説明

画像ガイド下手技のための方法及び超音波撮像システム

【課題】画像ガイド下手技において情報を伝達する。
【解決手段】超音波撮像システム(100)のプロセッサ(116)は、探触子(105)が解剖学表面に沿って移動する間に3D位置センサ(120)から第1の位置データを収集し、第1の位置データに基づいて3Dグラフィックモデルを作成すると共に探触子(105)によって超音波データを取得する。プロセッサ(116)は、探触子(105)が超音波データを取得している間に3D位置センサ(120)から第2の位置データを収集し、超音波データに基づいて画像を作成すると共に、画像内の構造の箇所を3Dグラフィックモデルに対して位置合わせする。プロセッサ(116)は、表示デバイス(118)上に3Dグラフィックモデルの描出を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的には、画像ガイド下手技で使用するための3Dグラフィックモデルの描出を作成するための方法及び超音波撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野において、診断用撮像システムの操作者は外科処置の予定箇所に関する画像を取得するのが典型的である。次いでこの画像は、最も適当な臨床手技や方式を立案するために外科医によって用いられることになる。内分泌系を例にすると、内分泌専門医は通常、がん性である可能性が高い1つまたは複数のリンパ節を特定する目的で超音波撮像システムによって患者の頚部の画像を取得することがある。次に内分泌専門医は、この1つまたは複数のがん性リンパ節の厳密な箇所に関する情報を外科医に伝達することが必要である。最低でも内分泌専門医は、外科医のために挿入箇所を特定することが必要である。内分泌専門医は好ましくはさらに、様々なリンパ節の患者皮膚からの深度、回避を要する解剖学構造、リンパ節への最適なアクセス方法、その他に関する情報も外科医に伝達することになる。しかし、患者には外科的手技に関わるリンパ節が複数存在し得るため、関連する情報のすべてを内分泌専門医から外科医に正確に伝達することは困難かつ誤りを起こしやすい過程となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7647087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがってこれらの理由や別の理由から、画像ガイド下手技において情報を伝達するための改良型の方法及びシステムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、以下の記載を読みかつ理解することによって了解されるようにして上述の短所、欠点及び問題点に対処している。
【0006】
一実施形態による画像ガイド下手技で用いるための方法は、3D位置センサによって解剖学表面の第1の位置データを収集するステップと、第1の位置データに基づいて解剖学表面の3Dグラフィックモデルを作成するステップと、を含む。本方法は、探触子を用いて超音波データを取得するステップを含む。本方法は、3D位置センサを用いて探触子の第2の位置データを収集するステップを含む。本方法は、超音波データに基づいて画像を作成し該画像内で構造を特定するステップを含む。本方法は、第1の位置データ及び第2の位置データに基づいて3Dグラフィックモデルに対して構造の箇所を位置合わせするステップを含む。本方法はさらに、構造の箇所に関するグラフィック指示を含んだ3Dグラフィックモデルの描出を表示するステップを含む。
【0007】
別の実施形態による画像ガイド下手技で用いるための方法は、探触子に取り付けられた3D位置センサを患者の解剖学表面の上で移動させることによって第1の位置データを収集するステップを含む。本方法は、第1の位置データをモデルに当てはめて3Dグラフィックモデルを作成するステップを含む。本方法は、関心対象位置の上に探触子を配置させかつ取り付けた3D位置センサによって第2の位置データを収集することによって関心対象位置を特定するステップを含む。本方法は、第1の位置データ及び第2の位置データに基づいて3Dグラフィックモデル上に仮想的マークを作成するステップを含む。本方法は、3Dグラフィックモデル及び仮想的マークの描出を表示するステップであって、3Dグラフィックモデルの描出上の仮想的マークの箇所が解剖学表面を基準とした関心対象位置の箇所に対応するようにした表示ステップを含む。
【0008】
