説明

画像の光沢を制御する方法およびカラー画像の光沢を制御する方法

【課題】デジタル処理で適用することができる放射線硬化性インクおよび/または上塗り組成物を使用するときの画像の光沢を制御する改良された方法を提供する。
【解決手段】画像の光沢を制御する方法であって、着色した組成物または無色の組成物を、基材の1つ以上の部分に塗布することによって基材上に画像を形成する工程であって、着色した組成物または無色の組成物は、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つの硬化性モノマ、少なくとも1つの硬化性ワックスおよび任意選択の少なくとも1つの光開始剤を含み、着色した組成物または無色の組成物は、放射線への暴露によって硬化可能である工程と、着色した組成物または無色の組成物を塗布後に着色した組成物または無色の組成物に放射線を適用し、硬化中に画像の周囲の雰囲気中に存在する酸素の量を制御しながら硬化させる工程と、を含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載されているのは、放射線硬化性インクおよび/または上塗りの硬化の間の雰囲気を制御することにより画像の光沢を制御する方法である。
【0002】
ここでの光沢制御方法は、直接的なやり方で、異なる光沢度を得るための異なる組成物の使用をできるだけ必要とせずに、画像の光沢を制御することを可能にすることを含むいくつかの利点を提供する。その他の利点は、本明細書の説明から明らかとなろう。
【背景技術】
【0003】
様々な光沢度を必要とする多くの印刷用途、例えば写真出版などは、驚異的な成長を遂げつつある。そのため印刷された光沢度を制御する能力が望ましい。しかしながら、現在のプリンタ製品は、一般的に概して狭い範囲の光沢を生じ、その光沢度(マット、半光沢、光沢)は、一般的に顧客による調節は不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,276,614号明細書
【特許文献2】米国特許第7,279,587号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0120921号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0120924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに望まれているのは、どちらもデジタル処理で適用することができる放射線硬化性インクおよび/または上塗り組成物を使用するときの画像の光沢を制御する改良された方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、画像の光沢を制御する方法であって、着色した組成物または無色の組成物を、基材の1つ以上の部分に塗布することによって基材上に画像を形成する工程であって、前記着色した組成物または無色の組成物は、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つの硬化性モノマ、少なくとも1つの硬化性ワックスおよび任意選択の少なくとも1つの光開始剤を含み、前記着色した組成物または無色の組成物は、放射線への暴露によって硬化可能である工程と、着色した組成物または無色の組成物を塗布後に前記着色した組成物または無色の組成物に放射線を適用し、硬化中に前記画像の周囲の雰囲気中に存在する酸素の量を制御しながら硬化させる工程と、を含む方法である。
【0007】
カラー画像の光沢を制御する方法であって、着色した組成物を、基材の1つ以上の部分に塗布することによって基材上に画像を形成する工程であって、前記着色した組成物は、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つの硬化性モノマ、少なくとも1つの硬化性ワックス、少なくとも1つの着色剤および任意選択の少なくとも1つの光開始剤を含み、前記着色した組成物は、放射線への暴露によって硬化可能である工程と、前記着色した組成物を塗布後に前記着色した組成物に放射線を適用し、硬化中に前記画像の周囲の雰囲気中に存在する酸素の量を制御しながら硬化させる工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
記載されているのは、放射線硬化性の着色した組成物、例えば着色したインク組成物、および/または放射線硬化性の無色の組成物、例えばセキュリティ用途で使用されるような無色のインクおよび/または無色の上塗り組成物による画像の光沢を、該組成物の硬化中に該組成物を取り巻く雰囲気中の酸素を制御することによって制御する方法である。硬化中に存在する酸素の量の適切な制御によって、その最終の画像は、所望の光沢と実質的の同等の、例えばその画像を形成する前に決めた所望の光沢であり、周囲の空気/酸素状態中の同一組成物の硬化による別のやり方で得られる光沢とは異なる光沢を有するように作製することができる。実質的に同等な光沢とは、例えば、上塗り組成物が塗布される画像の少なくとも一部におけるその画像の光沢が、所望の光沢の約10%以内、望ましくは約5%以内または約2%以内であることを意味する。硬化中に存在する酸素の量の制御による該光沢の制御は、該着色したまたは無色の組成物の組成と少なくとも幾分かは関連しているものと思われる。
