用紙排出機構および画像形成ユニット
【課題】用紙の種類を問わず確実に積載面上での積載不良を防止できる用紙排出機構を提供する。
【解決手段】用紙Pを積載する積載面311を有する積載部310と、積載部310に用紙Pを搬送する用紙搬送部410とを有する用紙排出機構400において、用紙搬送部410と積載部310との間に、用紙搬送部410から供給された用紙Pをガイドする排紙ガイド432を設け、排紙ガイド432により、用紙Pの先端を、積載部310の積載面311を含む平面からの離間方向にガイドすることを特徴とする。
【解決手段】用紙Pを積載する積載面311を有する積載部310と、積載部310に用紙Pを搬送する用紙搬送部410とを有する用紙排出機構400において、用紙搬送部410と積載部310との間に、用紙搬送部410から供給された用紙Pをガイドする排紙ガイド432を設け、排紙ガイド432により、用紙Pの先端を、積載部310の積載面311を含む平面からの離間方向にガイドすることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙排出機構および画像形成ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、画像形成済みの用紙に種々の後処理を行う用紙後処理装置を接続する場合がある。この用紙後処理装置の一例として、画像形成装置から排出された用紙を、そのプリント内容に応じて所定の部数毎に仕分け、上下方向にシフト可能なトレイ上に積載(例えば最大で5000枚程度)する、所謂スタッカが知られている。
【0003】
ところで、このように多量の用紙を積載する際には、トレイ上で積載不良を生じる場合がある。この積載不良は、種々の原因で生じるが、例えば、図13(a)に示すように、画像形成装置から排出された用紙P1にバックカールを生じている状況では、
1)搬送ローラRに搬送された用紙P1の先端がトレイST上の積載用紙Psに落下した後で、空気流Bの影響で逆方向に湾曲する(同図(a)参照):
2)逆方向に湾曲した用紙P1の先端が積載用紙Psに貼り付き、用紙間抵抗の増大により、用紙先端の移動が停滞する(同図(b)参照):
3)この状態で、搬送ローラRによる搬送が進んでも、用紙P1の後端は、搬送ローラRの通過後も積載用紙Ps上に落下せず、搬送ローラRの周辺に残る(同図(c)参照):
4)後続の用紙P2が前段の用紙P1の後端と接触干渉し、同図(d)に示すように後続用紙P2が前段用紙P1の下に潜り込む:
という順序を経て紙詰まり(ジャム)を生じる場合がある。
【0004】
用紙を積載する際の積載不良を防止するための機構の一例として、特許文献1(特開2010−126331号公報)に、排紙角度を変更可能とした排紙ガイド板を用いる発明が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の発明は、図6に示すように、用紙Pの先端が積載用紙Psと接触する際の入射角βを小さくすることで、積載した最上位の用紙が押し出されにくくするものである。しかしながら、用紙の種類によっては図13(a)〜(d)に示す要因による積載不良の発生を防止できない場合がある。具体的に説明すると、例えば貼り付きやすい用紙(コート紙等)や腰が弱い用紙(薄紙等)を積載する場合には、たとえ用紙の入射角βを小さくしても、用紙の先端部がトレイや積載用紙と接触した際に接触点に貼りつき、先端部が接触点で停滞する結果、図13(d)に示すような形態のジャムを生じる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みて、用紙の種類を問わず確実に積載面上での積載不良を防止できる用紙排出機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる用紙排出機構は、用紙を積載する積載面を有する積載部と、積載部に用紙を搬送する用紙搬送部とを有する用紙排出機構において、用紙搬送部と積載部との間に、用紙搬送部から供給された用紙をガイドする排紙ガイドを設け、排紙ガイドにより、用紙の先端を、積載部の積載面を含む平面からの離間方向にガイドすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、用紙搬送部から供給された用紙をガイドする排紙ガイドを設け、排紙ガイドにより、用紙の先端部を、積載部の積載面を含む平面からの離間方向にガイドしている。これにより、積載部や積載用紙に対する用紙の初期接触部が、排紙ガイドの排出口からより遠方の位置となる。これにより、初期接触部の面積が減少するため、積載部や積載用紙に対する用紙の貼り付きを防止することができ、貼り付きに起因したジャムの発生を確実に防止することができる。かかる作用効果は、コート紙、薄紙等の用紙の種類を問わず得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置および用紙後処理装置を有する画像形成ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図2】上記用紙後処理装置の縦断面図である。
【図3】本発明にかかる用紙排出機構の一実施形態を示すもので、(a)は用紙排出機構の上面図、(b)はその縦断面図である。
【図4】上記実施形態にかかる用紙排出機構の制御装置を示すブロック図である。
【図5】(a)は、用紙の先端を排出する際における用紙排出機構の縦断面図である。(b)は、用紙の後端を排出する際における用紙排出機構の縦断面図である。
【図6】従来構成を示す側面図である。
【図7】本発明にかかる発明と従来構成における用紙の入射角を示す側面図である。
【図8】上記実施形態にかかる用紙排出機構の主要部を拡大して示す縦断面図である。
【図9】上記実施形態にかかる用紙排出機構の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明にかかる用紙排出機構の一実施形態を示すもので、用紙の中間部を排出する際における用紙排出機構の縦断面図である。
【図11】他の実施形態にかかる用紙排出機構の動作を示すフローチャートである。
【図12】他の実施形態にかかる用紙排出機構の動作を示すフローチャートである
【図13】(a)〜(d)は、従来構成におけるジャム発生のメカニズムの概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。図1は、画像形成装置1および用紙後処理装置2を有する画像形成ユニットの概略構成を示す斜視図である。画像形成装置1は、用紙Pに画像を形成し、その用紙Pを排出する装置である。用紙後処理装置2は、画像形成装置1に連結されており、画像形成装置1から排出された用紙Pを大量に積載する装置(スタッカ)である。なお、用紙後処理装置2の後段には、他の用紙後処理装置を接続することができる。他の用紙後処理装置としては、上記と同様のスタッカの他、他の処理(用紙の折り曲げ処理、ステイプル処理、あるいは簡易製本処理等)を行う装置も使用可能である。
【0011】
画像形成装置1は、内部構成は図示しないが、光源や各種光学系からなる露光部、露光部から照射される光により感光体ドラム上に静電潜像を形成してトナー供給により可視像化する画像形成部、可視像化されたトナー画像を用紙Pに転写する画像転写部、用紙Pに転写された画像を定着する定着部、定着部で定着された用紙Pを装置外に排出する排出部などから構成される。
【0012】
用紙後処理装置2には、図2に示すように、画像形成装置1の排出部から排出された用紙を受け入れる受け入れ部210、プルーフトレイ21、用紙排出口22、操作部23、上部ドア24、前部ドア25などが設けられる。
【0013】
この用紙後処理装置2では、プルーフ排紙モード、ストレート排紙モード、およびシフト排紙モードのいずれかを選択することができる。プルーフ排紙モードは、受け入れ部210に導入された用紙をプルーフトレイ21上に導いて積載する動作モードである。プルーフトレイ21上の用紙の積載量を検知するため、プルーフトレイ21の周辺にはセンサSa(図2参照)が配置されている。ストレート排紙モードは、受け入れ部210に導入された用紙を、用紙排出口22を介して後段に接続された他の用紙後処理装置に導く動作モードであり、シフト排紙モードは、用紙後処理装置2の内部に設けられたシフトトレイ310(図2参照)上に用紙を排出して積載する動作モードである。
【0014】
操作部23は、用紙後処理装置2の上面前側に配置されており、装置の動作状態などを表示すると共に、種々の設定のための入力を行うことができる。例えば、上記いずれかの動作モードの選択、シフトトレイ310の下降やジャム処理等といった操作の入力、用紙搬送の正常動作やジャムをはじめとするエラー発生の表示等が操作部23で行われる。
【0015】
