説明

生分解性ポリマ、遺伝子治療および薬物送達のためのその複合体、ならびにそれに関連する方法

【課題】細胞毒性が低く、生物活性物質と遺伝子治療および薬物送達において有用な複合体を形成する生分解性陽イオンポリマを提供する。
【解決手段】生分解性陽イオンポリマが開示される。この生分解性陽イオンポリマは、第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位、開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および任意で末端保護基を含む。第1の繰り返し単位は、第4級アミン基を含む側鎖部分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリマに関する。より詳しくは、本発明は、遺伝子治療および薬物送達に用いるための生分解性ポリマと生物活性分子との複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子治療の進歩によって、より安価な細胞毒性のない遺伝子移入用キャリア物質のより広い選択肢が切に求められるようになった。キャリア物質は、遺伝子の荷物を細胞外環境において包装および保護し、細胞膜を通して荷物を輸送し、細胞内の適当な点において荷物を放出する必要がある。通常、キャリア物質は、ウイルスベクタおよび非ウイルスベクタに分類される。ウイルスベクタは、遺伝子の送達および発現の効率が優れている。しかし、ウイルスベクタは、多くの場合に免疫的に有害な反応を引き起こし、製造するのに費用がかさみ、遺伝子カプセル化の点で限界がある。
【0003】
非ウイルスベクタは、陽イオンポリマおよび陽イオン脂質(リポプレックス)を含む。これらの物質は生産コストが低くなる可能性があり、分子設計の点で柔軟性があるので、ウイルスベクタの代替として次第に関心を集めるようになった。陽イオンポリマおよび陽イオン脂質は、負電荷を有する遺伝物質と静電結合して正味電荷の減少したキャリア−遺伝子複合体を形成することができる。これらの複合体には、細胞への遺伝物質の効果的な移入を容易にすることができる可能性がある。
【0004】
理想としては、高分子−遺伝子複合体はエンドサイトーシスによって細胞の細胞質に入るべきである。複合体は、酵素が遺伝子を分解することができるリソソームに入る前に酸性のエンドソーム環境から細胞質ゾルに逃げ込まなければならない。そのように振る舞うための設計上の要点がポリマキャリアのアミン残基を調整して緩衝能力を提供することである。これによってエンドソームは浸透圧によって膨潤および破裂し、生物活性荷物もしくは生物活性荷物−キャリア複合体(すなわちポリプレックス)またはその両方が細胞質中に放出され(プロトンスポンジ仮説)、従って遺伝子移入が可能になる。たとえば、ポリ(エチレンイミン)(PEI)などの陽イオンポリマの遊離アミン残基は、エンドソーム中のプロトンを効果的に緩衝し、エンドソームの浸透圧膨潤および破裂を引き起こすことができる。PEIは、優れた移入効率を有する良好な非ウイルスベクタとして認識されている。これは、圧縮された複合体の形成を容易にするその高い電荷密度と、緩衝能力を提供するその中性に近い第2級アミン部位の高い密度とによると考えられる。しかし、PEIは生分解性ではなく、細胞毒性も高いと考えられている。従って、陽イオンポリマにもとづく合成移入ベクタの設計における難問は、低い細胞毒性と高い移入効率とを達成することである。安全な遺伝子送達のための効率的な非ウイルスベクタとしてポリ(β−アミノエステル)(PBAE)、修飾PEI、ポリ(アミノ酸)、ポリ(β−アミノスルホンアミド)(PBAS)、ポリ(L−リジン)(PLL)にもとづくデンドリマ、およびポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマが報告された。しかし、これらの高分子には、特に合成プロセスにおいて、解決されるべきいくつかの課題がある。重縮合によって調製されたPBAEおよびPBASは分子量分布が比較的広く、PEIおよびその誘導体は、通常、制御するのが難しい分岐構造体を一部含み、デンドリマは望ましい分子量を生成させるのに多数のステップが必要であり、アミノ酸にもとづくポリマは高価な出発物質のために製造コストが高い。
【0005】
静電相互作用によるポリマ−遺伝子複合体生成は、遺伝物質のための効果的な輸送および保護戦略であるが、この緊密な充填は遺伝子を取り出す上で問題にもなる。生物活性名荷物の放出を容易にするために、分解性システム、可逆的な架橋、適度に帯電した陽イオンポリマ、階層的に自己集合したpH応答性の3元ポリマおよび複数の電荷シフト戦略を含む多数の戦略が探索された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
遺伝子移入および薬物送達のためのより安価な、より細胞毒性の低い、より生分解性の高い合成キャリアが依然として求められている。そのようなキャリアは、予測可能な分子量および低い多分散性を有するべきであり、生物活性分子、特にヌクレオチドと可逆的な細胞外複合体を形成するべきである。従って、本発明の目的は、細胞毒性が低く、生物活性物質と遺伝子治療および薬物送達において有用な複合体を形成する生分解性陽イオンポリマを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、実施態様において、
第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導され、その0%超は第4級アミン基を含む側鎖部分を有する第1の繰り返し単位、
開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および
任意選択の末端保護基
を含む生分解性陽イオンポリマが開示される。
【0008】
別の実施態様において、
第1の環状カルボニルモノマ、触媒、促進剤、モノマジオール開始剤、および任意選択の溶媒を含む第1の混合物を形成するステップであって、第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含むステップ、
第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位を含む第1のポリマを形成するステップ、
任意選択として、第1のポリマを末端保護して前駆体ポリマを形成するステップ、および、
前駆体ポリマを第3級アミンで処理して陽イオンポリマを形成するステップであって、第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有するステップ
を含む、生分解性陽イオンポリマを形成する方法が開示される。
【0009】
別の実施態様において、
触媒、促進剤、モノマジオール開始剤、および任意選択の溶媒を含む反応混合物を形成するステップ、
第1の環状カルボニルモノマ、および続いて第2の環状カルボニルモノマを反応混合物に順次加え、開環重合によって反応させ、それによって第1のブロックコポリマを形成するステップであって、第1の環状カルボニルモノマは第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含み、第2の環状カルボニルモノマは該第3級アミンと反応していずれかの第4級アミンを形成することができないステップ、
任意選択として、第1のブロックコポリマを末端保護し、それによって前駆体ブロックコポリマを形成するステップ、および
前駆体ブロックコポリマを第3級アミンで処理して陽イオンポリマを形成するステップであって、陽イオンポリマは第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位を含み、第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有するステップ
を含む、生分解性陽イオンブロックコポリマを形成する方法が開示される。
【0010】
別の実施態様において、
負電荷を有する生物活性物質、および
第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導され、その0%超が第4級アミン基を含む側鎖部分を有する第1の繰り返し単位、
開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および
任意選択の末端保護基
を含む生分解性陽イオンポリマ
を含む、ポリマ複合体が開示される。
【0011】
別の実施態様において、
生分解性陽イオンポリマを含む第1の水性混合物を、負電荷を有する生物活性物質を含む第2の水性混合物と接触させてポリマ複合体を含む第3の水性混合物を形成するステップであって、生分解性陽イオンポリマは、第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位、開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および任意選択の末端保護基を含み、第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミン基を含む側鎖部分を有するステップ
を含む、細胞を処理するためのポリマ複合体を形成する方法が開示される。
【0012】
別の実施態様において、
細胞を、生分解性陽イオンポリマおよび負電荷を有する生物活性物質を含むポリマ複合体のナノ粒子と接触させるステップであって、生分解性陽イオンポリマは第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位、開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および任意選択の末端保護基を含み、第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミン基を含む側鎖部分を有するステップ
を含む、細胞を処理する方法が開示される。
【0013】
上記に記載の本発明の特徴および効果ならびにその他の本発明の特徴および効果は以下の詳細な記載、図面、および添付の請求項から当業者に明らかとなり、理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例15の陽イオンポリマおよびDNAを用いて調製したポリプレックスの種々のpHおよびさまざまなN/P比におけるアガロースゲル電気泳動実験を示す写真画像である。
【図2】pH7.0、6.0および5.0において調製したポリプレックスのN/P比と粒子サイズとの間の関係を示す棒グラフである。
【図3】pH7.0、6.0および5.0において調製したポリプレックスのN/P比とζ電位との間の関係を示す棒グラフである。
【図4】種々のpHおよびN/P比において作製したポリプレックスについてHepG2ヒト肝癌腫細胞系統におけるルシフェラーゼ発現レベルを比較する棒グラフである。DNAおよびPEI/DNA対照物も示されている。
【図5】種々のpHおよびN/P比における細胞生存率を比較する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
生物活性分子とナノサイズの複合体を形成し、ポリ(エチレンイミン)(PEI)などの他のキャリアより細胞毒性の低い生分解性陽イオンポリマが開示される。陽イオンポリマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを含む部分を形成することができるハロゲン化アルキルまたはスルホン酸エステルなどの1価の脱離基を有する第1の環状カルボニルモノマの開環重合(ROP)によって誘導される。このための希釈剤として他の環状カルボニルモノマが選ばれてポリマに疎水性もしくは電荷シフト能力またはその両方を提供する。陽イオンポリマは高密度の電荷を有することができ、従って水に自由に溶解することができるか、または両親媒特性を備え、水溶液中でナノ粒子を形成することができる。開環方法により、ポリマの分子量の正確な制御が可能になり、低い多分散性(polydispersity)が達成され、さまざまな官能基と適合する。第4級アミンを含む部分を形成する第3級アミンとの反応は、開環重合の前か後に、特に重合の後に実行することができる。この4級化には、あったとしても最小限の陽イオンポリマの架橋しか伴わない。環状カルボニルモノマの例は、開環してカーボネートおよびエステルの繰り返し単位をそれぞれ含むポリマを形成する環状カーボネートモノマ、およびラクチドを含むラクトンを含む。第4級アミンは、ポリマの側鎖に位置し、望むならポリマ主鎖に直接結合してもよい。正電荷を有する第4級アミン基は、負電荷を有する生物活性物質との結合強度を提供する。実施態様において、第3級アミンはビス第3級アミンであり、陽イオンポリマは第4級アミンおよび第3級アミンを含む側鎖部分を有する。側鎖第3級アミン基は、緩衝能力を提供してポリマ複合体からの生物活性物質の放出を容易にする。他の官能基、例えば第2級アミン基、シトラコンアミド基、エステル基、およびイミン基を用いてポリマ複合体からの生物活性物質の放出を容易にすることができる。生物活性物質の放出は、電荷シフトが可能な陽イオンポリマによっても容易にすることができる。電荷シフトにおいては、ポリマ複合体が細胞に入った後に陽イオンポリマ側鎖の電荷のない基が負電荷を有する基に変換されることによって、陽イオンポリマの正味の正電荷が減少する。電荷シフトが可能な陽イオンポリマは、第4級アミンに加えて、たとえばアセタールエステルなどの潜在的なカルボン酸基を含むことができる。アセタールエステルは、エンドソーム環境の弱酸性条件下で加水分解されてカルボン酸基を形成することができる。細胞質ゾルのより塩基性の環境において、カルボン酸基はイオン化され、それによって陽イオンポリマの正味の正電荷を低下させ、負電荷を有する生物活性物質の放出を可能にする。環状カルボニルモノマの開環重合によって、陽イオンポリマの電荷シフト能力を特定の生物活性物質のために調整することが可能になる。陽イオンポリマは直鎖であっても分岐であってもよく、電荷および緩衝作用の強さを調整するために容易に修飾することができる。遺伝子とともに、陽イオンポリマは約10nmから約250nmの平均粒子サイズを有する複合体(すなわちポリプレックス)を形成する。
【0016】
用語「生分解性」は、米国材料試験協会によって、材料の化学構造の顕著な変化に至る生物活性、特に酵素作用によって引き起こされる分解として定義されている。本明細書において、材料は、ASTM D6400に則って180日以内に60%生分解するなら「生分解性である」。
【0017】
本明細書において、「荷物(cargo)」は、開示される陽イオンポリマと可逆的なナノサイズの複合体を形成する任意の生物活性物質であってよいが、複合体はエンドサイトーシスによって細胞に入ること、および複合体は細胞内において所望の段階で生物活性物質を放出することが前提条件である。生物活性物質は、生体分子(たとえばDNA、遺伝子、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、リン脂質、およびヌクレオチド)、天然または合成の有機化合物(たとえば、薬物、染料、合成ポリマ、オリゴマ、およびアミノ酸)、無機物質(たとえば金属および金属酸化物)、前述のものの放射性変化形、および前述のものの組み合せを含む。「生物活性」は、物質が細胞の化学構造もしくは活性またはその両方を望ましいように変化させることができること、あるいは細胞型の化学構造もしくは活性またはその両方を別の細胞型に対して選択的に望ましいように変化させることができることを意味する。一例として、1つの望ましい化学構造の変化は、細胞のDNAへの遺伝子の組み込みであってよい。望ましい活性の変化は、移入された遺伝子の発現であってよい。細胞活性の別の変化は、所望のホルモンまたは酵素の誘起された産生であってよい。あるいは、望ましい活性の変化は、別の細胞型を上回る1つの細胞型の選択的な死であってよい。生物活性物質によって引き起こされる細胞活性の相対的な変化には、変化が望ましくかつ有用であれば限定はない。さらに、いわゆる「荷物」には、荷物が複合体から放出されると有用な細胞応答を誘発するのであれば限定はない。
【0018】
環状カルボニルモノマに関する以下の一般式の記載において、「第1の環状カルボニルモノマ」は、第3級アミンと反応して第4級アミンを含む部分を形成することができる1価の脱離基を含む第1の範疇の環状カルボニルモノマを指す。用語「第2の環状カルボニルモノマ」は、第3級アミンと反応していずれかの第4級アミンを含む部分を形成することができる1価の脱離基を含まない第2の範疇の環状カルボニルモノマを指す。それ以外は、第1および第2の環状カルボニルモノマは、以下に記載されている式のいずれから選ばれた構造も有することができる。
【0019】
環状カルボニルモノマは、一般式(1)の化合物から独立に選ぶことができる。
【0020】
【化1】

【0021】
式中、tは0から6の整数であり、tが0のとき4の炭素と6の炭素とは単結合によって結合している。各Yは、
【0022】
【化2】

【0023】
から独立に選ばれた2価のラジカルである。ここでダッシュ「−」は結合点を示す。後の2つの基は、本明細書において−N(Q)−および−C(Q−とも表される。各Qは、水素、ハロゲン化物、カルボキシ基、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素原子を含むアリール基、または下段の構造を有する基から独立に選ばれた1価のラジカルである。
【0024】
【化3】

【0025】
ここで、Mは、−R、−OR、−NHR、−NR、または−SRから選ばれた1価のラジカルであり、ここでダッシュは結合点を表し、各Rは、1から30の炭素を含むアルキル基、または6から30の炭素を含むアリール基から独立に選ばれた1価のラジカルである。1つ以上のQ基は、第3級アミンと反応して第4級アミン(すなわち4つの炭素に結合した正の電荷を有する第四級アンモニウムイオン)を含む部分を形成することができる1価の脱離基をさらに含むことができる。1価の脱離基の非限定的な例は、ハロゲン化アルキル(たとえば塩化アルキル、臭化アルキルまたはヨウ化アルキル)の形のハロゲン化物、スルホン酸エステル(たとえばトシル酸エステルまたはメシル酸エステル)、およびエポキシドを含む。各Q基は、独立に、分岐形または非分岐形であってよい。各Q基は、独立に、ケトン基、アルデヒド基、アルケン基、アルキン基、3から10の炭素を含む脂環式の環、2から10の炭素を含む複素環、エーテル基、アミド基、エステル基を含む追加の官能基、および前述の追加の官能基の組み合わせも含むことができる。複素環は、酸素、硫黄もしくは窒素またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。2つ以上のQ基が一緒に環を形成することができる。式(1)の第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを含む部分を形成することができる1価の脱離基を含む1つ以上のQ基を含む。式(1)の第2の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応していずれかの第4級アミンを含む部分を形成することができる官能基を含まない。
【0026】
開環重合することができる別の特定の環状カルボニルモノマは、一般式(2)を有する。
【0027】
【化4】