【0009】
該着色したまたは無色の組成物は、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つの硬化性モノマ、少なくとも1つの硬化性ワックスおよび場合によって少なくとも1つの光開始剤を含んでなる。着色した組成物については、該組成物は、該組成物の約0.5重量%〜約15重量%、例えば該組成物の約1重量%〜約10重量%の量で存在する少なくとも1つの着色剤、例えば、顔料、染料、顔料の混合物、染料の混合物、または顔料と染料の混合物などをさらに含む。無色の組成物については、該組成物は、実質的に着色剤を含まず、着色剤が完全にない場合を含む。上塗り組成物は、望ましくは実質的に着色剤を含まない。
【0010】
該組成物は、放射線硬化性、特に紫外線硬化性の、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つの硬化性モノマ、少なくとも1つの硬化性ワックスおよび場合によって少なくとも1つの光開始剤を含む組成物である。該組成物は、また、場合によって、安定剤、界面活性剤、またはその他の添加剤も含むことができる。
【0011】
該組成物は、約50℃〜約120℃、例えば約70℃〜約90℃の温度で適用することができる。適用温度において該組成物は、約5〜約16cPs、例えば約8〜13cPsの粘度を有することができる。本明細書で示す粘度の値は、1s−1の剪断速度でコーンプレート技術を用いて得られる。該組成物は、かくして、該組成物をインクジェットにより適用する等、デジタル処理で適用することができる装置で使用するのによく適合する。該組成物は、また、オフセット印刷技術を含むその他の方法によって適用することもできる。
【0012】
少なくとも1つのゲル化剤は、所望の温度範囲内で該組成物の粘度を少なくとも上昇させる機能を果たす。例えば、該ゲル化剤は、例えば該組成物が適用される温度より低いそのゲル化剤のゲル点より低い温度で該組成物中に固体のようなゲルを形成する。例えば、該組成物は、固体のような相で、約10〜約10cPs、例えば約103.5〜約106.5cPsの粘度範囲を有する。該ゲル相は、一般的には固体のような相と液相とを共存状態で含み、その固体のような相は、その液相中に三次元ネットワーク構造を形成して、その液相が巨視的レベルで流動するのを防止している。該組成物は、その温度が該組成物のゲル点の上または下に変化するとき、ゲル状態と液体状態の間の熱加逆的転移を示す。この温度は、一般にゾル−ゲル温度と呼ばれる。このゲル再形成のサイクルは、そのゲルが、ゲル化剤分子間の物理的な非共有結合的相互作用、例えば、水素結合、芳香族相互作用、イオン結合、配位結合、ファンデルワールス相互作用(London dispersion interaction)などによって形成されるために、何回も繰り返すことができる。
【0013】
該組成物がゲル状態にある温度は、例えば、ほぼ約15℃〜約55℃、例えば約15℃〜50℃などである。該ゲル組成物は、約60℃〜約90℃、例えば約70℃〜約85℃などの温度で液化することができる。適用温度の液体状態からゲル状態への冷却中に該組成物は著しい粘度上昇を受ける。その粘度上昇は少なくとも3桁の大きさの粘度上昇、例えば少なくとも4桁の大きさの粘度上昇である。
【0014】
放射線硬化性組成物での使用に適するゲル化剤としては、硬化性アミド、硬化性ポリアミド−エポキシアクリレート成分およびポリアミド成分を含んでなる硬化性ゲル化剤、硬化性エポキシ樹脂およびポリアミド樹脂を含んでなる硬化性複合体ゲル化剤、それらの混合物などが挙げられる。該組成物中へのゲル化剤の包含は、該組成物が適用後に冷却すると該組成物の粘度が急速に増大するために、該基材中に過剰に浸透することなく基材上、例えば、基材の1つ以上の部分および/または基材上に予め形成された画像の1つ以上の部分に適用することを可能にする。紙などの多孔質の基材中への液体の過剰な浸透は、その基材の不透明性の望ましくない減少をもたらす可能性がある。該硬化性ゲル化剤は、また、該組成物のモノマ(1つ以上)の硬化にも関係し得る。
【0015】
該組成物での使用に適するゲル化剤は、該組成物が、シリコーンまたはその他の油をその上に有する基材上で使用されるとき濡れを改良するために事実上両親媒性であり得る。両親媒性とは、分子の極性および非極性部分の両方を持つ分子を指す。例えば、該ゲル化剤は、長い非極性炭化水素鎖および極性のアミド結合を持つことができる。
【0016】
使用に適するアミドゲル化剤としては、米国特許第7,276,614号および同第7,279,587号に記載されているものが挙げられる。
【0017】
米国特許第7,279,587号に記載されているように、該アミドゲル化剤は、下記式の化合物であり得る。
【0018】
【化1】

