説明

生物由来塩基性物質およびその誘導体を利用した体液浄化装置

【課題】体液中の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を選択的に吸着除去する吸着体及び方法の提供、並びに該吸着体を含む体液浄化するための吸着装置の提供。
【解決手段】以下の一般式Iで表されるポリアミン誘導体を有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤。


(式I中、XはC3〜C20、好ましくはC3〜C15の飽和若しくは不飽和脂肪酸において、1〜5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり窒素原子に分枝鎖-(CH2)3NH2が結合していてもよいヘテロ含有炭素鎖、C3若しくはC6〜C20、、ただし、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミン誘導体を固定化した吸着体を、変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を除去するために使用することで、広く変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物が関与する疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化病変では、泡沫細胞の集積が特徴的な形態として観察される。この泡沫細胞は、マクロファージがスカベンジャー受容体を介して変性低密度リポ蛋白質(変性LDL)などを貪食した細胞である。スカベンジャー受容体のリガンドとしては、酸化LDLやアセチル化LDLなどの変性LDLの他、デキストラン硫酸などの陰性荷電を持つ高分子などが知られている。このように、動脈硬化の進展の過程では、マクロファージがこれらの変性LDLを取り込むことにより、泡沫細胞となり、動脈硬化病変を形成すると考えられている(非特許文献1を参照)。
【0003】
代表的な変性LDLである酸化LDLは、血管内皮細胞からの単球走化性蛋白質―1の発現分泌を促し、単球の血管組織への浸潤を亢進させることにより、動脈硬化の増幅因子として働くと考えられている(非特許文献2を参照)。また、酸化LDLは、血管内皮細胞からの血管弛緩因子である一酸化窒素の放出を阻害し、血管の緊張性を弱めることも報告されている(非特許文献3を参照)。
【0004】
近年、高脂血症モデルのマウスの肝臓に酸化LDL受容体の遺伝子を導入すると、血中のコレステロール、LDL及びHDLコレステロール値は保ちながら、酸化LDL値だけを3分の1程度に減少させることができ、無処置の高脂血症マウスと比較すると、動脈硬化の進行が完全に抑制されて通常のマウス程度になったという実験結果が示された(非特許文献4を参照)。
【0005】
血液透析患者の死因の約40%は、心不全や心筋梗塞などの冠動脈疾患であり(非特許文献5を参照)、また、冠動脈疾患患者では血中の酸化LDL濃度が高く、血中酸化LDL値は冠動脈疾患の進行度合いを示す良い指標となることが報告されている(非特許文献6を参照)。現在まで選択的に酸化LDLを低下させる方法は見出されていない。高脂血症あるいは動脈硬化症の患者では血中のLDL量が多いため、LDLを除去することにより治療することが有効であり、デキストラン硫酸を固定したセルロースゲルを充填したリポソーバー(株式会社カネカメディックス)が家族性高コレステロール血症患者に使用されている。しかしながら、透析患者では、血中のLDL濃度は健常者と同レベルであるため、LDL除去カラムを使用することが出来ない。したがって、選択的に酸化LDLを低下させる方法の開発が待ち望まれている。
【0006】
一方、現在の日本において、糖尿病患者及び糖尿病予備軍の総数は、2千万人にも達するといわれている。糖尿病で問題になるのは、高血糖が長く続いた場合に、グルコースなどの還元糖のカルボニル基と体内の蛋白質のアミノ基との反応(メイラード反応)により生成される終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)という物質である。このAGEsが体内の様々な器官に蓄積して糖尿病性合併症を引き起こす。例えば、器官が腎臓であれば糖尿病性腎症、網膜であれば糖尿病性網膜症、神経であれば糖尿病性神経障害、血管であれば動脈硬化である。さらに、AGEsは、アルツハイマー病、慢性関節リウマチ及び老化などの原因となることも報告されている(非特許文献7を参照)。このような背景の下、アミノグアニジン、ピリドキサミン誘導体などのAGEs生成抑制剤が提案されているが、予防という点では有効と考えられるが、既に蓄積されたAGEsを除去するという課題を解決するものではない。したがって、体内に蓄積されたAGEsを効果的に除去する方法の開発が待ち望まれている。
【0007】
ポリアミン誘導体は、第一級アミノ基を2つ以上含む塩基性物質をいう。ポリアミン誘導体は、生体の細胞内ではマグネシウムイオンやATPと共に1〜20mMと高濃度に含まれているが、特定の高分子物質とは強く結合せず、細胞中に存在する多くの酸性高分子物質、例えば、核酸、リン脂質、酸性蛋白質などと非常に弱く結合している(未来の生物化学シリーズ28、神秘の生命物質−ポリアミン、五十嵐一衛、1993年、共立出版株式会社)。ポリアミンの主な機能としては、核酸と相互作用することにより蛋白質合成を促進して細胞増殖因子として機能すること、グルタミン酸受容体の1つであるN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体のポリアミン結合部位に作用してその活性を調節していること、また、ヘパリンなどのグリコサミノグリカンとの相互作用を介して凝固線溶系などを調節していることなどが報告されている(非特許文献8を参照)。
【0008】
人工的に作製された酸化LDL、アセチル化LDL又は糖化LDLなどの変性LDL、及び、カルボキシメチルリジン化蛋白質又は糖化蛋白質などのAGEsは、正味の陰性荷電を有しているために、アガロースゲルを用いた電気泳動ではその相対移動度は上昇することが知られている(非特許文献9を参照)。一方、ポリアミン誘導体は、生体内にも高濃度で存在する比較的安全性の高い陽性荷電を有する塩基性物質である。
【0009】
ポリアミン誘導体を有する基材からなることを特徴とする吸着材料の技術としては、特開平11−267199号公報(特許文献1)及び特開平11−267421号公報(特許文献2)に、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリプロピレンイミンなどを含む血液浄化材料が開示されている。また、特開2006−272075号公報(特許文献3)には、IL−6やIL−8等の過剰のサイトカイン及び/又はスーパー抗原を除去あるいは不活性化することが出来る吸着材料が開示されている。しかしながら、これらの技術には、変性LDLやAGEsに対する作用及び用途についての開示はない。
