット45の励起光射出側に配置されていて、後述するコンピュータPCの指示に基づき、励起光を、対物レンズ48を介して細胞CEに集光させるように配置されている。
レボルバ47は、AFユニット46の励起光射出光側に配置されていて、倍率の異なる複数の対物レンズ48が配置されている。レボルバ47には、後述するコンピュータPCの指示に基づき、励起光が入射される対物レンズ48を選択・制御する対物レンズ制御部59が配置されている。
【0072】
なお、対物レンズ48は、検出部40からX軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yにそれぞれ設けられた孔を通して保温箱21内のインキュベータボックス内部が観察可能な構造になっている。
X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yには、ステージが動作する範囲を見込んで孔の大きさは多少余裕を見込んである。
そのため、保温箱21内において雰囲気を細胞の培養に適した湿度に保っていても、前記孔を通じて雰囲気が検出部40に対して抜けてしまい、細胞の培養に適した温度を維持できなくなり、細胞の活性低下を引き起こす可能性がある。
そこで、このような細胞培養に適した温度の雰囲気が保温箱21と検出部40との間で導通することを抑制する抑制手段99を設けてもよい。
その抑制手段99は、レボルバ47や対物レンズ48の動きを妨害しないように空気の流れを抑制できればよく、例えばフィルムや透明シートなど柔軟な材料からなるシートを保温箱21と検出部40との境目に設けられた孔の周囲に貼り付け、レボルバの周囲に垂らした状態で取り付ける幕状のものが考えられる。
【0073】
フィルタユニット45の検出光射出側には、検出光を検出器49および光量モニタ50に集光する集光レンズ60が配置されている。
集光レンズ60の検出光射出側には、検出光の一部を検出器49に向けて反射し、残りの検出光を光量モニタ50に向けて透過するハーフミラー61が配置されている。
検出器(撮像手段)49は、ハーフミラー61から反射された検出光が入射される位置に配置されている。また、検出器49には、検出器49からの検出信号を演算して後述するコンピュータPCに出力する検出器演算部62が接続されている。
なお、検出器49はラインセンサを用いても良いし、エリアセンサを用いても良いし、ラインセンサとエリアセンサとを共用してもよく、特に限定するものではない。
光量モニタ50は、ハーフミラー61を透過した検出光を測定し、測定した値をコンピュータPCに出力するように配置されている。
なお、上述のように、光量モニタ50を用いて検出光の光量を測定しても良いし、照度計やパワーメータなどを用いて検出光の光量を測定しても良い。
【0074】
ヒータ40Hは、検出部40内を例えば30℃から37℃となるように保温制御している。ファン51は、検出部40内の空気を対流させ、検出部40内の温度を均一化するように配置されている。そのため、検出部40内の温度が保温箱21と近い温度に維持され、保温箱21の温度をより安定化させやすくなる。
冷却ファン52は、検出部40内に配置された温度センサ(図示せず)の出力に基づき、検出部40内の温度を下げるように駆動される。そのため、例えばモータなどの発熱による異常な検出部40内の温度上昇を防止することができる。
【0075】
図3は、本実施の形態に係るインキュベータボックスを示す斜視図であり、図4は、本実施の形態に係るチャンバの断面図である。
インキュベータボックス100は、図3および図4に示すように、チャンバ110と格納する筐体101と、筐体101とともに密閉空間を形成するカバー102とから概略構成されている。筐体101およびカバー102には、外界からの磁場を遮断する防磁処理や、インキュベータボックス100に発生した静電気を除去する静電除去処理が施されている。
【0076】
筐体101は、底板103と側壁104とから形成されていて、底板103の測定エリアに対応する領域は、ガラスのような透光性を有する材料で形成されている。底板103の他の領域および側壁104は、例えば、アルマイト処理されたアルミニウムやSUS316のようなステンレススチールなど防食性の高い遮光性の材料で制作するのが好ましく、より好ましくは、保温性の観点から熱伝導率の低い材料を選択するとよい。
また、底板103には、チャンバ110を保持するためのアダプタ105と、チャンバ110の温度を測定する温度センサ106と、が配置されている。なお、上述のようにアダプタ105を用いてチャンバ110を保持しても良いし、アダプタ105を用いないでチャンバ110を保持しても良い。
温度センサ106の出力は、インキュベータ温度検知部106Sを介してコンピュータPCに入力されるとともに、検出ユニット20の壁面に配置された温度表示部107にも入力されている。コンピュータPCは、図2に示すインキュベータ温度制御部106Cを介してヒータ21Hなどを制御して、インキュベータボックス100内の温度が一定に保たれるように制御するようになっている。
【0077】
カバー102は、照明光を透過するガラス板117と、ガラス板117を支持する支持部117Aと、から構成されている。ガラス板117には、測定エリアに対応する領域に反射防止膜が両面に形成されていても良い。反射防止膜を両面に形成することにより、透過観察・落射観察におけるガラス板117による反射を防止するようになっている。
なお、ガラス板117の面積は、インキュベータボックス100の底板103と略同じ面積であっても良いし、測定を問題なく行うために必要最小限の面積であっても良い。
【0078】
チャンバ110は、図4に示すように、対物レンズ48により観察するための下部ガラス部材111と、透過光源23からの光を透過するための上部ガラス部材112と、下部ガラス部材111および上部ガラス部材112を支持する枠部材113とから概略形成されている。
枠部材113の対向する辺には、培養液を循環させる流路が形成された継ぎ手114が形成されている。継ぎ手114には、後述する培養液循環配管77が接続され、培養ユニット70との間で培養液が循環されるようになっている。
また、枠部材113には、培養液の流れを均一化する整流子115が一対、培養液の流れに対して略垂直に配置されている。整流子115は、例えば小孔がマトリクス状に形成された板部材からなり、培養液が分散して複数形成された小孔を流れることにより、その流れを均一化している。そして、両整流子115の間には、細胞CEが播種されたスライドガラス116が配置されている。
以上より、チャンバ110内に形成される空間の外側にインキュベータボックス100の筐体101内に形成される空間が存在し、更にその外側には保温箱21内に形成される空間が存在する。
そのため、培養空間となるチャンバ110内に形成される空間に対し、筐体101内に形成される空間は、外部(筐体101または保温箱21の外側)からの影響を緩和(緩衝)するための緩衝空間(第1の緩衝空間)として機能し、保温箱21内に形成される空間は、外部(保温箱21の外側)からの影響を緩和(緩衝)するための緩衝空間(第2の緩衝空間)として機能する。
また、保温箱21、インキュベータボックス100の筐体101、およびチャンバ110のそれぞれ内部に形成される空間は、外部とは実質的にほぼ隔離されているものである。
【0079】
なお、上述のように、インキュベータボックス100は内部にチャンバ110が配置されるものでも良いし、図5(a)に示すように、内部にマイクロプレート120(またはウェルプレート)が配置されるものでもよい。
この構成の場合には、図5に示すように、インキュベータボックス100aの筐体101には、マイクロプレート120を口の字状に囲む水槽121と、水槽121の内側に配置された内部ファン122と、培養ガスを供給するコネクタ123と、培養ガス中の二酸化炭素ガス濃度を検出する培養ガス濃度センサ124とが配置されている。
