説明

生物学的に活性な血清パラオキソナーゼのレベルを決定するための方法および組成物

生物学的に活性なPON酵素のレベルを決定する方法が提供される。その方法は、PON酵素のラクトナーゼ活性を決定することを含み、ラクトナーゼ活性は生物学的に活性なPON酵素のレベルを示す。また、酵素のラクトナーゼ活性を測定するために使用されることができる新規な化合物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学的診断、特にPON1のような生物学的に活性な血清パラオキソナーゼ(PON)のレベルを決定するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血清パラオキソナーゼ(PON1)は、PONと名付けられる大きな酵素ファミリーのうちの最もよく知られているメンバーである。PON1は、エステル、有機リン酸塩(例えば、パラオキソン)およびラクトンのような広範囲の基質を加水分解する、抗アテローム発生特性および解毒特性を備えるHDL関連酵素である。長い間、PON1はアリールエステラーゼおよびパラオキソナーゼであると考えられ、その活性はそれに基づいて測定された。しかしながら、PON1は本来、種々のラクトンの加水分解[1,2]および形成[3]の両方を触媒するラクトナーゼであることが最近明らかになった。構造−反応性研究[4]および実験室進化実験[5]は、PON1の本来の活性がラクトナーゼであること、およびパラオキソナーゼおよびアリールエステラーゼが不規則な活性であることを示す。ApoA−Iを担持するHDL粒子に結合することによるPON1の活性化の研究は、ラクトン基質、特に脂肪親和性のラクトンに対する高い特異性を示す[6]。最後に、ラクトナーゼ活性はPONファミリーの全てのメンバーによって共有される唯一の活性であり、メンバーのうちのいくつかはパラオキソナーゼ活性もアリールエステラーゼ活性も示さない[2]
【0003】
ヒト血清におけるPON1の活性は、PON1の多型、その活性を調節する種々の環境的因子、およびアテローム性動脈硬化および他の障害に対する罹病性の間にありうる関連性を扱う多くの研究の対象であった[7]。しかしながら、分析は生理学的な関連性を有さない酢酸フェニルまたはパラオキソンを用いる。より関連性のある分析はラクトナーゼ活性を扱わなければならない。脂肪族のラクトンでラクトナーゼ活性を測定するための現在の方法は、pH指示薬分析[1,4]およびHPLC[2,3]に基づく。HPLCは極めて面倒であり、一方pH指示薬分析は較正の繰り返しを必要とし、しかもpHおよび緩衝液強度がきっちりと制御されることができる純粋な酵素サンプルでのみ正確な結果をもたらす。
【0004】
最近、Sicardと共同研究者ら[9]は、ウンベリフェロンで置換された6員環および7員環のラクトンを用いる蛍光ベースのラクトナーゼ分析を開発した。しかしながら、これらの基質は長いアルキル側鎖を有する5員環のオキソ−ラクトンを含むPON1の好適な基質とは有意に異なる[2,4,6]。これらの基質はまた、PON1に対するpH最適条件(8.0〜8.5)で高いバックグラウンド率を示す。
【0005】
したがって、上記の制限が全くないラクトナーゼ活性のための新規な分析に対する必要性が広く認識されており、それを有することは極めて有利である。
【発明の開示】
【0006】
本発明の1つの側面によれば、生物学的に活性なPON酵素のレベルを決定する方法であって、生物学的に活性なPON酵素のレベルを示す、PON酵素のラクトナーゼ活性を決定することを含む方法が提供される。
【0007】
本発明の別の側面によれば、被験者におけるPON状態を決定する方法であって、(a)被験者のPON酵素のラクトナーゼ活性レベルを決定すること、ただし、ラクトナーゼ活性は被験者における生物学的に活性なPON酵素のレベルを示す;および(b)被験者のPON酵素を遺伝子型決定し、それによって被験者のPON状態を決定することを含む方法が提供される。
【0008】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、PON酵素はPON1、PON2およびPON3からなる群から選択される。
【0009】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、生物学的に活性なPON酵素は、アポリポタンパク質複合PON酵素を含む。
【0010】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、PON酵素のラクトナーゼ活性の決定は、
(i)クロマトグラフィ分析;
(ii)pH指示薬分析;
(iii)分光光度分析;
(iv)共役酵素分析(coupled assay);
(v)電気化学的分析;および/または
(vi)熱量分析
によって行なわれる。
【0011】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、分光光度分析は、少なくとも1つのラクトンを含みかつラクトンの加水分解時に少なくとも1つの分光光度的に検出可能な部分を形成することができる基質の存在下で行なわれる。
【0012】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、分光光度分析は、燐光分析、蛍光分析、発色分析、ルミネセンス分析およびイルミネセンス分析(illuminiscence assay)からなる群から選択される。
【0013】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出可能な部分はラクトンに結合される。
【0014】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出可能な部分はラクトンの一部を形成する。
【0015】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出可能な部分は少なくとも1つのチオールを含む。
【0016】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、基質はラクトンに結合されているチオアルコキシ基を含む。
【0017】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、チオアルコキシ基は2〜12個の炭素原子を含む。
【0018】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出は発色分析または蛍光発生分析によって行われる。
【0019】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、基質はラクトンのヘテロ原子に隣接する炭素に結合されたチオアルコキシ基を有する、5員、6員または7員のラクトンを含む。
【0020】
本発明のさらに別の側面によれば、サンプルにおけるラクトナーゼの活性を決定する方法であって、(a)サンプルを、少なくとも1つのラクトンを含みかつラクトンの加水分解時に少なくとも1つの分光光度的に検出可能な部分を形成することができる化合物と接触させること、ただし、検出可能な部分は化合物がラクトナーゼの基質と実質的に同じ構造を有するように選択される;および(b)部分のレベルを分光光度的に決定し、それによってサンプルにおけるラクトナーゼの活性を決定することを含む方法が提供される。
【0021】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、部分のレベルの決定は、燐光分析、蛍光分析、発色分析、ルミネセンス分析およびイルミネセンス分析からなる群から選択される。
【0022】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出可能な部分はラクトンに結合される。
【0023】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出可能な部分はラクトンの一部を形成する。
【0024】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出可能な部分は少なくとも1つのチオールを含む。
【0025】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、基質はラクトンに結合されているチオアルコキシ基を含む。
【0026】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、チオアルコキシ基は2〜12個の炭素原子を含む。
【0027】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出は発色分析によって行われる。
【0028】
本発明のさらに別の側面によれば、被験者におけるPON酵素の異常なレベルまたは異常な活性に関連する障害の素因を決定するかまたは障害を診断するためのキットであって、PON酵素のラクトナーゼ活性を決定することができる少なくとも1つの薬剤を含むキットが提供される。
【0029】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つの薬剤は、少なくとも1つのラクトンを含みかつラクトンの加水分解時に少なくとも1つの分光光度的に検出可能な部分を形成することができる化合物である。
【0030】
本発明のさらなる側面によれば、少なくとも1つのラクトンを含みかつラクトンの分解時に少なくとも1つの分光光度的に検出可能なチオール含有部分を形成することができる化合物が提供される。
【0031】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、チオール含有部分は、燐光分析、蛍光分析、発色分析、ルミネセンス分析およびイルミネセンス分析からなる群から選択される分光光度分析によって検出可能である。
【0032】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出可能な部分はラクトンに結合される。
【0033】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出可能な部分はラクトンの一部を形成する。
【0034】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、検出可能な部分はチオアルコキシ基を含む。
【0035】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、チオアルコキシ基は2〜12個の炭素原子を含む。
