説明

生体高分子物質の相互作用検出方法

【課題】生体高分子物質の相互作用検出方法を提供する。
【解決手段】(a)(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物;を含む細胞を調製する工程;及び(b)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程を含む検出方法。生体細胞内で起こる物質結合及び相互作用を実時間で検出できる方法、及びその物質結合及び相互作用を変化させる物質のスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体高分子物質の相互作用の新規な検出方法に関する。より詳細には、(a)(i)ベイト(bait)、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ(prey)及び第2の標識物質を含む第2の構成物;を含む細胞を調製する工程;及び(b)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程を含む検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の成長、分化、移動、死滅等は、蛋白質−蛋白質、蛋白質−核酸等の高分子物質等間の相互作用(interaction)によりなされる。細胞外部の信号は細胞膜の受容体を通過して細胞質内で多様な生化学的反応を介して細胞の核内に伝達され、そこで特定遺伝子等を発現させる。このような外部信号の細胞内伝達過程は、多くの工程の蛋白質間相互作用によりなされる。例えば、成長調節因子(growth factor)や、サイトカイン(cytokine)は、細胞表面の該当受容体(receptor)に結合し、この結合は受容体がクラスター(cluster)を形成するように誘導をする。このようなリガンドによる受容体のクラスターが、その受容体の細胞質内ドメインのクラスターを誘導することにより、細胞内信号伝達過程に関連した多様な蛋白質等との相互作用を誘発する。この信号伝達機構において、蛋白質キナーゼによる蛋白質のリン酸化、蛋白質ホスファターゼによる脱リン酸化等を介して信号を伝達できる中間体蛋白質を作り、結果としてその信号を転写活性化因子(transcriptional activator)に伝達する(Helden, C. H., Cell 80, 213-223(1995))。活性化された転写活性化因子はDNAに結合し、特定の遺伝子を活性化させるRNAポリメラーゼのような基本的な転写調節蛋白質(basal transcriptional regulator proteins)と相互作用する。このような相互作用は、発生過程の特定組織や外部刺激に反応して特異的に転写が起こるように調節することができる。この際、外部物質の侵入または内部活性蛋白質の遺伝子変異等により、特定蛋白質間の相互作用の非正常的な変異、阻害、促進等が起こるようになったことが病気(disorder)の原因と言える。従って、このような相互作用を調節できる物質は、直ちにそれに起因した病気に対する治療の方法を提供することができるのでこれに関する研究が継続されてきた。
【0003】
生体分子物質間の相互作用、特にその結合特性を分析するための方法としては、架橋結合(cross-linking)、親和性クロマトグラフィー(affinity chromatography)、免疫沈降法(immunoprecipitation,IP)等の従来のイン・ビトロ(in vitro)法が使用されているものの、これらの方法は生産物(production)から蛋白質を分離及び精製しなければならず、試験管内の緩衝液の条件及び抽出された蛋白質の2次的変異等により、生体内で起きる実際の相互作用と相異した情報を提供し得る短所を有している。
【0004】
このようなイン・ビトロ(in vitro)法の短所を補完するために、細胞内で直接行う酵母ツーハイブリッド法(yeast two-hybrid,Y2H)、蛍光共鳴エネルギー転移法(fluorescence resonance energy transfer,FRET)、蛍光蛋白質再構成法(bimolecular fluorescence complementation,Bi−FC)等が開発され、使用されているものの、これらの方法はそれぞれ次のような長所と短所とを有している。
【0005】
Y2H法の場合、免疫沈降法と共に現在最も広く使用されている方法として、遺伝子ライブラリを使用して大量のスクリーニングをなし得る長所はあるものの、膜蛋白質や転写酵素のような核蛋白質の検出が難しく、偽陽性(false positive)が高いという短所を有している。さらに、この方法は蛋白質間の相互作用を調節し得る物質を探すには使用が不適な短所がある。これはY2H法が2つの蛋白質間の相互作用があると、レポーター遺伝子からβ−カラクトシダーゼが発現され、培地上のX−gal化合物を分解してコロニーが青色に変わるようになる方法を利用するものの、候補物質により青色から再び白色に変わるようになる選別方法自体が陰性選別(negative screening)であるため、実際に阻害効果を有する物質を看過することもある。また、判断自体が曖昧であるという短所があり、一般的な薬物スクリーニングには好ましくない。
【0006】
FRET法の場合、正確度は高いものの、蛍光共鳴エネルギーが転移するための蛍光蛋白質または蛍光物質の位置決定が難しいため、実験成功率が極めて低いと言う短所がある。Bi−FC法の場合、膜蛋白質や核蛋白質の検出に使用し得ると言う長所はあるものの、FRET方法と同様に相補結合が起こるための蛋白質の相対的な位置を決定することが難しく成功率が低いと言う短所を有する。
【0007】
従って、前記の方法の短所を克服するために、前記方法の他に様々な方法が提案されているが、効率的な生体物質結合検出方法が一貫して望まれている。特に、目的蛋白質と相互作用をする蛋白質を検出でき、また蛋白質間相互作用を阻害若しくは促進する調節物質をより効率的に探し得る検出システムが切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、生細胞内で起こる物質結合(binding)及び相互作用(interaction)を、外部信号に対する反応や体内の信号伝達機構により細胞内の特定領域を移動する移動モジュール、及び相互作用の一方の対象であるベイトを含む第1の構成物、及び相互作用のもう一方の対象であるプレイを含む第2の構成物を使用することによって、生細胞内のベイトとプレイの相互作用を実時間で検出することが可能であることを見出した。また、前記第1の構成物及び第2の構成物を標識物質によって標識することにより、生細胞内のベイトとプレイの相互作用を実時間で検出できることを見出した。
従って、本発明は互いに相互作用をするベイトとプレイを検出し得る新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために本発明は、
(a)(i)ベイト(bait)、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ(prey)及び第2の標識物質を含む第2の構成物;を含む細胞を調製する工程;及び
(b)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程
を含むベイト(bait)とプレイ(prey)の相互作用を検出する方法を提供する。
【0010】
他の目的を達成するために、本発明は、
(a)(i)ベイト(bait)、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ(prey)及び第2の標識物質を含む第2の構成物;を含む細胞を調製する工程;
(b)信号物質を処理する工程;及び
(c)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程
を含むベイトとプレイ間の相互作用を変化させる物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0011】
さらに他の目的を達成するために、本発明は、(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物を含む細胞を提供する。
【0012】
さらに他の目的を達成するために、本発明は、前記細胞を含むベイトとプレイの相互作用検出用キットを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、生細胞内で起こる物質結合(binding)及び相互作用を実時間で検出できる方法、及びこれを利用した相互作用を変化させる物質のスクリーニング方法を提供する。本発明の方法は今まで知られたイン・ビトロ(in vitro)法(試験管内法及び生化学的方法)、抗体結合法(抗体沈殿法)、蛍光共鳴エネルギー転移法(FRET)、蛍光蛋白質再構成法(Bi−FC)及び蛍光干渉(FCS)等の既存の生体物質の相互作用検出方法が有する不正確性及び複雑性等の短所を克服し、構成物全てに標識をすることにより、正確度を一層高めた従来の分析技術と差別化される新規な実時間無抗体分析方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の基本構成物及び分析指標を示す。
【図2】本発明の結合及び非結合に対する基本概念図を示す。
【図3】本発明の結合及び非結合分析の模式図を示す。
【図4】本発明の第1の構成物(A)及び第2の構成物(B)等の構成の1例を示す。
【図5】第1の構成物及び第2の構成物の外部刺激による分布変化を示す。
【図6】PMA濃度別第1の構成物(pTMD−mRFP−C3ベクター)の分布変化を示したものである。
【図7】第1の構成物(TMD−mRFP−Bait及びTMA−mRFP−Bait、TMB−mRFP−Bait)の移動効率及び分布を示す。
【図8】第1の構成物(TMD−mRFP−p53−NES)及び第2の構成物の分布を示す。
【図9】第1の構成物(TMD−mRFP−p53−NLS)及び第2の構成物の分布を示す。
【図10】本発明の方法を利用して、p53蛋白質とSV40T蛋白質の結合を分析した結果を示す。
【図11】KRS(Lysyl-tRNA synthetase)とJTV1(p38)、Gag及びラミニン受容体(Laminin receptor,LR)間の結合を分析した結果を示す。
【図12】共焦点レーザー蛍光顕微鏡を利用して、RelAとIkBの結合を実時間で分析した結果を示す。
【図13】3種の蛋白質複合体の結合を分析した結果を示す。
【図14】酵母ツーハイブリッド法(Y2H)によりスクリーニングされた陽性結合候補を検証した結果を示す。
【図15】p53蛋白質とmdm2蛋白質の結合及び抗癌剤ヌトリン3(nutlin 3)の結合阻害を分析した結果を示す。
【図16】抗癌剤ヌトリン3の結合阻害濃度を分析した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。
本発明は、細胞内で起こる生体物質間の相互作用を直接的に、さらに、実時間で分析できるようにするために、外部刺激または内在的な信号伝達機構によって起こる蛋白質の細胞内位置移動を利用したものである。つまり、外部刺激または内在的な信号伝達機構により移動する移動モジュールに相互作用の1つの対象となるベイトを融合し、これを追跡するための標識物質を含む第1の構成物を設計した。また、ベイトと相互作用するプレイ及びこれを追跡できるように、さらに他の標識物質を含む第2の構成物を設計し、前記第1の構成物及び第2の構成物が同時に存在するようにして、これらの相互作用を細胞内で直接的、さらに、実時間で分析できるようにした。
【0016】
従って、本発明は
(a)(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物;を含む細胞を調製する工程;及び
(b)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程
を含むベイトとプレイの相互作用を検出する方法を提供する。
【0017】
本発明において、ベイト、すなわち目的分子(bait,molecule of interest)及びプレイ、すなわち標的分子(prey,target molecule)とは、それぞれ相互作用の対象となる物質を指す。前記ベイト及びプレイは、それぞれ蛋白質、ポリペプチド、有機小物質(small organic molecule)、多糖類(polysaccharide)、またはポリヌクレオチドであり、好ましくは、蛋白質またはポリペプチドである。さらに、天然物(natural product)、合成化合物、化学物質、またはそれらの2個以上の物質の組合わせでもよい。相互作用の検出またはスクリーニングの目的では、ベイトは実験者が知っている物質を表わし、プレイは未知の物質を表わすものとして使用されるが、これに制限はされず、ベイトとプレイを互いに交換でき、それぞれ第1の構成物または第2の構成物の一部となり得る。
【0018】