【0028】
式中、Qは、水素、ハロゲン化物、カルボキシ基、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素原子を含むアリール基、および下記の構造を有する基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルである。
【0029】
【化5】

【0030】
式中、M1は、−R1、−OR、−NHR、−NR、または−SRから選ばれた1価のラジカルであり、各Rは、1から30の炭素を含むアルキル基、および6から30の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、Rは、1から30の炭素を含むアルキル基、および6から30の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、Qは、水素、1から30の炭素を有するアルキル基、および6から30の炭素を有するアリール基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルである。実施態様において、各Qは、水素であり、Qは、メチルまたはエチル基である、Rは、1から30の炭素を含むアルキル基である。式(2)の第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを含む部分を形成することができる1価の脱離基を含むR基を含む。式(2)の第2の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応していずれかの第4級アミンを含む部分を形成することができる官能基を含まない。
【0031】
さらに別の特定の環状カルボニルモノマは、一般式(3)を有する。
【0032】
【化6】

【0033】
式中、各Qは、水素、ハロゲン化物、カルボキシ基、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素原子を含むアリール基、および下記の構造を有する基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルである。
【0034】
【化7】

【0035】
ここで、Mは、−R、−OR、−NHR、−NR、または−SRから選ばれた1価のラジカルであり、式中、各Rは、1から30の炭素を含むアルキル基、および6から30の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、uは、1から8の整数である。任意選択として、ラクトン環は、炭素−炭素二重結合を含むことができる。すなわち、任意選択として、式(3)の
【0036】
【化8】

【0037】
は、独立に、
【0038】
【化9】

【0039】
を表すことができる。ラクトン環は、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、またはそれらの組み合わせも含むことができる。すなわち、任意選択として式(3)の
【0040】
【化10】

【0041】
は、独立に、−O−、−S−、−NHR、または−NR基を表すことができる。式中、Rは、上記と同じ定義を有する。式(3)の第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを含む部分を形成することができる1価の脱離基を含む1つ以上のQ基を含む。式(3)の第2の環状カルボニルモノマは、この第3級アミンと反応していずれかの第4級アミンを含む部分を形成することができる官能基を含まない。実施態様において、uは、1から6の整数であり、各Qは、水素である。
【0042】
さらに別の特定の環状カルボニルモノマは、一般式(4)のジオキサンジカルボニルである。
【0043】
【化11】

【0044】
式中、各Qは、水素、ハロゲン化物、カルボキシ基、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素原子を含むアリール基、および下記の構造を有する基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルである。
【0045】
【化12】

【0046】
ここで、Mは、−R、−OR、−NHR、−NR、または−SRから選ばれた1価のラジカルであり、式中、各Rは、1から30の炭素を含むアルキル基、および6から30の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、各Qは、水素、1から30の炭素を有するアルキル基、および6から30の炭素を有するアリール基からなる群から独立に選ばれた一価の基である。各vは、独立に、1から6の整数である。式(4)の第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを含む部分を形成することができる1価の脱離基を含む1つ以上のQ基および/またはQ基を含む。式(4)の第2の環状カルボニルモノマは、この第3級アミンと反応していずれかの第4級アミンを含む部分を形成することができる官能基を含まない。実施態様において各vは1であり、各Qは水素であり、各Qは1から6の炭素を含むアルキル基である。
【0047】
環状カルボニル化合物は、R−異性体またはS−異性体のどちらかとして異性体が濃縮された形で存在することができる1つ以上の不斉炭素中心を有することができる。さらに、各不斉炭素中心は、独立に、80%以上、より詳しくは90%のエナンチオマ過剰率で存在することができる。
【0048】
ハロゲン化アルキルの形の1価の脱離基を有する式(1)または(2)の環状カルボニルモノマの例は、表1の環状モノマを含む。
【0049】
【表1】

【0050】
式(2)の環状カルボニルモノマの追加の例は、表2の化合物を含む。これらは、たとえば、表1のハロゲン化物モノマの開環重合におけるコモノマとして用いてランダムコポリマまたはブロックコポリマを形成することができる。
【0051】
【表2】

【0052】
式(3)の環状カルボニルモノマの例は、表3の化合物を含む。
【0053】
【表3】

【0054】
式(4)の環状カルボニルモノマの例は、表4の化合物を含む。
【0055】
【表4】

【0056】
上記に述べたように、静電相互作用による複合体生成は、遺伝物質のための効果的な包装(packaging)戦略である。しかし、多くの場合に、移入後放出は難しく、したがって移入速度は低くなることがある。この問題を回避するために、環状カルボニルモノマが潜在的なカルボン酸基を含む電荷シフト戦略を利用することができる。これは、陽イオンポリマがエンドソーム環境のpHに対応する約pH5においてカルボン酸に変換することができる保護された側鎖カルボン酸を含むことを意味する。潜在的なカルボン酸基の例は、本明細書においてアセタールエステル基とも呼ばれるアセタール保護されたカルボン酸基である。アセタールエステル基は、一般式(5)を有する。
【0057】
【化13】

【0058】
式中、*−は、環状カルボニル部分との結合を表し、RおよびRは、独立に、1から20の炭素を含む1価のラジカルである。実施態様において、Rはメチルであり、Rはエチルである。別の実施態様において、第2の環状カルボニルモノマは、MTCOEEである。
【0059】
【化14】

【0060】
MTCOEEから誘導された繰り返し単位は、共重合されて陽イオンポリマに入ったとき、酸性のエンドソーム環境において容易に脱保護される側鎖アセタールエステルを含む。細胞質中に放出されると、結果として生じた陽イオンポリマのカルボン酸基は脱プロトンし、従ってキャリアの正味電荷を中和し、生物活性物質の放出の促進を可能にする。MTCOEEから誘導された陽イオンポリマは、DNAと結合して90nmから110nmの平均直径を有する自己集合ナノ粒子を形成することができる。
【0061】
エンドソーム内放出を容易にするための別の戦略は、たとえばフッ素化第3級アルコール基を含む環状カルボニルモノマを用いて生物活性な荷物を安定化させる非共有結合相互作用を含む。フッ素化第3級アルコール基は、リン酸および関連構造物と結合するが、相互作用エネルギーが静電相互作用より低く、したがってより容易に放出されることが知られている。
【0062】
上記のモノマは、酢酸エチルなどの溶媒からの再結晶または他の公知の精製方法によって精製することができ、モノマからできるだけ多くの水を取り除くことに特に注意が払われる。モノマ水分含有率は、モノマの重量を基準として1から10,000ppm、1から1,000ppm、1から500ppm、最も詳しくは1から100ppmであってよい。
【0063】
その少なくとも1つは第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含む、上記に記載されている環状カルボニルモノマは、開環重合して第1のポリマを形成する。第1のポリマは、同じ環状カルボニルモノマまたは別の環状カルボニルモノマ、または環状カルボニルモノマの混合物と連鎖成長を開始してブロックコポリマを形成することができるリビングポリマである。任意選択として、第1のポリマは、さらなる連鎖成長を防ぎ、反応性末端基を安定させるために末端保護剤で処理される。その結果得られた前駆体ポリマは、次に、第3級アミンで処理されて陽イオンポリマを形成する。第1のポリマ、前駆体ポリマ、および陽イオンポリマは、アタクチック形、ジンジオタクチック形またはアイソタクチック形で作り出すことができる。特定のタクティシティーは、環状モノマ(単数または複数)、異性体純度、および反応条件によって決まる。
【0064】
あるいは、陽イオンポリマは、第4級アミン基および第3級アミン基を含む環状カルボニルモノマの開環重合によって得ることができる。しかし、これらのモノマは、調製するのがより難しく、安定性がより低く、対応するポリマの多分散性が大きくなる傾向がある。従って、4級化反応は、開環重合の後に実行する。
【0065】
最も簡単な例において、第1のポリマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを含む部分を形成することができる1価の脱離基を含む第1の環状カルボニルモノマ、触媒、促進剤、モノマジオール開始剤、および任意選択の溶媒を含む反応混合物から調製されたホモポリマである。実施態様において、触媒および促進剤は、同じ物質である。たとえば、一部の開環重合は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)だけを用いて別の触媒を用いないで行なうことができる。一般に、開環重合は、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気下の反応器中で行なう。重合は、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ジオキサン、クロロホルムおよびジクロロエタンなどの不活性溶媒中の溶液重合によって、またはバルク重合によって実行することができる。ROPの反応温度は、常温付近から250℃であってよい。一般に、反応混合物を大気圧において0.5から72時間加熱して重合を行い、第1のポリマを含む第2の混合物を形成させる。開環して成長した各ポリマ鎖の出発点となった末端に、モノマジオール開始剤から誘導されたサブユニットが結合している。次に、任意選択として、第1のポリマを末端保護して前駆体ポリマを形成させる。次に、前駆体ポリマを第3級アミンで処理して陽イオンポリマを形成させる。ここで、第1のカルボニルモノマから誘導された繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有する。
【0066】
第1のポリマは、たとえば、第1の環状カルボニルモノマおよび疎水性の第2の環状カルボニルモノマを含む混合物の開環重合によって形成されたランダムコポリマでもあってよい。ランダムな第1のポリマを末端保護してランダムな前駆体コポリマを形成することができる。この場合、開始剤から誘導されたサブユニット、および末端保護基を含む末端繰り返し単位を、どちらのモノマから誘導された繰り返し単位とも結合させることができる。次に、ランダムな前駆体コポリマを第3級アミンで処理してランダムな陽イオンコポリマを形成させる。ここで、第1の環状カルボニルモノマから誘導された繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む部分を含む。第2の環状カルボニルモノマから誘導された繰り返し単位は、第3級アミンと反応していずれかの第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含まない。望むなら、反応混合物は第1の範疇もしくは第2の範疇またはその両方の追加の環状カルボニルモノマを含むことができると理解される。
【0067】
より詳しくは、第1のポリマは、たとえば第1の環状カルボニルモノマおよび疎水性の第2の環状カルボニルモノマを順次に開環重合させて第1のブロックコポリマを形成させることによって形成されたブロックコポリマである。次に、任意選択として、第1のブロックコポリマを末端保護して前駆体ブロックポリマを形成させる。次に、前駆体ブロックポリマを第3級アミンで処理して陽イオンブロックコポリマを形成させる。ここで、第1の環状カルボニルモノマから誘導された繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有する。前と同じように、第2の環状カルボニルモノマから誘導された繰り返し単位は、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含まない。開環重合の順序に応じて、モノマジオール開始剤から誘導されたサブユニットを第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位または第2のカルボニルモノマから誘導された第2の繰り返し単位と結合させることができる。1例において、最初に第1の環状カルボニルモノマを重合させてブロックコポリマの第1のブロックを形成させ、2番目に第2の環状カルボニルモノマを重合させてブロックコポリマの第2のブロックを形成させる。この例において、陽イオンブロックコポリマは、モノマジオール開始剤から誘導されたサブユニットと結合した、第1の環状カルボニルモノマから誘導された親水性のコアブロック、および任意選択として末端保護された、第2のカルボニルモノマから誘導された疎水性の外側のブロックを含む。別の例において、最初に第2の環状カルボニルモノマを重合させ、2番目に第1の環状カルボニルモノマを重合させる。この例において、陽イオンブロックコポリマは、ジオール開始剤から誘導されたサブユニットと結合した第2の繰り返し単位を含む疎水性コアブロック、および任意選択として末端保護された親水性の外側のブロックを含む。望むなら、第1の環状カルボニルモノマ、第2の環状カルボニルモノマ、別の環状カルボニルモノマ、またはそれらの組み合わせを用いて、保護されていない鎖のリビング末端から追加のブロックを成長させることができる。ブロックコポリマは、両親媒性であり、水溶液中で自己集合ナノサイズ粒子を形成する。
【0068】
ROP重合のための触媒の例は、金属酸化物、たとえば、テトラメトキシジルコニウム、テトラ−イソ−プロポキシジルコニウム、テトラ−イソ−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−イソ−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−イソ−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、モノ−sec−ブトキシ−ジーイソ−プロポキシアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、テトラエトキシチタン、テトラ−イソ−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、トリ−イソ−プロポキシガリウム、トリ−イソ−ブトキシアンチモン、トリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、トリ−イソ−プロポキシホウ素、トリ−n−プロポキシホウ素、トリ−イソ−ブトキシホウ素、トリ−n−ブトキシホウ素、トリ−sec−ブトキシホウ素、トリ−t−ブトキシホウ素、トリ−イソ−プロポキシガリウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラ−イソ−プロポキシゲルマニウム、テトラ−n−プロポキシゲルマニウム、テトラ−イソ−ブトキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラ−sec−ブトキシゲルマニウムおよびテトラ−t−ブトキシゲルマニウム;ハロゲン化化合物、たとえば、五塩化アンチモン、塩化亜鉛、臭化リチウム、塩化スズ(IV)、塩化カドミウムおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル;アルキルアルミニウム、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドおよびトリ−イソ−ブチルアルミニウム;アルキル亜鉛、たとえばジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛およびジイソプロピル亜鉛;第3級アミン、たとえば、トリアリルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミンおよびベンジルジメチルアミン;ヘテロポリ酸、たとえば、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、シリコタングステン酸およびそれらのアルカリ金属塩;ジルコニウム化合物、たとえば、ジルコニウム酸塩化物、オクタン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムおよび硝酸ジルコニウムを含む。さらに詳しくは、触媒は、オクタン酸ジルコニウム、テトラアルコキシジルコニウム化合物またはトリアルコキシアルミニウム化合物である。
【0069】
他のROP触媒は、制御された、予測可能な分子量および狭い多分散性を有するポリマへの共通基盤を提供することができる無金属の有機触媒を含む。環状エステル、カーボネートおよびシロキサンのROPのための有機触媒の例は、4−ジメチルアミノピリジン、ホスフィン、N−複素環カルベン(NHC)、二官能アミノチオ尿素、ホスファゼン、アミジン、およびグアニジンである。実施態様において、触媒は、N−(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシル−チオ尿素(TU)である。
【0070】
【化15】

【0071】
別の無金属ROP触媒は、少なくとも1つの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール−2−イル(HFP)基を含む。単独供与型水素結合触媒は、式(6)を有する。
−C(CFOH (6)
は、水素または1から20の炭素を有する1価のラジカル、たとえばアルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、置換ヘテロシクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、またはそれらの組み合わせを表す。表5に単独供与型水素結合触媒の例を挙げる。
【0072】
【表5】

【0073】
二重供与型水素結合触媒は、2つのHFP基を有し、一般式(7)によって表される。
【0074】
【化16】

【0075】
式中、Rは、1から20の炭素を含有する2価のラジカルの橋架け基、たとえばアルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、置換ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、およびそれらの組み合わせである。代表的な式(7)の二重水素結合型触媒は、表6に列挙されているものを含む。特定の実施態様において、Rはアリーレン基または置換アリーレン基であり、HFP基は芳香環の互いにメタの位置を占める。
【0076】
【表6】

