説明

生物学的に活性のあるタンパク質の産生

宿主真核生物細胞および生物において組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)中で発現される融合タンパク質が開示される。より詳細には、RPBLA形成の誘導を仲介するタンパク質配列へ融合させた生物学的に活性のあるポリペプチドが、適切なベクターによる形質転換後に宿主細胞中で発現および蓄積される。真核生物宿主細胞は、融合タンパク質の非存在下においてタンパク質顆粒を産生しない。融合タンパク質をコードする核酸分子の調製方法および使用方法が開示されるように、RPBLAおよび融合タンパク質の調製方法および使用方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2006年2月23日に出願された米国仮特許出願第60/776,391号の利益を主張するものである。
【0002】
[技術分野]
本発明は、宿主系としての真核生物の細胞および生物における、生物学的に活性のある組換えペプチドおよびタンパク質(まとめてポリペプチドと呼ばれる)の産生を検討する。より詳細には、生物学的に活性のあるポリペプチドは、RPBLAの誘導を仲介するタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)へ融合されて、適切なベクターによる宿主細胞の形質転換後に、組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA(protein body−like assemblies))として宿主系で安定的に発現され蓄積される融合タンパク質を形成する。
【背景技術】
【0003】
治療用、栄養薬学用または工業用の組換えタンパク質の産生は、過去十年間にわたって大成功を享受してきた。所望のヌクレオチド配列を有する異種遺伝子の導入は、対応する所望のアミノ酸残基配列または一次構造を有するポリペプチドまたはタンパク質の発現を導く。しかしながら多くの実例において、発現されるタンパク質またはポリペプチドは、天然に生産される物質のアミノ酸残基配列を有しているが、その物質の生物活性を欠いていた。
【0004】
発現される産物の適切な一次構造を考慮すると、生物学的活性は、適切な折畳みならびに内部の水素結合、ファンデルワールス結合、イオン結合およびジスルフィド結合を有し、例えば糖鎖付加のような適切な翻訳後修飾もまた有する産物の機能でありえる。例えば、ジスルフィド結合形成は、小胞体(ER)の内腔で自発的に生じるが、原核生物のサイトゾル中では生じず、そのことによりジスルフィド結合により通常は安定化される正確に折畳まれた哺乳類タンパク質の合成に対しては、大腸菌(Escherichia coli)細胞のような細菌細胞は、劣った宿主になる。PDI様タンパク質が機能的な場合には、ジスルフィド結合形成は大腸菌のペリプラスム間隙中で生じうるが(Fernandez, et al., 2001. Mol. Microbiol. Apr 40(2):332-346)、酸化−レドックス系はあまり効率的ではない。
【0005】
特定の代表例は、赤血球産生を刺激するタンパク質であるエリスロポエチン(EPO)に関する。組換えEPOは、Linの米国特許第4,703,008号において開示される。この特許は、大腸菌、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ならびに哺乳類のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびアフリカミドリザル腎臓(COS−1)細胞から発現されるEPOタンパク質の活性を開示する。抗EPO抗血清は各細胞タイプにより発現されるEPOと免疫反応したが、哺乳類細胞から発現されたタンパク質のみがEPOとして実質的なインビボの生物活性、ならびに抗体解析、インビトロおよびインビボの分析による同様の濃度を示した。哺乳類で発現されるタンパク質は、ヒトを治療するために使用されるものである。
【0006】
生物学的活性におけるそれらの差は、大腸菌(原核生物)が発現したタンパク質に糖鎖を付加することができないという点で、糖鎖付加の機能だと考えられている。酵母細胞は真核生物であるが、分泌タンパク質のための糖鎖付加パターンは哺乳類とは異なる。一方、本質的な生物学的活性のタンパク質を提供するために使用されるCHO細胞およびCOS−1細胞は哺乳類のものであり、それらから発現されるタンパク質は有用であった。糖鎖が付加したEPOおよび糖鎖が付加しなかったEPOについての出版された研究は、変性条件に対するエリスロポエチンの安定化に、糖鎖付加が重大な役割を果たすことを示す。Narhi et al., (1991) J. Biol. Chem. 266(34):23022-23026。さらに、EPOのインビボにおける寿命および活性は、分子の糖鎖付加に関連しうることが報告されている。
【0007】
したがって真核生物の細胞は、真核生物の起源の、治療用、工業用および他の有用なタンパク質の組換え産生に対して非常に好ましい。異なる真核生物の細胞および生物は、活性のあるタンパク質に基づく治療を可能にすることが示された。不幸にして、組換えタンパク質産生が低レベルであることから、ならびに/またはタンパク質単離および精製法から、しばしば高額の費用がかかり、産業上の応用は有効ではない。異なるアプローチによって産生レベルおよび精製法の両方を改善するために、活発な研究が行われる。
【0008】
組換えタンパク質単離の効率を改善する1つの手段は、細胞内濃度を使ったものである。これらのアプローチの1つは、密度に基づく精製法によって溶解細胞から分離することができる非分泌封入体中への、組換えタンパク質のランダムな凝集である。封入体は細菌で見出される非晶質タンパク質沈着である。構造的な特性研究により、封入体の不溶性性質は、本来の折畳まれた方ではないタンパク質の疎水性分子間相互作用のためかもしれないことが示された。(Seshadri et al., 1999, Methods Enzymol. 309:559-576)。封入体から活性のあるタンパク質を回収するために使用される一般的な戦略は、ランダムな凝集体を破壊するためのタンパク質の可溶化、続いて1つまたは複数の化学的な再折畳み工程を必要とする。タンパク質の多くがジスルフィド結合を含むならば、変性タンパク質の復元する効率が限定されうるので、これは解決すべき重要な問題である。(Clarc編、2001年4月、Curr. Opin. Biotechnol. 12(2):202-207)。
【0009】
より詳細には、高濃度のカオトロピック剤(すなわち尿素およびグアニジン塩酸塩)のような強い変性剤が、凝集体中に蓄積する、折畳まれていないタンパク質を可溶化するために使用される。天然のコンフォーメーションでタンパク質を再び折畳むために、変性剤はその後透析により除去される。そのような再び折畳まれたタンパク質の生物学的活性は、本来の型のタンパク質よりも通常はるかに少ない。
【0010】
タンパク質顆粒(PB)は、真核生物細胞において正確な折畳みおよび生物学的活性を保ちながら貯蔵タンパク質を細胞内で濃縮するために進化した、特定の植物種子に天然に存在する構造である。タンパク質顆粒(PB)は、細菌からの封入体の特性のいくつかを共有する。それらは高密度で、疎水的相互作用によって堅く充填される多量の凝集タンパク質を含む[Momany et al., 2006 J Agric. Food Chem. Jan 25;54(2):543-547 and Garrat, et al,. 1993 Proteins Jan;15(1):88-99]。さらに、いくつかのPBIS(例えばRX3のような)中の大量のジスルフィド結合の存在は[Ludevid, et al., 1984 Plant Mol. Biol. 3:227-234 and Kawagoe et al., 2005 Plant Cell Apr 17(4):1141-1153]、恐らくPB形成および安定化に関与し、このジスルフィド結合の存在は、生物学的活性があり、本来の型に折畳まれたタンパク質、特にシステイン残基を含むタンパク質を産生する付加的な困難を表わす。
【0011】
したがって、非酵母真核生物宿主中の合成PBにおいて産生された様々なタンパク質の再折畳みおよび復元の必要性のない生物学的活性についての観察は予期されないものであった。
【0012】
対象となるタンパク質と植物種子貯蔵タンパク質ドメインの融合に基づく新技術(WO 2004/003207)は、より高等な植物における組換えタンパク質の安定性および蓄積を増加するために開発されている。これらの貯蔵タンパク質は、タンパク質顆粒中に安定的に蓄積することを特徴として、植物種子に特異的である(Galili et al., 1993, Trends Cell Biol 3:437-442)。
【0013】
貯蔵タンパク質はシグナルペプチドを介して小胞体(ER)の内腔の中へ挿入され、ER由来タンパク質顆粒(ER−PB)と呼ばれる特異的なオルガネラを発達させる小胞体、またはタンパク質貯蔵液胞(PSV)中で集合する(Okita et al., 1996 Annu. Rev. Plant Physiol Mol. Biol. 47:327-350; Herman et al., 1999 Plant Cell 11:601-613; Sanderfoot et al., 1999 Plant Cell 11:629-642)。全長組換え貯蔵タンパク質がアフリカツメガエル卵母細胞のような非植物宿主系におけるPB様オルガネラ中で集合することも記載されている。
【0014】
対応するmRNAの注射後のアフリカツメガエル卵母細胞における穀類プロラミン(最も多い穀類貯蔵タンパク質)の発現が記載されている。これらの貯蔵タンパク質の標的化特性を研究するために(Simon et al., 1990, Plant Cell 2:941-950; Altschuler et al., 1993, Plant Cell 5:443-450; Torrent et al., 1994, Planta 192:512-518)、ならびに安定性を変化させずに、配列中へ必須アミノ酸のリジンおよびトリプトファンを導入することによって、19kDaのα−ゼイン(トウモロコシプロラミン)を修飾する可能性を検査するために(Wallace et al, 1988, Science 240:662-664)、この系はモデルとして使用されてきた。
【0015】
ゼイン(トウモロコシプロラミンの複雑なグループ)は、様々な目的により酵母中でも産生された。Coraggio et al., 1988, Eur J Cell Biol 47:165-172は、このタンパク質の標的化決定基を研究するために、酵母中で本来の型のα−ゼインおよび修飾されたα−ゼインを発現させた。Kim et al., 2002, Plant Cell 14: 655-672により、タンパク質顆粒形成を導く、α−ゼイン、β−ゼイン、γ−ゼインおよびδ−ゼインの可能な相互作用が研究された。この問題に取り組むために、彼らは、これらのタンパク質をコードするcDNAsにより酵母細胞を形質転換した。さらにそれらの著者は、酵母細胞中のゼインタンパク質の細胞内局在性を決定するために、ゼイン−GFP融合タンパク質を構築したが、真のPBの特徴を示す高密度で凝縮された構造の形成を観察しなかった。形質転換酵母中でゼイン自体は十分に蓄積されなかったので、酵母はゼインの相互作用を研究するのに適したモデルではないとKim et al., 2002, Plant Cell 14: 655-672が結論を下したことに注目すべきである。輸送を制御するメカニズム、およびグリアジンと呼ばれる小麦貯蔵タンパク質のタンパク質顆粒沈着を研究するために、酵母細胞もモデルとして使用された(Rosenberg et al., 1993, Plant Physiol 102:61-69)。
【0016】
生物学的活性はワクチンに特に関連し、予防接種されるヒトまたは他の動物において適正な免疫反応を誘導しなければならない。いくつかの新しいワクチンは、全不活化ワクチンまたは弱毒化生ワクチンよりも安全であると考えられる、合成の、組換えの、または高度に精製されたサブユニットの免疫原(抗原)からなる。しかしながら、弱毒化ワクチンまたは死菌ワクチンに関連するアジュバント効果のある免疫調節成分の欠如は、しばしばより弱い免疫原性のそのようなワクチンをもたらす。
【0017】
免疫アジュバントはワクチンに対する特異的免疫反応を増強する薬剤である。免疫アジュバントは、ワクチンの中へ組み入れられた場合、ワクチン抗原に対する特異的免疫反応の質を一般に促進、延長、または増強するように作用する任意の物質または製剤として定義することができる。単語アジュバントはラテン語の動詞adjuvareからの由来であり、支援することまたは援助することを意味する。アジュバントの作用機序は、(1)ワクチン免疫原の生物学的または免疫学の半減期を増加させることと;(2)抗原提示細胞(APC)による抗原処理および抗原提示だけでなく、APCへの抗原輸送を改善することと;(3)免疫修飾サイトカインの産生を誘導することとを含む。
【0018】
ファゴサイトーシスは、アポトーシスを起こした細胞または微生物全体のような大きな粒子の侵入に関係する。大きな粒子を飲み込む細胞の能力は、恐らく単細胞生物において栄養をとるための機能として出現したが、複雑な生物は付加的な機能を遂行するためにファゴサイトーシスの機構を利用した。例えば、マクロファージ、B細胞または樹状細胞によって行なわれる抗原のファゴサイトーシスは、先天性免疫および適応免疫における重要な過程を表わす。実際、ファゴサイトーシス、および続いて起こるファゴソーム中での微生物の死滅は、細胞内病原体に対する生物の先天性防御の基礎を形成する。更に、ファゴソーム内腔で病原体の破壊および抗原性ペプチドの産生(それらは特異的なリンパ球を活性化するために食細胞によって提示される)も連鎖している(Jutras et al., 2005 Annual Review in Cell Development Biology. 21:511-27)。
【0019】
飲み込まれた粒子に存在するタンパク質は、ファゴソーム中の一連の分解プロテアーゼに出会う。さらにこの破壊に適した環境により、MHCクラスII分子へ結合することができるペプチドが生じる。新しく形成された抗原−MHCクラスII複合体は、CD4+T細胞に対する提示のために細胞表面へ送達される(Boes et al,. 2002. Nature 418:983-988)。これらの細胞の活性化は、B細胞の増殖および分化を支援するIL−4およびIL−5のようなサイトカインのTh2サブセットを誘導し、液性タイプの免疫反応と関連する。
【0020】
多くの証拠は、ファゴサイトーシスされた病原体に対する免疫反応におけるMHCクラスII経路の明確な関与に加えて、病原体(マイコバクテリア、サルモネラ菌、ブルセラ菌およびリーシュマニア菌を含む)からの抗原が抗原交差提示を誘発できることを示す。すなわち、MHCクラスI依存性反応によるファゴサイトーシスによって飲み込まれた抗原の提示は、CD8+細胞毒性T細胞の増殖を促進する(Ackerman et al., 2004 Nature Immunology 5(7):678-684 Kaufmann et al., 2005 Current Opinions in Immunology 17(1):79-87)。
【0021】
樹状細胞は、免疫系を誘導するために抗原提示の中心的な役割を果たす(Blander et al., Nature Immunology 2006 10:1029-1035)。樹状細胞はまれなものではあるが、免疫反応の誘導能力および制御能力の両方で、最も高度に特殊化されたAPCである(Lau et al. 2003 Gut 52:307-314)。樹状細胞は抗原の提示、特に一次免疫応答の開始において重要であるが、マクロファージは炎症部位において最も顕著なAPCタイプであり、壊死性およびアポトーシス性の物質の消去のために特殊化される。マクロファージは、APCとして働くことができるだけでなく、活性化された手段に依存して、炎症誘導性の役割または抗炎症性の役割のいずれかについても果たすことができる。
【0022】
APCが適応免疫(液性および細胞性)の誘導および調節において中心的な役割を果たすことを考慮して、それらの細胞による抗原の認識およびファゴサイトーシスは、予防接種過程における重要な工程と考えることができる。蛍光性粒子の取り込みに基づく様々な技術は、マクロファージによるファゴサイトーシスを研究するために開発されてきた(Vergne et al,. 1998 Analytical Biochemistry 255:127-132)。
【0023】
家畜ワクチンにおいて重要な態様は、考慮されている種の遺伝的多様性、および異なる種を超えて作動する一般的な系のための必要条件である。野生生物を含む多くの種については、これらの分子の最小限の知識しか利用可能でないので、この多様性により、分子的な標的化技術の使用は細胞表面マーカーおよびサイトカインのような免疫修飾因子へ限定される。したがって、先天性免疫応答の普遍的な活性化シグナル(すなわちそれは異なる種において同一である)に依存するアジュバントが好ましい。これらの条件を考慮に入れると、微粒子ワクチン送達系は、家畜ワクチンおよび野生生物ワクチンの戦略に十分に適している。(Scheerlinck et al., 2004 Methods 40:118-124)。
【0024】
より非常に詳しく以下論じられるように、本発明は、(i)組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)の誘導を仲介するタンパク質配列と、(ii)生物学的に活性のある標的(タンパク質)を産生して、植物、真菌、藻類および動物のような真核生物の細胞におけるそれらのRPBLAの蓄積を誘導する生物学的に活性のあるポリペプチド(対象となるタンパク質または標的)とを結合したものを含む融合タンパク質の発現を開示する。
【発明の開示】
【0025】
本発明は、真核生物細胞において、対象となるタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)および生物学的に活性のあるペプチドまたはタンパク質(しばしばまとめて本明細書においてポリペプチドまたは標的と呼ばれる)を含む、融合タンパク質を産生するための系および方法を提供する。対象となるポリペプチドを含む融合タンパク質は、植物、動物、真菌または藻細胞でありえる真核生物細胞において組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)として安定的に蓄積する。
【0026】
より高等な植物の細胞はいくつかの実施形態における好ましい真核生物の宿主細胞であるが、藻類のような下等植物の細胞は他の実施形態において好ましく、哺乳類および昆虫のような動物の細胞はさらなる実施形態において好ましい真核生物宿主細胞であり、真菌はさらに他の実施形態において好ましい真核生物宿主細胞である。融合タンパク質は、多細胞真核生物の特定の細胞中で構成的にまたは優先的に発現することができる。PBISは、対象となる発現されたペプチドまたはタンパク質(標的)に対して生物学的活性を提供する、基本的な糖鎖付加およびジスルフィド結合形成のような適切な折畳みおよび/または翻訳後修飾と共に、これらのオルガネラ中のRPBLA形成ならびに融合タンパク質侵入および/または蓄積の誘導を仲介することができる。
【0027】
したがって、組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)内に生物学的に活性のある組換え融合タンパク質を含む真核生物宿主細胞は、本発明の1つの態様として検討される。融合タンパク質はともに結合される2つの配列を含んでおり、1つの配列はタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)であり、他方は生物学的に活性のあるポリペプチドの少なくとも20アミノ酸残基の配列である。生物学的に活性のあるポリペプチドは天然で見出されるので、列挙された真核生物宿主細胞に対して異種でありえ、したがって最初に述べた真核生物宿主細胞とは異なる第2の細胞タイプ中で発現されるか、または合成的に産生される。さらに、真核生物の宿主細胞は、融合タンパク質の非存在下においてPBを産生しない。したがって、宿主細胞にタンパク質顆粒様集合体またはRPBLAを形成させるのは融合タンパク質の発現およびPBISである。
【0028】
特定の実施形態において、形質転換のために使用される核酸配列は、(i)PBISをコードする核酸配列と、(ii)対象となる産物をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列とを含む。1つの実施形態において、核酸配列(i)の3’末端は、該核酸配列(ii)の5’末端へ結合される。別の実施形態において、核酸配列(i)の5’末端は核酸配列(ii)の3’末端へ結合される。したがって、PBIS配列は、融合タンパク質のN末端またはC末端に存在しうる。融合タンパク質の発現のために本明細書において論じられるすべてのDNA結合が、融合タンパク質の2つの構成要素がインフレームで発現されるような状態であることが理解されるべきである。
【0029】
融合タンパク質の生物学的に活性のあるポリペプチドは、そのポリペプチドの活性の分析において上記の第2の細胞タイプから単離された同一のポリペプチドの生物学的活性の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは75%、および最も好ましくは少なくとも90%を示す。
【0030】
別の特定の実施形態において、形質転換のために使用される核酸配列は、前述の核酸配列(i)および(ii)に加えて、リンカーまたはスペーサーのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列を含む。スペーサーアミノ酸配列は、酵素的手段または自己タンパク質分解手段、または化学的手段によって、切断可能または切断可能でないアミノ酸配列になりえる。特定の実施形態において、核酸配列(iii)は核酸配列(i)と(ii)との間に置かれ、例えば核酸配列(iii)の3’末端は、該核酸配列(ii)の5’末端へ結合される。別の実施形態において、該核酸配列(iii)の5’末端は,核酸配列(ii)の3’末端へ結合される。
【0031】
さらに特定の実施形態において、形質転換の目的のために使用される核酸配列は、酵素的手段または化学的手段によって特異的に切断可能なアミノ酸配列をコードする核酸配列が存在または非存在であることを特徴として、特許出願第WO 2004003207号に沿った配列をコードする。さらなる実施形態において、融合タンパク質は、PBISと対象となるペプチドまたはタンパク質との間の直接的な融合でありえる。
【0032】
さらなる実施形態において、本発明のさらなる方法は、生物学的に活性のある融合タンパク質の単離および精製を含む。
【0033】
別の実施形態において、本発明のさらなる方法は、融合タンパク質の単離および精製、ならびに生物学的に活性のある融合タンパク質を得ることを含む。したがって、融合タンパク質が堅く集合し膜内に包まれる場合、ポリペプチドに生物学的に活性があることを示すのは困難かもしれない。結果として、生物学的活性は、膜の除去後、および必要ならば融合タンパク質可溶化後に、分析することができる。したがって、生物学的に活性のあるポリペプチドを調製する方法が検討される。
【0034】
この方法において、膜に囲まれた融合タンパク質を含む、組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)が提供される。RPBLAは、一般に約0.5〜約3ミクロン(μ)の直径を有する球形で通常存在するが、いくつかの実例において非晶質の形状であり、大きさは広く変化することができるが、それでもなおERから由来する。融合タンパク質はともに結合される2つの配列を含んでおり、1つの配列はタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)であり、他方は生物学的に活性のあるポリペプチドである。RPBLAは、膜を分解する量のデタージェント(界面活性剤)を含む水性緩衝液に接触させられる。その接触は、膜および融合タンパク質を分離するために、膜を分解するのに十分な期間の間および生物学的に活性のあるポリペプチドを変性させない温度で維持される。分離される融合タンパク質は、通常の様式でその後回収されるか、または回収することなくさらに作用することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、分離される融合タンパク質は、生物学的に活性のあるポリペプチドの生物学的活性を示す。他の実施形態において、融合タンパク質が適切な緩衝剤中で溶解または分散された後、ポリペプチドの生物学的活性が示される。さらに他の実施形態において、ポリペプチドの生物学的活性が示される前に、その構成要素へと融合タンパク質を切断しなければならない。したがって、生物学的に活性のあるポリペプチドは、酵素的手段または化学的手段によって切断可能なスペーサーアミノ酸配列でPBISへ結合することができる。次に、切断に際して、融合タンパク質のPBISから切断された時生物学的に活性のあるポリペプチドは生物学的活性を示す。いくつかの実施形態において、未処理のRPBLAの中へなお組み入れられた時でさえ、融合タンパク質はその活性を保つ。
【0036】
別の実施形態において、生物学的に活性のあるポリペプチドは、少なくとも2つのN結合型糖鎖付加配列を含む。
【0037】
さらに別の好ましい実施形態において、対象となるポリペプチドは、例えば天然プロラミンもしくは修飾プロラミン、またはプロラミンドメインとして、天然貯蔵タンパク質または修飾貯蔵タンパク質へ融合される。
【0038】
別の実施形態において、生物学的に活性のあるポリペプチドを含むRPBLAは、送達系として生物学的に活性のあるポリペプチドのために使用される。薬物送達、ワクチンおよび栄養摂取において本発明の利益を適用することができるかもしれない。
【0039】
さらに別の実施形態において、ポリペプチド抗原を含むRPBLAは、アジュバント活性(免疫反応を増加させる)を提供する送達系として使用することができる。これらのRPBLAの投与は、予防接種の速度、量、質および持続期間のような、予防接種パラメーターにおける改善を示すことができる。(i)抗原は封入され、血液、または胃腸管中でより長く残存する(遅延放出効果)、および/または(ii)抗原は免疫系に対してより露出される(抗原提示媒体としてのRPBLA)、および/または(iii)RPBLA調製品中のアジュバント分子の存在、および/または(iv)RPBLAは、それ自体がアジュバント活性を提供する膜を通過できる担体である、および/またはその他、という理由で、RPBLA中での抗原投与の有益な効果を達成することができる。
