説明

生茹麺の製造方法

【課題】製造工程の簡素化及び製造コストの低廉化により麺製品を安価に提供可能で、且つ茹麺を食味する消費者の健康にも配慮した生茹麺の製造方法を提供する。
【解決手段】加水しながら撹拌した麺材料を、真空状態でスクリューで混捏しながら押し出して麺帯を形成する工程;麺帯をロールによる圧延工程を経て一枚の麺帯に圧延する工程;圧延した麺帯を単位量に切り出して生麺の状態の麺線を製麺する工程;麺線を、麺線を構成する麺材料の配合及び麺線の太さから割り出される通常の茹で時間の約半分の時間で茹で上げる工程;茹で上げた直後の高温の麺線を密封状態に保持して、その密封空間を略飽和水蒸気状態にする工程;密封状態に保持した麺線を徐冷し、その間に該麺線を熟成させると同時に、麺線の芯部までα化する工程;徐冷・熟成させた麺線を、冷却、凍結する工程;を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平麺、うどん、冷麺、日本そば、沖縄そば、あるいは、スパゲティ、中華麺等の生麺製品を、短時間で優れた食感をもつように食味可能にする生茹麺の製造方法に関するものであり、更に具体的には、通常、生麺を可食状態に茹で上げると、麺線表面において小麦粉成分が煮沸による糊化または溶出により所謂ヌル状になっているが、これを水洗によって除去するのではなく、このヌルの発生を極力抑制して水洗の必要をなくし、麺線同士の癒着や食感の低下をなくすようにした生茹麺の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
概して、平麺、うどん、冷麺、日本そば、沖縄そば、あるいは、スパゲティ、中華麺等の生麺の機械製麺工程では、原料粉に捏水及び添加物を加え、混合、複合、多段ロール圧延、調量切出しを行う方法が、従来から極めて一般的である。また、真空状態において混捏して粗麺帯に押し出したうえで、該粗麺帯を複数段のロール段数の圧延工程を経て徐々に圧延することにより所定の厚さの麺帯を形成し、その麺帯を切り出して生麺の状態の麺線を製麺する真空混捏方法も、特許文献1等において知られている。
【0003】
しかしながら、上述の混合、複合、多段ロール圧延、調量切出しを行う方法で製造した麺線は、多段ロールによる圧延工程を経て製麺されていても、密度及び脱気の程度も低い状態で生地形成されている。麺線は、その煮沸時に表面から芯部に向かってα化が進行するが、上記密度や脱気の程度が低い麺線をその全体が可食状態になるまで茹で上げると、その時点では、表面において過度の糊化や成分の溶出が生じていて、それを直ちに個食単位等で包装すると、麺線同士が癒着して所謂だんご状態になり、商品にすることはできない。そのため、包装前に水洗して表面のヌメリを洗い流し、冷水に浸漬して過度に膨潤した麺線を緊縮させている。
なお、特許文献1等に開示されている真空混捏方法によって得られる麺線については、真空状態において麺材料を混捏するために脱気が早期に行われる点で有利ではあるが、圧延工程後については上記と同様である。
【0004】
ところが、上述したように、茹で上げられた麺線の洗浄や冷却には多量の水を使用すると、それに伴うコスト増も然る事ながら、多量の水を茹で上げた麺線の洗浄・冷却のためだけに徒費することになるので、水資源の保全の観点からも好ましくない。
しかも、茹で上げられた麺線を冷水で冷却すると雑菌が繁殖しやすくなるため、該麺線を包装する前に浸漬冷却槽におけるpHコントロール等の薬液に浸漬し、包装後高温殺菌処理、紫外線照射や放射線照射、若しくは、包装材内のガス置換等による物理的な滅菌処理、又は、予め麺材料に防菌剤や保存料、若しくは品質改良剤等の食品添加物を添加することによる化学的な防菌・保存処理を行う必要があり、結果として、上述した麺線の洗浄・冷却のための設備も含め、麺製品を製造するための工程、設備、付帯設備等が大規模化すると同時に複雑化するばかりでなく、光熱水を含むランニングの消耗資材費が嵩んで、製造コストの増嵩化を招き、延いては麺製品の価格が高くなってしまうという問題点がある。
