説明

生分解性のカチオン性ポリマー

生理活性薬剤を細胞に送達するのに有用な、600ダルトン未満の分子量を有するポリエチレンイミン、生分解性基、および比較的疎水性の基を含むポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2006年4月6日に出願された米国仮特許出願第60/789,842号に基づく優先権を主張し、それは引用によりその全文が全ての図面を含めて本明細書に取り込まれる。さらに、本出願は、2005年8月31日に出願された米国特許出願第11/216,986号に関し、それは引用によりその全文が全ての図面を含めて本明細書に取り込まれる。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、生理活性薬剤を細胞に送達するための組成物と方法に関する。具体的には、本発明は、ポリ−またはオリゴ−エチレンイミン(PEI)、生分解性基、および比較的疎水性の基を含むカチオン性リポポリマーに関し、またsiRNAおよびアンチセンスなどのオリゴヌクレオチドを送達するためにそのようなリポポリマーを製造し、使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
ウイルストランスフェクションシステムや非ウイルストランスフェクションシステムの使用を含む多くの技術が、プラスミドDNAなどの生理活性薬剤を細胞に送達するために利用可能である。ウイルスシステムは、概して非ウイルスシステムよりも高いトランスフェクション効率を有するが、ウイルスシステムの安全性に関して疑問があった。Verma I.M および Somia N.,Nature 389(1997),pp.239−242;Marhsall E.Science 286(2000),pp.2244−2245を参照されたい。さらに、ウイルスベクターの調製は、複雑で費用のかかるプロセスになりやすい。非ウイルストランスフェクションシステムは、一般的にウイルスシステムよりも効率が劣るが、それらのシステムは一般的にウイルスシステムよりも安全で、調製しやすいと考えられるので、かなりの注目を集めてきた。
【0004】
多くの非ウイルストランスフェクションシステムは、プラスミドDNAに複合体化されたカチオン性ポリマーの使用を伴う。遺伝子キャリアとして用いられてきたカチオン性ポリマーの例としては、ポリ(L−リジン)(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、PAMAMデンドリマー、およびポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(pDMAEMA)が挙げられる。残念ながら、PLLによるトランスフェクション効率は、概して低いものであり、高分子量のPLLは、細胞に対して顕著な毒性を示してきた。幾つかの場合には、20,000〜25,000ダルトンの分子量の範囲にあるPEIは、エンドソーム分解性薬剤や標的剤を必要としない効率的な遺伝子移入を提供する。Boussif O.,Lezoualc’h F.,Zanta M.A.,Mergny M.D.,Scherman D.,Demeneix B.,Behr J.P.,Proc Natl Acad Sci USA.Aug.1,1995,92(16)7297−301を参照されたい。しかしながら、分子量で400〜2,000ダルトンの分子量の範囲にあるPEIは、プラスミドDNA送達に有効ではない。一連のポリアミドアミンデンドリマーが遺伝子送達システムとして研究されてきている。Eichman J.D.,Bielinska A.U.,Kukowska−Latallo J.F.,Baker J.R.Jr.,Pharm.Sci.Technol.Today 2000 July;3(7):232−245を参照されたい。残念ながら、PEIとデンドリマーの両方が、細胞に対して毒性があると報告されているので、ヒト患者への適用における遺伝子送達ツールとしてPEIを使用する可能性を制限している。さらに、商業的に実用的な遺伝子トランスフェクション効率を有するポリアミドアミンデンドリマーの費用は比較的高い。
【0005】
プラスミドDNAなどの遺伝子、分解性のカチオン性ポリマーを使用して作られたキャリアは、低減された細胞毒性でもって遺伝子を哺乳動物細胞に移入することが報告されている。Lim Y.B.,Kim S.M.,Lee Y.,Lee W.K.,Yang T.G.,Lee M.J.,Suh H.,Park J.S.,J.Am.Chem.Soc.,123(10),2460−2461,2001を参照されたい。残念ながら、これらの分解性システムも、非分解性ポリマーと比較して、より低い遺伝子移入効率を示した。低分子量PEIのトランスフェクション効率を向上させるために、Gosselinらは、高分子量PEIが、低分子量PEIを有するジスルフィド含有リンカーを用いて得ることができることを報告した。Gosselin,Micheal A., Guo,Menjin,および Lee,Robert J.Bioconjugate Chem.2001.12:232−245を参照されたい。ジチオビス(スクシニミジルプロピオネート)(DSP)およびジメチル−3,3’−ジチオビスプロピオンイミデート−2HCl(DTBP)を用いて製造されたPEIポリマーは、同様の遺伝子トランスフェクション効率と低い細胞毒性を示した。しかし、ジスルフィド含有リンカーは高価であり、このことは、このシステムの大量調製を困難にし、望ましくないものとしている。ジスルフィド含有リンカーを有するポリマーは、還元性条件下でのみ分解し、それは他の条件でのポリマー適用を制限している。
【0006】
Lynnらは、ジアクリレートを、カチオン性化合物間のリンカー分子として用いる生分解性のカチオン性ポリマーの合成方法を記載している。Lynn,David A.;Anderson,Daniel G.;Putnam,David;および Langer,Robert.J.Am.Chem.Soc.2001,123,8155−8156を参照されたい。しかし、これらのポリマーの合成は、完結するのに何日をも要し、遺伝子送達に使用できる有効な生成物の量が少ない。100種類を超えるカチオン性ポリマーが、Lynnらの方法に従って製造されたが、これらポリマーのうち2種類のみが効果的な遺伝子トランスフェクション効率を示しただけである。PEIなどのカチオン性ポリマーは、siRNA導入に有効であることは証明されなかった。Lynnらの方法に従って製造された生分解性のカチオン性ポリマーは、siRNAまたはオリゴヌクレオチドの送達には使用されてこなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、siRNAやオリゴヌクレオチドの細胞への送達を安全かつ効率的に促進するために使用できるカチオン性ポリマーの必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(本発明の概要)
本発明者らは、オリゴヌクレオチドを細胞に送達することのできる幾つかのポリマー組成物を見出した。ある実施形態では、ポリマーは、送達増強剤および/または画像診断用化合物などの他の部分にさらに複合体化することができる。さらに、本発明者らは、ポリマー組成物を使用して、オリゴヌクレオチドを細胞に送達するための方法を見出した。
【0009】
本明細書で開示される1実施形態は、式(I):
【化1】

