説明

生理活性物質の生産のための単一細胞を選抜する方法

本発明は、広くは、タンパク、核酸などの対象としている1つ以上の生理活性物質の生産のための単一細胞を選抜するための方法、装置及びキット、又は、そのタンパク及び同じタンパクをコードする核酸に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、タンパク、核酸などの対象としている1つ以上の生理活性物質の生産用の単一細胞を選抜するための方法、装置及びキット、又は、そのタンパク及び同じタンパクをコードする核酸に関する。
【背景技術】
【0002】
導入
1つ以上の生理活性物質を生産するための単一細胞又は細胞小集団を選抜することは、多くの場合において望ましい。例えば、細胞に対する生理活性物質の効果を決定するための小分子、タンパク又はsiRNAなどの薬剤候補のように、そのような情報を用いて生理活性物質への暴露後の細胞の状態又は動作を決定してもよい。そのような情報は、例えばSNP又は抗体といった生理活性物質の特定の変異体を発現する細胞を識別するのにも有用であり得る。例えば、多くの細胞におけるヌクレオチド配列の頻度を利用して、それらが作るタンパクの動作又は結果的に生じる表現型を予測するか又はモデル化するための抗体のように、そのような情報は、対象としている生理活性物質をコードする核酸配列を識別するのにも有用であり得る。本明細書の方法、装置及びキットは、これらの用途及び同様の用途に向けられている。
【発明の概要】
【0003】
タンパク、核酸などの対象としている1つ以上の生理活性物質の生産のための単一細胞を選抜するための方法、装置及びキット、又は、そのタンパク及び同じタンパクをコードする核酸。
【0004】
主題の方法の実施においては、対象としている1つ以上の生理活性物質を生産する細胞を個別ウェル中に分離する。ウェル中で細胞に1つ以上の生理活性物質を生産させ、次いで、ウェル中の1つ以上の生理活性物質を、固体表面に結合した1つ以上の結合剤に接触させる。その結合剤は、ウェル中の対象としている1つ以上の生理活性物質に特異的に結合し、次いで、結合剤又はターゲット結合タンパクに対する対象としている1つ以上の生理活性物質の結合に基づいて、例えば、ウェル中の細胞においてシグナル経路が活性であるか又は不活性であるかについての情報といった、ウェル中の細胞に関する情報を決定する。次いで、この情報を、固体表面の位置特定された特定領域に関連づけて、特に対象としているウェルを識別する。本発明のいくつかの態様においては、生理活性物質がウェルに提供されることによって、ウェル中の細胞の状態及び/又は動作に影響する。
【0005】
本発明のいくつかの態様において、上記方法は、例えば、対象としているタンパクを含む1つ以上のポリペプチドなどの少なくとも1つの対象としている生理活性物質をコードするヌクレオチド配列を得るステップと、対象としている生理活性物質の結合特性に関する情報を、対象としている生理活性物質をコードするヌクレオチド配列に関連付けるステップとをさらに具える。
【0006】
本発明のいくつかの態様においては、少なくとも1つの対象としている生理活性物質をコードするヌクレオチド配列のみが得られる。これらの態様においては、少なくとも1つの対象としている生理活性物質を生産する細胞が個別ウェル中に分離され、1つ以上の生理活性物質をコードするヌクレオチド配列が得られる。次いで、このデータを用いて、例えば、生理活性物質の結合特性、又は、選抜された細胞群においてその対象としている生理活性物質が出現する頻度といった、対象としている生理活性物質に関するメタデータを得ることができる。
【0007】
従って、本発明は、細胞集団の分析及びその集団についての平均的測定の報告ではなく、多数の細胞を個別に分析する効率的な方法を提供する。細胞を小さなマイクロウェル中に分離して処理する。そのマイクロウェル間においては分子の拡散が阻害されているか又はブロックされている。さらに、各マイクロウェルは、その小さな容積に起因して、mRNAのハイブリダイゼーション又はタンパクの捕捉などの速い反応速度を容易にする。更に、固体基板上に捕捉されたタンパクがその基板上に配列を形成し、固体基板上におけるそれらの接触、又は、すべての捕捉されたタンパク又は複合体に共通するラベルされた親和性リガンドと接触する場合について、一体的に力学的特性を分析することができる。
【0008】
本発明のこれらの目的及びその他の目的、長所及び特徴は、以下においてさらに完全に記載されている本発明の方法及び実施形態の詳細を参照した当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、添付図面と共に下記の詳細な説明を参照することによって最も理解される。一般的方法に従って、図面の様々な特徴が縮尺通りでないことを強調する。反対に、様々な特徴の大きさが明瞭性のために任意に拡大又は縮小されている。図面には以下が含まれている。
【図1】図1は、マイクロウェル中に捕捉されたB細胞又は形質細胞の略図である。
【図2】図2は、本発明のマルチウェル系に関連して用いることができる方法のフローチャートである。
【図3】図3は、mRNA捕捉及びその後のタグ付けされたcDNAへの変換の略図である。
【図4】図4は、抗体産生細胞からmRNAを捕捉するための2つのオリゴヌクレオチドプローブを表しており、1つはマウス重鎖(上)(配列番号:1)のためのものであり、もう1つはマウス軽鎖(下)(配列番号:2)のためのものである。401及び406は、エンドヌクレアーゼXhoIによって合成されたcDNAをマイクロアレイ内に切断するために用いられる認識部位である。402及び406は、PCR増幅に用いられるプライマー配列である。403及び408は、PCRプライマーと、Nで表されている(404及び409)エラー訂正ハミングコードを含むユニークな14個のヌクレオチドタグとの間の相違を大きくする標識ジヌクレオチドである。405は、アイソタイプ1、2a及び2bを含むマウス重鎖mRNAの定常領域に対して相補的なオリゴである。さらに、410は、マウスκ軽鎖mRNAに対して相補性のオリゴである。より優れた捕捉効率のためにマイクロアレイの表面から捕捉オリゴを遠ざけるスペーサー及び6つのデオキシアデノシン残基がある。
【図5】図5は、本発明のシステムに関して用いることができるマルチウェルトレイ部材(1)の一実施形態の概略図である。このウェルは、列に沿ってインデックス又はアドレス1−12(2)と、列に沿ってインデックス又はアドレスA−H(3)とを含み、通常の96ウェルトレイを提供する。
【図6】図6は、本発明に関して用いることができるマルチウェルトレイの頂部部材の概略図である。頂部4は、基本フレーム5で構成され、頂部上に多数の領域6を含む。領域6のそれぞれは、図5のマルチウェルトレイ1のインデックスに対応している。この領域は、図5のトレイと同様に、列に沿って1−12及び行に沿ってA−Hと番号が付けられている。部分14−17は、例えば図7のように頂部部材との正確な配置を与えるように切断されている。
【図7】図7は、図6の頂部部材に関して用いることができるマルチウェルトレイ部材の第2実施形態の概略図である。このトレイは、多数のウェル9を含むフレーム8で構成されている。このトレイは、上方に拡張した切れ込み10、11、12及び13を各コーナーに有している。切れ込み10−13は、図6に示されている頂部の切断部分14、15、16及び17の中にはまる。このように、頂部とトレイとは、互いに正確に配置することができる。
【図8】図8は、図6に示されている頂部の第2実施形態の概略図であり、前記頂部は各領域に突起を含んでいる。トレイ頂部20は、フレーム21及び図5のウェル3に対応する各領域の突起22で構成されている。この図に示されている実施形態においては、各領域が1つの突起を含んでいる。しかしながら、この領域は、2つ、3つ、4つ又はそれ以上の任意の数の突起を含んでいてもよい。
【図9】図9は、本発明のシステムを分解して示した概略図であり、トレイ頂部と共にトレイを配列させるための具体的な部材を示している。
【図10】図10は、様々な設計及び外形601−608を有するマイクロウェルの概略図であり、マイクロウェル全体が視界に含まれていなときに、局所的な位置特定可能性を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
ここで用いられているように、生理活性物質は、生物系において活性を有するあらゆる物質である。生理活性物質の例には、小分子化合物;例えばタンパクといったポリペプチド;siRNA;及び、オリゴヌクレオチドが含まれる。複数のそのような生理活性物質は、例えば、そのような薬剤の2個以上;いくつかの場合においては、3個以上の物質;5個以上の物質;10個以上の物質;20個以上の物質;50個以上の物質;100個以上の物質;500個以上の物質;1000個以上の物質;5000個以上の物質;10,000個以上の物質;30,000個以上の物質;100,000個以上の物質;又は、1,000,000個以上のそのような物質を含む。
【0011】
ここで用いられているように、「タグ」という用語は、それが由来した物理的位置を明らかにする部位を意味する。いくつかの実施形態においては、このタグがオリゴヌクレオチドタグであってもよく、オリゴヌクレオチドの配列が、その由来した物理的位置を明らかにするためのタグとして機能する。
【0012】
ここで用いられている「オリゴヌクレオチド」という用語には、ワトソンクリックタイプの塩基対合、塩基スタッキング、フーグスティーン又は逆フーグスティーンタイプの塩基対合などの規則的なパターンの単量体対単量体相互作用によってターゲットポリヌクレオチドに特異的に結合することができるデオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、これらのアノマー形態、ペプチド核酸(PNA)などを含む、天然単量体又は修飾された単量体又は結合の直鎖オリゴマーが含まれる。通常、単量体は、リン酸ジエステル結合又はその類似化合物によって連結され、例えば3〜4個といった少数の単量体単位から、例えば40〜60といった数十までのモノマー単位の大きさのオリゴヌクレオチドを形成する。「ATGCCTG」などの文字配列によってオリゴヌクレオチドを表す場合は、別段の定めがない限り、常に、ヌクレオチドが左から右に5’−3’の順であること、及び、「A」がデオキシアデノシンを意味し、「C」がデオキシシチジンを意味し、「G」がデオキシグアノシンを意味し、「T」がチミジンを意味することは理解されるであろう。通常、本発明のオリゴヌクレオチドは、4種の天然ヌクレオチドを含んでいるが、非天然ヌクレオチド類似体を含んでいてもよい。どのような場合に天然又は非天然のヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを使用することができるかは、当業者に明らかである。例えば、酵素による処理が要求される場合、通常は、天然ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドが必要である。
【0013】
二本鎖に関して「完全に一致している」ということは、二本鎖を構成するポリヌクレオチド鎖又はオリゴヌクレオチド鎖が、各鎖の各ヌクレオチドがもう1つの鎖のヌクレオチドとワトソンクリック塩基対合を生じさせるように、他の1つとの二本鎖構造を形成していることを意味する。この用語は、デオキシイノシン、2−アミノプリン塩基を有するヌクレオシドなどの使用可能なヌクレオシド類似化合物の対合をも包含する。三本鎖に関して、この用語は、三重鎖が、完全に一致した二本鎖と第3鎖とからなることを意味し、各ヌクレオチドが、完全に一致した二本鎖の塩基対とのフーグスティーン又は逆フーグスティーン対合を形成する。反対に、二本鎖中のタグとオリゴヌクレオチドとの間の「不一致」は、二本鎖又は三本鎖中のヌクレオチドのペア又はトリプレットがワトソンクリック結合及び/又はフーグスティーン結合及び/又は逆フーグスティーン結合を形成できないことを意味する。
【0014】
ここで用いられているように、「ヌクレオシド」は、例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,2nd Ed.(Freeman,サンフランシスコ,1992)に記載されているように、T−デオキシ及び2’−ヒドロキシル形態を含む天然ヌクレオシドを含む。ヌクレオシドに関する「類似化合物」は、特異的ハイブリダイゼーションが可能であるとの唯一の条件の下に、例えば、Scheit,Nucleotide Analogs(John Wiley,New York,1980);Uhlman and Peyman,Chemical Reviews 90:543−584(1990)等によって記載されている修飾された塩基部位及び/又は修飾された糖部位を有する合成ヌクレオシドを含む。そのような類似化合物は、結合特性の向上、複雑性の低減、及び、特異性の向上などのために設計された合成ヌクレオシドを含む。
【0015】
「ヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は、例えばポリペプチドをコードする遺伝子といったポリヌクレオチドの配列を表すように、本明細書において互いに区別なく用いられている。同様に、「配列決定」、「ヌクレオチド配列決定」及び「核酸配列決定」という用語は、ポリヌクレオチドの部分的及び完全な配列情報の決定を含む、ポリヌクレオチドを構成する核酸又はヌクレオチドの配列決定を表すように、互いに区別なく用いられている。すなわち、この用語は、配列比較、フィンガープリンティング、ターゲットポリヌクレオチドに関する情報の類似レベル及び明示的認識、並びに、ターゲットポリヌクレオチド中のヌクレオシド、通常は各ヌクレオシドの順序付けを含む。この用語は、ターゲットポリヌクレオチド中の4種のヌクレオチドの1種、2種又は3種の認識、配列及び位置の決定をも含む。
【0016】
ここで用いられているように、「エピトープ」は、免疫系によって、抗体、B細胞又はT細胞によって特異的に認識される高分子の一部である。エピトープは、通常、非自己タンパクに由来すると考えられているが、認識可能なホストに由来する配列もエピトープとして分類される。抗体又はB細胞によって認識されるほとんどのエピトープを抗原分子の三次元的表面特徴とみなすことができ;これらの特徴は正確に適合し、従って抗体に結合する。
【0017】
ここで用いられているように、「ハイブリダイゼーション」は、細胞内RNA又は一本鎖DNAが実質的配列相補性を有するオリゴヌクレオチドと相互作用し、配列相補性の前記領域において二本鎖が形成されるプロセスを意味する。
【0018】
ここで用いられているように、「マイクロウェル」は、1ピコリットルから500ナノリットルの容積を有するミリメートル以下の構造を意味する。マイクロウェルは、通常、平面基板上での高濃度パッキングを可能にする形状で構成される。すなわち、その形状は、三角形、長方形又は六角形である。マイクロウェルは、通常は頂部の一表層を除去することによって開き、又は、その他の表層を前記頭部に接して置くことによって閉じることができる。マイクロウェルは、均一であってもよいし、又は、限定されるものではないが、ガラス、フォトレジスト若しくはポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む異なる材料で構成されていてもよい。
【0019】
ここで用いられているように、「パラトープ」は、抗原のエピトープを認識する抗体の一部を表す。
【0020】
ここで用いられているように、「phOX」は、化学式C1412で表される4−{[(Z)−(5−オキソ−2−フェニル−1,3−オキサゾール−4(5H)−イリデン)メチル]アミノ}ブタン酸を意味する。
【0021】
ここで用いられているように、「回転異性体」は低エネルギー側鎖構造を意味する。回転異性体の構造ライブラリーの使用は、構造を決定又はモデル化するすべての人が、最も可能性の高い側鎖構造を試せるようにして、時間を節約し、修正されるべきより可能性の高い構造を作る。これはもちろん、回転異性体が実際に正しい低エネルギー構造である場合だけである。ライブラリは、多数の方法によってこの品質問題を解決する。それらは、非常に高解像度の構造(1.8Å以上)のみを使用し、多数のフィルターを用いて位置が未決定の側鎖を除去し、観察された構造(多数の長所を有する)手段ではなくそのモードを用い、不適合構造を組織的に除去するようされている。
【0022】
ここで用いられているように、「突然変異」は、生命体の遺伝物質のヌクレオチド配列に対する変化である。突然変異は、紫外線若しくは電離放射線への暴露、化学的突然変異誘発要因又はウイルスによって細胞分裂中に遺伝物質中のエラーをコピーすることによって生じ得るか、又は、超変異などのプロセスの間に細胞制御下で意図的に生じ得る。多細胞生物において、突然変異は、子孫に引き継がれる生殖細胞系列突然変異と、ここで用いられている動物の子孫に引き継がれ得ない「体細胞突然変異」とに細分することができる。B細胞は、親和性成熟のプロセス中に体細胞突然変異を受ける。
【0023】
生物学的機能を発揮させることができるように、タンパクは、水素結合、イオン相互作用、ファンデルワールス力及び疎水性パッキングなどの多数の非共有相互作用によって促進されて、1つ以上の特定の立体構造に折りたたまれる。ここで用いられているように、「構造」は、タンパクの構造の4つの別個の態様を表す。a)一次構造はペプチド鎖のアミノ酸配列であり、b)二次構造は局所的に定義される高度に規則的な部分構造(αヘリックス及びβシートの鎖)であり、1つの単一タンパク分子内に様々な二次的モチーフが存在することを意味し、c)三次構造は単一のタンパク分子の三次元構造であって、二次構造の空間的配置であり、d)四次構造はいくつかのタンパク分子又はポリペプチド鎖の複合体である。この複合体は、本文脈において通常はタンパクサブユニットと呼ばれ、より大きな集合体の一部又はタンパク複合体として機能する。
【0024】
ここで用いられているように、タンパクは、直鎖状に配置され、隣接したアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基との間のペプチド結合によって連結されたアミノ酸からなる有機化合物である。タンパクは、アミノ酸の単一のポリペプチド鎖、又は、例えば、ジスルフィド結合(例えば抗体)によって互いに結合した複数のポリペプチドなどのアミノ酸の複数のポリペプチド鎖を含んでいてもよい。ここで用いられているように、「タンパク複合体」は、タンパク間相互作用によって形成された2つ以上の関連タンパクのグループである。タンパク複合体は四次構造の形態である。長時間にわたって安定なタンパク複合体は、本明細書において「シスタンパク複合体」と呼ばれる。一時的なタンパク複合体は、本明細書において「トランスタンパク複合体」と呼ばれる。本発明は、シスタンパク複合体及びトランスタンパク複合体の両方に関する。
【0025】
ここで用いられているように、「力学的特性」は、反応koff、konの速度と、シスタンパク複合体及び/又はトランスタンパク複合体間のこれらの比Kを表す。二成分タンパク複合体について、解離定数Kは、等温等圧過程、生物系において非常に近接した条件から利用可能な仕事を表すギブス自由エネルギーと単調に相関する。
【0026】
ここで用いられているように、「ターゲット結合タンパク」又は「ターゲットタンパク」は、対象としている生理活性物質が結合するタンパクである。ターゲット結合タンパクは、例えば、対象としている生理活性物質がレセプタであるサイトカイン、又は、対象としている生理活性物質が抗体である抗原といった、対象としている生理活性物質に一般的に結合するタンパクであってもよい。代替的に、ターゲット結合タンパクは、例えば抑制サイトカインといった、対象としている生理活性物質に一般的に結合しないタンパクであってもよい。
【0027】
ここで用いられているように、「結合剤」又は「捕捉剤」は、生理活性物質を固定化するために用いられる分子である。捕捉剤は、それぞれの天然又は人工リガンドに対して親和性があるオリゴヌクレオチド、DNA、RNA、タンパク、小分子、ペプチド、アプタマーなどであってもよい。
【0028】
ここで用いられているように、固体表面は、あらゆる種類の表面又は支持体である。この固体表面は、ガラス、プラスチック、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン又はその他の高度に非反応性の材料から作られていてもよい。結合剤/捕捉剤が結合していてもよく、その場合には、結合剤/捕捉剤が固体表面を覆っていてもよいし、又は、例えば、スポット状になるか、パッドに局在化するか、又は、線に形成されて固体表面の場所を区別するように含まれていてもよい。
【0029】
「モノクローナル抗体」という用語は、様々な抗体の混合物から選択された抗体を意味する。同じ特異性のモノクローナル抗体のすべては、その天然突然変異体を除いて同一である。本明細書で用いられている「抗体」という用語は、損傷を受けていない免疫グロブリン分子及びその断片(Fab、F(ab’)、Fv、scFv)を意味するように理解される。
【0030】
ここで用いられているように、「リガンド」は、生体分子に結合して複合体を形成することができ、生物学目的を果たす物質である。
【0031】
ここで用いられている「B細胞」という用語は、骨髄で成長し、免疫グロブリン及び抗体を作ることに高度に特化した免疫細胞を意味するように意図されている。B細胞は、骨髄に由来し、体液性免疫を提供するリンパ球である。B細胞は、溶液中で抗原分子を認識し、形質細胞に成熟する。従って、「B細胞」という用語が本明細書で用いられるときに、この用語は、形質細胞などのB細胞から成長した細胞を包含するように意図されている。
【0032】
「形質細胞」という用語は、特定の抗原に反応してBリンパ球から成長する細胞を意味するように意図されている。形質細胞は骨髄及び血液中にみられる。形質細胞は、形質B細胞又は形質細胞と呼ぶことができ、大量の抗体を分泌する免疫系中の細胞である。形質細胞は、CD4+リンパ球による刺激によってB細胞から分化する。形質細胞は、抗体を生産し、かつ、抗原特異的B細胞に由来する白血球の一種である。本出願の全体を通して、「B細胞」という用語は、「形質細胞」を包含するように意図されており、その逆も意図されている。一般に、両方が、対象としている抗体を作る細胞を表す用語を包含するように意図されている。
【0033】
生理活性物質は、例えばタンパクといったあるターゲットに対する「結合親和性」を特徴とする生理活性物質である。例えば、抗体は、結合部位又はエピトープに対する親和性を特徴とする。すべての抗体は、アミノ酸の特定の三次元構造で構成されており、エピトープ又は抗原と呼ばれるその他の構造に結合する。
【0034】
抗体のその抗原に対する結合は、二分子の単純な可逆反応である。抗体をAbで表し、抗原をAgで表すと、標準的な運動学的理論によって反応を分析することができる。1つの結合部位を想定すると、この反応は、以下の式Iによって表される。

