説明

用紙分離装置

【課題】構造の簡素化を図りながら、給紙ローラに対する分離パッドの圧接力の向上を図ることができる、信頼性に優れた用紙分離装置をより低コストに提供する。
【解決手段】本発明に係る用紙分離装置においては、分離パッド51を保持する支持体53を支軸52に回転可能に構成し、この支持体53を介して付勢部材54により分離パッド51を給紙ローラ41に圧接する。また、用紙14の搬送方向において、付勢部材54からの付勢力を受ける作用部と、分離パッド51を支持して該分離パッド51に給紙ローラ41に対する圧接力を付与する押圧部との間に支軸52を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナ、ファクシミリ、複写機等において、用紙を一枚ずつ分離する用紙分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置においては、原稿トレイ上に積載された複数枚の原稿から、一枚ずつ原稿を分離して順次搬送路に給紙するオート・ドキュメント・フィーダー(以下、「ADF」という。)が装備されているものがある。このADFには、原稿を搬送路に送り込む給紙ローラのほかに、原稿トレイ上の原稿が重送されることを防止するための用紙分離装置が装備されている。また、記録用紙が積載状態で収容される記録用紙トレイにおいても、記録用紙の重送を防止するための用紙分離装置が装備されている。
【0003】
この種の用紙分離装置の従来例としては、例えば特許文献1および2を挙げることができる。特許文献1には、分離ユニットと、分離ユニットを給紙ローラに押し付ける押圧レバーと、押圧レバーに付勢力を与える弾性体とからなる用紙分離装置が開示されている。分離ユニットは、支軸に回転自在に保持されたホルダと、ホルダに設けられた支軸に回転自在に軸支された押え部材と、押え部材に設けられて給紙ローラに圧接される分離パッドとを備える。
【0004】
特許文献2には、給紙ローラに圧接される分離部と、支軸に回転自在に支持されて、給紙ローラに向かう方向に分離部に圧接力を与えるアームと、アームに付勢力を与えるばねとからなる用紙分離装置が開示されている。分離部は、分離パッドが装着された摩擦部と、分離パッドを具備しない低摩擦部とを備え、アームの先端に設けられた支軸に回転自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−67989号公報
【特許文献2】特開平6−144618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の用紙分離装置の問題は、部品点数が多く、用紙分離装置の製造コストが上昇することにある。すなわち、特許文献1に記載の用紙分離装置は、ホルダ、押え部材、分離パッドとからなる分離ユニットと、分離ユニットを給紙ローラに押し付ける押圧レバーと、押圧レバーに付勢力を与える弾性体とで構成されている。このため、構造が複雑で部品点数が多くなり、用紙分離装置の製造コストの上昇を招く。
特許文献2に記載の用紙分離装置においても同様であり、分離パッドを備える分離部および付勢部材のほかに、分離部に付勢部材の付勢力を伝えるアームを備えるため、このアームの分だけ用紙分離装置の製造コストが上昇する。
【0007】
加えて、この種の用紙分離装置においては、分離パッドが不用意に動いて給紙ローラと分離パッドとの圧接状態が解かれると、用紙(原稿を含む)の重送を適切に防止することができないという不都合が生じる。かかる不都合は、例えば特許文献2に記載の形態のように、アームの回転中心となる支軸と、付勢部材からの付勢力を受ける作用部とを一致させたときに顕著となる。すなわち、特許文献2のように、アームの支軸と付勢力からの作用部が一致している形態では、アームの分離パッドに圧接力を付与するための押圧部に大きな力を加えるためには、付勢部材の付勢力を大きくすることが必要である。このため、付勢力の大きな付勢部材を採用することが不可欠であり、給紙ローラに対する分離パッドの圧接力の向上を図ることが容易でなく、その点に改良の余地があった。
【0008】
