生分解性金属キレート化ポリマーおよびワクチン
本発明は、生理活性剤などの種々のカーゴ分子を送達するためのポリマー組成物の調製に有用な金属キレートポリ(エーテルアミド)ポリマー類を提供する。溶液中、金属イオンと金属結合性アミノ酸を含むワクチンエピトープなどのカーゴ分子とを、ポリマー組成物中に装入し、非共有結合性錯体中に保持することができる。このようなポリマー組成物のナノ粒子もまた、この溶液から直接的に調製することができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]ポリアミノカルボン酸は、生物の汚染除去における錯体化剤またはキレート化剤としてしばしば用いられており、最近、洗浄剤におけるリン酸塩の代替物として提案されている。これらの化合物は、種々の金属イオン、多くの場合三価のランタニドと錯体を形成することが知られている。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびDTPA(ジエチレントリアミン−五酢酸)などのポリアミノカルボン酸もまた、インビボ送達組成物に診断用部分および治療用部分をキレート化するために一般的に用いられている。
【0002】
[0002]キレート化性を有するポリマーもまた作製されている。MRI造影剤として、高分子ガドリニウム(Gd)錯体の臨床適用が報告されている。例えば、Gdキレートは、線形ポリ(アミノ酸)、多糖類、タンパク質および種々のデンドリマーなどの生物医学的ポリマーに結合している。DTPA酸無水物とジアミン類との共重合化およびGd(III)との錯体化もまた報告されている。しかしながら、デキストラン類、ポリリシンなどの典型的な生分解性ポリマーから調製されたものなど、高分子系の臨床適用は、Gd[III]錯体の排泄が遅いこと、およびその結果として毒性Gdイオンが長期に組織蓄積することにより制限されていた。したがって、当業界におけるこれらの進歩に関わらず、排泄が遅い問題を避けるために、生分解性のより大きくより良好な高分子系が求められている。
【0003】
[発明の概要]
[0003]本発明は、一般構造式(I)、
【化1】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり;
R1は−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化2】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)、
【化3】
の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーまたは、構造式(IV)、
【化4】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり、mは、約0.1から0.9の範囲であり;pは、約0.9から0.1の範囲であり;
R1は、−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化5】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
R2は、水素、(C1〜C12)アルキルまたは(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、CH2COO−、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R5は、(C2〜C4)アルキルからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーのうちの少なくとも1つまたはその塩を含んでなる組成物を提供する。
【0004】
[0004]別の実施形態において、本発明は、ポリマーの非共有結合性錯体および遷移金属イオンを含有するナノ粒子を形成するために、1)水溶液中に溶解させた式(I)または(IV)により記載された化学構造を有する少なくとも1種のポリマーと;2)Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+およびFe3+、Zn2+、Ni2+からなる群から選択される金属イオンとを一緒に接触させることによってナノ粒子を作製する方法を提供する。
【0005】
[0005]さらに別の実施形態において、本発明は、対象に本発明の組成物を投与することによって、その対象にカーゴ分子を送達する方法を提供する。
【0006】
[0006]さらに別の実施形態において、本発明は、
a)1)式(I)または(IV)の本発明のキレート化ポリマーと;
2)Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+およびFe3+、Zn2+、Ni2+およびGd3+からなる群から選択される金属イオンと;
3)非プロトン性極性溶媒と、
を、重縮合条件下、水溶液中で一緒に接触させること、
b)前述の溶液中、前述のポリマーと前述の金属カチオンとの非共有結合性錯体を含有するナノ粒子を形成すること;および
c)ゲルろ過分離により前述の溶液から前述のナノ粒子を得ること、
により、ナノ粒子を作製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ポリマー:PEA EDTA−Leu(6)(式Ia)の1H−NMRスペクトルを示す。
【図2】インフルエンザウィルスに感染後、免疫化したマウスの生存曲線のグラフを示す。黒◆=緩衝液のみで免疫化した動物;▲=ウィルス、陽性対照によって腹腔内的に免疫化した動物;*=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:Cと共に製剤化したHAPR8エクトドメインとNPPR8双方によって鼻腔内的に1回免疫化した動物;黒四角=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:Cと共に製剤化したHAPR8エクトドメインとNPPR8双方によって鼻腔内的に1回免疫化した動物。
【図3】インフルエンザウィルスに感染後、免疫化したマウスの体重変化を示すグラフを示す。〇=緩衝液のみで免疫化した動物;*=ウィルス、陽性対照によって腹腔内的に免疫化した動物;▲=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:Cと共に製剤化したHAPR8エクトドメインとNPPR8双方によって鼻腔内的に1回免疫化した動物の平均体重変化;黒四角=PEA EDTA−Leu(6)−Znと共に製剤化したHAPR8エクトドメインとNPPR8によって鼻腔内的に免疫化したマウス;◇=PEA EDTA−Leu(6)−Znと共に製剤化したHAPR8エクトドメインによって鼻腔内的に免疫化した動物。
【図4】インフルエンザウィルスに感染後、免疫化したマウスの平均体重変化パーセンテージのグラフを示す。黒四角=製剤緩衝液中、PEA EDTA−Leu(6)ポリマーによって免疫化した動物の体重変化(7日目までに全てのマウスがウィルス感染で死亡)。〇=ウィルス、陽性対照によって腹腔内的に免疫化したマウス;▲=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:C粒子と共にHAPR8−3とNPPR8を鼻腔内投与した動物の平均体重変化(1匹のマウスが8日目までに死亡、HAタンパク質に対して測定可能な抗体応答を生ぜず);△=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:C粒子と共にHAPR8−3とNPPR8を皮下的に免疫化したマウス(1匹を除く全てのマウス8日目までに死亡)。
【図5】インフルエンザ株A/PR/8/34(Mount Sinai)由来のHisタグ化核タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図6】インフルエンザ株A/PR/8/34(Mount Sinai)由来のHAPR8エクトドメイン抗原のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図7】インフルエンザ株A/PR/8/34(Mount Sinai)由来のHAPR8−2 Hisタグ化サブ断片抗原のアミノ酸配列を示す。下線部分は、細菌の発現に関するシグナル配列として付加されており、細菌によって産生されたアミノ酸配列では現れない(配列番号3)。
【図8】インフルエンザ株A/PR/8/34(Mount Sinai)由来のHAタンパク質のHAPR8 3 Hisタグ化サブ断片抗原のアミノ酸配列を示す。下線部分は、細菌の発現に関するシグナル配列として付加されており、細菌によって産生されたアミノ酸配列では現れない(配列番号4)。
【図9】インフルエンザ株A/VN/1203/2004由来のHisタグ化核タンパク質抗原のアミノ酸配列を示す(配列番号5)。
【図10】インフルエンザ株A/VN/1203/2004由来のHAVNエクトドメイン抗原のアミノ酸配列を示す(配列番号6)。
【図11】インフルエンザ株A/VN/1203/2004由来のHAタンパク質のHAVN−2 Hisタグ化サブ断片のアミノ酸配列を示す。下線の配列は、細菌発現に関するシグナル配列として付加されており、細菌によって産生されたアミノ酸配列では現れない(配列番号7)。
【図12】インフルエンザ株A/VN/1203/2004由来のHAタンパク質のHAVN−3 Hisタグ化サブ断片抗原のアミノ酸配列を示す。下線の配列は、細菌発現に関するシグナル配列として付加されており、細菌によって産生されたアミノ酸配列では現れない(配列番号8)。[発明の詳細な説明]
【0008】
[0019]本発明は、ポリ(エステルアミド)PEAの主鎖にポリアミノカルボン酸を組み込むことによって生分解性金属キレート化ポリマーを得ることができるという発見に基づいている。このような生分解性金属キレート化ポリマーは、別個の金属親和性リガンドの結合なしで金属カチオンをキレート化する。
【0009】
[0020]本発明の生分解性金属キレート化ポリマーは、既知のPEAの溶液縮重合に用いられる二酸構築ブロックが、本発明ではEDTAタイプのポリ酸(すなわちポリアミノ酢酸)に替わっていることを除いては、既知のポリ(エステルアミド)PEAに構造的に関連している。本発明のポリマーの合成に用いられるこのタイプのポリアミノ酸から調製されるモノマーは、溶液縮合の条件下でジアミンと反応してビス(アルファ−アミノアシル)−ジオールジエステルモノマーを有するアミド結合を形成する等価の酸二無水物である。したがって、重合時にポリアミノ酢酸の2つのカルボン酸基はポリマー主鎖の形成に取り込まれ、それに伴ってイミノ酢酸基を有する。ポリマー中のポリアミノ酢酸のインライン残基の残りの未結合カルボン酸基は遊離しており、溶液中の金属カチオンにキレート化する。
【0010】
[0021]したがって、一実施形態において、本発明は、一般構造式(I)、
【化6】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり;
R1は−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化7】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)、
【化8】
の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーまたは、構造式(IV)、
【化9】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり、mは、約0.1から0.9の範囲であり;pは、約0.9から0.1の範囲であり;
R1は、−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化10】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
R2は、水素、(C1〜C12)アルキルまたは(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、CH2COO−、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R5は、(C2〜C4)アルキルからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーのうちの少なくとも1つまたはその塩を含んでなる組成物を提供する。
【0011】
[0022]本発明の金属キレート化ポリマーは生分解性であり、水溶性であり得る。本発明の金属キレート化ポリマーは、それと結合した、例えば、Na対イオンやKa対イオンなど、塩を形成する対イオンを有し得る。
【0012】
[0023]また、前述のポリマーがイミノ二コハク酸(式II)を用いて合成される場合、本発明の式(I)または(IV)の金属キレート化ポリマーは、ポリアミノ酸の脱水環化の産物としてイミド単位を含有し得る。それで本発明のポリマーは、式(V):
【化11】
で示される化学構造を含む。
【0013】
[0024]本発明の金属キレート化ポリマーは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される対イオンと任意に結合することができる。例えば、前述のポリマーは、ナトリウムイオンと結合して、前述のポリマーの、または本発明の金属キレート化ポリマーを含有する組成物の水溶性を増加させることができる。本発明のポリマーは、遊離酸の形態で、またはアルカリ金属塩などの金属塩として保存することができる。ペンダントイミノ酢酸基におけるプロトンは、NaイオンまたはKイオンと部分的に、または完全に置換して塩を形成することができる。
【0014】
[0025]本明細書で用いられる用語「アリール」とは、フェニル基または少なくとも1つの環が芳香族である約9から10の環原子を有するオルト縮合二環炭素環式基を意味する、本明細書における構造式のことである。一定の実施形態において、1つまたは複数の環原子は、1つまたは複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシと置換できる。アリールの例として、限定はしないが、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが挙げられる。本明細書に用いられる用語「アルケニレン」とは、主鎖または側鎖に少なくとも1つの不飽和結合を含有する二価の分枝状または非分枝状の炭化水素鎖を意味する、本明細書における構造式のことである。
【0015】
[0026]本明細書に用いられる用語「アルケニル」とは、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖のヒドロカルビル基のことである。
【0016】
[0027]本明細書に用いられる「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖のヒドロカルビル基のことである。
【0017】
[0028]本明細書に用いられる「アリール」とは、6から14までの範囲の炭素原子を有する芳香族基のことである。
【0018】
[0029]本発明の組成物に用いられる金属キレート化ポリマーは、重縮合体である。式(IVおよびV)中の比率「m」および「p」は、これらの重縮合ポリマーの記述において無理数として定義される。さらに、「m」および「p」は各々任意の重縮合体内での範囲をとるため、このような範囲は一対の整数で定義することができない。全てのビス−アミノアシルジオール−ジエステル(i)およびアディレクショナルなアミノ酸(例えばリシン)モノマー残基(ii)が、ポリアミノ酸モノマー残基(iii)によって、それら自体と、または互いに結合するという規則により、各ポリマー鎖は、共に結合したモノマー残基のストリングである。したがって、i−iii−i;i−iii−ii(またはii−iii−i)およびii−iii−iiの線形の組合わせのみが形成される。次いで、これらの組合わせの各々は、PEAに関して二酸モノマー残基(iii)により、それら自体に、または互いに結合する。したがって、各ポリマー鎖は、モノマー、i、iiおよびiiiの整数からなるモノマー残基の統計的であるがランダムではないストリングである。しかし、一般に、任意の実際の平均分子量(すなわち、十分な平均長)のポリマー鎖では、式(IV)におけるモノマー残基の比率「m」および「p」は、整数(有理整数)にはならない。さらに、全てのポリ分散コポリマー鎖の縮合体で、全ての鎖にわたって平均した(すなわち、平均鎖長に正規化した)モノマーi、iiおよびiiiの数は整数にはならない。次いで、これらの比率は、無理数(すなわち、有理数でない実数)のみをとり得る。本明細書で用いられている用語の無理数は、nとjが整数である形n/jではない比率から誘導される。
【0019】
[0030]本明細書に用いられる用語「アミノ酸」および「α−アミノ酸」は、アミノ基、カルボキシル基および本明細書で定義されているR3基などのペンダントR基を含有する化学的化合物を意味する。本明細書に用いられる用語「生物学的α−アミノ酸」は、合成に用いられるアミノ酸を意味し、フェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、またはそれらの混合物から選択される。本明細書に用いられる用語「アディレクショナルアミノ酸」は、R基(例えば、式(IV)内のR5)がポリマー主鎖内に挿入されるようにα-アミノ酸から得られたポリマー鎖内の化学的部分を意味する。
【0020】
[0031]本発明の金属キレート化ポリマーは、非プロトン性溶媒中、ポリアミノ酢酸誘導の二無水物とジアミン、特にビス(アルファアミノアシル)−ジオールジエステルとの溶液重縮合産物として調製することができる。ビス(アルファアミノアシル)−ジエステルモノマーおよびそれらの誘導ポリマーに特有のエステル結合は生体酵素によって加水分解され、非毒性の分解産物を形成することができる。
【0021】
[0032]一代替法において、本発明の金属キレート化ポリマーの製造に用いられるα-アミノ酸の少なくとも1つは、生物学的α−アミノ酸である。例えば、R3がCH2Phである場合、合成に用いられる生物学的α−アミノ酸はL−フェニルアラニンである。R3がCH2CH(CH3)2である代替法では、前述ポリマーは、生物学的α−アミノ酸、L−ロイシンを含有する。本明細書に記載されているモノマー内のR3を変えることによって、他の生物学的α−アミノ酸、例えば、グリシン(R3がHの場合)、アラニン(R3がCH3の場合)、バリン(R3がCH(CH3)2の場合)、イソロイシン(R3がCH(CH3)CH2CH3の場合)、フェニルアラニン(R3がCH2C6H5の場合)、またはメチオニン(R3が−(CH2)2SCH3の場合)ならびにそれらの組合わせを用いることもできる。さらに他の代替実施形態において、本発明のOEGベースのポリマー送達組成物の作製に用いられるポリマーに含有される種々のα−アミノ酸の全てが本明細書に記載される生物学的α−アミノ酸である。
【0022】
[0033]さらに別の実施形態において、本発明は、1つまたは複数のカーゴ剤を対象の体内部位へ送達するための方法を提供する。この実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1種のカーゴ分子が配位錯体内の金属イオンとの配位錯体内に保持されているポリマーナノ粒子の分散体として製剤化されている本発明の組成物を、対象の体内のインビボ部位へ注入することを含む。注入されたナノ粒子は徐々に錯体化されたカーゴ分子を放出する。
【0023】
[0034]本発明のナノ粒子の分散体は、非経口的に、例えば、皮下に、筋内に、または臓器などの体内部位へ注入することができる。生分解性ナノ粒子は、少なくとも1種の、例えば2種の異なるカーゴ分子の標的化された時限放出のために全身の循環内への担体として作用する。約10nmから約500nmの粒径範囲にある本発明のポリマー粒子は、このような目的で循環内へ直接入る。
【0024】
[0035]前述ポリマーの生分解の速度を調整し、前述ポリマーの構築ブロックの選択、金属カチオン、そして特に本発明の組成物中に含まれるポリアミノ酸に依り、選択された時間にわたるカーゴ分子の連続的な送達をもたらすために、本発明の組成物に用いられる生分解性ポリマーを設計することができる。
【0025】
[0036]PEA金属キレート化ポリマーに用いられる好適な保護基には、トシル塩(例えばTos−OH)、または当業界に知られている他のものが含まれる。一般式(III)の好適な1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールには、D−グルシトール、D−マンニトール、またはL−イジトールなどの糖アルコール類から誘導したものが含まれる。ジアンハイドロソルビトールは、本発明のOEGベースのポリマー送達組成物の作製に用いられる1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの現在好ましい二環式断片である。
【0026】
[0037]一代替法において、R3はCH2Phであり、合成に用いられるα−アミノ酸はL−フェニルアラニンである。R3がCH2−CH(CH3)2である代替法において、ポリマーはα−アミノ酸、ロイシンを含有する。R3を変えることによって、他のα−アミノ酸、例えばグリシン(R3がHの場合)、アラニン(R3がCH3の場合)、バリン(R3がCH(CH3)2の場合)、イソロイシン(R3がCH(CH3)―CH2―CH3の場合)、フェニルアラニン(R3がCH2−C6H5の場合)、リシン(R3が(CH2)4−NH2);またはメチオニン(R3が−(CH2)2SCH3の場合)を用いることもできる。
【0027】
[0038]ビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキサンジオールジエステルモノマー(Leu(6)と称される)の作製に用いられるインラインα−アミノ酸の選択(R3の選択による)およびジオールの選択、ならびに本発明のポリマーにおけるインラインポリ酢酸残基の選択は、本発明の金属キレート化ポリマーの電子特性の決定を助ける。例えば、本明細書においてLeu(6)−EDTAと称されるポリマーは、疎水性セグメント(すなわちLeu(6))と強く荷電したセグメント(すなわち、インラインEDTA)交互から構成される。その結果生じるポリマーは水溶性である。1:1のモル分率(金属:インライン−EDTA)での金属キレート化により、インラインEDTA基は中和され、メタレート化ポリマーは、疎水性セグメントと中性の極性セグメントが交互に存在するストリングになる。その結果生じるメタレート化ポリマーは、本発明の方法を用いて容易に粒子へと凝縮する(それにつれて、金属結合特性を有する予備混合されたカーゴ分子を捕捉する)。
【0028】
[0039]本発明のポリマーのビス(α−アミノ酸)−ジオールジエステルセグメントにおけるアミノ酸残基は、生分解性および生体適合性を付与することに加え、金属に結合した、または中性、極性のポリマーに異なる生物物理学的および生化学的特性を付与するために選択することができる。例えば、前述の例において、LeuをArgまたはLysに置換して、Arg(6)−またはLys(6)EDTAを作製することにより、本発明のポリマーは正に荷電したセグメントと負に荷電したセグメント交互から構成され、したがって、全体的に電荷が中性で極性である。このようなポリマーは、それら自体が強く負に荷電しているポリ(核酸)と弱く相互作用する。しかし、金属キレート化の際、負に荷電したインラインEDTAセグメントは中和され、その結果カチオン性ポリマーとなり、これは、正に荷電したArg(6)セグメントと負に荷電したポリ(核酸)とのクーロン相互作用、ならびに金属化されたインラインEDTAセグメントとポリ(核酸)との間の金属媒介イオン結合の双方により、ポリ(核酸)と強く相互作用する。したがって、この例で、上記の本発明のポリマーにおいてLeuをArgまたはLysに置換することは、負に荷電した極性のカーゴ分子のローディングに必要とされるより大きな安定性の付与に十分である。
【0029】
[0040]逆に、上記のLeu(6)−EDTAの例において、LeuをAspまたはGluに置換することにより、本発明のポリマーは、カチオン性の極性カーゴ分子のローディングに最も好適となる。上記のLeu(6)−EDTAの例において、LeuをSer、Thr、Asn、Glnおよびそれらの組合わせと置換することにより、本発明の金属化ポリマーは、糖および高グリコシル化したタンパク質などの中性、極性の、またはポリ(ヒドロキシル化)カーゴ分子のローディングに最も好適となる。
【0030】
[0041]本発明の金属化ポリマーを特定のカーゴ分子の特性に調整するためにインラインα−アミノ酸残基を選択することに加えて、異なるポリマー鎖可撓性(Tg)、それにより異なる粒子機械特性、ならびに異なるポリマー鎖溶解性を付与するために、ビス−AA(ジオール)セグメントのジオールを選択することができる。例えば、剛体の二環式ジアンヒドロヘキシトールジオール(イソソルビド、DAS)は、水に不溶性のポリマー(式Ib)を生じ;一方、より短い脂肪族ジオールまたは疎水性の1,4−アンヒドロエリトリトールは、ポリマーに親水性と水溶性を付与する(式Ic)。
【0031】
[0042]したがって、YおよびZが統計的に交換可能なX−Y−X−Zを作製することができ、ここでXはインラインキレート化セグメントであり、YとZは異なるビス−AA(ジオール)セグメントであり、ポリマーを1つまたは複数のカーゴ分子へと良好に調整することができる。
【0032】
[0043]本発明の金属キレート化ポリマーの作製に有用なポリアミノ酸の非限定的な例としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、イミノ二酢酸(IDA)などが挙げられる。このようなポリアミノ酸の酸二無水物残基の合成は、本明細書の実施例に例示されている。DTPAおよびEDTAの酸二無水物は市販品が入手できる。
【0033】
[0044]酸二無水物とジアミンとの溶液重縮合からの本発明の金属キレート化ポリマーの形成には、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの非プロトン性極性溶媒が用いられる。重縮合時に用いられるジアミンと酸二無水物の分子構造および疎水性に依り、得られるポリマーは水溶液に可溶性であるか疎水性(したがって、不溶性)である。
【0034】
[0045]ポリマー主鎖に沿っているイミノ酢酸基に依って、本発明のポリマーは種々の金属カチオンと配位錯体を形成することができる。本発明の金属結合ポリマーと金属配位錯体を形成して本発明の「金属化ポリマー」を形成するのに有用な遷移金属カチオンとしては、限定はしないが、Ca、Mg、Mn、Ni、Co、Fe(2+および3+)、およびZnのカチオンが挙げられる。非放射性かつ非画像化金属の中で生体安全性を基にして最も重要なものは、Zn、続いてNiである。放射性または画像化金属化ポリマーの調製に有用な金属イオンとしては、レニウム、イリジウム、およびイットリウムなどの放射性金属同位元素が挙げられる。一実施形態において、診断適用における画像化に現在好ましい、本発明のポリマーに結合した遷移金属カチオンはGd(III)であり、本発明の金属キレート化ポリマーの作製に用いられるポリアミノ酸はDTPAである。
【0035】
[0046]遊離のイミノ酢酸基は、本発明の組成物および方法に用いられる可撓性のポリマー鎖に沿って位置しているため、金属イオンは、カーゴ分子の表面の結合部位に対して最良の位置に配置することができる。その結果、カーゴ分子は、形成された金属親和性錯体により当該ポリマーに非共有的に結合することができる。他の実施形態では、ポリマー分子の遊離の−NH2端をアシル化して、カーゴ分子が当該ポリマーの遊離端ではなく、金属親和性錯体によってのみ結合することを確実にすることができる。
【0036】
[0047]配位錯体内で本発明の金属キレート化ポリマーのイミノ酢酸基に結合した遷移金属カチオンは、キレート化金属の少なくとも1つの自由結合価が金属カチオンに対して親和性を有する治療的カーゴ分子の結合に利用可能な、本明細書で「金属化ポリマー」と称される組成物を作り出す。下記により詳細に説明されるように、ポリマー主鎖におけるアミノ酸は、金属化ポリマー組成物およびこのような組成物のナノ粒子におけるカーゴ分子を安定化する電気力の和にさらに寄与する。
【0037】
[0048]本発明の金属化ポリマーによって錯体化することのできる好適なカーゴ分子としては、薬物;「生化学製剤」、およびHisタグ化分子などの極性生理活性剤が挙げられる。本明細書に用いられる用語「生化学製剤」は、配列番号1〜8で記載されているものなど、ワクチン抗原を含めて、天然および合成的に製造されたタンパク質、ペプチド、ポリアミノ酸、融合タンパク質、およびポリ核酸を包含する。本明細書に用いられる用語「高分子生化学製剤」には、タンパク質、ポリペプチドおよびポリ核酸など、生理活性が分子のユニークな三次元折りたたみ構造に依っている生化学製剤が含まれる。また、ワクチン抗原の生理活性は、親の病原体に生じる分子の天然の三次元折りたたみ構造がワクチン製剤において保存されることに依ることも発見されている。本明細書下記により詳述されるように、本発明の金属化ポリマーにおける電気力は、生化学製剤および高分子生化学製剤、ならびに負の極性の微小領域を含有する親油性カーゴ分子を、水溶液から捕捉し安定化することができる。
【0038】
[0049]生化学製剤カーゴ分子(例えば、タンパク質、ペプチド抗原、またはHisタグを有する融合構築体)における少なくとも1つのヒスチジン残基の存在は、ポリマーへのカーゴ生化学製剤の結合に寄与する重要な因子である。カーゴ生化学製剤のアミノ端またはカルボキシル端におけるHis(すなわちHisタグ)により、金属親和性錯体内の金属イオンに対するカーゴ分子の結合特異性が改善される。したがって、一実施形態において、結合効率を確実にするために、少なくとも1から約10の隣接His残基、例えば6つのHis残基(すなわち「ヘキサHisタグ」)が、タグとしてアミノ端およびカルボキシ端の一方または双方に組み込まれる。Hisタグが付加されると、Hisタグおよび金属キレート、例えばNiまたはZnの金属キレートは最終組成物、例えばナノ粒子内への残留が可能になる。
【0039】
[0050]結合に寄与するヒスチジン基のpK値は中性の領域にあるので、ポリマーに対するカーゴ生化学製剤分子の結合は約7のpH値で生じると考えられる。しかしながら、個々のアミノ酸の実際のpK値は、隣接するアミノ酸残基の影響に強く依存し得る。タンパク質の構造に依り、アミノ酸のpK値は理論的pK値から1pH単位まではずれる可能性があることが種々の実験によって示されている。したがって、約8のpH値を有する反応溶液で結合の改善が達成されることが多い。
【0040】
[0051]カーゴ生化学製剤分子に存在するシステインおよびトリプトファンなどの他の金属結合アミノ酸もまた金属結合に寄与する。さらに、本発明の組成物および方法において、生化学製剤は、生化学製剤カーゴ分子としての使用に好適であるとして確立された金属結合タンパク質のクラスに属する必要はない。結晶学者は構造解析過程の重要な一部として、構造研究中のタンパク質の遷移金属結合類縁体をルーチンに用いている。この方法は「同形置換法」と呼ばれ、タンパク質およびポリ核酸は全て、分子内で金属結合部位が生物学的に機能的であるかないかに関わりなく、遷移金属に少なくとも弱く結合するという発見がもたらされた(M Baborら、Proteins(2008)70:208−217頁ならびにinterscience.wiley.com/jpages/0887−3585/suppmat/における世界的ウェブに見られる補遺およびN Vallsら、J.Biol Inorg Chem(2005)10:476−482頁)。
【0041】
[0052]本発明の金属化ポリマー中、および本発明の重縮合法を用いて作製されたナノ粒子中に、このようなカーゴ分子を捕捉し保持するためには、遷移金属に対する高分子生化学製剤を含む全ての生化学製剤の弱い親和性、ならびに本発明の組成物の主鎖アミノ酸で十分であることが、本発明において発見された。本発明の金属化ポリマーによってもたらされた結合活性により、ロードされた粒子が安定化する。驚くべきことに、高分子として親油性である一定の生理活性分子でさえ、本発明の金属化ポリマーによってキレート化することができる。このような生理活性分子は、約2.0から6.0の範囲のcLogPを有することを特徴とするが、また、1)不飽和領域(芳香族基を含む)および2)O−、S−およびN−含有基における不対電子からなる負極性微小領域の存在も特徴とする。錯体化したこのような親油性カーゴ分子を有する本発明の金属化ポリマーは、ナノ粒子の重縮合のための本発明の方法を用いて、ナノ粒子として製剤化することもできる。本発明の金属化ポリマーによって錯体化するための現在好ましいこのような高分子親油性薬剤化合物の例としては、限定はしないが、パクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサン類、ならびにシロリムス、エベロリムスおよびビオリムスなどのリムス化合物が挙げられる。