【0019】
上記の具体的な置換基およびゲル化剤は、米国特許第7,279,587号および同第7,276,614号にさらに示されており、したがって本明細書ではさらに詳しく記すことはしない。
【0020】
複数の実施形態において、該ゲル化剤は、下記化合物(ただし、−C3456+a−は、不飽和および環式基を含んでもよい分枝アルキレン基を表し、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数である)を含む混合物であり得る。
【化2】


(I)、
【化3】


(II)、および
【化4】


(III)
【0021】
複数の実施形態において、該ゲル化剤は、例えば、硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂とを含んでなる複合体ゲル化剤であり得る。適切な複合体ゲル化剤は、同一出願人による米国特許出願公開第2007/0120921号に記載されている。
【0022】
該複合体ゲル化剤中のエポキシ樹脂成分は、任意の適当なエポキシ基含有材料であり得る。複数の実施形態において、そのエポキシ基含有成分としては、ポリフェノール系エポキシ樹脂またはポリオール系エポキシ樹脂、あるいはそれらの混合物のいずれかのジグリシジルエーテル類が挙げられる。即ち、複数の実施形態において、該エポキシ樹脂は、分子の端末側終端に位置する2つのエポキシ官能基を有する。該ポリフェノール系エポキシ樹脂は、複数の実施形態において、2つを超えるグリシジルエーテル末端基は有さないビスフェノールA−コ−エピクロルヒドリン樹脂である。該ポリオール系エポキシ樹脂は、2つを超えるグリシジルエーテル末端基は有さないジプロピレングリコール−コ−エピクロルヒドリン樹脂であり得る。適当なエポキシ樹脂は、約200〜約800、例えば、約300〜約700などの範囲の重量平均分子量を有する。市販のエポキシ樹脂原料は、例えば、Dow Chemical Corp.社製のビスフェノールA系エポキシ樹脂、例えばDER383など、またはDow Chemical Corp.社製のジプロピレングリコール系樹脂、例えばDER736などである。天然源を起源とするその他のエポキシ系材料の原料、例えば、植物または動物が起源のエポキシ化トリグリセリド脂肪酸エステル類、例えば、エポキシ化アマニ油、ナタネ油など、またはそれらの混合物を使用することができる。植物油から誘導されたエポキシ化合物、例えば、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア所在のArkema Inc.社製のVIKOFLEX商品群も使用することができる。そのエポキシ樹脂成分は、例えばアクリレートもしくは(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリルエーテルなどにより不飽和カルボン酸またはその他の不飽和試薬との化学反応によって官能化される。例えば、樹脂の末端エポキシ基は、この化学反応において開環されたものとなり、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって(メタ)アクリレートエステルに転化される。
【0023】
該エポキシ−ポリアミド複合体ゲル化剤のポリアミド成分として、任意の適当なポリアミド材料を使用することができる。複数の実施形態において、該ポリアミドは、天然源から得られたもの(例えば、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、およびそれらの混合物を含めたものなど)の重合脂肪酸または二量体化C−18不飽和酸原材料、例えば、オレイン酸、リノール酸などから調製された一般に知られた炭化水素「ダイマー酸」と、例えば、エチレンジアミンなどのアルキレンジアミン類、DYTEC(登録商標)シリーズのジアミン類、ポリ(アルキレンオキシ)ジアミン類などのポリアミンとから誘導されたポリアミド樹脂、または同様にポリエステル−ポリアミド類およびポリエーテルポリアミド類等のポリアミドのコポリマ類を含んでなる。1つ以上のポリアミドを該ゲル化剤の形成で使用することができる。市販のポリアミド樹脂のソースとしては、例えばCognis Corporation社(以前のHenkel Corp.社)から入手できるポリアミドのVERSAMIDシリーズ、特に、そのすべてが低い分子量および低アミン価を有するVERSAMID 335、VERSAMID 338、VERSAMID 795およびVERSAMID 963が挙げられる。Arizona Chemical Company社製のSYLVAGEL(登録商標)ポリアミド樹脂、およびポリエーテル−ポリアミド樹脂を含むその変異体を使用することができる。Arizona Chemical Company社から得られるSYLVAGEL(登録商標)樹脂の組成は、下記一般式(式中、Rは、少なくとも17個の炭素を有するアルキル基であり、Rは、ポリアルキレンオキシドを含み、Rは、C−6炭素環基を含み、nは、少なくとも1の整数である)のポリアルキレンオキシジアミンポリアミド類として表現される。
【0024】
【化5】