別の実施形態による超音波撮像システムは、トランスジューサ素子アレイを含んだ探触子と、探触子に取り付けられた3D位置センサと、表示デバイスと、該探触子、3D位置センサ及び表示デバイスと電子的に連絡したプロセッサと、を含む。このプロセッサは、探触子を解剖学表面に沿って移動させる間に3D位置センサから第1の位置データを収集するように構成されている。このプロセッサは、第1の位置データに基づいて3Dグラフィックモデルを作成するように構成されている。このプロセッサは、探触子によって超音波データを取得するように構成されている。このプロセッサは、探触子が超音波データを取得している間に、3D位置センサから第2の位置データを収集するように構成されている。このプロセッサは、超音波データに基づいて画像を作成するように構成されている。このプロセッサは、第1の位置データ及び第2の位置データに基づいて画像内の構造の箇所を3Dグラフィックモデルと位置合わせするように構成されている。このプロセッサは、表示デバイス上に3Dグラフィックモデルの描出を表示すると共に、3Dグラフィックモデルの描出と一緒にグラフィック指示を表示するように構成されており、該グラフィック指示は解剖学表面を基準とした構造の相対的な位置決めを示している。
【0009】
本発明の様々な別の特徴、目的及び利点は、添付の図面及びその詳細な説明から当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態による超音波撮像システムの概要図である。
【図2】一実施形態による探触子の概要図である。
【図3】一実施形態による方法を表した流れ図である。
【図4】一実施形態による3Dグラフィックモデルの描出の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では、実施し得る特定の実施形態を一例として示している説明の一部を形成する添付の図面を参照している。これらの実施形態は当業者による該実施形態の実施を可能とさせるように十分詳細に記述していると共に、別の実施形態も利用し得ること並びに該実施形態の趣旨を逸脱することなく論理的、機械的、電気的及びその他の変更を実施し得ることを理解されたい。以下の詳細な説明はしたがって、本発明の範囲の限定と見なすべきではない。
【0012】
図1は、一実施形態による超音波撮像システム100の概要図である。超音波撮像システム100は、送信ビーム形成器103に信号を送る送信器102を含んでおり、この送信ビーム形成器103は一方パルス状の超音波信号を患者(図示せず)などの構造内に送出するようにトランスジューサ素子104を駆動している。探触子105は、トランスジューサ素子104及び探触子/SAP電子回路107を含む。探触子/SAP電子回路107は、トランスジューサ素子104の切替えを制御するために用いられることがある。探触子/SAP電子回路107はさらに、素子104を1つまたは複数のサブアパーチャにグループ分けするために用いられることもある。トランスジューサ素子104は、多種多様な幾何学構成で配列させることがある。トランスジューサ素子104が放出するパルス状超音波信号は身体内の構造で後方散乱され、トランスジューサ素子104に戻されるエコーを発生させる。このエコーはトランスジューサ素子104によって電気信号に変換されると共に、この電気信号は受信器108により受け取られる。受け取ったエコーを表す電気信号は、超音波データを出力する受信ビーム形成器110に通される。本開示の目的において「超音波データ」という用語は、超音波システムにより取得及び/または処理を受けたデータを含むことがある。患者データの入力の制御、走査パラメータや表示パラメータの変更その他を含む超音波撮像システム100の動作を制御するためには、ユーザインタフェース112を使用することがある。
【0013】
超音波撮像システム100はさらに、超音波データを処理すると共に表示デバイス118上に表示するためのフレームまたは画像を作成するプロセッサ116を含む。プロセッサ116は、超音波データに対して選択可能な複数の超音波モダリティに従って1つまたは複数の処理操作を実行するように適応させることがある。別の実施形態は、様々な処理作業を実行するために複数のプロセッサを用いることがある。プロセッサ116はさらに、探触子105による超音波データの収集を制御するように適応させることがある。この超音波データはエコー信号を受信しながら走査セッション中にリアルタイムで処理されることがある。本開示の目的において「リアルタイム」という用語は意図的なラグや遅延を伴わずに実行される処理を含むものと規定する。一実施形態は、表示させた超音波画像を毎秒20回を超えるレートで更新することがある。画像は、ライブ画像の一部として表示させることがある。本開示の目的において「ライブ画像」という用語は、超音波データの追加フレームが取得されるに従って更新されるダイナミック画像を含むものと規定される。例えば、以前に取得したデータに基づいて画像を作成しているときやライブ画像が表示されている間であっても、超音波データを取得することがある。次いで一実施形態では、追加的な超音波データが取得されると、より直近に取得した超音波データから作成した追加的なフレームまたは画像が続いて表示される。追加としてまたは代替としてこの超音波データは、走査セッションの間はバッファ(図示せず)内に一時的に保存されており、ライブ動作またはオフライン動作でリアルタイム性がより低い処理を受けることがある。本発明の幾つかの実施形態は、処理タスクを取り扱うために複数のプロセッサ(図示せず)を含むことがある。例えば第1のプロセッサが超音波信号の復調及びデシメーション(decimate)のために利用されることがある一方、第2のプロセッサはそのデータを画像の表示前にさらに処理するために使用されることがある。別の実施形態では異なる配列のプロセッサを用い得ることを理解されたい。
