説明

生分解性成形パイル

【課題】 今日の地球においては、土壌環境の保全が叫ばれ、「土に戻す、自然に帰す」といった自然環境の保全、循環型社会の形成が急務となっている。
そのための土壌改善、防虫及び肥料添加において、パイル等各種用具が考案されているが、土壌改質剤、防虫剤及び肥料は土壌に溶け込んでそれぞれの効果を発揮するものの、それらを充填したパイル等各種用具の容器については、土壌に分解されずに、廃棄物として残存してしまう不具合が発生する。
【解決手段】 本発明は、ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入して作る生分解性物質において、生分解性フィルムの厚さ(100μm以下)を超えた生分解性成形物を成形し、生分解速度及び生分解完了時期を事前に設定することを可能にするとともに、取り扱いを簡便にするための手段として、土壌改質剤、防虫剤又は肥料を充填した生分解性物質容器を土に埋め込むためにパイル(くい)形状にした生分解性成形パイルを提供するものです。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入して作る生分解性物質において、生分解性フィルムの厚さ(100μm以下)を超えて成形する成形物の製造を可能とする生分解性成形物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、トウモロコシなどからつくられるデンプンや糖類を発酵させて得られる乳酸を原料とし、乳酸の直接縮合法により製造される加水分解型の生分解樹脂です。生分解性物質は、生体吸収性があり、微生物の働きにより二酸化炭素と水に分解されるが、微生物の種類と数および活動状況によって分解速度が変化する。
従来この種の製品は、主として手術の縫合糸や生分解性フィルムとして生産されてきた。
生分解性フィルムは、現在100μm以下の厚さに制約された範囲で製造可能であるが、100μmを超えて生分解性物質の成形を可能にした例はない。
また、厚さ100μm以下の生分解性フィルムにおいては、バクテリア及び水分で分解する速度を算出することは可能であるが、厚さ100μm以下を超えて成形する生分解性成形物の分解速度を計算することは出来なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今日の地球においては、環境汚染の問題が表面化し、生態系の視点からとらえる環境保全、環境への負荷を低減する、環境にやさしい保全対策が求められている。
土壌についても土壌環境の保全が叫ばれ、「土に戻す、自然に帰す」といった自然環境の保全、循環型社会の形成が急務となっている。
そのための土壌改質、防虫及び肥料添加において、パイル等各種用具が考案されているが、土壌改質剤、防虫剤及び肥料は埋没後に水分透過に伴い遅緩的に土壌に溶け込んでそれぞれの効果を発揮するものの、それらを充填したパイル等各種施肥/添加用具の容器については、土壌に分解されずに、廃棄物として残存してしまう不具合が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために考案したもので、ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入して作る生分解性物質において、生分解性フィルムの厚さ(100μm以下)を超えた生分解性成形物を成形するとともに、生分解速度及び生分解完了時期を事前に設定することを可能にする生分解性成形パイルを製造する手段を提供するものです。
ポリ乳酸は、ペレット化が可能で射出成形や押出成形で金型を用いてプラスチック成形品を量産することができる。
また、耐熱温度が100℃を超えることで、家電や自動車、産業用の工業部品や食品容器、包装資材としての応用範囲が大きく広がろうとしている。
その中でも、厚さ100μm〜1mmについては、従来の技術から生分解速度及び生分解完了時期を事前に設定することは可能であるが、厚さ1mmを超えるものについては未知の世界となっている。
これを可能にするためには、厚さがあることから、従来の生分解性フィルムに比べて、ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入する割合を制御すること及び混合の均一性を高めてより高品質の生分解性物質を生成する必要がある。
ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入する割合を高めると、機械的性能は落ちるが、吸水性および生分解性が高まり、逆に混入する割合を低くすると、機械的性能が高まり、吸水性及び生分解性が低くなる。
【0005】
ここでは、こうした技術レベルを活用して、土壌環境の保全に役立つ簡便な手段として、土壌改質剤、防虫剤又は肥料を充填した生分解性物質容器を土に埋め込むためにパイル(くい)形状にした生分解性成形パイルを提供するものです。
ポリ乳酸系配合比により硬質から軟質まで変化させることができるが、土に埋めるために打ち込むパイル状の容器の強度とポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入する割合との関係を制御する必要がある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、土壌改質剤、防虫剤又は肥料を充填した生分解性物質容器が土壌に分解されずに、廃棄物として残存してしまう不具合を解消し、土壌環境の保全、「土に戻す、自然に帰す」といった自然環境の保全、循環型社会の形成が可能となる。
このことは、生態系の視点からとらえる環境保全、環境への負荷を低減する、環境にやさしい保全対策に繋がり、しいては地球全体の環境保全に寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の生分解性成形パイルにおける最良の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は、生分解性成形物を製造するに当たり、ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入する割合(%)と生分解性成形物の厚さ及び分解時間の関係を示すグラフで、混合の均一性を高めることによりその精度を高めることが出来る。
グラフの縦軸は混入する割合(%)、横軸は分解時間、1の矢印は生分解性成形物の厚さを示す。
【0009】
図2は、生分解性成形パイルを製造するにあたり、ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入する割合(%)とパイル状の容器の厚さ及び強度との関係を示すグラフで、最終的にポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入する割合(%)を決定するためには、図1の分解時間との関係についても考慮する必要がある。
図1と図2を見れば分かるように、強度と分解時間との間には相関関係がある。
グラフの縦軸は混入する割合(%)、横軸は強度、1の矢印は生分解性成形物の厚さを示す。
【0010】
図3は、生分解性成形パイルの一例を示すもので、その断面図である。
A図は多孔のないパイル、B図は多孔を有するパイルの一例を示す。
2は土壌改善剤、防虫剤又は肥料等の充填剤、3はパイル容器、4は多孔を示す。
パイル容器3に多孔4を設けることにより、生分解性のパイル容器の表面積を制御して、パイル容器の生分解速度や土壌改質剤、防虫剤又は肥料等の土壌への溶け込む速度を変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
今日では、地球環境の問題は大きな課題であり、その中でも本発明が直接寄与する土壌環境及び自然環境の保全の問題は、循環型社会の形成に不可欠な問題である。
本発明は、こうした世界の逼迫した問題に貢献するもので、強い社会的要求に基づき市場の要求が高まることが予想されるため、産業上の利用価値は益々高められていくことは必須である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 生分解性成形物を製造するに当たり、ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入する割合(%)と生分解性成形物の厚さ及び分解時間の関係を示すグラフ
【図2】 生分解性成形パイルを製造するにあたり、ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入する割合(%)とパイル状の容器の厚さ及び強度との関係を示すグラフ
【図3】 生分解性成形パイルの一例を示す断面図
【符号の説明】
1;生分解性成形物の厚さ
2;土壌改質剤、防虫剤又は肥料等の充填剤
3;パイル容器
4;多孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂に生分解性ポリエステル(ポリ乳酸)を混入して作る生分解性物質において、生分解性フィルムの厚さ(100μm以下)を超えて成形したことを特徴とする生分解性成形パイル
【請求項2】
請求項1の生分解性成形パイルにおいて、生分解速度及び生分解完了時期を事前に設定することを特徴とする生分解性成形パイル
【請求項3】
請求項1の生分解性成形パイルにおいて、生分解性成形物の中に肥料、土壌改質剤又は防虫剤を内蔵し、容器ごと土壌で生分解する環境保全型施肥/添加用具を形成することを特徴とする生分解性成形パイル

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−229379(P2010−229379A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100349(P2009−100349)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(391042058)株式会社ユニークテープ (5)
【Fターム(参考)】