【0025】
該ゲル化剤は、また、例えば同一出願人による米国特許出願公開第2007/0120924号に開示されているような硬化性ポリアミド−エポキシアクリレート成分およびポリアミド成分を含むことができる。その硬化性ポリアミド−エポキシアクリレートが硬化性であるのは、少なくとも1つの官能基をその中に含んでいるためである。一例として、そのポリアミド−エポキシアクリレートは、2官能性である。その官能基(1つ以上)、例えばアクリレート基(1つ以上)は、遊離ラジカル開始を介する放射線硬化性であり、ゲル化剤の硬化インクビヒクルへの化学結合を可能にする。市販されているポリアミド−エポキシアクリレートは、Cognis社製のPHOTOMER(登録商標)RM370である。該硬化性ポリアミド−エポキシアクリレートは、また、硬化性のエポキシ樹脂とポリアミド樹脂とを含んでなる硬化性複合体ゲル化剤を得るために上記の構造の中から選択することもできる。
【0026】
該組成物は、該ゲル化剤を任意の適当な量、例えば該組成物の約1重量%〜約50重量%の量で含むことができる。複数の実施形態において、該ゲル化剤は、該組成物の約2重量%〜約20重量%、例えば該組成物の約3重量%〜約10重量%の量で含むことができるが、その値はこの範囲の外であることもできる。
【0027】
該組成物の少なくとも1つの硬化性モノマの例としては、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えばSartomer社製SR−9003)、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、それらの混合物などが挙げられる。
【0028】
用語「硬化性モノマ」は、該組成物中に同様に使用することができる硬化性オリゴマ類を含むことも意味している。該上塗り組成物中に使用することができる適当な放射線硬化性オリゴマ類の例は、例えば、約50cPs〜約10,000cPsで、約75cPs〜約7,500cPsまたは約100cPs〜約5,000cPs等の低粘度を有する。かかるオリゴマ類の例としては、米国ペンシルベニア州エクセター所在のSartomer Company,Inc.社から入手できるCN549、CN131、CN131B、CN2285、CN3100、CN3105、CN132、CN133、CN132、米国ジョージア州スミュルナ所在のCytec Industries Inc社から入手できるEbecryl 140、Ebecryl 1140、Ebecryl 40、Ebecryl 3200、Ebecryl 3201、Ebecryl 3212、米国オハイオ州シンシナティ所在のCognis Corporation社から入手できるPHOTOMER 3660、PHOTOMER 5006F、PHOTOMER 5429、PHOTOMER 5429F、米国ニュージャージー州フローハムパーク所在のBASF Corporation社から入手できるLAROMER PO 33F、LAROMER PO 43F、LAROMER PO 94F、LAROMER UO 35D、LAROMER PA 9039V、LAROMER PO 9026V、LAROMER 8996、LAROMER 8765、LAROMER 8986などを挙げることができる。
【0029】
複数の実施形態において、該硬化性モノマとしては、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer社製SR−9003など)およびジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomer社製SR399LVなど)の両方が挙げられる。ペンタアクリレートを含むことは、ジアクリレートと比較して、より大きい官能性を、したがってより大きい反応性を与えるのに有利である。しかしながら、ペンタアクリレートの上塗り組成物中の量は、多過ぎると適用温度における組成物の粘度に悪影響を及ぼす可能性があるので限定することが好ましい。そのペンタアクリレートは、したがって該組成物の10重量%以下、例えば該組成物の0.5重量%〜5重量%とする。
【0030】
該硬化性モノマは、該組成物中に、該上塗り組成物の例えば約20重量%〜約95重量%、例えば該組成物の約30重量%〜約85重量%、または該組成物の約40重量%〜約80重量%の量で含むことができる。
【0031】
該上塗り組成物は、硬化、例えば紫外線硬化を開始するための少なくとも1つの光開始剤を場合によってさらに含むことができる。開始剤は、硬化に際して黄色の着色を実質的に生じないことが望ましいが、放射線、例えば紫外光放射を吸収して配合物の硬化性成分の硬化を開始する任意の光開始剤を使用することができる。
【0032】
アクリレートおよび/またはアミド基を含む組成物に加えて使用するのに適する遊離ラジカル光開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、およびアシルホスフィン光開始剤類、例えばCiba社からIRGACUREおよびDAROCURの商品名で販売されているものなどが挙げられる。適当な光開始剤の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPOとして入手可能);2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPO−Lとして入手可能);ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド(Ciba IRGACURE 819として入手可能)およびその他のアシルホスフィン類;2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(Ciba IRGACURE 907として入手可能)および1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Ciba IRGACURE 2959として入手可能);2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(Ciba IRGACURE 127として入手可能);チタノセン類;イソプロピルチオキサントン(ITX);1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン;ベンゾフェノン;2,4,6−トリメチルベンゾフェノン;4−メチルベンゾフェノン;ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル;オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン);2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン;ベンジル−ジメチルケタール;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
アミン相乗剤(amine synergist)、即ち、光開始剤に水素原子を提供し、それによって重合を開始するラジカル種を形成する共開始剤(アミン相乗剤は、また、配合物中に溶解している酸素を消滅させることもでき、酸素はフリーラジカル重合を阻害するのでその消滅は重合の速度を高める)、例えば、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートおよび2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートなども含めることができる。
【0034】
複数の実施形態において、該光開始剤パッケージは、少なくとも1つのα−ヒドロキシケトン光開始剤および少なくとも1つのホスフィノイル型の光開始剤(1つ以上)を含むことができる。そのα−ヒドロキシケトン光開始剤の一例は、IRGACURE 127であり、一方ホスフィノイル型の光開始剤の一例は、IRGACURE 819であり、両方とも米国ニューヨーク州タリタウン所在のCiba−Geigy Corp.社から入手できる。そのα−ヒドロキシケトン光開始剤対ホスフィノイル型の光開始剤の比率は、例えば、約90:10〜約10:90で、例えば約80:20〜約20:80または約70:30〜約30:70であり得る。
【0035】
該上塗り組成物中に含まれる光開始剤の総量は、例えば、該組成物重量の約0〜約15%で、例えば約0.5〜約10%であり得る。複数の実施形態において、該組成物は、例えば硬化エネルギ源として電子線放射が使用される場合は光開始剤を含まなくてもよい。
【0036】
該組成物は、また、少なくとも1つの硬化性ワックスを含む。ワックスは、室温で、具体的には25℃で、固体である。該ワックスの包含は、したがって該組成物のそれを適用温度から冷却したときの粘度の上昇を促進し得る。したがって、該ワックスは、また、該組成物の基材中のブリーディングをゲル化剤が回避するのを支援することができる。
【0037】
該硬化性ワックスは、他の成分と混和性があり、硬化性モノマと重合してポリマを形成する任意のワックス成分であり得る。用語ワックスは、例えば、様々な天然の、変性した天然の、および合成の通常ワックスと称される材料のいずれも含む。
【0038】
硬化性ワックスの適当な例としては、硬化性の基を含むか、それによって官能化されているようなワックスが挙げられる。その硬化性の基としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド、オキセタンなどが挙げられる。これらのワックスは、転換できる官能基、例えばカルボン酸またはヒドロキシルなどを備えたワックスの反応によって合成することができる。本明細書に記載の該硬化性ワックスは、開示されているモノマ(1つ以上)と共に硬化することができる。
【0039】
硬化性の基により官能化させることができるヒドロキシル末端ポリエチレンワックスの適当な例としては、以下に限定はされないが、構造CH−(CH−CHOHであって平均鎖長nが約16〜約50の範囲内であり得る鎖長の混合物が存在する構造の炭素鎖と、類似の平均鎖長の直鎖状低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。かかるワックスの適当な例としては、以下に限定はされないが、UNILIN(登録商標)シリーズの材料、例えば、Mが、それぞれほぼ、375、460、550および700g/モルのUNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550およびUNILIN(登録商標)700が挙げられる。これらのワックスはすべて、Baker−Petrolite社から市販されている。2,2−ジアルキル−1−エタノールとみなされるゲルベアルコール(Guerbet alcohol)もまた適切な化合物である。典型的なゲルベアルコールとしては、その多くが米国ニュージャージー州ニューアーク所在のJarchem Industries Inc.社から市販されている約16〜約36個の炭素を含有するものが挙げられる。PRIPOL(登録商標)2033(米国デラウェア州ニューカッスル所在のUniqema社から入手できる下記式
【化6】


