説明

生理状態改善装置

【課題】 運転者および同乗者の生理状態を改善することができる生理状態改善装置を提供する。
【解決手段】 車両の各乗員から生体情報を検出する生体情報検出手段11と、生体情報検出手段11によって検出された生体情報に基いて、各乗員の生理状態を判断する生理状態判断手段12と、生理状態判断手段12によって判断された生理状態に基いて、車両の室内環境を調節する環境調節手段13とを備え、環境調節手段13が各乗員の生理状態に基いて室内環境を調節することによって、各乗員の生理状態を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の室内環境を調節し、乗員の生理状態を改善する生理状態改善装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生理状態改善装置61は、図6に示すように、車両の運転者の生体情報を検出する生体情報検出手段71と、検出された生体情報に基いて運転者の生理状態を判断する生理状態判断手段72と、判断された生理状態を車両の運転者に伝達する状態伝達手段73とによって構成されている。運転者の眠気、疲労、緊張あるいは焦燥などの生理状態が、生理状態判断手段72によって判断されると、芳香が状態伝達手段73によって車両の室内に供給される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、芳香を供給する代わりに、車両の室内の温度を調節するものや(例えば、特許文献2参照)、最寄りの休憩所を画面に表示するものもある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平1−214368号公報
【特許文献2】特開平3−137448号公報
【特許文献3】特開2004−24704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の生理状態改善装置においては、車両の運転者の生理状態を改善するようになっているものの、運転者以外の乗員である同乗者の生理状態を改善できないという問題があった。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、運転者および同乗者の生理状態を改善できる生理状態改善装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生理状態改善装置は、車両の各乗員から生体情報を検出する生体情報検出手段と、前記生体情報検出手段によって検出された生体情報に基いて、前記各乗員の生理状態を判断する生理状態判断手段と、前記生理状態判断手段によって判断された生理状態に基いて、前記車両の室内環境を調節する環境調節手段とを備えた構成を有している。
【0007】
この構成により、本発明の生理状態改善装置は、車両の各乗員の生理状態に応じて車両の室内環境を調節することにより、運転者および同乗者の生理状態を改善できる。
【0008】
さらに、本発明の生理状態改善装置は、前記各乗員の生理状態と前記室内環境を調節する度合とを対応付けたマトリックスを記憶するマトリックス記憶手段を有し、前記環境調節手段が、前記マトリックスに示された度合で前記室内環境を調節するようにした構成を有している。
【0009】
この構成により、本発明の生理状態改善装置は、環境調節手段が予め定められた度合で室内環境を調節することができる。
【0010】
また、本発明の生理状態改善装置は、前記各乗員の着席位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段によって検出された前記各乗員の着席位置に基いて、前記マトリックスにおける前記室内環境を調節する度合を変更するマトリックス変更手段とを備えるようにした構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の生理状態改善装置は、マトリックス変更手段が、各乗員の着席位置に応じてマトリックスにおける室内環境を調節する度合を変更するので、各乗員の着席位置に応じて室内環境が最適となるよう室内環境を調節することができる。
【0012】
また、本発明の生理状態改善装置は、前記車両が、照明機器を備え、前記環境調節手段が、前記照明機器を制御することによって前記室内環境を調節する構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の生理状態改善装置は、環境調節手段が、照明機器を制御することによって、各乗員の生理状態が改善されるよう室内環境を調節することができる。
【0014】
さらに、本発明の生理状態改善装置は、前記車両が、空調機器を備え、前記環境調節手段が、前記空調機器を制御することによって前記室内環境を調節する構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の生理状態改善装置は、環境調節手段が、空調機器を制御することによって、各乗員の生理状態が改善されるよう室内環境を調節することができる。
【0016】
さらに、本発明の生理状態改善装置は、前記車両が、楽曲再生機器を備え、前記環境調節手段が、前記楽曲再生機器を制御することによって前記室内環境を調節する構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の生理状態改善装置は、環境調節手段が、楽曲再生機器を制御することによって、各乗員の生理状態が改善されるよう室内環境を調節することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、車両の運転者および同乗者の生理状態を改善するという効果を有する生理状態改善装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の生理状態改善装置について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の生理状態改善装置を図1乃至図3を用いて説明する。
【0020】
