説明

用紙供給装置及びこれを搭載した画像形成装置

【課題】省スペース化を図りつつ、用紙の破損を防止することができる用紙供給装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置に適用された用紙供給装置は、引き出し式の給紙カセット4を備え、給紙カセット4には、用紙Pを積載するベース板46及びボトム板48が設置されている。ベース板46及びボトム板48は用紙搬送方向にスライド可能であり、給紙カセット4が引き出された状態では、コイルばね54によりピックアップローラ56から離れた位置(用紙搬送方向の上流側)に退避されている。給紙カセット4が本体2に押し込まれると、同時に梃子部材52が変位してベース板46とともにボトム板48をスライドさせ、用紙Pをピックアップローラ56の方向へ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等に代表される画像形成装置に用いられる用紙供給装置及びこれを搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置に搭載された用紙供給装置に関し、従来から上下複数段に配置された給紙カセット(用紙カセット)を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。この先行技術では、画像形成装置の本体に対して給紙カセットが前面側へ引き出し可能な構造であり、給紙カセットへの用紙の補給は、いわゆるフロントローディング方式により行われる。
【0003】
給紙カセットには用紙が積層して収容されており、積層された用紙は画像形成装置の本体内で給紙ローラ(前送りコロ)により1枚ずつ分離して送り出される。このとき用紙が送り出される方向は、本体内で右方向又は左方向である。
【特許文献1】特開2001−39600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術のように、フロントローディング方式の給紙カセットを採用している場合、構造上、給紙カセットの挿入方向と給紙ローラの回転方向(用紙搬送方向)とが互いに直交する位置関係になる。このような位置関係では、給紙カセットに用紙を満載した状態でこれを画像形成装置の本体に挿入すると、上層部分の用紙が給紙ローラに引っかかり、用紙が破損したり皺になったりすることがある。
【0005】
このような問題を避けるため、従来から給紙カセットの高さを用紙の積載量よりも充分に大きくすることで、給紙ローラの位置よりも用紙の上層部分の位置をずっと低く抑える対策が施されている。これにより、用紙を満載した状態で給紙カセットを画像形成装置の本体に挿入しても、その上層部分の位置から給紙ローラまでの間に充分な隙間が設けられていることから、用紙に損傷が生じにくい。
【0006】
しかしながら、従来の対策では必然的に給紙カセット1つ1つの高さが大きくなり、それだけ画像形成装置本体内のスペースを圧迫することになる。特に近年では、画像形成装置の高機能化に伴う部品配置の高密度化が進んでいるため、給紙カセットだけに大きなスペースを割くことはできない。そうかといって、単純に給紙カセットの高さを低くするだけでは、上記のように用紙が給紙ローラに引っ掛かるという問題を解決することができない。
【0007】
そこで本発明は上記の問題点をふまえ、用紙の補充に際してローラとの接触による用紙の破損を引き起こすことがなく、合わせて省スペース化を図ることができる技術の提供を課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の用紙供給装置は、用紙を積層して収容する給紙部を所定の給紙位置に移動させた場合、その用紙全体をローラに対して離れた位置からローラに接近する位置まで移動させる機構を備えることで上記の課題を解決する。このとき用紙の移動方向はローラの回転方向に一致しているため、たとえ用紙がローラに接触することがあったとしても、それによって用紙が破損することはない。したがって、積層された用紙の上層部分とローラとの間に過大なスペースを空けておく必要がなく、その分、給紙部を小型化することができる。
【0009】
用紙供給装置の具体的な構成は以下の通りである。
