説明

生理的条件下での高分子の凝集を低減するための方法及び製剤

特定のシクロデキストリン(CD)を添加することによる、生理的条件下での高分子、例えばタンパク質の凝集を低減及び凝結を妨げるための方法を開示する。また、高分子の皮下投与の間の注射部位の炎症を最小化するための方法、及びその投与のための薬学的製剤を提供する。さらに、ヒト化抗CD20抗体を含む本発明の薬学的製剤を投与することを含むCD20陽性癌又は自己免疫性疾患の治療方法を提供する。さらに、生理的条件下での抗体又は他の高分子の凝集を低減する賦形剤の能力を評価するための、インビトロ透析方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理的条件下での凝集を低減することによって高分子の皮下投与のための注射部位での炎症を最小化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去20年で、組み換えDNA技術により、生体分子、特にタンパク質である医薬の数が著しく増加した。生体分子薬物の増加により薬物製剤の新規な試みがなされている。抗体のようなタンパク質治療の高用量は、静脈内注入によって患者に供給されうるが、この投与経路は都合が悪く、一般に可能なところで皮下注射用のタンパク質治療を製剤化するのが好ましい。しかしながら、皮下注射のための薬剤溶液は静脈注入用のものよりも体積が小さく、そのためタンパク質は必然的に高い濃度で存在する。1ミリリットルにつき何十ミリグラムもの高い治療的タンパク質濃度で、長期間のために安定して溶解される治療的タンパク質を保つことは、重要である。タンパク質の高濃度溶液は、凝集を起こしうるタンパク質-タンパク質相互作用の可能性が増え、凝集の防止はタンパク質薬剤製剤のための主要な問題になっている。凝集は、活性なタンパク質の生物学的利用能の低減、変化した薬物動態及び望ましくない免疫原性を含む多くの問題を引き起こす。(Frokjaer, S. and Otzen, D.E., Nat. Rev. Drug. Discov. 4: 298-306 (2005);Jiskoot, W. and Crommelin, D.J.A., EJHP Practice 12:20-21 (2006))。
凝集工程の分子詳細が一般に知られていないので、凝集の防止は主に経験によるものである。代表的な方策は、安定剤をタンパク質溶液に加えることである。一般的に用いられる安定剤には、糖類、塩類、L−アルギニン及びL−グルタミンのような遊離アミノ酸(Golovanov, A.P. et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 8933-8939 (2004))、ポリオール(Singh, S. and Singh, J., AAPS Pharm. Sci. Tech 4: 1-9 (2003);Mishra, R. et al., J. Biol. Chem. 280:15553-15560 (2005))、ポリエチレングリコール(PEG)、及び、タンパク質-タンパク質相互作用を低減しうるポリソルベート又はポロキサマーといった他のポリマー(上掲のFrokjaer and Otzen;Lee, R.C. et al., Ann. Biomed. Eng. 34: 1190-1200 (2006);(Nema, S. et al., PDA Journal of Pharmaceutical Science and Technology 51: 166-171 (1997))が含まれる。
【0003】
シクロデキストリン(CD)は、α−(1,4)グリコシド結合に連結したd−グルコピラノース単位を有する環状オリゴ糖である。CDは、アミラーゼ、シクロデキストリントランスグルコシラーゼの作用で、とうもろこし又は他の澱粉から生産される。最も一般的な天然に生じるシクロデキストリンは、6、7、8のグルコピラノース単位からそれぞれなる、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンである。天然のシクロデキストリン、特にβ-シクロデキストリンは、低水溶解度を有するので、溶解性及び他の生理化学的性質を向上させていた多くの誘導体が合成された。市販のCD誘導体には、メチル化CD、2-ヒドロキシプロピル化CD、アセチル化CD、分岐状CD及びスルホブチルCDが含まれる。シクロデキストリンの同義語には、Cavitron、環状オリゴ糖、シクロアミロース、及びシクログルカンが含まれる。(概略については、Loftsson, T., and Brewster, M. E., J. Pharm. Sci. 85: 101- (1996);Uekama, K. et al., Chem. Rev. 98: 2045-2076 (1998);Me, T. and Uekama, K., Advanced Drug Delivery Reviews 36:101-123 (1999);及びSzjetli, J., Pure Appl. Chem. 76:1825-1845 (2004)を参照)。シクロデキストリンは、分子量25000のダルトン未満であるので、糸球体ろ過によって体循環から取り除かれ得、体に蓄積すると思われていない。ヒドロキシプロピル-β-CD及びスルホブチル−β-CDのような多くの薬学的に関連する誘導体と同様に天然のシクロデキストリンの無毒性は文献に記されている(上掲のUekama et al.;上掲のSzjetli)。
【0004】
シクロデキストリンは、内部が疎水性であり、外部が親水性である円錐形である。疎水腔により、適切な大きさの無極性化合物が含まれ、複合体を形成する環境が整う。CD及びその誘導体は、完全に水溶性でない薬剤のための可溶化剤として使われていた。例えば、イトラコナゾール(SporanoxTM)はヒドロキシプロピルβ-CDにて可溶化され、メシル酸ジプラシドン(GeodonTM)はスルホブチルエーテルβ-CDにて可溶化される。CDの他の用途は、薬剤安定化、味覚マスキング、及び精油のための吸着剤などである。シクロデキストリンを含有する現在入手可能な製剤には、SporanoxTM(Janssen, Belgium)、ProstavasinTM(Ono, Japan; Schwarz, Germany)、プロスタンディン500TM(Ono, Japan)、GeodonTM(Pfizer, USA)、VFENDTM(Pfizer, USA)、MitoExtra MitozytrexTM(Novartis, Switzerland)、及びVoltarenTM(Novartis, Switzerland)が含まれる。上また、上掲のSzjetliの表1も参照のこと。これらの製剤はすべて、小分子化合物に限られている。
また、ペプチド及びタンパク質のような大きな薬剤分子は、シクロデキストリンとの複合体を形成しうる。CDと複合体化したペプチド薬剤の生物学的利用能の向上は、細胞性流出ポンプに対するCDの阻害作用からある程度生じていると考えられている(Challa, R. et al, AAPS Pharm. Sci. Tech. 6: E329-357 (2005))。また、タンパク質及びペプチドのための安定化のメカニズムは、小分子薬剤の場合とは質的に異なる。CDが小分子薬剤との封入複合体を形成しうるのに対して、CDはタンパク質又はペプチドの特定の溶媒に露出したアミノ酸残基と結合するようである(Aachmann, F. L. et al., Protein Engineering 16:905-912 (2003))。最大の利点は通常低シクロデキストリン濃度で得られ、その利点は部分的にのみ濃度依存性であることが多い。例えば、IL−2の凝集は、0.5% HP−β−シクロデキストリンによって最適に阻害された。(上掲のLoftsson and Brewster)。ヒト成長ホルモンの溶解性は、およそ2〜6%で存在するCDによって向上し、α及びγCDはβCDよりも数倍有効性が低いことが明らかにされた。(Otzen, D. E. et al., Protein Sci. 11 : 1779-1787 (2002))。
【0005】
CD20抗原(ヒトBリンパ球制限分化抗原Bp35とも呼ばれる)はプレB及び成熟Bリンパ球上に位置するおよそ35kDの分子量を持つ疎水性膜貫通型タンパク質である(Valentine等, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287 (1989);及びEinfeld等, EMBO J. 7(3):711-717 (1988))。その抗原はまたB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%以上に発現されるが(Anderson等, Blood 63(6):1424-1433 (1984))、造血幹細胞、プロB細胞、正常なプラズマ細胞又は他の正常な組織上には見出されない(Tedder等, J. Immunol. 135(2):973-979 (1985))。CD20は分化及び細胞分裂周期の開始の活性化過程における初期段階を調節し(上掲のTedder等)、おそらくはカルシウムイオンチャネルとして機能すると思われる(Tedder等, J. Cell. Biochem. 14D:195 (1990))。
【0006】
B細胞リンパ腫ではCD20が発現されるため、この抗原はこのようなリンパ腫を治療するための有用な治療標的であった。例えば、ヒトCD20抗原に対する遺伝子的操作を施したキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体であるリツキシマブ(rituximab)(リツキサン(RITUXAN)(登録商標)、MABTHERA(登録商標))(ジェネンテック社, サウスサンフランシスコ, カリフォルニア, 合衆国及びF.ホフマン ラ ロッシュ AG, バーゼル, スイスから商業的に入手可能)は、再発性もしくは低抵抗性の(refractory low-grade)又は濾胞性の(follicular)、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療に使用されている。リツキシマブは1998年4月7日に発行された米国特許第5,736,137号(Anderson等)及び米国特許第5776456号において「C2B8」と呼ばれている抗体である。NHLの治療のための他の抗CD20抗体には、放射性同位体であるイットリウム-90(IDEC Pharmaceuticals, San Diego, CA)に結合したマウスの抗体ZevalinTM、及びI−131にコンジュゲートされた他の完全マウス抗体であるBexxarTM(Corixa, WA)が含まれる。
【0007】
CD20は、また、自己免疫性疾患を治療するための有用な標的抗原である。リツキシマブは、B細胞と自己抗体が疾患の病態生理に所定の役割を担っていると思われる様々な非悪性自己免疫疾患についてもまた研究されてきた。Edwards等, Biochem Soc. Trans. 30:824-828 (2002)。リツキシマブは、例えば関節リウマチ(RA)(Leandro等, Ann. Rheum. Dis. 61:883-888 (2002);Edwards等, Arthritis Rheum., 46 (Suppl. 9): S46 (2002);Stahl等, Ann. Rheum. Dis., 62 (Suppl. 1): OP004 (2003);Emery等, Arthritis Rheum. 48(9): S439 (2003))、ループス(Eisenberg, Arthritis. Res. Ther. 5:157-159 (2003);Leandro等 Arthritis Rheum. 46: 2673-2677 (2002);Gorman等, Lupus, 13: 312-316 (2004))、免疫性血小板減少性紫斑病(D'Arena等, Leuk. Lymphoma 44:561-562 (2003);Stasi等, Blood, 98: 952-957 (2001);Saleh等, Semin. Oncol., 27 (Supp 12):99-103 (2000);Zaia等, Haematolgica, 87: 189-195 (2002);Ratanatharathorn等, Ann. Int. Med., 133: 275-279 (2000))、赤芽球癆(Auner等, Br. J. Haematol., 116: 725-728 (2002));自己免疫貧血症(Zaja等, Haematologica 87:189-195 (2002)(erratumはHaematologica 87:336 (2002)に記載)、寒冷凝集素症(Layios等, Leukemia, 15: 187-8 (2001);Berentsen等, Blood, 103: 2925-2928 (2004);Berentsen等, Br. J. Haematol., 115: 79-83 (2001);Bauduer, Br. J. Haematol., 112: 1083-1090 (2001);Damiani等, Br. J. Haematol., 114: 229-234 (2001))、重篤のインスリン抵抗性B型症候群(Coll等, N. Engl. J. Med., 350: 310-311 (2004)、混合性クリオグロブリン血症(DeVita等, Arthritis Rheum. 46 Suppl. 9:S206/S469 (2002))、重症筋無力症(Zaja等, Neurology, 55: 1062-63 (2000);Wylam等, J. Pediatr., 143: 674-677 (2003))、ヴェゲナー肉芽腫症(Specks等, Arthritis & Rheumatism 44: 2836-2840 (2001))、治療抵抗性尋常性天疱瘡(Dupuy等, Arch Dermatol., 140:91-96 (2004))、皮膚筋炎(Levine, Arthritis Rheum., 46 (Suppl. 9):S1299 (2002))、シェーグレン症候群(Somer等, Arthritis & Rheumatism, 49: 394-398 (2003))、II活性型混合性クリオグロブリン血症 (Zaja等, Blood, 101: 3827-3834 (2003))、尋常性天疱瘡(Dupay等, Arch. Dermatol., 140: 91-95 (2004))、自己免疫神経障害(Pestronk等, J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 74:485-489 (2003))、傍腫瘍性眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群(Pranzatelli等 Neurology 60(Suppl. 1) PO5.128:A395 (2003))、及び再発寛解型多発性硬化症((RRMS)、Cross等 (abstract) "Preliminary results from a phase II trial of Rituximab in MS" Eighth Annual Meeting of the Americas Committees for Research and Treatment in Multiple Sclerosis, 20-21 (2003))の徴候と症状を潜在的に軽減することが報告されている。
【0008】
本発明は、生理的条件下での抗体といった高分子の凝集を予防するための方法及び製剤を提供する。本発明の方法は、治療的タンパク質、例えば本明細書中に記載の抗CD20抗体の製剤の調製の利点を提供する。これらの利点には、治療用抗体の生物学的利用能の増加及び注射部位での炎症の低減をもたらす皮下注射用の製剤の調製能、並びに以下の詳細な説明から明らかな更なる利点が含まれる。
【発明の概要】
【0009】
シクロデキストリンは、完全に水溶性でない薬剤のための可溶化剤として生化学者によって使用されている。異なるタイプのシクロデキストリン(例えばスルホ-ブチルエーテル、ヒドロキシプロピルγ、ヒドロキシプロピルβ)がタンパク質、特に抗体の凝集及び凝結を阻害したという発明者等の発見は、抗体が非常に水溶性であるので、予想外である。ゆえに、シクロデキストリンが高濃度の抗体の凝集及び凝結を阻害したという発見は、シクロデキストリンの新規の用途を示す。また、発明者等は、一定の分子量(MW)カットオフを有する透析管とカスタマイズした放出培地の使用を含む新規のインビトロスクリーニング法を開発した。この透析管と培地は注射部位での生理的状態を模倣するものである。
本発明は、2%〜30%のシクロデキストリン(CD)の添加によって、生理的条件下で高分子、例えばタンパク質の凝集を低減し、凝結を阻害するための方法であって、このときこのシクロデキストリンはヒドロキシプロピルβ(HP−β)、ヒドロキシプロピルγ(HP−γ)及びスルホ-ブチルエーテル(SBE)シクロデキストリンからなる群から選択されるものである、方法を提供する。また、CDの添加による凝集と凝結の有意な低減は、ラットの皮下注射部位での炎症の有意な減少と相関した。更に、本発明は、皮下製剤に、2%〜30%のHP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン又はSBEシクロデキストリンを添加することによる、タンパク質などの高分子の皮下投与の間の、注射部位での炎症を最小化するための方法を提供する。本発明の様々な実施態様では、高分子は抗体である。本発明の他の実施態様では、抗体は治療用抗体又は診断用抗体である。
【0010】
本発明の様々な実施態様では、高分子は抗CD20抗体である。本発明のある実施態様では、抗CD20抗体はヒト化抗体である。本発明のある実施態様では、抗CD20抗体は、表1の変異体A、B、C、D、F、G、H又はIの何れか一を含む。さらに、本発明は、抗CD20抗体が配列番号:1−15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むものである方法及び製剤を提供する。本発明の他の実施態様では、抗体は、配列番号:1の軽鎖可変ドメインと配列番号:2の重鎖可変ドメイン、又は配列番号:3の軽鎖可変ドメインと配列番号:4の重鎖可変ドメイン、又は配列番号:3の軽鎖可変ドメインと配列番号:5の重鎖可変ドメインを含む。さらに、本発明は、抗体が、配列番号:6の完全長軽鎖と、配列番号:7、配列番号:8又は配列番号:15の完全長重鎖とを含むものである、方法及び製剤を提供する。さらに、本発明は、抗体が、配列番号:9の完全長軽鎖と、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13又は配列番号:14の完全長重鎖とを含むものである、方法及び製剤を提供する。
【0011】
更なる態様では、本発明は、2%〜30%のHP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン又はSBEシクロデキストリンを含有してなる、タンパク質などの大きな高分子の皮下投与のための薬学的製剤を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、10mg/ml〜200mg/mlの濃度の抗体と、2%〜30%のHP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン又はSBEシクロデキストリンとを含有してなる、抗体の皮下投与のための薬学的製剤を提供する。ある実施態様では、抗体濃度は30〜150mg/mlである。更なる実施態様では、抗体濃度は100〜150mg/mlである。ある実施態様では、薬学的製剤は、5%〜30%の濃度でHP−βシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、5%〜20%の濃度でHP−γシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、50mM〜200mMの濃度で、コハク酸アルギニンを更に含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、2%〜9%の濃度でSBEシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、およそ100mg/mlの濃度の抗体と、15%〜30%の濃度のHP−βシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、およそ150mg/mlの濃度の抗体と、およそ30%の濃度のHP−βシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、およそ150mg/mlの濃度の抗体と、およそ10%の濃度のHP−γシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、50mM〜200mMの濃度のコハク酸アルギニンを更に含む。特定の実施態様では、薬学的製剤は、100mg/ml〜150mg/mlの濃度のヒト化2H7抗体と、15%〜30%の濃度のHP−γシクロデキストリンと、50mM〜100mMの濃度のコハク酸アルギニンを含む。更なる実施態様では、薬学的組成物は、30mM 酢酸ナトリウム;5% トレハロース二水和物;及び0.03% ポリソルベート20、pH5.3を更に含む。
【0012】
更に、本発明は、表1に挙げた何れかの抗体からなるヒト化抗CD20抗体を含有してなる上記何れかの製剤を提供する。さらに、本発明は、抗CD20抗体が配列番号:1−15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むものである製剤を提供する。本発明の他の実施態様では、抗体は、配列番号:1の軽鎖可変ドメインと配列番号:2の重鎖可変ドメイン、又は配列番号:3の軽鎖可変ドメインと配列番号:4の重鎖可変ドメインを含む。さらに、本発明は、抗体が、配列番号:6の完全長軽鎖と配列番号:7、配列番号:8又は配列番号:15の完全長重鎖を含むものである、方法及び製剤を提供する。さらに、本発明は、抗体が、配列番号:9の完全長軽鎖と、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13又は配列番号:14の完全長重鎖を含むものである、方法及び製剤を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、2%〜30%のHP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン又はSBEシクロデキストリンを含有してなる薬学的製剤中の、表1の何れか一のヒト化抗CD20抗体を投与することを含む、CD20発現B細胞の癌の治療方法を提供する。CD20陽性B細胞癌はB細胞リンパ腫又は白血病であることが好ましい。特定の実施態様では、ヒトCD20(hCD20)を結合するヒト化2H7抗体ないしその機能的断片を含む製剤は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、再発性低悪性度NHL及びリツキシマブ抵抗性低悪性度NHLを含む低悪性度NHL、リンパ球優位型ホジキン病(LPHD)、小リンパ球リンパ腫(SLL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)を治療するために用いられる。特定の実施態様では、ヒト化CD20結合抗体、特に表1の変異体A、B、C、D又はHないしその機能的断片を含む製剤は、上記のCD20陽性B細胞癌を治療するために用いられる。
【0014】
また、本発明は、自己免疫性疾患の治療方法であって、自己免疫性疾患に罹患した患者に、2%〜30%のHP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン又はSBEシクロデキストリンを含有する薬学的製剤中の表1のヒト化2H7抗体の治療上有効量を投与することを含む方法を提供する。特定の実施態様では、自己免疫性疾患は、関節リウマチ(RA)及び若年性慢性関節リウマチからなる群から選択され、RA患者はメトトレキセート(Mtx)への応答が不十分である者、及びTNFαアンタゴニストへの応答が不十分な者、リツキシマブ−抵抗性又は再燃患者 である。一実施態様では、RA患者は、他の抗CD20治療抗体について抵抗性であるか又は再燃性である。他の実施態様では、自己免疫性疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えばループス腎炎、多発性硬化症(MS)、例として再発性寛解多発性硬化症(RRMS)、ヴェゲナー病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgAネフロパシ、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、ANCA関連血管炎、真正糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、視神経脊髄炎(NMO)及び糸球体腎炎からなる群から選択される。特定の実施態様では、ヒト化CD20結合抗体、特に表1の変異体A、B、C、D又はHないしその機能的断片を含む製剤は、上記の自己免疫性疾患を治療するために用いられる。
上述した疾患の治療方法のある実施態様では、疾患に罹患している被検体又は患者は霊長類、好ましくはヒトである。
【0015】
本発明はさらに、患者の注入部位での注入による水溶性皮下製剤中の抗体の可溶化を改善最小化するあるいは維持するか又は沈殿を最小化する方法であって、水溶性皮下製剤に2%〜30%のHP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン又はSBEシクロデキストリンを添加することを含む方法を提供する。ある実施態様では、薬学的製剤は、5%〜30%の濃度でHP−βシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、5%〜20%の濃度でHP−γシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、50mM〜200mMの濃度でコハク酸アルギニンを更に含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、2%〜9%の濃度でSBEシクロデキストリンを含む。
