説明

生分解性フィルム又はシート並びにその製造方法及び生分解性フィルム又はシート用の組成物

【課題】 耐水性及び強度を十分に備えた生分解性のあるフィルムやシートを提供する。
【解決手段】デンプン0〜35質量%、タンパク質20〜70質量%、セルロース繊維15〜60質量%、尿素1〜15質量%となるように各成分を混合し、その混合物100質量部に対して水10〜100質量部を加え、二軸ミキサー等を用いてよく捏ね、約120℃の加熱を加えながら圧延して、厚みが数十〜300μm程度のフィルムやシートを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用シートやゴミ袋などに利用できる生分解性を有するフィルム又はシート及びその製造方法並びに当該フィルム又はシート用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでにポリ乳酸や脂肪酸ポリエステルなどの生分解性樹脂やデンプンなどの天然素材を主成分とした数多くの生分解性フィルムやシートが提案されている。
【0003】
例えば、特表平10−511145号公報(特許文献1)には、熱可塑性デンプンと生分解性のポリマー及びセルロース繊維並びにタンパク質などから作製された延伸されたフィルムが開示されている。特開2002−371201号公報(特許文献2)には、ポリ乳酸などの生分解性の樹脂と炭酸カルシウムなどの無機充填剤、さらにポリエチレングリコールなどの水溶性樹脂とが用いられた生分解性のフィルムやシートが開示されている。また、特開平6−313063号公報(特許文献3)には、デンプンと生分解性の脂肪酸ポリエステルに補強用添加剤としてタンパク質及び天然ゴムが添加された生分解性のフィルムが開示されている。
【0004】
特開2003−292554号公報(特許文献4)には、でんぷんなどの活性水素を有する生分解性化合物を主成分としてこれにアクリロイル基を有する化合物、さらに尿素やグリセリン、さらにはセルロースなど天然繊維が用いられた生分解性のフィルムが開示されている。特開2003−105130号公報(特許文献5)には、デンプンと尿素とカルボキシメチルセルロースなどのカルボン酸基を有する化合物をカルシウム塩やアルミニウム塩などの塩で架橋し、さらにグリセリンや尿素を加えた組成物から得られる生分解性のフィルムが開示されている。特開2004−339496号公報(特許文献6)には、デンプン類とそれに対して60〜300%の尿素並びに10〜150質量%のグリセリンなどの多価アルコールさらには天然素材として紙や麻などの繊維が用いられた生分解性のフィルムが開示されている。また、特開2001−288295号(特許文献7)には、コーングルテンミールと天然ゴムに可塑剤として尿素が用いられたフィルムが開示されている。さらに特表2002−512929号公報(特許文献8)には、デンプンとタンパク質、天然セルロース繊維並びに金属塩水和物、可塑剤として尿素を含む組成物からなる生分解性のフィルムが記載されている。
【特許文献1】特表平10−511145号公報
【特許文献2】特開2002−371201号公報
【特許文献3】特開平6−313063号公報
【特許文献4】特開2003−292554号公報
【特許文献5】特開2003−105130号公報
【特許文献6】特開2004−339496号公報
【特許文献7】特開2001−288295号公報
【特許文献8】特表2002−512929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された生分解性のフィルムなどでは、ポリマーを使用しているためコストが高くなり、生分解性の観点からは天然素材からなるものが好まれる。
【0006】
特許文献4〜6に記載された生分解性フィルムは、いわゆる可塑剤としてグリセリンをはじめとする多価アルコールが用いられているので、保存中や使用中にグリセリン等が滲出するおそれがある。このために、フィルムの使用目的に制約が生じ、食品用のラップとして使用できない場合がある。
【0007】
特許文献7のフィルムはグリセリンの多価アルコール等が使用されていないものであるが、用いられた天然ゴムが完全に分解されないおそれがある。特許文献8のフィルムは金属塩を含むものなので、そのまま土中に廃棄された場合に環境の汚染が懸念される。また、このフィルムは尿素を高濃度で含むために、窒素の排出負荷が高まり、農業用途への使用が制約されるおそれも高い。
