説明

田植機

【課題】フロートの上下動に対する昇降切換手段の切り換えの感度を制御し、植付装置における苗の植付深さを一定に保持することができる田植機を提供することを目的とする。
【解決手段】走行機体2の後方に昇降機構4を介して植付装置3を昇降自在に連結する田植機1において、昇降機構4には植付装置3を昇降する油圧シリンダ33(昇降アクチュエータ)と、油圧シリンダ33(昇降アクチュエータ)の昇降制御を行う油圧切換バルブ34(昇降切換手段)と、油圧切換バルブ34(昇降切換手段)の切換を行う切換操作アーム35とが備えられ、切換操作アーム35には植付装置3に設けられるフロート70の上下動を検知する上下動検知手段71と、走行機体2の走行速度を変更する変速アーム55とが連動連結され、油圧切換バルブ34(昇降切換手段)は、走行速度が増速側に変速されると、その増速に応じて植付深さが深くなる側に操作される田植機1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付装置に備えたフロートの上下動及び走行機体の走行速度に応じて、植付装置における苗の植付深さを制御する田植機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植付装置に備えたフロートの上下動及び走行機体の走行速度に応じて、植付装置における苗の植付深さを制御する田植機は公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1においては、植付装置が、油圧シリンダ(昇降アクチュエータ)によって、走行機体に対して昇降動させるように構成される。そして、当該油圧シリンダの昇降制御は、フロートの上下動に応じて、油圧切換バルブ(昇降切換手段)を切り換えることによって行う。詳しくは、フロートが上昇すると、植付装置を上昇させるように、油圧切換バルブを切り換える。これにより、フロートの上下動に応じて植付装置が昇降動され、植付装置における苗の植付深さが一定に保持される。
【0004】
また、特許文献1においては、フロートの上下動に対する油圧切換バルブの切り換えの感度はエンジン回転数に応じて制御されている。詳しくは、エンジン回転数が大きくなると、即ち、走行機体の走行速度が増速されると、フロートが上昇し易くなるが、油圧切換バルブの切り換えの感度を低くすることで、油圧切換バルブの切り換えが行われにくくなり、それにより、植付装置が上昇しにくくなる。これにより、走行機体の走行速度が増速されてフロートが圃場の水により上に押し上げられても、フロートの上昇に伴って植付装置が上昇することはなく、浅植え、浮き苗の発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−113332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、泥層が深く、走行負荷が大きい圃場での田植え作業においては、エンジン回転数を大きくし、且つ走行機体の走行速度を低速の状態で、苗植え付けを行う場合がある。このような場合、特許文献1のような田植機においては、エンジン回転数を大きくすると、油圧切換バルブの切り換えの感度は低くなり、フロートが上昇しても、フロートの上昇に伴う植付装置の上昇が遅れることになる。そのため、植付装置における苗の植付深さを一定に保持することができず、深植えになるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、フロートの上下動に対する昇降切換手段の切り換えの感度を制御し、植付装置における苗の植付深さを一定に保持することができる田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、第1の発明に係る田植機は、走行機体の後部に昇降機構を介して植付装置を昇降自在に連結する田植機において、前記昇降機構には、前記植付装置を昇降する昇降アクチュエータと、前記昇降アクチュエータの昇降制御を行う昇降切換手段と、前記昇降切換手段の切換を行う切換操作アームと、が備えられ、前記切換操作アームには、前記植付装置に設けられるフロートの上下動を検知する上下動検知手段と、走行機体の走行速度を変更する変速アームと、が連動連結され、前記昇降切換手段は、走行速度が増速側に変速されると、その増速に応じて植付深さが深くなる側に操作されるものである。
【0010】