また、上述のように麺線に対して物理的又は化学的な処理を行うことは、麺製品を食味した場合に、それが人体の健康に直接的あるいは間接的に与える影響が未知数なものも少なくないため、麺線に対する上記物理的又は化学的処理は可及的に行わないようにするのが望ましい。
【0005】
そのうえ、上述のような工程を経て製麺される場合、生麺の状態の麺線を茹で上げた後の排水、及び茹で上げた麺線を洗浄・冷却した後の排水には、該麺線から溶け出した糊化デンプン、タンパク質、あるいは食塩等の水質汚染の要因となる成分が多量に含まれるため、その排水に高度の浄化処理を施す必要があり、したがって、高度な排水の浄化処理設備が必要となり、さらに麺製品の製造コストが嵩んでしまうという問題点も指摘されている。
【特許文献1】特開昭61−132132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
如上に鑑みて、本発明の技術的課題は、麺線の高密度化及び該麺線の茹で時間の最適化によって、該麺線の茹で上げ後にその表面に糊化デンプンやタンパク質等のヌメリが可及的に生じないようにすることにより、茹で上げ直後の高温の麺線を、冷水による洗浄・冷却を行なわずとも該麺線同士の癒着を招くことなく、且つ該麺線の食感を損なうことなく単位量に包装することができるうえに、茹で上げ直後の高温の麺線をそのまま包装可能とすることで、該麺線に滅菌や保存等のために食品添加物を添加する等の処理を施すことなく、茹麺の状態で長期間にわたってその品質を維持することができるようにし、延いては、製造工程の簡素化及び製造コストの低廉化により麺製品を安価に提供可能とするとともに、当該茹麺を食味する消費者の健康にも配慮した生茹麺の製造方法を提供することにある。
本発明の他の技術的課題は、茹で上げ後の排水に水質汚染の要因となる糊化デンプンやタンパク質等が可及的に溶け出さないようにすることで、高度な排水の浄化処理のための設備を必要とせず、延いては麺製品の製造コストの更なる低廉化を図ることができる生茹麺の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第1の生茹麺の製造方法は、加水しながら撹拌した麺材料を、真空状態においてスクリューで混捏しながら押し出して麺帯を形成する混捏麺帯成形工程;上記麺帯をロールによる圧延工程を経て麺帯に圧延する圧延工程;圧延した麺帯を単位量に切り出して生麺の状態の麺線を製麺する調量・切出工程;上記麺線を、該麺線を構成する麺材料の配合及び該麺線の太さから割り出される通常の茹で時間の約半分の時間で芯部までα化が進行しない状態に茹で上げる半茹工程;上記半茹でした直後の高温の上記麺線を容器内に密封状態に収容し、その容器内部の密封空間を略飽和水蒸気状態にする包装工程;密封状態に保持した上記麺線をそのまま徐冷し、その間に該麺線を熟成させると同時に、該麺線の芯部までα化する徐冷・熟成工程;徐冷・熟成させた上記麺線を、所定の保存温度にて保存する保存工程;を有することを特徴とするものである。
また、本発明の第2の生茹麺の製造方法は、上記第1の製造方法における徐冷・熟成工程及び保存工程に代えて、密封状態に保持した麺線をそのまま急冷し、腰のある麺線を得る急冷工程と、急冷した上記麺線を、その冷却温度にて保存する保存工程とを有し、殆どの製造工程を共通化して、腰のある麺線の需要に対応可能にしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る生茹麺の製造方法の好ましい実施形態においては、上記麺帯を一枚の麺帯に圧延する圧延工程を、単一または複数段のロールによる圧延工程とし、この圧延工程及び真空状態における混捏により、麺帯を形成する時間が著しく短縮される。
上記半茹工程における麺線の茹で上げは、温度が97〜100℃の茹で湯中において、通常の茹で時間の40〜60%の時間で行うのが望ましい。
