説明

生線香切断装置及びそれを用いた線香の製造方法

【課題】生線香押出し装置から押し出された多数本の乾燥前の生線香を曲げることなく真っ直ぐな状態のまま複数条に切断することのできる生線香切断装置を提供する。
【解決手段】生線香切断装置10を、生線香20をそれに垂直な方向へ移送するための生線香移送手段11と、生線香移送手段11で移送されてくる生線香20の両端部を切り落とすための一対の端部切断刃13,14と、生線香移送手段11で移送されてくる生線香20の中途部を切断して短い複数条の生線香とするための中途部切断刃12と、を備えたものとし、中途部切断刃12を、生線香移送手段11の移送方向に対して一対の端部切断刃13,14よりも上流側に配した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状に成形された乾燥前の線香(以下、「生線香」と表記する。)を所定の長さに切断するための生線香切断装置と、これを用いて線香を製造する線香の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、線香は、粘土状の原料を生線香押出し装置に投入し、この生線香押出し装置の下部に設けられた多数の孔から前記原料を押し出すことにより、多数本が一度に線状に成形される(例えば、特許文献1)。それぞれの生線香は、生線香押出し装置から押し出された直後に、製品として販売される長さの数倍程度で切断され、その後、生線香が乾燥するよりも前に、後段の生線香切断装置を用いて、製品として販売される長さに切り揃えられる。このようにすることで、線香の生産能力を高めることができる。
【0003】
線香押出し装置から押し出された多数本の生線香を切断するための生線香切断装置は、これまでに各種のものが提案されている。例えば、図6に示すように、受板11aに並列に載置された多数本の生線香20をそれに垂直な方向へ移送するためのコンベア11bと、コンベア11bで移送されてくる生線香20の両端部を切り落とすための一対の端部切断刃13,14と、コンベア11bで移送されてくる生線香20の中途部を切断して短くするための中途部切断刃12とを備えた生線香切断装置が知られている(例えば、特許文献2,3)。
【0004】
この種の生線香切断装置において、生線香20は、図7に示すように、中途部切断刃12と端部切断刃13,14によって、4つの区分23〜26に切断される。切断後の生線香20における各区間のうち、端部切断刃13,14の外側に位置する区間(端部23,24)は、受板11aの両側縁から下方に落下する。また、中途部切断刃12と端部切断刃13,14によって切断された区間(中途部25,26)は、乾燥されて製品として使用されることになる。
【0005】
この種の生線香切断装置は、細長い1本の生線香20から、製品として出荷される線香と同じ長さに切り揃えられた複数条の生線香(中途部25,26)を得ることができることから、線香の生産能力を高めることができるものとして、広く利用されている。しかし、従来の生線香切断装置では、生線香20を真っ直ぐな状態を保ったまま切断することが非常に困難であった。というのも、従来の生線香切断装置では、端部切断刃13,14と中途部切断刃12とが生線香20の移送方向に対して同じ場所(コンベア11bの幅方向に一列)に配置されていたからである。
【0006】
すなわち、従来の生線香切断装置では、図7に示すように、中途部切断刃12として両側に傾斜した刃面を有する両刃を用いていたため、中途部切断刃12で生線香20を切断すると、中途部切断刃12と端部切断刃13,14との間に位置する生線香25,26は、中途部切断刃12から端部切断刃13,14に(図7の矢印dの向きに)向かって押されるようになる。しかし、中途部切断刃12によって切断された生線香25,26は、その行く手を端部切断刃13,14によって遮られており、逃げることができないため、図7に示すように、曲がった状態となる。このため、生線香25,26を乾燥して得られた線香も曲がった状態となることが多かった。したがって、多数本の線香を綺麗な束にまとめることができず、無理やり束にしようとすると、線香が折れるなどの不具合が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3144618号公報
【特許文献2】特開平10−218752号公報