本発明において、第1の標識物質及び第2の標識物質は、当業者が検出可能な信号を発生させる物質を表し、この例としては、蛍光物質、リガンド、発光物、微小粒子(microparticle)(またはナノ粒子(nanoparticle))、レドックス分子、及び放射性同位元素等が挙げられる。蛍光物としては、これに制限はされないものの、蛍光蛋白質、フルオレシン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、フルオロシンイソチオシアネート等を使用できる。その内、蛍光蛋白質としては、当業界に公知のものを使用することができ、例えば、GFP(Green Fluorescent Protein,緑色蛍光蛋白質);EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein,緑色蛍光蛋白質変異体);RFP(Red Fluorescent Protein,赤色蛍光蛋白質);mRFP(Monomeric Red Fluorescent Protein,赤色蛍光モノマー蛋白質);DsRed(Discosoma sp. red fluorescent protein,ディスコソマ・エスピー由来赤色蛍光蛋白質);CFP(Cyan Fluorescent Protein,シアン蛍光蛋白質);CGFP(Cyan Green Fluorescent Protein,シアン緑色蛍光蛋白質);YFP(Yellow fluorescent protein,黄色蛍光蛋白質);AzG(Azami Green,アザミグリーン)、HcR(HcRed, Heteractis crispa red fluorescent protein,ヘテラクティス・クリスパ由来赤色蛍光蛋白質)、BFP(Blue Fluorescent Protein,青色蛍光蛋白質)等が挙げられる。リガンドとしては、ビオチン誘導体等が挙げられ、発光物としては、これに制限はされないものの、アクリジニウムエステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼ等が挙げられる。微小粒子(microparticle)(またはナノ粒子(nanoparticle))としては、これに制限はされないものの、コロイド金、鉄、着色されたラテックス等が挙げられ、レドックス分子としては、これに制限はされないものの、フェロセン、ルテニウム錯化合物、ビオロゲン、キノン、Tiイオン、Csイオン、ジイミド、1,4−ベンゾキノン、ハイドロキノン等が挙げられる。放射性同位元素としては、これに制限はされないものの、3H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、186Re等がある。しかしながら、前記例示の他に、標識物質の検出に使用できるものであればいずれのものでも使用できる。
【0019】
本発明の第1の標識物質及び第2の標識物質は、好ましくは、蛍光蛋白質であり、さらに、好ましくは、GFP、EGFP、RFP、mRFP、DsRed(Discosoma sp. red fluorescent protein)、CFP(Cyan Fluorescent Protein)、CGFP(Cyan Green Fluorescent Protein)、YFP(Yellow Fluorescent Protein)、AzG(Azami Green)、HcR(HcRed, Heteractis crispa red fluorescent protein)、またはBFP(Blue Fluorescent Protein)である。この際、第1の標識物質及び第2の標識物質は互いに区別できるようにするため、別個の蛍光蛋白質であることが好ましい。さらに、本発明の第1の標識物質及び第2の標識物質は、それぞれ配列番号9(EGFP)、配列番号11(mRFP)、配列番号13(AzG)または配列番号15(HcR)で表示されるアミノ酸配列、または配列番号10(EGFP)、配列番号12(mRFP)、配列番号14(AzG)または配列番号16(HcR)で表示される塩基配列を有することがより好ましい。
【0020】
本発明において、移動モジュールは、第1の構成物を細胞内の特定領域に移動させる機能を有する。前記の細胞内の特定領域への移動は、外部信号により誘発されたり、または内在的に起こり、細胞内の特定領域とは、細胞内構造物にして細胞内に存在する区分され(separate)、区別され(discreet)、同定可能(identifiable)要素を表す。前記細胞内の特定領域は、好ましくは細胞膜、核膜等の膜構造体、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、リソソーム等の細胞内小器官、またはその他の細胞内の特定領域である。
【0021】
本発明の移動モジュールは、前記細胞内の特定領域によって、多様に適用できるものであり、好ましくは、プロテインキナーゼC(protein kinase C,PKC)であり、当業界で公知のcPKCs(classical PKCs; PKC-alpha、PKC-beta、PKC-gamma)、nPKCs(novel PKCs; PKC-delta、PKC-epsilon、PKC-eta、PKC-theta)、aPKCs(atypical PKCs;PKC-zeta、PKC-lambda/iota)、及びこれらの変異体が含まれる。これらは全て、C1ドメインという部分を共通に有し、ジアシルグリセロール(diacyl glycerol,DAG)またはホルボールエステル(phorbol ester,TPAまたはPMA)がC1ドメインに結合することにより、細胞膜への位置移動が誘導される。本発明の移動モジュールとして好ましくは、PKCの変異体を使用することができ、前記変異体は内在的な信号伝達機構による干渉を最小化するために、PKCの内在的なリン酸化活性部位を除去した変異体であることがより好ましい。さらに、本発明の移動モジュールは、配列番号1(PRKCD)、配列番号3(TMA)、配列番号5(TMB)または配列番号7(TMD)で表示されるアミノ酸配列、または配列番号2(PRKCD)、配列番号4(TMA)、配列番号6(TMB)または配列番号8(TMD)で表示される塩基配列を有することがより好ましい。
【0022】
一方、予備実験を介して蛋白質リン酸化酵素の他に、刺激により移動するRasGRPを含む多様な蛋白質とC1ドメイン等に対する移動効率を分析した結果、本発明のPKC全体(PRKCDで表示)またはPKCの変異体(TMDで表示)を基本とした突然変異体等の移動効率が相対的に優れたものとして表れた(図7参照)。
【0023】
一方、本発明の第1の構成物または第2の構成物は、さらに、核局在化シグナル(nuclear localization signal,NLS)または核外搬出シグナル(nuclear export signal,NES)配列を含め得る。これはベイトまたはプレイの内在的な特性または実験に使用される個々の細胞株によって細胞内分布が異なるのを制御するためにさらに含め得る。NLSをさらに含む場合、第1の構成物及び第2の構成物が核質に均一に分布させることができ、NESをさらに含む場合、第1の構成物及び第2の構成物が細胞質に均一に分布させることができる。これによって、ベイトとプレイの結合が起こる細胞内の場所が細胞質であるか、若しくは核質であるかを認識することもでき、細胞質または核質で結合が起こるように誘発することができる。NLSは、当業界に公知の配列(例えば、SV40 T Antigen(PKKKRKV)、Yeast histon H2B(GKKRSKV)、Human c-myc(PAAKRVKLD)、Nucleoplasmin(KRPAATKKAGQAKKKKL)、Human IL-5(KKYTDGQKKKCGEERRRVNQ)、Human RB(KRSAEGSNPPKPLKKLR)、Human p53(KRALPNNTSSSPQPKKKP))、または配列番号17のアミノ酸配列が好ましく、さらに、配列番号17のアミノ酸配列(GSGDEVEGVEEVAKKKSKKEKDK)、またはこれをコードする配列番号18(ggctctggtgatgaagtcgaaggagtggaagaagtagctaagaagaagagtaaaaaggaaaaggataaa)の塩基配列がより好ましい。さらに、NESは、当業界に公知の配列(例えば、Annexin II(VHEILCK--LSLE)、mNet(TLWQF-LLH--LLLD)、hNet(TLWQF-LLQ--LLLD)、MAPKK(ALQKK-LEE--LELD)、PKI(ELALK-LAG--LDIN)、Rev(LQLPPLER--LTLD)、Dsk−1(SLEGAVSEIS-LR)、Cyclin B1(YLCQAFSDVI-LA)、ANX II(STVHEILCK--LSLE)、HIV-1 Rev(LQLPPLER--LTLD)、MEK−1(ALQKK-LEE--LELD)、PKI−α(ELALK-LAG--LDIN)、IkB−α(IQQQLGQ--LTLE)、RanBP1(KBAEKLEA--LSVR)、INI1(DQRVIIKLNAHVGNISLV))、または配列番号19のアミノ酸配列が好ましく、さらに、配列番号19(DQRVIIKLNAHVGNISLV)のアミノ酸配列またはこれをコードする配列番号20(gaccagcgcgtcatcatcaagctgaacgcccatgtgggaaacatttccctggtg)の塩基配列がより好ましい。
【0024】
第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布の検出は、標識物質によって当業界に公知の通常の検出方法により行える。例えば、標識物質が蛍光蛋白質の場合、蛍光顕微鏡を使用して第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出できる。
【0025】
細胞内に存在する第1の構成物と第2の構成物は初期には、全て細胞質または核質に不規則に分布し(内在する情報伝達機構によりもともと移動する移動モジュールが、細胞内の特定領域に移動する。)、移動信号を受けた第1の構成物は移動モジュールにより、細胞膜に移動し、この際、ベイトと結合したプレイも細胞膜に移動する。一方、ベイトと結合しないプレイはもとの分布が変わらない。従って、前記のような概念により、プレイの細胞膜への移動の可否は、ベイトとプレイの結合を反映する(図2及び図3参照)。
【0026】
その結果、本発明の方法は、生細胞内での生体分子の直接結合または複合体結合を映像分析を介して実時間で検出することを可能にし、従来の技術に比べて次のような有利な点を有する。
【0027】
1)生細胞内で起こる全ての結合を対象に分析することができる。
2)組織、個体レベルの分析が可能である。
3)動物細胞、酵母、及びバクテリアでの適用が可能である。
4)ベイト及びプレイに対する抗原が不要である。
5)細胞全体を観測する他の方法とは異なり、細胞内の位置移動変化を分析尺度とすることにより分析の正確度が高い。
【0028】
6)2次元的位置変化を分析することにより、3次元分析が不要である。
7)3次元分析が不要であることにより高価な共焦点顕微鏡を使用する必要がない。
8)多様な細胞小器官別結合分析が可能である。
9)生細胞内で起こる結合を検出することにより、イン・ビトロ(in vitro)法とは異なり、外部環境に影響を受けない。
10)ベイトとプレイの結合を実時間で測定することが可能である。
【0029】
11)単一ベイトと複数個のプレイ間の複合体結合を検出することが可能である。
12)検出の分析尺度がオール・オア・ノン(all or none)であるため偽陽性(false positive)を最小化できる。
13)ベイトとプレイの遺伝子及び刺激物質のみを使用することにより、細胞外物質の細胞内流入による結合特性の干渉を原則的に排除する。
14)移動モジュールの多様な変形を介して蛋白質結合の相互補完的検出が可能である。
15)永久的な結合(permanent binding)、一時的な結合(transient binding)、及び瞬間的に発生する相互作用(interaction)の検出が可能である。
【0030】
16)今まで開発された信号伝達阻害剤の標的を特定化できる。
17)阻害剤の標的特定化を介して阻害剤の特性再評価(drugre-positioning/re-purposing)が可能である。
18)プレイのマスマーカーライブラリ(mass marker library)を使用して未知の生体物質に対する結合スクリーニングが可能である。
19)ハイコンテントスクリーニング(High Contents Screening,HCS)システムと連携した高効率システムを具現できる。
20)無刺激位置移動特性を利用した分析の単純化が可能である。
21)外部刺激の種類変更により信号伝達経路別の結合特性を分析できる。
22)第1の構成物及び第2の構成物全てに標識物質を使用することにより、ベイトとプレイの相対定量が可能である。
23)外部刺激または内在的な情報伝達機構によるプレイの移動に関連した実験的な誤謬に起因する偽陽性または偽陰性反応を顕著に減少させる。
【0031】
上述した通り、移動モジュールは外部信号により細胞内の特定領域に移動する。従って、本発明のベイトとプレイの相互作用を検出する方法は、信号物質を処理する工程をさらに含む方法により実施し得る。
(a)(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物;を含む細胞を調製する工程;
(b)信号物質を処理する工程;及び
(c)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程。
【0032】