(式中、PEIは、600ダルトン未満の分子量を有するポリエチレンイミン繰り返し単位である。Rは、電子対、水素、C−C10アルキル、C−C10ヘテロアルキル、C−C30アリール、およびC−C30ヘテロアリールから成る群から選択され;Lは、C−C50アルキル、C−C50ヘテロアルキル、C−C50アルケニル、C−C50ヘテロアルケニル、C−C50アリール、C−C50ヘテロアリール、C−C50アルキニル、C−C50ヘテロアルキニル、C−C50カルボキシアルケニルおよびC−C50カルボキシヘテロアルケニルから成る群から選択され、mは、約1〜約30の範囲にある整数である)から成る群から選択される繰り返し単位を含むポリマーを含む。
【0010】
1実施形態では、PEIが、式(IIa)および(IIb):
【化2】

(式中、xは約1〜約12の範囲にある整数であり、yは約1〜約6の範囲にある整数であり、およびzは約1〜約13の範囲にある整数である)から成る群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含むことができる。
【0011】
ポリマーは、幾つかの実施形態では、生分解性である。ポリマーが分解することのできる適切な機構は、非制限的に、加水分解、酵素切断、還元、光切断、および超音波処理を含む。
【0012】
幾つかの実施形態では、Lは、C−C50アルキル、C−C50ヘテロアルキル、C−C50アルケニル、C−C50ヘテロアルケニル、C−C50アルキニルおよびC−C50ヘテロアルキニルから成る群から選択されることができる。他の実施形態では、LはC12〜C18の脂肪酸、コレステロールおよびそれらの誘導体から成る群から選択されることができる。
【0013】
1実施形態では、ポリマーは、約500ダルトン〜約1,000,000ダルトンの範囲にある重量平均分子量を有することができる。別の実施形態では、ポリマーは、約1,000ダルトン〜約200,000ダルトンの範囲にある重量平均分子量を有することができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、ポリマーは架橋されることができる。
【0015】
本明細書で開示される別の実施形態は、ポリマーと複合体化されたオリゴヌクレオチドをさらに含むことができる。適切なオリゴヌクレオチドの例としては、非制限的に、siRNAなどのRNAオリゴマーおよびアンチセンスなどのDNAオリゴマーが挙げられる。
【0016】
オリゴヌクレオチドの他に、ポリマーは、真核細胞に入ることができる送達増強剤をさらに含むことができる。所望の場合には、ポリマーは、ポリマーと複合体化することのできる画像診断用化合物をさらに含むことができる。送達増強剤は、真核細胞における1つ以上の次の機能:受容体認識、細胞内移行、細胞エンドソームからのオリゴヌクレオチドの脱出、核局在化、オリゴヌクレオチドの放出、および系の安定化を促進することができる。オリゴヌクレオチドの例示としては、非制限的に、siRNAおよびアンチセンスを含む。他の実施形態では、送達増強剤は、ポリマーに結合することができる。
【0017】
本明細書で開示される1実施形態は、真核細胞を形質移入する方法を含み、それは細胞をポリマーと接触させ、それによりオリゴヌクレオチドを細胞に送達させることから成り、そこではポリマーはさらにオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0018】
本明細書で開示される別の実施形態は、哺乳類を治療する方法を含み、それは遺伝子治療が必要な哺乳類を特定して、オリゴヌクレオチドとコンジュゲートしたポリマーを哺乳類に投与することから成り、そこではオリゴヌクレオチドは、目的の遺伝子の発現を低下させるか発現抑制させるのに効果的であるsiRNAを含んでいる。
【0019】
幾つかの実施形態では、ポリマーは、ポリマーに複合体化された画像診断用合物をさらに含むことができる。本明細書で開示される1実施形態は、画像診断用化合物を哺乳類に送達する方法を含み、それは哺乳類にポリマーを投与することから成り、そこではポリマーは画像診断用化合物に複合体化されている。
【0020】
本明細書で開示される1実施形態は、複数のポリマーから成るポリマーライブラリーを含み、そこではR、L、PEI、およびmから成る群から選択される少なくとも1つのパラメータが、ポリマーの少なくとも2つに関して異なっている。
【0021】
本明細書で開示される別の実施形態は、ポリマーと真核細胞の特異的受容体を認識することができるリガンドから成る医学診断システムを含む。所望の場合、ポリマーはリガンドに結合させることができる。
【0022】
本明細書で開示されるさらに別の実施形態では、医薬組成物は、増感剤およびポリマーを含むことができる。増感剤は、可視線照射、紫外線照射、または両方に感受性であることができる。1実施形態では、医薬組成物は増感剤およびポリマーを含み、そこではポリマーはオリゴヌクレオチドに対して親和性を有することができる。
【0023】
1実施形態では、画像診断用組成物は、画像造影剤とポリマーを含むことができる。所望の場合、画像診断用組成物は、さらに標的剤を含むことができる。
【0024】
本明細書で開示される1実施形態は、式(I):
【化3】