先ず上記の給紙部は、枚葉の用紙を厚み方向に積層して収容するものであり、本発明の用紙供給装置は、給紙部から所定の用紙搬送方向へ延びる搬送路を有した用紙搬送部を備えている。また、上記のローラは給紙部に収容された用紙と用紙搬送部との間に配置されており、用紙搬送方向に対して直角な回転軸線を有している。そして本発明の用紙供給装置は、給紙部に積層された最上層の用紙にローラの外周面を接触させた状態で回転させることにより、この最上層の用紙を給紙部から用紙搬送部に向けて1枚ずつ送り出すものである。
【0010】
その上で本発明の用紙供給装置はスライド機構を備える。このスライド機構は、給紙部を用紙搬送方向に直交する方向へスライド可能に支持している。またスライド機構は、ローラによる用紙の送り出しが可能な給紙位置と給紙部に対する用紙の補充が可能な補充位置との間にて給紙部の移動を案内する。そして本発明の用紙供給装置は、上記のスライド機構に案内されて補充位置の方向から給紙位置まで給紙部が移動した場合、給紙部に積層された用紙を移動させる用紙移動機構を備えている。この用紙移動機構により、用紙全体がローラに対して離れた位置からローラの回転方向に沿ってローラに接近する位置まで移動される。このように、用紙移動機構により用紙全体をローラに接近する位置まで移動させ、その最上層の用紙をローラに押し付けると、ローラの回転に伴って用紙を1枚ずつ送り出すことが可能になる。
【0011】
より好ましくは、給紙部に収容可能な用紙の最大積層厚は、用紙の積層方向でみて最下層の位置からローラの外周面までの間隔に設定されている。この場合、用紙の最上層位置からローラの外周面までの隙間を全く設けない設定も可能である。本発明の用紙供給装置においてこのような設定が可能であるのは、給紙部のスライドによって用紙がローラに引っ掛からない構造を採用しているためである。したがって、同じ積載量で給紙部のサイズを最小化することができることから、より省スペース化を達成することができる。
【0012】
上述した用紙移動機構の動作は、所定の部材を用いて機構的に実現することができる。この場合、用紙移動機構は、用紙載置台及び変位部材を備える。用紙載置台は、給紙部に収容される用紙を積載した状態で給紙部内にて用紙搬送方向へスライド可能に支持されている。また変位部材は、給紙部の給紙位置への移動に連動して変位し、この変位に伴い用紙載置台を用紙搬送方向でみて上流の位置から下流の位置へスライドさせるものである。
【0013】
このような構成であれば、例えば使用者(ユーザ)が用紙の補充に際して給紙部を補充位置に移動させて用紙を補充した後、給紙部を給紙位置まで移動させると、このときの移動に連動して同時に用紙載置台が機構的にスライドし、ローラに対して離れた位置からローラに接近した位置まで用紙全体が移動することになる。
【0014】
あるいは別の態様として、用紙移動機構の動作は、所定の動力を用いて機械的に実現することもできる。この場合、用紙移動機構は、上記した用紙載置台の他に動力部を備える。動力部は、給紙部が給紙位置へ移動したことが検知されると、用紙載置台を用紙搬送方向でみて上流の位置から下流の位置までスライドさせる動力を発生する。
【0015】
このような態様の場合、給紙部の移動に連動して用紙全体を移動させるのではなく、別の動力部を用いて用紙全体を移動させることから、使用者(ユーザ)が給紙部を移動させる際の負荷が軽減される。
【0016】
また本発明は、上述した用紙供給装置を搭載し、これを用いて画像形成部に用紙を供給する画像形成装置としても構成される。この場合、用紙供給装置において給紙部のサイズを最小化できるため、画像形成装置全体としての省スペース化が有効に図られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、給紙部の移動方向とローラの回転方向(回転軸)とが直交する位置関係にあっても、給紙部の移動に合わせてローラの回転方向に用紙全体を移動させているため、用紙を破損することなく用紙の補充を行うことができる。また、ローラと用紙の上層部分との間に過大な隙間を設ける必要がないことから、給紙部の大きさを最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、用紙供給装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態の用紙供給装置が適用された画像形成装置1を右前上方から示した斜視図である。図1中の左斜め下方向は、ユーザに相対する画像形成装置1の正面である。また、図1中の右斜め下方向は画像形成装置1の右側面であり、左斜め上方向は画像形成装置1の左側面である。画像形成装置1は、例えば複写機や複合機、ネットワーク用の多機能周辺機器(MFP)等として利用される。