前記信号物質とは、本発明の移動モジュールの移動を誘導する外部信号を発生させる物質を表わす。例えば、本発明の移動モジュールとしてPKCを使用する場合、前記信号物質としては、PMA(Phorbol 12-myristate 13-acetate, ホルボールエステル(Phorbol ester))、TPA(12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate)、PDBu(Phorbol 12,13-dibutyrate)、ATP(Adenosine triphosphate)、トリデカン酸(tridecanoic acid)、アラキドン酸(arachidonic acid)、リノール酸(linoleic acid)、DiC8、130C937、PKC活性化関連成長因子(growth factor)、またはその他PKC活性化物質等が挙げられる。
【0033】
PMAの濃度は、好ましくは50nM〜5μM、より好ましくは、1μMで処理することができる。前記PMAの処理濃度が50nM未満の場合、移動モジュールPKCの移動が不十分であり、5μMを超える場合、化学物質の過多処理による細胞死滅、信号干渉等の非正常的な現象が発生して好ましくない。
【0034】
さらに、本発明は、
(a)(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物;を含む細胞を調製する工程;
(b)試験物質で処理する工程;及び
(c)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程
を含むベイトとプレイ間の相互作用を変化させる物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0035】
前記試験物質(test agent)とは、任意の物質(substance)、分子(molecule)、元素(element)、化合物(compound)、実在物(entity)またはこれらの組合わせを含む。例えば、これに制限はされないものの、蛋白質、ポリペプチド、有機小分子、多糖類、ポリヌクレオチド等を含む。さらに、天然物、合成化合物または化学化合物、または2個以上の物質の組合わせでもよい。特に指定されない限り、製剤(agent)、材料(substance)、物質(material)及び化合物(compound)は互換性(interchangeably)のある用語として使用される。
【0036】
本発明の方法でスクリーニングまたは同定される試験物質としては、ポリペプチド、β−ターンミメティック(beta-turn mimetics)、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環化合物、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)、オリゴメリックN−置換グリシン(oligomeric N-substituted glycines)、オリゴカルバミン酸塩(oligocarbamates)、単糖類(saccharides)、脂肪酸、プリン類、ピリミジン、またはこれらの誘導体、構造類似体または組合わせが挙げられる。前記試験物質は、合成または自然化合物のライブラリを含む広範囲で多様な起源から得られる。前記試験物質は、例えば、約5〜30個、好ましくは5〜20個、さらに好ましくは約7〜15個のアミノ酸を有するペプチドである。前記ペプチドとしては、自然的に生成される蛋白質、ランダムペプチドまたは“バイアス化(biased)”ランダムペプチドのフラグメント(fragment)が挙げられる。
【0037】
さらに、前記試験物質は“核酸”でもよい。核酸試験製剤としては、自然的に生成される核酸、ランダム核酸、または“バイアス化”ランダム核酸が挙げられる。例えば、原核または真核生物のゲノムのフラグメント(fragment)を前記核酸として使用できる。
【0038】
さらに、前記試験物質は小分子化合物(例えば、約1,000以下の分子量を有する分子)でもよい。小分子製剤をスクリーニングするための方法には、好ましくは、ハイスループットアッセイ(high throughput assay)が適用される。
【0039】
ベイトとプレイ間の相互作用の変化は、相互作用の阻害または促進である。相互作用の阻害とは、ベイトとプレイ間の結合の阻害を表し、本発明の方法においては、試験物質を処理しなかった場合、第1の構成物と第2の構成物が同一または類似して移動するのに対し、試験物質を処理した場合、第2の構成物が移動しないこと(または移動する頻度、程度、強度の減少)から判断できる。相互作用の促進はベイトとプレイ間の結合の促進を表し、本発明の方法においては試験物質を処理しなかった場合、第2の構成物が移動しないのに対し、試験物質を処理した場合、第2の構成物が第1の構成物と同一または類似して移動すること(または移動する頻度、程度、強度の増加)から判断できる。
【0040】
さらに、前記スクリーニング方法は、信号物質で処理する工程をさらに含めることができ、例えば、
(a)(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物;を含む細胞を調製する工程;
(b)信号物質で処理する工程;
(c)試験物質で処理する工程;及び
(d)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程
を含む方法でもあり得る。
しかしながら、信号物質での処理は試験物質処理前に実施される必要はなく、当業者が適当に調節して行える。
【0041】
さらに、本発明は(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物を含む細胞を提供する。
【0042】
前記細胞は動物、植物、酵母及びバクテリアの細胞であり、外部から導入される第1の構成物をたやすく受入れることができ、細胞質、核、及び細胞内小器官の境界がはっきり区別されているバクテリア以外の細胞が好ましい。より好ましくは、CHO−k1(ATCC CCL-61, Cricetulus griseus, チャイニーズハムスター(hamster, Chinese))、HEK293(ATCC CRL-1573, Homo sapiens, ヒト(human))、HeLa(ATCC CCL-2, Homo sapiens, ヒト(human))、SH−SY5Y(ATCC CRL-2266, Homo sapiens, ヒト(human))Swiss 3T3(ATCC CCL-92, Mus musculus, マウス(mouse))、3T3−L1(ATCC CL-173, Mus musculus, マウス(mouse))、NIH/3T3(ATCC CRL-1658, Mus musculus, マウス(mouse))、L−929(ATCC CCL-1, Mus musculus, マウス(mouse))、Rat2(ATCC CRL-1764, Rattus norvegicus, ラット(rat))、RBL−2H3(ATCC CRL-2256, Rattus norvegicus, ラット(rat))、MDCK(ATCC CCL-34, Canis familiaris)の場合もあり得る。さらに、その他に各種幹細胞、各種組織から抽出された細胞及び人為的に作られた細胞膜構造の模倣細胞でもよい。
【0043】
さらに、本発明は本発明の第1の構成物及び第2の構成物を含む細胞を含む相互作用検出用キットを提供する。
【0044】
本発明のキットとしては、前記第1の構成物及び第2の構成物を含む細胞以外に、標識物質の検出に使用される当業界に公知の道具及び/または試薬を含む。本発明のキットは、必要に応じて各成分等の混合に使用されるチューブ、ウェルプレート、使用方法を記載した取扱説明書等をさらに含め得る。
【0045】
前記方法等で利用できる実験手順、試薬及び反応条件は従来当業界で通常的に知られていることを利用することができ、これは当業者に明らかなことである。
【0046】
本発明で第1の構成物及び第2の構成物を含む細胞は、当業界に公知の分子生物学的方法により製造できる。これに制限はされないものの、発現ベクターによって第1の構成物及び第2の構成物が発現されるように、第1の構成物及び第2の構成物をそれぞれ発現し得る発現ベクター、または第1の構成物及び第2の構成物の両方を発現できる発現ベクターを細胞に導入する。このため、第1の構成物の場合、プロモータ(第1のプロモータ)及びこれと作動可能に連結されたベイト、第1の標識物質及び移動モジュールをコードするヌクレオチドを含む発現ベクターを作製し、第2の構成物の場合、プロモータ(第2のプロモータ)及びこれと作動可能に連結されたプレイ及び第2の標識物質をコードするヌクレオチドを含む発現ベクターを作製し、発現ベクターで第1の構成物及び第2の構成物が発現されるように、これを同時にまたは順次的に1つの細胞に導入する。この際、ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールをコードするヌクレオチドで本発明の効果に伴う機能を発揮する限り、ベイト、第1の標識物質及び移動物質の順序は重要ではない。これはプレイ及び第2の標識物質をコードするヌクレオチドにおいても同様である。
【0047】
前記“プロモータ”とは、特定の宿主細胞で作動可能に連結された核酸配列の発現を調節するDNA配列を意味し、“作動可能に連結される(operably linked)”とは、1つの核酸断片が他の核酸断片と結合され、その機能または発現が異なる核酸断片により、影響を受けることをいう。さらに、前記プロモータは、転写を調節するための任意のオペレータ配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含む。前記プロモータは、常時的に目的遺伝子の発現を構成的に誘導する構成的プロモータ(constitutive promoter)または特定した位置及び時期に目的遺伝子の発現を誘導する誘導的プロモータ(inducible promoter)を使用することができ、その例にはSV40プロモータ、CMVプロモータ、CAGプロモータ(Hitoshi Niwa et al., Gene, 108: 193-199, 1991; Monahan et al., Gene Therapy, 724-30, 2000)、CaMV 35Sプロモータ(Odell et al., Nature 313: 810-812, 1985)、Rsyn7プロモータ(米国特許出願第08/991,601号)、ライスアクチン(rice actin)プロモータ(McElroy et al., Plant Cell 2: 163-171, 1990)、ユビキチンプロモータ(Christensen et al., Plant Mol. Biol. 12: 619-632, 1989)、ALSプロモータ(米国特許出願第08/409,297号)等がある。この他にも米国特許第5,608,149号、第5,608,144号、第5,604,121号、第5,569,597号、第5,466,785号、第5,399,680号、第5,268,463号及び第5,608,142号等に開示されたプロモータを全て使用できる。
【0048】
細胞へのそれぞれの発現ベクターの誘導は、当業界に公知のトランスフェクション(transfection)の方法、例えば、リン酸カルシウム法、塩化カルシウム法、塩化ルビジウム法、微細射出法(microprojectile bombardment)、エレクトロポレーション(electroporation)、粒子銃衝撃(particle gun bombardment)、シリコン炭化物ウィスカー(Silicon carbide whiskers)、超音波処理(sonication)、PEG−媒介融合法(PEG-mediated fusion)、微細注入法(microinjection)、リポソーム媒介法(liposome-mediated method)、磁性ナノ粒子媒介法(magnetic nanoparticle-mediated method)等により実施し得る。
【0049】
一方、本発明で使用される一般的な組み換えDNA及び分子クローニング技術は、当該分野に広く公知されており、下記の文献に記載されている(Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory: Cold Spring Harbor、NY(1989); by Silhavy, T. J., Bennan, M. L. and Enquist, L. W., Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor、Laboratory: Cold Spring Harbor、NY(1984);and by Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, published by Green Publishing Assoc. and Wiley-lnterscience(1987))。
【0050】
以下、本発明の具体例について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の基本構成物及び分析指標を示す。
1)第1の構成物は、移動モジュール、第1の標識物質及びベイトを含み、第1の構成物には1つ、または複数のベイトを含み得る。
2)第2の構成物は、第2の標識物質及びプレイを含み、第2の構成物には1つ、または複数のプレイを含み得る。
3)信号(Signal S)は、移動モジュールの移動を誘導する外部刺激(移動モジュールの位置変化を誘導する成長因子(growth factor)、血清因子(serum factor)、PMA(TPA)等)、内在的な刺激物質(DAG,diacyl-glycerol)、外部または内在的なATP及びカルシウムの濃度変化を含む。
