説明

生物学的コーティング組成物

【課題】生物学的表面に塗布され、接着性で適合性のポリマー・コーティングを形成するコーティング組成物を提供すること。
【解決手段】生物学的コーティング組成物は、重合性シアノアクリレートモノマーと、4.9〜12.5(cal/cm1/2の溶解度パラメーターを有する揮発性の液体と、合成ゴム、天然ゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択された重合体とを備え、生物学的表面に塗布されたときに、接着性で適合性のポリマー・コーティングを形成するものであり、揮発性の液体は、室温又は体温で揮発するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、外科手術部位、皮膚および粘膜を含めた生物学的表面等の表面を保護および修復するために有用な止血性コーティング材料に関する。止血性液体接着材料は、重合性シアノアクリレートモノマー成分、および刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、非反応性で揮発性の液体からなり、生成したコーティングは第2表面に接着しない。止血性液体接着材料は、また、強化された形状を与えるためにシラン含有ポリマー成分、好ましくはシロキシシランポリマーを含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
シアノアクリレート、特にブチルおよびオクチルシアノアクリレートは、液体接着性絆創膏としての用途が知られている(米国特許第6183593号;米国特許第6143805号)。これらの材料は、素早いフィルム形成で止血性を持ち、紙またはカミソリによる切り傷のような薄い創傷を閉じるのに特に有用である。よく曲がる部位にできた創傷はシアノアクリレートでの治療には不適切である。というのは、シアノアクリレートが完全に接着した場合は瘢痕化を増大させ、完全に接着しない場合は、シアノアクリレート本来の脆弱性により直ぐに剥がれてしまう傾向があるためである。ポリジメチルシロキサンは、シアノアクリレートにブレンドされて可撓性および弾性を増加させる(米国特許第6746667号;米国特許第6183593号、米国特許第5140084号)。シアノアクリレートは、低水蒸気透過速度を有するので、最適な創傷治癒を可能にするために創傷部位で水蒸気を平衡に保つことができない。シアノアクリレートは、2つの表面を一緒に素早く接着する能力を有する点でも知られており、多数の外科手術および修復の用途に役に立つが、使用者が止血剤として望まない場合すなわち使用者が2つの生物学的表面や別の対象物、例えば、指と指もしくは足と床を接着することを望まない場合の液体接着性絆創膏としての使用には問題がある。
【0003】
更に、液体接着性絆創膏として使用された場合のシアノアクリレートモノマーは、湿潤表面に接触した場合に急速に重合して熱を発生するので、皮膚に塗布した場合には患者に不愉快な思いをさせることが分かっている。この問題を解決するものとして、米国特許第6010714号は、シアノアクリレートの発熱重合温度を減少させるために、熱散逸液体または固体の有効量を伴う生体適合性モノマー(好ましくはシアノアクリレート)を開示している。引用した熱散逸液体としては、エーテル、ケトン、クロロフルオロカーボン、アルカン、アルコール、アルケンおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらの有機溶媒は、開いた創傷においては刺す様な痛みまたはヒリヒリする刺激を引き起こし、それゆえ、これらを使用する場合には、患者に快適さとよりよい健康を提供することはあきらめざるを得ない。更に、米国特許第6010714号は、使用される溶媒がモノマーの重合速度に影響を及ぼさないことを開示している。したがって、これらの溶媒は重合速度を減少させず、それゆえ、モノマーの重合期間中の熱の急速な放出を緩和しない。
【0004】
液体接着性絆創膏の範疇には、液体ポリジメチルシロキサンと混合された非止血性アルキルシロキシシロキサン含有ポリマーが含まれ(米国特許第5103812号および米国特許第4987893号)、そのポリマーは体液蒸発および酸素輸送を可能にしつつ、体の表面を更なる汚染および乾燥から保護し、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリしないコーティング材料を与える。別の形態では、アルキルシロキシシロキサン含有ポリマーはイソオクタンと混合され、同様のコーティング性を与える(米国特許第6383502号)。これらのコーティングは、水和表面に対する接着の損失、指関節または膝等のよく曲がる部位での接着ロス、および止血能力がないという一般的な欠点を有する。
【0005】
止血活性を持たない液体接着性絆創膏として有用なその他の範疇のポリマー、即ち、シクロアルキルメタクリレートコポリマーは、液体ポリジメチルシロキサン、イソオクタンおよびイソドデカンの混合物に可溶であることが分かっている(米国特許第6358503号)。
【0006】
米国特許第5214093号は、非外科的眼瞼形成用の接着製剤として、50%のシアノアクリレートモノマー、25%のポリジメチルシロキサンおよび25%の3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)モノマーの使用を開示している。この組成物は、TRISモノマーが、シアノアクリレート結合剤の塗布前に表面を調製するために眼瞼に直接塗布されるので毒性および刺激問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6183593号明細書
【特許文献2】米国特許第6143805号明細書
【特許文献3】米国特許第6746667号明細書
【特許文献4】米国特許第5140084号明細書
【特許文献5】米国特許第6010714号明細書
【特許文献6】米国特許第5103812号明細書
【特許文献7】米国特許第4987893号明細書
【特許文献8】米国特許第6358503号明細書
【特許文献9】米国特許第5214093号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、生物学的表面に液体形態で塗布され、空気で乾燥された場合に、第2表面には接着しない、使用者の皮膚、組織または粘膜に著しい、刺す様な痛みもしくは刺激を与えない接着性、固体保護コーティングを形成する、創傷および外科的切開を保護もしくは修復するため、あるいは損傷した、または危険にさらされた皮膚もしくは粘液組織を治療するための絆創膏または包帯として作用することのできる液体止血性コーティング材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
好ましい実施形態では、液体止血性コーティング材料は、シアノアクリレートモノマーおよび、塗布前はシアノアクリレートモノマーと非反応性であり、使用者に対して刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で疎水性の液体からなる溶媒系からなる。止血性コーティングは、血流を止めるコーティングである。刺す様な痛みを与えない液体は、損傷したもしくは無傷の皮膚、または開いた創傷等の上に付着した場合に、鋭く、突然、瞬間的な痛みを引き起こさない液体である。ヒリヒリしない液体は、損傷したもしくは無傷の皮膚、または開いた創傷等の上に付着した場合に、炎症または苦痛を引き起こさない液体である。揮発性で疎水性の液体は、水に不溶で、室温または体温で揮発する液体である。
【0010】
好ましい実施形態では、シアノアクリレートモノマーは、約0.1重量%〜約99.9重量%存在し、更に好ましくは、シアノアクリレートモノマーは、約0.1〜約95重量%存在し、最も好ましくは、シアノアクリレートモノマーは、約0.1〜約90重量%存在する。好ましくは、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体は、約0.1重量%〜約99.9重量%まで存在し、更に好ましくは、揮発性非反応性液体は、約5重量%〜約99.9重量%まで、最も好ましくは、約10重量%〜約99.9重量%存在する。この材料は、表面または使用者の皮膚に塗布した場合、コーティングまたは絆創膏を形成する。
【0011】
好ましい実施形態では、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体は、低分子量の直鎖または環状シロキサンである。無機/有機ハイブリッドであるシリコーン液体は、非常に低い臨界表面張力の点で注目される。シアノアクリレートモノマーが、ヘキサメチルジシロキサンのようなシロキサン溶媒と混合され、前記溶液が湿潤表面に塗布された場合、空気界面における液体の内容物は大部分がシリコーン液体である。それゆえ、このシリコーン含有界面により、重合するシアノアクリレートがその他の表面に接着するのが防がれる。更に、シリコーン液体の低表面張力の故に、混合物は、ビードになって流動しない傾向を有するシアノアクリレートだけの塗布に比べて生物学的表面上に簡単に広がる。この様に、シアノアクリレートとシロキサン液体の導入は、シアノアクリレートだけに比べ、短時間でより迅速な損傷域の被覆をもたらす。