【0019】
画像形成装置1は、胴内排紙型と称される箱形状の本体2を備えている。このため本体2の内側には、胴内型の用紙排出トレイ15が形成されている。この用紙排出トレイ15には、画像形成装置1で印刷された用紙が本体2の左側から右側へ向かって排出されるものとなっている。ユーザは、用紙排出トレイ15に排出された用紙を本体2の正面側(又は右側)から取り出すことができる。
【0020】
本体2の上側には、原稿搬送装置8が搭載されている。画像形成装置1を複写機やファクシミリ、ネットワークスキャナとして利用するときは、原稿搬送装置8に原稿をセットして原稿を読み取らせることができる。本体2の上部位置には光学式の画像読取部9が内蔵されており、原稿搬送装置8に搬送された原稿の画像面は、画像読取部9にて光学的に読み取られる。
【0021】
また原稿搬送装置8は、図示しないヒンジ機構を介して本体2に連結されている。ヒンジ機構は本体2の後端部に位置しており、原稿搬送装置8はヒンジ機構を支点として上方へ跳ね上げるようにして開閉動作することができる。
【0022】
本体2の上部位置で、画像読取部9よりも手前側には操作・表示部102が設置されている。操作・表示部102には、ユーザの各種操作を受け付ける複数の操作キーやスイッチが配置されているほか、各種情報を表示する表示画面104が配置されている。また操作・表示部102は、表示画面104を介してユーザの操作を受け付けるタッチ式パネルの機能をも有している。
【0023】
図1には示されていないが、本体2の下部位置には本実施形態の用紙供給装置を構成する給紙カセットが内蔵されている。給紙カセットは上下2段に設置されており、本体2の正面には給紙カセットの各段ごとに用紙補充用の外装ハンドル40が設置されている。画像形成装置1の給紙カセットはいわゆるフロントローディング式であり、ユーザは外装ハンドル40を手前に引くことで、給紙カセットを本体2から引き出すことができる。この状態で給紙カセットに用紙を補充すると、ユーザは外装ハンドル40を再び押し込んで給紙カセットを給紙位置にセットすることができる。なお、給紙カセットの構成についてはさらに後述する。
【0024】
本体2の右側面には、開閉式の手差しトレイ5が備えられている。手差しトレイ5は、給紙カセットに収容されていないサイズの用紙や、OHPシート等を1枚ずつ給紙する場合に使用される。不使用時には、手差し給紙部5は本体2の右側面にたたみ込んで収納される。
【0025】
次に、画像形成装置1の内部構造について説明する。
図2は、画像形成装置1を概略的に示した垂直断面正面図である。なお、図2中の実線矢印は用紙の搬送経路及びその搬送方向を示している。図2に示されるように、画像形成装置1の本体2の下部には、本実施形態の用紙供給装置を構成するカセット式給紙部3が配置されている。カセット式給紙部3には、上記のように2段の給紙カセット4が備えられている。各給紙カセット4内には印刷前のカットペーパー等の用紙Pが積載して収容されている。カセット式給紙部3からは、給紙カセット4内に積載された用紙Pが1枚ずつ分離して送り出される。
【0026】
上下2段の給紙カセット4には、それぞれの位置で異なる用紙サイズや用紙タイプを設定することができる。例えば、上段の給紙カセット4には使用頻度が比較的高いA4普通紙を収容し、下段の給紙カセット4にはA4より大型サイズの用紙を収容することができる。あるいは、上下段いずれかの給紙カセット4を多目的用途とし、ここにOHPシートや厚紙、薄紙等を収容することもできる。いずれにしても、各段の給紙カセット4に収容される用紙サイズや用紙タイプ等は、予め画像形成装置1に設定しておくことができる。
【0027】
画像形成装置1は、その内部に用紙搬送部6を備えている。用紙搬送部6は、カセット式給紙部3との関係でみると、その給紙方向である左方に位置する。カセット式給紙部3から送り出された用紙Pは、用紙搬送部6により本体2の左側面に沿って形成された搬送路内を垂直上方に搬送され、また手差しトレイ5から送り出された用紙Pは本体2の内部を右側から左方向へ水平に搬送されてそれぞれ転写部11に至る。
【0028】
画像形成装置1による画像の形成は、以下のように行われる。
本体2内には、用紙搬送部6からの用紙搬送方向でみて下流位置に画像形成部10及び転写部11が備えられている。このうち画像形成部10では、読み取り画像を処理した画像データに基づいて原稿画像の静電潜像が形成され、さらにこの静電潜像からトナー像が形成される。