上部ドア24は、用紙後処理装置2の上部を開閉するためのドアである。用紙Pの搬送途中でジャムが発生した際には、上部ドア24を開くことで、ユーザーが詰まった用紙の除去作業を行うことができる。また、前部ドア25は、用紙後処理装置2の前部を開閉するためのドアである。後述するように、台車334の設置やシフトトレイ310に積載された用紙Pの取り出しなどは、前部ドア25を開くことで行われる。なお、シフト排紙モードの選択時には、前部ドア25が閉じられた状態で動作を開始するようにする。これは、風などによる設置環境の外乱を防止して安定した積載性を確保し、また、操作者が積載動作中に積載部や用紙に直接触れることを防止するためである。
【0016】
図2に示すように、用紙後処理装置2の内部には、画像形成装置1から導入された用紙Pを各動作モードに応じた排紙先に搬送する用紙搬送部200と、用紙Pの積載動作を行う積載機構300とが設けられる。
【0017】
用紙搬送部200は、画像形成装置1から画像形成済みの用紙Pを受け入れる受け入れ部210と、搬送される用紙Pを搬送する複数の搬送経路L(L1、L2、L3、L4、L5)と、搬送経路Lを分岐する第一分岐爪220および第二分岐爪230とを有する。
【0018】
搬送経路Lは、受け入れ部210から第一分岐爪220に至る第一搬送経路L1と、第一分岐爪220から第二分岐爪230に至る第二搬送経路L2と、第一分岐爪220から積載機構300に至る第三搬送経路L3と、第二分岐爪230からプルーフトレイ21に至る第四搬送経路L4と、第二分岐爪230から用紙排出口22に至る第五搬送経路L5とからなる。各搬送経路L1〜L5は、搬送される用紙Pの上下方向をガイドする一対のガイド板(411a,411b:図3(b)参照)で構成される。
【0019】
各搬送経路L1〜L5には、各経路内で用紙Pを搬送するためのローラ対(211,222,241,242,251,252等)が各経路内の一箇所もしくは複数個所に設けられる。各ローラ対のうちの一方のローラがモータに回転駆動される駆動ローラであり、他方が従動回転する従動ローラである。受け入れ部210に導入された用紙Pは、選択した動作モードに応じた分岐爪220,230の切り替えにより、第三搬送経路L3、第四搬送経路L4、および第五搬送経路L5のいずれかに搬送され、各搬送経路L3,L4,L5の出口に設けられたシフトトレイ310、プルーフトレイ21、あるいは用紙排出口22のいずれかに排出される。第三搬送経路L3を搬送された用紙Pは、後述の用紙排出機構400を介してシフトトレイ310上に排出される。
【0020】
搬送経路Lの各所には、用紙Pの通過を検知する通過センサS1〜S5が配置されている。図示した実施形態では、第一搬送経路L1、第三搬送経路L3、第四搬送経路L4、および第五搬送経路L5にそれぞれ通過センサS1〜S5を配置している。各搬送経路Lにおける通過センサS1〜S5の配置位置や配置個数は、用紙後処理装置2で要求される機能に応じて任意に決定される。各通過センサS1〜S5は、例えば発光部と受光部を有する透過型または反射型の光センサで構成することができる。
【0021】
図2に示すように、積載機構300は、上述したシフトトレイ310と、シフトトレイ310を昇降させる昇降駆動部320とで構成される。
【0022】
シフトトレイ310の上面には、用紙Pを積載するための積載面311が形成されている。シフトトレイ310の積載面311は、その昇降動作中も含めて常時水平面上にある。
【0023】
昇降駆動部320は、シフトトレイ310の両側を支持するエレベータ321と、駆動源としてのトレイ駆動モータ322と、ウォームギヤ323と、ギヤ列324と、複数のタイミングベルト325,326,327と、複数のプーリ328,329とで構成される。
【0024】
シフトトレイ310の両側には、上下に離隔した駆動プーリ328および従動プーリ329と、第一タイミングベルト325とからなるベルト装置が配置される。水平方向に離隔した二つの駆動プーリ328間に第二タイミングベルト326が架け渡されており、一方の駆動プーリ328の動力が他方の駆動プーリ328に伝達されるようになっている。トレイ駆動モータ322を起動すると、その回転トルクが第三タイミングベルト327を介してウォームギヤ323に伝達され、さらにギヤ列324を介して一方の駆動プーリ328(図面右側)に伝達される。この回転トルクにより、シフトトレイ310の両側に配置された第一タイミングベルト325が同期駆動され、両タイミングベルト325に結合されたエレベータ321が降下し、さらにエレベータ321に支持されたシフトトレイ310も降下する。トレイ駆動モータ322を逆回転させれば、シフトトレイ310が上昇する。
【0025】
最上位(図2に示す位置)にあるシフトトレイ310の周辺には、ストッパ331、ジョガー332、フィラー333、パドル334、エンドフェンス335、および紙面センサSbが配置される。第三搬送経路L3を介してシフトトレイ310上に用紙Pが排出されると、用紙Pの先端がストッパ331との当接によって整合される。また、用紙Pの後端がエンドフェンス335によって整合され、用紙Pの搬送方向両側がジョガー332によって整合される。パドル334は、その回転によりシフトトレイ310上に積載された用紙Pの後端部を叩いて、用紙Pをシフトトレイ310上に押し付ける。シフトトレイ310上に所定数の用紙Pが積載されると、用紙Pの積載面がフィラー333を押し上げる。このフィラー333の動きを紙面センサSbで監視することにより、シフトトレイ310上の用紙Pの積載高さを検出することができる。
【0026】
紙面センサSbがONになればトレイ駆動モータ322が起動してシフトトレイ310を降下させ、紙面センサSbがOFFとなればトレイ駆動モータ322が停止する。従って、シフトトレイ310上に積載された用紙Pによって紙面センサSbがONとなる度にシフトトレイ310が所定距離ずつ降下することになる。これにより、シフトトレイ310に積載された最上位の用紙と第三搬送経路L3の出口との距離が一定範囲内に収められる。
【0027】
シフトトレイ310が最下位置まで降下すると、エレベータ321の支持が解除され、シフトトレイ310が台車334上に載置される。その後、ユーザーが前部ドア25を開いてシフトトレイ310と共に台車334を搬出することで、積載された用紙を取り出すことができる。用紙の取り出し後は、シフトトレイ310および台車334を用紙後処理装置2内に戻し、前部ドア25を閉める。これにより、エレベータ321がシフトトレイ310を支持し、トレイ駆動モータ322が逆回転してシフトトレイ310を最上位まで上昇させる。
【0028】
続いて、本発明の主要部分である用紙排出機構400の一実施形態を図3(a)(b)に基づいて説明する。なお、図3(a)は、用紙排出機構400の上面図であり、図3(b)は、その縦断面図である。
【0029】
図2および図3(b)に示すように、用紙排出機構400は、一対のガイド板411a,411bで形成された第三搬送経路L3の出口付近に設けられ、シフトトレイ310への用紙Pの排出を制御する機能を有する。用紙排出機構400は、用紙Pを搬送する用紙搬送部410と、用紙Pを積載する積載部としてのシフトトレイ310と、シフトトレイ310への排紙角度を調整する排紙角度調整部430とで構成される。
【0030】
用紙搬送部410は、第三搬送経路L3の出口端よりも僅かに上流側に配置した用紙搬送ローラ対410a,410bで構成される。用紙搬送ローラ対410a,410bのうちの一方が回転駆動される駆動ローラ410aであり、他方が従動回転する従動ローラ410bである。図3(a)に示すように、用紙搬送ローラ対410a,410bからなる用紙搬送部410は、用紙Pの幅方向の2箇所に離隔して設置されている。
【0031】
駆動ローラ410aには、ステッピングモータ等からなる排紙モータ421の出力がローラ駆動機構420を介して伝達される。ローラ駆動機構420は、タイミングベルト422、プーリ423、および複数ギヤ424,425,426からなるギヤ列で構成される。排紙モータ421の出力軸とプーリ423との間にタイミングベルト422が架け渡されている。排紙モータ421の出力は、タイミングベルト422およびプーリ423を介して、ギヤ列を構成する入力側ギヤ424、中間ギヤ425、および出力側ギヤ426に順次伝達され、さらに出力側ギヤ426に結合したローラ駆動軸428に伝達される。これにより、駆動ローラ410aが回転駆動され、第三搬送経路L3に供給された用紙Pが排紙角度調整部430に向けて送り出される。
【0032】
ギヤ列の中間ギヤ425には、出力側ギヤ426とは別に、出力側ギヤ426とギヤ比の異なる小径ギヤ427が噛み合っている。この小径ギヤ427には、上述したパドル334の駆動軸429が連結されている。これにより、パドル334は、駆動ローラ410aと連動して排紙モータ421で回転駆動される。
【0033】