本発明は、構造の簡素化を図りながら、給紙ローラに対する分離パッドの圧接力の向上を図ることができ、従って、信頼性に優れた用紙分離装置をより低コストに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る用紙分離装置は、用紙14に対して摩擦力を付与することにより、給紙ローラ41と協働してトレイ13上に積層された用紙14を一枚ずつ分離するための分離パッド51と、分離パッド51を保持するとともに、給紙ローラ41の対向位置に形成された支軸52に回転可能に支持された支持体53と、分離パッド51が給紙ローラ41に圧接されるように、給紙ローラ41側へ支持体53を付勢する付勢部材54とを備える。支持体53には、付勢部材54からの付勢力を受ける作用部と、分離パッド51を支持して、該分離パッド51に給紙ローラ41に対する圧接力を付与する押圧部とが設けられている。そして支軸52が、用紙搬送路内における用紙14の搬送方向において、作用部と押圧部との間に設けられていることを特徴とする。
【0010】
付勢部材54による支持体53の作用部に対する付勢力を調整して、分離パッド51の給紙ローラ41に対する圧接力を調整するための調整機構を設けることができる。
【0011】
搬送路31のガイド面332であって給紙ローラ41の対向位置には、凹部49が形成されており、該凹部49内で支持体53は回転可能に構成されている。調整機構は、凹部49を区画する底面68に用紙14の搬送方向に沿って複数個設けられるとともに、付勢部材54の一端部を係止する掛止部75を含む。そして、複数個の掛止部75から一つを選択し、付勢部材54の一端部の掛止位置を変更することで、該付勢部材54の支持体53に対する付勢力を調整することができるように構成する。
【0012】
付勢部材54が引張りバネからなり、引張りバネ54の一端部が掛止部75に掛止され、該引張りバネ54の他端部が前記支持体53の作用部に掛止されている形態を採ることができる。支持体53は樹脂材料で構成することができる。
【0013】
用紙14の搬送方向における押圧部と支軸52との間隔距離(d1)が、作用部と支軸52との間隔距離(d2)よりも小さく設定されている形態を採ることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る用紙分離装置50では、分離パッド51を保持する支持体53を支軸52に回転可能に構成し、この支持体53を介して付勢部材54により分離パッド51を給紙ローラ41に圧接するようにした。すなわち、本発明においては、分離パッド51、支持体53、支軸52および付勢部材54により用紙分離装置を構成した。従って、本発明によれば、従来の用紙分離装置に比べて構造の簡素化を図り、より低コストに用紙分離装置を得ることができる。
【0015】
加えて、本発明においては、用紙搬送路内における用紙14の搬送方向において、付勢部材54からの付勢力を受ける作用部と、分離パッド51を支持して該分離パッド51に給紙ローラ41に対する圧接力を付与する押圧部との間に支軸52を設けた。当該構成によれば、作用部と支軸52との距離を大きくとることができるので、支持体53に対して小さな付勢力を作用部に与えた場合にも、より大きな回転モーメントを押圧部に付与することができる。これにより、付勢部材54の付勢力を大きくすることなく、より強い力で分離パッド51を給紙ローラ41に圧接することができるので、分離パッド51が不用意に給紙ローラ41から浮き離れる不具合の発生を確実に防ぐことができる。従って、本発明によれば、用紙14の重送を確実に防止して、信頼性に優れた用紙分離装置50を得ることができる。
【0016】
付勢部材54による支持体53の作用部に対する付勢力を調整して、分離パッド51の給紙ローラ41に対する圧接圧力を調整するための調整機構を設けることができる。これによれば、調整機構によって給紙ローラ41に対する分離パッド51の圧接力を調整することができるので、工場出荷時は元より、分離パッド51の給紙ローラ41に対する圧接力が低下した場合など、メンテナンス時に必要に応じて圧接力を容易に調整することができる。
【0017】
調整機構が、凹部49を区画する底面68に、用紙14の搬送方向に沿って複数個設けられるとともに、付勢部材54の一端部を係止する掛止部75を含むものとすることができる。そして、これら複数個の掛止部75から一つを選択し、付勢部材54の一端部の掛止位置を変更することで、該付勢部材54の支持体53に対する付勢力を変更することができるように構成することができる。これによれば、ドライバー等の操作具を用いることなく分離パッド51の給紙ローラ41に対する圧接力を調整することができるので、より簡単且つ確実に圧接力を調整することができる。視覚により確認しながら、付勢部材54の掛止位置を変更することで段階的に圧接力を調整することができるので、例えばドライバーの回転操作具合により圧接力を調整する形態に比べて、より簡単且つ確実に圧接力を調整することができる。
【0018】