【0029】
用紙搬送部6よりも用紙搬送方向下流側で、転写部11のすぐ上流側には、レジストローラ7が備えられている。レジストローラ7は、用紙Pの斜め送りを矯正するとともに、画像形成部10で形成されるトナー像との同期をとりながら転写部11に向けて用紙Pを送り出す。転写部11では、レジストローラ7によって同期をとりつつ送られてきた用紙Pにトナー像が転写される。
【0030】
用紙搬送方向でみて転写部11の下流側には、定着部12が備えられている。転写部11にて未定着トナー像を担持した用紙Pは定着部12へと送られ、ここで加熱・加圧されてトナー像が定着される。
【0031】
また、用紙搬送方向でみて定着部12の下流側で、本体2の左側面の近傍に排出・分岐部13が備えられている。両面印刷を行わない場合(片面印刷の場合)、定着部12から排出された用紙Pは排出・分岐部13からそのまま用紙排出トレイ15に排出される。両面印刷を行う場合、用紙Pは一旦、排出・分岐部13から用紙排出トレイ15に向けて途中まで送り出された後、搬送方向が切り換えられて用紙反転部30に引き込まれる。引き込まれた用紙Pは、本体2の左側面に沿って形成されている搬送経路32を通じて下方へ搬送された後、カセット式給紙部3の上方位置で上向きに反転され、レジストローラ7に送られる。なお、用紙Pの幅方向への位置ずれを検知するためのセンサ31が設けられている。位置ずれが検知された場合には、シフト補正機構70によって位置補正(スキュー補正)が行われる。
【0032】
次に、画像形成装置1に適用された用紙供給装置の詳細について説明する。
図3は、引き出された給紙カセット4が押し込まれる動作を上面視により示した連続図である。図3中の上方は画像形成装置1の背面、つまりユーザからみて奥側に位置している。また図4は、図3中のIV−IV線に沿う位置で示された給紙カセット4の縦断面図である。これら図3及び図4には、上下いずれかの段の給紙カセット4だけが示されている。
【0033】
図3中(A)及び図4中(A)は、本体2の手前側へ給紙カセット4が用紙Pを補充可能な位置まで引き出された状態を示す(補充位置)。これに対し、図3中(B)及び図4中(B)は、用紙搬送部6に用紙Pを送り出すことが可能な位置まで給紙カセット4が最後まで押し込まれた状態を示す(給紙位置)。
【0034】
先ず、給紙カセット4の構成を説明する。
給紙カセット4は、スライド式のカセット枠体42を備えている。カセット枠体42は、全体として上面が開口した直方体形状をなし、さらに用紙搬送方向でみて下流側に位置する左端面が開放されている。カセット枠体42の右端面及び下端面にはそれぞれスライド機構44が設置されている。これらスライド機構44は、本体2に対してカセット枠体42を前後方向へスライド自在に支持している。
【0035】
カセット枠体42の内側には、用紙載置台(用紙移動機構)となるベース板46及びボトム板48が設置されている。このうちベース板46が用紙搬送方向でみて上流側に位置し、ボトム板48が下流側に位置している。ベース板46及びボトム板48はいずれも矩形状をなし、これらはカセット枠体42の内側で互いに隣接して配置されている。また、ベース板46とボトム板48とは、ヒンジ部50を介して相互に連結されている。ヒンジ部50は、カセット枠体42に収容される用紙Pに対して両側に位置する縁部に形成されている。
【0036】
ベース板46には、その四隅近傍の位置に4つの長孔46aが形成されている。これら長孔46aは、用紙搬送方向(左右方向)に延びている。カセット枠体42には、ベース板46の長孔46aに対応して4つのガイドピン42aが形成されている。ガイドピン42aはカセット枠体42の底面から突き出た状態で、それぞれ対応する長孔46aに嵌め合わされている。このためベース板46及びボトム板48は、カセット枠体42の底面に沿って一定距離(ガイドピン42aに対して長孔46aが移動できる距離)を用紙搬送方向にスライド可能となっている。
【0037】
またベース板46には、用紙搬送方向でみて上流側の端部(右端部)近傍の位置に別の長孔46bが形成されている。この長孔46bは、他の4つの長孔46aと違って用紙搬送方向と直交する方向(カセット枠体42の前後方向)に延びている。
【0038】