【0077】
一実施態様において、触媒は、4−HFA−St、4−HFA−Tol、HFTB、NFTB、HPIP、3,5−HFA−MA、3,5−HFA−St、1,3−HFAB、1,4−HFAB、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0078】
担体に結合されたHFP含有基を含む触媒も意図される。一実施態様において、担体は、ポリマ、架橋ポリマビーズ、無機粒子、または金属粒子を含む。HFP含有ポリマは、HFP含有モノマ(たとえばメタクリレートモノマ3、5−HFA−MAまたはスチリルモノマ3,5−HFA−St)の直接重合を含む公知の方法によって形成させることができる。直接重合(またはコモノマとの重合)することができるHFP含有モノマの官能基は、アクリレート、メタクリレート、α,α,α−トリフルオロメタクリレート、α−ハロメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ノルボルネン、ビニル、ビニルエーテル、および当分野において公知の他の基を含む。Ito et al.,Polym.Adv.Technol.,2006,17(2),104−115、Ito et al.,Adv.Polym.Sci.,2005,172,37−245、Ito et al.,米国特許第20060292485号、Maeda et al.,国際公開第2005098541号、Allen et al.,米国特許第20070254235号、およびMiyazawa et al.,国際公開第2005005370号に、そのような重合性HFP含有モノマの典型的な例を見いだすことができる。あるいは、結合基を介してポリマまたは担体にHFP含有基を化学的に結合することによって予め形成されたポリマおよび他の固体担体表面を修飾することができる。M.R.Buchmeiser,ed.“Polymeric Materials in Organic Synthesis and Catalysis,”Wiley−VCH,2003、M.Delgado and K.D.Janda “Polymeric Supports for Solid Phase Organic Synthesis,”Curr.Org.Chem.2002,6(12),1031−1043、A.R.Vaino and K.D.Janda “Solid Phase Organic Synthesis:A Critical Understanding of the Resin”,J.Comb.Chem.2000,2(6),579−596、D.C.Sherrington ”Polymer−supported Reagents,Catalysts,and Sorbents:Evolution and Exploitation−A Personalized View,”J.Polym.Sci.A.Polym.Chem.2001,39(14),2364−2377、およびT.J.Dickerson et al.“Soluble Polymers as Scaffold for Recoverable Catalysts and Reagents,”Chem.Rev.2002,102(10),3325−3343にそのようなポリマまたは担体の例が参照される。結合基の例は、C〜C12アルキル、C〜C12ヘテロアルキル、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、エステル基、アミド基、またはそれらの組み合わせを含む。ポリマまたは担体表面の反対電荷を有する部位にイオン会合によって結合された、電荷を有するHFP含有基を含む触媒も意図される。
【0079】
ROP反応混合物は、少なくとも1つの触媒、適切であればいくつかの触媒を一緒に含む。ROP触媒は、環状カルボニルモノマに対して1/20モルから1/40,000モル、好ましくは1/1,000モルから1/20,000モルの割合で加える。
【0080】
開環重合は、促進剤、詳しくは窒素塩基の存在下で行う。窒素塩基促進剤の例は下に列挙され、表7に示されているピリジン(Py)、Ν,Ν−ジメチルアミノシクロヘキサン(MeNCy)、4−N,N‐ジメチルアミノピリジン(DMAP)、trans−1,2−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン(TMCHD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、(−)−スパルテイン(Sp)、1,3−ビス(2−プロピル)−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン(Im−1)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(Im−2)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル(イミダゾール−2−イリデン(Im−3)、1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾール−2−イリデン(Im−4)、1,3−ジ−i−プロピルイミダゾール−2−イリデン(Im−5)、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾール−2−イリデン(Im−6)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−7)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−8)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0081】
【表7】

【0082】
一実施態様において、促進剤は、2つまたは3つの窒素を有し、そのそれぞれがたとえば構造(−)−スパルテインにおけるようにルイス塩基として参加することができる。一般に、強い塩基ほど重合速度を向上させる。
【0083】
ROP反応混合物は、開始剤も含む。一般に、開始剤は、アルコール、アミンおよびチオールなどの求核剤を含む。開始剤は、単官能、二官能、またはデンドライト、ポリマもしくは関連体などの多官能の構造であってよい。単官能開始剤は保護された官能基を有する求核基を含んでよく、チオール、アミン、酸およびアルコールを含む。アルコール開始剤は、アルコールの選択が重合収率、ポリマ分子量、生物活性物質との複合体生成もしくは生成物ポリマの望ましい機械特性および物理特性またはそれらの任意の組合せに悪影響を及ぼさないことを前提として、モノアルコール、ジオール、トリオール、または他のポリオールを含む任意の適当なアルコールであってよい。アルコールは、1つ以上のヒドロキシル基に加えて、ハロゲン化物、エーテル基、エステル基、アミド基、または他の官能基を含む多官能であってもよい。アルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、アミルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコールおよび他の脂肪族飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノールおよび他の脂肪族環状アルコール;フェノール、置換フェノール、ベンジルアルコール、置換ベンジルアルコール、ベンゼンジメタノール、トリメチロールプロパン、糖、ポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコール、オリゴマアルコールから誘導されたアルコール官能化ブロックコポリマ、または分岐アルコールから誘導されたアルコール官能化分岐ポリマ、またはそれらの組み合わせを含む。実施態様において、ROP開始剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ハイドロキノン、およびレゾルシノールからなる群から選ばれたモノマジオールである。さらに詳しくは、開始剤は、環状カーボネートモノマの調製において用いられる前駆体BnMPAである。
【0084】
【化17】

【0085】
開環重合反応は、溶媒を用いて実行しても溶媒を用いないで実行してもよい。任意選択の溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、石油エーテル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、t‐ブチルジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、または前述の溶媒の1つを含む組み合わせを含む。溶媒が存在するとき、適当なモノマ濃度は、1リットルあたり約0.1から約5モル、より詳しくは1リットルあたり約0.2から約4モルである。特定の実施態様において、開環重合のための反応混合物は溶媒を含まない。
【0086】
開環重合は、大体室温以上の温度、より詳しくは15℃から200℃、より詳しくは20℃から200℃の温度で実行することができる。反応をバルクで行うとき、重合は、50℃以上、より詳しくは100℃から200℃の温度で実行する。反応時間は、溶媒、温度、撹拌速度、圧力、および装置によって変るが、一般に重合は1から100時間の範囲内で完了する。
【0087】
溶液中で実行しようとバルクで実行しようと、重合は不活性(すなわち無水)雰囲気中および100Mpaから500MPa(1気圧から5気圧)の圧力で、より典型的には100MPaから200MPa(1気圧から2気圧)の圧力で行う。反応が完了したら、溶媒は、減圧を用いて除去することができる。
【0088】
触媒は、環状カルボニルモノマの全モル数を基準として約0.2モル%から20モル%、0.5モル%から10モル%、1モル%から5モル%、または1モル%から2.5モル%の量で存在する。
【0089】
窒素塩基促進剤は、環状カルボニルモノマの全モル数を基準として0.1モル%から5.0モル%、0.1モル%から2.5モル%、0.1モル%から1.0モル%、または0.2モル%から0.5モル%の量で存在する。上記に述べたように、場合によっては、触媒および窒素塩基促進剤は、特定の環状カルボニルモノマに応じて同じ化合物であってよい。
【0090】
開始剤の量は、アルコール開始剤中のヒドロキシル基あたりの当量分子量にもとづいて計算される。ヒドロキシル基は、環状カルボニルモノマの全モル数を基準として0.001モル%から10.0モル%、0.1モル%から2.5モル%、0.1モル%から1.0モル%、および0.2モル%から0.5モル%の量で存在する。たとえば、開始剤の分子量が100g/モルであり、開始剤に2つのヒドロキシル基があるなら、ヒドロキシル基あたりの当量分子量は50g/モルである。重合がモノマのモルあたり5モル%のヒドロキシル基を必要とするなら、開始剤の量はモノマのモルあたり0.05×50=2.5gである。
【0091】
特定の実施態様において、触媒は約0.2モル%から20モル%の量で存在し、窒素塩基促進剤は0.1モル%から5.0モル%の量で存在し、開始剤のヒドロキシル基は開始剤中のヒドロキシル基あたりの当量分子量を基準として0.1モル%から5.0モル%の量で存在する。
【0092】
上記に述べたように、第1のポリマは、リビングポリマである。第1のポリマは、それぞれがROP連鎖成長を開始することができる末端ヒドロキシル基、末端チオール基、または末端アミン基を含む。本明細書において、第1のポリマは、さらなる連鎖成長を防ぐためもしくは他の方法で主鎖を安定化させるためまたはその両方のために末端保護する。末端保護物質および技法は、高分子化学において十分に確立されている。これらは、たとえば末端ヒドロキシル基をエステルに変換するための物質、例えばカルボン酸無水物、カルボン酸塩化物、または反応性エステル(たとえばp−ニトロフェニルエステル)を含む。実施態様において、第1のポリマを無水酢酸で処理して分子鎖をアセチル基で末端保護し、前駆体ポリマを形成させる。
【0093】
第1のポリマもしくは前駆体ポリマまたはその両方は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したとき、少なくとも2500g/モル、より詳しくは4000g/モルから150000g/モル、さらに詳しくは10000g/モルから50000g/モルの数平均分子量Mを有することができる。実施態様において、第1のポリマもしくは前駆体ポリマまたはその両方は、10000g/モルから20000g/モルの数平均分子量Mnを有する。第1のポリマもしくは前駆体ポリマまたはその両方は、一般に1.01から1.35、より詳しくは1.10から1.30、さらに詳しくは1.10から1.25の狭い多分散性指数(PDI)を有する。第1のポリマもしくは前駆体ポリマまたはその両方は、ホモポリマ、ランダムコポリマ、またはブロックコポリマであってよい。実施態様において、陽イオンポリマは、ポリエステルホモポリマ、ランダムポリエステルコポリマ、ポリカーボネートホモポリマ、ランダムポリカーボネートコポリマ、またはランダムポリエステルカーボネートコポリマである。
【0094】
触媒は、選択沈殿によって、または固体担持触媒の場合には単にろ過によって、除去することができる。第1のポリマは、第1のポリマと残留触媒との全重量を基準として0wt.%(重量パーセント)より大きな量の残留触媒を含んでもよい。残留触媒の量は、第1のポリマと残留触媒との全重量を基準として20wt.%未満、15wt.%未満、10wt.%未満、5wt.%未満、1wt.%未満、最も詳しくは0.5wt.%未満でもあってもよい。同様に、前駆体ポリマは、前駆体ポリマと残留触媒との全重量を基準として0wt.%より大きな量の残留触媒を含んでもよい。残留触媒の量は、前駆体ポリマと残留触媒との全重量を基準として20wt.%未満、15wt.%未満、10wt.%未満、5wt.%未満、1wt.%未満、最も詳しくは0.5wt.%未満でもあってもよい。
【0095】
前駆体ポリマは、第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位を含む。第1の繰り返し単位は、第3級アミンで処理されると第4級アミンを含む部分を含む陽イオンポリマを生成させる反応性の1価の脱離基を含む側鎖部分を有する。第3級アミンは、第3級アミンが第1の繰り返し単位の1価の脱離基の0%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、またはより詳しくは80%以上と反応して第4級アミンを含む側鎖部分を形成させることができることを前提として、構造を限定されない。
【0096】
第3級アミンは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、および類似物を含むがこれに限定されるものではないトリアルキルアミンなど1個の窒素を含むことができる。第3級アミンは、別の官能基、詳しくはカルボン酸基、たとえば3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオン酸をさらに含んでよい。そのような事例において、陽イオンポリマは、第4級アミンおよびカルボン酸基を含む側鎖部分を有する第1の繰り返し単位を含む。
【0097】
第3級アミンは、同位体元素を濃縮した形の第3級アミン、例えばトリメチルアミン−13C、トリメチルアミン−15N、トリメチルアミン−15N、トリメチル−13−アミン、トリメチル−d−アミン、およびトリメチル−d−アミン−15Nを含んでよい。第3級アミンは、特定の細胞型、例えば癌細胞を標的とするのに適している放射性部分も含んでよい。放射性部分は、重金属放射性同位元素を含んでもよい。
【0098】
より詳しくは、第3級アミンは、一般式(8)のビス−第3級アミンである。
【0099】
【化18】