【0008】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、本発明は耐水性及び強度を十分に備え、かつポリマーや金属塩、窒素など環境へ排出される汚染物質の負荷を少なくした生分解性のあるフィルムやシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意努力したところ、タンパク質、セルロース繊維及び尿素の3成分、あるいはそれに必要に応じてデンプンが加えられた4成分からなる組成物から耐水性や十分な機械的強度を有するフィルムやシートを得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、耐水性及び強度を十分に備えたフィルムやシートが得られる。特に薄くても強度、透明感のある生分解性の高いフィルムを得ることができる。また、窒素の含有量が従来の生分解性フィルム等に比べて低い。このため、自然中に投棄されたとしても環境に排出される窒素負荷量が少ない。従って、例えば農業等において使用される防寒用シートや家庭から排出される生ゴミ用のゴミ袋などの用途に適した新規な素材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の生分解性フィルム又はシート用組成物は、デンプン0〜35質量%、タンパク質20〜70質量%、セルロース繊維15〜60質量%、尿素1〜15質量%なり、また、加水した組成物は、デンプン0〜30質量%、タンパク質15〜60質量%、セルロース繊維10〜40質量%、尿素0.75〜12質量%、水20〜60質量%からなることを特徴とする。
【0012】
本発明において用いられるデンプンは、天然物由来のデンプン(天然デンプン)のみならず、天然デンプンを化学的に処理し、化学修飾を行った化学修飾デンプンのいずれでもよく、また、これらを適宜混合して用いることもできる。
【0013】
天然デンプンとは、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、小麦デンプン、米デンプン、タピオカデンプン、ソルガムデンプンなど各種植物から得られるデンプンであって、起源となる植物は限定されない。また、デンプン中に含まれるアミロース、アミロペクチン含量も特に問われるものでもなく、高アミローストウモロコシデンプンのようにアミロース含量を高めたデンプンを用いてもよい。また、本発明においては単一のデンプンのみならず、2種以上の天然デンプンを用いてもよい。
【0014】
化学修飾デンプンは、デンプンを構成するグルコースの水酸基に置換基を導入したものである。置換基は特に限定されるものではなく、被修飾デンプンである天然デンプンの種類も限定されるものではない。化学修飾デンプンとしては、例えば、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、アセチル化高アミロースデンプン、酢酸デンプン、マレイン酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、コハク酸デンプン、フタル酸デンプン、ヒドロキシプロピル高アミロースデンプン、架橋デンプン、リン酸デンプン、リン酸ヒドロキシプロピルジデンプンが例示される。これらの化学修飾デンプンも、単一種に限られず、2種以上を混合して用いても差し支えない。ここにいう架橋デンプンとは、リン酸塩化物、エピクロルヒドリン、リン酸誘導体等の種々の架橋剤によりデンプン分子を架橋したものをいう。
【0015】
本発明において用いられるタンパク質は、植物由来のタンパク質や動物由来のタンパク質のいずれでもよく、合成タンパク質であってもよい。植物由来のタンパク質(植物性タンパク質)には、例えば、大豆タンパク、小麦タンパク、米タンパクなどの各種豆類や穀類から得られるタンパク質が例示される。また、動物由来のタンパク質(動物性タンパク質)には、例えば、乳タンパクなど各種動物、鳥類、魚類由来のタンパク質が例示される。また、これらのタンパク質は抽出しただけで精製していない粗タンパク質のみならず、濃縮した濃縮タンパク質であってもよい。例えば、植物由来のタンパクであれば、大豆濃縮タンパク、動物由来のタンパクであれば、濃縮乳タンパクが例示される。一方、粗タンパク質を精製したタンパク質であってもよく、植物由来のタンパク質としてグルテン、ゼイン、ホルデイン、アベニン、カフィリンなどが例示され、動物由来のタンパク質としてカゼイン、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、ケラチンなどが例示される。これらのタンパク質は1種若しくは2種以上を用いることができる。
【0016】
