画像を生成するための方法および装置
本発明は、粒子線によって対象物(5)の画像を生成するための方法および装置(1)に関する。この方法または装置(1)では粒子線が対象物(5)上にラスタ走査される。本発明は、粒子線によって対象物(5)の画像を生成するための方法および装置(1)において、良好な画像が常に保証されているように冷陰極電界エミッタ(2)と共に使用可能であるものを提案することを課題としている。この課題は、本発明による方法において、ビームのパラメータが変化した場合に、補正されたパラメータにより対象物(5)のラスタ走査を繰り返すことにより解決される。本発明による装置(1)は、このために対応する手段(4,6,7)を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上に粒子線をラスタ走査することによって対象物の画像を生成するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記装置は粒子線システムである。粒子線システムは、例えば電子線システムまたはイオンビームシステムとして形成されていてよい。特に電子線システムの使用は既に極めて広く知られている。電子線システムは、例えばナノ構造体を作製するために利用される。電子線システムには、既に長い間知られている電子顕微鏡も挙げられ、電子顕微鏡によって対象物の画像を生成することができる。公知の電子顕微鏡には走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡があり、走査型電子顕微鏡は、半導体構造、生物学または鉱物学的な試料およびその他の試料の高解像度画像を生成するために用いられる。
【0003】
電子線システム(電子線装置とも呼ぶ)、例えば走査型電子顕微鏡は、電子線を生成するために電子線生成器として形成された粒子線生成器、対象物に電子線を集束するための対物レンズ、および、対象物で散乱された、または対象物から放出された電子を検出するための少なくとも1つの検出器を有している。粒子線生成器によって生成された電子線は、対物レンズによって、調査すべき対象物に集束される。操作装置によって、電子線は、調査すべき対象物の表面上にラスタ状に案内される。すなわち、電子線は、対象物の表面上にラスタ走査される。電子線の電子はこの場合に対象物と相互作用する。この相互作用の結果として、特に電子が対象物表面から放出されるか(いわゆる二次電子)、または電子線の電子は後方散乱される(いわゆる後方散乱電子)。二次電子および後方散乱電子は検出器により検出される。検出器は、検出された二次電子または後方散乱電子に関連して検出信号を生成し、この検出信号は画像生成に用いられる。
【0004】
電子のための粒子線生成器(以下に粒子線源とも呼ぶ)としては、例えば、熱陰極電界エミッタまたは冷陰極電界エミッタが用いられる。このような電界エミッタの使用は、既に長い間知られている。近年では、種々異なった用途で、小型化された冷陰極電界エミッタが使用されている。ドイツ国特許公開第10302794号明細書は、小型の電子線システムについて記載している。この電子線システムは、同様に小型の冷陰極電界エミッタを備えている。この冷陰極電界エミッタは、電子線蒸着法により形成される。さらに欧州特許第1186079号明細書により、テラヘルツ範囲で作動する小型電子線源が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ国特許公開第10302794号明細書
【特許文献2】欧州特許第1186079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷陰極電界エミッタは高い指向性ビーム値と小さいビームエネルギ幅とを有している。それ故、冷陰極電界エミッタは、極めて小さい電子線直径を得るために特に適しており、これにより、高解像度を達成することができる。しかしながら、冷陰極電界エミッタは、電子放出電流が時間的に変動するという欠点を有している。電子放出電流の時間的な変動は、不都合なことに、対象物結像時に例えば走査型電子顕微鏡において列状ラスタ走査画像に妨げとなる明暗の付いたストリップを知覚可能にしてしまう。
【0007】
本発明の課題は、粒子線によって対象物の画像を生成するための方法および装置において、冷陰極電界エミッタと共に使用可能であり、画質が常に保証される方法および装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法により解決される。本発明による装置は、請求項16に記載の特徴を有する。本発明のさらなる特徴は、従属請求項および以下の説明から明らかである。
【0009】
粒子線によって対象物の画像を生成するための本発明による方法では、対象物上に粒子線をラスタ走査することにより画像を生成する。画質を改善するために、粒子線の対応パラメータが検出される。さらに、パラメータが変化したかどうかが突き止められる。パラメータに変化が生じた場合には、対象物においてパラメータの変化が生じた場所が検出される。次いで粒子線はこの場所に戻される。粒子線による対象物の新たなラスタ走査がこの場所から行われる。
【0010】
本発明は、放出電流がもっぱら飛躍的に変化し、これらの飛躍的な変化の間に一定の放出電流を有しているという、粒子線生成器、特に冷陰極電界エミッタの特性を、有利には画像生成のために利用することができるという認識に基づいている。放出電流は、粒子線生成時に原則的には極めて短時間内に、多くの場合、マイクロ秒よりも短時間内に飛躍的に変化する。飛躍的な変化後に放出電流のさらなる飛躍が生じるまで、放出電流は所定時間にわたり安定状態を保つ。そこで本発明では、放出電流の変化を突き止めて画質を改善するための手段を講じている。粒子線生成器の放出電流が変化したことを突き止めた場合、放出電流の変化が生じた場所がすぐに検出される。粒子線はこの場所に復帰され、この場所から粒子線は対象物上に新たにラスタ走査される。対象物の既にラスタ走査された画素によって取得済の誤った画像情報は消去され、繰り返されたラスタ走査により得られた情報に置き換えられる。結像時間は、新たなラスタ走査により極わずかにしか長くならない。
【0011】
本発明による方法では、好ましくはパラメータは、パラメータの変化が認識された後に目標値に変更される。例えば、エミッタの放出電流の変化が突き止められた場合には、常に十分に良好な結像、特に画像の十分かつ良好な輝度が保証されているように放出電流は目標値に変更される。
【0012】
パラメータの変化が生じた場所の検出は、例えば時間計算により、好ましくは変化が突き止められた時点、粒子線のラスタ走査速度および/または信号の継続時間を考慮して行われる。
【0013】
粒子線の復帰を決定するパラメータの変化量を調節可能とすることが好ましい。すなわち、閾値が調節可能である。これにより、パラメータの極わずかな変動が生じるたびに粒子線が復帰されるのではなく、明白な変化が生じた場合にのみ粒子線が復帰されることが保証されている。
【0014】
本発明による手段の具体的実施形態では、パラメータは所定時間にわたって積算され、その後にパラメータに変化が生じたかどうかが突き止められる。この手順は、強度が極めて小さいパラメータを観察する場合に特に有利である。信号対雑音比が高い十分な信号を得るために、所定時間にわたりパラメータの積算が行われる。
【0015】
本発明による方法の別の実施例では、それぞれ所定パターンの第1点から所定パターンの第2点まで粒子線が対象物上にラスタ走査され、パラメータの変化が突き止められた後、ラスタ走査時に粒子線が所定パターンの第2点に到達した場合にようやく、粒子線はパラメータが変化した場所に復帰される。したがって、この実施例では、対象物上における粒子線の新たなラスタ走査は、所定パターンが2つの点の間でラスタ走査もしくは「スキャン」された後に行われる。好ましくは第1点は所定パターンの始端部であり、第2点は所定パターンの終端部である。
【0016】
所定パターンは、例えば行(画像行)または列(画像列)である。この場合、補正は1つの行または列のスキャン後に行われる。代替的には、互いに連続した複数の行または列がパターンとして使用される。本発明は、もちろん行状または列状のパターンに限定されていない。むしろラスタ走査、すなわち、対象物上の点から点へデータを捕捉するために使用可能なあらゆるパターンを使用することができる。
【0017】
本発明による方法の具体的実施形態では、パラメータとして粒子線の電流(粒子線電流または粒子電流とも呼ぶ)が検出される。例えば、粒子線電流は、冷陰極電界エミッタの電子の放出電流である。
【0018】
本発明による方法の別の実施形態では、対象物上における粒子線のラスタ走査は、評価ユニットにより制御されるラスタ走査手段により行われる。好ましくは、パラメータ、これに対して代替的または付加的にはパラメータが変化した場所も評価ユニットにより検出される。
【0019】
本発明による方法の有利な実施例では、粒子線は電子線として形成されており、電子線は、画像を生成するために対象物上にラスタ走査される。
【0020】
好ましくは、粒子線は冷陰極電界エミッタにより生成される。このために、特に小型化の冷陰極電界エミッタを使用することができる。なぜなら、この種の電界エミッタは、粒子線(電子線)を制御するために巨視的なエミッタよりも小さい電圧変化しか必要としないからである。例えば、電子線は、蒸着された冷陰極電界エミッタにより生成され、この場合、蒸着された冷陰極電界エミッタとは、例えば、電子線蒸着法によって作製される、小型の冷陰極電界エミッタである。
【0021】