また、上記包装工程においては、茹で上げた直後の高温の上記麺線を、約70〜90℃前後で、合成樹脂製の食品袋により密封包装するのが望ましい。
上述した生茹麺の製造方法により、麺材料から製麺して茹で上げた麺線の歩留まりを、210〜260%にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上に詳述したように、本発明に係る生茹麺の製造方法によれば、真空状態において混捏し吐き出した麺帯をロールによる圧延工程で圧延して麺帯の密度を高めたうえで麺生地形成するとともに、該麺線を麺材料の配合及び該麺線の太さから割り出される通常の茹で時間の約半分の時間で茹で上げて、該麺線を茹で上げた後に糊化デンプンやタンパク質等のヌメリが可及的に生じないようにすることにより、茹で上げ直後の麺線を麺線同士の癒着を招くことなく単位量に包装することができ、しかも、茹で上げ後の麺線の表面に上記ヌメリが生じないことで、茹で上げ後に冷水による洗浄・冷却を行う必要がなく、麺線の洗浄・冷却のために使用する多量の水を節約することができるとともに、茹で上げ直後の高温の麺線をそのまま包装可能とすることにより、包装前の滅菌処理、又は防菌剤や保存料、若しくは品質改良剤といった食品添加物を添加する必要がなく、麺製品の製造工程の簡素化、並びに製造コストの低廉化を図ることができ、延いては麺製品を安価に提供することができる。
【0010】
そのうえ、茹で上げ後の排水に水質汚染の要因となる糊化デンプンやタンパク質等が可及的に溶け出さないようにすることで、高度な排水の浄化処理のための設備を必要としないので、延いては麺製品の製造コストの更なる低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明に係る生茹麺の製造方法を実施するための最良の形態を説明するためのフローチャートである。
本発明に係る生茹麺の製造方法は、概略的には、図1に示すように、小麦粉等の麺製品の原材料を適宜の割合に配合した原料粉を、捏水を加えながら攪拌機(ミキサー)で撹拌する撹拌工程(ミキシング)と、撹拌した麺材料を、真空式の混捏機を使用して、真空状態においてスクリューで混捏しながら押し出し、麺帯を形成する混捏麺帯成形工程と、該麺帯を単一段のロール圧延機で圧延することにより一枚の麺帯に圧延する圧延工程と、該麺帯を1〜数食分単位等の個食単位量に調量して切り出し、生麺の状態の麺線を製麺する調量・切出工程と、該麺線を麺材料の配合及び該麺線の太さから割り出される通常の茹で時間の約半分の時間で茹で、芯部までα化が進行しない状態に茹で上げる半茹工程と、茹で上げた直後の高温の上記麺線を合成樹脂製食品袋等の容器に密封状態に保持して、その密封空間を略飽和水蒸気状態にする包装工程と、密封状態に保持した上記麺線を徐冷し、その間に該麺線を熟成させると同時に、該麺線の芯部までα化する徐冷・熟成工程と、徐冷・熟成させた上記麺線を、麺製品に応じた所定の保存温度にて保存する保存工程とを有している。
【0012】
さらに具体的に説明すると、上記撹拌工程においては、小麦粉、そば粉、あるいは米粉等の主原料粉、及び必要に応じて添加する食塩等の添加物で麺製品の原材料となる麺材料を、それぞれの麺製品に応じた割合で配合し、該麺材料に捏水を加えながら、攪拌機で該麺材料に対して水分が均一に混ざるように撹拌する。該撹拌機内で麺材料と捏水とを撹拌する時間は、麺材料に対して加えられる捏水の量(加水率)によって適宜調整するものであるが、概ね60〜180秒間行うのが適切であり、麺材料に対する加水率が増加するにしたがって短くすることができる。また、麺材料に対する加水率を約30〜33%程度とすると、以下に説明する真空式混捏機により真空状態において混捏することによる効果と相俟って、ほどよい湿潤感と強い腰とを兼ね備えた麺線を製麺することができる。
【0013】