温度センサ106は、マイクロプレート120の温度を測定するように配置されている。温度センサ106からコンピュータPCに入力されたマイクロプレート温度は、メモリにテキストデータとして蓄積されるとともに、コンピュータPCにおいてデータ処理が可能とされる。
培養ガス濃度センサ124は、コンピュータPCおよび培養ガス濃度表示部124Dに二酸化炭素ガス濃度を出力している。
【0080】
水槽121の側壁104は筐体101の側壁の高さよりも低く形成されている。また、コネクタ123とは、供給された培養ガスが側壁121Wに当たるように、配置関係が調節されている。水槽121には殺菌された滅菌水が貯えられ、インキュベータボックス100a内の湿度を略100%に調節している。
内部ファン122は、その送風方向にマイクロプレート120が配置されないよう、水槽121の側壁104に沿って送風するように配置されている。
なお、培養ガス濃度センサ124は、水槽121の側壁121W内面に配置されていても良いし、インキュベータボックス100aから配管を外部へ配置し、吸引ポンプによりインキュベータボックス100a内の培養ガスを吸引して培養ガス濃度センサ124でその濃度を検出しても良い。
【0081】
このようなインキュベータボックス100aを用いる場合には、後述する培養ガス混合槽91の培養ガス供給先を、培養液瓶72からインキュベータボックス100aに変更するとともに、培養ユニット70から培養液を供給する必要がなくなるため、培養液ポンプ80などのポンプ類の動作を停止させている。
【0082】
このような構成をとることにより、インキュベータボックス100aによって、温度環境と比較して、その変化や不均一が細胞CEへのダメージの少ない湿度環境および培養ガス濃度を維持するため、細胞CEへのダメージを低減することができる。
また、検出部40と直接接触しないインキュベータボックス100aにおいて湿度および培養ガス濃度を維持しているため、観察の際におけるコンタミネーションを防止することができる。
さらに、保温箱21内は細胞CEの培養に適した湿度および培養ガス濃度に維持する必要がないため、保温箱21内に配置される対物レンズ48などが、湿度により機能を損なうことを防止することができる。また、対物レンズ48などの寿命が短縮することも防止することができる。
以上より、インキュベータボックス100aの筐体101内に形成される空間の外側には、保温箱21内に形成される空間が存在する。
そのため、培養空間となる筐体101内に形成される空間に対し、保温箱21内に形成される空間は、外部(保温箱21の外側)からの影響を緩和(緩衝)するための緩衝空間として機能する。
また、保温箱21およびインキュベータボックス100の筐体101は、外部とは実質的にほぼ隔離されているものである。
【0083】
なお、上述のように、チャンバ110は密閉されているものでも良いし、密閉されていない開放型チャンバでも良い。開放型チャンバは、上部ガラス部材112を備えない以外はチャンバ110と同一構成として形成されている。
また、開放型チャンバを用いる場合には、上述したインキュベータボックス100を用いて、インキュベータボックス100a内を培養ガスで満たし、開放型チャンバには、培養液を供給している。
【0084】
なお、インキュベータボックス100aに対して、図5(b)に示すように、上述したチャンバ110を用いてもよい。この場合には、培養ガスを供給するコネクタ123を塞ぐとともに、培養ガス濃度センサ124を使用しない。また、チャンバ110の大きさがマイクロプレート120と異なる場合には、アダプタ105を用いてインキュベータボックス100aにチャンバ110を配置してもよい。また、水槽121に滅菌水を入れなくてもよく、水槽121自体をインキュベータボックス100aから取り外しても良い。また、温度センサ106は、チャンバ110の温度を測定している。
なお、コネクタ123は上述のように塞いでもよいし、培養ガス供給配管97を接続したまま、インキュベータボックス100aへの培養ガスの供給を止めるだけでも良い。
【0085】
培養ユニット70は、図1および図2に示すように、培養液を内部に収納する滅菌箱71と、培養ガスを生成する混合部90とから概略構成されている。
滅菌箱71には、滅菌箱71内を所定の温度に保温するヒータ71Hと、培養液を内部に蓄える培養液瓶72と、予備の培養液を内部に蓄える予備タンク73と、使用済みの培養液を入れる廃液タンク74と、滅菌箱71内を殺菌するUVランプ25と、培養液瓶72などを滅菌箱71から出し入れする際に用いる開閉扉75と、培養ユニット70の主電源をON・OFFする主電源スイッチ76が備えられている。
【0086】
培養液瓶72には、インキュベータボックス100との間で培養液を循環させる培養液循環配管77と、予備タンク73から予備の培養液を供給する補給配管78と、培養液瓶72から使用済みの培養液を廃液タンク74に排出する廃液配管79とが配置されている。
また、培養液循環配管77には、培養液を培養液瓶72からインキュベータボックス100に送り出し、培養液を循環させる培養液ポンプ(培養液交換手段)80が配置されている。培養液ポンプ80によりチャンバ110内の培養液を新しいものに交換することができるので、培養液を交換できないものと比較して、細胞CEの培養できる期間をより長くすることができる。
補給配管78には、予備タンク73から培養液を培養液瓶72に送る補給ポンプ81が配置され、廃液配管79には、培養液瓶72から使用済みの培養液を廃液タンク74に送る廃液ポンプ82が配置されている。
なお、上述のように、使用済みの培養液を貯める廃液タンク74を用いても良いし、廃液タンク74を用いないで、直接使用済みの培養液を外部に排出する排出ポートを設けても良い。
【0087】
培養液瓶72には、内部の培養液温度を検出する培養液温度センサ(図示せず)が配置され、培養液温度センサの出力は培養液温度検出部83を介してコンピュータPCに入力されるように配置されている。また、コンピュータPCに入力された培養液温度のデータは、テキストデータなどとしてメモリに蓄積され、細胞CEの検出結果との比較・検証などに用いることができる。
【0088】
ヒータ71Hには、コンピュータPCからの指示に基づき、滅菌箱71内の温度を介して培養液の温度を制御する培養液温度制御部84が配置されている。培養液温度制御部84により、培養液瓶72から供給される培養液の温度は、ほぼ37℃に保たれ、培養液の温度変化による細胞CEの活性低下が防がれている。また、培養ユニット70の壁面には、前述の培養液温度センサにより検出された培養液温度を表示する温度表示部85が配置されている。
培養液ポンプ80には、コンピュータPCの指示に基づき、培養液の循環を制御する培養液ポンプ制御部86が配置されている。また、補給ポンプ81および廃液ポンプ82もコンピュータPCの指示に基づき、その動作が制御されるように配置されている。
【0089】
UVランプ25は、培養ユニット70の壁面に配置されたUVランプスイッチ36と接続され、UVランプ25とUVランプスイッチ36との間には、UVランプ25の動作を時間的に制御するタイマ37が配置されている。さらに、UVランプ25の点灯を表示する滅菌中表示ランプ(図示せず)が配置されている。
なお、UVランプ25は、主電源スイッチ76とは別個に制御されており、主電源がOFFされていても動作することができるようになっている。
【0090】
混合部90には、図1および図2に示すように、混合部90内を所定の温度に保温するヒータ(図示せず)と、インキュベータボックス100に供給する培養ガス中の二酸化炭素ガス濃度を調節する培養ガス混合槽91と、培養ガス混合槽91に培養ユニット70の外部に配置されたCO2タンク92から二酸化炭素ガスを供給するCO2ポンプ93とが配置されている。
【0091】