【0036】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、ラクトンは、5員、6員または7員のラクトンである。
【0037】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、ラクトンは5員のラクトンである。
【0038】
本発明は、生物学的に活性な血清パラオキソナーゼのレベルを決定するための方法および組成物を提供することによって、現在知られている構成の欠点に対処することに成功している。
【0039】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0040】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1a〜1bは、PON1のラクトナーゼ活性の比色測定(図1a)および蛍光発生測定(図1b)を示すグラフである。図1a−PON1の存在下(8.375×10−9M;黒四角)または非存在下(白丸)の、412nmでの吸光度によって監視された、0.5mM DTNBでの0.2mM TBBLのグラフ。図1b−PON1の存在下(8.375×10−9M;黒四角)または非存在下(白丸)の、400nmでの励起および516nmでの放射によって検出された、50μM CPMでの0.25mM TBBLのグラフ。
図2a〜2bは、ヒト血清におけるPON1のラクトナーゼ活性(図2a)およびアリールエステラーゼ活性(図2b)を示すグラフである。血清はTris(pH8.0)中で1:400に希釈され、反応物は、図2a−0.5mM TBBLおよび0.5mM DTNB;図2b−1.0mM 酢酸フェニルを含んでいた。インヒビター無し(黒四角)、100μM 2−ヒドロキシキノリン(白丸)、または5mM EDTA(黒三角)で観察された速度および血清無しのバックグラウンド加水分解(白四角)の速度が示される。TBBLの加水分解は、DTNBで検出され、412nmでの吸光度によって監視される(図2a)。酢酸フェニルの加水分解は、270nmでの吸光度で直接的に監視される(図2b)。
図3は、FACS分析によって決定された、チオアルキルブチロラクトン基質(TBBL)およびw/o/wエマルジョンを使用する、PON1発現E.coliにおけるPON1のラクトナーゼ活性を示すグラフである。細胞質中にrePON1を発現する細胞はTBBLおよびチオール検出色素CPMとともに乳化された。GFPおよびPON1を発現する単細胞(白色)およびGFPのみでのコントロール細胞(灰色)についての530nmでの蛍光放射(チオール−CPM付加物)の代表的ヒストグラムが示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、生物学的に活性なラクトナーゼ、特に血清パラオキソナーゼのレベルを決定するための方法および組成物、その合成基質の新規なファミリーおよびそれを調製する方法の発明である。
【0042】
本発明の原理および作用は、図面および付随する説明を参照してより十分に理解されることができる。
【0043】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施または実行されることができる。また、本明細書において用いられる表現法および用語法は記述のためであって、限定であると見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0044】
パラオキソナーゼ1(PON1)は、PON2およびPON3も含むタンパク質ファミリーのメンバーである。PON1は、エステル、有機リン酸塩(例えば、パラオキソン)およびラクトンのような広範囲の基質を加水分解する、抗アテローム発生特性および解毒特性を備えるHDL関連酵素である。長い間、PON1はアリールエステラーゼおよびパラオキソナーゼであると考えられ、その活性はそれに基づいて測定された。しかしながら、PON1は本来、種々のラクトンの加水分解および形成の両方を触媒するラクトナーゼであることが最近明らかになった。構造−反応性研究および実験室進化実験は、PON1の本来の活性がラクトナーゼであること、およびパラオキソナーゼおよびアリールエステラーゼが不規則な活性であることを示す。
【0045】
現在の慣習は、生理学的毒素または生体異物毒素(すなわち、身体または生体に対して異質な化学化合物)に対してPON1によって提供される保護の程度を決定するのは、PON1が毒性の有機リン酸塩を分解し、酸化脂質を代謝する触媒効率であることを示唆する。さらに、PON1のより高い濃度は、より良好な保護を提供する。
【0046】
したがって、適切な危険性評価のためにはPONレベルおよび活性を知ることが重要である。
【0047】
上記で言及したように、PONのラクトナーゼ活性は最近発見されたとはいえ、PONの生物学的活性を正確に評価するためのPONラクトナーゼ活性の分析は提案されてこなかった。
【0048】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、PONのラクトナーゼ活性を決定することが個体における生物学的に活性なPONのレベルを決定するために使用されうることを発見した。これらの知見は、アテローム性動脈硬化のような、PONの低下した活性またはレベルに関連する多くの状態に対する正確な危険性評価を容易にすることができる。
【0049】
したがって、本発明の1つの側面によれば、生物学的に活性なPON酵素のレベルを決定する方法が提供される。
【0050】
本明細書において使用される表現「PON酵素」は、ヒトPON1(GenBankアクセッション番号NP_000437.3)、ヒトPON2(GenBankアクセッション番号NP_000296.1)、およびヒトPON3(GenBankアクセッション番号NP_000931.1)のようなパラオキソナーゼ酵素(例えば、哺乳動物パラオキソナーゼ)を示す。
【0051】
本明細書において使用される表現「生物学的に活性なPON酵素」は、例えば酸化脂質の加水分解のような生物学的な(例えば、生理学的な)事象に関わるPON酵素の部分を示す。
【0052】
例えば、生物学的に活性なPON酵素は、HDL−apoA−Iのような種々のアポリポタンパク質粒子に関連するPON酵素の部分を示すことができる。apoA−Iと関連するPON酵素がapoA−IVおよびapoA−IIと比較してより高いPONラクトナーゼ活性を刺激することができることが最近確立されてきた(GaudukovおよびTawfik(2005)Biochemistry(印刷中)を参照のこと)。
【0053】
好ましくは、本発明のPON酵素は、以下にさらに記載されるように、動物被験体(例えば、ヒト)に由来する生物学的サンプル中に存在する。
【0054】
本発明のこの側面の方法は、生物学的に活性なPON酵素のレベルを示す、PON酵素のラクトナーゼ活性を決定することによって行われる。
【0055】
本明細書において使用される表現「ラクトナーゼ活性」は、ラクトン加水分解活性を示し、それは典型的には、本発明のこの側面に従ってラクトンのエステル結合の加水分解を示す。
【0056】
酵素のラクトナーゼ活性を決定する方法は、当該分野において周知である。これらの方法は典型的には、例えば、クロマトグラフィ分析(例えば、HPLC、TLC、GC、CPE)、pH指示薬分析、共役酵素分析(すなわち、これらの分析において、分析される酵素以外の酵素が測定可能な生成物を産出するために加えられる;例えば、カルボン酸生成物はデヒドロゲナーゼによってターンオーバーされ、NAD/NADH、またはNADP/NADPHの濃度の変化が吸光度または蛍光によって監視される)、熱量分析(すなわち、熱量の変化を監視すること)、電気化学的分析(すなわち、レドックス電位の変化を監視すること)、および/または分光光度分析のような公知の生化学的分析によって行われる。
【0057】
典型的な酵素分析は、試験される酵素が特異的に触媒する化学反応に基づく。化学反応は典型的には、基質またはその類似物の生成物への変換である。基質または生成物のいずれかのレベル、すなわち濃度の微細な変化を検出する能力は、定性的および定量的に酵素の活性を決定することを可能にし、試験される酵素に対する特定の基質の特異性を定量的に決定しさえする。基質および/または生成物のレベルの微細な変化を測定するために、これらの化合物は、pH、分子量、色または他の直接的もしくは間接的に測定可能な化学的および/または物理的性質の変化のような化学的または物理的に検出されることができる化学的および/または物理的性質を有するべきである。
【0058】
以下は、本発明のこの側面に従って使用されうる例示的なラクトナーゼ分析の説明である。
【0059】
pH指示薬分析−pH指示薬に基づく酵素の分析は、典型的には脂肪族のラクトンでラクトナーゼ活性を測定するために使用される。pH指示薬分析は、SPECTRAmax(登録商標)PLUSマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して、Billeckeら(2000)Drug Metab.Dispos.28:1335−1342に記載されるような連続的なpH感受性比色分析(すなわち、pH指示薬によって生成される色の強度を測定すること)を使用して達成されてもよい。2mM HEPES(pH8.0)、1mM CaCl、0.004%(w/v)フェノールレッド、および希釈/非希釈PON含有サンプル(例えば、100〜1000倍に希釈された血清サンプル)を含有する反応(200μl最終容量)は、メタノール中の100mM基質溶液2μlで開始され、37℃で3〜10分間実行される。速度は、既知量のHCLを使用して生成された標準曲線から予測される速度因子(mOD/μmol H)を使用して、475nm(等吸収点)で補正しながら558nmでの吸光度減少の勾配から計算される。ラクトンの自発性の加水分解および大気中のCOによる酸性化は好ましくは、酵素の代わりに同じ容量の保存緩衝液での平行反応を実行することによって補正される。
【0060】
あるいは、カルボン酸形成から生じるプロトン放出は、pH指示薬クレゾールパープルを用いて監視されることができる。反応は、1mM CaClおよび0.2M NaClを含有するBicine緩衝液2.5mMにおいて、pH8.0〜8.3で行われる。反応混合物は、0.2〜0.3mMのクレゾールレッド(DMSO中の60mMストックから)を含有する。基質と酵素サンプルとの混合時に、577nmでの吸光度の減少がマイクロタイタープレートリーダーにおいて監視される。分析は、速度因子(−OD/Hのモル)を与える酢酸でのその場での較正(標準酸滴定曲線)を必要とする。
