説明

産後ケア用品

【課題】分娩直後の短い期間において悪露処理とともに腹筋および骨盤の手当を行える産後ケア用品を提供する。
【解決手段】産後ケア用品(1)は、不織布製であり、尻当て部(11)、股当て部(12)、腹当て部(13)が連続して一体に形成されるとともに、前記尻当て部811の左右端から側方に突出して前記腹当て部(13)に係合される帯状係合部(14)(15)が一体に形成されたショーツ型のT字帯(10)と、前記T字帯(10)の股当て部(12)に装着される吸水性パッド(30)(31)と、前記T字帯(10)の内側に左右の帯状係合部(14)(15)に沿って配置される帯状布帛であり、両端部で腹部を覆うように巻いて腹直筋を支える腹帯(40)と、前記腹帯(40)よりも幅の狭い帯状布帛であり、骨盤下方部に巻き締めて骨盤を固定する骨盤固定帯(50)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分娩直後に悪露処理と骨盤固定のために使用される産後ケア用品に関する。
【背景技術】
【0002】
妊娠時には、産道を確保するためにホルモンの分泌により骨盤を構成する骨と骨を繋ぐ靱帯が緩み、恥骨結合や仙腸関節が緩んで骨盤輪が拡大される。このような骨盤の緩みは、分娩後ホルモンが分泌されなくなると回復するが、靱帯の緩みが大きい場合は自然には回復せず、さらに骨盤の緩みから歪みが生じて腰痛の原因となる。また、靱帯が弱く妊娠時に骨盤が広がりすぎていると、早くから胎児の頭部があごを開いた状態で骨盤下方部内に入り込み、分娩時に骨盤を通り抜けにくい姿勢となる。
【0003】
このため、妊娠時から骨盤輪を適度に締めて過度の緩みや歪みを防止し、分娩後は緩んだ骨盤を早く回復させる必要がある。妊娠中および出産後に使用する腹帯には腹部や腰椎を支える機能(特許文献1、2参照)の他、骨盤輪を固定する機能を有するものが提案されている(特許文献3〜5参照)。
【特許文献1】特開2005−42225号公報
【特許文献2】特開2005−207001号公報
【特許文献3】登録実用新案3037772号公報
【特許文献4】特開2005−58539号公報
【特許文献5】特開2005−60900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
骨盤の固定や腹部の支持は分娩後直ちに行うことが好ましいと考えられる。しかしながら、分娩直後にはT字帯で悪露処理用の吸水性パッドを体にあてがう処置がなされるため、腹筋や骨盤をケアするための処置は後手に回りがちである。しかも、ディスポーザブルの悪露処理用品と腹帯や骨盤ケア用品とは別途準備されているため、分娩現場では介助者がこれらの用品を適宜組み合わせて使用しているのが実情である。
【0005】
また、上記特許文献に記載された腹帯や骨盤固定帯は、出産後ある程度身体が回復し、家事等の軽作業を伴う日常生活に戻ってから使用するように設計されている。例えば、フィット性、装着の簡便性、ずれ防止を目的として、伸縮性材料を使用したり、二重に巻いた帯がずれないように挿通孔を設けたり、面ファスナで係着する等の工夫がなされている。また、長期間使用するために耐久性のある材料が用いられている。このような機能が付加された腹帯や骨盤固定帯は構造が複雑で嵩張るため、分娩直後の嵩高い吸水性パッドを装着した状態で使用するには適さない。また、種々の機能を付加することでコストが高くなる。このため、吸水性パッドとともに使用する腹帯や骨盤固定帯として、安価なディスポーザブル品が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した状況に鑑み、分娩直後の短い期間において悪露処理とともに腹筋および骨盤の手当を行える産後ケア用品の提供を目的とする。
【0007】
即ち、本発明の産後ケア用品は、下記[1][2]に記載の構成を有する。
【0008】
[1] 不織布製であり、尻当て部、股当て部、腹当て部が連続して一体に形成されるとともに、前記尻当て部の左右端から側方に突出して前記腹当て部に係合される帯状係合部が一体に形成されたショーツ型のT字帯と、
前記T字帯の股当て部に装着される吸水性パッドと、
前記T字帯の内側に左右の帯状係合部に沿って配置される帯状布帛であり、両端部で腹部を覆うように巻いて腹直筋を支える腹帯と、
