説明

生物学的サンプル中のプロテアーゼの検出のための組成物及びその使用方法

【課題】分子のコンホメーションの変化を検出するための新規な方法の提供。
【解決手段】第1螢光団及び第2螢光団をそれに結合している第1分子を用意し、ここで前記第1螢光団及び前記第2螢光団は同じ種の螢光団であり、そして前記螢光団が、同じ位置で前記分子に結合される単一の螢光団の螢光強度に比較して、前記螢光団の個々の螢光強度を検出できるほどに低めるために前記螢光団の相互作用のための十分な距離で並置され;そして前記螢光団間の空間が、前記分子のコンホメーションの前記変化により広くされるにつれて、螢光の変化を検出する;ことを含んで成る方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螢光レベルを活性プロテアーゼの存在下で高める新規種類の螢光発生組成物に関する。それらの螢光発生プロテアーゼインジケーターは典型的には可視波長で螢光を発し、そしてその故に、生物学的サンプル中のプロテアーゼ活性の検出及び位置決定のためにひじょうに有用である。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼは、ペプチド結合を触媒的に加水分解する多くの種類のタンパク質分解酵素を意味する。プロテアーゼの主なグループは、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ及びアスパラギン酸プロテアーゼを包含する。プロテアーゼ、特にセリンプロテアーゼは、多くの生理学的過程、たとえば血液凝固、受精、炎症、ホルモン生成、免疫応答及び繊維素溶解に関連している。
【0003】
多くの病状は、特定のプロテアーゼ及びそれらのインヒビターの活性の変更により引き起こされ、そしてその変更により特徴づけられ得る。たとえば、気腫、関節炎、血栓症、癌転移及びいくつかの形の血友病は、セリンプロテアーゼ活性の調節の欠陥に起因する(たとえば、Textbook of Biochemistry with Clinical Correlations, John Wiley and Sons, Inc. N. Y. (1993) を参照のこと)。ウイルス感染の場合、感染された細胞中にウイルスプロテアーゼの存在が同定されている。このようなウイルスプロテアーゼには、例えばAIDSに関連するHIV プロテアーゼ及びC型肝炎に関連するNS3プロテアーゼが包含される。これらのウイルスプロテアーゼはウイルスのライフサイクルにおいて重要な役割を演ずる。
【0004】
プロテアーゼは癌転移に関連すると考えられて来た。プロテアーゼウロキナーゼの高められた合成は、多くの癌における転移能力の上昇と関連付けれて来た。ウロキナーゼは、細胞外空間に遍在するプラスミノーゲンからのプラスミンを活性化し、そしてその活性化は転移する腫瘍細胞が侵入する細胞外マトリックスにおけるタンパク質の分解を引き起こすことができる。プラスミンはまた、コラゲナーゼを活性化することができ、従って、毛細管及びリンパ系を取り囲む基礎膜におけるコラーゲンの分解を促進し、それにより、標的組織中への腫瘍細胞の侵入を可能にする(Dano、など、Adv. Cancer. Res., 44 : 139 (1985)) 。
【0005】
特定のプロテアーゼの活性の変化の明確な測定は、根底にある病状の処置及び管理において臨床的に有意義である。しかしながら、プロテアーゼは容易にはアッセイすることができない。典型的なアプローチは、プロテアーゼと結合する抗体を用いるELISA 、又は種々のラベルされた基質を用いるRIA を包含する。それらの天然の基質によるアッセイは、実施するのに困難であり、且つ高価である。現在入手できる合成基質によるアッセイは、高価で、低感受であり、且つ非選択性である。さらに、多くの“インジケーター”基質は、プロテアーゼの自己破壊を一部もたらす多量のプロテアーゼを必要とする。
【0006】
プロテアーゼ検出への最近のアプローチは、P1’位置(切断できるペプチド結合のカルボキシル側のアミノ酸位置)に位置する離れた色原体又は螢光発生体の切断誘発される分光学的変化に依存する(たとえば、アメリカ特許第 4,557,862号及び第 4,648,893号を参照のこと)。しかしながら、多くのプロテアーゼは、プロテアーゼの認識のために切断されやすい結合のいずれかの側に2又は3個のアミノ酸残基を必要とし(特定のプロテアーゼは6個以下のアミノ酸残基を必要とするであろう)、そして従って、それらのアプローチはプロテアーゼ特異性を欠いている。
【0007】
しかしながら、最近、螢光発生インジケーター組成物が開発されており、ここでは“ドナー”螢光団は、HIV プロテアーゼのための結合部位であるペプチド(7個のアミノ酸)及びそのペプチドに螢光団及び発色団を連結するリンカーを含む短い橋により“レセプター”発色団に連結されている(Wangなど、Tetra. Lens. 45 : 6493〜6496 (1990))。ドナー螢光団のシグナルは、共鳴エネルギートランスファー(RET) を包含すると思われる工程を通してレセプター螢光団により消光される。ペプチドの切断は、螢光団及び発色団の分離、すなわち前記消光の除去をもたらし、そして続くシグナルがドナー螢光団から測定された。
【0008】
不運なことには、ドナーとレセプターとの間の橋の設計は、アッセイの感度を制限する比較的無能な消光を導いた。さらに、発色団は、紫外線範囲において強く光を吸収する分子を典型的には含む生物学的サンプルにおいて検出のための感度を減じる紫外線範囲での光を吸収した。
【0009】
切断される場合、高いシグナルレベル、及び損なわれていない場合、非常に近いシグナルレベルを示し、高度のプロテアーゼ特異性を示し、そして可視範囲において独占的に作動し、それによりそれらを生物学的サンプルへの使用のために適切な螢光発生プロテアーゼインジケーターが所望される。本発明の組成物は、それらの及び他の利点を提供する。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、特定のプロテアーゼの存在下で、その螢光を高める新規の試薬を提供する。それらの螢光発生プロテアーゼインジケーターは、それらがプロテアーゼにより消化される場合、可視波長で高い強度の螢光シグナルを供給する。可視波長におけるそれらの高い螢光シグナルのために、それらのプロテアーゼインジケーターは、生物学的サンプル、特に凍結された組織断片におけるプロテアーゼ活性の検出のために特に適切である。測定は組織サンプルのためには螢光顕微鏡を用いて、そして細胞懸濁サンプルのためにはフローサイトメーターを用いて行うことができる。
【0011】
本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターは、プロテアーゼの活性の検出のために適切な組成物である。それらの組成物は、下記一般式:
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、Pは2〜約15個、好ましくは2個〜約12個、好ましくは2個〜約10個、好ましくは2個〜約8個、2個〜約6個、又は2個〜約4個のアミノ酸から成る、プロテアーゼのためのプロテアーゼ結合部位を含んで成るペプチドであり;F1 及びF2 は螢光団であり;S1 及びS2 は長さ1〜約50個の範囲のアミノ酸のペプチドスペーサーであり;n及びkは独立して0又は1であり;そしてC1 及びC2 は長さ1〜約8個より好ましくは1〜約6個の範囲のアミノ酸のペプチドを含んで成るコンホメーション決定領域である〕を有する。
【0014】
コンホメーション決定領域はそれぞれ、組成物中に曲げ(ベンド;bend) を導入し、あるいはペプチド主鎖の自由度を制限し、それにより約 100Å以下の分離を伴って螢光団を並置する。スペーサー(S1 及びS2 )のいづれかが存在する場合、それらは末端アミノ酸のα炭素原子に結合されるペプチドによりプロテアーゼ結合部位に連結される。従って、nが1である場合、S1 はC1 の末端αアミノ基を通して、ペプチド結合によりC1 に連結され、そしてkが1である場合、S2 はC2 の末端αカルボキシル基を通してペプチド結合によりC2 に連結される。
【0015】
プロテアーゼ結合部位を含んで成るアミノ酸残基は、従来、特定のプロテアーゼにより加水分解されるペプチド結合に対して番号付けされている。従って、切断されたペプチド結合のアミノ側上の第1のアミノ酸残基はP1 と命名され、そして切断されるペプチド結合のカルボキシル側上の第1のアミノ酸残基はP1'と命名される。残基の番号付けは、加水分解されたペプチド結合からの距離が離れるほど高まって行く。従って、4のアミノ酸プロテアーゼ結合領域は、
2−P1−P1’−P2'
と命名されたアミノ酸を含み、そしてプロテアーゼはP1 とP1'との間の結合領域を切断する。
【0016】
特に好ましい態様において、本発明の螢光源組成物は、本明細書に記載する式(II)及び式(V)の組成物である。好ましい螢光団は、決定領域を有し、そして場合によっては本明細書に記載するようにスペーサーを有する。最も好ましい態様において、組成物は単一種の螢光団を有する。これらの「ホモラベル」(homolabel) された組成物のために好ましい螢光団には、H−型ダイマーを形成する螢光団が含まれる。特に好ましい螢光団は約 315nmと約 700nmの間の励起波長を有する。
【0017】
もう一つの態様において、本発明はプロテアーゼの活性を検出する方法を提供する。この方法は、プロテアーゼを、本明細書に記載する1又は複数のプロテアーゼインジケーターと接触せしめることを含む。特に好ましい態様において、「接触」は組織切片において、あるいは組織、血液、尿、唾液又は他の生物流体、リンパ、生検体から成る群から選択された培養物、又は細胞懸濁液においてである。検出方法には、螢光顕微鏡法、螢光マイクロプレートリーダー、フローサイトメトリー、フルオロメトリー、吸光分光法から成る群から選択される方法が含まれる。
【0018】
組成物において、F1 が5−及び/又は6−カルボキシテトラメチルローダミンであることができ、そしてF2 はローダミンXアセタミドであることができる。これらの組成物は、膜又はリポゾームのごとき固体支持体又は液体に接合させてもよい。
【0019】
もう1つの態様においては、上記組成物のいずれかが、サンプル中のプロテアーゼ活性を検出するための方法に使用され得る。サンプルは、たとえば研究又は産業において使用される“貯蔵(stock)”プロテアーゼのサンプルであり得、又はそれは生物学的サンプルでもあり得る。従って、本発明は、サンプルと上記組成物のいずれかとを接触せしめ、そして次に、螢光の上昇がプロテアーゼ活性を示す螢光発生組成物の螢光の変化を検出することによってサンプル中のプロテアーゼ活性を検出するための方法を提供する。前記サンプルは好ましくは、生物学的流体、たとえば唾液又は血液を包含する生物学的サンプル、組織サンプル、たとえば生検又は断片、及び生検としての又は培養物における細胞サンプルである。特に好ましいものは、組織断片、培養された細胞、培養された組織及び同様のものである。
【0020】
本発明はまた、分子のコンホメーションの変化を検出する方法を提供する。この方法は、(1)第1の螢光団及び第2螢光団が結合されている第1の分子を用意し、ここで前記第1の螢光団及び第2の螢光団は同種の螢光団であり、そしてこれらの螢光団は、前記分子の同じ位置に結合された単一の螢光団の螢光強度に比べて、前記螢光団のそれぞれの螢光強度が検出可能に低下するのに十分な距離で並置されており;そして(2)前記分子のコンホメーションの変化により前記螢光団間の距離が増加する際の螢光の変化を検出する、ことを含んで成る。あるいは、螢光団の相対的配向(orientation) が分子のコンホメーションの変化により変化する際に、螢光の変化を検出することができる。好ましい螢光団は、コンホメーションの変化の前にH−型ダイマーを形成することができるものである。
【0021】
好ましい態様において、螢光団は、コンホメーションの変化の前に約10オングストローム未満の相互距離で置換される。特に好ましい螢光団には、本明細書に記載する螢光団が含まれる。1つの態様において、コンホメーションの変化は分子がそれぞれ1つの螢光団を有する2つの異る分子に開裂することである。
【0022】
他の態様において、コンホメーションの変化は、前記第1の分子への標的分子の結合により惹起される。1つの態様において、第1の分子は核酸であり、そしてコンホメーションの変化は前記核酸の第2の核酸へのハイブリダイゼーションにより、又は前記核酸の転写因子への結合により生ずる。他の態様において、前記第1の分子はポリサッカライドであり、そしてコンホメーションの変化はオリゴサッカライド結合分子、例えばレクチン結合蛋白質の結合により生ずる。この方法のための好ましい「主鎖」(backbone) 分子には、核酸、ポリサッカライド、ペプチド、脂質、蛋白質、リン脂質、糖脂質、糖蛋白質、ステロイド、又はpH感受性もしくはチオール感受性結合を含有するポリマー(螢光団結合部位がこの結合を挟む)が包含される。
【0023】
主鎖分子が核酸である場合、コンホメーションの変化はこの核酸と他の核酸とのハイブリダイゼーションにより、又は核酸の開裂(例えば、制限酵素もしくはリボザイムによる)により生成され得る。さらに、コンホメーションの変化は、標識されたオリゴヌクレオチドとヌクレオチド結合蛋白質との間の複合体の形成により生成することができる。主鎖分子がペプチド、ポリサッカライド又は脂質である場合、コンホメーションの変化は主鎖分子の開裂により、又は主鎖分子とその結合分子、例えば抗体、受容体、糖結合蛋白質又は脂質結合蛋白質との間の複合体形成により生成することができる。
【0024】
本発明はまた、組成物のコンホメーションの変化の検出のための螢光源組成物を提供する。1つの態様において、第1の螢光団及び第2の螢光団が結合した分子を含んで成る螢光源組成物が提供され、ここで前記第1の螢光団及び第2の螢光団は同じ種の螢光団であり、そしてこれらの螢光団は、前記の分子の同じ部位に結合した各個々の螢光団の螢光強度に比べて、前記螢光団の相互作用が該螢光団のそれぞれの螢光強度を検出可能に低下せしめるのに十分な距離で並置される。螢光団は好ましくはH−型ダイマーを形成する螢光団である。
【0025】
さらに他の態様において、本発明は、細胞に分子を結合するための方法を提供する。この方法は、少なくとも2個の螢光団分子及び疎水性基が結合した分子を用意し;そして該細胞を該分子に接触せしめ、これにより分子を細胞に入れることを含んで成る。1つの態様において、この方法は、少なくとも2個の大きく平らな疎水性の螢光団及び疎水性基が結合された分子を用意することを含む。好ましい分子には、ポリペプチド、核酸、脂質、オリゴサッカライドが含まれる。適当な螢光団及び疎水性基を本明細書に記載する。好ましい細胞には哺乳類細胞が含まれる。
【0026】
定義
用語“プロテアーゼ結合部位”とは、特異的に認識され、そしてプロテアーゼにより切断されるアミノ酸配列を意味する。プロテアーゼ結合部位は、プロテアーゼにより加水分解されるペプチド結合を含み、そしてこのペプチド結合により連結されるアミノ酸残基は、その切断部位を形成すると言われる。それらのアミノ酸は、それぞれ、加水分解された結合のアミノ及びカルボキシル側上の残基のためにP1 及びP1'を示す。
【0027】
螢光団は、特徴的な波長で光を吸収し、そして次に最とも典型的には、特徴的な異なった波長で光を再発光する分子である。螢光団は、当業者に良く知られており、そしてローダミン及びローダミン誘導体、フルオレセイン及びフルオレセイン誘導体、クマリン、及びランタニドイオンシリーズとのキレート化剤を包含するが、但しこれらだけには限定されない。螢光団は、光を吸収するが、しかし特徴的には、光を再発光しない発色団とは区別される。
【0028】
“ペプチド”及び“ポリペプチド”は、α炭素原子が、1つのアミノ酸のα炭素カルボニル基と他のアミノ酸のアミノ基との間での縮合反応により形成されるペプチド結合を通して連結されるアミノ酸の鎖である。従って、鎖の一端での末端アミノ酸(アミノ末端)は、遊離アミノ基を有し、そして鎖の他端での末端アミノ酸(カルボキシル末端)は、遊離カルボキシル基を有する。本明細書で用いられる場合、用語“アミノ末端”(N−末端として略語化される)は、ペプチドの末端でのアミノ酸上の遊離α−アミノ基、又はペプチド内のいづれか他の位置でのアミノ酸のα−アミノ基(ペプチド結合に関与する場合、イミノ基)を意味する。同様に、用語“カルボキシ末端”は、ペプチドのカルボキシ末端上の遊離カルボキシル基又はペプチド内のいづれか他の位置でのアミノ酸のカルボキシル基を意味する。ペプチドはまた、ペプチド擬似体、たとえばアミド結合に対してエーテル結合により連結されるアミノ酸をも包含する。
【0029】
本明細書に記載されるポリペプチドは、左側でアミノ末端及び右側でカルボキシル末端により書かれる。本発明のペプチド成分を含んで成るアミノ酸は、プロテアーゼ切断部位に対して番号付けされ、そして番号はその切断部位からカルボキシル及びアミノ方向に距離と共に連続的に多くなる。カルボキシル部位上の残基は、P1'におけるような「 ’」により、又はそれらが位置する領域を示す文字及び下付き文字により示される。その「 ’」は、残基が切断部位のカルボキシル側上に位置することを示す。
【0030】
用語“残基”又は“アミノ酸”とは、本明細書で使用される場合、ペプチド中に組込まれたアミノ酸を意味する。アミノ酸は天然に存在するアミノ酸であり、そして特にことわらない限り、天然に存在するアミノ酸と類似する態様で機能することができる、天然のアミノ酸の既知の類似体を包含することができる。
【0031】
用語“ドメイン”又は“領域”とは、ポリペプチドの特徴的な領域を意味する。ドメインは、特定の構造特徴、たとえばβ回転、αヘリックス、又はβプリーツシートにより、特徴的な構成アミノ酸(たとえば優先的な疎水性又は親水性アミノ酸、又は反復アミノ酸配列)により、又は折りたたまれた立体ポリペプチドの特定領域におけるその局在化により特徴づけられ得る。本明細書で使用される場合、領域又はドメインは、一連の連続したアミノ酸から成る。
【0032】
用語“プロテアーゼ活性”又は“プロテアーゼの活性”とは、プロテアーゼによるペプチドの切断を意味する。プロテアーゼ活性は、多くの小さなペプチドフラグメントへの1又は複数のペプチドの“消化”を包含する。特定のプロテアーゼのプロテアーゼ活性は、特定のプロテアーゼにより特異的に認識される特定のペプチド結合部位での加水分解をもたらすことができる。その特定のプロテアーゼは、特定の末端アミノ酸残基を担持するペプチドフラグメントの生成により特徴づけられ得る。
本明細書において言及されるアミノ酸は、次のような短縮表示により記載される:
【0033】
【表1】