【0100】
ここで、L”は、2から30の炭素を含む2価の結合基であり、それぞれの1価のR基は、1から30の炭素を含むアルキル基または6から30の炭素を含むアリール基から独立に選ばれる。各R基は、独立に、分岐形または非分岐形であってよい。各R基は、独立に、別の官能基、たとえばケトン基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、アルケン基、アルキン基、3から10の炭素を含む脂環式の環、2から10の炭素を含む複素環、エーテル基、アミド基、エステル基、および前述の別の官能基の組み合わせを含んでよい。複素環は、酸素、硫黄もしくは窒素またはそれらの任意の組み合わせを含んでよい。2つ以上のR基が一緒になって環を形成してもよい。代表的なL”基は、−(CHZ’−(z’は2から30の整数)、−(CHCHO)Z”CHCH−(z”は1から10の整数)、−CHCHSCHCH−、−CHCHSSCHCH−、−CHCHSOCHCH−、および−CHCHSOCHCH−を含む。L”は、3から20の炭素を含む1価または2価の脂環式の環、6から20の炭素を含む1価または2価の芳香環、ケトン基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、アルケン基、アルキン基、2から10の炭素を含む複素環、エーテル基、アミド基、エステル基、および前述の官能基の組み合わせをさらに含んでもよい。複素環は、酸素、硫黄もしくは窒素またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ビス−第3級アミンは、同位元素を濃縮した形、例えば重水素、炭素−13、もしくは窒素−15またはそれらの任意の組み合わせを濃縮した形のビス−第3級アミンも含んでよい。
【0101】
より具体的なビス第3級アミンは、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBDA)、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,2−エタンジアミン(TEEDA)、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン(TEPDA)、1,4−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,4−ブタンジアミン(TEBDA)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4,4−ジピリジル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4−ピロリジノピリジン、1−メチルベンゾイミダール、およびそれらの組み合わせを含む。実施態様において、ビス第3級アミンはTMEDAである。
【0102】
前駆体ポリマは、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの適当な有機溶媒中で第3級アミンで処理して陽イオンポリマを形成させる。この反応は、1価の脱離基に対して過剰の第3級アミンを用いて室温または高温において無水条件下で行う。一般に、第3級アミンは、前駆体ポリマ中の1価の脱離基の1モルあたり2モルから10モル、より詳しくは前駆体ポリマ中の1価の脱離基の1モルあたり3モルから8モル、より詳しくは前駆体ポリマ中の1価の脱離基の1モルあたり3モルから5モルの量で用いる。正電荷を有する第4級アミンは、負の電荷を有する対イオンになる置換された脱離基と塩を形成する。あるいは、望むなら、負電荷を有する対イオンは、公知の方法を用いて別のより適当な負電荷を有する対イオンとイオン交換させることができる。
【0103】
陽イオンポリマは、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中の1回以上の沈殿と、それに続くろ過および真空中の乾燥とによって単離される。第1の繰り返しの0%超が、第4級アミン基を含む側鎖部分を有する。前駆体ポリマをビス第3級アミンで処理すると、第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミン基および第3級アミン基を含む側鎖部分を有する。カルボキシ基を含む第3級アミンで前駆体ポリマを処理すると、第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンおよびカルボン酸を含む側鎖部分を有する。第4級アミン基は、第1の環状カルボニルモノマから誘導された側鎖1価の脱離基の0%超からの量で陽イオンポリマ中に存在する。より詳しくは、第4級アミン基は、第1の環状カルボニルモノマから誘導された側鎖の1価の脱離基の10%から100%、20%から100%、30%から100%、40%から100%、50%から100%、60%から100%、70%から100%、または80%から100%の量で陽イオンポリマ中に存在する。前駆体ポリマをビス−第3級アミンで処理すると、第3級アミン基は、前駆体ポリマの第1の繰り返し単位中の1価の脱離基の0%超から、より詳しくは前駆体ポリマの第1の繰り返し単位中の1価の脱離基の10%から100%、20%から100%、30%から100%、40%から100%、50%から100%、60%から100%、70%から100%、または80%から100%の量で陽イオンポリマ中に存在させることができる。
【0104】
陽イオンポリマは、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したとき、少なくとも2500g/モル、より詳しくは4000g/モルから150000g/モル、さらに詳しくは10000g/モルから50000g/モルの数平均分子量Mを有してよい。実施態様において、陽イオンポリマは、10000g/モルから20000g/モルの数平均分子量Mを有する。陽イオンポリマは、一般に1.01から1.35、より詳しくは1.10から1.30、さらに詳しくは1.10から1.25の狭い多分散性指数(PDI)も有する。
【0105】
より詳しくは、陽イオンポリマは、第1の環状カルボニルモノマと第2の環状カルボニルモノマとの順次の開環重合によって誘導された両親媒性ブロックコポリマである。陽イオンポリマは、ポリオール開始剤から誘導されたサブユニットと結合した2つ以上のブロックコポリマ鎖を含むことができる。これらの2つ以上のブロックコポリマ鎖のそれぞれは、疎水性ブロックおよび親水性ブロックを含み、これらの2つ以上のブロックコポリマ鎖のそれぞれは、任意選択として末端保護することができる。実施態様において、陽イオンブロックコポリマは、第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位を含む親水性のコアブロックであって、第1の繰り返し単位がポリオール開始剤から誘導されたサブユニットと結合している親水性のコアブロック、および第2の環状カルボニルモノマから誘導された第2の繰り返し単位を含む疎水性の外側のブロックを含む。別の実施態様において、環状カルボニルモノマの順次の重合を逆にする。すなわち、陽イオンブロックコポリマは、第2の環状カルボニルモノマから誘導された第2の繰り返し単位を含む疎水性のコアブロックであって、第2の繰り返し単位がポリオール開始剤から誘導されたサブユニットと結合している疎水性のコアブロック、および疎水性コアブロックと結合した第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位を含む親水性の外側のブロックを含む。実施態様において、ポリオール開始剤は、モノマジオールである。
【0106】
水溶液中で陽イオンポリマは自己集合し、658nmのHe−Neレーザビーム(散乱角90°)を備えた動的光散乱式粒度分析装置(Brookhaven Instrument Corp.,Holtsville,NY,U.S.A.)によって測定したとき、たとえば10nmから500nm、10nmから250nm、50nmから200nm、50nmから150nm、50nmから120nm、さらに詳しくは50nmから100nmの平均粒子サイズを有するナノ粒子になる。粒子サイズ測定は、各試料について5回繰り返し、粒子サイズは、5回の読み値の平均として報告する。上述の粒子サイズの場合、水溶液のpHは5.0から8.0であってよい。
【0107】
生分解性陽イオンポリマを形成させる方法は、第1の環状カルボニルモノマ、触媒、促進剤、モノマジオール開始剤、および任意選択の溶媒を含む第1の混合物を形成するステップであって、第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含むステップ、第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位を含む第1のポリマを開環重合によって形成させるステップ、任意選択として、第1のポリマを末端保護して前駆体ポリマを形成させるステップ、および前駆体ポリマを第3級アミンで処理して陽イオンポリマを形成させるステップであって、第1の環状モノマから誘導された繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有するステップを含む。実施態様において、第3級アミンはビス−第3級アミンであり、側鎖部分は第4級アミンおよび第3級アミンを含む。別の実施態様において、ビス−第3級アミンは、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、Ν,Ν,Ν’,Ν’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBDA)、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,2−エタンジアミン(TEEDA)、Ν,Ν,Ν’,Ν’−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン(TEPDA)、1,4−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,4−ブタンジアミン(TEBDA)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4,4−ジピリジル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4−ピロリジノピリジン、1−メチルベンゾイミダール、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。別の実施態様において、第3級アミンはカルボキシ基を含み、第1の繰り返し単位は第4級アミンおよびカルボン酸を含む側鎖部分を有する。別の実施態様において、第1の混合物は疎水性の第2の環状カルボニルモノマを含み、陽イオンポリマは第2の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第2の繰り返し単位を含むランダムコポリマであり、第2の環状カルボニルモノマは第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含まない。別の実施態様において、第2の繰り返し単位は、側鎖アセタールエステル基を含む。
【0108】
生分解性陽イオンブロックコポリマを形成させる別の方法は、触媒、促進剤、モノマジオール開始剤、および任意選択の溶媒を含む反応混合物を形成させるステップ、反応混合物に第1の環状カルボニルモノマ、続いて第2の環状カルボニルモノマを順次加え、開環重合によって反応させ、それによって第1のブロックコポリマを形成させるステップであって、第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含み、第2の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができないステップ、任意選択として、第1のブロックコポリマを末端保護し、それによって前駆体ブロックコポリマを形成させるステップ、および前駆体ブロックコポリマを第3級アミンで処理して陽イオンポリマを形成させるステップであって、陽イオンポリマは第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位を含み、第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有するステップを含む。実施態様において、順次の反応を逆の順序に実行して第1のブロックコポリマを形成させる。別の実施態様において、カルボン酸無水塩を用いて第1のブロックコポリマを末端保護し、それによって末端エステル基を形成させる。別の実施態様において、陽イオンブロックコポリマは、第2の環状カルボニルモノマから誘導された第2の繰り返し単位を含み、第2の繰り返し単位は側鎖アセタールエステル基を含む。別の実施態様において、開始剤はエチレングリコール、プロピレングリコール、ハイドロキノン、およびレゾルシノールからなる群から選ばれたモノマジオールである。別の実施態様において、開始剤はBnMPAである。別の実施態様において、1価の脱離基は、ハロゲン化物、スルホン酸エステル、およびエポキシドからなる群から選ばれる。別の実施態様において、第3級アミンはビス−第3級アミンであり、側鎖部分は、第4級アミンおよび第3級アミンを含む。別の実施態様において、ビス−第3級アミンは、Ν,Ν,Ν’,Ν’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン(TMEDA)、Ν,Ν,Ν’,Ν’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、Ν,Ν,Ν’,Ν’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBDA)、Ν,Ν,Ν’,Ν’−テトラエチル−1,2−エタンジアミン(TEEDA)、Ν,Ν,Ν’,Ν’−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン(TEPDA)、1,4−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゼン、Ν,Ν,Ν’,Ν’−テトラエチル−1,4−ブタンジアミン(TEBDA)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4,4−ジピリジル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4−ピロリジノピリジン、1−メチルベンゾイミダール、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0109】
一般に、開環重合によって得られる陽イオンポリマは、開始剤の開始部位の数と同じ数の枝を含む。さらに、陽イオンポリマは、異なる環状カルボニルモノマ組成物を用いて順次の開環重合を実行するとの理解を前提として、末端保護の前の順次の開環重合の数と同じ数のブロックを含む。
【0110】
陽イオンポリマは、負電荷を有する生物活性物質、たとえば遺伝子、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、薬物、またはそれらの組み合わせと複合体(ポリプレックス)を形成する。水溶液中5.0から8.0のpHにおいて、これらの複合体は自己集合し、658nmのHe−Neレーザビーム(散乱角90°)を備えた動的光散乱式粒度分析装置(Brookhaven Instrument Corp.,Holtsville,NY,U.S.A.)によって測定したとき、たとえば10nmから500nm、10nmから250nm、50nmから200nm、50nmから150nm、50nmから120nm、さらに詳しくは50nmから100nmの平均粒子サイズを有するナノ粒子になる。穏やかに混合することによってさまざまなN/P比のポリマ/DNA複合体を調製する。粒子サイズ分析の前に、複合体溶液を30分間安定化させる。粒子サイズ測定は、各試料について5回繰り返し、粒子サイズは5つの読み値の平均として報告する。実施態様において、生物活性物質は負電荷を有する遺伝物質であり、ポリプレックスは、陽イオンポリマと負電荷を有する遺伝物質との反対電荷を有する基の間の強い相互作用によって緊密に充填される。ナノサイズの複合体は、0から15%の溶血を誘発し、より詳しくは溶血を誘発せず、0から20%の細胞毒性を有し、またはより詳しくは細胞毒性がない。別の実施態様において、生物活性物質は薬物である。
【0111】
細胞を処理するためのポリマ複合体を調製する方法も開示される。この方法は、生分解性陽イオンポリマを含む第1の水性混合物を、負電荷を有する生物活性物質を含む第2の水性混合物と接触させて、ポリマ複合体を含む第3の水性混合物を形成させることを含み、生分解性陽イオンポリマは、第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位、開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および任意選択の末端保護基を含み、第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミン基を含む側鎖部分を有する。ポリマ複合体の粒子サイズは、5.0から8.0のpHにおいて50nmから500nmである。
【0112】
さらに、細胞を処理する方法が開示される。この方法は、細胞を、生分解性陽イオンポリマおよび負電荷を有する生物活性物質を含むポリマ複合体のナノ粒子と接触させることを含み、生分解性陽イオンポリマは、第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位、開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および任意選択の末端保護基を含み、第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミン基を含む側鎖部分を有する。実施態様において、生分解性ポリマは、両親和性ブロックコポリマである。ナノ粒子の粒子サイズは、5.0から8.0のpHにおいて50nmから500nmであってよい。実施態様において、負電荷を有する生物活性物質は、遺伝子である。細胞は、インビトロ、エキソビボでポリマ複合体に曝露したから順番として動物に入れるか、またはインビボ(たとえば動物またはヒト)で曝露する。別の実施態様において、負電荷を有する生物活性物質は分子薬物またはタンパク質である。別の実施態様において、ポリマ複合体は溶血を誘発しない。別の実施態様において、ナノ粒子には細胞毒性がない。
【0113】
市販の薬物の例は、13−cis−レチノイン酸、2−CdA、2−クロロデオキシアデノシン、5−アザシチジン、5‐フルオロウラシル、5−FU、6−メルカプトプリン、6−MP、6−TG、6−チオグアニン、アブラキサン、アキュタン(商標)、アクチノマイシン−D、アドリアマイシン(商標)、アドルシル(商標)、アフィニトル(商標)、アグリリン(商標)、アラ−コート(商標)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、ALIMTA、アリトレチノイン、アルカバン−AQ(商標)、アルケラン(商標)、オールtransレチノイン酸、αインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミホスチン、アミノグルテチミド、アナグレリド、アナンドロン(商標)、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、アラ−C、アラネスプ(商標)、アレディア(商標)、アリミデクス(商標)、アロマシン(商標)、アラノン(商標)、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ATRA、アバスチン(商標)、アザシチジン、BCG、BCNU、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、BEXXAR(商標)、ビカルタミド、BiCNU、ブレノキサン(商標)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、ブスルフェクス(商標)、C225、カルシウムロイコボリン、カンパス(商標)、カンプトサー(商標)、カンプトテシン−11、カペシタビン、カラック(商標)、カルボプラチン、カルムスチン、カルムスチンウエハ、カソデクス(商標)、CC−5013、CCI−779、CCNU、CDDP、CeeNU、セルビジン(商標)、セツキシマブ、クロランブシル、シスプラチン、シトロボラム因子、クラドリビン、コルチゾン、コスメゲン(商標)、CPT−11、シクロホスファミド、シタドレン(商標)、シタラビン、シタラビンリポソーマル、シトサー−U(商標)、シトキサン(商標)、ダカルバジン、ダコゲン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンα、ダサチニブ、ダウノマイシン、ダウノルビシン、塩酸ダウノルビシン、ダウノルビシンリポソーマル、ダウノキソーム(商標)、デカドロン、デシタビン、δ−コルテフ(商標)、デルタソン(商標)、デニロイキンジフィトックス、デポシト(商標)、デキサメタソン、酢酸デキサメタソン、デキサメサソンリン酸ナトリウム、デキサソン、デクスラゾキサン、DHAD、DIC、ジオデクス、ドセタキセル、ドキシル(商標)、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーマル、ドロキシア(商標)、DTIC、DTIC−ドーム(商標)、ヅラロン(商標)、エフデクス(商標)、エリガード(商標)、エレンス(商標)、エロキサチン(商標)、エルスパー(商標)、エムシト(商標)、エピルビシン、エポエチンα、エルビツクス、エルロチニブ、エルウィニアL−アスパラギナーゼ、エストラムスチン、エチオール、エトポホス(商標)、エトポシド、リン酸エトポシド、オイレキシン(商標)、エベロリムス、エビスタ(商標)、エクセメスタン、ファレストン(商標)、ファスロデクス(商標)、フェマラ(商標)、フィルグラスチム、フロキシウリジン、フルダラ(商標)、フルダラビン、フルオロプレクス(商標)、フルオロウラシル、フルオロウラシル(クリーム)、フルオキシメステロン、フルタミド、フォリン酸、FUDR(商標)、フルベストラント、G−CSF、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲムザー、グリベック(商標)、グリアデル(商標)ウエハ、GM−CSF、ゴセレリン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ハロテスチン(商標)、ヘルセプチン(商標)、ヘキサドロール、ヘキサレン(商標)、ヘキサメチルメラミン、HMM、ハイカムチン(商標)、ハイドリー(商標)、酢酸ハイドロコート(商標)、ハイドロコルチゾン、リン酸ナトリウムハイドロコルチゾン、コハク酸ナトリウムハイドロコルチゾン、リン酸ハイドロコルトン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタンイダマイシン(商標)、イダルビシン、イフェックス(商標)、IFN−αイホスファミド、IL−11、IL−2、イマチニブメシレート、イミダゾールカルボキサミドインターフェロンα、インターフェロンα−2b(PEG共役体)、インターロイキン−2、インターロイキン−11、イントロンA(商標)(インターフェロンα−2b)、イレッサ(商標)、イリノテカン、イソトレチノイン、イキサベピロン、イキセンプラ(商標)、Kキドロラーゼ(t)、ラナコート(商標)、ラパチニブ、L−アスパラギナーゼ、LCR、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイケラン、ロイキン(商標)、ロイプロリド、ロイロクリスチン、ロイスタチン(商標)、リポソームAra−C、リキッドプレップ(商標)、ロムスチン、L−PAM、L−サルコリシン、ルプロン(商標)、ルプロンデポ(商標)、マツラン(商標)、マキシデクス、メクロレタミン、塩酸メクロレタミン、メドラロン(商標)、メドロール(商標)、メガセ(商標)、メゲストロール、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メスネクス(商標)、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メチルプレドニゾロン、メチコルテン(商標)、マイトマイシン、マイトマイシン−C、ミトキサントロン、M−プレドニソール(商標)、MTC、MTX、ムスタルゲン(商標)、ムスチンムタマイシン(商標)、マイルラン(商標)、マイロセル(M)、マイロターグ(商標)、ナベルビン(商標)、ネララビン、ネオサー(商標)、ノイラスタ(商標)、ノイメガ(商標)、ノイポゲン(商標)、ナクサバー(商標)、ニランドロン(商標)、ニルタミド、ニペント(商標)、ナイトロジェンマスタード、ノバルデクス(商標)、ノバントロン(商標)、オクトレオチド、酢酸オクトレオチド、オンコスパー(商標)、オンコビン(商標)、オンタク(商標)、オンキサル(商標)、オプレベルキン、オラプレッド(商標)、オラソン(商標)、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセルプロテインバウンド、パミドロネート、パニツムマブ、パンレチン(商標)、パラプラチン(商標)、ペディアプレッド(商標)、PEGインターフェロン、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG−INTRON(商標)、PEG−L−アスパラギナーゼ、PEMETREXED、ペントスタチン、フェニルアラニンマスタード、プラチノール(商標)、プラチノール−AQ(商標)、プレドニソロン、プレドニソン、プレロン(商標)、プロカルバジン、PROCRIT(商標)、プロロイキン(商標)、カルマスチンインプラント併用プロリフェプロスパン20、プリネトール(商標)、ラロキシフェン、レブリミド(商標)、リューマトレクス(商標)、リツキサン(商標)、リツキシマブ、ロフェロン−A(商標)(インターフェロンα−2a)、ルベックス(商標)、塩酸ルビドマイシン、サンドスタチン(商標)、サンドスタチンLAR(商標)、サルグラモスチム、ソリュ−コルテフ(商標)、ソリュ−メドロール(商標)、ソラフェニブ、SPRYCEL(商標)、STI−571、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、スーテント(商標)、タモキシフェン、タルセバ(商標)、タルグレチン(商標)、タキソール(商標)、タキソテール(商標)、テモダール(商標)、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、TESPA、サリドマイド、サロミド(商標)、セラシス(商標)、チオグアニン、チオグアニンタブロイド(商標)、チオリン酸アミド、チオプレックス(商標)、チオテパ、TICE(商標)、トポサー(商標)、トポテカン、トレミフェン、トリセル(商標)、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレアンダ(商標)、トレチノイン、トレキソール(商標)、トリセノクス(商標)、TSPA、TYKERB(商標)、VCR、ベクチビクス(商標)、ベルバン(商標)、ベルケイド(商標)、ベペシド(商標)、ベサノイド(商標)、ビアズール(商標)、ビダーザ(商標)、ビンブラスチン、硫酸ビンブラスチン、ビンカサーPfs(商標)、ビンクリスチン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、VLB、VM−26、ボリノスタット、VP−16、ブモン(商標)、キセローダ(商標)、ザノサー(商標)、ゼバリン(商標)、ジネカード(商標)、ゾラデクス(商標)、ゾレドロン酸、ゾリンザ、およびゾメタを含む。
【0114】
非ウイルスベクタによって形質移入することができるいずれの細胞も上記に記載の複合体で処理することができる。詳しくは、細胞は、真核細胞、哺乳類細胞、より詳しくは齧歯類細胞またはヒト細胞である。細胞は、全能性または多能性、分裂性または非分裂性、柔組織または上皮、不死化または変換された胚外または胚幹細胞、または類似物を含むさまざまな組織から誘導することができる。細胞は、幹細胞であっても分化細胞であってもよい。分化した細胞型は、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、樹状細胞、神経細胞、神経膠、肥満細胞、血液細胞および白血球(たとえば、赤血球、巨核球、B、Tおよびナチュラルキラー細胞などのリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、血小板、顆粒球)、上皮細胞、角質細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、および内分泌腺または外分泌腺の細胞、ならびに感覚細胞を含む。
【0115】
上記に記載の複合体は、非ウイルス移入ベクタとして用いることができる。標的遺伝子は、いずれの特定の種類の標的遺伝子またはヌクレオチド配列にも限定されない。たとえば、標的遺伝子は、細胞遺伝子、内在遺伝子、腫瘍遺伝子、移入遺伝子、ウイルス遺伝子、または翻訳RNAもしくは非翻訳RNAであってよい。可能な標的遺伝子の例は、転写因子および発生遺伝子(たとえば接着分子、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、Wntファミリーメンバー、Paxファミリーメンバー、翼型ヘリックスファミリーメンバー、Hoxファミリーメンバー、サイトカイン/リンホカインおよびそれらの受容体、成長/分化因子およびそれらの受容体、神経伝達物質およびそれらの受容体)、腫瘍遺伝子(たとえばABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、ERBB2、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIMI、PML、RET、SKP2、SRC、TALI、TCL3、およびYES)、癌抑制遺伝子(たとえばAPC、BRAI、BRCA2、CTMP、MADH4、MCC、NFI、NF2、RBI、TP53、およびWTI)、ならびに酵素(たとえばACPデサチュラーゼおよびヒドロキシラーゼ、ADP−グルコースピロホリラーゼ、ATPアーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミルグルコシダーゼ、カタラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリナーゼ、DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、インテグラーゼ、インスリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リゾチーム、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、プロテイナーゼおよびペプチダーゼ、レコンビナーゼ、逆転写酵素、RNA成分もしくはタンパク質成分またはその両方を含むテロメラーゼ、およびトポイソメラーゼ)を含む。
【0116】
以下の実施例は、有機触媒開環重合によって作り出される生分解性ポリカーボネートおよびポリ(エステルカーボネート)コポリマは、効果的な非ウイルス遺伝子キャリアであることを示す。生分解性ハロゲン含有カーボネートと、アミンとの簡単な4級化反応とを組み合わせると、多様な機能を有する遺伝子キャリアのための陽イオンポリマの形成のための利用価値の高い経路が開ける。前駆体ポリマにあるハロゲン化物は、標的構造および利用の種類に応じて変えることができる。前駆体ポリマ、特に塩化物残基を有する前駆体ポリマは、遺伝子と緊密な複合体を形成し、このポリプレックスは低い細胞毒性を示す。陽イオンポリカーボネートは、自己集合して疎水性コアと正電荷を有する表面とを有するミセルナノ粒子になることができる。従って、陽イオンポリカーボネートは、小分子薬物およびタンパク質の送達のために、ならびに薬物および遺伝子、または薬物およびタンパク質の同時送達のためにも用いることができる。
【実施例】
【0117】
ポリマ合成のための物質
反応に用いられるTHF、DMF、および塩化メチレンは、溶媒乾燥システム(Innovative)によって得た。N−(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシル−チオ尿素(TU)は、R.C.Pratt、B.G.G.Lohmeijer、D.A.Long、P.N.P.Lundberg、A.Dove、H.Li、C.G.Wade、R.M.Waymouth,and J.L.Hedrick,Macromolecules,2006,39(23),7863−7871によって報告されているように調製し、無水THF中CaH上で撹拌し、ろ過し、真空下で溶媒を除くことによって脱水した。BisMPAベンジルエステル(BnMPA)は、下記に記載されているように調製し、無水THFに溶解させ、CaHとともに撹拌し、ろ過し、真空下で溶媒を除くことによってさらに脱水した。無水酢酸、DMSO、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン(TMEDA)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)、および(−)−スパルテインは、CaH上で撹拌し、真空蒸留し、次にモレキュラーシーブ(3A)上で保存した。L−ラクチドおよびD−ラクチド(Purac、99%)は、使用の前に乾燥トルエンから3回再結晶した。炭酸トリメチレン(TMC)は、使用の前にトルエンから共沸脱水した。他の試薬は、受け取った状態で用いた。
【0118】
ポリマの物理化学的および生物的キャラクタリゼーションのための物質
酢酸、酢酸ナトリウム、ポリエチレンイミン(PEI、分岐形、重量平均分子量M、25kDa)、アガロース、臭化エチジウムおよび3−[4,5−ジメチルチアゾル−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)は、すべてSigma−Aldrichから購入し、受け取った状態で用いた。HPLCグレードの超純水はJ.T.Baker(U.S.A.)から得た。リン酸塩緩衝食塩水(PBS)、およびトリス−ホウ酸−EDTA(TBE)緩衝液は1st BASE(Malaysia)から購入し、使用前に意図した濃度に希釈した。レポータ溶菌緩衝液およびルシフェリン基質はPromega(U.S.A.)から購入した。DMEM成長培地、ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリンおよびストレプトマイシンはすべてInvitrogen Corporation(U.S.A.)から購入した。サイトメガロウイルス(CMV)プロモータによって駆動される6.4kbホタルルシフェラーゼ(pCMV−ルシフェラーゼVR1255C)をコードするプラスミドDNAは、Vical(U.S.A.)のCar Wheelerの厚意によって提供され、大腸菌DΗ5α中で増幅し、Qiagen(オランダ)によって供給されるEndofree Gigaプラスミド精製キットを用いて精製した。HepG2細胞系統はATCC(U.S.A.)から入手し、供給元による推薦条件下で成長させた。
【0119】
モノマ合成
官能基生分解性モノマの特に有用なシントンは、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(ビス−MPA)から誘導されたいわゆるMTCファミリーの環状カーボネートモノマである。ビス−MPAは、スキーム1に示されているように、5−メチル−5−カルボキシル−1,3−ジオキサ−2−オン(MTCOH)およびその誘導体への簡単な経路を提供する。
【0120】
【化19】

