説明

生物学的試料から標的バイオエンティティを分離する方法及び装置

生物学的試料から標的バイオエンティティを分離する方法は、生物学的試料を、標的バイオエンティティまたは標的バイオエンティティ上の決定基に対して選択的な結合親和性を有する磁気的に標識が付けられたリガンドと接触させて、標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を形成する。磁気モジュールの磁場中に、画定された流体流路を有する分離モジュールを配置する。その磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、そのアレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されている。分離モジュールを通して生物学的試料を通過させて、その試料が画定された流体流路を通して通過している間、その生物学的試料を磁場に晒し、画定された流体流路内で複合体の移動を阻止または阻害することによって、標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を磁気的に捕捉する。磁場から分離モジュールを取り除き、かつ流体流路から標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を回収する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願への参照】
【0001】
この出願は、2009年4月22日に提出された米国仮特許出願No.61/171532、2009年5月29日に提出された米国仮特許出願No.61/182661、および2009年12月10日に提出された米国仮特許出願No.61/285286に対する優先権を主張する。これによって、前の出願の内容はその全体が組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
この発明は、生物学的試料からの標的バイオエンティティの分離に関する。一つの特定の実施形態において、本発明は、血液試料からの稀なまたは非常に稀な循環腫瘍細胞の分離と濃縮に関連する。しかし、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、他の広い範囲の標的細胞、サブ細胞、並びに、微生物やウイルス、膜結合小胞、細胞内タンパク質、炭水化物および核酸を含む非腫瘍細胞のような分子バイオエンティティ、汚染物質や毒素、並びに希土類元素のような要素さえも含む、一般的な分離に拡がる。
【背景技術】
【0003】
大まかに言えば、本発明は、生物学的試料、特に血液、血漿および血清試料を構成する複雑な混合物からの細胞や分子標的バイオエンティティの分離に関する。
【0004】
上述したように、特定の一実施形態では、本発明は、癌または前癌状態の腫瘍から循環系に、流出し、漏洩しまたは移行した稀なまたは非常に稀な腫瘍細胞またはそれらのサブ細胞成分の血液試料からの分離および濃縮のための方法を提供する。これらの稀なまたは非常に稀な腫瘍細胞またはそれらのサブ細胞成分の早期発見は、最も重要であり、人間と他の動物における悪性疾患の予後と転帰に非常に大きな影響を与える。がん研究における最近の進展は、それらは稀または非常に稀ではあるけれども、患者の癌または前癌状態の診断や癌患者の治療反応を監視するのを支援するための適切なバイオマーカを用いて、循環腫瘍細胞が末梢血試料で検出され得る、ということを示している。
【0005】
同様に、母体血液試料中の循環する胎児細胞の分離は、出生前診断に使用可能であり、また、抗原特異的リンパ球の分離は免疫監視に使用可能である。
【0006】
また、本発明は、血液試料からの循環する幹細胞の分離と濃縮の方法を提供する。
【0007】
ボーディ(Bodey)の米国特許No.6008002は、癌細胞に関連する抗原の検出と分離のための組成物および方法を開示している。その方法は、検出と分離の薬剤として抗原特異的免疫磁性組成物を利用する。例示の免疫磁性組成物は、常磁性粒子と更に抗原特異的ビオチン化抗体とに結合したアビジンまたはストレプトアビジンを含んでいる。磁場内で親和性カラムに配置された、癌細胞に関連する抗原と免疫磁性組成物との流動的混合物は、上記カラムの内壁に堆積された癌細胞と免疫磁性組成物の複合体を生成する。
【0008】
ザウアー(Saur)らの米国特許No.4710472は、常磁性粒子で被覆された細胞をシステムから除去するのに適した磁気分離装置であって、ベースと、そのベース上に取り付けられた複数の磁石とを備え、試料室は磁石に近接して配置されるべき試料容器を保持するために作製されており、さらに、試料容器に対して磁石の位置を調整するための手段を備えたもの、を開示している。常磁性粒子で被覆された細胞を含む血液試料は、磁石に近接して取り付けられているチューブを通して通過される。常磁性粒子で被覆された細胞は、磁石によって引き付けられ、そのチューブ内に保持される一方、非磁性細胞はそのチューブを通過する。
【0009】
デビッドソン(Davidson)らの米国特許No.6482328は、試料中の標的粒子の濃縮または標的粒子に関する試料の枯渇を生ずるために、選択されたタイプの標的粒子を試料から分離するための方法および装置であって、標的粒子を磁気的に染めるために選択的な親和性を有する磁性粒子と試料との試料混合物を生成し、緩衝液の源へ接続可能な入口と、上記緩衝液のための出口とを有するチューブを通して緩衝液の流れを生成し、上記緩衝液の流れが生成された後、上記チューブを通して流れる上記緩衝液中に上記試料混合物を導入し、両方が上記チューブを通して供給されるように、上記緩衝液は上記試料混合物ための連続的な液体キャリアを形成し、かつ、装置内の磁化ステーションで上記チューブを横切って磁場を印加し、磁気的に染められた上記標的粒子が上記緩衝液中で分離され、かつ上記磁化ステーションで上記チューブ内に保持されることによるもの、を開示している。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一つの局面によれば、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離する方法であって、
(a)上記生物学的試料を、上記標的バイオエンティティまたは上記標的バイオエンティティ上の決定基に対して選択的な結合親和性を有する磁気的に標識が付けられたリガンドと接触させて、上記生物学的試料中に標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を形成し、
(b)磁気モジュールの磁場中に、画定された流体流路を有する分離モジュールを配置し、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
(c)上記分離モジュールを通して上記生物学的試料を通過させて、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料を磁場に晒し、上記画定された流体流路内で上記複合体の移動を阻止または阻害することによって、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を磁気的に捕捉し、
(d)任意に、かつ好ましくは、上記複合体が上記流体流路内で磁気的に捕捉される間、上記画定された流体流路を通して洗浄液を通過させ、
(e)上記磁場から上記分離モジュールを取り除き、および
(f)上記流体流路から上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を回収するステップを含むものが提供される。
【0011】
別の局面では、本発明はまた、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離するのに使用される装置であって、
(i)画定された流体流路を有する分離モジュールと、
(ii)磁場をもつ磁気モジュールを備え、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
上記分離モジュールは、上記流体流路が上記磁気モジュールの上記磁場内に配置されている第1の位置と、上記流体流路が上記磁気モジュールから除去されている第2の位置とを有し、
(iii)上記分離モジュールが提供する上記画定された流体流路を通して上記生物学的試料と、任意に洗浄液とを通過させるための手段を有するコントローラを備え、それによって、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料は上記磁気モジュールの磁場に晒されるものを提供する。
【0012】
一つの局面では、本発明は、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離する方法であって、
(a)上記生物学的試料を、上記標的バイオエンティティまたは上記標的バイオエンティティ上の決定基に対して選択的な結合親和性を有する磁気的に標識が付けられたリガンドと接触させて、上記生物学的試料中に標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を形成し、
(b)磁気モジュールの磁場中に、画定された流体流路を有する分離モジュールを配置し、上記画定された流体流路は、共通の入口と共通の出口を有する複数の管状要素を含み、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
(c)上記分離モジュールを通して上記生物学的試料を通過させて、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料を磁場に晒し、上記画定された流体流路内で上記複合体の移動を阻止または阻害することによって、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を磁気的に捕捉し、
(d)任意に、かつ好ましくは、上記複合体が上記流体流路内で磁気的に捕捉される間、上記画定された流体流路を通して洗浄液を通過させ、
(e)上記磁場から上記分離モジュールを取り除き、および
(f)上記流体流路から上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を回収するステップを含むものを提供する。
【0013】
この局面では、本発明はまた、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離するのに使用される装置であって、
(i)画定された流体流路を有する分離モジュールを備え、上記画定された流体流路は、共通の入口と共通の出口を有する複数の管状要素を含み、