【0010】
近年、酸化LDLを吸着除去できる中空糸膜として、特開2002−28461号公報(特許文献4)には、カチオン性ポリマーが含有されていることを特徴とする過酸化脂質吸着用中空糸膜が、また、特開2005−230407号公報(特許文献5)には、カチオン性基と親水性高分子が導入された、血液適合性が良好で、かつ、酸化LDLなどの酸性蛋白質を除去できる改質基材が開示されている。一方、特許第3497195号公報(特許文献6)には、ラクトフェリンを有効成分とする変性LDL結合剤が開示されている。しかしながら、これらの技術には、ポリアミン誘導体についての開示はない。
【0011】
AGEsを吸着除去できる吸着剤として、国際公開第07/037554号パンフレット(特許文献7)には、親水性メタクリレート含有共重合体樹脂からなるAGEs吸着剤が開示されている。また、特開2003−238404号公報(特許文献8)には、RAGE(Receptor for AGEs)の全配列もしくは部分配列を含むペプチドを固定化した再生可能な糖尿病合併症因子吸着体が開示されている。しかしながら、これらの技術には、ポリアミン誘導体についての開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11-267199号公報
【特許文献2】特開1999-267421号公報
【特許文献3】特開2006-272075号公報
【特許文献4】特開2002-28461号公報
【特許文献5】特開2005-230407号公報
【特許文献6】特許第3497195号公報
【特許文献7】国際公開第07/037554号パンフレット
【特許文献8】特開2003-238404号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシーズ ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences USA)、1984年、第81巻、p.3883-3887
【非特許文献2】サーキュレーション(Circulation)、2000年、第101巻、p.2889-2895
【非特許文献3】ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、2001年、第276巻、p.13750-13755
【非特許文献4】サーキュレーション(Circulation)、2008年、第118巻、p.75-83
【非特許文献5】ネフロロジー ダイアライシス トランスプランテーション(Nephrology Dialysis Transplantation)、2008年、第23巻、p.2629-2633
【非特許文献6】サーキュレーション(Circulation)、1998年、第98巻、p.1487-1494
【非特許文献7】グリコバイオロジー(Glycobiology)、2005年、第15巻、p.16R-28R
【非特許文献8】薬学雑誌、2006年、第126巻、p.455-471
【非特許文献9】ダイアビーティス(Diabetes)、2000年、第49巻、p.1714-1723
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
かかる状況下において、安全性が高く、選択的に変性低密度リポ蛋白質(変性LDL)及び/又は終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)を除去するための吸着体が求められている。より具体的には、(1)体液中の変性LDLを選択的に除去できる、(2)体液中のAGEsを選択的に除去できる、(3)血中の電解質量及び金属イオン量に影響を及ぼさない、(4)他のカチオン性ポリマーの問題点である血液中の血小板や凝固活性の活性化などが実質的に無い、あるいは、(5)リポソーバーの副作用であるブラジキニン産生による血圧低下やショック症状を起こさないなど、上記問題点の1つ以上を克服した吸着体が切望されている。本発明は、体液中の変性LDL及び/又はAGEsを効率よく選択的に吸着する吸着体、ならびに、体液中の変性LDL及び/又はAGEsを除去する方法及び吸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、陽性荷電を持つこれらのポリアミン誘導体を固定化した不溶性担体を用いることにより、血液中の陰性荷電を帯びた病因物質である変性LDL及び/又はAGEsを捕捉し除去することができると考え、安全性が高く有効性に優れた変性LDL吸着体及び/又はAGEs吸着体を得るべく、鋭意研究を重ねた。その結果、ポリアミン誘導体を固定化した吸着体が、(1)変性低密度リポ蛋白質(変性LDL)に高い結合活性を有すること、(2)終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)に高い結合活性を有すること、(3)選択性に優れていること、(4)血中の電解質量及び金属イオン量に影響を及ぼさないこと、(5)安全性が高いこと等の予期し得ない特徴を1つ以上有することを見出した。
【0016】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] ヒトの生体内に天然で存在するプトレシン、スペルミジン、スペルミン及びカダベリンを除くポリアミン誘導体からなる群から選択されるポリアミンの少なくとも1つを有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤。
[2] [1]の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤と水不溶性担体を含み、該吸着剤が該水不溶性担体に固定化された、変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着体。
[3] 水不溶性担体が、親水性ビニルポリマーゲル又はセルロースゲルである、[2]の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着体。
[4] 変性低密度リポ蛋白質が関与する疾患を治療するための、[2]又は[3]の変性低密度リポ蛋白質除去用吸着体。
[5] 終末糖化産物が関与する疾患を治療するための、[2]又は[3]の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着体。
[6] [2]〜[5]のいずれかの吸着体を含む、体液から変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を除去し、体液を浄化するのための吸着装置。
【0017】
さらに、本発明は以下のとおりである。
[1] 以下の一般式Iで表されるポリアミン誘導体を有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤。
【化1】