本発明はさらに、皮下に投与される抗体の生物学的利用能を増やす方法であって、抗体を含有する水溶性皮下製剤に、2%〜30%のHP-βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン又はSBEシクロデキストリンを添加することを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、5%〜30%の濃度でHP−βシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、5%〜20%の濃度でHP−γシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、50mM〜200mMの濃度でコハク酸アルギニンを更に含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、2%〜9%の濃度でSBEシクロデキストリンを含む。
【0016】
さらに、本発明は、生理的条件下での抗体又は他の高分子の凝集を低減する賦形剤の能力を評価するためのインビトロ透析方法であって、一定に撹拌しながら37℃の生理的状態をシミュレーションするために、試験培地に対して試験賦形剤を有する場合と有さない場合の高分子製剤を透析し;変調した培地溶液の試料を採取し;そして、UV光度スキャンなどの方法によって試料の濁度及び放出培地中に存在するタンパク質の量といった所見を測定することを含み、このとき賦形剤を欠いているコントロールと比較して、試験賦形剤を含むアッセイにおける放出培地中のタンパク質濃度が増加し濁度が低減している場合に、高分子の凝集を低減する試験賦形剤の能力が示される、方法を提供する。具体的な実施態様では、培地は、167mM ナトリウム、140mM 塩化物、17mM リン酸塩、4mM カリウムを含有するような変更PBS溶液に関する。本方法の具体的な実施態様では、透析管は、1000000ダルトン分子量カットオフを有する。本方法のさらに具体的な実施態様では、試験試料中のタンパク質濃度及び濁度は、UV吸光度測定法を使用して測定される。本方法の更なる実施態様では、方法には、変調した放出培地と沈殿のための透析管内の溶液とを視覚的に調査することが含まれ、このとき賦形剤を欠いているコントロールと比較して、試験賦形剤を含む透析管において沈殿が減少した場合に、高分子の凝集を低減する試験賦形剤の能力が示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】生理的条件下での2H7の凝集を示す。150mg/mlの2H7をPBSにて37℃で2日間透析した。
【図2】生理的条件下での2H7凝集に対する賦形剤の効果を評価するために用いたインビトロ透析モデルを示す。250mlのガラス広口瓶に、37℃の220mlの変更PBS溶液(167mM ナトリウム、140mM 塩化物、17mM リン酸塩、4mM カリウム)を満たす。6cm長の12mmの透析管の一端を固定し、およそ1mlの試験試料を満たし、過剰空気を取り除き、管の他端をシール部分に留める。広口瓶は一定に撹拌しながら37℃に置く。
【図3】インビトロ透析モデルにおけるコントロールの動態を示す。2H7及びrhuMabCD11aは、図2に示すモデルにおいて試験した。PBS溶液に放出されるタンパク質の蓄積割合を、2.5、6、12、24、33及び48時間の時点に測定した。
【図4】インビトロモデルにおける2H7の放出に対する2〜9%のSBEシクロデキストリンの効果を示す。
【図5】インビトロモデルにおける2H7の放出に対する5%〜20%のHP−γシクロデキストリンの効果を示す。
【図6】インビトロモデルにおける2H7の放出に対する5%〜20%のHP−βシクロデキストリンの効果を示す。
【図7】インビトロモデルにおける2H7の放出に対するHP−γシクロデキストリンとコハク酸アルギニンの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施態様の詳細な説明)
「凝集すること」という動詞の様々な形態は、個々のタンパク質分子又は複合体が関連して凝集が形成されるプロセスを指す。「凝集体」は、タンパク質の分子又は複合体を含む重合集合体である。凝集は、可視的な沈殿物が形成される程度にまで進行しうる。このような可視的な沈殿物の形成は、本明細書中で「凝結」とも称する。
高分子の相対的な沈殿量は、例えば視覚的コントロールとの比較によって決定されうる。沈殿をアッセイする他の方法は当分野で公知であり、例えば実施例2に詳細に記載したインビトロ透析法や実施例3に記載したインビボモデル等、以降に記載する。
【0019】
「生物学的利用能」なる用語は、投与後の生理的活性の部位で薬剤又は他の物質が吸収されるか又は利用可能となる程度又は速度を指す。高分子の生物学的利用能は、当分野で公知のインビボ薬物動態学的方法によって検定されてよい。
「高分子」なる用語は、少なくとも10000ダルトンの分子量を有する分子を指し、抗体といったタンパク質を含みうる。
「賦形剤」又は「医薬賦形剤」なる用語は、高分子の凝集を低減しうる化合物を指す。賦形剤には、糖質、塩類、遊離アミノ酸、例えばL−アルギニン及びL−グルタミン、ポリオール、ポリエチレングリコール(PEG)及び他のポリマー、例えばポリソルベート、ポロキサマー又はポリビニルピロリドンが含まれうる。
「シクロデキストリン」(又は「CD」)なる用語は、α−(1,4)グリコシド結合に連結したd−グルコピラノース単位を有する環状のオリゴ糖を指す。最も一般的な天然に生じるシクロデキストリンは、6、7、8のグルコピラノース単位からそれぞれなる、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンである。シクロデキストリンの同義語には、Cavitron、環状オリゴ糖、cycloamulose及びシクログルカンが含まれる。本明細書中で用いられる「シクロデキストリン」なる用語にはさらに、メチル化されたCD、2-ヒドロキシプロピル化CD、アセチル化CD、分岐型CD及びスルホブチルCDを含むがこれらに限定されないシクロデキストリン誘導体が含まれうる。
【0020】
「治療的抗体」なる用語は、疾患の治療に用いられる抗体を指す。治療用抗体は、様々な作用機構を有してよい。治療用抗体は、結合して標的の正常な機能を中和しうる。例えば、癌細胞の生存に必要なタンパク質の活性をブロックするモノクローナル抗体により細胞の死が引き起こされる。他の治療用モノクローナル抗体は、結合して標的の正常な機能を活性化しうる。例えば、モノクローナル抗体は、細胞上のタンパク質に結合し、アポトーシスシグナルを誘発しうる。最後に、モノクローナル抗体が患部組織にのみ発現される標的に結合する場合、モノクローナル抗体への毒性ペイロード(有効薬剤)、例えば化学療法剤又は放射性薬剤のコンジュゲートは、患部組織へ毒性ペイロードを特異的に運搬するための薬剤をつくり得、健康な組織への害を低減する。
「診断用抗体」なる用語は、疾患のための診断試薬として用いられる抗体を指す。診断用抗体は、特異的に関連する標的に結合しうるか、又は特定の疾患における発現の増加を示す。診断用抗体は、例えば、患者からの生物学的試料、又は、患者の罹患部位(例えば腫瘍)の画像診断において標的を検出するために用いられうる。
【0021】
「CD20」抗原は、末梢血又はリンパ系器官のB細胞の90%以上の表面に見出される分子量がおよそ35kDの非グルコシル化膜結合型リンタンパク質である。CD20は初期のプレB細胞発育中に発現し、プラズマ細胞分化まで残る;ヒトの幹細胞、リンパ球祖先細胞(プロジェニタ)又は正常プラズマ細胞には見出されない。CD20は正常なB細胞並びに悪性B細胞の双方に存在する。文献中でのCD20の他の名称には「Bリンパ球限局性分化抗原」及び「Bp35」がある。CD20抗原は、例えば、Clark及びLedbetter, Adv. Can. Res. 52:81-149 (1989)及びValentine等, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287 (1989)に記載されている。
「抗体」なる用語は、最も広義に用いられ、特にモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、及びそれらが所望の生物学的活性又は機能を示す限り、抗体断片を包含する。
【0022】
本発明のヒト化CD20結合抗体の生物活性には、少なくともヒトCD20への抗体結合、より好ましくはヒト及び他の霊長類CD20(カニクイザル、アカゲザル、チンパンジーを含む)への結合が含まれるであろう。抗体は、1×10−8より低いK値、好ましくは1×10−9より低いK値でCD20に結合し、このような抗体で処置していない適当なネガティブコントロールと比較した場合、好ましくは少なくとも20%のB細胞をインビボで死滅又は枯渇させうるであろう。B細胞の枯渇は、ADCC、CDC、アポトーシス、又は他のメカニズムの一又は複数の結果でありうる。ここでの疾患治療のある実施態様では、特定のエフェクター機能又はメカニズムが他のものよりも望まれ、ヒト化2H7のある変異体がADCCなどの生物学的機能を達成するのに好ましい。
【0023】
「抗体断片」には、完全長抗体の一部、一般にはその抗体の抗原結合又は可変領域が含まれる。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')及びFv断片;ダイアボディー(diabodies);直鎖状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異的抗体が含まれる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小限抗体断片である。この断片は、一重鎖と一軽鎖可変領域ドメインが密接に非共有結合した二量体からなる。この2つのドメインのフォールディングから6つの高頻度可変ループ(それぞれH鎖及びL鎖から3ループ)が生じ、それにより抗原結合にアミノ酸残基を寄与させて抗体に抗原結合特異性をもたらす。しかしながら、単一可変ドメイン(又は抗原に特異的なCDRを3つしか含まないFvの半分)でさえ、結合部位全体より親和性は低いが、抗原を認識して結合する能力を持つ。
【0024】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生中に生じ得、一般に少量で存在しうる可能な変異を除いて、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。そのようなモノクローナル抗体は典型的には標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含む方法によって得られている。例えば、選択方法は、ハイブリドーマクローンのプール、ファージクローン又は組換えDNAクローンのような複数のクローンから独特のクローンを選択することでありうる。選択された標的結合配列は、例えば標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養においてその生産を改善し、インビボでのその免疫原性を減少させ、多重特異的抗体を作り出す等のために、更に改変することができ、改変された標的結合配列を含む抗体はまた本発明のモノクローナル抗体であることが理解されなければならない。異なった決定基(エピトープ)に対する異なった抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物と異なり、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによって汚染されていない点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要とするものであると考えてはならない。例えば、本発明で使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例えばKohler等, Nature, 256:495 (1975);Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2版 1988);Hammerling等, Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681, (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば米国特許第4816567号を参照)、ファージディスプレイ法(例えばClackson等, Nature, 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004);Lee等, J.Mol.Biol.340(5):1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee等 J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004)を参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全てを有する動物においてヒト又はヒト様抗体を産生する技術(例えば国際公開第1998/24893号;同第1996/34096号;同第1996/33735号;同第1991/10741号;Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature, 362:255-258 (1993);Bruggemann等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5545806号;同第5569825号;同第5591669号(全てGenPharm);同第5545807号;国際公開第1997/17852号;米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016号; Marks等, Bio/Technology, 10: 779-783 (1992);Lonberg等, Nature, 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature, 368: 812-813 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology, 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology, 14: 826 (1996);及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol., 13: 65-93 (1995)を参照)を含む様々な技術によって作製することができる。
【0025】
本発明のCD20結合抗体の「機能的断片」は、それ自体が由来する無傷の全長分子と実質的に同じ親和性でのCD20への結合を維持する断片であり、ここで開示するようなインビトロ又はインビボアッセイにより測定されるB細胞の枯渇を含む生物学的活性を示す。
「可変」という用語は、可変ドメインのあるセグメントが、抗体間で配列が広く異なることを意味する。Vドメインは抗原結合を仲介し、その特異的抗原に対する特異的抗体の特異性を規定する。しかしながら、可変性は可変ドメインの110アミノ酸スパンにわたって均一には分布していない。代わりに、V領域は、それぞれ9−12アミノ酸長の「高頻度可変領域」と呼ばれる高度可変性のより短い領域により分離される15−30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる相対的にインバリアントな伸展からなる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々4つのFR領域を含み、これは主にβシート配置をとり、3つの高頻度可変領域に結合してループ状結合を形成するが、βシート構造の一部を形成する場合もある。各鎖の高頻度可変領域は、FR領域の直ぐ近傍に保持され、他の鎖からの高頻度可変領域と共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)を参照)。定常ドメインは抗体の抗原への結合には直接関与しないが、抗体依存的細胞障害(ADCC)への抗体の関与のような様々なエフェクター機能を示す。
【0026】
ここで使用されるところの「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、Vのおおよそ残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)及びVのおおよそ31−35B(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基(例えば、Vの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及びVの残基26−32(H1)、52A−55(H2)及び96−101(H3)(Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。
【0027】
ここで示すように、「コンセンサス配列」又はコンセンサスVドメイン配列は、既知のヒト免疫グロブリン可変領域配列のアミノ酸配列の比較から得た人工の配列である。これらの比較に基づいて、ヒトκ及びヒトH鎖サブグループIIIVドメイン由来の配列のコンセンサスであるVドメインアミノ酸をコードする組換え核酸配列を調製した。コンセンサスV配列は如何なる抗体結合特異性も親和性も持たない。
「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ対応配列に一致するか又は相同である重鎖及び/又は軽鎖の一部を有するものであり、残りの鎖は他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ対応配列に一致するか又は相同であり、並びに所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片が含まれる(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで用いるヒト化抗体はキメラ抗体のサブセットである。
【0028】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種からの高頻度可変領域の残基(ドナー抗体)によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント又はアクセプター抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は結合親和性のような抗体特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、たとえFR領域が結合特性を改善するような一又は複数のアミノ酸置換を含んでも、全てあるいは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。FR中のこれらアミノ酸置換の数は、典型的にはH鎖では6個以下、L鎖では3個以下である。ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものをまた含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0029】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
【0030】
本明細書と特許請求の範囲を通して、特に明記しない限りは、免疫グロブリン重鎖の定常ドメイン中の残基の番号付けは、ここに出典を明示して取り込まれるKabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のEUインデックスのものである。「KabatのEUインデックス」とはヒトIgG1EU抗体の残基番号付けを意味する。配列又は他の番号付けシステムを特に示さない限りは、V領域内の残基はKabat番号付けに従って番号付けをした。
【0031】
CD20抗体には、今は「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)(米国特許第5736137号)と呼ばれている「C2B8」;IDEC Pharmaceuticals社から市販されている「Y2B8」又は「イブリツモマブ・チウキセタン」(ゼバリン(登録商標))と命名されているイットリウム-[90]標識2B8マウス抗体(米国特許第5736137号;1993年6月22日に受託番号HB11388でATCCに寄託された2B8);Corixaから市販されている「131I−B1」又は「ヨウ素I131トシツモマブ」抗体を産生するために131Iで標識されていてもよい「トシツモマブ」とも呼ばれるマウスIgG2a「B1」(BEXXARTM、GlaxoSmithKline、米国特許第5595721号も参照);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等 Blood 69(2):584-591 (1987)及び「パッチフレームワーク」を含むその変異体又はヒト化1F5(国際公開第2003/002607, Leung, S.;ATCC寄託HB−96450);マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5677180号);ヒト化2H7(国際公開第2004/056312号 Lowman等)及び以下に記載のもの);HUMAX−CD20TM完全ヒト抗体(Genmab, Denmark;例えばGlennie及びvan de Winkel, Drug Discovery Today 8: 503-510 (2003)及びCragg等, Blood 101: 1045-1052 (2003)を参照);国際公開第2004/035607号(Teeling等)に記載されたヒトモノクローナル抗体;米国特許出願公開第2004/0093621号(Shitara等)に記載されたFc領域に複合N-グリコシド結合糖鎖が結合した抗体;国際公開第2004/103404号(Watkins等, Applied Molecular Evolution)に記載されたAME-133TM抗体のようなAME抗体シリーズのようなCD20結合分子;キメラ又はヒト化A20抗体(それぞれcA20、IMMU-106 a.k.a.hA20)(米国特許出願公開第2003/0219433号、米国特許出願公開2005/0025764;Immunomedics)のようなA20抗体又はその変異体;及びInternational Leukocyte Typing Workshop(Valentine等, Leukocyte Typing III (McMichael編, p.440, Oxford University Press (1987))から入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2が含まれる。ここでの好ましいCD20抗体はヒト化、キメラ、又はヒトCD20抗体、より詳細にはヒト化2H7抗体、リツキシマブ、キメラ又はヒト化A20抗体(Immunomedics)、及びHUMAX-CD20TMヒトCD20抗体(Genmab)である。
【0032】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療的な使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、タンパク質は、(1)ローリー法で測定した場合95%を越える抗体、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分なほど、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで充分なほど精製される。抗体の自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツでの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程により調製される。
【0033】
本発明の組成物及び方法
本発明は、2%〜30%のHP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン又はSBEシクロデキストリンを含有してなる、タンパク質などの高分子の皮下投与用薬学的組成物を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、10mg/ml〜200mg/mlの濃度の抗体と、2%〜30%のHP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン又はSBEシクロデキストリンとを含有してなる、抗体の皮下投与のための薬学的製剤を提供する。ある実施態様では、抗体濃度範囲は30〜150mg/mlである。更なる実施態様では、抗体濃度範囲は100〜150mg/mlである。ある実施態様では、薬学的製剤は、5%〜30%の濃度でHP−βシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、5%〜20%の濃度でHP−γシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、50mM〜200mMの濃度でコハク酸アルギニンを更に含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、2%〜9%の濃度でSBEシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、およそ100mg/mlの濃度の抗体と、15%〜30%の濃度のHP−βシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、およそ150mg/mlの濃度の抗体と、およそ30%の濃度のHP−βシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、およそ150mg/mlの濃度の抗体と、およそ10%の濃度のHP−γシクロデキストリンを含む。ある実施態様では、薬学的製剤は、50mM〜200mMの濃度のコハク酸アルギニンを更に含む。特定の実施態様において、薬学的製剤は、100mg/ml〜150mg/mlの濃度のヒト化2H7抗体と、15%〜30%の濃度のHP−γシクロデキストリンと、50mM〜100mMの濃度のコハク酸アルギニンを含む。更なる実施態様では、薬学的組成物はさらに、30mM 酢酸ナトリウム;5% トレハロース二水和物;及び0.03% ポリソルベート20、pH5.3を含む。
【0034】
様々な実施態様では、本発明は、ヒト化2H7抗体(本明細書中ではhu2H7とも称する)を含んでなる薬学的組成物を提供する。特定の実施態様では、ヒト化2H7抗体は表1に挙げる抗体である。
【表1】