捏水とともに撹拌された上記麺材料は、次の混捏麺帯成形工程において、真空式の混捏機を使用して真空状態においてスクリューで混捏しながら押し出すことにより、粗麺帯の形態の麺帯として上記混捏機の押出口から押し出される。該混捏機における麺材料の混捏は約30秒間前後行われる。このように、真空式の混捏機を使用してスクリューで押し出しながら麺材料を混捏することで、短時間に十分に脱気されて、簡易に高密度で腰の強い麺帯として形成することができる。
なお、上記麺帯の押し出しは、約720〜760Torrの真空状態で行うのが好ましいが、コストを無視すれば真空度がより高い方が望ましい。また、この混捏麺帯成形工程において形成される粗麺帯の厚さは、上記混捏機の設定により麺製品に応じた適宜の厚さに調整することができる。
【0014】
上記混捏機の押出口から粗麺帯の形態で押し出された上記麺帯は、圧延工程において、ロール圧延機を使用した単一段のロールによる圧延工程を経て、生麺の状態の麺線を製麺するための最終的な厚さまで圧延した一枚の麺帯に形成される。なお、上記ロール圧延機におけるロールは複数段にすることもでき、これは特に自然品添加機能麺を製造する場合の麺の切れをなくすのに有効である。上記混捏機内にこのロール圧延機を組み込むこともできる。粗麺帯から麺帯に圧延するときの圧延率は、該麺帯から生麺の状態に製麺された麺線を茹で上げたときに、その表面にヌメリができるだけ生じない程度に麺帯の密度を高めるものであることが望ましく、通常、約30〜10%程度とするのが望ましい。
【0015】
上記圧延工程で麺線を製麺する最終的な厚さまで圧延された麺帯は、調量・切出工程において、切出機で麺製品に応じた幅と長さで1〜数食分の単位量からなる生麺の状態の麺線に調量されて切り出される。この調量切出工程において切り出される上記麺線の単位量は、後述する包装工程において包装される麺線の単位量として、適宜調節することができるものである。
【0016】
上記調量・切出工程において生麺の状態に切り出された麺線は、次の半茹工程において、例えば移送装置上の茹で籠(バケット)内に収容されて茹上装置に移送され、該茹上装置の茹で槽内を移送されながら、所定の時間、熱湯中で半茹となる状態まで茹で上げられる。上記麺線の茹で上げ時間は、該麺線を構成する麺材料の加水率等を含めた配合、並びに該麺線の太さ等から割り出される通常の茹で時間(当業者は熟知している。)の約半分(40〜60%程度)の時間であり、この茹で時間では、麺線の芯部まで麺材料のα化が進行していない。また、この時間は、上記麺線の茹で上げによってその表面に糊化したデンプンやタンパク質等のヌメリが生じない範囲内の時間でもある。
【0017】
麺線を茹で上げる湯の温度は、約97〜100℃とするのが好ましい。麺線の表面にヌメリが生じない程度に素早く短時間に茹で上げ、麺線の解れをよりよくするためには、97〜100℃程度の湯温が最も好ましい。なお、計量切り出し生麺塊を茹で槽に投入時に、該茹で槽の温水を切り落としシューター常時流入させ、即加熱と麺の癒着をなくし、解れをよくすることもできる。
【0018】
上記半茹工程で茹麺となる直前の状態まで茹で上げられた直後の麺線は、高温を保持した状態で合成樹脂製の食品袋等の包装容器内に密封状態に包装される。このとき、麺線の表面には、上記半茹工程で茹で上げることによって糊化デンプンやタンパク質等のヌメリが生じるのを抑制しているので、麺線同士の癒着を招くことなく単位量毎の包装が可能である。そして、茹で上げ後の麺線を冷水によって洗浄して上記ヌメリを洗い流したり、過度に膨潤した麺線を引き締めるために冷水で冷却したりする必要がない。なお、高温状態の上記麺線は、半茹工程終了後、該麺線の滅菌状態を確実に保持し、且つ水分率を一定に保持するため、麺線の温度を大きく低下させることなく、具体的には麺線が約70〜90℃前後の温度を保持した状態、より好ましくは約80℃前後の状態で、且つ麺線表面の水分が多量に蒸発しないように速やかに密封状態に包装することが好ましい。このように、茹で上げ直後の高温の麺線をそのまま包装することにより、包装前の滅菌処理、又は各種防菌材や保存料、若しくは品質改良剤といった食品添加物を添加する必要がない。
