説明

生鮮食品の加工方法

【課題】脱水シートを用いて生鮮食品から異質の調理食品を提供する加工方法を提供する。
【解決手段】ブロック状にカットした生鮮食品を脱水シート上に置き、該生鮮食品を脱水シートに接触させた状態で真空包装して生鮮食品に含まれるドリップを吸収させ、−10〜−30℃で冷凍した後、常温で自然解凍すること、好ましくは、前記生鮮食品は、野菜または果物であり、前記脱水シートは、水分を透過するフィルムの袋に還元水飴を塗り封止したシートであることを特徴とする生鮮食品の加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮食品の加工方法に関し、具体的には、野菜や果物などの生鮮食品の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水分を透過するフィルムの袋に還元水飴を塗り封止した脱水シートを使用し、冷凍の食肉や鮮魚の鮮度を維持したり保存性を高めたりする下処理を行う方法が行われていた。
【0003】
しかし、この方法の生鮮野菜への使用は旨味凝縮を目的とするが、この処理には3時間〜12時間を要し、素材の品質を劣化させてしまうという問題点があった。
【0004】
また、生鮮野菜は元来、繊維が破壊されておらず水分を抜くのに長時間を有してしまう という課題があり、また生鮮野菜を覆うだけでは野菜の鮮度も長時間処理による酸化が問題となっていた。
【0005】
先行技術文献として、例えば、特開2002−300847号公報(下記特許請求の範囲文献1)には、調味料が加えられた食品を脱水シートに接触させた状態で容器内に保持する加工工程と、その保持状態を維持したままで冷蔵または冷凍保存する保存工程とを有することにより低コストで鮮度の高い加工食品を提供する食品の加工・保存方法が記載されている。
【0006】
しかし、この方法は、調味料が加えられた食品を対象とし、加工時のドリップを吸い、旨味を増すことをメリットとし、魚肉の細胞破壊抑制を特徴とする方法であり、野菜や果物の加工には適用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−300847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、脱水シートを用いて生鮮食品から異質の調理食品を提供する加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)ブロック状にカットした生鮮食品を脱水シート上に置き、該生鮮食品を脱水シートに接触させた状態で真空包装して生鮮食品に含まれるドリップを吸収させ、−10〜−30℃で冷凍した後、常温で自然解凍することを特徴とする生鮮食品の加工方法。
(2)前記生鮮食品は、野菜または果物であることを特徴とする請求項1に記載の生鮮食品の加工方法。
(3)前記脱水シートは、水分を透過するフィルムの袋に還元水飴を塗り封止したシートであることを特徴とする(1)または(2)に記載の生鮮食品の加工方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脱水シートを用いて生鮮食品から異質の調理食品を提供する加工方法を提供することができ、冷凍状態から解凍状態の移行時間で繊維破壊で出るドリップを真空状態で吸い上げ「茹で上げ野菜」と同様の栄養価を与えることができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に用いる真空袋に生鮮食品を入れた状態を示す図である。
【図2】本発明の生鮮食品の加工方法の実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来の脱水シートは水分を吸収し逆戻りさせないことにより食品そのものの素材感を保つのが特徴であった。しかし、脱水シートでは異質の調理は行えず、ドリップ吸収による鮮度の維持を目的としており、異質の食品を製造する事はできず加工資材としては高価な資材である為に普及しにくかった

【0013】
図1は、本発明に用いる真空袋に生鮮食品を入れた状態を示す図であり、図2は、本発明の生鮮食品の加工方法の実施形態を例示する図である。図1および図2において、1は封止部、2は還元水飴、3は脱水シート、4は生鮮野菜、5は真空袋、6は野菜と脱水シートの接触面を示す。
【0014】
本発明は、ブロック状にカットした生鮮食品を脱水シート3上に置き、該生鮮食品を脱水シート3に接触させた状態で真空包装して生鮮食品に含まれるドリップを脱水シート3に吸収させ、−10〜−30℃で冷凍した後、常温で自然解凍することを特徴とする。本発明において、生鮮食品とは、野菜、果物のほか、肉、魚をいう。
【0015】
本発明は、脱水シート3を生鮮食品に被せたり包んだりということにに使用するのではなく、ブロック状にカットした生鮮食品を脱水シート3上に置き、真空袋5にピンホールがないことを確認して真空ポンプなどを用いて真空状態で減圧し細菌増殖を抑制し保存性を高め、−10〜−30℃で冷凍にすることによりさらに保存性を高め、冷凍から常温で自然解凍をするだけで栄養価の高い、火を使用しない旨味成分を多く残したボイルや蒸した生鮮食品と同様の食品が提供でき安全な食品加工方法を提供することができ、冷凍真空包装状態でドリップを水飴に吸収させ加熱状態のように異質の製品に仕上げるという特徴を有する。本発明においては、生鮮食品の種類は問わないが、野菜や果物に適用することによりその効果が顕著である。
