説明

生分解性シート

【課題】生分解性に加え、柔軟性や強度や伸びなどの力学特性・気密性・耐寒耐久性(耐候性)についても良好な特性を有し、これによって建設現場での実際の使用に耐え得る良好な生分解性シートを提供する。
【解決手段】建設土木工事に用いられる生分解性シート1であって、厚さが100μm以上600μm以下、引張弾性率が200MPa以下、引張破壊強さが20MPa以上、引張破壊伸びが400%以上、空気の透過度が100cm/m・24h・atm以下、低温における耐寒衝撃試験の破壊率が20%未満である。生分解性シート1は、一対の表層2と、これら表層2、2’間に設けられた中間層3との少なくとも3層の積層体からなり、一対の表層2、2’が、生分解性を有する脂肪族ポリエステルからなり、中間層3が、生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設土木工事現場において地盤や発生土などの改良工法に使用される気密シートとして好適な、生分解性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設土木に関する工事現場では、以下のような建設土木工法の用途で塩化ビニールシート、ポリエチレンシート等の汎用プラスチックシートが大量に使用されている。
(1)軟弱地中に含まれる水や空気を強制的に除去し、地盤の密度・強度を増加させる地盤改良工法に用いられる気密シート。
(2)含水率が非常に高い建設現場で発生する建設排土や、海水・湖水中の浚渫土を、減容化・再利用するなどの目的で、土をシートで包み込み、脱水する際に使用される気密シート。
(3)浚渫土を砂で被覆して海底地盤を改良する際、砂が含水比の高い浚渫土に巻き込まれることを防止することを目的に設置される砂・浚渫土分離シート
【0003】
このような建設土木工事用のシートにあっては、シート製造時には成形加工性に優れ、施工時にはシートの運搬や敷設、シート同士の接合などの作業性の点から、柔軟性や強度・伸びなどの力学物性、高周波ウェルダーや粘着テープ等による溶着性・接着性が適切である必要がある。また、施工後においては、適切な強度・伸びなどの力学物性、気密性、さらには屋外仕様としての耐寒強度などの耐久性を有するものである必要がある。
【0004】
例えば、一般に生産されるシートの幅は1〜2m程度であるが、施工現場においては施工面全体を被覆するような幅が必要とされる。したがって、工場や施工現場において、複数のシートを高周波ウェルダーや粘着テープ等により幅方向を接続し、広幅なシートとすることがある。その際、シートには接着性(溶着性)が必要であり、また、その作業時や施工時にシートが破損しないよう、柔軟性も必要となるのである。
【0005】
また、前記のような建設土木工事においては、シートの気密性が必要になり、そのため施工時や施工後に破れ等の破損が発生しないような、適切な強度・伸びなどの力学物性が必要となる。さらに、施工後に一定期間土壌を被覆した状態で保持されるため、耐寒性(耐候性)などの耐久性も必要となる。これらの要求性能を満足するものとして、従来では前記したように、塩化ビニール系樹脂のシートが広く使用されているのである。
【0006】
ところで、このような建設土木工事用のシートは、使用後に除去する必要があり、したがって除去に要する手間がかかり、また、産業廃棄物の発生や、その場合の産廃処理費の発生などといった問題があった。
このような背景から近年では、特に施工時の環境負荷低減、産業廃棄物の削減、周辺環境への影響低減などといった環境問題への配慮や、施工の効率化・省力化などを目的として、建設関連の現場において生分解性のフィルムやシートを使用した工法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−328550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記(1)〜(3)に示したような用途の建設土木工事用シート(フィルム)については、単に生分解性を備えるだけでは不十分であり、特に作業性や施工における耐久性、気密性についても要求特性を満たしていることが重要である。
一般的な生分解性樹脂シートは、塩化ビニールシート、ポリエチレンシート等と比較して、柔軟性が低く脆かったり、シート成形性が悪いものであり、前記(1)〜(3)の用途として使用することができるものは提供されていないのが現状である。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、生分解性に加え、柔軟性や強度や伸びなどの力学特性・気密性・耐寒耐久性(耐候性)についても良好な特性を有し、これによって建設現場での実際の使用に耐え得る良好な生分解性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の生分解性シートは、建設土木工事に用いられる生分解性シートであって、厚さが100μm以上600μm以下、引張弾性率が200MPa以下、引張破壊強さが20MPa以上、引張破壊伸びが400%以上、空気の透過度が100cm/m・24h・atm以下、低温における耐寒衝撃試験の破壊率が20%未満であることを特徴とする。