(ii)磁場をもつ磁気モジュールを備え、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
上記分離モジュールは、上記流体流路が上記磁気モジュールの上記磁場内に配置されている第1の位置と、上記流体流路が上記磁気モジュールから除去されている第2の位置とを有し、
(iii)上記分離モジュールが提供する上記画定された流体流路を通して上記生物学的試料と、任意に洗浄液とを通過させるための手段を有するコントローラを備え、それによって、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料は上記磁気モジュールの磁場に晒されるものを提供する。
【0014】
別の局面では、本発明の方法は、
(i)上記生物学的試料を、第1の点又は収集点で収集し、
(ii)上記第1の点で上記試料を、上記磁気的に標識が付けられたリガンドを含む収集媒体に追加し、
(iii)続いて、上記生物学的試料と上記磁気的に標識が付けられたリガンドとを含む上記収集媒体を、第2の点又は試験点に転送し、
(iv)上記第2の点で上記方法を完了するステップを含んでいても良い。
【0015】
本発明のこの局面では、上記第1の点と第2の点とは分離されており、例えば、互いに遠隔されまたは離れているのが好ましい。一例として、第1の点又は収集点は患者の家、医師の手術室や事務所、または病院の病棟であっても良く、一方、上記第2の点又は試験点は、病院や商業試験所または分析研究所などの中央の試験施設であっても良い。
【0016】
また、一方での上記試料の収集のステップおよび上記収集媒体に対する上記試料の追加のステップ、および他方での上記方法の完了のステップは、互いに時間的に、特に、上記第1の点から上記第2の点へ上記収集媒体を輸送するだけでなく、上記試料が通過している間、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体の形成を可能にするのに十分な通過時間の期間だけ、分離されているのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の例で使用される基本的要素と流体回路の概略図であり、試料チューブまたは容器(1)と、分離モジュール(2)と、磁気モジュール(3)と、真空源および廃液溜め、例えば20または30mlのシリンジ(4)とを示している。シリンジ(4)は、分離モジュール(2)(それは磁気モジュール(3)の磁場内に配置され又は磁場から取り除かれても良い。)を通して、チューブ(1)から廃液溜め(すなわち、図中のシリンジ)へ試料を引き付けるのに便利な手段を提供する。分離モジュールと磁気モジュールは、分離モジュール(2)が磁気モジュール(3)の磁場内に導入され又は磁場から取り除かれ得るように、互いに対して移動可能であることに注意されたい。
【図2】図2は、分離モジュール(22)のコイル状チューブバージョンの概略図である。分離モジュールは、磁気モジュール(23)(それはサポート(26)に取り付けられている)の磁場から分離しているが、磁場内に移動可能である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態の、複数の試料を1つずつまたは同時に磁気モジュールを通り過ぎて走らせるのに適した分離モジュールと磁気モジュールを示している。図示のように(図3a)、2つの分離モジュールチューブ(32)は、磁気モジュール(33)の磁場内に保持されるように(図3b)、または磁場から取り除かれるように(図3c)、フレーム(35)で支持され、ベース(36)に取り付けられている。分離モジュールにより多くのチューブを追加すれば、より多くの試料を処理することができる。
【図4】図4は、本発明の2つの実施形態を示している。これらの実施形態では、磁石(43)は、分離モジュール(42)のチューブの長軸の周りに回転可能なフレーム(46)上に支持されている。磁石のペアは、上記チューブ長に対して反対で平行であっても良く(図4a)、または上記チューブに対して直列で平行であっても良い(図4b)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、磁性粒子または磁性粒子に結合若しくは付着されている標的バイオエンティティの分離や精製のための高スループット装置を提供する。特に、システムは、流体試料から化学的および生物学的成分の迅速かつ効率的な分離に適し、かつ、現在の装置で効果的には提供されていない産業用および研究室用途向けに拡張性があるように設計されている。分離されるべき標的バイオエンティティは、例えば農薬、核酸やタンパク質などの分子、エキソソーム、リボソーム、ウイルスなどのサブ細胞成分、例えば循環腫瘍細胞または循環幹細胞などの細胞、および、細菌性病原体を含む微生物を含んでいても良い。流体試料は、水や、血液、血漿、血清、牛乳、尿や糞便抽出物等の生物学的流体のような流体を含んでいても良い。
【0019】
磁気分離による流体試料からの生物学的およびその他の成分の分離は、十分に確立された検査法であり、典型的には、次のステップを含む。
【0020】
a)試験管のような容器内で、標的バイオエンティティのための親和性を有する磁性粒子を、上記エンティティを含んでいると疑われる流体試料と混合し、
b)上記粒子が標的成分に結合するための時間を許容し、
c)上記粒子が上記容器の壁に引き付けられるように、上記容器の下や周りに磁石を設け、
d)上記流体を除去し、
e)洗浄液で上記粒子を再び懸濁し、上記ステップc)とd)を数回繰り返して、誤って捕捉された余分な物質を除去し、
f)精製された上記粒子を再び懸濁して、それらの特別に捕捉されたエンティティが適当な緩衝液または安定液にある状態にする。
【0021】
本発明は、磁性粒子を含む液体試料を、上記粒子の磁気拘束のための磁気モジュールを通過させて流すことによって、上記確立された方法に対して、磁気分離と精製の速さと効率を向上させる。
【0022】
最も広い局面では、本発明は、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離する方法であって、
(a)上記生物学的試料を、上記標的バイオエンティティまたは上記標的バイオエンティティ上の決定基に対して選択的な結合親和性を有する磁気的に標識が付けられたリガンドと接触させて、上記生物学的試料中に標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を形成し、
(b)磁気モジュールの磁場中に、画定された流体流路を有する分離モジュールを配置し、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
(c)上記分離モジュールを通して上記生物学的試料を通過させて、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料を磁場に晒し、上記画定された流体流路内で上記複合体の移動を阻止または阻害することによって、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を磁気的に捕捉し、
(d)任意に、かつ好ましくは、上記複合体が上記流体流路内で磁気的に捕捉される間、上記画定された流体流路を通して洗浄液を通過させ、
(e)上記磁場から上記分離モジュールを取り除き、および
(f)上記流体流路から上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を回収するステップを含む方法を提供する。
【0023】
一つの局面では、本発明は、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離する方法であって、
(a)上記生物学的試料を、上記標的バイオエンティティまたは上記標的バイオエンティティ上の決定基に対して選択的な結合親和性を有する磁気的に標識が付けられたリガンドと接触させて、上記生物学的試料中に標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を形成し、
(b)磁気モジュールの磁場中に、画定された流体流路を有する分離モジュールを配置し、上記画定された流体流路は、共通の入口と共通の出口を有する複数の管状要素を含み、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
(c)上記分離モジュールを通して上記生物学的試料を通過させて、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料を磁場に晒し、上記画定された流体流路内で上記複合体の移動を阻止または阻害することによって、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を磁気的に捕捉し、
(d)任意に、かつ好ましくは、上記複合体が上記流体流路内で磁気的に捕捉される間、上記画定された流体流路を通して洗浄液を通過させ、
(e)上記磁場から上記分離モジュールを取り除き、および
(f)上記流体流路から上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を回収するステップを含む方法を提供する。
【0024】
本明細書で用いられる用語「標的バイオエンティティ」は、生物学的または医学的な関心のある多種多様な素材を指す。例としては、ホルモン、タンパク質、ペプチド、炭水化物、レクチン、オリゴヌクレオチド、薬剤、化学物質、核酸分子(例えば、RNAおよび/またはDNA)、および、細胞、ウイルス、細菌などの生体粒子を含む生物学的起源の粒子状の被分析物を含む。本発明の好ましい実施形態では、腫瘍細胞または循環幹細胞を循環させている母体循環系における胎児細胞のような稀な又は非常に稀な細胞が、本発明の方法および装置を使用して、生物学的試料中の非標的細胞および/または他のバイオエンティティから効率的に分離され得る。また、標的バイオエンティティは、血液、血漿または血清試料中における、タンパク質、炭水化物、核酸、特にRNAなどのエキソソーム内容物を含む、核酸やエキソソームのようなサブ細胞成分を含んでも良い。
【0025】
用語「生物学的試料」は、制限なしに、細胞含有体液、末梢血、血漿または血清、唾液、組織ホモジネート、肺や他の臓器の吸引物、および洗浄と浣腸の溶液、および、ヒトまたは動物対象から得られる他のどのソースも含む。本発明の方法は、医学的または獣医学の分野に限定されず、食品検査、農事検査、排水検査などのような非医療用途を含む他の分野で、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離するために広く適用可能である、ということが理解されるであろう。