【0016】
また、冷凍によって繊維破壊させた食材のドリップを真空包装で酸化させずに吸収し加熱野菜と同様の効果の持つ栄養素を高めることができる。図2(a),(b)に示すように、ブロック状にカットし、洗浄して水分を飛ばした生鮮野菜4を脱水シート3上に置き、図2(e),(f)に示すように、その脱水シート3を真空状態にする袋に入れて真空包装する。真空状態の生鮮野菜は脱水されることはなく、−10〜−30℃で冷凍し、常温で自然解凍を行うことで繊維破壊が起こり、カット面積が多くなるのでドリップが多く発生し、真空袋内の脱水シート3にドリップが吸収され、開封しても野菜にはドリップが残らず茹でた状態の栄養価の高い高い加熱野菜と同様の製品ができ上がる。本発明における解凍は、流水を用いて解凍してもよいが、自然解凍が望ましく室温10度から38度が好ましい。
【0017】
即ち、本発明によれば、−10〜−30℃で冷凍し常温で自然解凍することによって繊維破壊が起こりドリップを真空による減圧による加圧で有効に吸収され、従来よりも旨味を増し、真空包装を開封せずに調理ができる。なお、脱水シートの上に食材のカット面を配置してから水分を吸着するために配置後から冷凍を行う時間を1分から5分以内で行うことにより、水分の多い野菜や果物の鮮度を保つことができる。
【0018】
従来、水分を透過するフィルムの袋に還元水飴を塗り封止したもので使用する用途は、水分を吸収する為の下処理を行う為に使用しており、調理済み製品を製造することはできなかった。従来、水分を透過するフィルムの袋に還元水飴を塗り封止したもので干物製造や乾燥野菜は類似の効果を狙ったものは一般的に使用されている。しかしながら水分を抜くなど完成品に仕上げる為の工程の一部に使用されるものであった。本発明は水分を透過するフィルムの袋に還元水飴を塗り封止した脱水シート3の上に生鮮の野菜を断面から水分が抜けやすいようにカットして配置する。配置された野菜とシートは真空用の袋に入れて真空包装にする。この時点で従来は生鮮なので、水分を透過するフィルムの袋に還元水飴を塗り封止したシートでは何の効果も得られない、この用途であればシートの効果は得られない。しかし、この状態で冷凍にして保存しておくと劣化させずに商品の保存が長期間可能となる。本発明はこの状態から解凍をして繊維の破壊を起こし、野菜から出るドリップを真空包装の中に配置した水分を透過するフィルムの袋に還元水飴を塗り封止した脱水シート3にドリップが吸収され糖度や栄養素の高い調理野菜が可能となる冷凍保存調理方法を提供することができる。また、脱水シート3に塗られた浸透圧効果を有する還元水飴や、それに類する効果のあるペースト状のものの厚みを変えることで野菜の食感を変えることができると同時に真空包装されており、食品の表面酸化を同時に抑制することができる。
【0019】
このように、本発明は冷凍や生鮮の野菜のドリップを吸収するのではなく、生鮮野菜を全く異質の茹で上げた野菜と同様の栄養価を増した野菜を1つの工程で、冷凍状態を常温解凍で調理することができる。従来は野菜の甘みを引き出すには加熱をして(蒸す、茹でる、焼く)という行為で火を使用して、本発明は、この茹でる、蒸すと同様の効果を火を使用せずにカット野菜を繊維破壊させドリップを出すことで、容易に茹でる・蒸すの効果を火を使用させずに可能とした。また、従来の茹でる・蒸すでは野菜の糖度は増すが、火を使用する必要があり、糖度は本発明より低く、例でいうと茹でたキャベツで糖度5、本発明で9度の数値を出すことができる。
【0020】
ここで使用する脱水シート(還元水飴をフィルムで挟み封止した)の上に調理に合わせたカットした固形の野菜の断面をシート面に設置させ、水分が浸透圧で抜けやすく配置する。このような状態で真空する袋に入れて図1の状態にする。次に真空包装し配置したフィルムがカットした野菜に密着するようにする。その後、冷凍にし、この冷凍方法は緩慢冷凍でも急速冷凍でも構わない。冷凍した野菜は常温で自然解凍し、解凍しながら野菜からは結晶化された水分が真空包装上で溶解し繊維破壊を起こし、ドリップが発生する。このドリップを解凍しながら密着した非凍結のフィルムを介して糖質に浸透圧で移行していく。このように不要な水分が解凍と同時にフィルムに吸着される為に、鮮度を劣化させずに火を使用せずに茹でたり・蒸したりする効果を常温解凍で可能とすることができる。
【0021】
本発明によれば冷凍状態のカット野菜を自然解凍するだけで従来の野菜を蒸したり、茹でたりした状態よりも糖度が高くなり栄養価が高く旨味が凝縮された繊維破壊しドリップを真空状態で中に挿入された高分子脱水シートに余分な水分が吸収されるという製品で火を使用しない茹でる効果が得られ高齢者の栄養素摂取や火を使用しない調理が可能となる。具体的には、本発明によれば、真空浸透圧で加工機器の使用なくして自由水の脱水により栄養価を高め、糖度を50%以上向上させることができる。
【0022】