【0010】
この生分解性シートによれば、生分解性を有することにより、例えば建築・土木に関する建設現場にて使用された後、土中で二酸化炭素と水とに分解し、最終的にはその形状を留めることなく散逸する。また、引張弾性率が200MPa以下の樹脂製シートであり、良好な柔軟性が得られる。したがって、施工時においてシートの運搬や敷設、シート同士の接合に関する取り扱いが容易になり、作業性が良好になる。
また、厚さが100μm以上600μm以下であり、引張破壊強さが20MPa以上、引張破壊伸びが400%以上であるので、施工後、外力によってこの生分解性シートに対し引張力が作用しても、このような外力に対応して支障無く伸縮するので、破れ等の破損がなく、したがって気密性を確保しつつシートとしての力学的機能が保持され、十分な耐久性が発揮される。また、空気の透過度が100cm/m・24h・atm以下であるので、良好な気密性が発揮される。
さらに、低温における耐寒衝撃試験の破壊率が20%未満であるので、良好な耐寒耐久性(耐候性)を有するものとなり、したがって屋外環境下においても性能を保持することができ、また寒冷地での使用にも十分に耐え得るものとなる。
【0011】
また、前記生分解性シートにおいては、該生分解性シートが、その表面部および裏面部を形成する一対の表層と、これら表層間に設けられた中間層との少なくとも3層の積層体からなり、前記一対の表層が、生分解性を有する脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物からなり、前記中間層が、生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物からなるのが好ましい。
【0012】
生分解性を有する脂肪族ポリエステルは、生分解性に優れ、成形性も良くシート等の成形品に一般的に使用されているが、シートとしての柔軟性に乏しく、引張破壊伸びも少ない。したがって、前記(1)〜(3)に示したような用途で使用する場合には、可塑剤等の添加剤を多量に添加し、柔軟性等を向上させる必要がある。ところが、このように可塑剤等を多量に添加すると、高周波ウェルダーでの溶着性や、テープによる接着性等が低下してしまい、シート同士を接合するのが困難になってしまう。
一方、生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルは、一般的に柔軟性に優れているものの、樹脂自体が粘着性を有するため成形性は悪い。したがって、シートに成形する場合には、滑剤等の添加剤を多量に添加し、ロール等に付着してシートとして成形加工できなくなるのを防ぐ必要がある。ところが、このように滑剤等を多量に添加すると、シート表面に滑剤等が存在するため溶着性やテープ接着性等が低下し、シート同士を接合するのが困難になってしまうため、前記(1)〜(3)に示したような用途での使用には適さなくなる。
【0013】
そこで、本発明においては、表面部および裏面部を形成する一対の表層に生分解性を有する脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物を用い、中間層に生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物を用いることにより、少なくとも3層の積層体からなる生分解性シートとしているので、中間層の芳香族脂肪族ポリエステルによる良好な柔軟性を有し、かつ、表層の脂肪族ポリエステルによる良好な成形性、および溶着性(接着性)を有したものとなる。
すなわち、表層を形成する脂肪族ポリエステルについては、柔軟性を必要以上に高める必要がなく、したがって可塑剤等の添加剤の添加量を抑えることができる。よって、十分な溶着性やテープ接着性を確保することができるとともに、この表層を有してなることで、生分解性シートとして良好な成形性を確保することができる。
また、中間層を形成する芳香族脂肪族ポリエステルについては、これが表面側に露出しないため、生分解性シートとしての溶着性やテープ接着性に直接影響を与えることがなく、したがって滑剤等の添加剤の添加量についても影響を受けなくなる。
【0014】
また、この生分解性シートにおいては、前記表層と前記中間層の厚さの比が、1:4〜1:20の範囲で成形されてなることが好ましい。ただし、両表層の厚さが異なっていてもよく、表層を形成する樹脂組成が異なっていてもよい。
表層の厚さと中間層の厚さとの比が、1:4よりも表層の方が厚くなってしまうと、相対的に中間層の厚さが薄くなって柔軟性の面で不十分となるおそれがあり、好ましくない。また、表層の厚さと中間層の厚さとの比が、1:20よりも表層の方が薄くなってしまうと、シート成形時に表層が均一に成形されず、シート同士がブロッキングしてしまったり、シート同士の接合時に接合部分の物性低下等が発生してしまうおそれがあり、好ましくない。
【0015】