【0061】
HPLC分析−種々のラクトン基質の加水分解は、HPLC分析によって検出されることができる。したがって、例えば、アシルホモセリンラクトン(AHL)の加水分解は、HPLC(例えば、Supelco Discovery C−18カラム(250×4.6mm、5μm粒子)を使用して197nmで設定されたWaters 2996フォトダイオードアレイ検出器を備えたWaters2695システム)によって分析されることができる。酵素反応は、50μl容量の25mM Tris−HCl(pH7.4)、1mM CaCl、25μM AHL(例えば、メタノール中の2mMストック溶液から)、および希釈/非希釈PON含有サンプル(例えば、100〜1000倍に希釈された血清サンプル)において室温で実行される。反応は50μlアセトニトリル(ACN)で停止され、タンパク質を除去するために遠心分離される。上清(40μl)はHPLCシステムに充填され、85% CAN/0.2%酢酸(テトラデカ−ホモセリンラクトン)、0.75% CAN/0.2%酢酸(ドデカ−ホモセリンラクトン)、50% CAN/0.2%酢酸(ヘプタ−ホモセリンラクトン)、または20% CAN/0.2%酢酸(3−オキソ−ヘキサノイルホモセリンラクトン)でアイソクラチック溶出される。
【0062】
スタチンラクトン(メバスタチン、ロバスタチン、およびシンバスタチン)の加水分解は、例えば、Model 126 Programmable Solvent Module、238nmで設定されたModel 168 Diode Array Detector、20μlループのModel 7125 Rheodyne 手動注入弁、およびBeckman ODS Ultrasphereカラム(C 18、250×4.6mm、5μm)を備えるBeckman System Gold HPLCを用いることによる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析されることができる。ロバスタチン(Mevacor)およびシンバスタチンは、Merckから20mg錠剤として購入でき、ラクトンはそれらの錠剤からクロロホルムで抽出され、乾燥するまで蒸発され、メタノール中に再溶解される。メバスタチンはSigmaから購入できる。
【0063】
1mlの最終容量において、10〜200μlの酵素溶液およびメタノール中の基質溶液(0.5mg/ml)10μlは、50mM Tris/HCl(pH7.6)、1mM CaCl中で25℃でインキュベートされる。アリコート(100μl)は特定の時点で除去され、アセトニトリル(100μl)に添加され、ボルテックスされ、そして1分間最大速度で遠心分離(Beckman microfuge)される。上清は新しい試験管中に注がれ、蓋をされ、そしてHPLC分析まで氷上で保存される。
【0064】
サンプルは、移動相A=酢酸/アセトニトリル/水(2:249:249、v/v/v)および移動相B=アセトニトリルからなる移動相を用いてメバスタチン、ロバスタチンおよびシンバスタチンのそれぞれについて50/50、45/55および40/60のA/B比率で1.0ml/分の流速でアイソクラチック溶出される。
【0065】
分光光度分析−分光光度分析において、基質の消費および/または生成物の形成は、酵素触媒時に形成される分光光度的に検出可能な部分の濃度に起こる変化を追跡することによって測定されることができる。分光光度分析の例としては、限定されないが、燐光分析、蛍光分析、発色分析、ルミネセンス分析およびイルミネセンス分析が挙げられる。
【0066】
燐光分析は、放射エネルギーまたは他のタイプのエネルギーの吸収後に分光光度的に検出可能な部分によって生成されるルミネセンスの変化を監視する。燐光は、燐光をもたらす放射が終わった後も持続する点で蛍光と区別される。
【0067】
蛍光分析は、光もしくは他の形態の電磁放射または他の手段による刺激または励起下で、分光光度的に検出可能な部分によって生成されるルミネセンスの変化を監視する。光は刺激が持続している間のみ発せられる。この現象の点で蛍光は、他の放射による励起が終わった後にも光が発せられ続ける燐光と異なる。
【0068】
発色分析は、特徴的な波長を有する分光光度的に検出可能な部分によって生成される分析媒体の色の変化を監視する。
【0069】
ルミネセンス分析は、化学ルミネセンスによって生成されるルミネセンス、したがって酵素反応時に生成または消費される分光光度的に検出可能な部分によって生成されるルミネセンスの変化を監視する。ルミネセンスは、より高いエネルギー状態からより低いエネルギー状態への物質内の電子の移動によって引き起こされる。
【0070】
本発明の文脈において使用される表現「分光光度的に検出可能な」は、紫外線〜赤外線の範囲の波長を有する測定可能な電磁放射の挙動に関係する物理的現象を記述する。定量的に測定されることができる分光光度的に検出可能な特性の非限定的な例は、化学化合物の色、照度、および赤外線および/またはUVに特異的な特性である。
【0071】
したがって、表現「分光光度的に検出可能な部分」は、酵素分析時に形成され、かつ上記で定義されるような1つ以上の分光光度的に検出可能な特性によって特徴付けられる部分を記述する。したがって、酵素活性と相関するこのような部分の濃度は、酵素反応分析時に定量的に決定されることができる。
【0072】
上記で言及されたように、ラクトンはPON酵素の天然基質である。したがって、上で述べられた分析の各々において、基質は好ましくは1つ以上のラクトン部分を含む。
【0073】
当該分野において周知であるように、用語「ラクトン」は、典型的にはアルコールとカルボン酸エステルの間の分子間反応の縮合生成物である環状エステルのような環状カルボン酸部分を記述する。この縮合生成物はしばしば当該分野において「オキソ−ラクトン」として示される。用語「ラクトン」はまた、典型的には、環状チオカルボン酸部分を示し、したがって、チオール基とカルボン酸、アルコールとチオカルボン酸、およびチオール基とチオカルボン酸の間の分子間反応の縮合生成物も含む。このようなラクトンはしばしば当該分野において「チオラクトン」として集合的に示される。
【0074】
当該分野においてさらに周知であるように、ラクトン環のサイズは典型的には4〜8個の原子の範囲である。環張力および他の熱力学的考察により、一般的なラクトンの環サイズは5〜7個の原子の範囲である。このようなラクトンは、PON酵素の好ましい基質としても知られている。
【0075】
一般的に使用される接頭辞はラクトンの環サイズを示すために使用されることができる:βラクトンは4員環のラクトンを記述し、γラクトンは5員環のラクトンを記述し、そしてδラクトンは6員環のラクトンを記述する。
【0076】
したがって、本明細書において使用される用語「ラクトン」は、ラクトン環中に4〜8個の原子、好ましくは5〜7個の原子を有する、上記のようなオキソ−ラクトンおよびチオラクトンを包含する。ラクトン部分は置換されていても置換されていなくてもよい。置換されている場合、ラクトン環中の1つ以上の炭素原子は、限定されないが、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を通して結合される)、またはヘテロ脂環式(環炭素を通して結合される)、アルコキシ、チオアルコキシ(これらの用語は以下に定義される)などのような1つ以上の置換基によって置換されることができる。
【0077】
本明細書において使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を記述する。好ましくは、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1〜20個」が本明細書において示される場合には常に、基(この場合アルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など20個までの炭素原子を含むことができることを意味する。より好ましくは、アルキルは1〜10個の炭素原子を有する中間サイズのアルキルである。最も好ましくは、特記しない限り、アルキルは1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0078】
用語「アルケニル」は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素の二重結合からなるアルキル基を示す。
【0079】
用語「シクロアルキル」は、環の1つ以上が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記述する。
【0080】
用語「ヘテロ脂環式」は、窒素、酸素、および硫黄のような1個以上の原子を環中に有する単環基または縮合環基を記述する。この環は、1つ以上の二重結合を有してもよい。しかし、環は完全共役のπ電子系を有さない。
【0081】
用語「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合環多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記述する。
【0082】
用語「ヘテロアリール」は、例えば、窒素、酸素および硫黄などの1個以上の原子を環(単数または複数)中に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記述する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。
【0083】
用語「チオール」および「チオヒドロキシ」は−SH基を示す。
【0084】
用語「ヒドロキシ」は−OH基を示す。
【0085】
本明細書において使用される用語「アルコキシ」は、本明細書において定義されるような−O−アルキル基を示す。
【0086】
本明細書において使用される用語「チオアルコキシ」は、本明細書において定義されるような−S−アルキル基を示す。
【0087】
上記のラクトン部分は、上記の酵素分析において基質として使用される場合、さらに物質の一部を形成することができる。したがって、例えば、ラクトン部分は脂肪酸、ステロイド等の一部を形成することができる。
【0088】
本発明の好ましい実施形態によれば、PON酵素のラクトナーゼ活性を決定することは、分光光度分析によって行われる。本発明のさらに好ましい実施形態によれば、このような分析は、1つ以上のラクトンを含みかつ1つ以上の分光光度的に検出可能な部分を形成することができる基質を利用する。酵素はこのような基質と接触させられ、検出可能な部分の量が測定される。