本発明による方法の別の実施形態では、粒子線が少なくとも1つのラスタ走査点に案内され、このラスタ走査点で積算測定が行われる。例えば、粒子線は、対象物上にラスタ走査される場合にラスタ走査点まで案内され、このラスタ走査点では、測定が粒子線により複数回行われ、このようにして得られた測定値が平均値を出すために積算される(ピクセル積算)。しかしながら、積算測定は、ラスタ走査行に配置された全てのラスタ走査点に対して行ってもよい(行積算)。これに対して代替的に、積算測定は、それぞれラスタ走査点を有し、ユニットの形にまとめられた複数のラスタ走査行に対して行ってもよい(フレーム積算)。ピクセル積算の場合に、上記ラスタ走査点でパラメータの変化が得られた場合、粒子線はこのラスタ走査点に再び復帰される。行積算の場合に、ラスタ走査行のラスタ走査点でパラメータの変化が得られたことが突き止められた場合、粒子線はラスタ走査行のこのラスタ走査点またはパラメータの変化を有するラスタ走査点の前に配置された別のラスタ走査点(例えば、ラスタ走査行の第1ラスタ走査点、すなわち、ラスタ走査行始端部)に復帰される。同様のことが、フレーム積算の場合にもいえる。この場合、パラメータの変化が得られたラスタ走査点への復帰、またはフレームにおいてこのラスタ走査点の前に配置された別のラスタ走査点(例えばラスタ走査行の始端部)への復帰が行われる。全ての実施例では、復帰後に新たなラスタ走査が開始される。
【0022】
本発明による方法の別の実施形態では、生成された画像の輝度およびコントラストの後調整が行われる。例えば輝度およびコントラストの後調整は自動的に行われる。粒子線のパラメータが変化した場合には輝度の後調整が行われる。変化が生じた場所に粒子線が復帰され、新たにスキャンが行われことにより、輝度飛躍が広範囲に防止される。
【0023】
本発明による方法は、以下にさらに詳しく説明するように、好ましくは粒子線装置、特に電子線装置で使用される。
【0024】
本発明は、粒子線を用いて対象物の画像を生成するための装置にも関する。この装置では粒子線が対象物上にラスタ走査される。本発明の装置は、特に少なくとも1つの上記特徴または特徴の組合わせを有する方法を実施するために形成されている。装置は、粒子線を生成するための少なくとも1つの粒子線生成器と、対象物上に粒子線をラスタ走査するための少なくとも1つのラスタ走査手段と、粒子線に対応するパラメータを検出するための少なくとも1つの手段と、パラメータの変化を判定するための少なくとも1つの手段と、対象物においてパラメータの変化が生じた場所を検出するための少なくとも1つの手段と、この場所に粒子線を戻すための少なくとも1つの手段とを有している。
【0025】
本発明による装置では、粒子線生成器により粒子線が生成され、この粒子線はラスタ走査手段によって対象物上にラスタ走査される。粒子線に対応するパラメータを検出するための手段と、パラメータの変化を判定するための手段とにより、パラメータが変化した場所を検出することが可能である。このことは、例えば、上述の時間計算により行われる。次いで上述のように粒子線はこの場所に復帰され、対象物のラスタ走査が新たに開始される。
【0026】
本発明による装置では、好ましくはパラメータを目標値に変更するための手段が設けられる。この手段は、上述のようにしてパラメータを変更するために用いられる。
【0027】
本発明による装置は、好ましくはパラメータの変化のための閾値を調節するための手段をも有している。このようにして、上述のように、パラメータの全ての微小な変化が粒子線を復帰させる前提条件とはならないようにすることができる。
【0028】
本発明による装置の実施形態では、粒子線を復帰させるための手段はラスタ走査手段の内部に収容されている。好ましくは、粒子線を復帰させるための手段とラスタ走査手段とは同一に形成されている。したがって、これらの手段はユニットを形成している。
【0029】
さらに好ましくは、粒子線に対応するパラメータを検出するための手段は、粒子線電流を検出するための手段として形成されている。例えば、冷陰極電界エミッタの放出電流が測定され、この電流がパラメータとして使用される。
【0030】
粒子線に対応するパラメータを検出するための手段は、粒子線生成器と対象物との間に配置されている。代替的には、粒子線に対応するパラメータを検出するための手段は、粒子線生成器の内部に組み込まれている。例えば、パラメータを検出するための手段は、冷陰極電界エミッタと対象物との間の電子線カラムの内部に配置されており、ここで、パラメータとして冷陰極電界エミッタの放出電流が使用される。
【0031】
本発明による装置の別の実施形態では、パラメータの変化を判定するための手段は、場所を検出するための手段の内部に収容されている。好ましくは、パラメータの変化を判定するための手段と、場所を検出するための手段とは同一に、すなわち、ユニットとして形成されている。
【0032】
本発明による装置の有利な実施形態では、パラメータを検出するための手段および/またはパラメータの変化を判定するための手段および/または対象物における場所を検出するための手段および/または粒子線を復帰させるための手段は、互いに接続されている。好ましくは、パラメータを検出するための手段、パラメータの変化を判定するための手段および/または対象物における場所を検出するための手段は、1つの評価ユニット内に収容されている。
【0033】
さらに好ましくは、パラメータを変更するための手段は粒子線生成器に接続されている。
【0034】
本発明の別の実施形態では、装置には上述のような積算測定を行うための手段が設けられている。さらに好ましくは、装置は生成された画像の輝度および/またはコントラストを後調整するための手段を有している。
【0035】
本発明の別の実施形態では、粒子線生成器は、電子線源として形成されている。したがって、装置は、例えば以下に説明するように、電子線装置である。
【0036】
本発明は、電子線により対象物の画像を生成するための電子線装置、特に走査型電子顕微鏡にも関する。この装置では電子線が対象物上にラスタ走査される。本発明による電子線装置は、電子線を生成するための少なくとも1つの電子線源と、対象物に電子線を集束するための少なくとも1つの対物レンズと、対象物上に電子線をラスタ走査するための少なくとも1つのラスタ走査手段と、電子線に対応するパラメータを検出するための少なくとも1つの手段と、対象物においてパラメータの変化が生じた場所を検出するための少なくとも1つの手段と、この場所に電子線を復帰させるための少なくとも1つのの手段とを有している。
【0037】
さらに、本発明による電子線装置には、パラメータを目標値に変更するための手段が配置される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】粒子線装置の概略図である。
【図2】走査型電子顕微鏡の形態の粒子線装置の概略図である。
【図3a】ラスタ走査画素を備える対象物の概略図である。
【図3b】ラスタ走査画素を備える対象物の概略図である。
【図3c】ラスタ走査画素を備える対象物の概略図である。
【図4a】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図4b】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図4c】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図4d】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図5a】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図5b】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図5c】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0040】
以下に本発明を粒子線装置1を用いてまずは全般的に説明する。図1は、粒子線装置の概略図を示している。粒子線装置1は、粒子線を生成するビーム源(ビーム生成器)2を有している。粒子線は粒子線カラム(図示しない)内に導入され、対物レンズ3によって対象物5に集束される。対象物5に粒子線をラスタ走査するためにラスタ走査手段4が設けられている。対物レンズ3およびラスタ走査手段4の相対配置は模式的な例でしかないことを明示的に指摘しておく。対物レンズ3およびラスタ走査手段4の実際の配置は図示の装置とは全く異なっていてもよい。
【0041】
ラスタ走査手段4によって対象物5上にラスタ走査される粒子線は、対象物5と相互作用し、これにより、相互作用粒子を生成し、この相互作用粒子は検出器(図示しない)によって検出され、画像生成のために使用される。
【0042】
さらに粒子線装置1は、ビーム生成器2と対物レンズ3との間に配置された粒子電流測定器6を有している。これに対して代替的に、粒子電流測定器6はビーム生成器2の内部に組み込まれている。粒子電流測定器6は、導線8によって評価ユニット7に接続されている。さらに評価ユニット7は、導線9によってラスタ走査手段4に接続されている。評価ユニット7によって粒子電流の変化の閾値を調節することも可能である。粒子電流の変化がこの閾値を超過した場合にはじめて、以下に説明するように粒子線の復帰が行われる。
【0043】
粒子電流測定器6によって、ビーム生成器2により生成された粒子線の粒子電流が測定される。このようにして検出された粒子電流もしくは粒子電流値は導線8によって評価ユニット7に伝達される。評価ユニット7は制御プログラムを備えており、これにより、評価ユニット7は、いま測定された粒子電流値がこれまでに測定された粒子電流値に対して変化したか否かを判定することができる。このために、評価ユニット7はマイクロプロセッサ(図示しない)およびメモリ構成部分(図示しない)を備えており、メモリ構成部分には、特に制御プログラムと粒子電流値とが記憶されているか、または持続的に記憶される。粒子電流の変化が生じたこと(閾値値超過)を評価ユニット7が判定するとすぐに、時間計算により、粒子電流が変化した時点で粒子線が対象物5のどの場所に位置していたかが検出される。この場所に粒子線は復帰される。このために、評価ユニット7は導線9によって、粒子線を前記場所に戻す対応制御信号をラスタ走査手段4に送信する。次いで対象物5のラスタ走査はこの場所から繰り返され、さらに実施される。対象物5の既にラスタ走査された画素によって取得済の誤った画像情報は消去され、繰り返し行われたラスタ走査により得られた情報に置き換えられる。