【0042】
[0053]より具体的には、パクリタキセルは、約3.5のcLogPを有するので、きわめて水溶性の低い高親油性薬剤の高分子特性を有する。しかし、原子レベルでその表面を調べると、この分子は高分子レベルでは疎水性であるが、芳香族基および酸素原子によって提供される極性の微小領域があることが示されている。この疎水性分子の表面にわたって見られる極性の微小領域が、極性であると共に疎水性であるアミノ酸側鎖に沿って並んでいるその標的タンパク質(ベータ−チューブリン)の空隙へパクリタキセルが結合する原因となっている。本発明の金属化ポリマーにおける弱く結合している遊離配位部位に対するこのような化合物の結合活性(すなわち、ミクロ親和性の和)によって、本発明の金属化ポリマーのナノ粒子内の親油性カーゴ分子の安定化が導かれると考えられる。
【0043】
[0054]別の例として、現在使用されている最も疎水性の薬剤の1つであるラパマイシン(シロリムス)は、約5.5のcLogPを有するので、パクリタキセルより約100倍以上疎水性である。しかし、ラパマイシンは不飽和結合のいくつかの微小領域(パクリタキセル上の芳香族領域に類似した)または酸素原子周囲に不対電子(パクリタキセルのように)を有する。分子レベルにおけるこれらの微小電気的領域は、ラパマイシンのタンパク質生物標的、mTORに対するラパマイシン親和性の特異性を方向付ける上で重要であると考えられる。それらは、強い多価イオン結合の集中源であるため、臨床的に有用な化合物、例えば、大型の標的タンパク質におけるリガンド部位に特異的にインビボ結合する化合物の最も疎水性のものにさえ見られる微小極性領域を探索しはまり込みを行う上で、金属イオンは理想的に適している。
【0044】
[0055]本発明の金属化ポリマーにおけるローディングに好適な別の例は、市販品が入手でき、当業界で十分に認められている血清アルブミン(SA)である。SAは、金属キレート化ポリマーのコーティング、インプラントまたは粒子への包含に特に適したものにする以下の化学的および生物学的特性を有する(本明細書の実施例5に示されているように):1)固有の高親和性の金属結合部位、2)腫瘍周囲の新生血管に対する付随的な標的性;および3)高い血液適合性(SAロード粒子を静脈内送達に使用し得る可能性が生じる)。
【0045】
[0056]SAはその高い血液適合性により、本発明の組成物におけるカーゴ分子として使用される場合、いくつかの治療的使用法を有し得る:1)金属に対する解毒剤として、2)親油性(したがって、細胞貫通性)毒素(例えば、パクリタキセルなどの植物防御分子)に対する解毒剤として、3)天然の疎水性分子(脂肪酸、ステロイド類)に対する血漿輸送剤として、または4)血液の浸透圧を維持するための薬剤(血液量と他の体液との交換調節にとって重要)。
【0046】
[0057]さらに、本発明の金属化ポリマーとキレート化するのに好適なカーゴ生理活性剤の特定例としては、限定はしないが、インスリン、ヒト成長ホルモン、およびカルシトニンなどの薬剤、治療的生物学的製剤;治療的およびターゲティング抗体ならびにそれらの活性断片;凝固因子などの既知の治療的血液因子、およびサブユニットワクチンへの包含に好適なものなどのタンパク質抗原と糖タンパク質抗原双方が挙げられる。また、ペプチド(サブユニットワクチンに対する病原性エピトープを含有するものを含む)を、本発明の金属化ポリマー組成物内に組み込むことができる。エピトープのユニークな三次元折りたたみ構造が保存されているサブユニットワクチンの製剤化において、病原性エピトープを含む特定のアミノ酸配列を、本発明の金属化ポリマー組成物内へ組み込むことができる。このような抗原性アミノ酸配列の非限定的な例としては、本明細書の図5〜12において配列番号1〜8で記載されているものが挙げられる。
【0047】
[0058]カーゴをロードした金属化ポリマーの製剤は多様であり、インプラント、コーティングおよびワクチン製剤などのナノ粒子が含まれる。例えば、一実施形態において、本発明は、ポリマー粒子の形成に一般的に用いられる乳濁法の必要性を回避している溶液重縮合の技法を用いて、本発明の金属化ポリマーをナノ粒子として製剤化する方法を提供する。本明細書の実施例4および5に記載されているように、本発明の金属化ポリマーは、1つまたは複数のカーゴ分子とさらに錯体化されていてもいなくても、金属化ポリマーの重縮合における最終ステップとしてナノ粒子内に容易に製剤化される。さらに、Chuu CC、Katsarava R、米国特許第6,503,538B1明細書に開示されているように、作製に用いられるジオールが脂肪族二カルボン酸である、より疎水性のPEA類第一世代に基づいた粒子よりも水性環境でより分散性である粒子が、本発明の重縮合法によって得られる。
【0048】
[0059]手短に述べると、カーゴをロードした金属化ポリマーのナノ粒子調製のための本発明の方法は、以下のステップを含む:a)カーゴ分子と本発明のポリマーの水溶液との均一な混合物を調製するステップ;b)カーゴ分子の攪拌溶液へ水性金属塩をボーラス添加することにより、カーゴ分子/遷移金属塩溶液を調製するステップ;およびc)室温での攪拌下、b)へa)の溶液を滴下添加することによりナノ粒子を生成させるステップ。ナノ粒子は、サイズ排除濾過法、透析法、または遠心分離法および洗浄法により、例えば、当業界で知られており、本明細書の実施例4および5に記載されている技法により、反応溶液から回収される。
【0049】
[0060]あるいは、キレート化カーゴ分子を有する本発明の金属化ポリマーは、噴霧、浸漬など、当業界に知られている種々の技法を用いて、種々のタイプの粒子の外側への粘稠な液体コーティングとして適用することができる。コーティングとしての使用では、本発明に包含されるカーゴ分子は、限定はしないが、血清アルブミン、トランスフェリン、それらの抗体および活性断片などの血液因子、ならびにこのようなカーゴ分子のHisタグ化融合構築体から選択される。このようなコーティングは、当業界に知られている医学的処置に用いられる種々のタイプの固体対象物の外側の少なくとも一部に適用することもできる。このようなコーティングは、コーティングが適用される粒子または医学的装置の血液または組織への適合性を増大させるために使用することができる。
【0050】
[0061]他の実施形態において、キレート化金属カチオンなしの本発明の金属キレート化ポリマーを、金属の解毒および/または創傷ケアの目的で対象に投与することができ、治療的生理活性剤に伴って、単独で、またはアジュバントとして、インプラントまたは粒子としての投与用に製剤化される。
【0051】
[0062]さらに他の実施形態において、本発明の金属化ポリマーを、治療的薬剤および生物学的製剤の提示および/または送達のために使用されるコーティング、インプラントおよび粒子として製剤化することができる。例えば、本発明の金属化ポリマーは、表面マーカー、特異的受容体、またはタンパク質ドッキング部位を標的として、薬剤および抗体または他のリガンドなどの生物学的リガンドと共に共ロードすることができ、ここでの生物学的リガンドは、当該組成物およびキレート化薬剤を標的細胞または癌細胞の型などの細胞型へ送達するために用いられる。前述の薬剤は、天然のリガンド分子を殺し、そのドッキングを阻止するため、または標的組織または癌細胞における分子の複製を防止するために選択することができる。
【0052】
[0063]本発明のさらに他の実施形態において、本発明のポリマーの粒子は、本明細書に記載されたカーゴ常磁性または強磁性の金属、および生物学的リガンドと共ロードされる。常磁性または強磁性の金属は、生物学的リガンドが非経口的に一回注入された当該組成物を送達する標的の臓器、組織または細胞の診断用画像化のために用いられる。このような診断用組成物を用いる方法は、当業界によく知られている。
【0053】
[0064]さらに他の実施形態において、本明細書に記載されている放射性金属が本発明の金属キレート化ポリマーによりキレート化され、第二の分子、当業界に知られており本明細書に記載されているターゲティングリガンドが、組織または細胞のターゲティングに用いられる。例えば、細胞表面上の細胞表面マーカーに特異的に結合する抗体、例えばCD20に特異的に結合する抗体などのリガンドを取り込むことにより、放射性金属は癌性腫瘍内の幹細胞を標的にしてその幹細胞を殺すことができる。
【0054】
[0065]本発明の他の実施形態において、診断用画像化のためのナノ粒子を、本明細書に記載されている診断用金属イオン(例えばGd3+)および標的の細胞、臓器または組織に特異的に結合するリガンドと共ロードする。Gd画像化を実施する方法は当業界によく知られており、限定はしないが、診断用画像化のために診断用組成物が非経口的に注入され、当業界に知られており本明細書に記載されているターゲティングリガンドが組織または細胞の標的化に用いられるインビボ磁気共鳴画像化(MRI)が含まれる。
【0055】
[0066]その結果、一実施形態において、本発明の金属キレート化ポリマーは診断用金属とキレート化され、所望の標的細胞、臓器または組織の画像化に用いるためにインビボ投与することができる診断用組成物を形成し、しかもこのポリマー組成物は容易に生分解され排泄される。したがって、本発明の金属キレート化ポリマーを用いて作製された本発明の診断用組成物は、キレート化した毒性イオンの長期組織蓄積を避け、本明細書に記載された重縮合の方法を用いてナノ粒子として製剤化することができる。
【0056】
[0067]さらに他の実施形態において、本発明のポリマーをポリマー末端基により生理活性剤と結合させ、および/または末端基を用いて、ABAタイプのブロックシステムが得られる。ここでBは、式(I)または式(IV)のポリマーであり、Aブロックは、PEG(オリゴ−またはポリエチレングリコール)、多糖類、脂質類、ポリペプチドまたはポリ(核酸)などの生物学的高分子および活性剤などの化合物から選択される。双方の場合で、Bブロックポリマーの高分子鎖は、アミンまたは酸無水物の活性末端基の等量または同数を有することが好ましい(他の結合部位は、高分子鎖に沿ったペンダントカルボン酸基であろう)。
【0057】
[0068]同一の末端基の等量または同数を有するABAブロックキレート化ポリマーへの組み込みのためのBブロックの合成は、本明細書に記載された本発明のキレート化ポリマーの重縮合に用いられる1つの二官能価モノマー(すなわち、ジアミン、または活性化ポリ酸)が、重合の初めに予備計算上過剰に導入されるインバランス技法を用いて達成された。Maldi−TOF分光法によってモニターされているように、酸無水物の末端基が過剰に用いられると、大量の重合環(マクロ環)が生じるためこの過程は複雑になった。しかし、無機塩基(例えばK2CO3)の導入により反応速度は著しく低下し、得られる線形ABAブロックポリマーのMwがより良好に制御できることが判明した。
【0058】
[0069]本発明のキレート化ポリマー分子は、末端基結合を経て、場合によってリンカーを介して、キレート化ポリマー分子に結合した生理活性剤を有することができる。例えば、一実施形態において、キレート化ポリマーは、構造式VIII:
【化12】
を有するポリマー−生理活性剤末端基結合内に含まれ、
式中n、R1、R3およびR4は、上記のとおりであり、R8は、−O−、−S−、およびNR10からなる群から選択され、式中R10はHまたは(C1〜C8)アルキルであり;R9は、本明細書に記載された生理活性剤である。
【0059】
[0070]ワクチン製剤を得るために、一実施形態において、天然のコンフォメーションを維持する少なくとも1つの病原性エピトープを含んでなるアミノ酸配列を、本発明のポリマーにおけるポリアミノ酢酸のインライン残基(すなわち、本発明のキレート化ポリマーまたは金属化ポリマーにおける複数のR3における)の非結合カルボン酸基を介して本発明のキレート化ポリマーに結合させる。あるいは、ワクチン製剤において、本発明のポリマーにおけるポリアミノ酢酸のインライン残基の非結合カルボン酸基は遊離であって溶液中の金属カチオンをキレート化し、金属化ポリマーを形成する。この金属カチオンは、病原性エピトープ中の金属結合アミノ酸のさらなる結合を促進する。金属化ポリマーワクチン製剤のナノ粒子は、ポリマー粒子の形成に通常用いられる乳濁技術を必要とせずに、直接ポリマー含有溶液から容易に得られる。本発明のキレート化(例えば、金属化)ポリマー類を用いたナノ粒子としてのワクチン製剤に関する方法は、本明細書の実施例8および9に記載してある。
【0060】
[0071]以下に詳細に記載してあるさらに別の実施形態において、式(VIII)の末端基結合のR9は、1種以上の種々の免疫賦活アジュバントなどの生理活性剤である。免疫賦活アジュバントとしては、イミキモドなどの薬物;QS−21などの脂質;dsRNA類縁体ポリI:ポリCなどの核酸;またはGM−CSFなどの免疫賦活タンパク質が挙げられる。本発明のポリマーに対する末端基結合に有用な特に望ましい免疫賦活アジュバントは、タイプにより下表6に整理されたワクチン組成物として製剤化された本発明のキレート化ポリマー類の有効性を増強する。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
ワクチン製剤のナノ粒子の調製における免疫賦活アジュバントの末端基結合方法の例は、本明細書の実施例10に例示してある。
【0064】
[0072]あるいは、下記の構造式(IX)に示すように、リンカー、−X−Y−は、構造式(I)および(IV)の分子中のR8と生理活性剤R9との間に挿入することができ、式中Xは、(C1〜C18)アルキレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、置換アルキレン、(C3〜C8)シクロアルキレン、置換シクロアルキレン、O基、N基、およびS基から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する5〜6員の複素環式系、置換複素環式、(C2〜C18)アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、C6およびC10アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキニル、置換アリールアルキニル、アリールアルケニル、置換アリールアルケニル、アリールアルキニル、置換アリールアルキニルからなる群から選択され、これらの置換基は、H、F、Cl、Br、I、(C1〜C6)アルキル、−CN、−NO2、−OH、−O(C1〜C4)アルキル、−S(C1〜C6)アルキル、−S[(=O)(C1〜C6)アルキル]、−S[(O2)(C1〜C6)アルキル]、−C[(=O)(C1〜C6)アルキル]、CF3、−O[(CO)−(C1〜C6)アルキル]、−S(O2)[N(R11R12)]、−NH[(C=O)(C1〜C6)アルキル]、−NH(C=O)N(R11R12)、−N(R11R12)の群から選択され;式中R11およびR12は、独立してHまたは(C1〜C6)アルキルであり;Yは、−O−、−S−、−S−S−、−S(O)−、−S(O2)−、−NR10−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)NH−、−NR10C(=O)−、−C(=O)NR10、−NR10C(=O)NR10−、−NR10C(=O)NR10−、および−NR10C(=S)NR10−からなる群から選択される。
【化13】
【0065】
[0073]さらに別の実施形態において、本発明のキレート化ポリマー類は、ABAタイプのブロック系の設計に使用することができ、式中Bは、式(I)または式(IV)のポリマーであり、Aブロックは、PEG(オリゴまたはポリエチレングリコール)、多糖類、脂質類、ポリペプチドまたはポリ(核酸)などの生物学的高分子および生理活性剤などの化合物から選択される。本発明のABAブロックポリマー類は、本明細書の実施例10に記載されている末端基結合技法により形成される。
【0066】
[0074]本発明のキレート化または金属化ポリマー類を利用する本発明のABAブロックポリマー類の製造法、ならびにこのようなポリマー類を用いた全末端基結合法において、Bポリマーの高分子鎖は、活性の等しい末端基:アミンまたは無水物を有することが好ましい(他の結合部位としては、高分子鎖に沿ったペンダントカルボン酸基であろう)。
【0067】
[0075]上記のとおり生理活性剤の単純な末端基結合でも、本発明のABAブロックポリマー類の形成でも、等しい量または数の活性末端基を含有する本発明のキレート化ポリマーの合成が、末端基結合に利用される。これらの手法の双方で、不均衡技法に関しては、本明細書に記載している本発明のキレート化ポリマー類の重縮合に用いられる1種の二官能価モノマー(すなわち、ジアミンまたは活性化ポリ酸)が、予め算出されたた過剰量で重合開始時に導入される。無水物末端基が過剰に用いられる場合、Maldi−TOF分光法によりモニターされるように、大量のポリマー環(マクロ環)が生成するため、この方法は複雑になる。しかしながら、無機塩基(例えば、K2CO3)の導入により、反応速度が有意に減少し、生じた線形ABAブロックポリマーのMwが良好に制御できることが分かった。
【0068】
[0076]一実施形態において、ABAブロックポリマー中のAブロックとしてPEGが導入されると、金属化ポリマーによる配位錯体中に保持される極めて不溶性のカーゴ薬物の溶解性を増加させる。不溶性カーゴ薬物との金属化ポリマーにより、Aブロックとしての溶解性増強PEG分子に両側をフランクされているBブロックが形成する。本発明のこの実施形態において、驚くべきことに、本発明の他の実施形態を用いて製剤化されたナノ粒子のサイズと比較して、ABAブロックポリマーから形成されたナノ粒子のサイズは、相当に減少することが分かった。例えば、このようなABAブロックポリマーのナノ粒子は、約50nmから約100nmの範囲、例えば、約68nmで得られた。
【0069】
[0077]本発明を、さらに以下の非限定的実施例により例示する。
【0070】
[実施例1]
[0078]材料 試薬:ジエチレントリアミン五酢酸二無水物(DTPA−DA、98%)、エチレンジアミン四酢酸二無水物(EDTA−DA、98%)、エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N、N,N’,N’−四酢酸(EGTA、IDRANAL(商標)IV)は全て、Sigma−Aldrichから入手し用いた。他の二無水物、例えば、EGTA二無水物は、仏国特許第1,548,888号(Cl.C07d)明細書;Chem.Abstr.(1969)71:81380qにおいてGeigy、J.R.A.−G.により報告されているように、ピリジン中、親の四酢酸の無水酢酸脱水により調製することができる。
【0071】
[0079]イミノ二コハク酸(IDS)二ナトリウム塩(Baypure CX100 G、 77%)は、Obermeier GmbH & Co、Bad Berleburg、独国からサンプルを恵与された。アミノ酸:L−ロイシン、L−フェニルアラニン、グリシン、L−アルギニン、L−リシンおよびジオール類1,3−プロパンジオールならびに1,6−ヘキサンジオールは、Sigma−Aldrichから入手した。
【0072】
[0080]無水溶媒ジメチルホルムアミド(EMD Chemicals,Inc、ニュージャージー州)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、(Fisher Scientific)および他の溶媒アセトン、2−プロパノール、メタノール、トルエン(Spectrum Chemicals、カリフォルニア州)は、市販の供給源から購入した。
【0073】
[0081]材料の特性 モノマー類およびポリマーの化学構造は、標準的な化学的方法により特性化した。NMRスペクトルは、1HNMR分光法に関して500MHzで操作するBruker AMX−500分光計(Numega R.Labs Inc、サンディエゴ、カリフォルニア州)により記録された。内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)と共に、溶媒CDCl3またはDMSO−d6(Cambridge Isotope Laboratories,Inc.アンドーバー、マサチューセッツ州)を用いた。
【0074】
[0082]合成されたモノマー類の融点は、自動Mettler−Toledo FP62 融点装置(コロンバス、オハイオ州)上で測定した。合成されたモノマー類およびポリマー類の熱的性質は、示差走査熱量計(DSC)(Mettler−Toledo DSC 822e)上で特性化した。サンプルはアルミニウムパンに入れた。窒素流下、10℃/分の走査速度で測定を実施した。
【0075】
[0083]合成されたポリマーの数平均分子量ならびに重量平均分子量(MwおよびMn)および分子量分布(Mw/Mn)を、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 2414耐熱性指標検出器を備えたモデル515ゲル透過クロマトグラフィー(Waters Associates Inc.ミルフォード、マサチューセッツ州)により測定した。使用された溶出液は、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(1.0mL/min)中、0.1%のLiCl溶液であった。2種類のStyragel(登録商標)HR 5E DMFタイプカラム(Waters)を接続し、ポリスチレン標品で較正した。
【0076】
[0084]モノマー合成:本発明の生分解性ポリアミノカルボン酸含有ポリマー類の合成は、2つの基本ステップ:1)ビス求核性試薬:ビス(アルファアミノアシル)−ジオール−ジエステル類のジ−p−トルエンスルホン酸塩類(式VIの化合物)の合成;2)ステップ1)で得られたモノマーとテトラカルボン酸二無水物との溶液重縮合を含んだ。
【0077】
【化14】
ビス(α−アミノ酸)ジエステル類の酸塩(一般式VI)の合成
[0085]構造式(VI)のジエステル類は、公表された手法に従った手法を用いて調製した:150mLのトルエン中、アルファ−アミノ酸(0.1mol),p−トルエンスルホン酸一水和物(0.11mol)およびジオール(0.05mol)の懸濁液を攪拌し、Dean−Starkコンデンサ内で3.6mL(0.2mol)の水が発生するまで(12〜24時間)還流した。不均一な反応混合物を室温に冷却し、固形生成物をろ過し、トルエンで洗浄し、減圧乾燥した。この方法を用いジ−p−トルエンスルホン酸塩類として合成されたモノマー類は、本明細書中、以下のとおり称される:
ビス−(L−ロイシル)−1,6−ヘキサンジオールジエステル、(L−Leu(6)−2TosOH)、
ビス−(L−フェニルアラニル)−1,4:3,6−ジアンヒドロソルビトールジエステル、(L−Phe(DAS)−2TosOH)
ビス−(グリシン)−1,4−アンヒドロエリトリトールジエステル、(Gly(THF)−2TosOH)。
【0078】
[0086]収率および融点(Mp)は、公表されたデータと同一であった。(Katsaravaら、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.(1999)37:391−407頁;Z.Gomurashviliら、J.Macromol.Sci.- Pure.Appl.Chem.(2000)A37:215−227頁;ZD Gomurashviliら、米国特許出願公開第20070282011号明細書)。
【0079】
式(VII)のビス(L−アルギニル)−1,6−ヘキサンジエステルテトラトシル塩(Arg(6)−4TosOH)の合成
【化15】
[0087]式(VII)を有するモノマー類を合成するため、0.22molのp−トルエンスルホン酸一水和物を使用すること以外は、上記と同じ手法に従った。モノマーの精製については、5gの粗製モノマーを30mLの加熱2−プロパノールに溶解し、過剰のアルギニンを除去するためにろ紙を介してろ過した。冷凍庫に保存後、粘稠性モノマー層を分離した。この手法を2回反復し、最終生成物を一晩減圧乾燥した。次いで生成物を1g/mL水に再度溶解し、凍結乾燥した。mp=264−268°C(DSC、5 °C/分) を有する吸湿性白色物質を、75.9 %の収率で収集した。元素分析:C46H70N8O16S4(1119.35)。理論値:C49.36、H6.30、N10.01。実測値:C 49.72、H6.53、N9.96。
【0080】
R3=CH2−CH(CH3)2、R4= PEG200である式(VI)のビス−L−ロイシン−PEG200−ジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩の合成:
【化16】
[0088]L−ロイシン(17.46g)(0.133mole)、26.53g(0.14mole)のp−トルエンスルホン酸一水和物および11.25mL(63.4mmole)のPEG−200(Aldrich)を、190mLの乾燥トルエン中に懸濁させ、オーバーヘッドスターラーを用いて攪拌した。溶液を、約8時間加熱還流し、発生した水(4.8mL)をDean−Starkコンデンサ内に採集した。室温に放置後、黄褐色油層を分離した。次に溶媒をデカントし、生成物を50mLの2−プロパノールに溶解し、50mLのヘキサン中油として沈殿させた。収集された橙褐色の粗製油状生成物の収量は42gであった。10gの材料を、150mLの熱ベンゼン中に再度溶解し、次いで4℃で一晩油として圧潰させた。溶媒をデカントし、生成物を60℃で24時間真空オーブン内で乾燥した。
【0081】
[0089]L−ロイシン−PEG200−ジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩:500MHz 1HNMR(DMSO−d6、ppm、δ):0.89[d,12H,CH−(CH3)2]、1.60[m,4H,−CH−CH2−CH−]、1.74[m,2H,−CH−(CH3)2]、2.29[s,6H,−Ph−CH3]、3.50[s,4H,−OCO−CH2−CH2−O−]、3.53−3.64[m,m〜10H,−O−CH2−CH2−O−]、4.00[s,2H,+H3N−CH−]、4.23−4.34[m,m,4H,−OCO−CH2−]、7.14−7.49[d,d,8H,Ph]、8.33[s,6H,+H3N−]。
【0082】
[ポリマー類の合成]
[1.重縮合に関する反応条件の試験]
[0090]反応パラメータを最適化し、生成物のMwを増加させるために、EDTA−DAとジアミンモノマーL−Leu(6).2TosOHとの重縮合を試験した。
【0083】
[1.1.塩基の影響]
[0091]トリエチルアミン(TEA)を、塩基/触媒として用いた。EDTA−DAと2モル当量の塩基(L−leu(6)コモノマーの各トシレートに対して1当量)との反応を、4モル当量(各トシレートに対して1当量およびEDTAから形成され得られた遊離カルボン酸基各々に対して1当量)との反応と比較した。下表1に見られる結果は、EDTAのカルボン酸に拠る場合、塩基のモル当量を2倍増加させて使用すると、分子量の点でポリマーの大きさが2倍以上になることを示している。
【0084】
【表3】
【0085】
[1.2.ポリマーMwに対する温度の影響]
[0092]60℃で実施された元のPEA EDTA−Leu(6)反応中、反応混合物の色は、淡黄色から暗琥珀色に変化して著しくより暗色となり、また粘稠性がより低下することが認められた。変色に対する温度の影響を比較するため、ならびにより高い分子量の獲得を試みるため、反応を60℃、40℃、20℃、および0℃で実施した。これらの結果は本明細書の表2に記載してある。
【0086】
[0093]反応温度を低下させると、反応混合物の変色は有意に少なくなり、より高いMwの生成物が得られた。この結果は、無水物が低温でもジアミンコモノマーと容易に反応すること、また、連鎖伸長の終了または阻害を生じさせる予見不能な副反応がより高い温度で生じたことを示唆している。
【0087】
【表4】
【0088】
[3.1.3.反応速度論]
[0094]上記の重縮合実験から見られるように、最初の1時間以内にポリマーは最大分子量に達した。EDTA−ジアミン縮合反応に関する最適温度(下表3を参照)は、0℃〜20℃の範囲であると考えられた。
【0089】
【表5】
【0090】
[3.1.4.溶媒の選択]
[0095]重縮合反応を実施する際の適性に関して、非プロトン性極性溶媒DMSO、DMFおよびDMAcを比較した。DMSOは、EDTA−酸二無水物を容易に溶解するので第一選択の溶媒であった。しかし、重縮合反応が進行するにつれて、形成されたポリマーは、これら3種の反応溶媒のいずれにも懸濁化した。3種の反応溶媒の各々で得られたポリマーの分子量を表3に示してある。
【0091】
[0096]DMSOおよびDMFは双方ともポリマー類の変色を生じさせ、DMSOの使用は、明らかに亜硫酸臭を生じさせた。この反応をDMAc中で実施した場合、弱点は見られなかった:ポリマーおよび懸濁液は灰白色であり、臭気はなかった。表4のデータから見られるように、DMFおよびDMAc中で形成されたポリマー類のMwは同等であったが、DMSOの使用により、分子量の著しく低いポリマーが生じた。
【0092】
【表6】
【0093】
PEA EDTA−Leu(6)Polymer(式Ia)の合成:
【化17】
[0097]重縮合のため、ビス−(L−ロイシル)−1,6−ヘキサンジオールジエステルジトシレート(8.32mmol、5.734g)およびEDTA−DA(8.32mmol、2.133g)を一緒に混合し、次いで4.69mLの乾燥N,N−ジメチルアセトアミド(DMF)および4.69mLの乾燥トリエチルアミン(TEA)を窒素下で加えた。この反応液を、0oC(氷浴)で8時間攪拌し、5mol%過剰のEDTA−DA(0.42mmol、0.107g)の添加によりクエンチした。室温でさらに16時間攪拌を続け、1Lのアセトン中にポリマーを沈殿させた(粗製ポリマーMw=144,000g/mol、GPC、DMAc、PS)。上澄液をデカントし:ポリマーをアセトンですすぎ、風乾し、次いでメタノール中に再懸濁し、酸性水pH=2(HCl)中で沈殿させた。上澄液をデカントし、脱イオン(DI)水により完全に洗浄した。次に採集したポリマーを、一定重量になるまで室温で減圧乾燥した。回収した生成物(式Ia)の収率は、約60%であった。酸処理後の最終生成物は、Mw=50,700g/mol(GPC、DMAc、PS)およびガラス転移温度Tg=77°Cを有した。
【0094】
[0098]水中でのより高い溶解度を得るために、この調製ポリマーの5gを、100mLの飽和NaHCO3溶液中に溶解することによりPEA EDTA−Leu(6)のナトリウム塩に変換し、DI水に対して透析した(MWCO=3.5KDa)。凍結乾燥ポリマーを、白色綿毛様粉末として約50%の収率で回収し、1H−NMR(図1)により特性化した。元素分析:C28H46N4Na2O10(644.67);理論値:C49.03、H7.83、N8.27。実測値:C52.17、H7.19、N8.69、Mw=106,000g/mol、Mw/Mn=1.42(ゲルろ過クロマトグラフィー(SEC)10mMのPBS、pH8.4、OEG標品);Tg=146 °C。
【0095】
PEA DTPA−Phe(DAS)、(式Ib)のポリマー合成:
【化18】
[0099]溶液重縮合のため、L−Phe(DAS).2TosOH(18.80mmol、14.757 g)およびDTPA−DA(18.80mmol、6.718g)を一緒に混合し、次いで15.67mLの乾燥DMSOおよび11.0mLのトリエチルアミン(TEA)をアルゴン下で加えた。この反応液を、室温で24時間攪拌し、ポリマー生成物を2.5Lのアセトン中に沈殿させた。上澄液をデカントし、ポリマーをアセトンですすいでから風乾した。式Ibのポリマーを、再度DMSO中に懸濁し、1:1v/vのDI水で希釈し、透析用バッグに移し(MWCO=3.5K)、DI水中で透析した。透析したサンプルを凍結乾燥すると、約90%収率の白色ポリマー粉末を得た。重量平均Mw=24,500(g/mol)(GPC)、Tg=122°C.