【0089】
本明細書において記述される分光光度分析の1つの実施形態において、分光光度的に検出可能な部分がラクトンの不可欠な部分を形成する基質が利用される。このような分析において、酵素はラクトンを加水分解し、分光光度的に検出可能な種が分析媒体中に生成される。したがって、基質は、その構造中に予め分光光度的に検出可能な部分を有する予め分光光度的に検出可能な物質である。
【0090】
本明細書において使用される表現「予め分光光度的に検出可能な部分または物質」は、ある条件下で、ここでは酵素反応に供された場合に、検出可能な部分を形成することができる部分または物質を記述するために使用される。
【0091】
ラクトン含有基質の一部を形成する分光光度的に検出可能な部分は、このような基質がその天然の酵素に対する基質の天然の化学的および空間的な特異性を維持し、それによって酵素と基質の間の天然の化学的相互作用を維持するので極めて有利である。これらの相互作用を維持することは、酵素の天然の生物学的活性を研究し決定することを可能にし、また天然阻害剤および合成阻害剤のような酵素の他の化学的エフェクター間の生物学的に有意義な比較も可能にする。
【0092】
本明細書において記述される分光光度分析の1つの実施形態において、分光光度的に検出可能な部分がラクトンに結合される基質が利用される。このような基質は、分光光度的に検出可能な部分が典型的には分析において行われる酵素反応時に放出されるように選択される。
【0093】
本発明のこの側面の好ましい実施形態によれば、分光光度的に検出可能な部分はチオール基を含む。
【0094】
チオールは、極めて便利な検出可能な基である。チオール分析は、例えば、チオール基によるプロ色素(pro−dye)5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸;DTNB、Ellman試薬としても知られる[Ellman,G.L.,1959,Arch.Biochem.Biophys.82,70−77])の還元に基づく分光光度的な方法を用いて行われることができる。この反応は着色種を生成し、その種は以下で記述されかつさらに以下の実施例の節において例示されるように、412nmの波長で検出されることができる。
【0095】
上記で検討されたように、チオール基は、本実施形態において利用される基質においてラクトンの一部を形成することができる。したがって、基質中の1つ以上のラクトン部分はラクトン環中に硫黄原子を有してもよく、その硫黄原子は酵素加水分解時にチオールを生成する。下記のスキーム1で示されるように、チオールは上記のように、DTNBとのその典型的な反応によって検出されることができる。

【0096】
任意選択的に、チオール含有基は、基質中のラクトン部分に結合されることができる。このようなチオール含有基質は、チオールを含有する検出可能な部分が酵素反応時に放出されるように設計される。この点で分類されるチオールを含む好ましい検出可能な部分は、チオアルコキシ基である。チオアルコキシ基は下記のスキームIIに示されるように、酵素反応時にチオアルキルが生成されるようにラクトンに結合されることができる。

【0097】
さらに本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、ラクトナーゼ活性分析において有効なPON基質として役立ちうる一連の新規なラクトン含有化合物を設計し、首尾良く調製し、そして使用した。
【0098】
このようなラクトン含有化合物は、1つ以上のラクトン環を含み、ラクトン環は、その分解時に1つ以上の分光光度的に検出可能なチオール含有部分を形成することができ、そして以下の一般式Iによって集合的に表される。

式中、XおよびYはそれぞれ酸素または硫黄原子であり、Zは炭素または硫黄原子であり、YおよびZの少なくとも1つは硫黄であり、nは2〜4の整数であり、そしてR、RおよびRは各々独立して水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を通して結合される)またはヘテロ脂環式(環炭素を通して結合される)、アルコキシなどである。
【0099】
したがって、新規なラクトンは、nが2であるとき5員のラクトンであり、nが3であるとき6員のラクトンであり、またはnが4であるとき7員のラクトンである。好ましくはnは2であり、5員のラクトンを形成する。
【0100】
1つの好ましい実施形態において、XおよびYはともに酸素原子であり、Zは硫黄原子である。好ましくは、Rは2〜12個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0101】
このようなラクトンは典型的には、PONによるラクトナーゼによって行われる酵素加水分解を受け、その後、加水分解において形成される、1つの原子に同じ種類の原子が2つ結合したチオアルコキシ/チオヒドロキシ−ヒドロキシ部分の早い自然分解の結果としてチオールを放出する。上記のスキームIIに示されるように、生じたチオールは、上に記述されかつ以下の実施例の節で例示されるように、DTNBでの典型的反応によって検出されることができる。
【0102】
別の好ましい実施形態において、Xは酸素であり、Yは硫黄であり、その結果、化合物はチオラクトンである。この実施形態において、Zは炭素または硫黄のいずれか、好ましくは炭素であることができ、そしてRは水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を通して結合される)、またはヘテロ脂環式(環炭素を通して結合される)、アルコキシなどであることができ、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するアルキルである。このようなチオラクトンは、後に検出されることができるチオール基を生成する、PONによるラクトナーゼによって行われる酵素加水分解を受けることができる。
【0103】
PON分析における5位で結合されたアルキル基またはチオアルコキシ基を有する5員のラクトンの使用は、これらの化合物が長いアルキル側鎖を有する5員環のオキソ−ラクトンを含むPON1の好ましい基質とほぼ同一であるので、極めて有利である[2、4、6]
【0104】
酵素反応において生成されるチオール含有部分(例えば、チオアルキル)は、上記で検討されたように、例えば燐光分析、蛍光分析、発色分析、ルミネセンス分析、およびイルミネセンス分析において分光光度的に検出可能な部分として役立つことができ、それらは典型的には酵素活性の検出および定量化のための比較的単純かつ迅速な技術である。
【0105】
下記で実証および例示されるように、本発明者は、5位で5員環のラクトンに結合される分光光度的に検出可能なチオアルコキシ部分を有する一連のラクトン基質を使用している。下記の実施例の節において示されるように、5−エチルスルファニル−ジヒドロ−フラン−2−オン、5−ブチルスルファニル−ジヒドロ−フラン−2−オン、および5−ヘキシルスルファニル−ジヒドロ−フラン−2−オンのラクトンが調製された。下記の表1に示されるこれらのラクトンは、ラクトンで観察されるkcat/K値に匹敵しかつ酵素基質について許容可能な値であると考えられる、1.5×10〜4.45×10の範囲のkcat/K値を示した。
【0106】
酵素活性のkcat/K値は、基質特異性の強さを与える。それは同じ酵素に対する異なる基質の特異性を比較すること、または同じ基質を変換する異なる酵素の触媒速度の比較を可能にする。この速度は二次の速度定数の単位を有し、そしてl/(濃度×時間)として表される。ある酵素で10−1−1以上の値が観察されたが、10〜10−1−1の範囲のkcat/K比率を有する基質が良好な基質、すなわち酵素分析において妥当な親和性、特異性、および迅速なターンオーバーを示すと考えられる。
【0107】
上記の新規なラクトンのような、酵素反応時に検出可能な部分を形成しかつ生理学的なラクトナーゼ基質に構造的に類似するラクトンは、サンプルにおけるラクトナーゼの活性を決定するために利用されることができる。
【0108】
したがって、本発明の別の側面によれば、サンプルにおけるラクトナーゼの活性を決定する方法が提供される。本発明のこの側面によれば、その方法は、
(a)サンプルを、上記で定義されるような1つ以上のラクトンを含み、かつ、1つ以上のラクトンの加水分解時に上記で定義されるような1つ以上の分光光度的に検出可能な部分を形成することができる化合物と接触させること、ただし、検出可能な部分は化合物がラクトナーゼの基質と実質的に同じ構造を有するように選択される;および
(b)分光光度的に検出可能な部分のレベルを分光光度的に測定し、それによってサンプルにおけるラクトナーゼの活性を決定すること
によって行われる。
【0109】
本明細書において使用される表現「ラクトナーゼの基質と実質的に同じ構造を有する」は、天然基質の構造とほぼ同一であり、1個または2個の原子の置換、側鎖の伸長などの比較的小さな化学的および/または構造的特徴によって天然基質と異なる合成基質の化学構造を示す。
【0110】
上記で示されるラクトナーゼ活性分析の特定の場合におけるように、いかなるラクトナーゼ活性の分析も、上記で検討されたような燐光分析、蛍光分析、発色分析、ルミネセンス分析、およびイルミネセンス分析のような分光光度分析技術を使用することが好ましい。なぜなら、これらの分析は通常、分光光度的に検出可能な部分および他の化学部分の濃度の微細な変化を決定するために、広く入手可能な機械および測定装置を必要とするからである。
【0111】
いかなるラクトナーゼ活性のレベルを測定することも、上記で検討されるPONラクトナーゼ活性分析の例において記述されるように、ラクトン環の一部を形成することまたは置換基としてラクトンに結合されることのいずれかによってラクトンに結合される検出可能な部分の濃度レベルを追跡することによって行われる。
【0112】
本明細書において検討されるPONラクトナーゼ活性分析の例におけるように、検出可能な部分は好ましくは1つ以上のチオール基を含む。
【0113】
ラクトナーゼ活性を決定するための上記の薬剤が、例えば被験者におけるPON酵素のような、ラクトナーゼの異常なレベルまたは活性に関連する障害または状態の素因を決定するためのまたは障害または状態を診断するためのキット中に含まれてもよいことは注意されるべきである。
【0114】
本明細書において使用される用語「被験者(被験体)」または「個体」は、被験者(例えば、哺乳動物)を示し、好ましくはPON酵素の異常なレベルまたは活性に関連する障害に罹患していると疑われるかまたは罹患の危険性のあるヒト被験者を示す。
【0115】
