説明

生塵の処理装置

【課題】多孔筒の内面に付着する異物を均一に綺麗に除去する。多孔筒の内面の局部摩耗を解消して、多孔筒を薄くして長寿命にする。
【解決手段】生塵の処理装置は、生塵を破砕する破砕機1と、破砕機1で破砕された生塵を水から分離する水分離器2とを備える。水分離器2は、多孔板を円筒状に形成している多孔筒4と、この多孔筒4の内部に配設される移送スクリュー5と、この移送スクリュー5を回転させるモーター6と、移送スクリュー5に連結されて、多孔筒4の内面に沿って回転する掻取プレート7とを備える。水分離器2は、モーター6が移送スクリュー5を回転させて、供給口4Aに供給される生塵と水の混合体を移送スクリュー5で移送しながら多孔筒4で水切りし、水切りされた生塵を排出口4Bから排出する。さらに、掻取プレート7が多孔筒4の内面に沿って回転して、多孔筒4の内面に付着する異物を掻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生塵の処理装置に関し、とくに流し台に連結されて、流し台から水と一緒に排出される生塵を破砕し、これを水から分離して微生物の作用等で処理するのに最適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流し台で調理するときに発生する生塵は、流し台の排水口から水と一緒に排水して、もっとも便利に使用できる。この用途として「ディスポーザー」と呼ばれる破砕機が開発されている。ディスポーザーは、流し台の排水口に連結されて、排水口から供給される生塵を破砕して、水と一緒に下水に排水する。ディスポーザーは、ユーザーにとって極めて便利な装置であるが、下水に破砕した生塵が排水されるので、下水処理に著しく手間がかかる欠点がある。
【0003】
この欠点は、ディスポーザーで破砕された生塵を水から分離し、水のみを下水に排水して解消できる。水の分離された生塵は、その後、微生物の作用で分解して、容積を著しく減少できる。このことを実現する生塵の処理装置は開発されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平5−184961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この公報に記載される生塵の処理装置は、図1に示すように、ディスポーザー31で破砕された生塵を、多孔筒34の内部に供給し、この多孔筒34で水と生塵を分離する。多孔筒34には、下部に供給された生塵を上昇させる移送スクリュー35を配設している。移送スクリュー35がモーター36で回転されると、螺旋状のフィン33は生塵を多孔筒34の内部で上昇させる。水は多孔筒34を透過して生塵から分離される。上昇された生塵は、多孔筒34の上部に設けている排出口37から水切りして排出される。
【0005】
図1の生塵の処理装置は、ユーザーが流し台の排水口から水と一緒に生塵を排水して、便利に使用できる。また、下水には生塵を分離した水を排水するので、下水に直接に生塵が排出されず、下水処理を簡単にできる。したがって、ユーザーの下水処理も理想的な状態にできる。ただ、この装置は、長期間にわたって生塵を多孔筒に供給して、水と生塵とを分離するので、多孔筒の内面に異物が付着し、この異物が多孔筒の水切りを悪くする。多孔筒が効率よく水切りできなくなると、生塵に多量の水が含まれるようになって、その後の生塵処理を難しくする。この欠点を解消するために、図1の装置は、移送スクリュー35のフィン33の頂上部分に、硬質ピン32を固定している。硬質ピン32は、多孔筒34の内面を摺動して、多孔筒34の内面に付着する異物を除去する。
【0006】
以上のように、硬質ピンを多孔筒の内面を摺動させる装置は、硬質ピンが摺動するラインに付着する異物を除去できるが、多孔筒の内面に付着する異物を均一に除去できない。また、硬質ピンが多孔筒の同じ円軌道を摺動するので、多孔筒は摺動線に沿って摩耗する欠点がある。したがって、この構造の装置では、長期間にわたって、多孔筒の内面に付着する異物を均一に除去できない欠点があった。また、多孔筒の摩耗による耐久性は、多孔筒を厚い金属板で製作して防止できる。しかしながら、多孔筒に厚い金属板を使用すると、無数に設けている透水孔が長くなって目詰まりしやすくなる。このため、多孔筒は、透水孔の目詰まりを少なくするために、できる限り薄くすることが大切である。ただ、薄くすると硬質ピンによる摩耗で寿命が短くなってしまう。