【0096】
PEA DTPA−Gly(THF)、(式Ic)のポリマー合成:
【化19】
[0100]重縮合反応に関して、Gly(THF)−2TosOHモノマー(26.06mmol、14.664g)およびDTPA−DA(26.06mmol、9.313g)を、21.72mLの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)中に室温、アルゴン下で混合し、15.26mLのトリエチルアミン(TEA)を加えた。この重縮合反応を26時間継続し、ポリマー生成物を2.5Lのアセトン中に沈殿させた。上澄液をデカントし:ポリマーをアセトンですすぎ、風乾した。ポリマーを蒸留H2O中に再懸濁し、この溶液を透析用バッグに移し(MWCO=3.5K)、蒸留H2O中で3日間透析し(DI水)、次いで凍結乾燥すると、約50%収率の白色ポリマー物質が得られた。次に式Icの生成物を、1H−NMRおよびSECにより特性化した。Mw=14,400g/mol、Mw/Mn=1.62(SEC、10mMのPBS、pH8.4、OEG標品)。
【0097】
PEA EDTA−Arg(6)、(式Id)のポリマー合成:
【化20】
[0101]重縮合反応は、式Ia、IbおよびIcの調製の際と同様に45°Cで1時間実施した。次いでもう1時間、温度を65°Cまで上げて、反応物を完全に溶解させてから、再度45°Cでさらに6時間攪拌を続けた。アセトン中にポリマーを沈殿させ、ろ紙を介してろ過し、一晩真空オーブン中で乾燥した。ポリマーを、NaHCO3(5gのポリマー当り0.5gの重炭酸塩)と共に再度水中に溶解し、DI水中で3日間透析し、凍結乾燥機で乾燥した。式Idのポリマーの1H−NMR分析において、p−トルエンスルホン酸の対イオンは検出されなかった。El.元素分析 C28H52N10O10(688.77);理論値:C48.83、H7.61、N20.34。実測値:C44.95、H7.79、N18.76、Mw=17,800g/mol.(SEC)。
【0098】
[0102]ゲルろ過クロマトグラフィー(SEC)を用いて、このポリマーのMwを特性化した。この計測器は、30°Cの内温設定でWaters 600LCポンプ、Waters 717プラスオートサンプラー、およびWaters 410耐熱性指標検出器から構成された。50μLアリコートのサンプル溶液を、30°Cに維持されたWaters、Ultrahydrogel(登録商標)500、7.8´300mmカラムに注入し、pH4.8の100mMの酢酸アンモニウム緩衝液を用いて0.6mL/分で溶出させた。2.0mg/mLサンプルのPEA−EDTA−Arg(6)ポリマーを、pH4.8の100mMの酢酸アンモニウム緩衝液中に溶解した。ポリマーの保持時間を、ヒトチログロブリン(660kDa)、ウシグロブリン(158kDa)、卵白アルブミン(45kDa)、ミオグロビン(17.8kDa)、およびウリジン(0.48kDa)の混合物を含有するタンパク質標品(Phenomonex、Aqueous SEC1)から得られた保持時間と比較した。
【0099】
[0103]式IeのPEA EDTA Leu(PEG200)の合成:
【化21】
ビス−(L−ロイシル)−PEG200−ジエステルジトシレート(L−Leu(PEG200).2TosOH)(3.177g)およびEDTA−DA(1.0321g)を一緒に混合し、次いで2.12mLの乾燥N,N−ジメチルアセトアミド(DMF)および1.24mLの乾燥トリエチルアミン(TEA)を窒素下で加えた。この反応液を、0oC(氷浴)で6時間、さらに室温で18時間攪拌し、EDTA−DA(0.26g)の添加によりクエンチした。室温でさらに16時間攪拌を続け、1Lのアセトン中にポリマーを沈殿させた。生成物を再度アセトンですすぎ、風乾し、次いで10mLの飽和NaHCO3中に再度溶解し、20mLの脱イオン水で希釈し、DI水に対して透析した(MWCO=3.5KDa)。凍結乾燥ポリマーを、白色綿毛様粉末として2gの収量収率で回収し、1H−NMR(D2O、ppm、δ)により特性化した:0.89[d,d 12H,−CH−(CH3)2]、1.60[m,4H,−CH−CH2−CH−(CH3)2]、1.74[m,2H,−CH−(CH3)2]、2.86[s,4H,−N−CH2−CH2−N−]、3.28[s,4H,−NH−CO−CH2−N<]、3.43[s,4H,>N−CH2−COOH)、3.70−3.78[m,〜14H,−O−CH2−CH2−O−]、4.26−4.33[m,m,4H,−OCO−CH2−CH2−O−]、4.47[m,2H,−HN−CH<]、Mw=33,000g/mol、Mw/Mn=1.04;(SEC、10mMのPBS pH8.4、+20%v/vのMeOH、OEG標品)。
【0100】
[ポリマー金属結合体の調製および結合能力の決定]
[0104]水溶性ポリマーPEA−DTPA−Leu(6)とGd(III)との錯体化: 300mgのPEA−DTPA−Leu(6)−Na塩(Mw13,100g/mol、GPC、DMAc、PS)を、約8mLのDI水に溶解した。次にこの溶液に攪拌しながら、等モル量のGdCl3.6H2O水溶液を滴下により加えた。0.1MのNaOHを添加することによりpHを5.8に維持した。攪拌を1日続けた。溶液中に遊離のGdイオンがもはや検出されなくなるまでこの溶液を透析し(Barge,A.ら、Contrast Med.Mol.Imaging(2006)1:184−188頁により記載されたキシレノールオレンジ試験)、次いでサンプルを凍結乾燥した。錯体化後にポリマーの見かけの分子量値の減少が見られ(Mw=8,700g/mol)、この結果は、金属に結合した際のDTPAポリマー中の電荷の中和に起因すると考えられる。金属結合により、さらに水力学的値の変化が生じた。ICP−MS測定により決定された結合Gd(III)の含量は、1DTPAケージ当り>90%であった。
【0101】
[実施例2]
[EGTAベースのPEA合成[CO−EGTA]:ワンポット反応(スキーム1)]
【化22】
[0105]30mLの乾燥ジクロロメタン(DCM)および5g(13.1mmol)のエチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)を、250mLの三頚丸底フラスコに装入し、氷浴上で冷却し、アルゴン下でガスシールした。次に4.55mL(33mmol)の無水トリフルオロ酢酸を加え、白色固体が、透明な淡黄色EGTA二無水物の粘稠性層に完全に変換するまで(約4時間)攪拌した。次に氷浴を、メタノール/ドライアイス浴に置き換えて反応混合物を、-40°Cから-30°Cに冷却した。別個に、16.5mL(0.118mol)のトリエチルアミン(TEA)を20mLの乾燥DMFで希釈し、反応混合物に1時間に亘って滴下により加え、攪拌を約-30°Cで30分間続けた。次に、9.048g(13.1mmol)のビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキサンジオールジエステルのジアミンモノマージ−p−トルエンスルホン酸塩を加え、室温で一晩攪拌した。この粗製ポリマー溶液は、Mw=36kg/mol、Mw/Mn=1.462を有した(GPC、DMAc、PS)。反応溶液をロータリー蒸発させて揮発性DCMを除去し、20mLの水で希釈し、DI水に対して透析した。凍結乾燥後、Mw=30kg/mol(SEC、PEO)を有する5.94gのポリマーを採集した。ポリマーを、メタノール/酢酸エチルの再沈殿によりさらに精製した。本発明のポリマー構造を、D2O中の1HNMR分析により確認した。
【0102】
[実施例3]
[PEA.EDTA.Leu(6).ニッケル[パクリタキセル]ナノ粒子の製剤化]
[0106]本実験を実施して、非水溶性生理活性剤であるパクリタキセルの送達を目的として本発明の金属キレート化ポリマー類をナノ粒子として製剤化するために本発明の手法を例示した。
【0103】
[0107]水性ポリマー予製液(A)の調製:120mg量の本発明のポリマーPEA.EDTA.Leu(6)(R1=−CH2−N(CH2CO2H)(CH2)2N(CH2CO2H)−CH2−;R3=CH2CH(CH3)2、R4=(CH2)6である式IのMw=24kg/mol、Mw/Mn=1.68)を、3mLの1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に室温で溶解し、pH=7.0を有する17mLの水性25mMのN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)緩衝液中に1mL/分の速度で滴下により加えた。この緩衝溶液を室温で激しく攪拌して、6mg/mL濃度を有する均一なポリマー溶液を得た。15分間攪拌を続けてから、この溶液を、150mMのNaClを含有する2Lの25mMのHEPES緩衝液に対してpH=7.0で一晩透析した。この透析膜は、12〜14kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する混合セルロース(Spectropore(商標))であった。透析後の最終ポリマー回収率は、アミノ酸分析による推定で82%であった。このアミノ酸分析は、不活性雰囲気下、6N−塩酸中でポリマーを加水分解することにより実施した。次にこの加水分解物を、蛍光体6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートにより誘導してから、逆相HPLCにより分析した。
【0104】
[0108]パクリタキセル/NiCl2予製液(B)の調製:0.95mLのNMP溶液中、2mgのパクリタキセル(PTX、LC Labs)を、室温でボルテックス攪拌により調製した。別個のバイアル内で、5.16mgのNiCl2(Sigma)を、0.2mLの脱イオン水に溶解した。2mg/mLのPTXおよび1.29mg/mLのNiCl2(95%v/vのNMP、および5%v/vのH2O)を含有するPTX/NiCl2の予製液(B)は、0.95mLのPTX溶液に0.05mLのNiCl2水溶液をボーラス添加として添加することにより作製した。この混合物を、ボルテックス攪拌をして相(C)と称した。
【0105】
[0109]3.1 本発明のPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]ナノ粒子の調製法:0.5mLのPEA.EDTA.Leu(6)予製液(A)を、2.5mLの25mMのHEPESで希釈して、0.1%のポリマー水溶液を作製し、相(D)と称した。3mLの相(D)に、0.25mLの相(C)を室温で攪拌しながら0.25mL/分の添加速度の滴下により加えるとPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]ナノ粒子が生成した。この混合物をさらに5分間攪拌し、2Lの25mMのHEPES、pH=7.0に対して一晩透析した。この透析用膜は、12〜14kDaのMWCOを有する混合セルロース(Spectropore(商標))であった。形成されたナノ粒子の懸濁液は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)により測定すると151.1nmの単一モーダルのz平均径および平均−45.5mVのゼータ電位を有した。ナノ粒子中の最終PTXの回収率は、HPLC(ACN/H20 USP法)による決定で56.5μg/mLであり、最終ポリマーの回収率は、アミノ酸分析による決定で54%であった。
【0106】
[0110]3.2 PEA予製液を除いたPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]ナノ粒子を形成する対照方法:比較を目的として、0.5mLのPEA予製液の使用を、25mmのHEPES500マイクロリットルのみの添加に置き換えたこと以外、ナノ粒子生成物の形成に関しては、上記2.1節に記載された手法を反復した。この手法を用いると、血球計算器を用いて光学顕微鏡による測定で3μmから300μmのサイズの結晶性凝集体が形成した。
【0107】
[0111]3.3 NiCl2を除いたPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]ナノ粒子形成を合成する対照方法:ナノ粒子生成物の形成に関しては50μLのNiCl2ストック溶液の使用を、NMP中の0.95mLのPTXに添加された50μLの脱イオンH20に置き換えたこと以外上記2.1節に記載された手法を反復した。透析後の結果は、10μmから500μm範囲のサイズの結晶性凝集体形成であった。
【0108】
[実施例4]
[PEA.EDTA.Leu(6).ニッケル[PTX]−[6−ヒスチジンタグ化−緑色蛍光タンパク質]ナノ粒子の形成]
[0112]本実験を実施して、疎水性生理活性剤ならびに抗体または他の既知のタンパク質様ターゲティングリガンドなどのHisタグターゲティングタンパク質双方の同時送達用の水溶性標的化ナノ粒子として本発明のニッケルキレート化ポリマー類を製剤化するための本発明の手法を例示した。高疎水性薬物であるパクリタキセルの送達用に、Hisタグターゲティングタンパク質を本発明のキレート化ポリマー類にキレート化させる本手法にならって、ペプチドではなくてタンパク質である6Hisタグ化GFPを用いた。
【0109】
[0113]水性ポリマーの予製液(A)の調製:40mgの遊離酸の形体であるPEA EDTA−Leu(6)(Mw=25kDa、Mw/Mn=1.59、GPC、PS)を、4mLの25mMのHEPES緩衝液中、pH=11.2で超音波処理浴を用いて溶解した。完全溶解後のpHは、7.4であった。アミノ酸分析による決定では、標的化PEA濃度は10mg/mLであり、最終ポリマーの回収率は92%であった。
【0110】
[0114]PTX/NiCl2の予製液(B)の調製:0.68mgのPTXを、室温で 967μLのNMPに溶解した。別個の容器に、ボルテックス攪拌および超音波処理浴を用いて室温で、5.16mgのNiCl2(Sigma)を0.2mLの脱イオン水に溶解した。PTX/NiCl2の予製液(B)は、967μLのPTX溶液に33μLの水性NiCl2溶液をボーラス添加することにより生成した。この混合物をボルテックス攪拌し、0.68mg/mLのパクリタキセルおよび0.85mg/mLのNiCl2(97%v/vのNMP、および3%v/vのH2O)を含有する最終予製液を相(C)と称した。
【0111】
[0115]本発明のPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[6−ヒスチジンタグ化−緑色蛍光タンパク質(6His−GFP)]ナノ粒子を調製する方法:0.1mLのPEA.EDTA.Leu(6)の予製液(A)を、3.4mLの25mMのHEPESによりpH=7.0で希釈した。ボーラスとして、0.5mLのトリス緩衝生理食塩水(TBS)、pH=7.0に1mgの6His−GFPを加えた。形成された相(D)と称される均一の混合物を、室温でさらに5分間攪拌した。室温で電磁攪拌しながら0.25mL/分の添加速度で、0.25mLの相(C)の相(D)への滴下による添加によってPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[6His−GFP]のナノ粒子を生成させた。5分間攪拌を続け、この混合物を、12〜14kDaのMWCOを有する混合セルロース(Spectropore(商標))膜中、500mLの25mMのHEPES、pH=7.0に対して一晩透析した。透析後のナノ粒子の分散液は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)により測定すると86nmのz平均径および平均−37.4mVのゼータ電位を有した。ナノ粒子中の最終PTXの回収率は、HPLC(ACN/H20 USP法)により決定すると14.9μg/mLであり、最終ポリマーの回収率は、アミノ酸分析により決定すると96%であった。ナノ粒子における最終6His−GFPの回収率は、485での励起、520での発光(Fluostar Optima)のGFP蛍光により測定して49%であった。
【0112】
[実施例5]
[PEA.EDTA.Leu(6).ニッケル[PTX]−[ウシ血清アルブミン(BSA)]ナノ粒子の製剤化]
[0116]本実験を実施して、通常の血中タンパク質であるウシ血清アルブミンにより、生理活性剤であるパクリタキセルの標的化送達用のナノ粒子として本発明の金属キレート化ポリマー類を製剤化する手法を例示した。
【0113】
[0117]水性ポリマーの予製液(A)の調製:遊離酸として150mgのPEA.EDTA.Leu(6)(Mw=25kDa、Mw/Mn=1.59、GPC、PS)を、超音波処理浴を介して15mLの25mM HEPES緩衝液中にpH=11.15で溶解した。完全溶解後の溶液(A)と称される、この溶液の最終pHは7.4であった。PEA濃度は、アミノ酸分析により決定すると10mg/mLであり、最終ポリマーの回収率は83%であった。
【0114】
[0118]PEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[ウシ血清アルブミン(BSA)]のナノ粒子の調製:0.1mLのPEA.EDTA.Leu(6)の予製液(A)を、3.8mLの25mM HEPES pH=7.0で希釈し、0.1mLの25mM HEPES、pH=7.0溶液中1mgのBSA(フラクションV、Sigma)と混合した。形成された相(B)と称される均一混合物を、室温で5分間攪拌した。次いで、室温で攪拌しながら相(B)に対し、上記実施例4に記載したように調製された250マイクロリットルの相(C)を滴下による添加(0.25mL/分の添加速度で)により、PEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[BSA]のナノ粒子の分散液を生成させた。この分散液を、12〜14kDaのMWCOを有する混合セルロース(Spectropore(商標))中、0.5Lの25mM HEPES、pH=7.0に対して一晩透析した。透析後の分散液は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)により測定すると65.7nmの単一モーダルのz平均径および平均−29.2mVのゼータ電位を有した。ナノ粒子中の最終パクリタキセルの回収は、HPLC(ACN/H20 USP法)による決定で19.6μg/mLであり、最終ポリマーの回収率は、アミノ酸分析による決定で73%であった。ナノ粒子における最終BSAの回収率は、アミノ酸分析による決定で73%であった。
【0115】
[実施例6]
[PEA.EDTA.Leu(6)亜鉛[6−ヒスチジンタグ化−緑色蛍光タンパク質]のナノ粒子の製剤化]
[0119]本実験を実施して、Hisタグ化タンパク質の取込み用のナノ粒子として本発明の亜鉛キレート化ポリマー類を製剤化する手法を例示した。
【0116】
[0120]水性ポリマーの予製液(A)の調製:遊離酸として22.6mgのPEA.EDTA.Leu(6)(Mw=34kDa、Mw/Mn=1.67、GPC、PS)を、超音波処理浴中2.26mLの25mM HEPES緩衝液中にpH=7.0で溶解した。最終溶液のpHは7.10であった。PEAの最終濃度は、10mg/mLであり、予製液(A)と称した。
【0117】
[0121]ZnCl2の予製液(B)の調製:100mgのZnCl2を、50mLの25mM HEPES緩衝液中にpH7で溶解した。ZnCl2予製液の濃度は2mg/mLであった。1.06mLのZnCl2予製液(B)を、3.94mLのHEPES、pH7.0に添加して、0.423mg/mLのZnCl2の最終濃度が得られ、溶液(B)と称した。
【0118】
[0122]6.1 PEA.EDTA.Leu(6)Zn−[6His−GFP]のナノ粒子(C)の調製:7.65mLの25mM HEPES、pH=7.0中、850μLのPEA.EDTA.Leu(6)予製液(A)の希釈液を調製して、1mg/mLのポリマー濃度を得た。ボーラスとして、1mLのトリス緩衝生理食塩水(TBS)、pH=7.0中、1mgの6His−GFPを、2mLの希釈PEA予製液(A)に加え、均一な混合物を、室温で5分間攪拌した。室温で電磁攪拌しながら0.25mL/分の添加速度で1mLのZnCl2溶液(B)を滴下により加えて、PEA.EDTA.Leu(6)Zn−[6His−GFP]のナノ粒子を生成した。この混合物をさらに30分間攪拌した。分散液中に形成されたナノ粒子(6.1)は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)による測定で31nmのz平均径を有した。ナノ粒子中の最終6His−GFPの回収率は、485での励起、520での発光(Fluostar Optima)のGFP蛍光による測定で84%であった。
【0119】
[0123]6.2 PEA.EDTA.Leu(6)Zn−[6His−GFP]の非PEA対照の調製:2mLのPEA溶液(A)を除外し、2mLの25mm HEPES、pH7.0により置き換えたこと以外は、上記の製剤の調製手法(6.1)を反復した。得られた製剤を測定すると、結晶性凝集体を含有したがナノ粒子は含有しなかった。重縮合法を用いてナノ粒子を得るために、本発明の金属キレート化ポリマーが必要であることを本実験は示している。
【0120】
[0124]6.3 PEA.EDTA.Leu(6)亜鉛[6His−GFP]ナノ粒子の非ZnCl2対照の調製: 1mLのZnCl2溶液を除外し、1mLの25mM HEPES、pH7.0により置き換えたこと以外は、上記の製剤の調製手法(6.1)を反復した。得られた分散液(6.3)は、9から500ナノメートルの範囲の粒径サイズを有した。重縮合手法において金属イオンの存在が、ナノ粒子の形成を補助することを本実験は示している。
【0121】
[実施例7]
[PEA.EDTA.Leu(6).ニッケル[PTX]−[ウシ血清アルブミン(BSA)]のナノ粒子の製剤化]
[0125]水性ポリマー予製液(A)の調製:ナトリウム塩として87mgのPEA EDTA−Leu(6)(Mw=82kDa、Mw/Mn=1.23、(SEC)を、ボルテックス攪拌により8.7mLの25mM HEPES緩衝液にpH=7.0で溶解した。溶解後、サンプルを0.45μmのGHP(親水性ポリプロピレン)のディスクフィルター(Pall Life Sciences)を通してろ過した。ろ過後の最終pHは7.54であった。最終ポリマー回収率は、アミノ酸分析による推定で79.8%であった。
【0122】
[0126]PTX/NiCl2予製液(B)の調製:7.5mgのPTXを、750μLのNMPに室温で溶解した。別個の容器に、4.02mgのNiCl2(Sigma)を、室温でボルテックス攪拌および超音波処理浴により0.25mLの脱イオン水に溶解した。PTX/NiCl2の予製液(B)は、750μLのPTX溶液に250μLの水性NiCl2溶液のボーラス添加により生成した。この混合物をボルテックス攪拌し、7.5mg/mLのパクリタキセルおよび4.02mg/mLのNiCl2(75%v/vのNMP、および25%v/vのH2O)の最終予製液を相(C)と称した。
【0123】
[0127]PEA EDTA−Leu(6)Ni[PTX]−[ウシ血清アルブミン(BSA)]のナノ粒子の調製:2.0mLのPEA.EDTA.Leu(6)予製液(A)を、6mLの25mM HEPES pH=7.0で希釈し、1.0mLの25mMのHEPES溶液、pH=7.0中20mgのBSA(フラクションV、Sigma)と混合した。形成された相(D)と称される均一混合物を、室温で5分間攪拌した。室温で攪拌しながら9 mLの相(D)に、0.25mL/分の添加速度で1000μlの相(C)の滴下により添加するとPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[BSA]のナノ粒子が生成した。このナノ粒子分散液を、12〜14kDaのMWCOを有する混合セルロース(Spectropore(商標))中、0.5Lの25mM HEPES、pH=7.0に対して一晩(16時間)透析した。HEPESの透析後のサンプルを、類似の透析用チューブ中、0.5Lの0.9%NaCl(VWR)に対してさらに3時間透析した。透析後の分散液中のナノ粒子は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)による測定で118.3nmのz平均径および平均−17mVのゼータ電位を有した。粒子中の最終パクリタキセルの回収は、HPLC(ACN/H20、USP法)による決定で668μg/mLであり、最終ポリマーの回収率は、アミノ酸分析による決定で67%であった。最終BSAの回収率は、アミノ酸分析による決定で74%であった。これらの結果は下表5に要約してある。
【0124】
【表7】
【0125】
[実施例8]
[0128]PEA EDTA−Leu(6)(式Ia)などの本発明のキレート化ポリマー類は、水溶液に可溶性であり、したがって、核酸(RNAを含む)、抗体断片、タンパク質ドメイン、および全タンパク質など、有機環境では、他の場合に構造的に不安定となり得る鋭敏な生物学的分子の形成に対して良性の環境を提供する。縮合の誘導に金属を使用するこのポリマーの能力は、ナノ粒子または微小粒子中への製剤成分の捕捉を可能にすると共に粒子表面上のタンパク質表示を可能にする。とりわけこの後者の特質は、組換え技術試験用の推定上のワクチン抗原の形成に有用であり、この特質を利用して、そのようなタンパク質抗原配列に、ポリ(ヒスチジン)セグメントである「Hisタグ」を付加することができる。このようなHisタグ化タンパク質は、金属イオンを介してキレート化ポリマーへの抗原の係留を促進し、製剤がワクチンとして投与される際に免疫系に対する自然に折りたたまれた抗原部位の表示を可能にする。
【0126】
[0129]PEA EDTA−Leu(6)などの本発明のキレート化ポリマー類による製剤のためのHisタグ化ポリペプチド類は、哺乳動物の組織培養物、バキュロウィルス感染昆虫細胞、酵母および細菌などの任意の既知の発現系から生成させることができる。代表的なタンパク質精製法としては、微小流動化による細胞溶解に次ぐイオン交換クロマトグラフィーおよび固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)が挙げられる。インフルエンザなどの感染症に対するワクチンとして使用のために調製されたタンパク質は、ワクチンを受ける対象者の免疫系により、体液性免疫と細胞性免疫の双方を誘導することができるように自然に折りたたまれたタンパク質ドメインを保存する必要がある。ポリマー粒子中に1種以上のタンパク質を組み込むために、本発明のキレート化ポリマー類および方法を用いて調製されたHisタグ化タンパク質の製剤を調製することができ、次いでこの製剤を、アジュバントもしくはターゲティング部分などの他の添加物を有して、または有さずに混合し得るか、またはこれらのワクチン粒子を個々に投与することができる。
【0127】