の異性体、ならびに不飽和および環式基を含むことができるその他の枝分かれした異性体を含むC−36ダイマージオール混合物;このタイプのC36ダイマージオール類に関するさらなる情報は、例えば、その開示を全体として本願に引用して援用する、「Dimer Acids」、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第8巻、第4版(1992年)、223〜237頁に開示されている)も使用することができる。これらのアルコールは、紫外線硬化性部分を供えたカルボン酸と反応させて反応性エステルを形成することができる。これらの酸の例としては、Sigma−Aldrich Co.社から入手できるアクリル酸類およびメタクリル酸類が挙げられる。
【0040】
硬化性の基により官能化することができるカルボン酸末端ポリエチレンワックスの適当な例としては、構造CH−(CH−COOHであって、鎖長nの混合物が存在し、その平均鎖長が約16〜約50であり得る炭素鎖と、同様の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。そのようなワックスの適当な例としては、以下に限定はされないが、Mがそれぞれほぼ390、475、565および720g/モルに等しいUNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550およびUNICID(登録商標)700が挙げられる。その他の適当なワックスは、構造CH−(CH−COOHを有しており、例えば、n=14のヘキサデカン酸またはパルミチン酸、n=15のヘプタデカン酸またはマルガリン酸またはダチュリン酸、n=16のオクタデカン酸またはステアリン酸、n=18のエイコサン酸またはアラキジン酸、n=20のドコサン酸またはベヘン酸、n=22のテトラコサン酸またはリグノセリン酸、n=24のヘキサコサン酸またはセロチン酸、n=25のヘプタコサン酸またはカルボセリン酸、n=26のオクタコサン酸またはモンタン酸、n=28のトリアコンタノン酸またはメリシン酸、n=30のドトリアコンタノン酸またはラッセル酸、n=31のトリトリアコンタノン酸またはセロメリシン酸またはシリン(psyllic)酸、n=32のテトラトリアコンタノン酸またはゲダ酸、n=33のペンタトリアコンタノン酸またはセロプラスチン酸などである。2,2−ジアルキルエタノール酸類であることを特徴とするゲルベ酸もまた適切な化合物である。典型的なゲルベ酸としては、16〜36個の炭素を含有するものが挙げられ、その多くは、ニュージャージー州ニューアークのJarchem Industries Inc.社から市販されている。PRIPOL(登録商標)1009(デラウェア州ニューカッスルのUniqema社から入手できる、下記式
【化7】


の異性体、ならびに不飽和および環式基を含んでもよいその他の枝分かれ異性体を含むC−36ダイマー酸混合物;このタイプのC36ダイマー酸についてのさらなる情報は、例えば、「Dimer Acids」、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第8巻、第4編、(1992年)、223〜237頁に開示されている)も使用することができる。これらのカルボン酸は、反応性エステルを形成するためにUV硬化性部分を備えたアルコールと反応させることができる。これらのアルコールの例としては、以下に限定はされないが、Sigma−Aldrich Co.社による2−アリルオキシエタノール、Sartomer Company,Inc.による
【化8】