[式I中、XはC3〜C20、好ましくはC3〜C15の飽和若しくは不飽和脂肪酸において、1〜5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり窒素原子に分枝鎖-(CH2)3NH2が結合していてもよいヘテロ含有炭素鎖、C3若しくはC6〜C20、好ましくはC3若しくはC6〜C15アルキル基、C3〜C20、好ましくはC3〜C15のアルケニル基、C3〜C20、好ましくはC3〜C15のアルキニル基であり、ただし、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。]
【0018】
[2] 以下の一般式IIで表されるポリアミン誘導体を有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤。
【化2】

[式II中、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5及びY6は、独立にC1〜C5のアルキル基、C1〜C5のアルケニル基又はC1〜C5のアルキニル基であり、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5及びY6の炭素原子の数の合計は3以上かつ20以下、好ましくは15以下であり、q1、q2、q3、q4及びq5は独立に0又は1であり、q1、q2、q3、q4及びq5のすべてが0であることはなく、-NH-のHが分枝鎖-(CH2)3NH2で置換されていてもよく、ただし、H2N(CH2)4NH2、H2N(CH2)5NH2、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。]
【0019】
[3] 以下の一般式IIIで表されるポリアミン誘導体を有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤。
【化3】

[式III中、p1、p2、p3、p4及びp5は独立に1〜5のいずれかの整数であり、p1、p2、p3、p4及びp5を合計した数は、3以上かつ20以下、好ましくは15以下であり、q1、q2、q3、q4及びq5は独立に0又は1であり、q1、q2、q3、q4及びq5のすべてが0であることはなく、-NH-のHが分枝鎖-(CH2)3NH2で置換されていてもよく、ただし、H2N(CH2)4NH2、H2N(CH2)5NH2、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。]
【0020】
[4] 以下のポリアミン誘導体の少なくとも1つを有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤:
3,3'-ジアミノジプロピルアミン;
1,3−ジアミノプロパン;
ノルスペルミジン;
ホモスペルミジン;
アミノプロピルカダベリン;
アミノブチルカダベリン;
ノルスペルミン;
テルモスペルミン;
アミノプロピルホモスペルミジン;
カナバルミン;
ホモスペルミン;
アミノペンチルノルスペルミジン;
N,N-ビス(アミノプロピル)カダベリン;
カルドペンタミン;
ホモカルドペンタミン;
テルモペンタミン;
カルドヘキサミン;
ホモカルドヘキサミン;
テルモヘキサミン;
ホモテルモヘキサミン;
N4-アミノプロピルノルスペルミジン;
N4-アミノプロピルスペルミジン;
N4-アミノプロピルノルスペルミン;
N4-ビス(アミノプロピル)ノルスペルミジン;及び
N4-ビス(アミノプロピル)スペルミジン。
[5] [1]〜[4]のいずれかの変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤と水不溶性担体を含み、該吸着剤が該水不溶性担体に固定化された、変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着体。
[6] 水不溶性担体が、親水性ビニルポリマーゲル又はセルロースゲルである、[5]の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着体。
[7] 変性低密度リポ蛋白質が関与する疾患を治療するための、[5]又は[6]の変性低密度リポ蛋白質除去用吸着体。
[8] 終末糖化産物が関与する疾患を治療するための、[5]又は[6]の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着体。
