説明

生分解ポリエステル

本発明は、式:T-(CH2)n-CH=CH2 (式中、「T」はヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アミドまたはエステル基から選択され、「n」は0〜13の間に含まれる整数である)を有する不飽和連鎖停止剤を備えた前駆体ポリエステルを原料とするラジカル開始剤との反応により得られ、実質的にゲルを含まず、実質的に直鎖状の生分解ポリエステルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つのジアシッドと少なくとも一つのジオールに由来する単位を含み、不飽和連鎖停止剤を備えた(provided)前駆体ポリエステル(PP)を原料とするラジカル開始剤との反応により得られる、実質的にゲルを含まず、実質的に直鎖状の生分解熱可塑性ポリエステル(BP)に関し、該停止剤は式:
T-(CH2)n-CH=CH2
(式中、「T」はヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アミドまたはエステル基からなる群から選択され、「n」は0〜13の間に含まれる整数である)
を有する。
本発明は、前記生分解ポリエステル BPを得る方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
現在市場で入手可能な生分解ポリエステルは、種々の欠点のために使用が制限されている。例えば、それらの流動学的性質に関係した問題があり、そのことが、異なるタイプの鎖延長剤が用いられなければ、慣用のプラスチック材料に対して一般的に採用される種々の変換技法でのそれらの使用を制限する。
しかしながら、イソシアネート、エポキシアクリレート等のようなこれらの鎖延長剤は、通常、ポリエステルそれ自身より環境にかなり大きな影響を及ぼす。そのような鎖延長剤の使用に関連するもう一つの問題は、それらの化学残留物の存在による最終ポリエステルの臭いである。これらの鎖延長剤を特に食品包装に適用する包装製品の生産にもちいるとき、この化学的残留物は特に重大である。
一方、これらの添加剤の使用なしでは、これらのポリマーを用いて製造された物品の、最終的な性質、例えば不満足な機械的性質に関連したかなりの制限がある。
【0003】
生分解ポリエステルの製造工程内で、その間に該ポリエステルの性質が、分子量の増加により改善される、ラジカル開始剤を用いる鎖延長反応の利用も知られている。
しかしながら、これらの開始剤(例えば有機過酸化物)の高い反応性は、鎖延長反応を管理することをしばしば困難にし、過度に分枝された構造の形成を生じる。そのような分枝された構造は、種々の変換技法でのポリエステルの適用範囲を限定し、同時に、強靭性に関するそれらの機械的性質に悪影響を及ぼす。
【0004】
これらの問題を克服するため、ポリエステルの反応性を変更することにより、ラジカル開始剤の作用を促進する、不飽和連鎖停止剤の使用が知られている。
例えば、JP-2746525は、飽和イソシアネートとアクリレート基を有する不飽和イソシアネートとの混合物により延長され高分子量を有するヒドロキシ末端脂肪族ポリエステルの過酸化物での鎖延長方法を記載している。アクリル末端基は、過酸化物に対するポリエステルの反応性を制御するために鎖中に挿入される。
【0005】
適当な流動学的および機械的性質に達するため、前記ポリエステルは多量のラジカル開始剤を必要とする。実際に、ポリエステルの満足のいく性質を保証するため、不飽和アクリル末端基を有するプレポリマーは、次いで続く工程で、0.1〜5重量%の間に含まれる過酸化物の量と反応させられる。さらに、前記アクリル末端基は、30,000を超える重量平均分子量(Mw)を有するプレポリマーに挿入されなければならない。
それゆえ、JP-2746525に記載された方法は、3つの工程の方法および多量の有機過酸化物の使用を含み、約30,000の数平均分子量(Mn)および非常に大きな分子量分布(MWD)によって特徴付けられるポリエステルを生じる。
【0006】
WO 2006/053936は、ヒドロキシ酸またはジアシッドとジオール、(ジオールもしくは多官能性アルコール、またはジカルボン酸もしくは多官能性カルボン酸になることができる)官能化剤(functionalising agent)および場合によってはε-カプロラクトンのようなその他のモノマーまたはイタコン酸のような不飽和含有成分を含む前駆体ポリエステルとフリーラジカルを反応させることによって得られる、架橋された熱硬化性の脂肪族ポリエステルを開示している。架橋のスピードを増すため、前記の前駆体ポリエステルは、メタクリル酸無水物のような2重結合を含む化合物で末端が官能基化されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在市場で入手可能ないくつかの生分解ポリエステルのさらなる欠点は、澱粉との乏しい相容性により表され、そのことが、例えばフィルム製造用の生分解プラスチックの分野でのそれらの使用を制限している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のタイプの制限は、今、本発明により克服される。
実際、本発明は、少なくとも一つのジアシッドと少なくとも一つのジオールに由来する単位を含み、不飽和連鎖停止剤を備えた前駆体ポリエステル(PP)を原料とするラジカル開始剤との反応により得られる、実質的にゲルを含まず、実質的に直鎖状の生分解熱可塑性ポリエステル(BP)に関し、該停止剤は式:
T-(CH2)n-CH=CH2
(式中、「T」はヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アミドまたはエステル基からなる群から選択され、「n」は0〜13の間に含まれる整数である)
を有する。
【0009】
前記生分解ポリエステルBPが、改善された加工性、安定な相形態ならびに特に天然ポリマー、特に澱粉との高められた相容性を示すことは、さらに驚嘆すべき発見であった。
天然ポリマーとの高められた相容性の結果、本発明の生分解ポリエステルBPは、改善された機械的性質ならびに類似の生分解ポリエステルとの澱粉ベースの組成物より優れた引裂き強度を示す澱粉ベースの組成物の製造を可能にする。
本発明は、前記生分解ポリエステルBPを得るための方法にも関する。
本発明は、ポリエステルの鎖延長のための、式:
T-(CH2)n-CH=CH2
(式中、「T」はヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アミドまたはエステル基からなる群から選択され、「n」は0〜13の間に含まれる整数である)
を有する連鎖停止剤の使用にも関する。
【0010】
「熱可塑性物質」の表現は、本明細書において、それぞれのポリエステルに特有の温度範囲による加熱および冷却により繰り返して軟化および硬化させることができる全てのポリエステルを意味する。前記の軟化状態において、熱可塑性ポリエステルは、物品への流入、例えば金型に入れるか押出により成形されることができる。
それゆえ、熱可塑性ポリエステルは、それとは対照的に、ポリマー鎖の架橋により不可逆的に硬化されるポリマーである硬化性ポリエステルとは異なる。この状態において、硬化性ポリエステルはネットワーク構造を示す。
【0011】
「実質的にゲルを含まず」の表現は、本明細書において、ポリエステルに対して5重量%より低い、好ましくは3重量%より低いゲルフラクションを示す全てのポリエステルを意味する。本発明のゲルフラクションは、ポリエステルの試料(X1)をクロロホルム中還流下に8時間置き、25〜45 μmの篩濾過格子で該混合物を濾過し、濾過格子に残る物質の重量(X2)を秤量することにより測定される。ゲルフラクションは、試料の重量に対するそのようにして得られた物質の割合(X2/X1)×100として決定される。
【0012】
「実質的に直鎖状」の表現は、本明細書において、ジアシッドまたはそれらの誘導体(および存在するならヒドロキシ酸またはそれらの誘導体)の量に対して、グリセロールのような多官能性分子(すなわち、2より多い反応的に活性な部位を有する分子)の1以上を多くても3モル%有し、繰返し単位(エステル結合により結合している酸およびジオール)の直鎖状配列での多数の繰返しを含む構造を示す全てのポリエステルを意味する。
好ましくは、本発明の生分解ポリエステルBPは、溶融状態で300〜2,000、好ましくは400〜1,800 Pasの間、より好ましくは500〜1500 Pasのせん断粘度(Shear Viscosity)によって特徴付けられる。
【0013】
フィルム製造への適用で用いられるとき、好ましくは、生分解ポリエステルBPは、180℃で2×10-4より低く、より好ましくは180℃で1.5×10-4 より低い熱安定度定数(Thermal Stability Constant)および180℃で0.9〜3の間、より好ましくは1〜2.9 gの間、さらに好ましくは1.1〜2.8 gの間の溶融強度(Melt Strength)を有する。
せん断粘度に関して、それは、標準ASTM D-3835-90「Standard Test Method for Determination of Properties of Polymeric Materials by Means of a Capillary Rheometer」に従い、180℃で、直径 = 1mmおよびL/D=30を有するキャピラリーを用い、フロー勾配γ = 103.7 s-1で測定される。
【0014】
熱安定度定数は、所定の温度で溶融状態にポリエステルを維持し、異なる時間でせん断粘度を測定する標準ASTM D-3835-Appendixに従い測定される。熱安定度定数は、(ln(η1/ η2))/(t2-t1)、すなわち、(η1/η2)の自然対数と差(t2-t1)との比(ここで、t1およびt2は、試験温度での溶融物の2つの耐久時間(permanence times)を示し、η1およびη2はそれぞれのせん断粘度を示す)として表される。測定は、直径 = 1mmおよびL/D=30を有するキャピラリーを用い、T=180℃、γ = 103.7 s-1で行われる。
【0015】
溶融強度は、国際標準ISO 16790:2005に従い、180℃、γ = 103.7 s-1で測定される。 12 mm/秒2 の等加速度、110 mmの引っ張り長さ(stretch length)での測定のために、直径 = 1 mmおよびL/D =30を有するキャピラリーが用いられる。
本発明の生分解ポリエステルBPの分子量Mnは、好ましくは40,000〜200,000の間、より好ましくは50,000〜180,000の間である。
【0016】
分子量Mnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。測定は、連続の3つのカラムの一組(5 μの粒径でそれぞれ500 Å、1000 Åおよび10000 Åの多孔率)、屈折率検出器、溶出液としてクロロホルム(流量 1 ml/分)を用いかつ参照標準としてポリスチレンを用い、40℃に維持されたクロマトグラフィー系を用いて行うことができる。
【0017】
本発明のポリエステルBPは、例えば、λ = 1,5416オングストロームおよび作動出力1,6 kWでのX Cu Kα放射を用い、Bragg-BrentanoジオメトリーでのPhilips X'Pert θ/2θ 回折計を用いるX-線回折法による測定で、好ましくは10より大きい結晶化度を示す。用いられる角度範囲は、0,03°(2θ)のステップでステップ当たり2秒の収集時間(acquisition time)での5〜60° (2θ)である。結晶化度の%は、結晶相面積と結晶相および非晶相の面積の合計との間のパーセントとして計算される。
【0018】
典型的な適用(例えば、バブルフィルム(bubble film)、射出成形製品、発泡体等)に対するプラスチック材料の使用の場合、本発明の生分解ポリエステルの溶融流量(MFR)は、好ましくは200〜1.0 g/10分の間、より好ましくは100〜1.5 g/10分の間、さらに好ましくは70〜2 g/10分の間である(測定は、標準ASTM D1238-89「Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometer」に従い、190℃/2.16 kgで行われる)。生分解ポリエステルPBフィルムを製造するための適用に用いられるとき、それは、好ましくは10 g/10分より小さいメルトフローインデックスを有する。
【0019】