[0130]インフルエンザウィルス血球凝集素(HA)の天然立体配座状態は、しっかりした防護性B細胞応答にとって重要であり、このウィルスタンパク質の全ての部分に対する抗体により防護を提供し得ることから、PEA EDTA−Leu(6)と、ウィルス表面に自然に曝露されているインフルエンザウィルスのHAタンパク質の部分(外部ドメイン)との金属縮合製剤は、バキュロウィルス感染SF9細胞内で産生された。pBac−HAPR8バキュロウィルスを1(MOI=1)の感染多重度で用いて、1ミリリットル当り1.5×106個の細胞密度で、500mLのSf900 II−SFM培地(Invitrogen、サンディエゴ、カリフォルニア州)中、SF細胞を感染させた。この感染細胞を、48時間から72時間増殖させ、遠心分離により採取した。細胞タンパク質を、0.1%のトリトンX−100およびプロテアーゼ阻害剤を含有するPBS緩衝液中に懸濁させることにより可溶化してから、Ni−装填キレート化セファロース(GE)を用いて固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により精製した。精製タンパク質を、25mMのトリス50容量、pH8.0の2回交換、150mMのNaClに対して透析し、2ミクロンのフィルターを通してろ過した。血球凝集素抗原は、有効性のために天然の折りたたみを保存するために必要であることから、組換え産生されたHA外部ドメインを、標準的プロトコル(すなわち、Webster,R;Cox,NおよびStohr,K、WHO Animal Influenza Manual、World Health Organization、WHO/CDS/NCS/2002.5)に従って血球凝集反応のアッセイによりシアル酸結合関数について試験した。対照として、A/プエルトリコ/8/34インフルエンザウィルスと共に、ニワトリの赤血球を血球凝集反応のアッセイに用いた。
【0128】
[0131]アミノ酸1から498(Genebankの登録番号NP_040982)プラスヘキサ−Hisタグをコードするため、インフルエンザA/プエルトリコ/8/34(NPPR8、配列番号1)由来の核タンパク質(NP)をコードするDNA配列を設計した。インフルエンザA/ベトナム/1203/2004に由来するNPの配列(NPVN、配列番号5)は、アミノ酸1から495(Genebankの登録番号AAW80720)プラスヘキサ−His−標識をコードする。精製およびポリマーのローディングを補助するために、これらのウィルスNP配列の各々をコードする遺伝子カセット中にカルボキシ末端ヘキサ−ヒスチジンを含めた。
【0129】
[0132]インフルエンザ核タンパク質(NP)の遺伝子カセットを、オリゴヌクレオチドのオーバーラッピングおよびPCRにより合成的に調製し、pET26b(Novagen)にサブクローン化した。NPPR8およびNPVN発現ベクターを、BL21−DE3へ形質変換した。この細菌を、選択的TB培地(Genessee Scientific)中で飽和状態まで増殖させてから、新鮮な氷冷培地で2倍に希釈した。200μMのIPTGにより室温でこれらの培養物中のタンパク質発現を誘導した。4時間から6時間の誘導後、細菌を遠心分離し、得られたペレットを凍結した。NPタンパク質を、IMACにより精製した。細菌性ペレットを、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS)中で解凍し、音波処理により溶解した。この細菌溶解液を、23,000×gで遠心分離し、上澄液を25mMのイミダゾールに調整してから、ニッケルを予備ロードしたキレート化セファロースカラム(GE Healthcare)上を通過させた。このロードされたカラムを、50カラム容量の氷冷洗浄用緩衝液3(50mMのイミダゾール、150mMのNaCl、0.1%のトリトンX−114、25mMのリン酸ナトリウム、pH7.5)、および20カラム容量の洗浄用緩衝液4(50mMのイミダゾール、150mMのNaCl、25mMのリン酸ナトリウム、pH7.5)で連続して洗浄した。カラム結合HAタンパク質を、PBS中500mMのイミダゾールにより溶出させた。溶出されたNP タンパク質を、100容量のPBSの2回交換に対して透析した。精製した組換えNPPR8およびNPVNを、色素産生カブトガニの血球溶解成分(LAL)アッセイ(Cambrex)によりエンドトキシン含量に関してルーチン的に試験し、さらに既知の方法(Reichelt,P.、C.Schwarz、およびM.Donzeau、「Single step protocol to purify recombinant proteins with low endotoxin contents.」Protein Expr Purif (2006)46(2):483−8頁)を用いて、タンパク質溶液が1エンドトキシン単位/mL以下を含むまで、トリトンX−114洗浄のIMACサイクルにより再度精製した。
【0130】
[0133]PEA EDTA−Leu(6)とHisタグ化精製組換えインフルエンザタンパク質との製剤は、以下のとおり作製した。クエン酸緩衝生理食塩水、pH7中、酢酸Zn溶液を、25mMのトリス、150mMのNaCl、pH8中のヘキサ−Hisタグ化HAPR8の外部ドメイン(配列番号2)および25mMのHEPES、pH8中、PEA−EDTA−Leu(6)の攪拌混合物に緩やかに滴下すると、最終濃度が1mg/mLのHisタグ化HAPR8の外部ドメイン(配列番号2)、1.5mg/mLのPEA−EDTA−Leu(6)、および.367mg/mLの酢酸Znが生成した。Hisタグ化NPPR8(配列番号1)製剤を、同じ手法を用いて作製したが、NPPR8タンパク質を、25mMのクエン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7中で導入した。このNPPR8−Zn−EDTA−Leu(6)製剤は、最終濃度が0.465mg/mLのHisタグ化NPPR8(配列番号1)、0.233mg/mLのPEA−EDTA−Leu(6)、および0.057mg/mLの酢酸Znを含有した。PEAキレート化ポリマーおよびインフルエンザ抗原の金属イオン縮合体は、投与までルーチン的に4℃で保存した。
【0131】
[0134]PEA EDTA−Leu(6)−Zn−インフルエンザタンパク質抗原の試験を、B6/C3 F1マウスへの投与により実施した。これらの動物におけるHA抗原およびNP抗原双方に対する体液性応答を、血清中に産生した抗体および細気管支−肺胞洗浄液を評価することによる定量的ELISAsにより評価した。T細胞応答は、ELISPOTにより、インターフェロンガンマを測定することによって評価した。インターフェロンガンマの産生は、HAまたは NPからのペプチドで再刺激された免疫化マウスから単離された脾細胞により評価した。図2および3は、25μgのHAPR8−3および9μgのNPPR8を含有する1用量のPEA−EDTA−Leu(6)製剤をマウスの鼻腔内に投与した実験からのデータを示している。これらのマウスを、14日目に放血させ、21日目に10LD50の感染性ウィルスにより鼻腔内で誘発させた。次の3週間、動物の罹患率および死亡率をモニターした。図2のデータでは、亜鉛およびPEA EDTA−Leu(6)で製剤化されたインフルエンザタンパク質の単一用量を投与した動物は、この製剤がポリI:Cアジュバントも含有してない限り生存しなかったことを示している。これらの生存動物においては有意な体重減少があったが(図II)、ポリI:Cアジュバントを含有する製剤を投与されたマウスは、本発明のワクチンの1回のみの投与後、ウィルス誘発で生存を保った。この生存は、腹腔内ウィルスの投与群ならびにHAPR8外部ドメインおよびPEA EDTA−Leu(6)−ZnとPoly ポリI:Cアジュバントとで製剤化されたNPPR8の製剤の投与群によってのみ、100ng/mL以上のレベルでの抗−HA IgG2a抗体を産生したことを示すELISAデータと相関している。製剤化されたNPPR8タンパク質を含有する製剤を投与された動物全てが、高レベルの抗−NP抗体を産生した。
【0132】
[実施例9]
[0135]本試験において、凝集能力を有するバキュロウィルス産生と細菌産生双方の赤血球凝集素(HA)ドメインを推定上のインフルエンザ抗原として用いる。製剤候補の評価には、上記の赤血球凝集素アッセイを、凝集阻害アッセイと関連させて用いた。試験したHAタンパク質またはタンパク質サブドメインが本発明のワクチンへ製剤化する前に標的結合活性を有したならば、Zn2+、Mn2+、またはNi2+などのカチオンによって製剤化されたHisタグ化HAもまた赤血球凝集活性を有するはずである。実施例のインフルエンザ赤血球凝集素抗原断片(配列番号2、3、4、6、7、8)または他のインフルエンザHAタンパク質由来の同様の配列断片を、作製に用いられる生物に依って、細菌のシグナル配列(配列番号3、4、7および8における下線)を有して、または有さずに発させることができる。この赤血球凝集試験をパスする精製タンパク質は良好なインフルエンザ抗原として役立つ。
【0133】
[0136]好首尾なワクチンPEA−EDTA−Leu(6)−Zn製剤の全てのタンパク質成分を細菌から精製したインフルエンザワクチンもまた試験した。下記の免疫化実験において、先の実施例で記載したワクチン候補と比較して、製剤にアジュバントとしてポリI:Cを添加し、またさらにNPPR8を含有させる。また、感染後のワクチン接種した動物の罹患を除く試みで、この試験でプライム増強療法を試験した。
【0134】
[0137]PEA−EDTA−Leu(6)(製剤Ia)および細菌発現のHisタグ化HAポリペプチド、例えばHAPR8−3(配列番号4)またはHAVN−3(配列番号8)の製剤は、各配列に細菌シグナル配列を含ませたことを除いて、実施例8に記載した通り作製した。1.1mg/mLのHisタグ化HAポリペプチド、0.55mg/mLのPEA−EDTA−Leu(6)、および0.120mg/mLの酢酸Znの最終濃度を得るのに十分な、トリス生理食塩水緩衝液pH8中、Hisタグ化HAポリペプチドとクエン酸生理食塩水緩衝液pH7中、PEA−EDTA−Leu(6)の攪拌混合物中に、クエン酸生理食塩水緩衝液pH7中、酢酸Znの溶液を徐々に滴下した。細菌発現のHisタグ化HAポリペプチド製剤と共に使用されるNPPR8(配列番号1)製剤は、実施例8に記載されているように作製したが、最終濃度は、1.1mg/mLのNPPR8(配列番号1)、0.55mg/mLのPEA EDTA−Leu(6)、および0.12mg/mLの酢酸Znであった。
【0135】
[0138]PEA EDTA−Leu(6)および細菌発現させたHisタグ化インフルエンザ抗原の粒子製剤に関する異なる投与経路の効果を試験するために、10バルブ/cマウスの一群に対し、皮下、または鼻腔内に製剤を投与した。次いで、これら2つの投与経路の有効性を比較した。
【0136】
[0139]50μlの用量が25μgのHAPR8−3および25μgのNPPR8を含有する製剤で動物を初回抗原刺激した。各々は、5μgのポリI:Cを含有するPEA EDTA−Leu(6)−Zn粒子として製剤化した。最初の用量の2週間後、各群のマウスを同一混合物の第二の用量で追加抗原投与した。3週間後、全てのマウスを、10LD50の感染性A/プエルトリコ/8/34ウィルスに鼻腔内感染させた。これらの実験の結果は、これらの粒子製剤の投与経路の重要性を示している。ZnおよびPEA EDTA−Leu(6)と共に製剤化されたHAPR8−3およびNPPR8のタンパク質を鼻腔内投与された動物では、10匹中9匹の動物が感染誘発を生き残った。対照的に、同一製剤を皮下投与された動物で生き残ったのは10匹中1匹であった。図4に示されるよう鼻腔内ワクチンを投与されたマウスは、ウィルス感染に応答した体重減少の程度に反映されるように、罹患率の減少も示した。鼻腔内にワクチン投与されたマウスは、皮下にワクチン投与されたマウスよりも、同一のワクチンと用量ではるかに良好に免疫応答したことを、これらの結果は示している。
【0137】
[実施例10]
[0140]下記のスキーム2および3に示されるように、末端基の結合には、以下の結合法が考慮された。
【0138】
[0141]末端基結合の第1の例において、本発明のPEAキレート化ポリマーを優勢なアミン末端基によって合成し、次いで、モノ活性化PEG、例えば、mPEG−SVA(LaysanBio社、アラブ、アラバマ州からのmPEG−吉草酸スクシンイミジル)に結合させた。これらの反応は、下記のスキーム2に従い、非プロトン性有機溶媒(DMSO、NMP)中で実施した。
【化23】
使用されたBポリマー中の無水酸末端基によって、アミン基またはヒドロキシ基を介して高分子または活性薬剤とさらに結合することが可能になり、下記スキーム3に示されるようなアミド結合またはエステル結合が得られる。
【化24】
【0139】
[酸二無水物末端によるPEA EDTA−Leu(6)の合成およびmPEG−NH2によるさらなる結合によるABAブロックポリマーの形成]
[0142]5.218g(7.6mmol、0.91当量)のL−Leu(6)−2TosOH、2.1326g(8.3mol、1.00当量)のEDTA−DAを、2.3mlの無水ジメチルスルホキシド(DMSO)中に懸濁し、この懸濁液をアルゴン下でガスシールした。次いで、4.64ml(33mmol)のトリエチルアミンを加え、室温で3時間、攪拌を続けた。(粗製サンプルのMwは、GPC(DMAc、PS)によって分析し、Mw=51,500g/molを得た)。次いで、2.01gのmPEG−アミン(MW5000、LaysanBio社、アラブ、アラバマ州)および4mLのDMSOを加え、50℃で一晩攪拌を続けた。ポリマーは500mLのアセトン中で沈殿した。これを100mLのDI水で再溶解させた。ポリマーを完全に溶解させるため、15mgのNaHCO3を加え、この溶液を、MWCO=12〜14KDaの透析バッグ中で、DI水に対して透析した。凍結乾燥させたポリマーを、白色綿毛状粉末として2.2gの収量で回収し、結合PEGの製剤は、1H−NMR(MeOD)により確認した。Mw=36,000g/mol、Mw/Mn=1.38;(Sec、10mMのPBS pH8.4、+20%v/vのMeOH、OEG標品)。
【0140】
[PEA EDTA−Leu(6)の結合−ラミナリンによる酸二無水物末端ポリマー]
[0143]さらなる実例で、グルカンなどの多糖アジュバントを、本発明のキレート化ポリマーに末端基結合させた。この実施例では、市販入手できる代表的なグルカンであるラミナリンを、ワクチン調製において有用な代表的な多糖アジュバントとして利用した。アジュバントの結合は、以下のスキーム4に従って達成した:
【化25】
【0141】
[0144]より具体的には、4.283g(6.2mmol、0.84当量)のL−Leu(6)−2TosOH、1.8926g(7.4mol、1.00当量)のEDTA−DAを7.95mLの無水N−メチル1−2−ピロリドン(NMP)中に懸濁し、アルゴン下でガスシールした。次いで、1.9mL(14mmol)のトリエチルアミンを加え、室温で16時間攪拌を続けた。(粗製サンプルのMwは、GPC(DMAc、PS)によって分析し、Mw=51,000g/molを得た)。別個に、1gのラミナリン(Aldrich、MW=5,000g/mol)を7.5mLのNMP中に溶解させ、2mLのポリマー反応溶液加え(約2mL)てから、さらに13.9μLのTEAを加え、この溶液を60℃でさらに16時間攪拌した。この溶液を100mLのDI水で希釈し、12〜14KDaのMWCO透析バッグに移し、DI水に対して透析した。凍結乾燥させたポリマーを、白色綿毛状粉末として、1.18gの収量で回収した。結合ポリマーの試験は、ニンヒドリン試験で陰性であった。結合ラミナリンの存在は、37%w/wロードで1H−NMR(DMSO−d6)により確認した。Mw=70,000g/mol、Mw/Mn=1.2;(SEC、10mMのPBS、pH8.4、+20%v/vのMeOH、OEG標品)。
【0142】
[0145]全ての刊行物、特許、および特許文書は、参照として個々に援用されているように、本明細書に参照として援用されている。本発明は種々の特定の、および好ましい実施形態および技法を参照として説明した。しかし、当然ながら、本発明の趣旨および範囲内にあって多くの変型および修飾をなし得る。
【0143】
[0146]本発明は上記の実施例を参照として説明したが、当然ながら、本発明の趣旨および範囲内での修飾および変型が包含される。
【0144】
[0147]したがって、本発明は以下の請求項によってのみ限定される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]ポリアミノカルボン酸は、生物の汚染除去における錯体化剤またはキレート化剤としてしばしば用いられており、最近、洗浄剤におけるリン酸塩の代替物として提案されている。これらの化合物は、種々の金属イオン、多くの場合三価のランタニドと錯体を形成することが知られている。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびDTPA(ジエチレントリアミン−五酢酸)などのポリアミノカルボン酸もまた、インビボ送達組成物に診断用部分および治療用部分をキレート化するために一般的に用いられている。
【0002】
[0002]キレート化性を有するポリマーもまた作製されている。MRI造影剤として、高分子ガドリニウム(Gd)錯体の臨床適用が報告されている。例えば、Gdキレートは、線形ポリ(アミノ酸)、多糖類、タンパク質および種々のデンドリマーなどの生物医学的ポリマーに結合している。DTPA酸無水物とジアミン類との共重合化およびGd(III)との錯体化もまた報告されている。しかしながら、デキストラン類、ポリリシンなどの典型的な生分解性ポリマーから調製されたものなど、高分子系の臨床適用は、Gd[III]錯体の排泄が遅いこと、およびその結果として毒性Gdイオンが長期に組織蓄積することにより制限されていた。したがって、当業界におけるこれらの進歩に関わらず、排泄が遅い問題を避けるために、生分解性のより大きくより良好な高分子系が求められている。
【0003】
[発明の概要]
[0003]本発明は、一般構造式(I)、
【化1】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり;
R1は−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化2】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)、
【化3】
の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーまたは、構造式(IV)、
【化4】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり、mは、約0.1から0.9の範囲であり;pは、約0.9から0.1の範囲であり;
R1は、−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化5】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
R2は、水素、(C1〜C12)アルキルまたは(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、CH2COO−、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R5は、(C2〜C4)アルキルからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーのうちの少なくとも1つまたはその塩を含んでなる組成物を提供する。
【0004】
[0004]別の実施形態において、本発明は、ポリマーの非共有結合性錯体および遷移金属イオンを含有するナノ粒子を形成するために、1)水溶液中に溶解させた式(I)または(IV)により記載された化学構造を有する少なくとも1種のポリマーと;2)Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+およびFe3+、Zn2+、Ni2+からなる群から選択される金属イオンとを一緒に接触させることによってナノ粒子を作製する方法を提供する。
【0005】
[0005]さらに別の実施形態において、本発明は、対象に本発明の組成物を投与することによって、その対象にカーゴ分子を送達する方法を提供する。
【0006】
[0006]さらに別の実施形態において、本発明は、
a)1)式(I)または(IV)の本発明のキレート化ポリマーと;
2)Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+およびFe3+、Zn2+、Ni2+およびGd3+からなる群から選択される金属イオンと;
3)非プロトン性極性溶媒と、
を、重縮合条件下、水溶液中で一緒に接触させること、
b)前述の溶液中、前述のポリマーと前述の金属カチオンとの非共有結合性錯体を含有するナノ粒子を形成すること;および
c)ゲルろ過分離により前述の溶液から前述のナノ粒子を得ること、
により、ナノ粒子を作製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ポリマー:PEA EDTA−Leu(6)(式Ia)の1H−NMRスペクトルを示す。
【図2】インフルエンザウィルスに感染後、免疫化したマウスの生存曲線のグラフを示す。黒◆=緩衝液のみで免疫化した動物;▲=ウィルス、陽性対照によって腹腔内的に免疫化した動物;*=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:Cと共に製剤化したHAPR8エクトドメインとNPPR8双方によって鼻腔内的に1回免疫化した動物;黒四角=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:Cと共に製剤化したHAPR8エクトドメインとNPPR8双方によって鼻腔内的に1回免疫化した動物。
【図3】インフルエンザウィルスに感染後、免疫化したマウスの体重変化を示すグラフを示す。〇=緩衝液のみで免疫化した動物;*=ウィルス、陽性対照によって腹腔内的に免疫化した動物;▲=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:Cと共に製剤化したHAPR8エクトドメインとNPPR8双方によって鼻腔内的に1回免疫化した動物の平均体重変化;黒四角=PEA EDTA−Leu(6)−Znと共に製剤化したHAPR8エクトドメインとNPPR8によって鼻腔内的に免疫化したマウス;◇=PEA EDTA−Leu(6)−Znと共に製剤化したHAPR8エクトドメインによって鼻腔内的に免疫化した動物。
【図4】インフルエンザウィルスに感染後、免疫化したマウスの平均体重変化パーセンテージのグラフを示す。黒四角=製剤緩衝液中、PEA EDTA−Leu(6)ポリマーによって免疫化した動物の体重変化(7日目までに全てのマウスがウィルス感染で死亡)。〇=ウィルス、陽性対照によって腹腔内的に免疫化したマウス;▲=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:C粒子と共にHAPR8−3とNPPR8を鼻腔内投与した動物の平均体重変化(1匹のマウスが8日目までに死亡、HAタンパク質に対して測定可能な抗体応答を生ぜず);△=PEA EDTA−Leu(6)−ZnおよびポリI:C粒子と共にHAPR8−3とNPPR8を皮下的に免疫化したマウス(1匹を除く全てのマウス8日目までに死亡)。
【図5】インフルエンザ株A/PR/8/34(Mount Sinai)由来のHisタグ化核タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図6】インフルエンザ株A/PR/8/34(Mount Sinai)由来のHAPR8エクトドメイン抗原のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図7】インフルエンザ株A/PR/8/34(Mount Sinai)由来のHAPR8−2 Hisタグ化サブ断片抗原のアミノ酸配列を示す。下線部分は、細菌の発現に関するシグナル配列として付加されており、細菌によって産生されたアミノ酸配列では現れない(配列番号3)。
【図8】インフルエンザ株A/PR/8/34(Mount Sinai)由来のHAタンパク質のHAPR8 3 Hisタグ化サブ断片抗原のアミノ酸配列を示す。下線部分は、細菌の発現に関するシグナル配列として付加されており、細菌によって産生されたアミノ酸配列では現れない(配列番号4)。
【図9】インフルエンザ株A/VN/1203/2004由来のHisタグ化核タンパク質抗原のアミノ酸配列を示す(配列番号5)。
【図10】インフルエンザ株A/VN/1203/2004由来のHAVNエクトドメイン抗原のアミノ酸配列を示す(配列番号6)。
【図11】インフルエンザ株A/VN/1203/2004由来のHAタンパク質のHAVN−2 Hisタグ化サブ断片のアミノ酸配列を示す。下線の配列は、細菌発現に関するシグナル配列として付加されており、細菌によって産生されたアミノ酸配列では現れない(配列番号7)。
【図12】インフルエンザ株A/VN/1203/2004由来のHAタンパク質のHAVN−3 Hisタグ化サブ断片抗原のアミノ酸配列を示す。下線の配列は、細菌発現に関するシグナル配列として付加されており、細菌によって産生されたアミノ酸配列では現れない(配列番号8)。[発明の詳細な説明]
【0008】
[0019]本発明は、ポリ(エステルアミド)PEAの主鎖にポリアミノカルボン酸を組み込むことによって生分解性金属キレート化ポリマーを得ることができるという発見に基づいている。このような生分解性金属キレート化ポリマーは、別個の金属親和性リガンドの結合なしで金属カチオンをキレート化する。
【0009】
[0020]本発明の生分解性金属キレート化ポリマーは、既知のPEAの溶液縮重合に用いられる二酸構築ブロックが、本発明ではEDTAタイプのポリ酸(すなわちポリアミノ酢酸)に替わっていることを除いては、既知のポリ(エステルアミド)PEAに構造的に関連している。本発明のポリマーの合成に用いられるこのタイプのポリアミノ酸から調製されるモノマーは、溶液縮合の条件下でジアミンと反応してビス(アルファ−アミノアシル)−ジオールジエステルモノマーを有するアミド結合を形成する等価の酸二無水物である。したがって、重合時にポリアミノ酢酸の2つのカルボン酸基はポリマー主鎖の形成に取り込まれ、それに伴ってイミノ酢酸基を有する。ポリマー中のポリアミノ酢酸のインライン残基の残りの未結合カルボン酸基は遊離しており、溶液中の金属カチオンにキレート化する。
【0010】
[0021]したがって、一実施形態において、本発明は、一般構造式(I)、
【化6】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり;
R1は−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化7】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)、