【0044】
図2は、走査型電子顕微鏡1の形の電子線装置として形成された本発明による装置の具体的実施形態を示している。走査型電子顕微鏡1は、冷陰極電界放出器の形のビーム源2、抽出電極10および陽極11を有しており、陽極11は、同時に走査型電子顕微鏡1のビーム案内管12の端部である。ビーム源2から放出した電子は、ビーム源2と陽極11との間の電位差に基づき陽極電位まで加速される。
【0045】
ビーム案内管12は、対物レンズ3として働く磁気レンズの磁極片16によって形成された孔を通って案内される。磁極片16の内部にはコイル17が配置されている。ビーム案内管12には静電式の遅延装置が後置されている。この遅延装置は電極19と管電極18とからなっており、管電極18は、ビーム案内管12の、対象物5に向かい合った端部に形成されている。したがって、管電極18は、ビーム案内管12と共に陽極電位を有し、電極19および対象物5は、陽極電位に比べてより低い電位を有している。このようにビーム源2から放出した電子線の電子は、対象物5の検査のために必要な望ましい低いエネルギに抑制される。さらに、電子線を偏向し、対象物5上をラスタ走査することのできるラスタ走査手段4が設けられている。
【0046】
ビーム源2により生成された電子線と対象物5との相互作用に基づき二次電子または後方散乱電子を検出するために、第1検出器14と第2検出器15とを備える検出装置がビーム案内管12の内部に配置されている。この場合、検出器14は、ビーム案内管12の光軸20に沿って調節装置13によって可動に配置されている。第1検出器14および第2検出器15は、それぞれ環状の検出面を有している。本発明は、2つの検出器を使用することに限定されないことを明示的に指摘しておく。むしろ本発明は、単一の検出器のみを有していてもよいし、2つ以上の検出器を有していてもよい。単一または複数の検出器は可動に配置されていなくてもよい。検出器14および15は評価ユニット26に接続されており、この評価ユニット26により、特に積算測定が行われる。例えば、電子線がラスタ走査点まで案内され、このラスタ走査点で電子線により測定が複数回行われ、このようにして得られた測定値が平均値形成のために積算される(ピクセル積算)。しかしながら、積算測定は、ラスタ走査行に配置された全てのラスタ走査点に関して行うこともできる(行積算)。これに対して代替的に、積算測定は、それぞれ複数のラスタ走査点を有し、ユニットの形にまとめられた複数のラスタ走査行に対して行うこともできる(フレーム積算)。
【0047】
さらに走査型電子顕微鏡1は、電子線の電流を測定するための粒子電流測定器6を有している。この実施例では、粒子電流測定器6は、感応性領域6′を備えている。粒子電流測定器6は導線8により評価ユニット7に接続されており、この評価ユニット7は導線9によりラスタ走査手段4に接続されている。
【0048】
走査型電子顕微鏡1は、図1に示した実施例に関して既に説明したように、本発明による方法にしたがって動作する。これに関しては上述の説明を参照されたい。付加的に、走査型電子顕微鏡1は、ビーム源2に接続された変更手段24を有している。電子線の電流(電子電流)の変化を突き止めた後に、電子電流は目標値に変更される。これにより、新たに生成された画像が輝度飛躍を有しておらず、かつ明るすぎたり暗すぎたりしないことが保証される。変更手段24は、当然ながら図1による実施形態にも形成されていてよい。
【0049】
図3a、図3bおよび図3cは、対象物5の概略図を示している。対象物5にはラスタ走査画素が概略的に示されている。ラスタ走査画素は、図1による実施例の粒子線または図2による実施例の電子線によってスキャンされる。符号21は、対象物5におけるラスタ走査画素の複数の行を示している。粒子線あるいは電子線22は、それぞれ1つの行21の各ラスタ走査画素に順次に当たるように、すなわち各ラスタ走査画素をスキャンするように対象物5上を案内される。図3aは、行21の第1ラスタ走査画素をスキャンする場合の粒子線あるいは電子線22の位置を示しており、図3bは、同じ行の別のラスタ走査画素をスキャンする場合の粒子線あるいは電子線22の位置を示している。
【0050】
粒子電流あるいは電子電流22が変化したことを突き止めた場合、粒子電流あるいは電子電流22の変化が生じた場所が検出される。この場所は、図3bで符号23を付したラスタ走査画素である。この場所の検出後に、粒子線あるいは電子線22はラスタ走査手段によりラスタ走査画素23に復帰される(図3c)。ラスタ走査画素23が位置している行21のラスタ走査は、この場合ラスタ走査画素23から繰り返し継続される。ラスタ走査が最初に中断され、粒子線あるいは電子線22が復帰されたラスタ走査画素まで、ラスタ走査画素23をスキャンすることにより得られたこれまでの情報は全て破棄され、繰り返し行われた、あるいは新たなラスタ走査の情報に置き換えられる。
【0051】
同様のことが図4a、図4b、図4cおよび図4dに示した実施例についてもいえる。図3a〜図3cに示した実施例とは異なり、ここでは行のラスタ走査は、粒子電流あるいは電子電流(図4b)の変化が突き止められた後にもさらに継続され、行21(図4c)の完全なスキャン後にようやく粒子線あるいは電子線22はラスタ走査画素23に復帰される。
【0052】
ラスタ走査画素23への復帰に対して代替的に、両実施例では、粒子線あるいは電子線22は、ラスタ走査画素23にではなく、ラスタ走査画素23が位置する行21の始端部に案内される。このことは同様に図3cまたは4dに示されている。すなわち、この実施例では行21全体がもう一度新たにラスタ走査される。したがって、本発明は、粒子線のパラメータ(ここでは粒子線電流)の変化が生じたラスタ走査画素(ここではラスタ走査画素23)にのみ粒子線が復帰されることに制限されてない。むしろ粒子線は、変化が生じたラスタ走査画素よりも前に配置されている別のラスタ走査画素にも案内することができる。粒子線電流のパラメータの変化が得られたラスタ走査画素においても新たなラスタ走査が行われることのみが重要である。
【0053】
図5a、図5bおよび図5cは、列25でラスタ走査される対象物を示している。しかしながら、基本的には、図3a〜図3cおよび図4a〜図4dに示した実施例の場合と同じことがいえる。
【0054】
図示の実施例では、特に次の方法を用いることもできる。ピクセル積算時にラスタ走査画素23に粒子電流あるいは電子電流に変化が生じた場合には、粒子線あるいは電子線22はラスタ走査画素23まで再び復帰される。行積算が行われ、ラスタ走査画素23で粒子電流あるいは電子電流の変化が得られたことが突き止められた場合には、粒子線もしくは電子線22は、ラスタ走査画素23に戻されるか、またはラスタ走査行21の別のラスタ走査画素、もしくはラスタ走査画素23の前に配置されたラスタ走査列25(例えばラスタ走査行21またはラスタ走査列25の最初のラスタ走査画素、すなわち、ラスタ走査行始端部またはラスタ走査列始端部)に復帰される。同様のことがフレーム積算に関してもいえる。この場合にもラスタ走査画素23自体への復帰、またはラスタ走査画素23の前に配置された、フレームの別のラスタ走査画素(例えばラスタ走査行21またはラスタ走査列25の始端部)への復帰が行われる。全ての実施例において、復帰後に新たなラスタ走査が開始される。
【0055】
上述のように、粒子電流あるいは電子電流の変化が突き止められた後に粒子電流あるいは電子電流が目標値に変更される。これにより、新たに生成された画像が輝度飛躍を有していることも、明るすぎたり暗すぎたりしないことも保証される。このことは、特に画像輝度の自動的な後制御を行う場合に有利である。本発明による復帰および新たなラスタ走査により、輝度飛躍なしに良好な画質が常に保証される。
【符号の説明】
【0056】
1 電子線装置
2 ビーム源
3 対物レンズ
4 ラスタ走査手段
5 対象物
6,6′ 粒子電流測定装置
7,26 評価ユニット
8,9 導線
10 抽出電極
11 陽極
12 ビーム案内管
13 調節装置
14,15 検出器
16 対物レンズとして作用するレンズの磁極片
17 磁気レンズのコイル
18 管電極
19 電極
20 光軸
21 行
22 電子線
23 画素
24 変更装置
25 列
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上に粒子線をラスタ走査することによって対象物の画像を生成するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記装置は粒子線システムである。粒子線システムは、例えば電子線システムまたはイオンビームシステムとして形成されていてよい。特に電子線システムの使用は既に極めて広く知られている。電子線システムは、例えばナノ構造体を作製するために利用される。電子線システムには、既に長い間知られている電子顕微鏡も挙げられ、電子顕微鏡によって対象物の画像を生成することができる。公知の電子顕微鏡には走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡があり、走査型電子顕微鏡は、半導体構造、生物学または鉱物学的な試料およびその他の試料の高解像度画像を生成するために用いられる。