[9] [5]〜[8]のいずれかの吸着体を含む、体液から変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を除去し、体液を浄化するための吸着装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明の吸着体は、(1)変性低密度リポ蛋白質(変性LDL)に高い結合活性を有すること、(2)終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)に高い結合活性を有すること、(3)選択性に優れていること、(4)血中の電解質量及び金属イオン量に影響を及ぼさないこと、(5)安全性が高いこと等の予期し得ない特徴を1つ以上有することがことが示されたことから、これらの吸着体は、被験体の体液中の変性LDL及び/又はAGEsを効率的に吸着除去することが可能であり、変性LDLが関与する疾患及び/又はAGEsが関与する疾患の治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】細菌に存在するポリアミン誘導体の構造を示す図である。
【図2】本発明の体液浄化装置の一実施例を模式的に示す断面図である。
【図3】酸化LDL吸着除去能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の吸着剤は、ポリアミン誘導体からなる。該ポリアミンはヒトの生体内に天然で存在するプトレシン、スペルミジン、スペルミン及びカダベリンを除く生物の生体内に天然で存在するポリアミン誘導体及び人工的に合成したポリアミンが含まれる。プトレシン、スペルミジン、スペルミン及びカダベリンは以下の式で表される。ここで、ポリアミンとは、アミノ酸鎖又は炭化水素鎖を基本骨格とし、少なくともその両端にアミノ基を有する、2つ以上のアミノ基を有する化合物をいう。
プトレシンの構造式
【0024】
【化4】

スペルミジンの構造式
【0025】
【化5】

スペルミンの構造式
【0026】
【化6】

カダベリンの構造式
【0027】
【化7】

【0028】
本発明の吸着剤として用いられるポリアミン誘導体としては、以下の一般式Iで表されるポリアミン誘導体が挙げられる。
【0029】
【化8】

【0030】
式I中、XはC3〜C20、好ましくはC3〜C15の飽和若しくは不飽和脂肪酸において、1〜5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり窒素原子に分枝鎖-(CH2)3NH2が結合していてもよいヘテロ含有炭素鎖、C3若しくはC6〜C20、好ましくはC3若しくはC6〜C15アルキル基、C3〜C20、好ましくはC3〜C15のアルケニル基、C3〜C20、好ましくはC3〜C15のアルキニル基であり、ただし、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。
【0031】
また、本発明の吸着剤として用いられるポリアミン誘導体としては、一般式Iで表されるポリアミン誘導体中、以下の一般式IIで表されるポリアミン誘導体が挙げられる。
【0032】
【化9】

【0033】
式II中、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5及びY6は、独立にC1〜C5のアルキル基、C1〜C5のアルケニル基又はC1〜C5のアルキニル基であり、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5及びY6の炭素原子の数の合計は3以上かつ20以下、好ましくは15以下であり、q1、q2、q3、q4及びq5は独立に0又は1であり、q1、q2、q3、q4及びq5のすべてが0であることはなく、-NH-のHが分枝鎖-(CH2)3NH2で置換されていてもよく、ただし、H2N(CH2)4NH2、H2N(CH2)5NH2、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。
【0034】
さらに、本発明の吸着剤として用いられるポリアミン誘導体としては、一般式Iで表されるポリアミン誘導体中、以下の一般式IIIで表されるポリアミン誘導体が挙げられる。
【0035】
【化10】