[式中、PEIは、式(IIb):
【化4】

(式中、zは約1〜約13の範囲にある整数である)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むポリエチレンイミン繰り返し単位である。Rは、電子対、水素、C−C10アルキル、C−C10ヘテロアルキル、C−C30アリール、およびC−C30ヘテロアリールから成る群から選択されることができる。Lは、C−C50アルキル、C−C50ヘテロアルキル、C−C50アルケニル、C−C50ヘテロアルケニル、C−C50アリール、C−C50ヘテロアリール、C−C50アルキニル、C−C50ヘテロアルキニル、C−C50カルボキシアルケニルおよびC−C50カルボキシヘテロアルケニルから成る群から選択されることができ;およびmは、約1〜約30の範囲にある整数である]から成る群から選択される繰り返し単位を含む。
【0025】
1実施形態では、式(IIb)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むPEIは、600ダルトン未満の分子量を有することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、PEIは、式(IIa)
【化5】

(式中、xは約1〜約12の範囲にある整数であり、およびyは約1〜約6の範囲にある整数である)の繰り返し単位をさらに含むことができる。
【0027】
1実施形態では、PEIが式(IIa)の繰り返し単位をさらに含むポリマーは、600ダルトン未満の分子量を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
1実施形態は、ポリエチレンイミン、生分解性基、および比較的疎水性の「リポ」基を含むカチオン性リポポリマーを提供する。好ましいカチオン性リポポリマーは、式(I):
【化6】

からなる群から選択される繰り返し単位を含む。
【0029】
式(I)において、PEIは、ポリエチレンイミンであり、エステル結合は生分解性基であり、Lは比較的疎水性の「リポ」基を表す。例えば、ある実施形態においては、LはC−C50アルキル、C−C50ヘテロアルキル、C−C50アルケニル、C−C50ヘテロアルケニル、C−C50アリール;C−C50ヘテロアリール;C−C50アルキニル、C−C50ヘテロアルキニル、C−C50カルボキシアルケニルおよびC−C50カルボキシヘテロアルケニルから成る群から選択される。好ましい実施形態において、LはC−C50アルキル、C−C50ヘテロアルキル、C−C50アルケニル、C−C50ヘテロアルケニル、C−C50アルキニルおよびC−C50ヘテロアルキニルから成る群から選択される。より好ましい実施形態では、LはC12〜C18の脂肪酸、コレステロールおよびそれらの誘導体から成る群から選択される。
【0030】
式(I)中のRは、電子対または水素原子を表すことができる。当業者は、Rが電子対を表す場合に、式(I)の繰り返し単位は低いpHでカチオン性であることを理解する。また、式(I)においてRは、C−C10アルキル、C−C10ヘテロアルキル、C−C30アリール、またはC−C30ヘテロアリールなどの比較的疎水性のリポ基を表すこともあり、この場合、窒素原子は、通常は広いpH範囲にわたって正電荷を有することが理解されるであろう。
【0031】
PEIは、式(IIa)および/または(IIb):
【化7】

(式中、xは約1〜約12の範囲にある整数であり、yは約1〜約6の範囲にある整数であり、およびzは約1〜約13の範囲にある整数である)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むことができる。
【0032】
本明細書で使用される「式II」は、式(IIa)および(IIb)を別々に、または組み合わせて含むPEIを意味する。
【0033】
式(I)の繰り返し単位を含むカチオン性リポポリマーは、下記スキームAに示されるように式(III)のジアクリレートモノマーをポリエチレンイミン(PEI)と反応させることにより調製することができる。
スキームA
【化8】

