説明

生産ラインレイアウト作成支援方法および生産ラインレイアウト作成方法

【課題】付帯設備の配置を含めた生産ラインの干渉部分を、設備等の設置、施工に先立って顕在化させる。
【解決手段】生産施設内の各装置等の配置や配列を一元化して三次元で表示し、さらに可動領域ならびに作業スペースを生産施設の空間構造とともに可視化して三次元画像として出力し、干渉部分を顕在化させる。顕在化した干渉部分を修正し、再度図案化することにより、生産ラインレイアウトを作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインレイアウトの作成を支援する生産ラインレイアウト作成支援方法、および生産ラインレイアウトの作成を実行する生産ラインレイアウト作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの生産施設において、既存の空間内に複数の生産用設備を適切に配置して複数の工程を効率よく実施するために、生産ラインのレイアウトを事前に作成し、顕在化した課題を修正した後に施工することが一般的である(例えば、特許文献1〜8)。
【0003】
特許文献1には、作業項目単位にスペースをモジュール化したラインレイアウトについて記載されている。
【0004】
特許文献2には、搬送条件を考慮してラインレイアウトを作成する工場計画作成装置について記載されている。
【0005】
特許文献3,4には、仮想工場に擬似生産を行わせて生産状況および物流状況を検証し、実在工場を構築する方法について記載されている。
【0006】
特許文献5には、膨大な据付最小ユニットの最適な据付手順を容易に検討できる据付計画支援方法において、アニメーション表示を行い、視覚的に最適な据付手順を検討することについて記載されている。
【0007】
特許文献6には、工程順や各工程、設備間の繋がりを自動判別して生産ラインレイアウトの作成を行うことについて記載されている。
【0008】
特許文献7には、設備および作業者からなる製造資源情報と、製品を製造する場所の制約条件とに基づいてレイアウト配置することについて記載されている。
【0009】
特許文献8には、変更前レイアウトに対して入力された変更条件にしたがって再配置した変更後レイアウトを表示することについて記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開2006−15851号公報
【特許文献2】特許第3452801号公報
【特許文献3】特開2002−373012号公報
【特許文献4】特開2002−373018号公報
【特許文献5】特開平6−168303号公報
【特許文献6】特開平7−160739号公報
【特許文献7】特開2003−044115号公報
【特許文献8】特開2007−317079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、生産用設備と生産施設の配置だけでなく、これに付帯する付帯設備の配置を含めた生産ラインの総合レイアウトを作成することにより、実際の設備の設置、施工に先立って干渉部分を顕在化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の構成は以下のとおりである。
【0013】
(1)天井、床、支柱および壁を備え、配置した生産用設備を用いて複数の工程を実施する生産施設における、前記生産用設備の配置及び各工程の配列を含む生産ラインレイアウトの作成を支援する方法であって、前記生産施設には、前記生産用設備とともに利用可能な付帯設備をさらに設けてなり、前記生産用設備および前記付帯設備の配置および可動領域ならびに作業スペースを前記生産施設の空間構造とともに可視化して三次元画像として出力し、干渉部分を顕在化させる、方法。
【0014】
(2)前記付帯設備が、配線および流体を流通させるための配管、前記天井を構成する構造材、前記天井、支柱および壁に取付けて使用する設備、ならびに吊り具を含む、上記(1)に記載の方法。
【0015】
(3)前記可動領域が、各工程実施中には不動の、保守用可動部分の可動領域を含む、上記(1)または(2)に記載の方法。
【0016】
