説明

用紙加工装置の動力伝達機構

【課題】部品点数の削減、構成の簡素化を図ることにより、用紙加工装置の小型化に貢献できる用紙加工装置の動力伝達機構を提供する。
【解決手段】原動軸53に連結する駆動源接続部材55と加工手段の入力軸に連動連結する従動回転部材56とを備え、駆動源接続部材55が原動軸53を挿入接合するボス部57とボス部57の一端に一体形成されたフランジ部58とを有し、従動回転部材56を駆動源接続部材55のボス部57の外周に回転自在に挿嵌し、フランジ部58と従動回転部材56の対向面間に鋼球62を配置するとともに、従動回転部材56に鋼球62を受容保持する凹状部63を形成し、フランジ部58に鋼球62を収容可能な孔部60を形成し、孔部60に鋼球62を凹状部63に押圧するコイルバネ61を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は用紙加工装置の動力伝達機構に関し、特に過負荷時に動力伝達を解除する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の用紙加工装置には特許文献1に記載するものがある。図6に示すように、用紙加工装置は、装置本体10の一端に給紙部11を備え、他端に排紙部12を備えており、給紙部11から排紙部12へ搬送手段13を備えている。搬送手段13は多数個の対のローラ14からなる搬送経路15を構成している。
【0003】
搬送手段13はローラ14を駆動する搬送駆動手段(図示せず)を備えており、搬送経路15上には、搬送補正手段16、情報読取手段17、第1裁断装置部18、第2裁断装置部19、第3裁断装置部20、第4裁断装置部21、折り型形成装置部22等の加工手段が設けられている。これらは全て装置本体10に支持されており、これらの加工手段は加工駆動手段(図示せず)を備えている。
【0004】
この用紙加工装置では、給紙部11に載置した用紙の束から一枚ずつ搬送経路15に用紙を送り出す。搬送補正手段16は送られて来た用紙が斜行している場合、もしくは用紙が2枚以上に重畳している場合は用紙の搬送を停止し、1枚の用紙が真直に移動する場合には次工程へ搬送する。
【0005】
次工程で、情報読取手段17は用紙のバーコード等を読み込み、加工情報を制御手段(図示省略)に送る。制御手段は加工情報に基づいて後段の加工手段を制御する。
【特許文献1】特開2005−239307号公報
【特許文献2】特許第3281114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の構成において、搬送経路15上に配設した第1裁断装置部18、第2裁断装置部19、第3裁断装置部20、第4裁断装置部21、折り型形成装置部22等の加工手段に備えた加工駆動手段(図示せず)には、ギヤ駆動方式やベルト駆動方式等の動力伝達機構を採用しており、駆動源であるモータの駆動軸のトルクが各加工手段の従動軸にギヤ、プーリ、ベルト等を介して伝達される。
【0007】
このため、搬送補正手段16の検知誤作動等によって用紙の重畳が見逃されると、加工手段の駆動部に過大な負荷が作用し、駆動系の部品に損傷が生じることがある。このような、過負荷に対する手段として一般的にはトルクリミッタが提案されている。
【0008】
トルクリミッタには、例えば特許文献2に記載するようなものがある。これは、原動軸をなすステッピングモータの回転軸と、支持部材で回転自在に保持する従動軸をなすシャフトとの間に介装するものである。原動軸の回転軸にはドライブボスを装着し、従動軸のシャフトにはスラストボスを装着し、所定間隙を空けてドライブボスとスラストボスを配置し、スラストボスを介してドライブボスに対向する円板をドライブボスと一体的に固定する。ドライブボスに装着する複数のボールプランジャを当間隔で回転軸の周囲に配置し、ボールプランジャの先端のボールでスラストボスを円板に押圧するものである。
【0009】
この構成では、ドライブボスに作用する原動軸の回転力が円板を介してスラストボスに伝達され、スラストボスがシャフトを回転させる。