【0034】
式(III)において、RおよびLは、式(I)の繰り返し単位を含有するカチオン性リポポリマーについて上に記載したと同じ意味を有する。スキームAは、式(I)の繰り返し単位を含むポリマーの調製を示す。
【0035】
スキームAに示される反応は、攪拌下に、好ましくは室温で数時間、エタノールなどの相互溶媒中でPEIとジアクリレート(III)とを混合し、次に溶媒を蒸発させて生成したポリマーを回収することにより実施することができる。本発明は理論に縛られるものではないが、PEIとジアクリレート(III)との反応は、PEIの1つ以上のアミンと、ジアクリレートの2重結合とのミカエル(Michael)反応を伴うと考えられる。J.March,Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.,pp.711−712(1985)を参照されたい。スキームAに示されるジアクリレートは、下記実施例に示される方法で調製することができる。
【0036】
式(I)の繰り返し単位を含む多様なポリマーは、PEIの分子量と構造、ジアクリレート(III)上のR基およびL基の大きさと種類、およびPEIに対するジアクリレート(III)の比率を変えることにより、スキームAにしたがって製造することができる。異なるジアクリレートの混合物および/または異なるPEIの混合物を使用してもよい。PEIは多機能性であり得るから、2種類以上のジアクリレートと反応することができる。架橋剤を用いて架橋カチオン性リポポリマーを製造することができ、および/または多機能性PEIとジアクリレート(III)の相対的な比率は、調整されて架橋カチオン性リポポリマーを製造することができる。PEIの分子量は、好ましくは約600ダルトン未満である。PEI:ジアクリレートのモル比は、好ましくは約1:0.5〜約1:20の範囲にある。カチオン性リポポリマーの重量平均分子量は、約500ダルトン〜約1,000,000ダルトンの範囲、好ましくは約1,000ダルトン〜約200,000ダルトンの範囲にある。分子量は、PEG標準を用いるサイズ排除クロマトグラフィーによるか、またはアガロースゲル電気泳動により決定することができる。1実施形態において、R、L、PEI、および/またはmが、少なくとも2つのポリマーについて異なる複数のカチオン性リポポリマーを調製することにより、ポリマーライブラリーが提供される。
【0037】
カチオン性リポポリマーは、好ましくは分解性であり、より好ましくは生分解性であり、例えば、加水分解、酵素切断、還元、光切断、および超音波処理からなる群から選択される機構により分解可能である。本発明は理論により制限されるわけではないが、細胞内の式(I)のカチオン性リポポリマーの分解は、エステル結合の酵素切断および/または加水分解により進行すると考えられる。
【0038】
カチオン性リポポリマーは、オリゴヌクレオチドと複合体を形成することができるので、オリゴヌクレオチドを細胞に送達するためのキャリアとして有用である。例えば、ポリマーは、目的の遺伝子の発現を低下させるか発現抑制させるのに効果的であるsiRNAなどのオリゴヌクレオチドに複合体化したポリマーを哺乳類に投与することにより、遺伝子治療を必要とする哺乳類の治療をするために使用することができる。ポリマーに複合体化されたオリゴヌクレオチドを含むカチオン性リポポリマーは、相互溶媒中においてカチオン性リポポリマーとオリゴヌクレオチドを混合することにより、さらに好ましくは下記の実施例に記載の方法により形成することができる。
【0039】
ポリマーに結合されるオリゴヌクレオチドを含むカチオン性リポポリマーは、真核細胞に入ることのできる送達増強剤をさらに含有してもよい。送達増強剤は、複合体と溶解または混合されてよく、またはカチオン性リポポリマーに結合(例えば、共有結合または複合体化)されてよい。送達増強剤は、典型的には、オリゴヌクレオチド/キャリア複合体の経膜輸送を増強し、輸送中の分解を減少し、および/またはキャリアからのオリゴヌクレオチドの放出を促進することにより、オリゴヌクレオチドの細胞への輸送を促進する物質である。siRNAなどのオリゴヌクレオチドの細胞への輸送は、好ましくはオリゴヌクレオチド/キャリア複合体が細胞膜、エンドソーム膜および核膜を通過した後に、オリゴヌクレオチドをキャリアから放出することから成る。例えば、siRNAの場合、siRNA/キャリア複合体は、最初に細胞膜を通過する。これがエンドサイトーシスにより達成される場合、siRNA/キャリア複合体は、次に細胞内部に移行する。siRNAカーゴとともにキャリアは、ポケットの形成により細胞膜に包まれ、続いてそのポケットはピンチオフ(pinched off)される。その結果は、siRNAカ−ゴとキャリアとを包む大きな膜結合構造物である細胞エンドソームとなる。次に、siRNA/キャリア複合体は、エンドソーム膜を通過し細胞質に脱出して、細胞質中での酵素的な分解を避け、核膜を横切る。いったん核内に入ると、siRNAカーゴは、キャリアから分離する。
【0040】
一般的に、送達増強剤は、ウイルスキャリアシステムと非ウイルスキャリアシステムの2つのカテゴリーに分けられる。ヒトウイルスは、障壁を克服する方法を進化させて上記のように核へと輸送するので、ウイルスまたはウイルス成分は核酸を細胞に運ぶために有用である。送達増強剤として有用なウイルス成分の1例はヘマグルチニンペプチド(HA−ペプチド)である。このウイルスペプチドは、エンドソーム破砕により生体分子の細胞への移行を容易にする。エンドソームの酸性pHでは、このタンパク質は、細胞質ゾルへの生体分子とキャリアの放出を引き起こす。送達増強剤として有用なウイルス成分の他の例は、当業者に公知である。
【0041】
非ウイルス送達増強剤は、典型的にはポリマー系または脂質系である。それらは一般的に、核酸の負電荷をつり合わせるように働くポリカチオンである。ポリカチオン性ポリマーは、部分的には、大きさが制限されないDNAプラスミドを縮合するそれらの能力や、ウイルスベクターに関する安全性の懸念などによって、非ウイルス遺伝子送達増強剤として非常に有望であることが示されている。具体例として、オリゴ−リジン、オリゴ−アルギニン、またはそれらの組合せなどの塩基性アミノ酸に富む領域を有するペプチドおよびPEIが挙げられる。これらのポリカチオン性ポリマーは、DNAの縮合により輸送を促進すると考えられる。PEIや星型デンドリマーなどの分岐鎖形のポリカチオンは、DNA縮合とエンドゾーム放出の両方を媒介することができる。Boussifら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol.92:7297−7301を参照されたい。PEIは、pH6.9でイオン化可能な末端アミンを有し、pH3.9でイオン化可能な内部アミンを有する高度に分岐したポリマーとして調製することができる。この構成のために、PEIは小胞膨潤を生じる小胞pHの変化をもたらすことができ、最終的にはエンドソーム捕捉からの放出ができる。
【0042】