【化8】
の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーまたは、構造式(IV)、
【化9】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり、mは、約0.1から0.9の範囲であり;pは、約0.9から0.1の範囲であり;
R1は、−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化10】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
R2は、水素、(C1〜C12)アルキルまたは(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、CH2COO−、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R5は、(C2〜C4)アルキルからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーのうちの少なくとも1つまたはその塩を含んでなる組成物を提供する。
【0011】
[0022]本発明の金属キレート化ポリマーは生分解性であり、水溶性であり得る。本発明の金属キレート化ポリマーは、それと結合した、例えば、Na対イオンやKa対イオンなど、塩を形成する対イオンを有し得る。
【0012】
[0023]また、前述のポリマーがイミノ二コハク酸(式II)を用いて合成される場合、本発明の式(I)または(IV)の金属キレート化ポリマーは、ポリアミノ酸の脱水環化の産物としてイミド単位を含有し得る。それで本発明のポリマーは、式(V):
【化11】
で示される化学構造を含む。
【0013】
[0024]本発明の金属キレート化ポリマーは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される対イオンと任意に結合することができる。例えば、前述のポリマーは、ナトリウムイオンと結合して、前述のポリマーの、または本発明の金属キレート化ポリマーを含有する組成物の水溶性を増加させることができる。本発明のポリマーは、遊離酸の形態で、またはアルカリ金属塩などの金属塩として保存することができる。ペンダントイミノ酢酸基におけるプロトンは、NaイオンまたはKイオンと部分的に、または完全に置換して塩を形成することができる。
【0014】
[0025]本明細書で用いられる用語「アリール」とは、フェニル基または少なくとも1つの環が芳香族である約9から10の環原子を有するオルト縮合二環炭素環式基を意味する、本明細書における構造式のことである。一定の実施形態において、1つまたは複数の環原子は、1つまたは複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシと置換できる。アリールの例として、限定はしないが、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが挙げられる。本明細書に用いられる用語「アルケニレン」とは、主鎖または側鎖に少なくとも1つの不飽和結合を含有する二価の分枝状または非分枝状の炭化水素鎖を意味する、本明細書における構造式のことである。
【0015】
[0026]本明細書に用いられる用語「アルケニル」とは、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖のヒドロカルビル基のことである。
【0016】
[0027]本明細書に用いられる「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖のヒドロカルビル基のことである。
【0017】
[0028]本明細書に用いられる「アリール」とは、6から14までの範囲の炭素原子を有する芳香族基のことである。
【0018】
[0029]本発明の組成物に用いられる金属キレート化ポリマーは、重縮合体である。式(IVおよびV)中の比率「m」および「p」は、これらの重縮合ポリマーの記述において無理数として定義される。さらに、「m」および「p」は各々任意の重縮合体内での範囲をとるため、このような範囲は一対の整数で定義することができない。全てのビス−アミノアシルジオール−ジエステル(i)およびアディレクショナルなアミノ酸(例えばリシン)モノマー残基(ii)が、ポリアミノ酸モノマー残基(iii)によって、それら自体と、または互いに結合するという規則により、各ポリマー鎖は、共に結合したモノマー残基のストリングである。したがって、i−iii−i;i−iii−ii(またはii−iii−i)およびii−iii−iiの線形の組合わせのみが形成される。次いで、これらの組合わせの各々は、PEAに関して二酸モノマー残基(iii)により、それら自体に、または互いに結合する。したがって、各ポリマー鎖は、モノマー、i、iiおよびiiiの整数からなるモノマー残基の統計的であるがランダムではないストリングである。しかし、一般に、任意の実際の平均分子量(すなわち、十分な平均長)のポリマー鎖では、式(IV)におけるモノマー残基の比率「m」および「p」は、整数(有理整数)にはならない。さらに、全てのポリ分散コポリマー鎖の縮合体で、全ての鎖にわたって平均した(すなわち、平均鎖長に正規化した)モノマーi、iiおよびiiiの数は整数にはならない。次いで、これらの比率は、無理数(すなわち、有理数でない実数)のみをとり得る。本明細書で用いられている用語の無理数は、nとjが整数である形n/jではない比率から誘導される。
【0019】
[0030]本明細書に用いられる用語「アミノ酸」および「α−アミノ酸」は、アミノ基、カルボキシル基および本明細書で定義されているR3基などのペンダントR基を含有する化学的化合物を意味する。本明細書に用いられる用語「生物学的α−アミノ酸」は、合成に用いられるアミノ酸を意味し、フェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、またはそれらの混合物から選択される。本明細書に用いられる用語「アディレクショナルアミノ酸」は、R基(例えば、式(IV)内のR5)がポリマー主鎖内に挿入されるようにα-アミノ酸から得られたポリマー鎖内の化学的部分を意味する。
【0020】
[0031]本発明の金属キレート化ポリマーは、非プロトン性溶媒中、ポリアミノ酢酸誘導の二無水物とジアミン、特にビス(アルファアミノアシル)−ジオールジエステルとの溶液重縮合産物として調製することができる。ビス(アルファアミノアシル)−ジエステルモノマーおよびそれらの誘導ポリマーに特有のエステル結合は生体酵素によって加水分解され、非毒性の分解産物を形成することができる。
【0021】
[0032]一代替法において、本発明の金属キレート化ポリマーの製造に用いられるα-アミノ酸の少なくとも1つは、生物学的α−アミノ酸である。例えば、R3がCH2Phである場合、合成に用いられる生物学的α−アミノ酸はL−フェニルアラニンである。R3がCH2CH(CH3)2である代替法では、前述ポリマーは、生物学的α−アミノ酸、L−ロイシンを含有する。本明細書に記載されているモノマー内のR3を変えることによって、他の生物学的α−アミノ酸、例えば、グリシン(R3がHの場合)、アラニン(R3がCH3の場合)、バリン(R3がCH(CH3)2の場合)、イソロイシン(R3がCH(CH3)CH2CH3の場合)、フェニルアラニン(R3がCH2C6H5の場合)、またはメチオニン(R3が−(CH2)2SCH3の場合)ならびにそれらの組合わせを用いることもできる。さらに他の代替実施形態において、本発明のOEGベースのポリマー送達組成物の作製に用いられるポリマーに含有される種々のα−アミノ酸の全てが本明細書に記載される生物学的α−アミノ酸である。
【0022】
[0033]さらに別の実施形態において、本発明は、1つまたは複数のカーゴ剤を対象の体内部位へ送達するための方法を提供する。この実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1種のカーゴ分子が配位錯体内の金属イオンとの配位錯体内に保持されているポリマーナノ粒子の分散体として製剤化されている本発明の組成物を、対象の体内のインビボ部位へ注入することを含む。注入されたナノ粒子は徐々に錯体化されたカーゴ分子を放出する。
【0023】
[0034]本発明のナノ粒子の分散体は、非経口的に、例えば、皮下に、筋内に、または臓器などの体内部位へ注入することができる。生分解性ナノ粒子は、少なくとも1種の、例えば2種の異なるカーゴ分子の標的化された時限放出のために全身の循環内への担体として作用する。約10nmから約500nmの粒径範囲にある本発明のポリマー粒子は、このような目的で循環内へ直接入る。
【0024】
[0035]前述ポリマーの生分解の速度を調整し、前述ポリマーの構築ブロックの選択、金属カチオン、そして特に本発明の組成物中に含まれるポリアミノ酸に依り、選択された時間にわたるカーゴ分子の連続的な送達をもたらすために、本発明の組成物に用いられる生分解性ポリマーを設計することができる。
【0025】
[0036]PEA金属キレート化ポリマーに用いられる好適な保護基には、トシル塩(例えばTos−OH)、または当業界に知られている他のものが含まれる。一般式(III)の好適な1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールには、D−グルシトール、D−マンニトール、またはL−イジトールなどの糖アルコール類から誘導したものが含まれる。ジアンハイドロソルビトールは、本発明のOEGベースのポリマー送達組成物の作製に用いられる1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの現在好ましい二環式断片である。
【0026】
[0037]一代替法において、R3はCH2Phであり、合成に用いられるα−アミノ酸はL−フェニルアラニンである。R3がCH2−CH(CH3)2である代替法において、ポリマーはα−アミノ酸、ロイシンを含有する。R3を変えることによって、他のα−アミノ酸、例えばグリシン(R3がHの場合)、アラニン(R3がCH3の場合)、バリン(R3がCH(CH3)2の場合)、イソロイシン(R3がCH(CH3)―CH2―CH3の場合)、フェニルアラニン(R3がCH2−C6H5の場合)、リシン(R3が(CH2)4−NH2);またはメチオニン(R3が−(CH2)2SCH3の場合)を用いることもできる。
【0027】
[0038]ビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキサンジオールジエステルモノマー(Leu(6)と称される)の作製に用いられるインラインα−アミノ酸の選択(R3の選択による)およびジオールの選択、ならびに本発明のポリマーにおけるインラインポリ酢酸残基の選択は、本発明の金属キレート化ポリマーの電子特性の決定を助ける。例えば、本明細書においてLeu(6)−EDTAと称されるポリマーは、疎水性セグメント(すなわちLeu(6))と強く荷電したセグメント(すなわち、インラインEDTA)交互から構成される。その結果生じるポリマーは水溶性である。1:1のモル分率(金属:インライン−EDTA)での金属キレート化により、インラインEDTA基は中和され、メタレート化ポリマーは、疎水性セグメントと中性の極性セグメントが交互に存在するストリングになる。その結果生じるメタレート化ポリマーは、本発明の方法を用いて容易に粒子へと凝縮する(それにつれて、金属結合特性を有する予備混合されたカーゴ分子を捕捉する)。
【0028】
[0039]本発明のポリマーのビス(α−アミノ酸)−ジオールジエステルセグメントにおけるアミノ酸残基は、生分解性および生体適合性を付与することに加え、金属に結合した、または中性、極性のポリマーに異なる生物物理学的および生化学的特性を付与するために選択することができる。例えば、前述の例において、LeuをArgまたはLysに置換して、Arg(6)−またはLys(6)EDTAを作製することにより、本発明のポリマーは正に荷電したセグメントと負に荷電したセグメント交互から構成され、したがって、全体的に電荷が中性で極性である。このようなポリマーは、それら自体が強く負に荷電しているポリ(核酸)と弱く相互作用する。しかし、金属キレート化の際、負に荷電したインラインEDTAセグメントは中和され、その結果カチオン性ポリマーとなり、これは、正に荷電したArg(6)セグメントと負に荷電したポリ(核酸)とのクーロン相互作用、ならびに金属化されたインラインEDTAセグメントとポリ(核酸)との間の金属媒介イオン結合の双方により、ポリ(核酸)と強く相互作用する。したがって、この例で、上記の本発明のポリマーにおいてLeuをArgまたはLysに置換することは、負に荷電した極性のカーゴ分子のローディングに必要とされるより大きな安定性の付与に十分である。
【0029】
[0040]逆に、上記のLeu(6)−EDTAの例において、LeuをAspまたはGluに置換することにより、本発明のポリマーは、カチオン性の極性カーゴ分子のローディングに最も好適となる。上記のLeu(6)−EDTAの例において、LeuをSer、Thr、Asn、Glnおよびそれらの組合わせと置換することにより、本発明の金属化ポリマーは、糖および高グリコシル化したタンパク質などの中性、極性の、またはポリ(ヒドロキシル化)カーゴ分子のローディングに最も好適となる。
【0030】
[0041]本発明の金属化ポリマーを特定のカーゴ分子の特性に調整するためにインラインα−アミノ酸残基を選択することに加えて、異なるポリマー鎖可撓性(Tg)、それにより異なる粒子機械特性、ならびに異なるポリマー鎖溶解性を付与するために、ビス−AA(ジオール)セグメントのジオールを選択することができる。例えば、剛体の二環式ジアンヒドロヘキシトールジオール(イソソルビド、DAS)は、水に不溶性のポリマー(式Ib)を生じ;一方、より短い脂肪族ジオールまたは疎水性の1,4−アンヒドロエリトリトールは、ポリマーに親水性と水溶性を付与する(式Ic)。
【0031】
[0042]したがって、YおよびZが統計的に交換可能なX−Y−X−Zを作製することができ、ここでXはインラインキレート化セグメントであり、YとZは異なるビス−AA(ジオール)セグメントであり、ポリマーを1つまたは複数のカーゴ分子へと良好に調整することができる。
【0032】
[0043]本発明の金属キレート化ポリマーの作製に有用なポリアミノ酸の非限定的な例としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、イミノ二酢酸(IDA)などが挙げられる。このようなポリアミノ酸の酸二無水物残基の合成は、本明細書の実施例に例示されている。DTPAおよびEDTAの酸二無水物は市販品が入手できる。
【0033】
[0044]酸二無水物とジアミンとの溶液重縮合からの本発明の金属キレート化ポリマーの形成には、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの非プロトン性極性溶媒が用いられる。重縮合時に用いられるジアミンと酸二無水物の分子構造および疎水性に依り、得られるポリマーは水溶液に可溶性であるか疎水性(したがって、不溶性)である。
【0034】
[0045]ポリマー主鎖に沿っているイミノ酢酸基に依って、本発明のポリマーは種々の金属カチオンと配位錯体を形成することができる。本発明の金属結合ポリマーと金属配位錯体を形成して本発明の「金属化ポリマー」を形成するのに有用な遷移金属カチオンとしては、限定はしないが、Ca、Mg、Mn、Ni、Co、Fe(2+および3+)、およびZnのカチオンが挙げられる。非放射性かつ非画像化金属の中で生体安全性を基にして最も重要なものは、Zn、続いてNiである。放射性または画像化金属化ポリマーの調製に有用な金属イオンとしては、レニウム、イリジウム、およびイットリウムなどの放射性金属同位元素が挙げられる。一実施形態において、診断適用における画像化に現在好ましい、本発明のポリマーに結合した遷移金属カチオンはGd(III)であり、本発明の金属キレート化ポリマーの作製に用いられるポリアミノ酸はDTPAである。
【0035】
[0046]遊離のイミノ酢酸基は、本発明の組成物および方法に用いられる可撓性のポリマー鎖に沿って位置しているため、金属イオンは、カーゴ分子の表面の結合部位に対して最良の位置に配置することができる。その結果、カーゴ分子は、形成された金属親和性錯体により当該ポリマーに非共有的に結合することができる。他の実施形態では、ポリマー分子の遊離の−NH2端をアシル化して、カーゴ分子が当該ポリマーの遊離端ではなく、金属親和性錯体によってのみ結合することを確実にすることができる。
【0036】
[0047]配位錯体内で本発明の金属キレート化ポリマーのイミノ酢酸基に結合した遷移金属カチオンは、キレート化金属の少なくとも1つの自由結合価が金属カチオンに対して親和性を有する治療的カーゴ分子の結合に利用可能な、本明細書で「金属化ポリマー」と称される組成物を作り出す。下記により詳細に説明されるように、ポリマー主鎖におけるアミノ酸は、金属化ポリマー組成物およびこのような組成物のナノ粒子におけるカーゴ分子を安定化する電気力の和にさらに寄与する。
【0037】
[0048]本発明の金属化ポリマーによって錯体化することのできる好適なカーゴ分子としては、薬物;「生化学製剤」、およびHisタグ化分子などの極性生理活性剤が挙げられる。本明細書に用いられる用語「生化学製剤」は、配列番号1〜8で記載されているものなど、ワクチン抗原を含めて、天然および合成的に製造されたタンパク質、ペプチド、ポリアミノ酸、融合タンパク質、およびポリ核酸を包含する。本明細書に用いられる用語「高分子生化学製剤」には、タンパク質、ポリペプチドおよびポリ核酸など、生理活性が分子のユニークな三次元折りたたみ構造に依っている生化学製剤が含まれる。また、ワクチン抗原の生理活性は、親の病原体に生じる分子の天然の三次元折りたたみ構造がワクチン製剤において保存されることに依ることも発見されている。本明細書下記により詳述されるように、本発明の金属化ポリマーにおける電気力は、生化学製剤および高分子生化学製剤、ならびに負の極性の微小領域を含有する親油性カーゴ分子を、水溶液から捕捉し安定化することができる。
【0038】
[0049]生化学製剤カーゴ分子(例えば、タンパク質、ペプチド抗原、またはHisタグを有する融合構築体)における少なくとも1つのヒスチジン残基の存在は、ポリマーへのカーゴ生化学製剤の結合に寄与する重要な因子である。カーゴ生化学製剤のアミノ端またはカルボキシル端におけるHis(すなわちHisタグ)により、金属親和性錯体内の金属イオンに対するカーゴ分子の結合特異性が改善される。したがって、一実施形態において、結合効率を確実にするために、少なくとも1から約10の隣接His残基、例えば6つのHis残基(すなわち「ヘキサHisタグ」)が、タグとしてアミノ端およびカルボキシ端の一方または双方に組み込まれる。Hisタグが付加されると、Hisタグおよび金属キレート、例えばNiまたはZnの金属キレートは最終組成物、例えばナノ粒子内への残留が可能になる。
【0039】
[0050]結合に寄与するヒスチジン基のpK値は中性の領域にあるので、ポリマーに対するカーゴ生化学製剤分子の結合は約7のpH値で生じると考えられる。しかしながら、個々のアミノ酸の実際のpK値は、隣接するアミノ酸残基の影響に強く依存し得る。タンパク質の構造に依り、アミノ酸のpK値は理論的pK値から1pH単位まではずれる可能性があることが種々の実験によって示されている。したがって、約8のpH値を有する反応溶液で結合の改善が達成されることが多い。
【0040】
[0051]カーゴ生化学製剤分子に存在するシステインおよびトリプトファンなどの他の金属結合アミノ酸もまた金属結合に寄与する。さらに、本発明の組成物および方法において、生化学製剤は、生化学製剤カーゴ分子としての使用に好適であるとして確立された金属結合タンパク質のクラスに属する必要はない。結晶学者は構造解析過程の重要な一部として、構造研究中のタンパク質の遷移金属結合類縁体をルーチンに用いている。この方法は「同形置換法」と呼ばれ、タンパク質およびポリ核酸は全て、分子内で金属結合部位が生物学的に機能的であるかないかに関わりなく、遷移金属に少なくとも弱く結合するという発見がもたらされた(M Baborら、Proteins(2008)70:208−217頁ならびにinterscience.wiley.com/jpages/0887−3585/suppmat/における世界的ウェブに見られる補遺およびN Vallsら、J.Biol Inorg Chem(2005)10:476−482頁)。
【0041】
[0052]本発明の金属化ポリマー中、および本発明の重縮合法を用いて作製されたナノ粒子中に、このようなカーゴ分子を捕捉し保持するためには、遷移金属に対する高分子生化学製剤を含む全ての生化学製剤の弱い親和性、ならびに本発明の組成物の主鎖アミノ酸で十分であることが、本発明において発見された。本発明の金属化ポリマーによってもたらされた結合活性により、ロードされた粒子が安定化する。驚くべきことに、高分子として親油性である一定の生理活性分子でさえ、本発明の金属化ポリマーによってキレート化することができる。このような生理活性分子は、約2.0から6.0の範囲のcLogPを有することを特徴とするが、また、1)不飽和領域(芳香族基を含む)および2)O−、S−およびN−含有基における不対電子からなる負極性微小領域の存在も特徴とする。錯体化したこのような親油性カーゴ分子を有する本発明の金属化ポリマーは、ナノ粒子の重縮合のための本発明の方法を用いて、ナノ粒子として製剤化することもできる。本発明の金属化ポリマーによって錯体化するための現在好ましいこのような高分子親油性薬剤化合物の例としては、限定はしないが、パクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサン類、ならびにシロリムス、エベロリムスおよびビオリムスなどのリムス化合物が挙げられる。
【0042】
[0053]より具体的には、パクリタキセルは、約3.5のcLogPを有するので、きわめて水溶性の低い高親油性薬剤の高分子特性を有する。しかし、原子レベルでその表面を調べると、この分子は高分子レベルでは疎水性であるが、芳香族基および酸素原子によって提供される極性の微小領域があることが示されている。この疎水性分子の表面にわたって見られる極性の微小領域が、極性であると共に疎水性であるアミノ酸側鎖に沿って並んでいるその標的タンパク質(ベータ−チューブリン)の空隙へパクリタキセルが結合する原因となっている。本発明の金属化ポリマーにおける弱く結合している遊離配位部位に対するこのような化合物の結合活性(すなわち、ミクロ親和性の和)によって、本発明の金属化ポリマーのナノ粒子内の親油性カーゴ分子の安定化が導かれると考えられる。
【0043】
[0054]別の例として、現在使用されている最も疎水性の薬剤の1つであるラパマイシン(シロリムス)は、約5.5のcLogPを有するので、パクリタキセルより約100倍以上疎水性である。しかし、ラパマイシンは不飽和結合のいくつかの微小領域(パクリタキセル上の芳香族領域に類似した)または酸素原子周囲に不対電子(パクリタキセルのように)を有する。分子レベルにおけるこれらの微小電気的領域は、ラパマイシンのタンパク質生物標的、mTORに対するラパマイシン親和性の特異性を方向付ける上で重要であると考えられる。それらは、強い多価イオン結合の集中源であるため、臨床的に有用な化合物、例えば、大型の標的タンパク質におけるリガンド部位に特異的にインビボ結合する化合物の最も疎水性のものにさえ見られる微小極性領域を探索しはまり込みを行う上で、金属イオンは理想的に適している。
【0044】
[0055]本発明の金属化ポリマーにおけるローディングに好適な別の例は、市販品が入手でき、当業界で十分に認められている血清アルブミン(SA)である。SAは、金属キレート化ポリマーのコーティング、インプラントまたは粒子への包含に特に適したものにする以下の化学的および生物学的特性を有する(本明細書の実施例5に示されているように):1)固有の高親和性の金属結合部位、2)腫瘍周囲の新生血管に対する付随的な標的性;および3)高い血液適合性(SAロード粒子を静脈内送達に使用し得る可能性が生じる)。
【0045】
[0056]SAはその高い血液適合性により、本発明の組成物におけるカーゴ分子として使用される場合、いくつかの治療的使用法を有し得る:1)金属に対する解毒剤として、2)親油性(したがって、細胞貫通性)毒素(例えば、パクリタキセルなどの植物防御分子)に対する解毒剤として、3)天然の疎水性分子(脂肪酸、ステロイド類)に対する血漿輸送剤として、または4)血液の浸透圧を維持するための薬剤(血液量と他の体液との交換調節にとって重要)。
【0046】
[0057]さらに、本発明の金属化ポリマーとキレート化するのに好適なカーゴ生理活性剤の特定例としては、限定はしないが、インスリン、ヒト成長ホルモン、およびカルシトニンなどの薬剤、治療的生物学的製剤;治療的およびターゲティング抗体ならびにそれらの活性断片;凝固因子などの既知の治療的血液因子、およびサブユニットワクチンへの包含に好適なものなどのタンパク質抗原と糖タンパク質抗原双方が挙げられる。また、ペプチド(サブユニットワクチンに対する病原性エピトープを含有するものを含む)を、本発明の金属化ポリマー組成物内に組み込むことができる。エピトープのユニークな三次元折りたたみ構造が保存されているサブユニットワクチンの製剤化において、病原性エピトープを含む特定のアミノ酸配列を、本発明の金属化ポリマー組成物内へ組み込むことができる。このような抗原性アミノ酸配列の非限定的な例としては、本明細書の図5〜12において配列番号1〜8で記載されているものが挙げられる。
【0047】
[0058]カーゴをロードした金属化ポリマーの製剤は多様であり、インプラント、コーティングおよびワクチン製剤などのナノ粒子が含まれる。例えば、一実施形態において、本発明は、ポリマー粒子の形成に一般的に用いられる乳濁法の必要性を回避している溶液重縮合の技法を用いて、本発明の金属化ポリマーをナノ粒子として製剤化する方法を提供する。本明細書の実施例4および5に記載されているように、本発明の金属化ポリマーは、1つまたは複数のカーゴ分子とさらに錯体化されていてもいなくても、金属化ポリマーの重縮合における最終ステップとしてナノ粒子内に容易に製剤化される。さらに、Chuu CC、Katsarava R、米国特許第6,503,538B1明細書に開示されているように、作製に用いられるジオールが脂肪族二カルボン酸である、より疎水性のPEA類第一世代に基づいた粒子よりも水性環境でより分散性である粒子が、本発明の重縮合法によって得られる。
【0048】
