説明

生分解性シート、生分解性容器

【課題】 木質バイオマスから、生産効率よくかつ繊維回収率よく、パルプを製造する。
【解決手段】 木質バイオマスを、アンモニア又はアンモニア発生剤の存在下、蒸煮(例えば、温度130℃以上の加圧水で処理)することによりパルプを製造する。前記アンモニア発生剤としては、例えば、アミン基を有する化合物、アミド基を有する化合物(尿素など)、炭酸系アンモニウム(炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなど)、有機酸アンモニウムが挙げられる。蒸煮終了後のpHは、通常、4〜9程度である。前記蒸煮の後、パルプから分離して回収した処理液を、前記アンモニア又はアンモニア発生剤として再利用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性を有するシート及び容器と、その派生技術に関するものであり、より詳細には木質バイオマスを有効利用できる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の気運の高まりを受け、石油や石炭などの化石資源に代えて、バイオマスを有効利用することが強く求められている。
【0003】
バイオマスとは、「光合成によって太陽エネルギーの変換によって生成される全ての有機物」であると定義されており、世界中の年間消費エネルギーの10倍に相当する量のバイオマスが毎年作られている。地球上のバイオマス資源の大部分を占める木質バイオマスは主に樹木からなり、セルロース(45%)、ヘミセルロース(30%)、リグニン(25%)などの成分から構成される。
【0004】
我が国(日本国)においては、農林水産省、環境省、文部科学省、経済産業省、国土交通省、内閣府の6官庁がまとめた「バイオマス・日本総合戦略」が2002年12月に閣議決定されている。この戦略は、バイオマスをエネルギーや資源として有効利用していくための具体策をまとめたものである。日本国内のバイオマスは、物質資源としての利用を考えれば炭素量換算で約3,300万t(日本国内で生産されるプラスチックに含まれる全炭素量の3.3倍)であり、エネルギー資源としての利用を考えれば原油換算で約3,500万kl(2000年の原油輸入量の14%)に相当しており、2010年には廃棄物系のバイオマスの80%以上を再利用し、未利用バイオマスの25%以上を活用することを目標にしている。
【0005】
木質バイオマスについては、農林水産省林野庁を中心に国家プロジェクトが進められており、1)木材成分総合利用、2)木材炭化成分多用途利用、3)樹木抽出成分利用、4)木質複合材料、5)樹木生理機能性物質、6)機能性木質新素材、7)住環境向上樹木成分利用、8)木質バイオマスエネルギーなどの10数分野の技術研究組合による約200項目の研究開発が精力的に進められている。例えば、継続中の開発事業である「木質資源循環利用技術の開発」は、常温常圧相分離法によるリグニン分離技術の研究成果を基にして、実用化が進められている。この方法は、硫酸とフェノールの混合溶媒中でリグニンをフェノールに変換し、相分離によってフェノールとして単離する技術である(非特許文献1)。しかしこの方法は、硫酸とフェノールを使用するため、設備の材質、作業の安全性、薬品の回収などの点で改善の余地を残している。
【0006】
一方、本発明者らは、古紙、動物糞、生ゴミなどの廃棄物系バイオマスや、草炭などの未利用バイオマスを原料として、新しいタイプの生分解性シートを開発して特許出願した(特許文献1参照)。より詳細には、この技術は、古紙を一旦解繊した後、この古紙繊維の結合化剤や黒色化剤として機能する動物糞、生ゴミ、草炭などと共に熱処理し、繊維間に化学結合を形成することによって、生分解性、耐水性、遮光性などを兼ね備えたシートを製造するものである。
【0007】
しかしながら、原料の長期安定供給の観点に立てば、古紙、動物糞、草炭、生ゴミなど以外のバイオマス資源、特に未利用の廃棄物系木質バイオマス(間伐材、剪定枝葉、製材工場で生じる廃材)をも有効利用することが求められる。加えてこの廃棄物系木質バイオマスは、繊維原料としての古紙、その結合化剤や黒色化剤としての動物糞、生ゴミ、草炭
などのいずれとも置き換えることができれば、廃棄物系木質バイオマスの有用性が極めて大きくなる。
【0008】
ところで木材などの木質バイオマスから、繊維原料としてパルプを得る技術が既に確立されているのは周知の通りである。すなわちパルプ製造技術としては、機械的パルプ法と化学パルプ法が実用化している。機械的パルプ法は、機械的剪断力を利用して、繊維間を接着している中間層を破壊し、繊維細胞を解離する方法である。しかし、機械的パルプ法の実用例は少なく、殆どが化学パルプ法である。化学パルプ化法は、硫酸を用いるサルファイトパルプ法と、アルカリ蒸煮(蒸解)するクラフトパルプ法が挙げられるが、国内外を問わずその主流はクラフトパルプ法である。クラフトパルプ法では、アルカリ蒸煮によって、木質繊維(セルロース、ヘミセルロースなど)の間を結合するリグニンを溶解した後、蒸煮液からパルプを回収する方法である。
【0009】
しかしクラフトパルプ法は、リグニンやヘミセルロースが蒸煮液(排液、黒液)側に溶出してしまうため、パルプ収率(繊維回収率)が低い。例えば、パルプを1t製造するに当たり、排液(黒液)が約10m3程発生し、かつこの黒液中には、リグニンやヘミセル