【0034】
本明細書において使用する他の略号には、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)基を示す「Fm」、N(α)−アセチル基を示す「Ac」、「daa 」(「d」がaaのd異性体を示す)、及びベンゾキシカルボニル基を示す「Z」が含まれる。
【0035】
図面の簡単な説明
図1A,1B及び1CはD-NorFES-Aプロテアーゼ阻害剤(F1-Asp-Ala-Ile-Pro-Nle-Ser-Ile-Pro-Cys-F2)(式中、F1 はドナー(D)螢光団(5’−カルボキシテトラメチルローダミン(C2211)であり、そしてF2 はアクセプター(A)螢光団(ローダミンXアセタミド(R492) である)の、エステラーゼ添加前及び後でのHPLC分析を示す。図1A:エラスターゼ添加前のHPLCであって、無傷のインジケーター分子を示す後溶出ピークを示す。図1Bは、エラスターゼ添加後のHPLCであって、両螢光団が吸光する 550nmでの検出を示す。図1Cはエラスターゼ添加後のHPLCであって、F2 が最大吸収する 580nmでの検出を示す。
【0036】
図2A及び2Bは、エラスターゼ添加の前(図2A)及び後(図2B)のD-NorFES-A- 螢光源プロテアーゼインジケーターの発光スペクトルを示す。
図3は、エラスターゼ1ユニットの添加後の時間の関数としての、図1の螢光源プロテアーゼインディケーターの経時的増加を示す。
【0037】
図4A及び4Bは、エラスターゼ1ユニットの添加後の時間の関数としての、ドナー螢光団の螢光強度を示す。図4B:図1の螢光源プロテアーゼインディケーター。図4B:2種類の螢光団のいずれか一方により標識された図1の螢光源プロテアーゼのペプチド主鎖。D-NorFES-Aは、F1-Asp-Ala-Ile-Pro-Nle-Ser-Ile-Pro-Cys-F2 プロテアーゼインディケーター(式中、F1 はドナー螢光団(5’−カルボキシテトラメチルローダミン(C2211)であり、そしてF2 はアクセプター螢光団(ローダミンXアセタミド(R492) である)である。D-NorFES及びA-NorFESのそれぞれは、同じペプチド主鎖を有するが、しかし2つの螢光団の内1方のみを提供する分子を示す。
【0038】
図5は、DEVD, DEVN及びICE 基質の螢光を示す。1μMの基質DEVD(例8の化合物2)、DEVN(例8の化合物3)及びICE(例8の化合物5)を含有する測定緩衝液50mM HEPES緩衝剤、pH7.5 、10%(w/v)シュークロース及び 0.1%(w/v)(HAPS) 100μlに、10μlのジャーカット細胞の細胞溶解物を添加し、そして37℃にて16時間インキュベートした。このジャーカット細胞の溶解物は、抗Fas 抗体により1μg/mlの濃度で6時間刺激された細胞から調製した。基質溶液のみの螢光強度を、図5において、t=0として標示した水平線として示し、そして細胞溶解物と基質溶液との混合物の16時間後の螢光強度を垂直線で示し、そしてt=16時間消化として標示する。
【0039】
10μlの細胞溶解物を50μM ZVAD-FMK(ベンゾキシカルボニル−バラニル−アラニル−アスパルチル−フルオロメチルケトン)と共に37℃にて30分間プレインキュベートし、次に基質溶液に加えた。この混合物の16時間後の螢光強度を、ZVAD-FMK(阻害物質)として標示した棒により示す。最後に、プレインキュベートした細胞溶解物を、ヨードアセトアミド(スルヒドリル基のためのアルキル化剤)及びPMSF(セリンプロテアーゼを阻害するため)と共に、基質溶液に加えた。37℃にて16時間後の螢光強度を、ヨードアセトアミド/PMSFとして標示した棒により示す。DEVN基質は負対照基質(P1 ,Asp 残基がAsn により置換されている)である。
【0040】
CPP32 プロテアーゼは、P1 残基がアスパラギン酸残基であることを必要とする。DEVN基質のグラフの4本の棒(図5)が示すところによれば、活性化された細胞溶解物はDEVD基質を消化する他のいかなるプロテアーゼも含有しない。なぜなら、16時間消化の強度は基質のみと同じだからである。DEVD基質の棒グラフが示すところによれば、活性化された細胞溶解物はCPP32 プロテアーゼを含有し、そしてこのプロテアーゼ活性は既知のCPP32 プロテアーゼ阻害剤であるZVAD-FMKにより阻害される。DEVD基質の消化への他のプロテアーゼの寄与は、ZVAD-FMK棒とヨードアセタミド/PMSF棒の強度の間の差により示される通り、非常に小さい。
【0041】
プロテアーゼ活性の螢光発生インジケーター
本発明は、サンプル中のプロテアーゼ活性を検出するために有用な新規螢光発生分子を提供する。本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターは一般的に、特定のプロテアーゼにより認識され、そして切断されるアミノ酸配列を有するペプチドにより“レセプター”分子に連結される螢光団(ドナー)を包含する。ドナー螢光団は典型的には、異なった(より長い)波長で再発光する特定の波長での入射放射線により励起される。ドナー螢光団がレセプター分子に接近して維持される場合、レセプターは螢光団により再発光される光を吸収し、それにより、ドナー分子の螢光シグナルを消光せしめる。従って、例1に示されるような2種の異なった螢光団による二重ラベルされたペプチドの他に、同じ螢光団により二重ラベルされたペプチドもまた、プロテアーゼインジケーターとしても使用され得る(たとえば例6を参照のこと)。ドナー螢光団及びレセプターを連結する十分に設計されたペプチド(すなわち、本発明のペプチド)の切断は、2つの分子の分離、消光効果の開放及び螢光の上昇をもたらす。
【0042】
1つの基本的な用途において、本発明の螢光発生分子は、実験又は産業使用のための試薬(たとえば緩衝溶液中で)として製造される精製されたプロテアーゼの活性をアッセイするために使用され得る。多くの他の酵素のように、プロテアーゼは、特にそれらがそれらの活性形として貯蔵される場合、時間の経過と共に活性を失なう。さらに、多くのプロテアーゼは、使用する前、酵素の活性形を生成するために、特定のペプチド結合の加水分解によりそれ自体活性化されるべき不活性前駆体形(たとえばチモーゲン)で天然において存在する。活性化の程度は多種であり、そしてプロテアーゼは時間の経過と共に活性を失なうので、プロテアーゼが活性であることを認識し、そしてしばしば、特定の用途においては、特定のプロテアーゼを用いる前、その活性を定量化することがしばしば所望される。
【0043】
プロテアーゼ活性を認識し、そして定量化するためのこれまでのアプローチは、プロテアーゼのアリコートとその基質とを混合し、一定の期間、消化せしめ、そして次に、その消化されたタンパク質の量を、最とも典型的にはHPLCにより測定することを包含する。このアプローチは、時間の浪費であり、高価な試薬を用い、多くの段階を必要とし、そして相当量の労力を必要とする。対照的に、本発明の螢光発生試薬は、単一段階工程における数分でのプロテアーゼ活性の急速な決定を可能にする。試験されるべきプロテアーゼのアリコートは単純に、本発明の螢光発生試薬に添加され、又はその試薬と接触せしめられ、そして続く螢光の変化がモニターされる(たとえば、螢光計又は螢光マイクロプレートリーダーを用いて)。
【0044】
“試薬”溶液におけるプロテアーゼ活性を決定する他に、本発明の螢光発生組成物は生物学的サンプルにおけるプロテアーゼ活性を検出するためにも使用され得る。用語“生物学的サンプル”とは、本明細書で使用される場合、生物から又は生物の成分(たとえば細胞)から得られたサンプルを意味する。サンプルはいづれかの生物学的組織又は流体のものであり得る。ときおり、サンプルは、患者に由来するサンプルである“臨床学的サンプル”であり得る。そのようなサンプルは、唾液、血液、血液細胞(たとえば白血球細胞)、組織又は細い針の生検サンプル、尿、腹水、及び胸水、又はそれらからの細胞を包含するが、但しそれらだけには限定されない。生物学的サンプルはまた、組織の断片、たとえば組織学的な目的のために採取される凍結断片も包含する。
【0045】
これまで記載されて来た螢光発生プロテアーゼインジケーターは典型的には、紫外線範囲での光を吸収する(たとえば、Wang、など. 、前記)。従って、それらは、紫外線範囲において吸収する構成成分(たとえばタンパク質)を典型的には含む生物学的サンプルにおけるプロテアーゼ活性の敏感な検出のためには不適切である。対照的に、本発明の螢光インジケーターは、可視範囲(400nm 〜約 750nm)において吸収し、そして発光する。従って、それらのシグナルは、螢光団の活性化、すなわち光の吸収により容易に消光されないし、又はバックグラウンド分子により妨害もされず;従って、それらは生物学的サンプルにおいて容易に検出される。
【0046】
さらに、しばしば螢光団及び消光発色団を用いるこれまでの螢光発生プロテアーゼインジケーターとは異なって、本発明のインジケーターは、2種の螢光団(すなわち、ドナー及びレセプターとしての螢光団)、又は本発明のペプチド主鎖の1つにより連結される場合、基底状態のダイマーを効果的に形成する同じ2つの螢光団を使用することができる。これまで記載された発色団/螢光団の組合せよりも一層高い消出の程度を示す螢光団の対が選択され得る。
【0047】
事実、これまでの組成物は、対合する発色団により得られる消出の低い程度のために、比較的低い効能の螢光団に制限されて来た(Wangなど、前記)。対照的に、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターは、高い効能の螢光団を用い、そして消光がペプチド基質の切断により開放される場合、強いシグナルを提供しながら、高い程度の消光を達成することができる。高いシグナルは、ひじょうに低いレベルのプロテアーゼ活性の検出を可能にする。従って、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターは、プロテアーゼ活性の現場検出のために特に適切である。
本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターは、下記一般式:
【0048】
【化2】

【0049】
〔式中、Pはプロテアーゼ結合部位を含むペプチドであり、F1 及びF2 は螢光団であり、C1 及びC2 はコンホメーション決定領域であり、そしてS1 及びS2 は任意のペプチドスペーサーであり、F1 はドナー螢光団であり、そしてF2 はレセプター螢光団であり、又は逆に、F2 はドナー螢光団であり、そしてF1 はレセプター螢光団であり、あるいはF1 及びF2 は同一であり得る〕を有する。プロテアーゼ結合部位は、そのプロテアーゼ活性をインジケーターが示すように企画されているプロテアーゼにより認識され、そして切断されるアミノ酸配列(ペプチド)を提供する。プロテアーゼ結合部位は、典型的には、2アミノ酸〜約12アミノ酸、2
【0050】
コンホメーション決定領域は、分子中に曲げ(bend) を導入するか、又はペプチド主鎖の自由度を制限するアミノ酸配列である。2つのコンホメーション決定領域の組合された効果は、それぞれC1 及びC2 のアミノ末端及びカルボキシ末端に結合された螢光団を並置することである。従って、螢光団は好ましくは、約 100Å以下の距離でお互いに隣接して位置する。螢光団(F1 及びF2 )は典型的には、それらはリンカーに結合され得るけれども、コンホメーション決定領域に直接的に接合される。存在する場合、任意のスペーサー(S1 及びS2 )が、固体支持体に組成物を、又は生物学的サンプルの成分(たとえば細胞膜)に組成物を連結するために使用される。
【0051】
実質的にコンホメーション決定領域は、組成物のプロテアーゼ特異性を高める。コンホメーション決定領域を含んで成るアミノ酸配列は、典型的には、お互いとの及び結合された螢光団との立体的妨害により、酵素にほとんど近づくことができない。これに対して、プロテアーゼ結合部位は、螢光団又はコンホメーション決定領域のいずれかにより比較的妨げられず、そしてそのため、プロテアーゼに容易に接近することができる。
【0052】
プロテアーゼ結合部位及びコンホメーション決定領域
プロテアーゼ結合部位及びコンホメーション決定領域は、連続したアミノ酸配列(ペプチド)を形成する。プロテアーゼ結合部位は、特定のプロテアーゼにより認識され、そして切断されるアミノ酸配列である。種々のプロテアーゼが特定のアミノ酸に隣接するペプチド結合を切断することは良く知られている。従って、たとえば、トリプシンは、塩基性アミノ酸、たとえばアルギニン及びリジンに続くペプチド結合を切断し、そしてキモトリプシンは、大きな疎水性アミノ酸残基、たとえばトリプトファン、フェニルアラニン、チロシン及びロイシンに続くペプチド結合を切断する。セリンプロテアーゼは、小さな疎水性残基、たとえばアラニンに続くペプチド結合を切断する。
【0053】
しかしながら、特定のプロテアーゼは、正しい隣接したアミノ酸を有するタンパク質におけるあらゆる結合を切断しないであろう。むしろ、プロテアーゼは、個々の特定のプロテアーゼのための認識ドメインとして作用する特定のアミノ酸配列に対して特異的である。特定の理論により結びつけられないが、折りたたまれた球状タンパク質における多くの他の可能性ある部位よりも特定の切断部位のための特定のプロテアーゼの選択はその可能性ある切断部位のアミノ酸配列及びまた、それらのコンホメーション及びコンホメーション柔軟性により主として決定され得ると思われる。
【0054】
従って、たとえば、制限されたタンパク質分解生成物、たとえばスブチリシンと呼ばれるプロテアーゼを用いて一本鎖の折りたたまれたタンパク質リボヌクレアーゼ−Aからリボヌクレアーゼ−S(2種のポリペプチド鎖から成る非共有複合体)を得る。同様に、トリプシン消化により一本鎖スタフィロコーカス(Staphylococcus)ヌクレアーゼから二本鎖非共有複合体、すなわちスタフィロコーカスヌクレアーゼ−Tを得る。他の基質よりも1つの基質に対する特定のプロテアーゼの選択のもう1つの例は、ヒト線維芽細胞型コラゲナーゼである。このプロテアーゼは、両タイプI及びタイプIII 可溶性コラーゲン基質が同じコラゲナーゼ感受性Gly-Ile 又はGly-Leu 結合をたとえ含んでいたとしても、タイプIII 可溶性コラーゲンよりもタイプIの方を好む(たとえば、Brikedal-Hansen など.,(1993) Crit. Rev. in Oral Biology and Medicine 4 : 197-250を参照のこと)。
【0055】
認識ドメインを含み、そしてそれ故に、プロテアーゼにより認識され、そして切断され得るいづれかのアミノ酸配列が、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーター組成物の“プロテアーゼ結合部位”のために適切である。既知のプロテアーゼ基質配列及びプロテアーゼのペプチドインヒビターは、それらが切断され、又はそれらが阻害する特定のプロテアーゼにより認識されるアミノ酸配列を有する。従って、既知の基質及びインヒビター配列は、プロテアーゼ認識領域への使用のために適切な基本的配列を提供する。本発明の組成物におけるプロテアーゼ結合ドメインとして使用するために適切な多くのプロテアーゼ基質及びインヒビター配列は表2に示されている。当業者は、これが完全な列挙ではなく、そして他のプロテアーゼ基質又はインヒビター配列が使用され得ることを認識するであろう。
【0056】
プロテアーゼ結合部位を含むアミノ酸残基は、従来、特定のプロテアーゼにより加水分解されるペプチド結合に対して番号付けされている。従って、切断されたペプチド結合のアミノ側上の第1のアミノ酸残基は、P1 として命名され、そして切断されたペプチド結合のカルボキシル側上の第1のアミノ酸残基はP1'として命名される。残基の番号は、加水分解されたペプチド結合から離れた距離ほど多くなる。従って、4つのアミノ酸プロテアーゼ結合領域は、
2−P1−P1'−P2'
と称するアミノ酸を含み、そしてプロテアーゼは、P1 とP1'との間の結合領域を切断する。
【0057】
好ましい態様において、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターのプロテアーゼ結合領域は、切断部位に対して対称であるように選択される。従って、たとえば、結合領域がIle-Pro-Met-Ser-Ile(たとえばα−1抗−トリプシン)であり、そして切断がMet とSer との間で生じる場合、この配列に基づく4つのアミノ酸残基結合領域は、
−P2−P1−P1'−P2'−
−Pro−Met−Ser −Ile −
である。
【0058】
より長い配列から選択される結合ドメインの他の例は、表2に提供されている。プロテアーゼ結合ドメイン内に存在しない残るアミノ又はカルボキシル残基は、下記に説明されるように一定の制限を受けやすいコンホメーション決定領域の一部として残存することができる。従って、本発明の例においては、アミノ末端Ile は、C1 コンホメーション決定領域中に組込まれ得る。
【0059】
種々のアミノ酸置換が、結合特異性を高め、反応性側鎖を排除し、又は分子のコンホメーションエントロピーを減じる(自由度を低める)ために、プロテアーゼ結合ドメインを含んで成るアミノ酸に行なわれ得る。従って、たとえば、酸化できる硫黄を担持するメチオニン(Met) 残基をノルロイシンにより置換することが時々所望される。従って、与えられる例においては、好ましいプロテアーゼ結合領域は、次の配列:
−P2−P1−P1'−P2'−
−Pro−Nle−Ser −Ile −
を有するであろう。
【0060】
コンホメーション決定領域
コンホメーション決定領域(C1 及びC2 )は、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーター分子のペプチド主鎖を固定し、そしてその中に曲げを導入する、プロテアーゼ切断領域のいづれかの端でのペプチド領域である。2種のコンホメーション決定領域及び比較的直線状のプロテアーゼ切断領域の組合せは、“U”形状の基部(中央)で切断部位を有する、おおよそU−形状の分子を生成する。用語U−形状とは、もちろん、おおよそであり、すなわち螢光団が近接した並置(たとえば約 100Å以下)下で比較的固定して保持されることを意味する。
【0061】
1つの態様において、アミノ酸、たとえばプロリン(Pro)及びα−アミノ酪酸(Aib) の両者が、ペプチド分子中に曲げを導入し、そしてペプチド主鎖の固定性を高めるために選択される。C1 及びC2 ドメインは、U形状の“アーム”が固定され、そして結合された螢光団が約 100Å以下の距離、分離してお互い隣接して位置するように選択される。ペプチド主鎖の必要な剛性及び螢光団の配置を維持するためには、コンホメーション決定領域は、好ましくは4個の長さ又はそれ以下の長さのアミノ酸であり、又は他方では、約18個以上の長さのアミノ酸であり、そして安定したαヘリックスコンホメーション又はβ−プリーツシートを形成する。
【0062】
A)テトラペプチド結合部位組成物
好ましい態様において、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターのペプチド主鎖は、トリペプチドC1 領域、テトラペプチドP領域及び単一アミノ酸又はジペプチドC2 領域を含むであろう。
それらの化合物は、下記式:
【0063】
【化3】