【0035】
ここで、Ag−Abは結合複合体であり、順方向及び逆方向の結合反応は、それぞれ、速度定数k1及びk2によって表される。抗原に対する抗体の「結合親和性」は、平衡状態における遊離反応物に対する複合化反応物の割合によって測定される。平衡状態における反応物の濃度が低いほど、抗原に対する抗体の結合親和性が高い。免疫学の分野において、結合親和性は、記号「K」によって表される又はあるときは「Ka」と呼ばれる「親和性定数」によって表される。「K」は、以下の式IIによって定義される。

ここで、角括弧は、1リットル当たりのモル濃度又は1モル当たりのリットル濃度を意味する。
【0036】
「K」としても表され、また、「親和性定数」である結合親和性Kaにおける典型的な値は、典型的抗体が1モル当たり約10〜約1011リットルの範囲内である。Kaは、溶液中に存在する抗体の結合部位の半分を抗原で満たすために必要とされる遊離抗原の濃度である。1モル当たりのリットルで測定すると、より高いKa(例えば1011)又はより高い親和性定数は、積の大きい溶媒体、非常に希釈された遊離抗原の濃度を示し、それ自体は、抗体がエピトープに対して高い結合親和性を有していることを示す。
【0037】
Kaを1リットル当たりのモルで測定すると、低いKa(例えば10−11)は、抗体結合部位の半分を占めるのに必要とされる遊離抗原よりも少ない濃度の溶液を示し、それ自体が高い結合親和性を示す。
【0038】
平衡状態は、Kaを測定するために達成される。より詳しくは、抗原に結合した抗体の濃度[Ag−Ab]が、抗体の濃度[Ab]と等しいときに、Kaが測定される。従って、[Ag−Ab]を[Ab]で割ると1に等しい。これを踏まえて、上記式IIを以下の式IIIに変換することができる。