不飽和連鎖停止剤の特定の特徴ため、前駆体ポリエステルPPは、鎖延長反応の間ラジカル開始剤の作用を調節することができ、本発明の生分解ポリエステルの実質的に直鎖状の高分子量ポリマー構造の形成に導くことができる。その高い反応性はまた、ラジカル開始剤を用いる鎖延長方法において、反復可能でかつ信頼性のある使用を可能にし、用いられるラジカル開始剤の量を非常に減少させ、同時に、異なるタイプの鎖延長剤の使用ならびに該方法の間のゲルの発生を制限する。
【0020】
本発明において、不飽和連鎖停止剤は、式:
T-(CH2)n-CH=CH2
(式中、「T」はヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アミドまたはエステル基からなる群から選択され、「n」は0〜13の間に含まれる整数である)
を有する化合物として意図される。
該不飽和連鎖停止剤は、混合物でも用いることができる。
「T」に関しては、それは、好ましくはヒドロキシまたはカルボキシ基である。
整数「n」は、好ましくは1〜13、より好ましくは3〜13の間に含まれ、さらに好ましくは8または9であり、ω-ウンデセン酸、ω-ウンデシレンアルコールおよびそれらの混合物が、天然ポリマーとの相容性を最大にするため特に好ましい。
不飽和連鎖停止剤の含有量は、ポリエステル前駆体の繰返し単位のモルに対して、1モル%以下、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.01〜0.5モル%の間である。好ましくは、5%より少ないポリエステル前駆体鎖は、1より多い不飽和連鎖停止剤を有する。
【0021】
前駆体ポリエステルは、脂肪族および脂肪族-芳香族生分解ポリエステルから選択されるのが有利である。高靭性物質の製造のために、はるかに好ましくは、前駆体ポリエステルは脂肪族-芳香族生分解ポリエステルである。
【0022】
脂肪族の前駆体ポリエステルPPに関して、これらは、少なくとも一つの脂肪族ジアシッド、少なくとも一つの脂肪族ジオールおよび不飽和連鎖停止剤により構成される。
脂肪族-芳香族の前駆体ポリエステルPPに関して、これらは、少なくとも一つの芳香族の多官能性酸により主に構成される芳香族部分ならびに不飽和連鎖停止剤、少なくとも一つの脂肪族ジアシッドおよび少なくとも一つの脂肪族ジオールにより構成される脂肪族部分を有する。
【0023】
有利には、前記脂肪族および脂肪族-芳香族ポリエステルPPは、一種類の繰返し単位(エステル結合により結合している酸およびジオール)より多くで構成されることができる。そのような場合、前記ポリエステルは、好ましくは、0.95〜1.05のランダムインデックス(randomness index)を有するランダム構造を示す。ランダムインデックスに関して、それはH-NMRにより行うことができる。
【0024】
脂肪族ジアシッドに関して、C2〜C22のタイプのものが考慮されるべきものである。
脂肪族ジアシッドの中で、C6 (アジピン酸)、C7 (ピメリン酸)、C8 (スベリン酸)、C9 (アゼライン酸)、C10 (セバシン酸)、C11 (ウンデカン二酸)、C12 (ドデカン二酸)およびC13 (ブラシル酸)が好ましい。これらの中で、再生可能資源からの脂肪族ジアシッドが特に好ましく、好ましくは、C8 (スベリン酸)、C9 (アゼライン酸)、C10 (セバシン酸)、C12 (ドデカン二酸)およびC13 (ブラシル酸)ならびにそれらのエステルである。再生可能資源からの脂肪族酸C9 (アゼライン酸)、C10 (セバシン酸)およびそれらのエステルがさらに好ましい。これらの酸の混合物もまた特に興味がある。
【0025】
多官能性芳香族酸は、フタル酸タイプの芳香族ジカルボン酸およびそれらのエステルならびに再生可能起源の芳香族ジカルボン酸およびそれらのエステルとして意図される。2,5-フランジカルボン酸およびそのエステルならびにテレフタル酸およびそのエステル、ならびにそれらの混合物が特に好ましい。
本発明によるジオールの例は、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメノール、プロピレングリコール、ネオ-ペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオールおよびそれらの混合物である。これらの中で、再生可能資源からのジオールが特に好ましく、1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオールおよびそれらの混合物がより好ましい。
【0026】
脂肪族-芳香族前駆体ポリエステルPPの場合、芳香族多官能性酸の含量は、ジカルボン酸の全モル含量に対して、好ましくは30〜80モル%の間、より好ましくは40〜70モル%の間、さらに好ましくは46〜60モル%の間で含まれる。
前駆体ポリエステルPPは、ベースモノマーに加えて、繰返し単位のモル含量に対して、0〜49モル%の間、好ましくは0〜30モル%の間の量で、少なくとも一つのヒドロキシ酸またはそれらのラクチドもしくはラクトンを含むことができる。適当なヒドロキシ酸の例は、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ吉草酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、8-ヒドロキシカプロン酸、9-ヒドロキシノナン酸、乳酸またはラクチドである。ヒドロキシ酸は、そのまま鎖中に挿入できるか、またはジアシッドまたはジオールと前もって反応させて作ることもできる。
【0027】
長い二官能性分子は、末端位置ではない官能性を有するものでも、10%を超えない量で加えられることもできる。例は、ダイマー酸、リシノール酸およびエポキシ官能性を有する酸である。
アミン、アミノ酸およびアミノアルコールもまた、その他の全ての成分に対して、30モル%までのパーセントで存在することができる。
【0028】
前駆体ポリエステルPPの製造方法において、分枝した生成物を得るために、一以上の多官能性分子(すなわち、2つより多い反応的に活性な部位を有する分子)が、ジカルボン酸(もし存在するなら、ヒドロキシ酸)の量に対して、0.02〜3モル%の間の量で有利に加えられることができる。
これらの分子の例は、グリセロール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、クエン酸、ジペンタエリトリトール、モノアンヒドロソルビトール、モノヒドロ-マンニトール、酸トリグリセリドおよびトリエタノールアミンである。