送達を増強する他の方法は、オリゴヌクレオチドカ−ゴの送達の標的とされた細胞上の受容体により認識されるリガンドをカチオン性リポポリマーが含有することである。次に、細胞へのオリゴヌクレオチドの送達を受容体認識により開始することができる。本明細書で、用語「リガンド」は、標的細胞の表面またはその核もしくは細胞質ゾルにある特定の受容体タンパク質に結合することのできる生体分子をいう。1実施形態において、リガンドは、抗体、ホルモン、フェロモンもしくは神経伝達物質、または受容体に結合する、リガンドのように作用することのできる任意の生体分子であってよい。好ましい実施形態では、リガンドは、オリゴヌクレオチドである。抗体は、抗原に応答してBリンパ球により産生されるタンパク質をいう。リガンドが特定の細胞の受容体に結合する場合、エンドサイトーシスが刺激される。オリゴヌクレオチド輸送を強化するために、多様な種類の細胞とともに用いられてきたリガンドの例は、ガラクトース、トランスフェリン、糖タンパク質アシアロオロソムコイド、アデノウイルスファイバー、マラリアスポロゾイト周囲タンパク質、上皮細胞成長因子、ヒトパピローマウイルスキャプシド、線維芽細胞成長因子および葉酸である。葉酸受容体の場合、結合リガンドは、ポトサイトーシスと呼ばれるプロセスにより内部に取り込まれ、そこでは受容体がリガンドに結合し、周囲の膜が細胞表面から閉鎖され、内部に取り入れられた物質は次に小胞膜を通過して細胞質に入る。Gottschalkら(1994)Gene Ther 1:185−191を参照されたい。1実施形態においては、式(I)のポリマーおよび真核細胞の特定の受容体を認識するリガンドは、医療診断システムとして使用されることができる。
【0043】
多様な送達増強剤は、エンドソーム破壊により機能すると考えられる。例えば、上記のHA−タンパク質に加えて、欠陥ウイルス粒子もエンドソーム分解剤として用いられてきた。Cottenら(July 1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol.89:6094−6098を参照されたい。非ウイルス剤は、概して両親媒性または脂質系のいずれかである。
【0044】
siRNAなどのオリゴヌクレオチドの細胞の細胞質への放出は、エンドソーム破壊を媒介する、分解を減少させる、またはこのプロセスをそろってバイパスする物質により高めることができる。エンドソームpHを上昇させるクロロキンは、取り込まれた物質の分解をリソソームの加水分解酵素を阻害することにより低減するために用いられている。Wagnerら(1990)Proc Natl Acad Sci USA vol.87:3410−3414を参照されたい。PEIや星型デンドリマーなどの分岐鎖ポリカチオンは、上記で議論したようにエンドソーム放出も促進する。
【0045】
エンドソーム分解は、カチオン性リポポリマー/生体分子複合体に取り込まれるキメラタンパク質の成分としてジフテリア毒素とシュードモナス外毒素などの毒素のサブユニットを取り込むことによりバイパスされることができる。Uherekら(1998)J Biol.Chem.vol.273:8835−8841を参照されたい。これらの成分はエンドソーム膜を経て、小胞体に戻る核酸のシャトリングを促進する。
【0046】
細胞質にいったん入ると、オリゴヌクレオチドカーゴの核への輸送は、オリゴヌクレオチドキャリア上の核局在化シグナルの包含により高めることができる。例えば、核局在化シグナル(NLS)として機能する特定のアミノ酸配列を用いてよい。オリゴヌクレオチド/キャリア複合体上のNLSは、細胞質ゾルに位置する特定の核輸送受容体タンパク質と相互作用すると考えられる。オリゴヌクレオチド/キャリア複合体がいったん組み立てられると、複合体中の受容体タンパク質は、ヌクレオポリンと複数の接触を行なうことで、複合体が核孔を通って輸送されると考えられる。オリゴヌクレオチド/キャリア複合体がその目的部位に着いた後、それは解離して、カーゴと他の成分を解放する。SV40ラージT抗原に由来するPro−Lys−Lys−Lys−Arg−Lys−Valの配列(配列番号:1)を核への輸送に用いることができる。SV40ラージT抗原に由来するこの短い配列は、会合巨大分子の核への輸送を引き起こすシグナルを提供すると考えられる。
【0047】
カチオン性リポポリマーは、さらに、該ポリマーに複合体化された蛍光性であるか、放射性であるか、または放射線不透過染料などの画像診断用化合物を含有してよい。複合体は、相互溶媒中でカチオン性リポポリマーと画像診断用化合物を混合することにより形成することができる。ポリマー(画像診断用化合物と複合体化された)は、次いで哺乳動物へ投与後、PET、MRI、CT、SPECT、他などの周知の技術を用いて追跡することができる(Molecular Imaging of Gene Expression and Protein Function In Vivo With PET and SPECT,Vijay Sharma,PhD,Gary D.Luker,MD,and David Piwnica−Worms,MD,Ph.D.,JOURNAL OF MAGNETIC RESONANCE IMAGING 16:336−351(2002)を参照)。画像診断用組成物はまた、式(I)のポリマーを画像造影剤(例えば、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラアセチックアシッド(DOTA)−Gd(III)およびジエチレントリアミンペンタアセチックアシッド(DTPA−Gd(III))と組み合わせることにより形成することができる。所望の場合には、画像診断用組成物は、さらに、標的剤を含むことができる。適切な標的剤は、非制限的に、RGDペプチドおよびガラクトース基を含むことができる。
【0048】
別の実施形態は、増感剤とポリマーとを含む医薬組成物において、そこではポリマーが式(I)の繰り返し単位とオリゴヌクレオチドとを含み、さらに、真核細胞に入ることのできる送達増強剤および/またはポリマーに複合体化された画像診断用化合物を含んでよい医薬組成物を提供する。増感剤は、光(例えば、可視光照射および/または紫外線照射)または他の刺激にさらされて性質の変化を受けることにより(例えば、ポリマーの分解速度を高めることにより)、生体分子の送達を促進する化合物であってよい。増感剤は、それ自体が、刺激を受けると活性の変化を受ける生体分子であってよい。増感剤は、光活性化薬剤であってよい。適切な活性化薬剤として、フルオレセイン、メロシアニン、キサンテンおよびその誘導体および光反応性ピロール由来の大環状分子およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。適切な光反応性ピロール由来の大環状分子として、天然または合成ポルフィリン、天然または合成のクロリン、天然または合成のバクテリオクロリン、合成イソバクテリオクロリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、および広範なピロール系大環状システム、例えば、ポルフィセン、サフィリンおよびテキサフィリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0049】
実施例1
【化9】