【0040】
したがって、本発明の別の態様は、免疫原性に効果的な量のRPBLA(薬学的に許容される希釈剤中に溶解または分散させた生物学的に活性のある組換え融合タンパク質を含む)を含むワクチンまたは接種物(免疫原性組成物)である。組換え融合タンパク質はともに結合される2つの配列を含んでおり、1つの配列はPBISであり、他方は免疫反応が該ワクチンまたは接種物によって誘導される、生物学的に活性のあるポリペプチドである。薬学的に許容される希釈剤組成物は典型的には水もまた含む。別の実施形態において、抗原を組み入れてないが活性のあるアジュバント特性を有するRPBLAは、免疫反応を誘導するために単離された抗原と共に共送達される。
【0041】
別の実施形態において、PBISは膜を通過する担体として使用することができる。具体的な実施形態において、PBISはZERA(RX3)またはその断片である。
【0042】
本発明はいくつかの利点および長所を有する。
【0043】
1つの利点は、本発明の使用が、選択の真核生物細胞において、所望の生物学的に活性のある組換えタンパク質の比較的単純で迅速な発現を可能にするということである。
【0044】
本発明の利点は、RPBLA中での発現の特異的性質に起因して、容易に得ることが可能であり精製可能な生物学的に活性のある組換えタンパク質のソースを提供するということである。
【0045】
本発明の別の利点は、融合タンパク質含むRPBLAを、経口送達ワクチンを含む、ワクチンの送達のために使用することができるということである。
【0046】
本発明の別の利点は、注射可能なワクチン中の免疫原のように、融合タンパク質含有RPBLAを使用することができるということである。
【0047】
本発明の別の利点は、インスレーター(発現されたポリペプチドを、細胞構成要素の残りから隔離する膜結合構造)としてRPBLAを使用することができるということである。これらのインスレーターはポリペプチド活性から細胞を保護し、細胞からポリペプチドを保護し、蓄積率を増加させる。したがって、毒性のあるおよび/または不安定である、生物学的に活性のある困難なポリペプチドを首尾よく発現することができる。
【0048】
なおさらなる利点および長所は、続く考察から当業者に明白である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
検討される生物学的に活性のある組換えポリペプチドは、それらが発現される宿主細胞中では、しばしば膜に囲まれる組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)を形成する融合タンパク質の一部である。RPBLA形成は、細胞の内部に高密度沈着を形成するシグナルペプチドおよび貯蔵タンパク質ドメインを含むタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)によって誘導される。これらの高密度沈着は、サイトゾル、細胞内膜系オルガネラ、ミトコンドリア、色素体において蓄積、または分泌されうる。特定の穀物用植物種子を例外として、真核生物宿主細胞自体は、融合タンパク質の非存在下においてタンパク質顆粒(PB)を産生しない。したがって宿主細胞にタンパク質顆粒様集合体またはRPBLAを形成させるのは、融合タンパク質およびそのPBIS部分の発現である。
【0050】
検討される融合タンパク質は、ペプチド結合によって直接または間接的にともに結合される2つのポリペプチド配列を含み、1つの配列は、対象となる生物学的に活性のあるポリペプチド産物(標的)(例えばペプチドまたはタンパク質)である第2の配列へ結合される、タンパク質顆粒誘導配列(PBIS)の配列である。生物学的に活性のあるポリペプチドは天然で見出されるので、列挙された真核生物宿主細胞に対して異種でありえ、したがって最初に述べた真核生物宿主細胞とは異なる第2の細胞タイプにおいて発現され、合成的に産生される。すなわち、生物学的に活性のあるポリペプチドは列挙された真核生物宿主細胞に対して異種である。PBISは、RPBLA形成の誘導、ならびにERのようなオルガネラにおけるタンパク質の侵入および/または蓄積を仲介するタンパク質もしくはポリペプチドのアミノ酸配列である。PBISから遊離および分離された場合、融合タンパク質はポリペプチドの生物学的活性に類似する生物学的活性を示す。
【0051】
融合タンパク質の生物学的に活性のあるポリペプチドは、上記の第2の細胞タイプから単離されるか、またはインビトロで合成された同一のポリペプチドの生物学的活性の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、および最も好ましくは少なくとも90%を示す。物質が、生物において任意の代謝物質、タンパク質、レセプター、オルガネラ、細胞または組織との相互作用、またはそれらへの効果を有しているならば、物質は「生物学的に活性のある」または「生物活性がある」と考えられる。
【0052】
これらの生物学的活性は、ポリペプチドの活性決定のための標準的な技術を使用して、容易に決定し定量することができる。例えば、第2の細胞タイプから単離されたかまたはインビトロで合成されたポリペプチドと発現されたポリペプチドとの間の生物学的活性についての分析結果を比較することができる。融合タンパク質の活性を比較する場合、PBISによって提供されるその物質と任意のリンカー配列の比率は、分析比較において考慮される。生物学的活性は、発現されたRPBLA(周囲の膜のないタンパク質としての融合タンパク質、またはPBISのない標的ポリペプチドとしての融合タンパク質)によって示すことができる。
【0053】
特定の実施形態において、形質転換のために使用された核酸配列は、(i)PBISをコードする核酸配列と、(ii)対象となる産物をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列とを含む。1つの実施形態において、核酸配列(i)の3’末端は、該核酸配列(ii)の5’末端に結合される。別の実施形態において、核酸配列(i)の5’末端は、核酸配列(ii)の3’末端に結合される。したがって、PBIS配列は、融合タンパク質のN末端またはC末端で存在しうる。融合タンパク質の発現のための本明細書において論じられるすべてのDNA結合は、融合タンパク質の2つの構成要素がインフレームで発現されるような状態であることが理解されるべきである。
【0054】
大部分のタンパク質顆粒は、約0.5〜約3.0μの直径の丸い形(一般に球状)の構造を有する。動物細胞において発現される場合、RPBLAは一般に球形であり、約0.5〜約3ミクロン(μ)の直径を有しており、周囲の膜がある。さらに、植物において発現されるRPBLAは一般に球状であり、約0.5〜約2μの直径を有し、膜によって囲まれる。ER特異的分泌シグナルによってERに標的化されたならば、植物、動物または真菌のいずれかにおいて発現されるRPBLAはERから由来し、集合に続いて、宿主細胞のERエンベロープの外側に蓄積する。植物細胞のERにおいて発現されるEGF含有RPBLAは、一般に球状でなく、不揃いのサイズの非晶質形状であることが注目される。
【0055】
組換えタンパク質顆粒様集合体は所定の密度を有しており、この密度は異なる融合タンパク質の中で異なることが可能であるが、調製されている特定の融合タンパク質については公知である。RPBLAの所定の密度は、ホモジネート中に存在する実質的にすべての内在性の宿主細胞タンパク質よりも典型的には大きく、典型的には約1.1〜約1.35g/mlである。新規RPBLAの高密度は、組換え融合タンパク質が多量体として集合し、膜と結合して規則正しい凝集体へと蓄積する一般的な能力のためである。検討されるRPBLAは、真核生物において発現され、上で言及されるようなそれらの密度、ならびにそれらのサイズおよび形状によって特性を明らかにすることができる。
【0056】
融合タンパク質のポリペプチド部分は、ER内での折畳みから、およびいくつかの実例ではER中の糖鎖付加から、その生物学的活性を得ると考えられる。興味深いことには、大部分の植物、哺乳類のような動物、および真菌のような単細胞真核生物は、トリペプチド糖鎖付加配列のAsn−X−SerまたはAsn−X−Thr(ここで「X」はプロリン以外の任意のアミノ酸残基である)に基づいて、同一のパターンでタンパク質にN−糖鎖を付加する。したがって、Glc3Man9(GlcNAc)2N結合型ポリペプチドが最初に形成され、形成後にゴルジへ分泌またはER内に保持することができるMan7-9(GlcNAc)2N結合型ポリペプチドへと切り取られる。この基本の糖鎖付加は、真核生物種類にわたって著しく類似している。RPBLA中で維持されないタンパク質については、ここで検討される融合タンパク質でのように、宿主特異的な最終的糖鎖付加のようなさらなる翻訳後修飾がゴルジにおいて生じうる。
【0057】
この方法において、膜に囲まれた融合タンパク質の規則正しい集合体(好ましくは一般に約0.5〜約3ミクロンの直径を有する球形で存在する)をしばしば含む組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)が提供される。融合タンパク質はともに結合される2つの配列を含んでおり、1つの配列はタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)であり、他方は生物学的に活性のあるポリペプチドである。RPBLAは、膜を分解する量のデタージェント(界面活性剤)を含む水性緩衝液に接触させられる。この接触は、膜を分解するのに十分な期間の間、および膜および融合タンパク質を分離するのに生物学的に活性のあるポリペプチドを変性させない温度(例えば凍結以上〜約40℃)で維持される。分離された融合タンパク質は、通常の様式でその後回収されるか、または回収することなく作用することができる。脂質の可溶化について生化学において公知であるように、例示の有用な界面活性剤はトリトン−X100、CHAPSおよび同種のものを含む。
【0058】
分離された融合タンパク質は、システイン残基の存在によって少なくとも部分的に仲介される融合タンパク質のPBIS部分の中での相互作用のために、典型的には不溶性形態である。しかしながら対象となるポリペプチドは、ERに由来する真核生物シャペロンおよびフォールダーゼと共に複合体を形成し、集合した(および従って不溶性の)PBISドメインに拘束されるにもかかわらず、従って正確に折畳まれたコンフォーメーションで保持される。PBIS−PBIS相互作用は破壊することができ、融合タンパク質は、ジチオトレイトールまたは2−メルカプトエタノールすなわちβ−メルカプトエタノール(β−ME)のような還元剤を含む水性緩衝液に融合タンパク質を接触させることにより可溶化する。対象となる結合する生物学的に活性のあるタンパク質を、破壊および折畳みをほどかないような、条件が選択される。次に、生物学的に活性のあるポリペプチドを含む、分離され可溶化された融合タンパク質を回収するか、またはそうでなければ使用される。さらに、融合した2つの部分は可溶化に際して互いから切断することができる。その切断が2つの部分の間の正確な境界にある必要がないことが理解されるべきである。
【0059】
いくつかの実施形態において、分離された融合タンパク質は、生物学的に活性のあるポリペプチドの生物学的活性を示す。他の実施形態において、融合タンパク質は、ポリペプチドの生物学的活性を示すように、適切な緩衝剤において溶解または分散される。例えば以下に詳細に論じられるように、ヒト成長ホルモン(hGH)は、哺乳類細胞中のRPBLAにおいて発現され、融合タンパク質が有意な活性を示すように、および切断されたポリペプチドもまた、本来の型のポリペプチドの活性に実質的に類似する活性を示すように、可溶化される。
【0060】
さらに他の実施形態において、融合タンパク質については、ポリペプチドの生物学的活性が示される前に、その構成要素へと切断されなければならない。したがって、生物学的に活性のあるポリペプチドは、酵素的手段または化学的手段によって切断可能なスペーサーアミノ酸配列によってPBISに結合させることができる。次に、融合タンパク質のBPISからの切断および分析に際して、標的(生物学的に活性のある)ポリペプチドは生物学的活性を示す。以下に論じられる研究は、その融合パートナーから切断され、植物において産生されたT−20ポリペプチドの生物学的活性を示す。
【0061】
タンパク質顆粒誘導配列
検討されるタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)および宿主細胞は、好ましくは異なる生物門のものである。したがって、PBISは好ましくはより高等な植物(種子植物)からであるが、宿主細胞は種子植物以外であり、例えば哺乳類細胞または昆虫細胞のような動物細胞、真菌細胞または藻細胞でありえる真核生物であり、それらのすべては種子植物とは異なる門である。PBISおよび宿主細胞は同一の門からでもありえ、その結果、例えば両方はより高等な植物からでありえる。PBISの例示的な非限定的例は、例えばプロラミンまたは修飾されたプロラミン、プロラミンドメインまたは修飾されたプロラミンドメインのような、貯蔵タンパク質または修飾された貯蔵タンパク質を含む。プロラミンは、Shewry et al., 2002 J. Exp. Bot. 53(370):947-958において概説される。好ましいPBISは、以下に論じられる、γ−ゼイン、α−ゼイン、δ−ゼイン、βゼイン、コメプロラミンおよびγ−グリアジンのようなプロラミン化合物である。
【0062】
PBISは、植物細胞の小胞体(ER)に向けてタンパク質を導く配列もまた含んでいる。リーダー配列またはシグナルペプチドとしばしば呼ばれるその配列は、PBISの残りの部分と同一の植物、または異なる植物または動物もしくは真菌からでありえる。例示的なシグナルペプチドは、WO 2004003207(US 20040005660)において示される19残基γ−ゼインのシグナルペプチド配列、α−グリアジンの19残基シグナルペプチド配列、または21残基γ−グリアジンのシグナルペプチド配列である(Altschuler et al., 1993 Plant Cell 5:443-450; Sugiyama et al., 1986 Plant Sci. 44:205-209;ならびにRafalski et al., 1984 EMBO J 3(6):1409-11415およびその中に引用されるものを参照)。PR10クラスの病原性関連タンパク質は、本明細書において有用な25残基シグナルペプチド配列もまた含む。他の植物および動物からの同様に機能するシグナルペプチドも、文献において報告される。
【0063】
ERへタンパク質を導くことに関与するシグナルペプチドの特性は、広汎に研究されている(von Heijne et al., 2001 Biochim. Biophys. Acta Dec 12 1541(1-2):114-119)。シグナルペプチドは一次構造では相同性を共有しないが、共通の三次構造があり、それらは中心部の疎水性h−領域、ならびに親水性のN末端およびC末端フランキング領域である。これらの類似性、およびタンパク質が明らかに共通経路を使用してER膜を通って移動するという事実は、異なるタンパク質、または異なる門に属する異なる生物からのタンパク質の間でさえシグナルペプチドの交換を可能にする。(以下の実施例1および2、ならびにMartoglio et al., 1998 Trends Cell Biol. Oct; 8(10):410-415を参照)。したがってPBISは、より高等な植物〜異なる門からのタンパク質のシグナルペプチドを含むことができる。
【0064】
γ−ゼイン(そのDNAおよびアミノ酸残基の配列が以下に示されるトウモロコシ貯蔵タンパク質)は、4つのトウモロコシプロラミンのうちの1つであり、トウモロコシ内胚乳中の全タンパク質の10〜15%を占める。他の穀類プロラミンのように、α−ゼインおよびγ−ゼインは、粗面ERの細胞質側で膜結合型のポリソームにおいて生合成され、内腔内で集合し、次にER由来タンパク質顆粒へと隔離される(Herman et al., 1999 Plant Cell 11:601-613; Ludevid et al., 1984 Plant Mol. Biol. 3:277-234; Torrent et al., 1986 Plant Mol. Biol. 7:93-403)。
【0065】
γ−ゼインは、4つの特徴的なドメインの、i)19アミノ酸のペプチドシグナルと、ii)8単位のヘキサペプチドPPPVHL(配列番号:1)を含むリピートドメイン[53アミノ酸残基(aa)]と、iii)プロリン残基が他のアミノ酸と交互であるProXドメイン(29aa)と、iv)疎水性システインを多く含むC末端ドメイン(111aa)からなる。
【0066】
γ−ゼインがER由来RPBLA中で集合する能力は、種子に限定されない。実際、γ−ゼイン遺伝子が遺伝子導入シロイヌナズナ植物において構成的に発現される場合、貯蔵タンパク質は葉の葉肉細胞中のER由来PBLS内に蓄積した(Geli et al., 1994 Plant Cell 6:1911-1922)。ER由来タンパク質顆粒中へのγ−ゼイン沈着に関与するシグナル(プロラミンにはKDELシグナルがない)を探したところ、タンデム反復ドメインを含むプロリンを多く含むN−末端ドメインが、ERでの保持のために必要なことが実証された。この研究においてC末端ドメインがタンパク質顆粒形成に関与できることもまた示唆されたが、最近のデータ(WO2004003207A1)は、プロリンを多く含むN−末端ドメインがER中での保持およびタンパク質顆粒形成の誘導に必要かつ十分であることを実証する。しかしながら、これらのドメインがタンパク質顆粒集合を促進するメカニズムはなお不明であるが、インビトロの研究からの証拠は、γ−ゼインのN末端部分が規則正しい構造へと自己組織化できることを示唆する。
【0067】
γ−ゼインに基づくPBISが、少なくとも1つのリピートならびにProXドメインのアミノ末端9つの残基、および好ましくはProXドメイン全体を含むことは好ましい。γ−ゼインのC末端部分は必要とされないが存在することはできる。それらの配列は米国20040005660において示され、それぞれRX3およびP4として呼ばれ、以下に言及される。
【0068】
タンパク質顆粒が種子においてのみ適切に命名されるので、他の植物器官、およびより非高等植物において産生された類似構造は、一般に合成PBまたは組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)と呼ばれる。
【0069】
ゼインは、α、β、δおよびγの4つの別個のタイプである。それらは内胚乳発生の間にER由来タンパク質顆粒において連続様式で蓄積する。β−ゼインおよびδ−ゼインは、トウモロコシPB中で大量に蓄積しないが、それらは栄養組織中で安定しており、タバコにおいて発現される場合ER由来タンパク質顆粒様構造中で蓄積された(Bagga et al., 1997 Plant Cell Sep 9(9):1683-1696)。この結果は、δ−ゼインだけでなくβ−ゼインも、ERでの保持およびタンパク質顆粒形成を誘導できることを示す。
【0070】
小麦プロラミン貯蔵タンパク質(グリアジン)は、ERを介する輸送が複雑であると考えられる、K/HDELのないタンパク質のグループである。これらのタンパク質は、保持されて高密度タンパク質顆粒へとパッケージにされる場合、ERへと隔離されるか、または液胞の中へゴルジを介してERから輸送される(Altschuler et al., 1993 Plant Cell 5:443-450)。
【0071】
グリアジンは、2つの別々に折畳まれた自律性領域を含んでいる天然のキメラであると思われる。N末端はグルタミンおよびプロリンを多く含む約7〜約16のタンデム反復から構成される。タンデム反復の配列は異なるグリアジンの中で変化するが、1つまたは他のコンセンサス配列の、PQQPFPQ(配列番号:47)、PQQQPPFS(配列番号:48)およびPQQPQ(配列番号:49)に基づく。タンパク質のC末端領域は、分子内のジスルフィド結合を形成する6〜8のシステインを含む。Altschuler et al.グループの研究は、N末端領域およびコンセンサス配列が、γ−グリアジンからERにおけるPB形成に関与することを示す。(Altschuler et al., 1993 Plant Cell 5:443-450)。
【0072】
例示的な他の有用なプロラミンタイプ配列は、それらのGenBank識別番号と共に表中で以下に示される。

【0073】
さらに有用な配列は、以下に示されるもののような問合せ(query)を使用して、Altschul et al., 1997 Nucleic Acids Res. 25:3389-3402において記載されているように、すべての非冗長GenBankCDS翻訳+PDB+SwissProt+PIR、+PRF(環境サンプル以外の)データーベース中で、BLAST検索を行なうことにより得られる。
RX3問合せ(配列番号:2)
α−ゼイン(配列番号:3)
コメプロラミン問合せ(配列番号:4)
【0074】
例示的な修飾プロラミンは、(a)シグナルペプチド配列と、(b)タンパク質γ−ゼイン(8つのヘキサペプチド単位を含むドメイン全体)のうちのリピートドメインのヘキサペプチドPPPVHL(配列番号:1)の1つまたは複数のコピーの配列と;(c)γ−ゼインのProXドメインのすべてまたは一部の配列とを含む。例示的な特異的に修飾されるプロラミンは、そのDNAおよびアミノ酸残基の配列もまた以下に示されるR3、RX3およびP4として以下に同定されるポリペプチドを含む。
【0075】
特に好ましいプロラミンは、γ−ゼインおよび公表された出願WO2004003207中で開示されるようなその成分部分、コメrP13タンパク質ならびに22kDaトウモロコシα−ゼインおよびそのN末端断片を含む。γ−ゼイン、コメおよびα−ゼインのタンパク質のDNA配列およびアミノ酸残基配列は、以下に示される。
【0076】
27kDのγ−ゼイン
DNA配列(配列番号:5)
タンパク質配列(配列番号:6)
【0077】
RX3
DNA配列(配列番号:7)
タンパク質配列(配列番号:8)
【0078】
R3
DNA配列(配列番号:9)
タンパク質配列(配列番号:10)
【0079】
P4
DNA配列(配列番号:11)
タンパク質配列(配列番号:12)
【0080】
X10
DNA配列(配列番号:13)
タンパク質配列(配列番号:14)
【0081】
rP13−クローンに相同の13kDのコメプロラミン−AB016504 Sha et al., 1996 Biosci. Biotechnol. Biochem. 60(2):335-337; Wen et al., 1993 Plant Physiol. 101(3):1115-1116; Kawagoe et al., 2005 Plant Cell 17(4):1141-1153; Mullins et al., 2004 J. Agric. Food Chem. 52(8):2242-2246; Mitsukawa et al., 1999 Biosci. Biotechnol. Biochem. 63(11):1851-1858
【0082】
タンパク質配列(配列番号:15)
DNA配列(配列番号:16)
【0083】
22aZt22kDのトウモロコシα−ゼインのN末端断片−V01475 Kim et al., 2002 Plant Cell 14(3):655-672; Woo et al., 2001 Plant Cell 13(10):2297-2317; Matsushima et al., 1997 Biochim. Biophys. Acta 1339(1):14-22; Thompson et al., 1992 Plant Mol. Biol. 18(4):827-833。タンパク質配列(全長)(配列番号:17)DNA配列(全長)(配列番号:18)
【0084】
γ−グリアジン前駆物質−AAA34272−Scheets et al., 1988 Plant Sci. 57:141-150。
タンパク質配列(配列番号:19)
DNA配列(M36999)(配列番号:20)
【0085】
βゼイン−AF371264−Woo et al., (2001) Plant Cell 13 (10), 2297-2317。DNA(配列番号:21)タンパク質(配列番号:22)
【0086】
δゼイン10kD−AF371266−Woo et al., (2001) Plant Cell 13 (10), 2297-2317.およびKirihara et al., (1988) Gene. Nov 30;71(2):359-70。
DNA(配列番号:23)
タンパク質(配列番号:24)
【0087】
シグナルペプチド
γ−ゼイン(配列番号:25)
【0088】
α−グリアジン(配列番号:26)
【0089】
γ−グリアジン(配列番号:27)
【0090】
PR10(配列番号:28)
【0091】
対象となるタンパク質
対象となる(標的)ポリペプチドまたはタンパク質の例は、治療用、栄養薬学用、農業用、バイオコントロール用、または産業用の使用がある任意のタンパク質を含む。そのようなタンパク質の例示的な活性は、(a)緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強シアン蛍光タンパク質(ECFP)、赤色蛍光タンパク質(DsRED)および同種のものによって提供されるような、光捕捉および発光と;(b)エンテロキナーゼ、β−グルクロニダーゼ(GUS)、フィターゼ、炭酸脱水酵素、および産業上の酵素(加水分解酵素、グリコシダーゼ、セルラーゼ、酸化−リダクターゼおよび同種のもの)によって例示される、一次および二次細胞内シグナル伝達および代謝経路に関連するような、酵素活性と;(c)例えば抗体(IgG、IgM、IgAなどのようなモノクローナル抗体)およびその断片、ホルモン[カルシトニン、ヒト成長ホルモン(hGH)、表皮増殖因子(EGF)および同種のもの]、プロテアーゼ阻害剤、抗生物質、抗菌剤、HIV侵入阻害剤[Ryser et al., 2005 Drug Discov Today. Aug. 15;10(16):1085-1094]、コラーゲン、ヒトラクトフェリンならびにサイトカインのようなタンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−レセプター相互作用およびタンパク質−リガンド相互作用と;(d)ワクチンのためのタンパク質およびペプチド抗原(ヒト免疫不全ウィルス(HIV);B型肝炎プレ表面抗原、表面抗原およびコア抗原、口蹄疫ウイルス(FMDV)の構造的なポリタンパク質遺伝子P1[Dus Santos et al., 2005 Vaccine. Mar 7;23(15):1838-1843]、米国特許第4,882,145号のT細胞刺激ペプチド、胃腸炎コロナウイルス、ヒト乳頭腫ウイルスおよび同種のもの)と;(e)フィトヘムアグルチニン(PHA)、リシン毒素サブユニットB(RTB)および他のレクチンのような、タンパク質−非タンパク質相互作用とを含む。