第2の発明に係る田植機は、第1の発明に係る田植機において、前記切換操作アームと、前記変速アームとは、弾性部材を介して連結されるものである。
【0011】
第3の発明に係る田植機は、第1又は第2の発明に係る田植機において、前記切換操作アームと、前記上下動検知手段とは、ワイヤを介して連結されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
第1の発明に係る田植機においては、走行機体の走行速度が増速側に変速されると、昇降切換手段は、その増速に応じて植付深さが深くなる側に操作される、即ち、フロートの上下動に対する昇降切換手段の切り換えの感度が低くなるため、植付装置における苗の植付深さを一定に保持することができ、浅植えや浮き苗を防止することができる。
また、走行機体の走行速度が低速の場合には、フロートの上昇に伴って植付装置が上昇するように昇降切換手段の切り換えの感度が制御されるため、植付装置における苗の植付深さを一定に保持することができ、深植えを防止することができる。
【0014】
第2の発明に係る田植機においては、弾性部材により簡単な構成で無段変速装置と切換操作アームを連結することができる。
【0015】
第3の発明に係る田植機においては、ワイヤにより簡単な構成で上下動検出手段と切換操作アームを連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】田植機の側面図。
【図2】エンジンと無段変速装置との間の伝達動力機構を示す概略図。
【図3】田植機の走行速度を操作するための変速操作部と、無段変速装置と、の関係を示す平面図。
【図4】無段変速装置の変速アーム、及びフロートの前部に設ける上下動検知手段と、昇降機構の切換操作アームと、の関係を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体構成について説明する。
なお、以下の説明では、図1における矢印U方向を上方向として上下方向を規定し、矢印F方向を前方向として田植機1の前後方向を規定する。
【0019】
図1に示すように、田植機1は、走行機体2と、植付装置3と、を有する。田植機1は、走行機体2により走行しながら、植付装置3により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。
【0020】
走行機体2においては、エンジン5が車体フレーム6の後部に設けられる。ミッションケース7は、車体フレーム6の前部に支持される。ミッションケース7の内部には後述する無段変速装置50(図2)が設けられる。フロントアクスルケース8は、車体フレーム6の前部に支持される。前車輪9は、フロントアクスルケース8の左右両側に支承される。リヤアクスルケース10は、車体フレーム6の後部に支持される。後車輪11は、リヤアクスルケース10の左右両側に支承される。
このように走行機体2を構成することで、エンジン5の動力が無段変速装置50により適宜変速されたあと、各車輪9・11に伝達され、走行機体2が走行可能とされる。
【0021】
走行機体2において、車体フレーム6の前後中途部であって、車体カバー90の上方には、運転操作部12が設けられる。運転操作部12においては、車体カバー90の前上部にフロントカウル16が設けられる。また、車体カバー90の後上部には座席85が設けられる。フロントカウル16の後上部には、操向操作用の操作ハンドル13と、変速操作用の変速レバー14と、変速操作部60等の各種の操作具が配置される。これらの操作具を操作することによって、走行機体2及び植付装置3に対する適宜の操作を行うことができる。
【0022】
走行機体2において、予備苗載台15が車体フレーム6の前部の左右両側から立設された各取付フレームに取り付けられて、フロントカウル16の左右両側方に配置される。そして、予備苗は、予備苗載台15に載置されて、植付装置3への苗補給が可能とされる。
【0023】
走行機体2において、施肥装置17が車体フレーム6の後部に支柱フレーム18等を介して支持されて、運転操作部12の後方に配置される。施肥装置17は、植付条に対応する数の繰出装置19を有する。
【0024】
植付装置3は、多条植式の苗植装置であり、走行機体2の後部に、後述する昇降機構4を介して上下方向に昇降可能に連結される。
【0025】