本明細書において使用される用語「診断する」は、疾患、状態または症状を分類すること、疾患、状態、または症状の重篤度を決定すること、疾患の進行を監視すること、疾患の結果および/または回復の見通しを予測することを示す。
【0116】
本明細書において使用される表現「PON酵素の異常なレベル(健康な被験者から得られたコントロールサンプルに比べて高いレベルまたは低いレベル)または活性に関連する障害または状態」は、PON(例えば、PON1)活性が変化した種々の病理学的および生理学的状態および疾患を示す(例えば、Costaら(2005)Biochemical Pharmacology 69:541−550およびその参考文献を参照のこと)。例えば、血清PON1活性は、インスリン依存性(I型)および非インスリン依存性(II型)糖尿病、アルツハイマー病(Dantoineら、2002 パラオキソナーゼ1活性:痴呆の新しい脈管マーカーか? Ann N Y Acad Sci.2002 11月;977:96−191)、ならびに動脈硬化を含む種々の心臓疾患において低いことが示されている(Costaら(2005);Macknessら(2004) 心臓血管疾患におけるパラオキソナーゼ1活性の役割:治療的介入の可能性 Am J Cardiovasc Drugs.2004;4(4):211−7;Durringtonら(2001) パラオキソナーゼおよび動脈硬化 Arterioscler Thromb Vasc Biol.2001 21(4):473−80)。減少したPON活性はまた、慢性の腎不全、慢性関節リウマチ、または魚眼病(深刻な角膜の混濁によって特徴付けられる)を有する患者においても見出されている。甲状腺亢進はまた、低い血清PON活性、肝臓疾患、アルツハイマー病、および血管性痴呆に関連する。低いPON活性はまた、感染性疾患においても観察される(例えば、急性期応答の間)。異常に低いPONレベルはまた、環境化学物質(例えば、コバルト、カドミウム、ニッケル、亜鉛、銅、バリウム、ランタン、水銀のような金属;ジクロロ酢酸、四塩化炭素)、薬物(例えば、コリン作用性ムスカリン様アンタゴニスト、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アルコール)のような種々の外因性化合物への曝露に関連する。述べたように、減少したPONレベルはまた、妊娠および老年期のような種々の生理学的状態の特徴でもあり、一般的な健康状態の被験者の指標になりうる。例えば、喫煙者は低い血清PON1活性を示し、身体運動は喫煙者のPON1レベルを回復させることが知られている。
【0117】
したがって、本発明の薬剤(例えば、上記のようなラクトナーゼ基質)は、反応緩衝液、保存緩衝液、およびサンプル希釈緩衝液をさらに含むことができる診断用キット中に含まれることができる。好ましくは、キットは印刷物をさらに含み、例えば印刷物は診断用キットの使用説明書を含む。
【0118】
上で述べたように、生物学的に活性なPONのレベルを決定する能力は、個体のPON状態を決定することを容易にすることができる。
【0119】
本明細書において使用される表現「PON状態」は、PON活性(すなわち、ラクトナーゼ活性)およびPON遺伝子型を示す。
【0120】
PON1多型と疾患との関連を調査する大半の研究は、ヌクレオチド多型のみを試験し、そのヌクレオチド多型について遺伝子のコード領域(例えば、Q192R、L55M、C−108T)、イントロン、および制御領域における多型を含む160以上の多型が記載されている。しかしながら、すべての知られているPON1(または他の)多型を遺伝子型決定するときでさえ、この分析がPON活性のレベルも多型の状態(すなわち、どの多型が個体の2つの染色体のそれぞれにあるのか)も与えなかったことが明らかになっている。したがって、機能的なゲノム分析は、より多くの有益なアプローチを提供するだろう。
【0121】
したがって、本発明の別の側面によれば、個体のPON状態を決定する方法が提供される。
【0122】
本発明のこの側面の方法は、被験者のPON酵素のラクトナーゼ活性レベルを決定すること(ただし前記ラクトナーゼ活性は被験者における生物学的に活性なPONの指標である);および、被験者のPON酵素を遺伝子型決定し、それによって被験者のPON状態を決定することによって行われる。
【0123】
PON酵素の遺伝子型決定は、当該分野で周知の分子生物学的方法または生化学的方法を使用して、核酸レベルまたはタンパク質レベル(多型が翻訳されたタンパク質に影響を及ぼす場合)で行われることができる。
【0124】
PONの多型形態は、単一ヌクレオチド多型(SNP)、少なくとも1つのヌクレオチドの微小欠失および/または微小挿入、短い欠失および挿入、複数のヌクレオチド変化、短いタンデムリピート(STR)、および可変数のタンデムリピート(VNTR)の結果であることができる。
【0125】
多型データを得るために、被験者のPON酵素を含む生物学的サンプル(例えば、血清サンプル、尿サンプル、滑液サンプル、生検(例えば、肝臓生検))は、DNA多型、RNA多型、および/またはタンパク質多型の対立遺伝子決定に供される。
【0126】
以下は、本発明に従って使用されることができる多型(例えば、SNP)検出方法の非限定的な列挙である。
【0127】
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO):この方法において、プライマー伸長または連鎖反応事象がマッチまたはミスマッチの指標として使用されることができるように、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)が多型ヌクレオチド付近にハイブリダイズするように設計される。放射能標識された対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)でのハイブリダイゼーションはまた、特異的SNPの検出に適用されている(Connerら、Proc.Natl.Acad.Sci.,80:278−282、1983)。方法は、一つのヌクレオチドだけ異なる短いDNA断片の融点の差異に基づく。厳密なハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は、変異体対立遺伝子と野生型対立遺伝子の間で差異を生じさせることができる。
【0128】
PyrosequencingTM分析(Pyrosequencing,Inc.Westborough,MA,米国):この技術は、DNAポリメラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼおよびアピラーゼの各酵素ならびにアデノシン5’ホスホスルファート(APS)およびルシフェリン基質の存在下での一本鎖のPCR増幅されたDNAテンプレートに対する配列決定用プライマーのハイブリダイゼーションに基づく。次の工程において、4つのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)のうちの最初のものが反応に加えられ、そのデオキシヌクレオチド三リン酸がテンプレート鎖において塩基に対して相補的であるならば、DNAポリメラーゼがDNA鎖内へのそのデオキシヌクレオチド三リン酸の取り込みを触媒する。それぞれの取り込み事象は、取り込まれたヌクレオチドの量に対して等モル量でのピロリン酸(PPi)の放出を伴う。最後の工程において、ATPスルフリラーゼはアデノシン5’ホスホスルファートの存在下でPPiをATPに定量的に変換する。このATPは、ATPの量に比例する量で可視光を生じさせるオキシルシフェリンへのルシフェリンのルシフェラーゼ媒介の変換を行わせる。ルシフェラーゼにより触媒される反応において生じた光は電荷結合素子(CCD)カメラによって検出され、pyrogramTMにおけるピークとして見られる。それぞれの光シグナルが、取り込まれたヌクレオチドの数に比例している。
【0129】
AcycloprimeTM分析(Perkin Elmer、Boston、Massachusetts、米国):この技術は、蛍光分極化(FP)検出に基づく。目的のSNPを含有する配列のPCR増幅後、過剰なプライマーおよびdNTPはエビアルカリホスファターゼ(SAP)およびエキソヌクレアーゼIでのインキュベーションにより除かれる。これらの酵素が熱により不活化されると、Acycloprime−FPプロセスは、熱安定ポリメラーゼを使用して、2つの蛍光ターミネーターの一方を、SNP部位のすぐ上流で停止するプライマーに添加する。添加されたターミネーターはその増大したFPによって同定され、元のDNAサンプルに存在する対立遺伝子を表す。Acycloprimeプロセスは、AcycloPolTM(Archeon科から得られる新規な変異型熱安定ポリメラーゼ)、および目的のSNPについての可能性のある対立遺伝子を表す、R110およびTAMRAで標識された1対のAcycloTerminatorsTMを使用する。AcycloTerminatorTM非ヌクレオチド類似物は様々なDNAポリメラーゼとともに生物学的に活性である。2’,3’−ジデオキシヌクレオチド−5’−三リン酸と同様に、非環状類似物は鎖ターミネーターとして機能する。類似物は、DNA鎖の3’末端上に塩基特異的な様式でDNAポリメラーゼによって取り込まれ、そして、3’−ヒドロキシルが存在しないので、さらなる鎖伸張において機能することができない。AcycloPolは、種々のTaq変異体が誘導体化2’,3’−ジデオキシヌクレオチドターミネーターに対して有するよりも、誘導体化されたAcycloTerminatorsに対して高い親和性および特異性を有することが見出されている。
【0130】