【0012】
その他の好ましい実施形態では、本発明の液体コーティング材料は、シラン含有ポリマー、好ましくは、シロキシシラン含有ポリマー、シアノアクリレートモノマー、および使用者に刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で、非反応性で、疎水性(非極性)の液体からなる溶媒系からなる。好ましくは、ポリマーは、約0.01重量%〜約99.5重量%、更に好ましくは、約0.5重量%〜約70重量%、最も好ましくは、約1%〜約40%存在する。更に、シアノアクリレートモノマーは、約0.1重量%〜約99.5重量%、更に好ましくは、約0.1〜約70重量%、最も好ましくは、約0.5%〜約50%存在する。刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で疎水性の液体は、約0.5重量%〜約99.9重量%、更に好ましくは、約5重量%〜約99.5重量%、最も好ましくは、約10%〜約98.5%存在する。この材料は、表面または使用者の皮膚に塗布した場合に、コーティング、絆創膏または接着剤をフィルムの形態で形成し、前記表面は別の表面に接着しない。シロキシシラン含有ポリマーは、治癒に役立つと考えられる、ポリマー・フィルムを通過しての水分および酸素輸送をもたらす。理論に拘泥するつもりはないが、このフィルムは相互貫入ポリマー・ネットワークの形態であり、シアノアクリレートポリマーがシロキシシランポリマー内で内部分散(interdispersed)されている。
【0013】
好ましい実施形態では、シロキシシラン含有ポリマーが存在する場合、シロキシシラン含有ポリマーは、表面への塗布前にモノマーと共重合された少なくとも1つのビニル含有シロキシシランモノマー(約20〜85モル%)を備え、そのモノマーは、ポリマー形態では、シアノアクリレートモノマーと反応しないものである。このような非反応性モノマーは、ポリマーの接着および粘着を増加する機能に役立つことができる。刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で、非反応性で、疎水性の液体は、好ましくは、揮発性、低分子量直鎖または環状シロキサンである。
【0014】
その他の好ましい実施形態では、シロキシシランモノマーは、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリロイルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、
3−メタクリロイルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリロイルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)(ペンタメチルジシロキサニル)シラン、
3−メタクリロイルオキシエチルトリス(ペンタメチルジシロキサニル)シラン、
メタクリロイルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
メタクリロイルオキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリロイルオキシプロピルヘプタシクロペンチル−T8−シルセスキオキサン、3−メタクリロイルオキシプロピルヘプタイソブチル−T8−シルセスキオキサン、
3−アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−アクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリロイルオキシプロピル−1,1,1−トリフェニル−3,3−ジメチルジシロキサン、
3−メタクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−アクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
p−ビニルフェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
p−ビニルベンジルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルオキシエチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルノニルジメチル(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルノニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルペンタメチルジシロキサン、
O−(ビニルオキシエチル)−N−(トリス[トリメチルシロキシ]シリルプロピル)ウレタン、
ビニルフェニルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、
ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、
ポリジメチルシロキサン モノアクリレート、
ポリジメチルシロキサン モノメタクリレート、
ポリメチルフェニルシロキサン モノアクリレート、
ポリメチルフェニルシロキサン モノメタクリレート、または
3−アクリロイルオキシプロピルトリス(ポリジメチルシロキサニル)シラン
のうちの少なくとも1つからなる。
【0015】
その他の好ましい実施形態では、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体は、4.9〜12.5(cal/cm1/2の溶解度パラメーターを有する群から選択される。
【0016】
その他の好ましい実施形態では、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体は、5〜10(cal/cm1/2の溶解度パラメーターを有する群から選択される。
【0017】
なおその他の好ましい実施形態では、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体は、揮発性直鎖および環状シロキサン、ならびに揮発性ポリジメチルシロキサンからなる。
【0018】
好ましい実施形態では、コーティングは止血を与える。
その他の好ましい実施形態では、揮発性、非反応性溶媒は、イソオクタン、オクタン、ネオペンタン等のアルカン;ペンタフルオロプロパン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン等の揮発性フルオロカーボン;または二酸化炭素等の、溶媒として加圧下で使用される揮発性ガスである。
【0019】
その他の好ましい実施形態では、コーティングは、その塗布された表面には接着するが、塗布された表面が別の表面に接着することは許さないということが提供される。
その他の好ましい実施形態では、コーティングは、溶媒が損傷皮膚または組織に接触した場合に、刺す様な痛みまたは刺激の発生によって不快感を引き起こさないということが提供される。
【0020】
その他の好ましい実施形態では、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリしない溶媒は、シアノアクリレートモノマーの重合速度を減少し、この様にして、その重合熱の放出を経時的に減少する。刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリしない溶媒の濃度が高ければ高い程、重合速度の減少は益々大きくなり、経時的に発生する熱は少なくなる。
【0021】
その他の好ましい実施形態では、コーティングは、前記コーティングが表面に塗布された場合に、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリしない溶媒の揮発によって、重合するシアノアクリレートモノマーからの熱の発生による不快感を引き起こさないということが提供される。あるいはまた、刺す様な痛みを与えない溶媒の濃度を下げることにより、創傷部位における微生物を減少または殺すことが必要とされる場合には、焼灼を実施できる。
【0022】
その他の好ましい実施形態では、コーティングは、水和および/または非水和表面に接着性であるということが提供される。
その他の好ましい実施形態では、コーティングは、外部水分、石鹸、洗剤、およびスキンケア製品に暴露された場合の表面に対して接着性を残すということが提供される。
【0023】
その他の好ましい実施形態では、コーティングは、皮膚もしくは粘膜創傷または切開に対する更なる微生物または粒子状汚染を防ぐということが提供される。