ロースを主成分とする有機物が約0.5〜1.5t程度溶けている(非特許文献2参照)。
【0010】
またクラフトパルプ法では、前記黒液は燃料として再利用されており、この点では木質バイオマスを無駄なく利用できる完成度の高い方法であるといえるが、黒液にはアルカリ化合物などの無機物も溶けておりその量は、パルプ1t製造するに当たり、約400kgにもなる(非特許文献2参照)。そのため燃料として利用する際に、アルカリ化合物を除去・回収する必要があり、そのためのプラントを建設しなければならず、コストが大きくなる。
【0011】
実用化段階にある方法としては、例えば、1)フェノール、クレゾール、有機酸、アルコールなどの有機溶媒を用いてリグニンを溶解し、パルプを得る方法(溶媒分離法。例えば、非特許文献3〜5参照)、2)蒸煮・爆砕法による繊維分離法、3)白色腐朽菌を用いた生物分解法(非特許文献6)などが挙げられる。しかし溶媒分離法では、有機溶媒の回収設備が必要になる。また繊維分離法では、短繊維化してしまい、長繊維のものを得るのが困難になる。生物分解法は生産効率が非常に低い。
【非特許文献1】船岡、「A new type of phenolic lignin−based network polymer with the structure−variable fanction composed of 1,1−Diarylpropane Units(1,1−ジアリールプロパンユニットによって構成される構造調節基を備えた新規フェノール型リグニン系編目ポリマー)」、Polymer International、1998年、第47巻、277−290頁
【特許文献1】特開2002−38400号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献2】佐田、外1名、「リグニンの有効利用」、紙パルプ技術協会誌、1989年、第43巻、751−767頁
【非特許文献3】Sano、外2名、「Pulping of wood at atmospheric pressure I. Pulping of hardwoods with aqueous acetic acid containing small amount of organic sulfonic acid.(大気圧下での木材のパルプ化I 少量の有機スルホン酸を含む酢酸水による硬質木材のパルプ化)」、木材学会誌、1989年、第35巻、第11号、991−995頁
【非特許文献4】Young、外2名、「Organic acid pulping of wood Part II. Acetic acid pulping of aspen.(木材の有機酸パルプ化II ポプラの酢酸パルプ化)」、Holzforshung、1986年、第40巻、第2号、第99−108頁
【非特許文献5】Lora、外1名、「Organosolv pulping:a versatile approach to wood refining.(有機溶媒パルプ化:木材精製の多面的アプローチ)」、Tappi Journal、1985年、第68巻、第8号、第94−97頁、
【非特許文献6】Blanchette、外4名、「Cell wall alterations in loblolly pine wood decayed by the white−rot fungus,Ceriporiopsis subvermispora.(白色腐朽菌セリポリオプシスサブバーミスポラによって腐敗したタエダマツの細胞壁変化)」、Journal of Biotechnology、1997年、第53巻、2,3号、第203−213頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、繊維原料、及びその黒色・結合化剤を、木質バイオマスから製造すること、従って木質バイオマスだけからでも生分解性シートや生分解性容器の製造を可能にすることにある。
【0013】
本発明の他の目的は、木質バイオマスから、生産効率よくかつ繊維回収率よく、パルプ、その抄紙シート、生分解性シート、生分解性容器などを製造することにある。
【0014】
本発明のその他の目的は、木質バイオマスから長繊維のパルプ、その抄紙シート、生分解性シート、生分解性容器などを製造することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、アルカリ化合物、有機溶媒などの回収設備を必要とすることなく、木質バイオマスからパルプ、その抄紙シート、生分解性シート、生分解性容器などを製造することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、湿潤引張強度と生分解性が極めて良好な生分解性シート及び生分解性容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、
繊維原料を得るために木質バイオマスを蒸煮してパルプにするにあたり、アンモニアやアンモニア発生剤(アンモニアは、蒸煮中に生成する有機酸と反応してアンモニウム塩になるので、以下、アンモニアとアンモニア発生剤を併せて、アンモニウム系化合物と称する場合がある)を使用すると、セルロースの分解を抑制しつつ、ヘミセルロースの溶出を抑制できるためか、長繊維のパルプ(繊維原料)を優れた繊維回収率及び生産効率で得ることができること、