【特許文献3】特開2001−105388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、生線香押出し装置から押し出された多数本の乾燥前の生線香を曲げることなく真っ直ぐな状態のまま複数条に切断することのできる生線香切断装置を提供するものである。また、この生線香切断装置を用いて線香を製造する線香の製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、生線香をそれに垂直な方向へ移送するための生線香移送手段と、生線香移送手段で移送されてくる生線香の両端部を切り落とすための一対の端部切断刃と、生線香移送手段で移送されてくる生線香の中途部(非端部)を切断して短い複数条の生線香とするための中途部切断刃とを備えた生線香切断装置であって、中途部切断刃が、生線香移送手段の移送方向に対して一対の端部切断刃よりも上流側に配され、中途部切断刃が生線香の中途部を切断してから一対の端部切断刃が生線香の両端部を切り落とすようにしたことを特徴とする生線香切断装置を提供することによって解決される。
【0010】
これにより、例え中途部切断刃を、その両側に傾斜した刃面を有する両刃としても、中途部切断刃が生線香を切断する際には、その両側に端部切断刃が存在しないので、中途部切断刃で切断された生線香は、真っ直ぐな状態を保ったまま、生線香移送手段(コンベアなど)の中心から見て外側へ滑って逃げることが可能になる。また、端部切断刃で生線香の端部を切断する際には、生線香は、その中途部が中途部切断刃で切断された後であり、その切断箇所には、少なくとも中途部切断刃の厚さに相当する隙間が存在するため、その両端部を一対の端部切断刃で一度に切断したとしても、一対の端部切断刃の間に位置する生線香は、その隙間に向かって滑ることが可能になる。したがって、端部切断刃で生線香を切断する際も、生線香が曲がりにくくすることができる。
【0011】
ところで、一対の端部切断刃は、その外側(コンベアの中心からみて外側)の面のみが傾斜した刃面である片刃とすることによって、一対の端部切断刃で生線香を切断する際における生線香の内側(生線香移送手段の中心側)への移動量を小さく抑えることが可能になり、生線香をより曲がりにくくすることが可能になる。
【0012】
中途部切断刃は、1箇所にのみ設けてもよいが、この場合には、生線香押出し装置で線状に成形された生線香を2条にしか切断することができない。このため、中途部切断刃を複数箇所に設け、それぞれの中途部切断刃が生線香の中途部における異なる位置を切断するようにすると好ましい。これにより、生線香切断装置で、生線香を3条以上に切断することが可能になり、線香の生産能力をさらに高めることが可能になる。
【0013】
しかし、この場合、一の中途部切断刃と他の切断刃とを、生線香の移送方向(生線香移送手段の移送方向)に対して同じ場所に配すると、やはり、上述したような不具合が生じるおそれがある。したがって、中途部切断刃を複数箇所に設ける場合には、それぞれの中途部切断刃を、生線香移送手段の移送方向に対してずれた位置に配し、2つ以上の中途部切断刃が同時に生線香を切断しないようにすると好ましい。
【0014】
また、上記課題は、上記の生線香切断装置を用いて線香を製造することを特徴とする線香の製造方法を提供することによっても解決される。これにより、寸法精度の高い真っ直ぐな線香を製造することが可能になる。したがって、多数本を綺麗に束にまとめることができ、束にまとめても折れることがなく、その商品価値を失わない線香を製造することが可能になる。本発明の線香の製造方法で製造された線香は、高い品質基準が要求される高級な線香としても十分に出荷することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によって、生線香押出し装置から押し出された多数本の乾燥前の生線香を曲げることなく真っ直ぐな状態のまま複数条に切断することのできる生線香切断装置を提供することが可能になる。また、この生線香切断装置を用いて線香を製造する線香の製造方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一実施態様の生線香切断装置における主要部を示した斜視図である。
【図2】第一実施態様の生線香切断装置における主要部を示した平面図である。
【図3】第一実施態様の生線香切断装置において、中途部切断刃で生線香を切断している状態を中途部切断刃の中心軸を通る鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