塩化オキサリル(13.5mL、152 mmol)を、ジクロロメタン(DCM、200mL)とN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、3滴)中のオレイン酸1(10.7g、38mmol)の溶液に0℃で加えた。反応混合物を約1時間攪拌し、次に室温まで温めた。1時間後、溶液をトルエンで希釈し、蒸留した。残渣をジクロロメタン(200mL)に溶解し、0℃に冷却した。ジエタノールアミン(10.9mL、114mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(490mg、4mmol)、およびトリエチルアミン(21mL、152mmol)を溶液に加えた。溶液を0℃で30分間攪拌し、次に室温で反応を一晩進行させた。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、1NのHClとNaHCO水溶液で洗浄した。有機相を乾燥し(NaSO)、減圧下に濃縮した。次に、粗製残渣をシリカゲルカラム(10:1の酢酸エチル:メタノール)により精製して、化合物2の13.5g(99.9%)を無色の油状物として得た。
【0050】
実施例2
【化10】

トリエチルアミン(8.1g、80mmol)、DMAP(0.5g、4mmol)および2(7.1g、20mmol)をジクロロメタン200mlに室温で溶解した。システムにアルゴンを流し、溶液を氷浴中で冷却した。ジクロロメタン25ml中の塩化アクリロイル(5.4g、60mmol)を滴下して加えた。添加後、反応物を室温まで温め、一晩攪拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、水とNaHCO水溶液で洗浄した。有機相を乾燥し(NaSO)、減圧下に濃縮した。次に、粗製残渣をシリカゲルカラム(1:3の酢酸エチル:ヘキサン)により精製して、化合物3(分子量:463.65)の7.5g(81%)を無色の油状物として得た。
【0051】
実施例3
カチオン性リポポリマーの合成は、スキームAに従って、分子量232ダルトンを有するペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を化合物3と以下のように反応させることにより実施した。PEHA(Sigma−Aldrich)約0.1mmol(23mg)と化合物3約0.2mmol(93mg)を量り、小さいバイアルに入れ、エタノール1mLを加えて、素早く溶解した。反応混合物を室温で3時間攪拌した。次いで、反応混合物をエーテル中2MのHCl(5mL)を加えて中和した。白色の沈殿物YT−10を遠心分離して集め、エーテルで2回洗浄し、室温で減圧乾燥した。
【0052】
これは、同様な化合物を含む他の合成手順のモデルとして役立つ一般的な手順であり、一連の分解性カチオン性リポポリマーを合成するために用いることができる。ポリマーYT−11は、化合物3の約0.3mmol(139mg)が反応のために使用されたことを除き、同様の方法で製造された。また、PEIの他の種類が、同様の方法でYT−10またはYT−11のリポポリマー合成のために使用された。実施例3で合成された全てのリポポリマーは、表1に列挙される。YT−26は、重合後に硬いゲルとなって、中和されなかった。
【表1】

