説明

生殖行動の誘発用組成物

【課題】性機能改善、精力増強のために

性機能改善、精力増強、QOLの向上等のために有用な生殖行動の誘発用組成物及びその製造法を提供する。

【解決手段】豆乳等の大豆由来成分の乳酸菌発酵物を有効成分とする生殖行動の誘発用組成物。該組成物は、大豆由来成分に乳酸菌を添加して発酵を行わせ、発酵物を採取することにより得られる。乳酸菌としては、ロイコノストック属に属する微生物が使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆由来成分の乳酸菌発酵物を有効成分とする、生殖行動の誘発用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生殖行動は、子孫をつくる上で欠かせない行動であるとともに、ヒトにおいては性的欲求を満たす意味でも重要な行動として認識されている。
【0003】
適切な性生活は、QOL(Quality Of Life)の向上や円満な夫婦生活に寄与すると考えられている。しかしながら、性生活の障害として勃起障害(Erectile dysfunction: ED)をはじめとする性的機能不全や性欲減退が指摘されている。EDや性欲減退の大きな要因として、ストレスや精神的及び肉体的疲労が考えられている。また、糖尿病や肥満といった生活習慣病も性的機能不全の要因とされている。
【0004】
また、近年の日本では出生率の低下が指摘されており、EDや性欲減退を改善することが、当問題の解決策であると考えられている。ED治療薬として「シルデナフィル」が開発され、日本においてもED患者に対して処方されている。しかしながら、シルデナフィルには一過性の副作用や、他の薬物との相互作用が指摘されており、その服用に際しては細心の注意を必要とする。このため、原材料の食経験が豊富で安全性が高く、なおかつその摂取が容易な生殖行動の誘発用組成物が求められている。
【0005】
従来より、ナツメグがラットの生殖行動を誘発すること(例えば、非特許文献1参照)、にんにく抽出物とホタテ貝抽出物を用いた精力増強剤(例えば、特許文献1、2参照)は公知である。
【0006】
【非特許文献1】「BMC Complementary and alternative medicine Vol.5」2005年、p.16-22
【特許文献1】特開平10−306032号公報
【特許文献2】特開2005−289862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な生殖行動の誘発用組成物、及びその製造法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、大豆由来成分の乳酸菌発酵物が生殖行動の誘発活性を示すことを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は以下に関する。
(1)大豆由来成分の乳酸菌発酵物を有効成分とする、生殖行動の誘発用組成物。
(2)乳酸菌が、ロイコノストック属に属する微生物である、上記(1)記載の生殖行動の誘発用組成物。
(3)乳酸菌が、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス ATCC 12291株である、上記(1)記載の生殖行動の誘発用組成物。
(4)大豆由来成分に乳酸菌を添加して発酵を行わせた後、発酵物を採取することを特徴とする、上記(1)から(3)記載の生殖行動の誘発用組成物の製造法。
(5)乳酸菌が、ロイコノストック属に属する微生物である、上記(4)記載の製造法。
(6)乳酸菌が、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス ATCC 12291株である、上記(4)記載の製造法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、生殖行動を活発にして性機能改善効果、精力増強効果、QOLの向上効果等を発揮する医薬品、飲食品又は飲食品用素材として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.生殖行動の誘発用組成物及びその製造法
本発明の生殖行動の誘発用組成物は、大豆由来成分の乳酸菌発酵物を有効成分とする。該発酵物は、大豆由来成分に乳酸菌を添加して発酵を行わせた後、発酵物を採取することによって得られる。
【0011】
本発明でいう生殖行動の誘発とは、雄性動物において生殖行動の意欲の向上若しくは生殖行動数を増加させることを意味する。
【0012】
乳酸菌発酵物が生殖行動の誘発活性を示す限り、大豆由来成分はどのように調整されたものであってもよく、大豆そのもの、或いは大豆加工品が本発明の大豆由来成分として使用可能である。大豆加工品とは、例えば、大豆摩砕物、大豆粉末、豆乳、おから、大豆を適当な溶剤で抽出して得られる大豆抽出物等である。大豆の品種は特に限定されず、例えば、「りゅうほう」、「たちゆたか」等が使用できる。
【0013】
生殖行動の誘発活性を有する発酵物が得られる限り、乳酸菌の種類は特に限定されず、例えば、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌が使用できる。より具体的には、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・パラメセンテロイデス(Leuconostoc paramesenteroides)、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)、ロイコノストック・シトレウム(Leuconostoc citreum)、ロイコノストック・デキストラニカム(Leuconostoc dextranicum)などが挙げられる。さらに具体的には、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス ATCC12291株、ロイコノストック・シトレウム NRIC1579株、ロイコノストック・パラメセンテロイデス NISL7218株が挙げられる。
【0014】
