説明

生分解・崩壊性樹脂組成物

生分解性樹脂100重量部に対して主鎖に二重結合を有するゴム成分を10重量部以上、平均粒径が1mm以下の植物性粉末が10〜300重量部よりなる生分解・崩壊性樹脂組成物である。使用目的達成後は、いかなる環境においても環境負荷が少なく、一定期間内に完全に土壌に戻ることが可能で、且つ経済性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、いかなる環境においても、使用目的達成後は環境に対する負荷が少なく、速やかに分解・崩壊し、且つ経済性に優れた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
近年、樹脂による環境汚染問題、例えば海洋汚染や土壌汚染がクローズアップされてきた。その対策として、生分解性樹脂や自然崩壊性樹脂が提案され、市場の評価がなされてきた。しかし、品質、性能上の問題や経済性の問題でほとんど普及していないのが現状である。
品質、性能上の問題としては
(1)使用目的達成後、一定期間内に分解・崩壊させるコントロールができない。
(2)一定の環境の下でしか分解・崩壊ができない。
(3)分解・崩壊したものが元の土壌に戻らない。
等の問題が指摘されている。
経済性の問題としては、既に上市、販売されている生分解性樹脂の価格は汎用樹脂の5倍以上であり、用途が主に使い捨て分野である限り、普及は困難であると考えられる。
本発明は、使用目的達成後は、いかなる環境においても、環境負荷が少なく、一定期間内に完全に土壌に戻ることが可能で、且つ経済性に優れた樹脂組成物を提供することを課題としている。
【発明の開示】
本発明者は、本課題を達成するため多年にわたる研究の結果、生分解性樹脂に対し主鎖に二重結合を有するゴム成分及び植物性粉末を配合してなる樹脂組成物が前記の課題を解決することを見出し、本発明を完成した。本発明は以下の構成を有する。
(1)生分解性樹脂100重量部に対し、主鎖に二重結合を有するゴム成分を10重量部以上、平均粒径が1mm以下の植物性粉末が10〜300重量部よりなる生分解・崩壊性樹脂組成物。
(2)生分解性樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする、(1)に記載の生分解・崩壊性樹脂組成物。
(3)ゴム成分が天然ゴムであることを特徴とする、(1)に記載の生分解・崩壊性樹脂組成物。
(4)植物性粉末が草木粉であることを特徴とする、(1)に記載の生分解・崩壊性樹脂組成物。
生分解性樹脂と主鎖に二重結合を有するゴム成分のみでも理論上は本課題を達成できるはずであるが、実際は両物質はほとんど相溶性がない。且つ軟化点や融点の違いで、汎用的な加工法では成形できない。
しかし、植物性粉末を添加すると不思議なことに汎用的な加工法でも容易に均一分散することがわかった。無機性粉末でも均一分散するが、分解・崩壊に問題があり、新たな問題を生ずる可能性があるので、本特許では取り上げない。
経済性に関しては、生分解性樹脂は高価であるが、主鎖に二重結合を有するゴムは相対的に安価であり、植物性粉末は極端な微粉末は別として、平均粒径が100〜1000ミクロン程度のものは安価である。従って、価格が従来汎用樹脂の5倍以上であった生分解性樹脂に対し、本組成物は2倍以内になると推定され、実用性があると思われる。
本発明で用いる生分解性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、脂肪族ポリエステルのような化学合成品、微生物多糖類のような微生物合成品、キトサン/セルロースのような天然高分子等々が用いられる。
しかし、ポリオレフィンと澱粉との混合物やポリオレフィンと木粉・セルロースとの混合物は、最終的には土壌に戻らないので用いられない。
本発明に用いられる主鎖に二重結合を有するゴム成分としては天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等々である。
これらゴム成分は、生分解性樹脂100重量部に対して10重量部以上、好ましくは50〜150重量部添加される。10重量部以下では効果が少ない。しかし、ゴム成分が過剰だと分解・崩壊性のコントロールが困難になるので薦められない。
本発明に用いられる植物性粉末としては、あらゆる草木粉、米粉、小麦粉、そば粉、トウモロコシ粉などの穀物粉、大豆粉、小豆粉等の豆粉、またこれらを化学変性したセルロース類、澱粉類も含まれる。これら植物性粉末は生分解性樹脂100重量部に対して10〜300重量部添加される。10重量部以下では効果が少なく、300重量部以上では品質上問題があり、実用的ではない。