【0029】
好ましくは、前駆体ポリエステルPPは、溶融状態で300〜2 g/10分の間、より好ましくは100〜5 g/10分の間に含まれる溶融流量(測定は、標準ASTM D1238-89に従い、190℃/2.16 kgで行われる)および150より少ない、より好ましくは50より少ない、さらに好ましくは35 meq KOH/ポリマーkgより少ないカルボキシ末端基の含有量で特徴付けられる。
【0030】
カルボキシ末端基の含有量の測定は、次のように行うことができる:
1.5〜3 gのポリエステルを、60 mlのクロロホルムと一緒に100 ml エーレンマイヤーフラスコに入れる。ポリエステルの完全溶解後、25 mlの2-プロパノールおよび分析直前に1 mlの脱イオン水を加える。そのようにして得られる溶液を予備標準KOH/エタノール溶液で滴定する。滴定の当量点を決定するため、非水性溶媒中での酸-塩基滴定に対するガラス電極のような適当な指示器を用いる。カルボキシ末端基含有量は、KOH/エタノール溶液の消費量から、次の式:
【数1】

【0031】
(ここで、Veq = 試料の滴定に対する当量点でのKOH/エタノール溶液のml;
Vb = ブランク滴定の間にpH= 9.5に達するために必要なKOH/エタノール溶液のml;
T = モル/リットルで表されるKOH/エタノール溶液の濃度;
P = 試料のグラムでの重量)
により計算される。
【0032】
前駆体ポリエステルPPは、同じタイプの他の前駆体ポリエステルおよび/または不飽和末端基を有する天然もしく合成起源の両方の他のポリマーの両方とのブレンドでも用いることができる。これらの中で、炭水化物、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド、ポリラクトンのようなポリエスル、ポリエステル-ウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィンが特に好ましい。
【0033】
前駆体ポリエステルPPの製造方法は、当該技術分野で公知のいずれかの方法により行われることができる。特に、ポリエステルは、重縮合反応で有利に得ることができる。該製造方法において、不飽和の停止剤は、重縮合工程またはそれに続く工程のいずれかの間に加えられることができる。
【0034】
有利には、前駆体ポリエステルPPの重合方法は、適当な触媒の存在下に行うことができる。適当な触媒として、例えば、スズの有機金属化合物、例えばスズ酸の誘導体、チタン化合物、例えばオルトブチルチタネート、ならびにアルミニウム化合物、例えばAl-トリイソプロピル、アンチモン化合物および亜鉛化合物を用いることができる。
【0035】
本発明は、少なくとも一つのジアシッドと少なくとも一つのジオール由来の単位を含む、実質的にゲルを含まず、実質的に直鎖状の生分解ポリエステルBPの製造方法にも関し、該方法は、不飽和連鎖停止剤を備えた前駆体ポリエステルをラジカル開始剤と混合し、反応させることからなり、前記停止剤は、式:
T-(CH2)n-CH=CH2
(式中、「T」はヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アミドまたはエステル基からなる群から選択され、「n」は0〜13の間に含まれる整数である)
を有する。
【0036】
過酸化物のような1以上のラジカル開始剤が、前記方法のために用いることができる。これらの中で、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、パーオキシケタールおよびカーボネートパーオキサイドのような有機過酸化物が特に好ましい。ジアシルパーオキサイドおよびジアルキルパーオキサイドが好ましい。これらの過酸化物の例は、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソノナノイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α'ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2-5-ジ(tertブチル)パーオキシヘキサンおよびそれらの混合物である。
【0037】
前記有機過酸化物は、ポリエステル(ブレンドの場合、および他のポリマー)の量に対して、0.08重量%より少なく、好ましくは0.05重量%より少なく、より好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下の量で有利に加えられる。
当業者は、ポリマーに対して望まれる性質との関連で要求される過酸化物の効果的な量を容易に特定することができるであろう。
前記過酸化物は、ポリエステル前駆体との混合を容易にするため、マスターバッチとして有利に加えることができる。
【0038】
前記方法は、好ましくは、反応性押出により行われる。
製造方法後にも、生分解ポリエステルBPは、末端2重結合および/または連鎖停止剤とラジカル開始剤との反応に由来の付加物を有することができる。
末端2重結合および/または連鎖停止剤とラジカル開始剤との反応に由来の付加物の存在は、当業者によく知られた異なる方法、例えばNMRスペクトロスコピーまたはマス分光分析と組み合わされたクロマトグラフ法と一体となったポリマー鎖のメタノリシス反応による方法を用いて測定できる。
当業者は、不飽和連鎖停止剤またはその末端2重結合の反応後の反応した連鎖停止剤のいずれかに属する構造を容易に確認することができるであろう。
【0039】
生分解ポリエステルBPは、標準EN 13432に従って生分解性である。
本発明の生分解ポリエステルBPは、ブレンドでも用いることができるし、同じタイプのポリエステルおよび他の生分解ポリエステル(例えば、ポリ L 乳酸、ポリ D 乳酸および立体混合物のポリ D-L 乳酸、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、例えば、ヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリアルキレンスクシネート)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート、ポリ-4-ヒドロキシブチレート、ポリスクシネートの両方の反応性押出、特にポリアルキレンスクシネートならびにアジピン酸および乳酸とのそのコポリマーまたはアルキレンがブチレン、プロピレン、エチレンもしくはその他のアルキレンでも、およびそれらの混合物であることができるポリエステルとは異なる他のポリマーとの反応性押出によっても得ることができる。