【0121】
この手法は、(メタ)アクリレート誘導体化の手法と対応し、開環重合することができる官能性モノマの広い選択を生み出すことが示された。最初に2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(ビスMPA)が(i)ベンジルエステルBnMPA(本明細書においては重合のための開始剤としても用いられる)に変換され、続いて(ii)BnMPAとトリホスゲンとを反応させて環状カルボニルモノマMTCOBnを形成させる。MTCOBnを脱ベンジルさせて(iii)環状カルボニルカルボン酸MTCOHを作り出す。MTCOHからエステルを形成させるための2つの経路が示されている。第1の経路(iv)において、MTCOHは適当なカルボキシ活性化剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)で処理され、ROHと反応して1段階でMTCORを形成する。あるいは、最初にMTCOHを(v)酸塩化物MTCClに変換し、続いて(vi)塩基の存在下でMTCClをROHで処理してMTCORを形成することができる。どちらの経路も例示であり、限定するものではない。以下の条件は、スキーム1に示されている反応に典型的である。(i)臭化ベンジル(BnBr)、KOH、DMF、100℃、15時間、ビス−MPAのベンジルエステルの収率62%、(ii)トリホスゲン、ピリジン、CHCl、−78℃から0℃、MTCOBnの収率95%、(iii)Pd/C(10%)、H(3気圧)、EtOAc、室温、24時間、MTCOHの収率99%、(iv)ROH、DCC、THF、室温、1から24時間、(v)(COCl)、THF、室温、1時間、MTCC1の収率99%、(vi)ROH、NEt、RT、3時間、MTCORが得られる。
【0122】
上記のスキームを用いて、MTCClを3−ブロモプロパノール、3−クロロプロパノ、2−ヨードエタノール、およびエタノールと反応させて対応するMTCOPrBr、MTCOPrCl、MTCOEtI、およびMTCOEtを形成させた。これらのハロエステルを再結晶またはフラッシュクロマトグラフィ(酢酸エチル/ヘキサン)のどちらかによって高収率(>85%)で精製した。MTCOEtは、非官能性対応物として希釈効果のため、およびポリマに自己集合のための疎水性ブロックを導入するために用いた。
【0123】
実施例1 5−メチル−5−(3−クロロプロピル)オキシカルボキシル−1,3−ジオキサ−2−オン(MTCOPrCl)、mw 236.65の調製
【0124】
【化20】

【0125】
MTCOH(11.1g、69ミリモル)のTHF溶液(200mL)に触媒量のDMF(3滴)を加え、続いてTHF(100mL)中の塩化オキサリル(7.3mL、87ミリモル)の溶液をN雰囲気下で20分間かけて穏やかに加えた。この溶液を1時間撹拌し、N気流を吹き込んで揮発性物質を除去し、真空下で蒸発させて中間体を得た。
【0126】
中間体の無水THF溶液(100mL)に、氷/塩浴を用いて溶液温度を0℃より低温に保ちながら、無水THF(50mL)中の3−クロロ−1−プロパノール(5.4mL、76ミリモル)とピリジン(6.2mL、65ミリモル)との混合物を30分間かけて滴下して加えた。反応混合物を室温でさらに3時間を撹拌し続けた後にろ過し、ろ液を蒸発させた。残留物を塩化メチレンに溶解し、1N HCl水溶液、飽和NaHCO水溶液、食塩水および水で洗浄し、MgSOとともに一夜撹拌し、溶媒を蒸発させた。粗生成物を、酢酸エチルとヘキサンと(50/50から80/20)のグラジエント溶離によってシリカゲルカラムを通過させて生成物を無色の油として得た。この油は、ゆっくり固化して白色の固体(9.8g、60%)となった。
【0127】
実施例2 5−メチル−5−(3−ブロモプロピル)オキシカルボキシル−1,3−ジオキサ−2−オン(MTCOPrBr)、mw281.10の調製
【0128】
【化21】

【0129】
MTCOPrBrは、実施例1の手順によって3−ブロモ−1−プロパノールをアルコールとして用いて45ミリモルスケールで調製した。生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、続いて再結晶して白色の結晶(6.3g、49%)を得た。H NMR(400MHz、CDC1):δ 4.69(d,2H;CHOCOO)、4.37(t、2Η;OCH)、4.21(d、2Η;CHOCOO)、3.45(t、2Η;CHBr)、2.23(m、2Η;CH)、1.33(s、3Η;CH)。13C NMR(100MHz、CDCl):δ 171.0、147.3、72.9、63.9、40.2、31.0、28.9、17.3。
【0130】
実施例3 5−メチル−5−(2−ヨードエチル)オキシカルボキシル−1,3−ジオキサ−2−オン(MTCOEtI)、mw314.08の調製
【0131】
【化22】

【0132】
MTCOEtIは、実施例1の手順によって2−ヨードエタノールをアルコールとして用いて45ミリモルスケールで調製し、カラムクロマトグラフィーおよびそれに続く再結晶によって精製して黄色がかった結晶(7.7g、54%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl):δ 4.73(d、2H;CHOCOO)、4.45(t、2H;OCH)、4.22(d、2Η;CHOCOO)、3.34(t、2Η;CHI)、1.38(s、3Η;CH)。13C NMR(100MHz、CDCl):δ 170.5、147.3、72.8、65.6、40.3、17.5、−0.3。
【0133】
実施例4 有機触媒開環重合
塩化メチレン中室温において、有機触媒N−(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシル−チオ尿素(TU)および1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)の存在下、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸ベンジル(BnMPA)を開始剤として用いて開環重合(1〜2時間)を行なって仕込み比([M]/[I])と矛盾しない分子量、狭い多分散性(1.1〜1.2)、および末端基の忠実性を有する側鎖3−ハロプロピルエステルを含む陽イオンプレポリマを得た。反応時のアミン存在下の末端ヒドロキシル基に由来する逆開裂によるポリマ鎖の切断を回避するために、前駆体を無水酢酸で24時間から48時間アセチル化した。
【0134】
下記で調製されるROPポリマは、一般式(9)を有する。
【0135】
【化23】

【0136】
式中、L’は、開始剤から誘導されたサブユニットであり、wは、L’の開始基の数であり、Mは、環状カルボニルモノマであり、Mは、別の環状カルボニルモノマであり、E’は、末端保護基であり、a:bはM:Mモル比である。初期ROPポリマは、前駆体ポリマとも呼ばれる。ブロックコポリマの調製において、最初にM、続いてMが加えられる。ランダムコポリマの場合には、モノマMまたはMのどちらも開始剤L’に結合することができると理解される。各重合は、ジオールであるBnMPAによって開始され、従って、w=2であり、2つのポリマ鎖が形成され、開始剤から誘導されたサブユニットによって結合している。各ポリマ鎖は、無水酢酸を用いてアセチル基で末端保護した。
【0137】
ポリカーボネート。
実施例5 MTCOPrClの重合
【0138】
【化24】

【0139】
MTCOPrCl(501mg、2.1ミリモル)、BnMPA(4.7mg、0.02ミリモル、開始剤)、およびTU(37.2mg、0.1ミリモル)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、DBU(15.2mg、0.1ミリモル)を含むバイアルにこの溶液を移して室温で重合を開始させた([M]/[I]=100)。2時間後、この混合物に無水酢酸(72.4mg、0.71ミリモル)を加え、混合物を48時間撹拌した(反応率約95%)。次に溶液を低温メタノール中で2回沈殿させ、沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥させた。収量:466mg(93%)、GPC(THF):M 12200g/mol、PDI 1.17、H NMR(400MHz、CDCl):δ 7.39〜7.29(m、5H;Ph)、5.16(s、2H;PhCH)、4.38〜4.19(br、〜350Η;CHOCOO、OCHポリマ)、3.64〜3.55(m、〜117Η;CHClポリマ)、2.15〜2.07(m、〜114Η;CHポリマ)、2.06(s、6Η;OCHアセチル末端)、1.27(br、〜169Η;CHポリマ)。
【0140】
実施例6 MTCOPrBrの重合
【0141】
【化25】

【0142】
MTCOPrBr(288mg、1.0ミリモル)、BnMPA(4.4mg、0.01ミリモル、開始剤)、およびTU(9.8mg、0.03ミリモル)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、DBU(3.3mg、0.02ミリモル)を含むバイアルにこの溶液を移して室温で重合を開始させた([M]/[I]=52)。2時間後、この混合物に無水酢酸(96.9mg、0.95ミリモル)を加え、2夜の間撹拌した(反応率94%)。次に、溶液を低温メタノール中で2回沈殿させ、沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥した。収量:265mg(92%)、GPC(THF):M 11700g/mol、PDI 1.11、H NMR(400MHz、CDCl):δ 7.38〜7.28(m、5H;Ph)、5.17(s、2H;PhCH)、4.40〜4.17(m、〜348Η;CHOCOO、OCHポリマ)、3.53〜3.36(m、〜111Η;CHBrポリマ)、2.23〜2.15(m、〜111H;CHポリマ)、2.06(s、6H;OCHアセチル末端)、1.30〜1.24(br、〜169Η;CHポリマ)。
【0143】
実施例7 MTCOEtIの重合
【0144】
【化26】