(4)前記作業スペースが、加工、組み付け、搬送のための生産作業用スペース、加工・組み付けワーク、部品および材料の供給のための供給作業用スペース、ならびに前記生産用設備および前記付帯設備を保守するための保守スペースを含む、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の方法を用いて生産ラインレイアウトを作成する方法であって、顕在化した前記干渉部分を修正し、再度図案化する、方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、付帯設備の配置を含む生産ラインの干渉部分の修正を施工前に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、各図面において同様の構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態における生産ラインレイアウト作成方法を例示するフローチャートである。
【0021】
ステップS100では、生産ラインレイアウトの素案を作成する。具体的には、例えば生産する製品の種類、生産数量、必要とする設備および生産工程、生産ラインの設置場所などの情報に基づいて、生産ラインの構想を練り、生産ラインレイアウトを素案化する。ここで作成するレイアウトの表示は、二次元であっても三次元であっても良い。
【0022】
ステップS102では、個別レイアウトを作成する。具体的には、例えば生産用設備の配置および各作業工程の配列のほか、生産用設備とともに利用可能な、電力供給や通信のための配線、冷却水やエアの流通、排気のための配管などの付帯設備の配置など、工場などの生産施設に配置され、固定されるあらゆるものが個別レイアウトの作成対象となり得る。これらの作成対象となる設備等ごとに、予め決められた縮尺で個別にレイアウトを作成する。このとき、生産施設内の空間構造を明確にするために、生産施設の一部でもある支柱や分電盤などの建築構造材の配置もまた、個別レイアウトを作成する各設備等と同じ縮尺にて作図する。また、生産施設内の通路のレイアウトに際しては、移動や運搬のために用いうる台車やフォークリフトその他の移動体の体格を考慮することも好適であり、省スペース化のために寄与し得る。また、例えば照明と配線など、関連する付帯設備や、一体としての配置が好ましい設備生産用設備などのいくつかを一連のレイアウトとしてまとめることもできる。
【0023】
図2〜4は、図1に示すステップS102において作成する生産施設内の個別レイアウトのうち、特に付帯設備や建築構造材の配置を示す個別レイアウトについて例示する上面視した部分平面図である。図2〜4に示す生産施設100は、例えば40m〜50m×60〜80m程度にもなる生産施設のうち、建築構造材である支柱50a,50b,50c,50dで囲まれた、概ね10m四方程度の一部分について示したものである。
【0024】
図2は、一連の各種電気系統の個別レイアウトについて例示する上面図である。図2(a)には主として生産用設備用の電力を供給するためのライン照明12,14および100ボルトのコンセント16,18を含む配線図が、図2(b)には200ボルトの幹線(ミニバス)20,22が、図2(c)には天井付近に設けられた天井照明24,26,28,30が、それぞれ示されている。
【0025】
図3は、一連の流体流通用の各種配管の個別レイアウトについて例示する上面図である。図3(a)には換気口32および換気口32から取り入れた生産施設内の空気を循環または排出させるダクト34を含む配管図が、図3(b)には生産用装置においてワーク加工・搬送用シリンダ(アクチュエータ)のエネルギ源として、また、場合によっては生産用装置の冷却や、生産ラインその他の清掃などに用いることのできる図示しないエア排出口を含むエア配管36,38が、図3(c)には生産用装置などの冷却に用いられる冷却液を流通させるための冷却液配管40が、それぞれ示されている。
【0026】
図4は、一連の各種建築構造材の配置を示す個別レイアウトについて例示する上面図である。図4(a)には、天井部分にほぼ平行に設けられた、吊り下げ用の部材であるピクチャーレール42,44およびピクチャーレール42,44にほぼ垂直に設けられた、天井補強用のブレ止め46を含む生産施設100の天井の近傍部分が示され、図4(b)には、天井の上方部分に設けられた配管や配線などの点検時に低い頻度で用いられる点検口48が、それぞれ示されている。図示していないが、その他天井部に設置する設備、火災感知器、スプリンクラー、スピーカ、非常灯等もレイアウトの対象となり、加工時に発生するガスや熱を排出するためのダクト、ダクトや配線、配管などを天井や壁面、支柱等から吊るすための吊り具、バルブなども対象となる。
【0027】
図2〜4に示す個別レイアウトは、上面視した二次元の図面(平面図)として説明したが、ステップS102で作成する個別レイアウトは三次元の図面であっても良く、また他の実施の形態として側面視した二次元の側面図であっても良い。さらに別の実施の形態として、複数方向から見た複数の平面図の組み合わせからなる個別レイアウトであっても良い。