さらには木質バイオマスや前記パルプの製造過程で発生する粉末成分を、水中又は前記蒸煮工程の排液中で、蒸煮したもの(流動性物質)は、前記パルプ(繊維原料)の黒色・結合化剤として使用できること、
しかも前記方法によって得られたパルプ(繊維原料)と黒色・結合化剤とから生分解性シートを製造すると、この生分解性シートは長繊維であるために湿潤引張強度に優れること、加えて前記アンモニウム系化合物に由来するアンモニウム塩を含んでおり、このアンモニウム塩が肥料として機能するため環境に対しても優しいこと、そして黒色・結合化剤中に含まれていたセルロースの分解物(糖類など)が、微生物の栄養源になるため、生分解性が極めてよくなること、
などを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明に係るパルプの製造方法は、木質バイオマスを、アンモニア又はアンモニア発生剤の存在下、蒸煮(例えば、温度130℃以上の加圧水で処理)する点に要旨を有する。前記アンモニア発生剤としては、例えば、アミン基を有する化合物、アミド基を有する化合物(尿素など)、炭酸系アンモニウム(炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなど)、有機酸アンモニウムが挙げられる。蒸煮終了後のpHは、通常、4〜9程度である。前記蒸煮の後、パルプから分離して回収した処理液を、前記アンモニア又はアンモニア発生剤として再利用してもよい。またパルプを粉状成分と繊維成分に分離してもよい。
【0019】
上記のようにして得られたパルプは、抄紙することによってシート(抄紙シート)にできる。このようにして得られた抄紙シートは、木質繊維からなり、アンモニウム塩を含有する点に特徴がある。また引張強度が12MPa以上である点にも特徴がある。
【0020】
前記粉状成分や前記木質バイオマスはいずれも、水中や前述のパルプから分離回収された処理液中で蒸煮することによって黒色・結合化剤にできる。この黒色・結合化剤を、(I)前述のシートに含浸した後、又は(II)前述のパルプと共に混合処理してシート形状や容器形状に成形した後、熱処理することによって、生分解性シートや生分解性容器を製造できる。このようにして得られた生分解性シートや生分解性容器は、木質繊維から構成されており、アンモニウム塩を含有している点に特徴がある。またセルロース分解物を含有しており、かつ湿潤引張強度が3MPa以上である点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明ではパルプ、抄紙シート、黒色・結合化剤、及び生分解性シート、生分解性容器のいずれについても、木質バイオマスの蒸煮処理を利用して製造できる。そのため生分解性シートや生分解性容器を木質バイオマスだけからでも製造できる。
【0022】
また本発明のパルプや抄紙シートの製造方法によれば、蒸煮時にアンモニウム系化合物を使用しているため、長繊維のパルプを優れた繊維回収率及び生産効率で得ることができる。加えてこのアンモニウム系化合物は、アルカリ(水酸化ナトリウムなど)とは異なり、環境に優しく、回収する必要がない。
【0023】
本発明の生分解性シートや生分解性容器によれば、長繊維であり湿潤引張強度が高い。しかもアンモニウム塩とセルロース分解物(糖類など)とを含んでいるため、環境に優しく、生分解性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、パルプやその黒色・結合化剤などを木質バイオマスから製造することを目的とする。木質バイオマスとしては、樹木から得られる木材が代表的であるが、枝、葉などを含んでいてもよい。好ましい木質バイオマスは、廃棄物系木質バイオマス(間伐材、剪定枝葉、製材工場で生じる廃材など)である。木質バイオマスを廃棄することなく有効利用できるためである。
【0025】
以下、このような木質バイオマスを利用する本発明について、詳細に説明する。
【0026】
[パルプ]
パルプは、前記木質バイオマスを水(水蒸気を含む)で蒸煮(蒸解、亜臨界処理などとも称される)することによって得られる。そして本発明の特徴は、前記蒸煮を、アンモニア又はアンモニア発生剤(アンモニウム系化合物)の存在下で行っている点にある。アンモニウム系化合物が存在しないと、蒸煮によって木質バイオマスが分解していくにつれて、有機酸が副成してpHが下がり、木質バイオマスの分解が加速する傾向があるが、アン
モニウム系化合物によってこのpHの低下を抑制することによって木質バイオマスをマイルドな条件で分解できる。そのため木質繊維(セルロース、ヘミセルロースなど)の分解を抑制でき、さらにはヘミセルロースの溶出も防止でき、繊維回収率よく長繊維のパルプを得ることができる。しかも生産効率が著しく低下することもない。加えてアンモニウム系化合物は、塩害を発生させるようなアルカリ(水酸化ナトリウムなど)とは異なり、環境に優しく、回収する必要がない。また仮に蒸煮工程からの排液を燃焼する場合であっても、スラッジを発生させることがなく、この点からも回収が不要であるといえる。