その他の好ましい実施形態では、透明な被覆は、汚染物を引き付けたりまたは保持したりせず、無色のままで、創傷を見ることができ、加えて美容的魅力性を叶えることができる。
【0024】
その他の好ましい実施形態では、コーティングは、塗布された場合、擦過域からの体液の損失を制御するということが提供される。
その他の好ましい実施形態では、ポリマー・フィルムは、水分および酸素輸送を可能にするということが提供される。
【0025】
その他の好ましい実施形態では、ポリマー・フィルムは、ポリマー・フィルムにおいて医薬またはその他の活性剤が、目標域中への制御された送達のために導入されてもよいということが提供される。
【0026】
その他の好ましい実施形態では、コーティングは、表面への塗布後に、外から塗布される溶媒またはその他の除去方法を必要とすることなく経時的に徐々にその表面から剥離するということが提供される。
【0027】
本発明のなお更なる目的は、処置された表面が、別の周りの表面に付着しない外科的接着剤を提供することである。
本発明のその他の実施形態は以下で説明される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
シアノアクリレートモノマーは、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体中に導入した場合および重合した場合、2つの表面が互いに接着するのを妨げる、速く乾燥する、止血性、接着性の、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリしない液体接着コーティングまたは絆創膏を与える。刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体の不存在下では、著しい不快感が、損傷皮膚と接触する揮発性有機溶媒とシアノアクリレートモノマーの急速な重合による熱発生により引き起こされる。コーティング組成物の刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体は、その低い気化熱の故にシアノアクリレートモノマーの重合中に蒸発し、したがって、塗布表面から重合熱を除去するものと考えられる。更に、前記の刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性の溶媒がシロキサン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン等である場合は、低い気化熱(46cal/g)を有するその様な化合物は急速にコーティングを形成し、溶媒の急速な除去の故に使用者を安堵させる。
【0029】
シロキシシラン含有ポリマーがその上に添加される場合は、更に大きな皮膚被覆および接着を与える連続フィルムが導入される。また、シロキシシランポリマーは、損傷皮膚に対してフィルムを通して水分および酸素輸送を助ける。これらの止血性コーティング材料は、ゆっくりと出血するまたは浸出する創傷において特に有用である。
【0030】
この液体止血性コーティングは、必要に応じて、目標域上に徐々に放出することのできる薬剤またはその他の活性物質からなることができる。
シアノアクリレートモノマーおよび、シロキシシラン含有ポリマーの導入を含めた、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリしない揮発性溶媒からなる液体止血性コーティングは、皮膚、爪、組織、器官および粘膜、例えば、出血損傷、外科手術部位、皮膚潰瘍、切り傷、擦り傷、切開、口唇ヘルペス、疱疹、皮疹、擦り減った歯茎およびその他の口腔表面、痔核および擦り減った体の部分、ならびにその他の粘膜切開および創傷を保護または治療するのに有用である。液体接着性材料は、また、外科用接着剤として使用されてもよい。これらは、また、小児医療および動物医療での用途も考えられる。
【0031】
液体止血性絆創膏は、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリしないものであり、暴露された神経終末を一瞬にして被覆するので、痛みは直ぐに緩和される。絆創膏は、2日以上の間、皮膚/粘膜表面に対して接着性を残し、痛みを和らげ、損傷または刺激を創り出すことなく徐々に取り外せる。
【0032】
<組成物>
本発明で使用されてもよい好ましいシアノアクリレートモノマーとしては、アルキルシアノアクリレート、アリールシアノアクリレート、アルコキシアルキルシアノアクリレートを含めた、容易に重合できるα−シアノアクリレート、例えば、n−ブチルシアノアクリレート、2−オクチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、メチルシアノアクリレート、n−ドデシルシアノアクリレート、フェニル2−シアノアクリレート、メトキシエチル2−シアノアクリレート等が挙げられる。組成物は、1つまたは複数の重合性シアノアクリレートモノマーからなっていてもよい。好ましいシアノアクリレートは、n−ブチルシアノアクリレートおよび2−オクチルシアノアクリレートであり、n−ブチルシアノアクリレートが最も好ましい。
【0033】
好ましくは、シアノアクリレートモノマーは、約0.1重量%〜約99.9重量%存在し、更に好ましくは、シアノアクリレートモノマーは、約0.1〜約95重量%存在し、最も好ましくは、シアノアクリレートモノマーは、約0.1〜約90重量%存在する。
【0034】
本発明のシアノアクリレートモノマーは、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体、好ましくは、約4.9〜12.5(cal/cm1/2、好ましくは、約5〜8(cal/cm1/2の溶解度パラメーターを有する液体からなる溶媒系中に導入される。刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリしない溶媒系は、揮発性液体シロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等からなることができる。最も好ましい、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性の溶媒系はヘキサメチルジシロキサンである。その他の揮発性溶媒は、揮発性アルカン、例えば、イソオクタン、オクタン、ネオペンタン等;揮発性フルオロカーボン、例えば、ペンタフルオロプロパン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン等;または揮発性ガス、例えば二酸化炭素等を含めて、使用者の不快感の程度の変化に応じてそれぞれ使用することができる。
【0035】
好ましくは、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体は、約0.1重量%〜99.9重量%まで存在し、更に好ましくは、揮発性非反応性液体は、約5重量%〜99.9重量%まで存在し、最も好ましくは、約10重量%〜99.9重量%存在する。
【0036】
液体コーティングの主たる液体相として、単独または組合せでの、これらの刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体の使用は、急速な乾燥と乾燥中のより少ないコーティング粘着性を与える。特に、これらの揮発性非反応性液体の使用は、2つの表面が互いに接着するのを妨げ、その一方で、その塗布表面へのコーティングの良好な接着を可能にする。蒸発の間に、低い表面エネルギーを有する揮発性非反応性液体溶媒は、空気界面またはコーティングの表面の「最上層」において主に見出され、したがって、シアノアクリレートが液体コーティングの表面に到達するのを妨げ、存在してもよいその他の表面への接着性結合を防ぐ。
【0037】
更に、単独または組合せでの、これらの刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体の使用は、塗布、噴霧、噴出、浸漬等で塗布される反応性シアノアクリレートを含む液体接着コーティングを可能にする。
【0038】
シロキシシラン含有ポリマーの存在においては、本発明のシロキシシラン含有ポリマー成分は、好ましくは、ポリマーは水蒸気および酸素透過性であり、モノマーはその他の非シアノアクリレート反応性モノマーと共重合して、CO−または複数ポリマーを形成してもよい付加重合性シロキシシランからなる。シロキシシラン含有ポリマー成分により与えられる水蒸気および酸素透過性は、創傷治療および皮膚/組織劣化の予防にとって重要である。水蒸気透過性は乾燥を防ぎ、体の排出物(汗)の除去を可能にし、一方、酸素透過性は創傷治癒の助けとなることができる。
【0039】
シロキシシランポリマーのシロキシシランモノマーとしては:
3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(トリス)、