なお、上記菌種名に関し、「NRIC」とは東京農業大学応用生物科学部菌株保存室が保存する菌株を意味し、「NISL」とは、財団法人野田産業科学研究所が保存する菌株を意味する。「ATCC」は、米国VA20110−2209、マナサス、ユイバーシティブルーバード10801のATCCにあるアメリカンタイプカルチャーコレクション国際寄託当局を指す。
【0015】
乳酸菌発酵の条件は特に限定されず、使用する大豆由来成分や乳酸菌に応じて適宜設定すればよい。大豆由来成分として豆乳を使用する場合は、培養した乳酸菌の菌液を豆乳に添加した後、用いた乳酸菌に適した温度、時間等の条件、例えば、25〜35℃で4時間以上の条件で発酵を行えばよい。乳酸菌が嫌気性菌の場合は、嫌気条件にて発酵を行う。なお、発酵は、複数種の乳酸菌を使用した混合発酵又は連続発酵であってもよい。発酵性を向上させるために、必要な栄養源、例えば、シュークロース、マルトース、スタキオース又はラフィノースから選択される1種以上の糖類などを豆乳に添加してもよい。
【0016】
生殖行動の誘発活性を発揮する限り、上記で得られた発酵物をそのまま本発明の生殖行動の誘発用組成物として使用してもよい。また、該発酵物を更に分画処理して、より強い生殖行動の誘発活性を有する画分を使用してもよい。分画は、例えば、溶媒抽出法、ゲル濾過カラム、限外濾過膜を用いて行うことができる。
【0017】
2.生殖行動の誘発用組成物の使用方法
本発明の生殖行動の誘発用組成物は、医薬品、飲食品又は飲食品用素材として使用することができる。医薬品、飲食品又は飲食品用素材の種類、形態、及びその他の含有成分等には特に制約はなく、当業者に公知の任意の各種方法で容易に加工することができる。
飲食品として使用する場合は、当該組成物をそのまま使用してもよいし、他の飲食品、例えば、肉製品、水産加工品、加工野菜、加工果実、惣菜類、大豆加工品、食用粉類、食用蛋白質、飲料、酒類、調味料、乳製品、菓子に添加して使用してもよい。また、当該組成物に、トマト、ニンジン、タマネギ、ニンニク、ゴマなどの野菜の加工処理物(ピューレ、ペースト、練状物、細断粒状物、磨砕物、粉末など)や、リンゴ、ユズ、オレンジ、モモ、イチゴ、パイナップル、ミカン、ブドウなどの果実の加工処理物(同上)などを適宜添加混和してもよい。飲食品としての形状は、特に限定されず、固形状、乳状、ペースト状、半固形状、液状とすればよい。
生殖行動の誘発用組成物を使用する場合の有効成分の摂取量は、摂取者の年令、体重、適応症状などによって異なる。例えば体重60kgの成人による経口摂取の場合、1日1回又は数回摂取し、その摂取量は1日当たり1回約100g〜200g、好ましくは1.6〜3.5g/kg体重程度とすればよい。この生殖行動の誘発用組成物は、継続摂取することにより極めて優れた効果を発揮する。
【実施例1】
【0018】
大豆由来成分として豆乳を使用し、その乳酸菌発酵物が生殖行動の誘発活性を示すことを確認した。
【0019】
〔豆乳の乳酸菌発酵物の調製〕
豆乳の乳酸菌発酵物は次のようにして作製した。豆腐用豆乳(紀文フードケミファ社製)を50%、シュークロース(40% 121℃、15分滅菌済み)を50%含有する豆乳培地に、乳酸菌を10〜10cfu/mlになるように接種し、30℃で24時間培養した。使用した乳酸菌は、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス ATCC 12291株である。
【0020】
〔交尾回数の測定〕
9週齢のWistar系雄性ラットを個体ごとに金網ケージ内で12時間の明暗サイクル(7時〜19時:明期、19時〜7時:暗期)で飼育した。ラットは、蒸留水を投与する対照群と豆乳の乳酸菌発酵物を3.3g/kg体重/日の用量で投与した豆乳の乳酸菌発酵物群の2群(n=5)に分けた。投与は胃ゾンデを用いた強制経口投与によって8時から10時の時間帯に行った。経口投与を開始してから10日目の19時〜7時に雄ラット1匹に対して同週齢の雌ラット4匹をポリカーボネートケージにて飼育した。5ワットの赤色ランプを照明として、ラットの行動をビデオカメラにより録画した。録画したラットの行動から、12時間のラットの交尾回数を計測した。
【0021】
試験結果を図1に示す。対照群と比較して豆乳の乳酸菌発酵物群では、雄ラットの交尾回数が対照群と比較して有意に増加した。大豆由来成分である豆乳の乳酸菌発酵物が生殖行動の誘発活性を示すことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の生殖行動の誘発用組成物は、生殖行動を活発にして、性機能改善効果、精力増強効果、QOLの向上効果等を発揮するので、飲食品或いは医薬品として使用可能である。当該組成物は、ヒト用のみならずペットフードや家畜用飼料などの動物用として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】蒸留水又は豆乳の乳酸菌発酵物を投与したラットの交尾回数を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆由来成分の乳酸菌発酵物を有効成分とする、生殖行動の誘発用組成物。
【請求項2】
乳酸菌が、ロイコノストック属に属する微生物である、請求項1記載の生殖行動の誘発用組成物。
【請求項3】
乳酸菌が、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス ATCC 12291株である、請求項1記載の生殖行動の誘発用組成物。
【請求項4】
大豆由来成分に乳酸菌を添加して発酵を行わせた後、発酵物を採取することを特徴とする、請求項1から3記載の生殖行動の誘発用組成物の製造法。
【請求項5】
乳酸菌が、ロイコノストック属に属する微生物である、請求項4記載の製造法。
【請求項6】
乳酸菌が、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス ATCC 12291株である、請求項4記載の製造法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−46456(P2009−46456A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216553(P2007−216553)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】