【0064】
により表わされ得る。それらの式において、ペプチド結合領域は−P2−P1−P1'−P2'−として示され、そしてコンホメーション決定領域C1 及びC2 のアミノ酸残基はそれぞれ−C15−C14−C13−及び−C23−C24−として示される。C2 領域は、アミノ酸か又はジペプチドのいずれかであり得る。C2 領域がジペプチドであろうと又はアミノ酸であろうと、F2 螢光団及びS2 スペーサーは、存在する場合、C2 のカルボキシル末端残基に常に結合される。スペーサーがC2 領域に存在する場合、それはαカルボキシル基にペプチド結合によりC2 のカルボキシル末端残基を結合される。
【0065】
上記で示されたように、コンホメーション決定領域は典型的には、分子中に曲げを導入し、そしてその剛性を高めるアミノ酸残基、たとえばプロリン(Pro) を含む。しかしながら、プロテアーゼ結合領域(P)の末端残基がそれら自体、曲げを創造する残基、たとえばプロリンである場合、その末端に結合されるC領域においてPに接近した位置で曲げを創造する残基を配置することは必要でないことを当業者は理解するであろう。従って、コンホメーション決定領域は、上記のようにプロテアーゼ結合領域をまず決定し、コンホメーション決定領域に存在する“残りの”残基を決定し、そして必要なら、次のガイドラインに従ってそれらの残基を変性することによって企画される:
【0066】
1.P2'部位がPro でない場合、C2 はジペプチド(式III )Pro-Cys, Aib-Cys, Pro-Lys 、又はAib-Lys であり、そして逆に、P2'部位がPro である場合、C2 は単一のアミノ酸残基(式IV)Cys 又はLys である。
2.P2 部位がPro でない場合、C1 はAsp-C14-Pro, Asp-C14-Aib, Asp-Aib-Pro, Asp-Pro-C13, Asp-Aib-C13, Asp-Pro-Aib又はAsp-Aib-Aib から成るトリペプチドであり、そしてP2 部位がPro 残基である場合、基C1 はAsp-C14-C13 又はAsp-C14-Aib から成るトリペプチドである。
【0067】
3.P3 (C13) 残基がPro である場合、C1 はAsp-C14-Pro 又はAsp-Aib-Pro から成るトリペプチドである。
4.P4 (C14) 残基がPro である場合、C1 はAsp-Pro-C13 又はAsp-Pro-Aib から成るトリペプチドである。
5.P2 及びC13 が両者ともプロリンでない場合、C1 はAsp-Pro-C13, Asp-Aib-C13, Asp-C14-Pro, Asp-C14-Aib, Asp-Pro-Aib 又はAsp-Aib-Pro から成るトリペプチドである。
【0068】
上記のように、いずれかのメチオニン(Met)がノルロイシン(Nle) により置換され得る。C1 、及びC2 から成る多くの適切なペプチド主鎖が表2〜表4に提供される。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
1.好ましい態様において、配列の後に、Gly-Tyr のS2 スペーサーが続く。従って、たとえば、C24がLys である場合、C24−S2 はLys-Gly-Tyr である。
【0073】
B)他の結合部位を有するインジケーター
もう1つの好ましい態様においては、結合部位(P)は、2〜約12個の長さのアミノ酸の範囲である。幾分大きなコンホメーション決定領域がインジケーター分子の自由度の程度を十分に制限することができ、すなわちその螢光団が結合〔認識〕ドメイン(P)のアミノ酸配列にかかわりなく、適切に消光されることが本発明の発見であった。1つの好ましい態様において、それらの組成物は、下記式V:
【0074】
【化4】

【0075】
で表わされる化合物を含む。この式において、Pは、プロテアーゼ結合部位を含んで成るペプチドであり、そして2〜約12個のアミノ酸から成り、F1 及びF2 は螢光団であり、ここでF1 は組成物(スペーサーを除く)のアミノ末端アミノ酸に結合され、そしてF2 はカルボキシル末端アミノ酸に結合される。S1 及びS2 は、存在するなら、1〜約50個の長さのアミノ酸の範囲のペプチドスペーサーであり、そしてS1 は、存在するなら、アミノ末端アミノ酸に結合され、そしてS2 は、存在するなら、カルボキシル末端アミノ酸に結合される。下付き文字i,j,k,m,n,o,p,q及びrは独立して0又は1である。
【0076】
特に好ましい態様においては、aa1 及びaa10は、リシン、オルニチン及びシステインから成る群から独立して選択され;
aa2, aa3,aa8 及びaa9 は、Asp 、Glu 、Lys 、オルニチン、Arg 、シトルリン、ホモシトルリン、Ser 、ホモセリン、Thr 、及びTyr から成るアミノ酸又はジペプチドから成る群から独立して選択され;
aa5, aa4, aa6 及びaa7 はプロリン、3,4−デヒドロプロリン、ヒドロキシプロリン、α−アミノイソ酪酸及びN−メチルアラニンから成る群から独立して選択され;
【0077】
XはGly,βAla,γAbu, Gly-Gly, Ahx,βAla-Gly,βAla-βAla,γAbu-Gly,βAla-γAbu, Gly-Gly-Gly, γAbu-γAbu, Ahx-Gly, βAla-Gly-Gly,Ahx-βAla,βAla-βAla-Gly, Gly-Gly-Gly-Gly, Ahx-γAbu,βAla-βAla-βAla,γAbu-βAla-Gly,γAbu-γAbu-Gly, Ahx-Ahx, γAbu-γAbu-βAla 、及びAhx-Ahx-Gly から成る群から選択され;
YはGly,βAla,γAbu, Gly-Gly, Ahx,Gly-βAla,βAla-βAla,Gly-γAbu,γAbu-βAla, Gly-Gly-Gly,γAbu-γAbu, Gly-Ahx, Gly-Gly-βAla,βAla-Ahx,Gly-βAla-βAla, Gly-Gly-Gly-Gly, γAbu-Ahx,βAla-βAla-βAla,Gly-βAla-γAbu,Gly-γAbu-γAbu, Ahx-Ahx, βAla-γAbu-γAbu 、及びGly-Ahx-Ahx から成る群から選択される。
【0078】
iが1である場合、S1 は、aa1 の末端αアミノ基を通してペプチド結合によりaa1 に結合され;そしてγが1である場合、S2 は、aa10の末端αカルボキシル基を通してペプチド結合によりaa10に結合される。それらのアミノ酸の1又は複数のアミノ酸が不在である場合、螢光団は残る末端アミノ酸に結合される。
そのような特に好ましい組成物のアミノ酸主鎖は、表5〜表12に列挙される。
【0079】
【表5】

【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
【表8】

【0083】
【表9】

【0084】
【表10】

【0085】
【表11】

【0086】
【表12】

【0087】
“ドナー”及び“レセプター”螢光団
入射光線により励起された螢光団は光を吸収し、そして次に、異なった(長い)波長で光を再発光する。しかしながら、“レセプター”として知られる第2種類の分子の存在下で、いわゆるドナー螢光団により発光された光は、レセプターにより吸収され、それにより、ドナーの螢光シグナルを消光する。従って、螢光団/発色団に対立するものとして、2種の螢光団の使用は、ドナーの発光スペクトルとレセプターの励起スペクトルとの間でのオーバーラップの明確な評価を可能にする。これは、消光の最適化を可能にするペプチド主鎖の設計を促進する。これは、低濃度のプロテアーゼ活性の検出を促進する高い効率のドナー/レセプター対をもたらす。従って、螢光団/発色団の組合せが適切であるけれども、好ましい態様においては、本発明の螢光発生プロテアーゼインヒビターは2種の螢光団を含むであろう。
【0088】
“ドナー”及び“レセプター”分子は典型的には、レセプター分子の吸収スペクトルが、ドナー分子の発光スペクトルと、できるだけ広くオーバーラップするように、調和した対として選択される。さらに、ドナー及びレセプター螢光団は好ましくは、ドナー分子の吸収及び発光スペクトルが可視範囲 (400nm 〜約 700nm) に存在するように選択される。それにより、螢光団は、生物学的サンプルにおいて検出できるシグナルを提供し、従って、生物学的流体、組織ホモジネート、組織断片及び同様のものにおけるプロテアーゼ活性の検出を促進する。多くの螢光団の発光スペクトル、吸収スペクトル及び化学組成は、当業者に良く知られている(たとえば、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, R. P. Hauglond, ed.を参照のこと、これは引用により本明細書に組込まれる)。
【0089】
好ましい螢光団対は、ローダミン誘導体を包含する。従って、たとえば5−カルボキシテトラメチルローダミン又は5−及び/又は6−カルボキシテトラメチルローダミン(9−(2,5−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス−(ジメチルアミノ)キサンチリウムクロライド(5−TMR)及び9−(2,6−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス−(ジメチルアミノ)キサンチリウムクロライド(6−TMR))のスクシンイミジルエステル、(Molecular Probes,Eugene, Oregon, USA から入手できるC211及びC1171)(式VI)は、特に好ましいドナー分子であり:
【0090】
【化5】

【0091】

そしてローダミンXアセトアミド(Molecular ProbesからのR492)(式VII )
【化6】

【0092】
又は5−及び/又は6−カルボキシ−X−ローダミン(9−(2,5−ジカルボキシフェニル)−2,7−ジメチル−3,6−ビス−(エチルアミノ)キサンテン(5−DER)及び9−(2,6−ジカルボキシフェニル)−2,7−ジメチル−3,6−ビス−(エチルアミノ)キサンテン(6−DER))、のスクシンイミジルエステル、C1309として得られる混合異性体(Molecular ProbesからのC1309)は特に好ましいレセプター分子である。それらの螢光団は、このドナー/レセプター対の両メンバーの励起及び発光が可視波長に存在し、分子が高い励起係数を有し、そして分子が溶液において高い螢光収率を有するので、特に好ましい。励起係数は発光団による特定波長での光吸収の測定であり、そして従って、シグナルを消光するその能力に関連し、ところが螢光収率は再発光された光に対する吸収された光の割合であり、そして螢光団の効率の測定値であり、そして従って、プロテアーゼインジケーターの感度に影響を及ぼす。
【0093】
他の好ましい螢光団には、9−(2−カルボキシフェニル)−2,7−ジメチル−3,6−ビス(エチルアミノ)キサンチリウム、9−(2−カルボキシフェニル)−3,6−ビス(ジメチルアミノ)キサンチリウム、及び9−(2−カルボキシフェニル)−キサンチリウムが含まれるが、これらに限定されない。
もちろん、最とも好ましいものではないが、紫外線範囲下で吸収し、そして発光する螢光団もまた、本発明のプロテアーゼインジケーターに使用され得る。螢光団の1つの特に好ましい紫外線吸収対は、ドナー分子として下記7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン−3−酢酸(式VIII):
【0094】
【化7】

【0095】
及びレセプター分子として下記7−ジエチルアミノ−3−((4’−ヨードアセチル)アミノ)フェニル)−4−メチルクマリン(式IX):
【0096】
【化8】