【0035】
表1の抗体変異体A、B及びIのそれぞれは軽鎖可変配列(V):

及び、
重鎖可変配列(V):

を含む。
【0036】
表1の抗体変異体C、D、F及びGのそれぞれは、軽鎖可変配列(V):

及び、
重鎖可変配列(V):

を含む。
【0037】
表1の抗体変異体Hは、配列番号:3(上記)の軽鎖可変配列(V)と重鎖可変配列(V):

を含む。
【0038】
表1の抗体変異体A、B及びIのそれぞれは、完全長軽鎖配列:

を含む。
【0039】
表1の変異体Aは、完全長重鎖配列:

を含む。
【0040】
表1の変異体Bは、完全長重鎖配列:

を含む。
【0041】
表1の変異体Iは、完全長重鎖配列:

を含む。
【0042】
表1の抗体変異体C、D、F、G及びHのそれぞれは、完全長軽鎖配列:

を含む。
【0043】
表1の変異体Cは、完全長重鎖配列:

を含む。
【0044】
表1の変異体Dは、完全長重鎖配列:

を含む。
【0045】
表1の変異体Fは、完全長重鎖配列:

を含む。
【0046】
表1の変異体Gは、完全長重鎖配列:

を含む。
【0047】
表1の変異体Hは、完全長重鎖配列:

を含む。
【0048】
ある実施態様では、本発明のヒト化2H7抗体は、IgG Fc内にアミノ酸変更を更に含み、野生型IgG Fcを有する抗体の、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、より好ましくは少なくとも100倍、好ましくは少なくとも125倍、さらにより好ましくは少なくとも150倍からおよそ170倍増加した、ヒトFcRnに対する結合親和性を表す。
IgG中のNグリコシル化部位はCH2ドメイン内のAsn297にある。本発明のヒト化2H7抗体組成物は、Fc領域を有する前述の何れかのヒト化2H7抗体の組成物を含み、ここで組成物中の抗体の約80−100%(好ましくは約90−99%)は糖タンパク質のFc領域に結合した、フコースを欠く成熟コア糖鎖構造を含む。そのような組成物は、FcγRIIIA(F158)への結合に驚くべき改善を示すことがここで実証されており、これは、ヒトIgGとの相互作用においてFcγRIIIA(V158)ほど効果的ではない。FcγRIIIA(F158)は、正常で健常なアフリカ系アメリカ人及び白人においてはFcγRIIIA(V158)より一般的である。Lehrnbecher et al. Blood 94:4220 (1999)を参照。歴史的に、最も一般的に用いられる産業用宿主の一つであるチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)で産生される抗体は、フコシル化されていない集団におよそ2〜6%を含有する。しかしながら、YB2/0及びLec13は、78〜98%のフコシル化されていない種を有する抗体を産生しうる。Shinkawa et al. J Bio. Chem. 278 (5), 3466-347 (2003)は、YB2/0及びLec13細胞で産生される抗体であってFUT8活性をほとんど持たない抗体がインビトロで有意に増加したADCC活性を示すことを報告した。また、フコース含量が低い抗体の作製は、例としてLi et al. (GlycoFi) "Optimization of humanized IgGs in glycoengineered Pichia pastoris" in Nature Biology online publication 22 Jan. 2006;Niwa R. et al. Cancer Res. 64(6): 2127-2133 (2004);米国公開特許2003/0157108(Presta);米国特許第6602684号及び米国公開特許2003/0175884(Glycart Biotechnology);米国公開特許2004/0093621、米国公開特許2004/0110704、米国公開特許2004/0132140 (すべてKyowa Hakko Kogyo)に記載されている。
【0049】
ここでの製剤は、治療される特定の効能に必要な一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含みうる。例えば、細胞障害性剤、化学療法剤、サイトカイン又は免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン又はT細胞を結合する抗体、例えばLFA-1を結合するもの等のT細胞に作用するもの)を更に提供することが望ましい場合がある。このような他の薬剤の有効量は製剤中に存在する抗体の量、疾患又は疾病又は治療のタイプ、及び上で検討した他の因子に依存する。これらは一般に同じ用量でここに記載された投与経路又はこれまで用いられている用量の約1〜99%量で用いられる。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、無菌濾過器による濾過によって容易に達成される。
【0050】
抗体の製造
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を誘導する。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。免疫化の後、リンパ球を単離して、次いでポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞株と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
【0051】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞(融合パートナーとも称する)の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための選択培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
好ましい融合パートナーである骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、融合していない親の細胞に対して選択する選択培地に感受性である細胞である。好ましい骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫系、例えば、the Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, Rockville, Maryland USAから入手し得るSP-2及びその誘導体、例えばX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0052】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson等, Anal. Biochem., 107:220 (1980)に記載のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定されると、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、例えばマウスに細胞を腹腔内注入することによって、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばアフィニティクロマトグラフィ(例えばプロテインA又はプロテインG-セファロース)又はイオン交換クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析などの常套的な抗体精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0053】
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウスの重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerra等, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)がある。
更なる実施態様では、モノクローナル抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから単離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記述している。続く刊行物は、鎖混合による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
【0054】
抗体をコードするDNAは、例えば、相同的マウス配列をヒト重鎖及び軽鎖定常ドメイン(C及びC)配列に置換することにより(米国特許第4,816,567号;及びMorrison等, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチド(異種性ポリペプチド)のコード配列の全部又は一部を融合させることによって、キメラ又は融合抗体ポリペプチドを生産するように修飾されうる。非免疫グロブリンポリペプチド配列は、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対して特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0055】
ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は従来からよく知られている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の該当する高頻度可変領域配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくらかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
抗原性及び、抗体がヒトの治療用途に意図される場合にはHAMA応答(ヒト抗マウス抗体)を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。齧歯動物のものと最も近いヒトVドメイン配列を同定して、その中のヒトフレームワーク領域(FR)をヒト化抗体とする(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0056】
更に、抗体を、抗原に対する高結合親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
ヒト化抗体は、抗体断片、例えばFab、場合によっては免疫コンジュゲートを作製するために1又は複数の細胞障害剤でコンジュゲートされたものであってもよい。あるいは、ヒト化抗体は、完全長抗体、例えば完全長IgG1抗体であってもよい。
【0057】
ヒト抗体及びファージディスプレイ法
ヒト化のための別法により、ヒト抗体を生産することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスへのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993);Bruggerman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5545806号、同第5569825号、同第5591669号(すべてGenPharm)、同第5545807号;及び国際公開公報97/17852を参照されたい。
【0058】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty等, Nature 348:552-553(1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13の大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のいずれかにおいてイン-フレームをクローンする。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖のDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージディスプレイのために使用可能である。Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構成可能で、抗原(自己抗原を含む)とは異なる配列の抗体を、Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffith等, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5565332号及び同5573905号を参照のこと。
前記したように、またヒト抗体は、活性化B細胞によりインビトロで生産してもよい(例えば米国特許第5567610号及び同第5229275号を参照)。
【0059】
抗体断片
特定の状況では、全抗体よりもむしろ抗体断片を使用する利点がある。より小さいサイズの断片は迅速にクリアランスされ、固形腫瘍へのアクセスが向上しうる。
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、完全な抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。Fab、Fv及びScFv抗体断片はすべて大腸菌で発現されて分泌されるため、これら断片の大量の生産が容易である。抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含有するインビボ半減期が増加したFab及びF(ab')断片は、米国特許第5,869,046号に記載される。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開93/16185;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。Fv及びsFvは、定常領域が欠けている完全な結合部位を有する唯一の種類である;したがって、それらは、インビボ使用の間の非特異的結合を減らすために適する。sFv融合タンパク質は、sFvのアミノ末端又はカルボキシ末端で、エフェクタータンパク質の融合を得るために設定されうる。上記のAntibody Engineering, ed. Borrebaeckを参照。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。このような直鎖状抗体断片は単一特異性又は二重特異性であってよい。
【0060】
他のアミノ酸配列の修飾
ここで記載のCD20結合抗体のアミノ酸配列の修飾を考察する。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善されることが望ましい。抗CD20抗体のアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化を抗CD20抗体核酸に導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、抗CD20抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構造物に達するまでなされるが、その最終構造物は所望の特徴を有する。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数の変化などの抗CD20抗体の翻訳後過程を変更しうる。
突然変異のための好ましい位置にある抗CD20抗体の特定の残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells , Science 244: 1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリペプチドアニリン)に置換され、アミノ酸とCD20抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更に又は他の置換を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現された抗CD20抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0061】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N-末端メチオニル残基を持つ抗CD20抗体又は細胞障害ポリペプチドに融合した抗体を含む。抗CD20抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を向上させる酵素(例えばADEPT)又はポリペプチドの抗CD20抗体のN-又はC-末端への融合物を含む。
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基によって置換された抗CD20抗体分子に少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。置換突然変異について最も対象となる部位は高度可変領域を含むが、FR変化も考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して以下の表に示す。これらの置換により生物学的活性に変化が生じる場合、表に「例示的置換」と称した又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。
【0062】
【表2】