【図4】第一実施態様の生線香切断装置において、端部切断刃で生線香を切断している状態を端部切断刃の中心軸を通る鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
【図5】第二実施態様の生線香切断装置における主要部を示した斜視図である。
【図6】従来の生線香切断装置を示した斜視図である。
【図7】従来の生線香切断装置において、中途部切断刃及び一対の端部切断刃で生線香を切断している状態を各切断刃の中心軸を通る鉛直面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の生線香切断装置の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、2つの実施態様を例に挙げて説明するが、本発明の生線香切断装置の技術的範囲は、これらの実施態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0018】
1.第一実施態様の生線香切断装置
まず、第一実施態様の生線香切断装置について説明する。図1は、第一実施態様の生線香切断装置10における主要部を示した斜視図である。図2は、第一実施態様の生線香切断装置10における主要部を示した平面図である。図3は、第一実施態様の生線香切断装置10において、中途部切断刃12で生線香20を切断している状態を中途部切断刃12の中心軸を通る鉛直面で切断した状態を示した断面図である。図4は、第一実施態様の生線香切断装置10において、端部切断刃13,14で生線香20を切断している状態を端部切断刃13,14の中心軸を通る鉛直面で切断した状態を示した断面図である。図3と図4においては、図示の便宜上、各部の縮尺を変えて示してある。
【0019】
第一実施態様の生線香切断装置10は、図1と図2に示すように、生線香20をそれに垂直な方向(図1における矢印aの向き)へ移送するための生線香移送手段11と、生線香移送手段11で移送されてくる生線香20の中途部を切断して元の約半分の長さの2条の生線香21,22とするための中途部切断刃12と生線香移送手段11で移送されてくる生線香20の両端部23,24を切り落とすための一対の端部切断刃12,13と、を備えたものとなっている。
【0020】
生線香移送手段11は、生線香20を移送できるものであれば特に限定されない。第一実施態様の生線香切断装置10において、生線香移送手段11は、図1に示すように、図示省略の生線香押出し装置から押し出されて線状に成形された複数本の生線香20を並列に載置するための受板11aと、受板11aを移送するためのコンベア11bとで構成している。生線香切断装置10は、通常、生線香押出し装置の近傍に設置され、生線香押出し装置から押し出されてくる生線香20を生線香切断装置10にセットするまでの作業を連続的に行うことができるようになっている。生線香押出し装置は、本発明の生線香切断装置を構成する部分ではない。生線香押出し装置は、生線香20を線状に成形できるのであれば、従来から用いられている各種のものを採用することができる。
【0021】
コンベア11bは、図示省略のモーターなどの駆動手段により、図1における矢印aの向きに駆動されており、その上にセットされた受板11aを中途部切断刃12及び端部切断刃13,14に向かって移送することができるようになっている。コンベア11bの種類は、特に限定されず、ベルトコンベアやチェーンコンベアやローラーコンベアなど各種のコンベアを使用することができる。第一実施態様の生線香切断装置10においては、コンベア11bとして、受板11aを揺れなく移送でき、中途部切断刃12や端部切断刃13,14で生線香20を高い寸法精度で切断することを可能とするベルトコンベアを用いている。コンベア11bの移送速度は、生線香20の寸法やその原料などを考慮して適宜決定される。
【0022】
受板11aは、図2に示すように、平面視矩形状の板を使用している。受板11aの幅(コンベア11bを横断する方向の幅)は、生線香押出し装置で押し出されて切断される生線香20の長さよりも短く設定されている。このため、生線香20の長手方向と受板11aの幅方向とが平行となり、かつ、生線香20の長手方向中心が受板11aの幅方向中心と一致するように生線香20を受板11aに載置した際には、それぞれの生線香20の両端部23,24が受板11aの両側縁から下側に垂れるようになっている。このようにすることで、後述する端部切断刃13,14で生線香20の端部23,24を切断した際に、切断された生線香20の端部23,24を自然と落下することができるようになっている。