【0007】
本発明は、さらにこのような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、多孔筒の内面に付着する異物を均一に綺麗に除去でき、さらに多孔筒の内面の局部摩耗を解消して、多孔筒を薄く、長寿命にできる生塵の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生塵の処理装置は、水と一緒に供給される生塵を破砕する破砕機1と、この破砕機1で破砕された生塵を水から分離する水分離器2とを備える。水分離器2は、水を透過させる多孔板を円筒状に形成している多孔筒4と、この多孔筒4の内部に回転できるように配設されてなる移送スクリュー5と、この移送スクリュー5を回転させるモーター6と、移送スクリュー5に連結されて、多孔筒4の内面に沿って回転する掻取プレート7とを備える。多孔筒4は、一端が底板8で閉塞されており、生塵と水の混合体の供給口4Aを一端部に開口して、水の分離された生塵を排出する排出口4Bを他端部に設けている。水分離器2は、モーター6が移送スクリュー5を回転させて、一端部の供給口4Aに供給される生塵と水の混合体を移送スクリュー5で移送しながら多孔筒で水切りし、水切りされた生塵を排出口4Bから排出する。さらに、掻取プレート7が多孔筒4の内面に沿って回転して、多孔筒4の内面に付着する異物を掻き取る。
【0009】
本発明の生塵の処理装置は、移送スクリュー5と多孔筒4を、上下方向ないし上下方向から傾斜する方向に配設することができる。この処理装置は、多孔筒4の下部に供給口4Aを開口して、多孔筒4の上部に排出口4Bを開口することができる。さらに、本発明の生塵の処理装置は、多孔筒4を配設する排水溜槽10を設けて、この排水溜槽10の水中に多孔筒4を配設することができる。
【0010】
掻取プレート7は、多孔筒4の底板8の内面を回転する水平掻取部7Aと、この水平掻取部7Aに対して直角に連結されて、多孔筒4の内面に沿って回転する垂直掻取部7Bとを有することができる。この掻取プレート7は、金属プレートをコ字状に折曲加工して、水平掻取部7Aの両端に垂直掻取部7Bを連結することができる。
【0011】
さらに、掻取プレート7は、水平掻取部7Aに非円形の貫通孔7Cを設けて、この貫通孔7Cに移送スクリュー5を回転させる駆動軸12を挿通して、掻取プレート7を移送スクリュー5に連結することができる。駆動軸12は、非円形の貫通孔7Cに対して、回転しないが軸方向に移動できる形状とすることができる。この掻取プレート7は、モーター6が駆動軸12を回転させると移送スクリュー5と一緒に回転されると共に、水平掻取部7Aが自重で駆動軸12に沿って落下し、多孔筒4の底板8の上面を摺動して底板8に堆積する生塵を掻き取ることができる。さらに、この掻取プレート7は、水平掻取部7Aの前縁7aを刃物状にして、底板8に付着する異物を掻き取ることができる。
【0012】
さらに、本発明の生塵の処理装置は、多孔筒4の排出口4Bに、生塵を微生物の作用で分解させる生分解槽3を連結して、多孔筒4から生分解槽3に生塵を供給して分解することができる。さらにまた、本発明の生塵の処理装置は、多孔筒の排出口に、生塵を乾燥させる乾燥槽を連結して、多孔筒から乾燥槽に生塵を供給し、乾燥槽で生塵の水分を除去して体積を減少することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の生塵の処理装置は、多孔筒の内面に付着する異物を均一に綺麗に除去できると共に、多孔筒の内面の局部摩耗を解消して、多孔筒を薄く、長寿命にできる特長がある。それは、本発明の生塵の処理装置が、水分離器の多孔筒の内部に配設された移送スクリューに、多孔筒の内面に沿って回転する掻取プレートを連結しており、移送スクリューを回転させると掻取プレートが多孔筒の内面に沿って回転して、多孔筒の内面に付着する異物を掻き取るからである。多孔筒の内面に沿って回転する掻取プレートは、従来の装置の硬質ピンのように、多孔筒の内面に点で接触して掻き取るのではなく、多孔筒の内面に線状に接触して掻き取るので、多孔筒の内面に付着する異物をむらなく均一に掻き取って綺麗に除去できる。