Sartomer Company,Inc.によるSR495B
【化9】


のCD572(R=H、n=10)およびSR604(R=Me、n=4)が挙げられる。
【0041】
その硬化性ワックスは、該組成物中に、例えば該組成物の約0.1重量%〜約30重量%、例えば該組成物の約0.5重量%〜約20重量%または約0.5重量%〜約15重量%などの量で含むことができる。
【0042】
該組成物は、また、酸化防止安定剤を適宜含むこともできる。その組成物の任意的な酸化防止剤は、画像を酸化から保護し、また、インク成分をインク調製過程の加熱部分の間の酸化からも保護する。適当な酸化防止安定剤の具体例としては、米国コネティカット州ミドルベリ所在のCrompton Corporation社から市販されている、NAUGARD(商標)524、NAUGARD(商標)635、NAUGARD(商標)A、NAUGARD(商標)I−403、およびNAUGARD(商標)959;Ciba Specialty Chemicals社から市販されているIRGANOX(商標)1010、およびIRGASTAB UV 10;スイス国チューリッヒ所在のRahn AG社から市販されているGENORAD 16およびGENORAD 40などが挙げられる。
【0043】
該組成物は、従来の添加剤をさらに適宜含み、かかる従来の添加剤と関連する既知の機能を利用することができる。そのような添加剤としては、例えば、消泡剤、界面活性剤、スリップ剤およびレベリング剤などを挙げることができる。
【0044】
該組成物は、硬化に際して黄変せず、L値またはk、c、m、yのいずれかにおける測定可能な差異が皆無かほとんど見られないことが望ましい。「実質的に黄変しない」とは、該上塗り組成物の硬化時の色もしくは色相の変化が、約15%未満、例えば約10%未満または約5%未満など、例えば0%であることを意味する。
【0045】
複数の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、硬化性モノマ、硬化性ワックス、ゲル化剤および任意の着色剤等の該組成物成分を、約75℃〜約120℃、例えば約80℃〜約110℃または約75℃〜約100℃の温度で均一になるまで、例えば約0.1時間〜約3時間、例えば2時間、混合することによって調製することができる。その混合物が均一になった時点で、次いで任意の光開始剤を加えることができる。別法では、該組成物の全部の成分を、直ちに組み合わせて混合することができる。
【0046】
該組成物について光沢を制御する方法においては、該組成物を適切な放射線源に暴露することによって硬化するとき、その周囲の雰囲気中に存在する酸素の量を制御する。制御は、その際、その雰囲気中に存在する酸素の量を何らかの基準に基づいて、例えば該組成物を用いて形成される画像において得られるべき所望の最終的光沢に基づいて、予め選択し、該組成物および基材を取り巻く雰囲気をその予め選択した量と実質的に、例えばその予め選択した量の約5%の範囲内で、等しくなるように設定することが必要である。したがって、周囲空気中で該組成物を硬化させることは、その酸素の量が予め選択され、上で述べたような雰囲気の制御によって設定されていない限り、本明細書で用いる雰囲気中の酸素を制御していることにはならない。
【0047】
酸素の量の制御は、該硬化をチャンバまたはハウジング中で実施し、そのチャンバまたはハウジング中に供給される雰囲気中の酸素の量を制御することによって達成することができる。そのチャンバまたはハウジングは、完全に閉じられている必要はなく、望ましくは、基材を、そこを通して供給することができるすき間を含む。所望の酸素含量をもつ雰囲気を、該組成物がその上にある基材上に供給することも含めて、そのハウジングまたはチャンバ中に供給し、画像および基材を取り巻く雰囲気を制御する。
【0048】
硬化作業中の酸素の量の制御は、任意の適当な方法によって制御することができる。例えば、追加の酸素は、ガスボンベ(compressed gas cylinder)によって該雰囲気中に導入するか、または分子篩(molecular sieve)もしくは膜濃縮装置によって発生させることができる。他方では、雰囲気酸素は、ガスボンベからの、あるいは分子篩もしくは膜濃縮装置によって発生させた窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウムまたはそれらの混合物の使用、導入によってその雰囲気から移動、減少させることができる。
【0049】
複数の実施形態において、硬化雰囲気中の酸素の量は、完全なゼロを含めた実質的ゼロに設定する。これは、例えばアルゴンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガスなどを含んでなる不活性雰囲気中で例えば画像を硬化させることによって行うことができる。一般的に、ここでの組成物が、実質的に酸素がない雰囲気中で硬化するとき、その画像は、その組成物で得られる最高の光沢度を示す。
【0050】
さらなる複数の実施形態において、該硬化雰囲気中の酸素の量は、該雰囲気の約0.5%〜約15%となるように設定する。この酸素の量は、一般的に周囲空気中にある酸素の量(〜20%)より少なく、周囲空気より光沢があるが、実質的に酸素なしでの硬化と比較すると低い光沢の画像を提供する。
【0051】
さらなる複数の実施形態において、該硬化雰囲気中の酸素の量は、該雰囲気の約20%〜約35%となるように設定する。この酸素の量は、上記のようなより少ない酸素の存在下での硬化と比較して、より低い光沢、またはよりマットな仕上がりの画像を一般的に提供する。約25%〜約35%の酸素の量の存在下での硬化は、周囲空気中での硬化と比較してよりマットな仕上がりを一般的には提供する。
【0052】
酸素の量を増加すると、該組成物の硬化を妨げ始めるが、硬化中に存在する酸素の量は、約35%を超える増加が可能である。該組成物中にゲル化剤を含めることによる粘度の上昇は、該組成物中への酸素の拡散を減少させるものの、空気中の酸素の量が多いほど、その酸素は硬化の完全性により多くの悪影響を及ぼす可能性がある。
【0053】
複数の実施形態において、該酸素の量の制御は、着色したまたは無色の組成物のための1つ以上のルックアップテーブル(lookup table)を含むデータベースに所望の光沢を提供することを含むものであり得、その1つ以上のルックアップテーブルは、硬化中に該雰囲気中の様々な量の酸素を用いる組成物によって提供される光沢を含む。この方法は、所望の光沢を得るために該雰囲気中に存在させるべき酸素の量を決定するために使用することができる。その雰囲気中の酸素の量は、次にその決定によって与えられた酸素の量と実質的に同じになるように設定し、かくして所望の光沢と実質的に同じ光沢をもつ最終画像を得ることができる。