【0092】
そのような発現されたポリペプチドの生物活性についての分析は、当技術分野において周知であり、1つまたは複数の出版物において入手可能である。例えば、ECFP(増強シアン蛍光タンパク質)活性は、タンパク質が458nmで励起された場合に、470〜530nmの波長で放射された蛍光の定量により測定することができる。Richards et al., 2003 Plant Cell Rep. 22:117-121を参照。エンテロキナーゼ(EK)の酵素活性は、例えば、2つの異なるアプローチにより測定することができる。この活性は、インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ(Invitrogen Life Technologies)社のカタログ(E180−01およびE180−2)において論じられるようなウエスタンブロットでエンテロキナーゼに特異的な切断部位を含む融合タンパク質の切断を解析することによって決定することができ、酵素活性が経時的にペプチドからのβ−ナフチルアミンの放出によって引き起こされる蛍光(337nmで励起、420nmで発光)の増加によって測定される、EKのための蛍光ペプチド基質(シグマ(Sigma)G−5261、CAS(登録商標)RN 70023−02−8)を使用してEK活性を定量することによってもまた決定することができる。LaVallie et al., 1993 J. Biol. Chem. 268(31):23311-23317を参照。酵素β−グルクロニダーゼ(GUS)の活性は、基質MUG(4−メチルウンベリフェリルグルクロニド)の産物MUへの変換によって測定することができる。この産物は、分光蛍光計で365nmでの励起、455nmでの発光で蛍光を測定することにより定量することができる。Pai-Hsiang et al., 2001 J. Plant Physiol. 158(2):247-254;およびJefferson et al., 1987 EMBO J 6:3901-3907を参照。フィターゼ分析は、アセトン、5.0N硫酸および10mMモリブデン酸アンモニウムからなるAAM試薬から放出される無機正リン酸塩の定量化によって実行される。Ullah et al., 1999 Biochem. Biophys. Res. Commun. 264(1):201-206を参照。同様の分析が他の生体タンパク質に利用可能である。Reed et al., 2005 Plant Cell Rep. Apr;24(1):15-24において記載されているように、RTB活性分析は、アシアロフェツイン、ラクトースおよびガラクトースへのRTBの結合の測定により行なうことができる。
【0093】
EGFは線維芽細胞増殖に関与する増殖因子である。EGF活性は、増殖細胞のDNA中へ、チミジンの代わりにピリミジンアナログの5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)が取り込まれることで測定されるDNA合成の誘導の定量化によって、細胞増殖ELISAキットを使用して分析することができる[Oliver, et al., 2004 Am. J. Physiol. Cell Physiol. 286:1118-1129;カタログ番号1647229、ロッシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)社、マンハイム、ドイツ]。
【0094】
光捕捉および発光が、個別および特殊なタイプの「生物学的活性」を構成することが注目され、その点でそのような活性は、上で言及された他のタイプの活性が提供するような、治療用、栄養薬学用、農業用、バイオコントロール用、または産業用の使用を提供しない。それらが治療用、栄養薬学用、バイオコントロール用、または産業用の使用を提供する標的分子によって所有される、必要な二次構造、三次構造および四次構造の特徴のうちのいくつかを共有するので、生物学的に活性のあるものとして標的のこのクラスのポリペプチドが本明細書において含まれる。しかしながらこれらのタンパク質は、生物学的に重要な分子の分析または開発で使用される多くのタイプの分析またはスクリーニングにおけるレポーター分子として有用であり、それらの発光活性は、適正な二次および三次タンパク質構造の存在を必要とする。標的のグループを、生物学的に活性のあるおよび/または発光活性のあるポリペプチドと呼ぶほうが、恐らくより正確である。
【0095】
対象となる例示的なタンパク質のための例示的なDNA配列およびアミノ酸残基配列は、以下に提供される。
【0096】
ECFP
DNA(配列番号:29)
タンパク質(配列番号:30)
【0097】
GUS1381
DNA(配列番号:31)
タンパク質(配列番号:32)
【0098】
GUS1391Z
DNA(配列番号:33)
タンパク質(配列番号:34)
【0099】
サケカルシトニンBAC57417
タンパク質配列(配列番号:35)
DNA配列(配列番号:36)
【0100】
hEGF−シグナルペプチドのないAAF85790に基づく構造
タンパク質配列(配列番号:37)
DNA配列(配列番号:38)
【0101】
hGH−シグナルペプチドのないP01241に基づく構造
タンパク質配列(配列番号:39)
DNA配列(配列番号:40)
【0102】
別の実施形態において、対象となるPBISおよび産物の配列に加えて、組換え融合タンパク質はスペーサーアミノ酸配列をさらに含む。スペーサーアミノ酸配列は、酵素的手段もしくは化学的手段によって切断可能か、または切断可能でないアミノ酸配列になりえる。「切断可能でない」によって、いくつかのまたはすべての生物学的に活性のあるポリペプチドの破壊なしには、スペーサーの切断が生じないことが意味される。
【0103】
特定の実施形態において、スペーサーアミノ酸配列は、PBISと生物学的に活性のあるポリペプチドとの間に置かれる。例示的なアミノ酸配列は、エンテロキナーゼ、Arg−−Cエンドプロテアーゼ、Glu−−Cエンドプロテアーゼ、Lys−−Cエンドプロテアーゼ、第Xa因子、SUMOプロテアーゼ[Tauseef et al., 2005 Protein Expr. Purif. 2005 Sep 43(1):1-9]および同種のもののようなプロテアーゼによって切断可能である。あるいは、スペーサーアミノ酸配列は、ニュー・イングランド・バイオラボ(New England Biolabs)社他から市販で入手可能なような、FMDVウイルス自己プロセッシング2A配列のような自己切断可能な配列、Ssp DNAbインテインのようなインテインおよび同種のものに対応する。そのような配列は、タンパク質スプライシングを引き起こすことを選択的に誘導することができ、その結果として発現され回収されるタンパク質からそれ自体を除去するので、インテインリンカー配列の使用は好ましい。インテインは、対象となるタンパク質からPBISを切断するために標的部位への到達には大きなタンパク質酵素を必要としないので、インテインは特に興味あるものである。この特性は、未処理のRPBLAから対象となるタンパク質の直接的な単離に特に有用かもしれない。あるいは、例えばメチオニン残基で切断する臭化シアンのような化学試薬によって特異的に切断可能なアミノ酸配列がコードされる。
【0104】
さらなる実施形態において、形質転換目的に使用される核酸配列は、切断可能なアミノ酸配列をコードする核酸配列をともなうか、またはその核酸配列をともなわないで、同一出願人による特許出願WO 2004003207に従って開示されたようなものである。
【0105】
調製の方法
好ましい実施形態において、融合タンパク質は、動物、動物細胞培養、植物もしくは植物細胞培養、真菌培養、昆虫細胞培養または藻類培養のような真核生物宿主細胞系を、(i)PBISをコードする第1の核酸でと、(ii)生物学的に活性のある対象となるポリペプチド産物をコードするヌクレオチド配列を含む第2の核酸配列を動作可能なようにインフレームで結合したものを含む核酸(DNAまたはRNA)配列により、形質転換することを含む方法に従って調製される。すなわち両方のポリペプチドが適切なリーディングフレームから発現され、対象となるタンパク質は生物学的に活性があるように、PBISをコードする核酸配列は対象となるポリペプチドをコードする配列に化学的に結合(ペプチド結合)される。以下に論じられるように、適切な調節配列がPBISおよび対象となるタンパク質をコードする核酸配列のいずれかの側に存在することもまた検討される。そのような制御配列は周知であり、市販で入手可能なベクターである。ウイルスによる形質導入またはウイルス感染を介するようなDNAを導入する間接的な手段の使用もまた検討され、トランスフェクションのような直接的なDNA送達方法が交換可能に使用される。
【0106】
形質転換された宿主細胞または構成要素は、融合タンパク質の発現および組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)の中への発現される融合タンパク質の集合に適切な期間および培養条件下で維持される。発現に際して、結果として生じる融合タンパク質は、高密度の組換えタンパク質顆粒様集合体として、形質転換された宿主系中で蓄積する。次に融合タンパク質は宿主細胞から回収できるか、または融合タンパク質を含む宿主細胞は、付加的栄養物質またはサプリメントを含む動物性食品として、所望のように使用することができる。融合タンパク質は、RPBLAの一部またはRPBLA不含有として単離できる。
【0107】
融合タンパク質の発現に適切な培養条件は、典型的には各タイプの宿主構成要素または宿主細胞によって異なる。しかしながら、それらの条件は当業者に公知であり、容易に決定される。同様に維持の持続期間は、宿主細胞および調製される所望の融合タンパク質の量により異なってもよい。重ねて、それらの条件は周知であり、具体的な状況において容易に決定することができる。さらに、具体的な培養条件は、本明細書における引用から得ることができる。
【0108】
1つの実施形態において、第1の核酸配列(i)の3’末端は、第2の核酸配列(ii)の5’末端に結合される(接合される)。他の実施形態において、第1の核酸配列(i)の5’末端は、第2の核酸配列(ii)の3’末端に結合される(接合される)。別の実施形態において、PBISは、貯蔵タンパク質または修飾貯蔵タンパク質、断片またはその修飾断片を含む。
【0109】
別の特定の実施形態において、融合タンパク質は、以前に言及された核酸配列(i)および(ii)に加えて、スペーサーアミノ酸配列をコードするインフレーム核酸配列(iii)を含む核酸配列により、動物、動物細胞培養、植物、植物細胞培養、真菌または藻類のような宿主細胞系を形質転換することを含む方法に従って調製される。以前に言及されたように、スペーサーアミノ酸配列は、酵素的手段または化学的手段によって切断可能であるか、または切断可能でないアミノ酸配列でありえる。1つの特定の実施形態において、核酸配列(iii)は該核酸配列(i)と(ii)との間に置かれ、例えば、3番目の核酸配列(iii)の3’末端は、第2の核酸配列(ii)の5’末端に結合される。別の実施形態において、3番目の核酸配列(iii)の5’末端は、第2の核酸配列(ii)の3’末端に結合される。
【0110】
以前に記載された融合タンパク質分子またはそのコード配列の相補物をコードする核酸配列(セグメント)もまた、本明細書において検討される。そのような核酸セグメントは、いくつかの好ましい実施形態において単離され精製された形態である。
【0111】
生物では、タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸残基配列は、遺伝暗号を介してタンパク質をコードする遺伝子のデオキシリボ核酸(DNA)配列へ直接関連する。したがって、遺伝暗号の周知の縮重を介して、所望されるように付加的なDNAおよび対応するRNAの配列(核酸)を調製することができ、それは同一の融合タンパク質のアミノ酸残基配列をコードするが、2つの配列は高いストリンジェンシーでハイブリダイズせず中程度のストリンジェンシーでハイブリダイズするような前に論じられた遺伝子配列とは十分に異なるものである。
【0112】
高いストリンジェンシー条件は、6×SSC中で約50℃〜55℃の温度でのハイブリダイゼーション、および1〜3×SSC中で68℃の温度での最終的な洗浄を含むものとして定義することができる。中程度のストリンジェンシー条件は、0.2〜0.3MのNaCl中で約50℃〜約65℃の温度でのハイブリダイゼーション、続いて0.2×SSC、0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中で約50℃〜約55℃での洗浄を含む。
【0113】
タンパク質顆粒誘導配列(PBIS)および対象となるポリペプチドを含む融合タンパク質(1)それ自体がコードする、またはその相補物がコードするヌクレイック(nucleic)配列(DNA配列またはRNA配列)もまた、本明細書において検討される。周知の通り、本明細書の他の部分で論じられるような適切な発現系において適切なプロモーターへ動作可能なように結合された場合、検討される核酸配列のような核酸配列が発現される。この核酸配列は、宿主真核生物細胞へ直接または間接的に(ウイルスまたは細菌のような適切なベクター生物を介して)送達することができ、宿主核またはオルガネラゲノムへと安定的に組入れられるか、またはゲノム組入れを伴わないで一過性に発現させることができる。
【0114】
異なる宿主は、しばしば特定のアミノ酸残基のコードのために使用される特定のコドンの選択性を有する。そのようなコドン選択性は周知であり、宿主に好まれるコドンが融合タンパク質を発現する特定の宿主に利用されるように、所望の融合タンパク質配列をコードするDNA配列は、例えばインビトロ変異誘発を使用して改変することができる。
【0115】
上で論じられるように、検討される融合タンパク質をコードする遺伝子を定義する外来性の核酸セグメント(例えばDNAセグメントまたは配列)へ、動作可能なように結合された遺伝子の、適合性のある真核生物宿主細胞生物中での発現を行なうために適切なプロモーターのような1つまたは複数の調節配列(調節エレメント)を含むベクターを含むDNA分子のような組換え核酸分子もまた、本発明において検討される。より詳細には、対象となるポリペプチドへ結合されたタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)をコードする遺伝子を定義するDNAセグメントへ、動作可能なように結合された融合タンパク質の、宿主生物細胞中での発現を行なうためのプロモーターを含むベクターを含む組換えDNA分子もまた検討される。その組換えDNA分子は、適切なトランスフェクションおよび宿主の真核生物細胞における発現に際して、RPBLAとして検討される融合タンパク質を提供する。
【0116】
当技術分野において周知の通り、必要な核酸(例示的にはDNA配列)が存在する限り(開始シグナルおよび終止シグナルを含んで)、付加的な塩基対はDNAセグメントのいずれかの末端で通常存在することができ、そのセグメントをタンパク質の発現のためになお利用することができる。これはもちろん、発現を抑制するか、発現が望まれる融合タンパク質を消耗させるさらなる産物を発現するか、その所望の融合タンパク質によって産生される必要な反応生成物を消耗する産物を発現するか、または他の場合にはDNAセグメントの遺伝子の発現を妨害するように動作可能に結合されたDNA配列のセグメントが欠如していると推定される。
【0117】
したがって、DNAセグメントがそのような妨害DNA配列のない限り、本発明のDNAセグメントは約500〜約15,000塩基対長でありえる。いったん、複製および発現(所望の場合に)に必要とされる最小限のDNA配列がすべて存在すれば、組換えDNA分子(特に発現ベクター)の最大サイズは、多くは利便性および宿主細胞により提供できるベクターサイズによって支配される。最小限のベクターサイズは周知である。そのような長いDNAセグメントは好ましくないが使用することができる。
【0118】
前に記載された融合タンパク質をコードするDNAセグメントは、化学的技術(例えばMatteucci et al., 1981 J. Am. Chem. Soc., 103:3185のフォスフォトリエステル法)により合成することができる。もちろん、化学的にコード配列を合成することによって、任意の所望の変更は、本来のアミノ酸残基配列をコードする塩基の代わりに適切な塩基を用いることで単純に行うことができる。しかしながら、本明細書において具体的に論じられた配列を含むDNAセグメントが好ましい。
【0119】
融合タンパク質をコードする遺伝子を含むDNAセグメントは、好ましくはその遺伝子を含む組換えDNA分子(プラスミドベクター)から得られる。宿主細胞中の融合タンパク質遺伝子の発現を導くベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
【0120】
発現ベクターは、プロモーターを含む発現調節エレメントを含んでいる。プロモーター配列が、RNAポリメラーゼの結合および融合タンパク質をコードする遺伝子の発現の指令を可能にするように、融合タンパク質をコードする遺伝子は、発現ベクターへ動作可能なように結合される。ポリペプチドをコードする遺伝子の発現において有用なものは、Chua et al., 1989 Science, 244:174-181において示されるような時間的に制御、空間的に制御、および空間時間的に制御されるものと同様に、Paszkowski et al., 1989 EMBO J., 3:2719 and Odell et al., 1985 Nature, 313:810によって記載されるような誘導可能なウイルス性の構成的な合成プロモーターである。
【0121】
哺乳類および藻類または、昆虫および同種のものの細胞と適合性のあるベクターのような、真核生物細胞と適合性のある発現ベクターは、本明細書において検討される。そのような発現ベクターもまた本発明の組換えDNA分子を形成するために使用することができる。真核生物細胞発現ベクターは当技術分野において周知であり、いくつかの市販のソースから利用可能である。通常は、そのようなベクターは、所望のDNAセグメントおよびプロモーター配列の挿入のために1つまたは複数の都合のよい制限部位を含んでいる。任意で、そのようなベクターは真核生物細胞における使用のために特異的選択可能マーカーを含む。
【0122】
哺乳類細胞における組換DNA発現による融合タンパク質の産生は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞、Cos1サル宿主細胞およびヒト293T宿主細胞中で、融合タンパク質遺伝子を発現する組換DNAベクターを使用して以下に示される。これは当技術分野において周知であり、より詳細に、Sambrook et al.、分子クローニング:実験手引き書(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratories)(1989)中で記載される手順を使用して遂行される。
【0123】
昆虫細胞系もまた、検討される融合タンパク質を発現するために使用することができる。例えば、そういうものの一つの系において、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)細胞、または トリコプルシア(Trichoplusia)属幼虫中で外来遺伝子を発現するために、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)またはバキュロウイルスをベクターとして使用する。融合タンパク質をコードする配列は、ポリヘドリン遺伝子のようなウイルスの非必須領域中へクローニングすることができ、ポリヘドリンプロモーターの制御下で置かれる。融合タンパク質配列の挿入が成功すれば、ポリヘドリン遺伝子を不活性化し、コートタンパク質を欠く組換えウイルスを産生する。次に組換えウイルスは、例えば融合タンパク質を発現できるツマジロクサヨトウ細胞またはトリコプルシア属幼虫を感染させるために使用することができる(E. Engelhard et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 91:3224-3227;およびV. Luckow、「昆虫細胞発現技術(Insect Cell Expression Technology)」、183〜218ページ、タンパク質工学:原理および実践(Protein Engineering: Principles and Practice)、J.L. Cleland et al.編集者、ワイリー−リス(Wiley−Liss)社、1996年)。オートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウィルス(AcNPV)のポリヘドリンプロモーターの制御下に置かれた異種遺伝子は、多くの場合感染の後期段階の間に高レベルで発現する。
【0124】
融合タンパク質遺伝子を含む組換えバキュロウイルスは、Bac−To−Bac(商標)バキュロウイルス発現系(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)社)として商業的に販売される、バキュロウイルスシャトルベクター系[Luckow et al., 1993 J. Virol., 67:4566-4579]を使用して構築される。組換えウイルスのストックは調製され、組換えタンパク質の発現は標準的なプロトコールによってモニタリングされる(O'Reilly et al.、バキュロウイルス発現ベクター:実験手引き書(Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual)、W.H.フリーマン・アンド・カンパニー(W.H. Freeman and Company)、ニューヨーク、1992年;およびKing et al.、バキュロウイルス発現系:研究室ガイド(The Baculovirus Expression System: A Laboratory Guide)、チャップマン&ホール(Chapman & Hall)、ロンドン、1992年)。当業者に公知のような、T.Kostおよび共同研究者(例えば、参照、Merrihew et al., 2004 Methods Mol Biol. 246:355-365)によって記載される「BacMam」系のような哺乳類細胞または他のそのような系における、バキュロウイルスまたは他の送達ベクターの使用もまた、本発明において検討される。
【0125】
どの発現ベクターを、および最終的にどのプロモーターに、融合タンパク質をコードする遺伝子が動作可能なように結合されるかの選択は、所望の機能特性、例えばタンパク質発現の所在およびタイミング、ならびに形質転換される宿主細胞に直接依存する。これらは、組換えDNA分子の構築についての当技術分野における固有の周知の制限である。しかしながら、本発明の実行において有用なベクターは、複製、および好ましくは動作可能なように結合されたDNAセグメント中に含まれる融合タンパク質遺伝子の発現(発現ベクターについて)もまた導くことができる。
【0126】
より高等な植物および哺乳類からの細胞における遺伝子の発現に有用な典型的なベクターは、当技術分野において周知であり、Rogers et al. (1987) Meth. in Enzymol., 153:253-277によって記載されるアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の腫瘍誘導(Ti)プラスミドに由来する植物ベクターおよび哺乳類発現ベクターpKSV−10(上記)、ならびにpCI−neo(プロメガ(Promega)社、#E1841、マディソン、ウィスコンシン)を含む。しかしながら、他のいくつかの発現ベクター系は、Fromm et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:58-24によって記載されるpCaMVCNトランスファー制御ベクターを含む植物における機能が公知である。プラスミドpCaMVCN(ファルマシア(Pharmacia)、ピスカタウェイ、ニュージャージー)から入手可能)は、カリフラワーモザイクウイルスCaMV 35Sプロモーターを含む。
【0127】
上記の植物発現系は、典型的には挿入された導入遺伝子の全体的または構成的発現を提供する。植物の大部分またはすべてがRPBLAおよびそれらの融合タンパク質のソースとして使用される場合、全体的な発現は有用になりえる。しかしながら、粒子がより容易に単離または摂取することができる根、種子または果物のような植物貯蔵器官において、RPBLAおよびそれらの融合タンパク質内容物を発現するほうが効果的でありえる。
【0128】
貯蔵器官発現を達成する1つの様式は、1つまたは複数のあらかじめ選ばれたまたはあらかじめ決定された非光合成植物器官において制御される遺伝子を発現するプロモーターを使用することである。葉または茎に対して根、種子または果物のような他の器官においてほとんどまたは全く発現のない1つまたは複数のあらかじめ選ばれた貯蔵器官における発現は、本明細書において増強された発現または選択的発現と呼ばれる。1つまたは複数のあらかじめ選ばれた器官において、別の器官と比較して、少なくとも5:1の比での発現を導く例示的なプロモーターは、本明細書において器官に増強されたプロモーターとして定義される。実質的に1つの貯蔵器官のみにおける発現、および他の貯蔵器官における発現が実質的にないことは、器官特異的発現と呼ばれる;すなわち、別の貯蔵器官と比較して、貯蔵器官における発現産物の比が約100:1またはそれ以上であることは、器官特異性を示す。したがって貯蔵器官特異的プロモーターは、貯蔵器官に増強されたプロモーターのクラスのメンバーである。