【0063】
抗体の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro; 及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
【0064】
抗CD20抗体の適切な高次構造を維持するために関与しない任意のシステイン残基も、一般的には、セリンと置換して、分子の酸化的安定性を改善して、異常な交差を防いでもよい。逆に、システイン結合を抗体に付加して、その安定性を改善してもよい(特にこの場合、抗体はFv断片などの抗体断片である)。
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)。一般的に、さらなる発展のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な方法には、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異がある。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された多価抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体とヒトCD20の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
【0065】
抗体のアミノ酸変異の他の型は、抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、抗体に見い出される一又は複数の糖鎖部分の欠失、及び/又は抗体に存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
【0066】
抗CD20抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製された抗CD20抗体の変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
エフェクター機能、例えば抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞障害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害性(CDC)を向上させるために、本発明の抗体を修飾することが望ましい。このことは、抗体のFc領域に一又は複数のアミノ酸修飾を導入することで達成される。代わりに又は加えて、Fc領域にシステイン残基を導入することによってこの領域での鎖間のジスルフィド結合形成が起こりうる。故に、生成されたホモ二量体抗体は内部移行能を向上及び/又は補体媒介性細胞障害及び抗体依存性細胞障害(ADCC)を増強する。Caron等, J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992) 及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照。抗腫瘍活性が亢進されたホモ二量体抗体もまた、Wolff ら Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記載されているような異種性二機能性交差結合を用いて調製されうる。又は、抗体を二重のFc領域を持つように操作して、それによって補体媒介性溶解及びADCC能を亢進した。StevensonらAnti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
【0067】
治療的用途
本発明のヒト化2H7 CD20結合抗体を含む開示した方法及び組成物は、多くの悪性腫瘍及び非悪性疾患、例えばB細胞リンパ腫及び白血病などのCD20陽性B細胞癌及び自己免疫性疾患の治療に有用である。骨髄の幹細胞(B細胞プロジェニター)はCD20抗原を欠損しており、治療後には健康なB細胞の再産生が可能となり、数か月以内には正常レベルにまで回復する。
CD20陽性B細胞癌は、細胞表面上にCD20を発現するB細胞の異常な増殖を含むものである。CD20陽性B細胞腫瘍には、リンパ球優性ホジキン病(LPHD)を含むCD20陽性ホジキン病;非ホジキンリンパ腫(NHL);濾胞性中心細胞(FCC)リンパ腫;急性リンパ球性白血病(ALL);慢性リンパ球性白血病(CLL);線毛細胞白血病が含まれる。
【0068】
本明細書で使用する「非ホジキンリンパ腫」又は「NHL」という用語は、ホジキンリンパ腫以外のリンパ系の癌を意味する。通常、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫とは、ホジキンリンパ腫にはリードシュテルンベルク細胞が存在し、非ホジキンリンパ腫には前記細胞が不在であることにより区別することができる。本明細書で使用する用語に含まれる非ホジキンリンパ腫の例は、従来技術に既知の分類方式、例えばColor Atlas of Clinical Hematology第3版; A. Victor Hoffbrand及びJohn E. Pettit(編)(Harcourt Publishers Limited 2000)。特に図11.57、11.58及び11.59参照)に記載の改訂版European-American Lymphoma (REAL)方式に従って当業者(腫瘍学者又は病理学者)によって認識されるあらゆるものを含む。より具体的な例としては、限定するものではないが、再発性又は抵抗性NHL、前線低悪性度NHL、第III/IV期NHL、化学療法に抵抗性のNHL、前駆体Bリンパ芽球性白血病及び/又はリンパ腫、小リンパ球リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病及び/又は前リンパ球性白血病及び/又は小リンパ球リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、免疫細胞腫(immunocytoma)及び/又はリンパ形質細胞性リンパ腫、周辺帯B細胞リンパ腫、脾周辺帯リンパ腫、結節外周辺帯−MALTリンパ腫、結節周辺帯リンパ腫、有毛細胞白血病、プラズマ細胞腫及び/又は形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞性中心リンパ腫(濾胞性)、中悪性度拡散性NHL、広汎性大B細胞リンパ腫、高悪性度NHL(高悪性度前線NHL及び高悪性度再発性NHLを含む)、自己幹細胞移植後の又は自己肝細胞移植に抵抗性のNHL再発、原発性縦隔大B細胞リンパ腫、原発性浸出リンパ腫、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度非切断小細胞性NHL、巨大病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆体(末梢性)大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉腫及び/又はセザリー症候群、皮膚(皮膚性)リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管動原体リンパ腫が挙げられる。
【0069】
具体的な実施態様では、ヒト化CD20結合抗体及びその機能的な断片を含む薬学的製剤を用いて、非ホジキンリンパ腫(NHL)、リンパ球優性ホジキン病(LPHD)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)及び慢性リンパ球性白血病(CLL)、またこれらの症状の再発を含む疾患を治療する。
低悪性度リンパ腫は成長が遅い難病であり、平均的な患者は緩解と再発を繰返し6から10年生存するものである。一実施態様では、ヒト化CD20結合抗体又はその機能的断片は低悪性度NHL、例えば再発した低悪性度NHL及びリツキシマブ抵抗性低悪性度NHLの治療に用いられる。再発した低悪性度NHL患者は、予め1クールのリツキシマブを投与し、6か月より長い期間応答したリツキシマブ応答者でありうる。
このヒト化2H7抗体又はその機能的断片は、例えば、再発性ないし抵抗性の低グレードないし濾胞性のCD20陽性のB細胞NHLのための単一薬剤治療(単一療法)として有用であるか、多剤投与計画において他の薬剤と組み合わせて患者に投与されうる。
【0070】
本発明のヒト化2H7抗体又は機能的な断片は最前線の治療として使用することができる。また、本発明は、リツキシマブ(Genentech);イブリツモマブチウキセタン(ZevalinTM, Biogen Idec);トシツモマブ(BexxarTM, GlaxoSmithKline);HuMAX-CD20TM(GenMab);IMMU-106 (ヒト化抗CD20 a.k.a. hA20又は90Y-hLL2である, Immunomedics);AME-133(Applied Molecular Evolution/Eli Lilly);ゲムツズマブオゾガマイシン(MylotargTM, ヒト化抗CD33抗体, Wyeth/PDL);アレムツズマブ(CampathTM, 抗CD52抗体, Schering Plough/Genzyme);エピラツズマブ(IMMU-103TM, ヒト化抗CD22抗体, Immunomedics)、の何れか一の薬剤による治療に非応答性であるか又は応答が不十分であるCD20陽性B細胞腫瘍患者、又はこれらの薬剤による治療後に再発した患者の治療のための、これらの抗体の使用を意図する。
本発明は、さらに、本発明のヒト化2H7抗体によるフルダラビン治療に失敗した患者を含むCLL患者を治療する方法を提供する。
【0071】
本明細書中の「自己免疫疾患」は、個体の自己組織又は同時分離又はその徴候又は結果として生じるその症状に対する及びそれらから生じる疾患又は症状である。自己免疫疾患又は症状の例として、限定するものではないが、関節炎(関節リウマチ(例えば急性の関節炎、慢性の関節リウマチ、痛風性関節炎、急性の痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬の関節炎、椎骨関節炎及び若年性発症関節リウマチ、骨関節炎、関節炎慢性化、関節炎変形、関節炎慢性原発、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖性皮膚病、乾癬、例えばプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬及び爪乾癬)、アトピー、例としてアトピー性疾患、例えば花粉症及びジョブ症候群、皮膚炎、例として接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、ヘルペス状の皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激物接触皮膚炎及び過敏性皮膚炎、X連鎖性過剰IgM症候群、蕁麻疹、例えば慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹、例として慢性自己免疫蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、強皮症(全身強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊椎-眼(spino-optical) MS)、一次進行性MS(PPMS)及び再発性寛解MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、硬化症汎発、失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、大腸性潰瘍、微細な大腸炎、膠原性大腸炎、大腸ポリープ、壊死性全腸炎及び経壁の大腸炎、及び自己免疫炎症性腸疾患)、膿皮症壊疽、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎、呼吸窮迫症候群、例として成人性又は急性の呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫血液疾患、リウマチ様脊椎炎、リウマチ様関節滑膜炎、突発性聴力障害、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセンの脳炎及び辺縁及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例として、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫ブドウ膜炎、非顆粒性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎又は自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有する又は有さない糸球体腎炎(GN)、例として、慢性又は急性の糸球体腎炎、例として原発性GN、免疫性GN、膜性GN(膜性ネフロパシ)、特発性膜性GN又は特発性膜性ネフロパシ、膜又は膜性増殖性GN(MPGN)(タイプI及びタイプIIを含む)、急速進行性GN、アレルギー性症状及び応答、アレルギー性反応、湿疹、例としてアレルギー性又はアトピー性湿疹、喘息、例えば喘息気管支炎、気管支喘息及び自己免疫喘息、T細胞の浸潤を伴う症状及び慢性炎症反応、外因性の抗原、例えば妊娠中の胎児のABO血液型に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫心筋炎、白血球粘着力欠損、全身性エリテマトーデス(SLE)又は全身性ループスエリテマトーデス、例えば皮膚SLE、亜急性の皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)、紅班性狼瘡汎発、ループス(例としてループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループス、脱毛症ループス)、若年性開始型(I型)真正糖尿病、例として小児インシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)、成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性の尿崩症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関係する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例としてリンパ腫肉芽腫症、ヴェゲナーの肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例として血管炎、大血管性血管炎(例えば大脈管脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中脈管脈管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、微小多発動脈炎、CNS脈管炎、壊死性血管炎、皮膚性血管炎又は過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎、及びANCA関連の脈管炎、例としてチャーグ-ストラウス脈管炎又は症候群(CSS))、側頭動脈炎、無形成性貧血、自己免疫無形成性貧血、クームズ陽性貧血症、ダイアモンドブラックファン貧血症、溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、例として自己免疫溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アジソン病、純粋な赤血球貧血症又は形成不全(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、多器官損傷症候群、例えば敗血症、外傷又は出血の二次症状、抗原-抗体複合体関連疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット又はベーチェット病、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天ぽうそう及び類天疱瘡皮膚、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、ペンフィグス粘液膜類天疱瘡及び天疱瘡エリテマトーデスを含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病又は症候群、免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、視神経脊髄炎、多発性神経炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経障害、血小板減少(例えば心筋梗塞患者によるもの)、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、輸血後紫斑病(PTP)、ヘパリン誘導性血小板減少症、及び自己免疫性又は免疫媒介性血小板減少、例えば慢性及び急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫性疾患、一次甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌性疾患、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)又は亜急性の甲状腺炎、自己免疫甲状腺性疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブ病、自己免疫多腺性症候群、例として多腺性症候群(又は、多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴症候群、例として神経系新生物関連症候群、例えばランバート・イートン筋無力症症候群又はイートン・ランバート症候群、スティッフマン又はスティッフマン症候群、脳脊髄炎、例として、アレルギー性脳脊髄炎又は脳脊髄炎性アレルギー及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連の重症筋無力症、小脳性退化、神経ミオトニ、眼球クローヌス又は眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)及び感覚系神経障害、多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫肝炎、慢性肝炎、類狼瘡肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫慢性活動性肝炎、リンパ系間隙間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン・バレー症候群、ベルガー病(IgAネフロパシ)、特発性IgAネフロパシ、線状IgA皮膚病、原発性胆管萎縮症、肺線維症、自己免疫腸疾患症候群、セリアック病、コエリアック病、脂肪便症(グルテン腸疾患)、抵抗性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、アミロトロフィック側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症(Lou Gehrig's disease))、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例として、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、眼球クローヌス筋硬直徴候(OMS)、多発性軟骨炎、例として、抵抗性又は再発性多発性軟骨炎、肺胞状蛋白症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増多症、一次リンパ球増多症、これにはモノクローナルB細胞リンパ球増多症(例えば良性モノクローナル免疫グロブリン症及び未同定の有意なモノクローナル免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance)、MGUS)が含まれる、末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例として、癲癇、片頭痛、不整脈、筋疾患、難聴、盲目、周期性麻痺及びCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシ、局所性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓病、線維症、多内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄性疾患、例として、自己免疫脱髄性病及び慢性炎症性脱髄性多発性神経炎、糖尿病性ネフロパシ、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、強指症及び毛細管拡張症)、雌雄自己免疫性不妊性、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性中絶、農夫肺、多形性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ球血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び繊維化肺胞炎、間隙肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、蛔虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維形成、広汎性間質性肺線維形成、間質性肺線維形成、間質性肺線維症、特発性の肺線維形成、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア(flariasis)、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、ヘテロ慢性毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性又は慢性)、又はFuchの毛様体炎)、ヘーノホ-シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、エコーウィルス感染、心筋症、アルツハイマー病、パルボウィルス感染、風疹ウィルス感染、種痘後症候群、先天性風疹感染、エプスタインバーウイルス感染、耳下腺炎、エヴァンの症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化ネフロパシ、良性家族性及び乏血-再灌流障害、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化症疾患、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、結節性紅斑、leprosum、特発性顔麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性(sensoneural)聴力障害、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性機能低下、回腸炎領域、白血球減少症、単核細胞増加症感染、横移動脊髄炎、一次特発性の粘液水腫、ネフローゼ、眼炎symphatica、精巣炎肉芽腫症、膵炎、多発性神経根炎急性、膿皮症壊疽、Quervain甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、抗精子抗体による不妊性、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタインバーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(エイズ)、寄生虫病、例えばLesihmania、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球-粘着力欠損、サイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、末梢性神経障害、自己免疫多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨又は蝶形骨副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症-筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム又は好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎疹、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブラットン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット‐アルドリッチ
症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、膠原病と関係する自己免疫疾患、リウマチ、神経病学的疾患、リンパ節炎、虚血性再灌流障害、血圧応答の減退、血管機能不全、antgiectasis、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、脳虚血、及び脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、心筋又は他の組織の再灌流損傷、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、眼性及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈疾患、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症などがある。
【0072】
具体的な実施態様では、ヒト化2H7抗体及びその機能的な断片を含む薬学的組成物を用いて、関節リウマチ及び若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えばループス腎炎、ヴェゲナー病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、例えば再発性寛解MS、乾癬、IgAネフロパシ、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、ANCA関連血管炎、真正糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、視神経脊髄炎(NMO)及び糸球体腎炎を治療する。
【0073】
「治療すること」又は「処置」又は「寛解」は、治療的処置を表し、この目的は標的とした病態又は疾患を治癒しない場合に衰退(減少)させる、又は症状の再発を予防することである。本発明の方法に従って本発明のヒト化CD20結合抗体の治療的有効量を投与した後、患者のCD20陽性B細胞悪性腫瘍又は自己免疫性疾患がうまく「治療」されれば、患者は特定の疾患の一又はそれ以上の兆候及び症状が明らかに及び/又は測定可能な程度に減少又は消失する。例えば、癌では、癌細胞数の有意な減少又は癌細胞の消失;腫瘍の大きさの減少;腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延及び好ましくは停止);ある程度の腫瘍成長の阻害;緩解期の延長、疾患の進行の緩徐化、及び/又は特定の癌が関与する一又はそれ以上の症状のある程度の除去;罹患率及び死亡率の減少、及び生活の質の改善がある。疾患の兆候又は症状の減弱は患者が感じ得るものである。癌のすべての兆候の消失を定義するならば、腫瘍の大きさが好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上減少すると、処置が完全な反応又は部分的な反応を達成し得たことになる。患者が疾患の安定を体験するならば、患者も治療されたと考える。ある基準では、本発明のh2H7抗体により末梢血のB細胞が95%より多く枯渇され、B細胞は基準の25%に戻る。好ましい実施態様では、本発明の抗体による治療は、治療後4か月、好ましくは6か月、より好ましくは1年、さらにより好ましくは2年又は2年以上に癌患者に癌の進行がないほどに有効である。疾患の改善及び治療の成功を評価するこれらのパラメーターは医師などの適切な当業者に知られた常法によって容易に測定可能である。
【0074】
「治療的有効量」という用語は、対象物の疾患又は疾病を「治療」するのに効果的な抗体又は薬剤の量を指す。癌の場合は、治療的有効量の薬剤は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の成長をある程度阻害し;及び/又は癌に関連する一つ或いはそれ以上の症状をある程度和らげることが可能である。「治療する」の定義を参照。自己免疫性疾患の場合、治療的有効量の抗体又は他の薬剤は、疾患の徴候及び症状が軽減する低度に有効である。
【0075】
腫瘍治療の効果又は成功を評価するパラメータは適切な疾患に技量のある医師には知られているであろう。一般に、技量のある医師は特定の疾患の徴候や症状の軽減を求めるであろう。パラメータには、疾患増悪の中央値、寛解期間及び安定期間が含まれうる。
次の文献は、リンパ腫及びCLL、それらの診断、治療、及び治療効果を測定するための標準的な医学的手法について記載している。Canellos GP, Lister, TA, Sklar JL: The Lymphomas. W.B. Saunders Company, Philadelphia, 1998;van Besien K及びCabanillas, F: Clinical Manifestations, Staging and Treatment of Non-Hodgkin's Lymphoma, 70章, pp 1293-1338, Hematology, Basic Principles and Practice, 3版 Hoffman 等(編者) Churchill Livingstone, Philadelphia, 2000;及びRai, K及びPatel, D: Chronic Lymphocytic Leukemia, 72章, pp1350-1362, Hematology, Basic Principles and Practice, 3版 Hoffman 等(編者) Churchill Livingstone, Philadelphia, 2000。
自己免疫又は自己免疫関連疾患の治療の効果又は成功を評価するためのパラメータは適切な疾患に技量のある医師には知られているであろう。一般に、技量のある医師は特定の疾患の徴候や症状の減退を求めるであろう。以下は例として挙げる。
【0076】
一実施態様では、ヒト化2H7抗体を含む薬学的組成物を用いて関節リウマチを治療する。
RAは、二百万を超える米国人が罹っており患者の日常の活動を妨げる消耗性自己免疫疾患である。RAは身体自体の免疫系が不適切に関節組織を攻撃し健康な組織を破壊する慢性的な炎症を引き起こし関節内に損傷を生じる。症状には関節の炎症、腫れ、凝り、及び疼痛が含まれる。また、RAは全身性の疾患であるので、肺、眼及び骨髄のような他の組織に影響を持ちうる。知られている治療法はない。治療には、様々なステロイド系及び非ステロイド系薬剤、免疫抑制剤、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、及び生物製剤が含まれる。しかしながら、多くの患者は治療に対して不十分な応答性のままである。
【0077】
抗体は初期RA(つまり、メトトレキセート(MTX)を受けたことがない)の患者において第一選択治療薬として、また単剤療法として、あるいは例えばMTX又はシクロホスファミドとの併用で又はその後に、使用することができる。あるいは、抗体は、DMARD及び/又はMTXに不応性の患者に対する二次療法として、また単剤療法あるいは例えばMTXとの併用で、使用することができる。ヒト化CD20結合抗体は、関節損傷の予防及び管理、構造損傷の遅延化、RAの炎症に伴う疼痛の軽減、及び中程度から重篤なRAの症状及び徴候の低減一般に有用である。RA患者は、RAの治療に使用される他の薬剤(以下の併用療法を参照)での治療に先立って、その治療後に、又はその治療と併せて、ヒト化CD20結合抗体で治療することができる。一実施態様では、疾患修飾性抗リウマチ薬での治療が過去に失敗したか、及び/又はメトトレキセート単独に対しては不十分な応答であった患者が、本発明のヒト化CD20結合抗体で治療される。この治療の一実施態様では、患者は、ヒト化CD20結合抗体を単独で投与(1日目と15日目に1gの静脈内注入);CD20結合抗体+シクロホスファミド投与(3日目と17日目に750mgの静脈内注入);又はCD20結合抗体+メトトレキセート投与を受ける17日の治療計画で治療される。
【0078】
RAの間、身体が腫瘍壊死因子α(TNFα)を生産するので、TNFαインヒビターがその疾患の治療のために使われている。しかしながら、TNFαインヒビター、例としてエタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、そして、アダリムマブ(HUMIRATM)は、ネガティブな副作用、例えば感染、心不全及び髄鞘脱落を生じうる。したがって、一実施態様では、ヒト化CD20結合抗体又はその生物学上機能的な断片は、TNFαインヒビター薬剤によって経験されるこれらのネガティブな副作用のリスクを減らすべきRA患者の治療に、又は毒性(例えば心臓毒性)を経験する傾向があると考慮される患者を治療するために、例えば第一線の治療として有用である。また、ヒト化CD20結合抗体又はその生物学上機能的な断片は、TNFα-インヒビターで治療されたが、応答しない、TNFα-インヒビターに不十分な応答を有する(TNF-IR患者)か、又は数回の応答の後で疾患の再発を有するRA罹患被検体、又はTNFα-インヒビターによる治療に応答しそうにない被検体であることが決定された被検体の治療方法に有用である。一実施態様では、TNF-IRは、TNFαインヒビターによる治療の前に、100mg以下などの低用量で治療される。
【0079】
RAの治療効果を評価する一方法は、American College of Rheumatology (ACR)基準に基づくものであり、これはとりわけ圧痛及び腫大した関節の改善の割合を測定するものである。RA患者は、無抗体治療(例えば、治療前のベースライン)又はプラセボ治療と比較して例えばACR20(20パーセントの改善)でスコア付けをすることができる。抗体治療の効果を評価する他の方法は、X線画像、例えば骨の侵食及び関節腔の狭小化等の構造的傷害のスコア付けに用いられるSharpX線スコアを含む。また、患者は、治療期間中又は治療後の時間期間においてHealth Assessment Questionnaire [HAQ]スコア、AIMSスコア、SF-36に基づいて能力障害の予防又は改善について評価をすることができる。ACR20基準は、圧痛(痛み)関節数と腫大関節数の両方に20%の改善があり、かつ5つの追加測定のうち少なくとも3つに20%の改善があることを含みうる。