【0097】
である。それらの及び他の螢光団は、多くの製造業者、たとえばMolecular Probes(Eugene, Oregon, USA)から市販されている。
【0098】
調和された吸収及び発光スペクトルを有する螢光団が本発明の実施下で必要とされないことは驚くべき発見である。事実、単一種の螢光団は、F1 及びF2 により支配される位置における本発明のポリペプチド主鎖に連結される場合、それ自体、消光することができる。さらに、この消光は、ペプチド主鎖が切断される場合、十分に開放される。
特定の理論に基づくものではないが、消光は、2種の螢光団の電子軌道が相互作用し、可逆的消光をもたらす、基底状態ダイマーの形成により達成されると思われる。それは、基底状態ダイマーを効果的に形成するために螢光団を十分に接近せしめる、本発明のペプチド主鎖の限定されたコンホメーションエントロピーである。
【0099】
H−タイプダイマーからの特に好ましい分子。螢光分子によるH−タイプダイマーの形成は、Packard など. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93 : 11640-11645 により記載される。このH−タイプダイマーは、吸収スペクトルにおける励起バンド及び螢光消光により特徴づけられる(たとえば、Valdes-Aguilera など. (1989) Acc. Chem. Res., 22 : 171-177及びPackard など. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93 : 11640-11645 を参照のこと)。
【0100】
従って、好ましい態様においては、本発明のプロテアーゼインジケーターは、単一種の螢光団のみ、より好ましくは、H−タイプダイマーを形成できる螢光団を包含する。
NorFesは、セリンプロテアーゼエラスターゼのための認識配列及び切断部位を含むウンデカペプチドである。NorFesがアミノ酸配列の反対の部位上で種々の螢光団により二重にラベルされる場合、螢光は、分子内グラウンド状態ダイマーの形成のために消光された。それらのダイマーのスペクトル特徴は、励起理論により予測できた。
【0101】
温度の上昇につれてダイマー/モノマー比の低下は、染料分子間の分子間引力を示した。テトラメチルローダミンから構成されるホモダイマーの破壊の活性化の自由エネルギーは少なくとも 1.7Kcal/モルであり、そしてジエチルローダミンの場合、 2.4Kcal/モルであった。励起ダイマーを形成する螢光団の分子間引力のために、結合するアミノ酸配列は本明細書に記載される最適配列からはずれる。従って、励起−形成螢光団が使用される場合、アミノ酸置換が本明細書に記載される“主鎖”において行なわれ得、そして活性はまだ維持され得る。
【0102】
特に好ましい励起−形成螢光団は、カルボキシテトラメチルローダミン、カルボキシローダミン−X、ジエチルアミノクマリン及びカルボシアニン染料を包含する。この態様においては、単一の螢光団のみが使用されるので、発光又は吸収スペクトルを適合する必要はない。従って、広範囲の種類の螢光団が効果的に使用され得る。さらに、単一の螢光団の使用は合成化学をひじょうに単純化する。
【0103】
本発明のホモ−二重ラベルされたインジケーター(単一種の螢光団によりラベルされたインジケーター)はまた、螢光測定の他に、吸光測定による酵素活性の検出を可能にする。吸収スペクトルにおける青色−シフトされた励起バンド(又は青色−シフトされた吸収最大値)はH−ダイマー形成を示し、そして螢光消化が後者と同時に生じるので、吸収スペクトルの測定は正しい設定における診断手段として十分であり得る。二重にラベルされたプロテアーゼインジケーターが特定のプロテアーゼにより切断される場合、H−タイプのダイマーが破壊される。次に、H−タイプのダイマーに関連する青色−シフトされた吸収最大値が失なわれる。従って、青色−シフトされた励起バンドでの吸収強度を測定する場合、H−タイプのダイマーが破壊されるにつれて、吸収強度の低下が予測され、ところが、モノマー最大ピークでの吸収強度は上昇することが予測される。
【0104】
螢光発生プロテアーゼインジケーターの調製
本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターは、まず、ペプチド主鎖、すなわちプロテアーゼ切断部位(P)、2種のコンホメーション決定領域(C1 及びC2 )、及び存在するなら、スペーサー(S1 及びS2 )を合成することによって好ましくは調製される。次に、螢光団がペプチドに化学的に接合される。螢光団は好ましくは、ペプチドに直接的に接合されるが、しかしながら、それらはまた、リンカーを通してもペプチドに結合される。最後に、螢光発生プロテアーゼインジケーターが固体支持体に結合される場合、次に、それは直接的に又はリンカーを通して、スペーサー(S1 又はS2 )を経て固体支持体に化学的に接合される。
【0105】
ペプチド主鎖の調製
配列のC−末端アミノ酸が不溶性支持体に結合され、続いて配列における残るアミノ酸を連続的に付加する固相ペプチド合成は、本発明の化合物のペプチド主鎖を調製するための好ましい方法である。
【0106】
固相合成のための技法は、次の文献に記載されており:Barany and Merrifield, Solid−Phase Peptide Synthesis : pp. 3〜284, The Peptides : Analysis, Synthesis, Biology, Vol.2:Special Methods in Peptide Synthesis, Part A., Merrifield, et al,J. Am. Chem. Soc. 85, 2149〜2156 (1963) 、及びGross and Meienhofer, eds. Academic Press, N. Y., 1980及びStewart et al.,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed. Pierce Chem. Co., Rockford,III .(1984) ; これらは引用により本明細書に組込まれる。固相合成は、FMOC又はTBOC化学を用いて市販のペプチド合成機により最とも容易に達成される。螢光助剤プロテアーゼインジケーターのペプチド成分の化学合成は、例1及び2に詳細に記載されている。
【0107】
特に好ましい態様においては、ペプチド合成は、Fmoc合成化学を用いて実施される。Asp, Ser, Thr 及びTyr の側鎖が好ましくは、t−ブチルチオを用いて保護され、そしてCys 残基の側鎖はS−トリチル及びS−t−ブチルチオにより保護され、そしてLys 残基が好ましくは、リシン残基のためのt−Boc, Fmoc 及び4−メチルトリチルを用いて保護される。適切に保護されたアミノ酸試薬は市販されている。複数の保護基の使用は、選択的なブロック解除及びいづれか特定の所望する側鎖への螢光団の結合を可能にする。
【0108】
従って、たとえば、t−Boc 保護解除は、ジクロロメタン中、TFA を用いて達成され、Fmoc保護解除はDMF 又はN−メチルピロリドン中、20%(v/v)ピペリジンを用いて達成され、そして4−メチルトリチル保護解除は水中、1〜5%(v/v)TFA 、又はDCM 中、1% TFA又は5%トリイソプロピルシランを用いて達成される。S−t−ブチルチオ保護解除は水性メルカプトエタノール(10%)を用いて達成され、t−ブチル及びt−boc 、及びS−トリチル保護解除は、TFA : フェノール:水:チオアニソール:エタンジチオール(85:5:5:2.5 : 2.5)を用いて達成され、そしてt−ブチル及びt−Boc 保護解除はTFA : フェノール:水(95:5:5)を用いて達成される。詳細な合成、保護解除、及び螢光団結合法は、例1及び2に提供される。
【0109】
他方、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターのペプチド成分は、組換えDNA 技法を用いても合成され得る。手短に言及すれば、所望するアミノ酸配列をコードするDNA 分子が、Beaucage and Carruthers, Tetra. Letts. 22 : 1859〜1862 (1981) により記載される固相ホスホラミジット法、Matleucci 、など. 、J. Am. Chem. Soc., 103 : 3185 (1981)(両者は引用により本明細書中に組込まれる)を包含する当業者に知られている種々の方法、又は当業者に知られている他の方法により化学的に合成される。好ましくは、DNA は、標準方法を用いての市販のDNA 合成機に基づいて標準のβ−シアノエチルホスホラミジットを用いて合成され得る。
【0110】
オリゴヌクレオチドは、必要なら、当業者に良く知られている技法により精製され得る。典型的な精製法は、ゲル電気泳動、アニオン交換クロマトグラフィー(たとえばMono−Qカラム、 Pharmacia−LKB, Piscataway, New Jersey, USA) 又は逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を包含するが、但しこれらだけには限定されない。タンパク質及びペプチド精製の方法は、当業者に良く知られている。標準方法のレビューのためには、Methods in Enzymology, Volume 182 : Guide to Protein Purification, M. Deutscher, ed. (1990), 619〜626 ページ(これは、引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。
【0111】
オリゴヌクレオチドは、相補的オリゴヌクレオチドによるアニーリング、又はDNA ポリメラーゼによる重合により二本鎖DNA に転換され得る。次に、DNA がプロモーターの制御下でベクター中に挿入され、そして宿主細胞を形質転換するために使用され、その結果、細胞がコードされたペプチド配列を発現する。ペプチドのクローニング及び発現の方法は当業者に良く知られている。たとえば、Sambrook, et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual(2nd Ed., Vols. 1−3, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)), Methods in Enzymology, Vol. 152 : Guids to Molecular Cloning Technigues (Berger and Kimmel (eds.), San Diego : Academic Press, Inc. (1987))、又はCurrent Protocols in Molecular Biology, (Ausubel, et al. (eds.), Greens Publishing and Wiley−Interscience, New York (1987) (これらは、引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。
【0112】
ペプチド主鎖への螢光団の連鎖
螢光団は、当業者に良く知られている多くの手段のいづれかによりペプチド主鎖に連結される。好ましい態様においては、螢光団は、螢光団上の反応部位からペプチド上の反応基、たとえば末端アミノ又はカルボキシル基に、又はアミノ酸側鎖上の反応性基、たとえばアミノ、ヒドロキシル、又はカルボキシル成分に直接的に連結される。多くの螢光団は通常、適切な反応部位を含む。他方、螢光団は、他の分子への連鎖のために反応性部位を付与するよう誘導体化され得る。第2分子への結合のために官能基により誘導体化された螢光団は、種々の製造業者から入手できる。誘導体化は、螢光団自体上の基の単純な置換によることができ、又はリンカーへの接合によることができる。種々のリンカーが当業者に良く知られており、そして下記に論ぜられる。
【0113】
上記のように、好ましい態様においては、螢光団は、プロテアーゼインジケーターのペプチド主鎖に直接連結される。従って、たとえば、5’−カルボキシテトラメチルローダミン(C2211)螢光団は、式Vに示されるようにアミノ酸のαアミノ基を通してアスパラギン酸に連結され得る。ローダミンXアセトアミド(R492)のヨードアセトアミド基は、式VIに示されるように、システインのスルフヒドリル基との反応により連結され得る。そのような連結を実施する手段は、当業者に良く知られており、そして1つのそのような連結の詳細が例1に提供される。
【0114】
当業者は、ペプチドスペーサー(S1 又はS2 )が存在する場合(下記で論ぜられるように)、螢光団は好ましくは、スペーサー自体がそれぞれC1 又はC2 の末端アミノ及びカルボキシル基とペプチド連鎖を形成するにつれて、C1 又はC2 の末端アミノ酸の側鎖上の反応性基を通してコンホメーション決定領域に連結されることを理解するであろう。
【0115】
スペーサーペプチドの選択及び固体支持体への連鎖
本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターは、溶液で得られ、又は固体支持体に連結され得る。“固体支持体”とは、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターを用いてのプロテアーゼ活性についてのアッセイのために使用される溶液に存在するいづれの成分にも溶解せず又はその成分と反応せず、そして螢光発生分子の結合のための官能基を提供するいずれかの固体材料を意味する。
【0116】
固体支持材料は当業者に良く知られており、そしてシリカ、調節された多孔性ガラス(CPG) 、ポリスチレン、ポリスチレン/ラテックス、カルボキシル変性テフロン(登録商標)、デキストラン、誘導体化された多糖類、たとえばアミノ、カルボキシル又はスルフヒドリル基を担持する寒天、種々のプラスチック、たとえばポリエチレン、アクリル樹脂、及び同様のものを包含するが、但しこれらだけには限定されない。“半固体”支持体、たとえば細胞及びリポソームに見出されるような脂質膜もまた使用される。当業者は、固体支持体が、リンカーの結合又はペプチドの直接的な結合のための反応性部位を供給するために官能基(たとえばヒドロキシル、アミン、カルボキシル、エステル、及びスルフヒドリル)により誘導体化され得ることを理解するであろう。
【0117】
螢光助剤プロテアーゼインジケーターは、螢光団を通して、又はインジケーターを含むペプチド結合を通して、直接的に固体支持体に連結され得る。ペプチド主鎖を通しての連鎖が、最とも好ましい。
【0118】
ペプチド主鎖を通して固体支持体に連結することが所望される場合、そのペプチド主鎖は、追加のペプチドスペーサー(式IにおいてS1 又はS2 と命名されている)を含むことができる。そのスペーサーは、ペプチド主鎖のアミノ又はカルボキシル末端で存在し、そして約1〜約50個のアミノ酸、より好ましくは1〜約20個及び最とも好ましくは1〜約10個のアミノ酸の長さのものであり得る。特に好ましいスペーサーは、Asp-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Glu-Asp-Glu-Lys, Lys-Glu-Asp-Gly-Gly-Asp-Lys、Asp-Gly-Ser-Gly-Glu-Asp-Glu-Lys 、及び Lys-Glu-Asp-Glu-Gly-Ser-Gly-Asp-Lysを包含する。
【0119】
ペプチドスペーサーのアミノ酸組成は、スペーサーが支持体から分子の活性成分を分離するように作用し、それにより所望しない相互作用を妨げる場合、臨界ではない。しかしながら、スペーサーのアミノ酸組成は、リンカー又は固体支持体自体が容易に結合される側鎖を有するアミノ酸(たとえばシステイン又はリシン)を供給するよう選択され得る。他方、リンカー又は固体支持体自体は、S1 のアミノ末端又はS2 のカルボキシル末端に結合され得る。
【0120】
好ましい態様においては、ペプチドスペーサーは実際、リンカーにより固体支持体に連結される。用語“リンカー”とは、本明細書で用いられる場合、他の分子にペプチドを連結するために使用され得る分子(たとえば、固体支持体、螢光団、等)を意味する。リンカーは、ペプチドと共有結合を形成することができる第1反応部位及び固体支持体上の反応性基と共有結合を形成することができる第2反応部位を供給するホモ二官能性分子である。ペプチド(スペーサー)との共有結合は、末端カルボキシル又はアミノ基のいづれかを通してであり、又はアミノ酸側鎖上の反応性基による(たとえばシステインへのジスルフィド結合を通して)。
【0121】
適切なリンカーは、当業者に良く知られており、そして直鎖又は枝分れ鎖の炭素リンカー、複素環式炭素リンカー又はペプチドリンカーを包含するが、但しこれらだけには限定されない。上記のように、リンカーは、それらの末端カルボキシル又はアミノ基を通して、又はそれらの反応性側鎖基を通してカルボキシル及びアミノ末端アミノ酸に連結され得る。
【0122】
特に好ましいリンカーは、アミノ基、カルボキシル基、又はスルフヒドリルに対して共有結合を形成することができる。アミノ結合リンカーは、反応性基、たとえばカルボキシル基、イソシアネート、イソチオシアネート、エステル、ハロアルキル、及び同様のものを包含する。カルボキシル−結合リンカーは、反応性基、たとえば種々のアミン、ヒドロキシル及び同様のものを形成することができる。最後に、スルフヒドリル−/結合リンカーは、反応性基、たとえばスルフヒドリル基、アクリレート、イソチアシネート、イソシアネート及び同様のものを包含する。
【0123】
特に好ましいリンカーは、固体支持体上に見出されるスルフヒドリル基によりアミノ基(たとえばペプチドにおけるリシン残基上に見出されるアミノ基)を連結するために、又は固体支持体上に見出されるアミノ基によりスルフヒドリル基(たとえば、ペプチドのシステイン残基上に見出される)を連結するためにスルホMBO(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル)を包含する。他の特に好ましいリンカーは、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド)及びビス−(スルホスクシンイミジルスベレート)を包含する。他の適切なリンカーは、当業者に良く知られている。
【0124】
本発明の螢光発生化合物は、ドナー螢光団が、分子の切断の後、固体支持体上に保持されるように、又はドナー螢光団が、切断の後、溶液中に入るように、S1 又はS2 スペーサーのいずれかを通して固体支持体に連結され得る。前者の場合、次に支持体がプロテアーゼ活性を検出するために螢光についてアッセイされ、そして後者の場合、溶液がプロテアーゼ活性を検出するために螢光についてアッセイされる。
【0125】
プロテアーゼ活性の検出
本発明はまた、種々の情況においてプロテアーゼ活性を検出するために螢光発生プロテアーゼインジケーターを用いるための方法も提供する。従って、1つの態様においては、本発明は、実験又は産業目的のために使用されるプロテアーゼの原液のプロテアーゼ活性を確証し、又は定量化するために螢光発生インジケーターを用いる方法を提供する。使用する前、プロテアーゼ原液のプロテアーゼ活性の確証は一般的に、プロテアーゼはしばしば、時間の経過と共に活性を失ない(たとえば、自己加水分解を通して)又はチモーゲン前駆体から活性化される場合、種々の程度の活性化を示すので推薦される。
【0126】
原液のプロテアーゼ活性についてのアッセイは、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターに一定量の原液を添加し、そして螢光の続く上昇を測定することを単に必要とする。原液及び螢光発生インジケーターはまた結合され得、そしてプロテアーゼの活性を最適化する“消化緩衝液”においてアッセイされ得る。プロテアーゼ活性をアッセイするのに適切な緩衝液は当業者に良く知られている。一般的に、そのpHが特定のプロテアーゼの最適pHに対応する緩衝液が選択されるであろう。
【0127】
たとえば、エラスターゼ活性をアッセイするのに特に適切な緩衝液は、50mMのリン酸ナトリウム、1mMのEDTA(pH8.9)から成る。その測定は、螢光計、及び螢光団のための“励起”光源を提供し、そして次に、特定の波長で発光される光を測定する装置により最とも容易に行なわれる。プロテアーゼを欠く対照のインジケーター溶液との比較は、プロテアーゼ活性の測定を提供する。その活性レベルは、既知の活性のプロテアーゼ溶液により生成される螢光の変化速度が決定される、プロテアーゼ/インジケーターの組合せのための標準曲線を生成することによって正確に定量化され得る。
【0128】
螢光発生化合物の検出は好ましくは、螢光計を用いて達成されるけれども、検出は当業者に良く知られている種々の他の方法により達成され得る。従って、たとえば、本発明の螢光団は可視波長を発光するので、検出は光源による励起に応答しての螢光の可視検査により単純に行なわれ得る。検出はまた、ディジタイザー又は他の像獲得システムに連結されたビデオカメラを用いて、像分析システムにより行なわれ得る。検出はまた、螢光顕微鏡下でフィルターを通しての可視化により行なわれ得る。その顕微鏡は、オペレーターにより可視化されるシグナルを提供する。しかしながら、シグナルは写真フィルム上に又はビデオ分析システムを用いて記録され得る。シグナルはまた、像分析システム又は単なる光度計のいずれかを用いて即時に単純に定量化され得る。
【0129】
従って、たとえば、サンプルのプロテアーゼ活性についての基本的アッセイは、緩衝液にサンプルを懸濁し、又は溶解し(アッセイされる特定のプロテアーゼの最適pHで)、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターの1つを緩衝液に添加し、そして分光光度計を用いて螢光の得られる変化をモニターすることを包含するであろう。分光光度計は、ドナー螢光団の励起波長でドナー螢光団を励起し、そしてドナー螢光団の発光波長でその得られる螢光を検出するよう設定されるであろう。
【0130】
もう1つの態様において、本発明のプロテアーゼ活性インジケーターは、生物学的サンプルにおけるプロテアーゼ活性の検出のために使用され得る。従って、好ましい態様においては、本発明は、単離された生物学的サンプル、たとえば唾液、血液、血液細胞、腫瘍生検及び同様のもの、又は培養物中の細胞又は組織、又はその断片が包埋されておらず、そして固定されていない断片におけるプロテアーゼ活性を検出するための方法を提供する。シグナルは、螢光顕微鏡、螢光マイクロプレートリーダー、螢光計、又はフローサイトメーターを用いて定量することができる。
【0131】
単離された生物学的サンプルのエキソビボアッセイ
1の態様において、本発明は単離された生物学的サンプルにおけるプロテアーゼ活性の検出方法を提供する。これは、本発明の螢光助剤プロテアーゼインジケーターとサンプルとを単純に接触せしめ、そしてインジケーターの螢光の変化を時間と共にモニターすることによって決定され得る。サンプルは、上記のように“消化緩衝液”に懸濁され得る。サンプルはまた、分析の前、たとえば遠心分離により細胞残骸を除去され得る。
【0132】
螢光助剤プロテアーゼインジケーターが固体支持体に結合される場合、アッセイは、サンプル溶液にインジケーターを担持する固体支持体を接触せしめることを包含する。インジケーターがドナー螢光団を担持する分子側により固体支持体に連結される場合、そのインジケーターの消化に起因する支持体の螢光が上記手段のいづれかにより時間の経過と共にモニターされるであろう。逆に言えば、レセプター分子螢光団が固体支持体に結合される場合、試験溶液が固体支持体上に通され、そして次に、試験溶液のその得られる発光(切断された螢光団による)が測定される。この後者のアプローチは、高い処理量の自動アッセイのために特に適切である。
【0133】
組織学的断片の現場アッセイ