【0003】
電子線システム(電子線装置とも呼ぶ)、例えば走査型電子顕微鏡は、電子線を生成するために電子線生成器として形成された粒子線生成器、対象物に電子線を集束するための対物レンズ、および、対象物で散乱された、または対象物から放出された電子を検出するための少なくとも1つの検出器を有している。粒子線生成器によって生成された電子線は、対物レンズによって、調査すべき対象物に集束される。操作装置によって、電子線は、調査すべき対象物の表面上にラスタ状に案内される。すなわち、電子線は、対象物の表面上にラスタ走査される。電子線の電子はこの場合に対象物と相互作用する。この相互作用の結果として、特に電子が対象物表面から放出されるか(いわゆる二次電子)、または電子線の電子は後方散乱される(いわゆる後方散乱電子)。二次電子および後方散乱電子は検出器により検出される。検出器は、検出された二次電子または後方散乱電子に関連して検出信号を生成し、この検出信号は画像生成に用いられる。
【0004】
電子のための粒子線生成器(以下に粒子線源とも呼ぶ)としては、例えば、熱陰極電界エミッタまたは冷陰極電界エミッタが用いられる。このような電界エミッタの使用は、既に長い間知られている。近年では、種々異なった用途で、小型化された冷陰極電界エミッタが使用されている。ドイツ国特許公開第10302794号明細書は、小型の電子線システムについて記載している。この電子線システムは、同様に小型の冷陰極電界エミッタを備えている。この冷陰極電界エミッタは、電子線蒸着法により形成される。さらに欧州特許第1186079号明細書により、テラヘルツ範囲で作動する小型電子線源が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ国特許公開第10302794号明細書
【特許文献2】欧州特許第1186079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷陰極電界エミッタは高い指向性ビーム値と小さいビームエネルギ幅とを有している。それ故、冷陰極電界エミッタは、極めて小さい電子線直径を得るために特に適しており、これにより、高解像度を達成することができる。しかしながら、冷陰極電界エミッタは、電子放出電流が時間的に変動するという欠点を有している。電子放出電流の時間的な変動は、不都合なことに、対象物結像時に例えば走査型電子顕微鏡において列状ラスタ走査画像に妨げとなる明暗の付いたストリップを知覚可能にしてしまう。
【0007】
本発明の課題は、粒子線によって対象物の画像を生成するための方法および装置において、冷陰極電界エミッタと共に使用可能であり、画質が常に保証される方法および装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法により解決される。本発明による装置は、請求項16に記載の特徴を有する。本発明のさらなる特徴は、従属請求項および以下の説明から明らかである。
【0009】
粒子線によって対象物の画像を生成するための本発明による方法では、対象物上に粒子線をラスタ走査することにより画像を生成する。画質を改善するために、粒子線の対応パラメータが検出される。さらに、パラメータが変化したかどうかが突き止められる。パラメータに変化が生じた場合には、対象物においてパラメータの変化が生じた場所が検出される。次いで粒子線はこの場所に戻される。粒子線による対象物の新たなラスタ走査がこの場所から行われる。
【0010】
本発明は、放出電流がもっぱら飛躍的に変化し、これらの飛躍的な変化の間に一定の放出電流を有しているという、粒子線生成器、特に冷陰極電界エミッタの特性を、有利には画像生成のために利用することができるという認識に基づいている。放出電流は、粒子線生成時に原則的には極めて短時間内に、多くの場合、マイクロ秒よりも短時間内に飛躍的に変化する。飛躍的な変化後に放出電流のさらなる飛躍が生じるまで、放出電流は所定時間にわたり安定状態を保つ。そこで本発明では、放出電流の変化を突き止めて画質を改善するための手段を講じている。粒子線生成器の放出電流が変化したことを突き止めた場合、放出電流の変化が生じた場所がすぐに検出される。粒子線はこの場所に復帰され、この場所から粒子線は対象物上に新たにラスタ走査される。対象物の既にラスタ走査された画素によって取得済の誤った画像情報は消去され、繰り返されたラスタ走査により得られた情報に置き換えられる。結像時間は、新たなラスタ走査により極わずかにしか長くならない。
【0011】
本発明による方法では、好ましくはパラメータは、パラメータの変化が認識された後に目標値に変更される。例えば、エミッタの放出電流の変化が突き止められた場合には、常に十分に良好な結像、特に画像の十分かつ良好な輝度が保証されているように放出電流は目標値に変更される。
【0012】
パラメータの変化が生じた場所の検出は、例えば時間計算により、好ましくは変化が突き止められた時点、粒子線のラスタ走査速度および/または信号の継続時間を考慮して行われる。
【0013】
粒子線の復帰を決定するパラメータの変化量を調節可能とすることが好ましい。すなわち、閾値が調節可能である。これにより、パラメータの極わずかな変動が生じるたびに粒子線が復帰されるのではなく、明白な変化が生じた場合にのみ粒子線が復帰されることが保証されている。
【0014】
本発明による手段の具体的実施形態では、パラメータは所定時間にわたって積算され、その後にパラメータに変化が生じたかどうかが突き止められる。この手順は、強度が極めて小さいパラメータを観察する場合に特に有利である。信号対雑音比が高い十分な信号を得るために、所定時間にわたりパラメータの積算が行われる。
【0015】
本発明による方法の別の実施例では、それぞれ所定パターンの第1点から所定パターンの第2点まで粒子線が対象物上にラスタ走査され、パラメータの変化が突き止められた後、ラスタ走査時に粒子線が所定パターンの第2点に到達した場合にようやく、粒子線はパラメータが変化した場所に復帰される。したがって、この実施例では、対象物上における粒子線の新たなラスタ走査は、所定パターンが2つの点の間でラスタ走査もしくは「スキャン」された後に行われる。好ましくは第1点は所定パターンの始端部であり、第2点は所定パターンの終端部である。
【0016】
所定パターンは、例えば行(画像行)または列(画像列)である。この場合、補正は1つの行または列のスキャン後に行われる。代替的には、互いに連続した複数の行または列がパターンとして使用される。本発明は、もちろん行状または列状のパターンに限定されていない。むしろラスタ走査、すなわち、対象物上の点から点へデータを捕捉するために使用可能なあらゆるパターンを使用することができる。
【0017】
本発明による方法の具体的実施形態では、パラメータとして粒子線の電流(粒子線電流または粒子電流とも呼ぶ)が検出される。例えば、粒子線電流は、冷陰極電界エミッタの電子の放出電流である。
【0018】
本発明による方法の別の実施形態では、対象物上における粒子線のラスタ走査は、評価ユニットにより制御されるラスタ走査手段により行われる。好ましくは、パラメータ、これに対して代替的または付加的にはパラメータが変化した場所も評価ユニットにより検出される。
【0019】
本発明による方法の有利な実施例では、粒子線は電子線として形成されており、電子線は、画像を生成するために対象物上にラスタ走査される。
【0020】
好ましくは、粒子線は冷陰極電界エミッタにより生成される。このために、特に小型化の冷陰極電界エミッタを使用することができる。なぜなら、この種の電界エミッタは、粒子線(電子線)を制御するために巨視的なエミッタよりも小さい電圧変化しか必要としないからである。例えば、電子線は、蒸着された冷陰極電界エミッタにより生成され、この場合、蒸着された冷陰極電界エミッタとは、例えば、電子線蒸着法によって作製される、小型の冷陰極電界エミッタである。
【0021】
本発明による方法の別の実施形態では、粒子線が少なくとも1つのラスタ走査点に案内され、このラスタ走査点で積算測定が行われる。例えば、粒子線は、対象物上にラスタ走査される場合にラスタ走査点まで案内され、このラスタ走査点では、測定が粒子線により複数回行われ、このようにして得られた測定値が平均値を出すために積算される(ピクセル積算)。しかしながら、積算測定は、ラスタ走査行に配置された全てのラスタ走査点に対して行ってもよい(行積算)。これに対して代替的に、積算測定は、それぞれラスタ走査点を有し、ユニットの形にまとめられた複数のラスタ走査行に対して行ってもよい(フレーム積算)。ピクセル積算の場合に、上記ラスタ走査点でパラメータの変化が得られた場合、粒子線はこのラスタ走査点に再び復帰される。行積算の場合に、ラスタ走査行のラスタ走査点でパラメータの変化が得られたことが突き止められた場合、粒子線はラスタ走査行のこのラスタ走査点またはパラメータの変化を有するラスタ走査点の前に配置された別のラスタ走査点(例えば、ラスタ走査行の第1ラスタ走査点、すなわち、ラスタ走査行始端部)に復帰される。同様のことが、フレーム積算の場合にもいえる。この場合、パラメータの変化が得られたラスタ走査点への復帰、またはフレームにおいてこのラスタ走査点の前に配置された別のラスタ走査点(例えばラスタ走査行の始端部)への復帰が行われる。全ての実施例では、復帰後に新たなラスタ走査が開始される。
【0022】
本発明による方法の別の実施形態では、生成された画像の輝度およびコントラストの後調整が行われる。例えば輝度およびコントラストの後調整は自動的に行われる。粒子線のパラメータが変化した場合には輝度の後調整が行われる。変化が生じた場所に粒子線が復帰され、新たにスキャンが行われことにより、輝度飛躍が広範囲に防止される。
【0023】
本発明による方法は、以下にさらに詳しく説明するように、好ましくは粒子線装置、特に電子線装置で使用される。