さらに、多孔筒の内面に線状に接触しながら回転する掻取プレートは、従来の装置の硬質ピンのように、多孔筒の内面を同じ円軌道の摺動線に沿って摩耗させることがないので、多孔筒の摩耗に対する耐久性を高めて、長期間にわたって多孔筒の内面に付着する異物を均一に除去できる。したがって、多孔筒を薄い金属板として目詰まりを少なくしながら、異物を除去する部材による摩耗で多孔筒の寿命が短くなるのを有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための生塵の処理装置を例示するものであって、本発明は生塵の処理装置を以下のものに特定しない。
【0015】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0016】
本発明の生塵の処理装置は、水と一緒に供給される生塵を破砕し、破砕された生塵を水切りして排出するもので、流し台の排水口に連結してとくに便利に使用される。ただ、本発明の生塵の処理装置は、必ずしも流し台の排水口に連結することなく、たとえば下水路に連結して、下水に含まれる生塵を分離する装置としても使用できる。
【0017】
図2に示す生塵の処理装置は、水と一緒に供給される生塵を破砕する破砕機1と、この破砕機1で破砕された生塵を水から分離する水分離器2とを備える。さらに、図の装置は、水分離器2で水切りされた生塵を、微生物の作用で分解する生分解槽3を連結している。
【0018】
破砕機1は、すでに市販されているディスポーザーを使用する。ディスポーザーは、流し台の排水口に連結されて、水と一緒に供給される生塵を破砕して、水と一緒に排出する。ディスポーザーは、高速回転するカッターで生塵を破砕するものであるが、破砕機には、必ずしもディスポーザーを使用する必要はなく、たとえば、ディスポーザーとは異なる構造の高速回転カッターで生塵を破砕するもの、あるいは一対の相対運動する隙間に生塵を供給して摺り潰して破砕するものなど、水と一緒に供給される生塵を破砕できる全てのメカニズムの破砕機を使用できる。とくに、図2に示すように、水分離器2から排出される水切りされた生塵を生分解槽3で分解する装置にあっては、生塵を必ずしも短く切断する必要はない。生分解槽3で分解して、ほとんど消失されるからである。
【0019】
水分離器2に供給する生塵を破砕機1で破砕するのは、種々の形状の生塵を水分離器2にスムーズに通過させるためである。また、水分離器2に生分解槽3を連結する装置にあっては、生分解槽3で生塵を速やかに分解するためである。生塵には、種々の形状のものが混在している。たとえば、スイカやダイコンの切れ端等の生塵は、非常に大きな塊状で供給されることがある。このような大きな生塵を破砕して、水分離器2にスムーズに通過させるのが破砕機1である。したがって、破砕機1には、生塵を水分離器2に通過できる大きさに破砕できる全てのものを使用できる。
【0020】
水分離器2は、図3ないし図5に示すように、破砕された生塵を水切りしながら上昇させる多孔筒4と、この多孔筒4の内部にあって、生塵を上昇させる移送スクリュー5と、この移送スクリュー5を回転させるモーター6と、移送スクリュー5に連結されて、移送スクリュー5と一緒に回転されて多孔筒4の内面に付着する異物を除去する掻取プレート7とを備える。
【0021】
多孔筒4は、水を透過させる多孔板を円筒状に形成している。多孔板は無数の貫通孔を設けているステンレス等の金属板あるいは金属網である。この多孔筒4は、底が底板8で閉塞されると共に、破砕機1から生塵と水の混合体を供給できるように、下部には生塵と水の混合体の供給口4Aを開口している。図の多孔筒4は、多孔板の一部を切除して供給口4Aを開口している。この供給口4Aは、移送ダクト9を介して破砕機1の吐出口1Aに連結される。図2の装置は、移送ダクト9を多孔筒4の供給口4Aに向かって下り勾配としている。この移送ダクト9は、破砕機1の吐出口1Aから排出される破砕された生塵と水の混合体を、自然に流下させて、多孔筒4の供給口4Aに流入できる。
【0022】