【0129】
例示的な植物貯蔵器官は、トウモロコシ(コーン)、大豆、コメ、脂肪種子アブラナおよび同種のものの種子に加えて、ニンジン、タロイモまたはキャッサバの根、バレイショ塊茎、ならびにレッドグアバとパッションフルーツ、マンゴー、パパイア、トマト、アボカド、チェリー、タンジェリン、マンダリンミカン、パーム、カンタロープおよびスイカのようなメロン、ならびに西洋カボチャ、キュウリ、マンゴー、アプリコット、桃のような他の多肉果のような果肉を含む。
【0130】
CaMV 35Sプロモーターは通常は構成的プロモーターであると考えられる。しかしながら、CaMV 35Sプロモーターの21bp領域は、別の異種の通常緑色組織プロモーター(rbcS−3Aプロモーター)へと動作可能なように結合された場合、結果として生じるキメラプロモーターを根に増強されたプロモーターにすることが可能であることが、研究によって示された。その21bp配列は米国特許第5,023,179号に開示される。米国特許第5,023,179号の21bp挿入物を含むキメラrbcS−3Aプロモーターは、本明細書において有用な、根に増強されたプロモーターである。
【0131】
上記の21bpセグメントを含む、同様の根に増強されたプロモーターは、CAMV 35Sプロモーター自体の−90〜+8領域である。米国特許第5,110,732号は、その短縮したCaMV 35Sプロモーターが、根および種子の根生(根になることが予定されている組織)中で増強された発現を提供することを開示する。そのプロモーターもまた本明細書において有用である。
【0132】
別の有用な根に増強されたプロモーターは、PCT/GB92/00416(1991年9月19日に公表されたWO 91/13922)において開示された脂肪種子アブラナ(セイヨウアブラナ(Brassica napus)L.)遺伝子の−1616〜−1のプロモーターである。このプロモーターを含んでいるプラスミドpRlambdaS4およびバクテリオファージλβlを内部に持つ大腸菌DH5αは、国立工業用細菌および海洋性細菌のコレクション(National Collection of Industrial Bacteria and Marine Bacteria)、アバディーン、グレートブリテンに、1990年3月8日に寄託され、アクセッション番号NCIMB40265およびNCIMB40266を有する。このプロモーターの有用部分は、HaeIIIによるプラスミドの切断によって1.0kbの断片として得ることができる。
【0133】
根に増強された好ましいプロモーターは、DiRita and Gelvin (1987) Mol. Gen. Genet, 207:233-241によって記載されるプラスミドpKan2中に存在するマンノピンシンターゼ(ma)プロモーターである。このプロモーターはXbaI−XbalI断片としてそのプラスミドpKan2から除去可能である。
【0134】
マンノピンシンターゼの根に増強された好ましいプロモーターは、ポジション−138までのコアマンノピンシンターゼ(ma)プロモーター領域、および−318〜−213のマンノピンシンターゼ活性化因子を含み、まとめてAmasPmasと呼ばれる。このプロモーターは、葉の発現レベルと比較して、タバコ根において約10倍〜約100倍産生を増加させることが見出されてきた。
【0135】
別の根特異的プロモーターは、側根形成開始の間に発現し、Keller et al. (1989) Genes Dev., 3:1639-1646によって報告された、ヒドロキシプロリンを多く含むグリコペプロテイン(glycopeprotein)遺伝子(HRGPnt3)に付随する約500bpの5’フランキング配列である。別の好ましい根特異的プロモーターは、Yamamoto et al. (1991) Plant Cell, 3:371-381によって報告されたタバコ根特異的遺伝子ToRBFの約−636〜−1の5’−フランキング領域中に存在する。発現を制御するシス作用エレメントは、転写開始部位から5’方向に約−636〜約−299の領域に、それらの著者によってより特異的に位置を定められた。Yamamoto et al.は、葉、芽分裂組織または茎ではなく、根におけるToRBF遺伝子からの定常状態mRNAの産生を報告した。
【0136】
さらに別の有用な貯蔵器官特異的プロモーターは、トマト(リコペルシコン エクスレンタム(Lycopersicon esculentum))の果実成熟遺伝子E8の5’フランキング領域および3’フランキング領域である。これらの領域およびそれらのcDNA配列は、Deikman et al. (1988) EMBO J., 7(11):3315-3320、および(1992) Plant Physiol., 100:2013-2017において図示され論じられる。
【0137】
3つの領域が遺伝子の5’フランキング配列の2181bp中に位置し、ポリ(A)付加部位の3’の522bp配列はE8遺伝子の発現を制御するように思われた。−2181〜−1088の1つの領域は未熟果実におけるエチレンによるE8遺伝子転写の活性化に必要とされ、成熟の間の転写にも寄与する。さらなる2つの領域の−1088〜−863および−409〜−263は、未熟果実におけるエチレン反応性を与えることができないが、成熟の間のE8遺伝子発現に十分である。
【0138】
コーンにおいて、制御される酵素を内胚乳において高レベルで発現させ、根においてはるかに減少したレベルで発現させ、緑色組織または花粉において発現させないトウモロコシスクロースシンターゼ−1(Sh)プロモーターは、キメラレポーター遺伝子(β−グルクロニダーゼ(GUS))を、茎および根に多いタバコ師管細胞において特異的に発現させることが報告された。Yang et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 87:4144-4148。したがってこのプロモーターは、メロン(例えばカンタロープ)に類似する多肉果または内胚乳を含む種子のような植物器官、および高レベルの師管細胞を有する根に有用である。
【0139】
他の例示的な組織特異的プロモーターは、種子組織に特異的なレクチンプロモーターである。ダイズ種子中のレクチンタンパク質は単一遺伝子(Le1)によりコードされ、種子成熟の間でのみ発現し、全種子mRNAの約2〜約5%を占める。レクチン遺伝子および種子特異的プロモーターは完全に特性を明らかにされ、遺伝子導入タバコにおける種子特異的発現を導くために使用された。例えばVodkin et al. (1983) Cell, 34:1023およびLindstrom et al. (1990) Developmental Genetics, 11:160を参照。
【0140】
特に好ましい塊茎特異的発現プロモーターは、ジャガイモパタチン遺伝子の5’フランキング領域である。このプロモーターの使用はTwell et al. (1987) Plant Mol. Biol., 9:365-375中に記載されている。このプロモーターは、バクテリオファージLPOTIの約406bp断片中に存在する。LPOTIプロモーターは、4つの他のパタチンプロモーターと90%以上の相同性のある領域、およびパタチンプロモーターPGT5と400塩基すべてにわたって約95%の相同性のある領域を有する。これらのプロモーターの各々は本明細書において有用である。Wenzler et al. (1989) Plant Mol. Biol., 12:41-50もまた参照。
【0141】
高等植物器官に増強され器官特異的な、なおさらなるプロモーターは、Benfey et al. (1988) Science, 244:174-181において開示される。
【0142】
利用されるプロモーター配列の各々は、細胞におけるRPBLAの量に実質的に影響されない。本明細書において使用されるような、用語「実質的に影響されない」は、プロモーターが、形質転換細胞または遺伝子導入植物中に蓄積されたRPBLAによる直接的なフィードバック制御(阻害)に反応しないことを意味する。
【0143】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスを使用する植物細胞のトランスフェクションは、典型的には双子葉植物に対して最も良く実行される。単子葉植物は、プロトプラストのいわゆる直接的な遺伝子トランスファーによって通常最も容易に形質転換される。直接的な遺伝子トランスファーは、エレクトロポーテーション(electroportation)によって、ポリエチレングリコールを介したトランスファーまたは必要なDNAを運ぶマイクロプロジェクタイルによる細胞の衝撃によって通常行なわれる。トランスフェクションのこれらの方法は当技術分野において周知であり、本明細書においてさらに論じられる必要はない。さらに、トランスフェクションされた細胞およびプロトプラストからの全植物体を再生する方法は、植物の組織から所望のタンパク質を得るための技術と同様に周知である。米国特許第5,618,988号および第5,679,880号 ならびにその中の引用もまた参照。
【0144】
アグロバクテリウム形質転換、エレクトロポーテーションまたは他の方法を使用して形成される遺伝子導入植物は、典型的には1つの染色体上に単一の遺伝子を含む。そのような遺伝子導入植物は、付加的な遺伝子についてはヘテロ接合と呼ぶことができる。しかしながら、「ヘテロ接合である」という単語の使用は、通常1組の染色体のうちの第2の染色体の同一の遺伝子座での相補的な遺伝子の存在を意味し、ここでのように1つの付加的な遺伝子を含む植物においてはそのような遺伝子はないので、そして付加的な外来性キメラ分子をコードする遺伝子が有糸分裂および減数分裂の間に独立して分離するので、そのような植物に対するより正確な名称は、独立した分離体であると考えられる。検討されたHBcキメラ分子をコードする単一の構造遺伝子の発現を操縦する、器官に増強されたプロモーターを含む遺伝子導入植物;すなわち独立した分離体は、好ましい遺伝子導入植物である。
【0145】
より好ましいのは、付加的な構造遺伝子についてはホモ接合の遺伝子導入植物;すなわち2つの付加的な遺伝子(染色体対の各染色体上の同一遺伝子座に1つの遺伝子)を含む遺伝子導入植物である。ホモ接合の遺伝子導入植物は、単一の付加的な遺伝子を含む独立した分離体の遺伝子導入植物を雌雄交配(自殖)させること、生じた種子のうちのいくつかを発芽させること、および対照(天然の非遺伝子導入)または独立した分離体遺伝子導入植物と比較して、増強されたキメラ粒子の蓄積について、結果として生じる植物を解析することによって得ることができる。天然の非遺伝子導入植物および独立した分離体の遺伝子導入植物の両方と比較して、ホモ接合の遺伝子導入植物は増強されたキメラ粒子蓄積を示す。
【0146】
2つの独立して分離する付加的な外来(異種)遺伝子を含む子孫を生ずるために、2つ異なる遺伝子導入植物も交配できることが理解されるべきである。適切な子孫の自殖により、キメラHBc分子をコードする両方の付加的な外来遺伝子についてのホモ接合の植物を生ずることができる。親植物への戻し交配および非遺伝子導入植物との異系交配も検討される。
【0147】
したがって本発明の遺伝子導入植物は、検討されるキメラHBc分子をコードする異種構造遺伝子を有する。好ましい遺伝子導入植物は、付加的な異種キメラHBc構造遺伝子について独立した分離体であり、その子孫にその遺伝子を伝達することができる。より好ましい遺伝子導入植物は、異種遺伝子についてホモ接合であり、雌雄交配の結果のすべての子孫にその遺伝子を伝達する。
【0148】
発現されるRPBLAおよびそれらの融合タンパク質は、生化学的回収または生物学的回収において利用される通常手段によって、発現宿主細胞から得ることができる。RPBLAが宿主細胞中に存在する他のタンパク質と比較して高密度であるので、RPBLAは特に細胞ホモジネートの遠心分離による採取に適用可能である。
【0149】
したがって、比較的高濃度のRPBLAを含む領域および比較的低濃度のRPBLAを含む領域を提供するために、異なる密度の領域をホモジネート中に形成する。RPBLAの少ない領域は、RPBLAが比較的高濃度の領域から分離され、それにより前記融合タンパク質を精製する。RPBLAが比較的高い濃度の領域は、その後採取することができるか、または1つもしくは複数の試薬により処理することができるか、またはその中のRPBLAもしくは融合タンパク質の単離の前に1つもしくは複数の手順を行なう。いくつかの実施形態において、RPBLAが経口ワクチンとして使用される場合、融合タンパク質を単離する必要なしに、採取されたRPBLAはそのまま使用される。生物学的に活性のあるポリペプチドを含む融合タンパク質は、デタージェントおよび以前に論じられたような還元剤を含む水性緩衝液中で周囲の膜の溶解によって回収されたRPBLAから得ることができる。例示的な還元剤は、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸およびチオグリコレート塩、ジチオトレイトール(DTT)、亜硫酸イオンまたは亜硫酸水素イオンを含んでおり、通常のタンパク質単離方法が後続する。他のイオン性界面活性剤(デオキシコレート、’N−ラウロイルサルコシンおよび同種のもの)、非イオン性界面活性剤(ツイーン(登録商標)20、ノニデット(登録商標)P−40、オクチルグルコシドおよび同種のもの)、ならびに両性イオン性界面活性剤(CHAPS、ツィタージェント (Zwittergent)(商標)3−X セリエ(serie)および同種のもの)を使用することができるが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は好ましいデタージェントである。融合タンパク質を溶解または分散させる最小限の量の界面活性剤が利用される。
【0150】
ワクチンおよび接種物
さらに本発明の別の実施形態において、RPBLAはヒト患者、またはチンパンジー、マウス、ラット、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコもしくは同種のもののような適切な動物宿主における接種物またはワクチンの免疫原として使用される。接種物は、免疫原性エピトープまたは抗原決定基と免疫反応する抗体の産生のようなB細胞またはT細胞の反応(刺激)、またはそのようなエピトープへのT細胞活性化を誘導することができるが、ワクチンは、B細胞またはT細胞の反応の1つまたは両方を介して免疫原が由来する構成要素に対する防御を提供する。
【0151】
検討されるワクチンまたは接種物のRPBLAは、RPBLAを飲み込みそれらの内容物を処理する樹状細胞および単球/マクロファージのような抗原提示細胞(APC)に作用するように思われる。それらの細胞タイプにおける作用において、RPBLAは抗原提示細胞への抗原送達を改善する。それらのRPBLAは、抗原提示細胞への抗原処理および抗原提示もまた改善する。
【0152】
したがって、本発明は、さらに薬学的に許容される希釈剤中で溶解または分散される、免疫原性に効果的な量の組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)を含むワクチンまたは接種物を検討する。RPBLAは組換え融合タンパク質を含んでおり、組換え融合タンパク質それ自体はともに結合される2つの配列を含んでおり、1つの配列はタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)であり、他方は免疫反応が前記ワクチンまたは接種物によって誘導される生物学的に活性のあるポリペプチドである。
【0153】
T細胞活性化は様々な技術によって測定することができる。通常の実行において、宿主動物は検討されるRPBLAワクチンまたは接種物により接種され、末梢血単核球(PMBC)はその後採取される。次にそれらのPMBCは、約3〜5日の期間の間生物学的に活性のあるポリペプチド(T細胞免疫原)の存在下においてインビトロで培養される。次に培養されたPMBCを、増殖、またはIL−2、IFN−γのGM−CSFのようなサイトカインの分泌について分析する。T細胞活性化についての分析は当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,478,726号およびその中に引用される技術を参照。
【0154】
例示的なものとして抗体形成を使用して検討される接種物またはワクチンは、典型的には水も含む薬学的に許容される希釈剤組成物中で溶解または分散させた、免疫原的に効果的な量のRPBLAを含む。接種物が、予防接種を必要とする宿主動物のような、生物学的に活性のあるポリペプチドへの免疫反応がワクチンまたは接種物で誘導される宿主動物に投与された場合、または哺乳類(例えば、マウス、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、サル、類人猿またはヒト)、またはトリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒルまたはガチョウ)のような、抗体の誘導が所望される宿主動物に投与された場合、生物学的に活性のある標的ポリペプチドの1つまたは複数の抗原決定基と免疫反応する抗体を誘導する。
【0155】
各予防接種において利用されるRPBLA免疫原の量は、免疫原的に効果的な量と呼ばれ、以下に論じられるように、とりわけRPBLA免疫原については、予防接種される患者およびワクチン中のアジュバントの存在に依存して、広く変化しうる。(i)ワクチンおよび(ii)接種物についての免疫原性に効果的な量は、上文に論じられる、(i)防御または(ii)抗体もしくはT細胞活性をそれぞれ提供する。
【0156】
ワクチンまたは接種物は、典型的には1接種あたり(単位用量)約1マイクログラム〜約1ミリグラム、および好ましくは約10マイクログラム〜単位用量あたり約50マイクログラムのRPBLA免疫原濃度を含む。本発明のワクチンまたは接種物に関連するような用語「単位用量」は、動物に対する単一の投薬として適切な物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要とされる希釈剤(すなわち担体または賦形剤)と共同して望ましい免疫原性効果を、個別にまたは集団的に生ずるように意図される活性のある物質の所定の量を含む。
【0157】
ワクチンまたは接種物は、典型的には、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、酢酸緩衝生理食塩水(ABS)、リンガー溶液または同種のもののような生理学的に耐容される(許容される)希釈賦形剤中で、微粒子の形態で、免疫原を分散させることにより、回収されたRPBLA免疫原から水溶性組成物を形成するように調製される。以下に論じられるように、希釈剤賦形剤は、落花生油、スクアランまたはスクワレンのような油性物質もまた含むことができる。
【0158】
有効成分としてタンパク質性の物質を含む接種物およびワクチンの調製もまた、当技術分野において十分に理解される。典型的には、そのような接種物またはワクチンは、液体溶液または懸濁物のいずれかとしての非経口投与薬として調製され、注射の前に液体の溶液または懸濁物のために適切な固体形態も調製することができる。その調製品は乳化もされることができ、それらは特に好ましい。
【0159】
免疫原的に活性のあるRPBLAは、有効成分と共に、薬学的に許容され適合性のある賦形剤としばしば混合される。適切な賦形剤は、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールまたは同種のものおよびその組合せである。さらに所望されるならば、接種物またはワクチンは、組成物の免疫原実効性を高める、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤のような少量の補助剤を含むことができる。
【0160】
単語「抗原」は、抗体またはレセプターによって結合される構成要素を示し、抗体産生を誘導する構成要素も示すために、歴史上使用されてきた。より最新の用法は、抗原の意味を抗体またはレセプターによって結合されるその構成要素に限定するが、単語「免疫原」は抗体産生を誘導するか、またはレセプターに結合する構成要素に使用される。本明細書において論じられる構成要素が免疫原性であり抗原性である場合には、免疫原または抗原のいずれかとして、典型的には意図される有用性に従って言及される。
【0161】
「抗原決定基」は、抗体結合部位またはT細胞受容体によって免疫学的に結合される抗原の実際の構造的な部分を指す。この用語は「エピトープ」とも同じ意味で使用される。
【0162】
本明細書において使用されるように、用語「融合タンパク質」は、通常は天然ではともに結合されて見出されない、少なくとも2つのアミノ酸残基配列を含み、動作可能なようにそれぞれのカルボキシ末端アミノ酸残基とアミノ末端アミノ酸残基との間のペプチド結合によってともに末端間(頭−尾)で結合されるポリペプチドを示す。本発明の融合タンパク質は、対象となる(標的)生物学的に活性のあるポリペプチド産物(例えばペプチドまたはタンパク質)である、第2の配列に結合されたタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)のキメラである。
【0163】
詳述されていなくても、当業者は、先の記述および下記の詳細な実施例を使用して、最大限に本発明を利用することができると考えられている。したがって、以下の好ましい具体的な実施形態は単に例示的であり、いかなる任意の手段で開示の残りの部分を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0164】
実施例1:トランスフェクションされた哺乳類細胞の高密度画分中のRX3−ECFP由来融合タンパク質の蓄積
【0165】
N末端γ−ゼインコード配列RX3(WO2004003207)をコードするポリヌクレオチド配列を、直接または5つのグリシンからなるリンカーを介して、ECFP(GFPのシアン蛍光変異体)をコードする配列の5’末端に融合した。融合タンパク質RX3−ECFPまたはRX3−Gx5−ECFPをコードするコンストラクト(図1A)を、CHO哺乳類培養細胞中にリポフェクタミン(Lipofectamine)に基づくトランスフェクション方法(インビトロゲン社)により導入した。細胞質ECFPの遺伝子配列を含むプラスミドpECFP−N1(クロンテック(Clontech)社)によりトランスフェクションされたCHO細胞を、対照として使用した。
【0166】
トランスフェクションされた哺乳類細胞の抽出液を、段階的密度勾配上にロードし、遠心分離した。異なる画分中の組換えタンパク質の蓄積をイムノブロットによって解析した。(図2A)。その図中に示される結果は、高密度RPBLAに対応する画分F42、F56およびPにおいて、RX3−ECFPおよびRX3−Gx5−ECFPが出現したことを示す(図2A、レーン3〜5)。この結果は、融合タンパク質が集合し、RPBLA形成を誘導できることを実証する。若干の融合タンパク質も、上清画分において検出され(図2A、レーン1)、恐らく抽出過程の間に部分的に可溶化したRPBLAからの融合タンパク質、または合成されたばかりで集合していない融合タンパク質を表わす。
【0167】
反対に、対照プラスミドpECFP−N1によりトランスフェクションされた哺乳類細胞抽出液が同一の段階的密度勾配上にロードされた場合、ECFPタンパク質はもっぱら上清中に観察された。微量のECFPも高密度画分中に検出されなかったことから、ECFPが単独で凝集しPBのような構造を形成できないことが示される。
【0168】
実施例2:トランスフェクションされた哺乳類細胞のRPBLA中のPBISドメインへ融合させた活性のあるECFPの蓄積
【0169】
融合タンパク質のRX3−ECFP、RX3−Gx5−ECFPおよび22aZ−ECFPが、RPBLAの内部で活性があるかどうか決定するために、共焦点顕微鏡分析を、それらをコードするコンストラクトによりトランスフェクションされたCHO細胞において行なった(図1A)。シアン蛍光イメージを、470〜530nmで設定された発光ウィンドウの使用によりアルゴンイオンレーザーによる458nm励起で集めた。図3中に示されるように、対応する融合タンパク質のRX3−ECFP(図3A)およびRX3−Gx5−ECFP(図3B)および22aZ−ECFP(図3D)は、小胞体中に検出されたことから、γ−ゼインおよびα−ゼインのシグナルペプチドがERへの融合タンパク質の移動を仲介する哺乳類細胞において、そのシグナルペプチドが機能的であることが示される。
【0170】
融合タンパク質が驚くほど優先的に蓄積された大きな高密度球状構造の出現に注目することは重要であり、この球状構造は免疫検出によって視覚化された、穀物種子の天然のPBおよび異種系におけるRPBLAの両方に非常に類似していた。これらの構造において観察される強い蛍光は、融合タンパク質が適切に折畳まれたままであること、およびしたがってRPBLAの内部で高度にパッケージにされるにもかかわらず活性があることを示す。PBおよびPB様構造の形成に関与する他のタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)と同様に、RX3ドメインも複数のシステイン残基を含むことに注目することもまた重要である。そのようなシステインが標的タンパク質システインによりジスルフィド結合を形成することができ、従って標的タンパク質の適切な折畳みを妨害することが予測されてもよいが、これはそのようなことは観察されなかった。活性のある標的タンパク質(ECFP蛍光)および機能的なPBIS(RPBLAの形成)の両方が観察された。
【0171】
対照として、コンストラクトpECFP−N1を、CHO細胞のトランスフェクションのために使用した。細胞質ECFPの発現は、核を含む細胞すべてにわたって均一な蛍光パターンを示した(図3C)。
【0172】
実施例3:CHO細胞における、RX3に融合させた他の蛍光タンパク質の細胞内局在。
【0173】