【0024】
本発明は、粒子線を用いて対象物の画像を生成するための装置にも関する。この装置では粒子線が対象物上にラスタ走査される。本発明の装置は、特に少なくとも1つの上記特徴または特徴の組合わせを有する方法を実施するために形成されている。装置は、粒子線を生成するための少なくとも1つの粒子線生成器と、対象物上に粒子線をラスタ走査するための少なくとも1つのラスタ走査手段と、粒子線に対応するパラメータを検出するための少なくとも1つの手段と、パラメータの変化を判定するための少なくとも1つの手段と、対象物においてパラメータの変化が生じた場所を検出するための少なくとも1つの手段と、この場所に粒子線を戻すための少なくとも1つの手段とを有している。
【0025】
本発明による装置では、粒子線生成器により粒子線が生成され、この粒子線はラスタ走査手段によって対象物上にラスタ走査される。粒子線に対応するパラメータを検出するための手段と、パラメータの変化を判定するための手段とにより、パラメータが変化した場所を検出することが可能である。このことは、例えば、上述の時間計算により行われる。次いで上述のように粒子線はこの場所に復帰され、対象物のラスタ走査が新たに開始される。
【0026】
本発明による装置では、好ましくはパラメータを目標値に変更するための手段が設けられる。この手段は、上述のようにしてパラメータを変更するために用いられる。
【0027】
本発明による装置は、好ましくはパラメータの変化のための閾値を調節するための手段をも有している。このようにして、上述のように、パラメータの全ての微小な変化が粒子線を復帰させる前提条件とはならないようにすることができる。
【0028】
本発明による装置の実施形態では、粒子線を復帰させるための手段はラスタ走査手段の内部に収容されている。好ましくは、粒子線を復帰させるための手段とラスタ走査手段とは同一に形成されている。したがって、これらの手段はユニットを形成している。
【0029】
さらに好ましくは、粒子線に対応するパラメータを検出するための手段は、粒子線電流を検出するための手段として形成されている。例えば、冷陰極電界エミッタの放出電流が測定され、この電流がパラメータとして使用される。
【0030】
粒子線に対応するパラメータを検出するための手段は、粒子線生成器と対象物との間に配置されている。代替的には、粒子線に対応するパラメータを検出するための手段は、粒子線生成器の内部に組み込まれている。例えば、パラメータを検出するための手段は、冷陰極電界エミッタと対象物との間の電子線カラムの内部に配置されており、ここで、パラメータとして冷陰極電界エミッタの放出電流が使用される。
【0031】
本発明による装置の別の実施形態では、パラメータの変化を判定するための手段は、場所を検出するための手段の内部に収容されている。好ましくは、パラメータの変化を判定するための手段と、場所を検出するための手段とは同一に、すなわち、ユニットとして形成されている。
【0032】
本発明による装置の有利な実施形態では、パラメータを検出するための手段および/またはパラメータの変化を判定するための手段および/または対象物における場所を検出するための手段および/または粒子線を復帰させるための手段は、互いに接続されている。好ましくは、パラメータを検出するための手段、パラメータの変化を判定するための手段および/または対象物における場所を検出するための手段は、1つの評価ユニット内に収容されている。
【0033】
さらに好ましくは、パラメータを変更するための手段は粒子線生成器に接続されている。
【0034】
本発明の別の実施形態では、装置には上述のような積算測定を行うための手段が設けられている。さらに好ましくは、装置は生成された画像の輝度および/またはコントラストを後調整するための手段を有している。
【0035】
本発明の別の実施形態では、粒子線生成器は、電子線源として形成されている。したがって、装置は、例えば以下に説明するように、電子線装置である。
【0036】
本発明は、電子線により対象物の画像を生成するための電子線装置、特に走査型電子顕微鏡にも関する。この装置では電子線が対象物上にラスタ走査される。本発明による電子線装置は、電子線を生成するための少なくとも1つの電子線源と、対象物に電子線を集束するための少なくとも1つの対物レンズと、対象物上に電子線をラスタ走査するための少なくとも1つのラスタ走査手段と、電子線に対応するパラメータを検出するための少なくとも1つの手段と、対象物においてパラメータの変化が生じた場所を検出するための少なくとも1つの手段と、この場所に電子線を復帰させるための少なくとも1つのの手段とを有している。
【0037】
さらに、本発明による電子線装置には、パラメータを目標値に変更するための手段が配置される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】粒子線装置の概略図である。
【図2】走査型電子顕微鏡の形態の粒子線装置の概略図である。
【図3a】ラスタ走査画素を備える対象物の概略図である。
【図3b】ラスタ走査画素を備える対象物の概略図である。
【図3c】ラスタ走査画素を備える対象物の概略図である。
【図4a】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図4b】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図4c】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図4d】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図5a】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図5b】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【図5c】ラスタ走査画素を備える対象物の別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0040】
以下に本発明を粒子線装置1を用いてまずは全般的に説明する。図1は、粒子線装置の概略図を示している。粒子線装置1は、粒子線を生成するビーム源(ビーム生成器)2を有している。粒子線は粒子線カラム(図示しない)内に導入され、対物レンズ3によって対象物5に集束される。対象物5に粒子線をラスタ走査するためにラスタ走査手段4が設けられている。対物レンズ3およびラスタ走査手段4の相対配置は模式的な例でしかないことを明示的に指摘しておく。対物レンズ3およびラスタ走査手段4の実際の配置は図示の装置とは全く異なっていてもよい。
【0041】
ラスタ走査手段4によって対象物5上にラスタ走査される粒子線は、対象物5と相互作用し、これにより、相互作用粒子を生成し、この相互作用粒子は検出器(図示しない)によって検出され、画像生成のために使用される。
【0042】
さらに粒子線装置1は、ビーム生成器2と対物レンズ3との間に配置された粒子電流測定器6を有している。これに対して代替的に、粒子電流測定器6はビーム生成器2の内部に組み込まれている。粒子電流測定器6は、導線8によって評価ユニット7に接続されている。さらに評価ユニット7は、導線9によってラスタ走査手段4に接続されている。評価ユニット7によって粒子電流の変化の閾値を調節することも可能である。粒子電流の変化がこの閾値を超過した場合にはじめて、以下に説明するように粒子線の復帰が行われる。
【0043】
粒子電流測定器6によって、ビーム生成器2により生成された粒子線の粒子電流が測定される。このようにして検出された粒子電流もしくは粒子電流値は導線8によって評価ユニット7に伝達される。評価ユニット7は制御プログラムを備えており、これにより、評価ユニット7は、いま測定された粒子電流値がこれまでに測定された粒子電流値に対して変化したか否かを判定することができる。このために、評価ユニット7はマイクロプロセッサ(図示しない)およびメモリ構成部分(図示しない)を備えており、メモリ構成部分には、特に制御プログラムと粒子電流値とが記憶されているか、または持続的に記憶される。粒子電流の変化が生じたこと(閾値値超過)を評価ユニット7が判定するとすぐに、時間計算により、粒子電流が変化した時点で粒子線が対象物5のどの場所に位置していたかが検出される。この場所に粒子線は復帰される。このために、評価ユニット7は導線9によって、粒子線を前記場所に戻す対応制御信号をラスタ走査手段4に送信する。次いで対象物5のラスタ走査はこの場所から繰り返され、さらに実施される。対象物5の既にラスタ走査された画素によって取得済の誤った画像情報は消去され、繰り返し行われたラスタ走査により得られた情報に置き換えられる。
【0044】
図2は、走査型電子顕微鏡1の形の電子線装置として形成された本発明による装置の具体的実施形態を示している。走査型電子顕微鏡1は、冷陰極電界放出器の形のビーム源2、抽出電極10および陽極11を有しており、陽極11は、同時に走査型電子顕微鏡1のビーム案内管12の端部である。ビーム源2から放出した電子は、ビーム源2と陽極11との間の電位差に基づき陽極電位まで加速される。
【0045】
ビーム案内管12は、対物レンズ3として働く磁気レンズの磁極片16によって形成された孔を通って案内される。磁極片16の内部にはコイル17が配置されている。ビーム案内管12には静電式の遅延装置が後置されている。この遅延装置は電極19と管電極18とからなっており、管電極18は、ビーム案内管12の、対象物5に向かい合った端部に形成されている。したがって、管電極18は、ビーム案内管12と共に陽極電位を有し、電極19および対象物5は、陽極電位に比べてより低い電位を有している。このようにビーム源2から放出した電子線の電子は、対象物5の検査のために必要な望ましい低いエネルギに抑制される。さらに、電子線を偏向し、対象物5上をラスタ走査することのできるラスタ走査手段4が設けられている。