【0027】
好ましいアンモニウム系化合物は、アンモニア発生剤である。アンモニアは、蒸煮開始時からpHを高くする虞があるのに対して、アンモニア発生剤は蒸煮の進行に伴ってアンモニアを発生させるため、蒸煮液のpHを中性付近又は弱酸性に維持するのが容易である。そのため木質バイオマスのマイルドな分解が容易になる。
【0028】
アンモニア発生剤は、蒸煮処理条件でアンモニアを発生する限り特に限定されない。アンモニア発生剤としては、例えば、尿素などのアミド基を有する化合物、メチルアミン、エチルアミンなどのアミン基を有する化合物、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどの炭酸系アンモニウム、酢酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムなどの有機酸アンモニウムなどが挙げられる。これらアンモニア発生剤は、単独で又は二種以上複合して使用できる。
【0029】
好ましいアンモニア発生剤は、実質的にスラッジ発生成分(Na、K、Mg、Caなどの無機成分など)を含有しないアンモニア発生剤、特に蒸煮条件でアンモニアとガス成分(炭酸ガスなど)とに分解するアンモニア発生剤、例えば、尿素、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムである。このようなアンモニア発生剤は、環境に対して極めて優しい。特に好ましいアンモニア発生剤は尿素である。尿素は臭気性が低く、作業環境を良好にできる。
【0030】
またアンモニア発生剤は、水溶性であることが推奨される。水溶性であれば、水溶液として蒸煮反応系に添加することができ、作業性に優れる。
【0031】
アンモニア系化合物は、蒸煮反応終了時に、pHが約4以上(好ましくは5以上)、9以下(好ましくは8.5以下、さらに好ましくは8以下、特に7以下)になる程度の量を使用するのが望ましい。蒸煮反応終了後のpHが前記範囲の場合、繊維回収率が最も高くなり、また長繊維のものが得られるために抄紙シートにしたときの引張強度が最も高くなる。また詳細については後述するが、蒸煮反応した後は、パルプを分離して処理液を回収し、この処理液を後述の黒色・結合化剤の製造過程で再利用することがある。pHを高くなり過ぎないようにすることで、処理液を再利用した場合でも、黒色・結合化剤を効率よく製造できる。なおアンモニア発生剤として酸性ガス(炭酸ガスなど)が発生するもの(尿素、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなど)を用いた場合、反応直後に溶解していた酸性ガスが徐々に反応液から抜けていくため、蒸煮反応終了直後はpHが安定しない。従って酸性ガスが発生するアンモニア発生剤を使用する場合には、前記pHは、反応終了直後ではなく、値が安定した後のpH(例えば約12〜16時間程度経過した後のpH)を意味する。
【0032】
蒸煮処理の温度は、例えば、130℃以上、好ましくは140℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。蒸煮処理温度が低すぎると、処理効率が低下する。また蒸煮処理温度は、230℃以下、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。蒸煮処理温度が高すぎると、木質繊維が分解しやすくなり、繊維回収率が低下しやすくなる。
【0033】
蒸煮処理では加圧する(大気圧超にする)必要があり、圧力は、例えば、0.3MPa以上、好ましくは0.4MPa以上、さらに好ましくは0.5MPa以上である。なお前記圧力は、通常、5MPa以下程度(例えば、3MPa以下程度)である。
【0034】
蒸煮処理時間は、例えば、10分以上(特に30分以上)、20時間以下(好ましくは10時間以下、さらに好ましくは6時間以下)程度である。
【0035】
蒸煮処理後、濾過、遠心分離などの適当な手段によって、反応混合液から固形分を分離してパルプを得ることができる。パルプを分離回収した後の液(処理液)は、スラッジを発生させないため、木質バイオマス燃料としても優れているが、後述の黒色・結合化剤の製造過程で再利用することが推奨される(詳細は後述する)。この場合、必要に応じて酸を添加して処理液のpHを下げてもよい。また処理液の一部又は全部を、前記アンモニウム系化合物の一部又は全部として再利用することも推奨される。
【0036】
上記のようにして得られたパルプは、適当に解繊[例えばリファイナーによって解繊(叩解)]することが多い。解繊したパルプは、適当に洗浄(例えば水洗浄)してもよいが、洗浄液の回収が必要になるため、洗浄しないことが推奨される。なお解繊時に粉状成分が発生した場合、篩い分けなどの適当な手段によって繊維成分(パルプ成分)と粉状成分を分離することが推奨される。この粉状成分は、後述の黒色・結合化剤の原料として使用できる。
【0037】