3−メタクリロイルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、
3−メタクリロイルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリロイルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)(ペンタメチルジシロキサニル)シラン、
3−メタクリロイルオキシエチルトリス(ペンタメチルジシロキサニル)シラン、
メタクリロイルオキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン
メタクリロイルオキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
3−メタクリロイルオキシプロピルヘプタシクロペンチル−T8−シルセスキオキサン
3−メタクリロイルオキシプロピルヘプタイソブチル−T8−シルセスキオキサン
3−アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−アクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−メタクリロイルオキシプロピル−1,1,1−トリフェニル−3,3−ジメチルジシロキサン、
3−メタクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
3−アクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
p−ビニルフェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
p−ビニルベンジルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルオキシエチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルノニルジメチル(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルノニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルペンチルジシロキサン、
O−(ビニルオキシエチル)−N−(トリス[トリメチルシロキシ]シリルプロピル)ウレタン、
ビニルフェニルビス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、
ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、
ビニル末端ポリジメチルシロキサン、
ポリジメチルシロキサン モノアクリレート、
ポリジメチルシロキサン モノメタクリレート、
ポリメチルフェニルシロキサン モノアクリレート、
ポリメチルフェニルシロキサン モノメタクリレート、
3−アクリロイルオキシプロピルトリス(ポリジメチルシロキサニル)シラン等が挙げられる。
【0040】
これらのシロキシシランモノマーは、重合した場合、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で、非反応性で、疎水性の選択した溶媒系において最適な溶解性を与える。
その他の付加重合性モノマーは、また、例えば、接着性、粘着性、可撓性、強靭性を変えるために本発明のシロキシシラン含有ポリマー中に導入されてもよい。これらのその他のモノマーの例は、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ラウリルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ジメチルイタコネート、ジ−n−ブチルイタコネート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ペンチルアクリレートおよびメタクリレート、2−ペンチルアクリレートおよびメタクリレート、3−ペンチルアクリレートおよびメタクリレート、2−メチル−1−ブチルアクリレートおよびメタクリレート、1−メチル−1−ブチルアクリレートおよびメタクリレート、1−メチル−1−ペンチルアクリレートおよびメタクリレート、2−メチル−1−ペンチルアクリレートおよびメタクリレート、3−メチル−1−ペンチルアクリレートおよびメタクリレート、2−エチル−1−ブチルアクリレートおよびメタクリレート、2−エチル−1−ヘキシルアクリレートおよびメタクリレート、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシルアクリレートおよびメタクリレート、3−ヘプチルアクリレートおよびメタクリレート、デシルアクリレートおよびメタクリレート、ドデシルアクリレートおよびメタクリレート、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、n−オクタデシルアクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、n−トリデシルメタクリレート、ビニルベンゾエート、ビニルナフタレン等である。更に、フッ素化シロキサン、フッ素化イタコネート、フッ素化メタクリレートまたはアクリレート、例えば、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート等が使用できる。更に、誘導されたまたはされていないブタジエンまたはイソプレン等のジエンおよびこれらのオリゴマーが使用できる。
【0041】
任意の疎水性または親水性重合性モノマーは、得られるコポリマーが、所望の酸素および水蒸気透過性、その塗布表面への所望の接着性、所望の粘着性、および本発明の液体止血性組成物の成分であるシアノアクリレートモノマー(表面への塗布まで)との非反応性を有する限りは使用することができる。
【0042】
シロキシシランポリマーは、熱フリー・ラジカル重合、レドックス・フリー・ラジカル重合、光開始フリー・ラジカル重合、およびリビング・ラジカル重合を含む、利用されるモノマーのフリー・ラジカル重合により得ることができる。必要に応じて、ブロックコポリマーは、リビング・ラジカル重合またはリビング・アニオン重合により調製することができる。熱フリー・ラジカル重合が好ましく、70〜75℃で、窒素の存在下で行われる重合で、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ・フリー・ラジカル開始剤が最も好ましい。
【0043】
本発明のシロキシシラン含有ポリマーは、コーティングの可撓性および塗布された接着コーティングの耐久性を増加する。コーティングの可撓性は、コーティングが、体の動きと共に心地よく曲がり、その一方でコーティング強度を保持するので体の柔軟な部位、例えば、膝、指関節および肘上での本発明のコーティングの使用を可能にする。その塗布された表面上で乾燥したコーティングの耐久性は、少なくとも2日間が望ましい。
【0044】
非揮発性液体シロキサン、例えば、ポリシロキサンの誘導体等は、また、塗布された接着コーティングの可撓性および耐久性を増加するために本発明のシロキシシラン含有ポリマーを伴いまたは伴わずに使用されてもよい。
【0045】
本発明のポリマーおよびモノマー成分は、揮発性疎水性液体、好ましくは、約5.0〜8.0(cal/cm1/2の溶解度パラメーターを有する液体からなる溶媒系中に導入される。疎水性液体は、水と相溶性ではないものとして本発明の目的のために定義される。溶媒系は、揮発性液体シリコーン、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等からなる。ヘキサメチルジシロキサンの溶解度パラメーターは、5.7(cal/cm1/2であり、オクタメチルシクロテトラシロキサンのそれは、5.4(cal/cm1/2であると報告されている(米国特許第5103812号、第6欄を参照されたい)。好ましい溶媒系はヘキサメチルジシロキサンである。その他の揮発性溶媒は、揮発性アルカン、例えば、イソオクタン、オクタン、ネオペンタン等;揮発性フルオロカーボン、例えば、ペンタフルオロプロパン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン等;または揮発性ガス、例えば二酸化炭素等を含めて、使用者の不快感の程度の変化に応じてそれぞれ使用することができる。
【0046】
約9〜10(cal/cm1/2の溶解度パラメーターを有する良好な溶媒を含む液体から注型する本発明のポリマー・コーティングは、一般的に、ゆっくりと乾燥し、長期間にわたり粘着性を残す様に機能する。
【0047】