【0046】
ビーム源2により生成された電子線と対象物5との相互作用に基づき二次電子または後方散乱電子を検出するために、第1検出器14と第2検出器15とを備える検出装置がビーム案内管12の内部に配置されている。この場合、検出器14は、ビーム案内管12の光軸20に沿って調節装置13によって可動に配置されている。第1検出器14および第2検出器15は、それぞれ環状の検出面を有している。本発明は、2つの検出器を使用することに限定されないことを明示的に指摘しておく。むしろ本発明は、単一の検出器のみを有していてもよいし、2つ以上の検出器を有していてもよい。単一または複数の検出器は可動に配置されていなくてもよい。検出器14および15は評価ユニット26に接続されており、この評価ユニット26により、特に積算測定が行われる。例えば、電子線がラスタ走査点まで案内され、このラスタ走査点で電子線により測定が複数回行われ、このようにして得られた測定値が平均値形成のために積算される(ピクセル積算)。しかしながら、積算測定は、ラスタ走査行に配置された全てのラスタ走査点に関して行うこともできる(行積算)。これに対して代替的に、積算測定は、それぞれ複数のラスタ走査点を有し、ユニットの形にまとめられた複数のラスタ走査行に対して行うこともできる(フレーム積算)。
【0047】
さらに走査型電子顕微鏡1は、電子線の電流を測定するための粒子電流測定器6を有している。この実施例では、粒子電流測定器6は、感応性領域6′を備えている。粒子電流測定器6は導線8により評価ユニット7に接続されており、この評価ユニット7は導線9によりラスタ走査手段4に接続されている。
【0048】
走査型電子顕微鏡1は、図1に示した実施例に関して既に説明したように、本発明による方法にしたがって動作する。これに関しては上述の説明を参照されたい。付加的に、走査型電子顕微鏡1は、ビーム源2に接続された変更手段24を有している。電子線の電流(電子電流)の変化を突き止めた後に、電子電流は目標値に変更される。これにより、新たに生成された画像が輝度飛躍を有しておらず、かつ明るすぎたり暗すぎたりしないことが保証される。変更手段24は、当然ながら図1による実施形態にも形成されていてよい。
【0049】
図3a、図3bおよび図3cは、対象物5の概略図を示している。対象物5にはラスタ走査画素が概略的に示されている。ラスタ走査画素は、図1による実施例の粒子線または図2による実施例の電子線によってスキャンされる。符号21は、対象物5におけるラスタ走査画素の複数の行を示している。粒子線あるいは電子線22は、それぞれ1つの行21の各ラスタ走査画素に順次に当たるように、すなわち各ラスタ走査画素をスキャンするように対象物5上を案内される。図3aは、行21の第1ラスタ走査画素をスキャンする場合の粒子線あるいは電子線22の位置を示しており、図3bは、同じ行の別のラスタ走査画素をスキャンする場合の粒子線あるいは電子線22の位置を示している。
【0050】
粒子電流あるいは電子電流22が変化したことを突き止めた場合、粒子電流あるいは電子電流22の変化が生じた場所が検出される。この場所は、図3bで符号23を付したラスタ走査画素である。この場所の検出後に、粒子線あるいは電子線22はラスタ走査手段によりラスタ走査画素23に復帰される(図3c)。ラスタ走査画素23が位置している行21のラスタ走査は、この場合ラスタ走査画素23から繰り返し継続される。ラスタ走査が最初に中断され、粒子線あるいは電子線22が復帰されたラスタ走査画素まで、ラスタ走査画素23をスキャンすることにより得られたこれまでの情報は全て破棄され、繰り返し行われた、あるいは新たなラスタ走査の情報に置き換えられる。
【0051】
同様のことが図4a、図4b、図4cおよび図4dに示した実施例についてもいえる。図3a〜図3cに示した実施例とは異なり、ここでは行のラスタ走査は、粒子電流あるいは電子電流(図4b)の変化が突き止められた後にもさらに継続され、行21(図4c)の完全なスキャン後にようやく粒子線あるいは電子線22はラスタ走査画素23に復帰される。
【0052】
ラスタ走査画素23への復帰に対して代替的に、両実施例では、粒子線あるいは電子線22は、ラスタ走査画素23にではなく、ラスタ走査画素23が位置する行21の始端部に案内される。このことは同様に図3cまたは4dに示されている。すなわち、この実施例では行21全体がもう一度新たにラスタ走査される。したがって、本発明は、粒子線のパラメータ(ここでは粒子線電流)の変化が生じたラスタ走査画素(ここではラスタ走査画素23)にのみ粒子線が復帰されることに制限されてない。むしろ粒子線は、変化が生じたラスタ走査画素よりも前に配置されている別のラスタ走査画素にも案内することができる。粒子線電流のパラメータの変化が得られたラスタ走査画素においても新たなラスタ走査が行われることのみが重要である。
【0053】
図5a、図5bおよび図5cは、列25でラスタ走査される対象物を示している。しかしながら、基本的には、図3a〜図3cおよび図4a〜図4dに示した実施例の場合と同じことがいえる。
【0054】
図示の実施例では、特に次の方法を用いることもできる。ピクセル積算時にラスタ走査画素23に粒子電流あるいは電子電流に変化が生じた場合には、粒子線あるいは電子線22はラスタ走査画素23まで再び復帰される。行積算が行われ、ラスタ走査画素23で粒子電流あるいは電子電流の変化が得られたことが突き止められた場合には、粒子線もしくは電子線22は、ラスタ走査画素23に戻されるか、またはラスタ走査行21の別のラスタ走査画素、もしくはラスタ走査画素23の前に配置されたラスタ走査列25(例えばラスタ走査行21またはラスタ走査列25の最初のラスタ走査画素、すなわち、ラスタ走査行始端部またはラスタ走査列始端部)に復帰される。同様のことがフレーム積算に関してもいえる。この場合にもラスタ走査画素23自体への復帰、またはラスタ走査画素23の前に配置された、フレームの別のラスタ走査画素(例えばラスタ走査行21またはラスタ走査列25の始端部)への復帰が行われる。全ての実施例において、復帰後に新たなラスタ走査が開始される。
【0055】
上述のように、粒子電流あるいは電子電流の変化が突き止められた後に粒子電流あるいは電子電流が目標値に変更される。これにより、新たに生成された画像が輝度飛躍を有していることも、明るすぎたり暗すぎたりしないことも保証される。このことは、特に画像輝度の自動的な後制御を行う場合に有利である。本発明による復帰および新たなラスタ走査により、輝度飛躍なしに良好な画質が常に保証される。
【符号の説明】
【0056】
1 電子線装置
2 ビーム源
3 対物レンズ
4 ラスタ走査手段
5 対象物
6,6′ 粒子電流測定装置
7,26 評価ユニット
8,9 導線
10 抽出電極
11 陽極
12 ビーム案内管
13 調節装置
14,15 検出器
16 対物レンズとして作用するレンズの磁極片
17 磁気レンズのコイル
18 管電極
19 電極
20 光軸
21 行
22 電子線
23 画素
24 変更装置
25 列
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物上(5)に粒子線(22)をラスタ走査することによって前記対象物(5)の画像を生成するための方法において、
前記粒子線(22)に対応するパラメータを検出するステップと、
前記パラメータに変化が生じたかどうかを判定するステップと、
前記対象物(5)においてパラメータの変化が生じた場所(23)を検出するステップと、
前記場所(23)に前記粒子線(22)を復帰させるステップと、
前記場所から前記対象物(5)上に前記粒子線(22)を新たにラスタ走査するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記パラメータを目標値に変更する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
所定時間にわたり前記パラメータを積算し、次いで、パラメータに変化が生じたかどうかを判定する方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載方法において、
それぞれ所定パターン(21)の第1点から前記所定パターン(21)の第2点まで、対象物(5)上に前記粒子線(22)をラスタ走査し、パラメータの変化が突き止められた後に、前記粒子線(22)がラスタ走査時に前記所定パターン(21)の第2点に到達した場合に前記粒子線(22)の復帰を行う方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
所定パターンとして、行(21)または列(25)を使用する方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、
パラメータとして粒子線(22)の電流を検出する方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法において、
ラスタ走査手段(4)によって前記対象物(5)上に前記粒子線(22)をラスタ走査し、前記ラスタ走査手段(4)を評価ユニット(7)により制御する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記評価ユニット(7)によりパラメータおよび/または場所を検出する方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、
粒子線を電子線(22)として形成し、前記対象物(22)上に前記電子線(22)をラスタ走査する方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法において、