【0023】
受板11aの素材は、特に限定されず、金属などを採用してもよいが、中途部切断刃12や端部切断刃13,14がその自重により食い込むことができる程度の柔らかさを有するものであると好ましい。これにより、受板11aに載置された生線香20を確実に切断することが可能になる。このような素材としては、木材のほか、段ボールなどの厚紙や、コルクボードなどが例示される。また、受板11aは、コンベア11bから分離できるようになっている。このため、生線香押出し装置の下部に受板11aを配して生線香押出し装置から押し出されてくる複数本の生線香20を受板11aで一度に受け、そのまま人手により、あるいは機械により、コンベア11bの上にセットすることができるようになっている。
【0024】
中途部切断刃12は、図2に示すように、生線香20の移送方向(図2における矢印aの向き)に対して、一対の端部切断刃13,14よりも上流側(図2の紙面向かって左側)に配されている。このため、中途部切断刃12が生線香20の中途部(端部以外の部分)を切断して、生線香20を2条の生線香21,22に分断した後、一対の端部切断刃13,14が生線香21,22の外側の端部23,24を切り落とすようになっている。第一実施態様の生線香切断装置10において、中途部切断刃12は、コンベア11bの中心線に重なる位置に1箇所のみ設けており、受板11aに載置されたそれぞれの生線香20をその長手方向中心で切断するようにしている。また、一対の端部切断刃13,14は、中途部切断刃12に対して対称な位置に配している。これにより、それぞれの生線香20を、長さの等しい2条の生線香25,26に切断することが可能になる。切断後の生線香25,26の長さを変えたい場合などには、中途部切断刃12や端部切断刃13,14の位置を図2の位置から変えることもできる。
【0025】
中途部切断刃12は、それ自体が動かない固定刃を使用してもよいが、移送されてくる生線香20を抵抗なく滑らかに切断するためには、回転刃などの可動刃を使用すると好ましい。第一実施態様の生線香切断装置10においては、図1に示すように、その基端部を支持軸15に対して軸支されたアーム12aの先端部に回転可能に軸支した回転刃を中途部切断刃12として使用している。中途部切断刃12は、支持軸15に対するアーム12aの基端部の固定位置を支持軸15の長手方向へスライドさせることにより、容易に調節することができるようになっている。したがって、生線香20の切断長さに応じてその位置を調節することができるようになっている。中途部切断刃12の直径や厚みは、特に限定されない。
【0026】
中途部切断刃12は、図1に示すように、その自重によって受板11aに押しつけられるようになっており、その重みで受板11a上の生線香20を切断する。中途部切断刃12が受板11aに加える重みは、アーム12aに対して図示省略のウェイトを位置調節可能に取り付けることなどによって変更できるようにしてもよい。これにより、生線香20の太さや原料などに応じて中途部切断刃12aの実質的な重みを調節することが可能になる。
【0027】
中途部切断刃12は、受板11aから受ける摩擦力により、受動的に回転するだけのものであってもよい。しかし、第一実施態様の生線香切断装置10において、中途部切断刃12は、図1に示すように、モーターなどの駆動機構(図示省略)と連結されたチェーン12bによって積極的に回転駆動されるようになっている。これにより、生線香20をより綺麗に切断することが可能になる。中途部切断刃12の回転速度は、生線香移送手段11の移送速度などを考慮して適宜決定される。
【0028】
第一実施態様の生線香切断装置10において、中途部切断刃12には、図3に示すように、その両側に傾斜した刃面を有する両刃を使用している。このため、中途部切断刃12によって分断された生線香21,22は、中途部切断刃12の刃面によってその両側(図3における矢印bの向き)へ僅かに押されるようになる。しかし、分断された生線香21,22が進む先には、端部切断刃13,14などの障害物が存在していないため、生線香21,22は受板11aの外側に逃げることができるようになっている。このため、中途部切断刃12で分断された生線香21,22は、受板11aの上で曲がることなく、真っ直ぐな状態を保ったまま、中途部切断刃12の厚みの約半分に相当する分だけ、図3における矢印bの向きへ移動することができるようになっている。