液体止血性コーティングの主たる液体相として、単独または組合せでの、これらの刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で疎水性の液体の使用は、急速な乾燥および乾燥中のより少ないコーティング粘着性を与える。特に、これらの揮発性疎水性液体の使用は、2つの表面が互いに接着するのを妨げ、その一方で、その塗布表面へのコーティングの良好な接着を可能にし、創傷の保護と修復をする。蒸発の間に、空気とのその低い表面エネルギーの故に、揮発性疎水性液体は、空気界面またはコーティングの表面の「最上層」において主に見出され、したがって、シアノアクリレートモノマーがこの表面に到達し、存在してもよいその他の表面への接着性結合を形成するために反応することを妨げる。
【0048】
シロキシシラン含有ポリマー、シアノアクリレートモノマーおよび溶媒からなる液体止血性コーティング材料は、皮膚、組織、器官、爪、水和した組織および粘膜、例えば、出血損傷、外科手術部位、皮膚潰瘍、口唇ヘルペス、切り傷、皮疹、擦り傷、切開および疱疹、擦り減った歯茎およびその他の口腔表面、痔核および擦り減った体の部分、ならびにその他の粘膜切開および創傷を保護または治療するのに有用である。前記コーティング材料は、また、小児医療および動物医療での用途も考えられる。
【0049】
液体止血性絆創膏は、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリしないものであり、暴露された神経終末を一瞬にして被覆するので、痛みは直ぐに緩和される。絆創膏は、4日まで、皮膚/粘膜表面に対して接着性を残し、痛みを和らげ、損傷または更なる刺激を創り出すことなく徐々に取り外せる。
【0050】
正常な擦り減っていない皮膚は、殆どの部位で200g/m/日の平均速度で水蒸気を失い、手のひらおよび足の裏は、平均500g/m/日で呼吸する。本発明のシロキシシラン含有ポリマー液体止血性材料は、保護フィルムの厚さ(0.0245mm〜0.1225mm(0.001〜0.005インチ))に応じて100〜200g/m/日の水蒸気透過速度を有し、したがって、創傷部位の脱水および体液の閉塞の両方を防ぐ。
【0051】
使用者の特定の要件により、本発明の止血性組成物は、公知の手段、例えば、噴霧、噴出、スワブ、ロッド、殺菌ブラシまたは点滴用器等で塗布することができる。しかしながら、多くの状況において、ポンプ調剤パッケージは本発明の止血性組成物にとって好ましい。その他の塗布形式は、その全体を本願明細書に援用する米国特許第5928611号において例示されている。
【0052】
幾つかのモノマーのシアノアクリレート止血性、接着組成物の安定性、ひいては寿命は、充填物質も任意の添加剤もシアノアクリレートの自然重合を引き起こさないパッケージの慎重な調節により更に高めかつ延長することができる。或る例では、しかしながら、酸性阻害剤、例えば、二酸化硫黄が、自然重合を防止するためにシアノアクリレートモノマー中に存在する。
【0053】
<組成物のその他の変形>
その他の物質は、これらがシアノアクリレートモノマーの自然重合を誘発しなければ、更なる可塑化、改良された接着、またはレオロジー制御等のために液体材料または組成物に添加されてもよい。
【0054】
一般的な可塑剤/接着促進剤は、ジブチルフタレート、アセチルトリブチルシトレート、スクロースアセテートイソブチレート、スクロースベンゾエート、アセチルトリエチルシトレート、鉱油、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ブチルグリコレート等である。可塑化剤は、好ましくは、殆どまたは全く水分を含まず、シアノアクリレートモノマーの重合に著しい影響を及ぼしてはならない。適切な可塑剤としては、ポリマー可塑剤、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)エステルおよびキャプドPEGエステルまたはエーテル、ポリエステルグルタレートおよびポリエステルアジペート等が挙げられる。その他の組成物は、その全体を本願明細書に援用する米国特許第5259835号および第5328687号;第5981621号;第6143352号;第6565840号;第6010714号;第6217603号;および第5928611号で例示されている。
【0055】
液体材料または組成物に添加されてもよい一般的なレオロジー添加剤は、これらがシアノアクリレートモノマーの重合を引き起こさないものとして、溶融シリカ、ベントナイトおよびその他の粘土誘導体等である。
【0056】
組成物は、場合によりまた増粘剤を含んでもよい。適切な増粘剤としては、例えば、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリアルキルアクリレート、アルキルアクリレートと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリ(アルキルメタクリレート)、およびアルキルメタクリレートとブタジエンとのコポリマーが挙げられる。アルキルメタクリレートおよびアクリレートの例は、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)およびポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、またポリ(ブチルメタクリレート)およびポリ(ブチルアクリレート)、また種々のアクリレートとメタクリレートモノマーとのコポリマー、例えば、ポリ(ブチルメタクリレート−CO−メチルアクリレート)である。
【0057】
組成物は、また、衝撃抵抗を付与するために、少なくとも、天然または合成ゴムまたは熱可塑性エラストマーを場合により含んでもよい。適切なゴムは当業者には公知である。その様なゴムとしては、ジエン、スチレン、アクリロニトリル、およびこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。適切なゴムの例は、その開示のその全体を本願明細書に援用する米国特許第4313865号および第4560723号において開示されている。
【0058】
組成物は、また、その全体の開示のその全体を本願明細書に援用する米国特許第6143352号に開示されている、得られるポリマーの劣化速度を制御するためのpH調整剤を含んでもよい。
【0059】
本発明の組成物から形成される接着剤の粘着強度を改善するために、混合物の2重量%未満の濃度で2官能モノマー架橋剤が、本発明のモノマー組成物に添加されてもよい。その様な架橋剤は、例えば、米国特許第3940362号等で公知である。
【0060】
本発明の組成物は、繊維状強化剤ならびに着色剤、例えば、染料、顔料、および顔料染料等を更に含んでもよい。適切な繊維状強化剤の例としては、PGA微小繊維、コラーゲン微小繊維、およびその開示のその全体を本願明細書に援用する米国特許第6183593号に記載されている様なその他のものが挙げられる。米国特許第5981621号に記載されている様な適切な着色剤の例としては、1−ヒドロキシ−4−[4−メチルフェニルアミノ]−9,10−アントラセンジオン(FD+C バイオレット番号2);6−ヒドロキシ−5−[(4−スルホフェニル)オキソ]−2−ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩(FD+C イエロー番号6);9−(o−カルボキシフェニル)−6−ヒドロキシ−2,4,5,7−テトラヨード−3H−キサンテン−3−オン、二ナトリウム塩、一水和物(FD+C レッド番号3)等が挙げられる。
【0061】
本発明の組成物は、また、シアノアクリレートモノマーのための1つまたは複数の重合安定剤、好ましくは、少なくとも1つのアニオン気相安定剤および少なくとも1つのアニオン液相安定剤の両方を含んでもよい。その様な安定剤は、また、アニオン安定剤およびラジカル安定剤の混合物を含んでもよい。これらの安定剤は、早期重合を抑制することができる。適切な安定剤としては、その開示のその全体を本願明細書に援用する米国特許第6183593号に列挙されているものが挙げられる。更に、或種の安定剤は、また、抗真菌剤として機能してもよい。
【0062】
<薬剤>
薬剤は、種々の薬剤の導入を可能にしかつ長持ちして、透過性である、液体止血性接着材料成分からの素早いまたは連続的な放出のための液体または固体フィルム絆創膏中に導入されてもよい。薬剤の添加は、使用者の表面へのその塗布前にシアノアクリレートモノマーの自然重合を促進してはならない。有用な薬剤の例は、殺菌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、細胞増殖因子、抗生物質、抗炎症剤、抗疥癬剤、抗感染剤、抗癌剤、血圧および心臓調整剤、ステロイド、その他多数である。
【0063】
組織成長促進剤は、これらがシアノアクリレートモノマーの自然重合を引き起こさないものとして、新たな組織、新たな組織の接着、細胞移動等の産生を促進するために本発明の液体中に導入または懸濁されてもよい。例えば、本発明の液体接着フィルム絆創膏中に導入されるサイトカイン、例えば、上皮成長因子、形質転換成長因子(TGF)−アルファ、TGF−ベータ等は、創傷域の再成長を促進してもよい。
【0064】