また、この生分解性シートにおいては、前記生分解性を有する脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネートカーボネイト(PBSC)のうちの少なくとも1種であり、生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の生分解性シートによれば、生分解性を有することにより、前述したように使用後土中で分解し、散逸(消滅)するので、最終的に産業廃棄物を削減することができ、また、廃棄のための分別処理作業を省力化することができ、さらに、土中に廃棄された場合にも完全に分解するため環境への負荷を低減することができる。また、良好な柔軟性を有し、したがって施工時においてシートの運搬や敷設、シート同士の接合に関する取り扱いが容易になるため、作業性をより良好にすることができる。さらに、気密性等のシートとしての機能を保持し、耐寒性(耐候性)などの十分な耐久性を発揮するので、例えば施工後、屋外環境下にて土に接した状態で所定期間(例えば3ヶ月から6ヶ月)使用されていても、その間にシートとして要求される機能を良好に発揮するようになる。
【0017】
したがって、本発明により、強度・柔軟性・気密性・耐寒耐久性(耐候性)・接着性(溶着性)などについて良好な性能を有し、施工時の作業性がよく、かつ使用期間中は目的とした機能を持続し、使用後埋設された場合には土中で分解することで散逸(消滅)し、環境への負荷を十分に低減できる建設土木工事用の生分解性シートを提供することができる。
また、本発明の生分解性シートは、滑剤、可塑剤等を使用しなくても十分な柔軟性等を得ることができ、したがって粘着剤等を表面に均一に塗布することが可能なため、表面に粘着剤等を塗布することでシート接合用のテープとしても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の生分解性シートを詳しく説明する。
本発明の生分解性シートは、厚さが100μm以上600μm以下、引張弾性率が200MPa以下、引張破壊強さが20MPa以上、引張破壊伸びが400%以上、空気の透過度が100cm/m・24h・atm以下、低温における耐寒衝撃試験の破壊率が20%未満のものである。
このような生分解性シートは、前記特性(物性)を満足するものであれば、単層構造のシートであってもよく、複層構造のシートであってもよい。ただし、生分解性樹脂の特性を考慮すると、少なくとも3層以上の層構造からなるのが好ましい。
【0019】
図1は、特に3層構造にした生分解性シートの一例を示す図であり、図1中符号1は生分解性シートである。この生分解性シート1は、その表面部および裏面部を形成する一対の表層2、2’と、これら表層2、2’間に設けられた中間層3とからなる3層の積層体である。
前記一対の表層2、2は、生分解性を有する脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物からなり、前記中間層3は、生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物からなる。
【0020】
生分解性を有する脂肪族ポリエステル、および芳香族脂肪族ポリエステルとしては、以下のようなものが好適に使用される。
「脂肪族ポリエステル」
ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネートカーボネイト(PBSC)、ポリエチレンサクシネートアジペート(PESA)、ポリカプロラクトン(PCL)。
ここで、脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物としては、前記樹脂のうち1種を用いてもよく、あるいは複数種を混合して用いてもよい。また、前記樹脂のうちでは、特にポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネートカーボネイト(PBSC)が好適に用いられる。
【0021】
「芳香族脂肪族ポリエステル」
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート(PBSAT)。
ここで、芳香族脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物としては、前記樹脂のうち1種を用いてもよく、あるいは複数種を混合して用いてもよい。また、前記樹脂のうちでは、特にポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が好適に用いられる。
【0022】
また、このような脂肪族ポリエステルの樹脂組成物あるいは芳香族脂肪族ポリエステルは、可塑剤や滑剤等の各種の添加剤が必要に応じて添加され、コンパウンドに形成される。具体的には、表層2、2’を形成する脂肪族ポリエステルの樹脂組成物では、ある程度の柔軟性を確保するため可塑剤を添加してもよい。ただし、この脂肪族ポリエステル樹脂組成物は生分解性シート1の表層2、2’のみを形成するので、柔軟性を必要以上に高める必要はなく、したがって可塑剤等の添加量を、シートの成形性が損なわれない範囲に十分抑えることができる。
【0023】
また、中間層3を形成する芳香族脂肪族ポリエステルについては、例えば成形性を向上する目的で滑剤を添加してもよい。その場合に、この芳香族脂肪族ポリエステル樹脂組成物は生分解性シート1の中間層3のみを形成するので、生分解性シート1としての溶着性やテープ接着性に直接影響を与えることがなく、したがって滑剤等の添加量を任意に設定することができる。