しかし、このような構成のトルクリミッタでは、従動軸のシャフトおよびシャフトを回転自在に支持する支持部材を必要とするために構成部品が多くなり、これらの構成部品を回転軸の軸心方向に配置するために装置構成が大きくなる。このため、従来のトルクリミッタを採用することは、用紙加工装置の小型化を図る上で問題があった。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するものであり、部品点数の削減、構成の簡素化を図ることにより、用紙加工装置の小型化に貢献できる用紙加工装置の動力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の用紙加工装置の動力伝達機構は、給紙側から排紙側へ用紙の搬送経路を有し、用紙に加工を施す加工手段を搬送経路上に配設した用紙加工装置において、加工手段が有する駆動系の入力軸と駆動源の原動軸との間に介装する動力伝達機構が、原動軸に連結する駆動源接続部材と加工手段の入力軸に連動連結する従動回転部材とを備え、駆動源接続部材が原動軸を挿入接合するボス部とボス部の一端に一体形成されたフランジ部とを有し、従動回転部材を駆動源接続部材のボス部の外周に回転自在に挿嵌し、フランジ部と従動回転部材の対向面間に球体を配置するとともに、フランジ部と従動回転部材の何れか一方の部材に球体を受容保持する凹状部を形成し、他方の部材に球体を収容可能な孔部を形成し、孔部に球体を凹状部に押圧する押圧部材を配置したことを特徴とする。
【0012】
また、従動回転部材に球体を受容保持する凹状部を形成し、球体を凹状部に押圧する押圧部材を有するボールプランジャをフランジ部の孔部に配設したことを特徴とする。
本発明の用紙加工装置の動力伝達機構は、給紙側から排紙側へ用紙の搬送経路を有し、用紙に加工を施す加工手段を搬送経路上に配設した用紙加工装置であって、加工手段が有する駆動系の入力軸と駆動源の原動軸との間に介装する動力伝達機構が、原動軸に連結する駆動源接続部材と加工手段の入力軸に連動連結する従動回転部材とを備え、駆動源接続部材が原動軸を挿入接合するボス部とボス部の一端に一体形成されたフランジ部とを有し、駆動源接続部材のボス部の外周に回転自在に挿嵌する従動回転部材が、ボス部の軸心方向へ移動自在に配置する板体と、板体をフランジ部に向けて押圧する押圧部材と、押圧部材を格納する本体部を有し、板体に径方向外側へ突出する突部を形成し、本体部に突部をボス部の軸心廻り方向で係止するとともに、突部がボス部の軸心方向に移動することを許容する切り欠き部を形成し、フランジ部と従動回転部材の対向面間に球体を配置するとともに、フランジ部および従動回転部材の双方に球体を受容保持する凹状部を形成したことを特徴とする。
【0013】
また、従動回転部材が歯車、プーリまたはスプロケットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記した構成により、駆動源の原動軸とともに駆動源接続部材が回転し、押圧部材が球体を凹状部に押圧することによって駆動源接続部材のフランジ部と従動回転部材とがボス部の軸心廻り方向において一体的に回転し、従動回転部材の回転によって加工手段の入力軸を回転駆動し、加工手段の駆動系に動力を伝達する。
【0015】
用紙の重送等の発生によって加工手段の駆動系に過大な負荷が作用すると、加工手段の駆動系の入力軸に連動連結した従動回転部材の抗力を受ける球体が押圧部材の押圧力に抗しながらフランジ部の孔部内に後退しつつ従動回転部材の凹状部から抜け出ることで、駆動源接続部材が従動回転部材に対してスリップして空転し、動力伝達が停止する。
【0016】
あるいは、駆動源の原動軸とともに駆動源接続部材が回転し、押圧部材が板体を介して球体を凹状部に押圧するとともに、板体の突部と本体部の切り欠き部がボス部の軸心廻り方向で係合することで駆動源接続部材のフランジ部と従動回転部材とがボス部の軸心廻り方向において一体的に回転し、従動回転部材の回転によって加工手段の入力軸を回転駆動し、加工手段の駆動系に動力を伝達する。
【0017】
用紙の重送等の発生によって加工手段の駆動系に過大な負荷が作用すると、加工手段の駆動系の入力軸に連動連結した従動回転部材の抗力を受ける球体が押圧部材の押圧力に抗しながら板体とともに本体部内に後退しつつフランジ部の凹状部から抜け出ることで、駆動源接続部材が従動回転部材に対してスリップして空転し、動力伝達が停止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。用紙加工装置の基本的な構成は図6において例示したので説明を省略し、本発明の要部をなす動力伝達機構について説明する。
【0019】
図1〜図2において、動力伝達機構51は、例えば図6で説明した用紙加工装置における搬送補正手段16、情報読取手段17、第1裁断装置部18、第2裁断装置部19、第3裁断装置部20、第4裁断装置部21、折り型形成装置部22等の加工手段に設けるものである。
【0020】
動力伝達機構51は、加工手段が備える駆動系の入力軸(図示省略)と駆動源であるモータ52の原動軸53との間に介装するものであり、原動軸53にキー接合54によって連結する駆動源接続部材55と加工手段の入力軸に連動連結する歯車、プーリまたはスプロケットからなる従動回転部材56とを備えている。