式IIIにおいて、Kの単位は、1モル当たりのリットルである。1モル当たりのリットルの典型的な値は、1モル当たり約10〜約1011リットルの範囲内である。
【0039】
上記式の逆は、K=[Ag]であり、Kの単位が1リットル当たりのモルであり、典型的な値は、1リットル当たり10−5〜10−11モルの範囲内である。
【0040】
上記は、典型的な結合親和性が6桁を超えて変化し得ることを示している。従って、有用な抗体と考えられる抗体は、有用であると考えられる異なる抗体の結合親和性と比較して、100,000倍を超える結合親和性を有することもある。
【0041】
上記に基づいて、免疫学の分野において適切に定義された用語及び方法を用いて、抗原に対する抗体の結合特性を定義することができることが理解されるであろう。抗体の結合親和性又は「K」は正確に決定することができる。
【0042】
当業者は、高度の結合親和性が必ずしも非常に有効な薬剤に直結しないことを理解するであろう。従って、薬剤候補を得るときには、広範囲の結合親和性を示す候補を試験して、所望の生化学的/生理学的反応を獲得するかどうかを判断してもよい。結合親和性は重要であるが、高い結合親和性を有するいくつかの薬剤候補は有効な薬剤ではなく、低い結合親和性を有するいくつかの薬剤候補が有効な薬剤であることもある。
【0043】
「メタデータ」という用語は、「その他のデータに関するデータ」を意味するように用いられている。メタデータの項目は、個別データ、内容項目、又は、例えばデータベーススキーマといった複数の内容項目及び階層的レベルを含むデータのコレクションを表し得る。ここで用いられているように、メタデータは、本発明を用いて得られるその他のデータについての情報又は記述を提供する定義データである。例えば、データ項目又は属性に関するメタデータドキュメントデータ(名前、サイズ、データ種など)、及び、記録についてのデータ又はデータ構造(長さ、領域、カラムなど)、及び、データに関するデータ(どこに位置しているか、どのように関連しているか、所有権など)。メタデータは、文脈、品質及び条件に関する記述的情報、又は、データの特性を含んでいてもよい。例えば、メタデータは、一群の多数の個別の細胞によって発現される抗体の配列に関するデータを得ることによって決定されるような、細胞群中の特定の抗体の提示の頻度に関するデータであろう。
【0044】
発明の詳細な説明
タンパク、核酸などの対象としている1つ以上の生理活性物質の生産のための単一細胞を選抜するための方法、装置及びキット、又は、タンパク及びそれをコードする核酸を提供する。
【0045】
本発明をさらに説明する前に、本発明が、記載されている特定の方法及び装置に限定されるものではなく、それ自体を変更してもよいことは理解されるであろう。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、ここで用いられている用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、限定するようには意図されないことも理解されるであろう。
【0046】
値の範囲を提供する場合、別段の定めがない限り、その範囲の上限及び下限の間に入る各値は、下限の単位の10分の1まで、特に開示されていると理解される。記載されているあらゆる値又は記載されている範囲内にある値と、記載されているその他のあらゆる値又はその記載されている範囲内にある値との間の範囲は、本発明に含まれる。記載されている範囲において特に除外されているすべての限界に制限されることを条件に、これらのより小さい範囲の上限及び下限は、範囲に独立して含まれていてもよいし又は除外されていてもよく、そのより小さい範囲に限界のいずれか若しくは両方が含まれているか又はいずれも含まれていない各範囲も本発明に含まれる。記載されている範囲が1つ又は両方の限界を含む場合、含まれているこれらの限界のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0047】
別段の定めがない限り、本明細書で用いられている技術用語及び科学用語のすべては、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験においては、本明細書に記載されているものに類似の又は均等なあらゆる方法及び材料も用いることができるが、有力な好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されている刊行物のすべては、参照することによって本明細書に組み込まれており、引用されているその刊行物が関連する方法及び/又は材料を説明している。本出願は、2009年4月3日に本出願と同時に提出した他の2件の出願に関連するものである。その2件の出願は、代理人整理番号SCTI−0001及びSCTI−0002を有し、ここで言及することによって全体が本明細書に組み込まれている。矛盾が存在する範囲については、組み込まれている刊行物のあらゆる開示よりも本開示が優先することは理解されるであろう。
【0048】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられているように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」には、別段の定めがない限り、複数の指示物が含まれることに留意されたい。従って、例えば、「細胞又は配列(a cell or sequence)」への言及は、そのような細胞又は配列の複数を含んでいてもよく、「そのウェル又は位置(the well or addresses)」への言及は、当業者に知られている1つ以上のウェル又は位置及びその均等物への言及などを含んでいてもよい。
【0049】
本明細書において検討されている刊行物は、本出願の提出日前の開示のみを提供する。本明細書のすべての事項は、先の発明によるそのような刊行物よりも本発明が先行する資格がないことを認めるように解釈されないように意図されている。さらに、提供される刊行物の日付は、現実の発行日と異なっていることがあり、独立して確認する必要がある。
【0050】
上に要約したように、対象としている生理活性物質を生産するための、並びに、選択的にそれらの生理活性物質をコードするヌクレオチド配列を得るための単一細胞を選抜するための方法、装置及びキットを提供する。本発明のさらなる説明において、まず主題の方法を説明し、その後に、その主題の方法の実施において使用される装置及びキットを検討する。
【0051】
抗体実施形態
本発明の方法の一実施形態は、複数の分離細胞から情報を得る方法を含む。個別ウェルに多数の細胞を配置することによって、多数の細胞から同時にその情報を得てもよい。1つのウェル内に単一細胞を含むように試みがなされている。しかしながら、数百、数千又は数万もの細胞及びウェルを含む方法を実行する場合は、いくつかのウェルが細胞を含んでおらず、その他のウェルが1個を超える細胞を含んでいてもよい。
【0052】
本発明の方法は、動物を免疫化してその動物から抗体産生細胞を採取することから始めてもよい。しかしながら、このプロセスは、既に採取が行われた細胞から始めてウェルトレイのウェルに細胞を置いてもよい。当業者は、様々な異なる方法で本発明の方法を実行することができることを認識するであろう。一実施形態においては、マイクロウェルで構成されたウェルトレイを用いる。マイクロウェルは、単一細胞と、その細胞が抗体を生産する限定された期間にその細胞をサポートする液体栄養素とを収容するのに充分な容積を有している。当業者は、各マイクロウェル内に単一細胞を配置するのが望ましいことを理解するであろう。しかしながら、このプロセスを実際に行う場合、いくつかのウェルが細胞を含まず、いくつかのウェルが2個以上の細胞を含むであろう。このことが本発明の有効性を限定することもあるが、例えば1%、5%、10%、50%又はそれより多い割合のマイクロウェルのみが単一細胞を含み、かつ、単一細胞のみを含んでおり、残りのウェルが全く細胞を含まないか又は複数の細胞(すなわち2個以上の細胞)を含んでいる場合にも、本発明を実行することができる。70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上といった非常に高い割合のウェルが単一細胞を含み、かつ、単一細胞のみを含んでいることが望ましい。これによって、すべてのウェルを利用し、ウェル中で作られた抗体を単一細胞に対して特異的に関連付けることが可能になる。当業者は、すべての細胞が抗体を生産することが望ましいとはいえ、いくつかの細胞が抗体を作らないか又は検出するのに不十分な量で抗体を作っていてもよいことも理解するであろう。比較的少ない細胞が実際に抗体を作る場合にも本発明を実行することができる。ウェルに置かれた抗体産生細胞の例えば70%以上、80%以上、90%以上、95%以上が抗体(又はその他の生物学的活性分子)を生産するといった、高い割合の細胞を得ることが望ましいとはいえ、例えば、ウェル内の細胞の1%、5%、10%又は50%のみが検出可能な量で抗体(又はその他の生物学的活性分子)を実際に生産していてもよい。抗体を作る細胞を1個含むウェルがより多ければ、本発明の方法の効率がより高くなる。
【0053】
その表面のそれぞれの範囲又は領域は、その表面の範囲に結合したタンパクAなどの抗体結合剤などの結合剤を有していることが望ましい。しかしながら、それらの範囲の比較的小さい割合が表面に結合したタンパク結合剤を有している場合にも、本発明を実行することができる。例えば、本発明は、結合した結合剤を有する表面の領域が1%、5%、10%、50%又はそれ以上であっても機能することができた。その領域の70%以上、80%以上、90%以上、95%以上又は好ましくは100%といった高い割合が、ウェル又はマイクロウェルに対応する領域に結合した結合剤を有していることが望ましい。同様の態様で、マイクロウェルは、対象としている抗体又はその他のタンパクの一部をコードするポリヌクレオチド配列に特異的に結合する配列などのポリヌクレオチド配列を、表面に結合して有していてもよい。すべてのマイクロウェルは、表面に結合したポリヌクレオチドを有していることが望ましい。しかしながら、マイクロウェルの、例えば1%、5%、10%又はそれ以上といった少数のみのウェルの表面に結合したポリヌクレオチドを有しているときにも、本発明は機能し得る。本発明のこの実施形態を用いる場合、例えば、マイクロウェルの70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、又は、より好ましくは100%といったマイクロウェルの高い割合が、その表面に結合したポリヌクレオチド配列を有していることが望ましい。
【0054】
細胞は、B細胞又は抗体生産形質細胞などの細胞であり、ウェルで作られた抗体は、膜であってもよい表面に結合したタンパクAなどの結合剤と接触することになる。その表面は、複数の位置特定可能な領域を有していてもよいし、又は、個別ウェルに特異的に関連付けることができる領域を含むであろう。ウェルは、1cm当たり100個以上のウェル又は1cm当たり1,000個以上のウェル密度を有するウェルトレイであってもよい。ウェルは、その他のウェルと比較して特定のウェルの位置を決定することを可能にする検出可能なマーカーを含んでいてもよい。そのマーカーは、標識細胞であってもよいし、又は、染料、ヌクレオチド配列、放射性標識又は量子ドットを含み得る一群のマーカーであってもよい。
【0055】
ウェル中の抗体を結合剤と接触させた後に、プロセスを実行して、表面に結合した抗体の抗原への結合に関する結合情報を決定する。その抗原は、好ましくは特定の公知の抗原であり、抗原に対する抗体の結合親和性などの情報を決定する。次いで、表面の特定領域に関する結合情報を、抗体が得られた特定のウェルに関連付ける。従って、異なる多数のウェルから異なる多数の抗体に関する情報を同時に得て、抗体をその抗体が得られたウェルに関連付けることができる。
【0056】
対象としている表面領域の特定の抗体を決定して、それらを対象としているウェルに関連付けた後に、特定のウェルから特定のポリヌクレオチド情報を得ることができる。その情報は、通常、対象としている特定のウェルから得たメッセンジャーRNAに関する配列情報である。そのメッセンジャーRNAは、ウェル中のメッセンジャーRNAを、抗体の軽鎖及び重鎖をコードする配列などの抗体をコードする配列に特異的に結合する配列に結合させることによって得てもよい。
【0057】
得られたメッセンジャーRNAをcDNAに変換することができる。cDNAは、特に対象としているウェルに特異的なタグを含んでいてもよい。そのタグを用いて、特に対象としている抗体に関する結合情報を、特に対象としているウェルから得たメッセンジャーRNAに関連付けてもよい。以下において図を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。
【0058】
一般的実施形態
主題の方法の実施においては、対象としている1つ以上の生理活性物質を作る細胞を個別のウェルに分離する。いくつかの実施形態においては、細胞は、すべてのウェルにおいて、例えば、培養細胞株に由来する細胞、初代細胞試料に由来する細胞、又は、遺伝子操作された細胞などのように実質的に同一である。その他の実施形態においては、例えば、形質細胞又は同じヒト対象者に由来する異なる種類の細胞若しくは異なるヒト対象者に由来する同じ種類の細胞といった細胞は、各ウェルにおいて異なっていてもよい、すなわち、出所が異なるか、又は、それらをユニークにする遺伝子的相違を有していてもよい。いくつかの実施形態においては、1ウェル当たりに1個の細胞のみが配置される。その他の実施形態においては、1ウェル当たりに複数の細胞が配置される。一般的に、1個の細胞を含むマイクロウェルの数によって2個以上の細胞を含むマイクロウェルの数を除した比は、20%未満である。
【0059】
ウェル中で細胞に1つ以上の生理活性物質を作らせて、次いで、ウェル中の1つ以上の生理活性物質を、固体表面に付着した1つ以上の結合剤に接触させる。いくつかの実施形態においては、固体表面に付着した結合剤は、すべてのウェルについて同じである。いくつかの実施形態においては、固体に付着した結合剤は、異なるウェルについて異なっている。結合剤の例には、タンパクA、タンパクG、タンパクL、タンパクA/G、抗IgG Fcγサブクラス特異的抗体、及び、前記細胞によって作られた前記少なくとも1つの生理活性物質に対するターゲットタンパクが含まれる。これらの結合剤が付着している固体表面は、ガラス、プラスチック、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン又はその他の高度に非反応性の材料で作られていてもよく、各部位が、対象としている生理活性物質を作る細胞を含む個別のウェルの1つと特異的に関連付けられるように位置特定可能な領域で構成されている。
【0060】
固体表面の結合剤は、ウェル中の細胞によって作られる対象としている1つ以上の生理活性物質に特異的に結合し、それによって、対象としている生理活性物質を「捕捉」する。次いで、結合剤自体への対象としている1つ以上の生理活性物質の結合に基づいて細胞に関する情報を決定してもよい。例えば、ウェルにおける生理活性物質の存在又は不存在は、固体表面の結合剤への結合の存在又は不存在によって決定することができる。ここで、生理活性物質の存在/不存在は、ウェルの細胞においてシグナル経路が活性化されたか/不活性化されたかどうかを示す。代替的に、細胞に関する情報を、後で提供されるターゲット結合タンパクへの、対象としている1つ以上の捕捉された生理活性物質の結合に基づいて決定してもよい。例えば、ターゲットタンパクに対する捕捉された生理活性物質の結合親和性は、固体表面の捕捉された状態の生理活性物質を用いた親和性調査によって決定することができる。ここで、ターゲットタンパクに対する捕捉された生理活性物質の特別な親和性は、生理活性物質を作った細胞が対象としている細胞であることを示す。次いで、この情報を、特に対象としているウェルを区別するように、固体表面の位置特定された特定領域に関連付ける。
【0061】
対象としている細胞を含むウェルに位置合わせされるように固体表面の領域を位置特定するために、また、結合剤への結合がわかっており、かつ、実験サンプルと比較することができる生理活性物質を提供するために、調べる細胞群中に標識された公知の生理活性複合体と共に標識細胞を含ませることが望ましいこともある。標識細胞は、例えばハイブリドーマといった抗体を選択的に発現することができる細胞である。そのような道筋は、文献中に蓄積及び説明されており、容易に得られる。これらの細胞は、マイクロウェルにおいて識別することができるように、異なる蛍光色素分子を有する抗原を用いて染色されていてもよいし、又は、追跡可能な蛍光タグを発現するように遺伝子操作されていていてもよい。同様に、抗体は、固体表面の位置を確認することができるように、固体表面に補足されて、異なる染料を有する適切な抗原によって染色されていてもよい。そのため、マイクロアレイスライド上の標識細胞の位置は、固体表面上の領域を特定するための目印として用いることができる。次いで、固体表面に捕捉されたその他の細胞の生理活性物質は、標識細胞及びそれらが作る抗体に対する位置に基づいて一致させることができる。
【0062】
いくつかの実施形態においては、例えば小分子化合物、siRNA、タンパク、オリゴヌクレオチドといった生理活性物質を、ウェル中の細胞に提供する。いくつかの実施形態においては、提供されるこの生理活性物質はすべてのウェルにおいて同じである。従って、複数の細胞種又は複数のシグナル経路に対する影響について、1つの提供された生理活性物質を分析してもよい。その他の実施形態においては、この提供される生理活性物質が各々のウェルにおいて異なる。従って、単一細胞種又は1つのシグナル経路に対する影響について、提供される複数の生理活性物質を分析してもよい。
【0063】
本発明のいくつかの態様において、上記方法は、対象としている生理活性物質がポリペプチド複合体であれば、例えばポリペプチド又は複数のポリペプチドといった、対象としている少なくとも1つの生理活性物質をコードするヌクレオチド配列を得るステップと、対象としている生理活性物質をコードするヌクレオチド配列に、対象としている生理活性物質の結合特性に関する情報を関連付けるステップとをさらに具える。例えば、ヌクレオチド配列を、細胞からmRNAを得るステップと、mRNAからcDNAを合成するステップと、cDNAの配列を決定するステップとによって得てもよい。
【0064】
いくつかの実施形態においては、選択したウェル内の対象としている生理活性物質をコードするヌクレオチド配列が得られる。その他の実施形態においては、すべてのウェルの全細胞によって作られた対象としている生理活性物質のヌクレオチド配列が同時に決定される。これらの実施形態において、例えばオリゴヌクレオチドタグといったウェル特異的タグがウェルに与えられ、少なくとも1つの生理活性物質をコードするヌクレオチド配列を得るステップは、合成されているときにウェル特異的タグをcDNAに組み込むステップと、すべてのcDNAを貯留するステップと、超高処理型DNA塩基配列決定技術によって貯留されたcDNAの配列を決定して各親細胞の少なくとも1つの対象としている生理活性物質のヌクレオチド配列を決定するステップと、を具える。細胞をウェル内に置く前にオリゴヌクレオチドをウェルに提供してもよい。代替的に、細胞をウェル内に置いた後の時点で同時にオリゴヌクレオチドをウェルに提供してもよい。典型的には、オリゴヌクレオチドは、細胞をウェルに配置する前にマイクロウェルの内部表面に付着している。オリゴヌクレオチドは、少なくとも約10ヌクレオチド長;少なくとも約15ヌクレオチド長;少なくとも約20ヌクレオチド長;少なくとも約25のヌクレオチド長;少なくとも約30ヌクレオチド長;少なくとも約40ヌクレオチド長;少なくとも約50ヌクレオチド長;少なくとも約60ヌクレオチド長;少なくとも約70ヌクレオチド長;少なくとも約80ヌクレオチド長;少なくとも約90ヌクレオチド長であってもよく、典型的には、生理活性物質をコードするmRNAに対して相補的な100個未満のヌクレオチドを有する。オリゴヌクレオチドは、同じマイクロウェル内のすべての同一のオリゴヌクレオチドに共通の1つ以上のユニークなタグを含んでいてもよい。
【0065】
配列決定プロセス中に、マイクロウェル同定タグがDNA塩基配列のデジタルタグ形態に変換される。これは、次いでヌクレオチド配列を特定のウェルに(また、例えばタンパク複合体(例えば抗体の重鎖及び軽鎖)といった1つよりも多い対象としている生理活性物質がウェルから配列が決定されている場合には、互いに)、従って、膜の位置特定された特定領域に関連付けるために用いることができる。従って、対象としている生理活性物質の結合特性に関する情報は、対象としているその生理活性物質をコードするヌクレオチド配列に関連付けられ得る。
【0066】
上記のように、対象としている細胞を含むウェルと位置が適合するように固体表面の領域を位置特定するために、また、結合剤への結合がわかっており、かつ、実験サンプルと比較することができる生理活性物質を提供するために、調べる細胞群中に標識された公知の生理活性複合体と共に、例えば、重鎖及び軽鎖の両方についてわかっている配列情報を有する抗体を選択的に発現することができるハイブリドーマ細胞株などの標識細胞を含ませることが望ましいこともある。これらの細胞は、マイクロウェルにおいて識別することができるように、異なる蛍光色素分子によってラベルされた抗原によって染色されていてもよいし、又は、蛍光マーカーを発現するように遺伝子操作されていてもよい。同様に、アレイ上で捕捉された抗体は、固体表面上の位置を確認するために異なる染料を有する適切な抗原を用いて染色されていてもよい。最後に、標識細胞のmRNAが処理及び配列決定され、DNA塩基配列とデジタルタグは、捕捉マイクロアレイスライド上の標識細胞の位置を積極的に識別する。そのため、マイクロアレイスライド上の標識細胞の位置を固体表面上の位置に一致させることができる。アレイ中のその他の細胞のmRNA及びタンパクを、標識細胞、そのmRNA及び抗体に対する位置に基づいて一致させることができる。これらの標識細胞を用いて、複数の生理活性物質の結合親和性と比較可能な最終的結合親和性を提供することもできる。
【0067】
本発明のいくつかの態様において、少なくとも1つの対象としている生理活性物質をコードするヌクレオチド配列だけが得られる。これらの態様において、このデータは、対象としている生理活性物質に関するメタデータを得るために使用される。次いで、例えば、ヌクレオチド配列に基づいて、生理活性物質の結合特性のメタデータを得ることができ、また、理想的な生理活性物質を予測することができる。同様に、対象としている生理活性物質が集団内の単一細胞によって発現される頻度のメタデータを得ることができる。それを用いて生理活性物質についての生命体の優先度を予測することができる。
【0068】
本発明のいくつかの態様においては、細胞による対象としている生理活性物質の生産又は提供される生理活性物質の存在によって影響され得るその他の細胞特性を測定してもよい。そのような細胞特性には、例えば、細胞形態、膜電位、表面マーカー発現、分泌、又は、細胞内マーカ発現が含まれていてもよい。ウェルに堆積している細胞のコンピュータ画像を撮ること、及び、例えば形、色、不透明度、サイズといった様々なパラメータについてこれらの画像を分析することによって、そのような特性を決定してもよい。次いで、これらのパラメータは、各ウェルの位置を利用することによって、細胞によって作られた生理活性物質の結合親和性及び/又はこれらの生理活性物質をコードするヌクレオチド配列に関連付けられる。
【0069】
本発明は、細胞集団を分析してその集団についての平均測定値を報告するのではなく、多数の細胞を個別に分析する効率的な方法を提供する。この方法を用いて、数百、数千、数万、数十万、数百万又はさらに多い細胞を同時に選抜することができる。この方法は、a)親和力によって対象としている生理活性物質をランク付けること、b)DNA配列データをフィルタリングして混入又は無関係な細胞を考慮から除外すること、c)作られた生理活性物質の量に基づいて細胞種を分類すること、又は、d)類似した対象としている生理活性物質を生産する細胞の頻度を測定することに使用することができる。
【0070】
本発明は、薬剤選抜の分野において実用性がみいだされる。そのような場合、例えば小分子化合物、抗体、siRNAといった、細胞内シグナル経路を調節するために選抜される複数の生理活性物質がマルチウェル装置中の複数のマイクロウェルに提供され、各マイクロウェルが様々な生理活性物質を含む。実質的に同様の細胞を各ウェルに提供し、例えばタンパクといった対象としている生理活性物質を生産させる。その発現によって、選抜される生理活性物質の有効性が予測される。次に、ウェル中の細胞によって作られる対象としている生理活性物質を、例えばマルチウェル装置のふたなどの固体表面に付着している結合剤(例えば生理活性物質が結合することがわかっているタンパク)に接触させる。細胞によって対象としている生理活性物質が作られると、その物質は指定された位置において結合剤によって補足される。次いで、ELISA又はその他のそのような結合分析によって生理活性物質の存在について固体表面を分析する。次いで、生理活性物質の存在/不存在についての情報は、固体表面の位置特定された特定領域に関連付けられ、それは次にマルチウェルプレート中のウェルに関連付けられる。従って、複数の生理活性物質を選抜して細胞内シグナル経路の調節における有効性を決定してもよい。
【0071】
本発明は、ネットワーク薬理学の分野においても実用性がみいだされる。そのような場合、複数の細胞内シグナル経路に対する効果を決定するために、例えば小分子化合物、抗体又はsiRNAといった1つ以上の生理活性物質を選抜する。例えば、1つの生理活性物質をマルチウェル装置中の複数のマイクロウェルに提供する。実質的に同様の細胞を各ウェルに提供して、例えばタンパクといった対象としている生理活性物質を生産させる。その生産によって、複数のシグナル経路への生理活性物質の影響が予測される。ウェル中の細胞によって作られた対象としている生理活性物質を、例えばタンパクといった、生理活性物質が結合することがわかっており、また、例えばマルチウェル装置のふたなどの固体表面に配置された複数の結合剤に接触させる。ここで、各結合剤はウェルに関連づけられた固体表面の領域に配置されている。細胞によって対象としている生理活性物質が生産されると、対象としているその生理活性物質は位置特定された位置において結合剤によって捕捉される。次いで、例えば、マイクロアレイスキャナによるマルチスペクトル蛍光検出を用いて異なる結合剤(例えば、異なる有色蛍光色素分子によってそれぞれがラベルされたもの)を識別することによって、及び、各結合剤に捕捉された生理活性物質を定量することによって、固体表面を、細胞によって作られた生理活性物質の存在/不存在について分析する。次いで、生理活性物質の存在/不存在についての情報を用いて、細胞の状態及び細胞内シグナル経路の活性を決定することができる。従って、1つの生理活性物質を選抜して、複数の細胞内シグナル経路の調節における有効性を決定することができる。経路のネットワークに対する生理活性物質の組合せの効果をこの態様で選抜することができることに留意されたい。そのような場合、1つよりも多い生理活性物質を各ウェルに提供してもよいし、又は、その物質を別々に各ウェルに及び組み合わせて1つのウェルに提供してもよい。
【0072】
本発明は、対象としているタンパク変異体の識別にも実用性がみいだされる。例えば、バイオマーカー発見の分野において、疾病に対する罹患し易さの増大若しくは低下、又は、治療に対する感受性の増大又は低下を予測することができる新規な一塩基変異多型(SNP)を識別することである。そのような場合において、例えばタンパクといった生理活性物質及びその突然変異体は、通常、疾病に対する罹患し易さの増大若しくは低下、又は、治療に対する感受性の増大又は低下に関連づけられている。そのような場合、異なるヒト対象者に由来する細胞を複数のウェルに配置する。ここで、異なる対象者に由来する細胞は異なるウェル内に存在しており、その細胞に、対象としているタンパクを生産させる。ウェル内の対象としているタンパクを、例えば対象としているタンパクが結合することがわかっており、例えばマルチウェル装置のふたなどの固体表面に結合したタンパクなどの結合剤に接触させる。対象としているタンパクが、例えば、結合剤への対象としているタンパクの結合の有効性を変化させるSNPといった変異を含んでいなければ、対象としているタンパクは、位置特定された位置において結合剤によって捕捉される。次いで、固体表面の結合剤に対する対象としているタンパクの結合の有効性を決定するために、固体表面を、ELISA又はその他のそのような結合分析によって対象としているタンパクについて分析する。次いで、対象としているタンパクの結合有効性についての情報を、固体表面の位置特定された特定領域に関連付け、次に、マルチウェルプレート中の1つのウェルに関連付ける。
【0073】
それと同時に、各ウェルの対象としているタンパクのヌクレオチド配列を、ウェル中の細胞からmRNAを準備し、cDNAを合成し、さらに、cDNAの配列を決定することによって決定する。このcDNAは、合成されるときにcDNAに組み込まれたユニークなオリゴヌクレオチドを各ウェルに提供し、その後にcDNAを貯留し、超高処理型DNA塩基配列決定技術によって配列を決定して、各親細胞中の少なくとも1つの対象としているタンパクのヌクレオチド配列を決定することによって、まとめて配列が決定される。配列決定プロセス中に、マイクロウェル同定タグがDNA塩基配列のデジタルタグ形態に変換され、これは、次いで、ヌクレオチド配列を、特定のウェルと(及び、対象としている1つよりも多いタンパクがウェルから配列決定されているか、又は、タンパクが複数のポリペプチドで構成されている場合は、互いに、例えば下記実施例参照)、従って、固体表面の位置特定された特定領域と関連付けるために用いることができる。従って、対象としているタンパクの複数の変異体を同時に選抜することができる。また、これらの変異体の結合特性に関する情報を、これらの天然変異体をコードするヌクレオチド配列に関連付けることができる。この情報と、被検者の疾病に対する罹患し易さの増大若しくは低下、又は、治療に対する感受性の増大又は低下についてのデータとの相関関係を用いて、新規な予測及び予後バイオマーカーを識別することができる。
【0074】
ある場合には、対象としているタンパク変異体が1つのポリペプチドで構成されてもよいことに注目すべきである。その他の場合において、対象としているタンパク変異体は、同じ正確な細胞(すなわちシス複合体)から作られるポリペプチドの複合体である。ここで、例えば抗体などのタンパクに結合特性を与えるのは、ポリペプチドの複合化である。さらに他の場合において、対象としているタンパク変異体は、タンパク複合体(すなわちトランス複合体)であってもよい。ここで、複合体の1つのタンパク又は複合体全体にさえも結合特性を与えるのは、タンパクの複合化である。例えば、シグナル伝達に関与する多くの細胞表面レセプタは、非共有結合を介してその他のレセプタとの複合体を形成する能力がある。本発明を用いて、これらのタンパク複合体を細胞毎単位でその特性結合を調べて、これらの複合体の形成に作用するスプライス変異などの質的変化を識別することができる。例えば、正常細胞と癌細胞との間での細胞ごとの比較を行うことができる。関係するタンパクが捕捉されれば、ラベルされたリガンドによるレセプタの同様の分析を行って、これらの複合体の結合特性を一細胞単位で理解すること、及び、レセプタを定量して様々な組合せを一細胞単位で識別することができる。これらの情報のすべてを、細胞及び生理活性物質をコードするヌクレオチド配列によって作られる生理活性物質の結合特性を含む、前述した細胞の観察された特性に関連付けることができる。細胞及びそのシグナル伝達変換機構の高含有量分析を行うことができる。
【0075】
対象としている生理活性物質がポリペプチドの複合体である分野の一例は、抗体開発の分野である。例えば、本発明を用いて細胞を選抜し、抗原に対する親和性又は結合力がより高い抗体を生産するものを識別し、また、これらの抗体の結合領域をコードするヌクレオチド配列を決定してもよい。そのような場合において、例えば形質細胞といったB細胞を複数のウェルに配置し、各形質細胞を異なるウェルに配置し、その細胞に抗体を生産させる。ウェル中の細胞によって生産された抗体を、その抗体が一般的に及び特異的に結合するように、例えばタンパクG、タンパクA、タンパクL、タンパクA/Gといった固体表面(例えばマルチウェル装置のふたなど)に結合している結合剤に接触させる。次いで、捕捉された抗体を、例えばELISAなどの多数の公知の結合分析のいずれかによって分析して、ターゲットタンパク(すなわち抗原)に対する抗体の親和性及び/又は結合力を決定することができる。次いで、抗体の結合有効性についての情報を、固体表面の位置特定された特定領域に関連付け、次にマルチウェルプレート中の1つのウェルに関連付ける。
【0076】
それと同時に、ウェル中の細胞からRNAを準備し、cDNAを合成し、そのcDNAの配列を決定することによって、抗体の重鎖及び軽鎖のヌクレオチド配列を決定する。まとめて配列を決定するために、cDNAが合成されるときにそのcDNAに組み込まれた各ウェルに特有なオリゴヌクレオチドをウェルに提供し、次いで、そのcDNAを貯留し、超高処理型DNA塩基配列決定技術によって配列を決定することによって、各形質細胞によって生産された抗体のヌクレオチド配列を決定する。配列決定プロセス中に、マイクロウェル同定タグはデジタルタグ形態のDNA塩基配列に変換される。これは、重鎖及び軽鎖のヌクレオチド配列を、特定のウェルに及び互いに、従って、膜の位置特定された特定領域に関連付けるために用いられる。従って、特定のウェル中の特定の細胞によって生産された抗体の結合特性に関する情報を、その抗体をコードするヌクレオチド配列に関連付けることができる。そのような情報を用いて、抗原に対する親和性/結合力がさらに高い抗体を設計することができる。
【0077】
代替的に、本発明を用いて、固体表面要素を用いることに無関係な重鎖及び軽鎖のヌクレオチド配列を得て、抗体結合親和性、及び、免疫反応中のクローン選択の現象によるその抗体のKを推定するために用いられるある抗体配列についての出現頻度を分析してもよい。この推定されたKを、捕捉された抗体から得た測定値に関連付けることができる。この分析の道筋は、インビボにおける親和性成熟のプロセスを理解することを助け、究極的には、インビトロにおいて抗体の親和性を増大させるための集中的でさらに効率的な努力を導くことができる。
【0078】
ある抗体の重鎖と軽鎖の組合せに用いることができる多数の配列があれば、変異の位置及び測定された平衡定数を用いて、抗体のパラトープの決定的に重要なアミノ酸残基を推測することが可能になる。大集団中の単一細胞によってコードされるタンパクに対するヌクレオチド配列を得ることができるので、本発明はこれらの研究にも有用である。
【0079】
その決定的に重要なアミノ酸残基を識別することができれば、エピトープ、及び、抗原の推定上のエピトープの周辺構造を推測することも可能になる。本発明は、抗体の結合自由エネルギー及び推定上のタンパクの折りたたみを推定する。各抗体に対して識別される潜在的エピトープによって、これは、ターゲット抗原に対して得られる抗体を分類するもう1つの基準を提供する。抗原の様々なエピトープに対するそれぞれの抗体の群を素速く識別する能力は、本発明の長所である。多数の様々な抗体が回収されても、これによって確認試験の数が少なくなる。抗原の識別されたエピトープに限定される構造を解読することによって、識別されたエピトープの濃度が十分に高くても、抗原の全体構造をよく理解することができる。この結果も先例がない。これらすべては、本発明を用いて多数の抗体を急速に回収することができるという事実による。
【0080】
医薬開発に従って最高のK及び最低値koffを有する抗体を得るという目標にもかかわらず、本発明を用いて、免疫化後の任意の日から、形質細胞などの抗体産生細胞及び/又は抗原特異的B細胞をとることによって、免疫反応を追跡調査することができる。更に、本発明を用いて、これらのB細胞集団をプロファイリングすることによって、マウスのひ臓又はこれらのB細胞さえからも選択することなく、ヒト対象者の循環中の免疫系の状態を観察することができる。これは、自己免疫性疾患を研究することにおいて、及び、バイオマーカー又は潜在的薬剤ターゲットを開発するために非常に有用であり得る。確かに、抗体に類似した構造を有するT細胞受容体を、免疫機能を研究するための同様の方法によって分析することができる。従って、本発明は、潜在的な多数の用途を有しているが、主な用途は、免疫グロブリン細胞若しくはT細胞受容体又は分泌された抗体に対する再配列された遺伝子などのような、細胞集団内において多様性である遺伝子の組合せを分析することであろう。
【0081】
ファージディスプレイ技術と同様に、本発明を用いて、酵母ディスプレイ、バクテリアディスプレイ及び哺乳類ディスプレイなどの多くのディスプレイ技術における構築物を選抜することができる。フローサイトメトリによって抗原特異的B細胞を選択するのと類似した方法で、候補のディスプレイクローンをそのライブラリーから濃縮することができる。濃縮すると、これらのディスプレイクローンを、抗原特異的B細胞と全く同様にマイクロウェル内に分離し、非常に類似した方法で処理することができる。捕捉配列における変更は、用いるディスプレイ技術に対して適切なされなければならない。しかしながら、これらのディスプレイ技術の多くとは対照的に、候補を、非常に素速く処理することができ、ディスプレイクローンによって発現されたタンパクが下記実施形態1又は実施形態2に記載されているように捕捉されれば、それらの結合特性をまとめて評価することができる。