本発明において用いられるセルロース繊維は、天然若しくは人工のセルロース繊維のいずれでもよい。天然由来のセルロール繊維には、各種の植物、例えば籾殻などの穀類の種皮、草、木材、わら、さとうきび、綿、葉、トウモロコシの皮やさとうきびの絞り滓から得られたガバス、新聞紙などの加工品が例示される。これらのセルロース繊維は、わらや穀類の種皮などを乾燥させた後繊維状にほぐし、それを任意に適当な長さに切断して用いられる。用いることのできるセルロース繊維は、太さが1〜100μm程度、長さが10μm〜30mm程度であるが、加工品の用途や要求される強度などに応じて適宜決定される。
【0017】
本発明の組成物は、タンパク質、セルロース繊維及び尿素を必須の成分とし、タンパク質を組成物中20〜70質量%、セルロース繊維を15〜60質量%、尿素1〜15質量%を含み、デンプンを用いる場合には組成物中に0〜35質量%を含むように組成される。なお、このときの組成は後述する加水を行う前の状態にある組成物についてであって、各原料は特別な乾燥処理や含水処理を行わない通常の保存状態にあるものを使用することを前提としたものである。
【0018】
本発明の組成物以外からも、例えばタンパク質とセルロース繊維及びデンプンの3成分から生分解性のあるシート状物を得ることもできる。しかしながら、このシート状物はフィルムのように膜厚が厚く、柔軟性や伸び性がほとんどなかった。また、保存とともにシート状物が乾燥し、折れるかのごとく容易に破損されやすいものであった。本発明者らは、このような状況下のもと、特定の配合量比を有する組成物に尿素を添加することで、強度はもちろんのこと、保水性が向上し、柔軟性のあるシート状の薄膜が形成できることを見いだした。このとき、タンパク質が組成物中20質量%未満であったり、70質量%を越えて配合した場合にはフィルム状に成形することができない。また、セルロース繊維の配合量が15質量%より少ない場合にもフィルム状に形成することができず、その配合量が60質量%より多いとセルロース繊維の配合量がタンパク質に比べて多すぎる結果、セルロース繊維の配合量が少ない場合と同様に良好なフィルム状に成形できない。尿素は、本発明の組成物において非常に重要な必須成分である。この尿素は、合成ポリマーからなるフィルムにおける可塑剤としての使用というより、得られるフィルム中の水分を保持し、これによってフィルムに柔軟性を付与する機能を果たす。従って、少なくとも加水しない状態での組成物中に1質量%以上、好ましくは2質量%以上の配合量とする。また、環境への窒素負荷を少なくするためには少ない方が好ましく、多くても組成物中に15質量%以下、好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは5質量%未満である。すなわち、尿素の配合量は1〜15質量%、好ましくは2〜12質量%である。
【0019】
本発明において、デンプンは必須ではなく任意の成分であって、必要に応じて適宜配合される。その配合量は、多くとも組成物中35質量%以下である。本発明の組成物から得られるフィルムは、タンパク質とセルロール繊維並びに尿素がバランスよく配合されることにより得られるものであって、デンプンは賦形剤(増量剤)として考えられるものである。従って、タンパク質、セルロース繊維、尿素の3成分がバランスよく配合されていればよいが、そこに配合されるデンプン量が多くなると適切なフィルムを形成できなくなる。
【0020】
本発明の生分解性組成物は、タンパク質、セルロース繊維及び尿素を必須の構成成分とし、この他にデンプンを配合したものであって、これらの成分以外にグリセリンやポリエチレングリコールなど可塑剤や軟化剤、金属塩を配合する必要はない。もっとも、本発明の加工品の強度、柔軟性等の物性を本質的に変えない限りにおいて、着色料や熱着色防止用の安定剤などの添加剤を配合することは可能である。
【0021】
本発明のフィルム等は次のようにして製造できる。すなわち、必要な成分を水とよく混合した上に十分に混練する。つまり所定の配合量で上記の成分を混合した上で加水し、二軸ミキサーなどを用いて十分に撹拌混練する。このとき、各成分と水が混合するだけでは不十分であって、おおよそ耳たぶ程度の硬さ、好ましくはいわゆる麺の腰が出る程度まで十分に捏ねる。
【0022】
この場合の水と組成物との混合比は組成物100質量部に対して、水10〜100質量部、好ましくは水25〜70質量部であるが、適宜、上記硬さが得られる程度に調整される。水が10質量部よりも少ないと粉っぽくなって十分に捏ねることができず、また、100質量部よりも多いと水が多すぎて柔らかくなり、適度な堅さ(腰)が得られないことが多い。また、デンプン、タンパク質、セルロース繊維及び尿素に水を加えた組成物においては、20〜60質量%の水が含まれるようにするのがよく、好ましくは28〜52質量%の水が含まれるようにする。