【0040】
生分解ポリエステルBPとポリ乳酸およびポリヒドロキシアルカノエートとの混合物が、特に好ましい。
本発明の生分解ポリエステルBPは、天然起源のポリマー、例えば、澱粉、セルロース、キチン、キトサン、アルギネート、グルテン、ゼイン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチンのようなタンパク質、天然ゴム、樹脂酸およびその誘導体、リグニン類およびそれらの誘導体とのブレンドでも用いらことができる。澱粉およびセルロースは修飾できるし、それらの中で、例えば、0.2〜2.5の間の置換度を有する澱粉またはセルロースエステル、ヒドロキシプロピル化澱粉および脂肪鎖で修飾された澱粉を挙げることができる。前記澱粉は、分解およびゼラチン化された形態の両方または増量剤としても用いらことができる。前記澱粉は、連続相もしくは分散相を表すか、または共-連続形態(co-continuous form)で存在できる。分散された澱粉の場合、澱粉は、平均直径が1ミクロンより小さい形態であるのが好ましく、0.5 μmより小さい形態であるのがより好ましい。
【0041】
本発明の生分解ポリステルBPは、ポリエチレン、ポリプロピリンのようなポリオレフィン、それらのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンビニルアセテートおよびポリエチレンビニルアルコール、ウレタンポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、PET、PBT、PTTならびにポリアルキレンカーボネートのようなポリカーボネートとブレンドもできる。
本発明の生分解ポリエステルBPおよび前駆体ポリエステルPPは、ポリウレタンおよびポリウレアを製造するためのプレポリマーとして用いられることもできる。
【0042】
その限定された環境影響のため、前駆体ポリエステルPPは、高い環境影響を有する添加物の使用を避けるか、または最小限に制限できる生成物を得るように、ブロックコポリマー、異なるタイプの相溶化剤、結合層(tie layers)、澱粉複合化剤(starch complexation agents)、疎水性-親水性構造等を製造するために、同じタイプまたは異なるタイプの前駆体ポリマーとも有利に反応させることができる。
【0043】
澱粉との相容性のため、本発明の生分解ポリエステルBPと澱粉との混合物が特に好ましい。前記混合物を用いて得られるフィルムは、室温、50%RHで、100 N/mmより高い引裂き強度値に有利に到達することができる高い機械的性質を有する。
本発明の生分解ポリエステルBPは、合成起源のポリマーおよび前記の天然起源のポリマーとのブレンドでも用いられることができる。
生分解ポリエステルBPと澱粉およびポリ乳酸もしくはポリヒドロキシアルカノエートとの混合物が、特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1-aは、実施例 1の生分解ポリエステル試料を分析することにより得られたガスクロマトグラフの出力記録を示す。 図1-bは、0.012重量%のα'-ジ(t-ブチル パーオキシ)ジイソプロピルベンゼンとの反応性押出に前もって付される不飽和連鎖停止剤のない、56モル%の芳香族単位でのポリ(ブチレン テレフタレート-コ-ブチレン セバケート)の試料を分析することにより得られたガスクロマトグラフの出力記録を示す。
【図2】図2-aは、図1-aに示されたガスクロマトグラフ出力記録の3.52分のピークのマススペクトルの詳細を示す。 図2-bは、保持時間3.52分に対応する図1-bのガスクロマトグラフの出力記録の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の生分解ポリエステルBPは、相対分子量を適当に調節することにより、多くの実用化、例えばフィルム、射出成形物、押出コーティング物、繊維、発泡体、熱成形物等での使用に適するようにさせる性質を有する。
【0046】
特に、本発明の生分解ポリエステルBPは、次の:
− 単軸-および二軸-延伸フィルム、ならびに他のポリマー材料との多層フィルム;
− 農業部門での使用のフィルム、例えばマルチングでの使用のフィルム;
− 食品での使用、工業的用途、農業での梱包および包装屑用のクリングおよび延伸フィルム;
− 有機廃棄物収集、例えば生ゴおよび造園廃棄物収集用の袋およびゴミ袋;
− ミルク、ヨーグルト、肉、野菜等の容器におけるような、単層および多層の両方の熱成形食品包装;
− 押出コーティング法を用いて得られるコーティングまたは水性分散体を用いるラッカーリング(lacquering);
− 紙、プラスチック、アルミニウムまたは金属化フィルムの層を有する多層ラミネート;
【0047】
− 焼結により得られる部品(pieces)の製造用発泡または発泡性ビーズ;
− 予備発泡粒子を用いて形成された発泡ブロックを含む、発泡および半発泡製品
− 発泡シート、熱成形発泡シート、およびそれらから得られる食品包装における使用の容器;
− 一般的な果物および野菜容器;
− ゼラチン化、分解および/または複合化澱粉、天然澱粉、小麦粉または植物もしくは無機天然増量剤との複合体;
− 生理(sanitary)用品および衛生(hygiene)用品ならびに農業および服飾の部門での使用の繊維、超極細繊維、コアがPLA、PET、PTT等のような硬質ポリマーで構成され、シェルが本発明の物質により構成される複合超極細繊維、ブレンドからの複合繊維、円形から多重のローブ(multilobed)までの異なる断面を有する繊維、短繊維、織布および不織布(nonwoven fabrics)または不織布(spun bonded)もしくは熱結合布;
− 射出成形物、ブロー成形物または回転成形物
の製造に適する。
【0048】
本発明の生分解ポリエステルは無臭なので、包装用、好ましくは食品包装用のフィルムおよび袋の製造に特に適する。
本発明の生分解ポリエステルBPは、異なるタイプのBPが、セロファン、分解澱粉、PLAまたは酸素および/もしくは脂肪に対して高い遮断性を有する層との組合せにおいても異なる層用として用いられる、多層フィルムの成分としても用いられることができる。