【0082】
本発明を用いて、例えば、細胞形態、膜電位、表面マーカー発現、分泌、細胞内マーカ発現といった、細胞によるタンパク変異体の生産によって影響され得るその他の細胞特性を調べてもよいことにも留意されたい。従って、これらの細胞特性を一細胞単位で記録し、次いで、これらの特性を、細胞及び/又はその生理活性物質をコードするヌクレオチド配列によって生産される生理活性物質の結合特性と関連付けてもよい。一例として、個別の細胞の形態を、細胞の腫瘍形成能の基準として用いてもよく、それらの結果は、診断を確認して偽陽性を減らすように、タンパク変異体又は遺伝子コピー数を評価するための核酸配列と相関していた。細胞又は表面に結合した抗体の蛍光測定を行うと、マイクロアレイリーダによって、様々なピクセルの輝度が、特定のウェル中の細胞表面マーカーの濃度又は表面に結合した抗体に関連づけられるに違いない画像が得られる。閉じ込められた細胞と、捕捉されたmRNA及び選択的に捕捉されたタンパクとの間の適切な位置合わせを保証するために、調査中の細胞集団中に公知のシスタンパク複合体と共に標識細胞を含めることが望ましいこともある。
【0083】
本発明の態様をさらなる説明において、以下の説明では、望ましい親和性で特定の抗原に結合する抗体の発現について単一細胞を選抜すること、及び/又は、それらの抗体の重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列を得ることに焦点を当てる。しかしながら、主題の方法及びその装置は、それらの細胞の状態及び動作についての情報を得るために用いることができるその他の生理活性物質についての単一細胞の選抜においても用途がみいだされる。
【0084】
例えば、形質細胞102は、マイクロウェル101の内部において、全マイクロウェルを満たす緩衝液に懸濁されている。マイクロウェル101は、50ミクロン×50ミクロン×50ミクロンのサイズを有していてもよい。サイズ105は、マイクロウェル101の底部から頂部までで0〜50ミクロンである。一面から対向面まで、このサイズは、−25ミクロンから25ミクロンまでの範囲内である。DNAオリゴヌクレオチドは、パッドと呼ばれる隣接領域においてマイクロウェル101の底面に付着している。パッド103は、抗体の重鎖をコードする形質細胞102のmRNA中の不変配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含んでいる。パッド104は、抗体の軽鎖をコードする形質細胞102のmRNA中の不変配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドを含んでいる。前記mRNAが形質細胞102から放出されて、マイクロウェル101中の細胞培養溶液であってもよい溶液中に拡散するときに、前記不変配列が相補的mRNAに強く結合して物理的に捕捉するように、その不変配列が選択される。マイクロウェル101はいかなる方向においても適切に機能するが、図1における説明の目的のために、パッド103及びパッド104は、マイクロウェル101の底部に付着するように示されている。
【0085】
以下の特定の実施形態において、細胞によって生産されている対象としている生理活性物質は、抗原に対する免疫反応としてホスト中の細胞によって生産される抗体である。実施形態1及び実施形態2においては、各形質細胞によって生産された各抗体について重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列が決定され、また、各形質細胞によって生産された抗体が捕捉されて、マイクロウェルと位置が適合する位置特定されたアレイであって、元の各形質細胞が閉じ込められたアレイが形成される。蛍光ラベルされた抗原の調合物は、各スポットで捕捉された抗体をデータベースで検索するために濃度を変えて用いられて、解離定数(koff)及び平衡定数(K)の両方が測定される。会合定数は、(koff)と(K)の両方に由来する。多数の抗体が回収され、それらを分類する手段が望ましいので、そのような力学的結合特性は、本発明を用いて得られる抗体のランク付けにおいて非常に価値がある。更に、フローサイトメトリを用いた抗原特異性B細胞についての濃縮が不適当である場合には、これらの測定は、汚染非B細胞又は非抗原特異的B細胞に由来するデータを除去するように機能する。
【0086】
実施形態3及び実施形態4においては、この生物系を用いて、各成分の2つのコピー(重鎖及び軽鎖)が複数の共有結合によって結合しているシスタンパク複合体の2つの成分である巨大分子をコードするヌクレオチド配列を決定するために、どのように本発明を用いることができるかを説明する。この場合、各形質細胞において免疫反応中に生成された各抗体の重鎖及び軽鎖には多形的相違が存在する。本発明を実施することによって、抗体の重鎖及び軽鎖一次構造の組合せを、分析する各形質細胞ごとに決定できる。そのような組合せによって抗体の優れた特異性が保証されるので、抗体の重鎖及び軽鎖の組合せの一次構造の情報に基づいて適切な構築物を合成することによって、及び、研究、診断及び治療を含む様々な分野において多様な用途がみいだされる抗体を無制限に供給するのに適した発現系にそのような構築物を入れることによって、一次構造(すなわちアミノ酸配列)がわかれば遺伝子工学的に抗体を生産することができる。
【0087】
マウス抗体に焦点を当てて検討するものの、体液性免疫反応を生成する能力を有する動物によって生産される抗体に本発明を適用できることは明らかである。本発明の一態様において、本発明を実施するための必要条件は、あるアイソタイプに対する抗体の重鎖及び軽鎖mRNAのための定常領域の配列情報である。本発明によってB細胞などの抗体産生細胞からmRNA及びタンパクが直接的に得られるので、ハイブリドーマ細胞を生成するための細胞融合が不要になることは明らかである。
【0088】
説明されている実施例においては、マウスIgG1、IgG2a及びIgG2bアイソタイプ重鎖保存配列並びにκ軽鎖配列だけを用いてマウス抗体mRNAを捕捉しているが、これは本発明の限定ではなく、一実施形態を表す。適切な配列を含むオリゴヌクレオチドプローブの混合物がすべてのアイソタイプに結合して捕捉するために用いることができるスポットされたマイクロアレイを用いることは、完全に本発明の範囲内である。
【0089】
一実施形態においては、研究中のタンパク複合体が抗体の重鎖及び軽鎖であってもよい。この場合、構造的情報を力学的特性に統合することによって、抗体のパラトープ及び抗原のエピトープに対する理解が得られる。本発明のこの実用性を説明するために、ハプテンの2−フェニル−5−オキサゾロン(phOX)に対する抗体を用いたシミュレーションを行った。
【0090】
実施形態1
マイクロウェルは、高さ50ミクロン(±25%)の壁を平面支持体に接合し、ウェル内部にオリゴヌクレオチドパッドを接合させることによって作成してもよい。単一細胞がマイクロウェル内に定着するように、これらのマイクロウェルに細胞を散布する。対象としているタンパクに付着するのに適した材料で覆われたカバーを、前記マイクロウェル上に配置する。例えば、トップカバーに抗体を固定化するために、タンパクA又はタンパクL(Sigma−Aldrich社、セントルイス、ミズーリ)などの抗体特異的捕捉剤によってそのカバーをコーティングする。
【0091】
実施形態2
実施形態2においては、対象としているタンパクを付着するのに適した材料を、例えば、50ミクロンの六角形のウェルを含むブランクのPicoTiterPlate装置(454 Life Sciences社、ブランフォード、コネチカット)などの商用マイクロウェルアレイ上にコーティングする。単一細胞がウェル中に定着するような方法で、細胞を前記六角形のウェルに散布する。例えば、ウェルの表面の抗体を固定化するために、タンパクAなどの抗体特異的化合物によって表面をコーティングする。カスタムオリゴヌクレオチドアレイ(NimbleGenシステムズ社、マディソン、ウィスコンシン)を前記PicoTiterPlateの上に置いてmRNAを捕捉及び標識する。
【0092】
実施形態3
実施形態3においては、平面支持体上に約50ミクロンの壁を付着させることによってマイクロウェルを作成する。単一細胞がマイクロウェル内に定着するような方法で、前記マイクロウェルに細胞を散布する。カスタムオリゴヌクレオチドアレイ(NimbleGenシステムズ社、マディソン、ウィスコンシン)を、前記作成されたマイクロウェルの上に置いてmRNAを捕捉及び標識する。タンパクを捕捉しない。
【0093】
実施形態4
実施形態4においては、例えば、50ミクロンの六角形のウェルを含むブランクのPicoTiterPlate装置(454 Life Sciences社、ブランフォード、コネチカット)などの商用マイクロウェルアレイ用いて、散布した細胞を収容する。カスタムオリゴヌクレオチドアレイ(NimbleGenシステムズ社、マディソン、ウィスコンシン)を前記商用マイクロウェルアレイの上に配置して、mRNAを捕捉及び標識する。タンパクを捕捉しない。
【0094】
実施形態5
実施形態5においては、2つの平面が多孔構造によって短い距離(例えば:50ミクロン)で分離されている。1つ又は両方の平面がマイクロアレイである。その多孔構造は、生体細胞(例えば:50ミクロン)を含むのに充分に大きい孔を含む。一時的に多孔構造を1つの平面に貼ることによって、開いたマイクロウェルのアレイを作成する。2つの方法:a)細胞を前記マイクロウェル上にランダムに散布するときに、通常、1つのみの細胞が1つのマイクロウェルを占めるように、前記細胞の濃度を選択する確率的分離;及び、b)予め決めたマイクロウェルに個別の細胞を移す決定論的分離、のうちの1つによって生体細胞を前記マイクロウェルの頂部に散布する。一定時間(例えば:3分)後に、密度増加によってマイクロウェル上の細胞が前記マイクロウェルに入るようにする。すべてのマイクロウェルに共通する薬剤を前記マイクロウェル上の領域に導入すると、各マイクロウェル内で反応が生じる。小分子を短い時間(例えば:10秒)で前記マイクロウェルから拡散させる。次いで、第2の平面を前記マイクロウェル上に置いて密閉し、より長い時間にわたってマイクロウェル内の反応を生じさせる。前記反応によって、前記マイクロウェルに閉じ込められた化学物質によるマイクロアレイの変性が生じた。前記マイクロアレイが変性されたと考えられた後に、平面アレイを分離し、多孔構造を除去した。前記変性されたマイクロアレイ内に作られたコードを分析中に用いて、マイクロウェルを測定結果に関連付ける。前記コードはマイクロアレイ上の物理位置であってもよいし、又は、分析するデータにタグが埋め込まれるようにしてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドアレイの場合には、前記埋め込まれたタグがユニークなDNA塩基配列であってもよい。
【0095】
マルチウェル装置
本発明の主題の方法の要となるのは、個別のマイクロウェル中に単一細胞を閉じ込めることである。従って、本発明の一態様は、マイクロウェルで構成されたマルチウェル装置である。マイクロウェルは、2つの目的:第1に個別の細胞間で反応物及び生成物の拡散を抑制すること;第2に核酸ハイブリダイゼーション又はタンパクの相互作用などの処理速度を加速させること、を果たす。従って、本発明のマルチウェル装置のマイクロウェルは、1cm当たり100個よりも多いマイクロウェル密度で相互に連結されており、各マイクロウェルは、1ピコリットルから500ナノリットルの間の容積を有している。そのトレイは、任意の数のウェルを含んでいてもよく、好ましくは96個以上、100個以上、1,000個以上、10,000個以上、100,000個以上、1,000,000個以上のウェルを含む。通常、マイクロウェルは、1cm当たり100個を超えるウェル密度を有する。このウェルは、単一細胞を保持することができるように設計されており、また、そのトレイ面は、トレイの表面周辺に細胞を置いて移動させるときに、単一細胞が各ウェル内に移動するように設計されている。さらに、このトレイは、マイクロウェルが外部の薬剤を断続的に利用できるように設計されていてもよい。
【0096】
また、この方法のいくつかの実施形態の要となるのは、対象としている生理活性物質についての細胞の選抜である。従って、本発明のマルチウェル装置は、例えば結合剤などの対象としている生理活性物質に結合する薬剤が付着した固体表面をさらに具えていてもよい。この固体表面は、膜、繊維、ビーズ、又は、ポリスチレンシート若しくはポリプロピレンシート、例えば各領域がトレイ上の各ウェルにユニークに対応する複数の領域で構成されたトレイ頂部であってもよい。この領域は、平面であってもよいし、又は、外に突出してさらに大きい表面積を与えてもよい。トレイ頂部上のこの領域(及び選択的な突起)は、例えばタンパクA、タンパクG、タンパクL、タンパクA/G、ヤギ抗マウスIgG抗体といった抗体結合剤、又は、細胞によって生産されている少なくとも1つの対象としている生理活性物質に対するターゲット結合タンパクでコーティングされている。このコーティングは、ウェル中の細胞によって生産される生理活性物質に効率的にかつ選択的に結合するいかなる薬剤を含んでいてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態においては、生理活性物質をマイクロウェルに提供してもよい。例えば、小分子化合物、タンパク、siRNA又はオリゴヌクレオチドを、マイクロウェル中にスポットしてもよい。各ウェルは、さらに又は代替的に、例えばオリゴヌクレオチドなどのポリヌクレオチドで表面がコーティングされていてもよい。
ポリヌクレオチドは、細胞が例えばシークエンシング反応において溶解された後に、プライマーとしてウェル中のヌクレオチドを複製するように機能してもよい。
【0098】
この装置は、ここで記載されているあらゆる方法に従って装置を用いるための説明書を含むキットであってもよい。さらに、PCR試剤を含む試薬と共にこの装置を販売してもよい。
【0099】
実施例
以下の実施例は、当業者に、どのようにして本発明を作成及び使用するかについての完全な開示及び説明を提供するように出されており、また、本発明者らが本発明とみなすものの範囲を限定するようには意図されておらず、以下の試験がすべて又は唯一の行われた試験であることを表すように意図されている。使用した数(例えば量、温度など)に関する正確性を保証するように努めたものの、ある程度の実験誤差及びずれが含まれると考えられる。別段の定めがない限り、部は重量による部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、また、圧力は気圧又は気圧付近である。
【0100】
実施例1:マウス抗HEL抗体についての重鎖配列及び軽鎖配列の両方の取得
マウスの免疫化
図2を参照して、BALB/cマウス201のグループを、50μgのニワトリ卵白リゾチーム(HEL、Sigma、セントルイス、ミズーリ)が含まれる完全フロインドアジュバント(Sigma)で腹膜内において免疫化させる。第1の免疫化の6週間後に、マウスを、同量のHELで静脈内において免疫化させる。第2の接種の2日後に、マウスの尾静脈から血液を得て、血清中のHELに対するポリクローナル抗体の存在をELISA試験によって測定する。前記ELISA試験によって測定された滴定濃度が充分なものであれば、その翌日にマウスを屠殺してひ臓を採取する。
【0101】
抗原特異的B細胞の分離
脾細胞の細胞懸濁液は、ひ臓を機械的に破砕することによって得られる。また、赤血球をpH7.4の0.16M塩化アンモニウム溶液中で溶解させる。得られる一細胞懸濁液を、最適な希釈で、FITC(Pierce Biotechnology社、ロックフォード、イリノイ)によってラベルされたHELと、PE−Cy5(Prozyme社、サンリアンドロ、カリフォルニア)によってラベルされたHELとの組合せを用いて染色する。染色を4℃において2ステップで行った。まず、細胞を、経験的に決定される飽和濃度よりも低い最適濃度を用いて、FITCラベルされたHELによって1時間染色する。次いで、細胞を、FACSバッファーで3回洗浄する。次いで、細胞を、PE−Cy5ラベルされたHELで染色する。染色下後に、細胞を、5%FCSを含むPBS中で2回洗浄する。
【0102】
細胞を、改良されたデュアルレーザーFAC−StarPLUS(商標)(Becton Dickinson社)を用いて分析する。CELLQuestソフトウェアを用いてファイルを得る。ステップ202において、適切な表面表現型を有する1つのB細胞を、FAC−StarPLUS(商標)に取り付けた自動細胞分配ユニットと、クローンCytソフトウェア(Becton Dickinson社)とを用いたレパートリー解析のために分類する。細胞を、1U/μLの濃度でRNアーゼ阻害剤(SUPERase−In)を加えたPBSの適正な容積中に分類する。代替的に、抗原特異的B細胞を、適正な細胞表面マーカーを識別する試剤を用いた磁気補助された細胞選別(MACS)を用いて分離することができる。さらに、抗原特異的B細胞を、CellSys101マイクロドロップメーカー(One Cell Systems社、ケンブリッジ、マサチューセッツ、米国)を用いたアガロースゲル微滴によって、又は、油中水滴エマルションから得られる微液滴を用いて、分離することができる。代替的に、上述の方法の組合せを用いて、抗原特異的B細胞を分離することができる。
【0103】
PicoTiterPlateを用いた細胞分離(ステップ203)
PicoTiterPlate(PTP)装置(454 Life Sciences社、ブランフォード、コネチカット)を準備し、その表面を、タンパクL(ピアスバイオテクノロジー社、ロックフォード、イリノイ)を含む0.1M酢酸ナトリウムで一晩コーティングする。その表面を3%BSAを含むPBSで1時間ブロックする。3%BSAを含むPBSを除去した後に、その表面を、0.1%Tween−20を含むPBSで4回洗浄する。次いで、PTP装置をSUPERase−Inを加えたPBSで満たす。PTP装置がビーズ蒸着装置(454 Life Sciences社、ブランフォード、コネチカット)中に存在するときは、ウェルに残る気泡を遠心分離によって取り除く。2mLのピペットを用いて、細胞を、PTP装置上に穏やかに置き、10分間放置して個別の細胞がウェルに入るようにする。ウェルに入らない細胞をカバーガラスによってPTP装置から出す。細胞を、グアニジンチオシアナートなどのカオトロピック剤又はNP−40などの洗剤を含む従来の溶解溶液で溶解させる(ステップ204)。対象としているタンパクを捕捉したいのであれば、洗剤NP−40を用いることができる。タンパクA又はタンパクLなどの捕捉剤でコーティングされた固体表面を用いてマイクロウェルを覆い、溶解させた細胞から放出される高分子の拡散を制限し、また、タンパクアレイを形成する固体表面上の抗体などの前記対象としているタンパクを同時に捕捉する(ステップ211)。
【0104】
パターン化フォトレジスト構造及び膜の製作。
フォトレジストの円筒形柱のアレイを、標準的なフォトリソグラフィー技術及び剛体クロムマスクを用いて、シリコンウェーハス上に作る。フォトマスクと同じ透明度を用いて、50μmの空間を作る間隔機構を有する、50μm×50μm×50μmの大きさの正方形機構のアレイを作る。
【0105】
エラストマーPDMS膜の製作。
PDMSプレポリマー(架橋触媒と10:1比率で混合)を上述のパターン化フォトレジスト特性の薄浮き彫りの上に3,000rpmで60秒間スピンコーティングして、厚さ約45μmのフィルムを作成する。そのため、得られるPDMS膜は、上記フォトレジスト特性のサイズによって定まる角孔を有する。このPDMS膜を60℃で2時間硬化させる。PDMSプレポリマーのより厚い層を、液滴法によって膜のふちに加える。この膜を60℃で一晩保持する。この膜をピンセットを用いて支持体から取り除き、支持体のふちに沿って所望のサイズに切断する。
【0106】
孔を有する膜をBSAでコーティングすることによって、タンパクによる非特異的結合を最小化する
PDMS膜を、数滴のエタノールを有するスライドガラスの表面に置く。数滴のBSA(PBS中に1%w/vで含まれる)の緩衝液を、膜に滴下して孔を覆う。液体は疎水性の孔を容易には満たさないので、真空(約500ミリトル)を30秒間適用して2回解放して孔に溜まった空気を抜き取り、BSAを表面に15分間吸着させる。次いで、スライドガラス上のPDMS膜を、PBSで3回洗浄する。膜をPBSの存在下でスライドガラスから剥がし、スライド上にその膜を密着させるのを補助するためのPBSで覆われたタンパクアレイスライド(Full Moon BioSystems社、サニーベール、カリフォルニア)の上に移す。
【0107】
孔を有するPDMS膜をサポートするためのタンパクLで覆われたスライドガラス
スーパーエポキシ2スライドガラス(TeleChemインターナショナル社、サニーベール、カリフォルニア)を、タンパクL(ピアスバイオテクノロジー社、ロックフォード、イリノイ)でコーティングする。調製した孔を有するPDMS膜をスライドガラスの上に置いて、圧迫してその表面と均一に接触させる。全機構をBSAの緩衝液中で再度ブロックする。再び、短い時間で真空を適用して孔中に閉じ込められた空気を除去する。ブロッキングを1時間行った後に、PBSで3回洗浄する。孔を有するPDMS細胞膜を支持するタンパクLで覆われたスライドガラスは、直ちにB細胞から抗体を捕捉することができ、PDMS細胞膜上の孔は、代表的なマイクロウェルである。タンパクLに加えて、タンパクG、タンパクA/G、ヤギ抗マウスIgG抗体などを用いてもよい。
【0108】
NimbleGen社のHD−2マイクロアレイチップ上のプローブの一般的特徴
NimbleGen社のHD−2マイクロアレーチップは、62mm×14mmのアレイサイズを有する1つのスライド上に210万個のプローブを有している。従って、210万個のユニークなタグを有する能力がある。捕捉、タグ付け及びその後のDNA操作を容易にするために、重鎖及び軽鎖の両方に対するプローブの一般的特徴を利用する。ここで、重鎖捕捉プローブについての前記一般的特徴の一例は:XhoI切断、454 Life SciencesによるプライマーB、ウェル同定タグの始まりを識別するための2塩基スペーサー(常に不変)、14量体ウェル識別子、マウスγ重鎖CH1 IgG1、IgG2a、及びIgG2bアイソタイプ重鎖保存配列捕捉プローブである。更に、軽鎖捕捉プローブについての前記一般的特徴の一例は、XhoI切断部位、454 Life Sciences407によるプライマーA、ウェル同定タグの始まりを識別するための2塩基スペーサー(常に不変)、14量体ウェル識別子、及び、マウスκ軽鎖定常領域捕捉プローブである。マイクロウェル同定タグの長さは14量体であり、2億6800万以上の可能な配列の組合せがあり、210万個のプローブに対して必要とされるものをはるかに超えることに留意されたい。このクッションは、同じ塩基の三連続、及び、完全自己相補性、又は、マイクロウェル識別タグと、重鎖プローブ配列、軽鎖プローブ配列、454プライマーA又は454プライマーとの間の相補性などの望ましくない配列を除去することができる。さらに、40%〜60%の間のG+C含有率を維持することが望ましい。必要であれば、エラー訂正の目的で、ハミングコードにおいて用いられるようなパリティコードをウェル識別タグに埋め込むことができる。免疫グロブリン重鎖(配列番号:1)及び軽鎖(配列番号:2)ポリペプチドに対するプローブの例を、図4に示す。
【0109】
溶解された細胞から放出されたmRNAを捕捉する工程、及び、タグされた二本鎖cDNAへの変換を、図3に示す。mRNA301のターゲット分子は、オリゴヌクレオチドプローブ203にハイブリダイズする。そのプローブは、非DNAリンカー305、454 Life Sciences304のPCR/シークエンシングプライマーB、ウェル識別タグ303、重鎖又は軽鎖の遺伝子のいずれかに由来するターゲットmRNA中の領域に相補的な捕捉オリゴヌクレオチド302を具えた典型的なマイクロアレイスライドのように、固体表面306に付着している。逆転写307は、捕捉オリゴヌクレオチド203をプライマーとして伸張させること、及び、ターゲットmRNAテンプレートの適切な領域をコピーするこよによって、5’−メチルdCTP309を組み込むことによって、逆転写酵素(Stratagene社、ラホイヤ、カリフォルニア)を用いて第1鎖cDNA308を合成する。第2鎖cDNA反応310は、5’末端においてオリジナルmRNAテンプレートの小さい断片を残すように、RNaseHと大腸菌DNAポリメラーゼ1との複合作用によって、ターゲットmRNAを置換する。T4DNAポリメラーゼを用いた反応313は、二本鎖cDNA314の5’末端を平滑化する。結合反応315において、配向特異的連結反応を保証するための3’突出末端と共に454 Life SciencesのPCR/シークエンシングプライマーAを含むアダプター分子316が付着する。プロセス318において過剰なアダプター分子を除去し、プロセス319において付着した二本鎖cDNAをエンドヌクレアーゼXhoI(New England Biolabs社、イプスウィッチ、マサチューセッツ)によって固体表面から切断し、454シークエンシング作業手順に組み込むことができる454 Life SciencesのPCR/シークエンシングプライマーA及びBに隣接するウェル識別タグと共に、二本鎖cDNA分子320を放出する。
【0110】
mRNA及び抗体捕捉(ステップ205)。
PTP装置の一側面からピペットで移された同じ容積の1%NP−40は、最終NP−40濃度を0.5%にする。PTP装置を10秒間定温放置する。次いで、PTP装置の頂部をNimbleGen社のHD−2マイクロアレイチップで覆い、そのチップを適切な器具で安全に締め付ける。37℃において30分間定温放置する。次いで、全機構を、トレイ内に保持されたRNアーゼを含まないPBSに浸して、PTP装置からマイクロアレイを分離する。PTP装置をPBSで強く3回洗浄する。1個のB細胞から捕捉された抗体を現に有するPTP装置は、4℃において保存可能である。マイクロアレイを、トレイ内に保持されたPBS中に60℃において10分間浸して非特異的にハイブリダイズしたRNA種を除去し、次いで、PBSによって強く3回洗浄する。マイクロアレイは、下流操作を直ちに実行できる。
【0111】
cDNA合成及びアダプター取り付け(図2のステップ206)
マイクロアレイを1枚のキムワイプで簡単に拭いて乾燥させ、スーパースクリプトIII RTase(Invitrogen社、カールズバッド、カリフォルニア)と、適切なバッファー成分と、5’−メチルdCTP以外のdNTPとを含む30μLの逆転写酵素(RTase)反応溶液を直ちに加える。カバーガラスを追加し、マイクロアレイを50℃の湿潤環境下に1時間置く。カバーガラスをDNAポリメラーゼバッファ中に浸して3回洗浄することによって除去する。再びチップをキムワイプ上で拭いて乾燥させる。大腸菌DNAポリメラーゼ及びRNaseHを含む適切な30μLのバッファを加え、サンプルを16℃で2時間定温放置した。チップを洗浄し、合成された二本鎖(ds)cDNAをT4 DNAポリメラーゼによって37℃で30分間平滑化する。ビオチン化された末端を有する予めアニールしたアダプターを加え、T4DNAリガーゼによって適切なバッファ中において室温で1時間にわたってチップ上の平滑末端cDNAに結合させる。次いで、10mM トリスHCl(pH7.5)、0.1mM EDTA中で強く洗浄することによって過剰なアダプターを除去する。スライド及び付着したcDNAを4℃で保存することができる。
【0112】
マイクロアレイスライド上のDNAパッドとタンパクアレイ上のタンパクスポットとの位置合わせのための標識細胞
ハイブリドーマ株TIB−228(American Type Culture Collection、マナッサス、ヴァージニア)は、アイソタイプIgG2bと共にヒトCD14に対する抗体を生産する。そのDNA塩基配列は、重鎖及び軽鎖について決定されている。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域についてのGenBank登録番号は、それぞれAY669065及びAY669066である。組み換えヒトCD14は、商業的に入手可能である(Abnova社、台北、台湾)。本発明を実施するときに、マイクロウェル内に分離する前に、10個〜50個の範囲内の適切な数の細胞を、濃縮された抗原特異的Bと混合してもよい。CD14は、PE−Cy5でラベルされることによって、FITCラベルされたHELで染色される抗HEL抗体と区別され得る。
【0113】
454Life Sciencesの技術によるDNA塩基配列決定
NimbleGenチップに付着した二本鎖(ds)cDNAを、XhoIエンドヌクレアーゼ(New England Biolabs社、イプスウィッチ、マサチューセッツ)を用いて37℃で15分間定温放置することによって切断した(ステップ207)。選択的にストレプトアビジンビーズ(MyOne bead、Invitrogen社、カールズバッド、カリフォルニア)によってその放出された二本鎖cDNAを捕捉して保存することができる。そのような戦略によって貯蔵中のDNA損失が最小化される。その後、相補鎖をビーズから融解分離し、454プライマーAによるリアルタイムPCRによって定量し、リアルタイムPCRのための軽鎖領域類似試薬内に位置する適切なプローブと共に軽鎖プライマーを、重鎖二本鎖cDNA用に設計することができる。
【0114】
二本鎖cDNAを定量する場合は、ステップ208における後のエマルションPCRのために、適切な量を回収し、適切な量のビーズと混合する。ビーズを処理し、供給業者の推奨に従って配列を決定した(ステップ209)。重鎖及び軽鎖の両方は、スペーサー、標識、定常領域及び全可変領域を含めて、約415塩基の配列を必要とする。これは、454配列決定技術の範囲内である。一方向における配列決定読み出しは、抗体の重鎖及び軽鎖を復元するための一義的な配列情報を得るのに充分である。これは、原型可変配列のゲノム配列がわかっているからである。更に、他の報告された配列に基づいて、FR1は、免疫反応中に抗体配列中において大部分が変異していないと考えられる。最後に、抗体ごとの配列読み出しの冗長性は高い。1回の稼働当たり100万読み出しの供給業者の説明に従って、各B細胞に対して5倍の範囲で少数の標識細胞を引いた最大200,000個のB細胞を分析することができる。代替的に、結合動態測定によって識別された特定のウェルに由来するcDNAは、PCRプライマーの3末端にタグ標識特異的配列を組み込むことによって直接的に増幅できる。
【0115】
配列決定を行った後に、以下のステップを行って配列を分析する(ステップ210及びステップ213):
a)454の実行から配列リストを得る;
b)配列をコンピュータによって評価し、各配列の標識、スペーサー及び定常領域を識別することによって、各配列が重鎖(H)又は軽鎖(L)の配列であるかを判断し、さらに、重鎖定常領域の5’末端方向の塩基を配列決定して、その微細な変化から捕捉された抗体のアイソタイプを決定するステップ;
c)定常領域配列及びスペーサーを隠すステップ;
d)標識細胞の重鎖及び軽鎖の配列を識別するステップ;
e)標識細胞の重鎖及び軽鎖の配列に対応するタグを識別して調べて、マイクロアレイ上で隣接している(すなわち、マイクロウェル幅よりも小さい)かどうかを判断するし、肯定的であれば、これらのタグがマイクロウェルを識別する。標識細胞を含む複数のマイクロウェルの位置は、それぞれがB細胞を含み得るその他のマイクロウェルの物理的レイアウトを確立するステップ;
f)そのレイアウトに基づいて、予測される各マイクロウェルのタググループを作成するステップ;
g)同一の重鎖又は軽鎖を有する配列を識別するステップ;
h)同一の重鎖又は軽鎖の配列に対応するタグをコンピュータで評価し、タグが同一であれば、その重鎖又は軽鎖の由来が識別されるステップ;
i)識別された重鎖及び識別された軽鎖に由来するタグを用いて、Hタグと及びLタグのペアを調査して、予期したタググループに適合するかどうかをみて、肯定的であれば、組合せが識別されるステップ;
j)複数の重鎖配列又は軽鎖配列を確認された組合せに整列して共通配列を得て、その一致を、適切な免疫グロブリンv遺伝子の原型ゲノム配列と照合するステップ;
k)ペアになった重鎖及び軽鎖配列のCDR及びFRのすべてが識別をして、さらに、原型と比較して変異した残基を識別するステップ;
l)確認された組合せをクラスター化し、一致した同一の組合せの頻度は、クローン選択現象の結果を表すかどうかを決定するステップ;及び
m)DNA塩基配列をアミノ酸配列に翻訳するステップ。
【0116】
実施例2:エポキシのウェルの製作
約50ミクロンの化学的不活性構造の構築は当業者に周知である。これらは、上述した本発明の実施形態1及び実施形態3の両方で用いられている。簡潔に、34mmのカバーガラス(Fisher Scientific社、ピッツバーグ、ペンシルベニア)をアセトン、イソプロパノール、メタノール、脱イオン水(18Mohm)で洗浄し、窒素気流下で乾燥させた。それを、80mTorrのベース圧力及び120mTorrの酸素圧力とした120ワットの酸素プラズマに10分間暴露させてさらに洗浄する(Technics 500II Asher)。
【0117】
この清潔なカバーガラスを、慎重にスピンコーター(Laurell Technologies社、ノースウェールズ、ペンシルベニア)の真空チャック上の中心に置き、SU−8 50(Microchem社、ニュートン、マサチューセッツ)のネガティブフォトレジストを中央に静かに配合する。カバーガラスを500rpmで10秒間回転させ、次の30秒間に2,000rpmまで上昇させる。そのカバーガラスを95℃で20分間穏やかに焼成し、室温で10分間冷ます。
【0118】
エマルジョンマスクは、アドビフォトショップを用いて設計し、Linotronic−Herculesの3300dpiプリンタ(7.4ミクロンのスポットサイズ)を用いて印刷する。このマスクを、SU−8フィルムに接触するように置き、重さで沈むように石英スライドで覆い、Kasper 2001 Contact Mask Alignerに365nm及び約200mJ/cmの強度で1分間暴露させる。この暴露させたフォトレジストを、水平なホットプレート上で95℃で2時間焼成し、PMアセテート中に30分間浸し、次いで、200℃で1時間硬化させた。
【0119】
このコーティングされたカバーガラスを、滅菌した蒸留水中に一晩浸し、UV殺菌灯下において70%エタノールが含まれるDI中で1時間殺菌した。カバーガラスを滅菌水で3回すすぎ、濡れたまま4時間保存すると、すぐに使用することができる。4時間の蓄積時間によって、確実にガス気泡がウェル中に残らないようにする。
【0120】
マイクロウェルが10ミクロン〜15ミクロンの1つの形質細胞を余裕で含むように50ミクロンのサイズを選択する。レイノルズ数がメートル/秒で56倍の流体速度であるので、ウェル内に乱流はない。従って、ウェルを液体で満たしても、ガス気泡が入らない。
【0121】
実施例3:グアニジンチオシアナート(GT)を用いたB細胞からのmRNAの放出
この実施例は、実施形態3及び実施形態4当てはまる。グアニジンチオシアナート(GT)のマイクロウェル内への拡散及び元への後退を計算する分子シミュレーションから結果を算出した。シミュレートしたGT分子は、B細胞の細胞膜の方に拡散して、究極的にはそのB細胞の細胞膜を溶解させた。それぞれ異なる時点で典型的なマイクロウェルの20枚の画像を算出した。最初の10枚の画像間の差は0.1秒であり;最後の11枚の画像間の差は1.0秒であった。
【0122】
時間t=0秒において、2000個のGT分子が、各マイクロウェル上の等しい容積中に速く直接的に導入された。これは、GT(26pM)の非常に低い濃度を表しており、細胞を溶解させるのに必要とされるGT濃度(1M)よりもはるかに低い。2000個のみの分子を視覚化して用いて拡散を測定したので、レポーターでラベルされた1M GTの少しだけ及びこれらのレポーター分子だけがこの計算で用いられたと推定される。時間経過につれて、400個のGT分子がt=1.0秒までマイクロウェル中に拡散した。次に、マイクロウェル上のGT分子の数が急激に少なくなり、ゼロのままになった。マイクロウェル内の前記分子がマイクロウェルから拡散し、あらに10秒後にその濃度が13分子に低下した。
【0123】
このシミュレーションにおいては、形質細胞の細胞膜が0.5秒〜0.8秒の間に実質的に溶解し、ゴルジ体を囲む細胞膜も同様に溶解した。前記mRNAは、GTよりも実質的に大きかったので非常にゆっくり拡散した。
【0124】
このシミュレーションで用いるGT分子の数は、あらゆる都合のよい濃度に増減することができる。物理的マイクロウェル上にロードした濃度に標準化すると、21%が1.0秒でマイクロウェル中に拡散し、マイクロウェル上のその濃縮物を洗い流した10秒後にウェル内の濃度が0.65%まで低下する。時同等のもの11秒すべてにおいて、mRNAは、まだウェルの内に完全に牽制される。この低濃度のGTは、DNA対RNA又はDNA対DNAのハイブリダイゼーションを妨げない。すべてのmRNAがマイクロウェル内に残るように11秒後にマイクロウェルを密閉する。
【0125】
ストークスアインシュタイン関係式から拡散率を計算した。