上述した通り、生物学的成分は、場合により、絆創膏材料内に導入されてもよい。存在する場合、生物学的成分は、損傷部位に存在する場合は患部の治癒および/または再生を促進する種々の因子の中から選択することができる。治癒を実際に促進または円滑にする化合物または作用薬の存在に加えて、エフェクターは、また、感染を予防する化合物または作用薬(例えば、抗菌剤および抗生物質)、炎症を減少させる化合物または作用薬(例えば、抗炎症剤)、接着形成を防ぐまたは最小にする化合物、例えば、酸化再生セルロース、ヒアルロン酸等、および免疫系を抑える化合物または作用薬(例えば、免疫抑制剤)を含んでもよい。
【0065】
本発明の絆創膏と一緒に使用するための適切なエフェクターは、また、成長因子源、例えば、血小板等を含むことができる。血小板は血液中で普通に見出され、止血および創傷治癒の役割を演じる。血塊形成中に、血小板は活性化して、成長因子、例えば、PDGF、TGF−β、VEGF、およびIGF等を放出する。血小板は、遠心分離等の技術を使用して血液から分離することができる。血小板豊富な血漿が活性化剤と一緒になると、血小板が創生される。活性化剤は、トロンビン、アデノシンジホスフェート(ADP)、コラーゲン、エピネフリン、アラキドン酸、リストセチン、およびこれらの組合せであることができるがこれらに限定されない。
【0066】
本発明で有用な活性化剤は、治癒過程に貢献する副次的治療作用を有してもよい。例えば、リストセチンは、血小板凝集を刺激するだけでなく、また、抗生物質でもある。それは、細菌細胞壁形成を阻害することにより作用し、活発に成長する細菌に対して最も有効である。任意の侵襲性手順は感染を誘発する可能性を有するので、リストセチンを含有することの利益は2倍である:その存在は血塊形成を刺激し、一方で、また、感染に対して予防作用を与える。病院経由の感染を引き起こすことが知られているブドウ球菌等のグラム陽性菌は、リストセチンでの治療の影響を受け易い。
【0067】
生物学的添加剤は、これらがシアノアクリレートモノマーの重合を引き起こさないものとして、液体止血性接着組成物に溶解することができるか相溶性であることができ、または懸濁されたままであることができる。
【0068】
<その他の用途>
本発明の液体止血性接着コーティングは、ヒトまたは動物の体の治療以外の用途に使用することができる。例えば、コーティングは、膜として、またはこの一部として使用することができ、そのまま、導電性添加剤または膜の有効性を高めるためのその他の添加剤を含むことができる。殺ウドンコ病菌剤を導入するコーティングは、タイル表面の漆喰を保護するのに使用することができる。導入することが望ましいとされるその他のタイプの活性剤としては、香料、植物成長調整剤、植物殺虫剤、UVおよびIR吸収剤等が挙げられる。本発明の液体接着コーティングは、また、潜在的指紋残留物またはその他の残留物を検出するために使用することもできる。
【0069】
以下の実施例は例示のために提供されるものであって、限定のためではない。特定の実施例が提供されたが、上記の説明は例示であって限定的なものではない。先に説明した実施形態の任意の1つまたは複数の特徴は、本発明の任意のその他の実施形態の1つまたは複数の特徴と任意の方法で組み合わせることができる。更に、本発明の多数の変形は、本明細書の検討に基づいて当業者には明らかとなる。本発明の範囲は、したがって、例示された実施形態の参照によって決定されるのではなく、代わって、均等物の全ての範囲と一緒に添付の特許請求の範囲の参照により決定されるべきである。
【0070】
本明細書で引用された全ての刊行物および特許文献は、それぞれの個々の刊行物または特許文献が、そのように個々に表示されているのと同じ範囲で、全ての目的に対して適切な部分で援用される。本明細書中の種々の参考文献の引用により、本願出願人は、任意の特定の参照が本発明の先行技術であることを認めるものではない。
【0071】
シロキシシランポリマーの調製は以下で示される:
ポリ(3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)−CO−メチルメタクリレート−CO−イソオクチルアクリレート)(PSS1)−このターポリマーは、米国特許第5103812号の実施例26で示される方法により得た。
【0072】
ポリ(3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)−CO−メチルメタクリレート)(PSS2)−このコポリマーは、6gの酢酸エチル、1.8g(0.004モル)のTRIS、0.2g(0.002モル)のメチルメタクリレート、および0.04gの2,2′−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)を入れた25mlの反応容器においてそのモノマー成分の重合により得た。重合は、72〜75℃で21時間行った。ポリマーをメタノール中で沈殿させ、50℃で乾燥した。
【0073】
ポリ(3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)−CO−n−ブチルメタクリレート)(PSS3)。このコポリマーは、6gの酢酸エチル、1.8g(0.004モル)のTRIS、0.2g(0.0014モル)のn−ブチルメタクリレートおよび0.04gの2,2″−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)を入れた25mlの反応容器においてそのモノマー成分の重合により得た。重合は、72〜75℃で21時間行った。ポリマーをメタノール中で沈殿させ、50℃で乾燥した。
【0074】
<実施例1>
ジシロキサン液体で試験したブチルシアノアクリレート
n−ブチルシアノアクリレート(BCA)を、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)中で、約1:1の容量比で混合した。この組成物をピペットでガラス板上に載せ、別のガラス板でカバーした場合、シアノアクリレートは、ポリマーの形成および接着により確認された通りに最初に塗布されたガラス板上で重合した。HMDSを含有する重合したシアノアクリレートは、2番目のカバーガラス板に対する十分な接着を与えず、2つのガラス板は引張ると簡単に離れた。
【0075】
更に、シアノアクリレートモノマーの重合による熱生成の時間間隔を見極めるために溶媒濃度を関数として重合速度についての試験を行った。混合物は、ヘキサメチルジシロキサンの存在および不存在下でn−ブチルシアノアクリレートを含んでいた。シアノアクリレートモノマーの存在下で熱散逸剤を利用した米国特許第6010714号によれば、熱散逸剤は重合速度に影響を及ぼさなかった。対照として、HMDSを伴わないBCAを含むガラス板を利用すると、このニート系の重合は25秒で生起した。HMDS中の20%BCA溶液を検討した場合、対照と同じ量のBCAを利用すると、重合は40秒で生起し、60%まで重合速度を下げた。更に、HMDS中のBCAの5%溶液を検討した場合、重合は89秒で生起し、この溶液は、256%まで重合速度を下げた。この様に、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性のヘキサメチルジシロキサン溶媒の添加は、シアノアクリレートの重合を、米国特許第6010714号で報告されている重合よりも遅い速度で生起する原因となり、重合熱をより均等に散逸させることを可能にする。また、低い臨界表面張力を有するHMDS溶媒の添加は、BCA混合物がガラス表面上を容易に流動することを可能にするが、BCAだけのものは、その高い臨界表面張力の故に、玉に成り易かった。HMDSの使用は、したがって創傷部位の急速な被覆を促進する。
【0076】
<実施例2〜6>
ジシロキサン液体で試験したブチルシアノアクリレート
n−ブチルシアノアクリレートを、種々の重量濃度で、ヘキサメチルジシロキサン中で混合した。止血能力は、ピペットで5μlの豚の血液を顕微鏡スライド上に載せ、直ちに、5μlの液体止血性組成物を血液の小滴の一番上にピペットで直接載せて試験した。止血試験に加えて、組成物の存在下で一緒に押圧される2つの表面の接着を試験した。ガラス板上に5μlの組成物をピペットで載せ、約10秒間、乾燥/反応させ、次いで、別のガラス板を、被覆された最初のガラス板上に押圧した。約1分後に、力をガラス板に掛けてこれらを引き離した。
【0077】
BCA濃度30%以下の実施例2および3では、BCAはその塗布したガラス板表面に十分に接着したが、最初に塗布したガラス板表面上に押圧した2番目のガラス板表面には接着しなかった。実施例4〜6は、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で非反応性の液体の不適切な量、即ち、50%以上のBCAの濃度が存在する場合は、2つの表面を互いに接着させるBCAの本来の能力を示す。
【0078】
【表1】

<実施例7〜11>
オクチルシアノアクリレート/ポリシロキシシラン溶液(SOL1)の試験