【0028】
ステップS104では、生産施設内の配置や配列をすべて一元化し、三次元で表示した生産ラインレイアウトを作成する。具体的には、ステップS102で作成した個別レイアウトを含む設備の配置や生産ラインの配列に関する図面データを含む各種情報に基づき、一元化した三次元画像を作成する。個別レイアウトの図面データは例えば、紙面などの印刷媒体に出力した画像データを読み込む形式であっても、座標データなどを直接入力する形式であっても良く、特に制限されるものではない。また、図1に示すように、例えばステップS102に示した個別レイアウトの作成を経ずにステップS100で作成した素案に基づいて三次元表示することも可能であり、また、他の実施の形態として、生産施設内の一部または全部の施設などの配置や配列について、ステップS100、ステップS102を省略し、ステップS104を第1の工程として行うこともできる。本ステップにおける三次元で表示された生産ラインレイアウトの作成には、例えば予め用意された三次元図面作成ソフトまたはより適切にカスタマイズされた三次元図面作成プログラムやソフトなどを適用することができるが、同様の三次元図面を作成する機能を有するものであればこれに限定されるものではない。
【0029】
図5は、図1に示すステップS104において作成する、生産施設100の生産ラインレイアウトを一体化して三次元表示した斜視図の一部を例示したものである。図6は、図2〜4に示す個別レイアウトに対応する部分である、図5に示す支柱50a,50b,50c,50dで囲まれた領域を、図2〜4に示す個別レイアウトと同様の方向から見た、つまり上面視した図である。図6に示す生産施設100は、複数の生産用設備が配置され、また必要に応じてライン外作業を行うスペースを含むエリア52,56、作業用の通路エリア54、棚や保管庫等が整列するエリア58、運搬用の通路エリア60、のように概ね5つのスペースに分かれて配置、配列されている。なお、図5,6においては、作成した生産ラインレイアウトを簡略化して各設備等の形状はその輪郭を大まかに示した箱形状で表しているが、通常は配管の開口部分やコード、操作ボタンの配置や凹凸などの詳細まで明確に示すことが好ましい。
【0030】
ステップS106では、ステップS104で作成した三次元の生産ラインレイアウト図面に生産用設備や付帯設備などの可動部分の可動領域や、作業スペースを作成し、追加する。可動部分には、例えば開閉する扉、回転するコックやレバー、昇降するリフトその他のあらゆるものが含まれ、生産施設において各工程実施中の生産用設備や付帯設備などの可動部分はもちろんのこと、各工程実施中には不動であって、稼働頻度の低い、例えば保守用可動部分などが含まれる。可動部分の可動領域には、可動部分を動作させたときの軌跡で囲まれた空間部分全体を含めることができる。一方、作業スペースには、例えば生産に用いられる材料の補給や組み付け、加工、検査などの恒常的な確保が望まれるスペースのほか、手動で操作され得る各種装置近傍の操作スペース、各種装置の保全、清掃のための、各工程実施中には通常不要となる保守スペースも含まれ得る。このように、可動部分の可動領域や作業スペースを三次元の生産ラインレイアウト図面に予め組み入れることにより、過不足のない適正な生産ラインレイアウトの作成が可能となる。本実施の形態において、生産用設備や付帯設備など現存する物とのレイアウト図面上での差別化のために、可動領域や作業スペースなどの表示は、配置する設備の固定部分とは異なる配色や透視図を用いて可視化することも好適である。
【0031】
ステップS108では、ステップS106で追加作成した可動領域や作業スペースを含む、三次元の生産ラインレイアウトを作成した全領域において、干渉部分を顕在化させる。ステップS106において可動部分の軌道や作業スペースを一体に表示しているため、生産用設備間、付帯設備間、および生産用設備と付帯設備との間の干渉の有無だけでなく、固定部分の可動領域や作業スペースを含む、実際には目視できない空間部分と各設備との間の干渉の有無を容易に確認することができる。このため、本ステップによれば、生産施設内に設置する各設備等の現物を手配し、配置、施工する前に予め干渉の有無を確認することが可能となり、生産ラインレイアウトの作成の支援に好適に寄与し得る。
【0032】
ステップS110ではさらに、ステップS108で顕在化した干渉部分を修正する。具体的には、例えばレイアウト変更に伴うコストの増大やデッドスペースの出現など、また配管などであれば、流通させる流体の性質に応じて過度な圧力上昇や滞留が発生など、想定される不具合の程度に応じて優先すべき項目に応じて好適な修正を検討する。