【0036】
式III中、p1、p2、p3、p4及びp5は独立に1〜5のいずれかの整数であり、p1、p2、p3、p4及びp5を合計した数は、3以上かつ20以下、好ましくは15以下であり、q1、q2、q3、q4及びq5は独立に0又は1であり、q1、q2、q3、q4及びq5のすべてが0であることはなく、-NH-のHが分枝鎖-(CH2)3NH2で置換されていてもよく、ただし、H2N(CH2)4NH2、H2N(CH2)5NH2、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。
【0037】
具体的には、本発明の吸着剤として用いられるポリアミン誘導体として、下記の構造を図1に示す細菌に存在するポリアミン誘導体が挙げられる。
1,3−ジアミノプロパン;
ノルスペルミジン;
ホモスペルミジン;
アミノプロピルカダベリン;
アミノブチルカダベリン;
ノルスペルミン;
テルモスペルミン;
アミノプロピルホモスペルミジン;
カナバルミン;
ホモスペルミン;
アミノペンチルノルスペルミジン;
N,N-ビス(アミノプロピル)カダベリン;
カルドペンタミン;
ホモカルドペンタミン;
テルモペンタミン;
カルドヘキサミン;
ホモカルドヘキサミン;
テルモヘキサミン;
ホモテルモヘキサミン;
N4-アミノプロピルノルスペルミジン;
N4-アミノプロピルスペルミジン;
N4-アミノプロピルノルスペルミン;
N4-ビス(アミノプロピル)ノルスペルミジン;及び
N4-ビス(アミノプロピル)スペルミジン。
【0038】
また、植物由来の3,3'-ジアミノジプロピルアミン(H2N(CH2)3NH(CH2)3NH2)も挙げられる。これらのポリアミン誘導体は、例えば細菌、真菌、酵母等の微生物、植物、動物等の生体内に天然で存在しており、これらの生物から精製して用いることができる。また、上記の構造式に基づいて合成することもできる。さらに、シグマ・アルドリッチ社や和光純薬等の試薬メーカーから市販品を購入して使用してもよい。
【0039】
本発明において「変性低密度リポ蛋白質(変性LDL)」とは、種々の化学的、物理的な要因、あるいは熱などの種々の要因により変性を受けた低密度リポ蛋白質(LDL)のことである。例えば、酸化LDLが挙げられる。また、人工的には、硫酸銅、マロンジアルデヒド、又は次亜塩素酸で酸化させたLDLなども含まれる。該変性低密度リポ蛋白質(変性LDL)が生体内に存在すると種々の障害や疾患を引き起こす。
【0040】
本発明における「終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)」とは、グルコースなどの還元糖のカルボニル基と蛋白質のアミノ基との非酵素的な反応(メイラード反応)によって生じる不可逆的な高分子架橋物質である。例えば、糖尿病の臨床検査項目の1つであるヘモグロビンA1c(HbA1c)や構造が明らかになったカルボキシメチルリジン(CML)などがその代表である。終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)が生体内に存在すると種々の障害や疾患を引き起こす。
【0041】
本発明の吸着剤は、生体内の上記の変性低密度リポ蛋白質(変性LDL)や終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)を吸着させ、動物体内の変性低密度リポ蛋白質(変性LDL)や終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)を除去するのに用いることができる。
【0042】
本発明の吸着剤は、好ましくは、水不溶性担体に固定化して用いる。水不溶性担体とは、常温常圧の水溶液中で固体である担体をいう。形状は、限定されないが、球状、粒状、繊維状、平膜状、スポンジ状、チップ状などである。繊維状のものとしては、織布状、不織布状、中空糸状のものが挙げられる。
【0043】
該水不溶性担体は、本発明の吸着剤を固定化し、生体内の変性低密度リポ蛋白質(変性LDL)や終末糖化産物(Advanced Glycation End-products;AGEs)を吸着除去するのに用いることができる。本発明において、上記の吸着剤と水不溶性担体を含み、水不溶性担体に吸着剤が固定化されたものを吸着体と呼ぶ。このため、水不溶性担体の大きさは、細胞を含む体液が十分に水不溶性担体の間を通過できる間隔が得られるような大きさである必要がある。例えば、水不溶性担体が球状又は粒状である場合、球状又は粒状の平均粒径が5μm以下だと細胞を含む体液の場合に充分に通過し得る間隔を得られない傾向があり、粒径が2500μm以上だと体積あたりの吸着能が充分得られない傾向がある。従って、粒径は、好ましくは25μmから1000μm、より好ましくは50μmから800μmである。また、織布状及び不織布状の場合、同様の理由により、好ましい繊維径は1μmから500μmであり、より好ましくは5μmから200μmである。
【0044】
本発明で用いる水不溶性担体は、適当な大きさの細孔を多数有する構造を有していることが好ましい。即ち、本発明の水不溶性担体は、多孔構造を有する担体であることが好ましい。また、単位体積当たりの吸着能から考えて、表面多孔性よりも全多孔性が好ましい。ここで、全多孔性とは表面ばかりでなく、内部にも多孔構造を有することをいう。水不溶性担体の孔のサイズは、変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物の吸着能力を確保するために排除限界分子量で表した場合に、200万以上であることが好ましい。また、吸着能力は表面積により大きく影響される。即ち、表面積が大きいと吸着能力は上がり、小さいと下がる。したがって、吸着体の表面積が0.5m/mL以上であることが好ましく、1.0m/mL以上であることがより好ましい。
【0045】