そして前記パルプは、抄紙することによってシートにできる。このシート(抄紙シート)は、木質繊維からなり、前記アンモニウム系化合物に由来する成分(アンモニウム塩)を含有している点で従来の抄紙シートと区別できる。この抄紙シートは、さらに長繊維で構成されているため、引張強度が高い。引張強度は、例えば、12MPa以上、好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上である。引張強度の上限は、通常、45Mpa程度(例えば30MPa程度)である。なお抄紙法によっては引張強度に異方性が出る場合があるが、このような場合にはその平均値が前記値を満足していればよい。
【0038】
前記抄紙シートは、後述する生分解性シートの基材として使用するのが望ましいが、必要に応じて他の用途(例えば、包装用シート)などに使用してもよい。他の用途に使用する場合、使用後はゴミとして土壌中に埋められたり、焼却処理されることが想定されるが、本発明の抄紙シートによれば、生分解性を有し、しかもアンモニウム塩が肥料として機能するため、土壌中に埋められても環境保護の点で極めて優れている。また本発明の抄紙シートは、スラッジ発生成分を含有しないため、焼却処理した場合でも焼却炉を損傷することがない。
【0039】
[黒色・結合化剤]
黒色・結合化剤とは、木質繊維からなる成形物(シート、容器など)において、木質繊維同士を結合化して強度を高めると共に、当該成形物を黒色化(褐色化を含む)する役割を有するものであり、本発明者らによる先の発明(特開2002−38400号公報参照)の動物糞、生ゴミ、草炭などに対応するものである。本発明では、木質バイオマス(好ましくは廃棄物系木質バイオマス)及び/又は木質バイオマス由来の固形物[例えば、上記解繊工程で繊維成分(パルプ成分)と分離して回収される粉状成分など]を原料として、黒色・結合化剤を製造する。
【0040】
すなわち本発明では、前記原料(木質バイオマス、木質バイオマス由来の固形物など)を、水(水蒸気を含む)中及び/又は、前記パルプの製造過程でパルプから分離回収された処理液で蒸煮する。これらの液中で蒸煮すれば、蒸煮反応が進行するにつれて有機酸が生成してpHが下がるため、原料を効率よく分解できる。そのためヒドロキシル基と脱水結合可能な基(アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基など)を有する化合物(例えば、リグニン、その加水分解物など。以下、結合性成分と称する場合がある)を効率よく生成できる。この結合性成分は、後述の熱処理時に、木質繊維(セルロース、ヘミセルロース)のヒドロキシル基と脱水結合を形成するためか、木質繊維からなる成形物(シート、容器など)の強度や耐水性を向上するのに有用である。また水による蒸煮分解物は黒色乃至褐色に着色しているため、木質繊維からなる成形物を黒色乃至褐色化するのにも有用である。
【0041】
蒸煮反応終了後のpHは、例えば、4未満程度である。
【0042】
蒸煮処理温度は、例えば、150℃以上、好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。蒸煮処理温度が低すぎると、処理効率が低下する。また蒸煮処理温度は、例えば300℃以下、好ましくは280℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。
【0043】
蒸煮処理の圧力は、加圧(大気圧超)であり、例えば、0.5MPa以上、好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは1.5MPa以上である。なお前記圧力は、通常、10MPa以下程度(例えば、5MPa以下程度)である。
【0044】
蒸煮処理時間は、例えば、1分以上(例えば10分以上)、5時間以下(好ましくは1時間以下、さらに好ましくは30分以下)程度である。
【0045】
なお蒸煮処理後は、中和することが推奨される。後述の熱処理(脱水縮合反応)の効率を高めるためである。中和には、環境保護の観点から、窒素系塩基(アンモニア、炭酸アンモニウムなどの窒素原子含有塩基)を使用するのが望ましい。
【0046】
上記のようにして得られる黒色・結合化剤は、木質繊維の結合と着色に有用であるだけでなく、生分解性にも極めて優れている。前記原料(木質バイオマス、木質バイオマス由来物)を水で蒸煮すると、木質繊維(セルロース、ヘミセルロース)が分解し、その構成ユニットであるグルコースや、比較的低分子量のセルロース(糖鎖物質)などの糖類が多量に生成し、微生物のエネルギー源を多量に含むようになるためである。
【0047】
[生分解性容器、生分解性シート]
前記パルプ(又は抄紙シート)及び黒色・結合化剤から、生分解性を有する容器及びシートを製造できる。すなわち生分解性容器は、パルプと黒色・結合化剤とを混合処理して容器形状に成形した後、熱処理することによって製造できる。なお前記混合処理の際に必要に応じて水などを加えて成形性を調製してもよく、また熱処理前に必要に応じて予備乾燥してもよい。
【0048】
一方、生分解性シートは、シート形状に成形する以外は、前記生分解性容器と同様にして製造できる。また生分解性シートは、本発明の抄紙シートに黒色・結合化剤を含浸させ、熱処理することによっても製造できる。
【0049】
前記生分解性容器及び生分解性シートの製法において熱処理するのは、木質繊維(セルロース、ヘミセルロースなど)のヒドロキシル基と、黒色・結合化剤に含まれる結合性成分との間で脱水反応させ、容器又はシートの強度や耐水性(湿潤引張強度)を高めるためである。なお本発明の熱処理とは、水が蒸発した後(水が実質的に存在しなくなった後)、脱水反応によってさらに分子内の水を排出する操作を意味するものであり、単に水を蒸発させるに過ぎない乾燥とは異なる操作である。