【0024】
そして、このようなコンパウンドを、2種3層以上のTダイ押出成形機等によって厚さ100μm以上、600μm以下のシートに成形することにより、本発明の生分解性シートが得られる。
このようにして成形する生分解性シート1については、表層2、2’と中間層3の厚さの比が、1:4〜1:20の範囲で成形されてなることが好ましい。ただし、両表層2、2’の厚さが異なっていてもよく、表層2、2’を形成する樹脂組成が異なっていてもよい。
【0025】
表層2の厚さと中間層3の厚さとの比が、1:4よりも表層2の方が厚くなってしまうと、相対的に中間層3の厚さが薄くなって柔軟性の面で不十分となるおそれがあるからである。また、表層2の厚さと中間層3の厚さとの比が、1:20よりも表層2の方が薄くなってしまうと、シート成形時に表層2が均一に成形されず、シート同士がブロッキングしてしまったり、シート同士の接合時に接合部分の物性低下等が発生してしまうおそれがあるからである。
【0026】
このようにして得られる生分解性シートは、必要に応じて添加剤が添加され、さらに表層2の厚さと中間層3の厚さとの比が適宜に形成されたことなどにより、前述したように、引張弾性率が200MPa以下、引張破壊強さが20MPa以上、引張破壊伸びが400%以上、空気の透過度が100cm/m・24h・atm以下、低温における耐寒衝撃試験の破壊率が20%未満となるように調整されている。
【0027】
ここで、低温における耐寒衝撃試験の破壊率は、JIS K7124−1「プラスチックフィルムおよびシート−自由落下のダート法による衝撃試験方法−第1部:ステアケース法」の試験方法に準じて、−20℃の環境下で荷重640gのダート(B法)を落下させ、シートが破壊された割合を測定したものである。そして、この破壊率が20%以上であると、耐寒性に乏しいシートであると判断される。したがって、本発明の生分解性シートでは、破壊率が20%未満とされている。
【0028】
このような構成からなる生分解性シート1は、特に建設土木工事に関する工事現場において、以下のような用途に好適に使用される。
(1)軟弱地中に含まれる水や空気を強制的に除去し、地盤の密度・強度を増加させる地盤改良工法に用いられる気密シートとして。
(2)含水率が非常に高い建設現場で発生する建設排土や、海水・湖水中の浚渫土を、減容化・再利用するなどの目的で、土をシートで包み込み、脱水する際に使用される気密シートとして。
(3)浚渫土を砂で被覆して海底地盤を改良する際、砂が含水比の高い浚渫土に巻き込まれることを防止することを目的に設置される砂・浚渫土分離シートとして。
【0029】
そして、このような用途に用いられることにより、本実施形態の生分解性シートによれば、生分解性を有することにより、例えば建築・土木に関する建設現場にて使用した後、土中で二酸化炭素と水とに分解し、最終的にはその形状を留めることなく散逸する。したがって、最終的に産業廃棄物を削減することができ、また、廃棄のための分別処理作業を省力化することができ、さらに、土中に廃棄された場合にも完全に分解するため環境への負荷を低減することができる。
【0030】
また、引張弾性率が200MPa以下の樹脂製シートであり、良好な柔軟性が得られる。したがって、施工時においてシートの運搬や敷設、シート同士の接合に関する取り扱いが容易になり、作業性を良好にすることができる。
また、厚さが100μm以上600μm以下であり、引張破壊強さが20MPa以上、引張破壊伸びが400%以上であるので、施工後、外力によってこの生分解性シートに対し引張力が作用しても、このような外力に対応して支障無く伸縮するので、破れ等の破損がなく、したがって気密性を確保しつつシートとしての力学的機能が保持され、十分な耐久性を発揮するようになる。また、空気の透過度が100cm/m・24h・atm以下であるので、良好な気密性を発揮することができる。
【0031】
さらに、低温における耐寒衝撃試験の破壊率が20%未満であるので、良好な耐寒耐久性(耐候性)を有するものとなり、したがって屋外環境下においても性能を保持することができ、また寒冷地での使用にも十分に耐え得るものとなる。よって、例えば施工後、屋外環境下にて土に接した状態で所定期間(例えば3ヶ月から6ヶ月)使用されていても、その間にシートとして要求される機能を良好に発揮するようになる。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態では本発明の生分解性シートを3層の積層体で形成したが、前記したように単層構造であってもよく、また、2層あるいは4層以上の積層体であってもよい。
【0033】
「実施例」
図1に示した3層構造の生分解性シートを、以下の表1に示す表層2、中間層3の配合を用いて、2種3層のTダイ押出機により厚さ500μmの生分解性シートを成形した。表層2、2と中間層3との厚さ比については、表層:中間層:表層=1:16:1となるように成形した。また、比較例1〜4に関しては、いずれも単層構造で生分解性シートを成形した。