【0049】
本生分解ポリエステルBPは、無臭および高度の透明度であることで特徴付けられ、食品部門での使用に対して有利にさせる。
本発明は、本特許出願の保護の範囲の非限定的な例として提供されるいくつかの例で、いま説明される。
【実施例】
【0050】
実施例1
a) 0.15モル%のωウンデセン酸を含む56モル%の芳香族単位の前駆体ポリマーPP[ポリ(ブチレン テレフタレート-コ-ブチレンセバケート)]の合成
機械的攪拌器、窒素気流注入口、冷却器、真空ポンプへの接続を備えた25 l 反応器に、次の:
テレフタル酸のジメチルエステル (DMT):3313 g (17.08 モル)
セバシン酸:2711 g (13.42 モル)
1,4-ブタンジオール:3156 g (35.07 モル)
ω-ウンデセン酸:8.43 g (0.046 モル)
を入れた。
激しい撹拌と窒素気流下、温度を210℃まで徐々に上げた。軽い副生物の理論量の90%が蒸留されるまで反応を続けた。次いで、温度を240℃に上げ、系を0.6 mmHgの圧力に付した。反応を120分間続けた。
【0051】
7.0 kgのポリエステルが、フロー勾配γ=100 s-1で674 Pasのせん断粘度、180℃で熱安定度定数0.7×10-4、180℃で溶融強度< 1、55140の分子量Mnおよび11 g/10分の溶融流量(MFR)(標準ASTM D1238に従い、190℃、2.16 kgで測定)を有して得られる。
【0052】
b) 前駆体ポリステルPPの反応性押出および本発明の生分解ポリステルBPの製造
a)で得られた100 kgの前駆体ポリエステルPPを、主要特徴が:
− 押出機温度プロファイル:30-100-200-170-150×3-160℃
− 二軸スクリュー回転速度:240 rpm
− 能動的脱ガス(active degassing)
である、二軸スクリュー押出機中で、12 gのα,α'ジ-(tert-ブチルパーオキシ) ジイソプロピルベンゼン(0.012重量%に相当)と反応させた。
【0053】
次の性質:
− 1011 Pasのせん断粘度
− 180℃での熱安定度定数0.51×10-4
− 180℃での溶融強度1.6 g
− ゲルフラクション:<1%
を有する生分解ポリエステルBPが得られる。
該ポリエステルは無臭である。
【0054】
実施例 1の生分解ポリエステルBPの特徴付け
2 gの生分解ポリエステルを、100 mlのメタノールおよび0.5 gのリチウムメチレートと一緒に250 ml エーレンマイヤーフラスコに入れ、ポリマーが完全に溶解し、透明な溶液が得られるまで(約8時間)還流する。
ポリエステルを含む1 mlの溶液を、H+に荷電したカチオン性イオン交換樹脂により約7のpHにする。次いで、このようにして得られる試料を、メチルイソブチルケトンで1から50に希釈し、GC-MSにより分析する。用いられる機器は、スプレットレス構造で用いられるスプリット/スプレットレス注入器(注入器温度300℃)およびTrace TR-5MSキャピラリーカラム(長さ15 m、直径0.25 mm、固定相95% ジメチル-/ 5% ジフェニル- ポリシロキサンおよび固定相厚さ0.25 μm)を備えたThermo Trace-DSQ IIガスクロマトグラフである。分析に用いられるキャリアガスはHe (流量 1.2 ml/分)である。溶出プログラムは、15℃/分の勾配で100℃から出発し300℃までの温度傾斜にある。注入容積は1 マイクロリッターである。
【0055】
マス検出器は、陽イオン化を有する220℃に設定された電子衝撃イオン化を備え、全イオン電流(Total Ion Current)モードに設定された。
【0056】
図1-aは、実施例 1の生分解ポリエステル試料を分析することにより得られたガスクロマトグラフの出力記録を示す。該ガスクロマトグラフの出力記録は、保持時間3.52分に一つのクロマトグラフピークを示し、それは、実施例 1の生分解ポリエステルの同定に用いることができる。
【0057】
図1-bは、0.012重量%のα'-ジ(t-ブチル パーオキシ)ジイソプロピルベンゼンとの反応性押出に前もって付された不飽和連鎖停止剤のない、56モル%の芳香族単位でのポリ(ブチレン テレフタレート-コ-ブチレン セバケート)の試料を分析することにより得られたガスクロマトグラフの出力記録を示す。該ガスクロマトグラフの出力記録は、保持時間3.52分またはその辺りにピークを示さない。
【0058】
図2-aは、図1-aに示されたガスクロマトグラフ出力記録の3.52分のピークのマススペクトルの詳細を示す。該ピークは、末端2重結合の反応後の実施例 1の反応した不飽和連鎖停止剤に属するといえる。
図2-bは、保持時間3.52分に対応する図1-bのガスクロマトグラフの出力記録の詳細を示す。図2-bは、実施例 1のポリエステルのクロマトグラフピークに対応するピークを有しない。
【0059】
実施例 2
澱粉ベースのブレンド
Haake Rheocord 90 Rheomex TW-100二軸スクリュー押出機中で、63重量部の実施例 1で得られた生分解ポリエステルBPを、5部のポリ-L-乳酸 (130 000のMn、190℃、2.16 kgで3.5 g/10分のMFR、0.2%より低いラクチド残渣および約6%のD-異性体含有)、23.4部の澱粉、3.5部の水および5部のグリセロールと混合した。温度プロファイルは、120〜190℃の間を維持した。顆粒中の最終含水量は0.8%に等しかった。
【0060】
20 μmの厚さのフィルムを得るために、そのようにして得られた顆粒を、ダイギャップ = 1 mm、流速20 kg/時間を有する40 mm Ghioldiマシーンでフィルムにした。得られたフィルムを機械的特性化試験に付した。それぞれのパラメータは、無作為に得られたフィルム標本での少なくとも6反復実験により決定した。ここに示す値は、これらの反復実験の算術平均に相当する。
機械的性質(引裂き) (ASTM 1922 - 23℃および55%の相対湿度、フィルムの厚さ31 μm)
引裂き強度 (N/mm) 163
【0061】
比較実施例 1
a) 1.2 モル%のω-ウンデセン酸を含む、56モル%の芳香族単位のポリ(ブチレン テレフタレート-コ-ブチレン セバケート)の合成
機械的攪拌器、窒素気流注入口、冷却器、真空ポンプへの接続を備えた25 l 反応器に、次の:
テレフタル酸のジメチルエステル (DMT):3313 g (17.08 モル)
セバシン酸:2711 g (13.42 モル)
1,4-ブタンジオール:3156 g (35.07 モル)
ω-ウンデセン酸:67.45 g (0.366 モル)
を入れた。
激しい撹拌と窒素気流下、温度を210℃まで徐々に上げた。軽い副生物の理論量の90%が蒸留されるまで反応を続けた。次いで、温度を240℃に上げ、系を0.6 mmHgの圧力に付した。反応を120分間続けた。
【0062】
7.0 kgのポリエステルが、フロー勾配γ=100 s-1で540 Pasのせん断粘度、180℃で熱安定度定数1.7×10-4、180℃で溶融強度< 1、43000の分子量Mnおよび14.4 g/10分の溶融流量(MFR)(標準ASTM D1238に従い、190℃、2.16 kgで測定)を有して得られる。
【0063】
b) 工程a)によるポリエステルの反応性押出
a)で得られた100 kgのポリエステルを、主要特徴が:
− 押出機温度プロファイル:30-100-200-170-150×3-160℃
− 二軸スクリュー回転速度:240 rpm
− 能動的脱ガス
である、二軸スクリュー押出機中で、600 gのα,α'ジ-(tert-ブチルパーオキシ) ジイソプロピルベンゼン(0.6重量%に相当)と反応させた。
【0064】
次の性質:
− せん断粘度:検出不可能
− 熱安定度定数:検出不可能
− 溶融強度:検出不可能
− ゲルフラクション:> 5 %
を有するポリエステルが得られた。
【0065】
比較実施例 2
a) 前駆体ポリマーPP [2 モル%のωウンデセン酸を含む56モル%の芳香族単位でのポリ(ブチレン テレフタレート-コ-ブチレンセバケート)]の合成
機械的攪拌器、窒素気流注入口、冷却器、真空ポンプへの接続を備えた25 l 反応器に、次の:
テレフタル酸のジメチルエステル (DMT):3313 g (17.08 モル)
セバシン酸:2711 g (13.42 モル)
1,4-ブタンジオール:3156 g (35.07 モル)
ω-ウンデセン酸:112.4 g (0.61 モル)
を入れた。
激しい撹拌と窒素気流下、温度を210℃まで徐々に上げた。軽い副生物の理論量の90%が蒸留されるまで反応を続けた。次いで、温度を240℃に上げ、系を0.6 mmHgの圧力に付した。反応を120分間続けた。
【0066】
7.0 kgのポリエステルが、フロー勾配γ=100 s-1で260 Pasのせん断粘度、180℃で熱安定度定数1.24×10-4、180℃で溶融強度< 1、35 g/10分の溶融流量(MFR)(標準ASTM D1238に従い、190℃、2.16 kgで測定)を有して得られた。
【0067】
b) 前駆体ポリステルPPの反応性押出および本発明の生分解ポリステルBPの製造
a)で得られた100 kgの前駆体ポリエステルPPを、主要特徴が:
− 押出機温度プロファイル:30-100-200-170-150×3-160℃
− 二軸スクリュー回転速度:240 rpm
− 活動的脱ガス
である、二軸スクリュー押出機中で、24 gのα,α'ジ-(tert-ブチルパーオキシ) ジイソプロピルベンゼン(0.024重量%に相当)と反応させた。
【0068】
次の性質:
− 2674 Pasのせん断粘度
− 180℃での熱安定度定数0.41×10-4
− 180℃での溶融強度11 g
− ゲルフラクション:>5%
を有する生分解ポリエステルBPが得られる。
【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのジアシッドと少なくとも一つのジオールに由来する単位を含み、式:
T-(CH2)n-CH=CH2
(式中、「T」はヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アミドまたはエステル基からなる群から選択され、「n」は0〜13の間に含まれる整数である)
の不飽和連鎖停止剤を備えた前駆体ポリエステル(PP)を原料とするラジカル開始剤との反応により得られ、実質的にゲルを含まず、実質的に直鎖状の生分解熱可塑性ポリエステル。
【請求項2】
前記停止剤の「T」がカルボキシまたはヒドロキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の生分解ポリエステル。
【請求項3】
前記「n」が1〜13の間に含まれる整数であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の生分解ポリエステル。
【請求項4】
前記の不飽和連鎖停止剤がω-ウンデセン酸、ω-ウンデシレンアルコールまたはそれらの混合物であることを特徴とする請求項3に記載の生分解ポリエステル。
【請求項5】
前記の不飽和連鎖停止剤の含量が、ポリエステル前駆体の繰返し単位のモルに対して1モル%より少ないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の生分解ポリエステル。
【請求項6】
前記ラジカル開始剤の含量が、前駆体ポリエステルの量に対して0.08重量%より少ないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の生分解ポリエステル。
【請求項7】
300〜2,000 Pasのせん断粘度による溶融状態で特徴付けられる請求項1〜6のいずれか1つに記載の生分解ポリエステル。
【請求項8】
前記の前駆体ポリエステルが、脂肪族および脂肪族-芳香族生分解ポリエステルから選択されることを特徴とする請求項1〜7にいずれか1つに記載の生分解ポリエステル。
【請求項9】
前記の脂肪族前駆体ポリエステルが、脂肪族ジアシッド、脂肪族ジアルコールおよび不飽和連鎖停止剤から構成されることを特徴とする請求項8に記載の生分解ポリエステル。
【請求項10】
前記の脂肪族-芳香族前駆体ポリエステルが、芳香族多官能酸から構成される芳香族部分および不飽和連鎖停止剤、脂肪族ジアシッド、脂肪族ジオールから構成される脂肪族部分を有することを特徴とする請求項8に記載の生分解ポリエステル。
【請求項11】
前記の芳香族多官能酸が、フタル酸タイプの芳香族ジカルボン酸化合物およびそれらのエステルならびに植物再生可能起源の芳香族ジカルボン酸化合物およびそれらのエステルであることを特徴とする請求項10に記載の生分解ポリエステル。