一方、カセット枠体42には、その底板部に変位部材の一例として梃子部材52が設置されている。梃子部材52は全体としてL字形状をなし、その支点52aはカセット枠体42の奧の側壁に支持されている。梃子部材52は、支点52aからカセット枠体42の奧の側壁に沿って延びる短辺部52bと、支点52aからカセット枠体42の内側へ向けて延びる長辺部52cを有する。これら短辺部52bと長辺部52cとは、支点52aを挟んで互いに90°の開きをなしている。この状態で梃子部材52は、カセット枠体42の底板に沿って支点52aを中心に変位(回転)可能である。
【0039】
梃子部材52の長辺部52cは、カセット枠体42の下面に沿ってベース板46の下方を延びており、その先端にはピン部材52dが設置されている。このピン部材52dは、上述したベース板46の長孔46bに嵌め合わされている。この状態で、ピン部材52dには引っ張り式のコイルばね54の一端が固定されている。一方、コイルばね54の他端はカセット枠体42の右の側壁(用紙搬送方向上流位置)に固定されている。このため、ピン部材52dとカセット枠体42の右の側壁との間には、コイルばね54による張力が作用している。
【0040】
次に、以上のように構成された給紙カセット4の用紙補給時の動作について順を追って説明する。
【0041】
図3中(A)及び図4中(A)に示されているように、ユーザによる用紙Pの補給時に、画像形成装置1の本体2から給紙カセット4が手前側へ引き出された状態では、カセット枠体42の奧の側壁が本体2から離れている。このため梃子部材52の短辺部52bは、カセット枠体42の奧の側壁から本体2との間にできた隙間内に突き出ることができる。この場合、コイルばね54の張力でピン部材52dが引き寄せられる結果、ベース板46とともにボトム板48はカセット枠体42の右の側壁に最も引き寄せられた状態にある。
【0042】
次に、図3中(B)及び図4中(B)に示されているように、用紙Pが補充されて給紙カセット4が本体2に対して押し込まれると、最終的にカセット枠体42の奧の側壁が本体2に密着する。このとき、カセット枠体42の奧の側壁が本体2に密着する前の段階で、梃子部材52の短辺部52bが先に本体2に接触し、これによって次第に短辺部52bが相対的に押されていく。そして、最終的にカセット枠体42の奧の側壁が本体2に密着すると、短辺部52bはカセット枠体42の奧の側壁に平行となる位置まで変位する。
【0043】
このようにして短辺部52bが変位すると、同時に梃子部材52の長辺部52cが図3中(B)に示されるように時計回り方向に変位する。これにより、コイルばね54の張力に抗してピン部材52dがカセット枠体42の右の側壁から引き離される。この結果、ベース板46とともにボトム板48は、カセット枠体42の右の側壁から離れるようにして用紙搬送方向下流側へスライドする。
【0044】
本体2の内部で、ベース板46及びボトム板48がスライドした先には、ピックアップローラ56が設置されている。ピックアップローラ56は、ボトム板48上に積載された用紙Pの一端部(用紙搬送方向下流端部)の上方に位置する。また、ピックアップローラ56に続いて、給紙ローラ58及び分離ローラ59が設置されている。ピックアップローラ56は、用紙搬送方向に対して直交する軸線回りに回転する。なお、その他のローラについても同様である。
【0045】
ピックアップローラ56は、積載された用紙Pをその最上層から繰り出し、給紙ローラ58に引き継ぐものである。給紙ローラ58は、ピックアップローラ56から受け取った用紙Pを用紙搬送部6に送り出す。このとき分離ローラ59は、図示しないトルクリミッタの設定トルク内で給紙ローラ58と逆向きの力を生じ、用紙Pの重ね送りを防止する。
【0046】
また図4に示されているように、ボトム板48の下方にはリフト板63が設置されている。リフト板63は、図示しないモータの動力で駆動軸64とともに図4中でみて時計回り方向に回転し、ボトム板48を上方へ持ち上げる。これにより、ボトム板48上に積載された最上位の用紙Pがピックアップローラ56に接触する位置まで持ち上げられ、本体2の内部ではカセット式給紙部3による用紙Pの繰り出しが可能な状態となる。
【0047】
逆に、改めて用紙Pを補充する際には、図3中(B)に示される状態から給紙カセット4が本体2の手前側へ引き出される。すると、それまで本体2に接触していたカセット枠体42の奧の側壁が本体2から次第に離れていくので、このとき本体2とカセット枠体42の奧の側壁との間で次第に拡がっていく空間内では、梃子部材52の短辺部52bが変位可能になる。
【0048】