【0126】
ここで、Dは拡散率であり、kBはボルツマン定数(1.38×10−23J/K)であり、Tは室温であり、ηはバッファの粘性(8.94×10−4 Pa/秒)であり、rはそれぞれGT(5.0オングストローム)又はmRNA(60オングストローム)の回転半径である。球体の482モザイクから選択したランダムな方向に長さ

のベクターを加えて、各Δt=3ミリ秒ごとに経路を再計算した。
【0127】
実施例4:抗体パラトープのマッピング(ステップ214)
シスタンパク複合体及び/又はトランスタンパク複合体が抗体であれば、本発明によって、以前に入手可能であったよりも非常に多くの情報が提供される。配列決定したタグを元のマイクロウェルに関連付けることによって、B細胞によって生産されたmRNAの集団及びそれぞれの重差配列及び軽鎖配列を識別する。前記配列は、各B細胞内の体細胞突然変異を暗示し得る。
【0128】
21個の軽鎖及び重鎖の抗体の公表された配列からB細胞の集団をシミュレートした。Web抗体モデリングの推奨に従ってこの配列を整列させた。各配列は、ミルスタインによって測定される解離定数で保存された。また、配列と特異的なmRNAを含む細胞の数を表すコピー数を算出した。
【0129】
軽鎖及び重鎖の長さ方向に沿ってアミノ酸の変異を独立に調べた。各アミノ酸位置において、最も頻度の高いアミノ酸とは異なるアミノ酸の可能性を算出した。位置iにおいてnのうちの最も頻度が高いアミノ酸fをカウントすると、確率は以下のように算出される。