前記腹帯よりも幅の狭い帯状布帛であり、骨盤下方部に巻き締めて骨盤を固定する骨盤固定帯とを備えることを特徴とする産後ケア用品。
【0009】
[2] 前記骨盤固定帯は、長手方向で二つ折りにして一端側に輪を形成し、この輪端に他端側の一方の耳端を通して引き締め、他方の耳端と引き締め可能に一結びし、残余部分を骨盤固定帯に挟み止めることにより緊締される請求項1に記載の産後ケア用品。
【発明の効果】
【0010】
[1]に記載された発明によれば、悪露処理とともに、腹筋支持と骨盤固定の手当を行うことができる。しかも、腹帯および骨盤固定帯は単なる帯状布帛であるから嵩張らず、吸収性パッドとともに支障なく装着することができる。また、腹帯および骨盤固定帯は不織布製T字帯と吸水性パッドと同様にディスポーザブル品である。
【0011】
[2]に記載された発明によれば、骨盤固定帯による締め付け力が強くかつ調節が容易である。また、緊締した骨盤固定帯は緩みにくいが、挟み止めた部分を外せば容易に解けるため、吸収性パッド交換が容易である。さらに、結び目が小さいため腹部への食い込みが少なく、吸収性パッドが緩衝材としても機能する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明にかかる産後ケア用品(1)の一実施形態であり、T字帯(10)、吸水性パッド(30)(31)、腹帯(40)および骨盤固定帯(50)により構成されている。
【0013】
図2AにT字帯(10)を展開した状態を示す。T字帯(10)は、伸縮性不織布からなり、尻当て部(11)、股当て部(12)、腹当て部(13)が連続して一体に形成されるとともに、前記尻当て部(11)の左右から側方に突出して前記腹当て部(13)に係合される帯状係合部(14)(15)が一体に形成されている。そして、前記帯状係合部(14)(15)が十分な幅を有することによって腰回りをすっぽりと包むショーツ型のT字帯となされている。
【0014】
前記尻当て部(11)は、上端縁が左右の脇(11a)(11a)で上方に傾斜するとともに、その延長線上に帯状係合部(14)(15)が連続し、左右の帯状係合部(14)(15)が尻当て部(11)から上方に傾斜している。これにより、一方の帯状係合部(14)の上端縁から尻当て部(11)の上端縁を経て他方の帯状係合部(15)の上端縁に至るウエストライン(L1)が緩やかなカーブで形成されている。また、帯状係合部(14)(15)を上方に傾斜させたことで、帯状係合部(14)(15)は上端縁よりも下端縁の長さが拡大されている。換言すれば、ウエスト寸法を拡大することなくヒップ寸法や股ぐり寸法が拡大されている。また、腹当て部(12)および股当て部(13)の側縁から帯状係合部(14)(15)の下端縁に至る股ぐりライン(L2)はカーブで形成されている。
【0015】
前記T字帯(10)は、ループシートとフックシートを組み合わせた面ファスナーの開閉とゴムテープによって、任意サイズのショーツ型となる。即ち、一方の帯状係合部(14)の先端側の外面には、左右方向(帯状係合部の長さ方向)に長いループシート(20a)が縫着され、かつ先端部にフックシート(21b)の小片が重ねて縫着されている。他方の帯状係合部(15)の先端側には、内外両面に、左右方向(帯状係合部の長さ方向)に長いループシート(21a)(22a)が縫着され、かつ内面の先端部にはループシート(20b)の小片が重ねて縫着されている。また、前記股当て部(13)の内面の先端部には左右にループシート(22b)(22b)の小片が縫着されている。さらに、前記ウエストライン(L1)および股ぐりライン(L2)のループシート(20a)(21a)(22a)を除く部分にゴムテープ(23)(24)(24)が縫着され、伸縮自在となされている。
【0016】
また、前記尻当て部(11)および腹当て部(13)の内面に、それぞれ前記股当て部(12)に臨んで開口する開口部(17a)(18a)を有し、クッション用パッド(25)を装着するためのポケット(17)(18)が形成されている。これらのポケット(17)(18)はいずれも本体部分と同一の不織布によるものである。前記尻当て部(11)側のポケット(17)は、所要形状に裁断したポケット用不織布を台布となる尻当て部(11)上に重ね、開口部(17a)および側縁を除く輪郭線(17b)に沿って超音波接合したものであり、さらに側縁にゴムテープ(24)を縫着することによって開口部(17a)を有する袋状に形成されたものである。一方、腹当て部(13)側のポケット(18)は、ポケット用不織布を股当て部(13)と連続して一体に裁断し、境界線(18b)で折り返して腹当て部(13)上に重ね、側縁にゴムテープ(24)を縫着することによって開口部(18a)を有する袋状に形成されたものである。