【0026】
用語「決定基」は、既述の標的バイオエンティティのいずれかに関して使用される場合、特に生体特異的なリガンドによって結合可能であり、そして、特定の結合物質に対する選択的結合に含まれ、かつ関与する標的バイオエンティティのその部分を指す。その存在は選択的な結合の発生に必要とされる。基本的な用語では、決定基は、特定の結合対の反応の受容体によって認識される標的バイオエンティティ上の分子の接触領域である。本明細書において用いられるような「特異的結合」または「選択的結合」の用語は、抗原−抗体、受容体−ホルモン、受容体−リガンド、アゴニスト−アンタゴニスト、レクチン−炭水化物、核酸(RNAまたはDNA)またはアプタマのハイブリッド化シーケンス、Fc受容体またはマウスIgG−プロテインA、アビジン−ビオチン、ストレプトアビジン−ビオチン、およびウイルス−受容体相互作用を含む。当業者には明らかなように、他の様々な決定基−特異的結合物質の組み合わせが、本発明の方法を実施する際に使用するために企図される。本明細書中で用いられる用語「抗体」は、免疫グロブリン、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、免疫反応性免疫グロブリンフラグメント、および一本鎖抗体を含む。また、本発明で使用するために企図されているのは、特に伝統的に生成された抗体と類似した特異性をもつ決定基を認識するペプチド、オリゴヌクレオチドまたはそれらの組み合わせである。
【0027】
本発明の方法に従って、標的バイオエンティティのための選択的な結合親和性を有するリガンドは、例えば適切な磁性粒子またはビーズに上記リガンドを結合することによって、磁気的に標識が付けられる。磁性粒子は、免疫および他の生体特異的親和性反応で使用されているように、当該分野でよく知られている(例えば、ホワイトヘッド(Whitehead)らの米国特許No.4554088、およびテルスタッペン(Terstappen)らの米国特許No.7332288を参照されたい。)。これらの粒子は、それらのサイズに基づいて、大(1.5から約50ミクロン)または小(0.7から1.5ミクロン)として分類され得る。
【0028】
小さな磁性粒子は、生体特異的親和性の反応を含む分析において非常に有用である。それらは、生体機能性高分子(例えば、タンパク質)で便利に被覆されており、非常に高い表面積を提供し、合理的な反応速度を与えるからである。0.7から1.5ミクロンの範囲の磁性粒子は、一例として、米国特許No.3970518、4018886、4230685、4267234、4452773、4554088、および4659678を含む特許文献に記載されている。
【0029】
上記のような小さな磁性粒子は、一般的には大きく2つのカテゴリに分類される。第1のカテゴリは、永久に磁化可能なまたは強磁性体の粒子を含む。第2のカテゴリは、磁場に晒されたときのみ、バルクの磁気的挙動を示す粒子を含む。後者は、磁気応答性粒子と呼ばれる。磁気応答性の挙動を示す材料は、しばしば超常磁性体として記載される。ただし、通常、強磁性と考えられる材料(例えば、磁性酸化鉄)は、直径約30nm以下の結晶で提供される場合、超常磁性として特徴づけられるかもしれない。
【0030】
上記の小さな磁性粒子と同様に、大きな磁性粒子(1.5ミクロン超から約50ミクロンまで)も、超常磁性挙動を示すことができる。このような材料の典型的なものは、米国特許4654267に記載されており、Dynal(オスロ、ノルウェー)によって製造されている。プロセスは、膨張する原因となるポリマー粒子の合成を含み、磁鉄鉱結晶が膨張した粒子に埋め込まれる。同じ大きさの範囲内にある他の材料が、分散した磁鉄鉱結晶の存在下でポリマー粒子を合成することによって調製される。これは、ポリマーマトリックス中に磁鉄鉱結晶を捕集する結果となり、こうして得られる材料に磁性をもたせる。どちらの場合も、結果として得られる粒子は、磁場を除去すると容易に分散する能力によって明示される超常磁性挙動を持つ。これらの材料は、小さな磁性粒子と同様に、粒子当たりの磁性材料の質量のおかげで、単純な実験室での磁気学で容易に分離される。
【0031】
磁気的に標識が付けられたリガンドが生物学的試料と接触されるとき、上記リガンドは、上記標的バイオエンティティまたは上記標的バイオエンティティ上の決定基(例えば、腫瘍細胞特異的バイオマーカ)と選択的に結合して、生物学的試料内の磁性粒子またはビーズに結合された標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を形成する。
【0032】
この方法の感度を高めるために、必要に応じて、複数の磁気的に標識が付けられたリガンドが、使用され得る。一例として、血液試料から循環腫瘍細胞(CTC)を分離するために、抗EpCAM(上皮細胞接着分子)抗体で標識が付けられた磁性粒子が使用され得る。しかしながら、EpCAMが全ての上皮細胞には発現せず、その他のものに弱く発現するのみであるので、磁気的に標識が付けられた抗サイトケラチン(CK)抗体がまた、単独で、あるいは磁気的に標識が付けられた抗EpCAM抗体と組み合わせて使用され得る。
【0033】
次に、生物学的試料は、画定された流体流路する分離モジュールを通して通過される。この画定された流体流路は、一つの局面では、近位(入口)端と遠位(アウトレット)端をもつ、適切な迷路や曲がりくねった流体流路を提供するコイル状チューブまたは他の構成のような制限された流体流路であっても良いし、磁気モジュールの磁場内に配置され若しくは配置可能であっても良い。一実施形態では、管状流体流路は、PTFE(テフロン)、PVCまたはシリコンチューブなどの、不活性で可撓性をもつプラスチック製のチューブから形成される。管状流体流路に代わるものとして、曲がりくねった流体流路は、容器内で一連の平行板の周りに流体の流れを設けることによって、または成形や真空成形によって中に流体流路をプラスチック材料の本体内または上に形成することにより、および必要ならば上記流路を接着カバーで封じることにより、実現され得る。好ましくは、上記画定された流体流路は、0.5mmから5mmまでの内径(ID)、好ましくは1.6mmから0.8mmまでのIDを有し、かつ、50mmから200mmまで、好ましくは100mmから125mmまでのチューブ長(磁場内)を有する、不活性で可撓性をもつプラスチック製のチューブから形成される。
【0034】
また、上記分離モジュールによって提供される上記画定された流体流路は、複数のフレキシブルチューブ、例えば、共通の入口と共通の出口に合流するチューブを有する、複数の並行なフレキシブルチューブからなっていても良い。それに代えて、上記流体流路は、個々のチューブで構成されるよりもむしろ、並行なトラックを有して成形されていても良い。上記流路の両端には、上記流路へ又は上記流路からの液体を供給するための手段が設けられる。この局面で、上記分離モジュールは、平坦なベース上に配置された直径1mm、長さ250mmの10本の並行なシリコンゴムチューブであって、各端において、流体の入口と出口の手段への接続に適した束に集まったものであっても良い。それに代えて、上記チューブは、一端で入口マニホールドに、他端で出口マニホールドに接続されていても良い。例えば蠕動ポンプで用いられるようなローラを使用することによって、各チューブを通る均等な流体流のための設備が設けられても良い。
【0035】
本発明のこの局面では、複数の管状要素、特に複数の並行な可撓性チューブの使用は、特に有利である。それは、単一の管状要素またはチューブが使用されている場合よりも、上記画定された流体流路を通して、より少ない流速で(したがって、より少ない剪断力で)、より多くの試料量(したがって、より多くの標的バイオエンティティ)の流れを可能にするからである。
【0036】
分離モジュールによって提供された上記画定された流体流路を通して、上記生物学的試料が近位端から遠位端へ通過するにつれて、それは上記磁気モジュールの磁場に晒される。その結果、上記画定された流体流路内で上記複合体の動きを拘束または妨げ、かつそれを保持することによって、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体が磁気的に捕捉される。
【0037】
一実施形態では、一連の磁場が、上記画定された流体流路に沿って前進的に例えば遠位端から近位端へ印加される。その結果、磁気的に標識が付けられた複合体は、ただ1点というよりはむしろ、流体流路に沿ってより均一に捕捉される。
【0038】
磁石のアレイを横切って流体導管を流れる磁気(または常磁性)粒子は、主に、上記アレイ内で磁石間の接合部に拘束される、ということが指摘されている。それゆえ、本発明は、粒子の最大捕捉をもたらすために、上記流体流路に、複数の磁石または磁気的捕捉のための点を含む磁気モジュールを提供する。上記磁気モジュールは、次のように、磁性粒子を捕捉、濃縮、精製、解放するための永久磁石を採用するのが好ましい。
【0039】
a)例えば4から20個の磁石の、静止した永久棒磁石のアレイが用いられて良く、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されているとき、簡単で効果的な磁気モジュールを提供する。
【0040】
b)複数の棒磁石のアレイが、磁性粒子を捕捉または解放するために、液体の流れの周りを、液体の流れに抗しまたは液体の流れとともに回転するように配置されていてもよい。
【0041】
別の実施形態では、上記分離モジュールは、回転され得る移動する2本の磁石アレイのベルト間に配置されて、上記分離モジュール内において上記画定された流体流路で上記磁性粒子をどちらかの方向に一掃するようになっていても良い。
【0042】
上記好ましい磁気モジュールは、例えば約50×5×3.5mmの少なくとも2つの希土類永久磁石のアレイであり、50×5mmの両側に存在する極をもつ。流れる磁性粒子の最大の拘束は、磁石が、サイドバイサイド及び/またはエンドツーエンドで整列し、それらの極が上または下に交互になって、その結果、N極が上である磁石はS極が上である磁石に隣り合っているとき、それらの磁石の間の接合部で発生する、ということが見出されている。粒子の捕捉を最大化するために、複数の磁石は、ディスク上またはドラムの周りの直線状のペア、ブロック、筏からなるアレイに配列されても良い。全ての場合に、上記分離モジュールの上記流体流路は、磁石間の接合部、すなわち、最大電界強度のゾーンを通して、またはそれに沿って、最大通過を許容するように配置される。引力が整列されるため、上記アレイ内の隣接する磁石の反対の磁気極性の結果として、上記磁気モジュールは、上記分離モジュールの配置をすぐに利用可能にする、簡単な支持部だけを要求する一体性を持つ。また、必要に応じて、この磁気的構造は、磁石が、粒子の捕捉を強化するために液体の流れに抗して、または放出を強化するために液体の流れとともに移動するように、それらの磁石が配置されるのを許容する。