最も変異しやすい軽鎖及び重鎖アミノ酸は、パラトープの最も可能性が高い位置である。配列の集団を整列させることができるので、パラトープを推測できる。
【0130】
本発明は、パラトープに結合する抗原のKを測定し、Kとアミノ酸突然変異の確率との関係をプロットすることもできる。本発明においては、K−変異グラフにおけるクラスターが、有意な免疫学的活性の証拠として解釈される。免疫系が安定した重鎖又は軽鎖抗体構造を見つけたときに、小さい一塩基突然変異は、1つのアミノ酸を変異させることによって特異性を著しく改善し得ることを示す。反対に、低いKを有する1つのクラスターは、成功した体細胞突然変異の発見を示す。成功した体細胞突然変異の証拠は、パラトープに強く関連付けられる。
【0131】
実施例5:抗原構造予測(ステップ215)
計算化学は大いに進歩してきたが、アミノ酸配列及び溶媒に関する情報のみを用いてタンパク三次構造をコンピュータで推測する現在の方法は、なお困難であり、時間がかかり、誤りが生じやすい。しかしながら、先の情報又は制約を推定上の折りたたみに組み込めば、計算時間及び精度を著しく改善できる。Web抗体モデリング(http://antibody.bath.ac.uk/)は、高度に成功した抗体モデルを実証している。本発明は、我々が発見する抗体の計算された構造、及び、上記実施例4で識別されるパラトープを用いて、推定上のタンパク折りたたみに対して現実的な確率を与える。
【0132】
オリジナルのデットエンドエリミネーション(DEE)アルゴリズムは、数千もの推定上のタンパクの折畳を識別する。最近の改善はこのアルゴリズムをスピードアップさせており、この数を約1,000個まで著しく減らす構造的及び統計的フィルターが提供された。実行時間は約5.5時間である。
【0133】
本発明は、抗体と推定されるタンパクの折畳との結合自由エネルギを計算によって推測することができる。このエネルギを算出するために、抗体を仮想タンパクにドッキングさせる。形状、電子密度、又は、統計的頻度を用いてこれを行う多数の方法が存在する。大型コンピュータ集合体は計算時間を著しく改善する。大型コンピューターによる一般的な実行時間は、ドッキング1回当たり約8秒で行われる。
【0134】
本発明は、計算によって推定された結合自由エネルギを測定したKと比較して、最もぴったり一致するタンパク及びエピトープを決定する。本発明によって:a)重鎖及び軽鎖のDNA塩基配列を得ることによって特異性抗原に対してデジタル的に永久化された抗体の集団;b)各抗体と抗原との間の相互作用の力学的測定基準;c)各抗体のパラトープの計算によるマッピング;d)抗原のエピトープの計算によるマッピング;及び、e)上記a)、b)、c)及びd)から得られる情報を組み合わせることによって支援された抗原構造のモデル化、という結果が得られる。
【0135】
実施例6:配列頻度及びFACS蛍光からのKの推測
この実施例は、実施形態3及び実施形態4に当てはまる。各B細胞の表面は、形質細胞有するよりも少ない程度で、何千もの同じ膜結合B細胞レセプタ(BCR)を含んでいる。細胞を、小さい割合のBCRに結合する蛍光ラベルされた抗原の既知濃度に供することによって特異的にラベルすることができる。前記割合fは以下の式によって近似的に表される。


ここで、Kは解離定数であり、[a]は抗原の濃度である。
【0136】
この割合fは、蛍光シグナルによって推定可能である。しかしながら、細胞の大きさが異なるので、大きい誤差が含まれる。fの推定は、(BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア)から入手可能なものなどの適切な細胞分類器具で得られる散乱F1シグナルと相関性が高いサイズである、細胞の大きさによって前記蛍光測定を標準化することによって、大いに改善される。上記式を逆にすると、細胞をラベルするために用いた抗原[a]の濃度は既知であるので、標準化された蛍光シグナルfからKを推測することができる。