排紙角度調整部430は、図3(a)に示すように、用紙Pの幅方向に離隔した一対の円盤状の基部431a,431bと、基部431a,431bの間に架設された排紙ガイド432とで構成される。この排紙角度調整部430は、その両端を図示しない軸受で支持することで、用紙Pの幅方向に延びる軸を中心として回転可能に支持される。この軸は、用紙搬送ローラ対410a,410bのニップ部を通過させる。以上の構成から、排紙角度調整部430を回転させると、排紙ガイド432がニップ部を中心として用紙搬送ローラ対410a,410bの周りで回転(公転)する。
【0034】
排紙ガイド432は、例えば、円周方向に離隔配置された第一ガイド部材432aと、第二ガイド部材432bとで構成される。第一ガイド部材432aと第二ガイド部材432bの間に、半径方向に延び、かつ円周方向幅を外径側ほど小さくした用紙搬送路433が形成されている。用紙搬送路433の内径端は、第三搬送経路L3の出口端と対峙しており、第三搬送経路L3に導入され、用紙搬送ローラ対410a,410bに達した用紙Pは、第三搬送経路L3の出口から用紙搬送路433に移送される。第三搬送経路L3から用紙搬送路433への用紙Pの移行を円滑に行うため、図3(b)に示すように、下側となる第一ガイド部材432aの内径端を上側の第二ガイド部材432bの内径端よりも内径側に延ばし、かつ下側のガイド板411bの出口端を上側のガイド板411aの出口端よりも下流側に延ばして、第一ガイド部材432aの内径端と下側のガイド板411bの出口端とを近接させるのが望ましい。
【0035】
本実施形態の排紙角度調整部430では、排紙ガイド432が回転方向に等配した三箇所に配置されている。以上の構成から、排紙角度調整部430を回転させると、複数の排紙ガイド432が用紙搬送ローラ対410a,410bのニップ部を中心として同一の回転半径で用紙搬送ローラ対410a,410bの周りを回転する。排紙角度調整部430の回転により、排紙ガイド432にガイドされた用紙Pの排紙角度(シフトトレイ310の積載面311に対する角度)を任意に変更することが可能となる。
【0036】
排紙角度調整部430の回転駆動は、その軸方向一方側に配置されたガイド駆動機構440によって行われる。ガイド駆動機構440は、排紙角度調整モータ441およびタイミングベルト442を有するもので、タイミングベルト442を介し、排紙角度調整モータ441の出力を排紙角度調整部430の一方の基部431aに装着した歯付きプーリ443に伝達する構成になっている。排紙角度調整モータ441は、例えばステッピングモータで構成される。このようにステッピングモータで構成することにより、クロック数に基づき、排紙角度調整部430のホーム位置からの回転角を正確に制御することが可能となる。
【0037】
図4は、以上に述べた用紙後処理装置2の制御装置を示すブロック図である。この制御装置には、各種制御プログラムが書き込まれたROM502を有するCPUが設けられる。CPUの入力側には、操作部23に設けられた各種スイッチ(トレイ下降スイッチ、ジャム処理スイッチ)や上述したセンサS1〜S5,Sa、Sbをはじめとする各種センサが接続され、出力側には、上述したトレイ駆動モータ322、排紙モータ421、排紙角度調整モータ441をはじめとする各種モータが接続されている。また、CPUの出力側には、操作部に設けられた各種LED(トレイ下降LED、ジャム処理LED、出力LED、満杯LED、エラーLED等)が接続されている。上記スイッチやセンサから得られる動作情報に基づき、各モータの駆動・停止やLEDの点灯・消灯が制御される。
【0038】
また、CPUには、用紙後処理装置2の前段に連結された画像形成装置1の制御部が接続されており、画像形成装置1に入力された動作情報が用紙後処理装置2のCPUに伝送される。用紙後処理装置2に用紙Pを移送する直前に、例えば用紙の部数や各部数の枚数等の情報が画像形成装置1の制御部から用紙後処理装置2のCPUに送信され、この情報に基づいて用紙後処理装置2での用紙の積載動作が制御される。
【0039】
以上に述べた用紙排出機構400の排紙角度調整部430は、一枚の用紙Pを第三搬送経路L3からシフトトレイ310へ排出する過程においてガイド方向を変更可能とする。具体的には、第三搬送経路L3に接続された排紙ガイド432は、用紙Pの先端部が排紙ガイド432を通過する際に、図5(a)に示すように、用紙搬送路433の排出口433aを上方に向けた上向き姿勢にあり、そのため、用紙Pの先端部は、シフトトレイ310の積載面311を含む平面から離間する方向にガイドされながら排紙ガイド432から排出される。
【0040】
一方、用紙Pの搬送が進行し、用紙Pの後端部が排紙ガイド432に到達すると、排紙角度調整部430が反時計周りに回転し、図5(b)に示すように、排紙ガイド432が用紙搬送路433の排出口433aを下方に向けた下向き姿勢になる。そのため、用紙Pの後端部は、シフトトレイ310の積載面311を含む平面に接近する方向に向けてガイドされながら排紙ガイド432から排出される。
【0041】
このように、排紙ガイド432で用紙Pの先端をシフトトレイ310の積載面311を含む平面から離間する方向にガイドすることにより、図6に示すように、用紙Pの先端を、積載用紙Psの最上位の用紙を含む平面に接近する方向へガイドする場合(例えば特許文献1の構成が相当する。以下、「従来構成」と呼ぶ。)に比べ、図7に示すように、シフトトレイ310の積載面311または積載された最上位の用紙に対して排出用紙Pが最初に接触する位置(「初期接触位置」と呼ぶ)Paが、従来構成における初期接触位置Pbよりも用紙搬送ローラ対410a,410bから離れた位置となる。また、この初期接触時におけるシフトトレイ310の積載面311や最上位の用紙に対する用紙Pの入射角αも、従来構成の入射角βよりも大きくなる。これにより、シフトトレイ310の積載面311または積載された最上位の用紙Pに対する用紙Pの初期接触面積が小さくなるので、排出された用紙Pの先端の貼りつきが生じにくくなり、この貼り付きを要因とするジャムの発生を抑制することができる。
【0042】
以上の作用効果を得るためには、図5(a)に示すように、シフトトレイ310の積載面311を含む平面と用紙Pの先端が排紙ガイド432にガイドされる方向との間の角度θ1を45°以下に設定するのが望ましい。これにより、排紙ガイド432の外径端に設けられた排出口433aからの用紙先端の飛び出し距離を大きくすることができるので、用紙Pと積載面311等との初期接触面積がさらに減少し、用紙Pの貼り付き防止により有効となる。なお、排紙ガイド432による用紙Pのガイド方向は、図8に示すように、排出口433aにおける用紙搬送路433の中心線Oの延長方向で表わす(以下、同じ)。
【0043】
また、用紙Pの後端部を排出する際に、排紙ガイド432でシフトトレイ310の積載面311を含む平面に接近する方向へガイドすることにより、用紙Pの後端を、用紙搬送ローラ対410a,410bの近い位置に排出することができる。また、排出直後の用紙Pの後端の高さがシフトトレイ310の積載面311または積載された最上位の用紙に近くなるため、用紙Pの後端の浮きを防止することができる。そのため、排出された用紙Pの後端と、これに続く後の用紙の先端との干渉を防止し、ジャムの発生をより確実に抑制することが可能となる。
【0044】
このように本発明では、用紙Pの第三搬送経路L3からシフトトレイ310への排紙過程において、用紙Pの先端と後端でガイド方向を異ならせている。そのため、一枚の用紙Pの排紙過程の各段階で、用紙Pの各部を各段階での最適方向にガイドすることができる。これにより、シフトトレイ310上でのジャムの発生を確実に防止することが可能となる。
【0045】
特に本発明の用紙排出機構400では、用紙搬送ローラ対410a,410bが固定位置にあり、用紙搬送ローラ対410a,410bとシフトトレイ310との間に配置された排紙ガイド432のガイド方向を、用紙搬送ローラ対410a,410bと独立して変更可能としている。そのため、一枚の用紙Pの排紙過程において、排紙方向を任意の角度に迅速に変更することが容易となり、一枚の用紙Pが排紙ガイド432を通過する短時間のうちにガイド方向を任意の方向に変更することが可能となる。
【0046】
図3(b)に示す実施形態のように、排紙角度調整部430の回転方向の複数個所に排紙ガイド432を配置すれば、用紙Pの後端をガイドした後、次の用紙をガイドする際には、先に使用した排紙ガイド432とは別の排紙ガイドを使用して上記次の用紙をガイドすることができる。このように前段とは別の排紙ガイド432を使用可能することで、排紙角度調整部430の回転量を少なくすることができる。そのため、用紙Pの搬送間隔を詰めて処理速度を向上させることができ、高い生産性を確保することができる。
【0047】