植付装置3において、植付ミッションケース21が植付フレーム20の下部中央付近に支持され、植付伝動軸22が植付ミッションケース21から左右両側方に延設される。植付伝動ケース23が植付伝動軸22から後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0026】
各植付伝動ケース23の後端部左右両側には、ロータリケース24が回動自在に支持される。ロータリケース24は植付条数と同数、即ち本実施形態では6つ備えられる。そして、二つの植付爪25・25が、ロータリケース24の回転支点を挟むように、このロータリケース24の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0027】
苗載台26は、植付伝動ケース23の上方に前高後低の傾斜状態で配置されて、植付フレーム20の後部に上下のガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台26上には図示しない苗マットが条数分載置され、ロータリケース24の回転時に、植付爪25により苗が苗載台26上の苗マットから取り出し可能とされる。
【0028】
植付装置3において、圃場面を整地するフロート70が、それぞれの前部側が後部側を回動支点として上下動自在となるように植付伝動ケース23に支持されて、植付伝動ケース23の下方に配置される。なお、フロート70の詳細については後述する。
【0029】
次に、無段変速装置50について説明する。
【0030】
図2及び図3に示すように、無段変速装置50は、油圧式無段変速機構53と、遊星歯車機構からなる機械式変速装置54と、を組み合わせた油圧−機械式無段変速装置(HMT)である。
【0031】
油圧式無段変速機構53は、エンジン5(図1)の出力を入力する可変式の油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51からの油圧により駆動される油圧モータ52と、を有する。油圧式無段変速機構53は、油圧ポンプ51における斜板56の傾斜角度が変更されることにより変速比を変更して、作動油の吐出量を変更し、油圧モータ52の出力軸の回転数を変更して、走行機体2の走行速度を変速させる。
【0032】
図3に示すように、油圧式無段変速機構53は、無段変速を行うための変速アーム55を具備する。
【0033】
変速アーム55は、走行機体の走行速度を変更するものである。詳しくは、変速アーム55は、油圧ポンプ51における斜板56の傾斜角度を変更するものである。変速アーム55は、油圧式無段変速機構53の上部に設けられる回動軸55aに回動可能に支持される部材である。詳しくは、変速アーム55は、略逆L字状の部材であり、その中途部において、回動軸55aに回動可能に支持される。そして、変速アーム55は、回動軸55aに支持される部分を中心に、機体の略左右方向に延設される左右延設部分55bと、機体の略前後方向に延設される前後延設部分55cと、を有する。左右延設部分55bの端部には、後述するロッド68が接続される。また、前後延設部分55cの端部には、後述する昇降機構4の切換操作アーム35が弾性部材であるバネ40を介して接続される(図4参照)。
【0034】
また、無段変速装置50は、各車輪9・11への動力伝達を入切するためのクラッチ機構58を備える。無段変速装置50は、田植機1の走行速度を操作するための変速操作部60を備える。
【0035】
図3に示すように、変速操作部60は、本実施形態においては踏み込み方式で構成され、変速ペダル61と、操作量検出軸62と、を具備する。
【0036】
変速ペダル61は、作業者が座席85(図1)に着座した状態で踏み込み操作可能である車体フレーム6(図1)の前後略中央上部(運転操作部12の床面)右側に配置される。但し、レバー等で構成することも可能である。
変速ペダル61は、一端を中心に回動可能であり、変速ペダル61の他端側にはリンク等を介して操作量検出軸62と連結される。
【0037】
操作量検出軸62は、車体フレーム6に横方向に延設され、図示しない軸受にて回動可能に支持される。よって、作業者が変速ペダル61の踏み込み操作をすることで、操作量検出軸62は矢印A1方向に回動される。また、作業者が変速ペダル61の踏み込み操作を解除すると、変速ペダル61は、図示しない付勢ばねにより踏み込み操作前の位置に戻され、操作量検出軸62は、矢印B1方向に回動される。
【0038】