培養ガス混合槽91には、内部の二酸化炭素ガス濃度を検出するCO2濃度検出部94が配置され、CO2濃度検出部94の出力がコンピュータPCに入力されるように配置されている。CO2ポンプ93には、コンピュータPCの指示に基づいて、培養ガス混合槽91に供給する二酸化炭素ガス量を制御するCO2濃度制御部95が配置されている。また、培養ユニット70の壁面には、CO2濃度検出部94により検出された培養ガス混合槽91内の二酸化炭素ガス濃度を表示するCO2濃度表示部96が配置されている。
さらには、培養ガス混合槽91と培養液瓶72との間に培養ガス供給配管97が配置されている。そのため、培養ガス供給配管97を介して培養液に培養ガスが供給され、培養液中に培養ガスを十分に溶け込ませることができる。このように、培養液瓶72内で二酸化炭素ガスの濃度が5%の培養ガスが溶解された培養液を生成することにより、培養気体および細胞CEの育成に必要な栄養素が含まれた培養液が、後述するチャンバ110に供給される。また、培養ガスを培養液に溶解させることにより、培養液のpHなどを調整することができる。
CO2濃度検出部94からコンピュータPCに入力された二酸化炭素ガス濃度は、メモリにデータとして蓄積されるとともに、コンピュータPCにおいてデータ処理が可能とされている。
【0092】
次に、上記の構成からなる生体試料観察システム10における観察方法について説明する。
まず、本実施の形態における走査方法および検出範囲の選択について図6(a)、(b)、(c)、(d)を参照して説明する。
図6(a)、(b)、(c)、(d)は、本実施の形態における走査方法および検出範囲の選択例を示す図である。
【0093】
図6(a)に示す例では、表示された画像上において測定対象範囲Mの左上の点aと右下の点bとを指定することにより、測定対象範囲M(図中の破線で囲まれた範囲)を設定している。具体的には、点a−点b間をマウスのような機器を用いてドラッグして測定対象範囲Mを設定しても良いし、点aおよび点bの座標値を入力して指示しても良い。
検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、設定された測定対象範囲M内を左右方向に走査される。つまり、図中の左から右へ走査される際には、X軸方向と平行に走査され、右から左へ走査される際には、左斜め下方向に走査される。このうち、左から右へ走査される時に細胞CEの撮像が行われる。
【0094】
図6(b)は、上述した方法で設定される測定対象範囲Mが2つの例である。まず、上述した方法で2つの測定対象範囲MA、MBが設定される。測定対象範囲MAと測定対象範囲MBとは、図中のX軸方向に所定間隔を空けて並ぶとともに、Y軸方向において、その全てが重複するように設定されている。
この例における検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、測定対象範囲MA、MBを並列に測定するように走査される。つまり、図中の左から右へ走査される際に、測定対象範囲MAから測定対象範囲MBへ走査され、右から左へ走査される際には、測定対象範囲MBから測定対象範囲MAへ走査される。
【0095】
図6(c)は、上述した方法で設定される測定対象範囲が2つの例であって、2つの測定対象範囲MA、MBの配置が異なっている例である。ここでは、測定対象範囲MAと測定対象範囲MBとは、図中のX軸方向に所定間隔を空けて並ぶとともに、図中のY軸方向において、その一部分が重複するように設定されている。
この例における検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、測定対象範囲MA、MBのY軸方向に重複する部分のみが連続して走査されている。つまり、まず、測定対象範囲MAの重複していない部分の走査が行われる。次に、測定対象範囲MA、MBの重複している部分の走査が連続して行われる。そして、測定対象範囲MBの重複していない部分の走査が行われる。
【0096】
図6(d)は、上述した方法で設定される測定対象範囲Mが2つの例であって、2つの測定対象範囲MA、MBの配置が図6(b)と同様であるが、走査方法が異なる例である。
この例における検出器49による測定部分は、図中の矢印で示すように、測定対象範囲MA、MBが別個に走査されている。つまり、まず測定対象範囲MAの全範囲の走査が行われた後に、測定対象範囲MBの全範囲の走査が行われる。
【0097】
また、上述した図6(a)、(b)、(c)、(d)に示す走査方法のうち、トータルの移動距離または走査時間が最短になる走査方法が、後述する設定されたパラメータおよび測定モードに基づいて、コンピュータPCにより自動的に選択される。
【0098】
なお、細胞を培養する範囲を撮像するとき、このように測定対象範囲Mを設定するなど複数の領域(検出範囲)に分けて撮像できる構成であれば、必要に応じて必要な部分だけの撮像を行うことが可能となる。
例えば、コンピュータPCの設定を変更して、走査対象となる全範囲の走査と、所定の一部の領域の走査とが交互に行われるようにしておけば、短い期間しか起こらない生体試料特有の現象を捉えることができる。一例として、走査対象となる全範囲の走査を30分ごとに行う場合、その合間に注目すべき細胞が存在する所定の測定対象範囲Mの走査が行われるようにしておけば、15分程度しか発現しない特有の現象が注目すべき細胞に起こったことを捉えることも可能となる。
また、必要なときに必要な測定対象範囲Mだけを走査するため、走査時間が短縮できるとともに、他の細胞に対する光の照射時間を短くすることができる。
【0099】
次に、細胞CEの測定にかかる手順にについて、各フローチャートを用いながら説明する。
まず、細胞CEの測定の前に、測定パラメータの設定が行われる。そこで、測定パラメータの設定の流れを、図7を参照しながら説明する。
図7は、測定パラメータの設定の流れを説明するフローチャートである。
まず、測定パラメータの設定が行われる(STEP1)。
その後、デフォルトの条件設定が行われる(STEP2)。ここで設定される条件は、例えばCO2濃度5%、温度37℃などの培養条件および測定条件であり、これらの設定条件はユーザによって所定の条件に変更することができる。
【0100】
次に、測定対象の選択を行う(STEP3)。測定対象とは、例えばマイクロプレート120や、スライドガラス116など、細胞CEの容器である。
次に、測定モードの選択を行う(STEP4)。測定モードには、エリア撮像モードや、ライン撮像モードや、自動モード等がある。自動モードとは他の測定モードの中から測定時間の短い測定モードを自動的に選択するモードである。
【0101】
次に、測定倍率を選択し(STEP5)、その後、検出波長を選択する(STEP6)。測定倍率の選択、および検出波長の選択は、それぞれ2種類以上の選択肢の中から選択することも可能である。
ここで、検出波長の選択方法としては、使用する蛍光タンパク、例えば、GFP、HC−Red等のリストをコンピュータPCに予め記憶させておき、記憶させたリストの中から選択する。コンピュータPCは、選択された蛍光タンパクに基づいて自動的に観測に最適な励起フィルタ56や吸収フィルタ58などを選択する。このようにして、細胞CEから所定の蛍光を検出することができる。
なお、測定中の励起フィルタ56や吸収フィルタ58、対物レンズ48等の変更は、X軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Yの駆動に同期して自動的に行なわれる。
【0102】
次に、測定間隔が設定される(STEP7)。
そして、プレビュー画面が取り込まれ(STEP8)、プレビュー画像がモニタに表示される(STEP9)。ここでは、ユーザがプレビュー画像のモニタへの表示を指示するプレビューボタンなどを用いて指示を出すことにより、プレビュー画像がモニタに表示される。そして、ユーザがモニタに表示されたプレビュー画像を確認することができる。
【0103】