RX3に融合させたECFP以外の蛍光タンパク質がRPBLAの内部で適切に折畳まれ生物活性があるかどうかを解析するために、一過性にトランスフェクションされたCHO細胞中での、RX3−DsRED融合タンパク質およびRX3−GFP融合タンパク質の細胞内局在を、共焦点顕微鏡によって解析した。DsREDがECFPと相同性を持たない(完全に異なる折畳みメカニズムを意味する)ことに注目すべきである。トランスフェクションされた細胞からの顕微鏡写真は、発光帯波長選択のための分光光度計を装備する共焦点レーザー顕微鏡(ライカ(Leica)社TCS SP、ハイデンベルグ、ドイツ)の使用により得られた。緑色蛍光イメージを、495〜535nmで設定される発光ウィンドウの使用によりアルゴンイオンレーザーによる488nmの励起で集めた。赤色蛍光イメージは、ヘリウムネオンレーザーおよび発光ウィンドウ550〜600により543nmの励起後に集められた。光学的切片は0.5μm厚であった。
【0174】
CHO細胞中のRX3−GFP(図3E)融合タンパク質およびRX3−DsRED(図3F)融合タンパク質の発現により、大量の非常に強い蛍光の丸型RPBLAを生じた。これらの結果は、両方の融合タンパク質が適切に折畳まれRPBLAの内部で活性を持つことを確証する。
【0175】
実施例4:植物および昆虫における蛍光RX3融合タンパク質の細胞内局在
【0176】
CHO細胞以外の宿主細胞が、RX3ドメインへ融合させた活性のある蛍光タンパク質を含むRPBLAを生ずることができるかどうかを解析するために、シリンジアグロインフィルトレーションによってRX3−GFPでタバコを一過性に形質転換した。表皮細胞の共焦点顕微鏡による分析(図4Aおよび4B)は、大量の蛍光RPBLAの存在を示した。形質転換されたタバコ葉肉細胞を解析した場合、同様の結果が得られた。
【0177】
スポドプテラ(Spodoptera)属SF9昆虫細胞または昆虫幼虫(イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni))が、融合タンパク質RX3−DsREDをコードするバキュロウイルスに感染した場合、同様の結果が得られた。図4Cにおいて示されるように、感染昆虫細胞の光学的切片の投影図では、直径約0.5マイクロメートルの活性のあるRX3−DsRED融合タンパク質を含む大量の蛍光RPBLAが蓄積された。感染した幼虫の共焦点分析でも、解析されたすべての組織において目覚ましい量の蛍光RPBLAが示された。図4Dにおいて、感染した幼虫からの脂肪細胞は、活性のあるRX3−DsREDを含むRPBLAを示す。興味深いことには、DsRED蛍光は昆虫の血リンパにおいて観察されず、発現されたタンパク質が完全にRPBLA内に隔離されていることが示唆される。
【0178】
実施例5:CHO細胞のRPBLA中に集合したRX3−hGHの活性。
【0179】
RPBLA中に産生されたヒト成長ホルモン(hGH)の活性を決定するための研究が行なわれた。hGHはタンパク質の適切な折畳みに重要な2つのジスルフィド結合を含むので、この分子が選択された。RX3ドメインは、RPBLAの集合および安定化に必須のジスルフィド結合に関与するシステイン残基もまた含んでおり、それはhGHの適切な折畳みに干渉する。
【0180】
p3.1−RX3−hGHコンストラクトを、リポフェクタミンのプロトコール(インビトロゲン社)での一時的なトランスフェクションによってCHO細胞へ導入した。トランスフェクションの4日後に、細胞を固定し、透過性にし、抗RX3または抗hGHの抗血清(それぞれ図5Aおよび5B)、およびアレクサ(Alexa)蛍光488結合二次抗体(インビトロゲン社)によりインキュベートした。使用される一次抗体とは無関係に、RX3−hGH融合タンパク質を含む大きなRPBLA(1〜3マイクロメートル)の存在が、光学顕微鏡法分析によって観察された。
【0181】
以前に記載されたようにRPBLAが高密度オルガネラであることを確認するために、RX3−hGHを発現するCHO細胞をホモジナイズし、ホモジネートを別記されるように段階的密度勾配上にロードし遠心分離した。異なる画分におけるRX3−hGHの蓄積はイムノブロットによって解析された。図に示すように、融合タンパク質の一部は上清中にあり、集合していないRX3−hGHを示すが、大部分の融合タンパク質は高密度RPBLAに対応する画分F56に検出された(図2B、それぞれレーン2および5)。
【0182】
このF56画分を、緩衝液PBP4(100mMトリスpH7.5、50mM KCl、5mM MgCl2、5mM EDTA)中に3倍希釈し、スイングバケット中で80000×gで遠心分離して沈殿中のRPBLAを回収した。hGHの存在を、ELISA分析(アクティブ(Active)(登録商標)ヒト成長ホルモンELISA−DSL−10−1900;ダイアグノスティック・システムズ・ラボラトリーズ(Diagnostic Systems Laboratories)社)を使用して定量し、それは未処理のRPBLA膜の存在下においてでさえhGHを検出することができた。
【0183】
この同一のサンプルを、生物活性分析(アクティブ(登録商標)生物活性ヒト成長ホルモンELISA−DSL−10−11100;ダイアグノスティック・システムズ・ラボラトリーズ社)に適用した。この生物活性分析は、キットに提供されるhGH結合タンパク質へ相互作用するように適切に折畳まれたhGHの能力に基づき、この相互作用はhGHの機能的なコンフォーメーションに依存する。サンプルは24ng/mlの生物活性タンパク質で陽性の結果を示した。hGHタンパク質は、高密度RPBLAの外側表面上に確かに正しく折畳まれ提示された。50mMトリスpH8および1%トリトンX−100での調製品の洗浄、ならびに50%振幅および50%サイクルで1分間、反復5回の超音波処理(イカソニック(Ikasonic)U200S−イカ・ラボルテヒニク(IKA Labortechnik))による、RPBLAを囲む膜の除去は、凝集体の表面上での付加的なhGH分子の暴露に起因するより高い比活性(45ng/ml)をもたらした。
【0184】
RX3へ融合させたhGHの活性の決定において、密度勾配によって単離されたRPBLAから融合タンパク質を可溶化した(F56、緩衝液PBP4中で3倍に希釈し、スイングバケット中で2時間80000×gで遠心分離した)。融合タンパク質を、緩衝液S(トリス50mM、pH8および2%のβ−ME)中に可溶化し、超音波処理した(サイクル5、振幅50%、1分、反復5回;イカソニックU200S−イカ・ラボルテヒニク)。2時間37℃でのインキュベーション後に、サンプルを10分間5000×gで遠心分離し、可溶性RX3−hGH融合タンパク質を含む上清は画分の生理活性成分を定量し評価するために分析した。上清中の融合タンパク質の量は、ELISA(アクティブ(登録商標)ヒト成長ホルモンELISA−DSL−10−1900;ダイアグノスティック・システムズ・ラボラトリーズ社)によって250ng/mLと決定された。生物活性ELISA分析(アクティブ(登録商標)生物活性ヒト成長ホルモンELISA−DSL−10−11100;ダイアグノスティック・システムズ・ラボラトリーズ社)において分析されたタンパク質は、70ng/mlの結果であり、RX3−hGH融合タンパク質の約30%は活性があることを示す。hGH活性の損失は、可溶化において使用される還元剤の高濃度の結果、またはRX3ドメインがhGHまたはhGH結合タンパク質に対してある程度の阻害効果を有するためでありえる。
【0185】
最終的に、RX3−hGH融合タンパク質を部位特異的プロテアーゼによって切断して融合タンパク質からhGHを放出した。可溶化したRX3−hGH融合タンパク質を、2倍に希釈し、製造業者(インビトロゲン社)により記載されるようなEKmaxにより消化した。その後、1時間4℃の16000×gで遠心分離によって、未切断の融合タンパク質(不溶性)から遊離hGHを単離した。可溶性hGHを上清から回収し、ダイアグノスティック・システムズ・ラボラトリーズからの定量化分析および生物活性分析に適用した。意外にも、これらの両方のキット(アクティブ(登録商標)ヒト成長ホルモンELISA(DSL−10−1900;ダイアグノスティック・システムズ・ラボラトリーズ社、およびアクティブ(登録商標)生物活性ヒト成長ホルモンELISA)DSL−10−11100;ダイアグノスティック・システムズ・ラボラトリーズ社)からの結果は、定量化分析および生物活性ELISA分析について90ng/mlの同一の値を示し、定量化キットによって検出されるような存在するタンパク質はすべて生物活性でもあると決定されることを示す。
【0186】
すべての処方におけるhGHタンパク質の定量化および生物活性についての要約表を、以下に提示する。

【0187】
ベクターp3.1−RX3により安定的にトランスフェクションされたCHO細胞が陰性対照として使用されることに注目すべきである。図2Bに示されるように、CHO細胞中のRX3の発現は、F56の段階的密度勾配によって単離することができる高密度構造中にも蓄積する(図2B、レーン5)。さらに、p3.1−RX3によりトランスフェクションされたCHO細胞の光学的分析は、RX3タンパク質がRPBLA中に蓄積することを示した(図5C)。これらの対照のRX3 RPBLA調製品および単離されたRX3タンパク質は、ELISA生物活性分析においてhGH活性を示さなかった。
【0188】
実施例6:CHO細胞のRPBLAからのRX3−Int−hGH可溶化後のDNAbインテインの活性
【0189】
Ssp DNAbインテイン(ニュー・イングランド・バイオラボ)をコードするポリヌクレオチド配列を、RX3配列(WO2004003207)の3’末端、およびhGH cDNAの5’末端へインフレームで融合した。結果として生じるコンストラクトをベクターpcDNA3.1(−)[図1A]へクローニングしてベクターp3.1−RX3−I−hGHを形成した。陰性対照として、ベクターp3.1−RX3−Im−hGHを形成するために、アミノ酸残基Asp154をAlaへ変異させて[図1A]、同一のインテインの活性がないバージョンをPCRによって作製した。Asp154アミノ酸残基はSsp DNAb自己切断活性に必須であることが報告されている(Mathys et al, GENE (1999) 231:1-13)。
【0190】
p3.1−RX3−I−hGHによりトランスフェクションされたCHO細胞の抗hGH抗血清を使用する免疫化学的分析は、RX3−hGHを発現するCHO細胞において観察されたものに類似する、大きな丸型のRPBLA中に融合タンパク質RX3−Int−hGHが蓄積することを明らかにした(図5Bおよび5Dを比較)。この結果は、DNAbインテインを含む融合タンパク質が高密度構造中に自己集合し蓄積することを示す。
【0191】
p3.1−RX3−I−hGHによりトランスフェクションされたCHO細胞をホモジナイズし、ホモジネートを段階的密度勾配中にロードし、異なる密度に対応する画分をイムノブロットによって解析した。大部分のRX3−I−hGHは高密度RPBLAに対応する画分F56中に検出された(図2B)。他のRX3融合タンパク質と同様に、上清中のRX3−I−hGH融合タンパク質の存在は、恐らくホモジナイゼーション過程の間に可溶化し、ER中に含まれる集合していない融合タンパク質を表わす。
【0192】
いったんRX3−I−hGHがRPBLA中に蓄積したことが実証されたならば、これらのER由来オルガネラは本明細書において別記されるような低速度遠心分離によって単離された。p3.1−RX3−I−hGHによりトランスフェクションされたCHO細胞のホモジネートの10分間1500×gでの遠心分離によって、沈殿中のRPBLAにおいて集合したRX3−Int−hGH融合タンパク質から、上清中の集合していないRX3−Int−hGH融合タンパク質の分離が可能になった。活性がないRX3−mInt−hGH融合タンパク質を発現するCHO細胞を用いた同等の研究が行なわれた。
【0193】
集合したRX3−Int−hGH融合タンパク質および集合したRX3−mInt−hGH融合タンパク質を含む沈殿を、2時間37℃でS1緩衝液(20mMトリスpH7、200mM NaClおよび1mM EDTAおよび0.1%SDSおよび0.1mM TCEP)中で可溶化し、インテイン酵素活性を切断誘導緩衝液(20mMトリスpH7、200mM NaCl、1mM EDTA)に対する透析後に48時間25℃でのインキュベーションによって誘導した。インテイン自己切断の誘導後に、組成物を10分間16000×gで遠心分離し、上清および沈殿を抗RX3および抗hGHの抗血清を使用して、イムノブロットによって解析した。
【0194】
両方の融合タンパク質は可溶化されたが、活性のあるインテイン(RX3−Int−hGH)を含む融合タンパク質のみが自己切断することができた(図6Aおよび6B、黒い矢じり)。変異RX3−mInt−hGH融合タンパク質の自己切断が存在しないことから、RX3−Int−hGHで観察される自己切断は、RPBLA単離過程の間に共精製された若干の内在性のプロテアーゼ活性に起因するものではなく、インテインの特異的な活性のためであることが実証される。
【0195】
インテイン自己切断の効率を最適化するために、他の可溶化プロトコールを分析した。別記されたS1緩衝液および二相性抽出プロトコール(S2)による可溶化後に、RX3−Int−hGHのインテイン自己切断を比較することができる。(図6C)。全長融合タンパク質の残存と放出されたhGHに対応するバンドの出現との間の比から、たとえ二相性抽出プロトコールが切断の50%以上を可能にするより効率的なものだとしても、両方の場合において、DNAbインテインの大部分が活性があり自己切断が可能あることが結論できる。
【0196】
実施例7:タバコのRPBLA中で集合したRX3−EGFの活性
【0197】
本質的にはUS11/289,264中に記載されるように、RX3−EGF融合タンパク質を発現する遺伝子導入タバコからのRPBLAを、低速度遠心分離によって単離した。融合タンパク質を、50mMトリスpH8および2%β−ME中での超音波処理(サイクル5、振幅50%、1分、反復5回;イカソニックU200S−イカ・ラボルテヒニク)、ならびに2時間間37℃でのインキュベーションによって可溶化した。その後、沈殿中の可溶化していない融合タンパク質を廃棄するために、可溶化した物質を30分間4℃16000×gで遠心分離した。50mMトリスpH8に対して上清を透析してβ−MEを除去し、30分間4℃16000×gでもう一度遠心分離し、バイオソース・インターナショナル(Biosource International)社(KHG0062)からのhEGFキットによって上清を定量した。
【0198】
EGFの生物活性は、1.2ng/mLのRX3−EGF融合タンパク質と共にインキュベートされたMDA−MB231細胞(EGFレセプターを過剰発現する乳癌細胞)の増殖速度(DNAへの放射性チミジン取り込み)の測定により解析された。陽性対照として、MDA−MB231細胞を、10ng/mLの市販のEGF(プロメガ社)またはウシ胎仔血清(FCS)と共にインキュベートした。結果(以下の表中で要約された)は、EGFの非存在下(枯渇させた)において培養された細胞の増殖速度として決定され、MB231細胞(100%)の基礎増殖速度に対する増殖のパーセンテージ(%)として表わされる。
【0199】
MDA−MB231細胞の増殖

【0200】
予想されるように、MB231細胞培養への市販のEGF(プロメガ社)またはFCSの追加により、増殖速度は著しく増加した(それぞれ158%および145%)。予想外に1.2ng/mLのRX3−EGFの追加もまた増殖速度を146%増加させた。RX3−EGFとほとんど同じ増殖速度が、10倍多い市販のEGFの濃度で観察されたことは注目に値する。5ng/mLの市販のEGFでMB231細胞の増殖速度の飽和が観察されたことを示す以前の結果によって、この驚くべき結果について説明することができるかもしれない。別の可能な説明は、RX3に融合されるとEGFがより活性のあるコンフォーメーションをとりえるというものである。いずれにせよ、この結果はRX3−EGFが少なくとも市販のEGF(プロメガ社)と同じくらいの活性があることを示す。
【0201】
実施例8:CHO細胞のRPBLA中に集合したRX3−GUSの活性。
【0202】
β−グルクロニダーゼ酵素(GUS)は広く使用されるリポータータンパク質である(Gilisen et al., Transgenic Res. (1998) 7(3):157-163)。RPBLA中の活性のあるRX3−GUS融合タンパク質の発現は、主に9つのシステインアミノ酸残基の存在により、またそれが大きなタンパク質(約70kDa)でもあるので、難問であった。
【0203】
RX3(WO2004003207)をコードするポリヌクレオチド配列を、GUS(図1A、RX3−GUS)をコードする配列の5’末端にインフレームで融合し、結果として生じるコンストラクトを、実施例7中に記載されているようなCHO細胞をトランスフェクションするために使用した。
【0204】
p3.1−RX3−GUSによりトランスフェクションされたCHO細胞を抗RX3の抗血清でインキュベートした免疫化学的分析から、大きなRPBLAが存在することが示された(図5E)。それらのRPBLAの密度を確認するために、同一のプラスミドによりトランスフェクションされたCHO細胞をホモジナイズし、その後段階的密度勾配上にロードした。イムノブロットによる異なる画分の分析から、融合タンパク質がより高密度の画分中に局在することが証明され(図2B。F56)、RX3−GUS融合タンパク質が高密度RPBLA中に集合および蓄積できることが示された。融合タンパク質が上清中に検出されなかったことに注目すべきであり、ほとんどすべてのRX3−GUSは高密度構造(RPBLA)中で集合することを意味する。
【0205】
いったん、RX3−GUSがRPBLA中に蓄積したことが実証されたならば、融合タンパク質を、F56画分から回収し(RX3−hGHについて実施例5中に記載されるように)、2時間37℃で50mMトリス、pH8、β−ME 2%およびSDS0.1%中に可溶化した。その後、可溶化した物質を10分間室温16000×gで遠心分離し、可溶性の分解されたRX3−GUS融合タンパク質を含む上清を、50mMトリスpH 8溶液に対して一晩(約18時間)にわたり4℃で透析した。
【0206】
GUS活性検定は、メチルウンベリフェリル(metilumbeliferil)−β−グルクロニド酸(MUG)から4−メチルウンベリフェロン(metilumbeliferone)(4−MU)蛍光産物へのGUS酵素による触媒作用に基づく(Jefferson et al. 1987 EMBO J. 6(13):3901-3907)。50μLの可溶化したRX3−GUS融合タンパク質(約0.25ngのRX3GUS/μL)を、MUGの存在下において室温でインキュベートし、4−MUの出現を蛍光計(励起波長355nm;発光波長420nm)で調べた。CHO細胞からのRPBLA調製中にある内在性のGUS様活性を測定する可能性を除外するために、p3.1−RX3によりトランスフェクションされたCHO細胞からのRPBLAを単離し、いったんRX3タンパク質を可溶化し、このサンプルを対照として活性検定中に含んだ。下記の表は得られた結果を要約する。
420nmでの吸光度

【0207】
この表に示される結果から、RX3−GUS融合タンパク質は、RPBLAからいったん可溶化されると、活性が維持されることは明らかである。これらの実験から計算されたRX3−GUSの比活性は、0.2 pmolの4−MU/分−1*12.5 ng−1のRX3−GUSであった。RX3調製品が解析された場合、有意な内在性のGUS様活性は観察されなかった。
【0208】
実施例9:CHO細胞のRPBLA中に集合したRX3−EKの活性
【0209】
ウシ(Bos taurus)エンテロキナーゼ(エンテロペプチダーゼ)は、キモトリプシン様セリンプロテアーゼドメインによるトリプシノーゲンからトリプシンへのプロセッシング(DDDK↓)に関与する十二指腸粘膜の膜結合型セリンプロテアーゼである。エンテロペプチダーゼは、重鎖(EKHC−120kD)および触媒の軽鎖(EKLC−47kD)により形成される、ジスルフィド結合された二重鎖ペプチドである。触媒サブユニット(ここでEKとして言及される)は、全体のホロ酵素とほとんど同じくらい単独で活性があり特異的である(LaVallie et al. 1993 J. Biol. Chem. 268(31):23311-23317)。ウシのEKが4つのジスルフィド結合を有することを指摘すべきである。さらに、タンパク質のN末端はタンパク質の内部へ折畳まれ、それは機能的なEKの適切な折畳みに必須である。これらの2つのEKの必要条件によって、EKタンパク質は、RPBLA中で活性のあるタンパク質として発現される魅力的なタンパク質になる。
【0210】
RX3(WO2004003207)をコードするポリヌクレオチド配列を、EK配列の5’末端へ、FXa切断部位(IEGR)を含むリンカーを介して融合し、pcDNA3.1(−)にクローニングした(図1A、p3.1−RX3−EK)。
【0211】
このコンストラクトを、リポフェクタミン法(インビトロゲン社)によるCHO細胞トランスフェクションに使用した。トランスフェクションされた細胞の抗RX3の抗血清による免疫化学分析から、大量の小さなRPBLAの存在が示された。これらのオルガネラはすべて、トランスフェクションされた細胞の細胞質に沿って見られたが、サイズは通常0.5マイクロメートルを上回らなかった(図5F)。
【0212】
それらの小さなRPBLAの密度を確認するために、同一のプラスミドによりトランスフェクションされたCHO細胞をホモジナイズし、段階的密度勾配にロードした。RX3−EK融合タンパク質はF56画分に局在した(図2B)。RX3−EK融合タンパク質集合体が高密度であることは、この融合タンパク質が高密度RPBLAに蓄積することを示唆する。融合タンパク質が上清に検出されなかったことに注目すべきであり、ほとんどすべてのRX3−EKが高密度構造(RPBLA)中に集合することを意味する。興味深いことには、RX3−EK融合タンパク質の分子量は、58KDa(理論的な分子量よりも約15KDa高い)と推定された。この結果は、天然のタンパク質について記載されるように、EKがRPBLA中で糖鎖が高度に付加されることを示唆する(LaVallie et al., 1993 J. Biol. Chem. 268(31):23311-23317)。
【0213】
融合タンパク質を、F56画分から回収し(RX3−hGHについて実施例5中に記載されるように)、2時間37℃で50mMトリス、pH8、β−ME 2%およびSDS0.1%中に可溶化した。可溶性を増加させるために、サンプルを、SDSを加える前に、50%振幅および50%サイクル、1分間、反復5回で超音波処理した(イカソニックU200S−イカ・ラボルテヒニク)。その後、サンプルを10分間室温5000×gで遠心分離し、可溶分解されたRX3−EK融合タンパク質を含む上清を、一晩(約18時間)にわたり50mMトリスpH8溶液に対して4℃で透析した。次に融合タンパク質を、製造業者(キアゲン(Quiagen))によって記載されるようにFXaによって消化し、EK活性を蛍光分析によって測定した(Grant, et al., 1979 Biochim. Biophys. Acta 567:207-215)。RX3−EKから放出されたEKにはエンテロペプチダーゼ活性があった。
【0214】
実施例10:CHO細胞のRPBLA中に集合したRX3−Casp2およびRX3−Casp3の活性
【0215】
RPBLA中に産生されたカスパーゼの活性を決定するために、研究を行なった。カスパーゼは、コンセンサス配列のアスパラギン酸の後で高い特異性により切断するシステインプロテアーゼのファミリーである。カスパーゼは、高度に制御されたアポトーシス過程の主要な実行者である。
【0216】
カスパーゼは、大サブユニット(p20)および小サブユニット(p10)が続く可変的な長さのプロドメインを持つ、活性がないプロカスパーゼとして存在する。プロカスパーゼはタンパク質分解を介して活性化され、成熟した活性のあるカスパーゼはヘテロ4量体p202−p102からなる(Lavrik et al., 2005 J. Clin. Invest. 115:2665-2671)。カスパーゼは、作用機序において異なる、イニシエーターカスパーゼおよび実行カスパーゼへと分けられる。カスパーゼ2(イニシエーターカスパーゼ)およびカスパーゼ3(実行カスパーゼ)が、RPBLA中の活性のあるタンパク質の例として選ばれた。(Baliga et al., 2004 Cell Death and Differentiation 11:1234-1241; Feeney et al., 2006 Protein Expression and Purification 47(1):311-318)。それらのタンパク質は、活性を持つためには自己切断されてヘテロ4量体を形成される必要のある酵素前駆体として合成されるので、それらは特に難しいものである。
【0217】
p3.1−RX3−C2およびp3.1−RX3−C3コンストラクト(図1)を、リポフェクタミンプロトコール(インビトロゲン)による一時的トランスフェクションによってCHO細胞へ導入した。トランスフェクションの4日後に、カスパーゼが高密度RPBLAオルガネラ中に蓄積されるかどうかを測定するために、別記されるように、RX3−Casp2またはRX3−Casp2を発現するCHO細胞をホモジナイズし、段階的密度勾配上にロードし、遠心分離した。
【0218】
異なる画分における両方のRX3−カスパーゼ融合タンパク質の蓄積を、イムノブロットによって解析した(図2B)。図に示すように、大部分のRX3−Casp2融合タンパク質またはRX3−Casp2融合タンパク質は、高密度RPBLAに対応する画分F56およびF42へ沈殿する。この結果は、これらの2つの融合タンパク質が高密度構造中で堅く集合できることを示す。
【0219】
図2B中に示されるイムノブロットにおいては、全長融合タンパク質のみが示されたが、異なる分子量のバンドがこの画分中に存在する。抗RX3抗体または抗CASP(SA−320およびSA−325、バイオモル・インターナショナル(Biomol International)社)の抗体のいずれかに反応するバンドは、異なるカスパーゼサブユニットに対応し、自己触媒的活性化がRPBLAの内部で起こることを示す。これらの観察は、カスパーゼ2およびカスパーゼ3がインビボで活性があることを示す。
【0220】