【0029】
一方、一対の端部切断刃13,14は、図2に示すように、それぞれ受板11aにおける幅方向の両端部付近を通るように配されており、受板11aに載置された生線香20をその長手方向両端部で切断するようにしている。これにより、中途部切断刃12で2条に分断された生線香21,22の外側の端部23,24を切り落として、長さの切り揃えられた2条の生線香25,26を得ることができる。切断後の生線香25,26の長さを変えたい場合などには、端部切断刃13,14の位置を図2に示す位置からずらしてもよい。端部切断刃13,14として、回転刃などの可動刃を使用すると好ましい点、端部切断刃13,14の支持構造、端部切断刃13,14が自重によって受板11aに押しつけられる点、端部切断刃13,14を積極的に回転駆動する点、端部切断刃13,14の直径や厚さなどは、既に述べた中途部切断刃12と同様であるために、説明を割愛する。
【0030】
第一実施態様の生線香切断装置10において、端部切断刃13,14には、図4に示すように、その外側の面のみに傾斜した刃面を有する片刃を使用している。このため、端部切断刃13,14で切断された生線香21,22の外側の端部23,24は、端部切断刃13,14の外側(図4の矢印cの向き)に押されて受板11aの両側縁から落ちるものの、端部切断刃13,14の内側に位置する生線香25,26は、内側に殆ど押されないようになっている。このため、製品として使用される生線香25,26を曲げることなく真っ直ぐな状態を保ったままとすることができるようになっている。受板11aの両側縁から落ちた生線香20の端部23,24は、回収され、上述した生線香押出し装置に原料として投入される。
【0031】
ところで、生線香移送手段11の移送方向に沿った中途部切断刃12から一対の端部切断刃13,14までの距離L(図2を参照)をどの程度に設定するのかは特に限定されない。距離Lは、生線香20の太さや隣り合う生線香20の間隔、あるいは中途部切断刃12や端部切断刃13,14などの直径(中途部切断刃12や端部切断刃13,14が同時に接触(切断)する生線香20の本数)などに応じて適宜決定される。要するに、中途部切断刃12が接触(切断)している生線香20に端部切断刃13,14が接触しないようにしさえすればよい。しかし、距離Lを短くしすぎると、生線香移送手段11の移送速度を速くした場合に、中途部切断刃12によって押された生線香20が静止するよりも前に端部切断刃13,14によって切断されるようになるおそれがあり、生線香20が曲がったり、端部切断刃13,14で生線香20の端部を綺麗に切り落とされなくなったりするおそれがある。
【0032】
このため、距離L(図2を参照。)は、生線香20の配置ピッチ(生線香20の直径をDとし、隣り合う生線香20の間隔をSとしたときのD+Sの値。)の5倍以上に設定すると好ましい。距離Lは、生線香20の配置ピッチの10倍以上に設定するとより好ましく、15倍以上に設定するとさらに好ましい。すなわち、仮に、生線香20の配置ピッチを4mmとするならば、距離Lは、20mm以上とすると好ましく、40mm以上とするとより好ましく、60mm以上とするとさらに好ましいということになる。一方、距離Lは、長くしすぎても、生線香20の曲がりを防止するという観点ではあまり利点がないばかりか、生線香切断装置10が不必要に大きくなるおそれがある。このため、距離Lは、通常50cm以下、好ましくは40cm以下、より好ましくは30cm以下とされる。
【0033】
2.第二実施態様の生線香切断装置
続いて、第二実施態様の生線香切断装置10’について説明する。図5は、第二実施態様の生線香切断装置10’における主要部を示した斜視図である。以下においては、主に、第二実施態様の生線香切断装置10’における第一実施態様の生線香切断装置10と異なる部分についてのみ説明し、第二実施態様の生線香切断装置10’と第一実施態様の生線香切断装置10とで共通する部分については説明を割愛する。
【0034】
第一実施態様の生線香切断装置10では、図1に示すように、中途部切断刃12が一箇所のみに設けられていたが、第二実施態様の生線香切断装置10’は、図4に示すように、中途部切断刃12が3箇所に設けられている。すなわち、中途部切断刃12が、生線香移送手段11の移送方向(図5における矢印a)に対して最も上流側に配された第一中途部切断刃12Aと、第一中途部切断刃12Aよりも下流に配された第二中途部切断刃12Bと、第二中途部切断刃12Bよりもさらに下流に配された第三中途部切断刃12Cとで構成されている。第三中途部切断刃12Cよりもさらに下流には、生線香20の両端部をそれぞれ切断するための一対の端部切断刃13,14が配されている。