付勢部材54の具体例としては、ゴムなどの弾性材、或いは引張りバネなどを挙げることができるが、引張りバネが最適である。これは、ゴムなどの弾性材は、画像形成装置の装置内温度等の影響を受けて弾性係数が増加しやすいが、引張りバネは装置内温度等の影響を殆ど受けることが無く、より安定して圧接力を分離パッド51に付与することができることに拠る。また、支持体53を樹脂材料で構成することで、より安価に用紙分離装置50を得ることができる。
【0019】
用紙14の搬送方向における押圧部と支軸52との間隔距離(d1)は、作用部と支軸52との間隔距離(d2)よりも小さく設定することが好ましい。このように、押圧部と支軸52との間隔距離(d1)を、作用部と支軸52との間隔距離(d2)よりも小さく設定していると、てこの原理により付勢部材54からの付勢力を増幅して、より大きな力で分離パッド51を給紙ローラ41に圧接することができる。従って、分離パッド51が給紙ローラ41から浮き離れる不具合の発生をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る用紙分離装置の縦断正面図である。
【図2】本発明に係る用紙分離装置が適用される画像形成装置の概略構成図である。
【図3】本発明に係る用紙分離装置が適用されるADF装置の動作を説明するための図である。
【図4】本発明に係る用紙分離装置の分解斜視図である。
【図5】本発明に係る用紙分離装置の平面図である。
【図6】本発明に係る用紙分離装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態) 図1乃至図6に、本発明に係る用紙分離装置を、コピー機能とファクシミリ機能とを備えた複合機の自動原稿搬送装置に適用した実施形態を示す。なお、本実施形態における前後、左右、上下とは、図1、図2および図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0022】
図2において、複合機1は、記録用紙を収容する給紙カセット2と、給紙カセット2から送られた記録用紙上にトナー画像を形成する画像形成部3と、トナー画像が形成された記録用紙を加熱し加圧して定着処理する定着部4とを備える。複合機1の内部には、給紙カセット2から画像形成部3および定着部4を経て排紙部5に至る用紙搬送路6が形成されている。排紙部5の上方には画像読取部7が配置されており、画像読取部7の前面には操作ボタンを備えた操作パネル8が設けられている。
【0023】
図1および図2に示すように、画像読取部7の上面には、原稿が載置されるプラテンガラス9を備える原稿載置台10と、プラテンガラス9上に載置された原稿を押圧して固定するための原稿押えカバー11とが配置されている。画像読取部7の内部には、光源、ミラー、CCDイメージセンサなどを備える読取ユニット12が配設されている。原稿押えカバー11には、原稿トレイ(トレイ)13上に載置された原稿(用紙)14を読取ユニット12による読取位置に送り込むためのADF15が設けられている。
【0024】
図2に示すように、給紙カセット2には、記録用紙を用紙搬送路6に繰り出すための給紙ローラ17と、給紙ローラ17に圧接して記録用紙の重送を防止する分離パッド18とが設けられている。用紙搬送路6における給紙ローラ17と画像形成部3との間には、後述する感光体ドラム21上のトナー画像と同期するように、画像形成部3への給紙タイミングを制御するレジストローラ対19が設けられている。
【0025】
画像形成部3は感光体ドラム21を中心にして構成されており、画像形成時の感光体ドラム21は、図2において反時計回転方向に回転する。感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿ってコロナ帯電式の帯電器22と、LEDヘッド23と、現像器24と、転写ローラ25と、クリーニング部26とが順に設けられている。現像器24のハウジング27の上側には、ハウジング27に対してトナーを供給するトナーカートリッジ28が配置されている。
【0026】
図1および図2に示すように、ADF15は、上述の原稿トレイ13と、原稿トレイ13の左側に配された筐体30内に形成された原稿搬送路(搬送路)31と、原稿トレイ13の下方に設けられた排紙トレイ32とを備える。原稿搬送路31は、ペーパーガイド33と、ペーパーガイド33よりも大形に形成されたハウジング34により区画されて、給紙口35と排紙口36とが同じ側面で開口する横臥U字状に形成されている。原稿搬送路31には、上流側から順に、給紙口35に臨んで配置されるピックアップローラ40と、給紙ローラ41と、三組の送給ローラ42・42・42と、排紙口36に臨んで配置される排紙ローラ43とが設けられている。原稿搬送路31は、その上半を占める給紙口35側の前半経路311と、下半を占める排紙口36側の後半経路312とで構成されており、前半経路311は筐体30を構成する搬送カバー301により覆われている。原稿搬送路31において紙詰まりが生じた場合には、搬送カバー301を上方側に開き操作して前半経路311を開放することで、紙詰まりした原稿14を取り出すことができる。