F56およびF42の画分を緩衝液PBP4中で4倍に希釈し、スイングバケット中で80000×gで遠心分離して沈殿中のRPBLAを回収した。このオルガネラを囲むER膜を、50mMトリスpH8および1%トリトンX−100でRPBLA調製品を洗浄することによって除去した。ER膜の除去に際して、カスパーゼの活性を、バイオモル・クオンティザイム(BIOMOL QuantiZyme)(商標)アッセイ系(カスパーゼ−3細胞活性分析キットプラス−AK703(カスパーゼ3))およびバイオモル・クオンティザイム(商標)アッセイ系(カスパーゼ−2細胞活性分析キットプラス−AK702(カスパーゼ2))を使用して、分析する。このキットは、特異的基質によりカスパーゼ活性を比色定量で測定する。RX3−Casp2 RPBLAおよびRX3−Casp3 RPBLAはカスパーゼ活性を示す。
【0221】
RX3に融合させたカスパーゼの活性の決定において、密度勾配によって単離されたRPBLAから融合タンパク質を可溶化する(F56およびF42、緩衝液PBP4中で4倍に希釈し、スイングバケット中で80000×gで遠心分離する)。融合タンパク質を、超音波処理(50%振幅および50%サイクル、30秒間、5回)の後で、緩衝液CA(50mMヘペス、pH7.4、100mM NaCl、1mM EDTA、100mM DTT、1%CHAPS、10%グリセロール)中で可溶化する。可溶化を37℃2時間のインキュベーションによって行ない、不溶性物質を10分間16000×gでの遠心分離によって廃棄する。可溶性RX3−casp融合タンパク質を含む上清を、カスパーゼキット分析緩衝液(50mMヘペス、pH7.4、100mM NaCl、1mM EDTA、10mM DTT、0.1%CHAPS、10%グリセロール)に対して透析する。RX3−Casp2およびRX3−Casp3を含む透析されたサンプルの活性を、バイオモル・クオンティザイム(商標)アッセイ系(カスパーゼ−3細胞活性分析キットプラス−AK703(カスパーゼ3))およびバイオモル・クオンティザイム(商標)アッセイ系(カスパーゼ−2細胞活性分析キットプラス−AK702(カスパーゼ2))により評価する。カスパーゼ2およびカスパーゼ3は活性がある。
【0222】
実施例11:アグロインフィルトレーションされたタバコのRPBLA中に集合したRX3−RTBの活性
【0223】
RTB(Reed et al., 2005 Plant Cell Report 24:15-24)をコードするポリヌクレオチド配列を、RX3ドメインの3’末端にインフレームで融合させ、バイナリーベクター(pB−RX3−RTB)中にクローニングした。
【0224】
別記されるように、このコンストラクトをシリンジアグロインフィルトレーションによって形質転換されたタバコにおいて使用した。アグロインフィルトレーションされたタバコ葉をホモジナイズし、段階的密度勾配にロードした。RX3−RTB融合タンパク質は画分F42およびF56に局在し(図2B)、融合タンパク質が高密度RPBLA中で自己集合および蓄積することを示唆する。RX3−EKについて記載されたように、理論的な分子量と比較して、RPBLAから単離されたRX3−RTB融合タンパク質はより少ない電気泳動度を有する。この結果は、RPBLA中でRTBに糖鎖が付加されうることを支持する。
【0225】
融合タンパク質を、高密度画分から回収し(RX3−hGHについて実施例5中に記載されるように)、2時間間37℃で50mMトリス、pH8、β−ME 0.8%中で可溶化した。可溶性を増加させるために、サンプルを、50%振幅および50%のサイクル、1分間、反復5回の超音波で処理した。(イカソニックU200S−イカ・ラボルテヒニク)。その後サンプルを10分間室温5000×gで遠心分離し、可溶分解されたRX3−RTBを含む上清は、ガラクトース末端のグリカンを露出するためにシアリダーゼ(sialydase)により処理された糖タンパク質フェチュインへの結合についてELISAによって解析された。RX3−RTBはフェチュインへ結合する。
【0226】
実施例12:植物形質転換のためのプラスミド構築
【0227】
ヒト表皮増殖因子(hEGF)のコード配列を合成し、植物における発現のためのコドン利用を最適化するために変更した。
hEGFタンパク質(配列番号:41)
hEGF DNA(配列番号:42)
【0228】
53アミノ酸の活性のあるhEGFをコードする合成遺伝子は、20塩基のオーバーラップを備えた約60塩基の4つのオリゴヌクレオチドを使用するプライマーオーバーラップエクステンションPCR方法によって得られた。合成hEGF cDNAは,第Xa因子特異的な切断部位に対応する5’リンカー配列を含んでいた。オリゴヌクレオチドをポリアクリルアミド変性ゲルによって精製した。
【0229】
合成hEGF cDNAをアガロースゲル(アマシャム(Amersham)社)から精製し、pGEMベクター(プロメガ社)へクローニングした。BspHIおよびNcoIの粘着末端を含むRX3 cDNA断片(γ−ゼインのN−末端ドメインをコードする)を、NcoIによりあらかじめ消化された(特許出願第WO2004003207号中に記載されるように)、ベクターpCKGFPS65C(Reichel et al., 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5888-5893)へと挿入した。EGFをコードする配列を、RX3配列にインフレームで融合した。コンストラクトRX3−EGFは、EGF合成遺伝子をGFPコード配列で置換することによって調製した。
【0230】
pCRX3EGFと名付けられた結果として生じるコンストラクトは、増強された35Sプロモーターのようなタンパク質の転写を導く核酸配列、タバコエッチウイルス(TEV)のような翻訳エンハンサー、EGFコード配列、およびカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)からの3’ポリアデニル化配列を含んでいた。効果的な植物形質転換ベクターp19RX3EGFは、バイナリーベクターpBin19の中へHindIII/HindIII発現カセットを挿入することによって最終的に得られた(Bevan, 1984 Nucleic Acids Research 12:8711-8721)。
【0231】
22kDのα−ゼイン(22aZ)および13kDのコメプロラミン(rP13)をコードするcDNAを、トウモロコシW64Aおよびセニア(Senia)米品種のcDNAライブラリーからRT−PCRによってそれぞれ増幅した。PCR反応において使用されるオリゴヌクレオチドは次のとおりであった。
22aZ−5’(配列番号:43)
22aZ−3’(配列番号:44)
コメ13Prol−5’(配列番号:45)
コメ13Prol−3’(配列番号:46)
【0232】
対応するPCR断片をpCRIIベクター(インビトロゲン社)中にクローニングし、シークエンスし、増強されたCaMV 35Sプロモーター、TEV配列および3’ocsターミネーターを含むpUC18ベクター中にクローニングした。pCRII−rP13をSalIおよびNcoIによって消化し、プラスミドpUC18rP13EGFを得るために同一の酵素によって消化されたpUC18RX3Ct、pUC18RX3hGHおよびpUC18RX3EGFのプラスミド中にクローニングした。pCRII−22aZをSalI/NcoIによって消化し、プラスミドpUC1822aZtEGFを得るために同一の酵素によって消化されたpUC18RX3EGFプラスミド中にクローニングした。最後に、pUC18由来ベクターを、HindIII/EcoRIによってpCambia 5300中にクローニングした。
【0233】
コンストラクトpBIN m−gfp4−ERは、植物における発現のために最適化されたGFPを含む(Haseloff et al., 1997 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2122-2127)。このコンストラクトを、鋳型としてGFPのPCR増幅に使用した。オリゴヌクレオチドは、さらなるクローニングのための制限部位を導入するとともに、もとの配列中に存在するシグナルペプチドおよびHDELモチーフを除去するようにデザインされた。
プライマー:
GFP5’(配列番号:50)
GFP3’(配列番号:51)
【0234】
PCR産物をPCRクローニングベクター(PCR(登録商標)IIベクター、インビトロゲン社)中にクローニングし、配列を確認した。粘着末端RcaI/BamHIを含むGFP断片を、pUC18RX3hGH(US2006123509(A1))中へクローニングし、pUC18ベクター中にカセットRX3−GFPを生じた。このカセットをHindIII/BamHI消化によって遊離し、続いてpCAMBIA 2300ベクター(pB−RX3−GFP)中に挿入した。
【0235】
RTBクローン(GenBankアクセッション番号X03179)を、PCR(RTB5およびRTB3)によって増幅し、RcaI/SmaIによって消化した。消化されたPCR断片を、pUC18RX3RTBを得るために、NcoI/SmaIによって消化されたpUC18RX3hGH(US2006123509(A1))中にクローニングした。次にこのベクターをHindIII/EcoRIによって消化し、同一の制限酵素(pB−RX3−RTB)によって消化されたpCAMBIA 2300ベクター中に、遊離された断片クローニングした。
プライマー:
RTB5(配列番号:52)
RTB3(配列番号:53)
【0236】
植物材料
タバコ(ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)var.ウィスコンシン)植物を、16時間の光周期により24〜26℃でインビトロの増殖チャンバー中で増殖させた。成体の植物を、18〜28℃の温室中で、湿度は55〜65%に維持し、16時間の平均光周期で増殖させた。
【0237】
アグロインフィルトレーション法のための小植物(Vaquero et al., 1999 Proc. Natl. Acad. Sci., USA 96(20):11128-11133; Kapila et al., 1997 Plant Sci. 122:101-108)を、上に記載されるインビトロの条件で種子から4〜6週間増殖させた。
【0238】
タバコの安定した形質転換
バイナリーベクターを、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのLBA4404株の中へ移した。Draper and Hamil 1988年、植物の遺伝的形質転換および遺伝子発現。実験手引き書(Plant Genetic Transformation and Gene Expression. A Laboratory Manual)(Draper, J., Scott, R., Armitage, P. and Walden, R.編)(ブラックウェル・サイエンティフィック・パブリケーション(Blackwell Scientific Publications))によって記載されるように、タバコ(ニコチアナ・タバクム、W38)葉片を形質転換した。再生植物体を200mg/Lのカナマイシンを含む培地上で選択し、温室へ移した。導入遺伝子産物レベルが最も高い遺伝子導入タバコを、T1世代およびT2世代を得るために培養した。
【0239】
組換えタンパク質レベルをイムノブロットによって検出した。タバコ葉からの全抽出タンパク質をブラッドフォード分析によって定量し、15%SDS−PAGE上で分離し、ミニトランスブロット電気泳動的トランスファーセル(Mini Trans−Blot Electrophoretic Transfer Cell)(バイオラッド(Bio Rad)社)を使用して、ニトロセルロース膜に転写した。膜をγ−ゼイン抗血清(希釈1/7000)(Ludevid et al. 1985, Plant Science 41:41-48)でインキュベートし、次にホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗体(希釈1/10000、アマシャム・ファルマシア社)によりインキュベートした。免疫反応性のバンドを、増感化学発光(ECLウエスタンブロット・システム、アマシャム・ファルマシア社)によって検出した。
【0240】
タバコアグロインフィルトレーション
バキュームアグロインフィルトレーション
【0241】
アグロインフィルトレーション法のための小植物を、16時間の光周期により24〜26℃でインビトロの増殖チャンバー中で4〜6週間種子から増殖させた。
【0242】
所望のコンストラクトを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス株LB4404を、カナマイシン(50mg/l)およびリファンピシン(100mg/l)を追加したLB培地(トリプトン10g/l、酵母抽出物5g/l、NaCl 10g/l)上で、28℃で振盪(250rpm)して一晩(約18時間)増殖させた。次にアグロバクテリアを、カナマイシン(50mg/l)およびリファンピシン(100mg/l)も追加した30mlのLB中に播種した。28℃で一晩の培養(約18時間)後に、アグロバクテリア細胞を10分間3000×gの遠心分離によって集め、MES(シグマ・ケミカル社)4.9g/lおよびショ糖30g/l、pH5.8を含む10mlの液体MS培地中に再懸濁した。アグロインフィルトレーションのために、細菌培養の最終的なOD600を0.1に調整した。次に細胞培養に最終濃度0.2mMでアセトシリンゴンを追加し、28℃で90分間インキュベートした。
【0243】
アグロインフィルトレーションのために、小植物を完全に懸濁物により覆い、バキュームを5−6秒間適用した(100KPa)。懸濁物を除去し、小植物は4日間16時間の光周期の下で24〜26℃で増殖チャンバー中で維持した。植物材料を回収し、抗γ−ゼイン抗体を使用するイムノブロットによって全タンパク質抽出物を解析した。
【0244】
シリンジによるアグロインフィルトレーション
アグロバクテリウム・ツメファシエンス株EHA105を、50μg/mLカナマイシンおよび50μg/mLリファンピシン(rifampycin)を追加したL−ブロス中で定常期まで28℃で増殖した。細菌を室温15分間5000gで遠心分離によって沈殿させ、10mM MgCl2および200μMアセトシリンゴンを含む10mM MES緩衝液pH5.6中に、最終的なOD600が0.2になるように再懸濁した。細胞を室温で3時間この培地中に放置した。RX3コンストラクトおよびHC−Proサイレンシングサプレッサーコンストラクト(Goytia et al., 2006)を保有する個別のアグロバクテリウム培養を、ともに混合し、2〜4週令のベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物(Voinnet et al, 2003)の葉の背軸面の中へインフィルトレーションさせた。
【0245】
実施例13:遺伝子導入植物の栄養組織からの密度勾配によるRPBLAの単離(精製)
【0246】
RX3−EGFγ−ゼイン由来融合タンパク質をコードする遺伝子を、アグロバクテリウム・ツメファシエンスを介してタバコ中に導入した。組換えタンパク質をより高く発現するこれらの植物を決定するために、形質転換された植物をイムノブロットにより解析した。イムノブロットで優勢な低分子のバンドは融合タンパク質の単量体型に対応し、高分子のバンドは二量体に対応する。融合タンパク質は、通常多量体として蓄積し、イムノブロット中に検出された単量体および多量体の量はジスルフィド結合の還元レベルに依存する。
【0247】
タバコ葉抽出物を、段階的密度勾配上にロードし、異なる画分における組換えタンパク質の蓄積をイムノブロットにより解析した。この結果は、RX3−EGFが高密度RPBLAに対応する画分中に出現したことを示す。大部分のこれらのオルガネラは1.2632g/cm3よりも高い密度を示し、およびそれらのかなりの部分は1.3163g/cm3よりも高い密度を示す。
【0248】
タバコ葉において形成された新規RPBLAは、天然のトウモロコシタンパク質顆粒の範囲内の密度(Ludevid et al., 1984 Plant Mol. Biol. 3:227-234; Lending et al., 1989 Plant Cell 1:1011-1023)を示すか、またはより高密度でさえある。
【0249】
組換えタンパク質の90%以上が高密度RPBLA画分および沈殿において回収されたことが推測された。したがって、密度によるRPBLAの単離は融合タンパク質を精製する(濃縮する)有用なシステムであると思われる。
【0250】
RPBLA単離による組換えタンパク質RX3−EGFの精製を評価するために、異なる密度画分を銀染色により解析した。タバコ内因性タンパク質の90%以上は可溶性であり勾配の中間層画分に位置し、この画分中にRX3−EGFタンパク質は存在しなかったかまたはわずかに検出された。したがって勾配の1つまたは2つの画分の選択によって、可溶性タンパク質およびより低密度オルガネラ中に存在するタンパク質の大部分を廃棄することができるかもしれない。
【0251】
RPBLA画分における融合タンパク質精製の程度に関しては、RX3−EGFタンパク質はPBLS含有画分中に検出されるタンパク質のおよそ80%を占めることが推測された。この結果は、RPBLA単離手順を使用して、1工程のみの精製で融合タンパク質の有力な濃縮を達成できることを示す。
【0252】
実施例14:乾燥植物組織から単離されたRPBLA中の組換えタンパク質回収
【0253】
分子的農業の重要点は、植物バイオマスを保存する容易な手段の存在である。この情況において、乾燥は、貯蔵容量の減少および産物保存のために都合のよい方法を提供することができる。それにもかかわらず、乾燥はしばしば対象となるタンパク質の破壊を促進する。組換えタンパク質を含むRPBLAを単離するための乾燥植物の使用は、工業目的に対して非常に関心が持たれるところである。
【0254】
上に記載されるようなRX3−EGF融合タンパク質を蓄積する形質転換されたタバコ葉を、上でも論じられるように乾燥した。5か月の乾燥貯蔵後に、組換えタンパク質の安定性を解析した。同等量の湿った(新鮮な)葉組織および乾燥した葉組織からの抽出タンパク質を、イムノブロットによって解析した。湿った植物および乾燥した植物において回収された量は類似しているので、RX3−EGFタンパク質は乾燥させた形質転換植物において安定していた。
【0255】
乾燥葉のホモジネートからのRX3EGF融合タンパク質の階段的密度勾配における分布を、イムノブロットによって解析した。融合タンパク質は、1.1868g/cm3および1.2632g/cm3よりも高い密度を示す高密度構造において主に回収された。
【0256】
したがって、組換えタンパク質はRPBLAの単離を介して乾燥組織から精製でき、それによって遺伝子導入植物収集ならびに組換えタンパク質の抽出および精製が時間的に独立することが可能であることを示す。これらの結果と一致して、γ−ゼイン融合タンパク質もまた種もみのRPBLA中に蓄積した。
【0257】
実施例15:一過性に形質転換されたタバコ小植物からのRPBLAの単離による組換えタンパク質回収
【0258】
一過性発現系は、短期間の組換えタンパク質の蓄積挙動を検査する都合のよいツールになりえる。したがって、組換えタンパク質RX3−EGFもアグロインフィルトレーションを介して一過性に形質転換されたタバコ小植物において発現および蓄積された。イムノブロットによって解析された形質転換された小植物からの抽出タンパク質は、安定的に形質転換された植物に観察される特徴的な複雑な電気泳動パターンを示し、融合タンパク質が形質転換のこの方法を使用して正しく集合することを示す。
【0259】
実施例16:低速度遠心分離および中間速度遠心分離による組換えタンパク質の回収
【0260】
高密度組換えタンパク質顆粒様集合体を介して組換えタンパク質を精製するために使用される手順を単純化するために、2つの付加的な以下の別法を行なった。i)清澄にしたホモジネートを1つの高密度ショ糖クッションのみを介して遠心分離した、およびii)清澄にしたホモジネートを低速度遠心分離で単に遠心分離した(すなわち10分間1000〜2500×g)。
【0261】
以前に記載された結果に一致して、RX3−EGFタンパク質は、1.1868g/cm3のショ糖クッションを通した遠心分離後に得られる沈殿中に高い収率(90%以上)で回収された。さらに混入物のタバコ内因性タンパク質は、対応する沈殿中にほとんど検出されないという点で、RX3−EGFタンパク質の精製は非常に高度であった。
【0262】
階段的密度勾配と比較して、この方法の主要な長所は、組換えタンパク質の工業的生産のために容易に拡張できることである。組換えタンパク質の回収および精製を最適化するために、各事例において粘性および浸透性のような他の特性と同様に、クッション密度も調整できることが注目されるべきである。
【0263】
さらに、低速度遠心分離(LSC)も融合タンパク質含有タンパク質顆粒様構造を濃縮および精製するために分析された。この結果から、10分間1000×g後に、事実上すべてのRX3−EGF融合タンパク質は沈殿中に回収されることが示された。しかしこの沈殿中に含まれるタンパク質の染色から、1.1868g/cm3のショ糖クッションを通した遠心分離後に得られた融合タンパク質と比較して、融合タンパク質が高度に精製されないことを明らかにされた。
【0264】
その後低速度遠心分離によって得られた第1の沈殿を、5%トリトン(登録商標)X−100を含む緩衝液の使用によって洗浄した。洗浄後にサンプルを5分間12,000×gで遠心分離し、興味深いことには、P1沈殿中に存在する混在タンパク質の大部分は洗浄および遠心分離後に除去され、新しい沈殿は高度に濃縮されたRX3−EGFタンパク質を含んでいた。この研究で注目したタンパク質のパターンと同様に量も、トリトンX−100含有緩衝液中のショ糖クッションを通した遠心分離後に得られた沈殿の洗浄後に得られたものに類似することが注目される。低速度遠心分離の代替物は融合タンパク質を含む構造の高密度に基づき、遠心分離条件はスケールアップする前にすべての標的のために最適化できる。
【0265】
コメプロラミンまたはα−ゼインに結合したEGFを含む融合タンパク質(RX3、rP13−EGFおよび22aZ−EGFではなく)を発現する遺伝子導入タバコは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(tumefasciens)形質転換によって産生された。EGFに対する抗体を使用するイムノブロットによって決定された場合に最も多く発現するもの、およびそれらの細胞株を、同一のコンストラクトによりアグロインフィルトレーションされたタバコ小植物の比較分析において使用した。すべての事例において、RPBLAは特有の境界面で回収され、RPBLAが非常に高密度で均質であることを示唆する。
【0266】
これらすべての結果から、他のタンパク質へ融合された場合でさえ、プロラミンが高密度RPBLAを誘導できることは明らかである。主にそれらの間にほとんど相同性が観察されない場合には、思いもよらない結果である。さらに、いくつかのデータが、タンパク質顆粒を安定化するためにプロラミンが相互作用し、栄養組織中で、例えばα−ゼインのように単独で発現された場合それらのうちのいくつかが安定でないことを示唆する(Coleman et al., 1996 Plant Cell 8:2335-2345)。
【0267】
実施例17:単離されたRPBLAからの組換えタンパク質の抽出
【0268】
高密度組換えPB様集合体の単離は、遺伝子組み換え生物から高収率および高精製レベルで組換えタンパク質を回収する有利な方法であることが実証されてきた。ここで、貯蔵オルガネラからこれらの組換えタンパク質を抽出できることが示される。
【0269】
RPBLA画分を、デタージェントおよび還元剤を含む緩衝液(硼酸ナトリウム12.5mM pH8、0.1%SDSおよび2%β−メルカプトエタノールを含むSB緩衝液;処理)中で、37℃一晩の(約18時間)インキュベーションした後に、RX3−EGFタンパク質を可溶化した。抽出された融合タンパク質を可溶性形態で回収した。その後適用の目的にしたがって、抽出されたタンパク質は、さらに精製を行なうか、または部分的に精製された抽出物として使用することができる。
【0270】
実施例18:動物細胞形質転換のためのプラスミド構築
【0271】
RX3およびRX3−(Gly)x5に対応するcDNA断片を得るために、RX3配列をPCRによって増幅した。これらの断片をSalI/BamHIによって消化し、pRX3−ECFPおよびpRX3−G−ECFPプラスミドを得るために同一の酵素によって切断されたプラスミドpECFP−N1(クロンテック社)中に、それぞれクローニングした。
プライマー:
SPfor(配列番号:54)
RX3ECFP3’(配列番号:55)
RX3G5ECFP3’(配列番号:56)
【0272】
p22aZ−ECFPベクターは、pEGFP−N1プラスミド(クロンテック社)中の以下のHindIII/XbaI DNA断片に対応する(配列番号:57)。
【0273】
GFPは、さらなるクローニングのための酵素制限部位を含む以下の特異的なオリゴヌクレオチドにより、プラスミドpEGFP−N1(クロンテック社)のPCR増幅によって得られた。
ECFP NcoI 5’(配列番号:58)
ECFPN1 BamNotSac 3’(配列番号:59)
【0274】
PCR産物(GFP)をPCRクローニングベクター(PCR(登録商標)IIベクター、インビトロゲン社)中にクローニングし、配列を確認した。GFP断片をNcoI/BamHI消化によって切除し、pUC18RX3hGH(US2006123509(A1))中へクローニングし、pUC18ベクター中のカセットRX3−GFPを生じた。このカセットをSalI/BamHI消化によって遊離し、続いてXhoI/BamHI(p3.1−RX3−GFP)によってあらかじめ消化されたpCDNA3.1(−)(インビトロゲン社)中へクローニングした。
【0275】
改良型単量体DS赤色タンパク質(mCherry; Shaner et al., 2004 Nat. Biotechnol. 22:1567-1572)のコード配列を含むコンストラクトは、PCR反応(mCherry RcaI 5’/ECFPN1 BamNotSac 3’)における鋳型であった。
mCherry RcaI 5’(配列番号:60)
【0276】
PCR産物(DsRed)をPCRクローニングベクター(PCR(r)IIベクター、インビトロゲン)中にクローニングし、配列を確認した。DsRed断片をRcaI/BamHI消化によって切除し、pUC18RX3hGH(US2006123509(A1))中へクローニングし、pUC18ベクター中のカセットRX3−DsRedを生じた。このカセットをSalI/BamHI消化によって遊離し、続いてXhoI/BamHI(p3.1−RX3−DsRED)によってあらかじめ消化されたpCDNA3.1(−)(インビトロゲン)中へクローニングした。