生理状態改善装置1は、例えば車両に搭載され、図1に示すように、車両の各乗員から生体情報を検出する生体情報検出手段11と、生体情報検出手段11によって検出された生体情報に基いて、各乗員の生理状態を判断する生理状態判断手段12と、生理状態判断手段12によって判断された生理状態に基いて、車両の室内環境を調節する環境調節手段13とを備えている。
【0021】
ここで、生体情報とは、乗員の心拍数、呼吸数、血圧などのことをいい、生体情報検出手段11は、これらの生体情報のうちひとつ以上の生体情報を検出するようになっている。例えば、生体情報検出手段11は、各乗員に付けられたリストバンド、座席に設置されたセンサおよび車両に設けられたカメラなどから、各乗員の体温変化や、胸の動きや、呼気などを検出することによって、生体情報を検出するようになっている。
【0022】
生理状態判断手段12は、生体検出手段11が検出した各乗員の心拍数、呼吸数、血圧などに基いて、各乗員の生理状態を判断する。
【0023】
ここで、生理状態とは、各乗員の眠気、疲労、緊張、焦燥などの状態のことをいう。
【0024】
環境調節手段13は、各乗員の生理状態に応じて、車両の室内環境を調節するようになっている。車両に照明機器17、空調機器18、および楽曲再生機器19などの室内環境装置が備えられている場合、環境調節手段13は、生理状態判断手段12によって判断された各乗員の生理状態に基いて、車両の室内環境を調節するよう、室内環境装置を制御するようになっている。
【0025】
生理状態改善装置1は、さらに、各乗員の生理状態と室内環境を調節する度合とを対応付けたマトリックスを記憶するマトリックス記憶手段14を備えている。
【0026】
マトリックスとは、図2に示すように、車両の各座席に着席した各乗員の生理状態に応じて、車両の室内環境を調節する度合が示されたものである。
【0027】
例えば、図2に示すマトリックスにおける3行目には、車両の運転者と助手席に着席した乗員が疲労しておらず、後部座席に着席した乗員が疲労している場合、車両後部の照明を暗くするよう示されている。
【0028】
したがって、生理状態判断手段12が、車両の運転者と助手席に着席した乗員が疲労しておらず、後部座席に着席した乗員が疲労していると判断した場合、環境調節手段13は、マトリックスに基いて、照明装置を制御して車両後部の照明を暗くするようになっている。
【0029】
また、例えば、マトリックスにおける4行目には、車両の運転者が疲労しておらず、助手席に着席した乗員が疲労している場合、楽曲再生装置を制御して運転席周辺以外で再生される楽曲の音量が下がるよう示されている。
【0030】
したがって、生理状態判断手段12が、車両の運転者が疲労しておらず、助手席に着席した乗員が疲労していると判断した場合、環境調節手段13は、マトリックスに基いて、楽曲再生装置を制御して運転席周辺以外で再生される楽曲の音量を下げるようになっている。
【0031】
以上のように構成された生理状態改善装置について、図3を用いてその動作を説明する。
【0032】
まず、各乗員の生体情報が、生体情報検出手段11によって検出される(ステップS1)。
【0033】
次に、生体情報検出手段11によって検出された生体情報に基いて、各乗員の生理状態が、生理状態判断手段12によって判断される(ステップS2)。
【0034】
次いで、生理状態判断手段12によって判断された生理状態に応じて、室内環境が、環境調節手段13によって調節される(ステップS3)。このとき、環境調節手段13によって室内環境が調節される度合は、生理状態判断手段12によって判断された生理状態に応じてマトリックスから選択される。
【0035】
このような本発明の第1の実施の形態の生理状態改善装置によれば、車両の各乗員から生理情報を検出し、検出した生理情報から各乗員の生理状態を判断することにより、各乗員の生理状態に応じて車両の室内環境を調節するため、運転者および同乗者の生理状態を改善することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態の生理状態改善装置を図4乃至図5を用いて説明する。
【0036】
なお、本発明の第2の実施の形態の生理状態改善装置31を構成する生体情報検出手段41、生理状態判断手段42、環境調節手段43およびマトリックス記憶手段44は、本発明の第1の実施の形態の生理状態改善装置1を構成する生体情報検出手段11、生理状態判断手段12、環境調節手段13およびマトリックス記憶手段14とそれぞれ同一の構成であり、その説明を省略する。
【0037】
生理状態改善装置31は、さらに車両の各乗員の着席位置を検出する位置検出手段45と、マトリックスに示された室内環境を調節する度合を変更するマトリックス変更手段46とを備えている。
【0038】
位置検出手段45は、車両の運転席、助手席、後部座席などの各座席に乗員が着席しているか否かを表わす着席位置を、生体情報検出手段41によって取得された生体情報に基いて検出するようになっている。ここで、位置検出手段45が、それぞれの座席に着座センサなど乗員が着席していることを検出するセンサを備えることによって、着席位置を検出するようになっていてもよい。
【0039】
マトリックス変更手段46は、位置検出手段45によって検出された各乗員の着席位置に応じて、マトリックスに示された室内環境を調節する度合を変更するようになっている。
【0040】
例えば、運転者が眠気を催した場合、乗員が運転者のみであれば、運転者が睡眠に陥る可能性が高くなる。
【0041】
したがって、位置検出手段45によって、乗員が運転者のみであると検出された場合、マトリックス変更手段46は、運転者の覚醒状態が確実になるよう、マトリックスに示された室内環境を調節する度合を変更するようになっている。
【0042】
また、例えば、乗員が運転者と助手席に着席した乗員のみである場合、助手席の乗員が睡眠に陥ると、運転手もつられて眠気を催す可能性が高くなる。
【0043】