【0027】
図1に示すように、原稿押えカバー11の上部に設けられる原稿トレイ13は、その上面が左下方へ下り傾斜する傾斜姿勢に形成されており、その上面に複数枚の原稿14を積層状態で載置することができる。使用者が原稿トレイ13上に原稿14を載置する場合には、原稿トレイ13の傾斜下端側に原稿14の先端を揃えるように載置する。原稿トレイ13には、原稿14の幅方向の移動を規制して、原稿14の斜め送りを防止するための可変式のガイド部材が設けられている。なお、図1等においては、当該ガイド部材は省略している。
【0028】
図1に示すように、原稿搬送路31を区画するペーパーガイド33は、原稿トレイ13の上面と同様の傾斜角度で傾斜する第1ガイド面331を備える。また、ペーパーガイド33は、第1ガイド面331の下流側に設けられて左上方へ上がり傾斜する第2ガイド面332(ガイド面、図4参照)と、第2ガイド面332の下流側に設けられて水平方向に伸びる第3ガイド面333とを備える。加えて、ペーパーガイド33は、第3ガイド面333よりも下流側に設けられて鉛直方向に伸びる湾曲形の第4ガイド面334と、第4ガイド面334の下流側に設けられた第5ガイド面335を備える。さらに、ペーパーガイド33は、第5ガイド面335の下流に設けられて右上方に上がり傾斜して、排紙口36に至る第6ガイド面336を備える。第1ガイド面331のピックアップローラ40の対向位置には、ピックアップローラ40の外周面を受け止めるための受板44が装着されている。
【0029】
図3および図4に示すように、第2ガイド面332の給紙ローラ41の対向位置には凹部49が形成されており、この凹部49内に、原稿14の重送を防止するための用紙分離装置50が配置されている。用紙分離装置50は、分離パッド51と、分離パッド51を保持して、支軸52を回転中心として回転可能に構成された分離パッドホルダ(支持体)53と、分離パッド51が給紙ローラ41に圧接されるように、給紙ローラ41側へ分離パッドホルダ53を付勢する引張りコイルバネ54(付勢部材、引張りバネ)などを備える。分離パッド51は、原稿14に対して摩擦力を付与することにより、給紙ローラ41と協働して原稿トレイ13上に積層された原稿14を一枚ずつ分離する。
【0030】
図3および図4に示すように、分離パッドホルダ53は、分離パッド51が貼付される第1ベース板55と、第1ベース板55の右側(上流側)に形成されて滑性パッド58が貼付される第2ベース板56を備える。また、第2ベース板56には、その右端から突出形成されて、引張りコイルバネ54の一端が係止されるアーム57を備える。第1ベース板55の傾斜角度と、第2ベース板56の傾斜角度とは異なる角度に設定されており、分離パッドホルダ53は側面視において内角が鈍角に設定された逆V字状に形成されている。図4および図5に示すように、第1および第2ベース板55・56は平面視で略四角形状に形成されており、第1ベース板55の上面に分離パッド51が貼付され、第2ベース板56の上面に滑性パッド58が貼付されている。アーム57は、第2ベース板56の右端の前後方向中央部から右方向に伸びるアーム本体59と、アーム本体59の先端(右端部)に形成されて、引張りコイルバネ54の一端が掛け止め装着される鈎状の掛止片60とからなる。
【0031】
図4および図5に示すように、第2ベース板56の前後方向の幅寸法は、第1ベース板55の前後方向の幅寸法よりも大きく設定されている。凹部49は、第1ベース板55に対応する第1凹部65と、第2ベース板56に対応して、第1凹部65よりも前後の幅寸法が大きく形成された第2凹部66とを備える。これら第1凹部65および第2凹部66からなる凹部49の底面68は、左方向(原稿14の搬送方向の下流方向)に下り傾斜するように形成されている。底面68の左端には、後述する規制片73の突出を許す開口67が形成されている。また、底面68の右端には、アーム57の右下方への突出を許す開口69が形成されている。
【0032】
第2ベース板56の左端上面には、段付き状にパッド装着凹部が陥没形成されており、この凹部に前さばきパッド70が装着されている。図3に示すように、前さばきパッド70と滑性パッド58とを第2ベース板56に装着した状態において、前さばきパッド70の右端部と滑性パッド58の左端部とは重なっている。この前さばきパッド70は、分離パッド51に先立って原稿14に摩擦力を付与することにより、原稿トレイ13上に積層された原稿14を大まかに分離する目的で配置される。