【0023】
得られた混練物は、例えば、そのままフィルム又はシート状に加工される。フィルム又はシートにするためには混練物をプレスすればよく、いわゆる圧延加工であるカレンダー法やロール加工が好ましく利用される。
【0024】
プレス時には加熱処理が施される。加熱処理は100℃以上、尿素の分解温度である約135℃以下、つまり100〜135℃の範囲であり、より好ましくは110〜130℃である。温度が低いと十分な強度や透明性が得られず、温度が高いと得られたフィルムが褐色に変色し、水分が減少してフィルムと言うより柔軟性のない板状物しか得られないおそれが強い。プレス時の圧力や時間は、組成物の配合や求めようとするフィルムの厚み等によって適宜決められるが、その一例を挙げると、120℃であれば5MPa、5分間程度の条件である。もっとも、加熱することなく常温でプレスしても、適度な強度と耐水性のあるフィルムやシートを得ることができる。
【0025】
本発明においては尿素を含有しており、本発明の組成物から得られたフィルムやシートは保水性に優れている。さらに、本発明の組成物に水を加えてよく捏ねた状態の中間品も保水性があり、保湿状態で保管することにより、その中間品を用いてフィルム等に加工することもできる。つまり、上記3成分乃至4成分からなる組成物に水を加えて十分に捏ねた組成物として提供することもできる。この中間品として提供される組成物は、0〜30質量%のデンプンと、15〜60質量%のタンパク質と、10〜40質量%のセルロースと、0.75〜12質量%の尿素と、20〜60質量%の水からなり、好ましくは尿素が1〜10質量%である。ここにおいて保湿状態での保管とは、捏ねられた組成物からの水分の蒸散がほぼない状態を示し、例えばビニール袋中に保管することが例示される。しかしながら、必ずしも環境下を高湿度に保つ必要はない。
【0026】
本発明の組成物から得られるフィルムやシートの厚みは数十〜300μm程度であって、0.5〜2mm程度の厚みのあるシート状物として提供することもできる。
【0027】
本発明のフィルム等は透明ないし半透明であって、膜厚200μmのものであれば水に浸漬した状態で1週間程度、さらに膜厚1mmのものであれば3週間以上の耐水性を有する。また、本発明のフィルム等は少なくとも10〜30MPa程度の引張強度を有する。そして、オイルやワックス、グリセリン等の可塑剤が使用されていないので、こうした化学物質などの滲み出しもなく、生体に対する安全性にも優れたフィルムやシートが得られる。さらに、金属塩も用いられていないため分解によって金属塩が排出されることがなく、しかも、尿素の含有量が少ないので、環境に放出される窒素量が少なく、いわゆる富栄養化などの環境汚染の心配も少ない。
【0028】
本発明のフィルムやシートは、食品用のラップや包装用シート、農業用の防寒用シートなどとして何ら2次加工を施すことなく用いることができるのは言うまでもなく、これらのフィルムやシートに袋加工などの2次加工を施して、食品用の包装袋や保存袋、いわゆるゴミ袋やレジ袋など種々の形態に加工して提供されることもある。袋状への加工方法として、例えば原材料であるシートと同じ組成物を接着剤として使用して袋加工する方法や加熱する際に圧着する部分の圧力を高める方法などが挙げられる。
【0029】
もっとも、本発明の組成物からは十分な耐水性のみならず高い強度を有するシート状物が得られる。従って、本発明の組成物は、フィルムやシートのみならず、カップや皿のような食器類、弁当箱や持ち帰り用の包装容器などにも使用することもできる。この場合には、十分に捏ねた組成物から上記温度に加熱しながら所定の形状にプレス加工すればよい。また、必要に応じて耐水用の樹脂をさらにコーティングしても差し支えない。
【0030】
次に本発明について下記の実施例に基づきさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されないのは言うまでもない。
【実施例1】
【0031】
まず、デンプン、タンパク、セルロース繊維及び尿素からなる組成物の混合・プレス性、薄膜成形性について評価を行った。
【0032】