4)相互作用分析指標は、ベイト及びプレイの内因的または外因的特性による第1の構成物と第2の構成物の細胞内の分布位置、分布位置の変化、各構成物等の細胞内移動特性、及び1つまたは複数の第1、第2の構成物による結合体同定を含む。
【0051】
図2は、本発明における結合及び非結合の基本概念図を示す。細胞内に発現されたベイトとプレイの分布は全て細胞質または核質に不規則に分布し、移動信号に反応して、第1の構成物は移動モジュールにより、細胞膜に移動し(ベイト,赤色)、この際、ベイトと結合されたプレイも細胞膜に移動する(A;プレイ,緑色)。これとは別にベイトと結合しないプレイは、もとの分布が変わらない(B;プレイ,緑色)。従って、前記のような概念により、プレイの細胞膜への移動はベイトとプレイの結合を反映することがわかる。
【0052】
図3は、本発明の結合及び非結合分析模式図を示す。例えば、第1の構成物と第2の構成物がそれぞれコードされたプラスミドベクター(plasmid vector)を同時に同一の細胞内に導入する場合、細胞内では2つの構成物が過剰発現され(A参照)、ベイトとプレイの内在的な結合特性により、結合がなされるものの、この状態では図2の通り、2種の蛍光標識が混在されていて結合可否を確認することができない(B参照)。ベイトとプレイの結合が発生したか否かを確認するために、外部刺激(1μM PMA)を加えることにより、移動モジュールが含まれた第1の構成物が細胞膜に移動するようになり、この際、ベイトと結合されたプレイも細胞膜に移動する(C参照)。従って、2種の標識蛍光の移動可否は結合の発生可否を判断する根拠に利用される。この際、第1の構成物及び第2の構成物全てにプレイを付着し、これを追跡することにより、第1の構成物または第2の構成物のどちらか一方にのみ標識物質を付着させるより、実験の正確性を高めることができる。つまり、第1の構成物にのみ標識物質を付着させる場合は、プレイがベイトに結合したか否かを確認することができず、第2の構成物にのみ標識物質を付着する場合は、プレイが外部刺激または内在的な変化により移動性を有する場合、ベイトとプレイが結合して移動したか否かを確認できないからである。
【0053】
図4は、本発明で第1の構成物(A)及び第2の構成物(B)の構成の1例を示した。(A)第1の構成物は基本的に、移動モジュール(TMD、TMA、TMB)、赤色蛍光蛋白質(mR;mRFP)または緑色蛍光蛋白質(EGFP)等の蛍光蛋白質、及びベイト(bait)のマルチクローニング遺伝子配列(Bait)を含む。ベイトまたはプレイの細胞内位置を変化させる必要がある場合、核局在化シグナル(NLS)または核外搬出シグナル(NES)を追加して含め得る。(B)第2の構成物はプレイの移動を確認するための蛍光蛋白質(第1の構成物と区別可能な全ての蛍光蛋白質)とプレイ(prey)のマルチクローニング遺伝子配列(Prey)を含み、蛍光蛋白質としてはEGFP、mRFP、AzG、HcR等を使用し、目的と使用する分析装備(顕微鏡等)により今まで知られた蛍光蛋白質等を利用して区分が可能な多様な組合わせを構成することができる。
【0054】
図5は、第1の構成物ベクター及び第2の構成物ベクターの外部刺激による分布変化を示したものである。ベイトがクローニングされていない(つまり、ベイトを含まない)基本第1の構成物(TMD−EGFP−Bait(A、左側パネル)、(TMD−mRFP−Bait(A、右側パネル)とプレイを含まない基本第2の構成物(EGFP−Prey(B、左側パネル)、mRFP−Prey(B、右側パネル)をCHO−k1細胞株に過剰発現させた後、外部刺激(1μM PMA)による構成物の分布位置を確認した。EGFPまたはmRFPで蛍光標識された第1の構成物は外部刺激により、細胞膜に移動されたものの(A参照)、移動モジュールを含まない第2の構成物は外部刺激により蛍光の分布が変化しなかった(B参照)。従って、第2の構成物の分布変化は他の要因(第1の構成物)により起こる受動的な現象であることがわかる。
【0055】
図6は、PMA濃度別第1の構成物(TMD−mRFP)の分布変化を示したものである。移動モジュールの移動特性を最適化するために、外部刺激として使用されたPMA(Phorbol 12-myristate 13-acetate)の最適濃度を決定するために、図5で使用された第1の構成物ベクター(pTMD−mRFP−C3)を使用した。詳細な実験方法は、図5と同様に行い、PMAの濃度を1nMから5μMまでそれぞれ処理した後、無作為に選定された蛍光を示す細胞を対象に赤色蛍光が細胞膜に移動された細胞の数を比較した。図に示された通り、IC50は35nMで測定され、50nMで90%以上の移動現象が観察され、100nM以上で処理した場合、細胞膜に移動された赤色蛍光の信号が増加する様相を示した。従って、本発明の実施例は全て大部分の細胞が反応し、移動量が十分な濃度である1μMを使用して進行した。
【0056】
図7は、第1の構成物(TMD−mRFP(右側パネル)及びTMA−mRFP(左側パネル)、TMB−mRFP(中央パネル))の移動効率を比較したものである。第1の構成物のための最適の移動モジュールを決定するために、図5で使用された第1の構成物ベクター(pTMD−mRFP−C3)とTMDの断片で構成されたpTMA−mRFP−C3(mRFP−C3ベクターに移動モジュールであるTMAを挿入したベクター、実施例2参照)及びpTMB−mRFP−C3ベクター(mRFP−C3ベクターに移動モジュールであるTMBを挿入したベクター、実施例2参照)等間の移動効率を検査した。詳細な実験方法は図5と同様に行い、3種の構成物全て外部刺激により分布位置が変換され(A参照)、分布位置が変換された細胞の数は統計学的な差がなかった。しかしながら、細胞膜に移動した蛍光の強度を測定した結果(A及びBの白色線参照)、移動モジュールTMAとTMBの細胞膜蛍光度は類似したものの、TMDの場合、細胞質(Cで表示)と細胞膜(Mで表示)部位の蛍光度の差が相対的にはっきりするばかりでなく、細胞膜部位の蛍光密度がTMAとTMBに比べて高く表れた。従って、本発明の実施例は全て移動特性及び移動効率が高いTMDを使用して進行した。
【0057】
図8は、本発明構成物の分析効率を強化するために、第1の構成物の発現部位を細胞質に限定させるNES配列の有効性を検証した結果を示すものである。NES配列の効果を確認するために、NES配列が含まれた第1の構成物(TMD−mRFP−Bait−NES)の基本ベクター(pTMD−mRFP−C3−NESベクター)を作製し、第2の構成物(EGFP−Prey−NES)基本ベクター(pEGFP−C3−NESベクター)と共に、HEK−293細胞株に過剰発現させた。NES配列を含む第1の構成物は、細胞全体に均一に分布する第2の構成物とは別に、細胞質でのみ主に観察され(A参照)、PMAで3分間処理した結果、細胞質に均一に分布していた第1の構成物は細胞膜に移動したものの、NES配列を含まない第2の構成物は位置の変化を示さなかった(B参照,左側パネル:第1の構成物,中央パネル:第2の構成物,右側パネル:融合(Merge)写真)
【0058】
図9は、本発明物の分析効率を強化するために、第1の構成物の発現部位を核質に限定させるNLS配列有効性を検証した結果を示すものである。NLS配列の効果を確認するために、TMD−mRFP−Bait−NLS(pTMD−mRFP−C3−NLSベクター)及びEGFP−Prey−NLS(pEGFP−C3−NLSベクター)基本ベクターを作製し、HEK−293細胞株に過剰発現させた。NLS配列を含む第1の構成物と第2の構成物は核質において主に観察され(A参照)、PMAで3分間処理した結果、核質に均一に分布していた第1の構成物及び第2の構成物は全て第1の構成物は核膜に移動したものの、移動モジュールがない第2の構成物は位置の変化を示さなかった(B参照,左側パネル:第1の構成物,中央パネル:第2の構成物,右側パネル:融合写真)
【0059】
図10は、p53蛋白質とSV40T蛋白質の結合を本発明の方法によって分析した結果を示すものである。ベイト(p53蛋白質)とプレイ(SV40T蛋白質)の結合を検証するために、TMD−mRFP−p53(第1の構成物)とEGFP−SV40T(第2の構成物)を作製してCHO−k1細胞株に過剰発現させた。PMAで3分間処理した結果、細胞内に均一に分布していた2つの蛋白質等(A)は、細胞膜に移動(B)した(赤色蛍光:移動モジュール及びp53蛋白質,緑色蛍光:SV40T蛋白質)。従って、これら2種の蛋白質が細胞内で結合状態を維持していることを確認することができた(左側パネル:第1の構成物,中央パネル:第2の構成物,右側パネル:融合写真)。
【0060】
図11は、リシル−tRNA合成酵素(Lysyl-tRNA synthetase,KRS)とJTV1(p38)、グリコサミノグリカン(Gag)及びラミニン受容体(Laminin receptor,LR)間の結合を分析した結果を示すものである。KRS蛋白質と結合することと予測されるp38、Gag及びLRの結合を確認するために、KRSを第2の構成物に、p38、Gag及びLRを第1の構成物に含め、HEK−293細胞株に過剰発現させた後、PMA処理前と後の細胞内の各蛍光の分布を分析した。(A)TMD−mRFP−p38とAzG−KRSの場合、外部刺激に反応して全て細胞膜に強く移動し、TMD−mRFP−Gag(B)とTMD−mRFP−LR(C)の場合、標識された緑色蛍光の移動が観察されなかった。従って、KRSは、3種の蛋白質のうち、p38と結合することが確認できた(左側パネル:第1の構成物,中央パネル:第2の構成物,右側パネル:融合写真)。
【0061】
図12は、共焦点レーザー蛍光顕微鏡を利用してRelAとIkBの結合を実時間で分析した結果を示すものである。細胞内で複合体を形成するとされるRelAとIkBを、それぞれTMD−mRFP−RelA、EGFP−IkBの形態に作製して、CHO−k1細胞株に過剰発現させた後、共焦点レーザー蛍光顕微鏡を利用して10秒間隔で動映像を撮影した。PMAを処理する前(0min)には2つの蛋白質による各蛍光が全て細胞質に均一に分布しているものの、PMAを処理した後、約10秒〜1分が経過する時点から蛍光顕微鏡を利用して2つの蛍光の細胞膜への移動を観察することができた。従って、生細胞における2つの蛋白質の細胞内結合を実時間で分析が可能であることを確認することにより、移動刺激の他多様な刺激を介した細胞信号伝達機構研究にも有用な方法を提供できることを確認できた(左側パネル:第1の構成物,中央パネル:第2の構成物,右側パネル:融合写真)。
【0062】
図13は、3種の蛋白質複合体の結合を分析したものである。図12の2種の蛋白質(RelA及びIkB)は細胞内でp50という蛋白質と共に、NFkB−IkB複合体をなすものとして知られている。本実験では複数個の蛋白質結合を分析できるか否かを検証するために、p50蛋白質とさらに他の蛍光蛋白質であるHcRed(HcR)を結合させ、第2の構成物HcR−p50を作製した。3種の構成物をHEK−293細胞株に過剰発現させ、共焦点レーザー蛍光顕微鏡を利用して結合を観察した。3種の蛋白質による各蛍光信号(赤色、緑色及び青色)は全てPMAを処理する前には細胞質及び核質に均一に分布していたものの(A)、PMAを処理した後(B)には、全て細胞膜に移動し、分布の変化を観察することができた。この結果は、本発明の構成物を利用して、少なくとも3個以上の複数個の蛋白質で構成された複合体を、同時に分析し得ることを意味するものである(左側1番目パネル:第1の構成物(TMD−mRFP−RelA),左側2番目パネル:第2の構成物1(EGFP−IkB),左側3番目パネル:第2の構成物2(HcR−p50),右側パネル:融合写真)。
【0063】
図14は、酵母ツーハイブリッド法(Y2H)によりスクリーニングされた陽性結合候補を検証した結果を示す。蛋白質間相互作用のスクリーニング方法として一般的である酵母ツーハイブリッド法に用いて、蛋白質結合候補を再検証するために、ベイトとしてOmpA蛋白質を含む第1の構成物(TMD−mRFP−OmpA)と、プレイ候補物質としてEEF1A、FAM14B、及びDDX31を含む第2の構成物(EGFP−EEF1A、EGFP−FAM14B、及びEGFP−DDX31)を作製した。ベイトとそれぞれのプレイ候補物質の組合わせをHEK−293細胞株に過剰発現させ、共焦点レーザー蛍光顕微鏡を利用して結合を観察した。PMA処理前には細胞内に均一に発現されていた蛍光はPMA処理により、移動モジュールが含まれたOmpA蛋白質は全て細胞膜に移動し(赤色)、これと結合すると予測されるプレイ候補物質を示す緑色蛍光のうち、EEF1A(A)とFAM14B(B)は、細胞質にそのまま残っていたものの、DDX31(C)は細胞膜に移動した。従って、酵母ツーハイブリッド法によって、3種の結合候補物質のうち、1つだけが結合することを確認することができ、この結果は酵母ツーハイブリッド法の偽陽性問題を解決できる技術として使用できることを示すものである(左側パネル:第1の構成物,中央パネル:第2の構成物,右側パネル:融合写真)。
【0064】