【0277】
3’末端での終止コドンを備えたRX3 cDNAを得るために、RX3断片をPCR(SPFOR/RX3STOP)によって増幅し、SalI/BamHIによって消化した。p3.1−RX3を得るために、この断片を同一の制限酵素によって消化したpcDNA3.1(−)中にクローニングした。
RX3STOP3’(配列番号:61)
【0278】
hGHをコードするcDNAを、RX3 N末端γ−ゼインコード配列(特許WO2004003207)へ融合し、別記されるようなベクターpcDNA3.1(−)(インビトロゲン)中へ導入した。p3.1RX3hGHと名付けられた結果として生じるコンストラクトにおいて、融合タンパク質配列は、CMVプロモーターおよびターミネーターpA BGH下にあった。
【0279】
pTWIN1プラスミド(ニューイングランドBiolabs)からのSsp DNAbインテイン、およびhGH cDNAを、PCRによって増幅した。両方のPCR断片を、同様にPCRによってインフレームで融合し、NcoI/BamHIによって消化し、NcoI/BamHIによって消化されたpUC18RX3hGH(US2006121573(A1))ベクター中にクローニングした。RX3−Int−hGH挿入物を、この中間ベクターのSalI/BamHI消化によって得て、XhoI/BamHIによって消化されたpcDNA3.1(−)(インビトロゲン社)中にクローニングした。結果として生じるコンストラクトはp3.1−RX3−I−hGHと命名された。PCR産物をBsRGI/BamHIによって消化し、同一の制限酵素により消化されたp3.1−RX3−I−hGHプラスミド中にクローニングした。
プライマー:
5’DNAb(配列番号:62)
3’DNAb(配列番号:63)
DNAb−hGH:(配列番号:64)
3’hGH(配列番号:65)
【0280】
切断誘導の陰性対照として、切断可能でないSsp DnaBを操作した。hGHへインフレームで融合した変異(Asp154→Ala154)Ssp DnaBインテインを、p3.1−RX3−I−hGHからPCRによって得た。
プライマー:
IM−for(配列番号:66)
IM−rev(配列番号:67)
【0281】
ヒトのカスパーゼ−2(IRAUp969A0210D6)およびカスパーゼ−3(IRATp970B0521D6)の全長cDNAsを、国立ローレンス・リバモア・ライブラリー(National Lawrence Livermore Library)に基づくオリジナルの参照によりRZPD有限会社(ベルリン)から取得した。
【0282】
PCRによって、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−2に特異的な切断(それぞれDEVDおよびDEHD)部位を、対応するカスパーゼ配列の5’末端に加えた。カスパーゼ−2に対応する増幅された断片がプロドメインを含まないことに注目すべきである。
Casp3フォワード(配列番号:68)
Casp3リバース(配列番号:69)
Casp2 for(配列番号:70)
Casp2リバース(配列番号:71)
【0283】
増幅された配列をNcoIおよびKpnIにより消化して、pUC18RX3hGH(US2006123509(A1))中へクローニングした。次に、結果として生じるコンストラクトをSalI/KpnIによって消化し、XhoI/KpnIによって消化されたpCDNA3.1(インビトロゲン)ベクターへクローニングした。対応するベクターを命名した(p3.1−RX3−C2およびp3.1−RX3−C3)。
【0284】
pUC18RX3hGH(US2006123509(A1))ベクターをHindIII/EcoRIによって消化し、放出された挿入物をこれらの酵素によって消化されたpCambia2300中にクローニングした。対応するベクターをHindIII/NcoIによって消化し、挿入物をHindIII/NcoIによって切断されたpCambia1381中にクローニングした(p4−17)。RX3−(gly)x5−GUS断片含有DNAを、BstEIIによってp4−17を消化すること、次にクレノウにより突出部を埋めること、および最終的にSalIによって消化することによって得る。p3.1−RX3−GUSクローンを得るために、この断片を、XhoI/EcoRVによって消化されたpcDNA3.1(−)中にクローニングした。
【0285】
p3.1−RX3−EKは、pcDNA3.1(−)(インビトロゲン社)中の以下のNheI/HindIII DNA断片に対応する(配列番号:72)。
【0286】
実施例19:昆虫感染のためのプラスミド構築
【0287】
p3.1−RX3−DsREDからのRX3−DsRED断片をXbaI/HindIIIによって消化し、pF−RX3−DsREDベクターを得るためにこれらの2つの酵素によって同様に消化されたpFastBac1(インビトロゲン社)中にクローニングした。
【0288】
DsRED cDNAを、以下のプライマーの使用によってpF−RX3−DsREDからのPCRによって増幅した。
bGH rev(配列番号:73)
bGH rev2(配列番号:74)
【0289】
pF−DsREDベクターを得るために、PCRにより増幅されたDNA断片をXbaI/HindIIIによって消化し、XbaI/HindIIIによって消化されたpFastBac1(インビトロゲン社)中にクローニングした。
【0290】
実施例20:昆虫細胞および幼虫感染
【0291】
バキュロウイルスおよび幼生
バキュロウイルス発現ベクターシステム(pFastBac、インビトロゲン社)を基礎ベクターとしてこの研究に対して使用した。製造業者によって記載されるように、組換えウイルスを産生および増幅した。イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)の卵を、エントパス(Entopath)社(イーストン、ペンシルバニア)から得た。製造業者によって提供される指示に従って、卵を孵化し;4齢幼虫を感染に使用した。
【0292】
幼虫感染
閉塞性組換えウイルスからなる様々な量のバキュロウイルスストック溶液を幼虫の食餌(エントパス社(イーストン、ペンシルバニア)からの発泡スチロールカップ中にあらかじめ作製されているもの)上に広げた。カップは覆われ、ウイルスが培地に完全に吸収されるように1時間おいた。次に、第4齢幼虫をカップの中へ置き(1個のカップあたりおよそ10〜15匹の幼虫)、カップを反転させた。糞便がふたの上に垂れて、毎日それを廃棄できるように、幼虫は上部(カップの下部)から餌を食べた。餌の量は少なくとも5日の増殖に十分であった。3〜5匹の幼虫を、RX3−DsREDおよびDsRED分析のために毎日集めた。
【0293】
SF9感染
スポドプテラ属
Sf9細胞をインビトロゲン社(サンディエゴ、アメリカ合衆国、カリフォルニア)から得て、ラクトアルブミン加水分解物、イーストレート、L−グルタミン、10%非動化ウシ胎仔血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(ギブコ(Gibco)社)を追加したグレース昆虫培地を使用して、以前に記載されたように(O'Reilly et al., 1992)培養した。細胞を、スピナーフラスコ(ベルコ・ガラス(Bellco Glass)社、ヴァインランド、ニュージャージー、アメリカ合衆国)または100mmのプラスチック組織培養ディッシュ(ファルコン(Falcon))のいずれかにおいて増殖させた。組換えウイルスを、バキュロゴールド(BaculoGold)トランスフェクション・キットを使用して産生した(ファーミンジェン(PharMingen)、サンディエゴ、カリフォルニア、アメリカ合衆国)。単一のプラークを単離し、使用まで4℃で保存されたウイルスストックを高力価にするため2〜4回増幅した。ルーチンの感染のために、グレース培地中で100mmのプラスチック培養皿(107の細胞/ディッシュ)の底へSf9細胞を接着させた。15分〜1時間のインキュベーション後に、ウイルスストックの一部を追加し、培養を加湿空気雰囲気において27℃で維持した。一般に細胞は感染後30〜36時間で使用した。
【0294】
実施例21:哺乳類細胞および昆虫幼虫からのRPBLA調製
【0295】
ホモジナイゼーション
哺乳類細胞
トランスフェクションされた細胞をこすり取って培養プレートから回収し、ホモジナイゼーションB培地(プロテアーゼ阻害剤と共に、10mMトリス−HCl pH8.0、0.9%NaCl、5mM EDTA)中で懸濁した。細胞懸濁物を23ゲージ針を取り付けた5mlのシリンジ中へ採取し、およそ30回出し入れした。細胞の破壊を位相差顕微鏡によってモニタリングした。
【0296】
昆虫幼虫
RX3−DsREDタンパク質およびDsREDタンパク質を発現する凍結イラクサギンウワバ幼虫を、13500rpmで2分間PBP5緩衝液(20mMヘペスpH7.5、5mM EDTA)中でポリトロンによって、および2000rpmで氷中で5分間ポッター型ホモジナイザーによって、ホモジナイズした。このホモジネートを200gで10分遠心分離して表皮および組織残屑を除去し、上清を階段的密度勾配上にロードした。
【0297】
密度によるRPBLA単離
本質的には植物のために記載されたように、哺乳類細胞および凍結された昆虫幼虫からRPBLAを単離した。(階段的密度勾配または低速度遠心分離)。
【0298】
実施例22:トリトンX−114に基づく二相性分離による可溶化
【0299】
細胞ホモジネートをPBSにより希釈し、15分間16,000×gで遠心分離した。上清を除去し、沈殿を乾燥した。沈殿へ2mlの氷冷可溶化緩衝液(50mMトリスpH7、5%トリトンX−114、20mM TCEP、20mM NDSB195および100mM MgCl2)を追加し、その後1M尿素、10%グリセロールおよび100mM MgCl2を含んでいる1mlのPBSを追加した。この組成物をボルテックス撹拌を時々行ないながら15分間氷上でインキュベートした。次にその懸濁物を50%ポテンシャルで20秒間4回の超音波処理を行ない、低温を維持するためにバースト間にそれを1分間氷で冷やした。次に二相を形成させるために、その懸濁物を15分間37℃でインキュベートした。3ミリリットルの10%PEGをより下層の疎水性層(トリトンX−114を多く含む)へ追加し、組成物を20分間氷上でインキュベートした。次にその溶液を再び二相を形成させるために15分間37℃でインキュベートした。上相(4ml)を回収し、分析のために保存した。
【0300】
実施例23:免疫的局在
【0301】
蛍光顕微鏡を使用する免疫細胞化学(バーティカル・エクリプス顕微鏡ニコンE600A)。トランスフェクション後の2〜4日の間に、細胞を30分間1%パラホルムアルデヒド溶液中で固定し、リン酸緩衝生理食塩水による洗浄後に、(i)hGH(1/150希釈)、(ii)EK(1/500希釈)、(iii)RX3(1/700希釈)に対する抗体により45分間インキュベートした。抗原抗体反応を検出するために、アレクサ蛍光(Alexa Fluor)488(インビトロゲン社)へ結合した抗ウサギ抗体により45分間インキュベーションした。
【0302】
共焦点分析を、発光帯波長選択のための分光光度計を取り付けた共焦点レーザー顕微鏡(ライカ社TCS SP、ハイデンベルグ、ドイツ)において行なった。495〜535nmで設定された発光ウィンドウを使用して、アルゴンイオンレーザーによる488nmの励起で、緑色蛍光イメージを集めた。赤色蛍光イメージを、ヘリウムネオンレーザーによる543nmの励起後に、発光ウィンドウ550〜600で集めた。光学的切片は0.5〜1μm厚であった。
【0303】
実施例24:活性分析
【0304】
EGF活性分析
MDA−MB231細胞(EGF受容体を過剰発現する乳癌細胞)を、5,500細胞/ウェルで96ウェルプレート中に播種した。10%FCS(ウシ胎仔血清)含有増殖培地中で8時間細胞を接着させ、次にFCS0.1%を追加した培地中で飢餓状態を一晩維持した。その後培地を除去し、プロメガ社からのEGF(陽性対照)または対応するサンプル(可溶化したRX3−EGF)を、異なる濃度で追加する。次に放射性チミジン(timidine)を最終濃度0.5μCiで追加する。刺激後37℃48時間で増殖を検討する。次に細胞を冷PBSにより2度洗浄し、細胞代謝を停止するために細胞を氷で冷やす。10%トリクロロ酢酸(TCA)溶液を追加し、細胞を4℃で20分間インキュベートする。いったんTCAの溶液を除去し、プレートを70%エタノールを2度洗浄し、細胞を0.5mL溶解溶液(2%CO3Na2、0.1N NaOHおよび10%SDS)中で37℃20分間インキュベートする。プレートをボルテックス撹拌により混合し、サンプルは、所望されない化学発光現象を回避するために12時間より前に測定されない。
【0305】
EK活性分析
酵素活性を蛍光分析により測定した(Grantet al. (1979) Biochim. Biophys. Acta 567:207-215)。25mMトリス−HCl(pH8.4)、10mM CaCl2、37℃で10%のDMSO(ジメチルスルホキシド)中の0.3〜1.0mMの蛍光原基質Gly−(Asp)4−Lys−βナフチルアミド(naphtylamide)(シグマ)へ酵素を追加することによって、反応を開始した。遊離β−ナフチルアミン(naphtylamine)濃度を、1分間継続的にモニタリングされた蛍光(λex=337nmおよびλem=420nm)の増加から決定した。活性は経時的な蛍光の変化として計算された。
【0306】
GUS活性分析
GUS活性分析は、メチルウンベリフェリル−β−グルクロニド酸(MUG)から4−メチルウンベリフェロン(4−MU)蛍光産物へのGUS酵素による触媒作用中で基づく。(Jefferson RA,et al. (1987) EMBO J. 6(13): 3901-3907)。50μLの可溶化したRX3−GUS(または対照として可溶化したRX3)を、200μLの反応緩衝液(50mMリン酸緩衝液pH7、10mM EDTA、0.1%SDSおよび0.1%トリトンX100)と66μLのメタノールへ追加した。基質(MUG)を最終濃度10mMで追加した。200μLの反応(4−MU)の反応緩衝液へ0、50、100、200、300または500pmolの4−MU(反応の産物)を追加することによって、基準物を調製した。
【0307】
サンプルおよび基準を混合し、それらをλex=355nmおよびλem=460nmで蛍光計(ヴィクター(Victor)、パーキン・エルマー社(Perkin−Elmer))において測定した。サンプルは、30分ごとに3時間測定された。比活性は次式によって計算された。GUS活性(pmols 4−MU/min−1*mg−1)=(λem(T1)−(λem(T0))/(k*(T1−T0))。「K」=比(蛍光の単位)/(pmol 4−MU)。
【0308】
RTB活性分析(アシアロフェツイン結合ELISA)
RPBLAからの抽出タンパク質におけるRX3−RTBの機能性は、アシアロフェチュイン(ガラクトース末端のグリカンを露出するためにシアリダーゼにより処理された糖タンパク質フェチュイン)への結合を介して決定された。200マイクロリットルのアシアロフェチュイン(シグマ)を改変PBS(mPBS)緩衝液(100mMリン酸ナトリウム、150mM 塩化ナトリウム、pH7.0)中の300mg/mLの濃度で、室温で1時間イムロン(Immulon)4HBX(フィッシャー、ピッツバーグ、ペンシルバニア)マイクロタイタープレートのウェルへ結合させた。コーティング溶液を廃棄し、ウェルを200mlのmPBS中の3%BSA、0.1%ツイーン20により室温で1時間ブロッキングした。ブロッキング溶液を廃棄した後、100mlのRTB基準物および抽出タンパク質(以下を参照)は室温で1時間間適用し、インキュベートした。次にウェルを200mlのmPBS、0.1%ツイーン20により3回洗浄した。ブロッキング緩衝液(上記のような)中で1:4000に希釈されたウサギ抗ヒマ(Ricinus Communis)レクチン(RCA60)ポリクローナル抗体(シグマ社)を室温で1時間適用し、インキュベートした。次に前に示したようにウェルを洗浄した。AP結合ヤギ抗ウサギIgG(バイオラッド社)をブロッキング緩衝液中で1:3000の希釈で適用し、室温で1時間間インキュベートした。上に記載されるように、ウェルを3回洗浄し、100mlのpNPP(パラニトロフェニルリン酸・二ナトリウム塩)基質(ピアース(Pierce)社、ロックフォード、イリノイ)を適用した。15分後に50μlの2N NaOHの追加によって反応を停止した。吸光度(A405)を、バイオ−テック(Bio−Tek)EL808ウルトラマイクロプレートリーダーで読み取った。抽出タンパク質を、3mlのトリス−アスコルビン酸緩衝液(上記)に対して1gの生重量葉の比で調製し、サンプルを、1ウェルあたり5ng〜500ngにわたる濃度でトリス−アスコルビン酸緩衝液中に連続的に希釈されたヒマ種子由来RTB(ベクター・ラボ(Vector Labs)社、バーリンゲーム、カリフォルニア)による基準曲線に対して比較した。
【0309】
実施例25:マクロファージによる、昆虫幼虫からのRPBLA中に集合したRX3−DsREDの増強された取り込み
【0310】
pFB−RX3−DsREDおよびpFB−DsREDを得るために、RX3DsREDおよびDsREDをコードするcDNAをバキュロウイルスFastBacベクター(インビトロゲン社)中にクローニングした。これらのコンストラクトをイラクサギンウワバ幼虫を感染させるために使用した。RX3DsREDタンパク質およびDsREDタンパク質を発現する凍結幼虫をホモジナイズし、階段的密度勾配上にロードした。2時間スイングバケット中で80000×gで遠心分離した後に、RX3−DsRED融合タンパク質、およびサイトゾル中に発現されたDsREDに対応する対照の分析を、イムノブロットによって行なった(図2C)。予想されるように、DsREDタンパク質は幼生細胞サイトゾル中で発現させた場合、非常に高密度な構造中で集合せず、上清およびF35画分中に局在した(図2C、レーン2および3)。一方、RX3−DsRED融合タンパク質は、F56から単離できる高密度構造中で集合し蓄積することができた(図2C、レーン5)。実施例4(図4)における共焦点顕微鏡分析によって示されるように、RX3−DsREDは丸型のRPBLA中で蓄積した。
【0311】
F56からのRX3−DsREDのRPBLASを、PBP5(10mM HEPES pH7.4、2mM EDTA)中で3倍希釈し、スイングバケット中で2時間4℃80000×gで遠心分離によって沈殿中に集めた。沈殿をPBSの緩衝液中に再懸濁し、RPBLAの数をFACSによって定量した。pFB−RX3−DsREDベクターにより感染させた1つの幼虫から、およそ1×109のRPBLA粒子が、1マイクロリットル(μl)あたり500,000RPBLAの濃度で得られた。
【0312】
マクロファージおよび樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)による抗原提示が、免疫反応の誘導に必要な重要な過程であることが報告されてきた(Greenberg et al, Current Op. Immunology (2002), 14:136-145)。この過程において、APCは抗原をファゴサイトーシスし、続いてその抗原はファゴリソソーム中で小さなペプチドに切断される。これらのペプチドはMHCIIと相互作用し、細胞を介した免疫反応および抗体を介した免疫反応に対して提示される細胞膜へ選別される(Villandagos et al., Immunological Reviews (2005) 207:101-205)。
【0313】
RPBLAの内部に存在するRX3融合タンパク質の抗原性を決定するために、マクロファージ細胞培養を、異なるRPBLA/細胞比率(100:1および1000:1)で、これらのオルガネラとインキュベートした。マクロファージ細胞培養を、飢餓条件でまたは(M−CSF)の存在下において増殖させた。これらの細胞培養を1時間RPBLAとインキュベートしてRPBLA除去後1、2、5および10時間インキュベートし、マクロファージをPBSによりよく洗浄し、2%パラホルムアルデヒドにより固定した。その後、蛍光RX3−DsRED RPBLAをファゴサイトーシスしたマクロファージのパーセンテージだけでなく、マクロファージによっても取り込まれた蛍光RPBLAの量を定量化するために、固定したマクロファージをFACSによって解析した。
蛍光マクロファージのパーセンテージ

【0314】
これらの結果から、マクロファージが思いもよらない貪食によりRX3−DsRED RPBLAをファゴサイトーシスしたことは明らかである。より低いRPBLA/細胞比率(1:100)でM−CSFの存在下においてでさえ、RPBLA追加1時間後で、マクロファージの65%は蛍光性である。M−CSF(マクロファージのファゴサイトーシスに対して負の効果を有する)のような、細胞分裂促進性サイトカインの存在でさえ、RPBLA取り込みを有意に低下させることができない。5時間では、マクロファージのほとんどすべて(80%以上)は蛍光性であり、大多数の細胞が培地からある程度のRPBLAを取り込んだことを意味する。
【0315】
マクロファージと結合した蛍光の量がインキュベーションで経時的に解析された場合、結果はさらに驚くべきものであった。解析された任意の条件おいて(RPBLA/細胞の比率またはM−CSFの非存在の存在)、RPBLAを取り込むマクロファージの能力への飽和効果は観察されなかった。上記および下記の表の結果が、5および10時間のインキュベーションで比較されるならば、マクロファージのほとんどすべてが蛍光性であることが分かるが、マクロファージに結合した合計の蛍光は連続的に増加する。この結果は、マクロファージが大量の蛍光RPBLA粒子をファゴサイトーシスすることを示す。
時間依存的マクロファージ蛍光

【0316】
RX3−DsRED融合タンパク質を含むRPBLAがマクロファージの内部にあること、および単に細胞膜に吸着されているのではないことを実証するために、共焦点顕微鏡分析を行なった。図7A(左側パネル)は、RX3−DsRED粒子(100:1で)と共に1時間インキュベートされたマクロファージ細胞のうちのいくつかを示す。同一の図の左側パネルには、1マイクロメートルの同一の細胞の切片に、グリーンフィルターで観察されるマクロファージの典型的な緑色の自己蛍光があることを示す(図7A、白色の矢じり)。同一の光学的切片において、核および赤色蛍光RPBLA粒子(図7A、黒い矢じり)の存在は、RPBLAがファゴサイトーシスによって細胞の内部に取り込まれることを示した。
【0317】
いったん免疫原がマクロファージによってファゴサイトーシスされたならば、解析されるべき別の重要な要素は免疫原の破壊である。抗原破壊は、MHCII受容体上で提示される抗原性ペプチドを産生するために必要である。マクロファージの経時的なDsRED蛍光パターンの分析は、RPBLA粒子が活発に消化されたことを示した。
【0318】
顕微鏡写真の別のセットは、インキュベーションの1時間後に、RPBLA粒子が完全には分解されず、なお細胞の内部に観察できることを示す(図7B、上部パネル)。10時間後、赤色蛍光パターンは全て細胞に沿ってより均質であり、マクロファージがRPBLA粒子を分解し始めたことを示す(図7B、下部パネル)。
【0319】
実施例26:樹状細胞による、昆虫幼虫からのRPBLA中のRX3−DsREDの増強された取り込み
【0320】
樹状細胞は、免疫系を誘導する中心的な抗原提示役割を果たす。(Blander et al., Nature Immunology (2006) 10:1029-1035)。樹状細胞はまれなものではあるが、免疫反応の誘導能力および制御能力の両方で、最も高度に特殊化されたAPCである(Lau AH et al Gut 2003 52:307-314)。昆虫幼虫からのRPBLA中で集合したRX3−DsRED融合タンパク質をファゴサイトするそれらの細胞の能力を評価するために、樹状細胞培養を100RPBLA/細胞の比率でこれらのオルガネラと共にインキュベートした。(i)前に記載されたように単離されたRPBLA、および(ii)ER膜を除去するために、50mMトリスpH8、1%トリトンX−100中で完全に洗浄した同一のRPBLAの2種類のRPBLAを調製した。樹状細胞培養を、RPBLAの存在下において飢餓条件で増殖させ、サンプルを0、1、2、5および10時間で解析した。
蛍光性樹状細胞のパーセンテージ

【0321】
上記の表から結論できるように、樹状細胞はRPBLAに対して驚くべき貪食を示す。予想されたように、マクロファージと比較して(前の表を比較)、別記されるように、樹状細胞はより遅いファゴサイトーシス比率を有する。蛍光性樹状細胞のパーセンテージは解析された時間経過にわたってすべて増加し、RPBLAインキュベーション10時間後でさえ飽和効果は観察されなかった。マクロファージに結合した蛍光の量が経時的に解析された場合、同様の結論を得ることができる。
【0322】
RPBLAを取り込む樹状細胞の能力は飽和効果を示さなかった。樹状細胞がますます経時的にファゴサイトーシスへ誘導される(および蛍光性になる)という事実は、飽和効果の欠如について説明することができる。それにもかかわらず、マクロファージで観察されたように、樹状細胞のファゴサイトーシス能力が飽和していないこともありえる。
【0323】
予想外に、膜のないRPBLAと共にインキュベートされた樹状細胞のFACS分析は、膜含有RPBLAと共にインキュベートされた同一の細胞よりも有意に高い蛍光性樹状細胞のパーセンテージを示した。さらに、これらの樹状細胞の蛍光もまた同様により高かった。同様の結果は、膜のないRPBLAと共にマクロファージを使用して得られた。膜含有RPBLA中の昆虫由来膜タンパク質の存在はマウス樹状細胞によって外来タンパク質として認識され、従ってファゴサイトーシスを増強するであろうことが期待されたので、これはいくぶん意外であった。したがって周囲の膜の存在または非存在下における昆虫由来RPBLAが、非常に効率的な抗原提示手段であることは明白である。
【0324】