【0145】
MTCOEtI(312mg、1.0ミリモル)、BnMPA(4.4mg、0.02ミリモル、開始剤)、およびTU(9.4mg、0.03ミリモル)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、DBU(3.3mg、0.02ミリモル)を含むバイアルにこの溶液を移して室温で重合を開始させた([M]/[I]=51)。2時間後、この混合物に無水酢酸(107.2mg、1.05ミリモル)を加え、2夜の間撹拌した(反応率94%)。次に、この溶液を低温メタノール中で2回沈殿させ、沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥した。収量:268mg(86%)、GPC(THF):M 10500g/mol、PDI 1.22、H NMR(400MHz、CDCl):δ 7.37〜7.31(m、5H;Ph)、5.17(s、2H;PhCH)、4.44〜4.36(m、〜92Η;OCHポリマ)、4.36〜4.24(m、〜178Η;CHOCOOポリマ)、3.35〜3.27(m、〜89Η;CHIポリマ)、2.07(s、6Η;OCHアセチル末端)、1.34〜1.24(br、〜144Η;CHポリマ)。
【0146】
実施例8 TMCとMTCOPrClとのブロック重合
【0147】
【化27】

【0148】
TMC(108mg、1.0ミリモル、Mとする)、BnMPA(11mg、0.05ミリモル)、およびTU(17.5mg、0.05ミリモル)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、DBU(7.3mg、0.05ミリモル)を含むバイアルにこの溶液を移して室温で重合を開始させた([M/[I]=20。NMRによって第1のモノマ(M)が完全に消費されたことを確かめた後(3時間、反応率97%)、この反応混合物を第2の重合のために第2のモノマMであるMTCOPrCl(603mg、2.55ミリモル)を含むバイアルに移し、さらに18時間撹拌した(反応率96%)([M/[I]=50)。次に、この混合物に無水酢酸(171mg、1.15ミリモル)を加え、2夜の間撹拌した。次に、この溶液を低温メタノール中で2回沈殿させ、沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥した。収量:640mg(90%)、GPC(THF):M 12000g/mol、PDI 1.19、H NMR(400MHz、CDCl):δ 7.38〜7.30(m、5H;Ph)、5.17(s、2H;PhCH)、4.33〜4.26(m、〜208H;CHOCOO、OCH2 P(MTCprCl))、4.26〜4.20(m、〜70Η、CHOCOO PTMC)、3.63〜3.56(m、〜73Η;CHCl p(MTCprCl))、2.15〜2.00(m、〜111Η;CH2 P(MTCprCl)、CH2 PTMC、OCHアセチル末端)、1.27(br、〜107Η、CH3 p(MTCprCl))。
【0149】
ポリエステル−ポリカーボネートブロックコポリマ
実施例9 LLAとMTCOPrBrとのブロック重合。
以下の調製において、L−ラクチド(LLA)の立体化学は示されていない。
【0150】
【化28】

【0151】
L−ラクチド(146mg、1.0ミリモル)(LLA)、BnMPA(12mg、0.05ミリモル)、およびTU(9.0mg、0.024ミリモル)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、(−)−スパルテイン(3.0mg、0.013ミリモル)を含むバイアルにこの溶液を移して室温で重合を開始させた([M/[I]=20)。第1のモノマが完全に消費されたことをNMRで確かめた後に(1.5時間、反応率96%)、第2の重合のためにMTCOPrBr(427mg、1.52ミリモル)を含むバイアルにこのポリエステルを含む反応混合物を移し、さらにTU(9,7mg、0.026ミリモル)およびDBU(4.1mg、0.027ミリモル)を含むバイアルに移した([M/[I]=29)。第2の反応混合物をさらに1時間撹拌した(反応率97%)。次にこの混合物に無水酢酸(205mg、2.01ミリモル)を加え、2夜の間撹拌した。次に、この溶液を低温メタノール中で2回沈殿させ、沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥してポリエステル−ポリカーボネートブロックコポリマを得た。収量:524mg(90%)、GPC(THF):M 12200g/mol、PDI 1.14、H NMR(400MHz、CDCl):δ 7.38〜7.28(m、5H;Ph)、5.22〜5.09(m、〜35H;PhCH、CHPLA)、4.38〜4.19(m、〜158Η;CHOCOO、OCH Ρ(ΜΤCprBr))、3.48〜3.41(m、〜56Η、CHBr)、2.23〜2.14(m、〜55Η;CH)、2.06(s、6Η;OCHアセチル末端)、1.61〜1.52(m、〜106Η;CH PLA)、1.32〜1.27(br、〜86Η、CH P(MTCprBr))。
【0152】
実施例10 DLAとMTCOPrBrとのブロック重合。
このポリマは、第1のモノマとしてL−ラクチド(LLA)の代りにD−ラクチド(DLA)を加え、実施例9と同じ手順によって調製された。収量:503mg(87%)、GPC(THF):M 12400g/mol、PDI 1.13。H NMR(400MHz、CDCl):δ 7.38〜7.28(m、5H;Ph)、5.22〜5.09(m、〜39H;PhCH、CH PLA)、4.38〜4.19(m、〜195Η;CHOCOO、OCH P(MTCprBr))、3.48〜3.41(m、〜63Η、CHBr)、2.23〜2.14(m、〜62Η;CH)、2.06(s、6Η;OCHアセチル末端)、1.61〜1.52(m、〜119Η;CH PLA)、1.32〜1.27(br、〜97Η、CH P(MTCprBr))。
【0153】
ランダムポリカーボネートコポリマ。
実施例11 MTCOEtとMTCOPrBrとのランダム重合
【0154】
【化29】

【0155】
上記の構造式の角括弧は、MTCOPrBrまたはMTCOEtのどちらから誘導された繰り返し単位も、開始剤から誘導されたサブユニットならびにアセチル基と結合してよいことを示している。
【0156】
MTCOPrBr(282mg、1.0ミリモル)、MTCOEt(188mg、1.0ミリモル)、BnMPA(9.0mg、0.04ミリモル)、およびTU(18.7mg、0.05ミリモル)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、DBU(7.8mg、0.05ミリモル)を含むバイアルにこの溶液を移し、室温で重合を開始させた([M]/[I]=50)。2時間後、この混合物に無水酢酸(194mg、1.90ミリモル)を加え、2夜の間撹拌した(反応率93%)。次に、この溶液を低温メタノール中で2回沈殿させ、沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥した。収量:370mg(77%)、GPC(THF):M 11400g/mol、PDI 1.20、H NMR(400MHz、CDCl):δ 7.37〜7.31(m、5H;Ph)、5.16(s、2H;PhCH)、4.35〜4.24(m、〜247Η;CHOCOO、OCH PMTC(prBr))、4.23〜4.14(m、〜56Η;OCH PMTC(Et))、3.48〜3.41(m、〜47Η;CHBr)、2.23〜2.14(m、〜47Η;CH PMTC(prBr))、2.06(s、6Η;OCHアセチル末端)、1.30〜1.20(m、〜227Η;CH、CHCH PMTC(Et))。
【0157】
陽イオンポリマの調製
陽イオンハロ官能化プレポリマ(すなわち初期ROPポリマ)をDMSO中でΝ,Ν,Ν’,Ν’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)と反応させて対応する陽イオンポリマを得た。いくつかのビス−アミンを調べたが、第1および第2アミンではポリカーボネート主鎖が顕著に減少したので、第3級アミンだけを実現可能性のある試薬として選んだ。
【0158】
実施例12
【0159】
【化30】

【0160】
実施例5のホモポリマ(427mg、[Cl]=1.77ミリモル)をDMSO(8mL)に溶解し、TMEDA(1.1mL、7.22ミリモル)と混合し、90℃で6時間撹拌した。次に、この混合物をTHF中で2回沈殿させ、遠心分離によって沈殿物を集め、真空中で乾燥した。収量:546mg(86%)、GPC(DMF):M 11300g/mol、PDI 1.27、H NMR(400MHz、MeOH−d):δ 7.42〜7.32(br、5H;Ph)、5.19(s、2H;PhCH)、4.45〜4.17(m、〜252Η;CHOCOO、OCHポリマ)、3.63〜3.44(br、〜149Η;CHポリマ)、3.27〜3.18(br、〜210Η;NCHポリマ)、2.85〜2.76(br、〜73Η;CHNポリマ)、2.36〜2.30(br、〜213Η;NCHポリマ)、2.28〜2.17(br、〜70Η;CHポリマ)、2.06(s、3Η;OCHアセチル末端)、1.34〜1.25(br、〜119Η;CHポリマ)、1.22(s、3Η;CH末端基)。
【0161】
実施例13
【0162】
【化31】

【0163】
実施例6において形成させたポリマ(177mg、[Br]=0.62ミリモル)のDMSO溶液(3mL)にTMEDA(0.38mL、2.5ミリモル)を加えた。この溶液を室温で一夜撹拌し、THF中で2回沈殿させ、沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥した。収量:220mg(88%)、H NMR(400MHz、MeOH−d):δ 7.42〜7.30(br、5H;Ph)、5.20(s、2H;PhCH)、4.46〜4.13(m、〜266Η、CHOCOO、OCHポリマ)、3.66〜3.42(br、〜168Η;CHポリマ)、3.28〜3.17(br、〜243Η;NCHポリマ)、2.87〜2.75(br、〜84Η;NCHポリマ)、2.37〜2.29(br、〜251Η;NCHポリマ)、2.30〜2.16(br、〜85Η;CHポリマ)、2.07(s、6Η;OCHアセチル末端)、1.37〜1.23(br、〜133Η;CHポリマ)。
【0164】
実施例14
【0165】
【化32】

【0166】
この陽イオンポリマは、実施例7において調製したポリマを用いたことを除いて実施例13に記載されていると同じ手順を用いて201mgスケールで調製した。収量:211mg(77%)、H NMR(400MHz、DO):δ 7.49〜7.31(m、5H;Ph)、5.22(s、2H;PhCH)、4.69〜4.56(br、〜68Η;OCH)、4.47〜4.23(m、〜176Η;OCOCH)、3.90〜3.76(br、〜74Η;NCH)、3.66〜3.51(br、〜78Η;OCHCH)、3.29〜3.15(br、〜220H;NCH)、2.93〜2.82(br、〜76Η;NCH)、2.33〜2.23(br、〜222Η;NCH)、2.07(s、6Η;CHアセチル)、1.38〜1.20(br、〜124H;CH)。
【0167】
実施例15
【0168】
【化33】

【0169】
実施例8において形成させたポリマ(578mg、[Cl]=1.93ミリモル)のDMSO溶液(10mL)にTMEDA(1.27mL、8.5ミリモル)を加えた。この反応混合物を90℃で6時間撹拌し、THF中で2回沈殿させた。沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥した。収量:735mg(92%)、GPC(DMF):M 15700g/mol、PDI 1.27、H NMR(400MHz、MeOH−d):δ 7.41〜7.32(br、5H;Ph)、5.19(br、2H;PhCH)、4.48〜4.13(br、〜388H;CHOCOO、OCHポリマ)、3.65〜3.45(br、〜179H;CHポリマ)、3.28〜3.18(br、〜270Η;NCHポリマ)、2.87〜2.77(br、〜88Η;NCHポリマ)、2.38〜2.30(br、〜272Η;NCHポリマ)、2.28〜2.16(br、〜88Η;CHポリマ)、2.08〜1.98(m、〜44Η;CHポリマ、OCHアセチル末端)、1.35〜1.25(br、〜149Η、CHポリマ)。
【0170】
実施例16
【0171】
【化34】

【0172】
実施例9において形成させたポリマ(406mg、[Br]=1.07ミリモル)およびTMEDA(0.65mL、4.3ミリモル)をDMSO(4.0mL)中で混合し、室温で一夜撹拌し、THF中で2回沈殿させた。沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥した。収量:515mg(97%)、H NMR(400MHz、MeOH−d):δ 7.42〜7.30(br、5H;Ph開始剤)、5.29〜5.11(m、〜42H;PhCH開始剤、CH PLA)、4.49〜4.15(br、〜204Η、CHOCOO、OCHポリマ)、3.67〜3.43(br、〜123Η、CHポリマ)、3.29〜3.15(br、〜177Η、NCHポリマ)、2.85〜2.74(br、〜61Η、NCHポリマ)、2.37〜2.28(br、〜189Η、NCHポリマ)、2.29〜2.15(br、〜62Η、CHポリマ)、2.06(s、6Η、OCHアセチル末端)、1.60〜1.50(m、〜128Η;CH3 PLA)、1.35〜1.24(br、〜103Η、CH)。
【0173】
実施例17
実施例10からのこのポリマを、実施例16において用いられた手順にしたがってTMEDAで処理して陽イオンポリマを得た。違いはLLAではなくDLAから誘導したサブユニットであった。収量:497mg(96%)、H NMR(400MHz、MeOH−d):δ 7.42〜7.31(br、5H;Ph開始剤)、5.24〜5.13(m、〜41H;PhCH開始剤、CH PLA)、4.46〜4.18(m、〜206Η、CHOCOO、OCHポリマ)、3.66〜3.45(br、〜124Η、CHポリマ)、3.28〜3.18(br、〜173Η、NCHポリマ)、2.84〜2.75(br、〜57Η、NCHポリマ)、2.35〜2.28(br、〜175Η、NCHポリマ)、2.28〜2.16(br、〜59Η、CHポリマ)、2.06(s、6Η、OCHアセチル末端)、1.59〜1.52(m、〜121Η;CH3 PLA)、1.35〜1.25(br、〜110Η、CH)。
【0174】
実施例18
【0175】
【化35】

【0176】
実施例11からのポリマ(342mg、[Br]=0.67ミリモル)のDMSO溶液(3mL)にTMEDA(0.40mL、2.69ミリモル)を加えた。この溶液を室温で一夜撹拌し、THF/ヘキサン(3:1)の混合物中で2回沈殿させ、沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥した。収量:377mg(90%)、H NMR(400MHz、MeOH−d):δ 7.41〜7.35(br、5H;Ph)、5.19(s、2H;PhCH)、4.42〜4.23(m、〜253Η、CHOCOO、OCH2 PMTC(prBr−N))、4.28〜4.13(m、〜56Η;OCH2 PMTC(Et))、3.64〜3.49(br、〜96Η;CH)、3.28〜3.19(br、〜142Η;NCH)、2.84−2.75(br、〜52Η;NCH)、2.35〜2.28(br、〜145Η;NCH)、2.29〜2.17(br、〜49Η;CH2 PMTC(prBr−N))、2.06(s、6Η;OCHアセチル末端)、1.35〜1.19(m、〜234Η;CHポリマ)。
【0177】
電荷シフトポリマ
実施例19
【0178】
【化36】

【0179】
5−メチル−5−(1−エトキシエチル)オキシカルボキシル−1,3−ジオキサン−2−オン(MTCOEE;62mg、0.27ミリモル)、MTCOPrBr(212mg、0.75ミリモル)、BnMPA(4.6mg、0.02ミリモル)、およびTU(19.4mg、0.05ミリモル)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、DBU(7.4mg、0.05ミリモル)を含むバイアルにこの溶液を移し、室温で重合を開始させた([M]/[I]=50)。2.5時間後、この溶液を低温メタノール中で沈殿させ、沈殿物を遠心分離し、真空中で乾燥した。収量:241mg(87%)、GPC(THF):M 11800g/mol、PDI 1.19、H NMR(400MHz、アセトン−d):δ 7.45〜7.32(m、5H;Ph)、5.96(q、〜12H;CH(OEE))、5.20(s、2Η;PhCH)、4.42〜4.22(m、〜333Η;CHOCOO、OCH2 ポリマ)、3.75〜3.48(m、〜128Η;OCH2(OEE)、CHBr)、2.27〜2.16(m、〜87Η;CH2 (OΡrΒr))、1.35(d、〜44Η;CHCH3(OEE))、1.33〜1.23(m、〜182Η;CH3ポリマ)、1.22〜1.08(m、〜69Η;CH3(OEE))。a:b=1.0:3.1。
【0180】
実施例20 実施例19の四級化
【0181】
【化37】