【0050】
熱処理温度(熱処理の最高到達温度)は、熱処理方式や時間に応じて適宜設定できるが、例えば加熱炉で加熱する場合、80℃以上(好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上)、200℃以下(好ましくは160℃以下、さらに好ましくは140℃以下)の範囲から設定できる。熱処理温度が低すぎると、容器及びシートの耐水性を十分に高めることが難しくなる。また熱処理温度が高すぎても、容器及びシートの一体性(結合性)がかえって低下する。
【0051】
なお熱処理の方式は特に限定されず、例えば、加熱炉、熱風、熱ローラなどの公知の外部加熱方式が利用できる。さらには、マイクロ波加熱、高周波誘電加熱などの内部加熱方式であってもよい。
【0052】
上記のようにして得られる生分解性容器及びシートは、木質バイオマスをアンモニウム系化合物存在下で蒸煮したことに帰因する成分(アンモニウム塩)を含有している点で従来の生分解性容器及びシートと区別できる。そして本発明の生分解性容器及びシートは、このアンモニウム塩が肥料として機能するため有用である。また本発明の生分解性容器及びシートは、黒色・結合化剤の製造時に生成する糖類(セルロース分解物)を含有しているため、微生物を効率よく働かせることができ、生分解性に極めて優れている。さらに本発明の生分解性容器及びシートは、長繊維で構成されているため、湿潤引張強度も極めて優れている。湿潤引張強度は、例えば、3MPa以上、好ましくは4MPa以上、さらに好ましくは4.5MPa以上である。湿潤引張強度は、熱処理前に成形体(容器、シート)を加圧(圧縮処理)しておくことによってさらに高めることもできる。湿潤引張強度の上限は、通常、50MPa(例えば30MPa)程度である。さらに本発明の生分解性容器及びシートは、黒色乃至褐色に着色している点にも特徴がある。そのため後述の防草シートとして利用すると、雑草の生育を防止でき、極めて有用である。
【0053】
本発明の生分解性容器は、例えば、植物の生育用容器(鉢、育苗ポット、プランターなど)として利用できる。このような生育用容器で植物を生育した後で、容器ごと土壌(田畑、花壇など)に植えると、植物の移し換えが容易なだけでなく、移し換え後に容器を除去しなくても生分解によって崩壊して土壌に還元され、肥料になる。
【0054】
また本発明の生分解性シートは、マルチシート[農業用、園芸用、緑化用のいずれにも使用できるマルチシート(多目的シート)など。例えば、防草シート、保温シート、保水シート、植樹(又は植草)シート、防虫シート、土壌改良シートなど]として利用することができる。例えば、本発明の生分解性シートに適宜穴を形成して土壌表面に敷設すると、当該穴の部分において植物を生育することができると共に穴を形成していない部分で雑草の生育を防止しながら土を保温又は保湿することができ、防草シート、保温シート、保水シートの3つの機能を兼ね備えることができる。また本発明の生分解性シートに樹木、草、又は種を植え付けると、植樹(又は植草)シートとして利用できる。そして本発明の生分解性シートを前記種々の用途に使用すると、使用後は生分解によって崩壊して土壌に還元されかつ肥料になるため、シートを除去する必要がない。
【0055】
なお生分解性容器及びシートは、本発明のパルプ(又は抄紙シート)及び黒色・結合化剤の両方を原料にする必要はなく、いずれか一方を特開2002−38400号公報に開示のものに置き換えてもよい。例えば(1)本発明のパルプ・抄紙シートに代えて又は本発明のパルプ・抄紙シートと共に、特開2002−38400号公報に開示の「植物繊維(古紙など)」を使用してもよく、或いは(2)本発明の黒色・結合化剤に代えて又は本発明の黒色・結合化剤と共に、特開2002−38400号公報に開示の「天然有機物に由来する非繊維質成分及び/又は繊維分解物(動物糞、生ゴミ、草炭など)」を使用してもよい。
【0056】
さらに成形形状を適宜変更することも可能であり(例えば、板状、柱状などに成形してもよく)、加えてその用途も上記例示のものに限定されず、従来木材が使用されている幅広い用途(建築用、建具用、家具用など)に使用してもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0058】
実験例(尿素添加法)
縦:約5〜10mm程度、横:約5〜10mm程度、長さ:約10cm程度に裁断した直方体形状の木材2.5gを、水15g及び尿素と共に容量30mlのステンレス製耐圧容器に入れて密閉し、加熱(蒸煮)した。圧力が一定になってから4時間蒸煮を継続した後、容器ごと水につけて冷却した。容器を開封し、以下のようにしてpH及び繊維回収率を測定すると共に、以下のようにして抄紙シートにしたときの引張強度を測定した。なお尿素添加量を、0〜24質量%(木材の乾燥質量に対する割合)の範囲で変化させ、また加熱温度を160〜190℃の範囲で変化させ、それぞれの場合について評価した。
【0059】
[pH]