水不溶性担体の材質は、上記のポリアミン誘導体を表面に固定化して保持できるものであれば、限定されず、無機化合物でも有機化合物でもよい。ただし、体液との接触時に溶出物が少ないこと、水不溶性担体の細孔の制御がより精巧にできることが好ましく、この点から、有機高分子化合物が好ましい。
【0046】
無機化合物として、シリカゲル、ガラスビーズ等が挙げられ、有機化合物としては、ポリビニルアルコール等のビニル系化合物の重合体若しくは共重合体、セルロース等の植物由来の多糖類、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリレートエステル、ポリアクリレートエステル系化合物等が例示される。この中でも、重合の容易さ、強度的安定性及び導入の容易さ等の面から、ビニル系化合物の重合体、共重合体やセルロース等が好適に用いられ、例えば、親水性ビニルポリマーゲル、セルロースゲルが挙げられる。市販の担体としては、トヨパールAF−エポキシ−650、トヨパールAF−トレシル−650、トヨパールAF−ホルミル−650、トヨパールAF−カルボキシ−650(以上、東ソー株式会社)、セルファインホルミル、セルファインアミノ(以上、チッソ株式会社)、N−ヒドロキシスクシミド活性化セファロース、臭化シアン活性化セファロース、エポキシ活性化セファロース(以上、GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)等が挙げられる。
【0047】
水不溶性担体表面に上記のポリアミン誘導体を固定化し、保持させる方法としては、化学的方法により水不溶性担体表面の官能基を介して共有結合させる方法、放射線や電子線を用いたグラフト法によって共有結合させる方法、物理的吸着により結合させる方法などが挙げられる。このうち、官能基を介して共有結合させる方法が、使用時に塩基性物質が溶出する可能性が低いので好ましい。官能基の例としては、エポキシ基、ホルミル基、N−スクシミド基、ハロゲン化シアノ基、イソシアン酸基、トシル基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの官能基は公知の方法で前記の水不溶性担体に結合させることができる。また、これらの官能基をあらかじめ結合させた市販の水不溶性担体を用いることもできる。ポリアミン誘導体の担体への固定化量は、用いる担体により様々であるが、例えば、担体がトヨパールAF−エポキシ−650の場合、その固定化量は乾燥重量1g当たり10〜600mg、好ましくは30〜300mgである。
【0048】
本発明の吸着剤及び吸着体は、特定の障害や疾患の原因となる生体の体液中に存在する変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物の吸着除去に用いることができる。
【0049】
例えば、本発明の吸着剤や吸着体を血液等の体液中に投与し、生体外(ex vivo)で変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を吸着させ、その後これらの物質を吸着させた吸着剤や吸着体を回収すればよい。
【0050】
また、体液を生体から採取し、生体外で本発明の吸着剤又は吸着体と接触させ、変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を体液から吸着除去することができる。その後、体液を生体に戻せばよい。
【0051】
上記の生体の体液中に存在する変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物の吸着除去には、好適には、吸着剤が水不溶性担体に固定化された吸着体が用いられ、好適には、生体から体液を採取し、生体外で変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物の吸着除去が行われる。この場合、本発明の吸着体を含む、吸着装置が用いられる。
【0052】
該吸着装置は、吸着体が内部に配置され、体液の流入口と流出口を有する体液が通過する流路を有し、流入口から装置内部に入った体液が装置内部の吸着体と接触し、体液中の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物が吸着除去される。その後、残った体液が流出口から排出され、生体内に戻される。したがって、装置の流入口及び流出口は、生体と連結される。この際、シリンジ等を用いて生体と連結し、生体内の体液と装置をつなげればよい。吸着体は、好ましくはカラム等の容器に充填保持した状態で装置に配置される。すなわち、生体内と連結した体液が通過する流路がカラム等の容器に連結されている。さらに、また、該カラム等の容器は、好ましくは、吸着体が体液の流れにより流出するのを防ぐための流出防止手段を備えている。流出防止手段としては、メッシュ、不織布、綿栓などのフィルターが例示され、これらを例えば、カラム等の容器の流入口と流出口又は流出口に配置すればよい。体液の循環は例えばポンプにより行われる。
【0053】
本発明においては、流入口と流出口を含み、吸着体を内部に充填したものを吸着装置という場合もあり、またさらに、前記流入口、流出口に連結され、生体と連結するための流路を含むものを吸着装置ということがある。本発明の吸着装置は、変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を吸着除去するという点で、変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去装置ということができ、さらに、これらを除去して体液を浄化するので、体液浄化装置ということもできる。
【0054】