【0054】
様々なルックアップテーブルのための情報をデータベースに集録することができ、そこから、計算装置、例えばコンピュータなどが、所望の光沢を得るために必要な酸素の推定量を誘導することができ、次に、その誘導量(derivation)を使用する酸素の量を設定するために使用することができる。この機構は該ルックアップテーブルが所定の望ましい光沢に対する正確なエントリーを有さない場合に有利であり得る。
【0055】
該組成物は、画像受容基材に直接適用することができ、かつ/または画像受容基材上に予め形成されている画像上に直接適用することができる。その際、該上塗り組成物は、(1)該基材上に形成された少なくとも1つの印刷された画像の一部分(一部分はすべてより少ない)またはすべての上、(2)該基材の1つ以上の部分の上で、該基材の印刷可能なすべての部分より少ない部分の上(印刷可能な部分は印刷装置が画像を提供することができる基材の部分である)、あるいは(3)該基材の実質的にすべての乃至すべての印刷可能な部分の上に適用することができる。該組成物が、基材または基材上の画像のすべての部分より少ないところに適用されるとき、様々な光沢特性を有する最終画像を得ることができる。
【0056】
該組成物を、画像、その一部、基材、および/またはその一部にコートするとき、それは様々なレベルの解像度で適用することができる。例えば、該組成物は、基材の非画像領域への該組成物の幾分かの重なりを斟酌して、印刷網点の解像度、画像のはっきりと区別できる部分(1つ以上)の解像度、または画像のはっきりと区別できる部分(1つ以上)よりやや低い解像度で適用することができる。一般的な組成物堆積レベルは、約5〜約50ピコリットルの滴径の量である。該組成物は、任意の既知のインクジェット印刷技術、例えば、圧電および音響インクジェット印刷を含むがこれらには限定されないドロップオンデマンドのインクジェット印刷などを用いる画像形成における任意の場面で画像上に少なくともワンパスで適用することができる。該組成物の適用は、画像を形成するために使用する情報により制御することができ、そのため、画像と上塗り組成物とを生ずるためにはデジタルファイル1つだけが必要である。したがって、該組成物は完全にデジタル方式であり得る。
【0057】
該組成物の適用に続いて、該組成物は、例えば2008年1月31日に出願された米国特許出願第12/023979号に開示されているように接触または非接触レベリングによって場合によって平準化することができる。
【0058】
適用に続いて、その適用した組成物は、一般的には、ゲル化剤の特性を利用するために該組成物のゲル点より下まで冷却する。該組成物は、次いで、制御された量の酸素の存在下で放射線(硬化エネルギ)に暴露して該組成物を硬化させることができる。適当な硬化エネルギ源、例えば紫外線に暴露すると、光開始剤はそのエネルギを吸収し、そのゲルのような組成物を硬化材料に転化する反応を始動する。該組成物の粘度は、適当な硬化エネルギ源に暴露するとさらに増加し、その結果、固体にまで固化する。該組成物中のモノマおよびワックス、ならびに場合によってゲル化剤は官能基を含有し、それは光開始剤の放射線への暴露の結果、重合してポリマネットワークを形成する。光開始剤が存在しない場合、これらの官能基は、電子線放射への暴露を受けて重合することができる。このポリマネットワークは、印刷画像に、例えば、耐久性、熱および光安定性、ならびに耐引っ掻き性および耐スミア性(smear resistance)を提供する。得られる最終画像は、上記の所望の光沢と実質的に同等の光沢を有するように作製することができる。
【0059】
該組成物の放射線硬化性成分の架橋を開始するために使用するエネルギ源は、化学線の、例えば、スペクトルの紫外または可視領域に波長を有する放射、加速粒子の、例えば、電子線放射、熱の、例えば、熱放射または赤外線放射、などであり得る。複数の実施形態において、該エネルギは、化学線であり得、何故ならそのようなエネルギは、架橋の開始および速度に関して優れた制御を提供するためである。適当な化学線源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザ、発光ダイオード、日光、電子ビームエミッタなどが挙げられる。
【0060】
特に中圧水銀ランプからのUV光の下の例えば約20〜約150m/分の高速コンベアによる紫外線照射であって、約200〜約500nmの波長で約1秒未満にわたって提供される紫外線照射が望ましいものであり得る。複数の実施形態において、高速コンベアのスピードは、約10〜約50ミリ秒(ms)間、約200〜約450nmの波長のUV光の下での約15〜約80m/秒である。UV光源の発光スペクトルは、一般にUV開始剤の吸収スペクトルを重複する。任意的な硬化装置としては、以下に限定はされないが、UV光を集中または拡散させる反射鏡、選択した波長(例えば赤外線)を除去するフィルタ、およびUV光源からの熱を除去する冷却システムが挙げられる。
【0061】
使用する基材は、該印刷物の最終用途に応じた任意の適切な基材であることができる。例示的な基材としては、普通紙、コート紙、プラスチックス、ポリマフィルム、処理セルロース、木材、電子写真基材、セラミックス、繊維、金属およびそれらの混合物が挙げられ、適宜その上に塗布された添加剤を含む。
【0062】
画像を形成するために着色した組成物を使用するとき、その画像は、上塗り組成物を部分的または完全に上塗りすることができる。その上塗り組成物は、上記の無色の組成物であることができ、または別の従来のもしくは適当な上塗り組成物であり得る。この上塗り組成物は、必要に応じて、画像の最終の光沢を修正するためにさらに使用することができる。
【0063】
本明細書の方法は、かくして、組成物の異なる組成の使用を必要とすることなく、最終画像の光沢に関する制御を提供する。勿論、複数の異なる組成物、例えば、着色組成物および無色の組成物の両方、異なる色の組成物、または同じ量の酸素の存在下で硬化したとき異なる範囲の光沢を提供することができる組成物を含む装置の使用は可能である。
【実施例】
【0064】
本開示を、以下の実施例でさらに説明する。
【0065】
着色インク組成物を表1に示す成分のそれぞれを混合することによって調製した。
【0066】
【表1】