【0017】
吸水性パッド(30)(31)は、いずれも外面側に防水シートを有する悪露処理用パッドである。本実施形態では大小2枚を重ねて使用し、直接患部に触れる小パッド(31)の交換を容易にするとともに、小パッド(31)から漏れても大パッド(30)で吸収できるように構成している。
【0018】
腹帯(40)は晒木綿製であり、幅33cm×長さ250cmのものを縦横四つ折りにして幅16.5cm×長さ125cmで使用する。
【0019】
骨盤固定帯(50)もまた晒木綿製であり、幅30cm×長さ250cmのものを幅方向で四つ折りにして幅7.5cm×長さ250cmの細帯状とし、さらに長手方向の中央で二つ折りして引き揃え、幅7.5cm×長さ125cmの状態で使用する。このように折り畳んだ状態では、一端側が輪となって輪端(51)を形成し、他端側は引き揃えられた2つの耳端(52a)(52b)となる。
【0020】
次に、上述した産後ケア用品(1)の使用方法について説明する。
【0021】
まず、前記T字帯(10)の使用方法について、T字帯(10)を単独で示した図2A〜図2Cに沿って説明する。
【0022】
〈T字帯の使用方法〉
(I−1) 図2Aに示すように、クッション用パッド(25)の両端をポケット(17)(18)の開口部(17a)(18a)に差込み、股当て部(12)上に装着する。両端部をポケット(17)(18)内で拘束することにより、パッド(25)は前後方向にも左右方向にもずれが防止される。
【0023】
(I−2) 図2Bに示すように、右帯状係合部(14)上に左帯状係合部(15)を重ね、対となる面ファスナ(20a)(20b)、(21a)(21b)を閉じる。両方の帯状係合部(14)(15)の接触面、即ち右帯状係合部(14)の外面および左帯状係合部(15)の内面には、いずれも左右方向に長いループシート(20a)(21a)の上にフックシート(20b)(21b)の小片が取り付けられているため、2つのフックシート(20b)(21b)をループシート(20a)(21b)上の任意位置に係合させることができる。これにより、ウエストまわりの寸法を無段階に調節できる。また、帯状係合部の先端が常に他方の帯状係合部に係合しているので、いかなる寸法に調節しても余剰部分がぶら下がったり捩れたりせず、極めて着崩れしにい。
【0024】
(I−3) 図2Cに示すように、股当て部(13)を帯状係合部(14)(15)上に載せて面ファスナー(22a)(22b)を閉じる。左右いずれの帯状係合部(14)(15)にも外面にループシート(20a)(22a)が取り付けられているので、ウエスト寸法の大小にかかわらず腹当て部(13)のフックシート(22b)(22b)の対向位置にループシート(20a)(22a)が存在しており、これらを閉じることができる。
【0025】
また、前記T字帯(10)は、尻当て部(11)の上端縁が左右の脇でカーブして上方に傾斜し、かつその延長線上に帯状係合部(14)(15)を連続させた立体裁断によるものである。このため、ウエストライン(L1)が水平になるように左右の帯状係合部(14)(15)を係合させると、必然的に帯状係合部(14)(15)の股ぐり線(L2)の近傍が尻当て部(11)から離れてショーツ内部に立体空間が形成され、腰回りや腹部の丸みに沿うものとなる。また、帯状係合部(14)(15)を上方に傾斜させたことで、ウエスト寸法を拡大することなくヒップ寸法や股ぐり寸法が拡大されて身体形状に即した寸法比率となっている。さらに、ゴムテープ(23)(24)による伸縮および不織布自体の伸縮が加わって高いフィット性が得られる。このようにフィット性の高いT字帯(10)を用いることにより、クッション用パッド(25)、吸水性パッド(30)(31)および腹帯(40)がずれにくくなり、吸水性パッド(30)(31)からの漏れを防止するとともに腹帯(40)による腹筋支持効果を確保できる。