本発明は、該体液浄化装置を用いて体液中の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を吸着除去する方法も包含する。例えば、該方法においては、前記装置が脱血ライン等の脱体液ライン及び返血ライン等の返体液ラインにより、血液等の体液を浄化しようとする被験体とつながっており、脱体液ラインを介して被験体の体液が前記体液浄化装置に導入され、装置内で体液が前記吸着体と接触し、体液中の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物が吸着体に吸着される。変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物が除去された体液は返体液ラインを介して被験体に戻される。該方法において、体液は血液ポンプ等のポンプにより循環される。また、脱体液ライン及び返体液ラインは、体液が血液の場合、被験体の静脈に連結すればよい。
【0055】
カラム等の容器の形状、材質、大きさには特に限定はないが、形状は筒状容器が好ましい。材質として好ましいのは、耐滅菌性を有する素材であり、具体的にはポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリサルフォン、塩化ビニルなどが挙げられる。吸着装置のカラム等の容器の容量は10mLから1000mL程度が適当である。容量が10mL以下では吸着量が充分でなく、1000mL以上では体液の体外循環量が多くなり過ぎるので好ましくない。また、カラム等の容器の直径は2cm以上20cm以下が好ましい。直径が2cm以下では線速が大きくなり圧力損失が大きくなり、20cm以上では線速が小さくなり血液成分が凝固する危険性が増すので、好ましくない。また、前記容器を含む装置は、使用前にオートクレーブ、ガンマ線などの放射線、紫外線、エチレンオキサイドガスなどの方法により滅菌処理を行うことができる。
【0056】
本発明の吸着装置を、体液を体外で循環させて用いる場合、主に2つの方法がある。1つは、体内から取り出した血液を血漿分離器により血球成分と血漿成分とに分離した後、血漿成分を吸着装置中の吸着体を通過させて浄化した後、血球成分と合わせて体内に戻す方法である。もう1つは、体内から取り出した血液を直接本発明の装置の吸着体を通過させて浄化する方法である。本発明の吸着体は、いずれの方法にも有効に使用できる。
【0057】
また、本発明の吸着装置は、本発明の吸着体のみを含んでいてもよいが、他の吸着体を混合して含んでいてもよい。他の吸着体として、例えば、リポソーバー(株式会社カネカメディックス)、プラソーバ(旭化成クラレメディカル)等に用いられている吸着体が挙げられる。
本発明の体液浄化装置の一例の断面図を図2に示す。
【実施例】
【0058】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0059】
実施例1 吸着体の製造
以下の方法により、本発明の吸着体1を製造した。
エポキシ基を保持した親水性ビニルポリマーゲル(トヨパールAF−エポキシ−650);東ソー株式会社)1gを水中で膨潤させ水洗した。3,3’−ジアミノジプロピルアミン150mgを含む2mol/L水酸化ナトリウム溶液を2mL調製した。3,3’−ジアミノジプロピルアミン150mg/mL溶液2mLをゲルに添加し撹拌した後、45℃で1晩インキュベートした。その後、未反応の3,3’−ジアミノジプロピルアミンを除くために2mol/L水酸化ナトリウム溶液で2回洗浄した。次に、残存活性基をブロックするため、2mol/Lグリシン溶液を添加し、45℃で1晩インキュベートした。その後、pHが8以下になるまでリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。
【0060】
実施例2 吸着体による変性LDLの吸着
[酸化LDL吸着除去能]
実施例1で製造した吸着体1(3,3’−ジアミノジプロピルアミン-レジン)を100μL分取し、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。牛血清アルブミン溶液500μg/mLを1mL添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングした。そして、蛍光プローブである3,3’−ジオクタデシルインドカルボシアニン(DiI)でラベルした酸化LDL(DiI−OxLDL)5μg/mLを添加したヒト血漿(コージンバイオ社)300μLを添加した後、37℃で3時間インキュベートした。さらに、3000×gで5分間遠心した後、その上清中の蛍光強度を、スペクトラマックスM5e(モレキュラーデバイス社)を用いて、励起波長530nm、蛍光波長575nmで測定した。
【0061】
結果を図3に示す。図3に示すように、吸着体1は、血漿中において、酸化LDL5μg中3.3μgを吸着除去した。なお、トヨパール樹脂自体には酸化LDL吸着能力はほとんど無かった。
【0062】
本発明の吸着体は、上記の酸化LDL吸着除去アッセイにおいて、除去率が50%以上、好ましくは70%以上を示す。よって、ポリアミン誘導体を結合させた吸着体は、血漿などの体液中の酸化LDLを吸着除去するのに有用であることが示された。
【0063】
したがって、本発明の吸着体が、(1)変性LDLに高い結合活性を有すること、(2)AGEsに高い結合活性を有すること、(3)選択性に優れていること、(4)血中の電解質量及び金属イオン量に影響を及ぼさないこと、(5)安全性が高いこと等の予期し得ない特徴を1つ以上有することがことが示されたことから、これらの吸着体は、変性LDLが関与する疾患及び/又はAGEsが関与する疾患の治療に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1: 体液浄化装置
2: 体液の流入口
3: 体液の流出口
4: カラム容器
5: 吸着体
6: 流出防止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式Iで表されるポリアミン誘導体を有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤。
【化1】