【0182】
ドライアイス/アセトン浴中に浸漬した実施例19のポリマ(202mg、[Br]=0.56ミリモル)のアセトニトリル溶液(4mL)にトリメチルアミンガス(394mg、6.7ミリモル)を注入した。次に、この溶液を室温に戻らせ、18時間撹拌した後に真空下でアセトニトリルおよび過剰のガスを除去した。濃縮した残留物を真空中で乾燥した(アミノ化率約90%)。収量:200mg(85%)、H NMR(400MHz、MeOH−d):δ 7.43〜7.32(m、5H;Ph)、6.02〜5.93(m、〜6H;CH(OEE))、5.21(s、2H;PhCH)、4.48〜4.11(m、〜267Η;CHOCOOおよびCHポリマ)、3.75〜3.64(m、〜15Η;OCHCH3(OEE))、3.63〜3.45(m、〜78H;NCH2(PAB))、2.29〜2.15(b、〜298Η;NCH3(PAB))、2.32〜2.15(b、〜68Η;CH2(PAB))、1.41〜1.35(d、〜19Η;CHCH3(OEE))、1.35〜1.23(m、〜122Η;CH3ポリマ)、1.24〜1.10(m、〜46Η;CHCH3(OEE))。M(NMR)=14700g/mol。
【0183】
表8に、前駆体ポリマ(実施例5から11、および19)、ならびにそれらの対応する陽イオンポリマ(実施例12から18、および20)についてポリマ調製を要約している。
【0184】
【表8】

【0185】
表9は、前駆体ポリマ(実施例5から11、および19)、ならびにそれらの対応する陽イオンポリマ(実施例12から18、および20)について得た分析データ(数平均分子量M、多分散性指数(PDI)、%収率、ハロゲン化物Xから第4級アミンへの%反応率)を要約している。
【0186】
【表9】

【0187】
予測可能な分子量を有する分散性の狭いホモポリマ、ランダムポリマ、およびブロックコポリマの合成によって、この有機触媒系(TU/DBU)の有用性を示した。多分散性は、1.11から1.22の範囲であった。前駆体ポリマの数平均分子量Mは10500から12400であった。陽イオンポリマの数平均分子量Mは13100から19433であった。ハロゲン化物から第4級アミンへの反応率は約84%から100%であった。
【0188】
前駆体ポリマとアミンとの反応性は、側鎖のハロゲン化物によって決まる。実施例5のポリマ(X=Cl)はアセトニトリル中室温でトリメチルアミンと容易に第4級アミンを形成することができるが、TMEDA([Clの当量あたり4当量のTMEDA])と実施例12の陽イオンポリマを製造するには、DMSOなどの極性のより高い溶媒および加熱(90℃)が必要であった。比較すると、実施例6(X=Br)および実施例7(X=I)の前駆体ポリマはDMSOまたはアセトニトリル中のTMEDAを用いて室温で実施例13および14の対応する陽イオンポリマにそれぞれ変換された。TMEDAとの反応速度において臭化物とヨウ化物との反応性の間に差はほとんど見いだされなかった。
【0189】
塩素、臭素およびヨウ素の間の反応性の差は、ブロックコポリマ、特に陽イオンポリカーボネートセグメントを含むミセルを形成する両親媒性ブロックコポリマの設計において役立てることができる。上記に示したように、両端の陽イオン親水性セグメント(実施例15から17)と疎水性コアとを含む陽イオンブロックコポリマを形成させることができる。疎水性コアは、炭酸トリメチレン(TMC)またはラクチド(LLAもしくはDLA)から誘導された繰り返し単位を含む。しかし、LLAおよびDLAから誘導された疎水性コアは、特に塩化物脱離基を有するポリカーボネートサブユニットの場合、熱を必要とするTMEDA四級化反応時に熱的に不安定であることが見いだされた。従って、これらのモノマを使用して、室温においてTMEDAと反応することができるであろう、臭化物またはヨウ化物脱離基を有する前駆体ポリマを形成させた。塩化物脱離基を含む前駆体ポリマの場合、TMEDA四級化反応において用いられる高温において、TMCから誘導されたポリ(トリメチレンカーボネート)を含む疎水性ブロックが比較的安定であった。
【0190】
ハロゲンの反応性は、電荷を有するポリマの安定性にも影響を及ぼすことがある。ハロゲン残基の90%前後が変換されるが、反応平衡、立体障害、および電荷反発のために、過剰のTMEDAを用いてもすべての側鎖ハロゲン化物基を第4級アミンに変換するのは難しい。未反応ハロゲン化アルキル基は、側鎖の最末端における第3級アミンとの反応のための潜在的な架橋部位である。それらの低い反応性のために、塩化物含有前駆体ポリマから誘導された陽イオンポリマは極めて安定である。一方、臭化物またはヨウ化物含有前駆体ポリマから誘導された陽イオンポリマは少量の不溶性物質を含んでいた。しかし、実施例11のランダム前駆体ポリマから誘導された実施例18の陽イオンポリマを生成させる反応において架橋は観測されなかった。実施例18の陽イオンポリマは、コモノマモル比MTCOEt:MTCOPrBrが1:1のとき良好な水への溶解性を示した。
【0191】
物理化学試験および生物試験
ポリマ/DNAおよびPEI/DNA複合体の調製のための一般的な手順
超純水(HPLCグレード、pH7.0)または20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0または6.0)にポリマを溶解し、超純水にPEIを溶解した。等しい体積のポリマまたはPEI溶液とDNA溶液とを混合して意図したN/P比(DNAのリン酸基のモル数に対する陽イオンポリマのアミン基のモル数の比)を達成することによって、複合体を直接形成させた。ポリマまたはPEI分子とDNA分子との間の完全な静電相互作用を可能にするために、混合したらこの溶液を室温で30分間平衡化させてからその後の測定に用いた。
【0192】
ゲル遅延度アッセイ
種々のN/P比を有するポリマ/DNA複合体のさまざまな調合物を調製した。平衡後、複合体を1%アガロースゲル(50mLのアガロース溶液あたり0.5マイクログラム/mLの臭化エチジウムを4マイクロリットル用いて染色した)上、0.5×TBE緩衝液中、80mVで60分間電気泳動に付した。TBE緩衝液の原液は、53gのTRIS塩基(HOCHCNH、27.5gのホウ酸、および20mlの0.5Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)(pH8.0)を含む。使用の前にTBE原液を0.5×に希釈した。次に、ゲルを紫外線照射器(ChemiGenius,Evolve,Singapore)で分析して裸のDNAの位置と比べた複合体化DNAの位置を示させた。
【0193】
粒子サイズおよびζ電位分析
N/P 1、5、10、20、30、40および50にしたがってポリマ/DNA複合体を調製した。30分間インキュベーションした後、100マイクロリットルの複合体溶液を1mLの超純水または20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0またはpH6.0)で11倍に希釈した。超純水または酢酸ナトリウム緩衝液で同じ濃度に希釈した裸のDNAを対照として使用した。分析の前に、希釈した複合体溶液を30分間安定化させた。ポリマ/DNA複合体の粒子サイズおよびζ電位を658nmのHe−Neレーザビーム(散乱角:90°)を備えた動的光散乱式粒度分析装置(Brookhaven Instrument Corp.,Holtsville,NY,U.S.A.)およびZetasizer(Malvern Instrument Ltd.,Worchestershire,UK)をそれぞれ用いて測定した。粒子サイズおよびζ電位測定は、各試料について5回繰り返し、データは5つの読み値の平均として報告した。
【0194】
細胞毒性試験
HepG2細胞を、5%COの雰囲気下で10%FBS(ウシ胎児血清)、100マイクログラム/mLペニシリンおよび100単位/mLストレプトマイシンを添加したDMEM成長培地中に37℃で維持した。HepG2細胞におけるポリマ/DNA複合体の細胞毒性を評価するために、標準MTT(ジメチルチアゾリルジフェニルテトラゾリウム塩)アッセイプロトコルを使用した。96−ウェルプレート上で、1×10細胞/ウェルの密度で細胞を接種し、24時間成長させて60%から70%密生に到達させた。上記に記載のプロトコルにしたがってDNA複合体を調製した。裸のDNA溶液も複合体溶液の濃度と同じ濃度に調製した。各ウェルに100マイクロリットルの新しい成長培地を追加し、10マイクロリットルの複合体溶液で処理した。細胞毒性試験は、1つのN/P比あたり8つのウェルの繰り返しで実行した。4時間インキュベーションした後、ウェルを新しい培地で置き換え、さらに68時間インキュベーショントした。ウェルを100マイクロリットルの新しい培地および20マイクロリットルのMTT溶液(PBS緩衝液中5mg/mL)で置き換えた後、細胞をさらに4時間インキュベーションした。最後に、用いた培地を除去し、各ウェルの中の取り込まれた紫色のホルマザン結晶を150マイクロリットルのDMSOで溶解した。各ウェルから100マイクロリットル量のホルマザン/DMSO溶液を新しい96ウェルプレートに移し、マイクロプレート分光光度計(BioTek Instruments Inc,Winooski,VT,U.S.A.)を用いて550nmおよび690nmの波長で吸光度(A)を測定した。種々のN/P比における相対細胞生存率を測定するために、処理された細胞中のホルマザン溶液の吸光度を対照細胞のものと比較した。
細胞生存率=[(Α550−A690)試料/(A550−A690)対照]×100%
データは、p<0.05のスチューデントt検定によって有意差を統計学的に分析した。
【0195】
インビトロ遺伝子発現
ポリマ/DNA複合体のインビトロ遺伝子移入をHepG2細胞において調べた。細胞は24−ウェルプレートに8×10細胞/ウェルの密度で接種し、0.5mLのDMEM(Dulbecco変法Eagle培地)成長培地を用いて24時間60%から70%密生に培養した。各ウェルの細胞を新しい成長培地で置き換え、続いて50マイクロリットルの複合体溶液(2.5マイクログラムのDNAを含む)を用いて移入した。4時間移入した後、用いた培地を新しい培地で置き換え、細胞をさらにインキューベートした。培養培地を68時間後に取り除き、細胞をPBS緩衝液(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM二塩基リン酸ナトリウム、2mM一塩基リン酸カリウムを含むリン酸緩衝食塩水、pH7.4)で洗浄した後に0.2mLの1×レポータ溶菌緩衝液を加えた。凍結(−80℃で30分間)および解凍のサイクルを2回行った後に、細胞溶解物を14,000rpm、4℃で10分間遠心分離して細胞残屑を除去した。上清(20マイクロリットル)を100マイクロリットルのルシフェリン基質緩衝液と混合し、直ちに照度計(Lumat LB9507,Mandel Scientific Inc,Ontario,Canada)を用いてその蛍光強度(相対光単位RLUで)を測定した。RLU読み値をBCAタンパク質アッセイによって決定した上清のタンパク質濃度に対して規格化して全体的な発現効率を得た。
【0196】
すべてのインビトロ遺伝子発現実験において、裸のDNAをネガティブコントロールとして用いた。PEI/DNA複合体をポジティブコントロールとして用い、最適N/P比(すなわち10)で調製した。このN/P比において、PEIは高い遺伝子発現を誘発したが、50%より高い細胞生存率が得られた。各N/P比におけるルシフェラーゼ発現効率を6つの繰り返しウェルの平均として表した。スチューデントt検定を用いて統計解析を実行した。差は、p<0.05において統計的に有意であると考えた。
【0197】
上記で調製した両親媒性ポリマ(実施例12から18)は、水溶液中でミセルナノ粒子を形成することができる。典型的な例として、実施例15の陽イオンポリマは、このポリマを20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に直接溶解すると370nmのサイズおよび34mVのζ電位を有するナノ粒子を形成した。実施例15の陽イオンポリマにもとづくポリプレックスは、強いDNAとの結合能力を示した。図1は、実施例15の陽イオンポリマを用いて種々のpHおよびさまざまなN/P比において調製したポリプレックスのアガロースゲル電気泳動の結果を示す写真である。pH7において調製したポリプレックスでは、N/P=4においてDNA移動度の完全な遅滞が観測された。pH6またはpH5において調製したポリプレックスでは、N/P=3においてDNA移動度の完全な遅滞が観測された。pHが低くなるほど多くの第3級アミンがプロトン化され、陽イオンポリマのDNA結合能力を増強する。さらに、ポリプレックスは、高いN/P比において150nm未満の粒子サイズおよび正のζ電位を有し、これらは細胞取り込みに有利である。
【0198】
図2は、pH7.0、6.0および5.0において調製したポリプレックスのN/P比と粒子サイズとの間の関係を示す棒グラフである。粒子サイズは、N/P比の増加(5から50)とともにpH5.0(110から約80nm)およびpH6.0(約250nmから約100nm)で減少した。pH7.0では、粒子サイズはN/P比が1から50について比較的一定にとどまるかまたはわずかに増加した(約120nmから150nm)。
【0199】
図3は、pH7.0、6.0および5.0において調製したポリプレックスのN/P比とζ電位との間の関係を示す棒グラフである。ζ電位は、高いN/P比および低いpH値で最も高く、ポリプレックスが低いpHほど高い正の電荷密度、したがって大きなDNA結合能力を有することを示した。
【0200】
図4は、種々のpHおよびN/P比において作製したポリプレックスについて、HepG2ヒト肝臓癌腫細胞系統におけるルシフェラーゼ発現レベルを比較する棒グラフである。DNA対照およびPEI/DNA対照も示している。3つのpH条件の中でpH6.0が最も高い遺伝子発現レベルを与え、N/P30において1.1×10RLU/mgタンパク質であった。図2および3に示すように、pH7.0およびpH6.0において調製したときポリプレックスの粒子サイズは高いN/P比(たとえば30から50)において同様であったが、pH6.0において作製したポリプレックスの方が高いζ電位を有した。理論にはとらわれないが、ζ電位が高い方がポリプレックスと負電荷を有する細胞膜との相互作用を増強し、ポリプレックスの細胞取り込みを促進し、従って遺伝子発現効率を増加させるかもしれない。第3級アミンはポリプレックスのエンドソームエスケープのためのプロトンスポンジ効果を提供するように設計した。pH6.0と比較すると、pH5.0における方が多くの第3級アミンがプロトン化され、そのことがプロトンスポンジ効果を弱め、観測されたより低い遺伝子発現レベルの原因となったのかもしれない。
【0201】
図5の棒グラフに、細胞生存率データを示す。ポリプレックスによって誘発された最も高い遺伝子発現レベル(pH6.0およびN/P 30)はPEIによってその最適N/P比(すなわちN/P 10)において媒介されたものより低かったが、ポリプレックスの細胞毒性はPEI/DNA複合体よりはるかに低かった。たとえば、細胞生存率は、開示したポリプレックスでは96%であったが、PEI/DNA複合体では64%しかなかった。向上した生存率は、開示したポリマのより大きな生分解性によると考えられる。
【0202】
追加の特定の実施態様
一つの特定の実施態様において、生分解性両親媒性陽イオンポリマは、a)それぞれの第1の末端、それぞれの第2の末端、およびそれぞれの第1の繰り返し単位を含む2つのポリマ鎖、およびb)酸素、窒素および硫黄からなる群から独立に選ばれた2つの主鎖ヘテロ原子を含むモノマ結合基を含み、i)2つのポリマ鎖のそれぞれの第1の末端は、2つの主鎖ヘテロ原子の1つとそれぞれ結合し、ii)任意選択として、それぞれの第2の末端は、それぞれの末端保護基を含み、iii)それぞれの第1の繰り返し単位は、エステル、カーボネート、カーバメート、尿素、チオカーバメート、チオカーボネート、またはジチオカーボネートからなる群から独立に選ばれたそれぞれの第1の主鎖官能基を含み、それぞれの第1の繰り返し単位の0%超は、それぞれの側鎖第4級アミン基を含む。追加の実施態様において、2つの主鎖ヘテロ原子は酸素原子である。別の追加の実施態様において、陽イオンポリマは水溶液中5.0から8.0のpHにおいて自己集合し、658nmのHe−Neレーザビームおよび90°の散乱角を用いて動的光散乱法によって測定したとき、10nmから500nmの平均粒子サイズを有するナノ粒子になる。別の追加の実施態様において、陽イオンポリマは、ASTM D6400に則って生分解性である。別の追加の実施態様において、第1の側鎖は、それぞれの第3級アミン基をさらに含む。別の追加の実施態様において、2つのポリマ鎖は、i)エステル、カーボネート、カーバメート、尿素、チオカーバメート、チオカーボネート、またはジチオカーボネートからなる群から独立に選ばれたそれぞれの第2の主鎖官能基、およびii)エンドソーム環境内でカルボン酸基を形成することができるそれぞれの潜在的なカルボン酸基を含むそれぞれの第2の側鎖を含む、それぞれの第2の繰り返し単位を含む。別の追加の実施態様において、2つのポリマ鎖は、ブロックコポリマ鎖である。
【0203】
別の特定の実施態様において、ポリマ複合体は、負電荷を有する生物活性物質および上記に記載の生分解性両親媒性陽イオンポリマを含む。
【0204】
別の特定の実施態様において、ポリマ複合体を形成させる方法は、上記に記載の生分解性両親媒性陽イオンポリマを含む第1の水性混合物を負電荷を有する生物活性物質を含む第2の水性混合物と接触させてポリマ複合体を含む第3の水性混合物を形成させるステップを含む。
【0205】
別の特定の実施態様において、細胞を処理する方法は、細胞を上記に記載のポリマ複合体のナノ粒子と接触させるステップを含む。
【0206】
別の特定の実施態様において、生分解性陽イオンポリマを形成させる方法は、i)第1の環状カルボニルモノマ、ii)有機触媒、iii)促進剤、iv)2つの求核開始基を含むモノマ開始剤であって、2つの求核開始基はアルコール、アミン、およびチオールからなる群から独立に選ばれたモノマ開始剤、およびv)任意選択の溶媒を含む第1の混合物を形成するステップであって、第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含むステップ、第1の混合物を撹拌し、それによって、第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位を含む第1のポリマを形成させるステップ、任意選択として、第1のポリマを末端保護するステップ、および第1のポリマまたは末端保護された第1のポリマを第3級アミンで処理し、それによって陽イオンポリマを形成させるステップであって、第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有するステップを含む。
【0207】
本明細書において用いられている用語法は、特定の実施態様を記載することだけを目的とし、本発明を限定するものではない。本明細書に用いられている単数形「a」、「an」および「the」は、特に断らない限り複数形も含むものとする。用語「含む」もしくは「含んでいる」またはその両方は、本明細書において用いられるとき、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素もしくは成分またはそれらの任意の組み合わせの存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、成分もしくはそれらの群またはそれらの任意の組み合わせの存在または追加を排除しないとさらに理解される。
【0208】
添付の請求項にあるすべての手段またはステップおよび機能要素についての対応する構造、物質、行為、および均等物は、具体的に請求されている他の請求要素と組み合わされて機能を実施するためのいずれの構造、物質、または行為も含むものとする。本発明の記載は、例示および記載を目的として提示したが、包括的であることも開示されている形の発明に限定されることも意図しない。本発明の範囲および思想から逸脱しない多くの変更形および変化形が当業者に明らかとなる。実施態様は、本発明の原理および原理の実際的な適用を最も良好に説明し、他の当業者が本発明を理解することを可能にするために選び、記載した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導され、その0%超は第4級アミン基を含む側鎖部分を有する、第1の繰り返し単位、
前記開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および
任意選択の末端保護基
を含む生分解性陽イオンポリマ。
【請求項2】
前記第1の繰り返し単位の0%超は、第4級アミン基および第3級アミン基を含む側鎖部分を有する、請求項1に記載の陽イオンポリマ。
【請求項3】
前記第1の繰り返し単位の前記側鎖部分は、側鎖カルボン酸基をさらに含む、請求項1に記載の陽イオンポリマ。
【請求項4】
前記陽イオンポリマは第2の環状カルボニルモノマから誘導された第2の繰り返し単位をさらに含み、前記第2の繰り返し単位は側鎖アセタールエステル基を含む、請求項1に記載の陽イオンポリマ。
【請求項5】
前記陽イオンポリマはポリカーボネートである、請求項1に記載の陽イオンポリマ。
【請求項6】
前記陽イオンポリマは、ブロックコポリマである、請求項1に記載の陽イオンポリマ。
【請求項7】
前記陽イオンポリマは両親媒性であり、水中で自己集合して5.0から8.0のpHにおいて10nmから500nmの平均粒子サイズを有するナノ粒子を形成する、請求項1に記載の陽イオンポリマ。
【請求項8】
生分解性陽イオンポリマの形成方法であって、
第1の環状カルボニルモノマ、触媒、促進剤、モノマジオール開始剤、および任意で溶媒を含む第1の混合物を形成するステップであって、前記第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含むステップ、
前記第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位を含む第1のポリマを形成するステップ、
任意選択として、前記第1のポリマを末端保護して前駆体ポリマを形成するステップ、および
前記前駆体ポリマを前記第3級アミンで処理して前記陽イオンポリマを形成するステップであって、前記第1の環状カルボニルモノマから誘導された前記第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有するステップ
を含む、方法。
【請求項9】
前記第3級アミンはビス第3級アミンであり、前記第1の環状カルボニルモノマから誘導された前記第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンおよび第3級アミンを含む前記側鎖部分を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ビス第3級アミンは、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBDA)、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,2−エタンジアミン(TEEDA)、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン(TEPDA)、1,4−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,4−ブタンジアミン(TEBDA)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4,4−ジピリジル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4−ピロリジノピリジン、1−メチルベンゾイミダール、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3級アミンはカルボキシ基を含み、前記第1の環状カルボニルモノマから誘導された前記第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンおよびカルボン酸を含む前記側鎖部分を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の混合物は疎水性の第2の環状カルボニルモノマを含み、前記陽イオンポリマは前記第2の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第2の繰り返し単位を含むランダムコポリマであり、前記第2の環状カルボニルモノマは前記第3級アミンと反応していずれかの第4級アミンを含む側鎖部分を形成することができる1価の脱離基を含まない、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の繰り返し単位は、側鎖アセタールエステル基を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
生分解性陽イオンブロックコポリマの形成方法であって
触媒、促進剤、モノマジオール開始剤、および任意選択の溶媒を含む反応混合物を形成するステップ、
前記反応混合物に第1の環状カルボニルモノマ、およびそれに続いて第2の環状カルボニルモノマを順次加え、開環重合によって反応させ、それによって第1のブロックコポリマを形成するステップであって、前記第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含み、前記第2の環状カルボニルモノマは、前記第3級アミンと反応していずれかの第4級アミンを形成することができないステップ、
任意選択として、前記第1のブロックコポリマを末端保護し、それによって前駆体ブロックコポリマを形成するステップ、および
前記前駆体ブロックコポリマを第3級アミンで処理して前記陽イオンポリマを形成するステップであって、前記陽イオンポリマは前記第1の環状カルボニルモノマから誘導された第1の繰り返し単位を含み、前記第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有するステップ
を含む、方法。
【請求項15】
前記順次の反応を、逆の順序で実行して前記第1のブロックコポリマを形成させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のブロックコポリマをカルボン酸無水物を用いて末端保護し、それによって末端エステル基を形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の環状カルボニルモノマは、式(1)で表され、
【化1】

