説明

田植え機

【課題】 複数の施肥ポンプと変速装置とを田植え機の昇降リンクと後車輪との狭いスペースに配置可能とすると共に、前記変速装置の変速操作を容易に行えるようにした田植え機を提供する。
【解決手段】 走行機体11の後方に、昇降リンク25を介して支持された植付け装置31と、植付けられる苗列に対応して各ノズルから肥料を施す施肥装置を備えた田植え機において、前記施肥装置は、肥料を前記各ノズルに供給する肥料繰出し装置46を備え、該肥料繰出し装置46は、縦方向に並ぶように配置された複数の施肥ポンプ50と、該施肥ポンプ50の上方に配置された変速装置55とを備えている。変速装置55が肥料ポンプ50の上方に配置されているので、変速装置55の操作を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗の植付けと該苗に対する施肥とを同時に行えるようにした田植え機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の後方に昇降リンク機構を介して植付け装置を昇降自在に連結して、苗の植付けと該苗に対する施肥とを同時に行うようにした田植え機においては、走行機体のリヤアクスルケースの後端側に、後方に臨んで横方向に取付け固定された取付けプレートの後面に、肥料ポンプと変速装置とを、変速装置が下位となる上下方向に取付け、走行機体と植付け装置との間にコンパクトに配置するようにした田植え機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平3−126427号公報(第5頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来技術では、変速装置が下位となるように施肥ポンプと変速装置を配置しているため、複数の施肥ポンプを配置した場合には、変速装置の操作性が低下することがあった。
【0005】
前記の事情に鑑み、本発明は、複数の施肥ポンプと変速装置とを田植え機の昇降リンクと後車輪との狭いスペースに配置可能とすると共に、前記変速装置の変速操作を容易に行えるようにした田植え機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、走行機体(11)の後方に、圃場に複数条の苗を植付ける植付け装置(31)を昇降リンク(25)を介して昇降自在に支持すると共に、前記複数条に植付けられる苗列に対応して各ノズル(45)から肥料を施す施肥装置(41)を備えてなる、田植え機(10)において、
前記施肥装置(41)は、施肥タンク(42)と、施肥タンク(42)の肥料を前記各ノズル(45)にそれぞれ供給する複数の施肥ポンプ(50)を有する肥料繰出し装置(46)と、PTO軸(22)から前記肥料繰出し装置(46)に伝達する回転を変速操作する変速装置(55)と、を有し、
前記肥料繰出し装置(46)は、前記走行機体(11)を懸架する後車輪(13)と前記昇降リンク(25)との間における前記走行機体(11)の後部に、前記複数の施肥ポンプ(50)が縦方向に並ぶように配置され、
前記変速装置(55)は、前記走行機体(11)の後部における前記肥料繰出し装置(46)の上方に配置されてなる、
ことを特徴とする田植え機にある。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記PTO軸(22)から前記変速装置(55)に動力伝達する第1の伝動装置(60)を前記変速装置(55)の機体後方側に配置し、
前記変速装置(55)から前記肥料繰出し装置(46)の前記各肥料ポンプ(50)に動力伝達する第2の伝動装置(61)を前記肥料繰出し装置(46)の機体後方に配置してなる、
請求項1記載の田植え機にある。
【0008】
請求項3に係る本発明は、前記肥料繰出し装置(46)は、前記肥料タンク(42)と連通する供給側溜り(48)を機体後方に、かつ前記各施肥ポンプ(50)の吐出口を機体前方に向けて配置され、前記施肥繰出し装置(46)の前記各施肥ポンプ(50)と前記各ノズル(45)との間に介在される切換えバルブ(53)を有する条止め装置(51)を、前記走行機体(11)のステップ(21)後端部に配置し、
前記肥料繰出し装置(46)の前記各施肥ポンプ(50)から前記条止め装置(51)の前記切換えバルブ(53)に、更に前記切換えバルブ(53)から前記各ノズル(45)に、それぞれホース(52)を連結してなる、
請求項1又は2記載の田植え機にある。
【0009】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、走行機体後部に配置される肥料繰出し装置及びその変速装置の配置スペースをコンパクトにすることができる。複数の施肥ポンプを縦方向に並べて配置したので、昇降リンクと後車輪との狭いスペースに、肥料繰出し装置をこれら昇降リンク及び後車輪と干渉することなく配置することができ、またその上方に変速装置を配置したので、該変速装置は、昇降リンクと干渉することはなく、かつ変速操作が容易となる位置にあって、施肥料の調節を容易かつ確実に行うことができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、第1の伝動装置及び第2の伝動装置を、走行機体の後端側に配置したので、植付け装置との間から、前記第1及び第2の伝動装置のギヤ、チェーン、スプロケット等の伝動部品を容易に交換することが可能となり、作業に先立ち予め設定する施肥量の調節を容易に行うことができる。