冷陰極電界エミッタ(2)、好ましくは小型の冷陰極電界エミッタ(2)によって粒子線を生成する方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法において、
蒸着された電界エミッタによって前記粒子線(22)を生成する方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法において、
パラメータの変化の閾値を調節可能にする方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法において、
積算測定が行われる少なくとも1つのラスタ走査点(23)に前記粒子線(22)を案内し、前記ラスタ走査点(23)が、パラメータに変化が生じた場所である場合に、前記ラスタ走査点(23)に前記粒子線(22)を復帰させる方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において、
パラメータの変化が得られた場合に画像輝度および/または画像コントラストの後調整を行う方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法の使用法において、
粒子線装置(1)、特に電子線装置に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法を用いる使用法。
【請求項16】
粒子線(22)によって対象物(5)の画像を生成するための装置(1)であって、特に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法を実施するために対象物(5)上に粒子線(22)がラスタ走査される装置において、
前記粒子線(22)を生成するための少なくとも1つの粒子線生成器(2)と、
前記対象物(5)上に粒子線をラスタ走査するための少なくとも1つのラスタ走査手段(4)と、
前記粒子線(22)に対応するパラメータを検出するための少なくとも1つの手段(6)と、
パラメータの変化を判定するための少なくとも1つの手段(7)と、
前記対象物(5)においてパラメータの変化が生じた場所(23)を検出するための少なくとも1つの手段と、
前記場所(23)に前記粒子線(22)を復帰させるための少なくとも1つの手段(4)とを備える装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置(1)において、
前記パラメータを目標値に変更するための手段(24)を備える装置。
【請求項18】
請求項16または17に記載の装置(1)において、
前記粒子線(22)を復帰させるための手段が、前記ラスタ走査手段(4)の内部に組み込まれている装置。
【請求項19】
請求項16から18までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記粒子線(22)を復帰させるための手段と前記ラスタ走査手段(4)とが同一である装置。
【請求項20】
請求項16から19までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記粒子線(22)に対応するパラメータを検出するための手段(6)が、前記粒子線電流を検出する手段として形成されている装置。
【請求項21】
請求項16から20までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記粒子線(22)に対応するパラメータを検出するための前記手段(7)が、前記粒子線生成器(2)と前記対象物(5)との間に配置されているか、または前記粒子線生成器(2)の内部に組み込まれている装置。
【請求項22】
請求項16から21までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータの変化を判定するための手段が、前記場所(23)を検出するための手段(7)の内部に収容されている装置。
【請求項23】
請求項16から22までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータの変化を判定するための前記手段と、前記場所(23)を検出するための前記手段(7)とが同一である装置。
【請求項24】
請求項16から23までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータを検出するための前記手段(6)および/またはパラメータの変化を判定するための前記手段(7)および/または前記対象物(5)において前記場所(23)を検出するための手段(7)および/または前記粒子線(22)を復帰させるための前記手段(4)が、互いに接続されている装置。
【請求項25】
請求項16から24までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータを変更するための手段(24)が、粒子線生成器(2)に接続されている装置。
【請求項26】
請求項16から25までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータを検出するための前記手段(7)および/またはパラメータの変化を判定するための前記手段(7)および/または前記対象物(5)において前記場所(23)を検出するための前記手段(7)が、1つの評価ユニット(7)内に収容されている装置。
【請求項27】
請求項16から26までのいずれか1項に記載の装置(1)において、前記粒子線生成器(2)が、電子線源として形成されている装置。
【請求項28】
請求項16から27までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記粒子線生成器(2)が、冷陰極電界エミッタ、好ましくは小型の冷陰極電界エミッタとして形成されている装置。
【請求項29】
請求項16から28までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)が、電子線装置として形成されている装置。
【請求項30】
請求項16から29までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)が、パラメータの変化に関して閾値を調節するための手段(7)を有している装置。
【請求項31】
請求項16から30までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)が、積算測定のための手段(26)を有している装置。
【請求項32】
請求項16から31までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)が、画像輝度および/または画像コントラストを後調整するための手段(24)を有している装置。
【請求項33】
電子線(22)によって対象物(5)の画像を生成するための電子線装置(1)、特に走査型電子顕微鏡であって、特に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法を実施するために、対象物(5)上に電子線(22)がラスタ走査される電子線装置において、
前記電子線(22)を生成するための少なくとも1つの電子線源(2)と、
前記対象物(5)上に前記電子線(22)を集束するための少なくとも1つの対物レンズ(5)と、
前記対象物(5)上に前記電子線(22)をラスタ走査するための少なくとも1つのラスタ走査手段(4)と、
前記電子線に対応するパラメータを検出するための少なくとも1つの手段(6)と、
パラメータの変化を判定するための少なくとも1つの手段(7)と、
対象物(5)においてパラメータの変化が生じた場所(23)を検出するための少なくとも1つの手段(7)と、
前記場所(23)に前記電子線(22)を戻すための少なくとも1つの手段(4)とを備える電子線装置。
【請求項34】
請求項33に記載の電子線装置(1)において、
パラメータを目標値に変更するための手段(24)が設けられている電子線装置。
【請求項1】
対象物上(5)に粒子線(22)をラスタ走査することによって前記対象物(5)の画像を生成するための方法において、
前記粒子線(22)に対応するパラメータを検出するステップと、
前記パラメータに変化が生じたかどうかを判定するステップと、
前記対象物(5)においてパラメータの変化が生じた場所(23)を検出するステップと、
前記場所(23)に前記粒子線(22)を復帰させるステップと、
前記場所から前記対象物(5)上に前記粒子線(22)を新たにラスタ走査するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記パラメータを目標値に変更する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
所定時間にわたり前記パラメータを積算し、次いで、パラメータに変化が生じたかどうかを判定する方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載方法において、
それぞれ所定パターン(21)の第1点から前記所定パターン(21)の第2点まで、対象物(5)上に前記粒子線(22)をラスタ走査し、パラメータの変化が突き止められた後に、前記粒子線(22)がラスタ走査時に前記所定パターン(21)の第2点に到達した場合に前記粒子線(22)の復帰を行う方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
所定パターンとして、行(21)または列(25)を使用する方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、