【0033】
第2ベース板56の前後の両側面には、前後一対の支軸52・52が突出状に一体成形されており、これら支軸52・52に対応して、凹部49(第2凹部66)の前後の両側面には支軸52を受け入れるための軸受穴71・71が形成されている。両支軸52・52を対向する軸受穴71・71に挿入することで、凹部49内に分離パッドホルダ53を装着することができる。かかる装着状態において、分離パッドホルダ53は支軸52を回転中心として、時計方向および反時計方向にシーソー状に姿勢を変更することができる。
【0034】
第1ベース板55の前後の両側面には、前後一対のガイドリブ72・72が形成されており、これらガイドリブ72・72が対向する凹部49の前後側面に接触することで、分離パッドホルダ53の前後方向の遊動が規制される。すなわち、分離パッドホルダ53を凹部49内に装着した装着状態において、第1凹部65の前後の側面にガイドリブ72・72の前後端面が接触することで、分離パッドホルダ53の前後方向の遊動を規制することができる。
【0035】
図3および図5において符号73は、第1ベース板55の左端から左方向に突出形成された前後一対の規制片を示す。これら規制片73・73が、凹部49の左端を区画するペーパーガイド33の第3ガイド面333の右端部に接触することで、分離パッドホルダ53の支軸52を回転中心とする時計方向の回転が規制される。尤も、図3に示すような「常態」においては、給紙ローラ41に分離パッド51が接触することで、分離パッドホルダ53の時計方向の回転が規制される。なお、搬送カバー301が開状態にあるときには、規制片73が第3ガイド面333の右端部に当接することで、分離パッドホルダ53の時計方向の回転が規制される。また、搬送カバー301が閉状態にあるときには、給紙ローラ41に分離パッド51が接触することで、分離パッドホルダ53の時計方向の回転が規制される。
【0036】
引張りコイルバネ54は、凹部49の底面68に形成された掛止部75と、開口69から右下方に突出するアーム57の掛止片60との間に配置されており、分離パッド51が給紙ローラ41に圧接される方向に分離パッドホルダ53に付勢力を与える。図3および図4に示すように、底面68には、複数個(7個)の掛止部75が左右方向に列設されており、これら複数個の掛止部75から選択される一つの掛止部75に引張りコイルバネ54の一端部が掛け止められる。各掛止部75は矩形状の開口である。
【0037】
分離パッドホルダ53は、引張りコイルバネ54からの引張り付勢力をアーム57の先端に設けられた掛止片60で受けることで、支軸52を回転中心として時計方向に回転操作される。また、この分離パッドホルダ53の時計方向の回転操作に伴って、分離パッド51が給紙ローラ41に押し付けられ圧接される。従って、図6に示すように、分離パッドホルダ53のアーム57の先端に係る掛止片60は、引張りコイルバネ54からの付勢力を受ける作用部となり、分離パッド51の給紙ローラ41との接触箇所は、給紙ローラ41に対する圧接力を付与する押圧部となる。
【0038】
以上のような、給紙ローラ41に対する分離パッド51の圧接力は、引張りコイルバネ54の一端部の掛止部75に対する掛止位置を変更することにより調整することができる。すなわち、用紙分離装置50は、引張りコイルバネ54による分離パッドホルダ53の作用部に対する付勢力を調整して、分離パッド51の給紙ローラ41に対する圧接力を調整するための調整機構を備える。かかる調整機構は、先の底面68に列設された複数個(7個)の掛止部75で構成され、異なる掛止部75に引張りコイルバネ54の一端部を掛止することで、圧接力を変更することができる。具体的には、右寄りの一つの掛止部75を選択した場合には、引張りコイルバネ54の分離パッドホルダ53に対する付勢力を小さくすることができるので、給紙ローラ41に対する分離パッド51の圧接力を小さくすることができる。左寄りの一つの掛止部75を選択した場合には、引張りコイルバネ54の分離パッドホルダ53に対する付勢力を大きくすることができるので、給紙ローラ41に対する分離パッド51の圧接力を大きくすることができる。
【0039】