SNP検出の分野における進歩は、さらに正確で、容易で、かつ、費用のかからない大規模なSNP遺伝子型決定技術を提供してきたことが理解される:このような技術は、例えば、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH、Howell,W.M.ら、1999、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、Nat.Biotechnol.17:87〜8)、マイクロプレートアレイ対角線ゲル電気泳動[MADGE、Day,I.N.ら、1995、マイクロプレートアレイ対角線ゲル電気泳動(MADGE)のために配置されたウエルを備える水平ポリアクリルアミドゲルを使用するハイスループット遺伝子型決定、Biotechniques、19:830〜5]、TaqManシステム(Holland,P.M.ら、1991、Thermus aquaticusのDNAポリメラーゼの5’−>3’エキソヌクレアーゼ活性を利用することによる特異的ポリメラーゼ連鎖反応生成物の検出、Proc Natl Acad Sci USA、88:7276〜80)、ならびに、様々なDNA「チップ」技術、例えば、米国特許第6300063号(Lipshutzら、2001)(これは参照として全てが本明細書中に組み込まれる)に開示されるGeneChipマイクロアレイ(例えば、Affymetrix SNPチップ)、Goelet,P.ら(PCT出願番号92/15712)によって記載されるGenetic Bit Analysis(GBATM)、ペプチド核酸プローブ(PNA、Ren Bら、2004、Nucleic Acids Res.32:e42)およびロックド核酸プローブ(LNA、Latorra Dら、2003、Hum.Mutat.22:79〜85)、分子ビーコン(Abravaya Kら、2003、Clin Chem Lab Med.41:468〜74)、インターカレーション色素[Germer,S.およびHiguchi,R.オリゴヌクレオチドプローブを用いないシングルチューブ遺伝子型決定、Genome Res.9:72〜78(1999)]、FRETプライマー(Solinas Aら、2001、Nucleic Acids Res.29:E96)、AlphaScreen(Beaudet Lら、Genome Res.2001、11(4):600〜8)、SNPstream(Bell PAら、2002、Biotechniques.Suppl.70〜2、74、76〜7)、多重ミニ配列決定(Curcio Mら、2002、Electrophoresis.23:1467〜72)、SnaPshot(Turner Dら、2002、Hum Immunol、63:508〜13)、MassEXTEND(Cashman JRら、2001、Drug Metab Dispos.29:1629〜37)、GOOD分析(Sauer SおよびGut IG、2003、Rapid Commun.Mass.Spectrom.17:1265〜72)、マイクロアレイミニ配列決定(Liljedahl Uら、2003、Pharmacogenetics、13:7〜17)、アレイ型プライマー伸張(APEX)(Tonisson Nら、2000、Clin.Chem.Lab.Med.38:165〜70)、マイクロアレイプライマー伸張(O’Meara Dら、2002、Nucleic Acids Res.30:e75)、Tagアレイ(Fan JBら、2000、Genome Res.10:853〜60)、テンプレート指向取り込み(TDI)(Akula Nら、2002、Biotechniques、32:1072〜8)、蛍光分極化(Hsu TMら、2001、Biotechniques、31:560、562、564〜8)、比色オリゴヌクレオチドライゲーション分析(OLA、Nickerson DAら、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.87:8923〜7)、配列コード化OLA(Gasparini Pら、1999、J.Med.Screen.6:67〜9)、マイクロアレイライゲーション、リガーゼ連鎖反応,Padlockプローブ、ローリングサークル増幅、Invader分析(総説、Shi MM、2001、ハイスループットな変異検出技術および遺伝子型決定技術による大規模な薬理遺伝学研究を実現する、Clin Chem.47:164〜72)、コード化マイクロスフェア(Rao KVら、2003、Nucleic Acids Res.31:e66)およびMassArray(Leushner J、Chiu NH、2000、Mol Diagn.5:341〜80)などである。
【0131】
上で言及されたように、細胞の遺伝的プロファイルはまた、細胞トランスクリプトームの分析を介して行われることができる。
【0132】
本発明の細胞におけるRNAの発現レベルは、当該分野において公知の方法を用いて決定されることができる。
【0133】
RT−PCR分析:この方法は、比較的希なRNA分子のPCR増幅を用いる。まず、RNA分子は細胞から精製され、逆転写酵素(例えば、MMLV−RT)およびオリゴdT、ランダムヘキサマー、または遺伝子特異的プライマーのようなプライマーを用いて相補的DNA(cDNA)へと変換される。次いで、遺伝子特異的プライマーおよびTaq DNAポリメラーゼを適用することによって、PCR装置においてPCR増幅反応が実行される。当業者は、特異的なRNA分子を検出するために適切な遺伝子特異的プライマーの長さおよび配列、ならびにPCR条件(すなわち、アニーリング温度、サイクル数など)を選択することが可能である。半定量的RT−PCR反応はPCRサイクル数を調製することおよび増幅生成物を既知のコントロールと比較することによって用いられうることが理解される。
【0134】
本発明の培養物の細胞において発現されるタンパク質の発現および/または活性レベルは、当該分野において公知の方法を用いて決定されることができる。
【0135】
酵素結合免疫吸着分析(ELISA):この方法は、マイクロタイタープレートのウエルのような表面への、タンパク質基質を含有するサンプル(例えば、固定された細胞またはタンパク質性溶液)の固定を含む。酵素にカップリングされた基質特異的な抗体が適用され、基質に結合させられる。次いで、抗体の存在が、抗体にカップリングされた酵素を用いる比色反応によって検出および定量される。この方法において一般的に用いられる酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼが含まれる。十分に較正され、かつ、応答の直線範囲内にある場合、サンプルに存在する基質の量は、生じた色の量に比例している。基質標準物が、定量精度を改善するために一般に用いられる。
【0136】
ウエスタンブロット:この方法は、基質をアクリルアミドゲルによって他のタンパク質から分離し、その後、基質をメンブラン(例えば、ナイロンまたはPVDF)に転写することを含む。次いで、基質の存在が基質に特異的な抗体によって検出され、次いで、抗体が抗体結合試薬によって検出される。抗体結合試薬は、例えば、プロテインAまたは他の抗体であり得る。抗体結合試薬は、上記のように放射能標識または酵素連結されることができる。検出は、オートラジオグラフィー、比色反応または化学発光によって行われることができる。この方法は、基質量の定量と、電気泳動期間中のアクリルアミドゲルにおける移動距離を示すメンブラン上での相対的な位置によるその同一性の決定の両方を可能にする。
【0137】
放射免疫分析(RIA):1つの形式において、この方法は、所望のタンパク質(すなわち、基質)を、特異的な抗体と、アガロースビーズのような沈殿可能なキャリア上に固定化される放射能標識された抗体結合タンパク質(例えば、I125で標識されたプロテインA)とで沈殿させることを含む。沈殿ペレットにおけるカウント数が基質の量に比例している。
【0138】
RIAに代わる形式において、標識された基質および非標識の抗体結合タンパク質が使用される。未知量の基質を含有するサンプルが様々な量で加えられる。標識された基質からの沈殿カウントの減少が、添加されたサンプルにおける基質の量に比例する。
【0139】
蛍光活性化細胞分取(FACS):この方法は、基質特異的な抗体による細胞におけるその場での基質の検出を含む。基質特異的な抗体はフルオロフォアに連結される。検出は、細胞が光ビームを通過するときにそれぞれの細胞から放射される光の波長を読み取る細胞分取装置によって行われる。この方法は、2つ以上の抗体を同時に用いることができる。
【0140】
免疫組織化学分析:この方法は、基質特異的な抗体による、固定された細胞におけるその場での基質の検出を含む。基質特異的な抗体は酵素連結されることができるか、またはフルオロフォアに連結されることができる。検出は顕微鏡および主観的または自動的評価によって行われる。酵素連結された抗体が用いられる場合、比色反応が必要とされる場合がある。免疫組織化学の後に、例えばHematoxylineまたはGiemsa染色を用いる細胞核の対比染色が続くことが多いことが理解される。
【0141】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例の実験に基づいて当業者には明らかになるだろう。さらに、本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および側面のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0142】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0143】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験手順には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons,米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」John Wiley & Sons,米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の4666828号、4683202号、4801531号、5192659号および5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);また利用可能な免疫分析は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている:米国特許の3791932号、3839153号、3850752号、3850578号、3853987号、3867517号、3879262号、3901654号、3935074号、3984533号、3996345号、4034074号、4098876号、4879219号、5011771号および5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」、Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」、Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」、Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」、Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」、IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」、Perbal,B.著(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press、(1996);なお、これらの文献のすべては、あたかも本明細書中に完全に記載されているように組み込まれる。その他の一般的な参考文献は、本明細書を通じて提供される。本明細書に記載の方法は当該分野において周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。本明細書に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0144】