図の装置は、多孔筒4を排水溜槽10の内部に設けている。排水溜槽10は、所定のレベルで水を蓄える。図2の排水溜槽10は、オーバーフロー口11を開口している。オーバーフロー口11は、排水溜槽10に蓄えられる水をオーバーフローさせて排水して排水溜槽10の水面レベルを一定に保持する。多孔筒4の供給口4Aは排水溜槽10の水面下に開口されて、移送ダクト9で生塵と水とが供給される。移送ダクト9は排水溜槽10の底部に配設されて、先端を多孔筒4の供給口4Aに連結している。この移送ダクト9は、排水溜槽10の壁面を水密に貫通して外部に延長され、破砕機1の外部の延長部を破砕機1の吐出口1Aに連結している。図2に示す装置は、破砕機1よりも供給口4Aを下方に配置して、破砕機1から排出される水と生塵を、移送ダクト9内に自然に流して多孔筒4に供給する。破砕機1から多孔筒4に供給される水は、多孔筒4から破砕機1には逆流しない。
【0023】
図に示すように、移送ダクト9で生塵と水を多孔筒4の供給口4Aに自然に流下させて移送する構造は、簡単な構造で、水を逆流させることなく、破砕機1から多孔筒4に生塵と水の両方を移送できる。ただし、本発明の処理装置は、破砕機と多孔筒との間に、破砕された生塵と水との混合体を強制的に移送するポンプ(図示せず)を連結し、このポンプで破砕機から多孔筒に生塵と水の混合体を移送することもできる。
【0024】
さらに、多孔筒4は、水切りされた生塵を排出するための排出口4Bを上部に開口している。この排出口4Bも、多孔板の一部を切除して開口している。排出口は、必ずしも多孔筒の一部を切除して設ける必要はない。多孔筒の上端を開口して、ここを排出口とすることもできる。排出口4Bは、水切りされた生塵を排出するので、排水溜槽10の水面レベルよりも上方に開口されている。
【0025】
多孔筒4は、底板8で底面を閉塞している。底板8は、ステンレス等の金属板、あるいは硬質のプラスチック板である。底板8は、上面を平滑な水平面としている。
【0026】
移送スクリュー5は、円柱軸5Aの表面に螺旋状のフィン5Bを設けている。移送スクリュー5は、多孔筒4の内側で回転されるように、多孔筒4の内部に配置している。移送スクリュー5と多孔筒4は、その中心軸が一致するように、いいかえると、移送スクリュー5は多孔筒4と同軸に配設される。図に示す生塵の処理装置は、多孔筒4と移送スクリュー5を、その中心軸が垂直方向となる姿勢で配置している。図示しないが、多孔筒と移送スクリューは、その中心軸が多少傾斜する姿勢とすることもできる。
【0027】
移送スクリュー5は、多孔筒4に供給される生塵を螺旋状のフィン5Bで上昇させる方向に回転される。移送スクリュー5は、モーター6で回転される。図3と図6に示す移送スクリュー5は、円柱軸5Aの下面に駆動軸12を連結する連結凹部5aを設けており、この連結凹部5aに挿入された駆動軸12を介して回転される。駆動軸12は、底板8を水密に、回転できるように貫通するモーター6の回転軸6Aの先端に連結している。この駆動軸12は、平面形状を非円形、たとえば多角形としている。移送スクリュー5の連結凹部5aは、この駆動軸12の外形に沿う内形として、駆動軸12を回転しないように連結している。ただ、移送スクリューは、図示しないが、円柱軸の下面から下方に突出する連結部を設けて、この連結部を、底板を水密に回転できるように貫通させて、モーターに連結することもできる。さらに、図に示す移送スクリュー5は、駆動軸12を介してモーター6の回転軸6Aに直接に連結しているが、移送スクリューは必ずしもモーターに直結する必要はなく、歯車機構や、プーリーとベルト等の駆動機構を介して回転駆動することもできる。移送スクリューを駆動する駆動機構は、歯車のギア比やプーリーの半径等を調整して、モーターに対する移送スクリューの回転数を調整できる。
【0028】
移送スクリュー5は、フィン5Bの頂上縁を多孔筒4の内面に接近させ、あるいは接触状態で摺動しながら回転して、フィン5Bの頂上縁と多孔筒4の内面との隙間から生塵を落下させない状態として、生塵を上昇させる。さらに、図の移送スクリュー5は、排出口4Bに向かって円柱軸5Aを太くしている。この移送スクリュー5は、生塵を十分に水切りして排出できる。それは、排出口4Bに向かって円柱軸5Aを太くしているので、円柱軸5Aと多孔筒4の内面との隙間が排出口4Bに向かって次第に狭くなり、生塵が絞られる状態で排出口4Bから排出されるからである。十分に水切りされた生塵は水分含有量が少なく、生分解槽3で速やかに分解される。