一方、給紙カセット4が押し込まれていたときからコイルばね54の張力は作用し続けており、僅かでもカセット枠体42が本体2から引き離されると、コイルばね54の張力によって梃子部材52は変位する。これにより、ボトム板48及びベース板46がコイルばね54の張力でカセット枠体42の右の側壁に引き寄せられるので、用紙Pはピックアップローラ56の真下の位置から用紙搬送方向でみて上流側へ退避するようにしてスライドする。
【0049】
このように本実施形態では、給紙カセット4を本体2に出し入れする動作に連動してベース板46及びボトム板48が用紙搬送方向にスライドし、用紙Pをピックアップローラ56に対して接近させたり、遠ざけたりしている。特に給紙カセット4の押し込み時には、用紙Pをピックアップローラ56の回転方向と同じ方向に移動させているため、このとき用紙Pがピックアップローラ56に接触しても、ピックアップローラ56が単純に回転するだけであり、用紙Pがピックアップローラ56に引っ掛かって破損したり、皺になったりすることはない。
【0050】
また図4中(A)に示されているように、給紙カセット4の押し込み時には、用紙搬送方向(左右方向)でみてピックアップローラ56と用紙Pとが離れた位置関係にあるため、たとえ用紙Pを満載した状態で給紙カセット4を本体2に押し込んでも、本体2の内部でピックアップローラ56に用紙Pが引っ掛からない構造となっている。このため、給紙カセット4とピックアップローラ56との間に過度に大きい隙間を確保しておく必要がなく、それだけ給紙カセット4の上下方向の高さ寸法を短くすることができる。
【0051】
図5は、給紙カセット4を上下二段に重ねた配置構造を示す縦断面図である。図5に示されているように、本実施形態の構造によれば、用紙Pとピックアップローラ56との間の隙間Cを最小化することができる(例えば隙間が全くない状態:C=0mmでもよい)。つまり、用紙Pの積層方向(上下方向)でみて、ボトム板48の上面位置からピックアップローラ56の下面位置までの間(図中寸法S)にて用紙Pの最大積層厚(最大高さ)を設定することができる。このため、用紙Pの収容量を一定とすると、その一定収容量に対して給紙カセット4の高さ寸法Hを最小に抑えることができる。
【0052】
このため、例えば図5中に二点鎖線で示されているように、限られたカセット式給紙部3の空間内に3段目の給紙カセット4を追加することで、より多様な用紙サイズに対応することができる。あるいは、逆にカセット式給紙部3全体の空間を減らし、その分の空間を画像形成装置1の別の機能要素の配置に割り当てることもできる。
【0053】
以上が一実施形態の内容であるが、さらに給紙カセット4の第2例について以下に説明する。
【0054】
図6は、給紙カセット4の第2例とその動作を示した縦断面図である。この第2例では、上述した梃子部材52に代えて、ラック60とピニオン62、それに図示しないモータを組み合わせた動力部により用紙Pをスライドさせている。ラック60はベース板46の上面に取り付けられており、これと噛み合うピニオン62が図示しないモータの出力軸に取り付けられている。なお、図示しないモータは、例えばカセット枠体42の側壁に取り付けられている。
【0055】
第2例の場合、例えば給紙カセット4と本体2とを電気的に接続するドロワコネクタ(図示されていない)を用いてモータの駆動が制御(ON/OFF)される。図示しないドロワコネクタは、給紙カセット4及び本体2のそれぞれに雄コネクタ、雌コネクタの組み合わせで設けられている。そして、用紙Pの補充時にユーザが給紙カセット4を本体2に押し込むと、図示しないドロワコネクタが相互に接続される。この接続が感知されると、例えば図示しない制御装置がモータを一定角度だけ回転させ、ラック60及びピニオン62を組み合わせた直動機構によりベース板46とともにボトム板48をスライドさせる(図6中(A)→(B))。なお第2例においても、ベース板46をカセット枠体42の右の側壁に引き寄せるには、一実施形態で挙げたコイルばね54を用いればよい。
【0056】
本発明は上述した一実施形態に制約されることなく、各種の変形や置換を伴って実施することができる。画像形成装置1の内部構造や各種機構部品の形態はあくまで好ましい例示であり、本発明が図示のものに限定されるわけではない。
【0057】
一実施形態では、用紙供給装置が適用された画像形成装置1として複写機や複合機等を例示しているが、本発明の用紙供給装置は、フロントローディング式の給紙カセットを備えたプリンタにも適用することができる。
【0058】