トウモロコシデンプン(ワコー純薬(株)社製)、イモデンプン(同社製)、コメデンプン(同社製)、コムギデンプン(同社製)、コムギタンパク(長田産業(株)社製 「フメリットA」)、セルロースファイバー(日本製紙ケミカル(株)製KCフロック#100メッシュ又は#200)、尿素を表1の通りに配合し、表1に示す量の水を加え、二軸ミキサーを用いて常温で混合混練した。この混練物を、120℃の加熱下にて2軸プレス機によりフィルム化を試みた。このときの混合・プレス性及び薄膜成形性について評価した。その結果を表1に示した。混合・プレス性は組成物と水で十分に捏ねることができたかどうかで評価し、薄膜成形性はフィルムが得られるかどうかで評価した。また、表2には水を加えた組成物の組成を示した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
〔強度試験〕
表1(表2)において良好な混合性及び加熱プレス性がよかった試験番号18、18(2)〜18(4)及び37、37(2)〜37(4)の計8つの組成物から、120℃の加熱プレス(5MPa、5分間)により各種フィルムを作製し、これらフィルムの引っ張り強度を測定した。その結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
〔耐水性評価〕
次に上記強度試験において用いられた8つの組成物及び試験番号36の組成物から、120℃の加熱プレス(5MPa、5分間)により各種フィルムを作製し、これらフィルムの耐水性を評価した。評価は、常温水に浸漬した際に、膨潤が見られず、形状が維持されていたかどうかで判定した。その結果を表4に示すが、200μmの膜厚のものでは7日間、1mmの膜厚のものでは24日以上の耐水性が確認された。また、参考までに常温下でプレス加工をしたシートの耐水性も併せて評価した。
【0038】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によると、これまでにない強度と耐水性に優れた生分解性のフィルム又はシートが提供される。特に耐水性に優れており、ポリ乳酸などの合成ポリマーを用いることなくデンプンやタンパク質などの天然素材のみで作製できるので生分解性が高く、しかも比較的安価に作製できる。このため、袋状に加工して家庭の生ゴミなどを投入してそのまま廃棄できる。特に窒素含有量が少なく、金属塩も含まないので、環境への負荷も少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン0〜35質量%、
タンパク質20〜70質量%、
セルロース繊維15〜60質量%、
尿素1〜15質量%
からなることを特徴とする生分解性フィルム又はシート用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物から得られる生分解性フィルム又はシート。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物に加水して捏ねた後、100〜135℃の加熱下において、圧延されたことを特徴とする生分解性フィルム又はシート。
【請求項4】
請求項2又は3の生分解性フィルム又はシートから得られた袋。
【請求項5】
デンプン0〜30質量%、
タンパク質15〜60質量%、
セルロース繊維10〜40質量%、
尿素0.75〜12質量%、
水20〜60質量%からなることを特徴とする生分解性フィルム又はシート用組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物を捏ねることにより得られた生分解性フィルム又はシート製造用の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の生分解性組成物に加水して捏ねる工程又は請求項5又は6の何れか1項に記載の組成物を捏ねる行程、
前記こねた組成物を加熱しながらプレス処理する工程を有する生分解性フィルム又はシートの製造方法。
【請求項8】
100〜135℃で加熱する請求項7に記載の生分解性フィルム又はシートの製造方法。

【公開番号】特開2009−144034(P2009−144034A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322049(P2007−322049)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【特許番号】特許第4077027号(P4077027)
【特許公報発行日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(591212349)株式会社原子力エンジニアリング (16)
【Fターム(参考)】