【0029】
掻取プレート7は、多孔筒4の内面に沿って回転して、多孔筒4の内面に付着する異物を掻き取って除去する。掻取プレート7は、多孔筒4の底板8の上面を回転する水平掻取部7Aと、この水平掻取部7Aと、この水平掻取部7Aに対して直角に連結されて多孔筒4の内面に沿って回転する垂直掻取部7Bとを備える。図の掻取プレート7は、ステンレス等の金属プレートをコ字状に折曲加工して、水平掻取部7Aの両端に垂直掻取部7Bを連結する形状としている。水平掻取部7Aと垂直掻取部7Bは、その幅を多孔筒4の直径の1/10〜1/2、好ましくは1/5〜1/3としている。
【0030】
掻取プレート7は、移送スクリュー5に連結されて、移送スクリュー5と一緒に回転される。掻取プレート7は、図6に示すように、移送スクリュー5を回転させる駆動軸12に水平掻取部7Aが連結されて、この駆動軸12を介して回転される。水平掻取部7Aは、上下に移動できる状態で、駆動軸12に連結されて駆動軸12で回転される。このことを実現するために、水平掻取部7Aは中心に非円形の貫通孔7Cを設けている。駆動軸12は、平面形状を、非円形の貫通孔7Cに、回転しないが軸方向に移動できる形状としている。たとえば、掻取プレート7の水平掻取部7Aには多角形、または楕円形の貫通孔7Cを設けており、駆動軸12の外形は、水平掻取部7Aの貫通孔7Cの内形よりもわずかに細くしている。この構造によると、掻取プレート7の水平掻取部7Aが、駆動軸12に沿って自重で底板8の上面に落下する。したがって、駆動軸12で回転される水平掻取部7Aは、常に底板8の上面を摺動する。このため、回転する水平掻取部7Aは、常に底板8の上面に付着する異物を掻き取りながら回転する。この形状の掻取プレート7は、図6と図7に示すように、水平掻取部7Aの前縁7aを刃物状にして、底板8に付着する異物をより効率よく掻き取ることができる。
【0031】
垂直掻取部7Bは、多孔筒4の内面に接近し、あるいは多孔筒4の内面を摺動して、多孔筒4の内面に付着する異物を除去する。金属プレートを折曲加工してなる垂直掻取部7Bは、エッジ部分を多孔筒4の内面に沿って摺動させて多孔筒4の内面に付着する異物を効率よく掻き取ることができる。さらに、垂直掻取部7Bは、図7に示すように、前縁7bを刃物状にして、多孔筒4の内面に付着する異物をより効率よく掻き取ることもできる。
【0032】
移送スクリュー5は、フィン5Bの頂上縁に、垂直掻取部7Bをはめ込む凹部13を設けている。掻取プレート7は、垂直掻取部7Bをフィン5Bに設けた凹部13に嵌入して、移送スクリュー5と一緒に回転する。この構造は、フィン5Bの頂上縁と垂直掻取部7Bの両方を、多孔筒4の内面に接近させ、あるいは内面を摺動する状態で移動できる。垂直掻取部7Bは、その上端を排水溜槽10の水面下に位置させて、排水溜槽10の水面下で多孔筒4の内面に付着する異物を除去し、あるいはその上端を排水溜槽の水面からさらに上方に突出させて、水面下と水面よりも上方で多孔筒の内面に付着する異物を除去する。
【0033】
以上の構造の生塵の処理装置は、破砕機1で生塵を破砕し、破砕された生塵を水と一緒に供給口4Aから多孔筒4に供給する。多孔筒4に供給された生塵は、モーター6で回転される移送スクリュー5で上昇される。上昇される生塵は、多孔筒4に水を透過させて水切りされる。水切りされた生塵は、多孔筒4の上部に開口している排出口4Bから排出される。このとき、移送スクリュー5と一緒に掻取プレート7が回転される。掻取プレート7は、多孔筒4の内面に沿って回転して、多孔筒4の内面に付着する異物を掻き取る。したがって、多孔筒4の内面に異物が付着しないようにしながら、供給される生塵を効率よく水切りして排出する。とくに、内面を掻取プレート7で綺麗に保持している多孔筒4は水通りがよく、生塵を効率よく水切りして排出する。
【0034】
以上の図に示す水分離器2は、多孔筒4と移送スクリュー5を上下方向に配設している。ただ、水分離器は、図示しないが、多孔筒と移送スクリューを上下方向から傾斜する姿勢で配設することもできる。この水分離器も、供給口を多孔筒の下部に、排出口を多孔筒の上部に設けて、供給口に供給される生塵と水の混合体を移送スクリューで上昇させながら多孔筒で水切りし、水切りされた生塵を排出口から排出する。この水分離器も、多孔筒の下部を排水溜槽の水面下に配設することができる。