【0043】
磁性粒子の最大収集点は、磁石間のNS接合部に又はそれに隣接しており、磁石の面の上方ではないことから、上記磁石はこの利点を得るために構成され得る。例えば、磁石は次のように配置され得る。
【0044】
(a)チューブが個々の磁石の長軸(後に、図3に示すように)に対して垂直に走る「はしご」状の筏に。この場合、複数の拘束点、すなわち接合部で、粒子の不連続な収集がある。
【0045】
(b)チューブが磁石の長軸の間の接合部に沿って走る並列トラックに。この場合、チューブ/磁石の長さに沿って連続的な収集がある。
【0046】
全ての磁性粒子を可視的に拘束するために必要な流路は、両方の構造(a)および(b)にとって類似しており、したがって、(a)構造は、より多くのチューブが上記磁気モジュールの幅を横切って並行に走らされ得るので、(b)構造の限られた数の磁気接合部をもつものよりも、一般的に好ましい。
【0047】
例えば、(a)および(b)両方の場合に、上記磁気モジュールは、20個の磁石からなり、幅50mmおよび長さ100mmであり得る。構造(a)にとって、上記磁気モジュールを横切って走らされ得る並行なチューブ、したがって試料に対する制限は、チューブの幅とそれに関連するハードウェアによって設定されるものだけである。対照的に、構造(b)では、磁石の間に4つの接合部だけが存在するので、4つのチューブだけが並行して使用(または4つの試料が処理)され得る。
【0048】
コイル状チューブ分離モジュールは、(後に、図2に示すように)上記の直線状モデルよりもコンパクトであり、上記粒子は、全ての接合部で、縦方向、横方向および斜めに拘束される。あり得る欠点は、直線状モデルのようには、複数のチューブ(すなわち試料)用として適していないということである。スピンする磁石の構成は、(後に、図4Aに示すように)捕捉されるべきエンティティを、上記チューブのボア内で「ホバリング」している磁性粒子の「雲」を通して通過させることによって、捕捉を増進する。静磁場では、上記磁性粒子は、上記磁石に最も近いチューブの側へ流れ、分析物のさらなる拘束は起こりそうもない。
【0049】
スピンする磁石の使用、上記分離モジュールを通る上記試料/粒子混合物の再循環、分離前の輸送中の上記混合物の培養は、全て、試薬の反応時間の要件を削減または除去し、試験することを医師または患者により身近にすることを目的とした本発明の局面である。
【0050】
好ましくは、捕捉後に、上記画定された流体流路内に保持された上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体は、上記生物学的試料の非結合細胞と他の成分を削除するために、洗浄液で洗浄される(好ましくは、繰り返し洗浄で)。また、好ましくは、上記洗浄液から上記生物学的試料を仕切るために、また、繰り返し洗浄が実行される場合には洗浄液のアリコートを仕切るために、1つ以上の空気気泡が上記流体流路に沿って供給される。一例として、上記流体流路に沿って通過される流体の順序は、試料−空気気泡−洗浄液−空気気泡−洗浄液であっても良い。
【0051】
最後に、上記捕捉された複合体は、上記標識が付けられた複合体を解放するために上記磁気モジュールの磁場から上記分離モジュールを取り除くことによって、それから上記複合体を収集容器中へ転送することによって、例えば収集流体を上記流体流路を通して通過させることによって、上記流体流路から回収される。その後、分離された標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体は、必要に応じて、収集流体の除去によって濃縮されても良い。上記複合体は、さらなる処理、例えば疾患のバイオマーカの分析のために適する。
【0052】
一実施形態では、上記分離モジュールが磁場から取り除かれ後、上記流体流路の遠位または出口端から洗浄液を逆に流して、上記捕捉された複合体を近位または入口端から外へ洗い流すことによって、上記捕捉された複合体の回収が達成され得る。再び、上記捕捉された複合体の変位とそれに続く回収を支援するために、空気気泡が洗浄液の別のアリコートの間に導入されても良い。
【0053】
また、上記分離モジュールから回収される上記捕捉される複合体は、例えば循環腫瘍細胞などの標的バイオエンティティに結合されていない磁性粒子のような、非結合の標識付きリガンドを含む場合があるので、上記回収された物質は、さらにこの非結合の標識付きリガンドを上記捕捉された標的バイオエンティティ/標識付きリガンドから分離するために処置されても良い。この分離は、例えば、小さい非結合の標識付きリガンドから大きな標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を分離するのに適した膜の使用によって、物理的であっても良い。または、それに代えて、この分離は、標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を捕捉し、かつそれを固体支持体上に固定化する第2の結合剤の使用によって達成され得る。例えば、標的バイオエンティティは循環腫瘍細胞であり、第2の結合剤は、標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体(非結合の標識付きリガンドではなく)と結合するビオチンに結合した抗EpCAM抗体または抗サイトケラチン(CK)抗体であっても良い。その後、結果の複合体は、例えばチューブまたは顕微鏡のスライドのような他の固体支持体に結合したストレプトアビジンを用いて、分離され得る。
【0054】
適切な、プログラムされたコントローラは、上記流体流路を通る生物学的試料と洗浄液の流れを制御し、上記のような空気気泡を導入するほかに、例えば磁場からの分離モジュールの移動、上記捕捉された複合体の回収を含む、他の全ての機能を制御するためにも、使用されても良い。
【0055】
上記分離された標的バイオエンティティのさらなる処理は、例えば、分離された細胞の同定及び化学分析を含んでいても良く、蛍光色素分子標識付き抗体のような開示する試薬や蛍光検出器を直接使用してでも、染色および/または顕微鏡のような、分離された細胞の検査によって間接的にでも、または、蛋白質や核酸バイオマーカの分析によってでも良い。これらの良く知られている、伝統的な検出方法および化学分析に加えて、上記分離された標的バイオエンティティのさらなる処理は、例えば、前立腺癌のメチル化ベースの化学分析におけるメチル化状態への変化のような、後成的変化に基づく化学分析などのより新しい検出手法を含んでも良い。
【0056】
上記のように、本発明の方法は、生物学的試料からの広い範囲の標的バイオエンティティの分離に適しており、特に標的バイオエンティティまたは標的バイオエンティティ上の決定基に特別に結合するとともに、本明細書で述べられたような磁性粒子またはビーズに結合され得る適切な特異的結合リガンドを要求するだけである。上記特異的結合リガンドは、抗体、核酸、または多分、特定の要素に対する親和性を有するキレート剤であっても良い。それゆえ、本発明は、微生物、サブ細胞膜結合小胞、サブ細胞タンパク質および核酸(ウイルスを含む)、汚染物質や毒素、希土類元素などの要素を含む如何なる細胞の捕捉および濃縮に有用であり得る。
【0057】
一つの特定の実施形態では、本発明の方法は、特に血液のような複雑な細胞培地から細胞の精製された集団を分離するのに適している。この実施形態では、上記方法は、次のステップを含む。
(i)細胞培地(例えば血液)を、関心ある細胞の集団に選択的に結合するリガンドに結合されている磁性粒子(例えば、4.5ミクロンのダイナビーズ(Dynabeads))と接触させ、
(ii)上述のように分離モジュール内で流体流路の周囲に磁場を作り出すための磁気モジュールの磁場内に配置されている画定された流体流路を有する分離モジュールを通して、上記細胞培地/標識付きリガンドの混合物を通過させ、その結果、上記混合物内の磁性粒子(およびそれに結合した関心ある細胞)が上記分離モジュール内に捕捉および保持され、
(iii)上記捕捉された磁性粒子(およびそれに結合した関心ある細胞)を、非結合の血液成分を除去する洗浄液で洗い、
(iv)上記磁性粒子を解放するために上記磁場から上記分離モジュールを取り除き、および
(v)例えば、さらなる処理および分析のための収集容器に磁性粒子(およびそれに結合した目的の細胞)を転送するための管状流体流路を通る収集流体の流れを用いる溶出によって、上記粒子を回収する。
【0058】
この発明の方法では、上記生物学的試料が上記画定された流体流路を通過する時、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体は磁場に晒される。代替の実施形態では、上記磁場はパルス印加または上記流体流路に沿って移動され、または、上記試料が上記画定された流体流路を通過する時、上記生物学的試料は、反対向きで等しい磁気力に晒される。この代替の実施形態では、上記磁性粒子を、上記流体流路の壁ではなく、むしろ上記流体流路の中流に保持する可能性を提案する。それによって、上記生物学的試料の非結合成分からの上記「結合した」または捕捉された磁性粒子の強化された分離を可能にすることができる。
【0059】
一実施形態では、本発明の方法は、次のステップを含んでいても良い。
【0060】
1.標的バイオエンティティと直接または間接的に(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン結合を介して)作用することができる磁性粒子は、上記エンティティを含む疑いのある流体試料と混合される。
【0061】
2.上記粒子と上記標的バイオエンティティとの間の反応時間を許容した後、上記液体試料は、流れによって生じる剪断力を介して上記標的バイオエンティティを失うことなく磁気捕捉を可能にする速度で、分離モジュールを通して引き込まれる。一例として、シリンジまたは類似のデバイスが、上記モジュールを通して上記試料を引き込むために上記分離モジュールの下流端で使用され得る。
【0062】
3.試料の流れが完了すると、上記モジュールを通して洗浄液(細胞のための等張緩衝液)が流されて、非特異的に結合した如何なる物質も洗い流される。
【0063】
4.洗浄後、まだ洗浄液が流れている状態で、上記分離モジュール磁場から取り除かれ、その結果、磁性粒子が解放され、上記分離モジュールから適切な収集容器中に流される。それに代えて、上記分離モジュール通る上記流れが逆転され、上記精製された標的エンティティはモジュール近位端で収集容器に放出されても良い。