図15は、p53蛋白質とmdm2蛋白質の結合及び抗癌剤ヌトリン3(nutlin 3)による結合阻害を分析した結果を示すものである。本発明の新薬開発における有効性を検証するために、抗癌剤の結合阻害実験を行った。このために、p53蛋白質を含む第1の構成物(TMD−mRFP−p53N)と、mdm2蛋白質を含む第2の構成物(AzG−mdm2N)を作製し、これらの構成物をHEK−293細胞株に過剰発現させ、共焦点レーザー蛍光顕微鏡を利用して結合を観察した。まず、p53Nとmdm2Nの結合可否を検証するために、ヌトリン3で処理していない細胞を対象に、PMAの処理前と処理後とを比較した(A)。その結果、PMA処理前には、細胞質に均一に分布していた2つの蛋白質が、PMA処理により細胞膜に移動した。これによって2つの蛋白質が結合していることを確認した。次に、抗癌剤ヌトリン3の結合阻害効果を検証するために、20nMヌトリン3を培養液に添加して20分間培養した後、PMA処理前と処理後の蛍光分布を実時間で観察した(B)。ヌトリン3で前処理した細胞の場合、移動モジュールとp53Nで構成された第1の構成物(赤色)は細胞膜に移動したものの、移動モジュールが含まないmdm2Nと蛍光蛋白質だけで構成された第2の構成物(緑色)は細胞膜への蛍光移動が観察されなかった。従って、本発明は、抗癌剤であるヌトリン3によりp53とmdm2の結合が阻害されることを確認することができ、蛋白質またはペプチドの結合阻害のスクリーニングに有効であることが示された(左側パネル:第1の構成物,中央パネル:第2の構成物,右側パネル:融合写真)。
【0065】
図16は、抗癌剤ヌトリン3の結合阻害濃度を分析した結果を示すものである。図15において結合阻害が確認された抗癌剤ヌトリン3の最適処理濃度を分析するために、濃度別結合阻害効果を分析した。ヌトリン3は0、0.5、1、5、10、25、50、100、200nMに調製した。ヌトリン3の濃度に伴う結合阻害効果は5nMからはっきり表れ始め、10nMでは50%以上の細胞において、2つの蛋白質の結合が阻害され、25nMでは90%以上の細胞で結合が観察されなかった。この結果は、500nMより極めて少ない濃度においても抗癌剤のような結合阻害剤の結合阻害効果を正確に検出することができることを示す。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
ただし、下記実施例は本発明を例示するのみであって、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1:動物細胞株及び形質転換
<1−1>動物細胞株及びその培養
CHO−k1(ATCC CCL-61, Cricetulus griseus, チャイニーズハムスター(hamster, Chinese))、HEK293(ATCC CRL-1573, Homo sapiens, ヒト(human))、HeLa(ATCC CCL-2, Homo sapiens, ヒト(human))、及びSH−SY5Y(ATCC CCL-2266, Homo sapiens, ヒト(human))細胞株を使用し、これらの動物細胞株の培養条件は、ATCC(American Type Culture Collection)社の細胞株培養方法(indtruction)に従った。ただし、CHO−k1細胞はFー12培養液を使用し、HEK293、HeLa、及びSH−SY5Y細胞はDMEM培養液を使用し、その他の培養条件は同様である。各細胞の培養方法は下記の通りである(当業者の目的により細部的な培養条件は異なり得る。)。25mM HEPES、10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum,FBS,v/v)、100units/mlペニシリン(penicillin)、及び100μg/mlストレプトマイシン(streptomycin)を含むpH7.4の培養液(F−12及びDMEM)内で各細胞株を、37℃、5%CO2が維持される培養器で培養した。
【0068】
<1−2>細胞株の形質転換
本発明の実施例で使用された細胞内遺伝子導入方法は、一般的に使用されるリポソームを用いた方法(liposome-based techniques)の1つであるExGene 500(Fermentas Life Science)を使用し、遺伝子の濃度等遺伝子導入のための全ての条件は製造社の指針により行った。より具体的に、継代培養されている細胞をカバースリップが入っている12−ウェルプレートに移して分株を行い、1日培養した後、0.9mlの新しい培養液に交換した。約1μg程度の形質転換試料を0.1mlの150mM NaCl溶液に添加し、十分に撹拌した後、3.3μlのExGene試薬を添加して15秒間ボルテックス(vortex)して混合した。この溶液を常温で10分間放置した後、細胞が成長しているカバースリップが入っている12−ウェルプレートの各ウェル(well)に添加して18時間培養することによって、細胞は形質転換された。
【0069】
実施例2:第1の構成物及び第2の構成物のデザイン及び作製
<2−1>第1の構成物の設計及び作製
本発明で第1の構成物とは、細胞質において均一に発現されている蛋白質を細胞膜に移動させる移動モジュール、顕微鏡を利用した分析を可能にする蛍光蛋白質、及びベイトを結合させてできる融合配列で構成される。
【0070】
第1の構成物(図4のA参照)を発現するベクターは、以下のように作製した。移動モジュールは、下記のような鋳型(template)とプライマーを使用してPCRを行って作製し、これをpEGFP−C3ベクター(GenBank accession No. U57607; Clontech catalog No. #6082-1,配列番号21)と、pmRFP−C3ベクター(mRFP;GenBank accession No. DQ903889,配列番号22)のNheI/AgeI位置に挿入して作製した。
【0071】
TMD移動モジュールは、鋳型としてpCMV−SPORT6−PRKCDベクター(GenBank accession No. BC043350;オープンバイオシステム(Openbiosystem,http://www.openbiosystems.com/)より入手;Catalog No.EHS1001-410108-BC043350)を使用し、プライマーとして配列番号23(PRKCD−F;5’−GAAGCTAGCCGCCACCATGGCGCCGTTCCTGC−3’)及び配列番号24(PRKCD−R;5’−GAAACCGGTGGATCTTCCAGGAGGTGCTCGAATTTGG−3’)を使用してPCRを行い作製した。さらに、TMA移動モジュールは、鋳型としてpCMV−SPORT6−PRKCDベクターを使用し、プライマーとして配列番号25(TMA−F;5’−GAAGCTAGCCGCCACCATGAAACAGGCCAAAATCCACTACATC−3’)及び配列番号26(TMA−R;5’−GAAACCGGTGGAGTGTCCCGGCTGTTGGCCGC−3’)を使用してPCRを行い作製した。TMB移動モジュールは、鋳型としてpCMV−SPORT6−PRKCDベクターを使用し、プライマーとして配列番号27(TMB−F;5’−GCAGCTAGCCGCCACCATGCAGAAAGAACGCTTCAACATCG−3’)及び配列番号28(TMB−R;5’−GCAACCGGTGGGGCCTCAGCCAAAAGCTTCTG−3’)を使用してPCRを行い作製した。
【0072】
<2−2>突然変異を含む第1の構成物の設計及び作製
第1の構成物に含まれた移動モジュールは、プロテインキナーゼより誘導されることから、本質的にリン酸化機能を有しており、このようなリン酸化機能は移動モジュールの役割ばかりでなく、内在的なリン酸化機能を介して構成物が過剰発現された細胞の信号伝達機構と、蛋白質相互作用を阻害または干渉させる可能性を有している。従って、本発明では移動モジュールが有するリン酸化機能を除去するために突然変異を誘導した。本発明に使用されたキナーゼは、リン酸化機能において極めて重要な部位として知られる311番目のアミノ酸(チロシン,tyrosine)をフェニルアラニン(phenylalanine)に(Y313F)、378番目のアミノ酸(リジン,lysine)をアルギニン(arginine)にそれぞれ置換するために、PCRによる突然変異誘導方法を使用して、最終的にTMD移動モジュールを作製した。
【0073】
このため、1番目のPCR条件で、正方向プライマー(PKCD−F;5’−GAAGCTAGCCGCCACCATGGCGCCGTTCCTGC−3’,配列番号29)と変形された(modified)逆方向プライマー(Y313F−R;5’−GAAACCCTGAATATCCCAAC−3’、配列番号30)を利用して遺伝子を増幅し、2番目のPCR条件で、変形された正方向プライマー(Y313F−F;5’−GTTGGGATATTCAGGGTTTC−3’、配列番号31)と逆方向プライマー(PKCD−R;5’−GAAACCGGTGGATCTTCCAGGAGGTGCTCGAATTTGG−3’、配列番号32)を利用して遺伝子を増幅した。1番目と2番目のPCRから得た遺伝子増幅物を鋳型にして、正方向と逆方向プライマーを利用して3番目のPCR増幅を実施した。ここで得られる遺伝子は、塩基配列TATがTTTに置換されたY313F突然変異となり、これを鋳型にして、AAGがAGGに置換されたK378R突然変異を作製した。この際、正方向プライマー(配列番号29)、逆方向プライマー(配列番号32)、変形された正方向プライマー(K378R−F;5’−TTTGCCATCAGGCCCTCAAG−3’,配列番号33)及び変形された逆方向プライマー(K378R−R;5’−(CTTGAGGGCCTGATGGCAAA−3’,配列番号34)を使用した。
【0074】
<2−3>第1の構成物へのNLS及びNESの付着
生体内に存在する蛋白質は固有の分布特性(標的(targeting))を有していて、ベイトとプレイは細胞内小器官に標的位置を有する。この場合、第1の構成物と第2の構成物の位置移動を感知し難いこともある。従って、ベイトとプレイの結合を実験で確認するためには、実験が可能な細胞質または核質で分布位置を制御する必要があり、このため、蛋白質を細胞質に分布位置を誘導するための核外搬出シグナル(nuclear exclusion signal,NES)と核質に分布位置を誘導するための核局在化シグナル(nuclear localization signal,NLS)を使用して、ベイトとプレイの細胞内分布位置を制御できるベクターを作製した。
【0075】
さらに、これら位置制御用ベクターは、ベイトとプレイの結合が細胞質で起こるのかまたは核質で起こるのかを認識できる機能を同時に有する。つまり、ベイトとプレイが細胞質で結合した後、細胞質に移動する特性を有する場合、NESがそれぞれ含まれた第1の構成物と第2の構成物の組合わせでは、第2の構成物が第1の構成物と結合して、PMA処理により細胞膜に移動し得るものの、NLSがそれぞれ含まれた構成物等の組合わせでは第1の構成物のみが核膜に移動され、第2の構成物の移動は起こらない。反対に、ベイトとプレイが核質でのみ結合が起こる特性を有する場合、NLSが含まれた構成物の組合わせでは、PMA処理により各構成物等が全て核膜に移動されるものの、NESを含む構成物の組合わせにおいては、第1の構成物は細胞膜への位置移動が誘導されるものの、第2の構成物は位置移動が起こらないようになる。
【0076】
NLSを有する第1の構成物と第2の構成物は、下記のプライマーを使用して、一般的なPCRクローニング方法を連続的に行って作製した。1次PCRは、鋳型としてpmRFP−C3ベクターを使用し、プライマーとして配列番号35(NLS−F−1:5’−AGTAAAAAGGAAAAGGATAAATAGATAACTGATCATAATCAGCC−3’)及び配列番号36(NLS−R:5’−GCTGCAATAAACAAGTTAACAAC−3’)を使用して行った。2次PCRは、得られたPCR増幅物を再度鋳型として使用し、プライマーとして配列番号37(NLS−F−2:5’−TGGAAGAAGTAGCTAAGAAGAAGAGTAAAAAGGAAAAGGATAAA−3’)及び配列番号36(NLS−R)を使用して行った。同一の方法で、配列番号38(NLS−F−3:5’−TCCGGTGATGAAGTCGAAGGAGTGGAAGAAGTAGCTAAGAAGAA−3’)及び配列番号36(NLS−R)のプライマーで3次PCRを、さらに、配列番号39(NLS−F−4:5’−GCTGGATCCAGGCTCTGGTGATGAAGTCGAAGG−3’)及び配列番号36(NLS−R)で4次PCRを行って得られた最終遺伝子断片を、第1の構成物ベクターまたは第2の構成物ベクターのBamHI/HpaI位置に挿入して作製した。
【0077】
NESを有する第1の構成物と第2の構成物は、下記のプライマーを使用して、NLSの作製と同一の方法で作製した。1次PCRは、鋳型としてpmRFP−C3ベクターを使用し、プライマーとして配列番号40(NES−F−1:5’−GTGGGAAACATTTCCCTGGTGTAGATAACTGATCATAATCAGCC−3’)及び配列番号41(NES−R:5’−GCTGCAATAAACAAGTTAACAAC−3’)を使用して行った。2次PCRは、得られたPCR増幅物を再度鋳型として使用し、プライマーとして配列番号42(NES−F−2:5’−GTCATCATCAAGCTGAACGCCCATGTGGGAAACATTTCCCTGGT−3’)及び配列番号41(NES−R)を使用して行い、同一の方法により配列番号43(NES−F−3:5’−GTCGGATCCAGACCAGCGCGTCATCATCAAGCTGAACGCC−3’)及び配列番号41(NES−R)のプライマーを利用して3次PCRを行って得られた最終遺伝子断片を第1の構成物ベクターまたは第2の構成物ベクターのBamHI/HpaI位置に挿入して作製した。