実施例1
5−チオアルキル置換ブチロラクトン(TXBL)の合成
4−フェニルチオ−4−ブタノライドの合成方法[12]が、5−チオエチル、チオブチルおよびチオヘキシルブチロラクトンの合成について使用された(スキーム2)。まず、γ−ブチロラクトン環が、対応するチオールで開かれた[13]。得られた4−(アルキルチオ)−酪酸が次いで過沃素酸ナトリウムで酸化され、4−(アルキルスルフィニル)−酪酸[14]を得た。これはPummerer転位[12]によって対応するラクトンに対して閉じられた。この経路は、種々の長さの側鎖(以下のスキーム3においてRによって表される)の5−チオ−ブチロラクトンへの結合を可能にする一般なものであることが見出された。

【0145】
材料および実験手順
材料−化学物質はAldrich Chemicals Co.、Fluka、およびAcros Chemicalsから購入された。
【0146】
5−チオブチルブチロラクトン(TBBL)のために与えられる5−チオアルキル置換ブチロラクトンの典型的な合成:
4−(ブチルチオ)−酪酸。γ−ブチロラクトン(12.9mmol、1.11g)は、AlBr(2.2当量、28.38mmol、7.56g)とブタンチオール(約20ml)の混合物に液滴状に添加された。得られた混合物は、室温で2時間攪拌され、次いで水(約50ml)にゆっくりと注がれた。水性混合物はCHCl(2×50ml)で抽出され、有機相はNaClブラインで洗浄され、NaSOで乾燥された。溶媒は蒸発され、生成物は減圧で乾燥された。収率:1.84g、80.9%。

【0147】
4−(ブチルスルフィニル)−酪酸。0℃で、21ml(10.5mmol)の過沃素酸ナトリウムの0.5M溶液に、4−(ブチルチオ)−酪酸(1.84g、10.4mmol)が添加され、反応物は0℃で一晩攪拌された。沈殿した過沃素酸ナトリウムは濾過によって除去され、濾液は蒸発された。得られた固体はCHCl(3×50ml、15分間抽出)で抽出され、次いで溶媒は蒸発によって除去され、4−(ブチルスルフィニル)−酪酸(1.88g、94%)を生成した。

【0148】
5−(チオブチル)ブチロラクトン。トルエン中の4−(ブチルスルフィニル)−酪酸(630mg、3.2mmol)の溶液に、無水酢酸(3当量、10mmol、1g)および触媒量のp−トルエンスルホン酸が添加された。得られた溶液は数時間還流され、次いで溶媒は乾燥するまで蒸発された。残渣は酢酸エチル:ヘキサン(1:3)中に溶解され、次いでフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン(1:3))により精製され、5−(チオブチル)ブチロラクトン(130mg、23.3%)を与えた。

【0149】
実施例2
TXBLの酵素加水分解の反応速度分析
PON1による3種のTXBLの酵素加水分解の反応速度パラメータは、DTNBで放出されたチオール部分を検出することによって決定された。
【0150】
材料および実験手順
材料−CPM色素(7−ジエチルアミノ−3−(4’マレイミジル−フェニル)−4−メチルクマリン)は、Molecular Probesから購入された。反応は、チオレドキシンと6×Hisタグとの融合物中で発現され、かつ文献に記載されるように[19]精製された組換えPON1変異体rePON1−G2E6で行われた。
【0151】
DTNBでの反応速度測定−チオアルキル置換ラクトンの酵素加水分解の速度は、1mM CaClおよび50mM NaClを含む50mM Tris pH8.0(活性緩衝液)中で決定された。酵素ストックは、0.1%Tergitolを含有する活性緩衝液中で保存され、使用された酵素濃度は8.375×10−9Mであった。100〜400mMの基質のストックがアセトニトリル中で調製され、反応を開始する直前に反応緩衝液で希釈された。5−(チオヘキシル)−ブチロラクトン(THBL)は、0.03〜0.24%の最終濃度で、Triton X−100界面活性剤で緩衝液中に溶解された。基質濃度は0.3×K〜(2〜3)×Kの範囲で変化された。共溶媒の割合は、全ての反応物において1%で保たれた。DTNB色素(Ellman試薬、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸))は、0.5mMの最終濃度でDMSO中の100mMストックから使用された。ε412nm=7,000OD/Mを使用して活性を計算した。生成物の形成は、マイクロタイタープレート読み取り機(PowerWave HTTM Microplate Scanning Spectrophotometer;光学長〜0.5cm)上で、96ウエルプレートを用いて200μlの反応容量において412nmで分光光度的に監視された。初期速度(v)は各々の基質について8つの異なる濃度で決定された。v値は酵素の非存在下での自然加水分解のバックグラウンド速度について補正された。反応速度パラメータ(kcat、K、kcat/K)は、プログラムKaleidagraph 5.0を使用して、データをMichaelis−Menten方程式[v=kcat[E][S]/([S]+K)]に当てはめることによって得られた。
【0152】
CPMでの反応速度測定−4−(チオブチル)ブチロラクトン(TBBL)の酵素加水分解の速度は、8.375×10−9M酵素で活性緩衝液において決定された。基質はアセトニトリル中の400mMストックから使用され、その基質は反応を開始する直前に反応緩衝液で希釈され、CPMと測定前に加水分解された基質との間の反応を完了させるために、CPM色素(7−ジエチルアミノ−3−(4’マレイミジル−フェニル)−4−メチルクマリン)で3分間インキュベートされた。CPM色素は50μMの最終濃度でDMF中の5mMストックから使用され、反応混合物はCPM可溶化のために0.1%のトリトンを含有した。生成物の形成は、マイクロタイタープレート読み取り機(励起−400nmフィルター、放射−450nmおよび516nmフィルター、Time−Resolved Fluorescenceを備えるSynergy HTTM Multi−Detection Microplate Reader;光学長〜0.5cm)上で、96ウエルプレートを用いて、200μlの反応容量におけるCPM蛍光を追跡することによって監視された。
【0153】
結果
5−(チオブチル)ブチロラクトン(TBBL)加水分解の典型的な比色分析が図1aに示され、反応速度パラメータは下記の表1に列挙される。これらの新規な基質に対するkcatおよびK値は、相同の5−アルキル−置換ブチロラクトンで観察されたkcatおよびK値に類似している(表2、下記)。


【0154】
5−チオアルキルラクトンの酵素加水分解の速度はまた、図1bに示される蛍光発生チオール検出プローブCPM[11]で追跡された。
【0155】
実施例3
ヒト血清および生細胞におけるPON1活性の測定
上記の発色分析および蛍光発生分析は、ヒト血清サンプルにおけるPONのラクトナーゼ活性を測定するために使用された。
【0156】
材料および実験手順
TBBLおよび酢酸フェニルでの血清活性−反応は活性緩衝液において行なわれ、血清は1〜400の最終希釈度で使用された。TBBLの反応混合物は、アセトニトリル中の400mMストックからの0.5mM TBBLおよびDMSO中の100mMストックからの0.5mM DTNBを含有した。酢酸フェニルの反応混合物は、メタノール中の500mMストックからの1mM酢酸フェニルを含有した。全ての反応混合物は、最終1% DMSOを含有した。2−ヒドロキシキノリンは、DMSO中の500mMストックから使用され、EDTAは水中の0.5Mストックから使用された。血清は、反応の開始前に5〜10分間阻害剤とともにインキュベートされた。
【0157】
FACSによるTBBLでのPON1活性の検出−E.coli細胞の乳化およびFACS分析は、既に記載される[16]ように行なわれた。
【0158】
結果
ヒト血清におけるPON1レベルは、図2a〜bに示されるように、新たに合成された基質(実施例1〜2を参照のこと)を使用して検出された。測定されたラクトナーゼ活性が血清において存在する他のヒドロラーゼと対照的にPON1によって媒介されることを裏付けるために、血清はまた、2−ヒドロキシキノリン(PON1活性の選択的拮抗阻害剤[4])およびEDTA(PON1活性に対して重要なカルシウムをキレート化する)とともに予めインキュベートされた。平行して、PON1活性は、血清におけるPON1レベルに対するプローブとして通常使用される酢酸フェニルで決定された。TBBLでの活性は、酢酸フェニルでの活性に匹敵し、同様に阻害されていた(下記の表3を参照のこと)。これは、新規なラクトン基質がヒト血清におけるPON1レベルを評価するために使用されることができること、およびラクトナーゼおよびアリールエステラーゼ活性の90%より多くがPON1に起因することを明確に実証する。EDTAによる高い阻害率(>99%)は、金属キレート化剤に敏感なPON1以外の血清酵素のためかもしれない。

【0159】
PON1活性はまた、酵素活性の生成物とともに細胞を区画に分けるエマルジョン小滴およびFACS(蛍光活性化細胞分取)を使用して生細胞において検出された[15,16]。まず、細胞質において組み換えPON1(rePON1)を発現するE.coli細胞、ならびにGFP(緑色蛍光タンパク質)は、ラクトン基質(TBBL)および蛍光発生チオール検出色素CPMとともに油中水(w/o)エマルジョンの水性小滴において区画に分けられた。次いでw/oエマルジョンは再乳化され、FACSに適している連続する水相を有するw/o/w二重エマルジョンを生成した[15]。閾値を引き起こすFACSはGFPの放射に対して設定され、適切なゲートは単一のE.coli細胞の放射レベルに対応して選択された[16]。図3に示されるように、区画に分けられた細胞におけるPON1ラクトナーゼ活性の検出は、530nmでチオール検出色素の蛍光シグナルを介したものであった。rePON1を担持しない細胞に対して、明らかな差異(平均蛍光において20倍より大きい)が観察された。