なお、用紙Pの先端および後端の検知は、第三搬送経路L3に設けた通過センサS2で遮光状態と透光状態を判定することで行うことができる。用紙Pの通過中はセンサS2の出力が反転するので、その反転の開始と終了を検知することにより、用紙Pの先端と後端の通過が認識可能となる。用紙搬送ローラ対410a,410bを駆動する排紙モータ421をステッピングモータで構成すれば、これらの検知信号と排紙モータ421に入力されたクロック数との関係から、用紙Pの先端と後端の現状位置を特定することができる。この特定した位置情報に基づき、排紙角度調整モータ441を駆動することで、上記のように、排紙ガイド432を通過する用紙Pの各部でガイド方向を変更することが可能となる。
【0048】
図9に、以上に述べた用紙排出機構400を制御するため、制御装置で実行される処理のフローチャートを示す。
【0049】
用紙Pが受入れ部210から第三搬送経路L3に搬入されると(S1)、用紙Pの先端が用紙搬送路433の排出口433aに達したか否かを判断する(S2)。YESであれば、排紙角度調整部430をホーム位置から回転させて用紙搬送路433を上向き姿勢にする。NOであれば、次いで用紙Pの後端が排出口433aに達したか否かを判断し(S3)、YESであれば排紙角度調整部430を回転させて用紙搬送路433を下向き姿勢にする。NOであれば用紙Pの排出が終了したか否かを判断し(S4)、YESであれば排紙角度調整部430をホーム位置に復帰させて、用紙排出機構400の1サイクルが完了する。
【0050】
以上に述べた実施形態では、用紙Pの先端の排出時と後端の排出時においてのみ、排紙ガイド432の姿勢を管理しているが、用紙Pの他の部分が排出口433aに達した時の排紙ガイド432の姿勢を管理することもできる。例えば図10に示すように、用紙Pの先端と後端の間の中間部が排出口433aに達した際に、中間部を水平方向、つまりシフトトレイ310の積載面311と平行の方向にガイドするように排紙ガイド432の姿勢を管理することもできる。
【0051】
このような用紙Pの中間部のガイド方向を管理する手法の一例として、例えば用紙Pの先端部の排出時に排紙ガイド432を上向き姿勢にした後、排紙角度調整部430を回転させて排紙ガイド432を下向き姿勢に変更する際に、中間部が排出口433aに到達する時点での排紙ガイド432によるガイド方向が水平姿勢となるよう、排紙角度調整部430の回転速度や回転開始タイミングを調整することが考えられる。排紙ガイド432が上向き姿勢から下向き姿勢に至るまでの間は、排紙角度調整部430を連続的に回転させてもよいし、排紙ガイド432が水平姿勢となった際に一時的に排紙角度調整部430の回転を停止させ、水平姿勢を保持するようにしてもよい。
【0052】
以上に述べた制御を行うため、制御装置で実行される処理のフローチャートを図11に示す。図11に示すフローチャードでは、排出口433aに用紙Pの先端が到達したか否かを判断するステップS12と、排出口433aに用紙Pの後端が到達したか否かを判断するステップS14との間に、排出口433aに用紙Pの中間部が到達したか否かを判定するステップS13を設け、さらにYESであれば、排紙角度調整部430を回転させて用紙搬送路433を水平姿勢にするステップS18を追加している。これ以外の処理手順は図9に示すフローチャートと共通する。
【0053】
〔別実施形態〕
上記各実施形態においては、用紙搬送ローラ対410a,410bの搬送速度(線速)は、用紙各部において一定速度とすることができる。しかし、これに限ることなく、用紙Pの搬送途中で用紙搬送ローラ対410a,410bの搬送速度を変更させてもよい。
【0054】
例えば用紙Pの先端が排紙ガイド432から排出される際には、用紙Pの他の部分が排出される時よりも用紙搬送ローラ対410a,410bの線速を大きくすることが考えられる。このような制御を行うことで、排出される用紙Pの初期接触位置がより遠方になるため、積載面や積載された最上位の用紙に対する接触面積をさらに小さくし、ジャムの発生をより確実に防止することが可能となる。この場合、用紙Pの後端を排出する際の線速は先端を排出する際の線速より小さくなるので、用紙Pの後端を排紙ガイド432の排出口433aに近い位置に排出することができる。そのため、ジャムの発生を防止しつつ、高い生産性を確保することができ、短時間に大量の用紙を安定して積載することが可能となる。
【0055】
このように用紙Pの先端部を排出する際の線速を一時的に増す場合に制御装置で実行される処理の一例を、図12のフローチャートに示す。このフローチャートにおいては、用紙Pの先端が排出口433aに到達したと判断された際に(S22:YES)、排紙角度調整部430を回転させて排紙ガイド432を上向き姿勢にする処理と、用紙搬送ローラ対410a,410bの線速を高速化する処理とが並行して行われる。また、用紙Pの後端が排出口433aに到達したと判定された際に(S23:YES)、排紙角度調整部430を回転させて排紙ガイド432を下向き姿勢にする処理と、用紙搬送ローラ対410a,410bを通常線速に戻す処理とが並行して行われる。これ以外の処理手順は図9に示すフローチャートと共通する。
【0056】
また、上記各実施形態において、用紙Pの各部を排出する際の積載面311に対する排出角度θ1(図8参照)は、搬送される用紙Pの種類(厚み、サイズ等)に応じて変更することができる。用紙Pが比較的薄く、いわゆる腰の弱い用紙Pであれば、上記のような貼りつきが問題となるが、例えば、比較的厚みがあり腰の強い用紙Pであれば、先端がシフトトレイ310の積載面311または積載された最上位の用紙Pに接触しても、貼り付きは生じにくい。
【0057】
よって、この場合は、用紙Pの先端のガイド方向と積載面311等がなす角度θ1を、図3(b)に示す実施形態の時よりも小さくすることができる。これにより、用紙Pの飛出し量を小さくすることができ、用紙Pがシフトトレイ310または積載済みの用紙に落下するまでの時間を短縮できるため、生産性をさらに向上させることができる。用紙Pの先端部に限らず、同様の観点から用紙Pの後端や中間部を排出する際の排出角度も用紙Pの種類に応じて変更することができる。用紙Pの種類は、前段に接続した画像形成装置1から伝送された入力情報により用紙後処理装置2に入力されるので、その入力情報に応じて排紙角度調整部430の回転角を制御することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。本発明にかかる画像形成装置は、カラーまたはモノクロの画像形成装置や、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
2 用紙後処理装置
310 シフトトレイ(積載部)
400 用紙排出機構
410 用紙搬送部
430 排紙角度調整部
432 排紙ガイド
432a 上側排紙ガイド
432b 下側排紙ガイド
433 用紙搬送路
433a 排出口
P 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2010−126331号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙排出機構および画像形成ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、画像形成済みの用紙に種々の後処理を行う用紙後処理装置を接続する場合がある。この用紙後処理装置の一例として、画像形成装置から排出された用紙を、そのプリント内容に応じて所定の部数毎に仕分け、上下方向にシフト可能なトレイ上に積載(例えば最大で5000枚程度)する、所謂スタッカが知られている。
【0003】
ところで、このように多量の用紙を積載する際には、トレイ上で積載不良を生じる場合がある。この積載不良は、種々の原因で生じるが、例えば、図13(a)に示すように、画像形成装置から排出された用紙P1にバックカールを生じている状況では、
1)搬送ローラRに搬送された用紙P1の先端がトレイST上の積載用紙Psに落下した後で、空気流Bの影響で逆方向に湾曲する(同図(a)参照):
2)逆方向に湾曲した用紙P1の先端が積載用紙Psに貼り付き、用紙間抵抗の増大により、用紙先端の移動が停滞する(同図(b)参照):
3)この状態で、搬送ローラRによる搬送が進んでも、用紙P1の後端は、搬送ローラRの通過後も積載用紙Ps上に落下せず、搬送ローラRの周辺に残る(同図(c)参照):
4)後続の用紙P2が前段の用紙P1の後端と接触干渉し、同図(d)に示すように後続用紙P2が前段用紙P1の下に潜り込む:
という順序を経て紙詰まり(ジャム)を生じる場合がある。
【0004】