【0026】
次に、前記T字帯(10)を含めた産後ケア用品(1)の装着方法について説明する。本発明の産後ケア用品(1)は分娩直後に使用するものであるから、ここでは図1および図3A〜図3Fを参照しつつ、分娩台やベッドに仰臥した産婦に介助者が装着させる場合に即して説明する。
【0027】
〈産後ケア用品の装着方法〉
(II−1) 図1に示すように、展開したT字帯(10)の内側に腹帯(40)と2枚の吸水バッド(30)(31)を重ねる。腹帯(40)はT字帯(10)の左右の帯状係合部(14)(15)に沿わせて配置する。
【0028】
(II−2) 図3Aに示すように、(II−1)でセットしたT字帯(10)を産婦の腰腹部の下に差し込み、腹帯(40)の両端部を下腹部上に重ねて覆う。このとき離間した腹直筋を中央に寄せるようにして締めて下腹部を支持し、臍が少し見える程度の位置に腹帯(40)を巻く。
【0029】
(II−3) 図3Bに示すように、T字帯(10)の帯状係合部(14)(15)を重ねて係止させる(図2B参照)。左右の帯状係合部(14)(15)を係止させることにより、腹帯(40)が解けるのを防いで適度の締まり具合が維持される。さらに、内側の小さい吸水性パッド(31)を患部にあてがい、さらに大きい吸水性パッド(30)で十分に恥骨を覆う。
【0030】
(II−4) 図3Cに示すように、T字帯(10)の腹当て部(13)を帯状係合部(14)(15)に載せて仮止めする。この状態で、産婦の太もも側から臀部をすくい上げるようにして骨盤の下方部に対応する位置に骨盤固定帯(50)を差し入れる。骨盤固定帯(50)の位置は、幅方向の上端縁が骨盤の上前腸骨棘にかからないようにし、下端縁が大腿骨の大転子の横端に一致するようにする。また、長手方向においては、輪端(51)が正中にくるようにする。
【0031】
(II−5) 図3Dに示すように、T字帯(10)の腹当て部(13)の仮止めを外し、産婦を骨盤高位にして骨盤固定帯(50)の輪端(51)に一方の耳端(52a)を通して強く引き締め、もう一方の耳端(52b)と交差させて1回巻き付ける。即ち、両方の耳端(52a)(52b)を引けば締まる状態に一結びする。
【0032】
(II−6) 要すればさらに1回または複数回引き締め、図3Fに示すように、耳端(52a)(52b)の残余部分を骨盤固定帯(50)に挟み止める。これにより、骨盤の下方部が緊締されて固定される。このとき、骨盤固定帯(50)の結び目(両方の耳端が交差する部分)を吸水性パッド(30)上で作る。また、骨盤の左右に均等な締め付け力を与えるために正中で結び目を作ることが好ましいが、恥骨中央を避けて3cm程度ずらせることによって、締め付け力の均等を保ちつつ結び目の食い込みによる痛みを少なくすることができる。
【0033】
(II−7) 図3Fに示すように、T字帯(10)の腹当て部(13)を帯状係合部(15)に係止する。図4および図3Fに示すように、骨盤固定帯(50)は背面側ではT字帯(10)の外側にあり、腹部側では吸水性パッド(30)とT字帯(10)の腹当て部(13)との間にある。このため、吸水性パッド(30)およびクッション用パッド(25)が結び目の緩衝材となり、しかも骨盤固定帯(50)はT字帯(10)に挟まれたことでずれが防止される。
【0034】
上述した産後ケア用品(1)において、フィット性の高いショーツ型のT字帯(10)を用いることによって腹帯(40)を締めた状態を保持できる。腹帯(40)は骨盤固定帯(50)のように緊締する必要がないから、布帛を結ぶことなく少し締めた状態で腹部を覆ってT字帯(10)を装着すれば、解けることなく必要な締め付け力を保持できる。このため、腹帯(40)自体に面ファスナ等の係着具を必要とせず、単なる布帛を腹帯として使用することができる。また、外れないように何重にも巻く必要もなく、背面から回した腹帯(40)の両端部が重なる程度の長さがあれば足りる。従って腹部まわり寸法に数10cmを加えた長さがあれば良い。
【0035】