2−オクチルシアノアクリレート(OCA)を、ポリ(3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン−CO−メチルメタクリレート−CO−イソオクチルアクリレート)(PSS1)、ポリフェニルメチルシロキサンおよびヘキサメチルジシロキサンを含む溶液と混合した。この溶液を、以下の参照ではSOL1(溶液1)と略称する。得られた液体接着剤を、テフロン(商標)シート上で注型して、以下の表で示される様なフィルム形成性を評価した。
【0079】
【表2】

1:1より高いポリシロキシシラン対2−オクチルシアノアクリレートの濃度では(実施例7と実施例9および10との比較)、テフロン(商標)上での溶液のフィルム形成性は良好である。乾燥した溶液は基体に適合し(conform)、連続フィルムを形成する。実施例11は溶液1だけのコーティングを示す。
【0080】
<実施例12〜16>
ブチルシアノアクリレート/ポリシロキシシラン溶液(SOL1)の試験
n−ブチルシアノアクリレート(BCA)を、ポリシロキシシラン−CO−メチルメタクリレート−CO−イソオクチルアクリレートターポリマー溶液(SOL1)中で、固形分パーセントを基準にして4つの異なる重量割合で混合した。次いで、これらの液体接着組成物を試験した。
【0081】
止血能力は、ピペットで5μlの牛の血液を顕微鏡スライド上に載せ、直ちに、15μlの液体止血性組成物を血液の小滴の一番上にピペットで直接載せて試験した。「あり」の結果は、血液小滴が、添加されたコーティングの存在下で凝固したことを示す。
【0082】
皮膚への接着は、10μlの液体接着組成物を、青色食品着色染料で前以て染色したヒトの前腕上にピペットで載せて試験した。青色食品着色染料は水溶性であり、したがって、水(シャワー、皿洗い器等)に曝して簡単に洗い流される。乾燥した青色食品着色の一番上に塗布された液体接着組成物は、青色食品着色の洗い流しを妨げる。液体接着組成物が前腕上に最早存在しないと、青色食品着色は簡単に洗い流される。液体接着剤の接着は、青色食品着色の存在により確認した。
【0083】
【表3】

この一連の試験で、実施例15は、4日の前腕接着と瞬間血液凝固を伴う良好な結果を与えた。実施例13および14は、また、穏やかな止血要件を有する液体接着絆創膏として有用である。n−ブチルシアノアクリレートだけでは(実施例16)、著しく燃えているように爆発的に血液を凝固させ、ヒトの前腕皮膚上に2日間だけそのままで残ったことに留意されたい。BCAを伴わない溶液1には止血は観察されなかった。
【0084】
<実施例17〜20>
経年劣化の検討
n−ブチルシアノアクリレートまたは2−オクチルシアノアクリレートを、ポリシロキシシラン溶液(SOL1)中で混合し、シアノアクリレートと非反応性であった容器中に静置した。シアノアクリレート(CA)モノマー対ポリシロキシシランの種々の重量割合を、シアノアクリレートモノマーの長期相溶性および安定性に対して評価した。混合溶液を部屋の状態(20℃)で長期間保持し、それぞれの溶液から10μlの1滴をピペットで採取し、1滴の牛の血液上に載せ、1日、2ヵ月、および5ヵ月で試験した。止血能力は、混合溶液との接触で牛の血液が凝固したかどうかで確認した。皮膚接着は、20℃で5ヵ月間貯蔵した混合溶液のそれぞれから15μlをピペットで採取し、ヒトの前腕上に載せて確認した。
【0085】
【表4】

実施例17および18は、連続止血能力で観察される様に経年劣化の少なくとも5ヵ月間は安定であり、皮膚接着は、7日間と高い持続期間で残存した。
【0086】
<実施例21〜25>
MVTR試験
n−ブチルシアノアクリレートまたは2−オクチルシアノアクリレートを、ポリシロキシシラン溶液(SOL1)中で混合し、水蒸気透過速度(MVTR)およびダートピックアップを試験した。
【0087】
水蒸気透過速度は、3日間にわたって、厚さ0.0381mm〜0.6858mm(1.5〜2.7ミル)のフィルムを通過した水蒸気の割合で決定した。
ダートピックアップは、0.25μlの液体接着剤をピペットでガラス板上に載せ、接着剤を乾燥し、次いで、ガラス板を表土の中に浸漬し、それを前後に数回振って決定した。次いで、汚染物の粒子の付き方を見るため、ガラス板を顕微鏡下で検査した。
【0088】
破裂強度は、厚さ0.0381mm〜0.0762mm(1.5〜3ミル)の乾燥フィルムを製造するためにMason jar bandにおいて液体接着剤のフィルムを注型することにより決定した。フィルムが裂けるか破壊するまでそれぞれのフィルムの一番上に錘を配置した。破裂に必要な錘荷重が高ければ高い程、フィルムの粘着強度は高くなる。破裂強度(粘着強度)は、少なくとも部分的に、相互貫入ポリマー・ネットワークの形成により、BCAのポリシロキシシランへの添加で50%増加した(実施例21および22と実施例25との比較)。
【0089】
【表5】

ダートピックアップは、BCAのポリシロキシシラン溶液(SOL1)への添加により実質的に減少される(実施例21および25)。実施例21〜24の水蒸気透過速度は(MVTR)は、ポリシロキシシランだけの実施例25と同じ範囲に留まる。ポリシロキシシラン(PSS1)は、その良好な水蒸気透過速度、したがって、液体接着絆創膏としてのその受容性が知られている。その様な製品は、3Mコンシューマー・ヘルス・ケア社(3M Consumer Health Care)[米国ミネソタ州、セントポール(St.Paul)、55144−1000所在]からNexcare Spray Liquid Bandageとして市販されている。したがって、MVTRが、本発明のシアノアクリレート含有組成物で高い値に留まるということは肯定的な結果である。
【0090】
<実施例26〜28>
止血および接着試験
組成物の存在下で一緒に押圧される2つの表面の接着は、次の方法で試験した。15μlの組成物をピペットでガラス板上に載せ、約10秒間、乾燥/反応させ、次いで、別のガラス板を被覆された最初のガラス板上に押圧した。約5分後に、ガラス板に力を掛けてそれらを引き離した。5μlの組成物を試験した以外は、同じ手順をヒトの指で使用した。止血能力試験は、実施例17〜20での試験と同様に行った。
【0091】
実施例27および28は、刺す様な痛みを与えず、ヒリヒリせず、揮発性で疎水性の液体であるHMDSを含み、したがって、2つの表面の接着を妨げる。これに対して、実施例26は揮発性疎水性液体を含まず、2つ表面の接着が起こる。
【0092】
【表6】

<実施例29〜33>
止血および接着試験
n−ブチルシアノアクリレートをポリシロキシシラン溶液(SOL1)中で混合し、ポリシロキシシラン溶液に関して多量のBCAを含む組成物の広い範囲で止血能力および接着について更に試験した。止血能力および2つの表面に対する接着試験は、実施例17〜20および実施例26〜28と同様に行った。
【0093】
【表7】

40%BCA以下を含む組成物(実施例29〜32)は、良好な血液凝固を与え、その一方で、互いのガラスまたはヒトの指の接着を阻害した。高いBCA添加量では、爆発的血液凝固が起こり、ガラス表面は一緒に接着し(例えば、実施例33等)、組成物にうっかり触った場合にはヒトの皮膚および組織表面もまた一緒に接着することを暗に示している。
【0094】
<実施例34〜38>
シアノアクリレート/ポリシロキシシラン溶液(SOL2)の試験
n−ブチルシアノアクリレート(BCA)を、種々の割合で、ポリ(3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン−CO−メチルメタクリレート)(PSS2)およびヘキサメチルジシロキサンを含む溶液と混合した。このポリシロキシシラン溶液を以下の参照ではSOL2(溶液2)と略称する。この組成物を次の通り試験した。
【0095】
粘着は、人差し指でガラス板上の乾燥ポリマー・コーティング上を軽くこすり、0〜5(0=ツルツル、1=滑らか、2=僅かに抵抗がある滑らかさ、3=抵抗がある、4=僅かに粘性のある抵抗、5=粘り気がある)の尺度で採点して決定した。
【0096】
止血能力は、顕微鏡スライド上に5μlの牛の血液をピペットで載せ、直ちに、5μlの液体止血性接着組成物を血液の小滴の一番上にピペットで直接載せて試験した。「あり」の結果は、血液小滴が、添加された止血性組成物の存在下で凝固したことを示す。
【0097】
皮膚への接着は、10μlの液体止血性接着組成物を、黄色食品着色染料で前以て染色したヒトの前腕上にピペットで載せて試験した。黄色食品着色染料は水溶性であり、したがって、水(シャワー、皿洗い器等)に曝して簡単に洗い流される。乾燥した黄色食品着色の一番上に塗布された液体止血性接着組成物は、黄色食品着色の洗い流しを妨げる。液体止血性接着組成物が前腕上に最早存在しないと、黄色食品着色は簡単に洗い流される。止血性組成物の接着は、黄色食品着色染料の存在により確認した。
【0098】
【表8】

この一連の試験で、実施例35〜38は、3日の前腕接着(実施例38)、低い粘着および瞬間血液凝固を伴う良好な結果を与えた。実施例34は、また、穏やかな止血要件を有する液体接着絆創膏として有用である。