用紙を積載する際の積載不良を防止するための機構の一例として、特許文献1(特開2010−126331号公報)に、排紙角度を変更可能とした排紙ガイド板を用いる発明が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の発明は、図6に示すように、用紙Pの先端が積載用紙Psと接触する際の入射角βを小さくすることで、積載した最上位の用紙が押し出されにくくするものである。しかしながら、用紙の種類によっては図13(a)〜(d)に示す要因による積載不良の発生を防止できない場合がある。具体的に説明すると、例えば貼り付きやすい用紙(コート紙等)や腰が弱い用紙(薄紙等)を積載する場合には、たとえ用紙の入射角βを小さくしても、用紙の先端部がトレイや積載用紙と接触した際に接触点に貼りつき、先端部が接触点で停滞する結果、図13(d)に示すような形態のジャムを生じる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みて、用紙の種類を問わず確実に積載面上での積載不良を防止できる用紙排出機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる用紙排出機構は、用紙を積載する積載面を有する積載部と、積載部に用紙を搬送する用紙搬送部とを有する用紙排出機構において、用紙搬送部と積載部との間に、用紙搬送部から供給された用紙をガイドする排紙ガイドを設け、排紙ガイドにより、用紙の先端を、積載部の積載面を含む平面からの離間方向にガイドすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、用紙搬送部から供給された用紙をガイドする排紙ガイドを設け、排紙ガイドにより、用紙の先端部を、積載部の積載面を含む平面からの離間方向にガイドしている。これにより、積載部や積載用紙に対する用紙の初期接触部が、排紙ガイドの排出口からより遠方の位置となる。これにより、初期接触部の面積が減少するため、積載部や積載用紙に対する用紙の貼り付きを防止することができ、貼り付きに起因したジャムの発生を確実に防止することができる。かかる作用効果は、コート紙、薄紙等の用紙の種類を問わず得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置および用紙後処理装置を有する画像形成ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図2】上記用紙後処理装置の縦断面図である。
【図3】本発明にかかる用紙排出機構の一実施形態を示すもので、(a)は用紙排出機構の上面図、(b)はその縦断面図である。
【図4】上記実施形態にかかる用紙排出機構の制御装置を示すブロック図である。
【図5】(a)は、用紙の先端を排出する際における用紙排出機構の縦断面図である。(b)は、用紙の後端を排出する際における用紙排出機構の縦断面図である。
【図6】従来構成を示す側面図である。
【図7】本発明にかかる発明と従来構成における用紙の入射角を示す側面図である。
【図8】上記実施形態にかかる用紙排出機構の主要部を拡大して示す縦断面図である。
【図9】上記実施形態にかかる用紙排出機構の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明にかかる用紙排出機構の一実施形態を示すもので、用紙の中間部を排出する際における用紙排出機構の縦断面図である。
【図11】他の実施形態にかかる用紙排出機構の動作を示すフローチャートである。
【図12】他の実施形態にかかる用紙排出機構の動作を示すフローチャートである
【図13】(a)〜(d)は、従来構成におけるジャム発生のメカニズムの概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。図1は、画像形成装置1および用紙後処理装置2を有する画像形成ユニットの概略構成を示す斜視図である。画像形成装置1は、用紙Pに画像を形成し、その用紙Pを排出する装置である。用紙後処理装置2は、画像形成装置1に連結されており、画像形成装置1から排出された用紙Pを大量に積載する装置(スタッカ)である。なお、用紙後処理装置2の後段には、他の用紙後処理装置を接続することができる。他の用紙後処理装置としては、上記と同様のスタッカの他、他の処理(用紙の折り曲げ処理、ステイプル処理、あるいは簡易製本処理等)を行う装置も使用可能である。
【0011】
画像形成装置1は、内部構成は図示しないが、光源や各種光学系からなる露光部、露光部から照射される光により感光体ドラム上に静電潜像を形成してトナー供給により可視像化する画像形成部、可視像化されたトナー画像を用紙Pに転写する画像転写部、用紙Pに転写された画像を定着する定着部、定着部で定着された用紙Pを装置外に排出する排出部などから構成される。
【0012】
用紙後処理装置2には、図2に示すように、画像形成装置1の排出部から排出された用紙を受け入れる受け入れ部210、プルーフトレイ21、用紙排出口22、操作部23、上部ドア24、前部ドア25などが設けられる。
【0013】
この用紙後処理装置2では、プルーフ排紙モード、ストレート排紙モード、およびシフト排紙モードのいずれかを選択することができる。プルーフ排紙モードは、受け入れ部210に導入された用紙をプルーフトレイ21上に導いて積載する動作モードである。プルーフトレイ21上の用紙の積載量を検知するため、プルーフトレイ21の周辺にはセンサSa(図2参照)が配置されている。ストレート排紙モードは、受け入れ部210に導入された用紙を、用紙排出口22を介して後段に接続された他の用紙後処理装置に導く動作モードであり、シフト排紙モードは、用紙後処理装置2の内部に設けられたシフトトレイ310(図2参照)上に用紙を排出して積載する動作モードである。
【0014】
操作部23は、用紙後処理装置2の上面前側に配置されており、装置の動作状態などを表示すると共に、種々の設定のための入力を行うことができる。例えば、上記いずれかの動作モードの選択、シフトトレイ310の下降やジャム処理等といった操作の入力、用紙搬送の正常動作やジャムをはじめとするエラー発生の表示等が操作部23で行われる。
【0015】
上部ドア24は、用紙後処理装置2の上部を開閉するためのドアである。用紙Pの搬送途中でジャムが発生した際には、上部ドア24を開くことで、ユーザーが詰まった用紙の除去作業を行うことができる。また、前部ドア25は、用紙後処理装置2の前部を開閉するためのドアである。後述するように、台車334の設置やシフトトレイ310に積載された用紙Pの取り出しなどは、前部ドア25を開くことで行われる。なお、シフト排紙モードの選択時には、前部ドア25が閉じられた状態で動作を開始するようにする。これは、風などによる設置環境の外乱を防止して安定した積載性を確保し、また、操作者が積載動作中に積載部や用紙に直接触れることを防止するためである。
【0016】
図2に示すように、用紙後処理装置2の内部には、画像形成装置1から導入された用紙Pを各動作モードに応じた排紙先に搬送する用紙搬送部200と、用紙Pの積載動作を行う積載機構300とが設けられる。
【0017】
用紙搬送部200は、画像形成装置1から画像形成済みの用紙Pを受け入れる受け入れ部210と、搬送される用紙Pを搬送する複数の搬送経路L(L1、L2、L3、L4、L5)と、搬送経路Lを分岐する第一分岐爪220および第二分岐爪230とを有する。
【0018】
搬送経路Lは、受け入れ部210から第一分岐爪220に至る第一搬送経路L1と、第一分岐爪220から第二分岐爪230に至る第二搬送経路L2と、第一分岐爪220から積載機構300に至る第三搬送経路L3と、第二分岐爪230からプルーフトレイ21に至る第四搬送経路L4と、第二分岐爪230から用紙排出口22に至る第五搬送経路L5とからなる。各搬送経路L1〜L5は、搬送される用紙Pの上下方向をガイドする一対のガイド板(411a,411b:図3(b)参照)で構成される。
【0019】
各搬送経路L1〜L5には、各経路内で用紙Pを搬送するためのローラ対(211,222,241,242,251,252等)が各経路内の一箇所もしくは複数個所に設けられる。各ローラ対のうちの一方のローラがモータに回転駆動される駆動ローラであり、他方が従動回転する従動ローラである。受け入れ部210に導入された用紙Pは、選択した動作モードに応じた分岐爪220,230の切り替えにより、第三搬送経路L3、第四搬送経路L4、および第五搬送経路L5のいずれかに搬送され、各搬送経路L3,L4,L5の出口に設けられたシフトトレイ310、プルーフトレイ21、あるいは用紙排出口22のいずれかに排出される。第三搬送経路L3を搬送された用紙Pは、後述の用紙排出機構400を介してシフトトレイ310上に排出される。
【0020】
搬送経路Lの各所には、用紙Pの通過を検知する通過センサS1〜S5が配置されている。図示した実施形態では、第一搬送経路L1、第三搬送経路L3、第四搬送経路L4、および第五搬送経路L5にそれぞれ通過センサS1〜S5を配置している。各搬送経路Lにおける通過センサS1〜S5の配置位置や配置個数は、用紙後処理装置2で要求される機能に応じて任意に決定される。各通過センサS1〜S5は、例えば発光部と受光部を有する透過型または反射型の光センサで構成することができる。