操作量検出手段63は、変速操作部60の操作量を検出するものである。詳しくは、操作量検出手段63は、ポテンショメータ等の角度センサからなり、操作量検出軸62の回転角度を検出することによって変速操作部60の操作量を検出するものである。操作量検出手段63は、操作量検出軸62の一側軸端と接続される。
【0039】
アクチュエータ64(本実施形態ではモータ)は、無段変速装置50の変速アーム55を回動するものである。詳しくは、アクチュエータ64は、操作量検出手段63が検出した操作量に比例した動作信号が制御部80から伝送されると、動作信号に応じて変速アーム55を所定量回動させるものである。
アクチュエータ64は、変速操作軸65と、歯車66と、操作軸アーム67と、ロッド68等を介して変速アーム55に連結される。
【0040】
変速操作軸65は、車体フレーム6(図1)に横方向に延設され、図示しない軸受にて回動可能に支持される。
操作軸アーム67は、一端を変速操作軸65に固着され、他端はロッド68の一端と回動可能に連結される。
ロッド68は、他端を無段変速装置50の変速アーム55の一端と回動可能に連結されている。
【0041】
このような構成とすることで、アクチュエータ64は、歯車66を介して変速操作軸65を回動させることにより、操作軸アーム67と、ロッド68とを介して、無段変速装置50の変速アーム55を回動する。なお、アクチュエータ64は、直接変速アーム55を回動する構成とすることも可能であり、取付位置は限定するものではない。
【0042】
次に、無段変速装置50の変速アーム55の動作について説明する。
【0043】
図3に示すように、作業者が変速ペダル61の踏み込み操作を行うことにより、操作量検出軸62が矢印A1(増速)方向に回動されると、操作量検出手段63が操作量を検出する。そして、アクチュエータ64は、操作量検出手段63の検出した操作量に応じて変速操作軸65を矢印A2(増速)方向へ回動させる。変速操作軸65が矢印A2方向へ回動されると、操作軸アーム67を介して、ロッド68が矢印A3(増速)方向へ移動される。さらに、ロッド68が矢印A3(増速)方向へ移動されると、無段変速装置50の変速アーム55の左右延設部分55bが矢印A4(増速)方向へ回動される。
このように、アクチュエータ64によってロッド68が矢印A3(増速)方向へ操作されることで、変速アーム55の左右延設部分55bが矢印A4(増速)方向へ回動されると、無段変速装置50の出力速度が増速される。
さらに、無段変速装置50の変速アーム55の左右延設部分55bが矢印A4(増速)方向へ回動されることで、変速アーム55の前後延設部分55cが矢印A5方向へ回動し、変速アーム55の前後延設部分55cに接続されるバネ40が機体前方へ伸びる。
【0044】
一方、作業者が変速ペダル61の踏み込み操作を解除することにより、操作量検出軸62が矢印B1(減速)方向に回動されると、操作量検出手段63が操作量を検出する。そして、アクチュエータ64は、操作量検出手段63の検出した操作量に応じて変速操作軸65を矢印B2(減速)方向へ回動される。変速操作軸65が矢印B2方向へ回動されると、操作軸アーム67を介して、ロッド68が矢印B3(減速)方向へ移動される。さらに、ロッド68が矢印B3(減速)方向へ移動されると、無段変速装置50の変速アーム55の左右延設部分55bが矢印B4(減速)方向へ回動される。
このように、アクチュエータ64によってロッド68が矢印B3(減速)方向へ移動されることで、変速アーム55の左右延設部分55bが矢印B4(減速)方向へ回動され、無段変速装置50が減速される。
さらに、無段変速装置50の変速アーム55の左右延設部分55bが矢印B4(減速)方向へ回動されることで、変速アーム55の前後延設部分55cが矢印B5方向へ回動し、変速アーム55の前後延設部分55cに接続されるバネ40が縮む。
【0045】
次に、昇降機構4について説明する。
【0046】
図1及び図4に示すように、昇降機構4は、植付装置3を昇降する機構であり、走行機体2と植付装置3との間に設けられる。昇降機構4は、トップリンク31と、ロワーリンク32と、昇降アクチュエータとなる油圧シリンダ33と、昇降切換手段となる油圧切換バルブ34と、切換操作アーム35等から構成されている。
【0047】
トップリンク31及びロワーリンク32は、その前部が走行機体2の支柱フレーム18に上下回転自在に支持され、その後部が植付装置3の植付フレーム20の前部左右中央に回転自在に支持される。ロワーリンク32(又はトップリンク31)は、昇降切換手段となる油圧シリンダ33のピストンロッドと連結され、油圧シリンダ33の伸縮により昇降回動される。