【0064】
本発明の方法の別の実施形態は、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離するための、例えば血液試料から循環腫瘍細胞(CTC)を分離するためのバッチ処理を含む既知の先行技術のシステムの限界に対処する。それは、上記試料中の任意の標的バイオエンティティ(CTCのような)と磁気的に標識が付けられたリガンドとの間の受動的な反応のために許可されるべき時間を必要とする。本発明の方法では、上記標的バイオエンティティと磁気的に標識が付けられたリガンドとの反応は、上記試料が上記画定された流体流路を流れるので支援されるが、バキュテイナ(Vacutainer)採血容器などの試料チューブ内に、上記試料と磁気的に標識が付けられたリガンドとを一緒に積極的に持って来ることによって、単に試薬を接触させ、受動的な拡散律速反応のための時間を許可するよりも、さらに強化され得る。一例として、上記磁気的に標識が付けられたリガンドは、磁石の上方に位置している試料チューブ内の上記試料(例えば血液)に追加され得る。その磁石は、上記試料を通して上記磁性粒子をチューブの底へ引き付けるだろう。上記標的バイオエンティティと磁気的に標識が付けられたリガンドとの反応をさらに高めるために、上記試料は、上記チューブの底から、すなわち高濃度の磁性粒子を通して、それを引き戻すことで、上記試料チューブ内で再循環され得る。それから、上記試料は、上記チューブの頂部へ戻して追加され、それから、上記磁性粒子は再び、上記磁石によって上記試料を通してチューブの底へ引き付けられる、等々。この循環過程では、CTCの標識付けは、例えば、試料チューブ内の血液試料を通る磁性粒子の一定の通過と、上記試料が試料チューブの底で高濃度の磁性粒子を通して引き付けられることとの両方によって促進されるだろう。この積極的なまたは加速された標識付けの段階の完了時に、上記試料は、上記試料チューブの底から、前述のように上記画定された流体流路を通して通過されるべき上記分離モジュール上に引き付けられ得る。
【0065】
上述のように、別の局面では、本発明はまた、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離するのに使用される装置であって、
(i)画定された流体流路を有する分離モジュールと、
(ii)磁場をもつ磁気モジュールを備え、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
上記分離モジュールは、上記流体流路が上記磁気モジュールの上記磁場内に配置されている第1の位置と、上記流体流路が上記磁気モジュールから除去されている第2の位置とを有し、
(iii)上記分離モジュールが提供する上記画定された流体流路を通して上記生物学的試料と、任意に洗浄液とを通過させるための手段を有するコントローラを備え、それによって、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料は上記磁気モジュールの磁場に晒されるものを提供する。
【0066】
一つの局面では、本発明はまた、生物学的試料から標的バイオエンティティを分離するのに使用される装置であって、
(i)画定された流体流路を有する分離モジュールを備え、上記画定された流体流路は、共通の入口と共通の出口を有する複数の管状要素を含み、
(ii)磁場をもつ磁気モジュールを備え、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
上記分離モジュールは、上記流体流路が上記磁気モジュールの上記磁場内に配置されている第1の位置と、上記流体流路が上記磁気モジュールから除去されている第2の位置とを有し、
(iii)上記分離モジュールが提供する上記画定された流体流路を通して上記生物学的試料と、任意に洗浄液とを通過させるための手段を有するコントローラを備え、それによって、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料は上記磁気モジュールの磁場に晒されるものを提供する。
【0067】
上記のように、本発明の装置では、上記分離モジュールは、上記流体流路が上記磁気モジュールの磁場内に配置されている第1の位置と、上記流体流路が上記磁場から取り除かれた第2の位置を持っている。一例として、分離モジュールは、上記第1の位置から上記第2の位置へ移動するように、固定または静止した磁気モジュールに対して移動可能になっていても良い。それに代えて、同じ効果を達成するために、上記磁気モジュールが、固定または静止した分離モジュールに対して移動可能になっていても良い。
【0068】
本発明の方法および装置は、商業的な、自動化された操作に特に適している。上記画定された流体流路を含む上記分離モジュールは、安価かつ使い捨て可能で、高速自動生産が可能である。さらに、磁石の活性化と他の全てのプロセス(上記分離モジュールを通る上記生物学的試料の吸引、洗浄溶液の通過、および上記標的バイオエンティティを回収するための溶出など)の制御は、適切な制御機器を使用して自動的に達成され得る。
【0069】
上記で概説したように、本発明の方法および装置は、流体から、極めて稀な標的バイオエンティティを含む(ただし、それに限定されない)関心ある標的バイオエンティティを、検出し、濃縮し、精製するために意図されている。一つの好ましい用途は、血液から、循環腫瘍細胞(CTC)またはそれらの核酸を、検出し、濃縮し、かつ精製するためのものである。CTCは、10億の細胞に1つ未満の濃度で癌患者の血液中に存在するかもしれないが、それらの存在と数が患者の治療の予後と管理のために重要である。
【0070】
CTCを検出するための最も広く使用されている方法は、現在、癌患者の生存を予測し、治療反応を監視するためのCTC検出を使用するヴェリデックス・セルサーチ(Veridex CellSearch)システムである。セルサーチの方法は、血液試料のバッチ処理を採用し、遅いという欠点を有し、その有効性が不十分な感度によって制限される。この技術の背景と現在の方法の欠点は、タルザス(Talasaz)ら(2009)Proc Natl Acad Sci 米国 106:3970−3975によって開示されている。また、それは、CTC収集に対する代替の、より敏感なアプローチを紹介している。本発明は、セルサーチとタルザスらのアプローチの両方の次のような欠点に対処し、高スループットの診断研究室用途に適する、CTCの検出、精製および回収のための拡張性ある手段を提供する。
【0071】
感度:セルサーチの方法の速度と感度は、血液中の磁性粒子と任意のCTCの間の反応のための受動的な、拡散が制限された時間によって制限されている。本発明は、磁性粒子に近接してCTCを流すことによって捕捉を強化する。このことは、通過中の培養、および/または流れる血液に対して「跳ね返された」磁性粒子の「雲」を上記分離モジュールの上流部分に一掃することによって、さらに促進される。その結果、そのモジュールが親和性精製カラムのように動作する。また、低流量で大量の血液を処理する能力と、複数の並行な管状要素の使用に起因する低剪断力は、捕捉されるセルの数を増やすために使用され得る。
【0072】
純度:セルサーチの方法は、磁気堆積物中の残骸を捕捉する。これにより、CTCの繰り返された堆積と再懸濁を伴って複数の洗浄ステップを必要とする。このことは、時間を消費し、細胞を破壊するかも知れない。本発明は、分離モジュール内にCTCを穏やかに拘束し、余分な材料は流れて廃棄される。磁場を解除および再印加すること、粒子を「跳ね返す」ことは、さらに任意の非特異的に結合された物質の解放を助けるかも知れない。
【0073】
試料の完全性:セルサーチの方法は、CTCの検出と細胞数を提供するが、顕微鏡検査を超えた分析のための細胞を提供しない。本発明は、タンパク質や核酸の分析を含む、さらなる分析のための、細胞を検出し、精製し、濃縮するための穏やかな、破壊が最低限の方法を提供する。
【0074】
商業的用途:セルサーチの方法は、7個の試料のバッチ処理と3〜4時間での1つの制御が可能である。タルザスらの方法は、より多くの試料をバッチ処理し得るが、試料の量、およびそれ故にCTCの数が、限られており、磁気スイープと回収方法は、高スループットの商業的用途には不向きである。本発明は、効率的な細胞の回収を伴って大容量が処理されるのを可能にし、商業的および研究室の用途に拡張性がある。
【0075】
本発明は、CTCの精製に特に適しているとともに、大容量の試料から微量の標的バイオエンティティの回収を要求する全ての用途に等しく適している。
【0076】
本発明の特に好ましい実施形態では、上記磁気モジュールは、複数の希土類磁石のアレイ、例えば、約50×5×3.5mmの10個の磁石であって、極が2つの50×5mmの側部上にあり、約50×50mmであるアレイまたは「マット」を形成しているものを備えている。上記磁石は、このアレイ内に横並びに、その極を上下にし、隣接する磁石は反対する磁気極性をもつ状態で、すなわち、N極が上である磁石はS極が上である磁石に隣接する状態で、配置されている。上記磁石のアレイは、上記磁気モジュールのための適切なベースに取り付けられている。
【0077】
この実施形態は、CTCを捕捉するためであるとともに、核酸の捕捉と解放のための適合性のために採用されており、汚染のリスクを避けるために、試薬を含む全ての構成要素は、「1回使用」の形で使い捨て可能にされている。これらの使い捨ての構成要素は、次のようなものを含む。
【0078】
(i)シリンジ(1〜30mL、好ましくは10mL)
(ii)細長い使い捨てピペットの先端に似た中空のチューブを含む又はからなり、かつ、ストレート、コイル状または蛇行形態になり得る分離モジュール。上記モジュールの近位端は、実験室のピペッタまたはシリンジで密封嵌合を許容するように雌テーパを持っている。遠位端は、使い捨てピペットの先端に似た出口IDを持つ雄テーパを持っている。適切なチューブの内径(ID)は、選ばれた用途のために選択されるだろう。最も可能性あるのが0.5mmと5mmとの間で、50mmと200mmとの間のチューブの長さをもつ。好ましいIDは、1mmで、100から125mmまでのチューブの長さをもつ。上記分離モジュールの材料は、様々なプラスチック、エラストマ、ガラスまたは金属を含む、どのような剛性または半剛性の不活性な材料であっても良い。仮に剛性または半剛性のサポートが上記モジュールのために設けられている場合、剛性が少ない材料、例えばPTFE(テフロン)またはシリコンゴムチューブもまた、使用され得る。
(iii)分離モジュールからの流出物の受領のための廃液溜め