[0059]手短に述べると、カーゴをロードした金属化ポリマーのナノ粒子調製のための本発明の方法は、以下のステップを含む:a)カーゴ分子と本発明のポリマーの水溶液との均一な混合物を調製するステップ;b)カーゴ分子の攪拌溶液へ水性金属塩をボーラス添加することにより、カーゴ分子/遷移金属塩溶液を調製するステップ;およびc)室温での攪拌下、b)へa)の溶液を滴下添加することによりナノ粒子を生成させるステップ。ナノ粒子は、サイズ排除濾過法、透析法、または遠心分離法および洗浄法により、例えば、当業界で知られており、本明細書の実施例4および5に記載されている技法により、反応溶液から回収される。
【0049】
[0060]あるいは、キレート化カーゴ分子を有する本発明の金属化ポリマーは、噴霧、浸漬など、当業界に知られている種々の技法を用いて、種々のタイプの粒子の外側への粘稠な液体コーティングとして適用することができる。コーティングとしての使用では、本発明に包含されるカーゴ分子は、限定はしないが、血清アルブミン、トランスフェリン、それらの抗体および活性断片などの血液因子、ならびにこのようなカーゴ分子のHisタグ化融合構築体から選択される。このようなコーティングは、当業界に知られている医学的処置に用いられる種々のタイプの固体対象物の外側の少なくとも一部に適用することもできる。このようなコーティングは、コーティングが適用される粒子または医学的装置の血液または組織への適合性を増大させるために使用することができる。
【0050】
[0061]他の実施形態において、キレート化金属カチオンなしの本発明の金属キレート化ポリマーを、金属の解毒および/または創傷ケアの目的で対象に投与することができ、治療的生理活性剤に伴って、単独で、またはアジュバントとして、インプラントまたは粒子としての投与用に製剤化される。
【0051】
[0062]さらに他の実施形態において、本発明の金属化ポリマーを、治療的薬剤および生物学的製剤の提示および/または送達のために使用されるコーティング、インプラントおよび粒子として製剤化することができる。例えば、本発明の金属化ポリマーは、表面マーカー、特異的受容体、またはタンパク質ドッキング部位を標的として、薬剤および抗体または他のリガンドなどの生物学的リガンドと共に共ロードすることができ、ここでの生物学的リガンドは、当該組成物およびキレート化薬剤を標的細胞または癌細胞の型などの細胞型へ送達するために用いられる。前述の薬剤は、天然のリガンド分子を殺し、そのドッキングを阻止するため、または標的組織または癌細胞における分子の複製を防止するために選択することができる。
【0052】
[0063]本発明のさらに他の実施形態において、本発明のポリマーの粒子は、本明細書に記載されたカーゴ常磁性または強磁性の金属、および生物学的リガンドと共ロードされる。常磁性または強磁性の金属は、生物学的リガンドが非経口的に一回注入された当該組成物を送達する標的の臓器、組織または細胞の診断用画像化のために用いられる。このような診断用組成物を用いる方法は、当業界によく知られている。
【0053】
[0064]さらに他の実施形態において、本明細書に記載されている放射性金属が本発明の金属キレート化ポリマーによりキレート化され、第二の分子、当業界に知られており本明細書に記載されているターゲティングリガンドが、組織または細胞のターゲティングに用いられる。例えば、細胞表面上の細胞表面マーカーに特異的に結合する抗体、例えばCD20に特異的に結合する抗体などのリガンドを取り込むことにより、放射性金属は癌性腫瘍内の幹細胞を標的にしてその幹細胞を殺すことができる。
【0054】
[0065]本発明の他の実施形態において、診断用画像化のためのナノ粒子を、本明細書に記載されている診断用金属イオン(例えばGd3+)および標的の細胞、臓器または組織に特異的に結合するリガンドと共ロードする。Gd画像化を実施する方法は当業界によく知られており、限定はしないが、診断用画像化のために診断用組成物が非経口的に注入され、当業界に知られており本明細書に記載されているターゲティングリガンドが組織または細胞の標的化に用いられるインビボ磁気共鳴画像化(MRI)が含まれる。
【0055】
[0066]その結果、一実施形態において、本発明の金属キレート化ポリマーは診断用金属とキレート化され、所望の標的細胞、臓器または組織の画像化に用いるためにインビボ投与することができる診断用組成物を形成し、しかもこのポリマー組成物は容易に生分解され排泄される。したがって、本発明の金属キレート化ポリマーを用いて作製された本発明の診断用組成物は、キレート化した毒性イオンの長期組織蓄積を避け、本明細書に記載された重縮合の方法を用いてナノ粒子として製剤化することができる。
【0056】
[0067]さらに他の実施形態において、本発明のポリマーをポリマー末端基により生理活性剤と結合させ、および/または末端基を用いて、ABAタイプのブロックシステムが得られる。ここでBは、式(I)または式(IV)のポリマーであり、Aブロックは、PEG(オリゴ−またはポリエチレングリコール)、多糖類、脂質類、ポリペプチドまたはポリ(核酸)などの生物学的高分子および活性剤などの化合物から選択される。双方の場合で、Bブロックポリマーの高分子鎖は、アミンまたは酸無水物の活性末端基の等量または同数を有することが好ましい(他の結合部位は、高分子鎖に沿ったペンダントカルボン酸基であろう)。
【0057】
[0068]同一の末端基の等量または同数を有するABAブロックキレート化ポリマーへの組み込みのためのBブロックの合成は、本明細書に記載された本発明のキレート化ポリマーの重縮合に用いられる1つの二官能価モノマー(すなわち、ジアミン、または活性化ポリ酸)が、重合の初めに予備計算上過剰に導入されるインバランス技法を用いて達成された。Maldi−TOF分光法によってモニターされているように、酸無水物の末端基が過剰に用いられると、大量の重合環(マクロ環)が生じるためこの過程は複雑になった。しかし、無機塩基(例えばK2CO3)の導入により反応速度は著しく低下し、得られる線形ABAブロックポリマーのMwがより良好に制御できることが判明した。
【0058】
[0069]本発明のキレート化ポリマー分子は、末端基結合を経て、場合によってリンカーを介して、キレート化ポリマー分子に結合した生理活性剤を有することができる。例えば、一実施形態において、キレート化ポリマーは、構造式VIII:
【化12】
を有するポリマー−生理活性剤末端基結合内に含まれ、
式中n、R1、R3およびR4は、上記のとおりであり、R8は、−O−、−S−、およびNR10からなる群から選択され、式中R10はHまたは(C1〜C8)アルキルであり;R9は、本明細書に記載された生理活性剤である。
【0059】
[0070]ワクチン製剤を得るために、一実施形態において、天然のコンフォメーションを維持する少なくとも1つの病原性エピトープを含んでなるアミノ酸配列を、本発明のポリマーにおけるポリアミノ酢酸のインライン残基(すなわち、本発明のキレート化ポリマーまたは金属化ポリマーにおける複数のR3における)の非結合カルボン酸基を介して本発明のキレート化ポリマーに結合させる。あるいは、ワクチン製剤において、本発明のポリマーにおけるポリアミノ酢酸のインライン残基の非結合カルボン酸基は遊離であって溶液中の金属カチオンをキレート化し、金属化ポリマーを形成する。この金属カチオンは、病原性エピトープ中の金属結合アミノ酸のさらなる結合を促進する。金属化ポリマーワクチン製剤のナノ粒子は、ポリマー粒子の形成に通常用いられる乳濁技術を必要とせずに、直接ポリマー含有溶液から容易に得られる。本発明のキレート化(例えば、金属化)ポリマー類を用いたナノ粒子としてのワクチン製剤に関する方法は、本明細書の実施例8および9に記載してある。
【0060】
[0071]以下に詳細に記載してあるさらに別の実施形態において、式(VIII)の末端基結合のR9は、1種以上の種々の免疫賦活アジュバントなどの生理活性剤である。免疫賦活アジュバントとしては、イミキモドなどの薬物;QS−21などの脂質;dsRNA類縁体ポリI:ポリCなどの核酸;またはGM−CSFなどの免疫賦活タンパク質が挙げられる。本発明のポリマーに対する末端基結合に有用な特に望ましい免疫賦活アジュバントは、タイプにより下表6に整理されたワクチン組成物として製剤化された本発明のキレート化ポリマー類の有効性を増強する。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
ワクチン製剤のナノ粒子の調製における免疫賦活アジュバントの末端基結合方法の例は、本明細書の実施例10に例示してある。
【0064】
[0072]あるいは、下記の構造式(IX)に示すように、リンカー、−X−Y−は、構造式(I)および(IV)の分子中のR8と生理活性剤R9との間に挿入することができ、式中Xは、(C1〜C18)アルキレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、置換アルキレン、(C3〜C8)シクロアルキレン、置換シクロアルキレン、O基、N基、およびS基から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する5〜6員の複素環式系、置換複素環式、(C2〜C18)アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、C6およびC10アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アリールアルキニル、置換アリールアルキニル、アリールアルケニル、置換アリールアルケニル、アリールアルキニル、置換アリールアルキニルからなる群から選択され、これらの置換基は、H、F、Cl、Br、I、(C1〜C6)アルキル、−CN、−NO2、−OH、−O(C1〜C4)アルキル、−S(C1〜C6)アルキル、−S[(=O)(C1〜C6)アルキル]、−S[(O2)(C1〜C6)アルキル]、−C[(=O)(C1〜C6)アルキル]、CF3、−O[(CO)−(C1〜C6)アルキル]、−S(O2)[N(R11R12)]、−NH[(C=O)(C1〜C6)アルキル]、−NH(C=O)N(R11R12)、−N(R11R12)の群から選択され;式中R11およびR12は、独立してHまたは(C1〜C6)アルキルであり;Yは、−O−、−S−、−S−S−、−S(O)−、−S(O2)−、−NR10−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)NH−、−NR10C(=O)−、−C(=O)NR10、−NR10C(=O)NR10−、−NR10C(=O)NR10−、および−NR10C(=S)NR10−からなる群から選択される。
【化13】
【0065】
[0073]さらに別の実施形態において、本発明のキレート化ポリマー類は、ABAタイプのブロック系の設計に使用することができ、式中Bは、式(I)または式(IV)のポリマーであり、Aブロックは、PEG(オリゴまたはポリエチレングリコール)、多糖類、脂質類、ポリペプチドまたはポリ(核酸)などの生物学的高分子および生理活性剤などの化合物から選択される。本発明のABAブロックポリマー類は、本明細書の実施例10に記載されている末端基結合技法により形成される。
【0066】
[0074]本発明のキレート化または金属化ポリマー類を利用する本発明のABAブロックポリマー類の製造法、ならびにこのようなポリマー類を用いた全末端基結合法において、Bポリマーの高分子鎖は、活性の等しい末端基:アミンまたは無水物を有することが好ましい(他の結合部位としては、高分子鎖に沿ったペンダントカルボン酸基であろう)。
【0067】
[0075]上記のとおり生理活性剤の単純な末端基結合でも、本発明のABAブロックポリマー類の形成でも、等しい量または数の活性末端基を含有する本発明のキレート化ポリマーの合成が、末端基結合に利用される。これらの手法の双方で、不均衡技法に関しては、本明細書に記載している本発明のキレート化ポリマー類の重縮合に用いられる1種の二官能価モノマー(すなわち、ジアミンまたは活性化ポリ酸)が、予め算出されたた過剰量で重合開始時に導入される。無水物末端基が過剰に用いられる場合、Maldi−TOF分光法によりモニターされるように、大量のポリマー環(マクロ環)が生成するため、この方法は複雑になる。しかしながら、無機塩基(例えば、K2CO3)の導入により、反応速度が有意に減少し、生じた線形ABAブロックポリマーのMwが良好に制御できることが分かった。
【0068】
[0076]一実施形態において、ABAブロックポリマー中のAブロックとしてPEGが導入されると、金属化ポリマーによる配位錯体中に保持される極めて不溶性のカーゴ薬物の溶解性を増加させる。不溶性カーゴ薬物との金属化ポリマーにより、Aブロックとしての溶解性増強PEG分子に両側をフランクされているBブロックが形成する。本発明のこの実施形態において、驚くべきことに、本発明の他の実施形態を用いて製剤化されたナノ粒子のサイズと比較して、ABAブロックポリマーから形成されたナノ粒子のサイズは、相当に減少することが分かった。例えば、このようなABAブロックポリマーのナノ粒子は、約50nmから約100nmの範囲、例えば、約68nmで得られた。
【0069】
[0077]本発明を、さらに以下の非限定的実施例により例示する。
【0070】
[実施例1]
[0078]材料 試薬:ジエチレントリアミン五酢酸二無水物(DTPA−DA、98%)、エチレンジアミン四酢酸二無水物(EDTA−DA、98%)、エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N、N,N’,N’−四酢酸(EGTA、IDRANAL(商標)IV)は全て、Sigma−Aldrichから入手し用いた。他の二無水物、例えば、EGTA二無水物は、仏国特許第1,548,888号(Cl.C07d)明細書;Chem.Abstr.(1969)71:81380qにおいてGeigy、J.R.A.−G.により報告されているように、ピリジン中、親の四酢酸の無水酢酸脱水により調製することができる。
【0071】
[0079]イミノ二コハク酸(IDS)二ナトリウム塩(Baypure CX100 G、 77%)は、Obermeier GmbH & Co、Bad Berleburg、独国からサンプルを恵与された。アミノ酸:L−ロイシン、L−フェニルアラニン、グリシン、L−アルギニン、L−リシンおよびジオール類1,3−プロパンジオールならびに1,6−ヘキサンジオールは、Sigma−Aldrichから入手した。
【0072】
[0080]無水溶媒ジメチルホルムアミド(EMD Chemicals,Inc、ニュージャージー州)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、(Fisher Scientific)および他の溶媒アセトン、2−プロパノール、メタノール、トルエン(Spectrum Chemicals、カリフォルニア州)は、市販の供給源から購入した。
【0073】
[0081]材料の特性 モノマー類およびポリマーの化学構造は、標準的な化学的方法により特性化した。NMRスペクトルは、1HNMR分光法に関して500MHzで操作するBruker AMX−500分光計(Numega R.Labs Inc、サンディエゴ、カリフォルニア州)により記録された。内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)と共に、溶媒CDCl3またはDMSO−d6(Cambridge Isotope Laboratories,Inc.アンドーバー、マサチューセッツ州)を用いた。
【0074】
[0082]合成されたモノマー類の融点は、自動Mettler−Toledo FP62 融点装置(コロンバス、オハイオ州)上で測定した。合成されたモノマー類およびポリマー類の熱的性質は、示差走査熱量計(DSC)(Mettler−Toledo DSC 822e)上で特性化した。サンプルはアルミニウムパンに入れた。窒素流下、10℃/分の走査速度で測定を実施した。
【0075】
[0083]合成されたポリマーの数平均分子量ならびに重量平均分子量(MwおよびMn)および分子量分布(Mw/Mn)を、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 2414耐熱性指標検出器を備えたモデル515ゲル透過クロマトグラフィー(Waters Associates Inc.ミルフォード、マサチューセッツ州)により測定した。使用された溶出液は、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(1.0mL/min)中、0.1%のLiCl溶液であった。2種類のStyragel(登録商標)HR 5E DMFタイプカラム(Waters)を接続し、ポリスチレン標品で較正した。
【0076】
[0084]モノマー合成:本発明の生分解性ポリアミノカルボン酸含有ポリマー類の合成は、2つの基本ステップ:1)ビス求核性試薬:ビス(アルファアミノアシル)−ジオール−ジエステル類のジ−p−トルエンスルホン酸塩類(式VIの化合物)の合成;2)ステップ1)で得られたモノマーとテトラカルボン酸二無水物との溶液重縮合を含んだ。
【0077】
【化14】
ビス(α−アミノ酸)ジエステル類の酸塩(一般式VI)の合成
[0085]構造式(VI)のジエステル類は、公表された手法に従った手法を用いて調製した:150mLのトルエン中、アルファ−アミノ酸(0.1mol),p−トルエンスルホン酸一水和物(0.11mol)およびジオール(0.05mol)の懸濁液を攪拌し、Dean−Starkコンデンサ内で3.6mL(0.2mol)の水が発生するまで(12〜24時間)還流した。不均一な反応混合物を室温に冷却し、固形生成物をろ過し、トルエンで洗浄し、減圧乾燥した。この方法を用いジ−p−トルエンスルホン酸塩類として合成されたモノマー類は、本明細書中、以下のとおり称される:
ビス−(L−ロイシル)−1,6−ヘキサンジオールジエステル、(L−Leu(6)−2TosOH)、
ビス−(L−フェニルアラニル)−1,4:3,6−ジアンヒドロソルビトールジエステル、(L−Phe(DAS)−2TosOH)
ビス−(グリシン)−1,4−アンヒドロエリトリトールジエステル、(Gly(THF)−2TosOH)。
【0078】
[0086]収率および融点(Mp)は、公表されたデータと同一であった。(Katsaravaら、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.(1999)37:391−407頁;Z.Gomurashviliら、J.Macromol.Sci.- Pure.Appl.Chem.(2000)A37:215−227頁;ZD Gomurashviliら、米国特許出願公開第20070282011号明細書)。
【0079】
式(VII)のビス(L−アルギニル)−1,6−ヘキサンジエステルテトラトシル塩(Arg(6)−4TosOH)の合成
【化15】
[0087]式(VII)を有するモノマー類を合成するため、0.22molのp−トルエンスルホン酸一水和物を使用すること以外は、上記と同じ手法に従った。モノマーの精製については、5gの粗製モノマーを30mLの加熱2−プロパノールに溶解し、過剰のアルギニンを除去するためにろ紙を介してろ過した。冷凍庫に保存後、粘稠性モノマー層を分離した。この手法を2回反復し、最終生成物を一晩減圧乾燥した。次いで生成物を1g/mL水に再度溶解し、凍結乾燥した。mp=264−268°C(DSC、5 °C/分) を有する吸湿性白色物質を、75.9 %の収率で収集した。元素分析:C46H70N8O16S4(1119.35)。理論値:C49.36、H6.30、N10.01。実測値:C 49.72、H6.53、N9.96。
【0080】
R3=CH2−CH(CH3)2、R4= PEG200である式(VI)のビス−L−ロイシン−PEG200−ジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩の合成:
【化16】
[0088]L−ロイシン(17.46g)(0.133mole)、26.53g(0.14mole)のp−トルエンスルホン酸一水和物および11.25mL(63.4mmole)のPEG−200(Aldrich)を、190mLの乾燥トルエン中に懸濁させ、オーバーヘッドスターラーを用いて攪拌した。溶液を、約8時間加熱還流し、発生した水(4.8mL)をDean−Starkコンデンサ内に採集した。室温に放置後、黄褐色油層を分離した。次に溶媒をデカントし、生成物を50mLの2−プロパノールに溶解し、50mLのヘキサン中油として沈殿させた。収集された橙褐色の粗製油状生成物の収量は42gであった。10gの材料を、150mLの熱ベンゼン中に再度溶解し、次いで4℃で一晩油として圧潰させた。溶媒をデカントし、生成物を60℃で24時間真空オーブン内で乾燥した。
【0081】
[0089]L−ロイシン−PEG200−ジエステルのジ−p−トルエンスルホン酸塩:500MHz 1HNMR(DMSO−d6、ppm、δ):0.89[d,12H,CH−(CH3)2]、1.60[m,4H,−CH−CH2−CH−]、1.74[m,2H,−CH−(CH3)2]、2.29[s,6H,−Ph−CH3]、3.50[s,4H,−OCO−CH2−CH2−O−]、3.53−3.64[m,m〜10H,−O−CH2−CH2−O−]、4.00[s,2H,+H3N−CH−]、4.23−4.34[m,m,4H,−OCO−CH2−]、7.14−7.49[d,d,8H,Ph]、8.33[s,6H,+H3N−]。
【0082】
[ポリマー類の合成]
[1.重縮合に関する反応条件の試験]
[0090]反応パラメータを最適化し、生成物のMwを増加させるために、EDTA−DAとジアミンモノマーL−Leu(6).2TosOHとの重縮合を試験した。
【0083】
[1.1.塩基の影響]
[0091]トリエチルアミン(TEA)を、塩基/触媒として用いた。EDTA−DAと2モル当量の塩基(L−leu(6)コモノマーの各トシレートに対して1当量)との反応を、4モル当量(各トシレートに対して1当量およびEDTAから形成され得られた遊離カルボン酸基各々に対して1当量)との反応と比較した。下表1に見られる結果は、EDTAのカルボン酸に拠る場合、塩基のモル当量を2倍増加させて使用すると、分子量の点でポリマーの大きさが2倍以上になることを示している。
【0084】
【表3】
【0085】
[1.2.ポリマーMwに対する温度の影響]
[0092]60℃で実施された元のPEA EDTA−Leu(6)反応中、反応混合物の色は、淡黄色から暗琥珀色に変化して著しくより暗色となり、また粘稠性がより低下することが認められた。変色に対する温度の影響を比較するため、ならびにより高い分子量の獲得を試みるため、反応を60℃、40℃、20℃、および0℃で実施した。これらの結果は本明細書の表2に記載してある。
【0086】
[0093]反応温度を低下させると、反応混合物の変色は有意に少なくなり、より高いMwの生成物が得られた。この結果は、無水物が低温でもジアミンコモノマーと容易に反応すること、また、連鎖伸長の終了または阻害を生じさせる予見不能な副反応がより高い温度で生じたことを示唆している。
【0087】
【表4】
【0088】
[3.1.3.反応速度論]
[0094]上記の重縮合実験から見られるように、最初の1時間以内にポリマーは最大分子量に達した。EDTA−ジアミン縮合反応に関する最適温度(下表3を参照)は、0℃〜20℃の範囲であると考えられた。
【0089】
【表5】
【0090】
[3.1.4.溶媒の選択]
[0095]重縮合反応を実施する際の適性に関して、非プロトン性極性溶媒DMSO、DMFおよびDMAcを比較した。DMSOは、EDTA−酸二無水物を容易に溶解するので第一選択の溶媒であった。しかし、重縮合反応が進行するにつれて、形成されたポリマーは、これら3種の反応溶媒のいずれにも懸濁化した。3種の反応溶媒の各々で得られたポリマーの分子量を表3に示してある。
【0091】
[0096]DMSOおよびDMFは双方ともポリマー類の変色を生じさせ、DMSOの使用は、明らかに亜硫酸臭を生じさせた。この反応をDMAc中で実施した場合、弱点は見られなかった:ポリマーおよび懸濁液は灰白色であり、臭気はなかった。表4のデータから見られるように、DMFおよびDMAc中で形成されたポリマー類のMwは同等であったが、DMSOの使用により、分子量の著しく低いポリマーが生じた。
【0092】
【表6】
【0093】
PEA EDTA−Leu(6)Polymer(式Ia)の合成:
【化17】
[0097]重縮合のため、ビス−(L−ロイシル)−1,6−ヘキサンジオールジエステルジトシレート(8.32mmol、5.734g)およびEDTA−DA(8.32mmol、2.133g)を一緒に混合し、次いで4.69mLの乾燥N,N−ジメチルアセトアミド(DMF)および4.69mLの乾燥トリエチルアミン(TEA)を窒素下で加えた。この反応液を、0oC(氷浴)で8時間攪拌し、5mol%過剰のEDTA−DA(0.42mmol、0.107g)の添加によりクエンチした。室温でさらに16時間攪拌を続け、1Lのアセトン中にポリマーを沈殿させた(粗製ポリマーMw=144,000g/mol、GPC、DMAc、PS)。上澄液をデカントし:ポリマーをアセトンですすぎ、風乾し、次いでメタノール中に再懸濁し、酸性水pH=2(HCl)中で沈殿させた。上澄液をデカントし、脱イオン(DI)水により完全に洗浄した。次に採集したポリマーを、一定重量になるまで室温で減圧乾燥した。回収した生成物(式Ia)の収率は、約60%であった。酸処理後の最終生成物は、Mw=50,700g/mol(GPC、DMAc、PS)およびガラス転移温度Tg=77°Cを有した。
【0094】
[0098]水中でのより高い溶解度を得るために、この調製ポリマーの5gを、100mLの飽和NaHCO3溶液中に溶解することによりPEA EDTA−Leu(6)のナトリウム塩に変換し、DI水に対して透析した(MWCO=3.5KDa)。凍結乾燥ポリマーを、白色綿毛様粉末として約50%の収率で回収し、1H−NMR(図1)により特性化した。元素分析:C28H46N4Na2O10(644.67);理論値:C49.03、H7.83、N8.27。実測値:C52.17、H7.19、N8.69、Mw=106,000g/mol、Mw/Mn=1.42(ゲルろ過クロマトグラフィー(SEC)10mMのPBS、pH8.4、OEG標品);Tg=146 °C。
【0095】
PEA DTPA−Phe(DAS)、(式Ib)のポリマー合成:
【化18】
[0099]溶液重縮合のため、L−Phe(DAS).2TosOH(18.80mmol、14.757 g)およびDTPA−DA(18.80mmol、6.718g)を一緒に混合し、次いで15.67mLの乾燥DMSOおよび11.0mLのトリエチルアミン(TEA)をアルゴン下で加えた。この反応液を、室温で24時間攪拌し、ポリマー生成物を2.5Lのアセトン中に沈殿させた。上澄液をデカントし、ポリマーをアセトンですすいでから風乾した。式Ibのポリマーを、再度DMSO中に懸濁し、1:1v/vのDI水で希釈し、透析用バッグに移し(MWCO=3.5K)、DI水中で透析した。透析したサンプルを凍結乾燥すると、約90%収率の白色ポリマー粉末を得た。重量平均Mw=24,500(g/mol)(GPC)、Tg=122°C.