パラメータとして粒子線(22)の電流を検出する方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法において、
ラスタ走査手段(4)によって前記対象物(5)上に前記粒子線(22)をラスタ走査し、前記ラスタ走査手段(4)を評価ユニット(7)により制御する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記評価ユニット(7)によりパラメータおよび/または場所を検出する方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、
粒子線を電子線(22)として形成し、前記対象物(22)上に前記電子線(22)をラスタ走査する方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法において、
冷陰極電界エミッタ(2)、好ましくは小型の冷陰極電界エミッタ(2)によって粒子線を生成する方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法において、
蒸着された電界エミッタによって前記粒子線(22)を生成する方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法において、
パラメータの変化の閾値を調節可能にする方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法において、
積算測定が行われる少なくとも1つのラスタ走査点(23)に前記粒子線(22)を案内し、前記ラスタ走査点(23)が、パラメータに変化が生じた場所である場合に、前記ラスタ走査点(23)に前記粒子線(22)を復帰させる方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において、
パラメータの変化が得られた場合に画像輝度および/または画像コントラストの後調整を行う方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法の使用法において、
粒子線装置(1)、特に電子線装置に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法を用いる使用法。
【請求項16】
粒子線(22)によって対象物(5)の画像を生成するための装置(1)であって、特に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法を実施するために対象物(5)上に粒子線(22)がラスタ走査される装置において、
前記粒子線(22)を生成するための少なくとも1つの粒子線生成器(2)と、
前記対象物(5)上に粒子線をラスタ走査するための少なくとも1つのラスタ走査手段(4)と、
前記粒子線(22)に対応するパラメータを検出するための少なくとも1つの手段(6)と、
パラメータの変化を判定するための少なくとも1つの手段(7)と、
前記対象物(5)においてパラメータの変化が生じた場所(23)を検出するための少なくとも1つの手段と、
前記場所(23)に前記粒子線(22)を復帰させるための少なくとも1つの手段(4)とを備える装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置(1)において、
前記パラメータを目標値に変更するための手段(24)を備える装置。
【請求項18】
請求項16または17に記載の装置(1)において、
前記粒子線(22)を復帰させるための手段が、前記ラスタ走査手段(4)の内部に組み込まれている装置。
【請求項19】
請求項16から18までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記粒子線(22)を復帰させるための手段と前記ラスタ走査手段(4)とが同一である装置。
【請求項20】
請求項16から19までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記粒子線(22)に対応するパラメータを検出するための手段(6)が、前記粒子線電流を検出する手段として形成されている装置。
【請求項21】
請求項16から20までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記粒子線(22)に対応するパラメータを検出するための前記手段(7)が、前記粒子線生成器(2)と前記対象物(5)との間に配置されているか、または前記粒子線生成器(2)の内部に組み込まれている装置。
【請求項22】
請求項16から21までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータの変化を判定するための手段が、前記場所(23)を検出するための手段(7)の内部に収容されている装置。
【請求項23】
請求項16から22までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータの変化を判定するための前記手段と、前記場所(23)を検出するための前記手段(7)とが同一である装置。
【請求項24】
請求項16から23までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータを検出するための前記手段(6)および/またはパラメータの変化を判定するための前記手段(7)および/または前記対象物(5)において前記場所(23)を検出するための手段(7)および/または前記粒子線(22)を復帰させるための前記手段(4)が、互いに接続されている装置。
【請求項25】
請求項16から24までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータを変更するための手段(24)が、粒子線生成器(2)に接続されている装置。
【請求項26】
請求項16から25までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
パラメータを検出するための前記手段(7)および/またはパラメータの変化を判定するための前記手段(7)および/または前記対象物(5)において前記場所(23)を検出するための前記手段(7)が、1つの評価ユニット(7)内に収容されている装置。
【請求項27】
請求項16から26までのいずれか1項に記載の装置(1)において、前記粒子線生成器(2)が、電子線源として形成されている装置。
【請求項28】
請求項16から27までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記粒子線生成器(2)が、冷陰極電界エミッタ、好ましくは小型の冷陰極電界エミッタとして形成されている装置。
【請求項29】
請求項16から28までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)が、電子線装置として形成されている装置。
【請求項30】
請求項16から29までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)が、パラメータの変化に関して閾値を調節するための手段(7)を有している装置。
【請求項31】
請求項16から30までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)が、積算測定のための手段(26)を有している装置。
【請求項32】
請求項16から31までのいずれか1項に記載の装置(1)において、
前記装置(1)が、画像輝度および/または画像コントラストを後調整するための手段(24)を有している装置。
【請求項33】
電子線(22)によって対象物(5)の画像を生成するための電子線装置(1)、特に走査型電子顕微鏡であって、特に請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法を実施するために、対象物(5)上に電子線(22)がラスタ走査される電子線装置において、
前記電子線(22)を生成するための少なくとも1つの電子線源(2)と、
前記対象物(5)上に前記電子線(22)を集束するための少なくとも1つの対物レンズ(5)と、
前記対象物(5)上に前記電子線(22)をラスタ走査するための少なくとも1つのラスタ走査手段(4)と、
前記電子線に対応するパラメータを検出するための少なくとも1つの手段(6)と、
パラメータの変化を判定するための少なくとも1つの手段(7)と、
対象物(5)においてパラメータの変化が生じた場所(23)を検出するための少なくとも1つの手段(7)と、
前記場所(23)に前記電子線(22)を戻すための少なくとも1つの手段(4)とを備える電子線装置。
【請求項34】
請求項33に記載の電子線装置(1)において、
パラメータを目標値に変更するための手段(24)が設けられている電子線装置。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【公表番号】特表2009−543273(P2009−543273A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516953(P2009−516953)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005498
【国際公開番号】WO2008/003405
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005498
【国際公開番号】WO2008/003405
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】
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