1.視覚的アナログ尺度(VAS)による患者の疼痛評価
2.疾患活動性の患者の全体評価(VAS)
3.疾患活動性の医師の全体評価(VAS)
4.Health Assessment Questionnaireにより測定した能力障害の患者の自己評価、及び
5.急性反応物質、CRP又はESR
ACR50及び70も同様に定義される。好ましくは少なくともACR20のスコア、好ましくは少なくともACR30、より好ましくは少なくともACR50、更により好ましくは少なくともACR70、最も好ましくは少なくともACR75より高いスコアに達する用量の本発明のCD20結合抗体を患者に投与する。
【0080】
乾癬性関節炎は独特で明瞭なX線撮影像的特徴を有する。乾癬性関節炎の場合、関節侵食及び関節腔狭小化も同様にシャープ(Sharp)スコアにより評価しうる。本発明のヒト化CD20結合抗体は関節損傷の予防並びに疾患の徴候及び疾病の症状の減弱に用いることができる。
本発明の更に他の態様は、本発明の治療的有効量のヒト化CD20結合抗体を含む薬学的組成物が、SLE又はループス腎炎に罹患している患者に投与されることによるSLE又はループス腎炎の治療方法である。SLEDAIスコアは疾患活動性の数値的定量化を付与する。SLEDAIは疾患活動性に相関することが知られている24の臨床及び治験パラメータの荷重指数であり、0−103の数的範囲である。Bryan Gescuk及びJohn Davis, “Novel therapeutic agent for systemic lupus erythematosus” Current Opinion in Rheumatology 2002, 14:515-521を参照のこと。他のスコア法にはBILAGスコア法がある。二本鎖DNAに対する抗体は腎性発赤及び他のループスの症状を引き起こすと考えられている。抗体治療を受けている患者を、血清クレアチニン、尿タンパク、又は尿中の血液の有意で再現可能な増加として定義される腎性発赤までの時間についてモニターすることができる。あるいは又は加えて、抗核抗体及び二本鎖DNAに対する抗体のレベルについて患者をモニターできる。SLEの治療は高用量のコルチコステロイド及び/又はシクロホスファミド(HDCC)を含む。本明細書では、成功したループス治療は、紅斑が減少する、すなわち次の紅斑までの時間及び/又は重症度が軽減するであろう。
【0081】
脊椎関節症は一群の関節疾患であり、硬直性脊椎炎、乾癬性関節炎、クローン病を含む。治療成果は、確認された患者及び医師の全体的評価測定ツールによって決定しうる。
脈管炎に関しては、全身性血管炎の患者のおよそ75%が抗好中球細胞質抗体を持ち、小/中サイズ血管を冒す3種の症状の一つにクラスター化される:ヴェーゲナー肉芽腫症(WG)、顕微鏡的多発性血管炎(MPA)及びチャーグ・ストラウス症候群(CSS)で、集合的にANCA関連脈管炎(AAV)として知られているもの。
乾癬の治療効果は、医師の包括的評価(PGA)変化、及び乾癬領域及び重症度指数(PASI)スコア、乾癬症状評価(PSA)を含む臨床兆候及び疾患の症状の変化をモニターし、ベースライン症状と比較することによって評価する。特定の時点で経験した掻痒の程度を表すために用いられる視覚的アナログ尺度で処置を通して定期的に、hu2H7.511などの本発明のヒト化CD20結合抗体で治療された乾癬患者を測定することができる。
患者はその治療抗体の最初の注入で注入反応又は注入関連症状を経験する場合がある。これらの症状の重症度はまちまちで、一般に医学的介入で改善することが可能である。これらの症状には、限定されるものではないが、インフルエンザに似た発熱、悪寒/寒気、吐き気、掻痒、頭痛、気管支痙攣、血管性浮腫が含まれる。本発明の疾患治療法が注入反応を最小にすることが望ましい。そのような副作用を軽減又は最小にするために、患者には、抗体の初期順化又は寛容化用量の後に治療的に有効な用量が投与されうる。順化用量は治療的に有効な用量よりも少なく、患者をより多い用量に耐えるように順化させる。
【0082】
用量
治療される徴候及び当分野の技量のある医師が理解する投薬に関連する因子に応じて、本発明の抗体は、毒素及び副作用を最小化する一方で、その徴候の治療に効果のある用量で投与される。所望の用量は、疾患及び疾患の重症度、疾患の段階、望ましいB細胞調節のレベル、及び当分野の技量のある医師に知られる他の因子に依存しうる。
【0083】
自己免疫疾患の治療の場合、個々の患者の疾患及び/又は症状の重症度に応じて、ヒト化2H7抗体の用量を調節することによってB細胞の枯渇の程度を調節することが望ましい。B細胞の枯渇は完全でなければならないものではない。あるいは、全B細胞の枯渇は初期治療で望まれるかもしれないが、続く治療では部分的な枯渇のみを達成するように用量を調節してもよい。一実施態様では、B細胞枯渇は少なくとも20%であり、すなわち治療前のベースライン値と比較して80%以下のCD20陽性B細胞が残っている。他の実施態様では、B細胞枯渇は25%、30%、40%、50%、60%、70%又はそれ以上である。好ましくは、B細胞枯渇は、疾患の進行を停止させるのに、より好ましくは治療の元で特定の疾患の兆候や症状を緩解するのに、更により好ましくは疾患を治癒するのに、十分である。
本発明の抗体は、様々な投薬頻度、例えば毎週、隔週、毎月などで投与されてよい。例として、投薬頻度は、6か月ごとに1用量か又は6か月ごとに2週間空けて2用量である。注入される抗体溶液の体積は、1注入につきおよそ0.1〜およそ3ml、より好ましくは1注入につきおよそ0.5ml〜およそ1.5mlに変動してよい。1注入において投与されるヒト化2H7抗体の総量は、1注入につき最高およそ150mgであってよい。所望の用量を達成するために複数回の注入が用いられてよい。
【0084】
一又は複数の現行の治療法について十分に効果を示さない、耐性に乏しい又は禁忌を示す、自己免疫性疾患又はB細胞悪性腫瘍を有する患者は、本発明の何れかの投薬計画を用いて治療されうる。例えば、本発明は、腫瘍壊死因子(TNF)インヒビター治療に、又は、疾患を修飾している抗リウマチ剤(DMARD)治療に不十分な応答を有したRA患者のための本治療方法を意図する。
「慢性」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するようにするために、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤の投与を意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処理である。
【0085】
併用療法
上述のB細胞腫瘍の治療では、患者を、一又は複数の治療剤、例えば多剤併用療法の化学療法剤での治療と併せて本発明のヒト化2H7抗体で治療することができる。ヒト化2H7抗体は、化学療法剤と同時に、連続して、又は交互に、あるいは他の治療での非反応性後に、投与することができる。リンパ腫の治療に対する標準的な化学療法には、シクロホスファミド、シタラビン、メルファラン及びミトキサントロン+メルファランが含まれうる。CHOPは非ホジキンリンパ腫の治療に対する最も一般的な化学療法の一つである。次のものはCHOP療法で用いられる薬剤である:シクロホスファミド(商品名シトキサン、ネオザール(neosar));アドリアマイシン(ドキソルビシン/ヒドロキシドキソルビシン);ビンクリスチン(オンコビン);及びプレドニゾロン(しばしばデルタゾン又はオラゾン(Orasone)と呼ばれる)。特定の実施態様では、CD20結合抗体は、次の化学療法剤:ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾロンの一又は複数と併用して、それを必要とする患者に投与される。特定の実施態様では、リンパ腫(例えば非ホジキンリンパ腫)の患者はCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾロン)化学療法と併用して本発明のヒト化2H7抗体で治療される。他の実施態様では、癌患者がCVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン及びプレドニゾロン)化学療法と併用して本発明のヒト化2H7 CD20結合抗体で治療されうる。具体的な実施態様では、CD20陽性NHLの患者はCVPと組み合わせてヒト化2H7.v511又はv114が、例えば3週ごとに8サイクル投与される。CLLの治療の具体的な実施態様では、2H7.v511抗体が、フルダラビン及びシトキサンの一又は双方での化学療法と併用して投与される。
【0086】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシトキサン(CYTOXAN)(登録商標)シクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;TLK286(TELCYTATM);アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン(bullatacinone));δ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、マリノール(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン類;ベツリン酸;カンプトセシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトセシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトセシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン(podophyllinic)酸;テニポシド;クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログKW-2189及びCB1-TM1;エレウテロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア類(nitrosureas);クロドロネートなどのビスホスホネート類;抗生物質、例えばエンジイン系抗生物質(例えばカリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγII及びカリケアマイシンωII(例えば、Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)参照)及びアントラサイクリン類、例えばアナマイシン(annamycin)、AD32、アルカルビシン、ダウノルビシン、デキストラゾキサン(dextrazoxane)、DX-52-1、エピルビシン、GPX-100、イダルビシン、KRN5500、メノガリル、ダイネミシンAを含むダイネミシン、エスペラマイシン、ネオカルチノスタチン発色団及び関連色素蛋白エンジイン抗生物質発光団、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン類(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エソルビシン(esorubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、及びゾルビシン(zorubicin);デノプテリン(denopterin)、プテロプテリン(pteropterin)、及びトリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸アナログ;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニンのようなプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、及びフロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジンアナログ;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、及びトリロスタンのような抗副腎剤;ホリニン酸(ロイコボリン)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;抗葉酸抗腫瘍剤、例えばALIMTA(登録商標)、LY231514ペメトレキセド、ジヒドロ葉酸レダクターゼインヒビター、例えばメトトレキセート、代謝拮抗物質、例えば5-フルオロウラシル(5-FU)及びそのプロドラッグ、例えばUFT、S-1及びカペシタビン、及びチミジル酸シンターゼインヒビター及びグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼインヒビター、例えばラルチトレキセド(raltitrexed)(TOMUDEXRM、TDX);ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼのインヒビター、例えばエニルウラシル(eniluracil);アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン類(ansamitocins)のようなメイタンシノイド類(maytansinoids);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantron);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリジンA(roridin A)及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類及びタキサン類、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETMパクリタキセルの無クレモホア(Cremophor)アルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)、及びタキソテール(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine)(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;プラチナ;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナアナログ又はプラチナ系アナログ;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));ビンカアルカロイド;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロネート(ibandronate);トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド類;上述したものの何れかの製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体;並びに上記のものの二以上の組合せ、例えばCHOPで、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の省略形、及びFOLFOXで、5-FU及びロイコボリンと併用したオキサリプラチン(ELOXATINTM)での治療方法の省略形が含まれる。
【0087】
この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTON(登録商標)トレミフェンを含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM);例えば、4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストール酢酸、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン(exemestane)、フォルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなどの、副腎のエストロゲン産物を制御する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼインヒビター;及び抗アンドロゲン類、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Raf、H-Ras、及び上皮増殖因子レセプター(EGF-R);ワクチン、例えば遺伝子療法ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター;ABARELIX(登録商標)rmRH;及び上記のものの製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体が含まれる。
【0088】
加えて、hu2H7抗体及びその機能的な断片は、抗腫瘍血管新生剤、例えば血管内皮性増殖因子(VEGF)アンタゴニストと組み合わせてCD20発現B細胞腫瘍(例えば、NHL)を治療するために用いることができる。「抗血管形成剤」又は「血管形成インヒビター」は、小分子量物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体、又はそのコンジュゲートないしその融合タンパク質であって、血管新生、脈管形成又は望ましくない血管透過を直接又は間接的に阻害するものを指す。例えば、抗血管形成剤は、上記に定義した血管形成剤に対する抗体ないし他のアンタゴニスト、例えばVEGFに対する抗体、VEGFレセプターに対する抗体、VEGFレセプターシグナル伝達をブロックする小分子(例えばPTK787/ZK2284、SU6668)である。「VEGFアンタゴニスト」は、一又は複数のVEGFレセプターへのVEGFの結合を含む、VEGF活性の中和、ブロック、阻害、抑制、低減又は妨げることができる分子を指す。一実施態様では、このようなB細胞腫瘍に罹患している患者はアバスチン(登録商標)(ベバシズマブ;Genentech)と組み合わせた2H7.v511又は2H7.v114で治療される。抗VEGF抗体である「ベバシズマブ(BV)」(「rhuMAb VEGF」又は「アバスチン(登録商標)」としても知られる)は、Presta 等 Cancer Res. 57: 4593-4599 (1997)に従って産生された組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。
【0089】
hu2H7抗体及びその機能的な断片はまた、TRAILとも称されるApo-2リガンド(Apo2L)などの、サイトカインのTNFファミリーのメンバーと組み合わせたCD20発現B細胞腫瘍の治療方法に有用である。完全長天然配列のヒトApo-2のリガンドは、281アミノ酸長の、サイトカインの腫瘍壊死因子ファミリーのタイプII膜貫通型タンパク質である。Apo-2リガンドの可溶性型、例えば細胞外ドメイン(ECD)ないしはその一部を含んでなるものは、哺乳類の癌細胞のアポトーシスの活性を含む様々な活性を有することが明らかにされている。Apo2L/TRAIL(国際公開公報97/01633及び国際公開公報97/25428において開示される)は、ECDの断片である可溶性ヒトタンパク質であり、完全長Apo-2Lタンパク質のアミノ酸114−281を含んでなる。
上述の自己免疫疾患又は自己免疫関連症状の治療では、患者を、例えば多剤治療法においては、免疫抑制剤のような第二の治療剤と併用して一又は複数のhu2H7抗体で治療することができる。hu2H7抗体は、免疫抑制剤と同時に、連続して、又は交互に、あるいは他の治療での非反応性時に、投与することができる。免疫抑制剤は、当該分野で決められたものと同じか又は少ない用量で投与することができる。好適な補助免疫抑制剤は、治療される疾患のタイプ並びに患者の病歴を含む多くの因子に依存する。
【0090】
添加剤療法についてここで用いられる「免疫抑制剤」という用語は、患者の免疫系を抑制し又はマスクするように作用する物質を意味する。そのような薬剤には、サイトカイン産生を抑制し、自己抗原発現をダウンレギュレート又は抑制する、あるいはMHC抗原をマスクする物質が含まれる。そのような薬剤の例には、糖質コルチコステロイド類、例えばプレドニゾン、メチルプレドニゾン及びデキサメタゾン;2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン類(米国特許第4665077号参照);アザチオプリン(又はアザチオプリンに対して副作用があるならばシクロホスファミド);ブロモクリプチン;グルタルアルデヒド(米国特許第4120649号に記載されているように、MHC抗原をマスクする);MHC抗原及びMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;抗インターフェロン-γ、-β又は-α抗体を含むサイトカイン又はサイトカインレセプターアンタゴニスト;抗腫瘍壊死因子-α抗体;抗腫瘍壊死因子-β抗体;抗インターロイキン-2抗体及び抗IL-2レセプター抗体;抗L3T4抗体;異種抗リンパ球グロブリン;Pan-T抗体、好ましくは抗CD3又は抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを持つ可溶型ペプチド(1990年7月26日に公開の国際公開第90/08187号);ストレプトキナーゼ;TGF-β;ストレプトドルナーゼ;宿主からのRNA又はDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン(deoxyspergualin);ラパマイシイン(rapamycin);T細胞レセプター(米国特許第5114721号);T細胞レセプター断片(Offner等, Science, 251:430-432 (1991);国際公開第90/11294号;及び国際公開第91/01133号);及びT10B9等のT細胞レセプター抗体(欧州特許出願公開第340109号)を含む。
【0091】
関節リウマチの治療では、患者を、次の薬剤の任意の一又は複数と併用して本発明のCD20結合抗体で治療することができる:DMARDS(疾患修飾性抗リウマチ薬(例えばメトトレキセート))、NSAI又はNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)、免疫抑制剤(例えばアザチオプリン;ミコフェノール酸モフェチル(CellCept(登録商標); Roche))、鎮痛薬、糖質コルチコステロイド、シクロホスファミド、HUMRIATM(アダリムマブ;Abbott Laboratories)、ARAVA(登録商標)(レフルノミド)、REMICADE(登録商標)(インフリキシマブ;Centocor Inc., Malvern, Pa)、ENBREL(エタネルセプト;Immunex, WA)、ACTEMRA(トシリツマブ;Roche, Switzerland)、COX-2インヒビター。RAに一般的に使用されるDMARDは、ヒドロキシクロロキン、サルファサラジン、メトトレキセート、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アザチオプリン、D-ペニシルアミン、ゴールド(経口)、ゴールド(筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌性プロテインA免疫吸着である。
【0092】
アダリムマブは、TNFαと結合するヒトモノクローナル抗体である。インフリキシマブは、TNFαと結合するキメラマウス-ヒトのモノクローナル抗体である。これは、RA及びクローン病を治療するために処方される免疫抑制剤である。インフリキシマブは、結核並びにMSとなる髄鞘脱落を含む感染及び心不全などの致命的な副作用と関係している。アクテムラ(トシリズマブ)は、ヒト化抗ヒトインターロイキン-6(IL-6)レセプターである。
エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に結合されるヒトの75kD(p75)腫瘍壊死因子レセプター(TNFR)の細胞外リガンド結合部分からなる「イムノアドヘシン」融合タンパク質である。エタネルセプト(ENBREL(登録商標))は、活動中のRAの治療のために米国で承認された注射剤である。エタネルセプトはTNFαと結合して、関節及び血液からほとんどのTNFαを取り除くように働くことによって、TNFαが関節リウマチの炎症及び他の症状を促進するのを防止する。この薬剤は、深刻な感染及び敗血症を含むネガティブな副作用である、多発性硬化症(MS)などの神経系疾患と関係している。例として、www.remicade-infliximab.com/pages/enbrel_embrel.htmlを参照のこと。
【0093】
RAの一般的な治療については、例えば“Guidelines for the management of rheumatoid arthritis” Arthritis & Rheumatism 46(2): 328-346 (February, 2002)を参照。特定の実施態様では、RAの患者はメトトレキセート(MTX)と併用して本発明のhu2H7 CD20抗体で治療される。MTXの投薬量の例は、約7.5−25mg/kg/週である。MTXは経口及び皮下的に投与することができる。
一例では、CD20抗体の注入の30分前に、メチルプレドニゾロン100mg静注と、第2〜7日目にプレドニゾン60mg経口、第8〜14日目に30mg経口、第16日までに基礎用量に戻すことからなる副腎皮質ステロイド投薬計画と共に、併用MTX(一経口投与(p.o.)又は一非経口投与につき10〜25mg/週)も患者に投与される。患者はまた、単回用量又は分割した一日量の何れかで、葉酸塩(5mg/週)が投与されうる。患者は、場合によって、治療期間の全体にわたって任意のバックグラウンド量の副腎皮質ステロイド(10mg/日 プレドニゾン又は等量)が投与され続ける。
【0094】
強直性脊椎炎、乾癬性関節炎及びクローン病の治療では、患者を、例えばレミケード(Remicade)(登録商標)(インフリキシマブ;Centocor Inc., Malvern, Pa.)、エンブレル(ENBREL)(エタネルセプト;Immunex, WA)と併用して本発明のCD20結合抗体で治療される。
SLEの治療は、高用量コルチコステロイド及び/又はシクロホスファミド(HDCC)とのCD20抗体の併用を含む。SLE、AAV及びNMOの患者は、次のコルチコステロイドの任意のものと併用して本発明のhu2H7抗体で治療することができる:コルチコステロイド、NSAID、鎮痛薬、COX-2インヒビター、糖質コルチコステロイド、一般的なDMARD(例えばメトトレキセート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド)、生物学的DMARD、例えば抗Blys(例えばベリムマブ)、抗IL6R、例えばトシリツマブ;CTLA4-Ig(アバタセプト)、(抗CD22、例えばエプラツズマブ)、免疫抑制剤(例えばアザチオプリン;ミコフェノール酸モフェチル(CellCept(登録商標); Roche))、及び細胞毒性剤(シクロホスファミド)。
【0095】
乾癬の治療では、患者には、局所治療剤、例えば局所ステロイド類、アントラリン、カルシポトリエン、クロベタゾール、及びタザロテンと併用して、あるいはメトトレキセート、レチノイド類、シクロスポリン、PUVA及びUVB療法と共に、ヒト化2H7抗体を投与することができる。一実施態様では、乾癬患者はシクロスポリンに連続して又はそれと同時にヒト化2H7抗体で治療される。
毒性を最小にするために、伝統的な全身療法剤は、本投薬量のCD20結合抗体組成物と共により低用量の併用計画で、又は循環、連続、組合せ、又は間欠的な治療計画で投与することができる。
【0096】
製造品及びキット
本発明の他の実施態様は、自己免疫性疾患及び関連症状及び非ホジキンリンパ腫などのCD20陽性癌の治療に有用な本発明の製剤を具備する製造品である。この製造品は容器と容器に付与又は添付されるラベル又はパッケージ挿入物を具備してなる。好適な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの多様な材料から形成されてよい。製剤又は組成物中の少なくとも一つの活性剤は本発明のhu2H7であり、抗体は投薬の下で上記の用量を運搬する量で、シリンジなどの容器に存在する。hu2H7の濃度は、10mg/mlから200mg/mlであり、30〜150mg/ml又は100〜150mg/mlである。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が特定の症状の治療のために使用されることを示す。ラベル又はパッケージ挿入物は、患者に抗体組成物を投与する際の注意書きをさらに含む。
パッケージ挿入物は、慣習的に治療用製品の市販パッケージに含まれる指示書を指し、効能、使用、用量、投与、禁忌及び/又はこのような治療用製品の使用に関する警告についての情報を含むものである。一実施態様では、パッケージ挿入物は、組成物が非ホジキンリンパ腫を治療するために用いられることを示す。
【0097】
製造品はさらに、製薬的に許容可能なバッファー、例えば注射用水(WFI)、注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝塩水、リンガー液、塩化ナトリウム(0.9%)及びデキストロース溶液を含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【実施例】
【0098】
実験的な実施例
実施例1
rhuMab 2H7の初期皮下製剤
rhuMAb 2H7について高濃度皮下製剤(150mg/mL)を開発した。この製剤は、150mg/mlの2H7、30mM 酢酸ナトリウム;7% トレハロース二水和物;0.03% ポリソルベート20、pH5.3を含む。この製剤は、推奨される条件下での最終的なバイアル貯蔵において長期間安定である。カニクイザルに皮下注射によってこの材料を投与すると、注射部位での重度の炎症と低い生物学的利用能(およそ30%)が生じる。これらの動物において皮下層での軽度から中度のマクロファージ浸潤物が観察された。刺激の原因は、異物材料(すなわち2H7試験材料)によるものであると考えられた。注射部位で生成物が触れたものを刺激した条件下でこの製剤を試験して、タンパク質が生理的条件下で有意に凝集したことを確認し(図1)、カニクイザルで観察された炎症結果を裏付けた。観察された沈殿はpH推移後の塩析効果と一致しうる。
【0099】
実施例2
皮下注射の生理的条件下での高分子凝集を試験するためのインビトロ透析方法
インビトロ透析方法を開発して、皮下注射の間に遭遇する生理的条件下での2H7凝集を低減する異なる賦形剤の能力を試験した。このモデルのために変更PBS溶液(「放出培地」)を開発して、間質液を模擬実験した。このインビトロシステムを用いて、2H7凝集を遅延させる際の糖質、ポリマー、界面活性剤及びアミノ酸の効果を評価した。次いで、インビトロでの生成物放出を示した候補製剤をインビボで試験し(ラット皮下モデル;実施例3を参照)、この改善がインビボでの炎症減少に一致したか否かを決定した。
インビトロ透析モデルのセットアップを図2に示す。250mlのガラス広口瓶に37℃の220mlの放出培地(167mM ナトリウム、140mM 塩化物、17mM リン酸塩、4mM カリウム)を満たした。6cm長の透析管(Spectra Por 1 Million分子量カットオフ(MWCO) PVDF透析管12mm直径)を純水に浸した。透析管の一端を固定し、管をおよそ1mlの試験試料(試験賦形剤を有する2H7)で満たした。過剰な空気を取り除き、管の他端を広口瓶のシール部分に留めた。満たしたバッグを放出培地を含む250mlのガラス広口瓶に加え、広口瓶を一定に撹拌しながら37℃に置いた。500μl試料の放出培地を、2.5、6、12、24、33及び48時間後に取り出した。試料の濁度及び放出培地に存在するタンパク質の量を、UV光度測定スキャンにて測定した。さらに、放出培地及び透析管内部の溶液を、沈殿について視覚的に調べた。
【0100】
試験賦形剤は、以下の場合に、インビトロ凝集試験において許容可能であるとみなした。
・試験賦形剤を有する2H7の累積的な放出が、ネガティブコントロールより大きかった(元の2H7製剤−150mg/mlの2H7、30mM 酢酸ナトリウム;7% トレハロース二水和物;0.03% ポリソルベート20、pH5.3)。これは2H7特徴の改善を示す。
・ポジティブコントロール(RaptivaTMとしても知られるrhuMAb抗CD11a、皮下に投与されるヒト化抗CD11a抗体)が沈殿を示さず、ネガティブコントロールより大きな放出を示した。
・2H7の沈殿が減少したか又は取り除かれた。
・放出培地の濁度が低減した。
次いで、許容判定基準に合う候補を、インビボラットモデルにおいて試験し、インビトロでの凝集の遅延がインビボでの炎症の減少と一致したか否かを決定した。
【0101】
インビトロ結果:
インビトロ透析方法における試験コントロールの代表的な放出プロファイルを図3に示す。このモデルのコントロールを選択し、生理的条件下で、容易に凝集しなかったタンパク質(rhuMAb CD11a)の放出と、一般的に凝集したタンパク質(原物の2H7)の放出をまとめた。2本の放出曲線間の領域は、コントロールと比較したときの、凝集を遅延させる試験賦形剤の相対的な能力を測定する。
元の2H7製剤の累積的な放出は低い(30%未満)。2H7が透析バッグから放出培地へ放出されたので、放出培地の濁度の増加が観察された。これは、材料がその環境において凝集していたことを示す。24時間以内に透析バッグ内部の広範囲な凝結が観察され、試験開始時の150mg/mLから48時間の試験の終わりには4〜5mg/mLへと2H7濃度の劇的な減少と一致した。これらの所見のすべては、2H7が生理的条件下で容易に凝集することを示す。この所見は、2H7の元の製剤が37℃のガラスバイアルに貯蔵されている場合には観察されない。
これに反して、rhuMAb CD11aは透析バッグから放出培地へ素早く放出される。試験中ずっと放出培地は透明なままであり、透析バッグ内で凝結は観察されなかった。これは、rhuMAb CD11aが生理的条件下で凝集せず、このモデルのコントロールとして関連することを示す。表3に、放出したタンパク質の割合、放出培地濁度及び凝結の存在をまとめる。
【表3】