【0012】
請求項3に係る本発明によると、条止め装置を、肥料繰出し装置から近接しているステップ後端部に配置しても、各施肥ポンプの吐出口は機体前方に向いているので、これらを連結するホースを急角度に折り曲げることはなく、滑らかに接続することができ、各ホース内での肥料の流れをスムーズにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る田植え機の側面図、図2は、図1における肥料繰出し装置の拡大図、図3は、図1における肥料繰出し装置の正面図、図4は、図3の平面図、図5は、図4における座席シート及びリヤカバーを外した状態を示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、田植え機(乗用田植え機)10は、走行機体11の後方に、圃場に複数条の苗を植付ける植付け装置31を、昇降リンク25を介して昇降自在に支持するとともに、前記複数条に植付けられる苗列に対応して各ノズルから肥料を施す施肥装置41を備えている。
【0016】
前記走行機体11は、前車輪12及び後車輪13により支持された機体15を備えている。前記機体15の前方には、エンジン(図示せず)が搭載され、ボンネット16で覆われている。前記機体15の中央部には、運転席が配設され、座席シート17、ステアリングハンドル18、その他田植え機10の運転操作に必要な各種のレバー、ペダル等が配置されている。また、前記機体15には、前記座席シート17の周囲を囲うようにリヤカバー20が設置され、その後端部には、図4に示すように、ステップ22が形成されている。
【0017】
図3、図4及び図5に示すように、前記走行機体11の後部には、前記エンジンによって駆動され、その回転を前記植付け装置31に伝達して、該植付け装置31を駆動するPTO軸22が回転自在に支持されている。
【0018】
前記昇降リンク25は、トップリンク26とロアリンク27及び油圧シリンダ28を有しており、該油圧シリンダ28の作動により、前記トップリンク26とロアリンク27を揺動させ、後部に支持した植付け装置31を昇降させるようになっている。
【0019】
前記植付け装置31は、複数の植付け杆32を回転自在に配設した複数のプランタ33と、複数のフロート35及びマット状の苗を載置する苗のせ台36を有し、前記植付け杆32の回転により前記苗のせ台36上のマット状の苗から掻き取った苗を圃場に複数条同時に植付けるようになっている。
【0020】
図1、図2及び図3に示すように、前記施肥装置41は、肥料を貯留する施肥タンク42と、前記植付け装置31のフロート35に付設され、肥料を圃場の土中に導く複数のノズル45と、前記PTO軸22を介して駆動され、前記施肥タンク42に貯留された肥料を、前記ノズル45に向けて所定量ずつ繰出す肥料繰出し装置51と、前記PTO軸22から前記肥料繰出し装置51に伝達する回転を変速操作する変速機61とを有している。
【0021】
前記施肥タンク42は、前記機体15に固定されたステー43を介して、図1及び図3に示すように、前記座席シート17の側方で前記後車輪13の外側に位置するように支持されている。
【0022】
図2、図3に示すように、前記肥料繰出し装置46は、前記走行機体11を懸架する前記後車輪13と前記昇降リンク25との間に位置するように、前記走行機体11の後部に配置されている。
【0023】
前記肥料繰出し装置46は、ホース47を介して前記施肥タンク42に連通する供給溜り48と、該供給溜り48の前記機体15の前方側に、吐出口を機体15の前方に向けて縦方向に配列配置された複数の施肥ポンプ50と、前記ステップ21の後端に配置され、前記施肥ポンプ50から吐出された肥料の流出先(ノズル45又は施肥タンク42)を切換える複数の切換えバルブ53(図4、図5参照)を備えた条止め装置51とを備えている。
【0024】
前記施肥ポンプ50と前記条止め装置51の間、前記条止め装置51と前記ノズル45の間及び前記条止め装置51と施肥タンク42の間は、それぞれホース52で接続されている。
【0025】
また、前記肥料繰出し装置46は、前記施肥ポンプ50の上方に配置され、該施肥ポンプ50の回転速度を変更して施肥量を調整するための変速装置55と、該変速装置55の機体後方に配置され、前記PTO軸22から該変速装置55に動力を伝達する第1の伝動装置60と、前記機体後方に配置され、前記変速装置55の出力回転を前記施肥ポンプ50に伝達する第2の伝動装置61とを備えている。
【0026】
前記変速装置55は、図4、図5に示すように、前記PTO軸22からの入力を例えば4段階に変速操作する主変速レバー56と、各変速段における変速出力を例えば高低2段階に変速すると共に、出力側への伝動を遮断するニュートラルポジションが設定された副変速レバー57とを備え、肥料の供給量を8段階に調整できるようになっている。
【0027】
前記構成の田植え機10で、施肥を行わず苗の植付けのみを行う場合には、変速装置55の主変速レバー56の操作位置にかかわらず、副変速レバー57をニートラルポジションへ操作する。すると、変速装置55から施肥ポンプ50への動力の伝動が行われず、施肥ポンプ50は停止した状態に維持され、肥料の供給が行われない。従って、施肥を行うことなく苗の植付けだけを行うことができる。
【0028】