蒸煮終了直後は、蒸煮液から徐々にCO2ガスが抜けていくためか、pHが安定しなかった。そこで蒸煮液を室温で一夜(約12〜16時間程度)放置し、pHが安定してから、蒸煮液(20℃)のpHを測定した。
【0060】
[繊維回収率]
蒸煮液を濾過し、得られた固形分(パルプ)を水洗した後、乾燥し、質量(W)を測定し、下記式に基づいて繊維回収率を求めた。
繊維回収率(%)=質量W/原料木材の乾燥質量×100
【0061】
[抄紙シートの引張強度]
蒸煮液を濾過し、得られた固形分(パルプ)をすり鉢ですり潰し、500mlの水を加えてミキサー(11500rpm)で16分間(=2分×8回)攪拌(解繊)した。この処理液を平底篩[目開き約80メッシュ(180μm)、直径19cm]に均一に展開して水を除去しながらシート化した。この予備成形シートをテトラフルオロエチレン製シートの上に乗せ、ローラで水を搾り出した後、テトラフルオロエチレンで表面がコーティングされたホットプレート(温度110℃)の上に移し、ローラでシートを繰り返し軽くプレスしながら10分間乾燥した。このようにして得られた抄紙シートの引張強度を、JIS規格P8113に準拠して測定した。
【0062】
結果を表1に示す。また加熱温度170℃及び190℃の場合について整理したグラフを図1〜2に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1及び図1〜2から明らかなように、尿素無添加(0質量%)の場合は、繊維回収率が低い。またこの尿素無添加の例では、抄紙シートを製造するために固形分(パルプ)をすり鉢ですり潰した際に、このすり潰したものを手で触ると比較的柔らかかったこと、及び最終的に得られた抄紙シートの引張強度が低くなっていたことから、尿素無添加時には木質繊維の分解が進んでいると推察される。
【0065】
表1及び図1〜2に示すように、尿素を添加するとpHが向上し、繊維回収率が向上する。特にpHが中性から弱酸性程度(例えば、4〜9程度、特に5〜8.5程度)のとき、抄紙シートにしたときの引張強度が最高になり、木質繊維も長くなっていると推察される。抄紙シートの引張強度に最高値があるのは、尿素添加量が多くなってpHが高くなると、解繊が進みにくくなるためであると思料される。このことは、固形分(パルプ)をす
り潰したものを手で触ると、比較的剛直であることから推察される。
【0066】
実施例1、参考例1及び比較例1〜2
[シート基材]
実施例1、参考例1及び比較例2では、下記A又はBのシートを生分解性シートの基材(シート基材)として用いた。
シート基材A:上記実験例(尿素添加法)で得られた抄紙シート(尿素添加量2質量%、加熱温度180℃に対応するシート)。
シート基材B:段ボール古紙2gを500mlの水と共にミキサー(11500rpm)に入れ、16分間(=2分×8回)粉砕した。この粉砕液を上記実験例と同様にしてシート化したもの。
【0067】
[生分解性シート]
針葉樹を剪定して得られた枝2.5gを、水15gと共に容量30mlのステンレス製耐圧容器に入れて密閉し、加熱(蒸煮)した。圧力が一定(約2.4MPa)になってから10分間蒸煮を継続した。蒸煮終了後、冷却し、粉砕し、中和し、水で希釈することによって、木質分解物の濃度が約8質量%に調節された黒色・結合化剤を得た。このようにして得られた黒色・結合化剤はコロイド状である。なお木質分解物濃度は、黒色・結合化剤を乾燥した後の質量を、乾燥前の質量で除すことによって求まる値である。
【0068】
前記黒色・結合化剤を上記シート基材に塗布した。塗布量(シート基材の乾燥質量に対する黒色・結合化剤の乾燥質量)は下記表2に示す通りである。次いで下記表2に示す条件で熱処理することによって生分解性シートを得た。
【0069】
得られた生分解性シートの湿潤引張強度を表2に示す。また新聞古紙の湿潤引張強度(比較例1)も併せて表2に示す。なお湿潤引張強度は、シートから試験片(幅15mm、長さ150mm)を切り出し、水中に24時間浸漬した後、JIS規格P8113及びP8135に準拠して湿潤引張荷重(サンプルが切れる時点の荷重)を測定することによって求めた。
【0070】
【表2】

【0071】
この表2より明らかなように、黒色・結合化剤を使用しない比較例1及び比較例2に比べ、黒色・結合化剤を使用した参考例1は湿潤引張強度が向上する。特に実施例1は、木質バイオマスだけから製造されており、しかも湿潤引張強度は最もよい。
【0072】
比較例3
段ボール古紙2gを500mlの水と共にミキサー(11500rpm)に入れ、16分間(=2分×8回)攪拌して解繊した。この解繊液を平底篩[目開き約80メッシュ(180μm)、直径19cm]に均一に展開して水を除去しながらシート化した。この予備成形シートを湿度60%の室温で自然乾燥した後、圧力20MPaの条件で2分間加圧し、常圧に戻してから温度150℃で4時間加熱した。
【0073】
参考例2
[黒色・結合化剤]
杉の剪定枝6gを水25gと共に容量40mlのステンレス製耐圧容器に入れて密閉し、温度220℃(2.4MPa)で1時間加熱(蒸煮)した。蒸煮終了後、ミキサーで粉砕し、濃度2質量%の水酸化ナトリウム水溶液100gを加えて不溶成分の一部を溶解した。残った不溶成分を濾過によって除去した後、濾液(可溶成分)に濃度5質量%の硫酸水溶液をpH=2になるまで添加して沈殿物を得た。この沈殿物を濾取し、水洗した後、濃度10質量%のアンモニア水溶液を適量加えて溶解し、さらに濃度調整して[沈殿物(乾燥質量基準)の濃度3.8質量%]、黒色・結合化剤を調製した。