【0035】
さらに、水分離器は、多孔筒と移送スクリューを水平ないし略水平方向に配設することもできる。この水分離器は、多孔筒の一端部に供給口を、多孔筒の他端部に排出口を設けて、供給口に供給される生塵と水の混合体を移送スクリューで移送しながら多孔筒で水切りし、水切りされた生塵を排出口から排出する。この水分離器は、多孔筒を排水溜槽の水面下に配設することなく、供給口に供給される生塵と水の混合体を多孔筒で水切りする。
【0036】
多孔筒4から排出される生塵は、生分解槽3に供給して分解される。生分解槽3は、供給された生塵を撹拌する撹拌部材14と、生分解槽3の生塵を所定の温度に加温するヒーター15と、この撹拌部材14を駆動するモーター16と、モーター16の運転を制御して設定された時間間隔でモーター16を断続運転させる制御手段17と、生分解槽3の空気を換気する換気手段18とを備える。さらに生分解槽3には、生塵を分解する好気性細菌を含むバクテリアが添加される吸湿部材19を充填している。吸湿部材19と生塵は、撹拌部材14で撹拌されて生塵が分解される。
【0037】
生分解槽3に充填される吸湿部材19としてオガクズを使用する。オガクズは、吸湿部材として好ましい物性を備える。廃棄物として多量にあり、安価で適当な吸湿性を有するからである。オガクズには杉のオガクズが最適である。ただ、吸湿部材19にはオガクズに代わって、バクテリアを生息できる吸湿性のある全ての粉粒体を使用できる。
【0038】
吸湿部材19に添加されるバクテリアは、好気性細菌のみでも使用できる。ただ、好気性細菌に加えて通性嫌気性菌も添加することもできる。さらに好ましくはバクテリアに加えて酵素も添加する。
【0039】
以上の構造の生塵の処理装置は、水切りされた生塵を生分解槽3で分解するので、流し台から排出される生塵の体積を、1/10〜1/20と著しく減少できる。このため、生分解槽3に堆積する分解された生塵の廃棄量を著しく少なくできる。
【0040】
ただ、生塵の処理装置は、必ずしも生分解槽を設けて、微生物の作用で生塵を分解して生塵の体積を減少する必要はない。本発明の生塵の処理装置は、図示しないが、水切りされた生塵を乾燥する乾燥槽を設けて、この乾燥槽で生塵の水分を除去して体積を減少することもできる。この乾燥槽も、供給された生塵を撹拌する撹拌部材と、生塵を所定の温度に加温するヒーターとを設けて、撹拌部材で生塵を撹拌しながら乾燥させて効率よく体積を減少できる。
【0041】
以上の処理装置は、生塵と水が破砕機1に供給されると、破砕機1がこのことを検出して運転を開始して生塵を破砕する。破砕機1が生塵の供給を検出すると、移送スクリュー5を回転させるモーター6も運転を開始して、破砕機1から供給される生塵を水切りして生分解槽3に排出する。破砕機1は、生塵が供給されなくなると停止する。移送スクリュー5のモーター6は、破砕機1から供給される生塵を水切りして生分解槽3に排出した後、運転を停止する。移送スクリュー5のモーター6は、破砕機1が運転を停止してから一定時間後に停止して、破砕機1から供給される生塵を水切りして排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の生塵の処理装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる生塵の処理装置を示す概略断面図である。
【図3】図2に示す生塵の処理装置の水分離器の拡大断面図である。
【図4】図3に示す水分離器を矢印Aで示す方向から見た正面図である。
【図5】図3に示す水分離器の多孔筒を示す斜視図である。
【図6】移送スクリューと掻取プレートの連結構造を示す分解斜視図である。
【図7】掻取プレートの他の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…破砕機 1A…吐出口
2…水分離器
3…生分解槽
4…多孔筒 4A…供給口 4B…排出口
5…移送スクリュー 5A…円柱軸 5B…フィン
5a…連結凹部
6…モーター 6A…回転軸
7…掻取プレート 7A…水平掻取部 7B…垂直掻取部
7C…貫通孔
7a…前縁 7b…前縁
8…底板