【0021】
図2に示すように、積載機構300は、上述したシフトトレイ310と、シフトトレイ310を昇降させる昇降駆動部320とで構成される。
【0022】
シフトトレイ310の上面には、用紙Pを積載するための積載面311が形成されている。シフトトレイ310の積載面311は、その昇降動作中も含めて常時水平面上にある。
【0023】
昇降駆動部320は、シフトトレイ310の両側を支持するエレベータ321と、駆動源としてのトレイ駆動モータ322と、ウォームギヤ323と、ギヤ列324と、複数のタイミングベルト325,326,327と、複数のプーリ328,329とで構成される。
【0024】
シフトトレイ310の両側には、上下に離隔した駆動プーリ328および従動プーリ329と、第一タイミングベルト325とからなるベルト装置が配置される。水平方向に離隔した二つの駆動プーリ328間に第二タイミングベルト326が架け渡されており、一方の駆動プーリ328の動力が他方の駆動プーリ328に伝達されるようになっている。トレイ駆動モータ322を起動すると、その回転トルクが第三タイミングベルト327を介してウォームギヤ323に伝達され、さらにギヤ列324を介して一方の駆動プーリ328(図面右側)に伝達される。この回転トルクにより、シフトトレイ310の両側に配置された第一タイミングベルト325が同期駆動され、両タイミングベルト325に結合されたエレベータ321が降下し、さらにエレベータ321に支持されたシフトトレイ310も降下する。トレイ駆動モータ322を逆回転させれば、シフトトレイ310が上昇する。
【0025】
最上位(図2に示す位置)にあるシフトトレイ310の周辺には、ストッパ331、ジョガー332、フィラー333、パドル334、エンドフェンス335、および紙面センサSbが配置される。第三搬送経路L3を介してシフトトレイ310上に用紙Pが排出されると、用紙Pの先端がストッパ331との当接によって整合される。また、用紙Pの後端がエンドフェンス335によって整合され、用紙Pの搬送方向両側がジョガー332によって整合される。パドル334は、その回転によりシフトトレイ310上に積載された用紙Pの後端部を叩いて、用紙Pをシフトトレイ310上に押し付ける。シフトトレイ310上に所定数の用紙Pが積載されると、用紙Pの積載面がフィラー333を押し上げる。このフィラー333の動きを紙面センサSbで監視することにより、シフトトレイ310上の用紙Pの積載高さを検出することができる。
【0026】
紙面センサSbがONになればトレイ駆動モータ322が起動してシフトトレイ310を降下させ、紙面センサSbがOFFとなればトレイ駆動モータ322が停止する。従って、シフトトレイ310上に積載された用紙Pによって紙面センサSbがONとなる度にシフトトレイ310が所定距離ずつ降下することになる。これにより、シフトトレイ310に積載された最上位の用紙と第三搬送経路L3の出口との距離が一定範囲内に収められる。
【0027】
シフトトレイ310が最下位置まで降下すると、エレベータ321の支持が解除され、シフトトレイ310が台車334上に載置される。その後、ユーザーが前部ドア25を開いてシフトトレイ310と共に台車334を搬出することで、積載された用紙を取り出すことができる。用紙の取り出し後は、シフトトレイ310および台車334を用紙後処理装置2内に戻し、前部ドア25を閉める。これにより、エレベータ321がシフトトレイ310を支持し、トレイ駆動モータ322が逆回転してシフトトレイ310を最上位まで上昇させる。
【0028】
続いて、本発明の主要部分である用紙排出機構400の一実施形態を図3(a)(b)に基づいて説明する。なお、図3(a)は、用紙排出機構400の上面図であり、図3(b)は、その縦断面図である。
【0029】
図2および図3(b)に示すように、用紙排出機構400は、一対のガイド板411a,411bで形成された第三搬送経路L3の出口付近に設けられ、シフトトレイ310への用紙Pの排出を制御する機能を有する。用紙排出機構400は、用紙Pを搬送する用紙搬送部410と、用紙Pを積載する積載部としてのシフトトレイ310と、シフトトレイ310への排紙角度を調整する排紙角度調整部430とで構成される。
【0030】
用紙搬送部410は、第三搬送経路L3の出口端よりも僅かに上流側に配置した用紙搬送ローラ対410a,410bで構成される。用紙搬送ローラ対410a,410bのうちの一方が回転駆動される駆動ローラ410aであり、他方が従動回転する従動ローラ410bである。図3(a)に示すように、用紙搬送ローラ対410a,410bからなる用紙搬送部410は、用紙Pの幅方向の2箇所に離隔して設置されている。
【0031】
駆動ローラ410aには、ステッピングモータ等からなる排紙モータ421の出力がローラ駆動機構420を介して伝達される。ローラ駆動機構420は、タイミングベルト422、プーリ423、および複数ギヤ424,425,426からなるギヤ列で構成される。排紙モータ421の出力軸とプーリ423との間にタイミングベルト422が架け渡されている。排紙モータ421の出力は、タイミングベルト422およびプーリ423を介して、ギヤ列を構成する入力側ギヤ424、中間ギヤ425、および出力側ギヤ426に順次伝達され、さらに出力側ギヤ426に結合したローラ駆動軸428に伝達される。これにより、駆動ローラ410aが回転駆動され、第三搬送経路L3に供給された用紙Pが排紙角度調整部430に向けて送り出される。
【0032】
ギヤ列の中間ギヤ425には、出力側ギヤ426とは別に、出力側ギヤ426とギヤ比の異なる小径ギヤ427が噛み合っている。この小径ギヤ427には、上述したパドル334の駆動軸429が連結されている。これにより、パドル334は、駆動ローラ410aと連動して排紙モータ421で回転駆動される。
【0033】
排紙角度調整部430は、図3(a)に示すように、用紙Pの幅方向に離隔した一対の円盤状の基部431a,431bと、基部431a,431bの間に架設された排紙ガイド432とで構成される。この排紙角度調整部430は、その両端を図示しない軸受で支持することで、用紙Pの幅方向に延びる軸を中心として回転可能に支持される。この軸は、用紙搬送ローラ対410a,410bのニップ部を通過させる。以上の構成から、排紙角度調整部430を回転させると、排紙ガイド432がニップ部を中心として用紙搬送ローラ対410a,410bの周りで回転(公転)する。
【0034】
排紙ガイド432は、例えば、円周方向に離隔配置された第一ガイド部材432aと、第二ガイド部材432bとで構成される。第一ガイド部材432aと第二ガイド部材432bの間に、半径方向に延び、かつ円周方向幅を外径側ほど小さくした用紙搬送路433が形成されている。用紙搬送路433の内径端は、第三搬送経路L3の出口端と対峙しており、第三搬送経路L3に導入され、用紙搬送ローラ対410a,410bに達した用紙Pは、第三搬送経路L3の出口から用紙搬送路433に移送される。第三搬送経路L3から用紙搬送路433への用紙Pの移行を円滑に行うため、図3(b)に示すように、下側となる第一ガイド部材432aの内径端を上側の第二ガイド部材432bの内径端よりも内径側に延ばし、かつ下側のガイド板411bの出口端を上側のガイド板411aの出口端よりも下流側に延ばして、第一ガイド部材432aの内径端と下側のガイド板411bの出口端とを近接させるのが望ましい。
【0035】
本実施形態の排紙角度調整部430では、排紙ガイド432が回転方向に等配した三箇所に配置されている。以上の構成から、排紙角度調整部430を回転させると、複数の排紙ガイド432が用紙搬送ローラ対410a,410bのニップ部を中心として同一の回転半径で用紙搬送ローラ対410a,410bの周りを回転する。排紙角度調整部430の回転により、排紙ガイド432にガイドされた用紙Pの排紙角度(シフトトレイ310の積載面311に対する角度)を任意に変更することが可能となる。
【0036】
排紙角度調整部430の回転駆動は、その軸方向一方側に配置されたガイド駆動機構440によって行われる。ガイド駆動機構440は、排紙角度調整モータ441およびタイミングベルト442を有するもので、タイミングベルト442を介し、排紙角度調整モータ441の出力を排紙角度調整部430の一方の基部431aに装着した歯付きプーリ443に伝達する構成になっている。排紙角度調整モータ441は、例えばステッピングモータで構成される。このようにステッピングモータで構成することにより、クロック数に基づき、排紙角度調整部430のホーム位置からの回転角を正確に制御することが可能となる。
【0037】