【0096】
PEA DTPA−Gly(THF)、(式Ic)のポリマー合成:
【化19】
[0100]重縮合反応に関して、Gly(THF)−2TosOHモノマー(26.06mmol、14.664g)およびDTPA−DA(26.06mmol、9.313g)を、21.72mLの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)中に室温、アルゴン下で混合し、15.26mLのトリエチルアミン(TEA)を加えた。この重縮合反応を26時間継続し、ポリマー生成物を2.5Lのアセトン中に沈殿させた。上澄液をデカントし:ポリマーをアセトンですすぎ、風乾した。ポリマーを蒸留H2O中に再懸濁し、この溶液を透析用バッグに移し(MWCO=3.5K)、蒸留H2O中で3日間透析し(DI水)、次いで凍結乾燥すると、約50%収率の白色ポリマー物質が得られた。次に式Icの生成物を、1H−NMRおよびSECにより特性化した。Mw=14,400g/mol、Mw/Mn=1.62(SEC、10mMのPBS、pH8.4、OEG標品)。
【0097】
PEA EDTA−Arg(6)、(式Id)のポリマー合成:
【化20】
[0101]重縮合反応は、式Ia、IbおよびIcの調製の際と同様に45°Cで1時間実施した。次いでもう1時間、温度を65°Cまで上げて、反応物を完全に溶解させてから、再度45°Cでさらに6時間攪拌を続けた。アセトン中にポリマーを沈殿させ、ろ紙を介してろ過し、一晩真空オーブン中で乾燥した。ポリマーを、NaHCO3(5gのポリマー当り0.5gの重炭酸塩)と共に再度水中に溶解し、DI水中で3日間透析し、凍結乾燥機で乾燥した。式Idのポリマーの1H−NMR分析において、p−トルエンスルホン酸の対イオンは検出されなかった。El.元素分析 C28H52N10O10(688.77);理論値:C48.83、H7.61、N20.34。実測値:C44.95、H7.79、N18.76、Mw=17,800g/mol.(SEC)。
【0098】
[0102]ゲルろ過クロマトグラフィー(SEC)を用いて、このポリマーのMwを特性化した。この計測器は、30°Cの内温設定でWaters 600LCポンプ、Waters 717プラスオートサンプラー、およびWaters 410耐熱性指標検出器から構成された。50μLアリコートのサンプル溶液を、30°Cに維持されたWaters、Ultrahydrogel(登録商標)500、7.8´300mmカラムに注入し、pH4.8の100mMの酢酸アンモニウム緩衝液を用いて0.6mL/分で溶出させた。2.0mg/mLサンプルのPEA−EDTA−Arg(6)ポリマーを、pH4.8の100mMの酢酸アンモニウム緩衝液中に溶解した。ポリマーの保持時間を、ヒトチログロブリン(660kDa)、ウシグロブリン(158kDa)、卵白アルブミン(45kDa)、ミオグロビン(17.8kDa)、およびウリジン(0.48kDa)の混合物を含有するタンパク質標品(Phenomonex、Aqueous SEC1)から得られた保持時間と比較した。
【0099】
[0103]式IeのPEA EDTA Leu(PEG200)の合成:
【化21】
ビス−(L−ロイシル)−PEG200−ジエステルジトシレート(L−Leu(PEG200).2TosOH)(3.177g)およびEDTA−DA(1.0321g)を一緒に混合し、次いで2.12mLの乾燥N,N−ジメチルアセトアミド(DMF)および1.24mLの乾燥トリエチルアミン(TEA)を窒素下で加えた。この反応液を、0oC(氷浴)で6時間、さらに室温で18時間攪拌し、EDTA−DA(0.26g)の添加によりクエンチした。室温でさらに16時間攪拌を続け、1Lのアセトン中にポリマーを沈殿させた。生成物を再度アセトンですすぎ、風乾し、次いで10mLの飽和NaHCO3中に再度溶解し、20mLの脱イオン水で希釈し、DI水に対して透析した(MWCO=3.5KDa)。凍結乾燥ポリマーを、白色綿毛様粉末として2gの収量収率で回収し、1H−NMR(D2O、ppm、δ)により特性化した:0.89[d,d 12H,−CH−(CH3)2]、1.60[m,4H,−CH−CH2−CH−(CH3)2]、1.74[m,2H,−CH−(CH3)2]、2.86[s,4H,−N−CH2−CH2−N−]、3.28[s,4H,−NH−CO−CH2−N<]、3.43[s,4H,>N−CH2−COOH)、3.70−3.78[m,〜14H,−O−CH2−CH2−O−]、4.26−4.33[m,m,4H,−OCO−CH2−CH2−O−]、4.47[m,2H,−HN−CH<]、Mw=33,000g/mol、Mw/Mn=1.04;(SEC、10mMのPBS pH8.4、+20%v/vのMeOH、OEG標品)。
【0100】
[ポリマー金属結合体の調製および結合能力の決定]
[0104]水溶性ポリマーPEA−DTPA−Leu(6)とGd(III)との錯体化: 300mgのPEA−DTPA−Leu(6)−Na塩(Mw13,100g/mol、GPC、DMAc、PS)を、約8mLのDI水に溶解した。次にこの溶液に攪拌しながら、等モル量のGdCl3.6H2O水溶液を滴下により加えた。0.1MのNaOHを添加することによりpHを5.8に維持した。攪拌を1日続けた。溶液中に遊離のGdイオンがもはや検出されなくなるまでこの溶液を透析し(Barge,A.ら、Contrast Med.Mol.Imaging(2006)1:184−188頁により記載されたキシレノールオレンジ試験)、次いでサンプルを凍結乾燥した。錯体化後にポリマーの見かけの分子量値の減少が見られ(Mw=8,700g/mol)、この結果は、金属に結合した際のDTPAポリマー中の電荷の中和に起因すると考えられる。金属結合により、さらに水力学的値の変化が生じた。ICP−MS測定により決定された結合Gd(III)の含量は、1DTPAケージ当り>90%であった。
【0101】
[実施例2]
[EGTAベースのPEA合成[CO−EGTA]:ワンポット反応(スキーム1)]
【化22】
[0105]30mLの乾燥ジクロロメタン(DCM)および5g(13.1mmol)のエチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)を、250mLの三頚丸底フラスコに装入し、氷浴上で冷却し、アルゴン下でガスシールした。次に4.55mL(33mmol)の無水トリフルオロ酢酸を加え、白色固体が、透明な淡黄色EGTA二無水物の粘稠性層に完全に変換するまで(約4時間)攪拌した。次に氷浴を、メタノール/ドライアイス浴に置き換えて反応混合物を、-40°Cから-30°Cに冷却した。別個に、16.5mL(0.118mol)のトリエチルアミン(TEA)を20mLの乾燥DMFで希釈し、反応混合物に1時間に亘って滴下により加え、攪拌を約-30°Cで30分間続けた。次に、9.048g(13.1mmol)のビス−(L−ロイシン)−1,6−ヘキサンジオールジエステルのジアミンモノマージ−p−トルエンスルホン酸塩を加え、室温で一晩攪拌した。この粗製ポリマー溶液は、Mw=36kg/mol、Mw/Mn=1.462を有した(GPC、DMAc、PS)。反応溶液をロータリー蒸発させて揮発性DCMを除去し、20mLの水で希釈し、DI水に対して透析した。凍結乾燥後、Mw=30kg/mol(SEC、PEO)を有する5.94gのポリマーを採集した。ポリマーを、メタノール/酢酸エチルの再沈殿によりさらに精製した。本発明のポリマー構造を、D2O中の1HNMR分析により確認した。
【0102】
[実施例3]
[PEA.EDTA.Leu(6).ニッケル[パクリタキセル]ナノ粒子の製剤化]
[0106]本実験を実施して、非水溶性生理活性剤であるパクリタキセルの送達を目的として本発明の金属キレート化ポリマー類をナノ粒子として製剤化するために本発明の手法を例示した。
【0103】
[0107]水性ポリマー予製液(A)の調製:120mg量の本発明のポリマーPEA.EDTA.Leu(6)(R1=−CH2−N(CH2CO2H)(CH2)2N(CH2CO2H)−CH2−;R3=CH2CH(CH3)2、R4=(CH2)6である式IのMw=24kg/mol、Mw/Mn=1.68)を、3mLの1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に室温で溶解し、pH=7.0を有する17mLの水性25mMのN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)緩衝液中に1mL/分の速度で滴下により加えた。この緩衝溶液を室温で激しく攪拌して、6mg/mL濃度を有する均一なポリマー溶液を得た。15分間攪拌を続けてから、この溶液を、150mMのNaClを含有する2Lの25mMのHEPES緩衝液に対してpH=7.0で一晩透析した。この透析膜は、12〜14kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する混合セルロース(Spectropore(商標))であった。透析後の最終ポリマー回収率は、アミノ酸分析による推定で82%であった。このアミノ酸分析は、不活性雰囲気下、6N−塩酸中でポリマーを加水分解することにより実施した。次にこの加水分解物を、蛍光体6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートにより誘導してから、逆相HPLCにより分析した。
【0104】
[0108]パクリタキセル/NiCl2予製液(B)の調製:0.95mLのNMP溶液中、2mgのパクリタキセル(PTX、LC Labs)を、室温でボルテックス攪拌により調製した。別個のバイアル内で、5.16mgのNiCl2(Sigma)を、0.2mLの脱イオン水に溶解した。2mg/mLのPTXおよび1.29mg/mLのNiCl2(95%v/vのNMP、および5%v/vのH2O)を含有するPTX/NiCl2の予製液(B)は、0.95mLのPTX溶液に0.05mLのNiCl2水溶液をボーラス添加として添加することにより作製した。この混合物を、ボルテックス攪拌をして相(C)と称した。
【0105】
[0109]3.1 本発明のPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]ナノ粒子の調製法:0.5mLのPEA.EDTA.Leu(6)予製液(A)を、2.5mLの25mMのHEPESで希釈して、0.1%のポリマー水溶液を作製し、相(D)と称した。3mLの相(D)に、0.25mLの相(C)を室温で攪拌しながら0.25mL/分の添加速度の滴下により加えるとPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]ナノ粒子が生成した。この混合物をさらに5分間攪拌し、2Lの25mMのHEPES、pH=7.0に対して一晩透析した。この透析用膜は、12〜14kDaのMWCOを有する混合セルロース(Spectropore(商標))であった。形成されたナノ粒子の懸濁液は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)により測定すると151.1nmの単一モーダルのz平均径および平均−45.5mVのゼータ電位を有した。ナノ粒子中の最終PTXの回収率は、HPLC(ACN/H20 USP法)による決定で56.5μg/mLであり、最終ポリマーの回収率は、アミノ酸分析による決定で54%であった。
【0106】
[0110]3.2 PEA予製液を除いたPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]ナノ粒子を形成する対照方法:比較を目的として、0.5mLのPEA予製液の使用を、25mmのHEPES500マイクロリットルのみの添加に置き換えたこと以外、ナノ粒子生成物の形成に関しては、上記2.1節に記載された手法を反復した。この手法を用いると、血球計算器を用いて光学顕微鏡による測定で3μmから300μmのサイズの結晶性凝集体が形成した。
【0107】
[0111]3.3 NiCl2を除いたPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]ナノ粒子形成を合成する対照方法:ナノ粒子生成物の形成に関しては50μLのNiCl2ストック溶液の使用を、NMP中の0.95mLのPTXに添加された50μLの脱イオンH20に置き換えたこと以外上記2.1節に記載された手法を反復した。透析後の結果は、10μmから500μm範囲のサイズの結晶性凝集体形成であった。
【0108】
[実施例4]
[PEA.EDTA.Leu(6).ニッケル[PTX]−[6−ヒスチジンタグ化−緑色蛍光タンパク質]ナノ粒子の形成]
[0112]本実験を実施して、疎水性生理活性剤ならびに抗体または他の既知のタンパク質様ターゲティングリガンドなどのHisタグターゲティングタンパク質双方の同時送達用の水溶性標的化ナノ粒子として本発明のニッケルキレート化ポリマー類を製剤化するための本発明の手法を例示した。高疎水性薬物であるパクリタキセルの送達用に、Hisタグターゲティングタンパク質を本発明のキレート化ポリマー類にキレート化させる本手法にならって、ペプチドではなくてタンパク質である6Hisタグ化GFPを用いた。
【0109】
[0113]水性ポリマーの予製液(A)の調製:40mgの遊離酸の形体であるPEA EDTA−Leu(6)(Mw=25kDa、Mw/Mn=1.59、GPC、PS)を、4mLの25mMのHEPES緩衝液中、pH=11.2で超音波処理浴を用いて溶解した。完全溶解後のpHは、7.4であった。アミノ酸分析による決定では、標的化PEA濃度は10mg/mLであり、最終ポリマーの回収率は92%であった。
【0110】
[0114]PTX/NiCl2の予製液(B)の調製:0.68mgのPTXを、室温で 967μLのNMPに溶解した。別個の容器に、ボルテックス攪拌および超音波処理浴を用いて室温で、5.16mgのNiCl2(Sigma)を0.2mLの脱イオン水に溶解した。PTX/NiCl2の予製液(B)は、967μLのPTX溶液に33μLの水性NiCl2溶液をボーラス添加することにより生成した。この混合物をボルテックス攪拌し、0.68mg/mLのパクリタキセルおよび0.85mg/mLのNiCl2(97%v/vのNMP、および3%v/vのH2O)を含有する最終予製液を相(C)と称した。
【0111】
[0115]本発明のPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[6−ヒスチジンタグ化−緑色蛍光タンパク質(6His−GFP)]ナノ粒子を調製する方法:0.1mLのPEA.EDTA.Leu(6)の予製液(A)を、3.4mLの25mMのHEPESによりpH=7.0で希釈した。ボーラスとして、0.5mLのトリス緩衝生理食塩水(TBS)、pH=7.0に1mgの6His−GFPを加えた。形成された相(D)と称される均一の混合物を、室温でさらに5分間攪拌した。室温で電磁攪拌しながら0.25mL/分の添加速度で、0.25mLの相(C)の相(D)への滴下による添加によってPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[6His−GFP]のナノ粒子を生成させた。5分間攪拌を続け、この混合物を、12〜14kDaのMWCOを有する混合セルロース(Spectropore(商標))膜中、500mLの25mMのHEPES、pH=7.0に対して一晩透析した。透析後のナノ粒子の分散液は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)により測定すると86nmのz平均径および平均−37.4mVのゼータ電位を有した。ナノ粒子中の最終PTXの回収率は、HPLC(ACN/H20 USP法)により決定すると14.9μg/mLであり、最終ポリマーの回収率は、アミノ酸分析により決定すると96%であった。ナノ粒子における最終6His−GFPの回収率は、485での励起、520での発光(Fluostar Optima)のGFP蛍光により測定して49%であった。
【0112】
[実施例5]
[PEA.EDTA.Leu(6).ニッケル[PTX]−[ウシ血清アルブミン(BSA)]ナノ粒子の製剤化]
[0116]本実験を実施して、通常の血中タンパク質であるウシ血清アルブミンにより、生理活性剤であるパクリタキセルの標的化送達用のナノ粒子として本発明の金属キレート化ポリマー類を製剤化する手法を例示した。
【0113】
[0117]水性ポリマーの予製液(A)の調製:遊離酸として150mgのPEA.EDTA.Leu(6)(Mw=25kDa、Mw/Mn=1.59、GPC、PS)を、超音波処理浴を介して15mLの25mM HEPES緩衝液中にpH=11.15で溶解した。完全溶解後の溶液(A)と称される、この溶液の最終pHは7.4であった。PEA濃度は、アミノ酸分析により決定すると10mg/mLであり、最終ポリマーの回収率は83%であった。
【0114】
[0118]PEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[ウシ血清アルブミン(BSA)]のナノ粒子の調製:0.1mLのPEA.EDTA.Leu(6)の予製液(A)を、3.8mLの25mM HEPES pH=7.0で希釈し、0.1mLの25mM HEPES、pH=7.0溶液中1mgのBSA(フラクションV、Sigma)と混合した。形成された相(B)と称される均一混合物を、室温で5分間攪拌した。次いで、室温で攪拌しながら相(B)に対し、上記実施例4に記載したように調製された250マイクロリットルの相(C)を滴下による添加(0.25mL/分の添加速度で)により、PEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[BSA]のナノ粒子の分散液を生成させた。この分散液を、12〜14kDaのMWCOを有する混合セルロース(Spectropore(商標))中、0.5Lの25mM HEPES、pH=7.0に対して一晩透析した。透析後の分散液は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)により測定すると65.7nmの単一モーダルのz平均径および平均−29.2mVのゼータ電位を有した。ナノ粒子中の最終パクリタキセルの回収は、HPLC(ACN/H20 USP法)による決定で19.6μg/mLであり、最終ポリマーの回収率は、アミノ酸分析による決定で73%であった。ナノ粒子における最終BSAの回収率は、アミノ酸分析による決定で73%であった。
【0115】
[実施例6]
[PEA.EDTA.Leu(6)亜鉛[6−ヒスチジンタグ化−緑色蛍光タンパク質]のナノ粒子の製剤化]
[0119]本実験を実施して、Hisタグ化タンパク質の取込み用のナノ粒子として本発明の亜鉛キレート化ポリマー類を製剤化する手法を例示した。
【0116】
[0120]水性ポリマーの予製液(A)の調製:遊離酸として22.6mgのPEA.EDTA.Leu(6)(Mw=34kDa、Mw/Mn=1.67、GPC、PS)を、超音波処理浴中2.26mLの25mM HEPES緩衝液中にpH=7.0で溶解した。最終溶液のpHは7.10であった。PEAの最終濃度は、10mg/mLであり、予製液(A)と称した。
【0117】
[0121]ZnCl2の予製液(B)の調製:100mgのZnCl2を、50mLの25mM HEPES緩衝液中にpH7で溶解した。ZnCl2予製液の濃度は2mg/mLであった。1.06mLのZnCl2予製液(B)を、3.94mLのHEPES、pH7.0に添加して、0.423mg/mLのZnCl2の最終濃度が得られ、溶液(B)と称した。
【0118】
[0122]6.1 PEA.EDTA.Leu(6)Zn−[6His−GFP]のナノ粒子(C)の調製:7.65mLの25mM HEPES、pH=7.0中、850μLのPEA.EDTA.Leu(6)予製液(A)の希釈液を調製して、1mg/mLのポリマー濃度を得た。ボーラスとして、1mLのトリス緩衝生理食塩水(TBS)、pH=7.0中、1mgの6His−GFPを、2mLの希釈PEA予製液(A)に加え、均一な混合物を、室温で5分間攪拌した。室温で電磁攪拌しながら0.25mL/分の添加速度で1mLのZnCl2溶液(B)を滴下により加えて、PEA.EDTA.Leu(6)Zn−[6His−GFP]のナノ粒子を生成した。この混合物をさらに30分間攪拌した。分散液中に形成されたナノ粒子(6.1)は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)による測定で31nmのz平均径を有した。ナノ粒子中の最終6His−GFPの回収率は、485での励起、520での発光(Fluostar Optima)のGFP蛍光による測定で84%であった。
【0119】
[0123]6.2 PEA.EDTA.Leu(6)Zn−[6His−GFP]の非PEA対照の調製:2mLのPEA溶液(A)を除外し、2mLの25mm HEPES、pH7.0により置き換えたこと以外は、上記の製剤の調製手法(6.1)を反復した。得られた製剤を測定すると、結晶性凝集体を含有したがナノ粒子は含有しなかった。重縮合法を用いてナノ粒子を得るために、本発明の金属キレート化ポリマーが必要であることを本実験は示している。
【0120】
[0124]6.3 PEA.EDTA.Leu(6)亜鉛[6His−GFP]ナノ粒子の非ZnCl2対照の調製: 1mLのZnCl2溶液を除外し、1mLの25mM HEPES、pH7.0により置き換えたこと以外は、上記の製剤の調製手法(6.1)を反復した。得られた分散液(6.3)は、9から500ナノメートルの範囲の粒径サイズを有した。重縮合手法において金属イオンの存在が、ナノ粒子の形成を補助することを本実験は示している。
【0121】
[実施例7]
[PEA.EDTA.Leu(6).ニッケル[PTX]−[ウシ血清アルブミン(BSA)]のナノ粒子の製剤化]
[0125]水性ポリマー予製液(A)の調製:ナトリウム塩として87mgのPEA EDTA−Leu(6)(Mw=82kDa、Mw/Mn=1.23、(SEC)を、ボルテックス攪拌により8.7mLの25mM HEPES緩衝液にpH=7.0で溶解した。溶解後、サンプルを0.45μmのGHP(親水性ポリプロピレン)のディスクフィルター(Pall Life Sciences)を通してろ過した。ろ過後の最終pHは7.54であった。最終ポリマー回収率は、アミノ酸分析による推定で79.8%であった。
【0122】
[0126]PTX/NiCl2予製液(B)の調製:7.5mgのPTXを、750μLのNMPに室温で溶解した。別個の容器に、4.02mgのNiCl2(Sigma)を、室温でボルテックス攪拌および超音波処理浴により0.25mLの脱イオン水に溶解した。PTX/NiCl2の予製液(B)は、750μLのPTX溶液に250μLの水性NiCl2溶液のボーラス添加により生成した。この混合物をボルテックス攪拌し、7.5mg/mLのパクリタキセルおよび4.02mg/mLのNiCl2(75%v/vのNMP、および25%v/vのH2O)の最終予製液を相(C)と称した。
【0123】
[0127]PEA EDTA−Leu(6)Ni[PTX]−[ウシ血清アルブミン(BSA)]のナノ粒子の調製:2.0mLのPEA.EDTA.Leu(6)予製液(A)を、6mLの25mM HEPES pH=7.0で希釈し、1.0mLの25mMのHEPES溶液、pH=7.0中20mgのBSA(フラクションV、Sigma)と混合した。形成された相(D)と称される均一混合物を、室温で5分間攪拌した。室温で攪拌しながら9 mLの相(D)に、0.25mL/分の添加速度で1000μlの相(C)の滴下により添加するとPEA.EDTA.Leu(6)Ni[PTX]−[BSA]のナノ粒子が生成した。このナノ粒子分散液を、12〜14kDaのMWCOを有する混合セルロース(Spectropore(商標))中、0.5Lの25mM HEPES、pH=7.0に対して一晩(16時間)透析した。HEPESの透析後のサンプルを、類似の透析用チューブ中、0.5Lの0.9%NaCl(VWR)に対してさらに3時間透析した。透析後の分散液中のナノ粒子は、動的光散乱法(Malvern Zetasizer)による測定で118.3nmのz平均径および平均−17mVのゼータ電位を有した。粒子中の最終パクリタキセルの回収は、HPLC(ACN/H20、USP法)による決定で668μg/mLであり、最終ポリマーの回収率は、アミノ酸分析による決定で67%であった。最終BSAの回収率は、アミノ酸分析による決定で74%であった。これらの結果は下表5に要約してある。
【0124】
【表7】
【0125】
[実施例8]
[0128]PEA EDTA−Leu(6)(式Ia)などの本発明のキレート化ポリマー類は、水溶液に可溶性であり、したがって、核酸(RNAを含む)、抗体断片、タンパク質ドメイン、および全タンパク質など、有機環境では、他の場合に構造的に不安定となり得る鋭敏な生物学的分子の形成に対して良性の環境を提供する。縮合の誘導に金属を使用するこのポリマーの能力は、ナノ粒子または微小粒子中への製剤成分の捕捉を可能にすると共に粒子表面上のタンパク質表示を可能にする。とりわけこの後者の特質は、組換え技術試験用の推定上のワクチン抗原の形成に有用であり、この特質を利用して、そのようなタンパク質抗原配列に、ポリ(ヒスチジン)セグメントである「Hisタグ」を付加することができる。このようなHisタグ化タンパク質は、金属イオンを介してキレート化ポリマーへの抗原の係留を促進し、製剤がワクチンとして投与される際に免疫系に対する自然に折りたたまれた抗原部位の表示を可能にする。
【0126】
[0129]PEA EDTA−Leu(6)などの本発明のキレート化ポリマー類による製剤のためのHisタグ化ポリペプチド類は、哺乳動物の組織培養物、バキュロウィルス感染昆虫細胞、酵母および細菌などの任意の既知の発現系から生成させることができる。代表的なタンパク質精製法としては、微小流動化による細胞溶解に次ぐイオン交換クロマトグラフィーおよび固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)が挙げられる。インフルエンザなどの感染症に対するワクチンとして使用のために調製されたタンパク質は、ワクチンを受ける対象者の免疫系により、体液性免疫と細胞性免疫の双方を誘導することができるように自然に折りたたまれたタンパク質ドメインを保存する必要がある。ポリマー粒子中に1種以上のタンパク質を組み込むために、本発明のキレート化ポリマー類および方法を用いて調製されたHisタグ化タンパク質の製剤を調製することができ、次いでこの製剤を、アジュバントもしくはターゲティング部分などの他の添加物を有して、または有さずに混合し得るか、またはこれらのワクチン粒子を個々に投与することができる。
【0127】
[0130]インフルエンザウィルス血球凝集素(HA)の天然立体配座状態は、しっかりした防護性B細胞応答にとって重要であり、このウィルスタンパク質の全ての部分に対する抗体により防護を提供し得ることから、PEA EDTA−Leu(6)と、ウィルス表面に自然に曝露されているインフルエンザウィルスのHAタンパク質の部分(外部ドメイン)との金属縮合製剤は、バキュロウィルス感染SF9細胞内で産生された。pBac−HAPR8バキュロウィルスを1(MOI=1)の感染多重度で用いて、1ミリリットル当り1.5×106個の細胞密度で、500mLのSf900 II−SFM培地(Invitrogen、サンディエゴ、カリフォルニア州)中、SF細胞を感染させた。この感染細胞を、48時間から72時間増殖させ、遠心分離により採取した。細胞タンパク質を、0.1%のトリトンX−100およびプロテアーゼ阻害剤を含有するPBS緩衝液中に懸濁させることにより可溶化してから、Ni−装填キレート化セファロース(GE)を用いて固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により精製した。精製タンパク質を、25mMのトリス50容量、pH8.0の2回交換、150mMのNaClに対して透析し、2ミクロンのフィルターを通してろ過した。血球凝集素抗原は、有効性のために天然の折りたたみを保存するために必要であることから、組換え産生されたHA外部ドメインを、標準的プロトコル(すなわち、Webster,R;Cox,NおよびStohr,K、WHO Animal Influenza Manual、World Health Organization、WHO/CDS/NCS/2002.5)に従って血球凝集反応のアッセイによりシアル酸結合関数について試験した。対照として、A/プエルトリコ/8/34インフルエンザウィルスと共に、ニワトリの赤血球を血球凝集反応のアッセイに用いた。
【0128】
[0131]アミノ酸1から498(Genebankの登録番号NP_040982)プラスヘキサ−Hisタグをコードするため、インフルエンザA/プエルトリコ/8/34(NPPR8、配列番号1)由来の核タンパク質(NP)をコードするDNA配列を設計した。インフルエンザA/ベトナム/1203/2004に由来するNPの配列(NPVN、配列番号5)は、アミノ酸1から495(Genebankの登録番号AAW80720)プラスヘキサ−His−標識をコードする。精製およびポリマーのローディングを補助するために、これらのウィルスNP配列の各々をコードする遺伝子カセット中にカルボキシ末端ヘキサ−ヒスチジンを含めた。
【0129】