【0078】
<2−4>第2の構成物の設計及び作製
第2の構成物は、第1の構成物のベイトと結合する内在的な特性を有するプレイの移動を分析するための標識物質を含む。第2の構成物は第1の構成物に使用された標識物質とは異なる蛍光、すなわち緑色蛍光蛋白質(EGFP,AzG)、赤色蛍光蛋白質(mRFP)、及び赤外線蛍光蛋白質(HcR)を使用して第1の構成物と同一の方法で作製した。第2の標識物質として、EGFPを使用するときは、pEGFP−C3ベクター(Clontech)を使用し、mRFPを使用するときは、pmRFP−C3ベクターを使用し、AzGを使用するときは、pAzG−C3ベクターを使用し、HcRを使用するときは、pHcR−C3ベクターを使用し、各原本C3ベクターはpEGFP−C3ベクターのEGFP遺伝子配列部位を、各AzG、HcR遺伝子で下記の通り置換することにより作製された。
【0079】
pAzG−C3ベクターの場合、鋳型としてpPM−mAG1ベクター(MBLより入手,catalog No. AM-V0203; Karasawa. S., et al. 2003. J. Biol. Chem. 278, 34167-34171)を使用し、プライマーとして配列番号44(AzG−F:5’−GGCACCGGTCGCCACCATGGACCCCATGGTGAGTGTGAT−3’)及び配列番号45(AzG−R:5’−GGCAGATCTGACAGCTTGGCCTGACTCGGCAGCAT−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpEGFP−C3ベクターのEGFP塩基配列と置換してAgeI/NotI位置に挿入して作製した。
【0080】
pHcR−C3ベクターの場合、鋳型としてpHcRed−Tandem−N1(Avrogenより入手, catalog No. FP204; Gurskaya et al., 2001, FEBS Lett. 507, 16-20)を使用し、プライマーとして配列番号46(HcR−F:5’−GCCACCGGTCGCCACCATGGTGAG−3’)及び配列番号47(HcR−R:5’−GCCGCGGCCGCTTATCAGTTGGCCTTCTCGGGCAGGTC−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpEGFP−C3ベクターのEGFP塩基配列と置換してAgeI/NotI位置に挿入して作製した。
【0081】
実施例3:第1の構成物及び第2の構成物の移動特性の確認
<3−1>構成物の発現確認及び移動特性分析
第1の構成物及び第2の構成物ベクターが導入された細胞が成長しているカバースリップ(cover slip)を流体器(perfusion chamber)に固定し、共焦点レーザー蛍光顕微鏡(カルザイスLSM510)の載物台に装着し、外部刺激前と外部刺激(1μM PMA(Phorbolester)処理)後の構成物ベクターに対する映像を撮影した。
【0082】
共焦点レーザー蛍光顕微鏡のレーザーは、488nmのArgonレーザー(EGFPまたはAzG)、543nmのHeNeレーザー(mRFP)及び561nmのDPSSレーザー(HcR)を使用して蛍光標識を励起(excitation)させ、各蛍光標識で発生する蛍光信号は、バンドパス(band path)フィルターBP505−530(EGFPまたはAzG)、ロングパス(Long path)フィルターLP560またはBP560−630(mRFP)及びロングパス(Long path)フィルターLP650(HcR)を使用し、各蛍光等間の干渉を完全に除去した後、映像を撮影した。
【0083】
その結果、図5に示した通り、外部刺激後、移動モジュール(TDM)が含まれた第1の構成物ベクターによる緑色または赤色蛍光は、細胞膜に移動されるものの(図5A参照)、移動モジュールを含まない第2の構成物ベクターによる緑色または赤色蛍光は、刺激前と同一に細胞質に均一に分布していることを確認することができた(図5B参照)。従って、第2の構成物ベクターは外部刺激に反応せず、第2の構成物の細胞膜への移動は、必ずベイトとプレイの結合を前提とすることが分かった。
【0084】
<3−2>第1の構成物の移動と外部刺激物質の最適濃度の確認
第1の構成物のうち、pTMD−mRFP−C3ベクターを利用した、外部刺激物質であるPMA(Phorbol ester)の濃度に伴う移動効率を測定するために、CHO−k1細胞に第1の構成物の発現ベクターを形質転換させ、過剰発現させた後、18時間培養して、1、5、10、20、40、50、80、100nM、1、5μMのPMAで処理した。5分間PMAを処理した後、3.8%ホルムアルデヒド(formaldehyde)で細胞を固定して、共焦点顕微鏡(Confocal microscope, Carl Zeiss LSM 510)を介して、赤色蛍光が発現された200個の細胞を無作為で選定し、濃度別赤色蛍光の細胞膜分布細胞の数を測定した。
【0085】
その結果、図6に示した通り、50nMで90%以上の細胞において、移動現象が観察され、100nM以上で処理した場合、細胞膜に移動した赤色蛍光の信号が増加する様相を示した。従って、50nM〜5μMの濃度で処理するのが好ましいものの、大部分の細胞が反応し、移動量が十分な濃度である1μMで処理することが効果的であることが分かった。
【0086】
実施例4:第1の構成物及び第2の構成物を利用した細胞内結合の実時間分析
<4−1>p53蛋白質とSV40T抗原の細胞内結合分析
潜在的発癌性遺伝子として知られているp53と、これに結合するものとして知られているSV40T抗原間の結合について、現在IPを利用した結合同定システムとして商用化されたものがある。ここに本発明の基本的な結合検出機能を検証するために、同一の蛋白質等を対象に分析を実施した。p53とSV40T抗原に対する細胞内結合を検証するために、p53蛋白質が融合された第1の構成物(TMD−mRFP−p53)及びSV40T抗原が融合された第2の構成物を次のように製造した。
【0087】
第1の構成物TMD−mRFP−p53は、鋳型としてpGBK−p53−GAL4ベクター(p53;GenBank accession No. AF161020)を使用し、プライマーとして配列番号48(p53−F:5’−GAAGAATTCTGATGCCTGTCACCGAGACCCCTGGG−3’)及び配列番号49(p53−R:5’−GAAGGATCCCGTCAGTCTGAGTCAGGCCCCACTT−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpTMD−mRFP−C3ベクター(mRFP−Cベクターに移動モジュールであるTMD配列を挿入したベクター、実施例2参照)のEcoRI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0088】
第2の構成物EGFP−SV40Tは、鋳型としてpGADT7−SV40T−GAL4ベクター(SV40T;GenBank accession No. BC014270)を使用し、プライマーとして配列番号50(SV40T−F:5’−GAAGAATTCTGATGGGAACTGATGAATGGGAGCAG−3’)及び配列番号51(SV40T−R:5’−GAAGGATCCCGTTATGTTTCAGGTTCAGGGGG−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpEGFP−C3ベクターのEcoRI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0089】
前記第1の構成物(TMD−mRFP−p53)と、第2の構成物(EGFP−SV40T)を前記実施例<1−2>に記載した方法(ExGene 500)により、CHO−k1細胞に導入して発現させた。18時間の培養を経て、1μM PMAを5分間処理後、2つの構成物の蛍光分布を実施例<3−1>の通り観察した。
【0090】
その結果、図10に示した通り、移動モジュールが結合したベイトp53蛋白質による赤色蛍光(左側パネル)と、プレイであるSV40Tが結合した緑色蛍光(中央パネル)がPMA処理後に、細胞膜に移動することが分かった。一方、SV40Tが結合していない第2の構成物のみを発現させた対照群では、同一の実験で細胞膜への移動が見られなかったことから(結果は図示せず)、プレイSV40Tはベイトp53と細胞内で結合し、移動モジュールが結合したベイトの分布変化によってプレイの分布変化が発生したため、2つの蛋白質は細胞内で結合していることを確認できた。
【0091】
<4−2>KRS蛋白質とp38(AIMP2)蛋白質の細胞内結合の分析
多機能性疾病誘発遺伝子として知られている、リシル−tRNA シンセターゼ(Lysyl-tRNA synthetase,KRS)は、p38/AIMP2蛋白質及び少なくとも3個の異なるアミノアシル−tRNA シンセターゼ(Aminoacyl-tRNA synthetase,ARSs)と複合体をなしているものとして知られている(J. Cell Science. 2004, 117, 3725-3734参照)。従って、KRS蛋白質とp38蛋白質の細胞内結合の実時間分析の可能性、多様な動物細胞内での実験可能性、蛍光標識の多様性、及びベイトとプレイとの交換可能性を確認するために、KRSと結合するものとして知られているp38と、潜在的な結合蛋白質と予測されるGag及びLRを利用して細胞結合を分析した。
【0092】
このため、第1の構成物(TMD−mRFP−p38、TMD−mRFP−GagまたはTMD−mRFP−LR及び第2の構成物(AzG−KRS)を下記の通り作製した。この際、第2の構成物の蛍光は、EGFPの代わりにAzG(Azami Green)を適用した。
【0093】
第1の構成物TMD−mRFP−p38は、鋳型としてpGEX−4T1−p38ベクター(p38;GenBank accession No. NM 006303)を使用し、プライマーとして配列番号52(p38−F:5’−GTCCTCGAGATGCCGATGTACCAGGTAAAG−3’)及び配列番号53(p38−R:5’−GTCGGATCCTTAAAAAGGAGCCAGGTTTTC−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpTMD−mRFP−C3ベクターのXhoI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0094】
TMD−mRFP−Gagは、鋳型としてpGEX−4T1−Gagベクター(Gag;GenBank accession No. NM_002295)を使用し、プライマーとして配列番号54(Gag−F:5’−GTCGAATTCTGATGGGTGCGAGAGCGTCAGTA−3’)及び配列番号55(Gag−R:5’−GTCGGATCCTTATTGTGACGAGGGGTCGTT−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpTMD−mRFP−C3ベクターのXhoI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0095】
さらに、TMD−mRFP−LRは、鋳型としてpET28a−TEV−LRベクター(LR;GenBank accession No. NM 002295)を使用し、プライマーとして配列番号56(LR−F:5’−GTCGAATTCTGATGTCCGGAGCCCTTGATGT−3’)及び配列番号57(LR;R:5’−GTCGGATCCTTAAGACCAGTCAGTGGTTGCTC−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpTMD−mRFP−C3ベクターのXhoI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0096】
第2の構成物であるAzG−KRSの場合、鋳型としてpET28a(GenBank accession No. NM_005548)を使用し、プライマーとして配列番号58(KRS−F:5’−GTCGAATTCTGATGGCGGCCGTGCAGGCG−3’)及び配列番号59(KRS−R:5’−GTCCCCGGGCTAGACAGAAGTGCCAACTGTTGTG−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpAzG−C3ベクターのEcoRI/BamHII位置に挿入して作製した。
【0097】
前記にて製造した第1の構成物及び第2の構成物をHEK293細胞株に形質転換し、培養液としてDMEMを使用したことを除いては、前記実施例<4−1>の通りにして蛍光を確認した。
【0098】
その結果、図11に示した通り、第1の構成物に使用された3種の蛋白質の細胞膜移動現象は全て観察され(左側パネル)、KRSと結合するものとして知られているp38(図11A参照)の場合、KRSが結合した第2の構成物が細胞膜に移動したものの、この他の潜在的な結合蛋白質と予測されたGag(図11B参照)とLR(図11C参照)では、そのような移動現象が観察されなかった(中央パネル)。従って、KRS蛋白質はp38蛋白質とは結合するものの、GagまたはLR蛋白質とは結合しないことを確認することができ、EGFPの代わりにAzG蛍光蛋白質を使用したことに問題がないことを確認した。
【0099】