[式I中、XはC3〜C20、好ましくはC3〜C15の飽和若しくは不飽和脂肪酸において、1〜5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり窒素原子に分枝鎖-(CH2)3NH2が結合していてもよいヘテロ含有炭素鎖、C3若しくはC6〜C20、好ましくはC3若しくはC6〜C15アルキル基、C3〜C20、好ましくはC3〜C15のアルケニル基、C3〜C20、好ましくはC3〜C15のアルキニル基であり、ただし、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。]
【請求項2】
以下の一般式IIで表されるポリアミン誘導体を有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤。
【化2】

[式II中、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5及びY6は、独立にC1〜C5のアルキル基、C1〜C5のアルケニル基又はC1〜C5のアルキニル基であり、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5及びY6の炭素原子の数の合計は3以上かつ20以下、好ましくは15以下であり、q1、q2、q3、q4及びq5は独立に0又は1であり、q1、q2、q3、q4及びq5のすべてが0であることはなく、-NH-のHが分枝鎖-(CH2)3NH2で置換されていてもよく、ただし、H2N(CH2)4NH2、H2N(CH2)5NH2、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。]
【請求項3】
以下の一般式IIIで表されるポリアミン誘導体を有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤。
【化3】

[式III中、p1、p2、p3、p4及びp5は独立に1〜5のいずれかの整数であり、p1、p2、p3、p4及びp5を合計した数は、3以上かつ20以下、好ましくは15以下であり、q1、q2、q3、q4及びq5は独立に0又は1であり、q1、q2、q3、q4及びq5のすべてが0であることはなく、-NH-のHが分枝鎖-(CH2)3NH2で置換されていてもよく、ただし、H2N(CH2)4NH2、H2N(CH2)5NH2、H2N(CH2)3NH(CH2)4NH2及びH2N(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2で表される化合物は除かれる。]
【請求項4】
以下のポリアミン誘導体の少なくとも1つを有効成分として含む変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤:
3,3'-ジアミノジプロピルアミン;
1,3−ジアミノプロパン;
ノルスペルミジン;
ホモスペルミジン;
アミノプロピルカダベリン;
アミノブチルカダベリン;
ノルスペルミン;
テルモスペルミン;
アミノプロピルホモスペルミジン;
カナバルミン;
ホモスペルミン;
アミノペンチルノルスペルミジン;
N,N-ビス(アミノプロピル)カダベリン;
カルドペンタミン;
ホモカルドペンタミン;
テルモペンタミン;
カルドヘキサミン;
ホモカルドヘキサミン;
テルモヘキサミン;
ホモテルモヘキサミン;
N4-アミノプロピルノルスペルミジン;
N4-アミノプロピルスペルミジン;
N4-アミノプロピルノルスペルミン;
N4-ビス(アミノプロピル)ノルスペルミジン;及び
N4-ビス(アミノプロピル)スペルミジン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着剤と水不溶性担体を含み、該吸着剤が該水不溶性担体に固定化された、変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着体。
【請求項6】
水不溶性担体が、親水性ビニルポリマーゲル又はセルロースゲルである、請求項5記載の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着体。
【請求項7】
変性低密度リポ蛋白質が関与する疾患を治療するための、請求項5又は6に記載の変性低密度リポ蛋白質除去用吸着体。
【請求項8】
終末糖化産物が関与する疾患を治療するための、請求項5又は6に記載の変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物除去用吸着体。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の吸着体を含む、体液から変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を除去し、体液を浄化するための吸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−139806(P2011−139806A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2386(P2010−2386)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508311396)株式会社ファルミット (5)
【Fターム(参考)】