[0132]インフルエンザ核タンパク質(NP)の遺伝子カセットを、オリゴヌクレオチドのオーバーラッピングおよびPCRにより合成的に調製し、pET26b(Novagen)にサブクローン化した。NPPR8およびNPVN発現ベクターを、BL21−DE3へ形質変換した。この細菌を、選択的TB培地(Genessee Scientific)中で飽和状態まで増殖させてから、新鮮な氷冷培地で2倍に希釈した。200μMのIPTGにより室温でこれらの培養物中のタンパク質発現を誘導した。4時間から6時間の誘導後、細菌を遠心分離し、得られたペレットを凍結した。NPタンパク質を、IMACにより精製した。細菌性ペレットを、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS)中で解凍し、音波処理により溶解した。この細菌溶解液を、23,000×gで遠心分離し、上澄液を25mMのイミダゾールに調整してから、ニッケルを予備ロードしたキレート化セファロースカラム(GE Healthcare)上を通過させた。このロードされたカラムを、50カラム容量の氷冷洗浄用緩衝液3(50mMのイミダゾール、150mMのNaCl、0.1%のトリトンX−114、25mMのリン酸ナトリウム、pH7.5)、および20カラム容量の洗浄用緩衝液4(50mMのイミダゾール、150mMのNaCl、25mMのリン酸ナトリウム、pH7.5)で連続して洗浄した。カラム結合HAタンパク質を、PBS中500mMのイミダゾールにより溶出させた。溶出されたNP タンパク質を、100容量のPBSの2回交換に対して透析した。精製した組換えNPPR8およびNPVNを、色素産生カブトガニの血球溶解成分(LAL)アッセイ(Cambrex)によりエンドトキシン含量に関してルーチン的に試験し、さらに既知の方法(Reichelt,P.、C.Schwarz、およびM.Donzeau、「Single step protocol to purify recombinant proteins with low endotoxin contents.」Protein Expr Purif (2006)46(2):483−8頁)を用いて、タンパク質溶液が1エンドトキシン単位/mL以下を含むまで、トリトンX−114洗浄のIMACサイクルにより再度精製した。
【0130】
[0133]PEA EDTA−Leu(6)とHisタグ化精製組換えインフルエンザタンパク質との製剤は、以下のとおり作製した。クエン酸緩衝生理食塩水、pH7中、酢酸Zn溶液を、25mMのトリス、150mMのNaCl、pH8中のヘキサ−Hisタグ化HAPR8の外部ドメイン(配列番号2)および25mMのHEPES、pH8中、PEA−EDTA−Leu(6)の攪拌混合物に緩やかに滴下すると、最終濃度が1mg/mLのHisタグ化HAPR8の外部ドメイン(配列番号2)、1.5mg/mLのPEA−EDTA−Leu(6)、および.367mg/mLの酢酸Znが生成した。Hisタグ化NPPR8(配列番号1)製剤を、同じ手法を用いて作製したが、NPPR8タンパク質を、25mMのクエン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7中で導入した。このNPPR8−Zn−EDTA−Leu(6)製剤は、最終濃度が0.465mg/mLのHisタグ化NPPR8(配列番号1)、0.233mg/mLのPEA−EDTA−Leu(6)、および0.057mg/mLの酢酸Znを含有した。PEAキレート化ポリマーおよびインフルエンザ抗原の金属イオン縮合体は、投与までルーチン的に4℃で保存した。
【0131】
[0134]PEA EDTA−Leu(6)−Zn−インフルエンザタンパク質抗原の試験を、B6/C3 F1マウスへの投与により実施した。これらの動物におけるHA抗原およびNP抗原双方に対する体液性応答を、血清中に産生した抗体および細気管支−肺胞洗浄液を評価することによる定量的ELISAsにより評価した。T細胞応答は、ELISPOTにより、インターフェロンガンマを測定することによって評価した。インターフェロンガンマの産生は、HAまたは NPからのペプチドで再刺激された免疫化マウスから単離された脾細胞により評価した。図2および3は、25μgのHAPR8−3および9μgのNPPR8を含有する1用量のPEA−EDTA−Leu(6)製剤をマウスの鼻腔内に投与した実験からのデータを示している。これらのマウスを、14日目に放血させ、21日目に10LD50の感染性ウィルスにより鼻腔内で誘発させた。次の3週間、動物の罹患率および死亡率をモニターした。図2のデータでは、亜鉛およびPEA EDTA−Leu(6)で製剤化されたインフルエンザタンパク質の単一用量を投与した動物は、この製剤がポリI:Cアジュバントも含有してない限り生存しなかったことを示している。これらの生存動物においては有意な体重減少があったが(図II)、ポリI:Cアジュバントを含有する製剤を投与されたマウスは、本発明のワクチンの1回のみの投与後、ウィルス誘発で生存を保った。この生存は、腹腔内ウィルスの投与群ならびにHAPR8外部ドメインおよびPEA EDTA−Leu(6)−ZnとPoly ポリI:Cアジュバントとで製剤化されたNPPR8の製剤の投与群によってのみ、100ng/mL以上のレベルでの抗−HA IgG2a抗体を産生したことを示すELISAデータと相関している。製剤化されたNPPR8タンパク質を含有する製剤を投与された動物全てが、高レベルの抗−NP抗体を産生した。
【0132】
[実施例9]
[0135]本試験において、凝集能力を有するバキュロウィルス産生と細菌産生双方の赤血球凝集素(HA)ドメインを推定上のインフルエンザ抗原として用いる。製剤候補の評価には、上記の赤血球凝集素アッセイを、凝集阻害アッセイと関連させて用いた。試験したHAタンパク質またはタンパク質サブドメインが本発明のワクチンへ製剤化する前に標的結合活性を有したならば、Zn2+、Mn2+、またはNi2+などのカチオンによって製剤化されたHisタグ化HAもまた赤血球凝集活性を有するはずである。実施例のインフルエンザ赤血球凝集素抗原断片(配列番号2、3、4、6、7、8)または他のインフルエンザHAタンパク質由来の同様の配列断片を、作製に用いられる生物に依って、細菌のシグナル配列(配列番号3、4、7および8における下線)を有して、または有さずに発させることができる。この赤血球凝集試験をパスする精製タンパク質は良好なインフルエンザ抗原として役立つ。
【0133】
[0136]好首尾なワクチンPEA−EDTA−Leu(6)−Zn製剤の全てのタンパク質成分を細菌から精製したインフルエンザワクチンもまた試験した。下記の免疫化実験において、先の実施例で記載したワクチン候補と比較して、製剤にアジュバントとしてポリI:Cを添加し、またさらにNPPR8を含有させる。また、感染後のワクチン接種した動物の罹患を除く試みで、この試験でプライム増強療法を試験した。
【0134】
[0137]PEA−EDTA−Leu(6)(製剤Ia)および細菌発現のHisタグ化HAポリペプチド、例えばHAPR8−3(配列番号4)またはHAVN−3(配列番号8)の製剤は、各配列に細菌シグナル配列を含ませたことを除いて、実施例8に記載した通り作製した。1.1mg/mLのHisタグ化HAポリペプチド、0.55mg/mLのPEA−EDTA−Leu(6)、および0.120mg/mLの酢酸Znの最終濃度を得るのに十分な、トリス生理食塩水緩衝液pH8中、Hisタグ化HAポリペプチドとクエン酸生理食塩水緩衝液pH7中、PEA−EDTA−Leu(6)の攪拌混合物中に、クエン酸生理食塩水緩衝液pH7中、酢酸Znの溶液を徐々に滴下した。細菌発現のHisタグ化HAポリペプチド製剤と共に使用されるNPPR8(配列番号1)製剤は、実施例8に記載されているように作製したが、最終濃度は、1.1mg/mLのNPPR8(配列番号1)、0.55mg/mLのPEA EDTA−Leu(6)、および0.12mg/mLの酢酸Znであった。
【0135】
[0138]PEA EDTA−Leu(6)および細菌発現させたHisタグ化インフルエンザ抗原の粒子製剤に関する異なる投与経路の効果を試験するために、10バルブ/cマウスの一群に対し、皮下、または鼻腔内に製剤を投与した。次いで、これら2つの投与経路の有効性を比較した。
【0136】
[0139]50μlの用量が25μgのHAPR8−3および25μgのNPPR8を含有する製剤で動物を初回抗原刺激した。各々は、5μgのポリI:Cを含有するPEA EDTA−Leu(6)−Zn粒子として製剤化した。最初の用量の2週間後、各群のマウスを同一混合物の第二の用量で追加抗原投与した。3週間後、全てのマウスを、10LD50の感染性A/プエルトリコ/8/34ウィルスに鼻腔内感染させた。これらの実験の結果は、これらの粒子製剤の投与経路の重要性を示している。ZnおよびPEA EDTA−Leu(6)と共に製剤化されたHAPR8−3およびNPPR8のタンパク質を鼻腔内投与された動物では、10匹中9匹の動物が感染誘発を生き残った。対照的に、同一製剤を皮下投与された動物で生き残ったのは10匹中1匹であった。図4に示されるよう鼻腔内ワクチンを投与されたマウスは、ウィルス感染に応答した体重減少の程度に反映されるように、罹患率の減少も示した。鼻腔内にワクチン投与されたマウスは、皮下にワクチン投与されたマウスよりも、同一のワクチンと用量ではるかに良好に免疫応答したことを、これらの結果は示している。
【0137】
[実施例10]
[0140]下記のスキーム2および3に示されるように、末端基の結合には、以下の結合法が考慮された。
【0138】
[0141]末端基結合の第1の例において、本発明のPEAキレート化ポリマーを優勢なアミン末端基によって合成し、次いで、モノ活性化PEG、例えば、mPEG−SVA(LaysanBio社、アラブ、アラバマ州からのmPEG−吉草酸スクシンイミジル)に結合させた。これらの反応は、下記のスキーム2に従い、非プロトン性有機溶媒(DMSO、NMP)中で実施した。
【化23】
使用されたBポリマー中の無水酸末端基によって、アミン基またはヒドロキシ基を介して高分子または活性薬剤とさらに結合することが可能になり、下記スキーム3に示されるようなアミド結合またはエステル結合が得られる。
【化24】
【0139】
[酸二無水物末端によるPEA EDTA−Leu(6)の合成およびmPEG−NH2によるさらなる結合によるABAブロックポリマーの形成]
[0142]5.218g(7.6mmol、0.91当量)のL−Leu(6)−2TosOH、2.1326g(8.3mol、1.00当量)のEDTA−DAを、2.3mlの無水ジメチルスルホキシド(DMSO)中に懸濁し、この懸濁液をアルゴン下でガスシールした。次いで、4.64ml(33mmol)のトリエチルアミンを加え、室温で3時間、攪拌を続けた。(粗製サンプルのMwは、GPC(DMAc、PS)によって分析し、Mw=51,500g/molを得た)。次いで、2.01gのmPEG−アミン(MW5000、LaysanBio社、アラブ、アラバマ州)および4mLのDMSOを加え、50℃で一晩攪拌を続けた。ポリマーは500mLのアセトン中で沈殿した。これを100mLのDI水で再溶解させた。ポリマーを完全に溶解させるため、15mgのNaHCO3を加え、この溶液を、MWCO=12〜14KDaの透析バッグ中で、DI水に対して透析した。凍結乾燥させたポリマーを、白色綿毛状粉末として2.2gの収量で回収し、結合PEGの製剤は、1H−NMR(MeOD)により確認した。Mw=36,000g/mol、Mw/Mn=1.38;(Sec、10mMのPBS pH8.4、+20%v/vのMeOH、OEG標品)。
【0140】
[PEA EDTA−Leu(6)の結合−ラミナリンによる酸二無水物末端ポリマー]
[0143]さらなる実例で、グルカンなどの多糖アジュバントを、本発明のキレート化ポリマーに末端基結合させた。この実施例では、市販入手できる代表的なグルカンであるラミナリンを、ワクチン調製において有用な代表的な多糖アジュバントとして利用した。アジュバントの結合は、以下のスキーム4に従って達成した:
【化25】
【0141】
[0144]より具体的には、4.283g(6.2mmol、0.84当量)のL−Leu(6)−2TosOH、1.8926g(7.4mol、1.00当量)のEDTA−DAを7.95mLの無水N−メチル1−2−ピロリドン(NMP)中に懸濁し、アルゴン下でガスシールした。次いで、1.9mL(14mmol)のトリエチルアミンを加え、室温で16時間攪拌を続けた。(粗製サンプルのMwは、GPC(DMAc、PS)によって分析し、Mw=51,000g/molを得た)。別個に、1gのラミナリン(Aldrich、MW=5,000g/mol)を7.5mLのNMP中に溶解させ、2mLのポリマー反応溶液加え(約2mL)てから、さらに13.9μLのTEAを加え、この溶液を60℃でさらに16時間攪拌した。この溶液を100mLのDI水で希釈し、12〜14KDaのMWCO透析バッグに移し、DI水に対して透析した。凍結乾燥させたポリマーを、白色綿毛状粉末として、1.18gの収量で回収した。結合ポリマーの試験は、ニンヒドリン試験で陰性であった。結合ラミナリンの存在は、37%w/wロードで1H−NMR(DMSO−d6)により確認した。Mw=70,000g/mol、Mw/Mn=1.2;(SEC、10mMのPBS、pH8.4、+20%v/vのMeOH、OEG標品)。
【0142】
[0145]全ての刊行物、特許、および特許文書は、参照として個々に援用されているように、本明細書に参照として援用されている。本発明は種々の特定の、および好ましい実施形態および技法を参照として説明した。しかし、当然ながら、本発明の趣旨および範囲内にあって多くの変型および修飾をなし得る。
【0143】
[0146]本発明は上記の実施例を参照として説明したが、当然ながら、本発明の趣旨および範囲内での修飾および変型が包含される。
【0144】
[0147]したがって、本発明は以下の請求項によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のポリマー類:
一般構造式(I)、
【化1】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり;
R1は−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化2】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)、
【化3】
の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーまたは、構造式(IV)、
【化4】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり、mは、約0.1から0.9の範囲であり;pは、約0.9から0.1の範囲であり;
R1は、−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化5】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
R2は、水素、(C1〜C12)アルキルまたは(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、CH2COO−、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R5は、(C1〜C4)アルキルからなる群から独立して選択される
化学式を有するPEAポリマーのうちの少なくとも1つまたはその塩を含んでなる組成物。
【請求項2】
R1が、−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−であり、式中、R6が式(II)により表される化学構造を有し、R7が、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーとの錯体中に金属イオンをさらに含んでなり、前記金属イオンは、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Zn2+およびそれらの組合わせからなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記錯体中に、O−、S−またはN−含有基中における不飽和領域および/または孤立電子対からなる負極性の微小領域を有する極性分子、Hisタグ化分子、生物学的分子、および親油性治療分子、ならびにそれらの組合わせからなる群から選択される少なくとも1種のカーゴ分子をさらに含んでなる請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のカーゴ分子が、パクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、ドセタキセルおよびビオリムスからなる群から選択される請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のカーゴ分子が、血清アルブミンを含んでなる請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のカーゴ分子が、標的細胞、臓器または組織に対して特異的に結合するリガンドを含んでなる請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のカーゴ分子が、標的細胞、臓器または組織に対して毒性であるか、または特異的に結合する請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマーとの錯体中に金属をさらに含んでなり、前記金属が、Gd(III)およびRh、Ir、Ytの放射性同位元素の金属からなる群から選択され、前記組成物が診断用組成物である請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
R1が、−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−であり、式中、R6がCH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2であり、前記金属イオンがGd(III)である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
O−、S−またはN−含有基中における不飽和領域および/または孤立電子対からなる負極性の微小領域を有する極性分子、Hisタグ標識分子、生物学的分子、および親油性分子からなる群から選択される少なくとも1種の殺細胞分子またはターゲティングカーゴ分子をさらに含んでなる請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
ナノ粒子を作製する方法であって:
a)1)請求項1に記載の少なくとも1種のポリマーと;
2)Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+およびFe3+、Zn2+、Ni2+およびGd3+からなる群から選択される金属イオンと;
3)非プロトン性極性溶媒と、
を重縮合条件下水溶液中で一緒に接触させること、
b)前記溶液中、前記ポリマーと前記金属カチオンとの非共有結合性錯体を含有するナノ粒子を形成すること;および
c)サイズ排除分離により前記溶液から前記ナノ粒子を得ること、
を含んでなる方法。
【請求項13】
前記溶液が、O−、S−またはN−含有基中における不飽和領域および/または孤立電子対からなる負極性の微小領域を有する極性分子、生物学的分子、Hisタグ化分子、および親油性分子からなる群から選択される少なくとも1種のカーゴ分子をさらに含んでなり、前記形成されたナノ粒子中の前記錯体が、少なくとも1種のカーゴ分子をさらに含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液が、配列番号1、2、3、4、5、6、7または8のアミノ酸配列をさらに含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記Hisタグ化分子が、病原性エピトープを含有するアミノ酸配列を含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記Hisタグ化分子を、前記溶液中に組換え発現する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Hisタグ化分子を、細菌内で組換え発現する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
a)オリゴまたはポリエチレングリコール、多糖類、脂質、生物学的高分子および水不溶性薬物からなる群から選択される生理活性剤;および
b)請求項1に記載のポリマー、
を含んでなる組成物であって、
前記組成物が、前記生理活性剤により両側にフランクされている線状ポリマーである組成物。
【請求項19】
前記生理活性剤が、高分子免疫賦活アジュバントである請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
c)Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+およびFe3+、Zn2+、Ni2+からなる群から選択される金属イオンであって、以下のアミノ酸配列内に保持される金属イオン;
d)病原性エピトープを含んでなるアミノ酸配列、
をさらに含んでなり、前記金属イオンと前記アミノ酸配列とが、前記ポリマーのR1と非共有結合性錯体を介して前記ポリマーに結合している請求項19に記載の組成物。
【請求項1】
以下のポリマー類:
一般構造式(I)、
【化1】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり;
R1は−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化2】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)、
【化3】
の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択される化学式を有するPEAポリマーまたは、構造式(IV)、
【化4】
により表される化学式であって、式中
nは、約15から約150の範囲であり、mは、約0.1から0.9の範囲であり;pは、約0.9から0.1の範囲であり;
R1は、−CH2−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−CH2−であり、式中、R6は、(C2〜C12)アルキレン、p−C6H4、(C2〜C4)アルキルオキシ(C2〜C4)アルキレン、CH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2および式(II)、
【化5】
の化学構造を有する化合物、ならびにそれらの組合わせからなる群から独立して選択され、式中、R7は、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択され;
R2は、水素、(C1〜C12)アルキルまたは(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択され;
個々のn単位における2つのR3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、−(CH2)2SCH3、CH2OH、CH(OH)CH3、(CH2)4NH3+、(CH2)3NHC(=NH2+)NH2、4−メチレンイミダゾリニウム、CH2COO−、(CH2)2COO−およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C6)アルキルオキシ(C2〜C12)アルキレン、CH2CH(OH)CH2、CH2CH(CH2OH)、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、1,4−アンヒドロエリトリトールの断片、およびそれらの組合わせからなる群から独立して選択され;
R5は、(C1〜C4)アルキルからなる群から独立して選択される
化学式を有するPEAポリマーのうちの少なくとも1つまたはその塩を含んでなる組成物。
【請求項2】
R1が、−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−であり、式中、R6が式(II)により表される化学構造を有し、R7が、水素、(C1〜C12)アルキル、および保護基からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーとの錯体中に金属イオンをさらに含んでなり、前記金属イオンは、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Zn2+およびそれらの組合わせからなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記錯体中に、O−、S−またはN−含有基中における不飽和領域および/または孤立電子対からなる負極性の微小領域を有する極性分子、Hisタグ化分子、生物学的分子、および親油性治療分子、ならびにそれらの組合わせからなる群から選択される少なくとも1種のカーゴ分子をさらに含んでなる請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のカーゴ分子が、パクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、ドセタキセルおよびビオリムスからなる群から選択される請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のカーゴ分子が、血清アルブミンを含んでなる請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のカーゴ分子が、標的細胞、臓器または組織に対して特異的に結合するリガンドを含んでなる請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のカーゴ分子が、標的細胞、臓器または組織に対して毒性であるか、または特異的に結合する請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマーとの錯体中に金属をさらに含んでなり、前記金属が、Gd(III)およびRh、Ir、Ytの放射性同位元素の金属からなる群から選択され、前記組成物が診断用組成物である請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
R1が、−N(CH2CO2H)−R6−N(CH2CO2H)−であり、式中、R6がCH2CH2N(CH2CO2H)CH2CH2であり、前記金属イオンがGd(III)である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
O−、S−またはN−含有基中における不飽和領域および/または孤立電子対からなる負極性の微小領域を有する極性分子、Hisタグ標識分子、生物学的分子、および親油性分子からなる群から選択される少なくとも1種の殺細胞分子またはターゲティングカーゴ分子をさらに含んでなる請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
ナノ粒子を作製する方法であって:
a)1)請求項1に記載の少なくとも1種のポリマーと;
2)Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+およびFe3+、Zn2+、Ni2+およびGd3+からなる群から選択される金属イオンと;
3)非プロトン性極性溶媒と、
を重縮合条件下水溶液中で一緒に接触させること、
b)前記溶液中、前記ポリマーと前記金属カチオンとの非共有結合性錯体を含有するナノ粒子を形成すること;および
c)サイズ排除分離により前記溶液から前記ナノ粒子を得ること、
を含んでなる方法。
【請求項13】
前記溶液が、O−、S−またはN−含有基中における不飽和領域および/または孤立電子対からなる負極性の微小領域を有する極性分子、生物学的分子、Hisタグ化分子、および親油性分子からなる群から選択される少なくとも1種のカーゴ分子をさらに含んでなり、前記形成されたナノ粒子中の前記錯体が、少なくとも1種のカーゴ分子をさらに含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液が、配列番号1、2、3、4、5、6、7または8のアミノ酸配列をさらに含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記Hisタグ化分子が、病原性エピトープを含有するアミノ酸配列を含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記Hisタグ化分子を、前記溶液中に組換え発現する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Hisタグ化分子を、細菌内で組換え発現する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
a)オリゴまたはポリエチレングリコール、多糖類、脂質、生物学的高分子および水不溶性薬物からなる群から選択される生理活性剤;および
b)請求項1に記載のポリマー、
を含んでなる組成物であって、
前記組成物が、前記生理活性剤により両側にフランクされている線状ポリマーである組成物。
【請求項19】
前記生理活性剤が、高分子免疫賦活アジュバントである請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
c)Ca2+、Mg2+、Mn2+、Co2+、Fe2+およびFe3+、Zn2+、Ni2+からなる群から選択される金属イオンであって、以下のアミノ酸配列内に保持される金属イオン;
d)病原性エピトープを含んでなるアミノ酸配列、
をさらに含んでなり、前記金属イオンと前記アミノ酸配列とが、前記ポリマーのR1と非共有結合性錯体を介して前記ポリマーに結合している請求項19に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−523669(P2011−523669A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508683(P2011−508683)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/043192
【国際公開番号】WO2009/137711
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(505323312)メディバス エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/043192
【国際公開番号】WO2009/137711
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(505323312)メディバス エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】
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