【0035】
第二実施態様の生線香切断装置10’においては、図5に示すように、第三中途部切断刃12Aは、生線香20の長手方向中心部を切断するためのものとなっており、一対の端部切断刃13,14は、生線香20の長手方向両端部を切断するものとなっている。また、第一中途部切断刃12Aは、生線香20における第三中途部切断刃12Cと端部切断刃13との中間地点を切断するものとなっており、第二中途部切断刃12Bは、生線香20における第三中途部切断刃12Cと端部切断刃14との中間地点を切断するものとなっている。このため、第二実施態様の生線香切断装置10’は、それぞれの生線香20を長さの等しい4条の生線香に切断し、余った両端部を切り落とすことができるものとなっている。
【0036】
また、第二実施態様の生線香切断装置10’においては、図5に示すように、第一中途部切断刃12A、第二中途部切断刃12B及び第三中途部切断刃12Cは、端部切断刃13,14に対してだけでなく、他の中途部切断刃12に対しても、生線香移送手段11の移送方向(図5における矢印a)に重ならない位置に配されている。このため、それぞれの生線香20は、第一中途部切断刃12A、第二中途部切断刃12B及び第三中途部切断刃12Cのうち2以上の中途部切断刃12で同時に切断されないようになっている。したがって、第一中途部切断刃12A、第二中途部切断刃12B及び第三中途部切断刃12Cのうちのいずれの中途部切断刃12で生線香20を切断している場合であっても、切断される生線香20は、それを切断している中途部切断刃12の外側へ真っ直ぐな状態を保ったまま逃げることができるようになっており、最終的に得られる4条の生線香20の曲がりを防ぐことができるようになっている。
【0037】
さらに、第二実施態様の生線香切断装置10’において、生線香移送手段11の移送方向に沿った第一中途部切断刃12Aから第二中途部切断刃12Bまでの距離、生線香移送手段11の移送方向に沿った第二中途部切断刃12Bから第三中途部切断刃12Cまでの距離、生線香移送手段11の移送方向に沿った第三中途部切断刃12Cから一対の端部切断刃13,14までの距離は、いずれも、第一実施態様の生線香切断装置10における距離L(図2を参照)と同様の値を採用することができる。これにより、最終的に得られる4条の生線香20の曲がりをより確実に防ぐことが可能になる。
【0038】
ところで、第一実施態様の生線香切断装置10においては1箇所のみに設けられていた支持軸15は、第二実施態様の生線香切断装置10’においては、図5に示すように、コンベア11bの移送方向(図5の矢印aの向き)における上流側と下流側の2箇所に平行に設けられている。上流側の支持軸15には、第一中途部切断刃12Aと第二中途部切断刃12Bを支持するアーム12aの基端部が軸支されている。一方、下流側の支持軸15には、第三中途部切断刃12Cのアーム12aの基端部と、端部切断刃13,14を支持するアーム13a,14aの基端部が軸支されている。第二実施態様の生線香切断装置10’において、アーム12a,13a,14aのそれぞれは、支持軸15の長手方向に対して任意にスライドさせることができるようになっており、生線香20を切断する長さを容易に変更することができるようになっている。
【0039】
また、アーム12a,13a,14aは、支持軸15を軸として上下に回動させることができるようになっており、図示省略のストッパーなどを利用して第一中途部切断刃12A、第二中途部切断刃12B、第三中途部切断刃12C及び一対の端部切断刃13,14を受板11aから浮かした状態に保つこともできるようになっている。このため、生線香20の切断に寄与する切断刃の本数を変更することができるようになっている。例えば、第一中途部切断刃12Aと第二中途部切断刃12Bを受板11aから浮かせた状態に保ち、第三中途部切断刃12Cと一対の端部切断刃13,14を受板11aの上に載せれば、生線香20を、第一実施態様の生線香切断装置10と同様の形態に切断することもできる。このように、第二実施態様の生線香切断装置10’は、生線香20の切断後の本数や長さを容易に変更することができるものとなっており、様々な種類の生線香20を切断することができるものとなっている。