図6に示すように、分離パッドホルダ53の回転中心となる支軸52は、原稿14の搬送方向(左右方向)において、作用部と押圧部との間に設けられている。当該構成によれば、作用部と支軸52との距離を大きくとることができるので、分離パッドホルダ53の作用部に対して小さな付勢力を与えた場合にも、大きな回転モーメントを押圧部に与えることができる。これにより、大きな引張り付勢力を発揮し得る付勢部材を採用することなく、より強い力で分離パッド51を給紙ローラ41に圧接することができるので、分離パッド51が不用意に給紙ローラ41から浮き離れることを確実に防ぐことができる。従って、原稿14の重送を確実に防止して、信頼性に優れた用紙分離装置50を得ることができる。
【0040】
また、本実施形態においては、図6に示すように、左右方向における押圧部と支軸52との間隔距離(d1)は、作用部と支軸52との間隔距離(d2)よりも小さく設定されている。これによれば、てこの原理により引張りコイルバネ54からの付勢力を増幅して、より大きな力で分離パッド51を給紙ローラ41に圧接することができる。当該作用によっても、分離パッド51が給紙ローラ41から浮き離れる不具合の発生を確実に防止することができるので、原稿14の重送を確実に防止して、信頼性に優れた用紙分離装置50を得ることができる。
【0041】
上記実施形態においては、用紙分離装置50をADF15に適用した例を示したが、本発明に係る用紙分離装置50は、給紙カセット2の分離パッド18を含む用紙分離装置に適用することも可能である。分離パッドホルダ53の形状は、上記実施形態に示したものに限られない。また、上記実施形態においては、分離パッドホルダ53側に支軸52を設け、凹部49側に軸受穴71を設けたが、凹部49側に支軸52を設け、分離パッドホルダ53側に軸受穴71を設けることもできる。
【符号の説明】
【0042】
13 トレイ(原稿トレイ)
14 用紙(原稿)
31 搬送路(原稿搬送路)
41 給紙ローラ
49 凹部
50 用紙分離装置
51 分離パッド
52 支軸
53 支持体(分離パッドホルダ)
54 付勢部材、引張りバネ(引張りコイルバネ)
68 底面
75 掛止部
332 ガイド面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に対して摩擦力を付与することにより、給紙ローラと協働してトレイ上に積層された用紙を一枚ずつ分離するための分離パッドと、
前記分離パッドを保持するとともに、前記給紙ローラの対向位置に形成された支軸に回転可能に支持された支持体と、
前記分離パッドが前記給紙ローラに圧接されるように、前記給紙ローラ側へ前記支持体を付勢する付勢部材と、
を備え、
前記支持体には、前記付勢部材からの付勢力を受ける作用部と、前記分離パッドを支持して、該分離パッドに前記給紙ローラに対する圧接力を付与する押圧部とが設けられており、
前記支軸が、用紙搬送路内における用紙の搬送方向において、前記作用部と前記押圧部との間に設けられていることを特徴とする用紙分離装置。
【請求項2】
前記付勢部材による前記支持体の作用部に対する付勢力を調整して、前記分離パッドの前記給紙ローラに対する圧接力を調整するための調整機構が設けられている、請求項1記載の用紙分離装置。
【請求項3】
前記搬送路のガイド面であって前記給紙ローラの対向位置には、凹部が形成されており、該凹部内で前記支持体は回転可能に構成されており、
前記調整機構が、前記凹部を区画する底面に用紙の搬送方向に沿って複数個設けられるとともに、前記付勢部材の一端部を係止する掛止部を含み、
前記複数個の掛止部から一つを選択し、前記付勢部材の一端部の掛止位置を変更することで、該付勢部材の前記支持体に対する付勢力を調整することができるようになっている、請求項2記載の用紙分離装置。
【請求項4】
前記付勢部材が引張りバネからなり、該引張りバネの一端部が前記掛止部に掛止され、該引張りバネの他端部が前記支持体の作用部に掛止されている、請求項3記載の用紙分離装置。
【請求項5】
前記支持体が樹脂材料で構成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の用紙分離装置。
【請求項6】
用紙の搬送方向における前記押圧部と前記支軸との間隔距離が、前記作用部と前記支軸との間隔距離よりも小さく設定されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の用紙分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79124(P2013−79124A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219214(P2011−219214)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】