成形したシートに関して、次のような方法で評価を行った。得られた結果を以下の表1に示す。
【0034】
(評価方法)
・成形性:Tダイ押出機での成形状態を総合的に判断し、成形良好であれば○、成形不良であれば×、とした。
・引張弾性率、引張破壊強さ、引張破壊伸び:JIS K7113「プラスチックの引張試験方法」(引張方向:タテ方向)
・気体透過度(空気の透過度):JIS K7126「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」差圧法(試験気体:空気)
・耐寒衝撃試験(耐寒衝撃試験の破壊率):JIS K7124−1「プラスチックフィルムおよびシート−自由落下のダート法による衝撃試験方法−第1部:ステアケース法」の試験方法に準じて、−20℃の環境下で荷重640gのダート(B法)を落下させ、シートが破壊された割合を測定。
○…破壊率20%未満、△…破壊率20%以上80%未満、×…破壊率80%以上
【0035】
【表1】

PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート):エコフレックス(BASF社)
PVC:軟質塩化ビニール(塩化ビニール樹脂100重量部にDOP50重量部添加)
変性デンプン系樹脂:コーンポールCPR−F3F(日本コーンスターチ社)
PBS(ポリブチレンサクシネート):ビオノーレ#1001(昭和高分子社)
【0036】
表1に示したように、実施例1、2では、成形性が良好であり、また引張弾性率、引張破壊強さ、引張破壊伸びについても本発明品としての物性を備えていた。さらに、耐寒衝撃試験の破壊率も20%未満であることが確認された。また、表1には記載していないものの、得られた生分解性シート(実施例1、実施例2)の高周波ウェルダーによる溶着性、及び粘着テープによる接着性(粘着性)を調べたところ、いずれも良好であった。
これに対して比較例1〜4では、成形性が悪かったり(比較例4)、要求物性(引張弾性率、引張破壊強さ、引張破壊伸び)を有していなかったり(比較例3)、耐寒衝撃試験の破壊率が80%以上であり、耐寒性に乏しいシートであった(比較例1、比較例2)。
【0037】
次に、前記表1中における実施例1の配合組成を用い、各層の比(表層:中間層:表層)を変えて生分解性シートを成形した。成形については、各層の比を変えた以外は実施例1と同様にして行った。得られた各シートの柔軟性を、その触感で評価した。柔軟性の結果を、シート成形性とともに表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
表2に示したように、実施例1のものはシート成形性、柔軟性ともに良好(OK)であった。一方、比較例5、6では、シート成形性あるいは柔軟性に難があった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の生分解性シートの一例を示す要部側断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…生分解性シート、2、2’…表層、3…中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設土木工事に用いられる生分解性シートであって、
厚さが100μm以上600μm以下、引張弾性率が200MPa以下、引張破壊強さが20MPa以上、引張破壊伸びが400%以上、空気の透過度が100cm/m・24h・atm以下、低温における耐寒衝撃試験の破壊率が20%未満であることを特徴とする生分解性シート。
【請求項2】
前記生分解性シートが、その表面部および裏面部を形成する一対の表層と、これら表層間に設けられた中間層との少なくとも3層の積層体からなり、
前記一対の表層が、生分解性を有する脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物からなり、
前記中間層が、生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1記載の生分解性シート。
【請求項3】
前記表層の厚さと前記中間層の厚さとの比が、1:4〜1:20の範囲で成形されてなることを特徴とする請求項2記載の生分解性シート。
【請求項4】
前記生分解性を有する脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネートカーボネイト(PBSC)のうちの少なくとも1種であり、生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であることを特徴とする請求項2又は3に記載の生分解性シート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−101335(P2008−101335A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282396(P2006−282396)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】