もう1つの態様においては、本発明は組織学的断片における現場プロテアーゼ活性を検出するための方法を提供する。組織におけるプロテアーゼ活性を検出するこの方法は従来技術の方法(たとえば、特異的染色、抗体ラベル、等)よりも実質的な利点を提供する。なぜならば、単純なラベリングアプローチとは異なって、プロテアーゼインジケーターを用いての現場アッセイは、プロテアーゼの単純な存在又は不在よりもむしろ実際の活性を示すからである。プロテアーゼは、しばしば、プロテアーゼラベルを結合することができるそれらの不活性前駆体(チモーゲン)形で組織に存在する。従って、従来のラベリングアプローチは、組織のプロテアーゼ活性と共に生理学的状態に関しての情報を提供しない。
【0134】
現場アッセイ法は一般的に、組織断片(好ましくは凍結された断片)を供給し、その断片と本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターの1つとを接触せしめ、そして得られる螢光を可視化することを含んで成る。可視化は好ましくは、螢光顕微鏡を用いて行なわれる。その螢光顕微鏡は“ドナー”螢光団の螢光を誘発するために“励起”光源を供給する。顕微鏡は典型的には、得られる螢光の検出を最適化するためにフィルターを備え付けられている。従って、たとえば、例1に記載される螢光助剤プロテアーゼインジケーターに関して、Nikon 顕微鏡のための典型的なフィルターキューブは、励起フィルター(λ=550 ±12nm)、二色ミラー(λ=580nm)及び干渉−発光フィルター(λ=580 ±10nm)を含むであろう。上記のように、顕微鏡は、カメラ、光測計又は像獲得システムを備え付けられ得る。
【0135】
断片は好ましくは、固定化又は包埋がサンプル中のプロテアーゼ活性を破壊するので凍結断片として切断される。
【0136】
螢光発生インジケーターは、多くの手段で断片に導入され得る。たとえば、螢光助剤プロテアーゼインジケーターは、組織断片に適用される、上記のような緩衝溶液に供給され得る。他方、螢光発生プロテアーゼインジケーターは、半固体媒体、たとえば組織サンプル上に広げられるゲル又は寒天として供給され得る。ゲルは、プロテアーゼ活性に応答してシグナルを提供しながら、サンプル中の湿気の保持を助ける。螢光発生プロテアーゼインジケーターはまた、ウェスターンブロットの開発に類似する方法に使用され得るポリマー、たとえばプラスチックフィルムに接合されて供給され得る。プラスチックフィルムはスライド上の組織サンプル上に配置され、そして切断されたインジケーター分子に起因する螢光が顕微鏡下でサンプル組織に見られる。
【0137】
典型的には、組織サンプルは、内因性プロテアーゼが螢光発生プロテアーゼインジケーターを切断する時間インキュベートされるべきである。インキュベーション時間は、37℃までの温度(37℃も含む)で約10〜60分の範囲であろう。
【0138】
組織及び生検サンプルに由来する培養物及び細胞懸濁液における細胞の現場アッセイ
さらにもう1つの態様において、本発明は、組織、生検サンプル、又は生物学的流体(たとえば唾液、血液、尿、リンパ、血漿、等)に由来する培養物又は細胞懸濁液における細胞の現場プロテアーゼ活性の検出方法を提供する。培養された細胞は、チャンバースライド上で又は懸濁液において増殖され、そして次に、細胞遠心分離により組織学スライドに移される。同様に、細胞懸濁液は、標準の方法に従って調製され、そして組織学スライドに移される。スライドがリン酸緩衝溶液により洗浄され、そして螢光源プロテアーゼインジケーターを含む、半固体ポリマー又は溶液により被覆される。スライドが、37℃で、プロテアーゼインジケーターを内因性プロテアーゼが切断するのに必要な時間インキュベートされる。次に、スライドが上記のように適切なフィルターを備えた螢光顕微鏡下で試験される。
【0139】
他方では、細胞が37℃でプロテアーゼインジケーターと共にインキュベートされ、次に、緩衝液により洗浄され、そしてガラス細管に移され、そして螢光顕微鏡下で試験される。流動細胞計測計が細胞内酵素活性を定量化するために使用される場合、螢光原インジケーターと共に細胞が、37℃でのインキュベーションの後、緩衝液により単純に希釈され、そして分析される。
【0140】
他のインジケーター組成物
上記で説明されたように、主鎖の反対側(たとえばペプチド切断部位)上に共有結合される螢光分子が自己−相互作用(たとえば、ダイマーの形成を通して)により消光できることが、本発明の発見であった。従って、1つの態様においては、インジケーター分子が適合されたドナー−受容体対よりもむしろ単一の螢光団を用いて製造され得る。また、上記で説明されたように、特に好ましい螢光団は、H−タイプのダイマーを形成するもの(たとえばカルボキシテトラメチルローダミン、カルボキシローダミン−X、ジエチルアミノクマリン、及びカルボシアニン染料)である。
【0141】
しかしながら、単一種のラベルされたインジケーターの使用は、ペプチド−基材の組成物に制限されない。それと反対に、“ホモ−二重ラベルされた”インジケーター分子は、種々の主鎖、たとえば核酸主鎖、オリゴ糖主鎖、脂質主鎖、及び同様のもの(但し、それらだけには限定されない)を利用することができる。そのような主鎖への螢光団のカップリング方法は当業者に良く知られている。たとえば、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、糖、ポリサッカリド、プロテオグリカン、脂質、糖脂質及びリポポリサッカリドに螢光団を結合するための接合方法は、Hermanson, (1995) Bioconjugate Techniques, Academic Press New York, N. Y., Kay M. など., (1995) Biochemistry, 34 : 293-300、及びStubbs, など., (1996) Biochemistry 35 : 937-947 により記載される。
【0142】
核酸インジケーター
ホモ−二重ラベルされた核酸主鎖は、核酸ハイブリダイゼーション及び/又はエンドヌクレアーゼ活性のための効果的なインジケーターを提供する。この態様においては、核酸主鎖が、3’及び5’末端で(直接的な結合を通して、又はリンカー(たとえば、ペプチド)を通して間接的に)自己−消光性(たとえばH−タイプダイマー形成性)螢光団によりラベルされる。核酸主鎖は、自己−相補的領域を含み、そしてそれにより、自己−消光が生じるよう螢光団を接近せしめるヘアピン又は他の自己−ハイブリダイズされたコンホメーションを形成するよう選択される。
【0143】
このようにして形成されたインジケーター(プローブ)が相補的標的核酸にハイブリダイズされる場合、自己−ハイブリダイゼーションが排除され、螢光団が分離され、そして分子により生成される螢光シグナルが上昇する。他方では、螢光ラベルされた核酸主鎖は、ヌクレアーゼ活性(たとえば制限エンドヌクレアーゼ又はリボザイム活性)についてアッセイするために使用され得る。核酸主鎖がヌクレアーゼにより(たとえば、主鎖における標的部位の制限エンドヌクレアーゼ認識により)切断される場合、螢光団は再び分離され、螢光シグナルが高められる。適切な核酸主鎖を選択する方法は、Tyagi and Kramerなど. (1996) Nature Biotechnology, 14 : 303-308 により記載される。
【0144】
ホモ−二重ラベルされた螢光DNA プローブは、種々の情況下で、標的DNA 配列の検出、局在化又は定量化のために使用され得る。従って、たとえば、本発明の核酸インジケーターは、核酸増幅(たとえばPCR)反応における増幅生成物の急速な検出のために使用され得る。ここで、増幅生成物の領域に対して相補的な主鎖を有するインジケーターが選択される。増幅生成物が生成されるにつれて、インジケーターは、生成物にハイブリダイズし、そしてPCR 溶液の螢光シグナル活性が上昇する。核酸インジケーターは、他の種々の情況下で、ハイブリダイゼーション又はヌクレアーゼ活性インジケーターとして使用され得る。
【0145】
たとえば、現場ハイブリダイゼーション(たとえばFISH)において、ゲノムDNA のマッピングは、染色体内の特定の領域を標的化するために螢光プローブを用いて達成され得る(たとえば、Meyne (1993) Chromosome mapping by fluorescent in situ hybridization, pp 263-268 In : Methods in Nonradioactive Detection G.C. Howard, ed., Appleton & Lange, Norwalk, Connecticut ; Morrison (1992) Deiection of energy transfer and fluorescence quenching, pp. 311-352 In : Nonisotopic DNA Probes Techniques L.J. Kricka, ed. Academic Press, New York ; and Varani (1995) Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 24 :379-404 を参照のこと)。
【0146】
もう1つの態様において、自己−消光螢光団は、2種の分子の相互作用(たとえば、タンパク質−タンパク質、タンパク質−核酸、リガンド−受容体、等)をアッセイするために使用され得る。この態様において、1つの螢光団が1つの分子(たとえばタンパク質)に結合され、そして第2の螢光団が第2の分子(たとえば、第2の核酸又は核酸結合タンパク質)に結合される。2種の分子が結合する場合、螢光団は並置され、そしてお互い消化する(たとえば、H−タイプのダイマーの形成を通して)。2種の分子の相互作用を測定するためへのドナー−受容体共鳴エネルギートランスファーシステムの使用は、Bannwarth など., Helvetica Chimica Acta. (1991) 74 : 1991-1999, Bannwarth など. (1991), Helvetica ChimicaActa. 74 : 2000-2007、及びBannwarth など. 、ヨーロッパ特許出願D439036A2 により記載される。
【0147】
オリゴ糖インジケーター
ホモ−二重ラベルされたオリゴ糖主鎖インジケーターは、グリコシダーゼ活性の検出及びレシチン結合タンパク質の同定を可能にする。螢光団は、オリゴ糖又は糖ペプチド主鎖に直接的に接合され、又はリンカー(たとえば、ペプチド)を通して結合され得る。オリゴ糖及び/又は糖ペプチドは、化学的に合成され、組換え的に発現され、又は天然源、たとえばフェチュイン及び他の糖タンパク質から親の糖タンパク質のタンパク質分解断片化により単離され得る。
【0148】
オリゴヌクレオチドに関する場合におけるように、オリゴ糖特異的構造が、特定のグリコシダーゼ、すなわち2種の糖分子間の結合を加水分解する酵素の検出のために選択され得る。
特定のオリゴ糖又はレシチンがそのレシチン結合タンパク質を見出すために選択される場合、高められた螢光性が、2種の染料を分離することによって、又は2種の染料の相対的配向をゆがめることによって、H−タイプのダイマーを破壊する複合体化現象を示す。それらの効果は、ホモ−二重ラベルされたプローブからの高められた螢光性をもたらす。
【0149】
脂質インジケーター
脂質、糖脂質又はリポ多糖が自己−消光(たとえばH−タイプのダイマーを形成する)螢光団によりラベルされ、そしてリポソーム又は他の脂質(たとえば生物学的)膜に付加される場合、螢光性の低下がH−タイプのダイマー形成を示し、そしてそのような螢光強度の程度は、H−タイプのダイマー形成の量の徴候であろう。脂質膜の相対的な流動性のために、自己−消光性螢光団は、安定したH−タイプのダイマーと相互作用することができる(たとえば、約6〜約10Åの空間に近づく)。膜活性剤、たとえば膜の流体力学又は試験化合物への透過性のいずかに影響を及ぼす剤が添加される場合、その観察される螢光強度の変化は、膜流動性又は透過性を変性する試験化合物の能力を示す。従って、そのようなラベルされた脂質は、薬物スクリーニング、及び液体−薬物供給ビークルの開発において有用である。
同様に、本発明の脂質−基材のプローブは、脂質/タンパク質相互作用の程度を同様に調べるために使用され得る。
【0150】
ポリペプチドの細胞摂取
ポリペプチドへの疎水性保護基の結合が、細胞によるそのポリペプチドの摂取を高めることはまた、本発明の発見であった。その効果は、ポリペプチドがまた、螢光団、より好ましくは2種の螢光団を担持する場合、最とも明白である(例9を参照のこと)。好ましい疎水性基は次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:Fmoc、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4−メチルトリチル(Mtt) 、4−メトキシトリチル(Mmt) 、4−メトキシ−2,3,6−トリメチル−ベンゼンスルホニル(Mtr) 、メシチレン−2−スルホニル(Mts) 、4,4’−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh) 、トシル(Tos) 、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc) 、4−メチルベンジル(MeBzl) 、4−メトキシベンジル (MeOBzl) 、ベンジルオキシ(BzlO) 、ベンジル(Bzl) 、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys) 、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジアキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde) 、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom) 、t−ブトキシカルボニル(Boc) 、シクロヘキシルオキシ(cHxO) 、t−ブトキシメチル(Bum)、t−ブトキシ(tBUO) 、t−ブチル(tBu) 、アセチル(Ac) 、及びトリフルオロアセチル(TFA) 。
【0151】
従って、本発明は、細胞中に分子(たとえば、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、脂質、等)を供給するための方法を提供する。前記方法は、少なくとも2種の螢光団分子及び疎水性基、より好ましくはFmoc基を結合している、供給されるべき分子(たとえばポリペプチド)を供給し、そして次に、前記分子と細胞とを接触せしめることを包含する。
【0152】
ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖又は脂質が診断最終点のために又は治療目的のためにインビボで供給される予定である場合、低められた毒性を有するか又はまったく毒性を有さない螢光団及び疎水性基が好ましいことが理解されるであろう。
従って、好ましい態様においては、螢光団は、生物学的活性をほとんど又はまったく有さない非毒性分子により置換され得る。好ましい分子は、供給される予定である分子の2つの末端を連結するリンカーとして作用する融合された環化合物である。特に好ましい融合された環化合物は、励起ダイマーの空間を近づける。
【0153】
最とも好ましい融合された環化合物は、ステロイド類を包含するが、但しそれらだけには限定されない。H−タイプのダイマー形成のために知られている、比較的平らで且つ疎水性の螢光団は、たとえばステロイド分子に見出される同様に疎水性で且つ構造的に硬質で及び/又は平らな融合された環化合物、すなわち完全なステロイド分子よりも小さなステロイド誘導体により置換され得、ここで2〜3個の融合された6員環分子は通常の架橋剤を通して架橋され、本明細書に記載されるFmoc及び他の疎水性基に相当するサイズ及び全体的な疎水性が提供され得る。安全な代謝経路がそれらの小さな構成単位から成る大きな分子のために存在するので、そのようなハイブリッド分子の毒性は低いことが予測される。
【0154】
好ましい態様においては、疎水性分子は、約17×12Åのサイズである。ペプチドがインビボで供給される予定である場合、低められた毒性か又は非毒性の螢光団が好ましい。多くの螢光団の毒性は当業者に良く知られている(たとえば、Haugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 6th Ed., Molecular Probes, Eugene, OR.(1996)を参照のこと)。さらに、毒性(たとえばLD50) は、当業者に良く知られている標準の方法に従って容易に決定され得る。最とも好ましい態様においては、融合された環化合物は、融合されたステロイド、たとえばLattなど. (1965) J. Am. Chom. Soc., 87 : 995-1003 に示される構造体XI及びXIIであり、ここで−OR及び−OR2 は細胞中に輸送することが所望される、ペプチド、核酸又は他分子の末端のための結合の活性化された点として作用することができる。
【0155】
上記に示されるように、ほとんどのいずれかの分子の細胞摂取は、疎水性基及び螢光団又はステロイド架橋剤の結合により増強されるであろう。従って、適切な分子は、実質的に、細胞中に導入することが所望されるいずれかの分子を包含する。特に好ましい分子は、ポリペプチド(たとえば、本発明のプロテアーゼインヒビター)、及び核酸(たとえば、オリゴヌクレオチドHIV インヒビター(たとえば、Jing (1997) Biochem., 36 : 12498-12505を参照のこと)、リボザイム、ペプチド核酸、及び同様のもの)を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0156】
活性検出キット
本発明はまた、サンプル中のプロテアーゼ活性の検出のためのキットを提供する。キットは本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターを含む1又は複数の容器を含んで成る。インジケーターは、溶液に供給され、又は固体支持体に結合され得る。従って、キットは、インジケーター溶液又はインジケーター“計量棒”、吸取紙、培養培地及び同様のものを含むことができる。キットはまた、自動プロテアーゼ活性検出器への使用のためのインジケーターカートリッジ(ここでは、螢光発生インジケーターが“レセプター”螢光団側により固体支持体に結合されている)も含むことができる。
【0157】
キットはさらに、方法を教授し、そしてキットの成分の使用を記載する取扱説明書を含むことができる。さらに、キットはまた、他の試薬、緩衝液、種々の濃度のプロテアーゼインヒビター、原液プロテアーゼ(標準曲線、等の生成のための)、培養培地、使い捨てキュベット及び同様のものを、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターを用いてのプロテアーゼ活性の検出を助けるために包含する。
【0158】
さらに又は他方では、キットが、本明細書に記載されるいずれか他のインジケーター(たとえば、核酸基材のインジケーター、オリゴ糖インジケーター、脂質インジケーター、等)を含んで成ることが理解されるであろう。この場合、キットは、特定のインジケーター主鎖が基質又は結合剤である、特定の活性/化合物/相互作用の検出を促進するであろう。
【0159】
プロテアーゼインヒビター
プロテアーゼインジケーターがまた、プロテアーゼインヒビターとしても作用できることは、本発明の発見でもあった。プロテアーゼインヒビター及びプロテアーゼ基質は、いくつかの基本的性質、たとえばプロテアーゼの触媒性基質結合部位に結合する能力及びプロテアーゼと比較的安定した複合体を形成する能力を共有する。従って、多くの通常の基質又はそれらのフラグメントは、より高い濃度で競争基質阻害を示す。その阻害は、インヒビターがプロテアーゼの同じ基質結合部位に結合し、それにより、それはプロテアーゼの触媒ドメインへの結合において生来の基質と競争するので、競争性である。
【0160】
本発明は、プロテアーゼインヒビター企画のための3種の新規アプローチを提供する。第1のアプローチにおいては、通常の基質は、それがプロテアーゼに十分に結合するが、しかし低められた(遅いか又は存在しない)加水分解速度を有するように再企画される。遅い加水分解速度は、プロテアーゼ認識ドメイン中に変更された(異なった)コンホメーション及び/又はコンホメーション柔軟性を導入することによって達成される。基質(たとえば生来の)がプロテアーゼの基質結合部位に結合した後、P1 とP1'との間のペプチド結合のコンホメーションが、所定のプロテアーゼのペプチド結合加水分解反応の転移コンホメーションにゆがめられる。
【0161】
このペプチド結合及び隣接するペプチド結合が、それらがゆがめられないように変更される場合、加水分解速度は、切断部位ペプチド結合が所望する転移コンホメーションに容易にゆがめられる基質に比較して、低められるであろう。このアプローチは例16に示されており、ここでその例は、プロテアーゼ認識、アミノ酸配列を変えないで、基質の加水分解速度をいかにして変えることができるかを示している。
【0162】
第2のアプローチにおいては、インヒビターが、切断部位ペプチド結合をゆがめることを困難にする決定的なP1 又はP1'残基を置換することによって生成される。通常、P1 及びP1'のアミノ酸側鎖は、プロテアーゼ触媒ドメインの側鎖と特異的に相互作用する。それらの特異的相互作用は、加水分解反応の転移コンホメーションへのペプチド結合ゆがみの調整を促進する。
【0163】
従って、たとえば、CPP32 プロテアーゼ基質におけるアスパラギン酸残基の決定的P1 残基が荷電されていないアスパラギンにより置換される場合、基質とプロテアーゼとの間の通常の相互作用は、変性された基質がプロテアーゼの基質結合部位に結合する場合でさえ、起こらない。再び、これは、より遅いか又はゼロの加水分解速度を導く。インヒビターの企画におけるP1 残基置換効果の例は、DEVNペプチドの性質により示されている(たとえば、図5及び例12を参照のこと)。基質DEVNがインヒビターである生物学的コンホメーションは、例13に示されている。ペプチドDEVNがプロテアーゼに結合する追加の証拠が例15に与えられている。
【0164】
1'残基は、荷電されたアミノ酸側鎖、又は表3に示されるような構造的に硬質の残基(たとえばプロリン)、すなわち DVVCC SMS(通常の基質)及びDVVCC PdMS(インヒビター)のC型肝炎ウイルスプロテアーゼ基質NS3 NS5A/5Bのための基質配列を、導入するために変更され得る。下線の残基は、P1 残基である。
【0165】
第3のアプローチにおいては、基質のP1 及びP1'残基間のアミド結合が、非加水分解性化学結合、たとえばP1 及びP1'残基のための同じアミノ酸側鎖を維持する、エーテル、チオエーテル、メチレン結合、又はアルキレン(C=C)又はエーテル結合(C−O−C(=O))(但し、それらだけには限定されない)に変更され得る。また、アミド結合は、レトロインバーソ(retroinverso)結合、又は他の偽似アミノ酸結合、たとえばCH2 基によりカルボニル基を置換するCH2-NH又はC(=O)−Sにより置換され得る。
【実施例】
【0166】
本発明は次の例により例示される。それらの例は例示目的のためであって、本発明を制限するものではない。
例1. プロテアーゼ活性の検出のための螢光発生分子の合成
a)ペプチド主鎖の合成
アミノ酸配列 Asp-Ala-Ile-Pro-Nle-Ser-Ile-Pro-Cys(ここでC1 は Asp-Ala-Ileであり、Pは Pro-Nle-Ser-Ileであり、そしてC2 は Pro-Cysである)及び Asp-Ala-Ile-Pro-Met-Ser-Ile-Pro-Cys(ここでC1 は Asp-Ala-Ileであり、Pは Pro-Met-Ser-Ileであり、そしてC1 は Pro-Cysである)を、下記表13に与えられるカップリングサイクルのための手段を用い、t−Boc Cys−Pam 樹脂及びt−Boc 化学を用いて手動的に合成した。合成されたペプチドを、4℃の温度で無水条件下で60分間、塩酸による処理により保護解除した。
【0167】
【表13】