【請求項12】
前記の芳香族多官能酸が、フタル酸タイプの芳香族ジカルボン酸化合物およびそれらのエステルと植物再生可能起源の芳香族ジカルボン酸化合物およびそれらのエステルとの混合物であることを特徴とする請求項11に記載の生分解ポリエステル。
【請求項13】
前記の芳香族多官能酸が、テレフタル酸およびそのエステルであることを特徴とする請求項11〜12のいずれかに記載の生分解ポリエステル。
【請求項14】
前記の芳香族多官能酸が、2,5-フランジカルボン酸およびそのエステルであることを特徴とする請求項11〜12のいずれかに記載の生分解ポリエステル。
【請求項15】
前記の脂肪族ジアシッドがC2〜C22のタイプであることを特徴とする請求項9および10のいずれかに記載の生分解ポリエステル。
【請求項16】
前記の脂肪族ジアシッドが、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸およびそれらの混合物である請求項15に記載の生分解ポリエステル。
【請求項17】
前記の脂肪族ジアシッドが植物再生可能起源である請求項16に記載の生分解ポリエステル。
【請求項18】
前記の植物再生可能起源の脂肪族ジアシッドがアゼライン酸、セバシン酸およびそれらの混合物である請求項17に記載の生分解ポリエステル。
【請求項19】
芳香族多官能酸の含量が、ジカルボン酸の全モル量に対して30〜80モル%の間に含まれることを特徴とする請求項10に記載の生分解ポリマー。
【請求項20】
前記の前駆体ポリエステルが、繰返し単位のモル含量に対して0〜49モル%の間に含まれる量で、少なくとも一つのヒドロキシ酸またはそれらのラクチドもしくはラクトンを含むことを特徴とする請求項1〜19のいずれか1つに記載の生分解ポリマー。
【請求項21】
前記の前駆体ポリエステルが、同じタイプの他の前駆体ポリエステルおよび/または不飽和末端基を有する天然もしく合成起源の両方の他のポリマーの両方とブレンドされることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1つに記載の生分解ポリエステル。
【請求項22】
同じタイプのポリエステルおよび合成または天然起源のいずれかの他の生分解ポリマーの両方とのブレンドに用いられることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1つに記載の生分解ポリエステル。
【請求項23】
前記の天然起源の生分解ポリマーが、澱粉、セルロース、キチン、キトサン、アルギネート、グルテン、ゼイン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチンのようなタンパク質、天然ゴム、ロジンおよびその誘導体、リグニン類およびそれらの誘導体から選択されることを特徴とする請求項22に記載の生分解ポリエステルのブレンド。
【請求項24】
式:
T-(CH2)n-CH=CH2
(式中、「T」はヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アミドまたはエステル基からなる群から選択され、「n」は0〜13の間に含まれる整数である)
の不飽和連鎖停止剤を備えた前駆体ポリエステルをラジカル開始剤と混合し、反応させて、少なくとも一つのジアシッドと少なくとも一つのジオールに由来する単位を含む、実質的にゲルを含まず、実質的に直鎖状の生分解熱可塑性ポリエステルの製造方法。
【請求項25】
前記のラジカルが有機過酸化物であることを特徴とする請求項24に記載の生分解ポリエステルの方法。
【請求項26】
− 単軸-および二軸-延伸フィルム、ならびに他のポリマー材料との多層フィルム;
− 農業部門での使用のフィルム、例えばマルチングでの使用のフィルム;
− 食品での使用、工業的用途、農業での梱包および包装屑用のクリングおよび延伸フィルム;
− 有機廃棄物収集、例えば生ゴおよび造園廃棄物収集用の袋およびゴミ袋;
− ミルク、ヨーグルト、肉、野菜等の容器におけるような、単層および多層の両方の熱成形食品包装;
− 押出コーティング法を用いて得られるコーティング;
− 紙、プラスチック、アルミニウムまたは金属化フィルムの層を有する多層ラミネート;
− 焼結により得られる部品の製造用発泡または発泡性ビーズ;
− 予備発泡粒子を用いて形成された発泡ブロックを含む、発泡および半発泡製品
− 発泡シート、熱成形発泡シート、およびそれらから得られる食品包装における使用の容器;
− 一般的な果物および野菜容器;
− ゼラチン化、分解および/または複合化澱粉、天然澱粉、小麦粉または植物もしくは無機天然増量剤との複合体;
− 生理用品および衛生用品ならびに農業および服飾の部門での使用の繊維、超極細繊維、コアがPLA、PET、PTT等のような硬質ポリマーで構成され、シェルが本発明の物質により構成される複合超極細繊維、ブレンドからの複合繊維、円形から多重のローブまでの異なる断面を有する繊維、短繊維、織布および不織布または不織布もしくは熱結合布;
− 射出成形物、ブロー成形物または回転成形物
の製造のための、請求項1〜23のいずれか1つに記載の生分解ポリエステルの使用。
【請求項27】
ポリエステルの鎖延長のための、式:
T-(CH2)n-CH=CH2
(式中、「T」はヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アミドまたはエステル基からなる群から選択され、「n」は0〜13の間に含まれる整数である)
を有する連鎖停止剤の使用。

【公表番号】特表2013−506024(P2013−506024A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530280(P2012−530280)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064185
【国際公開番号】WO2011/036272
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(592081988)ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ (19)
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】