脱水シートとしては、食品の内部から水分を除く脱水能力を有したものであれば制限はなく、2枚の半透膜(フィルム)の間に高浸透圧物質が挟持された浸透圧脱水シートなどを例示できる。高浸透圧物質としては、10気圧以上の浸透圧を有する水飴、砂糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、マンニトール、ソルビトール、還元水飴などの糖類の水溶液や、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。また、これらの高浸透圧物質を使用する場合には、高浸透圧物質が吸水した場合でも、一定の粘度を維持するように特公平4−33491号公報に開示されているような水溶液糊料を、高浸透圧物質に添加して使用することが好ましい。半透膜としては、普通セロファン、普通セロファンと紙との積層フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、コロジオン膜、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリアミドフィルムなどが例示できる。これらの中では、ポリビニルアルコールフィルムが好ましい。
【0023】
また、脱水シートの他の例としては、吸水層と、その少なくとも一方の面に備えられた透水材とからなる脱水シートが挙げられる。吸水層は、高吸水性物質である高分子吸水剤や、毛細管現象で吸水可能な物質などから構成される。また、吸水層にはグリセリンやプロピレングリコールなどの多価アルコールからなる吸湿剤を添加して、吸湿能を向上させてもよい。高分子吸収剤としては、一般に生理用品、紙おむつ、土壌改良剤などに使用されているものが使用できる。具体的には、澱粉、セルロースなどのような多糖類に対して、水溶性または加水分解により水溶性となる重合性モノマー、またはこの重合性モノマーのオリゴマー、コオリゴマーをグラフト重合させ、必要に応じて加水分解させて得られた親水性ポリマーを、架橋剤によって三次元構造としたものが挙げられる。なお、重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、これらの塩やエステル、アミドなどの誘導体、アクリロニトリルなどが例示できる。さらに高分子吸収剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリ−N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニル化合物の重合体、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸およびその塩、エステル、アミドなどの誘導体、ポリアクリルアミドなどの親水性ポリマーを架橋剤によって三次元構造としたものが挙げられる。これらの高分子吸水剤は、粉状、繊維状などの形態で、あるいは、パルプや不織布で挟持されたり担持された形態で使用できる。
【0024】
毛細管現象を利用した物質としては、繊維間隔が500μm以下の綿状、布状、不織布状の物質、あるいは連続気泡(連続多孔質物質)を持つ発泡体など表面積が大きく、毛細管を形成し、水分を保持するような構造を有するものであればよい。さらには親水性の素材であれば一層好ましい。具体的には、パルプ、木綿、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維などの親水性繊維を綿状に集めたもの、合成繊維の不織布、発泡ウレタンなどの合成樹脂の連続気泡型の発泡体などが好ましい。透水材としては、紙、パルプ、布、不織布、連続気泡の発泡体や、ポリオレフィンフィルムなどの非透水性フィルムに多数の小孔を設けたものなどが挙げられる。
【0025】
以上例示した脱水シートのうちでは、2枚の半透膜(フィルム)の間に高浸透圧物質が挟持された浸透圧脱水シートがより好ましい。このような脱水シートを使用すると、食品内部から均一に脱水することができる。
【0026】
また、本発明においては、吸水能力の高い高吸水能力の脱水シートを使用することが好ましい。ここで、高吸水能力な脱水シートとは、加工工程で食品から水分を脱水しても、後の保存工程で食品から発生するドリップなどをさらに吸水する能力を備えているものである。このような高吸水能力な脱水シートとしては、半透膜である2枚のポリビニルアルコールフィルムの間に、高浸透圧物質が2mol/m2 以上、好ましくはコストの面から2〜8mol/m2 封入されているような浸透圧脱水シートが好ましい。
【符号の説明】
【0027】
1 封止部
2 還元水飴
3 脱水シート
4 生鮮野菜
5 真空袋
6 野菜と脱水シートの接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック状にカットした生鮮食品を脱水シート上に置き、該生鮮食品を脱水シートに接触させた状態で真空包装して生鮮食品に含まれるドリップを吸収させ、−10〜−30℃で冷凍した後、常温で自然解凍することを特徴とする生鮮食品の加工方法。
【請求項2】
前記生鮮食品は、野菜または果物であることを特徴とする請求項1に記載の生鮮食品の加工方法。
【請求項3】
前記脱水シートは、水分を透過するフィルムの袋に還元水飴を塗り封止したシートであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生鮮食品の加工方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−172549(P2011−172549A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41150(P2010−41150)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(510042482)
【Fターム(参考)】