【0160】
結論として、上記の結果は、5−チオアルキルラクトンがPON1のラクトナーゼ活性を分析するために極めて有用でありかつ敏感なプローブであることを実証する。これらの基質でのPON1の速度は、PON1の好ましい基質である脂肪族の5−アルキル置換ラクトンに類似しており、PON1の天然基質によく似ているかもしれない[2]。5−チオアルキルラクトンは、無傷の細胞および血清のような複雑な生物学的サンプルで使用されることができ、その結果、ハイスループット様式でヒト血清におけるPON1のレベルを試験する生理学的に関連性を持つ新規な手段を提供する。これらの基質はまた、FACSおよび二重エマルジョンを使用するラクトナーゼ活性に対するスクリーニングの強力な手段を提供し、その手段は定方向進化および機能的ゲノムについて数時間で10より多い酵素変異体のライブラリのスクリーニングを可能にする[16,17]。最後に、新規な5−チオアルキルラクトンはPON1以外の酵素とともに、特に発色/蛍光発生基質が存在しない他のPONファミリーのメンバーとともに使用されることができる。例えば、PON3のラクトナーゼ活性は、精製された酵素サンプルおよび粗細胞溶解物の両方において、TEBLおよびTBBLで分析されることができた(データ示さず)。他の酵素(例えば、プセウドモナス・ジミヌタ(Pseudomonas diminuta)ホスホトリエステラーゼ)のラクトナーゼ活性もまた検出されることができた[18]
【0161】
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0162】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。したがって、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形全てを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願ならびにGenBankアクセッション番号は全て、個々の刊行物、特許または特許願、またはGenBankアクセッション番号が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。

【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1a〜1bは、PON1のラクトナーゼ活性の比色測定(図1a)および蛍光発生測定(図1b)を示すグラフである。
【図2】図2a〜2bは、ヒト血清におけるPON1のラクトナーゼ活性(図2a)およびアリールエステラーゼ活性(図2b)を示すグラフである。
【図3】図3は、FACS分析によって決定された、チオアルキルブチロラクトン基質(TBBL)およびw/o/wエマルジョンを使用する、PON1発現E.coliにおけるPON1のラクトナーゼ活性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に活性なPON酵素のレベルを決定する方法であって、生物学的に活性なPON酵素のレベルを示す、PON酵素のラクトナーゼ活性を決定することを含む方法。
【請求項2】
被験者におけるPON状態を決定する方法であって、
(a)被験者のPON酵素のラクトナーゼ活性レベルを決定すること、ただし、前記ラクトナーゼ活性は被験者における生物学的に活性なPON酵素のレベルを示す;および
(b)被験者の前記PON酵素を遺伝子型決定し、それによって被験者のPON状態を決定すること
を含む方法。
【請求項3】
PON酵素は、PON1、PON2およびPON3からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的に活性なPON酵素は、アポリポタンパク質複合PON酵素を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
PON酵素のラクトナーゼ活性の決定は、
(i)クロマトグラフィ分析;
(ii)pH指示薬分析;
(iii)分光光度分析;
(iv)共役酵素分析;
(v)電気化学的分析;および/または
(vi)熱量分析
によって行なわれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記分光光度分析は、少なくとも1つのラクトンを含みかつ前記ラクトンの加水分解時に少なくとも1つの分光光度的に検出可能な部分を形成することができる基質の存在下で行なわれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分光光度分析は、燐光分析、蛍光分析、発色分析、ルミネセンス分析およびイルミネセンス分析からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記検出可能な部分は前記ラクトンに結合される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記検出可能な部分は前記ラクトンの一部を形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記検出可能な部分は少なくとも1つのチオールを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記基質は前記ラクトンに結合されているチオアルコキシ基を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記チオアルコキシ基は2〜12個の炭素原子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出は発色分析または蛍光発生分析によって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記基質は、前記ラクトンのヘテロ原子に隣接する炭素に結合されたチオアルコキシ基を有する、5員、6員または7員のラクトンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
サンプルにおけるラクトナーゼの活性を決定する方法であって、
(a)サンプルを、少なくとも1つのラクトンを含みかつ前記ラクトンの加水分解時に少なくとも1つの分光光度的に検出可能な部分を形成することができる化合物と接触させること、ただし、前記検出可能な部分は前記化合物が前記ラクトナーゼの基質と実質的に同じ構造を有するように選択される;および
(b)前記部分のレベルを分光光度的に決定し、それによってサンプルにおけるラクトナーゼの活性を決定すること
を含む方法。
【請求項16】
前記部分の前記レベルの決定は、燐光分析、蛍光分析、発色分析、ルミネセンス分析およびイルミネセンス分析からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記検出可能な部分は前記ラクトンに結合される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記検出可能な部分は前記ラクトンの一部を形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記検出可能な部分は少なくとも1つのチオールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記基質は前記ラクトンに結合されているチオアルコキシ基を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記チオアルコキシ基は2〜12個の炭素原子を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記検出は発色分析によって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
被験者におけるPON酵素の異常なレベルまたは異常な活性に関連する障害の素因を決定するかまたは障害を診断するためのキットであって、PON酵素のラクトナーゼ活性を決定することができる少なくとも1つの薬剤を含むキット。
【請求項24】
前記少なくとも1つの薬剤は、少なくとも1つのラクトンを含みかつ前記ラクトンの加水分解時に少なくとも1つの分光光度的に検出可能な部分を形成することができる化合物である、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
少なくとも1つのラクトンを含みかつ前記ラクトンの分解時に少なくとも1つの分光光度的に検出可能なチオール含有部分を形成することができる化合物。
【請求項26】
前記チオール含有部分は、燐光分析、蛍光分析、発色分析、ルミネセンス分析およびイルミネセンス分析からなる群から選択される分光光度分析によって検出可能である、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
前記検出可能な部分は前記ラクトンに結合される、請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
前記検出可能な部分は前記ラクトンの一部を形成する、請求項25に記載の化合物。
【請求項29】
前記検出可能な部分はチオアルコキシ基を含む、請求項26に記載の化合物。
【請求項30】
前記チオアルコキシ基は2〜12個の炭素原子を含む、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
前記ラクトンは、5員、6員または7員のラクトンである、請求項27に記載の化合物。
【請求項32】
前記ラクトンは5員のラクトンである、請求項27に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−504177(P2009−504177A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526610(P2008−526610)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000941
【国際公開番号】WO2007/020632
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(502379147)イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】