骨盤固定帯(50)は、骨盤の下方部をしっかりと固定するために腹帯(40)よりも強い締め付け力が必要である。このため、帯状の布帛を巻いてT字帯(10)で保持するだけでは締め付け力が足りず、解けないように緊締する必要がある。骨盤固定帯(50)の緊締方法は限定されないが、上述したように、骨盤固定帯(50)を二つ折りにして一端側を輪端(51)とし、他端側の耳端の一方(52a)を通して引き締め、他方の耳端(52b)と交差させて1回巻き付けて引けば締まる状態に結び、残余部分を身体と骨盤固定帯(50)との間に挟んで止める方法を推奨できる。この緊締方法によれば、結んだ後に繰り返して引き締めることができるために仰臥した産婦に対して介助者が操作し易く、所期する締め付け力を容易に得ることができる。また、結び目が固く締まっておらず挟んだ残余部を外せば緩むため、吸水性パッド(30)(31)を交換する際にも容易に骨盤固定帯(50)を外すことができる。特に直接患部に触れる小パッド(31)は頻繁に交換するため、簡単に脱着できることは重要である。耳端(52a)(52b)の残余部分は挟み止めているだけであるが、分娩直後の安静期で産婦の動作も少ないため、動作による緩みも少ない。しかも頻繁に行うパッド交換の度に締め直すのであるから、装着中は継続して十分な骨盤固定力を得ることができる。また、耳端(52a)(52b)を1回巻き付けただけであるから結び目は小さく、身体への食い込みは少ない。しかも吸水性パッド(30)(31)が緩衝材となって結び目の食い込みを緩和する。分娩直後は複数枚あるいは厚い吸水性パッドを装着しているため、吸水性パッドによって十分な緩衝力が得られる。
【0036】
このような単なる布帛を用いた緊締方法は、家事等の日常動作を伴う時期に産婦自らが着脱するには適さないが、分娩直後で着脱を介助者に委ねる時期には適している。
【0037】
なお、本発明は骨盤固定帯による緊締方法を上述した方法に限定するものではない。その他の緊締方法として、輪端(51)に両方の耳端(52a)(52b)を通して両残余部を揃えて挟み止める方法や、骨盤固定帯の両端を本結びにする方法等を例示でき、本発明はこれらの緊締方法を排除するものではない。しかし、上述した緊締方法は、締め付け力が強くかつ調節が容易である、緩みにくいが挟み止めた部分を外せば容易に解ける、結び目が小さくく腹部への食い込みが少ないという点で推奨できる。
【0038】
前記腹帯(40)および骨盤固定帯(50)として用いる布帛に係合具は不要であり、裁断端のほつれ止めですら必要とせず、材料を裁ち切ったままで使用できる。腹帯(40)および骨盤固定帯(50)として単なる布帛を用いることは、不織布製T字帯(10)および吸水性パッド(30)(31)がディスポーザブル品であるから、腹帯(40)および骨盤固定帯(50)にもディスポーザブル品を使用したいという産婦や介助者の要求に合致するものである。また、単なる帯状布帛であるから嵩張らず、吸収性パッドとともに支障なく装着できる。
【0039】
前記腹帯(40)および骨盤固定帯(50)に用いる布帛の種類は特に限定されないが、直接皮膚に直接触れるものであり、吸湿性に優れかつ安価な点で晒木綿を推奨できる。但し、本発明は種々の化学繊維、麻や絹の天然繊維を除外するものではない。また、布帛に着色やのり付け等の加工は不要であるが、骨盤固定帯(50)には蛍光剤で処理した布帛をしても良い。蛍光剤処理をした布帛は滑りが良いので、輪端(51)に耳端(52a)を通して引き締める際に布帛どうしが滑って引き締め易いからである。勿論、蛍光剤によって滑りが良くなるといっても、強く引き結んで挟み込んだ骨盤固定帯(50)が解けてしまう程の滑りではなく、骨盤の固定力が阻害されることはない。一方、腹帯(40)は布帛同士を滑らせる必要がなく重ねた状態が緩まない方が好ましいので、無蛍光の布帛を用いることが好ましい。これらの布帛は保持力や締め付け力を高めるために、適宜折り畳むなどして複数枚の布帛を重ねて使用することが好ましい。また、腹帯(40)は腹直筋をしっかりと支持するために幅10〜20cmのものを用いることが好ましく、特に、幅12.5〜17.5cmの範囲が好ましい。一方、骨盤固定帯(50)は骨盤の上前腸骨棘から大腿骨の大転子の間に装着するために幅5〜10cmのものが好ましく、特に6.5〜8.5cmのものが好ましい。上述した帯の幅はいずれも使用時の幅であり、重ねた布帛の枚数に拘わらず、上記幅の帯として使用する。
【0040】
本発明の産後ケア用品は上述した実施形態に限定されない。
【0041】