その他、一実施形態で挙げた各種の部材や駆動部品はいずれも好ましい例示であり、これらは適宜変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】一実施形態の用紙供給装置が適用された画像形成装置を右前上方から示した斜視図である。
【図2】画像形成装置を概略的に示した垂直断面正面図である。
【図3】引き出された給紙カセットが押し込まれる動作を上面視により示した連続図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿う位置で示された給紙カセットの縦断面図である。
【図5】給紙カセット4を上下二段に重ねた配置構造例を示す縦断面図である。
【図6】給紙カセット4の第2例とその動作を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 画像形成装置
2 本体
3 カセット式給紙部
4 給紙カセット
6 用紙搬送部
8 原稿搬送装置
9 画像読取部
10 画像形成部
11 転写部
12 定着部
13 排出・分岐部
44 スライド機構
46 ベース板(用紙移動機構)
48 ボトム板(用紙移動機構)
52 梃子部材(用紙移動機構、変位部材)
54 コイルばね(用紙移動機構)
56 ピックアップローラ
60 ラック(用紙移動機構)
62 ピニオン(用紙移動機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉の用紙を厚み方向に積層して収容する給紙部と、
前記給紙部から所定の用紙搬送方向へ延びる搬送路を有した用紙搬送部と、
前記給紙部に収容された用紙と前記用紙搬送部との間に配置され、前記用紙搬送方向に対して直角な回転軸線を有したローラとを備え、
前記給紙部に積層された最上層の用紙に前記ローラの外周面を接触させた状態で回転させることにより、この最上層の用紙を前記給紙部から前記用紙搬送部に向けて1枚ずつ送り出す用紙供給装置において、
用紙を収容した状態で前記給紙部を前記用紙搬送方向に直交する方向へスライド可能に支持するとともに、前記ローラによる用紙の送り出しが可能な給紙位置と前記給紙部に対する用紙の補充が可能な補充位置との間にて前記給紙部の移動を案内するスライド機構と、
前記スライド機構に案内されて前記補充位置の方向から前記給紙位置まで前記給紙部が移動した場合、前記給紙部に積層された用紙を前記ローラに対して離れた位置から前記ローラの回転方向に沿って前記ローラに接近する位置まで移動させる用紙移動機構とを備えたことを特徴とする用紙供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の用紙供給装置において、
前記給紙部に収容可能な用紙の最大積層厚は、用紙の積層方向でみて最下層の位置から前記ローラの外周面までの間隔に設定されていることを特徴とする用紙供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の用紙供給装置において、
前記用紙移動機構は、
前記給紙部に収容される用紙を積載した状態で前記給紙部内にて前記用紙搬送方向へスライド可能に支持された用紙載置台と、
前記給紙部の前記給紙位置への移動に連動して変位し、この変位に伴い前記用紙載置台を前記用紙搬送方向でみて上流の位置から下流の位置へスライドさせる変位部材とを備えたことを特徴とする用紙供給装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の用紙供給装置において、
前記用紙移動機構は、
前記給紙部に収容される用紙を積載した状態で前記給紙部内にて前記用紙搬送方向へスライド可能に支持された用紙載置台と、
前記給紙部が前記給紙位置へ移動したことが検知されると、前記用紙載置台を前記用紙搬送方向でみて上流の位置から下流の位置までスライドさせる動力を発生する動力部とを備えたことを特徴とする用紙供給装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の用紙供給装置を搭載し、これを用いて画像形成部に用紙を供給することを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−44770(P2008−44770A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224134(P2006−224134)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】