【0019】
茹で上げられた上記麺線を食品用の包装袋に収容する場合を例にとって具体的に述べると、上記茹上装置で茹麺となる直前の状態まで茹で上げられた上記麺線は、移送装置上の茹で籠から単位量ごとに包装装置のシューターを通じて落下され、該包装装置内においてシューターの下方に保持されたポリエチレン等の合成樹脂製の包装袋内に投入されて、直ちに自動製袋機により密封包装が施される。
なお、上記包装容器としては、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエステル等の合成樹脂製の食品用包装袋あるいはフィルムによる密封包装等の形態を適用することができるが、必ずしも袋等の容器による必要はなく、内部空間をほぼ飽和水蒸気の状態に保持できるようにした密封状態を保持できる形態であれば、特に限定されるものではない。
【0020】
そして、包装容器内に密封状態に包装された高温の上記麺線は、その包装状態のままで徐冷・熟成工程において自然冷却され、あるいは冷却用クリーンエア等によって、50〜30℃程度、若しくは室温近くまで冷却される。このとき、高温状態の上記麺線が徐々に冷却される間に、該麺線を熟成させると同時に、該麺線の余熱でその芯部のβ麺部までα化され、最終的には麺線全体が適度にα化された茹麺の状態となる。即ち、適度な加水状態で密封包装された麺線は、全体的に適度な浸潤環境の状態にあるために、徐冷される間に該麺線の外側の高温状態のα化層から芯部のβ麺部に熱が徐々に伝達され、それによって麺線全体が略均一にα化され、その後の調理時間の短縮や食感の改善に有効である。なお、密閉包装内の飽和水蒸気状態は、包装内の温度の低下にともなって飽和状態が緩和される。また、包装単位量毎に適度な加水状態で密閉包装されているために、部分的に過度の水分が溜まるということや部分的な過度の水分吸収により麺線の表面が白く膨潤するということはない。
【0021】
ここで、生麺から茹で上げた食感、外観及び鮮度等を損なわないためには、麺線の徐冷は約1〜3℃/分の冷却速度で、徐冷時間は約20〜60分とするのが好ましい。この徐冷速度が1℃/分未満になると、徐冷時間が長くなって生産性が低下する傾向にあり、また徐冷速度が4℃/分を超え、それによって徐冷時間が20分未満になると、麺線の芯部までのα化が不十分となり、その後の調理時間が長くなる。
【0022】
この麺線は、常温あるいは冷蔵して保存できるが、それを冷却・凍結させる場合、上記徐冷を含むその工程は、2〜3時間以内で行うのが望ましい。
麺線と共に食品用袋に入った水蒸気は、麺線が30〜20℃程度の温度まで冷却される間に食品用袋内で凝縮して麺線に吸収されるため、包装容器は真空密閉したような状態となりその体積は減少する。
また、これにより、麺材料の状態から上述した各製造工程を経て製造された茹麺の歩留りは、一般的な茹で麺の歩留りが、260〜320%であるのに対し、210〜260%程度になる。
【0023】
徐冷・熟成工程を経て徐冷・熟成(α化)された密封状態の茹麺は、必要に応じて、梱包工程で段ボール箱やコンテナー等の梱包容器に機械又は人手により収容し、梱包される。梱包容器に収容された茹麺は、次の保存工程で梱包容器に収容されたままの状態で、麺製品の流通形態に応じて、常温、冷蔵、あるいは冷凍の状態で保存される。
上述したように、本発明に係る製造方法によって製造した茹麺は、常温、冷蔵、及び冷凍のいずれの状態での保存にも適するものであるが、具体的には、包装容器に密封状態に包装した茹麺は、常温保存(約20℃前後)で約3〜7日間、冷蔵保存(約5℃前後)で約7〜15日間、冷凍保存(約−18℃前後)で約12〜24ヶ月間の長期間にわたって、風味や食感を損なうことなく保存することができる。
【0024】