次に、測定範囲の選択が行われる(STEP10)。測定範囲の選択後、再度プレビュー画像をモニタに表示させて、測定範囲が所定の範囲であるか確認してもよい。
次に、設定された複数の測定間隔から所定の測定間隔を選択する(STEP11)。
そして、測定開始スイッチ(図示せず)が押されたら(STEP12)、細胞CEの測定が開始される(STEP13)。測定開始スイッチが押されない場合には、測定開始スイッチが押されるまで待機している(STEP12)。
【0104】
なお、STEP12において、測定開始スイッチが押されない場合には、各種設定を再設定できるように、種々所定のSTEPに戻ることが可能な設定にしてもよい。
【0105】
測定パラメータの設定が完了したら、次に、細胞CEの測定が行われる。そこで、細胞CEの測定の流れを、図8を参照しながら説明する。
図8は、測定の流れを説明するフローチャートである。
まず、測定が開始されると、測定対象範囲が読み込まれる(STEP21)。その後、倍率が読み込まれ(STEP22)、検出波長が読み込まれる(STEP23)。
次に、測定モードが読み込まれる(STEP24)。ここでは、読み込まれた測定対象範囲、倍率、検出波長(蛍光波長)などに基づき、最適なステージ走査方法が決定される。測定モードが自動モードに設定されている場合には、撮像モードもここで決定される。
【0106】
次に、決定されたステージ走査方法に応じたX軸動作ステージ22X、Y軸動作ステージ22Y等の動作方法が解析され(STEP25)、解析された動作方法のデータ(動作データ)は、コンピュータPCのテーブルに保存される(STEP26)。
その後、エリアセンサモードが選択されているか否かにより、異なる測定方法で測定が行われる(STEP27)。
【0107】
まず、エリアセンサモードが選択されている場合について説明する。
測定開始スイッチが押されると、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置へ移動させる(STEP30)。ここでは、コンピュータPCが入力された測定開始位置を読み込み、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置に移動させるとともに、細胞CEが対物レンズ48の撮影視野内に位置するように移動される。
そして、シャッタ35がOPENにされて(STEP31)、対物レンズ48が選択される(STEP32)。ここでは、コンピュータPCが設定された測定倍率に基づいて、レボルバ47を駆動して所定の倍率の対物レンズ48を選択する。
【0108】
次に、フィルタユニット45が選択される(STEP33)。ここでは、コンピュータPCが設定された蛍光タンパクに基づいて、フィルタ制御部46Cが測定に最適な励起フィルタ56、吸収フィルタ58などを選択する。
以上の測定開始スイッチが押されてからここまで(STEP30からSTEP33まで)の動作は、測定モードに併せて自動で選択され、実行される。
その後、フォーカス位置が検出され(STEP34)、画像の取り込みおよびコンピュータPCの画像メモリ部への画像データ出力が行われる(STEP35)。
【0109】
そして、必要な画像の取得が完了していなければ、再び対物レンズ48の選択(STEP32)から画像の取り込みおよびコンピュータPCの画像メモリ部への画像データ出力(STEP35)までの動作が、必要な画像の取得が完了するまで繰り返される(STEP36)。
必要な画像の取得が完了すると、X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yが1ステップ駆動される(STEP37)。そして、X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yが移動した位置が測定対象範囲内であれば、再び対物レンズ48の選択(STEP32)から1ステップステージ駆動(STEP37)までの動作が繰り返される。この繰り返し作業は、ステージ22の移動した位置が測定対象範囲外になるまで繰り返される(STEP38)。
【0110】
X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yの移動先が測定対象範囲外となると、シャッタ35がOFFされる(STEP39)。
その後、所定の測定時間間隔になると、再びシャッタ35がOPEN(STEP31)にされてからシャッタ35がCloseされる(STEP39)までの動作が、測定時間が終了するまで繰り返される(STEP40)。
【0111】
次に、エリアセンサモードが選択されていない場合について説明する。
測定開始スイッチが押されると、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置へ移動させる(STEP50)。ここでは、コンピュータPCが入力された測定開始位置を読み込み、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yを測定開始位置に移動させるとともに、細胞CEが対物レンズ48の撮影視野内に位置するように移動される。
そして、シャッタ35がOPENにされて(STEP51)、フォーカス位置が検出される(STEP52)。
【0112】
次に、対物レンズ48が選択される(STEP53)。ここでは、コンピュータPCが設定された測定倍率に基づいて、レボルバ47を駆動して所定の倍率の対物レンズ48を選択する。
そして、フィルタユニット45が選択される(STEP54)。ここでは、コンピュータPCが設定された蛍光タンパクに基づいて、フィルタ制御部46Cが測定に最適な励起フィルタ56や吸収フィルタ58などを選択する。これら測定開始スイッチが押されてからここまで(STEP50からSTEP54まで)の動作は、測定モードに併せて自動で選択され、実行される。
【0113】
その後、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yの駆動が開始され(STEP55)、画像の取り込みおよびコンピュータPCのメモリ部への画像データ出力が行われる(STEP56)。
そして、必要な画像の取得が完了していなければ、再び対物レンズ48の選択(STEP53)から画像の取り込みおよびコンピュータPCのメモリ部への画像データ出力(STEP56)までの動作が繰り返され、必要な画像の取得が完了するまで繰り返される(STEP57)。
【0114】
必要な画像の取得が完了すると、シャッタ35がCloseされる(STEP58)。
その後、所定の測定時間間隔になると、再びシャッタ35がOPEN(STEP51)にされてからシャッタ35がCloseされる(STEP58)までの動作が、測定時間が終了するまで繰り返される(STEP59)。
【0115】
細胞CEの撮像が終了すると、次には撮像された画像の処理が行われる。そこで、撮像された画像の処理方法について、図9を参照しながら説明する。
図9は、画像の処理方法を説明するフローチャートである。
まず、コンピュータPCの画像処理部は、メモリ部に蓄積された撮像画像から、背景画像を抽出する(STEP71)と共に、撮像画像から背景画像(バックグラウンド)を除去する(STEP72)。
次に、強調できる画像の最大輝度範囲を読み込み(STEP73)、最大輝度範囲に応じて、例えば所定係数を掛けて画像を強調する(STEP74)。これらの処理により、バックグラウンドを除去した画像から1つ1つの細胞CEを粒状に認識し易いように画像が強調される。
【0116】
そして、強調された画像から、例えば所定の閾値以上の輝度を有する部分を抽出することで、細胞CEの1つ1つの輝度を明確な粒状として認識する(STEP75)。
次に、細胞CEの重心位置や面積等の幾何学的特徴量や、化学的特徴量や、蛍光輝度等の光学的特徴量をより正確に認識するとともに、細胞CEの位置情報とも関連付けて抽出する(STEP76)。これら特徴量を抽出することにより、1つ1つの細胞CEを識別することができる。