したがって、位置検出手段45によって、運転者と助手席に着席した乗員のみが検出され、生理状態判断手段42によって、助手席に着席した乗員が睡眠していると判断された場合、マトリックス変更手段46は、運転手の覚醒状態が確実になるよう、マトリックスに示された室内環境を調節する度合を変更するようになっている。
【0044】
以上のように構成された生理状態改善装置31について、図5を用いてその動作を説明する。
【0045】
まず、各乗員の生体情報が、生体情報検出手段41によって検出される(ステップS11)。
【0046】
また、各乗員の着席位置が、位置検出手段45によって検出される(ステップS12)。
【0047】
次いで、位置検出手段45によって検出された各乗員の着席位置に基いて、マトリックスに示された室内環境を調節する度合が、マトリックス変更手段46によって変更される(ステップS13)。
【0048】
次に、生体情報検出手段41によって検出された各乗員の生体情報に基いて、各乗員の生理状態が、生理状態判断手段42によって判断される(ステップS14)。
【0049】
そして、生理状態判断手段42によって判断された各乗員の生理状態に応じて、室内環境が、環境調節手段43によって調節される(ステップS15)。このとき、環境調節手段43によって室内環境が調節される度合は、生理状態判断手段42によって判断された生理状態に応じてマトリックスから選択される。
【0050】
このような本発明の第2の実施の形態の生理状態改善装置によれば、マトリックス変更手段が、各乗員の着席位置に応じてマトリックスにおける室内環境を調節する度合を変更するので、各乗員に対して室内環境が最適となるよう室内環境を調節し、運転者および同乗者の生理状態を改善することができる。
【0051】
なお、以上の説明では、生理状態改善装置が車両に搭載される場合について説明したが、車両に搭載される場合に限られるものではなく、船舶や航空機などに搭載されてもよい。
【0052】
また、以上の説明では、車両に照明機器、空調機器、および楽曲再生機器などの室内環境装置を備える場合について説明したが、室内環境装置として、酸素供給機器、あるいは光シャワー供給機器などを備えるようにし、環境調節手段が、酸素供給機器、あるいは光シャワー供給機器を制御することによって車両の室内環境を調節するようにしてもよい。また、環境調節手段が、カーテンなどを制御することによって照明度合を変更して、車両の室内環境を調節するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる生理状態改善装置は、車両の運転者および同乗者の生理状態を改善することができる効果を有し、車両の室内環境を調節し、乗員の生理状態を改善する生理状態改善装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態の生理状態改善装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態の生理状態改善装置のマトリックスの一例を示す説明図
【図3】本発明の第1の実施の形態の生理状態改善装置の動作説明のためのフローチャート
【図4】本発明の第2の実施の形態の生理状態改善装置の構成を示すブロック図
【図5】本発明の第2の実施の形態の生理状態改善装置の動作説明のためのフローチャート
【図6】従来の生理状態改善装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0055】
1、31 生理状態改善装置
11、41 生体情報検出手段
12、42 生理状態判断手段
13、43 環境調節手段
14、44 マトリックス記憶手段
45 位置検出手段
46 マトリックス変更手段
61 生理状態改善装置
71 生体情報検出手段
72 生理状態判断手段
73 状態伝達手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の各乗員から生体情報を検出する生体情報検出手段と、
前記生体情報検出手段によって検出された生体情報に基いて、前記各乗員の生理状態を判断する生理状態判断手段と、
前記生理状態判断手段によって判断された生理状態に基いて、前記車両の室内環境を調節する環境調節手段とを備えた生理状態改善装置。
【請求項2】
前記各乗員の生理状態と前記室内環境を調節する度合とを対応付けたマトリックスを記憶するマトリックス記憶手段を有し、
前記環境調節手段が、前記マトリックスに示された度合で前記室内環境を調節することを特徴とする請求項1に記載の生理状態改善装置。
【請求項3】
前記各乗員の着席位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段によって検出された前記各乗員の着席位置に基いて、前記マトリックスにおける前記室内環境を調節する度合を変更するマトリックス変更手段とを備えることを特徴とする請求項2に記載の生理状態改善装置。
【請求項4】
前記車両が、照明機器を備え、
前記環境調節手段が、前記照明機器を制御することによって前記室内環境を調節することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の生理状態改善装置。
【請求項5】
前記車両が、空調機器を備え、
前記環境調節手段が、前記空調機器を制御することによって前記室内環境を調節することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の生理状態改善装置。
【請求項6】
前記車両が、楽曲再生機器を備え、
前記環境調節手段が、前記楽曲再生機器を制御することによって前記室内環境を調節することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の生理状態改善装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−102362(P2006−102362A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296197(P2004−296197)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】