(iv)試薬容器、または、洗浄および他の試薬、例えば細胞を標識付けまたは溶解する準備のための容器。上記試薬は、ボトルまたは使い捨て可能なトレイ内のウェルに、例えば上記モジュールの遠位(雄)端によって貫通され得るシール付きで、設けられ得る。上記トレイもまた、廃液溜めを収容しても良い。
【0079】
磁気分離は、上記磁気モジュールと、上記使い捨て可能な構成要素を用いて手動で実行され得る。一方、自動または半自動機器は、制御、安全性と封じ込めのために明らかに望ましい。そのような機器は、次のようなものを含む。
【0080】
(v)シリンジドライバ、すなわち、シリンジから液体を排出し、またはシリンジ内に液体を引き込むための可逆ドライブ。
(vi)既述の複数の強力な希土類磁石からなる上記磁気モジュールに近接して上記分離モジュールを支持および保持する手段。
(vii)上記分離モジュールからの流出物を受領するための廃液溜めまたは手段。
(viii)上記分離モジュールの遠位端に試薬を提供するための手段。例えば、これは上記分離モジュールの遠位端に上記試薬容器を提供する摺動可能なまたは回転式の機構であっても良い。
(ix)上記機器の機能を制御するプログラマブルコントローラ。
【0081】
一例として、次に、抗EpCAM(上皮細胞接着分子)抗体で標識が付けられた磁性粒子の使用によって、血液からの循環腫瘍細胞(CTC)を分離する方法について記述する。ただし、その方法は、核酸の精製を含む他の磁気分離のためにも等しく適する。その記述は、廃液および試薬容器が、上記分離モジュールにそれらを提供できる回転式または可動のラックまたはトレイに設けられている、ということを前提とする。
【0082】
a. シリンジに血液の必要量(典型的に7.5mL)を引き込む。
好ましくは、上記血液は、抗EpCAM磁性粒子を含むバキュテイナに供給される。または、それに代えて、磁性粒子は、シリンジに支給または追加されても良い。
b. 上記シリンジと分離モジュールを結合し、上記モジュールを上記磁気モジュールの磁場中に配置し、上記シリンジドライバにシリンジプランジャを係合する。
c. シリンジドライバを起動する。
a.血液は、制御された速度で上記分離モジュールを通過し、廃液溜めに受領される。(典型的には5分を要するこのステップ中に、磁性粒子および結合したCTCは、上記分離モジュール内で拘束される)。
b. 廃液溜めが移動して離れ、洗浄液は、洗浄液の容器から上記分離モジュールを通して上記シリンジ内に引き込まれる。これは上記分離モジュール中に洗浄されたCTCを残す。必要に応じて、溶解または染色する試薬が上記分離モジュールを通して引き込まれる。
d. シリンジを取り外して廃棄する。
e. 上記分離モジュール(上記ピペットの先端になる)にピペットを挿入し、上記磁場から上記分離モジュールを取り除く。
f. 上記分離モジュールの内容物(CTCと磁性粒子)をマイクロタイターウェル(または類似のもの)に放出する。必要ならば、上記分離モジュールを通して繰り返し上下に上記試料を引くことによって追加の回収が実現され得る。必要に応じて、さらに洗浄ステップも、用いられ得る。この装置を使用することによって、適切な寸法のチューブを含む分離モジュール(ID=1mm、L=100mm)は、体積〜80μLの液体状態にあるCTCを回収する、ということが見出されている。(もしL=125mmならば、体積は〜100μLである)。
【0083】
上記の方法および装置は幾つかの利点を有する。
・ それはバルブや配管を持たないので、それは極めて単純で安価である。
・ 全ての構成要素および試薬は使い捨てなので、それによって汚染のリスクを排除しており、それは分子生物学、感染性病原体と酵素の分離に適している。
・ 全ての消耗品は、容易に入手できるか、製造するのが簡単かつ安価であるかのどちらかである。
・ 分離は、多重化され得る。例えば、分離モジュールは、標準的な実験用ピペット及びマイクロタイタートレイでの使用に適するように、間隔が設けられた8または12(個々に分離)の結合セットに作られ得る。
【0084】
上記のような血液試料からCTCを分離する方法に対する代替の方法では、上記血液試料は抗EpCAM磁性粒子を含むバキュテイナ収集容器に供給され、上記シリンジは上記分離モジュール(上記磁気モジュールの磁場に配置されている)に結合され、上記血液試料は上記収集容器から上記分離モジュールを通して上記シリンジに引き込まれ、その結果、磁性粒子および結合したCTCは上記分離モジュールで拘束される。上記血液試料が上記収集容器から引き出された後、空気気泡が上記分離モジュール中へ引き込まれ、続いて洗浄液が洗浄液溜めから上記シリンジ中へ引き込まれ、上記分離モジュール内に洗浄されたCTCが残される。それから、上記分離モジュールは、上記磁気モジュールの磁場から取り除かれ、前述のように、上記CTCは上記分離モジュールから回収される。
【0085】
幾つかの変形または修正が、上述したように上記装置に対してなされ得る。例えば、上記装置は、所望の分析物の多段階の捕捉を提供するために変更され得る。このように、捕捉されたCTCの純度を向上させるために、2つの分離モジュールを直列に使用する2段階のアプローチが用いられても良い。磁性粒子および結合したCTCは第1の分離モジュールで捕捉され、上記のように洗浄され、上記第1の分離モジュールは上記磁気モジュールの磁場から取り除かれ、それから、第2の分離モジュールは磁場に配置され、上記第1分離モジュールからの上記磁性粒子および結合したCTCは、上述したように回収される前に、上記第2の分離モジュールへ通過されて上記第2の分離モジュール内に捕捉される。
【0086】
同様に、多段階の捕捉は、CTCのような癌細胞からのRNAおよび/またはエキソソームの抽出にも使用することができる。この実施形態では、第1の分離モジュールは、広く上述したように、血液試料からCTC(磁性粒子に結合した)を捕捉するために使用される。第1の分離モジュールからの捕捉および洗浄された細胞は上記第1の分離モジュール内で溶解されて、その分離モジュール内に上記磁性粒子に結合した細胞残渣が捕捉されたまま残り、溶解された物質(DNAおよび/またはエキソソーム的内容物を含む)が収集容器中に回収される。上記溶解された物質は、上記収集容器内でRNA結合磁性粒子(例えば磁性ガラスビーズ)、必要に応じてRNA抽出試薬、と混合され、次いで上記磁気モジュールの磁場に配置された第2の分離モジュールを通して通過される。その後、これらの磁性粒子および結合したRNAは、既述のように上記磁場から上記第2の分離モジュールを取り除き、上記捕捉された材料を回収することによって、上記第2の分離モジュールから回収される。
【0087】
多段階の捕捉は、捕捉されたCTCのからのリンパ球のような非特異的に捕捉された細胞の除去にも使用され得る。この実施形態では、前述のように、磁性粒子に結合したCTCは、捕捉され、洗浄される。上記CTCは回収され、反応容器中に放出される。その反応容器では、上記CTCは、リンパ球に標識付けするための大きい非磁性ビーズに結合した抗リンパ球抗体(抗CD45のような)と混合される。次いで、その混合物は、上記磁場に配置された第2の分離モジュールを通して通過される。非磁性ビーズに結合した抗リンパ球抗体をこの分離モジュールを通して一掃するとともに、磁性粒子に結合したCTCを再び捕捉するためである。その後、上記磁場から上記第2の分離モジュールを取り除き、上記捕捉された材料を回収することによって、上記捕捉されたCTCは、上記第2の分離モジュールから回収される。
【0088】
別の局面では、標識付け反応をスピードアップし、処理時間を短縮するために、本発明の方法は、次のようなステップを含んでも良い。
【0089】
(i)上記生物学的試料を、第1の点又は収集点で収集し、
(ii)上記第1の点で上記試料を、上記磁気的に標識が付けられたリガンドを含む収集媒体に追加し、
(iii)続いて、上記生物学的試料と上記磁気的に標識が付けられたリガンドとを含む上記収集媒体を、第2の点又は試験点に転送し、
(iv)上記第2の点で上記試験方法を完了する。
【0090】
上記生物学的試料は、上述したように本発明の方法にしたがって標的バイオエンティティを分離するために、直接処理されても良いが、試験前に或る形の処置を要求しても良い。例えば、生検試料は、試験前に均質化を要求する場合がある。さらに、上記生物学的試料が液状ではない限りでは、(例えば、固体、半固体または脱水された液体試料の場合もある)、試料を移動可能にするために、緩衝剤のような試薬の添加を要求することがある。
【0091】
本発明にしたがって上記生物学的試料が追加される「収集の媒体」は、当業者に知られているどのような適切な媒体であっても良い。適切な媒体は、一例として、生物学的試料の収集と輸送に適した生理食塩水および緩衝媒体を含む。収集媒体は、上述のような磁気的に標識が付けられたリガンドを含み、また、上記収集媒体へ上記生物学的試料を加える前と後に、例えば、緩衝剤に加えて、洗剤、プロテアーゼ阻害剤および安定剤を含む、上記試料とリガンドのための安定化剤を含んでも良い。
【0092】
特定の実施態様では、本発明は、広く上述したような方法を提供する。その方法では、上記収集媒体は、1つ以上の分析物を検出するための後続または同時の反応のために、タンパク質の溶解性を高めるように設計されている。標的ペプチドの溶解性を高めるための、又は上記試料中の、そのような試薬は、当業者に知られており、例えば、界面活性剤、高または低イオン強度の緩衝剤、抗粘液溶解剤、リゾチーム、およびヌクレアーゼを含む。さらに、この実施形態では、本発明はまた、特定のエピトープを露出させるために標的ペプチドまたはタンパク質を選択的に分解する特異的プロテアーゼの追加を含む。この発明のこの実施形態では、これらの試薬は、上記第1の点又は収集点から上記第2の点又は試験点への通過時間の間に標的発現産物の可溶性を高める上で活性であるから、収集媒体中にそのような溶解性の試薬を含めることは、上記試料中のタンパク質またはペプチドの遺伝子発現産物の検出に役立つ。
【0093】
血液試料から循環癌細胞を分離するための本発明の使用の以下の実施例は、本発明の限定ではなく、例として説明される。
【実施例】
【0094】
例1:バッファからのラテックス微小球の回収。
【0095】