細胞CEの特徴量を抽出した後、細胞CEを認識するために行った強調作業(STEP74)の補正を行う(STEP77)。この補正により、画像の強調のために用いられた所定係数の影響が除去される。
次に、補正後の特徴量を、例えばファイルに出力するとともにそのファイルに蓄積する(STEP78)。
【0117】
そのため、コンピュータPCの画像処理部は、スライドガラス、マイクロプレートなどの全面の各位置における細胞CEの蛍光量分布等を画像化することができる。また、画像処理部は、1つ1つの細胞CEを正確に追跡可能であるので、例えば、所定の数の細胞CEだけに注目し、培養を行いながら細胞CE内部の蛍光分布を局所的に長時間測定することも可能である。更に、細胞CEを培養しながら、例えば、一定時間毎にスライドガラスや、マイクロプレートなどの全面を測定し、時間経過に対する細胞CEの蛍光量を自動測定することも可能である。
【0118】
次に、撮像画像から細胞CEの特徴量などのデータが抽出された後に行われるデータ処理について、図10を参照しながら説明する。
図10は、データ処理の流れを説明するフローチャートである。
ここでは、コンピュータPCのデータ処理部によって、ファイル内に蓄積された細胞CEのデータ(特徴量)の処理が行われる。
まず、データ処理部は、ファイル内に蓄積された細胞CEの生データ(特徴量)を読み込む(STEP81)とともに、細胞CEごとに時系列に並ぶようにデータの並べ替えが行われる(STEP82)。データが並べ替えられると、データ処理部は、細胞CEごとに輝度、すなわち発現量の経時的変化をグラフ化する(STEP83)。
グラフ化が完了すると、データ処理部は、グラフをプレビュー表示し(STEP84)、グラフ化データをファイルに出力する(STEP85)。
【0119】
この処理を行うことにより、細胞CEを長期間培養した場合における1つの細胞の経時的変化を容易に観察することができる。従って、培養中の時間経過に伴う細胞CEの発現量の変化等を正確、かつ容易に測定することができる。
【0120】
次に、細胞CEの測定時に行われる照射光量の調整について、図11を参照しながら説明する。
図11は、光量の調整の流れを説明するフローチャートである。
まず、細胞CEに照射される照射光量が測定される(STEP91)。照射光量は、光量モニタ50の出力から算出されてもよいし、照度計を設けて測定しても良いし、パワーメータを設けてパワーメータの出力から算出してもよい。
【0121】
測定された照射光量が許容範囲内であれば、再び照射光量の測定(STEP91)に戻り、照射光量が許容範囲外になるまで繰り返される(STEP92)。
照射光量が許容範囲外になると、光量調整機構43に含まれるNDフィルタ(図示せず)が交換され(STEP93)、照射光量が許容範囲内になるように調節される。その後、再び照射光量の測定(STEP91)に戻り、照射光量の調節が繰り返される。
【0122】
次に、チャンバ110への培養液の補給・交換の制御方法を、図12を参照しながら説明する。
図12は、培養液の補給・交換方法を説明するフローチャートである。
まず、撮像された画像のバックグラウンド(背景)値が解析される(STEP101)。撮像された画像のバックグラウンドには培養溶液の自家蛍光が撮像されており、この培養溶液の自家蛍光の輝度が解析される。
ここで、培養液は古くなるほど自家蛍光の輝度が高くなるため、自家蛍光の輝度を測定することにより、培養液の交換時期を検出することができる。
【0123】
そして、解析されたバックグラウンド値の経時的変動が所定の規定値以内であれば、再びバックグラウンド値の解析(STEP101)に戻り、バックグラウンド値の経時的変動が所定の規定値より大きくなるまで繰り返される(STEP102)。
バックグラウンド値の経時的変動が所定の規定値より大きくなると、培養液の廃液ポンプ82が駆動され(STEP103)、次いで培養液の補給ポンプ81が駆動される(STEP104)。
【0124】
なお、培養液の補給・交換の時期は、上述のように、培養液の自家蛍光により決定しても良いし、連続して行ってもよいし、予めユーザが指定した時間間隔で自動的に補給・交換を行っても良いし、予め登録されているテーブルから細胞CEを選択することにより、適宜、培養液の交換時期を指定できるようにしてもよい。また、交換する量もユーザが設定しても良いし、培養液の自家蛍光により決定してもよいし、チャンバ110内の培養液を一括して全て交換してもよいし、予め登録されているテーブルから細胞CEを選択することにより、適宜、培養液の交換量を指定できるようにしてもよい。
重量などで換算して自動で設定しても良い。
なお、本実施の形態においては、撮像された画像を用いてバックグラウンドの自家蛍光の値を検出しているが、この検出は細胞CEが存在しない場所を撮像した画像から検出しても良いし、培養液瓶72近傍に、例えば光学的検出器を設けて検出してもよい。
上述したような測定手順により、図13に示すような、1つ1つの細胞の経時的位置変化を表した細胞追跡画像を取得できる。
【0125】
次に、マイクロプレート120を用いて培養・測定する場合の手順を、図14を参照しながら説明する。
図14は、マイクロプレート120を用いて培養・測定する手順を説明するフローチャートである。
まず、インキュベータボックス100aの水槽121に滅菌水を供給する(STEP111)。
次に、コンピュータPCを起動(STEP112)してから、検出ユニット20および培養ユニット70の主電源をONにする(STEP113)。
【0126】
その後、インキュベータボックス100a内の内部ファン122を駆動(STEP114)して、インキュベータボックス100a内の空気を循環させる。そして、CO2濃度制御部95を起動(STEP115)して、インキュベータボックス100aに供給される培養ガスの二酸化炭素ガス濃度を5%に制御する。その後、各温度制御部を起動(STEP116)して、培養液温度、培養ガス温度、保温箱21内の温度などを略37℃に制御する。
【0127】
その後、検出ユニット20の開閉扉27を開けて(STEP117)、インキュベータボックス100aをステージ22にセット(STEP118)し、開閉扉27を閉じる(STEP119)。
次に、透過光源23をONにして(STEP120)、細胞CEに透過光を照射し、測定条件を設定する(STEP121)。
【0128】
そして、測定開始ボタンをONにする(STEP122)ことで、細胞CEの測定が開始される。
まず、所定の細胞CEへ事前に走査を行ってオートフォーカス(STEP123)が行われ、各部の焦点位置が決定されたところで、シャッタ35がOpenされる(STEP124)。
次に、細胞CEの画像の取り込み・出力が行われる(STEP125)。ここでは、取り込まれた画像データがコンピュータPCのメモリ部へ出力される。
【0129】
そして、必要な画像の取得が完了していなければ、再びオートフォーカス(STEP123)から画像の取り込みおよび出力(STEP125)までの動作が、必要な画像の取得が完了するまで繰り返される(STEP126)。ここで、必要な画像とは、例えば、選択された波長により撮影された画像や、選択された倍率により撮影された画像などのことである。
【0130】
必要な画像の取得が完了すると、X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yが1ステップ駆動される(STEP127)。そして、X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yが移動した位置が測定対象範囲内であれば、再びオートフォーカス(STEP123)から1ステップステージ駆動(STEP127)までの動作が繰り返される。この繰り返し作業は、ステージ22の移動した位置が測定対象範囲外になるまで繰り返される(STEP128)。
【0131】