【0168】
粗製のHF保護解除され、そして分解された後のペプチドを、分離用C18カラム(YMC. Inc., Charlestown, North Carolina, USA)を用いて逆相HPLCにより精製した。使用された溶媒システムは、水、及びアセトニトリル含有 0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)であった。HPLCを、10ml/分の流速で次のグラジエントを用いて実施した。
【0169】
【表14】

【0170】
メチオニン含有ペプチドの精製は、メチオニンオキシドをメチオニンに還元するためにペプチドを還元条件、たとえばジチオトレイトール(DTT) 及び加熱にゆだねることを必要とした。この還元処理は、1mMのDTT (pH7.5) を含む 150mMのリン酸ナトリウム緩衝液にペプチドを60〜80℃で30分間、溶解することによって実施された。還元はまた、0.03NのHCl による弱酸性pH下で実施されたが、しかしより長い加熱時間を必要とした。続くHPLC精製されたメチオニン含有ペプチドは、水溶液又は凍結形での存在に基づいて酸化することが見出された。酸化されたペプチドは、上記還元条件をくり返すことにより還元性になることが見出された。
【0171】
b)螢光団分子によるペプチド主鎖の誘導体化
ペプチドを、ドナー及びレセプター螢光団により連続的に誘導体化した。特に、Molecular Probes, Inc. Eugene, Oregon, USAから入手できるドナー螢光団(5’−カルボキシテトラメチルローダミン(5−TMR))をまず、ペプチドのアミノ末端に共有結合した。3:1のモル比でのペプチド:プローブを、最少量、通常20〜60μlの溶媒NMP(N−メチルピロリドン)に溶解した。1モル当量のDIEA(ジイソプロピルエチルアミン)をまた、反応混合物に添加した。次に、その反応物を37℃で、12時間〜3日間インキュベートした。2日後、追加の1モル当量の色素分子を時々、添加した。誘導体化は、3日までにほぼ最大収率に達成した。単一の5−TMR 螢光団を担持するペプチドを、下記のようにしてHPLC精製した。
【0172】
第2(レセプター)螢光団(ローダミンXアセトアミド(R492))を、螢光団のヨードアセトアミド基と末端システインのスルフヒドリル基との間の連鎖によりペプチドのカルボキシルシステインに結合した。この結合は、最初の螢光団について記載されているようにして達成された。
次に、完全な螢光発生プロテアーゼインジケーターを、1ml/分で表15に示されるグラジエントを用いて、Waters Associates Inc. (Milford, Massachusetts, USA)からの分析用逆相C3 カラム(2mlの空隙率)を用いてのHPLCにより精製した。
【0173】
【表15】

【0174】
螢光団の結合においてのアミノ及びスルフヒドリル基の両者の遅い反応性は、ペプチドの反応基への接近を立体的に妨げたペプチド主鎖の折たたまれた構造の機能であると思われた。不適切な線状ペプチドを用いての対照実験は、相当に早い結合を示した。折たたまれた構造体はまた、例2及び3に報告される結果により支持される。ペプチドのコンピューターエネルギー最少化モデルはまた、開放された延長構造体よりもむしろ折たたまれた構造体を想定するためのペプチドについての可能な選択を示した。これは、2種のプロリン残基を含むコンホメーション決定領域の存在のためである。
【0175】
例2. プロテアーゼ活性インジケーターの他の合成
a.Fmoc−保護されたペプチド主鎖の合成
表16に列挙されるアミノ酸配列を、表15に与えられるカップリングサイクルについての手段を用いて、Fmoc化学及び2−クロロトリチルクロリド樹脂を利用して手動的に合成した。
【0176】
【表16】

【0177】
合成されたペプチドを、室温で30分間、緩酸処理(2:7:1のv/v比での酢酸:ジクロロメタン:トリフルオロエタノール)により2−クロロトリチルクロリド樹脂から切断した。このペプチド樹脂切断溶液10mlアリコートを、乾燥されたペプチド樹脂 0.1gに添加した。次の側鎖保護基を合成に使用した:Asp, Ser, Thr 、及びTyr 残基のためのt−ブチル、Cys 残基のためのS−トリチル及びS−t−ブチルチオ、及びリシン残基のためのt−Bot, Fmoc 及び4−メチルトリチル。
【0178】
側鎖保護基、及び合成されたペプチドのαアミノ基上のFmoc基を、この緩酸ペプチド樹脂切断試薬により切断されなかった。保護されたペプチド含有溶液を凍結乾燥せしめた。その凍結乾燥された保護ペプチドを、t−Boc 保護解除のためにジクロロメタン中、30%(v/v)TFA, Fmoc 保護解除のためにDMF 又はN−メチルピロリドン中、20%(v/v)ピリジン、4−メチルトリチル保護解除のために水中、1〜5%(v/v)トリフルオロ酢酸又はDCM 中、1% TFA/5%トリイソプロピルシラン、S−t−ブチルチオ保護解除のために水性メルカプトエタノール(10%)、t−ブチル、t−Boc 及びS−トリチル保護基解除のためにTFA :フェノール:水:チアニゾール:エタンジチオール=85:5:5:2.5 : 2.5 溶液、及びt−ブチル及びt−Boc 及びS−トリチルのためにTFA :フェノール:水=90:5:5溶液によりさらに処理した。
【0179】
完全に又は部分的に側鎖保護解除されたペプチドを、個々の溶媒に 0.075%(v/v)TFA を含む水/アセトニトリルグラジエントによりC18カラムを用いて逆相HPLCにより精製した。
【0180】
b.螢光団による、保護されたペプチド主鎖の誘導体化
十分に精製された保護ペプチドを、Cys 又はLys 残基の側鎖の選択的保護解除のために適切な試薬によりさらに処理した。リシンのエプシロン(ε)アミノ基保護のために、3種の異なった保護基、すなわちt−Boc, Fmoc 、及び4−メチルトリチル基の使用は、選択的保護解除、及び従って、特定のリシン残基の選択的誘導体化を可能にした。
【0181】
たとえば、保護されたペプチド約1mgを、最少量のN−メチルピロリドンに溶解した。スクシンイミジルエステル反応性官能基により誘導体化された適切な螢光団を、ペプチド上の反応性螢光団の 1.2〜2倍モル過剰でのペプチド溶液に添加した。10倍モル過剰のジイソプロピルエチルアミン(DIEA) をその反応混合物に添加した。その反応を、室温で2〜4時間、進行せしめた。誘導体化されたペプチドを、C18又はC4カラム及び 0.075%(v/v) TFA−含有水/アセトニトリル溶媒システムを用いて逆相HPLCにより精製した。
【0182】
第1の螢光団によるペプチドの誘導体化は、少なくとも1つのひじょうに疎水性の基、たとえばFmocの存在により促進された。螢光団汚染物、及び誘導体化反応の進行と共に蓄積する反応副生成物及び分解生成物からの誘導体化されたペプチドの溶離(たとえば分割)を、ペプチド上のそのような疎水性基の存在が可能にする。
【0183】
次に、Fmoc基の保護解除は、1つのアミノ基又はスルフヒドリル基が所望する螢光団により誘導体化された後に実施された。アミノ基接合のために使用される螢光団は、6−TMR ,5−(及び6−)カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル、C1309,5−(及び6−)カルボキシ−X−ローダミンスクシンイミジルエステル、DER 、5−(及び6−)カルボキシ−X−ローダミンスクシンイミドエステル及びフルオロセインイソチアシアネートであった。保護解除の後、第2螢光団を、最初の付加法と同じ態様で添加した。
【0184】
【表17】

【0185】
c.誘導体化されたペプチドの分子量特徴付け
保護されたペプチドの誘導体化の間又はその後、強酸保護解除段階が時々、種々のアミノ酸側鎖から残るt−ブチル基を除去するために使用されるので、芳香族アミノ酸又は螢光団が化学的に変性されている可能性が存在した。従って、誘導体化され、そして精製されたペプチドの分子量を決定した。
【0186】
分子量は、フライト質量分光計、すなわちKratos Analytical からのKompact MADLIのマトリックス助力のレーザー脱着時間を用いて測定された。その質量分光計を、 Leucine−Enkaphelin (556.6amu) ,Bradykinin (1061.2amu)及びMellitin (2847.5amu)により検量した。使用されるサンプルマトリックスは、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸であった。サンプルを標的に適用し、そしてエタノール溶液中、 0.1% TFA 1mlをその標的上に添加し、そして次に、乾燥せしめた。50回のレーザーショットからの累積質量スペクトルデータを収集し、そして個々のサンプルについての、親質量ピーク+1に対応するピークを決定した。その結果は表18に要約されている。
計算された及び実験的に決定された質量値間の良好な一致は、最終精製された螢光団−接合のペプチドにおけるいづれの副反応生成物の不在を示す。
【0187】
【表18】

【0188】
例3. 螢光発生プロテアーゼインジケーターは、消化される場合、強いシグナルを供給する
本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターがプロテアーゼにより容易に消化されることを示すために、切断の程度を、プロテアーゼの存在下でインジケーター切断生成物の出現についてアッセイすることによって決定した。式 F1-Asp-Ala-Ile-Pro-Nle-Ser-Ile-Pro-Cys-F2(ここでF1 はαアミノ基を通してアスパラギン酸に連結されるドナー螢光団(5’−カルボキシテトラメチルローダミン(C2211))であり、そしてF2 はシステインのスルフヒドリル基を通して連結されるレセプター螢光団(ローダミンXアセトアミド(R492))である)を有するプロテアーゼインジケーター約1μgを、50mMのリン酸ナトリウム、1mMのEDTA(pH8.9)から成る緩衝液に溶解した。この溶液に、1単位のエラスターゼを添加した。その溶液を、エラスターゼの添加の前及び添加の約30分後にHPLCにより分析した。消化は37℃で行なわれた。HPLCにより分離された成分を、5−TMR 螢光団及びR492螢光団の両者の検出を可能にする 550nmの波長で及びR492螢光団の検出を可能にする 580nmの波長でモニターした。
【0189】
結果は、プロテアーゼエラスターゼの添加の前及び添加の後の螢光発生プロテアーゼインジケーター溶液のHPLCプロフィールを示す図1に示される。図1(a)は、損なわれていない螢光発生プロテアーゼインヒビターを表わす単一のピークを示す、エラスターゼの添加の前のHPLCを示す。エラスターゼの添加後(図1(b)及び1(c))、螢光発生プロテアーゼインジケーターの完全な消化を示す後期溶離の単一のピーク(図1(a))の痕跡は存在しなかった。さらに、図1(b)及び1(c)における2つの優先的なピークは、消化が単一の部位で主に生じたことを示唆する。ペプチド配列内の他の部位での低い程の消化を示すいくつかの小さなピークが存在するが、しかしながら、わずか2つの消化ピークの著しい優先は、それらの第2部位がエラスターゼに容易に接近できなかったことを示す。
【0190】
エラスターゼプロテアーゼの添加後の螢光発生プロテアーゼインジケーターの発光スペクトルの変化を、励起及び発光側の両者上で4nmで設定されたスリット幅を伴ってSLM スペクトロ螢光計モデル 48000を用いてモニターした。すべての測定は、37℃で実施された。
【0191】
図2におけるスペクトルは、エラスターゼの添加の前(a)及び添加の後(b)での螢光発生プロテアーゼインジケーターの発光を示し、そしてエラスターゼの添加の後、インジケータードナー螢光団の発光強度の時間依存性上昇を図3にプロットする。螢光発生プロテアーゼインヒビターは、エラスターゼプロテアーゼによる処理の後、 589nmでの螢光の10倍以上の上昇を示し(図2(a)が図2(b)に比較された)、そして螢光の5倍以上の上昇がプロテアーゼへの暴露の始めの1000秒以内で生じた。処理されたインジケーターと処理されていないインジケーターとの間の強さの変化は、それらが特定のスリット幅を通して統合されるシグナルを表わすので、ある程度、使用されるスリット幅の機能である。従って、より広いスリット幅(たとえば8又は16nmのスリット)が使用される場合、さらに高いシグナルが消化に応答して提供されるであろう。
【0192】
例4. 螢光シグナルは、分子内エネルギーの消光解除によるものであった
プロテアーゼ処理の後に観察される螢光の上昇が分子内エネルギーの消光解除によるものであることを示すために、螢光発生プロテアーゼインジケーターのエラスターゼ消化により生成されるシグナルを、F1(5−TMR)又はF2(R492) のいづれかに結合される同じペプチド主鎖のエラスターゼ処理により生成されるシグナルに比較した。等濃度の二重螢光団分子及び2種の単一螢光団分子への1単位のエラスターゼの添加の後のドナー螢光団の螢光強度の変化を調べた。
【0193】
その結果は図4に示される。二重螢光団分子は、初期において、ほぼ完全な消光を示し、続いて、エラスターゼの添加の約30分後、一定値に達する、エラスターゼの添加の後での螢光の劇的な上昇を示した(図4(a))。対照的に、2種の単一螢光団分子は、実質的に初期消光を示さず、そしてエラスターゼの添加後、螢光の有意な変化も示さなかった。実際、その螢光レベルは、十分に消化された二重螢光団インジケーター分子の螢光レベルに相当した(図4(b))。
【0194】
それらの結果は、螢光発生プロテアーゼインジケーターの螢光強度の上昇が、ドナー螢光団からレセプター螢光団に分子内で移行される共鳴エネルギーの中断によるものであり、そして螢光団とペプチド主鎖との間の相互作用ではないことを示唆する。これは、大きなペプチド又は疎水性ペプチドへの結合に基づいて、多くの疎水性螢光団の螢光が消光されるので、有意である。
【0195】
例5
特定の理論に基づくものではないが、本発明の螢光発生プロテアーゼインジケーターは、それらの折たたまれた構造により、より特定にはそれらの比較的剛性のU−形状コンホメーションにより、高い程度のプロテアーゼ特異性を達成すると思われる。その分子から得られる螢光は、2種の螢光団の平均隔離距離に影響を及ぼす。従って、プロテアーゼインジケーターが比較的折たたまれていないか又は柔軟な状態で存在する場合、折たたまれていない状態(変性)を引き起こす傾向がある条件は、プロテアーゼの不在下で分子の螢光に対する効果をほとんど又はまったく有さないことが予測された。逆に言えば、分子が比較的剛性である場合、螢光団の平均隔離距離の上昇が予測され、それにより消光効果が低められることが予測されるので、変性条件は、螢光シグナルを高めることを予測されるであろう。
【0196】
従って、プロテアーゼの不存在下での螢光源性プロテアーゼインディケーターの螢光に対する変性条件の効果が決定された。第1に、添加されたチャオトロープ剤濃度(2M又は8Mの尿素)の関数としての、例1のインディケーターの螢光の変化が測定された。螢光源性プロテアーゼインディケーターがチャオトロープ剤により変性された場合、螢光強度は時間と共に増加し、分子の変性(アンフォルディング)により平らになった。
【0197】
それらのデータは、螢光発生プロテアーゼインジケーターが通常、エネルギー最少化問題解決法に基づくモデルにより予測されるように、コンホメーション決定領域により創造される安定した折たたまれたコンホメーションで存在することを示す。プラトーの螢光レベルは、十分に変性されたペプチド主鎖によりまだ連結されている螢光団の残る消光を示す。延長された(変性された)ペプチドの消化は、螢光団がお互いさらに遠くの方に移動することができるので、螢光の2倍以上の上昇をもたらす。
【0198】
例6. 1つの螢光団により二重ラベルされたペプチドの消光及び開放
1つの螢光団により二重ラベルされた本発明のペプチド主鎖が、螢光消光をまだ達成し、従って共鳴エネルギー移行の他に、他の機構を通しての消光を示すことは、本発明の驚くべき発見である。
基底状態の二量体化及び衝突性(collisional) 消光が全体の観察される消光に寄与することを評価するために、表11に列挙される一連の二重ラベルされたペプチドを合成した。
【0199】
個々の色素により単独でラベルされたNorFesペプチドと共に色素の吸収スペクトルを比較する他に、切断の前及び後で取られた発光スペクトルが、共鳴エネルギー移行(RET) 以外の手段により、消光の%及び螢光シグナル消光の存在を決定するために比較された。
螢光団は、アスパラギン酸残基(D)のα−アミノ基を通してアミノ末端に及びリシン(K)のε−アミノ基に連結された。ラベリングは、6−TMR 又はDER に連結されるスクシンイミジル基の置換により行なわれた。NorFES−KGY と称するペプチドの構造は次の通りである:
【0200】
【化9】