図4は、以上に述べた用紙後処理装置2の制御装置を示すブロック図である。この制御装置には、各種制御プログラムが書き込まれたROM502を有するCPUが設けられる。CPUの入力側には、操作部23に設けられた各種スイッチ(トレイ下降スイッチ、ジャム処理スイッチ)や上述したセンサS1〜S5,Sa、Sbをはじめとする各種センサが接続され、出力側には、上述したトレイ駆動モータ322、排紙モータ421、排紙角度調整モータ441をはじめとする各種モータが接続されている。また、CPUの出力側には、操作部に設けられた各種LED(トレイ下降LED、ジャム処理LED、出力LED、満杯LED、エラーLED等)が接続されている。上記スイッチやセンサから得られる動作情報に基づき、各モータの駆動・停止やLEDの点灯・消灯が制御される。
【0038】
また、CPUには、用紙後処理装置2の前段に連結された画像形成装置1の制御部が接続されており、画像形成装置1に入力された動作情報が用紙後処理装置2のCPUに伝送される。用紙後処理装置2に用紙Pを移送する直前に、例えば用紙の部数や各部数の枚数等の情報が画像形成装置1の制御部から用紙後処理装置2のCPUに送信され、この情報に基づいて用紙後処理装置2での用紙の積載動作が制御される。
【0039】
以上に述べた用紙排出機構400の排紙角度調整部430は、一枚の用紙Pを第三搬送経路L3からシフトトレイ310へ排出する過程においてガイド方向を変更可能とする。具体的には、第三搬送経路L3に接続された排紙ガイド432は、用紙Pの先端部が排紙ガイド432を通過する際に、図5(a)に示すように、用紙搬送路433の排出口433aを上方に向けた上向き姿勢にあり、そのため、用紙Pの先端部は、シフトトレイ310の積載面311を含む平面から離間する方向にガイドされながら排紙ガイド432から排出される。
【0040】
一方、用紙Pの搬送が進行し、用紙Pの後端部が排紙ガイド432に到達すると、排紙角度調整部430が反時計周りに回転し、図5(b)に示すように、排紙ガイド432が用紙搬送路433の排出口433aを下方に向けた下向き姿勢になる。そのため、用紙Pの後端部は、シフトトレイ310の積載面311を含む平面に接近する方向に向けてガイドされながら排紙ガイド432から排出される。
【0041】
このように、排紙ガイド432で用紙Pの先端をシフトトレイ310の積載面311を含む平面から離間する方向にガイドすることにより、図6に示すように、用紙Pの先端を、積載用紙Psの最上位の用紙を含む平面に接近する方向へガイドする場合(例えば特許文献1の構成が相当する。以下、「従来構成」と呼ぶ。)に比べ、図7に示すように、シフトトレイ310の積載面311または積載された最上位の用紙に対して排出用紙Pが最初に接触する位置(「初期接触位置」と呼ぶ)Paが、従来構成における初期接触位置Pbよりも用紙搬送ローラ対410a,410bから離れた位置となる。また、この初期接触時におけるシフトトレイ310の積載面311や最上位の用紙に対する用紙Pの入射角αも、従来構成の入射角βよりも大きくなる。これにより、シフトトレイ310の積載面311または積載された最上位の用紙Pに対する用紙Pの初期接触面積が小さくなるので、排出された用紙Pの先端の貼りつきが生じにくくなり、この貼り付きを要因とするジャムの発生を抑制することができる。
【0042】
以上の作用効果を得るためには、図5(a)に示すように、シフトトレイ310の積載面311を含む平面と用紙Pの先端が排紙ガイド432にガイドされる方向との間の角度θ1を45°以下に設定するのが望ましい。これにより、排紙ガイド432の外径端に設けられた排出口433aからの用紙先端の飛び出し距離を大きくすることができるので、用紙Pと積載面311等との初期接触面積がさらに減少し、用紙Pの貼り付き防止により有効となる。なお、排紙ガイド432による用紙Pのガイド方向は、図8に示すように、排出口433aにおける用紙搬送路433の中心線Oの延長方向で表わす(以下、同じ)。
【0043】
また、用紙Pの後端部を排出する際に、排紙ガイド432でシフトトレイ310の積載面311を含む平面に接近する方向へガイドすることにより、用紙Pの後端を、用紙搬送ローラ対410a,410bの近い位置に排出することができる。また、排出直後の用紙Pの後端の高さがシフトトレイ310の積載面311または積載された最上位の用紙に近くなるため、用紙Pの後端の浮きを防止することができる。そのため、排出された用紙Pの後端と、これに続く後の用紙の先端との干渉を防止し、ジャムの発生をより確実に抑制することが可能となる。
【0044】
このように本発明では、用紙Pの第三搬送経路L3からシフトトレイ310への排紙過程において、用紙Pの先端と後端でガイド方向を異ならせている。そのため、一枚の用紙Pの排紙過程の各段階で、用紙Pの各部を各段階での最適方向にガイドすることができる。これにより、シフトトレイ310上でのジャムの発生を確実に防止することが可能となる。
【0045】
特に本発明の用紙排出機構400では、用紙搬送ローラ対410a,410bが固定位置にあり、用紙搬送ローラ対410a,410bとシフトトレイ310との間に配置された排紙ガイド432のガイド方向を、用紙搬送ローラ対410a,410bと独立して変更可能としている。そのため、一枚の用紙Pの排紙過程において、排紙方向を任意の角度に迅速に変更することが容易となり、一枚の用紙Pが排紙ガイド432を通過する短時間のうちにガイド方向を任意の方向に変更することが可能となる。
【0046】
図3(b)に示す実施形態のように、排紙角度調整部430の回転方向の複数個所に排紙ガイド432を配置すれば、用紙Pの後端をガイドした後、次の用紙をガイドする際には、先に使用した排紙ガイド432とは別の排紙ガイドを使用して上記次の用紙をガイドすることができる。このように前段とは別の排紙ガイド432を使用可能することで、排紙角度調整部430の回転量を少なくすることができる。そのため、用紙Pの搬送間隔を詰めて処理速度を向上させることができ、高い生産性を確保することができる。
【0047】
なお、用紙Pの先端および後端の検知は、第三搬送経路L3に設けた通過センサS2で遮光状態と透光状態を判定することで行うことができる。用紙Pの通過中はセンサS2の出力が反転するので、その反転の開始と終了を検知することにより、用紙Pの先端と後端の通過が認識可能となる。用紙搬送ローラ対410a,410bを駆動する排紙モータ421をステッピングモータで構成すれば、これらの検知信号と排紙モータ421に入力されたクロック数との関係から、用紙Pの先端と後端の現状位置を特定することができる。この特定した位置情報に基づき、排紙角度調整モータ441を駆動することで、上記のように、排紙ガイド432を通過する用紙Pの各部でガイド方向を変更することが可能となる。
【0048】
図9に、以上に述べた用紙排出機構400を制御するため、制御装置で実行される処理のフローチャートを示す。
【0049】
用紙Pが受入れ部210から第三搬送経路L3に搬入されると(S1)、用紙Pの先端が用紙搬送路433の排出口433aに達したか否かを判断する(S2)。YESであれば、排紙角度調整部430をホーム位置から回転させて用紙搬送路433を上向き姿勢にする。NOであれば、次いで用紙Pの後端が排出口433aに達したか否かを判断し(S3)、YESであれば排紙角度調整部430を回転させて用紙搬送路433を下向き姿勢にする。NOであれば用紙Pの排出が終了したか否かを判断し(S4)、YESであれば排紙角度調整部430をホーム位置に復帰させて、用紙排出機構400の1サイクルが完了する。
【0050】
以上に述べた実施形態では、用紙Pの先端の排出時と後端の排出時においてのみ、排紙ガイド432の姿勢を管理しているが、用紙Pの他の部分が排出口433aに達した時の排紙ガイド432の姿勢を管理することもできる。例えば図10に示すように、用紙Pの先端と後端の間の中間部が排出口433aに達した際に、中間部を水平方向、つまりシフトトレイ310の積載面311と平行の方向にガイドするように排紙ガイド432の姿勢を管理することもできる。
【0051】
このような用紙Pの中間部のガイド方向を管理する手法の一例として、例えば用紙Pの先端部の排出時に排紙ガイド432を上向き姿勢にした後、排紙角度調整部430を回転させて排紙ガイド432を下向き姿勢に変更する際に、中間部が排出口433aに到達する時点での排紙ガイド432によるガイド方向が水平姿勢となるよう、排紙角度調整部430の回転速度や回転開始タイミングを調整することが考えられる。排紙ガイド432が上向き姿勢から下向き姿勢に至るまでの間は、排紙角度調整部430を連続的に回転させてもよいし、排紙ガイド432が水平姿勢となった際に一時的に排紙角度調整部430の回転を停止させ、水平姿勢を保持するようにしてもよい。
【0052】
以上に述べた制御を行うため、制御装置で実行される処理のフローチャートを図11に示す。図11に示すフローチャードでは、排出口433aに用紙Pの先端が到達したか否かを判断するステップS12と、排出口433aに用紙Pの後端が到達したか否かを判断するステップS14との間に、排出口433aに用紙Pの中間部が到達したか否かを判定するステップS13を設け、さらにYESであれば、排紙角度調整部430を回転させて用紙搬送路433を水平姿勢にするステップS18を追加している。これ以外の処理手順は図9に示すフローチャートと共通する。