9…移送ダクト
10…排水溜槽
11…オーバーフロー口
12…駆動軸
13…凹部
14…撹拌部材
15…ヒーター
16…モーター
17…制御手段
18…換気手段
19…吸湿部材
31…ディスポーザー
32…硬質ピン
33…フィン
34…多孔筒
35…移送スクリュー
36…モーター
37…排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と一緒に供給される生塵を破砕する破砕機(1)と、この破砕機(1)で破砕された生塵を水から分離する水分離器(2)とを備える生塵の処理装置において、
水分離器(2)は、水を透過させる多孔板を円筒状に形成してなる多孔筒(4)と、この多孔筒(4)の内部に、回転できるように配設されてなる移送スクリュー(5)と、この移送スクリュー(5)を回転させるモーター(6)と、移送スクリュー(5)に連結されて、多孔筒(4)の内面に沿って回転する掻取プレート(7)とを備え、多孔筒(4)は、一端が底板(8)で閉塞されると共に、生塵と水の混合体の供給口(4A)を一端部に開口して、水の分離された生塵を排出する排出口(4B)を他端部に設けており、
モーター(6)が移送スクリュー(5)を回転させて、一端部の供給口(4A)に供給される生塵と水の混合体を移送スクリュー(5)で移送しながら多孔筒(4)で水切りし、水切りされた生塵を排出口(4B)から排出すると共に、掻取プレート(7)が多孔筒(4)の内面に沿って回転して、多孔筒(4)の内面に付着する異物を掻き取るようにしてなる生塵の処理装置。
【請求項2】
移送スクリュー(5)と多孔筒(4)を、上下方向ないし上下方向から傾斜する方向に配設しており、供給口(4A)を多孔筒(4)の下部に開口して、排出口(4B)を多孔筒(4)の上部に設けている請求項1に記載される生塵の処理装置。
【請求項3】
多孔筒(4)を配設する排水溜槽(10)を設け、この排水溜槽(10)の水中に多孔筒(4)を配設している請求項2に記載される生塵の処理装置。
【請求項4】
掻取プレート(7)が、多孔筒(4)の底板(8)の内面を回転する水平掻取部(7A)と、この水平掻取部(7A)に対して直角に連結されて多孔筒(4)の内面に沿って回転する垂直掻取部(7B)とを有する請求項1に記載される生塵の処理装置。
【請求項5】
金属プレートをコ字状に折曲加工して、水平掻取部(7A)の両端に垂直掻取部(7B)を連結している請求項4に記載される生塵の処理装置。
【請求項6】
水平掻取部(7A)に非円形の貫通孔(7C)を設けて、この貫通孔(7C)に移送スクリュー(5)を回転させる駆動軸(12)を挿通しており、駆動軸(12)は、非円形の貫通孔(7C)に回転しないが軸方向に移動できる形状としており、モーター(6)が駆動軸(12)を回転させると掻取プレート(7)も一緒に回転され、さらに掻取プレート(7)の水平掻取部(7A)が自重で駆動軸(12)に沿って落下し多孔筒(4)の底板(8)の上面を摺動し、底板(8)に堆積する生塵を掻き取るようにしてなる請求項2と4に記載される生塵の処理装置。
【請求項7】
水平掻取部(7A)の前縁(7a)を刃物状にして、底板(8)に付着する異物を掻き取るようにしてなる請求項4ないし6のいずれかに記載される生塵の処理装置。
【請求項8】
多孔筒(4)の排出口(4B)に、生塵を微生物の作用で分解させる生分解槽(3)を連結しており、多孔筒(4)から生分解槽(3)に生塵を供給して分解するようにしてなる請求項1に記載される生塵の処理装置。
【請求項9】
多孔筒の排出口に、生塵を乾燥させる乾燥槽を連結しており、多孔筒から乾燥槽に生塵を供給し、乾燥槽で生塵の水分を除去して体積を減少するようにしてなる請求項1に記載される生塵の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−714(P2006−714A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177554(P2004−177554)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000105752)コロナ工業株式会社 (6)
【出願人】(392034746)吉川化成株式会社 (22)
【Fターム(参考)】