X軸動作ステージ22XまたはY軸動作ステージ22Yの移動先が測定対象範囲外となると、シャッタ35がCloseされ(STEP129)、X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yがホームポジションに移動される(STEP130)。
その後、所定の測定時間間隔になると、再びオートフォーカス(STEP123)からホームポジションへステージを移動させる(STEP130)までの動作が、測定時間が終了するまで繰り返される(STEP131)。
【0132】
測定時間が終了(STEP132)すると、開閉扉27を開けて(STEP133)、マイクロプレート120をインキュベータボックス100aから取り外す(STEP134)。そして、水槽121から滅菌水を取り除き(STEP135)、開閉扉27を閉じる(STEP136)。
その後、保温箱21内のUVランプ25を点灯させ(STEP137)、保温箱21内の滅菌を行い、測定を終了する。
【0133】
なお、上述のように、保温箱21内の滅菌を測定手順の最後に入れてもよいし、測定手順の最初に入れて、測定前に保温箱21の滅菌を行っても良い。
なお、上述のように、細胞CEの測定ごとにオートフォーカスを行っても良いし、測定ごとの行わなくても良い。
【0134】
上記の構成によれば、保温箱21により温度環境が維持されるとともに、保温箱21内に配置されたチャンバ110により湿度環境および培養液環境が維持されているので、湿度環境および培養液環境は温度環境の影響を受け、チャンバ110内においても温度環境が維持されている。
そのため、細胞CEにダメージを与えるような温度環境の急激な変化や不均一等は、湿度環境および培養液環境を介することで上記変化等が緩和されるため、細胞CEへのダメージを低減することができる。
また、チャンバ110は、保温箱21と比較して、容積が小さいため、湿度環境および培養液環境を維持・制御しやすくなり、細胞CEへダメージを与えにくくすることができる。
【0135】
また、保温箱21、インキュベータボックス100、チャンバ110を介して細胞CEを観察することができるため、細胞CEにダメージを与えることなく培養しながら観察することができる。そのため、培養過程で起きる細胞CE内の挙動を正確、かつ経時的に測定することができる。
例えば、培養条件を変化させながら観察対象の細胞CEの反応をリアルタイムで測定することができ、タンパク質の発現の有無や発現量の測定、時間経過に伴う発現量の変化等を正確に測定することができる。
【0136】
さらに、1回の観察における諸操作により細胞CEの活性が損なわれることを防止することでき、同じ細胞CEを複数回観察することができる。また、同じ細胞CEを、時間間隔を空けて複数回観察することができるため、実験プロトコルを制限する必要がない。
【0137】
また、検出部40は、保温箱21、インキュベータボックス100、を介してチャンバ110内の細胞CEを観察するため、観察の際に細胞CEをチャンバ110から出し入れする必要がなく、観察している間中チャンバ110内に固定することができる。そのため、測定のたびに正確に同じ位置を観察することができる。また、観察する際のコンタミネーションを防止することができるとともに、細胞CEに対して負荷をかけることを防止することができる。
さらには、チャンバ110内の環境条件(例えば、二酸化炭素ガスおよび湿度の組み合わせ)により検出部40の機能が損なわれることを防止することができる。
【0138】
さらには、細胞CEが保温箱21、インキュベータボックス100内に配置されたチャンバ110内に収納されているので、チャンバ110を配置していない場合と比較して、細胞CEとインキュベータボックス100外の環境との距離を確保できる。そのため、細胞CEが受けるインキュベータボックス100外のステージ22の駆動モータおよび開閉扉27に設けた磁石による電界や磁界などの影響を緩和することができる。
【0139】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図15から図17を参照して説明する。
本実施の形態の生体試料観察システムの基本構成は、第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態とは、検出ユニットおよび培養ユニットの構成が異なっている。よって、本実施の形態においては、図15から図17を用いて検出ユニットおよび培養ユニット周辺のみを説明し、チャンバ等の説明を省略する。
図15(a)は、本実施の形態における生体試料観察システムの正面図であり、図15(b)は、本実施の形態における生体試料観察システムの側面図である。
生体試料観察システム200は、図15に示すように、倒立型顕微鏡(顕微鏡)210と、培養ステージ220とから概略構成されている。倒立型顕微鏡210と培養ステージ220とは一体的に固定されていても良いし、着脱ができるように構成されていてもよい。
【0140】
倒立型顕微鏡210に対して培養ステージ220が着脱できると、既存の倒立型顕微鏡を使用することもできる。この場合、例えば培養ステージ220の取り付けに係る形状・構造上の制約により、細胞CEの近傍にステージの駆動モータが配置されても、細胞CEに対する量電気や磁気の影響を緩和することができる。
また、例えば、倒立型顕微鏡210を用いて細胞CEを観察する際には、培養ステージ220を倒立型顕微鏡210に取り付けることができ、それ以外の時(例えば細胞CEの培養時)には、倒立型顕微鏡210を顕微鏡から取り外すことができる。
【0141】
図16は、培養ステージ220の平面図であり、図17は、培養ステージ220の斜視図である。
培養ステージ220は、図15および図16に示すように、筐体221と、筐体221の上面に設けられた開閉蓋222と、X軸動作ステージ22Xと、Y軸動作ステージ22Yと、小型または帯状のヒータ220Hと、放熱板223と、ファン224と、培養ガス供給コネクタ225とから概略構成されている。
【0142】
筐体221は、例えば、アルマイト処理されたアルミニウムやSUS316のようなステンレススチールなど防食性の高い遮光性の材料で制作するのが好ましく、より好ましくは、保温性の観点から熱伝導率の低い材料を選択するとよい。
筐体221の内部は、培養した細胞の観察を行うための測定エリア226と、細胞の培養のみを行う非測定エリア227とに分割されている。そして、培養ステージ220では、細胞の培養を行うとともに、細胞を保持するマイクロプレート120を内部に収納し、培養ステージ220の外部からマイクロプレート120内の細胞を観察することが可能な構成とされる。ここでは、図16および図17に示すように、培養容器としてマイクロプレート120を使用する場合について説明するが、ディッシュやフラスコを使用することも可能である。
【0143】
筐体221の非測定エリア227における側壁には、ファン224および培養ガス供給コネクタ225が配置されている。また、ファン224および培養ガス供給コネクタ225が配置されていない領域(測定エリア226も含む)には、ヒータ220Hとヒータ220Hの熱を拡散させる放熱板223が配置されている。
ファン224は、培養ステージ220内の空気を対流させるとともに、インキュベータボックス100aに直接風が当たらないようになっている。
培養ステージ220内の温度は、ヒータ220Hにより昇温され、36.5℃±0.5℃に制御される。
【0144】
筐体221の底面には、図16および図17に示すように、X軸動作ステージ22X及びY軸動作ステージ22Yが設置されている。X軸動作ステージ22XおよびY軸動作ステージ22Yは、例えばモータとボールネジにより駆動される。
Y軸動作ステージ22Yには、小型もしくは帯状のヒータ(図示せず)が取り付けられている。ヒータは、マイクロプレート120が均等に温められる位置に配置されている。
【0145】