【0067】
該硬化性アミドゲル化剤は、
【化10】


(I)、
【化11】


(II)、および
【化12】


(III)、
(ただし、−C3456+aは、不飽和基および環式基を含んでもよい分枝アルキレン基を表し、aは様々に、上記のように、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数である)を含む混合物である。
【0068】
上記の組成物を含んでなるブラックのUV硬化性インクのパッチを、ドローダウン法を用いて紙基材に塗布し、UV Fusion Lighthammer 6装置を用いて、アルゴン雰囲気(酸素0%)または20%の酸素を含む空気の雰囲気下のいずれかで、30fpm(1分間当たりのフィート数)で硬化した。0%の酸素の下で硬化したパッチは空気中(酸素20%)で硬化した同じ試料より明らかに光沢があった。60°の角度で測定した光沢値(BYK Gardner社製マイクロTRIグロスメータを用いて60°で測定)は、不活性雰囲気中で硬化した試料については37.2GU、空気中で硬化した試料については27.3GUであった。この光沢の変化は視覚的に容易に識別できる。
【0069】
無色の上塗り組成物を、表2に示す成分のそれぞれを混合することによって調製した。
【0070】
【表2】

【0071】
DC12装置を用いて赤色のトナーで電子写真的に形成したパッチを、ドローダウン法を用いて上記の透明なUV硬化性ゲル上塗り配合物で被覆した。上塗りしたパッチを、上記のように、アルゴン雰囲気(酸素0%)または空気中(酸素20%)のいずれかの下で硬化した。アルゴン下(酸素0%)で硬化した上塗りされたパッチは、空気中(酸素20%)で硬化した上塗りされたパッチより明らかに光沢があった。60°で測定した光沢値は、アルゴン中で硬化した試料については13.0GU、空気中で硬化した試料については10.1GUであった。この光沢の変化は視覚的に容易に識別できる。
【0072】
上と同じ赤のパッチ(DC12装置を用いて同じ赤のトナーで電子写真的に形成した)を、市販の高光沢上塗り(ANCHOR 48001 ULTRACOAT UV X2 Gloss)で被覆した。上塗りしたパッチを、上記のように、アルゴン雰囲気(酸素0%)または空気中(酸素20%)のいずれかの下で硬化した。異なる硬化雰囲気で光沢の変化は見られなかった。60°で測定した赤の光沢度は、アルゴン下で硬化したとき14.8GUであり、空気の下で硬化したとき(酸素20%)14.9GUであった。この結果は、本明細書に記載の組成物により得られた制御可能な光沢は、少なくとも一部は該組成物の配合によることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の光沢を制御する方法であって、
着色した組成物または無色の組成物を、基材の1つ以上の部分に塗布することによって基材上に画像を形成する工程であって、前記着色した組成物または無色の組成物は、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つの硬化性モノマ、少なくとも1つの硬化性ワックスおよび任意選択の少なくとも1つの光開始剤を含み、前記着色した組成物または無色の組成物は、放射線への暴露によって硬化可能である工程と、
着色した組成物または無色の組成物を塗布後に前記着色した組成物または無色の組成物に放射線を適用し、硬化中に前記画像の周囲の雰囲気中に存在する酸素の量を制御しながら硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
カラー画像の光沢を制御する方法であって、
着色した組成物を、基材の1つ以上の部分に塗布することによって基材上に画像を形成する工程であって、前記着色した組成物は、少なくとも1つのゲル化剤、少なくとも1つの硬化性モノマ、少なくとも1つの硬化性ワックス、少なくとも1つの着色剤および任意選択の少なくとも1つの光開始剤を含み、前記着色した組成物は、放射線への暴露によって硬化可能である工程と、
前記着色した組成物を塗布後に前記着色した組成物に放射線を適用し、硬化中に前記画像の周囲の雰囲気中に存在する酸素の量を制御しながら硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−17710(P2010−17710A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163479(P2009−163479)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】