【0021】
駆動源接続部材55は原動軸53を挿入接合するボス部57とボス部57の一端に一体形成されたフランジ部58とを有しており、従動回転部材56を駆動源接続部材55のボス部57の外周にすべり軸受59を介して回転自在に挿嵌し、ボス部57に設けた止め輪57aで従動回転部材56およびすべり軸受59を抜け止めしている。
【0022】
フランジ部58には複数の孔部60を適当間隔で設けており、孔部60に配置した押圧部材をなすコイルバネ61が孔部60に収容可能な鋼球62を従動回転部材56へ向けて押圧する。従動回転部材56には鋼球62を受容保持する凹状部63を形成しており、鋼球62をフランジ部58と従動回転部材56の対向面間に配置している。
【0023】
本実施の形態では、フランジ部58に孔部60を形成してコイルバネ61を配置し、従動回転部材56に凹状部63を形成したが、フランジ部58に凹状部63を形成し、従動回転部材56に孔部60を形成してコイルバネ61を配置することも可能である。
【0024】
また、鋼球62およびコイルバネ61を備えたボールプランジャを孔部60に配設することも可能である。
上記した構成により、モータ52の駆動によって原動軸53とともに駆動源接続部材55が回転し、駆動源接続部材55の回転力が鋼球62を介して従動回転部材56に伝達される。つまり、孔部60内の鋼球62がコイルバネ61に押圧されて凹状部62に係合し、駆動源接続部材55のフランジ部58と従動回転部材56とがボス部57の軸心廻り方向において一体的に回転する。従動回転部材56の回転によって加工手段の入力軸が回転し、加工手段の駆動系に動力が伝達される。
【0025】
用紙の重送等の発生により用紙加工装置における搬送補正手段16、情報読取手段17、第1裁断装置部18、第2裁断装置部19、第3裁断装置部20、第4裁断装置部21、折り型形成装置部22等の加工手段の駆動系に過大な負荷が作用する場合がある。
【0026】
このとき、加工手段の駆動系の入力軸に連動連結した従動回転部材56の抗力を受ける鋼球62がコイルバネ61の押圧力に抗しながらフランジ部58の孔部60内に後退しつつ従動回転部材56の凹状部63から抜け出ることで、駆動源接続部材55が従動回転部材56に対してスリップして空転し、動力伝達が停止する。
【0027】
このため、部品点数を削減した簡素な構成においてトルクリミッタ機構を備えた動力伝達機構を実現することができ、用紙加工装置の小型化に貢献できる。
図3〜図5は本発明の他の実施の形態を示すものである。図3〜図5において、動力伝達機構71は、加工手段が備える駆動系の入力軸(図示省略)と駆動源であるモータ52の原動軸53との間に介装するものであり、原動軸53にボルト止め72によって連結する駆動源接続部材73と加工手段の入力軸に連動連結する従動回転部材74とを備えている。
【0028】
駆動源接続部材73は原動軸53を挿入接合するボス部75とボス部75の一端に一体形成されたフランジ部76とを有し、ボス部75の外周に従動回転部材74を回転自在に挿嵌している。
【0029】
従動回転部材74はボス部75の軸心方向へ移動自在に配置する板体77と、板体77をフランジ部76に向けて押圧する押圧部材をなすコイルバネ78と、コイルバネ78および板体77を格納する本体部79を有している。本体部79は歯車、プーリまたはスプロケットからなり、ボス部75の外周にすべり軸受80を介して回転自在に挿嵌し、ボス部75に設けた止め輪75aで従動回転部材74およびすべり軸受80を抜け止めしている。
【0030】
板体77は径方向外側へ突出する突部77aを有し、本体部79は開口周縁部に切り欠き部81を有しており、切り欠き部81は突部77aをボス部75の軸心廻り方向で係止するとともに、突部77aがボス部75の軸心方向に移動することを許容する形状をなす。フランジ部76と従動回転部材74の板体77の対向面間には鋼球82を配置し、フランジ部76および板体77の双方に鋼球82を受容保持する凹状部83、84を形成している。
【0031】
上記した構成により、モータ52の駆動によって原動軸53とともに駆動源接続部材73が回転し、駆動源接続部材73の回転力が鋼球82を介して従動回転部材74に伝達される。つまり、鋼球82が板体77を介してコイルバネ78に押圧されて凹状部83、84に係合し、駆動源接続部材73のフランジ部76と従動回転部材74の板体77および本体部79がボス部75の軸心廻り方向において一体的に回転する。従動回転部材74の回転によって加工手段の入力軸が回転し、加工手段の駆動系に動力が伝達される。
【0032】