【0053】
〔別実施形態〕
上記各実施形態においては、用紙搬送ローラ対410a,410bの搬送速度(線速)は、用紙各部において一定速度とすることができる。しかし、これに限ることなく、用紙Pの搬送途中で用紙搬送ローラ対410a,410bの搬送速度を変更させてもよい。
【0054】
例えば用紙Pの先端が排紙ガイド432から排出される際には、用紙Pの他の部分が排出される時よりも用紙搬送ローラ対410a,410bの線速を大きくすることが考えられる。このような制御を行うことで、排出される用紙Pの初期接触位置がより遠方になるため、積載面や積載された最上位の用紙に対する接触面積をさらに小さくし、ジャムの発生をより確実に防止することが可能となる。この場合、用紙Pの後端を排出する際の線速は先端を排出する際の線速より小さくなるので、用紙Pの後端を排紙ガイド432の排出口433aに近い位置に排出することができる。そのため、ジャムの発生を防止しつつ、高い生産性を確保することができ、短時間に大量の用紙を安定して積載することが可能となる。
【0055】
このように用紙Pの先端部を排出する際の線速を一時的に増す場合に制御装置で実行される処理の一例を、図12のフローチャートに示す。このフローチャートにおいては、用紙Pの先端が排出口433aに到達したと判断された際に(S22:YES)、排紙角度調整部430を回転させて排紙ガイド432を上向き姿勢にする処理と、用紙搬送ローラ対410a,410bの線速を高速化する処理とが並行して行われる。また、用紙Pの後端が排出口433aに到達したと判定された際に(S23:YES)、排紙角度調整部430を回転させて排紙ガイド432を下向き姿勢にする処理と、用紙搬送ローラ対410a,410bを通常線速に戻す処理とが並行して行われる。これ以外の処理手順は図9に示すフローチャートと共通する。
【0056】
また、上記各実施形態において、用紙Pの各部を排出する際の積載面311に対する排出角度θ1(図8参照)は、搬送される用紙Pの種類(厚み、サイズ等)に応じて変更することができる。用紙Pが比較的薄く、いわゆる腰の弱い用紙Pであれば、上記のような貼りつきが問題となるが、例えば、比較的厚みがあり腰の強い用紙Pであれば、先端がシフトトレイ310の積載面311または積載された最上位の用紙Pに接触しても、貼り付きは生じにくい。
【0057】
よって、この場合は、用紙Pの先端のガイド方向と積載面311等がなす角度θ1を、図3(b)に示す実施形態の時よりも小さくすることができる。これにより、用紙Pの飛出し量を小さくすることができ、用紙Pがシフトトレイ310または積載済みの用紙に落下するまでの時間を短縮できるため、生産性をさらに向上させることができる。用紙Pの先端部に限らず、同様の観点から用紙Pの後端や中間部を排出する際の排出角度も用紙Pの種類に応じて変更することができる。用紙Pの種類は、前段に接続した画像形成装置1から伝送された入力情報により用紙後処理装置2に入力されるので、その入力情報に応じて排紙角度調整部430の回転角を制御することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。本発明にかかる画像形成装置は、カラーまたはモノクロの画像形成装置や、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
2 用紙後処理装置
310 シフトトレイ(積載部)
400 用紙排出機構
410 用紙搬送部
430 排紙角度調整部
432 排紙ガイド
432a 上側排紙ガイド
432b 下側排紙ガイド
433 用紙搬送路
433a 排出口
P 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2010−126331号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を積載する積載面を有する積載部と、積載部に用紙を搬送する用紙搬送部とを有する用紙排出機構において、
用紙搬送部と積載部との間に、用紙搬送部から供給された用紙をガイドする排紙ガイドを設け、排紙ガイドにより、用紙の先端を、積載部の積載面を含む平面からの離間方向にガイドすることを特徴とする用紙排出機構。
【請求項2】
用紙の先端が排紙ガイドに排出されてから該用紙の後端が排紙ガイドに排出されるまでの間に、排紙ガイドのガイド方向を変更可能とした請求項1に記載の用紙排出機構。
【請求項3】
排紙ガイドにより、用紙の後端を、積載部の積載面を含む平面への接近方向にガイドする請求項2に記載の用紙排出機構。
【請求項4】
排紙ガイドにより、用紙の中間部を、積載部の積載面と平行方向にガイドする請求項2または3に記載の用紙排出機構。
【請求項5】
排紙ガイドによる用紙のガイド方向を、用紙搬送部と独立して変更可能にした請求項1〜4のいずれか1項に記載の用紙排出機構。
【請求項6】
排紙ガイドを、用紙搬送部の周りで回転させて用紙のガイド方向を変更する請求項5に記載の用紙排出機構。
【請求項7】
前記排紙ガイドを、その回転方向の複数個所に配置した請求項6に記載の用紙排出機構。
【請求項8】
前記排紙ガイドによる用紙の先端のガイド方向と、積載部の積載面との間の角度を45°以下にしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の用紙排出機構。
【請求項9】
用紙搬送部による用紙の先端の搬送速度を、該用紙の後端の搬送速度よりも大きくしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の用紙排出機構。
【請求項10】
排紙ガイドによる用紙の先端のガイド方向を、用紙の種類に応じて異ならせることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の用紙排出機構。
【請求項11】
用紙に画像を形成する画像形成装置と、請求項1〜10のいずれか1項に記載の用紙排出機構とを備える画像形成ユニット。
【請求項1】
用紙を積載する積載面を有する積載部と、積載部に用紙を搬送する用紙搬送部とを有する用紙排出機構において、
用紙搬送部と積載部との間に、用紙搬送部から供給された用紙をガイドする排紙ガイドを設け、排紙ガイドにより、用紙の先端を、積載部の積載面を含む平面からの離間方向にガイドすることを特徴とする用紙排出機構。
【請求項2】
用紙の先端が排紙ガイドに排出されてから該用紙の後端が排紙ガイドに排出されるまでの間に、排紙ガイドのガイド方向を変更可能とした請求項1に記載の用紙排出機構。
【請求項3】
排紙ガイドにより、用紙の後端を、積載部の積載面を含む平面への接近方向にガイドする請求項2に記載の用紙排出機構。
【請求項4】
排紙ガイドにより、用紙の中間部を、積載部の積載面と平行方向にガイドする請求項2または3に記載の用紙排出機構。
【請求項5】
排紙ガイドによる用紙のガイド方向を、用紙搬送部と独立して変更可能にした請求項1〜4のいずれか1項に記載の用紙排出機構。
【請求項6】
排紙ガイドを、用紙搬送部の周りで回転させて用紙のガイド方向を変更する請求項5に記載の用紙排出機構。
【請求項7】
前記排紙ガイドを、その回転方向の複数個所に配置した請求項6に記載の用紙排出機構。
【請求項8】
前記排紙ガイドによる用紙の先端のガイド方向と、積載部の積載面との間の角度を45°以下にしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の用紙排出機構。
【請求項9】
用紙搬送部による用紙の先端の搬送速度を、該用紙の後端の搬送速度よりも大きくしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の用紙排出機構。
【請求項10】
排紙ガイドによる用紙の先端のガイド方向を、用紙の種類に応じて異ならせることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の用紙排出機構。
【請求項11】
用紙に画像を形成する画像形成装置と、請求項1〜10のいずれか1項に記載の用紙排出機構とを備える画像形成ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−86965(P2013−86965A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232032(P2011−232032)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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