RX3−DsRED融合タンパク質を含む、RPBLAおよび膜のないRPBLAが樹状細胞によって取り込まれることを実証するために、光学顕微鏡による分析を行った。図8A(上部)は、RX3−DsRED RPBLAと共に2、5および10時間インキュベートした樹状細胞を示す(100:1比率)。図8Bの下部では、DsREDタンパク質の赤色蛍光から、それらの細胞によるRPBLAの取り込みが示される。2時間のインキュベーションでは、若干のファゴサイトーシスを観察できるが、大部分のRPBLAは細胞膜へ吸着されるだけである。5時間およびさらに10時間で、多くの細菌がファゴサイトーシスされた赤色蛍光性のRPBLAが観察された。樹状細胞が膜のないRPBLAと共にインキュベートされた場合、同様の結果が得られた(図8B)。
【0325】
RPBLAまたは膜のないRPBLAとの10時間のインキュベーションでさえ、大部分のファゴサイトーシスされた粒子が粒子として見えるままであることに注目すべきであり、タンパク質分解はほとんど起こっていないことを意味する。この観察は、プロテアーゼ捕捉の速度、および従ってタンパク質分解の速度が、マクロファージよりも樹状細胞においてより遅いことを示した以前の観察と合致する。(Lennon-Dum'enil et al. (2002) J. Exp. Med. 196:529-540)。これらの条件は、樹状細胞においてタンパク質のタンパク質分解を限定し、MHCクラスII分子上にロードするために適切な長さのペプチド抗原の生成を促進してもよい。
【0326】
実施例27:マクロファージおよび樹状細胞のファゴサイトーシス
【0327】
マクロファージマクロファージをマウスBalb/Cの骨髄から得た。マウスは頸椎脱臼により屠殺され、大腿骨および脛骨を取り出した。骨を切断し、シリンジを使用してDMEM培地により骨髄を抜き取った。骨髄を、完全DMEM培地(20%FCSおよび30%L細胞を追加した)により150mmペトリ皿上で培養した。99%純度のマクロファージ培養が37℃で7日のインキュベーション後に得られた。
【0328】
1ウェルあたり350.000の細胞を生ずるように、分化したマクロファージを完全培地中で培養した。細胞が接着したならば培地を除去し、幼虫からのRX3−DsRED RPBLAを含む新しい培地により細胞をインキュベートした。実験を、100粒子:1細胞、または1000粒子:1細胞で行った。粒子(RPBLA)の数を、励起のために488nmでアルゴンレーザー、および発光のために575nm+/−30でFL2を使用して、コールター・エピックス(Coulter Epics)XL FACSによって数えた。ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社ref.7547053(lot754896F)からのフロー・カウント(flow−count)をフローイングを検査するために使用した。
【0329】
異なる時間(0、1、2、5および10時間)後に培地を除去し、PBSにより2回の洗浄を行なった。細胞を回収し、次に2%のパラホルムアルデヒドを含むPBSによって固定した。処理されたマクロファージを4℃で保存し、蛍光をFACS(計数のために使用されたものと同一のプログラムで)によって解析した。
【0330】
RX3−DsRED粒子が細胞の内部にファゴサイトされることを実証するために、免疫細胞化学の実験が行なわれた。分化したマクロファージ(50.000の細胞/ウェル)を、RX3−DsREDの100:1粒子と共に1時間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞をPBSにより2度洗浄し、2%ホルムアルデヒドを含むPBSにより15分間固定した。処理された細胞を共焦点顕微鏡によって解析した。
【0331】
樹状細胞
Balb/Cマウスからの骨髄を、完全培地(DMEM、10%のFCS、5ng/mlのGM−CSF)により1日間培養した。顆粒球を除去するために、プレートを撹拌し、培地を2度交換した。次に培地を撹拌しないで2度交換し、未成熟樹状細胞を得るために2日間インキュベートした。樹状細胞を、1、5および10時間RX3−DsREDの100:1粒子と共にインキュベートした。処理後に、細胞を4℃で保存し、2%パラホルムアルデヒドにより固定し、蛍光をFACSによって解析した。
【0332】
本明細書において引用された特許出願、特許および論文の各々は、参照により組み入れられる。冠詞「a(1つの)」または「an(1つの)」の使用は、1つまたは複数を含むように意図される。
【0333】
先の記述およびその実施例は、例示的なものとして意図され、限定として理解するべきできない。なお、本発明の趣旨および範囲内で別の変異は可能であり、当業者へ容易に示されるだろう。
【0334】
この開示の一部を形成する図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0335】
【図1A】パネルAは、CHO細胞トランスフェクション研究のために使用されるコンストラクトの図式的な説明である。コンストラクトpECFP−N1はサイトゾル中でECFPを発現する対照に対応する。pRX3−ECFPおよびpRX3−Gx5−ECFPは、それぞれ5つのグリシンアミノ酸(Gx5)によって形成されるスペーサーの非存在下または存在下において、融合タンパク質RX3−ECFPを発現するコンストラクトである。p22aZ−ECFPは、ECFPへ融合させたトウモロコシαゼイン(22KDa)をコードするコンストラクトである。下部においては、pcDNA3.1(−)(インビトロゲン(Invitrogen)社)に基づくベクターが、以下に論じられるいくつかのコンストラクトと共に示される。パネルBは、植物形質転換のためのバイナリーベクター(上部)および昆虫感染のためのパキュロウイルスベクター(下部)の図解の説明を示す。「RX3」=プロリンを多く含むγ−ゼインのN末端配列;「(Gly)x5」=5つのグリシンによって形成されるスペーサー;「ECFP」=増強シアン蛍光タンパク質遺伝子;「PCMV」=ヒトサイトメガロウイルスプロモーター;「PPH」=ポリヘドリンプロモーター;「PSV40」=SV40初期プロモーター;「CaMV35S x2」=二重のカリフラワーモザイクウイルスプロモーター;「Pcbh1」=主要セルラーゼプロモーター;「t35S」=カリフラワーモザイクウイルスターミネーター;「TEV」=タバコエッチウイルスの翻訳エンハンサー;「SV40 ter」=SV40ターミネーター;「HSV ter」=単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼポリアデニル化シグナル;「cbh1 ter」=主要セルラーゼポリアデニル化シグナル;「Kana/Neo」=カナマイシン/ネオマイシン耐性遺伝子;「Amp R」=アンピシリン耐性遺伝子;「ゲンタマイシン」=ゲンタマイシン耐性遺伝子;「SPcbh1」=主要セルラーゼシグナルペプチド;「Ori f1」=f1一本鎖DNA起点;「Ori pUC」=プラスミド複製起点;「BGH ter」=ウシ成長ホルモンターミネーター;「P BLA」=βラクタマーゼ遺伝子プロモーター;「GFP」=緑色蛍光タンパク質;「DsRED」=ディコソーマ(Dicosoma)赤色蛍光タンパク質;「hGH」=ヒト成長ホルモン;「EGF」=ヒト表皮増殖因子;「EK」=ウシエンテロキナーゼ;「GUS」=グルクロニダーゼ;「RTB」=リシン(ヒマ(Ricinus comunis))のレクチンサブユニット;「Casp2」=ヒトカスパーゼ2;「Casp3」=ヒトカスパーゼ3;「Int」=ニュー・イングランド・バイオラボ(New England Biolabs)社からのSsp DNAb インテイン;「mInt」=Ssp DNAbインテインの変異バージョン(Asp154→Ala置換)。
【図1B】パネルAは、CHO細胞トランスフェクション研究のために使用されるコンストラクトの図式的な説明である。コンストラクトpECFP−N1はサイトゾル中でECFPを発現する対照に対応する。pRX3−ECFPおよびpRX3−Gx5−ECFPは、それぞれ5つのグリシンアミノ酸(Gx5)によって形成されるスペーサーの非存在下または存在下において、融合タンパク質RX3−ECFPを発現するコンストラクトである。p22aZ−ECFPは、ECFPへ融合させたトウモロコシαゼイン(22KDa)をコードするコンストラクトである。下部においては、pcDNA3.1(−)(インビトロゲン(Invitrogen)社)に基づくベクターが、以下に論じられるいくつかのコンストラクトと共に示される。パネルBは、植物形質転換のためのバイナリーベクター(上部)および昆虫感染のためのパキュロウイルスベクター(下部)の図解の説明を示す。「RX3」=プロリンを多く含むγ−ゼインのN末端配列;「(Gly)x5」=5つのグリシンによって形成されるスペーサー;「ECFP」=増強シアン蛍光タンパク質遺伝子;「PCMV」=ヒトサイトメガロウイルスプロモーター;「PPH」=ポリヘドリンプロモーター;「PSV40」=SV40初期プロモーター;「CaMV35S x2」=二重のカリフラワーモザイクウイルスプロモーター;「Pcbh1」=主要セルラーゼプロモーター;「t35S」=カリフラワーモザイクウイルスターミネーター;「TEV」=タバコエッチウイルスの翻訳エンハンサー;「SV40 ter」=SV40ターミネーター;「HSV ter」=単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼポリアデニル化シグナル;「cbh1 ter」=主要セルラーゼポリアデニル化シグナル;「Kana/Neo」=カナマイシン/ネオマイシン耐性遺伝子;「Amp R」=アンピシリン耐性遺伝子;「ゲンタマイシン」=ゲンタマイシン耐性遺伝子;「SPcbh1」=主要セルラーゼシグナルペプチド;「Ori f1」=f1一本鎖DNA起点;「Ori pUC」=プラスミド複製起点;「BGH ter」=ウシ成長ホルモンターミネーター;「P BLA」=βラクタマーゼ遺伝子プロモーター;「GFP」=緑色蛍光タンパク質;「DsRED」=ディコソーマ(Dicosoma)赤色蛍光タンパク質;「hGH」=ヒト成長ホルモン;「EGF」=ヒト表皮増殖因子;「EK」=ウシエンテロキナーゼ;「GUS」=グルクロニダーゼ;「RTB」=リシン(ヒマ(Ricinus comunis))のレクチンサブユニット;「Casp2」=ヒトカスパーゼ2;「Casp3」=ヒトカスパーゼ3;「Int」=ニュー・イングランド・バイオラボ(New England Biolabs)社からのSsp DNAb インテイン;「mInt」=Ssp DNAbインテインの変異バージョン(Asp154→Ala置換)。
【図2】pRX3−ECFP、pRX3−G−ECFPおよび対照としてのpECFP−N1(パネルA);p3.1−RX3−hGH、p3.1−RX3、p3.1−RX3−EK、p3.1−RX3−C3、p3.1−RX3−C2、p3.1−RX3−GUSおよびp3.1−RX3−I−hGHプラスミド(パネルB)によりトランスフェクションされたCHO細胞の細胞下分画研究からのイムノブロットを示した図である。パネルBにおいて、pB−RX3−RTBによりアグロインフィルトレーションされたタバコの細胞下分画研究からのイムノブロットもまた示される。パネルCは、pF−RX3−DsREDおよび対照としてのpFDsREDに感染した昆虫幼虫の細胞下分画研究に対応する。トランスフェクションされた細胞ホモジネートを、段階的ショ糖勾配上にロードし、遠心分離後に、上清、中間層および沈殿画分中の対応する融合タンパク質の蓄積を、イムノブロットにより解析した。分子量およびイムノブロットにおいて使用される抗体は、右側に示される。H、密度勾配にロードしたホモジネート;S、上清;FX、X%重量/重量ショ糖クッションの中間層上部;P、56%ショ糖クッションの下の沈殿。
【図3】トランスフェクションされたCHO細胞内のRPBLAにおける、融合タンパク質のRX3−ECFP(パネルA)、RX3−Gx5−ECFP(パネルB)、22aZ−ECFP(パネルD)、RX3−GFP(パネルE)、およびRX3−DsRED(パネルF)の局在を示す、6枚のパネルの共焦点顕微鏡写真である。活性のある(蛍光)融合タンパク質を含むRPBLA構造のいくつかは、矢印により示される。pECFP−N1によりトランスフェクションされたCHO細胞中の、サイトゾルにおけるECFPの局在および核(パネルC)は、対照として示される。「N」=核。
【図4】異なる宿主中の蛍光性RX3融合タンパク質の局在を示す、4枚のパネルの共焦点顕微鏡写真である。パネルAにおいて、pB−RX3−GFP、およびHcPRO(遺伝子サイレンシングのサプレッサー)をコードするバイナリーベクターにより、共アグロインフィルトレーションされたタバコからの表皮葉組織の共焦点光学的切片が示される。活性のあるRX3−GFP融合タンパク質を含む多くの蛍光性RPBLAを観察することができる。右側のパネルBにおいて、RX3−GFP蛍光および位相差のマージにより、一過性にトランスフェクションされた細胞が高率であることが示される。pF−RX3−DsREDにより感染させたSF9昆虫細胞の光学的切片の投影図が、パネルCにおいて示される。pF−RX3−DsREDにより感染させた昆虫幼虫からの脂肪組織の1マイクロメートルの光学的切片が、パネルDにおいて示される。活性のある(蛍光性)融合タンパク質を含むRPBLA構造のいくつかが、矢印により示される。
【図5】RX3融合タンパク質のトランスフェクション4日後の、CHO細胞におけるRPBLAの内部のRX3融合タンパク質の局在を示す6枚のパネル(A−F)の写真である。抗RX3血清および抗hGH血清の使用により免疫的に局在化されたRX3−hGH(パネルAおよびB)発現CHO細胞をそれぞれ示すために、光学顕微鏡を使用した。パネルCは、RX3抗血清によるRX3タンパク質の免疫的局在を示す。パネルDにおいて、RX3−I−hGH融合タンパク質を免疫的に局在化するために、抗hGH血清を使用した。RX3−GUS融合タンパク質発現CHO細胞のRX3抗血清によるインキュベーションは、パネルEにおいて示される。抗RX3の血清によりインキュベートされたRX3−EK発現CHO細胞において、より小さなRPBLAが観察された(パネルF)。小胞体(ER)およびRPBLAが示される。
【図6】低速度遠心分離によるRPBLA調製品からのRX3−I−hGH融合タンパク質可溶化後の、Ssp DNAbインテインの自己切断の誘導を図示するウエスタンブロットを示す。パネルAおよびBは、可溶化後の、RX3−I−hGH(野生型Ssp DNAbインテイン)融合タンパク質の自己切断を図示する。RX3−Im−hGH(変異Ssp DNAbインテイン)融合タンパク質が陰性対照として含まれた。1レーンあたり同容量のサンプルがロードされ、抗RX3の血清(パネルA)または抗hGHの血清(パネルB)によりウエスタンブロットを行なった。全長融合タンパク質は白矢じりにより示され、Ssp DNAbインテイン自己切断の産物(パネルAにおけるRX3−I、およびパネルBにおけるhGH)は、黒矢じりにより示される。パネルCは、0.1%SDS(S1)および二相性(S2)可溶化後の、RX3−I−hGH融合タンパク質自己切断効率の比較を図示する。4倍過剰にロードされたT0以外は、1レーンあたり同容量のサンプルがロードされた。抗hGH血清によるインキュベーションは、全長融合タンパク質RX3−I−hGH(白矢じり)および放出されたhGH(黒矢じり)を示す。「S」=可溶性画分;「U」=不溶性画分;「T0」=インテイン自己切断の誘導前のサンプル。
【図7】昆虫幼虫からのRX3−DsRED RPBLAの、マクロファージによる取り込みおよび処理を示す顕微鏡写真を示した図である。パネルAにおいて、昆虫RX3−DsRED RPBLAとのインキュベーションの1時間後のマクロファージの共焦点顕微鏡分析が示される。左側には、2つのマクロファージが位相差顕微鏡によって観察することができる。右側には、同一細胞の1マイクロメートルの光学的切片からのDsRED蛍光(黒矢じり)およびマクロファージの自己蛍光(白矢じり)のマージされたイメージが示される。この光学的切片の核(N)の観察により、RPBLAが取り込まれており、ここでは細胞内にあることが示される。パネルBは、RPBLA含有RX3−DsREDと共に1時間のインキュベーション後に、マクロファージによって放出されたDsRED蛍光の時間経過研究(1および10時間)を示す。左側には、位相差顕微鏡によりマクロファージの存在が示される。右側には、1マイクロメートルの光学的切片のDsRED蛍光により、1時間では未消化RPBLAの存在(白色の矢じり)、および10時間での消化および分散したRPBLAを表す、さらに均質なDsRED蛍光パターンが示される。挿入図のイメージは、1時間で観察された未消化RPBLAのより高い倍率に対応する。
【図8】昆虫幼虫からのRX3−DsRED RPBLAの、樹状細胞による取り込みを示す顕微鏡写真である。写真は、RPBLA(パネルA)および膜のないRPBLA(パネルB)と共に経時的に(2、5および10時間)インキュベートされた樹状細胞に対応する。各パネルの上部において、位相差は、樹状細胞の存在を示す。下部では、同一樹状細胞からのDsRED蛍光は、細胞膜へ吸収されたRPBLAの存在(2時間)または細胞の内部にファゴサイトーシスされたRPBLAの存在(5および10時間)を示す。「N」=核。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)内で組換え融合タンパク質を含む真核生物宿主細胞であって、該融合タンパク質が、1つの配列はタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)であり、かつ他方は生物学的に活性のあるポリペプチドである、ともに結合する2つの配列を含み、生物学的に活性のある該ポリペプチドが、該真核生物宿主細胞とは異なる第2の細胞タイプにおいて天然に見出され、該融合タンパク質の非存在下においてタンパク質顆粒を産生しない、該真核生物宿主細胞。
【請求項2】
前記融合タンパク質が、タンパク質顆粒誘導配列と生物学的に活性のあるポリペプチドの配列との間にリンカー配列をさらに含む、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
前記タンパク質顆粒誘導配列が、プロラミン配列を含む、請求項1または2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
前記プロラミン配列が、γ−ゼイン、α−ゼイン、γ−グリアジンまたはコメプロラミンである、請求項3に記載の宿主細胞。
【請求項5】
前記プロラミン配列がγ−ゼインRX3配列である、請求項4に記載の宿主細胞。
【請求項6】
前記タンパク質顆粒誘導配列が、植物細胞の小胞体(ER)に向けてタンパク質を導く配列をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項7】
植物宿主細胞のERに向けてタンパク質を導く前記タンパク質顆粒誘導配列が、PBISの残りの部分と同一の植物、または異なる植物からのシグナルペプチドである、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記シグナルペプチドが、γ−ゼインの19残基シグナルペプチド配列、α−グリアジンの19残基シグナルペプチド配列、γ−グリアジンの21残基シグナルペプチド配列、およびPR10クラスの病原性関連タンパク質の25残基シグナルペプチド配列からなるグループから選択される、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
前記融合タンパク質の生物学的に活性のあるポリペプチドが、前記第2の細胞タイプから単離された同一のポリペプチドの生物学的活性の少なくとも25%を示す、請求項1〜8のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記融合タンパク質の生物学的に活性のあるポリペプチドが、少なくとも2つのN結合型糖鎖付加配列を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項11】
前記融合タンパク質のうちのタンパク質顆粒誘導配列および生物学的に活性のあるポリペプチドが、酵素的手段または化学的手段によって切断可能または切断可能でないスペーサーアミノ酸配列により、ともに結合される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項12】
前記宿主細胞が藻細胞である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記宿主細胞が動物細胞である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項14】
前記宿主細胞がより高等な植物細胞である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項15】
前記宿主細胞が真菌細胞である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項16】
膜に囲まれた融合タンパク質であって、1つの配列はタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)であり、かつ他方は生物学的に活性のあるポリペプチドである、ともに結合する2つの配列を含む該融合タンパク質を含む、組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)。
【請求項17】
約1.1〜約1.35g/mlの密度を有する、請求項16に記載のRPBLA。
【請求項18】
前記PBISがプロラミン配列を含む、請求項16または17のいずれか一項に記載のRPBLA。
【請求項19】
前記プロラミン配列が、γ−ゼイン、α−ゼイン、コメプロラミンおよびγ−グリアジンからなるグループから選択される、請求項18に記載のRPBLA。
【請求項20】
前記プロラミン配列がγ−ゼインRX3配列である、請求項19に記載のRPBLA。
【請求項21】
前記PBISが、植物細胞の小胞体(ER)に向けてタンパク質を導く配列もまた含む、請求項16〜20に記載のRPBLA。
【請求項22】
植物細胞のERに向けてタンパク質を導く前記配列が、PBISの残りの部分と同一の植物、または異なる植物からのシグナルペプチドである、請求項21に記載のRPBLA。
【請求項23】
前記シグナルペプチドが、γ−ゼインの19残基シグナルペプチド配列、α−グリアジンの19残基シグナルペプチド配列、γ−グリアジンの21残基シグナルペプチド配列、およびPR10クラスの病原性関連タンパク質の25残基シグナルペプチド配列からなるグループから選択される、請求項22に記載のRPBLA。
【請求項24】
a)膜に囲まれた融合タンパク質であって、1つの配列はタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)であり、かつ他方は生物学的に活性のあるポリペプチドである、ともに結合する2つの配列を含む該融合タンパク質を含む、組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)を提供する工程と;
b)膜を分解する量の界面活性剤を含む水性緩衝液とRPBLAを接触する工程と;
c)膜を分解するのに十分な期間および生物学的に活性のあるポリペプチドを変性させない温度で該接触を維持して融合タンパク質から膜を分離する工程と;
d)生物学的に活性のあるポリペプチドを含む分離された融合タンパク質を回収する工程と
を含む、生物学的に活性のあるポリペプチドを調製する方法。
【請求項25】
分離された前記融合タンパク質が、生物学的に活性のある前記ポリペプチドの生物学的活性を示す、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
生物学的に活性のある前記ポリペプチドが、酵素的手段または化学的手段によって切断可能であるスペーサーアミノ酸配列によって前記PBISへ結合される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
生物学的に活性のある前記ポリペプチドが、融合タンパク質のBPISから切断された場合に生物学的活性を示す、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記RPBLAが、一般に約0.5〜約3ミクロンの直径を有する球形で存在する、請求項24〜27に記載の方法。
【請求項29】
薬学的に許容される希釈剤中で溶解または分散させた組換え融合タンパク質を含む、免疫原性に効果的な量の組換えタンパク質顆粒様集合体(RPBLA)を含む、ワクチンまたは接種物であって、該組換え融合タンパク質が、1つの配列はタンパク質顆粒誘導配列(PBIS)であり、かつ他方はそれに対して該ワクチンまたは接種物によって免疫反応が誘導されるべきである生物学的に活性のある免疫原性ポリペプチドである、ともに結合する2つの配列を含む、ワクチンまたは接種物。
【請求項30】
前記融合タンパク質が、タンパク質顆粒誘導配列と生物学的に活性のある免疫原性ポリペプチド配列との間にリンカー配列をさらに含む、請求項29に記載のワクチンまたは接種物。
【請求項31】
前記PBISがプロラミン配列を含む、請求項29または30に記載のワクチンまたは接種物。
【請求項32】
前記プロラミン配列が、γ−ゼイン、α−ゼイン、γ−グリアジンまたはコメプロラミンである、請求項31に記載のワクチンまたは接種物。
【請求項33】
前記プロラミン配列がγ−ゼインRX3配列である、請求項31に記載のワクチンまたは接種物。
【請求項34】
前記RPBLAが、抗原提示細胞への抗原送達を改善する、請求項29〜33に記載のワクチンまたは接種物。
【請求項35】
前記RPBLAが、抗原提示細胞への抗原処理および抗原提示を改善する、請求項29〜34に記載のワクチンまたは接種物。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−527237(P2009−527237A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555710(P2008−555710)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001606
【国際公開番号】WO2007/096192
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508256178)エラ バイオテック ソシエダッド アノニマ (1)
【Fターム(参考)】