【0099】
<実施例39〜43>
シアノアクリレート/ポリシロキシシラン溶液(SOL3)の試験
n−ブチルシアノアクリレート(BCA)を、ポリ(3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン−CO−n−ブチルメタクリレート)(PSS3)およびヘキサメチルジシロキサンを含む溶液と混合した。このポリシロキシシラン溶液を以下の参照ではSOL3(溶液3)と略称する。この組成物を、実施例34〜38と同様に試験した。
【0100】
【表9】

この一連の試験で、実施例39〜43は、2日の前腕接着(実施例43)、低い粘着および瞬間血液凝固を伴う妥当な結果を与えた。
【0101】
<実施例44〜47>
炭化水素液体で試験したブチルシアノアクリレート
n−ブチルシアノアクリレート(BCA)を、揮発性、非反応性炭化水素の2,2,4−トリメチルペンタン(TMP)中で混合し、液体接着組成物を形成した。次いで、これらの液体接着組成物を試験した。止血能力は、顕微鏡スライド上に5μlの豚の血液をピペットで載せ、直ちに、5μlの液体接着組成物を血液の小滴の一番上にピペットで直接載せて試験した。
【0102】
止血試験に加えて、組成物の存在下で一緒に押圧される2つの表面の接着を試験した。5μlの組成物をガラス板上にピペットで載せ、約10秒間、乾燥/反応させ、次いで、別のガラス板を、被覆された最初のガラス板上に押圧した。約1分後に、力をガラス板に掛けてこれらを引き離した。
【0103】
データは、50%より上のシアノアクリレート濃度では(実施例46および47)、導入された揮発性で非反応性の液体の明確な利益が弱められることを示唆する。TMP中の50%BCA濃度より下では(実施例44および45)、液体接着組成物が塗布される場合、所望の止血結果は生じるが、2つのガラス表面は互いに接着しない。
【0104】
【表10】

<実施例48〜50>
2,2,4−トリメチルペンタン中でのブチルシアノアクリレート/ポリシロキシシランの試験
ブチルシアノアクリレート(BCA)を、ポリ(3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン−CO−メチルメタクリレート−CO−イソオクチルアクリレート)(PSS1)および2,2,4−トリメチルペンタン(TMP)を含む溶液と、種々の濃度で混合した。ポリマーを、10重量%固形分で2,2,4−トリメチルペンタン溶媒に溶解した。止血能力および2つの表面に対する接着試験を、実施例17〜20および実施例26〜28と同様に行った。
【0105】
【表11】

この揮発性溶媒では、ポリシロキシシラン溶液中の35%未満のBCAは、爆発的ではない凝固(実施例48および49)を与えるのに必要である。27%より下は、また、2つの表面の非接着を保つために必要である(実施例48)。
【0106】
<その他の実施形態>
上記の実施例は本発明の特定の実施形態の代表である。しかしながら、多数の変形が可能である。全ての形態において、本発明の液体止血性コーティング材料は、反応性シアノアクリレートモノマーおよび揮発性で非反応性の液体からなる溶媒系からなり、これは更に、シロキシシラン官能基を含むポリマー成分を含むことができる。全ての場合において、本発明は、不活性揮発性溶媒中の液体モノマーシアノアクリレートまたはポリシロキシシランを伴うまたは伴わない液体モノマーシアノアクリレートを、血で染まっていてもよい表面に塗布し、溶媒系を揮発させ、同時に、シアノアクリレートを重合して、それを塗布される表面に付着させて表面上に止血性コーティングを形成する方法を提供する。ポリシロキシシランの存在で、相互貫入ネットワークが恐らく形成され、強力な粘着フィルムを生成する。これらの系では、シアノアクリレートは、塗布される表面に付着して止血性機能を与え、コーティング組成物からの揮発性溶媒の蒸発が、第2表面へのシアノアクリレートの接着を妨げる。
【0107】
<参考文献>
1999年10月29日出願した米国特許出願第09/430289号
米国特許第3940362号明細書 Overhults
米国特許第4313865号明細書 Teramoto他
米国特許第4560723号明細書 Millet他
米国特許第4987893号明細書 Salamone他
米国特許第5103 812号明細書 Salamone他
米国特許第5140084号明細書 Mikuni他
米国特許第5214093号明細書 Nell他
米国特許第5259835号明細書 Clark他
米国特許第5328687号明細書 Leung他
米国特許第5928611号明細書 Leung他
米国特許第5981621号明細書 Clark他
米国特許第6010714号明細書 Leung他
米国特許第6143352号明細書 Clark他
米国特許第6143805号明細書 Hickey他
米国特許第6183593号明細書 Narang他
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米国特許第6358503号明細書 Gerrish
米国特許第6383502号明細書 Dunshee他
米国特許第6455064号明細書 Narang他
米国特許第6479725号明細書 Brothers
米国特許第6565840号明細書 Clark他
米国特許第6746667号明細書 Badejo他
S.C.Davis,W.H.Eaglstein,A.L.Cazzaniga,P.M.Mertz,Dermatologic Surgery,2001,27,pp783−788.
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AJ.Singer,L.Berrutti,S.A.McClain,Wound Repair and Regeneration,1999,7,pp.356−361.
AJ.Singer,M.Nable,P.Cameau,D.D.Singer,S.A.McClain,Wound Repair and Regeneration,2003,11,pp.181−187.
C.Vauthier,C.Dubemet,E.Fattal,H.Pinto−Alphandary,P.Couvreur,Advanced Drug Delivery Reviews,55,Issue 4,pp519−548.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性シアノアクリレートモノマーと、
4.9〜12.5(cal/cm1/2の溶解度パラメーターを有する揮発性の液体と、
合成ゴム、天然ゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択された重合体と
を備える生物学的コーティング組成物であって、
当該生物学的コーティング組成物は、生物学的表面に塗布されたときに、接着性で適合性のポリマー・コーティングを形成するものであり、前記揮発性の液体は、室温又は体温で揮発するものである、生物学的コーティング組成物。
【請求項2】
前記重合体がジエン、スチレン、アクリロニトリル、およびこれらの混合物からなる群から選択されたゴムを備える請求項1に記載の生物学的コーティング組成物。
【請求項3】
前記重合性シアノアクリレートモノマーが0.5%〜50%の量で存在する、請求項1又は2に記載の生物学的コーティング組成物。
【請求項4】
前記揮発性の液体が10重量%〜99.9重量%の量で存在する、請求項3に記載の生物学的コーティング組成物。
【請求項5】
前記揮発性の液体が揮発性直鎖および環状シロキサン、揮発性ポリジメチルシロキサン、イソオクタン、オクタン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたものである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の生物学的コーティング組成物。
【請求項6】
前記揮発性の液体がヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたものである、請求項5に記載の生物学的コーティング組成物。

【公開番号】特開2012−232201(P2012−232201A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194979(P2012−194979)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2008−527144(P2008−527144)の分割
【原出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(508170368)ロチャル インダストリーズ エルエルピー (2)
【氏名又は名称原語表記】ROCHAL INDUSTRIES,LLP
【Fターム(参考)】