【0033】
ステップS112では、ステップS110において修正した三次元の生産ラインレイアウト図面を再度図案化する。再図案化した図面で不具合が無ければ終了し、さらに干渉部分の修正が必要であれば再度ステップS110に戻り、ステップS110とステップS112とを必要に応じて繰り返しても良い。
【0034】
このように、本発明の実施の形態によれば、生産施設内の各設備等の手配、配置、施工などに先立って予め顕在化した干渉部分を修正することが可能となる。このため、施工段階での各設備等の配置変更に伴う作業時間の増大や、追加発注や部品交換などに伴うリードタイムの増大という不具合を回避することができる。
【0035】
本実施の形態を実行するためシステム構成には特に制限はなく、いかなる装置を用いることも可能であるが、一例としては、適切な記憶手段および演算手段を備えるコンピュータ、該コンピュータにデータを入力するためのデータ入力手段、画像出力手段としてのディスプレイ(表示手段とも称する)および/またはプリンタ(印刷手段とも称する)、をそれぞれ備え得る。また、生産施設内の生産ラインレイアウトを画像出力手段上に三次元表示するための三次元表示システムとして、公知の建築設備用および/または建築用の三次元CADシステムおよび/またはプログラムソフトを適用することが可能であり、またこれらに相当するシステムまたはプログラムを新たに設計し、利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、いかなる生産ラインレイアウトの作成に利用することが可能であるが、例えば高さ方向に制約がある生産施設における生産ラインレイアウトの作成に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態における生産ラインレイアウト作成方法を例示するフローチャートである。
【図2】各種電気系統の個別レイアウトについて例示する上面図である。
【図3】流体流通用の各種配管の個別レイアウトについて例示する上面図である。
【図4】各種建築構造材の配置を示す個別レイアウトについて例示する上面図である。
【図5】生産ラインレイアウトを一体化して三次元表示した斜視図である。
【図6】図5に示す領域の一部を上面視した図である。
【符号の説明】
【0038】
12,14 ライン照明、16,18 コンセント、20,22 幹線(ミニバス)、24,26,28,30 天井照明、32 換気口、34 ダクト、36,38 エア配管、40 冷却液配管、42,44 ピクチャーレール、46 ブレ止め、48 点検口、50a,50b,50c,50d 支柱、52,56,58 エリア、54,60 通路エリア、100 生産施設。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井、床、支柱および壁を備え、配置した生産用設備を用いて複数の工程を実施する生産施設における、前記生産用設備の配置及び各工程の配列を含む生産ラインレイアウトの作成を支援する方法であって、
前記生産施設には、前記生産用設備とともに利用可能な付帯設備をさらに設けてなり、
前記生産用設備および前記付帯設備の配置および可動領域ならびに作業スペースを前記生産施設の空間構造とともに可視化して三次元画像として出力し、
干渉部分を顕在化させる、方法。
【請求項2】
前記付帯設備が、配線および流体を流通させるための配管、前記天井を構成する構造材、前記天井、支柱および壁に取付けて使用する設備、ならびに吊り具を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可動領域が、各工程実施中には不動の、保守用可動部分の可動領域を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記作業スペースが、加工、組み付け、搬送のための生産作業用スペース、加工・組み付けワーク、部品および材料の供給のための供給作業用スペース、ならびに前記生産用設備および前記付帯設備を保守するための保守スペースを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法を用いて生産ラインレイアウトを作成する方法であって、
顕在化した前記干渉部分を修正し、再度図案化する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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