<4−3>RelA蛋白質と阻害蛋白質IkBの細胞内結合の実時間分析
TNF−alphaにより、調節されるNFkB及びIkB蛋白質の相互作用は、細胞内で多様な細胞信号伝達経路に関与するものと知られている。多様な経路において、特に注目されているのは、生体内で発生する各種の危害性信号に対応する炎症誘発と密接な関連性を有していることである。従って、NFkB複合体のうち、多機能性炎症関連遺伝子であるRelA蛋白質と阻害蛋白質であるIkBの結合可否を検証することと同時に外部刺激後、細胞固定技法でなく生細胞を利用した直接分析可能性を確認するために、実時間分析技法(time-laps)を利用して実験を実施した。
【0100】
このため、第1の構成物(TMD−mRFP−RelA)と第2の構成物(EGFP−IkB)を下記の通り作製した。
【0101】
第1の構成物TMD−mRFP−RelAは、鋳型としてpEYFP−RelAベクター(RelA;GenBank accession No. NM_021975)を使用し、プライマーとして配列番号60(RelA−F:5’−GGACTCGAGATGGACGAACTGTTCCCCCTC−3’)及び配列番号61(RelA−R:5’−GAAGGATCCCGTTAGGAGCTGATCTGACTCAGCAGG−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpTMD−mRFP−C3ベクターのXhoI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0102】
第2の構成物EGFP−IkBは、鋳型としてpcDNA3−IkBベクター(IkB;GenBank accession No. NM-020529)を使用し、プライマーとして配列番号62(IkB−F:5’−GAAGAATTCTGATGTTCCAGGCGGCCGAGCG−3’)及び配列番号63(IkB−R:5’−GAAGGATCCCGTCATAAACGTCAGACGCTGGCCTCCAA−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpEGFP−C3ベクターのEcoRI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0103】
前記にて作製した第1の構成物及び第2の構成物を、CHO−k1細胞株に形質転換し、これを前記実施例<4−1>に記載の通り、0分、1分、2分及び3分目に蛍光を観察した。
【0104】
その結果、図12に示した通り、第1の構成物(TMD−mRFP−RelA)は、0分目には細胞内に均一に分布していたが、時間が経つにつれて漸次的に細胞膜に移動し(左側パネル)、第2の構成物(EGFP−IkB)も0分目には細胞内に均一に分布するが、時間が経つにつれて、第1の構成物と共に細胞膜に移動することが分かった(中央パネル)。特に、各構成物はPMA処理後、約10秒から細胞膜に移動する現象が観察され始めて(結果は図示せず)、大部分の細胞において3分以内に移動が完了した。このような移動現象は前述及び後述の全実施例においても同様の結果が観察された(結果は図示せず)。
【0105】
<4−4>多機能性炎症関連遺伝子NFkB複合体(RelA/p50/IkB)細胞内結合分析
NFkB複合体は、基本的にNFkB(RelA/p50)と陰性調節因子であるIkB蛋白質が複合体を成すものとして知られている。本実験ではこの複合体を構成するRelA、p50、及びIkBの3種の蛋白質の結合を同定できるかを検証した。
【0106】
このため、第1の構成物(TMD−mRFP−RelA)及び2種の第2の構成物(EGFP−IkB及びHcR−p50)を下記の通り作製した。この際、蛍光標識としては、第1の構成物にはmRFPを使用し、第2の構成物にはEGFP及びmRFPと区分できるHcR(HcRed)を使用した。
【0107】
第1の構成物(TMD−mRFP−RelA)とIkBを含む第2の構成物(EGFP−IkB)は、前記実施例<4−3>と同一のものを使用し、さらに他の第2の構成物(HcR−p50)は、鋳型としてpDMV−SPORT6−NFkB1ベクター(NFkB1;GenBank accession No. BC006231)を使用し、プライマーとして配列番号64(p50−F:5’−GCTGAATTCTGATGGCAGAAGATGATCCATATT−3’)及び配列番号65(p50−R:5’−GCTCCCGGGCTTAATGCTTCATCCCAGCATTAGA−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpHcR−C3ベクターのEcoRI/XmaI位置に挿入して作製した。
【0108】
前記にて作製した第1の構成物及び2種の第2の構成物を、HEK293細胞株に形質転換し、これを前記実施例<4−1>に記載の通り、蛍光を確認した。
【0109】
その結果、図13に示した通り、第1の構成物(TMD−mRFP−RelA、赤色)と第2の構成物(EGFP−IkB、緑色)及び第2の構成物(HcR−p50、青色)が全て同一にPMA刺激により、細胞膜に移動したことが確認できた。一方、移動モジュールを含む第1の構成物がない対照群(TMD−mRFP)では、PMA刺激により分布変化が表れないことが確認された(結果は図示せず)。
【0110】
このような実験結果は、第1の構成物を含む3種の蛋白質複合体の結合ばかりでなく、第1の構成物の蛍光標識を除いて、EGFP、mRFP、HcRed及びBFPの4種の複合体の結合可否を、一般的に使用される蛍光顕微鏡または共焦点レーザー蛍光顕微鏡を使用して検証することができ、様々な蛍光蛋白質種とMeta(Carl Zeiss)またはSpetral(Leica)蛍光顕微鏡を使用して、第1の構成物の他に少なくともBFP、CFP、GFP、RFP、及びFar−Redの5種の蛋白質複合体を同時に検証し得ることを意味する。
【0111】
実施例5:酵母ツーハイブリッド法(Y2H)によりスクリーニングされた候補物質の検証
酵母ツーハイブリッド法(Y2H,yeast two-hybrid)は、現在、生細胞内の蛋白質結合をスクリーニングする最も一般的な方法として使用されているばかりでなく、今まで知られた新薬標的スクリーニング方法のうち、多くの部分を占めている代表的な方法である。しかしながら、酵母ツーハイブリッド法は、偽陽性(false-positive)が高く、酵母を使用するという短所が有り、新薬標的及び新薬候補検証に弱点を有していることが周知の事実である。従って、本実験例では酵母ツーハイブリッド法により、スクリーニングされた候補物質を検証し得る方法としての本発明の適用性を分析した。
【0112】
抗生剤耐性菌であるスーパーバクテリア関連OmpA(GenBank accession No. AY485227)蛋白質とヒト蛋白質ライブラリ(human protein library)に対してY2H法でスクリーニングした結果、4種の陽性クローンを確認することができた(全体ライブラリースクリーニングクローン:1.188×105クローン;第1次パッチ(patch)/ストリーク(streak)スクリーニング:137クローン;第2次再形質転換(re-transformation)スクリーニング:54クローン;第3次プレイオートアクティベーションテスト(prey auto-activation test)スクリーニング:14クローン;第4次ヌクレオチドシークエンシングコンファメーション(nucleotide sequencing confirmation):4クローン)。
【0113】
陽性として表れた前記4種のクローンのうち、EEF1A1(GenBank accession No. BC009875)、FAM14B(GenBank accession No. BC015423)、及びDDX31(GenBank accession No. AK027002)に対しては、OmpA蛋白質との結合可否を検証した。このため、第1の構成物(TMD−mRFP−OmpA)及び第2の構成物(EGFP−EEF1A、EGFP−FAM14B、及びEGFP−DDX31)を下記の通り作製した。
【0114】
第1の構成物TMD−mRFP−OmpAは、鋳型としてpET28a−OmpA(GenBank accession No.:AY185227)ベクターを使用し、プライマーとして配列番号66(OmpA−F:5’−GCTGAATTCTGATGAAATTGAGTCGTATTGCAC−3’)及び配列番号67(OmpA−R:5’−GCTGGATCCTTATTGAGCTGCTGCAGGAGC−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpTMD−mRFP−C3ベクターのEcoRI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0115】
第2の構成物等の内、EGFP−EEF1Aは、鋳型としてpOTB7−EEF1A(GenBank accession No. BC009875)ベクターを使用し、プライマーとして配列番号68(EEF1A−F:5’−GCTGAATTCTGATGGGAAAGGAAAAGACTCA−3’)及び配列番号69(EEF1A−R:5’−GCTGGATCCCGCTATTTAGCCTTCTGAGCTT−3’)を使用し、EGFP−FAM14Bは、鋳型としてpCMV−SPORT6−FAM14B(GenBank accession No.:BC015423)ベクターを使用し、プライマーとして配列番号70(FAM14B−F:5’−GTCGAATTCTGATGGGAAAGGAGAGTGGATGG−3’)及び配列番号71(FAM14B−R:5’−GTCGGATCCCGTCAGCTGGAAGGGGGTGAAC−3’)を使用し、EGFP−DDX31は、鋳型としてpME18S−FL3−DDX31ベクターを使用し、プライマーとして配列番号72(DDX31−F:5’−GTCGAATTCTGATGTTTTCTCCAAAGAAGCAT−3’)及び配列番号73(DDX31−R:5’−GTCGGATCCCGTTAAACTTTCTGGGAAGTCTTG−3’)を使用して、それぞれPCR増幅した後、各PCR増幅物をpEGFP−C3ベクターのEcoRI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0116】
前記にて作製した第1の構成物及び第2の構成物を、HEK293細胞株に形質転換し、これを前記実施例<4−1>に記載の通り、蛍光を確認した。
【0117】
その結果、図14に示した通り、EEF1A1(A)と、FAM14B(B)の場合、OmpAが結合した第1の構成物に従い細胞膜に移動せず、実際にはOmpAと結合していなかったことが分かり(偽陽性)、DDX31(C)は、OmpAが結合し第1の構成物に従って細胞膜に移動して、OmpAとの結合について陽性であることが確認された。従って、本発明の方法は、酵母ツーハイブリッド法に比べて高い正確性を有することが分かり、前記方法による陽性結合を再検証し得ることを確認することができた。
【0118】
実施例6:実時間分析を利用した抗癌剤の効能の検証
潜在的発癌性遺伝子として知られるp53蛋白質は、少なくともmdm2蛋白質の結合により、発癌が促進されるものとして知られており、これを阻害し得る物質であるヌトリン3が強力な抗癌剤として使用できることが多くの研究を介して確認された。ビアコア社の表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance technology,SPR)技術を使用してイン・ビトロ(in vitro)で実施した結合阻害実験によれば、p53とmdm2の結合は、最小限1μM以上のヌトリン3を使用した時、90%以上の結合阻害効果を表し、50%の阻害が起こる濃度(IC50;median inhibitory concentration)は、90nMであると測定された(Vassilev, L. T. et al., Science 303, 844-848)。
【0119】
本実験では、p53(GenBank accession No. NM_00546)とmdm2の相互作用及び結合阻害剤ヌトリン3の結合阻害実験を、ヒトの生細胞株において行った。このため、第1の構成物(TMD−mRFP−p53N)及び第2の構成物(AzG−mdm2N)を下記の通り作製した。
【0120】
第1の構成物(TMD−mRFP−p53N)は、鋳型としてpGEX−4T1−p53Nベクター(p53,GenBank accession No. NM_ 00546)を使用し、プライマーとして配列番号74(p53N−F:5’−GTCGAATTCTCATGGAGGAGCCGCAGTCAGAT−3’)及び配列番号75(p53N−R:5’−GTCGGATCCTCACACGGGGGGAGCAGCCT−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物を第1の構成物ベクター(pTMD−mRFP−C3ベクター)のEcoRI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0121】
第2の構成物EGFP−mdm2Nは、鋳型としてpGEX−4T1−mdm2Nベクター(mdm2;GenBank accession No. NM-002392)を使用し、プライマーとして配列番号76(mdm2N−F:5’−GTCGAATTCTGATGTGCAATACCAACATGTCTGTACC−3’)及び配列番号77(mdm2N−R:5’−GTCGGATCCTCATACTACCAAGTTCCTGTAGAT−3’)を使用してPCR増幅した後、PCR増幅物をpAzG−C3ベクターのEcoRI/BamHI位置に挿入して作製した。