T字帯は、十分な幅を有する帯状係合部によって腰回りをすっぽりと包むショーツ型であれば良い。上記実施形態では、この基本形のショーツ型T字帯に、伸縮性不織布の使用、立体裁断、ウエストラインおよび股ぐりラインのゴムテープ、面ファスナの取付位置等の要素を付加してフィット性をさらに高めたものである。これらの付加要素は、無くても良いし、任意の1種または2種以上が追加されたものであっても良い。さらにフィット性を高めるために他の要素が追加されたものであっても良い。なお、伸縮性不織布としては、不織布材料にラテックス、ポリウレタン等の伸縮性素材を加えたものや、これらの異種素材を用いずに、熱処理によって繊維に伸縮性を付与したものを例示できる。また、不織布に撥水加工や抗菌加工を施すことも好ましい。また。T字帯において、帯状係合部と腹当て部の係合手段、帯状係合部相互の係合手段も面ファスナーに限定されず、繰り返し使用できる粘着テープ等も使用できる。また、パッドを装着するためのポケットの有無も任意である。また、上記実施形態では、T字帯のポケット内パッドはクッション材として使用し、別途悪露処理用パッドを装着するようにしているが、ポケット内に悪露処理用の吸水性パッドを挿入して使用することもできる。
【0042】
吸収性パッドは、寸法や枚数を限定するものではなく、適宜設定すれば良い。しかし、パッド交換の便宜、漏れ防止、骨盤固定帯の結び目の緩衝性等を考慮すると、大小2枚のパッドを用いることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の産後ケア用品はディスポーザブル品であり、分娩直後の悪露処理とともに腹筋および骨盤のケアに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の産後ケア用品の全体斜視図である。
【図2A】図1の産後ケア用品におけるT字帯の展開図である。
【図2B】図2AのT字帯の着用途中の状態を示す斜視図である。
【図2C】図2AT字帯の着用完了の状態を示す斜視図である。
【図3A】図1の産後ケア用品の装着手順を示す斜視図である。
【図3B】図1の産後ケア用品の装着手順を示す斜視図である。
【図3C】図1の産後ケア用品の装着手順を示す斜視図である。
【図3D】図1の産後ケア用品の装着手順を示す斜視図である。
【図3E】図1の産後ケア用品の装着手順を示す斜視図である。
【図3F】図1の産後ケア用品の装着手順を示す斜視図である。
【図4】立位において産後ケア用品の装着状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1…産後ケア用品
10…T字帯
11…尻当て部
12…股当て部
13…腹当て部
14,15…帯状係合部
30,31…吸水性パッド
40…腹帯
50…骨盤固定帯
51…輪端
52a,52b…耳端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布製であり、尻当て部、股当て部、腹当て部が連続して一体に形成されるとともに、前記尻当て部の左右端から側方に突出して前記腹当て部に係合される帯状係合部が一体に形成されたショーツ型のT字帯と、
前記T字帯の股当て部に装着される吸水性パッドと、
前記T字帯の内側に左右の帯状係合部に沿って配置される帯状布帛であり、両端部で腹部を覆うように巻いて腹直筋を支える腹帯と、
前記腹帯よりも幅の狭い帯状布帛であり、骨盤下方部に巻き締めて骨盤を固定する骨盤固定帯とを備えることを特徴とする産後ケア用品。
【請求項2】
前記骨盤固定帯は、長手方向で二つ折りにして一端側に輪を形成し、この輪端に他端側の一方の耳端を通して引き締め、他方の耳端と引き締め可能に一結びし、残余部分を骨盤固定帯に挟み止めることにより緊締される請求項1に記載の産後ケア用品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−215822(P2007−215822A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40676(P2006−40676)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(390030052)大衛株式会社 (7)
【Fターム(参考)】