また、腰の強い麺線の需要がある場合には、上記各工程を、それを得るための条件で動作させることもできるが、上記製造方法における徐冷・熟成工程及び保存工程に代えて、密封状態に保持した麺線をそのまま急冷し、腰のある麺線を得る急冷工程と、急冷した上記麺線を、その冷却温度にて保存する保存工程とを採用することにより、殆どの製造工程を共通化して、腰のある麺線の需要に対応することができる。ここで行う急冷により、麺線の熟成は行われず、芯部を残すことになるが、この急冷とは、一般的には、10分程度で冷却することになる。
【0025】
以上に詳述したように、本発明に係る生茹麺の製造方法によれば、真空状態において混捏した麺帯を1〜複数のロール段数による圧延工程で圧延して麺帯の密度を高めたうえで麺線を生地形成するとともに、該麺線を麺材料の配合及び該麺線の太さから割り出される通常の茹で時間の約半分の時間で茹で上げて、該麺線を茹で上げた後に糊化デンプンやタンパク質等のヌメリが可及的に生じないようにすることにより、茹で上げ直後の麺線を麺線同士の癒着を招くことなく単位量に包装することができ、しかも、茹で上げ後の麺線の表面に上記ヌメリが生じないことで、茹で上げ後に冷水による洗浄・冷却を行う必要がなく、麺線の洗浄・冷却のために使用する多量の水を節約することができる。
【0026】
また、茹で上げ直後の高温の麺線をそのまま包装可能とすることにより、包装前の滅菌処理、又は防菌剤や保存料、若しくは品質改良剤といった食品添加物を添加する必要がなく、麺製品の製造工程の簡素化、並びに製造コストの低廉化を図ることができ、延いては麺製品を安価に提供することができるが、上記防菌剤や保存料、若しくは品質改良剤といった食品添加物を添加することを排除するものではなく、それらを添加したものは、冷蔵保存にて1週間無菌にできるなど、従来品の2倍以上の効果を上げることができる。
更に、従来から供給されている麺線は、それを調理する場合に、電子レンジによる調理、湯煎による調理、焼く調理、スチームで蒸す調理のいずれでも適用できることはなく、調理方法が限れているが、上述した方法で得られる麺線は、従来の麺線に比して水分が少ないことから、それらのいずれの調理方法でも適用することができ、調理の観点からも至便なものである。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明に係る生茹麺の製造方法を使用して、沖縄そばを製造した場合の実施例について説明する。
先ず、ブレンド小麦粉に約31%の加水率になるように捏水を加えて、真空式混捏機内において40〜60秒間撹拌した。次に、その麺材料を当該真空式混捏機を使用して740Torrの真空状態で混捏し、該混捏機の押出口から厚さ約10cmの粗麺帯の状態の麺帯として押し出し、それをロール圧延機で圧延率約40%で圧延して厚さ約4cmの麺帯を形成した。そして、その麺帯を切出機において所定の厚みに圧延して切り出し、生麺の状態の沖縄そばの麺線を形成した。
【0028】
その後、その麺線を120グラムを単位量として約97〜100℃の熱湯中で約2分間加熱することにより、該麺線の表面に糊化デンプンあるいはタンパク質等のヌメリが生じない程度に茹で上げ、該麺線の表層をα化させた。そして、その麺線を熱湯中から取り出した後、速やかにポリエチレン製の包装袋に入れて密封し(密閉直後の袋内はほぼ飽和水蒸気状態であった)、室温(28℃)中において冷却速度約2℃/分で約20分間徐冷・熟成させて、麺線の芯部までα化された茹麺の状態とした。この徐冷・熟成後の麺線は約40℃であり、包装袋内の水蒸気が該麺線に吸収されて殆ど気体部分がなくなっていた。
【0029】
この冷凍保存された茹麺を沸騰水で約90秒前後湯煎したものと、従来の製造方法で製造して冷凍保存された沖縄そばをその標準的なα化茹で時間である約3分間煮沸したものとを用意し、予め暖めた出し汁をかけて食することにより両者を比較した。
従来の製造方法で製造した沖縄そばは、全体的に過度に膨潤して表面に糊化デンプンやタンパク質等のヌメリが出てふやけた状態で、食感も腰がなく弾力性に欠けるものであるうえに、沖縄そば特有の風味が失われていた。