式中、
tは、0から6の整数であり、
各Yは、
【化2】

からなる群から独立に選ばれた2価のラジカルであり、
各Qは、水素、ハロゲン化物、カルボキシ基、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を有する基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、
【化3】

式中、Mは、−R、−OR、−NHR、−NR、および−SRからなる群から選ばれた1価のラジカルであり、各Rは、1から30の炭素を含むアルキル基、および6から30の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、
前記第1の環状カルボニルモノマの前記Q基の1つ以上は、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の環状カルボニルモノマは、式(2)で表され、
【化4】

式中、
各Qは、水素、ハロゲン化物、カルボキシ基、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を有する基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、
【化5】

式中、Mは、−R、−OR、−NHR、−NR、または−SRからなる群から選ばれた1価のラジカルであり、各Rは、1から30の炭素を含むアルキル基、および6から30の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、
は、1から30の炭素を含むアルキル基、および6から30の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、
は、水素、1から30の炭素を有するアルキル基、および6から30の炭素を有するアリール基からなる群から選ばれた1価のラジカルであり、
前記第1の環状カルボニルモノマの前記R基は、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の環状カルボニルモノマは、式(3)で表され、
【化6】

式中、
uは、1から8の整数であり、
各Qは、水素、ハロゲン化物、カルボキシル基、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を有する基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、
【化7】

ここで、Mは、−R、−OR、−NHR、−NR、または−SRから選ばれた1価のラジカルであり、各Rは、1から30の炭素を含むアルキル基、および6から30の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、
任意選択として、前記式(3)の
【化8】

は、独立に、−O−、−S−、−NHR、または−NRを表し、
任意選択として、前記式(3)の
【化9】

は、独立に、
【化10】

基を表し、
前記第1の環状カルボニルモノマの前記Q基の1つ以上は、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の環状カルボニルモノマは、式(4)で表され、
【化11】

式中、
各Qは、水素、ハロゲン化物、カルボキシ基、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を有する基からなる群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、
【化12】

式中、Mは、−R、−OR、−NHR、−NR、または−SRから選ばれた1価のラジカルであり、
各Rは、1から30の炭素を含むアルキル基、および6から30の炭素を含むアリール基からなる前記群から独立に選ばれた1価のラジカルであり、
各Qは、水素、1から30の炭素を有するアルキル基、および6から30の炭素を有するアリール基からなる群から独立に選ばれた1価の基であり、
各vは、独立に1から6の整数を表し、
前記第1の環状カルボニルモノマの前記Q基もしくはQ基またはその両方の1つ以上は、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記陽イオンブロックコポリマは前記第2の環状カルボニルモノマから誘導された第2の繰り返し単位を含み、前記第2の繰り返し単位は側鎖アセタールエステル基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記開始剤は、BnMPAである、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記第3級アミンは、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン(TMBDA)、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,2−エタンジアミン(TEEDA)、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン(TEPDA)、1,4−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,4−ブタンジアミン(TEBDA)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、4,4−ジピリジル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4−ピロリジノピリジン、1−メチルベンゾイミダール、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれたビス第3級アミンである、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
負電荷を有する生物活性物質、並びに、生分解性陽イオンポリマを含むポリマ複合体であって、
前記生分解性陽イオンポリマは、
第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位であって、前記第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミン基を含む側鎖部分を有する繰り返し単位、
前記開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および
任意選択の末端保護基
を含む、
ポリマ複合体。
【請求項25】
前記第1の繰り返し単位の前記0%超は側鎖第3級アミン基をさらに含む、請求項24に記載のポリマ複合体。
【請求項26】
前記第1の繰り返し単位の前記0%超が側鎖カルボン酸基をさらに含む、請求項24に記載のポリマ複合体。
【請求項27】
前記陽イオンポリマは、ポリカーボネートである、請求項24に記載のポリマ複合体。
【請求項28】
前記陽イオンポリマは疎水性の第2の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第2の繰り返し単位をさらに含み、前記第2の繰り返し単位は側鎖アセタールエステル基を含む、請求項24に記載のポリマ複合体。
【請求項29】
前記負電荷を有する生物活性物質は、遺伝子、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、薬物、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項24に記載のポリマ複合体。
【請求項30】
前記陽イオンポリマは、ブロックコポリマである、請求項24に記載のポリマ複合体。
【請求項31】
ポリマ複合体を形成する方法であって、
生分解性陽イオンポリマを含む第1の水性混合物を負電荷を有する生物活性物質を含む第2の水性混合物と接触させて、前記ポリマ複合体を含む第3の水性混合物を形成するステップであって、前記生分解性陽イオンポリマは、第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位、前記開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および任意選択の末端保護基を含み、前記第1の繰り返し単位の0%超は、第4級アミン基を含む側鎖部分を有するステップ
を含む方法。
【請求項32】
細胞を処理する方法であって、
前記細胞を生分解性陽イオンポリマおよび負電荷を有する生物活性物質を含むポリマ複合体のナノ粒子と接触させるステップであって、前記生分解性陽イオンポリマは、第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位、前記開環重合のためのモノマジオール開始剤から誘導されたサブユニット、および任意選択の末端保護基を含み、前記第1の繰り返し単位の0%超は、第4級アミン基を含む側鎖部分を有するステップ
を含む方法。
【請求項33】
前記接触させるステップは、0%から15%の溶血を誘発する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ナノ粒子は、0%から20%の細胞毒性を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記生物活性物質は遺伝子であり、前記細胞は前記遺伝子を発現する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
それぞれの第1の末端、それぞれの第2の末端、およびそれぞれの第1の繰り返し単位を含む2つのポリマ鎖、
酸素、窒素、および硫黄からなる群から独立に選ばれた2つの主鎖ヘテロ原子を含むモノマ結合基
を含み、
i)前記2つのポリマ鎖の前記それぞれの第1の末端は、前記2つの主鎖ヘテロ原子の1つとそれぞれ結合し、ii)任意選択として、前記それぞれの第2の末端は、それぞれの末端保護基を含み、iii)前記それぞれの第1の繰り返し単位は、エステル、カーボネート、カーバメート、尿素、チオカーバメート、チオカーボネート、またはジチオカーボネートからなる群から独立に選ばれたそれぞれの第1の主鎖官能基を含み、前記それぞれの第1の繰り返し単位の0%超は、それぞれの側鎖第4級アミン基を含む
生分解性両親媒性陽イオンポリマ。
【請求項37】
前記2つの主鎖ヘテロ原子は、酸素原子である、請求項36に記載の陽イオンポリマ。
【請求項38】
前記陽イオンポリマは、水溶液中5.0から8.0のpHにおいて自己集合し、658nmのHe−Neレーザビームおよび90°の散乱角を用いる動的光散乱法によって測定したとき、10nmから500nmの平均粒子サイズを有するナノ粒子になる、請求項36に記載の陽イオンポリマ。
【請求項39】
前記陽イオンポリマは、ASTM D6400に則って生分解性である、請求項36に記載の陽イオンポリマ。
【請求項40】
前記第1の側鎖は、それぞれの第3級アミン基をさらに含む、請求項36に記載の陽イオンポリマ。
【請求項41】
前記2つのポリマ鎖は、i)エステル、カーボネート、カーバメート、尿素、チオカーバメート、チオカーボネート、またはジチオカーボネートからなる群から独立に選ばれたそれぞれの第2の主鎖官能基、およびii)エンドソーム環境においてカルボン酸基を形成することができるそれぞれの潜在的なカルボン酸基を含むそれぞれの第2の側鎖を含む、それぞれの第2の繰り返し単位を含む、請求項36に記載の陽イオンポリマ。
【請求項42】
前記2つのポリマ鎖は、ブロックコポリマ鎖である、請求項36に記載の陽イオンポリマ。
【請求項43】
負電荷を有する生物活性物質、および
請求項36に記載の生分解性両親媒性陽イオンポリマ
を含むポリマ複合体。
【請求項44】
ポリマ複合体を形成する方法であって、
請求項36に記載の生分解性両親媒性陽イオンポリマを含む第1の水性混合物を、負電荷を有する生物活性物質を含む第2の水性混合物と接触させて、前記ポリマ複合体を含む第3の水性混合物を形成するステップ
を含む方法。
【請求項45】
細胞を処理する方法であって、
前記細胞を請求項43に記載のポリマ複合体のナノ粒子と接触させるステップ
を含む方法。
【請求項46】
生分解性陽イオンポリマを形成する方法であって、
i)第1の環状カルボニルモノマ、ii)有機触媒、iii)促進剤、iv)2つの求核開始基を含むモノマ開始剤であって、前記2つの求核開始基はアルコール、アミン、およびチオールからなる群から独立に選ばれたモノマ開始剤、およびv)任意選択の溶媒を含む第1の混合物を形成するステップであって、前記第1の環状カルボニルモノマは、第3級アミンと反応して第4級アミンを形成することができる1価の脱離基を含むステップ、
前記第1の混合物を撹拌し、それによって、前記第1の環状カルボニルモノマから開環重合によって誘導された第1の繰り返し単位を含む第1のポリマを形成するステップ、
任意選択として、前記第1のポリマを末端保護するステップ、および
前記第1のポリマまたは前記末端保護された第1のポリマを前記第3級アミンで処理し、それによって前記陽イオンポリマを形成するステップであって、前記第1の環状カルボニルモノマから誘導された前記第1の繰り返し単位の0%超は第4級アミンを含む側鎖部分を有するステップ
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−515816(P2013−515816A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545912(P2012−545912)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/SG2010/000487
【国際公開番号】WO2011/078805
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】