【0053】
実施例4
EGFP安定細胞株:HT−1080−EGFPとHeLa−EGFP安定細胞株は、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子発現を有するそれぞれHT−1080とHeLa細胞に由来し、それらはpEGFP−N1プラスミドDNA(BD Biosciences Clontech)をHT−1080とHeLa細胞にトランスフェクションさせることによって調製された。トランスフェクションされた細胞は、ネオマイシン耐性能力を用いて選択、クローン化され、pEGFP−N1プラスミド上に担持された。細胞培養は、37℃、5%CO下で、10%ウシ血清、100単位/mlペニシリンと100μg/mlストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で維持された。EGFP発現は、蛍光顕微鏡(Olympus)の下で観察することができる。HT−1080−EGFPとHeLa−EGFP細胞の両方は、青色励起光と緑色発光フィルタ設定の組合せによって、明るい緑の蛍光を示した。
【0054】
実施例5
siRNA送達研究:EGFP遺伝子を標的とするsiRNAは、Dharmacon Research Inc.によって合成された。EGFP遺伝子を標的とするsiRNAとルシフェラーゼ遺伝子は、21bpの二本鎖RNAであり、それらのセンス鎖の配列は、NNC GAG AAG CGC GAU CAC AUG(配列番号:2)であった。
【0055】
1.5×10のHT−1080−EGFPとHeLa−EGFP細胞を、トランスフェクションの24時間前に、96−ウエルプレートの各ウエルに対して植え付けた。各ウエルに対して、リポポリマー1.5μgを含む溶液7.5μLのアリコートを、15pmolのsiRNAを含む7.5μLのDNA溶液に加え、完全に混合した。DNAとリポポリマーの混合物は、siRNA−リポポリマー複合体の形成のために、室温で15分間インキュベーションされた。複合体を各ウエルに加え、細胞を37℃、5%COで48時間インキュベーションした。リポフェクタミンが陽性対照として使用された。siRNA送達効率は、GFPシグナル分析によって測定された。
【0056】
図1は、リポポリマー(YT−10、YT−11、YT−22、YT−23、YT−24およびYT−25)、リポフェクタミン2000(陽性対照)でのsiRNA処理後の、および未処理(陰性対照)siRNAによる、HT−1080−EGFP細胞中での強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)発現の写真である。
【0057】
図2は、リポポリマー(YT−10、YT−11、YT−22、YT−23、YT−24およびYT−25)、リポフェクタミン2000(陽性対照)でのsiRNA処理後の、および未処理(陰性対照)siRNAによる、HeLa−EGFP細胞中での強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)発現の写真である。
【0058】
図1と2で示されるように、発現抑制された標的siRNAをいかなる処理もしないと、強い蛍光によって示されるように、EGFP発現は阻害されなかった。図1と2の未処理を参照されたい。リポポリマーキャリアにより発現抑制された標的siRNAの処置により、EGFPの発現は、弱い蛍光によって示されるように、阻害された。図1と2のYT−10、YT−11、YT−22、YT−23、YT−24、YT−25、およびリポフェクタミン2000を参照されたい。HT−1080−EGFP細胞では、YT−10、YT−11、YT−22およびYT−23は、EGFP発現に対して著しい阻害効果を示した。YT−24とYT−25もまた、siRNA送達に有効であった。さらに、YT−11は、siRNAを送達する能力を示した。これらの結果は、リポポリマーが、市販のリポフェクタミン2000と比較して、siRNAのより良好な、または比肩し得る送達剤であることを示している。
【0059】
本発明は、実施形態および実施例に関して記述されてきたが、いろいろな省略、付加および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく上記の構成および方法がなされ得ること、そしてそのような修正と変更の全てが本発明の範囲内にあると意図されることを当業者は認識しなければならない。従って、本発明は上記の特許請求の範囲によって制限されるのみである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】リポポリマー(YT−10、YT−11、YT−22、YT−23、YT−24およびYT−25)、リポフェクタミン2000(陽性対照)に複合体化されたsiRNA、および未処理(陰性対照)のsiRNAによる処置後の、HT−1080−EGFP細胞中での強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)発現の写真である。
【0061】
【図2】リポポリマー(YT−10、YT−11、YT−22、YT−23、YT−24およびYT−25)、リポフェクタミン2000(陽性対照)に複合体化された、および未処置(陰性対照)のsiRNAによる処置後の、HeLa−EGFP細胞中での強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)発現の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
PEIは、600ダルトン未満の分子量を有するポリエチレンイミン繰り返し単位であり;
Rは、電子対、水素、C−C10アルキル、C−C10ヘテロアルキル、C−C30アリール、およびC−C30ヘテロアリールから成る群から選択され;
Lは、C−C50アルキル、C−C50ヘテロアルキル、C−C50アルケニル、C−C50ヘテロアルケニル、C−C50アリール、C−C50ヘテロアリール、C−C50アルキニル、C−C50ヘテロアルキニル、C−C50カルボキシアルケニルおよびC−C50カルボキシヘテロアルケニルから成る群から選択され、;ならびに
mは、約1〜約30の範囲にある整数である)から成る群から選択される繰り返し単位を含むポリマー。
【請求項2】
PEIが、式(IIa)および(IIb):
【化2】