用紙の重送等の発生により用紙加工装置における搬送補正手段16、情報読取手段17、第1裁断装置部18、第2裁断装置部19、第3裁断装置部20、第4裁断装置部21、折り型形成装置部22等の加工手段の駆動系に過大な負荷が作用する場合がある。
【0033】
このとき、加工手段の駆動系の入力軸に連動連結した従動回転部材74の抗力を受ける鋼球82がコイルバネ78の押圧力に抗しながら板体77とともに本体部79内に後退しつつフランジ部76の凹状部83から抜け出ることで、駆動源接続部材73が従動回転部材74に対してスリップして空転し、動力伝達が停止する。
【0034】
このため、部品点数を削減した簡素な構成においてトルクリミッタ機構を備えた動力伝達機構を実現することができ、用紙加工装置の小型化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態における動力伝達機構を示す断面図
【図2】同実施の形態における動力伝達機構の拡大断面図
【図3】本発明の他の実施の形態における動力伝達機構を示す拡大断面図
【図4】同実施の形態における動力伝達機構の正面図
【図5】同実施の形態における動力伝達機構の要部拡大図
【図6】従来の用紙加工装置の構成を示す模式図
【符号の説明】
【0036】
51 動力伝達機構
52 モータ
53 原動軸
54 キー接合
55 駆動源接続部材
56 従動回転部材
57 ボス部
57a 止め輪
58 フランジ部
59 すべり軸受
60 孔部
61 コイルバネ
62 鋼球
63 凹状部
71 動力伝達機構
72 ボルト止め
73 駆動源接続部材
74 従動回転部材
75 ボス部
75a 止め輪
76 フランジ部
77 板体
77a 突部
78 コイルバネ
79 本体部
80 すべり軸受
81 切り欠き部
82 鋼球
83、84 凹状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙側から排紙側へ用紙の搬送経路を有し、用紙に加工を施す加工手段を搬送経路上に配設した用紙加工装置において、加工手段が有する駆動系の入力軸と駆動源の原動軸との間に介装する動力伝達機構が、原動軸に連結する駆動源接続部材と加工手段の入力軸に連動連結する従動回転部材とを備え、駆動源接続部材が原動軸を挿入接合するボス部とボス部の一端に一体形成されたフランジ部とを有し、従動回転部材を駆動源接続部材のボス部の外周に回転自在に挿嵌し、フランジ部と従動回転部材の対向面間に球体を配置するとともに、フランジ部と従動回転部材の何れか一方の部材に球体を受容保持する凹状部を形成し、他方の部材に球体を収容可能な孔部を形成し、孔部に球体を凹状部に押圧する押圧部材を配置したことを特徴とする用紙加工装置の動力伝達機構。
【請求項2】
従動回転部材に球体を受容保持する凹状部を形成し、球体を凹状部に押圧する押圧部材を有するボールプランジャをフランジ部の孔部に配設したことを特徴とする請求項1に記載の用紙加工装置の動力伝達機構。
【請求項3】
給紙側から排紙側へ用紙の搬送経路を有し、用紙に加工を施す加工手段を搬送経路上に配設した用紙加工装置において、加工手段が有する駆動系の入力軸と駆動源の原動軸との間に介装する動力伝達機構が、原動軸に連結する駆動源接続部材と加工手段の入力軸に連動連結する従動回転部材とを備え、駆動源接続部材が原動軸を挿入接合するボス部とボス部の一端に一体形成されたフランジ部とを有し、駆動源接続部材のボス部の外周に回転自在に挿嵌する従動回転部材が、ボス部の軸心方向へ移動自在に配置する板体と、板体をフランジ部に向けて押圧する押圧部材と、押圧部材を格納する本体部を有し、板体に径方向外側へ突出する突部を形成し、本体部に突部をボス部の軸心廻り方向で係止するとともに、突部がボス部の軸心方向に移動することを許容する切り欠き部を形成し、フランジ部と従動回転部材の対向面間に球体を配置するとともに、フランジ部および従動回転部材の双方に球体を受容保持する凹状部を形成したことを特徴とする用紙加工装置の動力伝達機構。
【請求項4】
従動回転部材が歯車、プーリまたはスプロケットであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の用紙加工装置の動力伝達機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−2589(P2008−2589A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173221(P2006−173221)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】