また、粒径が小さいほど樹脂と均一分散し、品質も良く、分解・崩壊も均一に進行する、しかし、経済性の観点から平均粒径が1000ミクロン以下であれば十分目的を達する。
本発明の樹脂組成物は、ゴム成分がブロック状の場合は通常バンバリーミキサーや2本ロールを用いて混練、カレンダー成形法で製膜するか、シートカッターで造粒して最終用途に供される。ゴム成分が粉末か造粒品の場合は通常の混合装置、例えばヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー等を用いて混合し、直接または造粒してから射出成型法、押出成型法、ブロー成型法等により目的とする成形品の製造に供される。
【実施例1】
ポリ乳酸(島津製作所製 商品名ラクティ)100グラム、天然ゴム(RSS5)100グラム、ケナフ粉末(平均粒径200ミクロン)100グラムを150℃にセットした8インチ2本ロール上で混合混練したところ均一に分散し、0.5m/m厚に製膜できた。このシートをA−4版に切り出し、傾斜角45度で南面に向けて半分を土中に埋め、残り半分を大気中に暴露した(2000年8月31日)。
これをおよそ1ヶ月毎に定期的に目視で亀裂や変色、劣化状態を観察した。結果を表1に示す。
比較例1、比較例2
実施例1で用いたポリ乳酸100グラムとケナフ粉末100グラム及び天然ゴム100グラムとケナフ粉末100グラムを実施例1と同じ方法で製膜した。そして同様の方法で土中埋設及び暴露テストを行った(2000年8月31日)。結果を表1に示す。
比較例3
実施例1で用いたポリ乳酸100グラムと天然ゴム100グラムとを150℃にセットした8インチ2本ロール上で混合混練したが、これらの物質には相溶性がなく、ポリ乳酸がロールに粘着して均一混合できず、製膜もできなかった。結果を表1に示す。
【実施例2】
生分解性ポリエステル樹脂(昭和高分子製 商品名ビオノーレ)100グラム、スチレン−ブタジエンゴム(JSR社製 JSR1500;SBRと略)100グラムと草木粉(平均粒径500ミクロン)100グラムを125℃にセットした8インチ2本ロールで混合混練したら均一に分散し、0.5m/mのシートに製膜できた。このシートを実施例1と同じ方法で土中埋設及び暴露テストを行った(2000年9月18日)。結果を表1に示す。
比較例4
実施例1で用いたポリ乳酸100グラムと天然ゴム100グラム及びケナフ粉末10グラムを実施例1と同じ条件のロール上で混合混錬しようとしたが、ポリ乳酸がロールに粘着して均一混合できず、製膜もできなかった。結果を表1に示す。
比較例5
実施例1で用いたポリ乳酸100グラムと天然ゴム100グラム及びケナフ粉末300グラムを実施例1と同じ条件のロール上で混合混錬しようとしたが、ケナフ粉末が過剰で溶融物に粘りがなく、製膜できなかった。結果を表1に示す。
比較例6
実施例2で用いた生分解性ポリエステル樹脂100グラム、主鎖に二重結合を有さないエチレン−プロピレンゴム(JSR社製 EP11 EPRと略)100グラムと草木粉100グラムを実施例2と同じ条件で製膜した。このシートを実施例1と同じ方法で土中埋設及び暴露テストを行った(2000年9月18日)。結果を表1に示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂100重量部に対し、主鎖に二重結合を有するゴム成分を10重量部以上、平均粒径が1mm以下の植物性粉末が10〜300重量部よりなる生分解・崩壊性樹脂組成物。
【請求項2】
生分解性樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の生分解・崩壊性樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム成分が天然ゴムであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の生分解・崩壊性樹脂組成物。
【請求項4】
植物性粉末が草木粉であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の生分解・崩壊性樹脂組成物。

【国際公開番号】WO2005/044922
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515375(P2005−515375)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016791
【国際出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(503454849)株式会社ネイチャートラスト (3)
【Fターム(参考)】