【0137】
本発明は、細胞をマイクロウェル中に散布し、ユニークにタグされたオリゴヌクレオチド上のmRNAに相補的なDNAを捕捉する。細胞は散布する前に貯蔵されるので、タグされたオリゴヌクレオチドに、FACS蛍光によって推測したKを関連付けることは通常困難である。この関連づけを解決する本発明のある方法は、Kと及び特定の抗体を発現するB細胞の存在量(又は頻度)との関係を用いる。同一の抗体分子nを発現するB細胞の数n、Kの関数である。

ここで、cは任意定数である。
【0138】
この関係は、前記散布したマイクロウェルから読み出された配列の数にだけでなく、FACSにおいて測定される抗原陽性細胞にも当てはまる。従って、定数cは:
a)各配列をサンプリングした回数を決定するステップ;
b)任意値のcを用いて各配列に関連付けられたコピー数を算出するステップ;
c)前記コピー数の順で配列を分類するステップ;
d)前方散乱FACS F1シグナルによって側方散乱FACSシグナルF2を標準化して、結合BCR表面密度を算出及び推測するステップ;
e)前記結合BCR密度推定によってFACSシグナルを分類するステップ;
f)パラメータcを調整して配列の総数が確実にFACSシグナルの総数と等しくなるようにするステップ;
g)前記配列を前記結合BCR密度推測値と共に整列させるステップ;
h)前記各結合BCR密度推測値に対するKを算出するステップ;及び
i)各配列に、前記配列と共に整列された前記結合BCR密度推定値の平均Kを関連付けるステップによって決定される。
【0139】
形質細胞のFACS種類の前方散在F1シグナルから得られるデータをシミュレートした。蛍光振幅を示して、特定の蛍光振幅で細胞数をカウントした。
【0140】
シミュレートしたF1及びF2シグナルから始めて、上記ステップa)からi)とラベルした手順を続けた。本方法によって推測したKと文献で報告されたKとの比較は非常に良好であった。測定したKと予測したKとの合理的に近い一致は、このアプローチの価値を実証している。
【0141】
実施例7 散布する細胞数の最適化
本発明は、マイクロウェルが密集する表面に特定数の細胞を散布する。例えば3分といった短時間後に、前記細胞がマイクロウェル内に定着する。できるだけ多くのマイクロウェルを有するようにすること、従って、できるだけ多くの細胞を有するようにすることと、マイクロウェルがa)タグされたオリゴヌクレオチドによって充分なmRNAを捕捉し、かつ、b)細胞の内部に由来する材料が実質的にmRNADNAハイブリダイゼーションを妨げないために充分な大きさを有していることに競合が存在する。B細胞などの10ミクロン〜15ミクロンの直径を有する細胞については、50ミクロンのウェルサイズが合理的な妥協点であると予想される。その他の細胞又は異なる化学的性質について、ウェルサイズが変わってもよいことは明らかである。
【0142】
マイクロウェルのサイズを確定したら、マイクロウェルの数を決定しなければならない。都合のよい全アレイのサイズは、余白を機械的支持に用いることができ、24×24mmのみが用いられる34×34mm顕微鏡カバーガラスのサイズである。これは50ミクロンの中央部に23万個のマイクロウェルの空間を与える。
【0143】
マイクロウェルに細胞を散布する場合、各マイクロウェルに1個の細胞が定着することが好ましい。しかしながら、マイクロウェルに散布する細胞が多すぎると、2個以上の細胞が同じウェル内に定着する確率が高くなる。マイクロウェルに散布する細胞が少なすぎると、1個も細胞を含まない多数のマイクロウェルが残る。この問題の統計的な最適化は当業者に周知である。簡潔に、1個の細胞が上記マイクロウェルの容積に入ることを検討する。1個のマイクロウェルが1個の細胞を含む確率pは、p=1/230,000である。その他の細胞がどこにあったとしてもその2個の細胞のうちの1つがそのウェルに存在することが希まれるので、2個のマイクロウェルがそれぞれ1個の細胞を含む確率probは、二項定理に従ってprob=2p(1−p)である。n個の細胞については、prob=np(1−p)n−1である。一細胞マイクロウェルの数(一重項)はprobの230000倍と等しい。同じ形式を用いると、占有されていないマイクロウェルの数は230000(1−p)と等しい。
【0144】
多重項mの可能性を算出して分布する細胞の数を最適化したm=1−(1−p)−np(1−p)n−1。これは、すなわち、2個以上の細胞が1個のマイクロウェルに入る確率を表す細胞数の関数である。多重項確率と細胞数との間のここで用いる慣習的バランスは5%であり、これはn=82,000細胞のときに生じる。
【0145】
1個のマイクロウェルを占める1個の細胞の数と、マイクロウェルに散布する細胞の数との関係を算出した。例えば、散布する細胞数が82,000であれば、一細胞ウェルの数は57,400である。
【0146】
実施例8:配列の数の最適化
各マイクロウェルは、抗体mRNAを捕捉するための2つのタグされたオリゴヌクレオチドを含む。1つは重鎖に対してのものであり、もう1つは軽鎖のためのものである。これらの2つの配列デジタル的に関連付けるために、1個の細胞を含む各ウェルから少なくとも1つの分子を配列決定しなければならない。cDNA配列が放出されて貯蔵されるので、各細胞の重鎖及び軽鎖に由来する少なくとも1つの配列が配列決定されることを確かにするために、配列をオーバーサンプリングしなければならない。
【0147】
配列の数は細胞数の2倍である。特定の重鎖配列を選択する確率pは、軽鎖配列を選択する確率qと等しい:p=q=1/164,000。特定の配列を選択しない確率はr=1−p−qである。両方の鎖が少なくとも1回配列決定されるウェルの数は、多項分布:prob=164,000(1−r−nprn−1−npqn−1)を用いて算出される。両方の鎖が配列決定されるウェルの数は、配列決定されるサンプルの総数の関数として算出される。優れたカバー率を保証する慣習的な過剰な配列決定率は5倍である。5×82,000を用いると、配列のこの数は、160,000個のマイクロウェルに由来する2つの配列を97.6%のダブルサンプリングで提供する。
【0148】
実施例9:蛍光減少を用いたkoff及びkonの測定(ステップ212)
ハイブリドーマ株(NQ2−12.4)は、2.8×10−7のKモル−1測定値を有する。抗体kon測定値は、約101−モル−1周辺に固まる傾向があり、2.8×10−2−1のkoffを与える。10−7モル−1よりも大きいKは、各抗原に非常に弱く結合し、抗原から実質的に速く分離し、従って望ましい結果を得る可能性が低いので、研究、診断又は治療に関してほとんど関心の対象ではない。通常は10−8未満のKといった堅く結合する抗体は、はるかに有用である。本発明は、堅い結合のKが通常2.8×10−2−1未満のkoff値を有し、従って、蛍光の使用を容易にして、24×24mmの抗体アレイにおいてK及びkoffを測定することができるという事実を活用する。konは、kon=koff/Kから算出計算される。この実施例において、本発明は、2.8×10−2−1の非常に弱い場合にも機能し、従って、その他の商業的に関心の対象としている抗体についても機能することを示す。
【0149】
この実施形態においては、顕微鏡カバーガラスはタンパクAで覆われている。細胞がマイクロウェル上に散布されて溶解し、前記カバーガラスがマイクロウェル上に配置される。この実施形態においては、オリゴヌクレオチドがマイクロウェルの内部表面に張り付いている。マイクロウェル中で溶解した細胞が多数の抗体を含んでいれば、当業者に周知のように、これらの抗体は、ウェル全体に、タンパクAの周辺に拡散して堅く結合する。konの予想される範囲及び抗体濃度に見合う時間のインキューベーションの後に、カバーガラスを除去して洗浄し、蛍光ラベルされた抗原の溶液に供した。
【0150】
平衡式:Ab.Ant⇔Ab+Antを用いて、phOXに対するNQ2−12.4の結合の詳細な分子シミュレーションを行った。解放された抗体Abが、蛍光ラベルされた初期濃度の2つの抗原:[Ant]=100nM及び[Ant]=200nMに暴露された後の初めの3分間に焦点を当てた。解放された抗体Ab、結合抗体Ab.Ant、及び、遊離抗原Antの変遷は、以下の広く知られた関係によってまとめられる。

【0151】
蛍光ラベルされた抗原は、容易に測定可能であり、ラベルされていていない抗原の結合に似ている。結合抗原が全くないところから始めて、抗体を抗原に3分間浸した後、抗体部位の総数で結合抗原を有する抗体部位を割った比fは、漸近的に以下の平衡に近づく。

【0152】
抗体の総数がわかっていれば、この占有率fを直接的に測定することができる。適切に制御された光束によって蛍光色素分子を慎重に活性化させ、検出器内に散乱た光子数をカウントする。蛍光断面及び公知の光退色の可能性に基づいて、蛍光色素分子の数を非常に精密に推測することができた。このアプローチに伴う難点は、抗体の合計の数がわからないということであり、従って、合計の蛍光色素分子に対する測定された蛍光色素分子の比率を形成して率fを算出することができない。
【0153】
本発明は、2つ以上の蛍光振幅を測定することによってこの問題を解決する。蛍光マイクロアレイリーダーからのシグナルは、蛍光色素分子の濃度に依存する。通常、この関係はほぼ直線的である。抗体の固定された堆積からの同じ合計シグナルを測定して、公知の光退色効果を適切に補正したら、次いで、占有率fが測定された蛍光に対して直線的に相関する。ある占有率fに対するmeas=α.fは、ある特異的抗原濃度[Ant]と相関する。抗体の同じ堆積について、これは、同じαによるmeas、f及び[Ant]に等しく当てはまる。上述したfの関係を用いて、meas、[Ant]、meas及び[Ant]の関数としてKを求める:

【0154】
この式は2つの抗原濃度に関連した2つの蛍光測定の関数として記載されているが、非線形のパラメータ推定の分野の当業者によってさらなる抗原濃度に関連したさらなる蛍光測定を容易に用いることができることは理解されるであろう。
【0155】
を決定したら、次いで、