【0030】
これに対し、本発明に係る製造方法で製造した茹麺は、麺線の表面に糊化デンプンやタンパク質等のヌメリが全く見られず、強い腰と弾力性を兼ね備えているうえに、生麺から茹で上げた直後の沖縄そばの風味を保持していた。
即ち、本発明の製造方法により製造された沖縄そばは、従来の製造方法で製造された沖縄そばと比較して、冷凍麺でありながら釜上げの食感、外観及び風味(鮮度)等を良好に保持しており、食味、食感において優れた茹麺であることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る無洗生茹麺の製造方法の実施態様を説明するためのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水しながら撹拌した麺材料を、真空状態においてスクリューで混捏しながら押し出して麺帯を形成する混捏麺帯成形工程;
上記麺帯をロールによる圧延工程を経て麺帯に圧延する圧延工程;
圧延した麺帯を単位量に切り出して生麺の状態の麺線を製麺する調量・切出工程;
上記麺線を、該麺線を構成する麺材料の配合及び該麺線の太さから割り出される通常の茹で時間の約半分の時間で芯部までα化が進行しない状態に茹で上げる半茹工程;
上記半茹でした直後の高温の上記麺線を容器内に密封状態に収容し、その容器内部の密封空間を略飽和水蒸気状態にする包装工程;
密封状態に保持した上記麺線をそのまま徐冷し、その間に該麺線を熟成させると同時に、該麺線の芯部までα化する徐冷・熟成工程;
徐冷・熟成させた上記麺線を、所定の保存温度にて保存する保存工程;
を有する、
ことを特徴とする生茹麺の製造方法。
【請求項2】
加水しながら撹拌した麺材料を、真空状態においてスクリューで混捏しながら押し出して麺帯を形成する混捏麺帯成形工程;
上記麺帯をロールによる圧延工程を経て麺帯に圧延する圧延工程;
圧延した麺帯を単位量に切り出して生麺の状態の麺線を製麺する調量・切出工程;
上記麺線を、該麺線を構成する麺材料の配合及び該麺線の太さから割り出される通常の茹で時間の約半分の時間で芯部までα化が進行しない状態に茹で上げる半茹工程;
上記半茹でした直後の高温の上記麺線を容器内に密封状態に収容し、その容器内部の密封空間を略飽和水蒸気状態にする包装工程;
密封状態に保持した上記麺線をそのまま急冷し、腰のある麺線を得る急冷工程;
急冷した上記麺線を、その冷却温度にて保存する保存工程;
を有する、
ことを特徴とする生茹麺の製造方法。
【請求項3】
上記麺帯を一枚の麺帯に圧延する圧延工程が、単一または複数段のロールによる圧延工程である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生茹麺の製造方法。
【請求項4】
上記半茹工程における麺線の茹で上げを、温度が97〜100℃の茹で湯中において、通常の茹で時間の40〜60%の時間で行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生茹麺の製造方法。
【請求項5】
上記包装工程において、茹で上げた直後の高温の上記麺線を、約70〜90℃前後で密封包装する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生茹麺の製造方法。
【請求項6】
上記包装工程において、茹で上げた直後の高温の麺線を収容する容器が、合成樹脂製の食品袋である、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生茹麺の製造方法。
【請求項7】
麺材料から製麺して茹で上げた麺線の歩留まりが、210〜260%である、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の生茹麺の製造方法。

【図1】
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