【0048】
油圧切換バルブ34は、送油方向を切り換える昇降切換手段であり、植付装置3を昇降する油圧シリンダ33の伸縮制御を行う。油圧切換バルブ34は、スプール36を摺動することより油路を切り換えて、油圧シリンダ33への圧油の送油を制御する。但し、昇降アクチュエータは電動モータ等を用いてもよく、この場合、昇降切換手段はスイッチ等による回転方向切り換え手段となる。
【0049】
スプール36は、圧縮バネ37によって、昇降機構4が下降位置方向となるように付勢されている。
【0050】
切換操作アーム35は、油圧切換バルブ34のスプール36と当接して切換を行うものである。切換操作アーム35は、平板状の部材であり、上部が回動軸38に回動自在に支持されている。
また、切換操作アーム35の一端部(上端)には係止孔35aが設けられて、バネ88の一端が係止される。こうして、図4に示すように、切換操作アーム35は、回動軸38を中心にバネ88により図示時計方向に回動するように付勢されている。
さらに、切換操作アーム35の上下中途部の後面(油圧切換バルブ34側)には突起部35bが設けられている。
【0051】
突起部35bは、油圧切換バルブ34のスプール36の一端に当接する部分である。突起部35bがスプール36に当接して回動されることでスプール36が摺動し、油圧切換バルブ34が切り換えられる。即ち、切換操作アーム35が回動することで、突起部35bと当接したスプール36が摺動し、油圧切換バルブ34が切り換えられる。
【0052】
また、切換操作アーム35の他端部35cには、後方へ延設した第1ワイヤ39を介して、後述するフロート70(センターフロート70a)の前部に設ける上下動検知手段71と接続される。さらに、切換操作アーム35の他端部35cには、前方へ延設したバネ40を介して、無段変速装置50の変速アーム55が接続される。
【0053】
次に、フロート70の前部に設ける上下動検知手段71について説明する。
【0054】
図4に示すように、フロート70は、植付装置3の下方中央部に配設されるセンターフロート70aと、センターフロート70aの左右両側に配置される図示しない左右一対のサイドフロートと、から構成される。
【0055】
センターフロート70aの前部には、フロート70の上下動を検知する上下動検知手段71が設けられる。
【0056】
上下動検知手段71は、センサリンク72と、揺動リンク73と、支持リンク74等から構成される。
【0057】
センサリンク72は、上下方向に延設される棒状の部材である。センサリンク72の下端部は、センターフロート70aの前端部に固設されるブラケット75に、軸76を介して回動自在に支持される。また、センサリンク72の上端部は、揺動リンク73の前端部に回動自在に連結される。
【0058】
揺動リンク73は、略前後方向に延設され、前端が前記センサリンク72と連結され、後端がバネ79と連結される。また、揺動リンク73の前後中途部は支持軸77を介して支持リンク74に回動自在に支持される。
【0059】
支持リンク74は、左右水平方向に横設した連結パイプ28から前斜め上方に延設される。支持リンク74は、平面視略U字状に形成され、左右の側板間に前記揺動リンク73を配置し、支持リンク74の前後中途部で左右方向に配置した支持軸77を介して前記揺動リンク73の前後中途部を回動自在に支持している。また、支持リンク74の前端面には、挿通孔が設けられ、該挿通孔に第1ワイヤ39の後部が挿通される。
該第1ワイヤ39の後端は、バネ79を介して揺動リンク73の後端と連結される。
【0060】
次に、上下動検知手段71の動作について説明する。
【0061】
図4に示すように、センターフロート70aの前端部が上昇すると、上下動検知手段71のセンサリンク72が上方に押し上げられる。センサリンク72が押し上げられると、揺動リンク73が支持軸77を中心に図示時計方向(矢印C1方向)に回動し、該揺動リンク73に連結された第1ワイヤ39が機体後方へ引かれる。
【0062】
一方、センターフロート70aの前端部が下降すると、上下動検知手段71のセンサリンク72が下がる。センサリンク72が下がると、揺動リンク73が支持軸77を中心に図示反時計方向(矢印D1方向)に回動し、該揺動リンク73に連結された第1ワイヤ39が機体前方へ引かれる。