測定エリア226および非測定エリア227は、筐体221に固定された天板228および一対の仕切り受け229により、培養ステージ220内がX軸方向に分割されたものである。すなわち、図16において仕切り受け229の左側領域が測定エリア226とされ、右側の領域が非測定エリア227とされている。
また、X軸動作ステージ22Xには、筐体221の断面形状と略一致する形状に形成された仕切り板229aが取り付けられている。
この仕切り板229aは、X軸動作ステージ22Xを非測定エリア227側へ移動させることにより、仕切り板229aの両端部(Y軸方向の端部)の側面が仕切り受け229と接触して筐体221の内部空間を左右(X軸)方向に2分割するように配置されている。
さらに、仕切り板229aの天板228側の端部が天板228の下面と接触するように配置されているため、測定エリア226および非測定エリア227を、互いに分割された2つの空間とすることができる。
【0146】
測定エリア226の上部開口領域には、ガラス上蓋230が筐体221に着脱可能に取り付けられ、測定エリア226の上部開口領域を覆うように配置されている。ガラス上蓋230の取り付け方法としては、例えば、ガラス上蓋230を筐体221にビス止め固定する方法や、ロック機構、ツメ、磁石などで取り付ける方法を挙げることができる。
ガラス上蓋230は、全面あるいは周囲の枠部分を除いた略全面がガラス板231で構成されていてもよいし、測定に支障のない範囲内であれば最小限の面積としてもよい。ガラス板231には、透過観察および落射観察の際の光の反射を抑えるために、両面に反射防止膜(ARコート)をコーティングした光学ガラス材を使用するのが好ましい。
【0147】
なお、反射防止膜は、上述のようにガラス板231の両面にコーティングしても良いし、ガラス板231の片面にコーティングしてもよい。
ガラス上蓋230は、例えば倒立型顕微鏡210の対物レンズ交換や、測定エリア226の内部クリーニングなど、各種の作業を行う際に必要に応じて取り外すことができる。
なお、ガラス上蓋230には、倒立型顕微鏡210の対物レンズを差し込む観察孔を設けても良い。また、観察孔にはゴム製のシートを配置し、対物レンズと観察孔との間の隙間を塞いでも良い。シートは対物レンズと培養ステージ220との相対移動を阻害しないように配置されることが望ましい。
【0148】
非測定エリア227の上部開口領域には、開閉蓋222がヒンジなどを用いて開閉可能に取り付けられている。開閉蓋222が閉じた状態では、開閉蓋222の一端が天板228と接触し、支持されている。
開閉蓋222は、全体が遮光性の材料(例えば筐体221と同じ材料)で構成されており、必要に応じて覗き穴を塞ぐ覗き穴カバー232やUV照射穴を塞ぐUV照射穴カバー233が設けられている。
【0149】
覗き穴は開閉蓋222に形成した開口部(窓)であって、覗き穴カバー232は、例えば透過率の低いガラス板や樹脂板などから形成され、覗き穴に嵌め込まれている。また、覗き穴カバー232は、開閉蓋222と同じ遮光性材料などから形成され、着脱可能または開閉可能に取り付けられていても良い。
UV照射穴は開閉蓋222に形成した開口部(窓)であって、UV照射穴カバー233は、例えば開閉蓋222と同じ遮光性部材などから形成され、UV照射穴に対して、着脱可能または開閉可能に取り付けられている。
UV照射穴カバー233は、非測定エリア227内に紫外線を照射して殺菌する場合に取り外される。また、UV光の照射には、ハンディタイプのUVランプを用いることができる。
【0150】
Y軸動作ステージ22Yの上には、マイクロプレート120を収納したインキュベータボックス100aが保持されている。インキュベータボックス100aは、第1の実施形態で説明したものと同一であるので、同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
インキュベータボックス100aのコネクタ123には、培養ステージ220の培養ガス供給コネクタ225から培養ガス供給チューブ234を介して培養ガスが供給されている。
【0151】
上記の構成によれば、本発明に係る生体試料観察システム200は、倒立型顕微鏡210が一体に設けられているため、倒立型顕微鏡210を用いて生体試料を観察することができる。そのため、倒立型顕微鏡210が設けられていない場合と比較して、より微細な観察を行うことができる。
なお、細胞の測定、培養時には、細胞が環境光の影響を受けないようにするため、生体試料観察システム200全体を暗幕などで覆っても良い。
【0152】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、蛍光強度を検出する構成に適応して説明したが、この蛍光強度を検出する構成に限られることなく、細胞の形態変化等、その他各種の指標を検出する構成に適応することができるものである。
また、細胞を観察する構成に限られることなく、細菌類や微生物、卵などの種々の生体試料を観察する構成に適応することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る生体試料観察システムを示す斜視図。
【図2】同、生体試料観察システムのシステム構成を示す概略図である。
【図3】同、インキュベータボックスを示す斜視図である。
【図4】同、チャンバの断面図である。
【図5】同、インキュベータボックスの別の例を示す斜視図である。
【図6】同、走査方法および検出範囲の選択例を示す図である。
【図7】同、測定パラメータの設定の流れを示すフローチャートである。
【図8】同、測定の流れを示すフローチャートである。
【図9】同、画像の処理方法を示すフローチャートである。
【図10】同、データ処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】同、光量の調整の流れを示すフローチャートである。
【図12】同、培養液の補給・交換方法を示すフローチャートである。
【図13】細胞の経時変化を表した細胞追跡画像を示す図である。
【図14】マイクロプレートを用いた培養・測定を示すフローチャートである。
【図15】第2の実施形態に係る生体試料観察システムを示す正面図および側面図である。
【図16】同、培養ステージの平面図である。
【図17】同、培養ステージの斜視図である。
【符号の説明】
【0154】
10、200 生体試料観察システム
21 保温箱
22 ステージ(可動ステージ)
22X X軸動作ステージ(可動ステージ)
22Y Y軸動作ステージ(可動ステージ)
40 検出部(観察手段)
49 検出器(撮像手段)
80 培養液ポンプ(培養液交換手段)
99 抑制部(抑制手段)
100、100a インキュベータボックス
110 チャンバ
210 倒立型顕微鏡(顕微鏡)
220 培養ステージ
CE 細胞(生体試料)
PC コンピュータ(解析手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養される生体試料の経時的変化を観察する生体試料観察システムであって、
内部が所定の環境に維持されるとともに、当該環境の下で前記生体試料の培養が行われる培養空間と、
前記培養空間の外側に形成される空間であって、前記培養空間に対する当該空間の外部からの影響を緩和する、実質的に前記外部と隔離された空間である緩衝空間と、
前記緩衝空間の少なくとも一部を介して前記培養空間内の前記生体試料を観察する観察手段と、
を備えることを特徴とする生体試料観察システム。
【請求項2】
前記培養空間内は、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項1に記載の生体試料観察システム。
【請求項3】
前記緩衝空間内は、少なくとも温度に関して前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項2に記載の生体試料観察システム。
【請求項4】