【0201】
吸光分光計から決定されるように、フルオレセイン−NorFES−フルオレセインを除く、すべての二重ラベルされたペプチドは、いわゆる基底状態のダイマーの存在を示した。これは、より短い波長への吸光最大値の移行、及び酵素消化された、二重ラベルされたサンプルについてのスペクトルに比較される場合、吸収スペクトルの形状の変化により示された。エラスターゼによる切断に基づいて、基底状態のダイマーを破壊し、そしてその得られるスペクトルは同濃度のそれぞれの単独でラベルされたペプチドを含む溶液と同じであった。
【0202】
特定の理論に基づくものではないが、本発明に従って企画され、そして合成された化合物に観察される基底状態のダイマー形成は、ペプチド主鎖のU形状コンホメーションが螢光団をきわめて接近した状態にし、従って、基底状態二量体化を通して逆消光をもたらす2種の螢光団の電子軌道のオーバーラップを可能にすることを示すと思われる。本発明のポリペプチドが、これまで観察されるよりも有意に低い色素濃度で基底状態のダイマーの形成を可能にしたことは驚くべき発見であった。
【0203】
たとえば、溶液における遊離フルオロセイン色素の基底状態二量体化は、0.74M以上の高い濃度でのみ観察され、溶液における遊離エオシン色素の基底状態二量体化は、 2.8×10-2M以上の高い濃度でのみ観察され(Forster and Konig, Zeitschrift fur Electrochemie, 61 : 344 (1957) を参照のこと)、そして溶液におけるローダミンB色素の基底状態二量体化は、6×10-4M以上の濃度でのみ観察された(Arbeloa and Ojeda, Chemical Physics Letters, 87 : 556 (1982)を参照のこと)。対照的に、本発明においては、その効果は、 4.0×10-7Mで又は報告された値よりも約 100倍低い濃度で観察された。
【0204】
本発明に従って合成された化合物についての基底状態ダイマーの観察は、表11に列挙されるそれらの化合物と同じ螢光団を有する二重ラベルされたペプチドについての有意なレベルの螢光消光を予測した。実際、この予測は確証された。すなわち、6−TMR −NorFES−KGY −6−TMR 、すなわちホモ二重ラベルされたペプチドと6−TMR −NorFES−KGY −6−TMR との比較は、消光の程度がヘテロ−対ホモ−においてわずかに高いことを示す(94%対90%)。しかしながら、フルオロセイン誘導体はわずか55%の消光を示した。%螢光消光(%Q)についての記号Io 及びIc は、損なわれていないラベルされたペプチド及び酵素消化されたラベルされたペプチド溶液についての螢光強度を言及する。
【0205】
【表19】

【0206】
基質配列は1つのアミノ酸残基により拡張され、そして螢光団は、観察される消光の量の主な心配を伴わないでリシン残基の側鎖上にエピシロンアミノ基を通して結合され得た。特に、この付加(K−NorFES−KGY と称するペプチド)は、ヘテロ−及びホモ−二重ラベルされたペプチドの両者について、切断率のわずかな上昇及び%消光のひじょうにわずかな上昇をもたらした(K−NorFES−KGY ペプチドにおいては、N−末端ラベリングは、α−アミノ末端よりもむしろリシンのエプシロンアミノ基を通してであった)。
【0207】
エラスターゼによるそれらの基質の切断率をまた、シグナルが最大値の 1/2 である、プロテアーゼの添加後の時間を記録することによって測定した(表11を参照のこと)。3種のホモ−二重ラベルされたペプチド、すなわち6−TMR ;DER の2種の分子及びフルオレセイン(F1)によりラベルされたNorFES−KGY の比較は、次のような切断率の順序を示す:F1−NorFES−KGY −F1>6−TMR−NorFES−KGY−6−TMR >DER−NorFES−KGY−DER。
【0208】
例7. ホモ−二重ラベルされたプロテアーゼインジケーターの使用
本発明のプロテアーゼインジケーターのインビトロ効能を示すために、表皮癌細胞系A431の細胞を、5%ウシ胎児血清(FCS) を含むダルベッコ最少必須培地(DME) を含むPermanox組織培養チャンバースライド(Nunc, Inc., Naperville, Illinois, USA)において不完全集密性まで増殖した。培地の除去の後、20%エタノールを含む溶液 200μLを、個々のチャンバーに添加し、そしてインキュベーションを2分間実施した。次に、エタノール性媒体を除却し、そして単層培養物をDME (FCSを含まない)により2度洗浄した。
【0209】
次に、1×10-7Mの濃度で6−TMR −NorFES−C1171を含むDME溶液を、前記単層培養物と共に10分間インキュベートした。次に細胞を、ローダミンフィルターキューブを用いてNikon 螢光顕微鏡により螢光について試験した。(2種の異なった螢光団によりラベルされたペプチド〔ヘテロ−二重ラベルされた〕に比較して単一の螢光団によりホモ−二重ラベルされたペプチドを用いての利点は、ホモ−二重ラベルされたペプチドを用いての螢光顕微鏡は、二色鏡の発光側上にカットオフフィルター〔すなわち、定義された波長以上のすべての光を伝達するフィルター〕を単に必要として、ところが、ヘテロ−二重ラベルされたペプチドを用いての螢光顕微鏡は好ましくは、干渉フィルター〔すなわち、定義された波長範囲(X±Ynm)における光を伝達するフィルター〕を用いることである)。
【0210】
個々の細胞を、その全細胞質を満たす拡散レッド螢光(エラスターゼにより切断されるプロテアーゼインジケーターにより生成される)により明確に定義した。集密性集団の縁での細胞に関して、その集団の黒い境界部は、細胞の細胞質におけるレッド螢光とは明確に異なっており、これは、その螢光がバックグラウンド螢光又は媒体によるプロテアーゼインジケーターの切断によらなかったことを示唆する。
【0211】
例8
さらに、本発明者は、(ホモ二重ラベルされた) PAI−2,CS−1(31個の残基の長さのペプチド)及び染料−染料ダイマー形成を可能にしない2種のDEVD様ペプチドを合成し、そして誘導体化した。CS−1ペプチドは、有意に長いペプチドにおいて、染料−染料ダイマー構造が形成され得ることを示す。このペプチドは、推定上の切断部位Ile-Leu 結合のアミノ末端側に4個のプロリン残基を含むことを注目すること。また、カルボキシルドメインに1つのプロリンが存在する。CS−1ペプチドからの結果は、2種の染料(螢光団)間に潜在的に大きな配列を維持する。生産性H−タイプダイマーの形成を可能にしない、2種のDEVE−様ペプチドのアミノ酸配列は、F1-DEVDGIDPK[F1]GY及びF1-PDEVDGIDPK[F1]GY である。
【0212】
例9. 流動細胞計測及び螢光顕微鏡分析により試験された基質の細胞摂取
表20に列挙される化合物を、細胞摂取のために合成し、そしてアッセイした。基質の細胞インターナリゼーションを、Jurkat細胞(ヒト急性T細胞白血病系)、HL−60細胞(ヒトプロ骨髄球白血病系)、ヒトリンパ球系、A1.1細胞(ネズミT−細胞系)及びネズミ一次胸腺細胞を用いて試験した。生存細胞による基質摂取の決定に使用される方法は、例6(HPLC方法に関する)、例2(螢光顕微鏡分析に関する)、及び例3(流動細胞計測分析に関する)に提供される。基質の細胞摂取に関するそれらの分析の要約は、この例に提供されている。
【0213】
【表20】