【0063】
次に、植付装置3の昇降動作について説明する。
【0064】
まず、田植機1の走行速度が低速の場合について説明する。
【0065】
図4に示すように、田植機1が低速で圃場の水位の浅い場所を走行すると、フロート70は、その前端部が圃場面に接することで上昇する場合がある。このような場合には、植付装置3における苗の植付深さが深くなるため深植えとなる。そのため、油圧切換バルブ34は、植付装置3が上昇する側(植付装置3における苗の植付深さが浅くなる側)に切り換えられる。
【0066】
詳しくは、センターフロート70aの前端部が上昇すると、上下動検知手段71の揺動リンク73が支持軸77を中心に図示時計方向(矢印C1方向)に回動し、該揺動リンク73に連結された第1ワイヤ39が機体後方(矢印C2方向)へ引かれる。第1ワイヤ39が機体後方(矢印C2方向)へ引かれると、昇降機構4の切換操作アーム35が回動軸38を中心に機体後方(矢印C2方向)へ回動する。即ち、切換操作アーム35の突起部35bは、油圧切換バルブ34のスプール36に当接し、スプール36を押すことで、油圧切換バルブ34を植付装置3が上昇する側に切り換えようとする。
また、この時、田植機1の走行速度は低速であるため、バネ40は、変速アーム55によって機体前方(矢印D2方向)へ引かれることがない。従って、バネ40は、第1ワイヤ39が機体後方(矢印C2方向)へ引かれることで、同様に機体後方(矢印C2方向)へ引かれる。
【0067】
このように、田植機1の走行速度が低速の場合に、センターフロート70aの前端部が上昇すると、センターフロート70aの上昇量に応じて、第1ワイヤ39が機体後方(矢印C2方向)へ引っ張られ、それにより、油圧切換バルブ34が植付装置3を上昇する側(植付装置3における苗の植付深さが浅くなる側)に切り換えられることで、植付装置3が上昇する。
【0068】
次に、田植機1の走行速度が速くなる(増速する)場合について説明する。
【0069】
図4に示すように、田植機1の走行速度が速くなる(増速する)と、フロート70は、その前端部が圃場表面の水によって上昇する場合がある。このような場合には、植付装置3における苗の植付深さが浅くなるため浮き苗になる。そのため、油圧切換バルブ34は、植付装置3が下降する側(植付装置3における苗の植付深さが深くなる側)に切り換えられる。
【0070】
詳しくは、センターフロート70aの前端部が上昇すると、田植機1の走行速度が低速の場合と同様に、上下動検知手段71の揺動リンク73が支持軸77を中心に図示時計方向(矢印C1方向)に回動し、該揺動リンク73に連結された第1ワイヤ39が機体後方(矢印C2方向)へ引かれる。第1ワイヤ39が機体後方(矢印C2方向)へ引かれると、昇降機構4の切換操作アーム35が回動軸38を中心に機体後方(矢印C2方向)へ回動しようとする。即ち、切換操作アーム35の突起部35bは、油圧切換バルブ34のスプール36に当接し、スプール36を押すことで、油圧切換バルブ34を植付装置3が上昇する側(植付装置3における苗の植付深さが浅くなる側)に切り換えようとする。
【0071】
しかし、作業者は、走行速度を増速するために、変速ペダル61を踏み込んでいるため、変速アーム55は、矢印A5方向へ回動されている。そのため、変速アーム55に接続されるバネ40は、機体前方(矢印D2方向)へ引っ張られる。ここで、バネ40が機体前方(矢印D2方向)へ引かれる力は、第1ワイヤ39が機体後方(矢印C2方向)へ引かれる力以上である。そのため、昇降機構4の切換操作アーム35は、回動軸38を中心に機体前方(矢印D2方向)へ回動する。即ち、切換操作アーム35の突起部35bは、油圧切換バルブ34のスプール36から離れることで、油圧切換バルブ34を植付装置3が下降する側(植付装置3における苗の植付深さが深くなる側)に切り換える。
【0072】
このように、田植機1の走行速度が速くなる(増速する)場合に、センターフロート70aの前端部が上昇すると、センターフロート70aの上昇量に応じて、第1ワイヤ39が機体後方(矢印C2方向)へ引っ張られ、それにより、油圧切換バルブ34が植付装置3を上昇する側(植付装置3における苗の植付深さが浅くなる側)に切り換えられようとする。しかし、変速アーム55の操作量(無段変速装置50の出力速度の増加量)に応じて、バネ40が機体前方(矢印D2方向)引っ張られるため、油圧切換バルブ34が植付装置3を下降させる側(植付装置3における苗の植付深さが深くなる側)に切り換えられる。従って、田植機1の走行速度が増速されて、その増速に応じてフロート70が浮き上がろうとしても、植付装置3の上昇が抑えられることとなる。そして、植付装置3が下降することで、植付装置3における苗の植付深さが一定となる。