前記培養空間内は、少なくとも温度に関して前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項2に記載の生体試料観察システム。
【請求項5】
前記培養空間内は、少なくとも湿度に関して前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項2に記載の生体試料観察システム。
【請求項6】
前記培養空間内は、少なくとも前記生体試料の雰囲気に含まれる培養ガスの濃度に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項2に記載の生体試料観察システム。
【請求項7】
前記培養ガスは、二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項6に記載の生体試料観察システム。
【請求項8】
前記培養空間内は、少なくとも、前記生体試料に直接接する培養液の状態に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項2に記載の生体試料観察システム。
【請求項9】
前記培養空間内は、更に前記生体試料の培養時前記生体試料の雰囲気に含まれる培養ガスの濃度に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されるとともに、
前記培養ガスは、前記培養液内に溶解していることを特徴とする請求項8に記載の生体試料観察システム。
【請求項10】
前記培養ガスは、二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項9に記載の生体試料観察システム。
【請求項11】
前記培養空間は、内部に前記培養液を保持した状態で前記生体試料を収容する培養容器の内部空間であることを特徴とする請求項8に記載の生体試料観察システム。
【請求項12】
前記培養容器内の前記培養液を新しいものに交換する培養液交換手段を更に含むことを特徴とする請求項11に記載の生体試料観察システム。
【請求項13】
前記培養液交換手段は、前記生体試料の培養中に、前記培養容器内の所定量の培養液を連続的に交換することを特徴とする請求項12に記載の生体試料観察システム。
【請求項14】
前記培養液交換手段は、前記生体試料の培養中に、所定のタイミング毎に前記培養容器内の培養液を所定量交換することを特徴とする請求項12に記載の生体試料観察システム。
【請求項15】
前記培養液交換手段は、前記培養液を交換するタイミングを、必要に応じて適宜変更することを特徴とする請求項14に記載の生体試料観察システム。
【請求項16】
前記培養液交換手段は、前記培養液を交換するタイミングを、前記培養される前記生体試料の特性を記憶したテーブルに基づいて決定することを特徴とする請求項15に記載の生体試料観察システム。
【請求項17】
前記培養液交換手段は、前記培養液を交換するタイミングを、前記培養液の自家蛍光に基づいて決定することを特徴とする請求項15に記載の生体試料観察システム。
【請求項18】
前記培養液交換手段は、交換する前記培養液の量を、必要に応じて適宜変更することを特徴とする請求項14に記載の生体試料観察システム。
【請求項19】
前記培養液交換手段は、交換する前記培養液の量を、前記培養される前記生体試料の特性を記憶したテーブルに基づいて決定することを特徴とする請求項18に記載の生体試料観察システム。
【請求項20】
前記培養液交換手段は、交換する前記培養液の量を、前記培養液の自家蛍光に基づいて決定することを特徴とする請求項18に記載の生体試料観察システム。
【請求項21】
前記培養液交換手段は、前記生体試料の培養中に、前記培養容器内の培養液を全て交換することを特徴とする請求項12に記載の生体試料観察システム。
【請求項22】
前記培養液交換手段は、前記生体試料の培養中に、所定のタイミング毎に前記培容器内の培養液を全て交換することを特徴とする請求項21に記載の生体試料観察システム。
【請求項23】
前記緩衝空間の更に外側に、第2の緩衝空間が形成され、
当該第2の緩衝空間は、前記緩衝空間および培養空間に対する当該第2の緩衝空間の外部からの環境の影響を緩和することを特徴とする請求項1に記載の生体試料観察システム。
【請求項24】
前記培養空間は、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項23に記載の生体試料観察システム。
【請求項25】
前記第2の緩衝空間は、少なくとも温度に関して前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項24に記載の生体試料観察システム。
【請求項26】
前記緩衝空間内は、前記生体試料の培養に用いられる培養ガスの濃度に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項25に記載の生体試料観察システム。
【請求項27】
前記培養ガスは、二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項26に記載の生体試料観察システム。
【請求項28】
前記培養空間内は、前記生体試料に直接接する培養液の状態に関して、前記生体試料の培養を行うための環境に維持されることを特徴とする請求項26に記載の生体試料観察システム。
【請求項29】
請求項1に記載の生体試料観察システムであって、
少なくとも前記培養空間を含み、当該第1の空間の内部において前記生体試料の培養が行われる第1の区画と、
前記観察手段を備える第2の区画と、を少なくとも含み、
前記第1の区画と、前記第2の区画とは、前記観察手段が前記生体試料を観察できる状態のうえで互いに仕切られていることを特徴とする生体試料観察システム。
【請求項30】
前記第2の区画の内部では、少なくとも温度の管理が行われていることを特徴とする請求項29に記載の生体試料観察システム。
【請求項31】
前記第1の区画と、前記第2の区画との間には、両区画の間で気体または温度が導通することを抑制する抑制手段が更に設けられていることを特徴とする請求項30に記載の生体試料観察システム。
【請求項32】
前記観察手段は、前記緩衝空間の外側に配置されるとともに、前記緩衝空間を通して当該緩衝空間内に配置される対物レンズを含むことを特徴とする請求項1に記載の生体試料観察システム。
【請求項33】
前記生体試料観察システムは、顕微鏡に対して一体に設けられることを特徴とする請求項1に記載の生体試料観察システム。
【請求項34】
前記生体試料観察システムは、顕微鏡に対して着脱できるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の生体試料観察システム。
【請求項35】
培養される前記生体試料は、細胞を含むことを特徴とする請求項1に記載の生体試料観察システム。
【請求項36】
培養される生体試料の経時的変化を観察する生体試料の観察方法であって、
内部が所定の環境に維持されるとともに、当該環境の下で前記生体試料の培養が行われる培養空間を形成するステップと、
前記培養空間の外側に形成される空間であって、前記培養空間に対する当該空間の外部からの影響を緩和する、実質的に前記外部と隔離された空間である緩衝空間を形成するステップと、
前記培養空間内において前記生体試料の培養を行うステップと、
観察手段を用いて、前記緩衝空間の少なくとも一部を介して前記培養空間内の前記生体試料を観察するステップと、
を含むことを特徴とする生体試料の観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−25789(P2006−25789A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168467(P2005−168467)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】