【0102】
実施例3
高分子凝集を試験するためのインビボラット皮下モデル
ラット皮下モデルは、皮下炎症の特徴の類似性に基づく関連するモデルである。元の2H7製剤を摂取しているラットの炎症反応は、カニクイザルにおいて観察される炎症反応と一致していた(実施例1を参照)。ヒト免疫グロブリンの免疫組織化学染色は2H7を注入したラット皮膚の切片において陽性であった。これは、炎症の領域での抗体の存在又は持続を示し、被験物質の沈殿により注射部位に炎症が生じたという理論を裏付けるものである。
インビボラットスクリーニングアッセイは以下の通りに行った。
試験又はコントロール製剤(0.25ml)のそれぞれを皮下投与した。投薬の72時間後に動物を検視した。注射部位の皮膚切片を横断し、ホルマリンに固定し、炎症を下げる試験賦形剤の効果を組織学的に測定した。以下のように、炎症スコアを組織切片に割り当てた。
+/-:極小/わずかな炎症
1:軽度の炎症
2:中程度
3:重度
肉芽腫の存在は病理学にて測定した。注射部位からの組織を切片化し、染色し、肉芽腫の有無について光学顕微鏡下で観察した。
インビボラットモデルの許容判定基準は、(1) rhuMAb CD11a(ネガティブコントロール)に相当する炎症、及び(2) 注射部位での肉芽腫の欠如とした。
【0103】
実施例4
2H7の凝集を低減させる界面活性剤及び他の添加物の能力
界面活性剤は、高分子の凝集を遅延させるために一般に使用される。2H7の凝集及び凝結を低減させる界面活性剤の能力を、実施例2に記載したインビトロモデルを使用して評価した。試験した界面活性剤は、親水−親油性バランス(HLB)の範囲をカバーする。ポリソルベート20、ポロキサマー及びスパン20及び80の界面活性剤の添加は、元の2H7製剤と比較して2H7放出をさほど改善しなかった。ポリソルベート80によってインビトロでの2H7放出の適度な改善が観察されたが、他の試験したいずれの界面活性剤によっても2H7放出の有意な改善は観察されなかった。しかしながら、透析バッグ内の凝結はすべての症例において観察された(表4)。ゆえに、以前からタンパク質凝集を低減するために用いられているが、界面活性剤は、インビトロモデルにおいて2H7の凝集を遅延させることに有効でないことが示された。
【表4】