(式中、xは約1〜約12の範囲にある整数であり、yは約1〜約6の範囲にある整数であり、およびzは約1〜約13の範囲にある整数である)から成る群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
生分解性である、請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項4】
加水分解、酵素切断、還元、光切断、および超音波処理からなる群から選択される機構により分解性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
Lが、C−C50アルキル、C−C50ヘテロアルキル、C−C50アルケニル、C−C50ヘテロアルケニル、C−C50アルキニルおよびC−C50ヘテロアルキニルから成る群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
Lが、C12〜C18の脂肪酸、コレステロールおよびそれらの誘導体から成る群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
約500ダルトン〜約1,000,000ダルトンの範囲にある重量平均分子量を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
約1,000ダルトン〜約200,000ダルトンの範囲にある重量平均分子量を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項9】
架橋されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項10】
ポリマーに複合体化されているオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項11】
オリゴヌクレオチドが、RNA−オリゴマーおよびDNA−オリゴマーから成る群から選択される、請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドが、siRNAまたはアンチセンスである、請求項10に記載のポリマー。
【請求項13】
真核細胞に入ることのできる送達増強剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項14】
ポリマーに複合体化された画像診断用化合物をさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項15】
送達増強剤が、受容体認識、細胞内移行、細胞エンドソームからのオリゴヌクレオチドの脱出、核局在化、オリゴヌクレオチドの放出、およびシステムの安定化からなる群から選択される真核細胞における1つ以上の機能を促進する、請求項13〜14のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドが、siRNAおよびアンチセンスから成る群から選択される、請求項15に記載のポリマー。
【請求項17】
送達増強剤がポリマーに結合されている、請求項13〜16のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項18】
式(I):
【化3】

[式中、
PEIは、式(IIb):
【化4】

(式中、zは約1〜約13の範囲にある整数である)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むポリエチレンイミン繰り返し単位であり;
Rは、電子対、水素、C−C10アルキル、C−C10ヘテロアルキル、C−C30アリール、およびC−C30ヘテロアリールから成る群から選択され;
Lは、C−C50アルキル、C−C50ヘテロアルキル、C−C50アルケニル、C−C50ヘテロアルケニル、C−C50アリール、C−C50ヘテロアリール、C−C50アルキニル、C−C50ヘテロアルキニル、C−C50カルボキシアルケニルおよびC−C50カルボキシヘテロアルケニルから成る群から選択され;ならびに
mは、約1〜約30の範囲にある整数である]から成る群から選択される繰り返し単位を含むポリマー。
【請求項19】
PEIが、600ダルトン未満の分子量を有する、請求項18に記載のポリマー。
【請求項20】
PEIが、式IIa:
【化5】

(式中、xは約1〜約12の範囲にある整数であり、およびyは約1〜約6の範囲にある整数である)の繰り返し単位をさらに含む、請求項18に記載のポリマー。
【請求項21】
PEIが、600ダルトン未満の分子量を有する、請求項20に記載のポリマー。
【請求項22】
細胞を請求項10〜17のいずれか1項に記載のポリマーと接触させ、それによりオリゴヌクレオチドを細胞に送達することからなる真核細胞の形質移入方法。
【請求項23】
R、L、PEI、およびmからなる群から選択される少なくとも1つのパラメータが、ポリマーの少なくとも2つに対して異なる請求項1〜21のいずれか1項に記載の複数のポリマーを含むポリマーライブラリー。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−532564(P2009−532564A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504233(P2009−504233)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/008106
【国際公開番号】WO2007/120479
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】