【0214】
表20に列挙されるデータは、(1)2種の螢光団のみの存在が、構造体2,5,7及び9により示されるように、細胞摂取のために最適ではなく;(2)αアミノ基での9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc) 基の付加、及びわずか1種の螢光団の結合は微々たる細胞摂取をもたらさず(たとえば、化合物3);そして(3)螢光団及び少なくとも1種のFmoc基は、基質の効果的な細胞摂取を可能にする(構造体1,4,6,8,10,11及び12)ことを示す。
【0215】
2つの同一の螢光団及び少なくとも1つの追加の疎水性基、たとえばFmoc基によりラベルされた本発明のプロテアーゼ基質を用いての他の実験は、この範例に適合する。低い疎水性の基及び小さなベンジルオキシカルボニル基によるFmoc基の置換は、低レベルの細胞摂取をもたらしたが、しかし疎水性基、たとえばDEVDペプチド化合物構造体5を有さない化合物よりも有意に良好であった。
【0216】
それらのデータは、Fmocがベンジルオキシカルボニル、Z、又は次の他の疎水性基により置換され得ることを示す:キサンチル(Xan) 、トリチル(Trt) 、4−メチルトリチル(Mtt) 、4−メトキシトリチル(Mmt) 、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr) 、メシチレン−2−スルホニル(Mts) 、4,4’−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh) 、トシル(Tos) 、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc) 、4−メチルベンジル(MeBzl) 、4−メトキシベンジル (MeOBzl) 、ベンジルオキシ(BzlO) 、ベンジル(Bzl) 、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys) 、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジアキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde) 、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom) 、t−ブトキシカルボニル(Boc) 、シクロヘキシルオキシ(cHxO) 、t−ブトキシメチル(Bam) 、t−ブトキシ(tBtO) 、t−ブチル(tBu) 、アセチル(Ac) 及びトリフルオロアセチル(TFA) 。
【0217】
化合物5上の酸基DEVDペプチドがエタノールによりエステル化される場合、この修飾されたペプチドは、生存細胞によるいずれの増強された細胞摂取も示さなかった。従って、Fmoc基の重要性、及び2種の螢光団形成H−タイプダイマーが、この負の例により示される。
【0218】
例10. エステラーゼ又はアポプロトシス−関連プロテアーゼ基質と共にインキュベートされた細胞の螢光顕微鏡分析
エラスターゼ基質、Fm-K[F1]DAIPNIuSIPK[F1]GY(ここで、F1はカルボキシテトラメチルローダミンであり、FmはFmocであり、K〔F1〕はリシン(K)のエプシロンアミノ基を通して共有結合されるF1であり、そしてFm−Kはアミノ末端リシン残基のαアミノ基で共有結合されるFmoc基である)を、HL−60細胞と共に使用した。細胞を、10nM〜10μMの範囲の種々の濃度のエラスターゼ基質と共に10〜60分間インキュベートした。次に、細胞を、5%血清を含むRPMI 1640 培地又はリン酸緩衝溶液により5倍に希釈した。サンプルを遠心分離し、そして1mlの洗浄溶液によりもう1度、洗浄した。遠心分離及び洗浄溶液の除去の後、細胞ペレットを約25μLの培地によりやわらかくし、そしてそれらの細胞をガラス細管に移した。次に、細管をガラス顕微鏡スライド上に配置し、そして標準のローダミンフィルターを用いて、螢光顕微鏡下で試験した。
【0219】
アポプトシス−関連プロテアーゼ活性の決定に関しては、例8に列挙される10μMの濃度の化合物(化合物構造体2〜13)を、細胞と共に30分〜3時間インキュベートした。次に、細胞を同様にして2度、洗浄した。ガラス細管を用いて、前記洗浄された細胞を移し、そして螢光顕微鏡下で試験した。
【0220】
例11. アポプトシス−関連プロテアーゼ基質と共にインキュベートされる細胞の流動細胞計測分析
流動細胞計測分析に使用される基質の濃度は、4〜10%のウシ胎児血清を含むRPMI 1640 培地において10μMであった。選択された基質とのインキュベーションの間、細胞密度は、50,000細胞/ml〜4,000,000 細胞/mlの範囲であった。インキュベーション時間は、37℃で30分〜3時間であり、そしてインキュベーション体積は50μl〜2mlであった。基質と共に30〜60分間、インキュベートした後、細胞懸濁液を、氷冷却されたハンクス緩衝溶液(HBSS)により10倍に希釈し、そして次に、ナイロン布シートを通して濾過した。この濾過された細胞懸濁液を、488nm の励起源を用いて、流動細胞計測分析にゆだねた。Becton Dickenson, Inc.の流動細胞計測分析FacSort を、この流動細胞計測分析に使用した。典型的には、サンプル当たり10,000〜30,000個の現象が集められた。
【0221】
基質インキュベーションを伴わない対照細胞及び最大の予測される螢光シグナルを有するサンプルを用いて、計器検出器のパラメーターを設定した。たとえば、基質化合物#11 Fm-CGD2D : Fm-K[F1]DBJGDEVDGIDGJPK[F1]GY(ここでF1はカルボキシテトラメチルローダミンであり;FmはFmocであり、K〔F1〕は、リシン(K)のエプシロンアミノ基を通して共有結合されるF1であり、NIu はノルロイシンであり、Bはアミノイソ酪酸であり、そしてJはエプシロン−アミノカプロン酸である)と共にJurkat細胞を15分間インキュベートした後、基質の細胞摂取を示す約10個のチャネルの上昇が測定された。基質#11は完全には消光されなかったことを注目すること。従って、少量のバックグラウンド螢光が損なわれていない基質から予測される。
【0222】
1μg/mlの抗−Fas 抗体、CH11クローンにより1〜6時間、活性化された細胞からのシグナルは、ピークチャネル数の上昇を示した。螢光強度の10倍ほどの上昇が観察された。細胞が、アポプトシス誘発剤、たとえば抗−Fas 抗体及び50μMでのCPP32 プロテアーゼインヒビターZVAD−フルオロメチルケトンと共に同時インキュベートされる場合、この観察される螢光強度の上昇は排除された。これは、化合物11からのシグナルがZVAD−FMK により阻害できるCPP32 プロテアーゼ活性のためであったことを示した。従って、流動細胞計測分析により決定されるような個々の細胞における観察される螢光強度が、細胞内CPP32 プロテアーゼ活性の直接的な測定として作用した。
【0223】
例12. アポプトシス−関連のプロテアーゼ基質の細胞溶解物加水分解に対するそれらの効果により示される競争基質インヒビター
6時間の抗−Fas −刺激されたJurkat細胞溶解物におけるCPP32プロテアーゼ活性のレベルを、50μMの基質濃度のプロテアーゼ基質DEVD−AFC(ここで、AFC はアミノフルオロメチルクマリンである)を用いて37℃で試験した。使用される緩衝液は50mMのHEPES (Ph7.5, 10%w/vスクロース、 0.1%w/v CHAPS) であった。螢光濃度の変化を、SLM 48000 スペクトルフルオロメーターによりモニターした。
【0224】
DEVD−AFC の加水分解速度は、反応混合物に存在する、DEVD,DEVN及びICE 基質(表12における化合物5,7、及び9)の濃度に依存することが見出された。DEVD,DEVN及びICE の濃度が25μMに上昇するにつれて、DEVD−AFC 加水分解の速度は低められた。従って、DEVD,DEVN及びICE 基質は、それらの加水分解速度がDEVD−AFC 基質の加水分解速度よりも遅いので、標的プロテアーゼ、たとえばCPP32 の基質結合部位に結合し、そして競争インヒビターとして作用する。荷電されていない保存性残基Asn により突然変異誘発されたそのP1 残基を有する基質対照ペプチドが、プロテアーゼ基質結合部位に結合する能力、及び酵素阻害を示す能力をまだ保持していることを見出すことは驚くべきことである。
【0225】
例13. 基質は完全な細胞におけるアポプトシス刺激を遅延し、そして阻害する
Jurkat細胞を、5% CO2雰囲気下で、37℃で、10%ウシ胎児血清含有RPMI 160培地において増殖する。血清含有率が4%に低下する場合、Jurkat細胞増殖速度は遅くなったのみならず、また、有意な数の細胞が36時間以内に死亡した。使用される細胞密度は、約 400,000個の細胞/mlであった。36時間後、対照ウェルは約50%の死亡細胞(トリパンブルー陽性細胞)を含むが、ところが、0.1 又は 1.0μLの濃度の化合物#11(表12)“Fm-CGD2D”、又はFm-K[F1]DBJGDEVDGIDGJPK[F1]GY を含むウェルはわずか10%又は8%の非生存細胞を示した。従って、効果的な細胞摂取を示す化合物#11は、それらのJurkat細胞においてアポプトシスを遅延せしめ、ここでそれはCPP32 プロテアーゼインヒビターとして又はCPP32 活性化プロテアーゼインヒビターとして作用した。
【0226】
例14. 細胞からの損なわれていない及び切断された基質フラグメントの単離
抗−Fas 抗体(37℃で2時間、1μg/ml)によりアポプトシスに誘発されたJurkat細胞を、10μMの基質化合物#10 Fm-G2D2D と共にインキュベートした。この基質と共に1時間インキュベートした後、細胞を、4%血清含有RPMI 1640 培地(あらゆる 100μLのインキュベーション培地のために1mlの洗浄溶液)により洗浄した。細胞を3度洗浄し、次にTriton X-100を含む細胞溶解緩衝液により溶解した。次に、細胞溶解物を、C4 逆相クロマトグラフィーカラム、及び 0.075%のトリフルオロ酢酸を含む水/アセトニトリル溶離剤システムを用いて分析した。分析は、損なわれていない基質よりも早く溶出する2つの主要な新規ピークと共に、損なわれていない基質の存在を示した。2つの回収された主要ピークは、ローダミン吸収スペクトルを示し;従って、それらは基質のプロテアーゼ分解に基づいて生成される2つの主要基質フラグメントに対応する。
【0227】
例15. 標的酵素含有溶液と共に混合される場合のDEVN基質からの螢光シグナル
DEVN (10μM)、すなわち表12の化合物である基質対照ペプチドは、アポプトシス−活性化されたJurkat細胞溶解物によるプロテアーゼ消化に対して耐性であることが見出された。集中的な消化時間は、螢光強度のさらなる上昇をもたらさなかった。この反応混合物のHPLC逆相分析は、完全に切断されていない基質の存在を確かめた。荷電されていないアミノ酸Asn によるP1 残基Asp の置換は、プロテアーゼ非基質へのプロテアーゼ基質の転換をもたらした。
【0228】
この対照ペプチドは、例12に記載されるような実験において競争性基質阻害を示した。さらに、細胞溶解物の添加の後、時間の関数としてモニターする螢光強度は、始め、螢光強度の有意な上昇を示したが、しかし15分後、この初期強度レベルは安定化した。細胞溶解物に存在するプロテアーゼによる基質切断が存在しなかったことを考慮すると、この初期螢光強度の最良な説明は、プロテアーゼに結合するDEVN基質及びコンホメーション変化を受ける基質による。基質の主鎖を包含するこのコンホメーション変化はまた、平均距離及び相対的配向に関してお互いに対しての2つの共有結合される螢光色素分子のコンホメーションにも影響を及ぼす。
【0229】
基質構造体におけるそれらの2種の螢光団の螢光消光の程度は、それらの双極子に関してのそれらの距離及び特定の配向に対して敏感であることが見出された。従って、螢光報告分子のそれらの2つの観点に影響を及ぼすいづれかのコンホメーション変化が、螢光消光に影響を及ぼすことが予測される。従って、プロテアーゼの基質結合部位に結合する基質により誘発されるコンホメーション変化は、観察される初期螢光強度の変化、すなわちその螢光強度の上昇において影響された。基質は切断され得ないので、初期螢光強度の上昇は安定に達する。新規種類の読取り、たとえば基質とその標的結合分子との間の会合の程度としての、基質切断よりもむしろ基質のコンホメーション変化のために、この観察される螢光強度の上昇を利用することができる。
【0230】
例16. 種々のコンホメーション決定ドメイン(CDR) アミノ酸配列によりプロテアーゼ認識ドメインの柔軟性を変更することによって誘発される加水分解速度の変動
いずれかの所定のプロテアーゼのための生理学的に適切な基質のプロテアーゼ切断部位を、2つの場合に分類することができる。1つは、セリンプロテアーゼインヒビター、たとえば好中球エラスターゼインヒビター、又はα−1−抗トリプシンであり、ここでエラスターゼ認識配列は残るインヒビター分子によりかなり正確に保存される。
【0231】
エラスターゼによる切断に基づいて、このプロテアーゼ反応性部位及びその新しく形成された末端残基は、反応性及び切断されたインヒビター構造体の高い分離結晶構造分析により明らかなように、有意なコンホメーション変化を受ける。第2種類のプロテアーゼ切断部位においては、その切断配列は、コンホメーションが十分に定義されていないか又は有意な量の柔軟性が存在するドメインにおいて、遊離線状ペプチドにおいてと同じほど存在する。いくらかの程度の定義されたコンホメーション、又は2種の可能性ある基質間の最大に利用できる主鎖柔軟性差異が、他の基質よりも1つの基質のための与えられたプロテアーゼの選択をもたらすと言われる。
【0232】
化合物4(Fm-DEVD)、10(Fm-G2D2D) 及び11(Fm-CGD2D) は、種々の量の強制されたコンホメーション空間又は柔軟性を、与えられた基質中に、同じプロテアーゼ認識ドメインにより、しかし異なったコンホメーション決定ドメイン又は領域(CDR) により、そのCDR
のベント形成機能を保持しながら、いかにして導入できるかを示す。この例は、CDR のコンホメーション柔軟性又は剛性を変えることによって中心のプロテアーゼ認識ドメインの相対的剛性又は柔軟性をいかにして変えることができるかを示す。
【0233】
Fm-DEVD の親化合物は次の組成を有する:Fmoc-K[F1]DBDEVDGIDPK[F1]GY 。太字の下線の文字は、7個のアミノ酸残基から成るプロテアーゼ認識配列である。化合物#10は、このプロテアーゼ認識配列の両端で2種のグリシン延長部を含む。中心のプロテアーゼ認識ドメインは、アミノ末端でのグリシン残基が生来の配列の一部分であるので、8個の長さの残基GDEVDGIDである。他のアミノ酸、たとえばアラニンよりも本来、より柔軟である2つのグリシン残基は、低いコンホメーション強制、又は逆に、化合物4(表20)よりも高い柔軟性を提供し、そしてそれにより、Aib 又はPro 残基と組合される場合、より一層の屈曲を可能にする。
【0234】
グリシンに存在するメチレン基の他に、5つのメチレン基と共に両末端でアミノカプロン酸の追加の挿入は、強制されたコンホメーションのさらなる緩和、及び従って、プロテアーゼ認識ドメインGDEVDGIDのためのより高い柔軟性を提供する。この柔軟性の進行は、CPP32 はエラスターゼよりもより柔軟なプロテアーゼ認識ドメインを認識するので、CPP32 プロテアーゼによる高められた加水分解速度をもたらした。この言及に関する支持は、その生理学的基質のプロフォームでのCPP32 プロテアーゼ切断部位、すなわちポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ、PARPが2種の十分に折りたたまれたドメイン間に位置することである。
【0235】
従って、そのようなプロテアーゼ切断部位は確実には保持され得ず、又はそのコンホメーションは残る分子よりもほとんど定義されていないことを予測される。従って、基質にそれらの構造特徴を供給するためには、柔軟な残基、たとえばグリシン、エプシロンアミノカプロン酸、βアラニン、及びアミノ酪酸の導入は、基質の中心プロテアーゼ認識ドメインの主鎖柔軟性を調節することに重要な役割を演じることが予測される。コンホメーション決定ドメインのためのそれらの追加の好ましい残基はまた、必要とされるベンド−誘発性影響を付与することが予測される。
【0236】
それらの3種の基質についての観察された、変更された加水分解速度は、プロテアーゼ認識ドメインの柔軟性の調節における成功に向いている。これは、空間を通してお互いと相互作用する2種の螢光団のための適切な配向を維持しながら、タンパク質分解速度における観察される差異において表わされる。柔軟性を調節するための手段を提供することにおける、及び適切に密接した空間においてのアミノ及びカルボキシル末端の配向を可能にすることにおけるこのコンホメーション決定ドメインの重要性は、それらの化合物(4,10及び11)により例示される。
【0237】
それらの例は、Lys-Asp-Aib-Gly 又はLys-Asp-Aib-Ahx-Gly を含んで成るテトラペプチド及びペンタペプチドを提供し、ここでAhxはエピシロンアミノカプロン酸(すなわち、NH2-(CH2)5-COOH)である。螢光団はロイシン残基のエピシロンアミノ基に結合される。カルボキシル末端CDR ドメインは、トリペプチドGly-Pro-Lys 及びテトラペプチドGly-Ahx-Pro-Lys として定義される。加水分解速度は、化合物4(Fm-DEVD : Fm-K[F1]DBDEVDGIDPK[F1]GY]) と10(Fm-G2D2D : Fm-K[F1]DBGDEVDGIDGPK[F1]GY)との間で3倍、早められた。
【0238】
図5に示されるように、加水分解速度は、さらに、アミノカプロン酸(Ahx) 付加物、すなわち化合物11(Fm-CGD2D : Fm-K[F1]DB Ahx GDEVDGIDG Ahx PK[F1]GY)により、上記グリシン残基挿入よりも約3倍、早められた。従って、全体的に少なくとも9倍の基質加水分解速度の上昇が達成された(表20における化合物4及び11)。
【0239】
例18. プロテアーゼ基質において分子内H−タイプのダイマーを形成する螢光団の構造特徴
本発明のホモ−二重ラベルされた螢光原組成物への使用のための種々の可能性ある螢光団の、H−ダイマー形成と構造元素との間の最強の相互関係は、順に、非局在化電荷、対称性、及び転移双極子の大きさである。疎水性は、このタイプの二量体化において主要決定基であることが観察されなかった。
【0240】
本明細書に記載される実験においては、新規種類のプロ螢光プロテアーゼ基質が企画され、そして合成された。それらの新規螢光原インジケーターは、励起モデルと適合するスペクトル性質を有し;より特定には、ローダミンにより二重ラベルされたそれらのポリペプチドのスペクトルは、青色−シフトされた吸収ピーク及び螢光消光を示し、ここで両インジケーターはH−ダイマー形成のものである。
【0241】
たとえば、NoreFes 、すなわちセリンプロテアーゼエラスターゼにより切断されるウンデカペプチドは、分子内H−タイプのダイマー形成を示す色素の構造元素を同定するために、その切断部位の反対側上で6種の螢光団によりホモ−二重ラベルされた。酵素切断の前及び後で得られるそれらの6種の基質の吸収及び螢光スペクトルは、非局在化された電荷、続く対称性の存在、及び最とも低いエネルギーの電子転移双極子の大きさがダイマー形成において重要な要因であることを示唆する。驚くべきことには、疎水性相互作用がこの研究において使用される螢光団において重要である証拠は存在しなかった。
【0242】
この研究において使用される6種の螢光団は、ローダミン−X、テトラメチルローダミン、フルオレセイン、ジエチルアミノクマリン、ヒドロキシクマリン及びピレンであった。
【0243】
それらの2種のローダミン(ローダミン−X、テトラメチルローダミン)のキサンテン成分は同じ電荷及び対称構造を有するが、それらの間での区別できる特徴は、テトラメチルローダミンの高い転移双極子の大きさ及び低い疎水性である。損なわれていないテトラメチルローダミン−誘導体化された基質のスペクトルは、2種の二重ラベルされた損なわれていないペプチドの吸収スペクトルとそれぞれ切断されたペプチド溶液のスペクトルとを比較する場合、ローダミン−Xの電荷よりもより顕著な電荷を示すことが注目される。
【0244】
上記に示されるように、+1の電荷がキサンテン構造体の個々にわたって局在化された2種のローダミン誘導体に比較して、フルオレセインの3種の接合された環成分はpH9で荷電されていなかった。ペプチドの分解による色素(フルオレセイン)の分離の後、吸収スペクトルのいずれかの有意な形状変化の欠失は、H−ダイマー形成における電荷のための役割を示す。この誘導体に関して観察される、ほとんど目立たないが、しかし、それにもかかわらず、測定可能な消光は、2種のローダミンのいづれかが、フルオレセインに関するダイマー形成のための解離定数がローダミンのための解離定数よりも4の大きさの程度低い、溶液におけるキサンテンの前記研究と一致する相互作用と比較して、2種のフルオレセイン間の低いが、しかし測定可能な程度の相互作用に向ける。
【0245】
次に、色素対称の影響を、2種のクマリン、すなわちジエチルアミノクマリン及びヒドロキシクマリンを用いて試験した。この種類の分子は、対称元素を含まない。ジエチルアミノクマリンは、ローダミンに類似して、その2つの接合された環上に非局在化された陽性電荷を担持し、そしてヒドロキシクマリンは、フルオレセインに類似して、pH9で中性である。ジエチルアミノクマリン−ラベルされたNorFesのスペクトルは、11nmの青色シフトを示し、そしてヒドロキシクマリン−ラベルされたNorFesのスペクトルはわずかに青色の層を示す。切断されたペプチド溶液に対する損なわれていないペプチドのそれぞれの消光度、76%及び28%は、非局在化された電荷の重要性と一致する。ジエチルアミノクマリン−誘導体化されたペプチドのあまり顕著でないスペクトルとキサンテンのスペクトルとの比較は、H−ダイマー形成において重要な要素としての対称性の役割を支持する。
【0246】
最後に、疎水性の役割を、ピレン、すなわち炭素及び水素のみを含むS2 対称を有する螢光団を用いて研究した。スペクトル変化は、吸収又は螢光モデルのいずれにも観察されず、そして転移双極子の大きさは極端に小さい。それらの結果は、H−ダイマー形成における疎水性のための有力な役割に対する証拠を提供する。
【0247】
要約すると、H−ダイマー形成と構造元素との間の最とも強い相互関係は、順に、非局在化された電荷、対称性、及び転移双極子の大きさである。疎水性は、このタイプの二量体化においては主要決定因子であることが観察されなかった。
上記例は、例示的であって、本発明を限定するものではない。本発明の他の変法は当業者に容易に明らかになるであろう。本明細書に引用されるすべての出版物、特許及び特許出願は、引用により本明細書に組込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1A】図1Aは、D-NorFES-Aプロテアーゼ阻害剤(F1-Asp-Ala-Ile-Pro-Nle-Ser-Ile-Pro-Cys-F2)(式中、F1 はドナー(D)螢光団(5’−カルボキシテトラメチルローダミン(C2211)であり、そしてF2 はアクセプター(A)螢光団(ローダミンXアセタミド(R492) である)の、エステラーゼ添加前及び後でのHPLC分析を示す。エラスターゼ添加前のHPLCであって、無傷のインジケーター分子を示す後溶出ピークを示す。
【0249】
【図1B】1Bは、D-NorFES-Aプロテアーゼ阻害剤(F1-Asp-Ala-Ile-Pro-Nle-Ser-Ile-Pro-Cys-F2)(式中、F1 はドナー(D)螢光団(5’−カルボキシテトラメチルローダミン(C2211)であり、そしてF2 はアクセプター(A)螢光団(ローダミンXアセタミド(R492) である)の、エステラーゼ添加前及び後でのHPLC分析を示す。エラスターゼ添加後のHPLCであって、両螢光団が吸光する 550nmでの検出を示す。
【0250】
【図1C】1Cは、D-NorFES-Aプロテアーゼ阻害剤(F1-Asp-Ala-Ile-Pro-Nle-Ser-Ile-Pro-Cys-F2)(式中、F1 はドナー(D)螢光団(5’−カルボキシテトラメチルローダミン(C2211)であり、そしてF2 はアクセプター(A)螢光団(ローダミンXアセタミド(R492) である)の、エステラーゼ添加前及び後でのHPLC分析を示す。はエラスターゼ添加後のHPLCであって、F2 が最大吸収する 580nmでの検出を示す。
【0251】
【図2A】図2Aは、エラスターゼ添加の前のD-NorFES-A- 螢光源プロテアーゼインジケーターの発光スペクトルを示す。
【図2B】図2Bは、エラスターゼ添加の後のD-NorFES-A- 螢光源プロテアーゼインジケーターの発光スペクトルを示す。
【図3】図3は、エラスターゼ1ユニットの添加後の時間の関数としての、図1の螢光源プロテアーゼインディケーターの経時的増加を示す。
【0252】
【図4A】図4Aは、エラスターゼ1ユニットの添加後の時間の関数としての、ドナー螢光団の螢光強度を示す。図1の螢光源プロテアーゼインディケーター。
【図4B】4Bは、エラスターゼ1ユニットの添加後の時間の関数としての、ドナー螢光団の螢光強度を示す。2種類の螢光団のいずれか一方により標識された図1の螢光源プロテアーゼのペプチド主鎖。D-NorFES-Aは、F1-Asp-Ala-Ile-Pro-Nle-Ser-Ile-Pro-Cys-F2 プロテアーゼインディケーター(式中、F1 はドナー螢光団(5’−カルボキシテトラメチルローダミン(C2211)であり、そしてF2 はアクセプター螢光団(ローダミンXアセタミド(R492) である)である。D-NorFES及びA-NorFESのそれぞれは、同じペプチド主鎖を有するが、しかし2つの螢光団の内1方のみを提供する分子を示す。
【0253】
【図5】図5は、DEVD, DEVN及びICE 基質の螢光を示す。1μMの基質DEVD(例8の化合物2)、DEVN(例8の化合物3)及びICE(例8の化合物5)を含有する測定緩衝液50mM HEPES緩衝剤、pH7.5 、10%(w/v)シュークロース及び 0.1%(w/v)(HAPS)100μLに、10μLのジャーカット細胞の細胞溶解物を添加し、そして37℃にて16時間インキュベートした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子のコンホメーションの変化を検出するための方法であって、
第1螢光団及び第2螢光団をそれに結合している第1分子を用意し、ここで前記第1螢光団及び前記第2螢光団は同じ種の螢光団であり、そして前記螢光団が、同じ位置で前記分子に結合される単一の螢光団の螢光強度に比較して、前記螢光団の個々の螢光強度を検出できるほどに低めるために前記螢光団の相互作用のための十分な距離で並置され;そして
前記螢光団間の空間が、前記分子のコンホメーションの前記変化により広くされるにつれて、螢光の変化を検出する;
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記螢光団が、空間の広がりの前、H−タイプのダイマーを形成する請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】
前記螢光団がお互い約10Å以下の距離で存在する請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項4】
前記螢光団が、カルボキシテトラメチルローダミン、カルボキシローダミン−X及びジエチルアミノクマリン、テトラメチルローダミン、ジエチルローダミン、及びローダミン110 から成る群から選択される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項5】
前記コンホメーションの変化が、螢光団の1つをそれぞれ担持する2種の異なった分子に前記分子を分割する請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項6】
前記コンホメーションの変化が、前記第1分子への第2分子の結合により生成される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項7】
前記分子が、核酸、多糖、ペプチド、タンパク質、脂質、リン脂質、糖脂質、糖タンパク質、ステロイドから成る群から選択される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項8】
前記分子が核酸であり、そして前記コンホメーションの変化がもう1つの核酸への前記核酸のハイブリダイゼーションにより生成される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項9】
前記分子が核酸であり、そして前記コンホメーションの変化が前記核酸の分解により生成される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項10】
前記分子が多糖であり、そして前記コンホメーションの変化が前記多糖の分解により生成される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項11】
組成物のコンホメーションの変化を検出するための螢光原組成物であって、第1螢光団及び第2螢光団をそれに結合している分子を含んで成り、ここで前記第1螢光団及び第2螢光団は同じ種の螢光団であり、そして前記螢光団が、同じ位置で前記分子に結合されるそれぞれ個々の螢光団の螢光強度に比較して、前記螢光団の個々の螢光強度を検出できるほどに低めるために前記螢光団の相互作用のための十分な距離で並置されることを特徴とする組成物。
【請求項12】
細胞中に分子を供給するための方法であって、
疎水性基に、及び2種の螢光団に又は少なくとも1つの融合された環構造体のいづれかに結合される前記分子を用意し;そして
前記細胞と前記分子とを接触せしめ、それによって、前記分子が前記細胞中に侵入する方法。
【請求項13】
前記分子が、核酸及びポリペプチドから成る群から選択される請求の範囲第12項記載の方法。
【請求項14】
前記融合された環構造体が、生物学的に不活性化されたステロイドである請求の範囲第12項記載の方法。
【請求項15】
前記疎水性基が、Fmoc、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4−メチルトリチル(Mtt) 、4−メトキシトリチル(Mmt) 、4−メトキシ−2,3,6−トリメチル−ベンゼンスルホニル(Mtr) 、メシチレン−2−スルホニル(Mts) 、4,4’−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh) 、トシル(Tos) 、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc) 、4−メチルベンジル(MeBzl) 、4−メトキシベンジル (MeOBzl) 、ベンジルオキシ(BzlO) 、ベンジル(Bzl) 、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys) 、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジアキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde) 、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom) 、t−ブトキシカルボニル(Boc) 、シクロヘキシルオキシ(cHxO) 、t−ブトキシメチル(Bum) 、t−ブトキシ(tBUO) 、t−ブチル(tBu) 、アセチル(Ac) 、及びトリフルオロアセチル(TFA) から成る群から選択される請求の範囲第12項記載の方法。
【請求項16】
前記螢光団が、カルボキシテトラメチルローダミン、カルボキシローダミン−X及びジエチルアミノクマリンから成る群から選択される請求の範囲第12項記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が哺乳類細胞である請求の範囲第12項記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−167757(P2008−167757A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21366(P2008−21366)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【分割の表示】特願平10−536778の分割
【原出願日】平成10年2月20日(1998.2.20)
【出願人】(502087552)オンコイミューニン,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】