【0073】
以上のように、田植機1は、走行機体2の後方に昇降機構4を介して植付装置3を昇降自在に連結する田植機1において、昇降機構4には、植付装置3を昇降する油圧シリンダ33(昇降アクチュエータ)と、油圧シリンダ33(昇降アクチュエータ)の昇降制御を行う油圧切換バルブ34(昇降切換手段)と、油圧切換バルブ34(昇降切換手段)の切換を行う切換操作アーム35と、が備えられ、切換操作アーム35には、植付装置3に設けられるフロート70の上下動を検知する上下動検知手段71と、走行機体2の走行速度を変更する変速アーム55と、が連動連結され、油圧切換バルブ34(昇降切換手段)は、走行速度が増速側に変速されると、その増速に応じて植付深さが深くなる側に操作されるものである。
【0074】
このように田植機1を構成することにより、走行機体の走行速度が増速側に変速されると、油圧切換バルブ34(昇降切換手段)は、その増速に応じて植付深さが深くなる側に操作される、即ち、フロート70の上下動に対する油圧切換バルブ34(昇降切換手段)の切り換えの感度が低くなるため、植付装置3における苗の植付深さを一定に保持することができ、浅植えや浮き苗を防止することができる。
また、走行機体の走行速度が低速の場合には、フロート70の上昇に伴って植付装置3が上昇するように油圧切換バルブ34(昇降切換手段)の切り換えの感度が制御されるため、植付装置3における苗の植付深さを一定に保持することができ、深植えを防止することができる。
【0075】
また、田植機1は、切換操作アーム35と、変速アーム55とは、バネ40を介して連結されるものである。
【0076】
このように田植機1を構成することにより、バネ40により簡単な構成で無段変速装置50と切換操作アーム35を連結することができる。
【0077】
さらに、田植機1は、切換操作アーム35と、上下動検知手段71とは、第1ワイヤ39を介して連結されるものである。
【0078】
このように田植機1を構成することにより、第1ワイヤ39により簡単な構成で上下動検知手段71と切換操作アーム35を連結することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 田植機
2 走行機体
3 植付装置
4 昇降機構
33 油圧シリンダ(昇降アクチュエータ)
34 油圧切換バルブ(昇降切換手段)
35 切換操作アーム
39 第1ワイヤ
40 バネ(弾性部材)
50 無段変速装置
55 変速アーム
70 フロート
71 上下動検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に昇降機構を介して植付装置を昇降自在に連結する田植機において、
前記昇降機構には、前記植付装置を昇降する昇降アクチュエータと、前記昇降アクチュエータの昇降制御を行う昇降切換手段と、前記昇降切換手段の切換を行う切換操作アームと、が備えられ、
前記切換操作アームには、前記植付装置に設けられるフロートの上下動を検知する上下動検知手段と、走行機体の走行速度を変更する変速アームと、が連動連結され、
前記昇降切換手段は、走行速度が増速側に変速されると、その増速に応じて植付深さが深くなる側に操作されることを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記切換操作アームと、前記変速アームとは、弾性部材を介して連結される請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記切換操作アームと、前記上下動検知手段とは、ワイヤを介して連結される請求項1又は請求項2に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−193816(P2011−193816A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65014(P2010−65014)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】