ビオチン標識付きラテックス微小球(バングス・ラボラトリーズ(Bangs Laboratories)、10.35μmの直径、10μl)は、ストレプトアビジン被覆磁性粒子(ケミセル(Chemicell)、1ミクロン直径、10μl)と混合され、7.5mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)と周囲温度で30分間反応された。その混合物は、図2に示す装置を通して引き込まれた。その装置は、10個の希土類磁石(各5mm×3.5mm×50mmで、極性が交互に並んで配置され、つまり合計寸法50mm×50mm×3.5mm)の筏で構成される磁気モジュールの上方の1mm×200mmのコイル状のPTFEチューブ(分離モジュール)で構成されている。その流れは約5分で完了した。1mlのPBSで洗浄した後、上記分離モジュールは上記磁気モジュールから取り除かれた。捕獲された粒子は、空気気泡とPBSを用いて上記モジュールから磁石の上方の小さなチューブへ逆に流された。上澄み液が除去され、再懸濁された沈殿物の顕微鏡検査は、より小さな磁性粒子とより大きなラテックス粒子との両方が上記分離モジュール内に捕捉されたことを示した。流出物の遠心分離は、沈殿物を生じなかった。これは、上記磁性粒子がより大きなラテックス粒子に結合していたことと、両方の種の全ての粒子が上記分離モジュール内に取り込まれたことを示す。
【0096】
例2:血液からのラテックス微小球の回収。
【0097】
上記例1の実験が、PBSの代わりに新鮮なヒト血液を用いて繰り返された。血液の流れが完了した後、さらに上記分離モジュールから残留血液をパージするのを支援するための洗浄の開始後に、小さな空気気泡が導入された。捕獲された粒子の顕微鏡検査は、ラテックスビーズとより小さな磁性粒子との濃い混合物を示した。
【0098】
例3:血液からの培養ヒト大腸癌細胞の回収。
【0099】
(a) コイル状チューブの分離モジュール(図2)
培養ヒト大腸癌細胞(HCT 116、ATCC no.CCL−247)が収穫され、計数され、培養液を希釈剤として用いてml当たりの既知濃度の細胞が作られた。細胞は、5mlの新鮮なヒト血液のアリコートに対して合計1000、500、250、50個まで追加された。アリコート当たり8個の癌細胞であった。抗上皮細胞抗体(Dynabead Epithelial Enrich、抗EpCAM)で被覆された磁性ビーズが各アリコートに対して追加(10μL)され、その混合物は室温で少なくとも30分間培養された。各血液混合物は、約1.67ml/分(すなわち、5mlについて3分の流れ時間)の流速で、図2の装置を通して運ばれた。続いて、0.05%のTween20(PBST)を含む1mlのPBSの洗浄が行われた。茶色の磁性粒子が、コイル状チューブの前半(100mm)に拘束されることが観察された。上記磁気モジュールから取り除かれた後、上記分離モジュールは、小さなチューブ中へのPBST(1ml)および空気気泡で逆に流された。磁性粒子は、マグネットの上方でチューブの底部中に濃縮された。上澄み液が除去され、粒子は、PBST内で10μlの25%メチレンブルー染色で再懸濁した。全ての場合に、回収された材料の顕微鏡検査は、青色に染色された、追加されたタイプの細胞と磁性粒子を示した。細胞の濃度は、最初に追加された数とほぼ同等であった。8個の細胞が追加された血液の場合には、6個の細胞の1つのクラスタと2個の単独細胞とが検出された。どの場合にも、如何なる赤または白の血液細胞も観察されなかった。
【0100】
(b) ストレートチューブの分離モジュール(図3)
100個のHCT116細胞が、5mlの血液と10μlの磁性ビーズに追加された。室温で30分間培養され、図3に示すような20個の希土類磁石の筏(すなわち磁気モジュール=100×50×3.5mm)の上方のストレートのPTFEチューブ(長さ=200mm、ID=1mm)を通して、約1.67ml/分で引き込まれた。茶色の磁性粒子が、上記磁気モジュールの長さの最初の75mm以内で、上記分離モジュールのチューブ内に拘束された。例3(a)について、上記磁石から除去された後、上記分離モジュールは逆に流され、粒子が回収された。回収された粒子は、磁性粒子と追加されたものに類似している細胞で構成されていることが分かった。血液細胞は見られなかった。
【0101】
(c) ストレートの分離モジュールチューブと交互に入れ替わる磁石対:図4a
磁石対が交互に入れ替わる構造(図4a)で直列に配置され、ストレートのPTFEチューブ(直径1mm、長さ200mm)の周りに140rpmで回転された。10μlの磁性粒子を含む5mlのPBSが上記チューブを通して1.67ml/分の速度で流されたとき、最初の磁石対が全ての粒子を拘束した。同量(10μl)の磁性粒子を含む同量(5ml)の血液が同じ流速で上記チューブを通して引き込まれたとき、何も捕捉されなかった。流速が0.625ml/分まで低下されたとき、粒子が約60mmの合計磁石の長さの範囲で上記チューブ内に拘束された。これは、スピンする磁石が粒子に上記チューブの中心において「雲」を形成させたことを示唆した。それは、より高い流速では、より濃い血によって変位された。
【0102】
(d) ストレートの分離モジュールチューブとスピンする反対の磁石対:図4b
この例では、低減された血流速度が、上記分離モジュール内のより大径のチューブとより遅い流速を使用することによって達成された。1.6mmの直径と150mmの長さのストレートのPTFEチューブが、図4bに示すような磁気モジュール内の2つの反対の磁石対(各々50×5×3.5mm)の間に通された。上記磁石は上記チューブの周りを140rpmで回転され、200個のHCT116細胞と10μlの磁性粒子とを含む5mlの血液が上記モジュールを通して0.625ml/分の速度で通過された。全ての粒子は、上記磁石の長さの最初の25mm内に拘束された。PBSTで1mlの洗浄後に、上記チューブは上記磁気モジュールから引き抜かれた。そして、既述のように、捕捉された粒子が回収された。回収された物質は、磁性粒子と追加されたものに類似している細胞であることが分かった。血液細胞は見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料から標的バイオエンティティを分離する方法であって、
(a)上記生物学的試料を、上記標的バイオエンティティまたは上記標的バイオエンティティ上の決定基に対して選択的な結合親和性を有する磁気的に標識が付けられたリガンドと接触させて、上記生物学的試料中に標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を形成し、
(b)磁気モジュールの磁場中に、画定された流体流路を有する分離モジュールを配置し、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
(c)上記分離モジュールを通して上記生物学的試料を通過させて、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料を磁場に晒し、上記画定された流体流路内で上記複合体の移動を阻止または阻害することによって、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を磁気的に捕捉し、
(d)任意に、かつ好ましくは、上記複合体が上記流体流路内で磁気的に捕捉される間、上記画定された流体流路を通して洗浄液を通過させ、
(e)上記磁場から上記分離モジュールを取り除き、および
(f)上記流体流路から上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を回収するステップを含む方法。
【請求項2】
生物学的試料から標的バイオエンティティを分離する方法であって、
(a)上記生物学的試料を、上記標的バイオエンティティまたは上記標的バイオエンティティ上の決定基に対して選択的な結合親和性を有する磁気的に標識が付けられたリガンドと接触させて、上記生物学的試料中に標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を形成し、
(b)磁気モジュールの磁場中に、画定された流体流路を有する分離モジュールを配置し、上記画定された流体流路は、共通の入口と共通の出口を有する複数の管状要素を含み、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
(c)上記分離モジュールを通して上記生物学的試料を通過させて、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料を磁場に晒し、上記画定された流体流路内で上記複合体の移動を阻止または阻害することによって、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を磁気的に捕捉し、
(d)任意に、かつ好ましくは、上記複合体が上記流体流路内で磁気的に捕捉される間、上記画定された流体流路を通して洗浄液を通過させ、
(e)上記磁場から上記分離モジュールを取り除き、および
(f)上記流体流路から上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を回収するステップを含む方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
上記生物学的試料は、血液、血漿または血清試料であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
上記標的バイオエンティティは、核酸、蛋白質または炭水化物であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、
上記標的バイオエンティティは、稀な又は非常に稀な循環腫瘍細胞、またはその循環腫瘍細胞のサブ細胞成分であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
上記生物学的試料は母体の血液試料であり、かつ、上記標的バイオエンティティは循環胎児細胞であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
上記磁気的に標識が付けられたリガンドは、磁性粒子またはビーズに結合された、上記標的バイオエンティティまたは上記標的バイオエンティティ上の決定基に対して特定の結合親和性を有するリガンドを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
上記リガンドは、抗体、アプタマまたは核酸である。
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の方法において、
上記ステップ(a)では、上記生物学的試料は複数の磁気的に標識が付けられたリガンドと接触されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の方法において、