比較例3と同様にして得られた予備成形シートを湿度60%の室温で自然乾燥した後、前記黒色・結合化剤を濃縮物残渣(すなわち乾燥物)の量で0.15g分塗布し、自然乾燥した上で圧力20MPaの条件で2分間加圧し、常圧に戻してから温度150℃で4時間加熱した。
【0074】
実施例2
[パルプ]
杉原木(縦:約5〜10mm程度、横:約5〜10mm程度、長さ:約10cm程度に裁断したもの)2.5gを、水15g及び尿素と共に容量30mlのステンレス製耐圧容器に入れて密閉し、温度180℃で加熱(蒸煮)した。なお尿素添加量は、2質量%(木材の乾燥質量に対する割合)にした。圧力が一定になってから4時間蒸煮を継続した後、容器ごと水につけて冷却し、濾過し、すり鉢ですり潰してパルプを得た。
[生分解性シート]
前記パルプに、500mlの水を加えてミキサー(11500rpm)で16分間(=2分×8回)攪拌(解繊)した。この解繊液を平底篩[目開き約80メッシュ(180μm)、直径19cm]に均一に展開して水を除去しながらシート化した。この予備成形シートを湿度60%の室温で自然乾燥した後、参考例2で得られた黒色・結合化剤0.15g分(乾燥質量基準)を塗布し、自然乾燥した上で圧力20MPaの条件で2分間加圧し、常圧に戻してから温度150℃で4時間加熱して生分解性シートを製造した。
比較例3、参考例2及び実施例2で得られた生分解性シートの湿潤引張強度を表3に示す。
【0075】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は蒸煮温度が170℃のときにおける、尿素添加量と、pH、引張強度、繊維回収率との関係を示すグラフである。
【図2】図2は蒸煮温度が190℃のときにおける、尿素添加量と、pH、引張強度、繊維回収率との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質バイオマスを、アンモニア又はアンモニア発生剤の存在下、蒸煮するパルプの製造方法。
【請求項2】
前記アンモニア発生剤が、アミン基を有する化合物、アミド基を有する化合物、炭酸系アンモニウム及び有機酸アンモニウムから選択される少なくとも一種である請求項1に記載のパルプの製造方法。
【請求項3】
前記アンモニア発生剤が、尿素、炭酸アンモニウム、及び炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも一種である請求項1に記載のパルプの製造方法。
【請求項4】
蒸煮終了後のpHが4〜9である請求項1〜3のいずれかに記載のパルプの製造方法。
【請求項5】
温度130℃以上の加圧水で処理する請求項1〜4のいずれかに記載のパルプの製造方法。
【請求項6】
前記蒸煮の後、パルプから分離して回収した処理液を、前記アンモニア又はアンモニア発生剤として再利用する請求項1〜5のいずれかに記載のパルプの製造方法。
【請求項7】
前記パルプを、粉状成分と繊維成分に分離する請求項1〜6のいずれかに記載のパルプの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られたパルプを抄紙するシートの製造方法。
【請求項9】
木質繊維からなり、アンモニウム塩を含有する抄紙シート。
【請求項10】
引張強度が12MPa以上である請求項9に記載の抄紙シート。
【請求項11】
(1)(A)木質バイオマス及び請求項7に記載の粉状成分から選択される少なくとも一種を、(B)水及び/又は請求項6に記載のパルプから分離された処理液で蒸煮することによって得られる流動性物質を、
(2)(I)請求項8に記載のシートに含浸し、又は(II)請求項1〜7のいずれかに記載のパルプと共に混合処理してシート化し、
(3)熱処理する生分解性シートの製造方法。
【請求項12】
木質繊維からなるシートであって、アンモニウム塩を含有している生分解性シート。
【請求項13】
セルロース分解物を含有しており、かつ湿潤引張強度が3MPa以上である請求項12記載の生分解性シート。
【請求項14】
(1)(A)木質バイオマス及び請求項7に記載の粉状成分から選択される少なくとも一種を、(B)水及び/又は請求項6に記載のパルプから分離された処理液で蒸煮することによって得られる流動性物質を、
(2)請求項1〜7のいずれかに記載のパルプと共に混合処理して容器形状に成形し、
(3)熱処理する生分解性容器の製造方法。
【請求項15】
木質繊維からなる容器であって、アンモニウム塩を含有している生分解性容器。
【請求項16】
セルロース分解物を含有しており、かつ湿潤引張強度が3MPa以上である請求項15記載の生分解性容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−2383(P2007−2383A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241310(P2005−241310)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【Fターム(参考)】