【0122】
前記にて作製した第1の構成物及び第2の構成物を、HEK393細胞株に形質転換し、これを前記実施例<4−1>に記載の通り、蛍光を確認した。ヌトリン3は0、0.5、1、5、10、25、50、100、200nMに調製して処理し、実施例<3−2>に記載の通り、5分間ヌトリン3を処理した後、3.8%ホルムアルデヒド(formaldehyde)で細胞を固定して、共焦点顕微鏡(Confocal microscope, Carl Zeiss LSM 510)を介して、赤色蛍光が発現された200個の細胞を無作為で選定して濃度別赤色蛍光の細胞膜分布細胞の数を測定した。
【0123】
その結果、図15に示した通り、mdm2(緑色、中央パネル)は、外部刺激(PMA)によりp53(赤色、左側パネル)と共に、生細胞内で細胞膜へ移動したものの(図15A参照)、阻害剤ヌトリン3を処理した場合、その分布が変わらない結果を示した(図15B参照)。これはヌトリン3を処理しない場合、mdm2がp53と結合するものの、ヌトリン3を処理した場合、mdm2とp53の結合が阻害されたことを表す。この結果は、本発明が生細胞内で起こる蛋白質相互作用を直接分析可能であることを示すものであり、結合と関連した新薬発掘技法として有用であることを示す。
【0124】
さらに、図16に示した通り、赤色蛍光を示す200個の細胞を無作為に選定して、細胞膜に分布する赤色蛍光の数を各濃度において測定した結果、組替え蛋白質を使用したヒトの生細胞株(HEK293)に対するイン・ビトロ(in vitro)実験において、90%以上の結合阻害効果が表れる濃度が1μMに対し(Vassilev, L. T. et. al., 2004, Science 303, 844-848)、20nMで95%以上の結合阻害効果が表れるものと分析され、本発明の分析感度が既存のイン・ビトロ(in vitro)実験と比べて50倍以上の分析精密度を有することを確認できた。従って、このような結果は、本発明が、イン・ビトロ(in vitro)実験を介した結合阻害実験から出た結果による細胞または個体を介した研究及び人間を対象とした臨床実験の危険性を排除し得る技術を提供できることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明した通り、本発明は、生細胞内において起こる物質間の結合及び相互作用を実時間検出できる方法及びその相互作用を変化させる物質のスクリーニング方法を提供する。本発明の方法は、今まで知られたイン・ビトロ(in vitro)法(試験管内法及び生化学的方法)、抗体結合法(抗体沈殿法)、蛍光共鳴エネルギー転移法(FRET)、及び蛍光蛋白質再構成法(Bi−FC)及び蛍光干渉(FCS)等の既存の生体物質の相互作用検出方法が有する不正確性及び複雑性等の短所を克服する。正確度を一層高めるため両方の構成物に標識をすることによって、本発明は新規な実時間無抗体分析方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)及び(b)を含むベイト(bait)とプレイ(prey)の相互作用を検出する方法:
(a)(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュール(translocation module)を含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物を含む細胞を調製する工程;及び
(b)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程。
【請求項2】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むベイト(bait)とプレイ(prey)の相互作用を検出する請求項1記載の方法:
(a)(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物を含む細胞を調製する工程;
(b)信号物質(signaling material)で処理する工程;及び
(c)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程。
【請求項3】
前記移動モジュールがプロテインキナーゼC(protein kinase C)及びその変異体からなる群より選ばれる請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記プロテインキナーゼC及びその変異体が、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有する請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1の標識物質が、GFP(Green Fluorescent Protein,緑色蛍光蛋白質)、EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein,緑色蛍光蛋白質変異体)、RFP(Red Fluorescent Protein,赤色蛍光蛋白質)、mRFP(Monomeric Red Fluorescent Protein,赤色蛍光モノマー蛋白質)、DsRed(Discosoma sp. red Fluorescent Protein,ディスコソマ・エスピー由来赤色蛍光蛋白質)、CFP(Cyan Fluorescent Protein,シアン蛍光蛋白質)、CGFP(Cyan Green Fluorescent Protein,シアン緑色蛍光蛋白質)、YFP(Yellow Fluorescent Protein,黄色蛍光蛋白質)、AzG(Azami Green,アザミグリーン)、HcR(HcRed, Heteractis crispa red Fluorescent Protein,ヘテラクティス・クリスパ由来赤色蛍光蛋白質)、及びBFP(Blue Fluorescent Protein,青色蛍光蛋白質)からなる群より選ばれる請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記第2の標識物質が、GFP(Green Fluorescent Protein)、EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)、RFP(Red Fluorescent Protein)、mRFP(Monomeric Red Fluorescent Protein)、DsRed(Discosoma sp. red Fluorescent Protein)、CFP(Cyan Fluorescent Protein)、CGFP(Cyan Green Fluorescent Protein)、YFP(Yellow Fluorescent Protein)、AzG(Azami Green)、HcR(HcRed, Heteractis crispa red Fluorescent Protein)、及びBFP(Blue Fluorescent Protein)からなる群より選ばれる請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記第1の構成物が、NLS(nuclear localization signal;核局在化シグナル)配列またはNES(nuclear export signal;核外搬出シグナル)配列をさらに含む請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記NLS配列が、配列番号17で示されるアミノ酸配列を有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記NES配列が、配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記第2の構成物が、NLS(nuclear localization signal)配列またはNES(nuclear export signal)配列をさらに含む請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むベイトとプレイの相互作用を検出する方法:
(a)(i)ベイト、EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)、またはmRFP(Monomeric Red Fluorescent Protein)である第1の標識物質、及び配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有する移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及びEGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)、mRFP(Monomeric Red Fluorescent Protein)、AzG(Azami Green)及びHcR(HcRed, Heteractis crispa red Fluorescent Protein)からなる群より選ばれる第2の標識物質を含む第2の構成物;を含む細胞を調製する工程;
(b)信号物質で処理する工程;及び
(c)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程。
【請求項12】
前記信号物質での処理が、濃度50nM〜5μMのPMA(Phorbol 12-myristate 13-acetate, Phorbol ester,ホルボールエステル)での処理である請求項11記載の方法。
【請求項13】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むベイトとプレイ間の相互作用を変化させる物質をスクリーニングする方法:
(a)(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物を含む細胞を調製する工程;
(b)試験物質で処理する工程;及び
(c)第1の構成物及び第2の構成物の細胞内分布を検出する工程。
【請求項14】
前記相互作用の変化が、相互作用の阻害または増進である請求項13記載の方法。
【請求項15】
信号物質で処理する工程をさらに含む請求項13記載の方法。
【請求項16】
(i)ベイト、第1の標識物質及び移動モジュールを含む第1の構成物;及び(ii)プレイ及び第2の標識物質を含む第2の構成物を含む細胞。
【請求項17】
前記細胞が、(i)プロモータと、プロモータに作動可能に連結されたベイト、第1の標識物質及び移動モジュールをコード化するヌクレオチドとを含む発現ベクター、及び(ii)プロモータ及びプロモータに作動可能に連結されたプレイ及び第2の標識物質をコードするヌクレオチドを含む発現ベクターにより形質転換されたものである請求項16記載の細胞。
【請求項18】
前記細胞が、(i)プロモータ及びこれと作動可能に連結されたベイト、EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)またはmRFP(Monomeric Red Fluorescent Protein)である第1の標識物質及び配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有する移動モジュールをコードするヌクレオチドを含むベクター及び(ii)プロモータ及びこれと作動可能に連結されたプレイ及びEGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)、mRFP(Monomeric Red Fluorescent Protein)、AzG(Azami Green)及びHcR(HcRed, Heteractis crispa red Fluorescent Protein)からなる群より選ばれる第2の標識物質をコードするヌクレオチドを含むベクターで同時形質転換されたものである請求項16記載の細胞。
【請求項19】
前記細胞が、CHO−k1細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、SH−SY5Y細胞、Swiss 3T3細胞、3T3−L1細胞、NIH/3T3細胞、L−929細胞、Rat2細胞、RBL−2H3細胞、及びMDCK細胞からなる群より選ばれる請求項15項乃至18のいずれか1項記載の細胞。
【請求項20】
請求項15乃至18項のいずれか1項記載の細胞を含むベイトとプレイの相互作用検出用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図16】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−115192(P2010−115192A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−198750(P2009−198750)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(509242864)コリア・ベーシック・サイエンス・インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】