上記ステップ(a)では、上記生物学的試料の後、洗浄液の1つ以上のアリコートが上記画定された流体流路を通して通過され、また、上記生物学的試料と上記洗浄液との間に、および任意に上記洗浄液のアリコート間に、空気気泡が上記画定された流体流路を通して通過されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載の方法において、
上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体の回収は、洗浄液の1つ以上のアリコートを、任意に洗浄液のアリコート間の空気気泡とともに、上記流路を通して通過させることによって、上記画定された流体流路から上記複合体を洗い流すステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
上記洗い流すステップは、上記画定された流体流路を通して逆へ洗い流すことを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載の方法において、
上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体の回収は、非結合の磁気的に標識が付けられたリガンドからの上記複合体の分離の、さらなるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
上記分離のステップは物理的な分離のステップであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、
上記分離のステップでは、第2の結合剤が上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を捕捉し、固体サポート上に上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を固定化するために用いられることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
ステップ(f)で上記流体流路から回収された上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンドの複合体は、さらに磁気モジュールの磁場内に配置された第2の分離モジュールを通して上記回収された複合体を通過させることによって精製され、任意に上記捕捉された複合体を洗浄し、かつ、上記第2の分離モジュールが上記磁場から取り除かれた後、上記第2の分離モジュールから上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体を回収することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
第1の分離モジュール内で血液試料から循環腫瘍細胞が分離され、捕捉および洗浄された循環腫瘍細胞は上記第1の分離モジュール内で溶解され、上記循環腫瘍細胞からの溶解物質は上記第1分離モジュールから回収され、上記回収された溶解物質は、或る標的分子のための磁気的に標識が付けられたリガンドと接触し、磁気モジュールの磁場に配置された第2の分離モジュールを通して通過されて、磁性粒子および結合した標的分子が磁気的に捕捉され、そして、上記第2の分離モジュールが上記磁場から取り除かれた後、上記磁性粒子および結合した標的分子は上記第2の分離モジュールから回収されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
上記標的分子は、核酸、タンパク質、または炭水化物であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
第1の分離モジュールから回収された、捕捉および洗浄された磁気的に結合した循環腫瘍細胞を、リンパ球に標識を付ける大規模な非磁性ビーズに結合した抗リンパ球抗体と接触させることによって、リンパ球のような非特異的に捕捉された細胞は、上記第1分離モジュールで血液試料から分離された循環腫瘍細胞から取り除かれ、磁気モジュールの磁場に配置された第2の分離モジュールを通して上記混合物を通過させて、磁気的に結合した循環腫瘍細胞を捕捉するとともに非磁気結合したリンパ球から分離し、そして、上記第2の分離モジュールが上記磁場から取り除かれた後、上記磁気的に結合した循環腫瘍細胞は上記第2の分離モジュールから回収されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
ステップ(a)では、上記生物学的試料と上記磁気的に標識が付けられたリガンドとの間の接触は、
(i)試料の収集点で上記生物学的試料を上記磁気的に標識が付けられたリガンドと接触させて、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体が収集サイトと試験サイトとの間で輸送中になることによって、または(ii)上記生物学的試料およびリガンドを含む容器のベースの下に配置された磁石によって上記磁気的に標識が付けられたリガンドを濃縮し、かつ上記試料およびリガンドを上記容器内で再循環させることによって、または(iii)上記流路の周りを又は上記流路に沿って移動する磁石によって、上記生物学的試料の上記流体流路中に、浮遊した磁気的に標識が付けられたリガンドの粒子の雲を形成することによって、
増進されることを特徴とする方法。
【請求項21】
生物学的試料から標的バイオエンティティを分離するのに使用される装置であって、
(i)画定された流体流路を有する分離モジュールと、
(ii)磁場をもつ磁気モジュールを備え、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
上記分離モジュールは、上記流体流路が上記磁気モジュールの上記磁場内に配置されている第1の位置と、上記流体流路が上記磁気モジュールから除去されている第2の位置とを有し、
(iii)上記分離モジュールが提供する上記画定された流体流路を通して上記生物学的試料と、任意に洗浄液とを通過させるための手段を有するコントローラを備え、それによって、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料は上記磁気モジュールの磁場に晒される装置。
【請求項22】
生物学的試料から標的バイオエンティティを分離するのに使用される装置であって、
(i)画定された流体流路を有する分離モジュールを備え、上記画定された流体流路は、共通の入口と共通の出口を有する複数の管状要素を含み、
(ii)磁場をもつ磁気モジュールを備え、上記磁気モジュールは少なくとも2つの磁石のアレイを有し、上記アレイ内の隣接する磁石は反対の極性で整列されており、
上記分離モジュールは、上記流体流路が上記磁気モジュールの上記磁場内に配置されている第1の位置と、上記流体流路が上記磁気モジュールから除去されている第2の位置とを有し、
(iii)上記分離モジュールが提供する上記画定された流体流路を通して上記生物学的試料と、任意に洗浄液とを通過させるための手段を有するコントローラを備え、それによって、上記試料が上記画定された流体流路を通して通過している間、上記生物学的試料は上記磁気モジュールの磁場に晒される装置。
【請求項23】
請求項21または請求項22に記載の装置において、
上記画定された流体流路は、不活性で可撓性をもつプラスチック製のチューブから形成されていることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求23に記載の装置において、
上記チューブは、0.5mmから5mmまで、好ましくは0.8mmから1.6mmまでの内径を有し、50mmから200mmまで、好ましくは100mmから125mmまでの長さを有することを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項21または請求項22に記載の装置において、
上記磁気モジュールは少なくとも2つ以上の希土類永久磁石のアレイを含み、それらの磁石は隣り合わせに整列され、隣接する磁石が反対の磁気極性を有していることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項21または請求項22に記載の装置において、
上記分離モジュールは、固定された又は静止している上記磁気モジュールに対して可動であることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項21または請求項22に記載の装置において、
上記磁気モジュールは、固定された又は静止している上記分離モジュールに対して可動であることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
(i)上記生物学的試料を、第1の点又は収集点で収集し、
(ii)上記第1の点で上記試料を、上記磁気的に標識が付けられたリガンドを含む収集媒体に追加し、
(iii)続いて、上記生物学的試料と上記磁気的に標識が付けられたリガンドとを含む上記収集媒体を、第2の点又は試験点に転送し、
(iv)上記第2の点で上記方法を完了するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、
上記第1の点と第2の点とは分離されており、例えば、互いに遠隔されまたは離れていることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28または請求項29に記載の方法において、
一方での上記試料の収集のステップおよび上記収集媒体に対する上記試料の追加のステップ、および他方での上記方法の完了のステップは、互いに時間的に、特に、上記第1の点から上記第2の点へ上記収集媒体を輸送するだけでなく、上記試料が通過している間、上記標的バイオエンティティ/標識付きリガンド複合体の形成を可能にするのに十分な通過時間の期間だけ、分離されていることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2012−524885(P2012−524885A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506281(P2012−506281)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000459
【国際公開番号】WO2010/121315
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510115465)クリニカル・ジェノミックス・プロプライエタリー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CLINICAL GENOMICS PTY. LTD.
【Fターム(参考)】