また、苗の植付けと施肥を同時に行う場合には、変速装置55の主変速レバー56のより変速段を選択すると共に、副変速レバー57で高低いずれかの変速段を選択する。すると、PTO軸22から第1の伝動装置60を介して入力されたPTO軸22の出力が変速装置55で所要の速度に変速され、第2の伝動装置61を介して施肥ポンプ50に伝達され、施肥ポンプ50を所要の速度で作動させる。
【0029】
施肥ポンプ50は、施肥タンク42からホース47を介して供給溜り48に供給されている肥料からその回転速度に応じた量を汲み上げ、その吐出口から吐出する。施肥ポンプの吐出口から吐出された肥料は、ホース52を介して条止め装置51の切換えバルブ53に導かれる。そして、切換えバルブ53を通過した肥料は、ホース52を介してノズル45に送り込まれ、ノズル45から圃場の土中に吐出され施肥される。
【0030】
このとき、施肥の必要がないノズル45があれば、そのノズル45に対応する条止め装置51の切換えバルブ53を施肥停止側に操作しておく。すると、施肥停止側に操作された切換えバルブ53に送り込まれた肥料は、ホース52を通り施肥タンク42に戻され、該切換えバルブ53に接続されたノズル45へは、肥料が供給されることがない。
【0031】
前記のように、走行機体11の後部に配置される肥料繰出し装置46の複数の施肥ポンプ50を縦方向に並べて配置し、またその上方に変速装置55を配置したので、配置スペースをコンパクトにすることができる。また、昇降リンク25と後車輪13との狭いスペースに、肥料繰出し装置46をこれら昇降リンク25及び後車輪13と干渉することなく配置することができ、かつ変速装置55は、変速操作が容易となる位置にあって、施肥料の調節を容易かつ確実に行うことができる。
【0032】
また、第1の伝動装置60及び第2の伝動装置61を、走行機体11の後端側に配置したので、植付け装置31との間から、前記第1及び第2の伝動装置60、61のギヤ、チェーン、スプロケット等の伝動部品を容易に交換することが可能となり、作業に先立ち予め設定する施肥量の調節を容易に行うことができる。
【0033】
条止め装置51を、肥料繰出し装置46から近接しているステップ21の後端部に配置しても、各施肥ポンプ50の吐出口は機体前方に向いているので、これらを連結するホース52を急角度に折り曲げることはなく、滑らかに接続することができ、各ホース52内での肥料の流れをスムーズにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る田植え機の側面図である。
【図2】図1における肥料繰出し装置の拡大図である。
【図3】図1における肥料繰出し装置の正面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図4における座席シート及びリヤカバーを外した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 田植え機
11 走行機体
13 後車輪
21 ステップ
22 PTO軸
25 昇降リンク
31 植付け装置
41 施肥装置
42 施肥タンク
45 ノズル
46 肥料繰出し装置
50 施肥ポンプ
51 条止め装置
52 ホース
53 切換えバルブ
55 変速装置
60 第1の伝動装置
61 第2の伝動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後方に、圃場に複数条の苗を植付ける植付け装置を昇降リンクを介して昇降自在に支持すると共に、前記複数条に植付けられる苗列に対応して各ノズルから肥料を施す施肥装置を備えてなる、田植え機において、
前記施肥装置は、施肥タンクと、施肥タンクの肥料を前記各ノズルにそれぞれ供給する複数の施肥ポンプを有する肥料繰出し装置と、PTO軸から前記肥料繰出し装置に伝達する回転を変速操作する変速装置と、を有し、
前記肥料繰出し装置は、前記走行機体を懸架する後車輪と前記昇降リンクとの間における前記走行機体の後部に、前記複数の施肥ポンプが縦方向に並ぶように配置され、
前記変速装置は、前記走行機体の後部における前記肥料繰出し装置の上方に配置されてなる、
ことを特徴とする田植え機。
【請求項2】
前記PTO軸から前記変速装置に動力伝達する第1の伝動装置を前記変速装置の機体後方側に配置し、
前記変速装置から前記肥料繰出し装置の前記各施肥ポンプに動力伝達する第2の伝達装置を前記肥料繰出し装置の機体後方に配置してなる、
請求項1記載の田植え機。
【請求項3】
前記肥料繰出し装置は、前記施肥タンクと連通する供給側溜りを機体後方に、かつ前記各施肥ポンプの吐出口を機体前方に向けて配置され、
前記肥料繰出し装置の前記各施肥ポンプと前記各ノズルとの間に介在される切換えバルブを有する条止め装置を、前記走行機体のステップ後端部に配置し、
前記肥料繰出し装置の前記各施肥ポンプから前記条止め装置の前記切換えバルブに、更に前記切換えバルブから前記各ノズルに、それぞれホースを連結してなる、
請求項1又は2記載の田植え機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−75008(P2006−75008A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259540(P2004−259540)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】