を用いてαを求める。測定したシグナルを占有率に変換することができるので、αを知ることは本発明において非常に有用である。蛍光リーダーのキャリブレーションから測定された蛍光色素分子の数がわかるので、この占有率が結合している抗体及び遊離している抗体の両方である抗体の総数を与える。この数は、細胞の独自性、すなわち、その細胞が形質細胞であるか又はB細胞であるかということに非常に関連している。形質細胞は、多くの場合、それらのB細胞前駆体に由来するさらなる体細胞突然変異を含んでいる。形質細胞の表面のB細胞レセプタが体細胞突然変異の前に作成されるので、その抗体が異なっていてもよい。B細胞を識別すること及び高頻度のB細胞を識別することによって、堅く結合する抗体をより良く推測することができる。
【0156】
上記記載は、抗原及び蛍光シグナルの両方の正確な測定を必要とする。[Ant]の推定値として抗原の初期濃度[Ant]を用いる。[Ant]が合計Abの濃度よりも実質的に大きいときに、これが一般的に適切である。[Ab]の推定値として、4.4nMの濃度に対して125ピコリットルの容積の、50ミクロンの領域に22fmol cm−2の抗体密度を用いる。100nM及び200nMの初期濃度[Ant]は、これよりも実質的に大きい。
【0157】
[Ant]=0の溶液中で蛍光測定を行ってバックグラウンドノイズを最小化しなければならない。koffを測定する一方で、パラメータとして蛍光振幅を測定する。抗体結合抗原を抗原を含まない溶液に供したときに、蛍光が減少する。カバーガラス上の抗原を含まない溶液の流れを維持しながら、自由溶液で覆われたカバーガラスを適切な読み出し器に装備する時間が限られているので、一般に、カバーガラスを用いてtime=0における[Ab.Ant]を測定するのは困難である。本発明においては、抗原に結合した蛍光ラベルされた抗体の蛍光を測定することによって結合抗体濃度を約1分の時間間隔でサンプリングする。近代的マイクロアレイ読み出し器(例えば:ArrayIt InnoScan 700、TeleChemインターナショナル社、サニーベール、カリフォルニア)は、10ミクロンの解像度で1分間に25×24mm領域をスキャンするので、50ミクロンの抗体蓄積には完全に充分である。
【0158】
例えば、NQ2−12.4に結合したphOX抗原は、非常に速く減少し、予想されるサンプリングによる蛍光減少時間が最も短いので、本発明によって予想される最悪の抗体の1つを代表する。より堅い抗体は減衰時間の単位を大きくするだろう。マイクロアレイリーダーは、約1分間に約230,000個の抗体スポットを撮像するので、従って、すべてのスポットを連続的に又は直ちに撮像することは不可能である。本発明は、シグナル減少を3回サンプリングする。デジタル数における一般的な蛍光測定値は以下のとおりである:.39秒中に736、1.39秒中に137、及び、2.39秒中に26。
【0159】
本発明のシミュレーションにおいては、測定データmeasを、指数関数的減衰についての公知の式:meas=Ae−kofftに当てはめる。上記データ及びマセマティカ(Wolfram Research社、シャンペーン、イリノイ)の非線形パラメータ推定特性を用いて、Aが1427であり、koffが0.028秒−1であると算出される。
【0160】
実施例10 NimbleGen社のオリゴヌクレオチドパッド及び454六角形ウェルの配列
この実施例は実施形態2及び実施形態4に当てはまる。NimbleGen社のオリゴヌクレオチドアレイは、ジグザグに配列された13ミクロン×13ミクロンのサイズのオリゴヌクレオチドパッドを含む。ジグザグに配列されているとは、交互になっていること、例えば、前記黒い四角がジグザグに配置されたチェス盤を意味する。PicoTiterPlate(PTP)六角形ウェルとNimbleGen社アレイとを対にするとき、マイクロウェルに対して完全に暴露されるいくつかのオリゴヌクレオチドパッドが存在し、マイクロウェル壁の下に埋められるか又は複数のマイクロウェルに暴露されるその他のものが存在するであろう。NimbleGen社のオリゴヌクレオチドアレイ及びPTP六角形ウェルを用いて本発明を機能させるためには、ほとんどのウェルが少なくとも2個のパッドを含んでほとんどの領域が暴露されることを保証しなければならない。
【0161】
直径、すなわち、対向する壁との距離が44ミクロンであり、50ミクロンの中央部に100×100六角形ウェルが作るシミュレーションを行った。1ミクロンの中央部のポイントのグリッドを各六角形ウェル上に配置し、各六角形の内部に落ちるポイントのみを選択した。選択された各六角形ウェルについて、それ(各パッドのサイズでその位置を割ることによって算出したもの)を含むユニークなパッド中のポイントの数が増加した。各ポイントを処理した後に、各ウェルのパッドをリストにしたデータベースを有していた。それは各パッド中のポイントの数を含んでいた。パッド中のポイントの最大数がわかっているので、各ウェル内の各パッドの比率を算出した。
【0162】
各ウェルは少なくとも6個のパッドを含んでいた。各ウェルについて、最大比率を有する6個のパッドを選択して10,000×6アレイを作成した。これが6つ数の10,000のサンプルとなることを考えると、6つの比率の平均及びその標準偏差は以下のとおりである。第1平均は0であり、標準偏差が1である。第2平均は0.99であり、標準偏差が0.02である。第3平均は0.93であり、標準偏差が0.07である。第4平均は0.81であり、標準偏差が0.11である。第5平均は0.51であり、標準偏差が0.15である。第6平均は0.4であり、標準偏差が0.15である。
【0163】
すべてのウェルが少なくとも1個の完全なパッドを含んでいた。99%が少なくとも2個のジグザグに配列されたパッドを含んでいた。従って、NimbleGen社オリゴヌクレオチドアレイ及びPTP六角形ウェルを用いるこの実施形態は、散布した細胞の99%に由来する重鎖及び軽鎖をDNAタグを用いてデジタル的に一致させることができる。
【0164】
実施例11 低融点アガロースで覆われたスライドガラス
ロボットマイクロアレイスポッタ(例えば:SpotBot2、TeleChem、International、サニーベール、カリフォルニア)を用いる場合、この方法が有用である。1%低融点アガロース溶液(Invitrogen社、カールズバッド、カリフォルニア)を精製水中に溶解させ、70℃でスライドガラスの表面に(1スライド当たり2.0ml)注いだ。アガロースをゲル化させた後に、スライドを大気中で乾燥させる。乾燥したスライドをマイクロアレイスポット装置内に入れて、温水(例えば:70°C)をアガロース上に注ぐ。このアガロースは融解し、さらなる温水によって洗い流される。マイクロアレイスポッターの許容範囲(SpotBot2については約10%)と同程度に複製可能な孔となるように孔パターンを作成する。前記孔を作成して洗浄すると、同じマイクロアレイスポッタを用いて、その他の分子をその孔にスポットすることができる。配列エラーがあれば、アガロースは、マイクロアレイ針に対して低い抵抗性を与える。最終結果は、温水注入処理によってウェルサイズが制御された孔、及び、ガラスに付着した検出分子の均一なコーティングである。ガラス上にコーティングする分子は、例えばオリゴヌクレオチド、タンパク、抗体、若しくは、捕捉分子、又は、2個以上のオリゴヌクレオチド、タンパク、抗体若しくは捕捉分子の混合物であってもよい。
【0165】
ユニークなオリゴヌクレオチドタグの生成、及び、mRNAに対して相補的な領域及びPCRプライマーを含むオリゴヌクレオチド中へのその組み込み。
【0166】
mRNAに対して相補的なオリゴヌクレオチドアレイを作る1つの方法は、合成されたオリゴヌクレオチドを利用する。例えば、それぞれがユニークタグを有する40,000個以上のオリゴヌクレオチドを配置することを考えると、これは困難である。ユニークタグを有する40,000個のオリゴヌクレオチドを生産する効率的な方法は、以下のステップを含む。a)末端リン酸基を有しない200個のユニークなオリゴヌクレオチドを合成するステップ。b)末端リン酸基を有する別の200個のユニークなオリゴヌクレオチドを合成するステップ。c)ステップ(a)で得たオリゴヌクレオチドとステップ(b)で得たオリゴヌクレオチドとを結合させるステップ。ここで、ステップ(a)で得たオリゴヌクレオチドは、リン酸がないせいで互いに結合し得ないことに留意されたい。同様に、ステップ(b)で得たオリゴヌクレオチドは、余分なリン酸のせいで互いに結合し得ない。d)ステップ(c)で得たオリゴヌクレオチドをPCRプライマーに結合させるステップ。e)ステップ(d)で得たオリゴヌクレオチドをmRNAに対して相補的な領域と結合させるステップ。
【0167】
40,000というパッドの値は、例示的なものに過ぎず、マイクロアレイのサイズのさらなる限定として意図されていない。低融点アガロースで覆われたスライドガラスを用いるこの例は、実施形態5の低コストな一例を提供する。
【0168】
実施例12:DNAチップと組立式ウェルとの配列
SU−8フォトレジスト(MicroChem株式会社、ニュートン、マサチューセッツ)を、メーカーの推奨に従って、10cmのシリコンウェーハ上にスピンコートした。50ミクロン立方体マイクロウェルのパターンを、メーカーの推奨に従って、マスクアライナー(SUSS MicroTec AG社、Schleiβheimer Str.90、D 85748 Garching b、ミュンヘン)からの紫外線光に暴露させて、SU−8現像液(MicroChem社)を用いて現像した。製造社の推奨に従って、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(SylGard エラストマー、Ellsworth Adhesives社、ジャーマンタウン、ウィスコンシン)を混合、硬化、及び、除去した。カミソリ刀を用いて205×154のマイクロウェル(31,570個のマイクロウェル)のアレイを切り取り、それを乾燥した清潔なスライドガラス上に慎重に置いてスライドガラスとの疎水結合を形成させることによって、底部トレイ(図5)を形成した。マイクロウェルのサイズ及び位置は、DNAチップ(385K CGHアレイ、Roche/Nimblegen社、マディソン、ウィスコンシン)上のオリゴヌクレオチドのパッドの位置及びサイズと正確に一致した。DNAチップは、マイクロウェルの頂部を形成し(図6)、大部分のウェルがDNAの直下に存在し、かつ、大部分のウェル壁が無処理ガラスに接するように、マイクロウェル上に配置された。この小さいマイクロウェルを用いる場合、PDMSウェル上のDNAスライドの位置決定、配列、及び、その後の密封は、通常はマスクアライナー又は特注装置などの機械的補助を必要とするほど繊細である。
【0169】
入手可能なマスクアライナーの一例は、SUSS MicroTec AG社(Schleiβheimer Str.90、D 85748 Garching b、ミュンヘン)のMJB4 4インチマニュアルマスクアライナーである。スライドガラスをマイラーテープで4”正方形の水晶板に貼り付けて、前記アライナーのマスク真空チャックに挿入する。PDMSを同じプレートに貼り付けて、ウエハチャックに挿入する。光学及びアライナー上で利用可能な位置決め制御を用いて2つの表面を配列する。配列したら、PDMSを除去し、DNAスライド及びウェルが配列されるまで処理を継続する。この時に、PDMSをアライナー中に再挿入し、その2つの表面(DNA及びPDMS)を接触させて、抗体mRNAからcDNAが作られる間、全アセンブリを数分間放置する。
【0170】
この手順は実行可能であるが、1)配列する成分をUV保護領域中に押し込むことによって、人間及び装置が簡単に接近できないようにしなければならないこと、2)ウェル上に置かれる必然的に濡れた細胞懸濁液に由来する過剰な液体のための場所がほとんどないこと。及び、3)必要とされないアライナーに高価な特徴という欠点がある。
【0171】
コストを下げて機能群を少なくし、小量の液体を含むように設計され、かつ、実験者及び装置が容易に近づくことができるカスタムアライナーと共に+、このシステムはより効率的に用いられ得る。カスタムアライナー500の一例を図9に示す。4本の垂直柱502は、アルミベースプレート501及びサポートアルミニウム板503の中へねじ込まれる。アルミニウム板503の上に底部加圧プレート504が位置する。第1プラスチック挿入物505及び第2プラスチック挿入物506は、底部加圧プレート504と頂部加圧プレート507との間にはさまれる。
【0172】
吸引孔508は、底部加圧プレート504とプラスチック挿入物505との間、及び、頂部加圧プレート507とプラスチック挿入物506との間の密着をもたらしている。底部トレイは、ガラススライドガラス510上に置かれたマイクロウェル511を含んでおり、そのトレイは、さらなる吸引孔509によってプラスチック挿入物505の頂部側に堅く固定されている。同様に、スライドガラス510と同じサイズのDNAチップ512は、さらなる吸引孔513によってプラスチック挿入物506の底部側に堅く固定されている。
【0173】
底部真空を解放すれば、底部マイクロウェル511及びスライドガラス510を、プラスチック挿入物509に対してスライドさせることによって、二軸方向に慎重に移動させることができる。ウェル511を最適に配列したら、吸引孔509に真空を適用してスライド510が移動しないようにする。小さいコンピュータに接続された顕微鏡(図示せず)をアルミニウム板503の下に配置し、装置500の頂部に入る平面回折光を用いてウェル中の細胞を撮像する。
【0174】
配列が完了したら、プラスチック挿入物509上にマークを置いてスライド510の位置を記録する。代替的に、スライドガラス510の隣りに物を置いてスライド510の位置を記録する。次いで、マイクロウェル511及びスライドガラス510を取り、処理して、10ミクロン以内の精度でアライメント装置500に戻すことができる。10ミクロンの精度は、チップ512上の特定の位置がマイクロウェル511の特定の位置と正確に一致するように、DNAチップ512と共にマイクロウェル511を正確に配列するのに適切であることがわかった。
【0175】
実施例13:マイクロウェル設計における数字コードの埋め込み
配列及び処理中に、中程度の倍率の顕微鏡(例えば:100倍)で、マイクロウェル又はマイクロウェル中の細胞を調べることは多くの場合において有用である。顕微鏡の視野がすべてのマイクロウェルを含むことはほとんどない。従って、リアルタイムで1枚の顕微鏡画像を検討しても、又は、撮影した画像を後で検討しても、どのウェルを見ているかを正確に知ることは困難である。どのウェルを見ているかを正確に知るために、端又は角からのウェルを数えなくてもよいことが望ましい。
【0176】
この目的のために、特定形状(図10)などのコード化された形状を、ウェルに組み込んでもよい。この形状は:1)この形状は、エポキシ樹脂コーティングウエハによって容易に複製できる程度に異なっているべきであり、次に、エポキシ樹脂コーティングウエハから取ったPDMS印刷において視認することができること;2)細胞がほぼ同一のミクロ環境に入るように、ウェル容積がウェルごとに実質的に異なっていてはならないこと;及び、3)PDMS構造を弱める態様で壁厚が薄くなっていないこと、という3つの制約条件におけるトレードオフである。八角形の小部分は、これらの制約条件における有用なバランスを提供した。八角形小部分を、対称な部分又は非対称な部分に分離して、図10の形状で用いた。
【0177】
研究用顕微鏡下で16個のウェルを容易に視野内に配置することができたので、この実施例においては、4×4ブロックのウェルを選択した。図10を参照すると、16ウェルブロック600は、ウェルの形状に3つの番号:1)列番号;2)行番号;及び、3)パターン番号が埋め込まれた八角形の部分の使用例である。この実施例においては、それぞれ0から63の番号が与えられた、最高で64の列及び行が存在する。1ブロックにつき各列及び各行ごとに4つのウェルがあるので、この実施例は、パターンのすべての列又は行で最大256個のウェルを取り扱う。二進法表記を用いて列及び行数を符号化する。コンピュータの文献において知られているように、0から63の値を符号化するためには6桁の二進数字が必要である。対称なウェルを用いて、列及び行1s及び0sを表す。例えば図10においては、ウェル605がa1であり、ウェル607がa0である。
【0178】
ブロックの角に非対称なウェルを用いる。ウェル601は、開始位置及び開始方向を与える。さらに、その他の角(602、603及び604)は非対称性、すなわち、頂部又は底部から見た左利き用及び右利き用顕微鏡画像における左右対称像と同一ではない形状を与える。従って、特定の観察方向を前提とすることなく、どのウェルがどのブロックに属するかを決定する方法が必要である。スタートウェルではないブロックの3つの角は、ブロックの中央に向いたユニークな方向性を有する。2つのそのような方向性(例えば:ウェル602及び603)があるので、2つの方向性を用いて、追加情報を符号化するために、二進法の1(ウェル602)及び二進法の0(ウェル603)を表すことができる。この実施例においては、それぞれわずかに異なるサイズを有する様々なウェルパターンが存在することによって、様々な硬化温度によって生じるPDMS収縮における変化に順応することができる。3つの角は、0から7の8つの異なる値をコードしている。
【0179】
図10は、3つの値:行3、列4及びパターン5をコードするブロックを示している。野球のホームプレートの形状を有するように設計された非対称ウェル601を見つけることによって、まず、このブロックを顕微鏡の視野内に位置させる。ウェル601の方向に4個のウェルが続いており、ウェル602は、この場合は左に、ブロックの非対称性を定める。ウェル603及びウェル604はこの非対称性を確かにする。さらに、高ビットから始めて、ウェル604、603及び602は、二進数の101をコードしており、十進法で表現されているのはウェルパターン5である。
【0180】
行コードは、高ビット606で始まり、低ビット605:000011又は行3で終わる。列コードは、高ビット608で始まり、低ビット607:000100又は列4で終わる。
【0181】
これは単なる例示的実施例である。この形状を容易に変更して、様々な設計及び材料、並びに、1ブロック当たりのウェル数、サイズ及び相対的配列を変えたものを提供することができる。
【0182】
上記説明及び添付図面が添付の特許請求の範囲の範囲内ではない任意のさらなる主題を開示する限りにおいて、本発明は公共に捧げられておらず、1つ以上のさらなる出願を行ってさらなる発明について特許を請求する権利が保留されている。
【0183】
先のものは、本発明の原理を説明するだけのものである。本明細書中に明示的に記載又は提示されていなくても、本発明の原理を具体化し、また、その精神及び範囲内に含まれる様々なアレンジを当業者が考案できることは理解されるであろう。更に、本明細書中に列挙されている実施例及び条件付きの専門用語のすべては、読者が、本発明の原理、及び、技術を推進するために発明者によって提供された概念を理解するのを助けることを主として意図されており、そのような明示的に列挙された実施例及び条件に限定することなく解釈されなければならない。さらに、本発明の成分、態様及び実施形態、並びに、その特定の実施例を本明細書中において列挙しているすべての記載は、その構造均等物及び機能的均等物の両方を包含するように意図されている。さらに、そのような均等物が、現在知られている均等物及び今後開発される均等物の両方、すなわち、構造にかかわらない、同じ機能を発揮する開発されたあらゆる要素を含むように意図されている。従って、本発明の範囲は、本明細書中に記載及び提示されている例示的実施形態に限定されるように意図されていない。正確に言えば、本発明の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象としている分離細胞から情報を得る方法において:
複数の個別ウェルに複数の個別細胞を配置するステップであって、前記細胞のそれぞれに少なくとも1つの対象としている生理活性物質を生産させるステップと;
ウェル中の前記少なくとも1つの対象としている生理活性物質を、少なくとも1つの結合剤に付着した固体表面に接触させるステップであって、前記少なくとも1つの結合剤が、対象としている前記少なくとも1つの生理活性物質選択的に結合し、かつ、その固体表面が、各ウェルに関連づけられ得る位置特定可能な領域を含むステップと;
前記対象としている1つ以上の生理活性物質の、ターゲット結合タンパクへの結合についての結合情報の決定するステップと;
前記結合情報を固体表面の位置特定された特定領域に関連付けることによって、特に対象とするウェルを識別するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記細胞が、複数の個別ウェル中のそれぞれにおいて実質的に同一であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記細胞が、初代細胞、細胞株に由来する細胞、及び、遺伝子操作された細胞からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記細胞が、複数の個別ウェルのそれぞれにおいて異なることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記細胞が、形質細胞、同じヒト対象者に由来する異なる種類の細胞、及び、異なるヒト対象者に由来する同じ種類の細胞からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、固体表面に結合した前記少なくとも1つの結合剤が、タンパクA、タンパクG、タンパクL、タンパクA/G、抗IgGFcγサブクラス特異的抗体、及び、前記細胞によって生産される前記少なくとも1つの生理活性物質に対するターゲット結合タンパクからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、ウェル中の細胞に生理活性物質を加えるステップをさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記細胞に様々な生理活性物質を加えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記細胞に同一の生理活性物質を加えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、前記細胞に加える生理活性物質が、小分子化合物、siRNA、タンパク及びオリゴヌクレオチドからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法において:
前記特に対象としているウェルから、細胞によって生産される対象としている少なくとも1つの生理活性物質をコードするヌクレオチド配列を得るステップと;
細胞によって生産される対象としている前記生理活性物質の結合特性に関する情報を、対象としている前記生理活性物質をコードするヌクレオチド配列に関連付けるステップと、をさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記ヌクレオチド配列を得るステップが:
細胞からmRNAを得るステップと;
前記mRNAからcDNAを合成し、ユニークなウェル特異的タグを前記cDNA中に組み込むステップと;及び、
前記cDNAの配列を決定するステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記タグを含むcDNA配列を貯留し、前記貯留したcDNA配列を同時にシークエンシングするステップをさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、10,000個以上の個別細胞が対応する数の個別ウェル内に配置され、固体表面に対応する数の位置特定された領域が存在し;
前記ウェルは、1cm当たりのマイクロウェル密度が100を超える相互連結されたマイクロウェルであり、前記マイクロウェルのそれぞれが、1ピコリットルから500ナノリットルの容積を有していることを特徴とする方法。
【請求項15】
複数の個別ウェル中の細胞集団に由来する複数の個別細胞を配置し、前記細胞に少なくとも1つの対象としている生理活性物質を生産させるステップと;
前記対象としている生理活性物質を分離するステップと;
特に対象としているウェルから、前記対象としている生理活性物質をコードするヌクレオチド配列を得るステップと;
前記対象としている配列を、対象としている薬剤に関連付けるステップとを具え、
前記5,000個以上の細胞が、5,000個以上のウェルを具えるウェルトレイ中のウェルに配置されており、
前記ウェル中の薬剤を対象としている特性について選抜することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、細胞によって生産される前記対象としている生理活性物質が、抗体であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記ヌクレオチド配列を得るステップが、抗体の重鎖及び軽鎖のヌクレオチド配列を得るステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記ヌクレオチド配列を用いて前記対象としている生理活性物質に関するメタデータを生成するステップをさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記メタデータが、前記対象としているヌクレオチド配列に基づいた前記生理活性物質の結合特性を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法において、前記メタデータが、前記細胞集団における前記ヌクレオチド配列の出現頻度に基づいた前記細胞集団における対象としている前記生理活性物質の出現頻度を含むことを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−516064(P2011−516064A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502993(P2011−502993)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/002122
【国際公開番号】WO2009/123762
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510259725)シングル セル テクノロジー,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SINGLE CELL TECHNOLOGY,INC.
【Fターム(参考)】