【0104】
凝集及び凝結の遅延に対する、デキストラン(多糖類)、PEG4000(高分子)、アルギニン(アミノ酸)及びγシクロデキストリンの添加の影響も評価し、結果を表5から7にまとめる。これらいずれの添加物についても有意な改善は観察されなかった。
【表5】

【表6】

【表7】

【0105】
実施例5
2H7の凝集に対するシクロデキストリンの効果
インビトロモデルにおける2H7の凝集に対するシクロデキストリンの効果を試験した。使用する材料は以下の通りとした。
・スルホ-ブチルエーテルβシクロデキストリン、Sodium salt, Cydex, Inc.、Captisol研究グレード
・ヒドロキシプロピル-γシクロデキストリン、Cyclodextrin Technologies Development, Inc.、Trappsol薬剤グレード
・ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン、Cyclodextrin Technologies Development, Inc.、Trappsol薬剤グレード
初めの試験は、2%〜9%のスルホ-ブチルエーテル(SBE)及び5%〜20%のヒドロキシプロピルγ(HP-ガンマ)シクロデキストリンにて実行した。SBE(図4)及びHP−γ(図5)シクロデキストリンの添加は、元の2H7製剤コントロール(図3、表3)と比較して、100mg/mLの2H7のインビトロ放出を有意に向上させた。SBE製剤を有する透析バッグにおいてほとんど凝結は観察されなかったが、タンパク質が培地に放出されるにつれて、バッグの外側の溶液は徐々に乳白色になった。HP−γ製剤は凝集の低減により有効であった。透析バッグ内部の凝結の量は僅かであり、バッグの外側の溶液は試験の間ずっと透明なままであった。概して、シクロデキストリンの添加は、生理的条件下での2H7の凝集を阻害するのを促した。
これらの有望な結果に基づいて、ヒドロキシプロピルβ(HP-ベータ)シクロデキストリンをインビトロ透析モデルにおいて評価し、2H7の凝集減少に対する異なる置換基の影響を決定した。5%〜20%のHP-βシクロデキストリンの濃度範囲を評価した(図6)。放出されるタンパク質の割合は、元の2H7製剤と比較して向上したが、rhuMAb CD11aコントロールの割合より小さかった。タンパク質が培地に放出されるにつれて放出培地は乳白色になり、37℃での24時間のインキュベーションの後に透析バッグ内に凝結が現れた。HP-βシクロデキストリンの添加は2H7の凝集の低減に有効であったが、HP−γシクロデキストリンほど定性的な有効性は見られなかった(図5)。
HP−γシクロデキストリンとコハク酸アルギニンの組合せを評価し、2H7の凝集低減において相加効果があったか否かを決定した。100mg/mLの2H7を用いて、HP−γシクロデキストリンに対するコハク酸アルギニンの4つの異なる比率を試験した(図7)。元の2H7製剤コントロールと比較して、すべての実験群において2H7放出の改善が観察された。100mM コハク酸アルギニン/10% HP−γシクロデキストリン及び50mM コハク酸アルギニン/15% HP−γシクロデキストリン製剤は、元の2H7製剤コントロールと比較して、培地への放出後の濁度が最も低く、透析バッグ内の凝結が少なかった。
【0106】
実施例6
インビボラット皮下モデルにおける炎症に対するシクロデキストリンの効果
次いで、インビトロ試験において有意な改善を示したHP−γ及びHP−βシクロデキストリンを含有する抗体製剤を、インビボラット皮下モデルにおいて試験した。この実験の目的は、インビトロ生理的条件下で2H7の凝集を取り除くことが注射部位の炎症の低減につながるか否かを決定することであった。動物モデルの成功判定基準は、(1) rhuMAb CD11a試験コントロールに相当する試験製剤での低い炎症と、(2) 注射部位の肉芽腫の欠如とした。
HP−βシクロデキストリン製剤の組織病理学的結果の概要を表8に示す。ネガティブコントロールであるrhuMAb CD11aは、ごくわずかな皮下炎症を誘導した。元の150mg/mLの2H7製剤をポジティブコントロールとして用い、注射部位で中程度から重度(2〜3+)の炎症を引き起こした。HP−βシクロデキストリンの添加は、注射部位での炎症を有意に低減した。100mg/mLの2H7を有する15又は30%のHP-βシクロデキストリンの最適濃度により、注射部位での炎症が軽度(1+)にまで有意に低減した。シクロデキストリンの濃度を増やすと、より高い2H7タンパク質濃度にて観察される増加した炎症が低減した。より濃度の高い2H7(150mg/mL)に30%のHP−βシクロデキストリンを添加すると、観察される炎症が中程度〜重度(2−3+)から軽度の炎症(1+)へと有意に低減した。より低い濃度のHP-βシクロデキストリン(5%及び15%)は、同じ効果を有していなかった。
【表8】

【0107】
HP−γシクロデキストリン製剤の組織病理結果を表9にまとめる。10%のHP−γシクロデキストリンを2H7に添加した場合、中程度〜重度(2−3+)から軽度〜中程度(<2+)への炎症の低減が観察された。HP−γベヒクルでは有意な炎症応答は観察されなかった。
【表9】

【0108】
結論:
まとめると、スルホ-ブチルエーテル(SBE)、ヒドロキシプロピルβ(HP−β)及びヒドロキシプロピルγ(HP−γ)シクロデキストリンの添加は、2H7の凝集を有意に低減し、生理的条件下での2H7の凝結を低減するのに有効であった。シクロデキストリンと2H7による結果は、シクロデキストリンの過去の使用を考えると予想外であり、ゆえに、手法の新規性及び進歩性を示す。また、従来タンパク質凝集を低減するために使用された界面活性剤も我々のインビトロモデルにおいて評価したが、いずれも2H7の凝集を遅延させることに有効ではなかった。ポリマー(例えばデキストラン)及びアミノ酸(例えばアルギニン)も試験したが、タンパク質凝集を有意に低減しなかった。
最終的に、この環境において2H7の凝集を低減することにより、2H7を注射した動物の注射部位での炎症が低減された。HP−β又はHP−γシクロデキストリンを含んだ2H7製剤では、この炎症は重度(元の2H7)から軽度〜中程度にまで低減した。これらの条件下で凝集するタンパク質の能力を低減すると、生物学的利用能の増加につながる可能性がある。最後に、発明者等は、タンパク質凝集を低減する賦形剤の能力を測定するためのインビトロ透析モデルを成功裏に開発し、その有用性を示した。
【0109】
文献
特許、公開特許及び他の出版物を含む本明細書中で引用される文献は、出典明記によってここに援用される。
本発明の実施は、特に明記しない限り、分子生物学などの、当分野の技術の範囲内である従来の技術を使用する。このような技術は文献において十分に説明されている。例として、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989);Current Protocols in Molecular Biology (F. Ausubel et al., eds., 1987 updated);Essential Molecular Biology (T. Brown ed., IRL Press 1991);Gene Expression Technology (Goeddel ed., Academic Press 1991);Methods for Cloning and Analysis of Eukaryotic Genes (A. Bothwell et al. eds., Bartlett Publ. 1990);Gene Transfer and Expression (M. Kriegler, Stockton Press 1990);Recombinant DNA Methodology II (R. Wu et al. eds., Academic Press 1995);PCR: A Practical Approach (M. McPherson et al., IRL Press at Oxford University Press 1991);Oligonucleotide Synthesis (M. Gait ed., 1984);Cell Culture for Biochemists (R. Adams ed., Elsevier Science Publishers 1990);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. Miller & M. Calos eds., 1987);Mammalian Cell Biotechnology (M. Butler ed., 1991);Animal Cell Culture (J. Pollard et al. eds., Humana Press 1990);Culture of Animal Cells, 2nd Ed. (R. Freshney et al. eds., Alan R. Liss 1987);Flow Cytometry and Sorting (M. Melamed et al. eds., Wiley-Liss 1990);the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);Wirth M. and Hauser H. (1993);Immunochemistry in Practice, 3rd edition, A. Johnstone & R. Thorpe, Blackwell Science, Cambridge, MA, 1996;Techniques in Immunocytochemistry, (G. Bullock & P. Petrusz eds., Academic Press 1982, 1983, 1985, 1989);Handbook of Experimental Immunology, (D. Weir & C. Blackwell, eds.);Current Protocols in Immunology (J. Coligan et al. eds. 1991);Immunoassay (E. P. Diamandis & T.K. Christopoulos, eds., Academic Press, Inc., 1996);Goding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed) Academic Press, New York; Ed Harlow and David Lane, Antibodies A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1988;Antibody Engineering, 2nd edition (C. Borrebaeck, ed., Oxford University Press, 1995);及び、the series Annual Review of Immunology; the series Advances in Immunologyを参照のこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子の皮下投与の間の注入部位での炎症を最小化する方法であって、高分子を含有する製剤に、2%〜30%のシクロデキストリンを添加することを含む方法。
【請求項2】
シクロデキストリンが、HP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン及びSBEシクロデキストリンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
製剤が5%〜30%のHP−β又はHP−γシクロデキストリンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
製剤が5%〜30%のHP−βシクロデキストリンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
製剤が5%〜20%のHP−γシクロデキストリンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
製剤が50mM〜200mMのコハク酸アルギニンをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
製剤が2%〜9%のSBEシクロデキストリンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
高分子がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質が抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗体が治療用抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗体が診断用抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
抗体が抗CD20抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
抗体が、表1に示す抗体変異体A、B、C、D、F、G、H又はIを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗体が、配列番号:1−15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
抗体が、配列番号:1の軽鎖可変ドメインと配列番号:2の重鎖可変ドメインとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
抗体が、配列番号:3の軽鎖可変ドメインと配列番号:4の重鎖可変ドメインとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
抗体が、配列番号:3の軽鎖可変ドメインと配列番号:5の重鎖可変ドメインとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
抗体が、配列番号:6の完全長軽鎖と配列番号:7の完全長重鎖とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
抗体が、配列番号:6の完全長軽鎖と配列番号:15の完全長重鎖とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
抗体が、配列番号:9の完全長軽鎖と配列番号:10の完全長重鎖とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
抗体が、配列番号:9の完全長軽鎖と配列番号:11の完全長重鎖とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
抗体が、配列番号:9の完全長軽鎖と配列番号:12の完全長重鎖とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
抗体が、配列番号:9の完全長軽鎖と配列番号:13の完全長重鎖とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
抗体が、配列番号:9の完全長軽鎖と配列番号:14の完全長重鎖とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
10mg/ml〜200mg/mlの濃度の抗体と、2%〜30%のシクロデキストリンとを含有してなる、抗体の皮下投与のための薬学的製剤。
【請求項26】
シクロデキストリンが、HP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン及びSBEシクロデキストリンからなる群から選択される、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
製剤が5%〜30%のHP−β又はHP−γシクロデキストリンを含む、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
製剤が5%〜30%のHP−βシクロデキストリンを含む、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
製剤が5%〜20%のHP−γシクロデキストリンを含む、請求項27に記載の製剤。
【請求項30】
製剤が50mM〜200mMのコハク酸アルギニンをさらに含む、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
製剤が2%〜9%のSBEシクロデキストリンを含む、請求項26に記載の製剤。
【請求項32】
抗体が30mg/ml〜150mg/mlの濃度で存在する、請求項25に記載の製剤。
【請求項33】
抗体が100mg/ml〜150mg/mlの濃度で存在する、請求項25に記載の製剤。
【請求項34】
100mg/mlのヒト化2H7抗体と、15%〜30%のHP−βシクロデキストリンとを含有してなる、請求項27に記載の製剤。
【請求項35】
150mg/mlのヒト化2H7抗体と、30%のHP−βシクロデキストリンとを含有してなる、請求項27に記載の製剤。
【請求項36】
150mg/mlのヒト化2H7抗体と、10%のHP−γシクロデキストリンとを含有してなる、請求項27に記載の製剤。
【請求項37】
製剤が50mM〜200mMおコハク酸アルギニンをさらに含む、請求項36に記載の製剤。
【請求項38】
ヒト化2H7抗体が、表1に示す抗体変異体A、B、C、D、F、G、H又はIを含む、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
30mM 酢酸ナトリウム;5% トレハロース二水和物;及び0.03% ポリソルベート20、pH5.3を更に含有してなる、請求項37に記載の製剤。
【請求項40】
ヒト化2H7抗体が、表1に示す抗体変異体A、B、C、D、F、G、H又Iを含む、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
製剤が、100mg/ml〜150mg/mlの濃度の表1に示すヒト化2H7抗体変異体Aと、15%〜30%のHP−γシクロデキストリンと、50mM〜100mMのコハク酸アルギニンとを含む、請求項27に記載の製剤。
【請求項42】
CD20陽性B細胞癌の治療方法であって、癌を有する患者に、2%〜30%のシクロデキストリンを含有してなる薬学的製剤中の、表1のヒト化2H7抗体の治療上有効な量を投与することを含み、このときシクロデキストリンが、HP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン及びSBEシクロデキストリンからなる群から選択されるものである、方法。
【請求項43】
CD20陽性B細胞癌がB細胞リンパ腫又は白血病である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
CD20陽性B細胞癌が、非ホジキンリンパ腫(NHL)、再発性低悪性度NHL及びリツキシマブ抵抗性低悪性度NHL、リンパ球優位型ホジキン病(LPHD)、小リンパ球リンパ腫(SLL)、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ヒト化2H7抗体が、表1の変異体A、B、C、D又はHである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
自己免疫性疾患の治療方法であって、自己免疫性疾患を有する患者に、2%〜30%のシクロデキストリンを含有してなる薬学的製剤中の、表1のヒト化2H7抗体の治療上有効な量を投与することを含み、このときシクロデキストリンが、HP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン及びSBEシクロデキストリンからなる群から選択されるものである、方法。
【請求項47】
自己免疫性疾患が、メトトレキセート(Mtx)への応答が不十分である者及びTNFαアンタゴニストへの応答が不十分な者を含む関節リウマチ(RA)及び若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、例としてループス腎炎、多発性硬化症(MS)、例として再発性寛解多発性硬化症(RRMS)、ヴェゲナー病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgAネフロパシ、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、ANCA関連血管炎、真正糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、視神経脊髄炎(NMO)及び糸球体腎炎からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ヒト化2H7抗体が、表1の変異体A、B、C、D又はHである、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
患者の注射部位での注入による水溶性皮下製剤中の抗体の可溶化を向上又は維持するか又は沈殿を最小化する方法であって、水溶性の皮下製剤に、2%〜30%のシクロデキストリンを添加することを含み、このときシクロデキストリンが、HP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン及びSBEシクロデキストリンからなる群から選択されるものである、方法。
【請求項50】
抗体が、表1に示すヒト化抗CD20抗体変異体A、B、C、D、F、G、H又はIである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
皮下に投与される抗体の生物学的利用能を増やす方法であって、抗体を含む水溶性皮下製剤に、2%〜30%のシクロデキストリンを添加することを含み、このときシクロデキストリンが、HP−βシクロデキストリン、HP−γシクロデキストリン及びSBEシクロデキストリンからなる群から選択されるものである、方法。
【請求項52】
抗体が、表1に示すヒト化抗CD20抗体変異体A、B、C、D、F、G、H又はIである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
生理的条件下での抗体又は他の高分子の凝集を低減する賦形剤の能力を評価するためのインビトロ透析方法であって、
(a) 一定に撹拌しながら、37℃で、変更PBS溶液(167mM ナトリウム、140mM 塩化物、17mM リン酸塩、4mM カリウム)に対して試験賦形剤を含む場合と含まない場合の高分子の製剤を透析し、
(b) 変更PBS溶液の試験試料を取り除き、そして、
(c) 濁度及び試験試料中に存在するタンパク質の量を測定することを含み、このとき賦形剤を欠いているコントロールと比較して、試験賦形剤を含むアッセイにおける試料中のタンパク質濃度が増加し濁度が低減している場合に、高分子の凝集を低減する試験賦形剤の能力が示される、方法。
【請求項54】
製剤が、1000000ダルトン分子量カットオフを有する透析管において透析される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
試験試料中のタンパク質濃度及び濁度が、UV吸光度測定法を使用して測定される、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
変更PBS溶液と沈殿のための透析管内の溶液とを視覚的に調査することをさらに含み、このとき賦形剤を欠いているコントロールと比較して、試験賦形剤を含む透析管において沈殿が減少した場合に、高分子の凝集を低減する試験賦形剤の能力が示される、請求項53に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−509269(P2012−509269A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536560(P2011−536560)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/064610
【国際公開番号】WO2010/057107
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】