【0040】
3.線香の製造方法
最後に、上述した生線香切断装置10,10’を用いた線香の製造方法について説明する。本実施態様の線香の製造方法においては、
工程1: 生線香押出し装置に線香の原料を投入する。
工程2: 生線香押出し装置によって前記原料を線状に押し出し、線状に成形された前記原料(生線香20)を製品として使用される長さの数倍以上に切断する。
工程3: 生線香押出し装置で切断された複数本の生線香20を、生線香切断装置10,10’における受板11aに並列に載せ、受板11aをコンベア11bの所定箇所にセットする。
工程4: 中途部切断刃12及び端部切断刃13,14を切断可能な所定箇所に移動させて回転駆動する。
工程5: 線香切断装置10,10’におけるコンベア11bを駆動し、受板11aを、中途部切断刃12及び端部切断刃13,14に向かって移動させ、受板11aに載置された生線香20の所定箇所を、中途部切断刃12及び端部切断刃13,14で切断し、生線香20を製品として使用される長さにする。
工程6: 端部切断刃13,14で切り落とされた生線香20の両端部は、回収して工程1の生線香押出し装置に投入し、次のロットの生線香20の原料として再利用する。
工程7: 工程5で製品として使用される長さに切断された複数本の生線香20を乾燥させる。
工程8: 乾燥した生線香20を所定本数ずつの束に結束する。
という工程を経て、線香を製造するものとなっている。
【0041】
本実施態様の線香の製造方法においては、上述した生線香切断装置10,10’を用いて上記工程5を行うので、上記工程5において生線香20を曲げることなく切断することができるようになっている。このため、上記工程8における結束作業を容易かつ綺麗に行うことができるようになっている。したがって、結束された線香が折れたりするなどの不具合も防ぐことができるようになっている。本実施態様の線香の製造方法は、各種線香を製造するのに好適に採用することができ、特に、高級線香を製造するのに好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 第一実施態様の生線香切断装置
10’ 第二実施態様の生線香切断装置
11 生線香移送手段
11a 受板
11b コンベア
12 中途部切断刃
12A 第一中途部切断刃
12B 第二中途部切断刃
12C 第三中途部切断刃
12a アーム
12b チェーン
13 端部切断刃
14 端部切断刃
15 支持軸
20 生線香

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生線香をそれに垂直な方向へ移送するための生線香移送手段と、
生線香移送手段で移送されてくる生線香の両端部を切り落とすための一対の端部切断刃と、
生線香移送手段で移送されてくる生線香の中途部を切断して短い複数条の生線香とするための中途部切断刃と、
を備えた生線香切断装置であって、
中途部切断刃が、生線香移送手段の移送方向に対して一対の端部切断刃よりも上流側に配され、中途部切断刃が生線香の中途部を切断してから一対の端部切断刃が生線香の両端部を切り落とすようにしたことを特徴とする生線香切断装置。
【請求項2】
中途部切断刃が複数箇所に設けられ、それぞれの中途部切断刃が生線香の中途部における異なる位置を切断するようにするとともに、それぞれの中途部切断刃が、生線香移送手段の移送方向に対してずれた位置に配され、2つ以上の中途部切断刃が同時に生線香を切断しないようにした請求項1記載の生線香切断装置。
【請求項3】
中途部切断刃が、その両側に傾斜した刃面を有する両刃とされ、一対の端部切断刃が、その外側の面のみに傾斜した刃面を有する片刃とされた請求項1又は2記載の生線香切断装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の生線香切断装置を用いて線香を製造することを特徴とする線香の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−16759(P2012−16759A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154033(P2010−154033)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(593031908)
【Fターム(参考)】