【0014】
さらに図1を参照すると、超音波撮像システム100は、例えば20Hz〜150Hzなどのフレームレートでデータを連続して収集することがある。しかし別の実施形態は、異なるレートで超音波データを収集することがある。即座に表示させる予定がない収集超音波データの処理済みフレームを保存するためにメモリ(図示せず)を含めることがある。例示的な一実施形態ではそのメモリは、少なくとも数秒間分の超音波データフレームを保存するのに十分な容量をもつ。この超音波データフレームは、その収集順序や収集時刻に従ったその取り出しを容易にするような方式で保存される。本明細書の上で記載したように、超音波データはライブ画像を作成及び表示する間に取り出されることがある。このメモリは、周知の任意のデータ記憶媒体を含むことがある。
【0015】
任意選択では、本発明の実施形態をコントラスト剤を利用して実現させることがある。コントラスト撮像によれば、マイクロバブルを含む超音波コントラスト剤を用いた場合に身体内の解剖学構造や血流に関する強調画像が作成される。コントラスト剤を用いながら超音波データを取得した後の画像解析には、高調波成分と線形成分の分離、高調波成分の強調、並びに高調波成分の強調を利用した超音波画像の作成が含まれる。受信信号からの高調波成分の分離は適当なフィルタを用いて実行される。超音波撮像に関するコントラスト剤の利用については当業者によく知られており、したがってこれ以上詳細に記載しないことにする。
【0016】
超音波撮像システム100はさらに、探触子105に取り付けられた3D位置センサ120を含む。3D位置センサ120は、図2に示したような探触子105に対して一体型とすることがあり、あるいは容易に取外し可能な方式(図示せず)で3D位置センサを探触子10の外部に取り付けることがある。3D位置センサ120は、静止の基準デバイス122と通信する。3D位置センサ120と静止基準デバイス122は一緒になって、探触子105に関する位置データを決定する。別の実施形態では、静止基準デバイスを用いずに3D位置センサにより位置データの取得を可能にさせることがある。この位置データは、位置データと向きデータの両方を含むことがある。一実施形態では、超音波技師が探触子105を取り扱って超音波データを取得する間に位置データに関する多くの異なるサンプルが取得されることがある。この位置データには、超音波データを取得し終えた後の様々な時点において探触子の位置及び向きを容易に決定することが可能となるように、タイムスタンプを付与することがある。3D位置センサ120と静止基準デバイス122はさらに、解剖学表面の位置データの収集に使用可能とさせることもある(これについては、本明細書の以下で詳細に検討することにする)。
【0017】
例示的な一実施形態では、静止基準デバイス122を電磁式送信器とすることがある一方、3D位置センサ120を電磁式受信器とすることがある。例えばその電磁式送信器は、電磁場を放出するために付勢させ得る1つまたは複数のコイルを含むことがある。3D位置センサ120も同様に、xコイル、yコイル及びzコイルなどの直交する3つのコイルを含むことがある。3D位置センサ120(またしたがって、探触子105)の位置及び向きは、直交する3つのコイルの各々内に誘導される電流を検出することによって決定されることがある。別の実施形態では送信器及び受信器の位置は、送信器が探触子105に接続されるように切替えられることがある。電磁式センサは当業者によく知られており、したがってさらに詳細に記載しないことにする。
【0018】
追加的な実施形態は、3D位置センサの位置データを決定するために別のトラッキングシステム及び技法を用いることがある。例えば、RF信号の放出に無線周波数信号発生器が利用されるような無線周波数トラッキングシステムを用いることがある。次いで受け取ったRF信号の強度に基づいて位置データが決定される。別の実施形態では、光学式トラッキングシステムが用いられることがある。例えばこれには、発光ダイオード(LED)や反射体などの複数の光学式トラッキングデバイスを探触子105上で固定の向きに配置させることを含むことがある。次いで、LEDや反射体の位置及び向きを三角測量しこれにより探触子105の位置及び向きを確定させるために複数のカメラまたは検出器を用いることがある。さらに、追加的なトラッキングシステムを想定することもできる。
【0019】
本発明の様々な実施形態では、別のまたは様々なモード関連のモジュールによって超音波情報を処理することがある。そのモードに関する限定の一覧には、Bモード、カラードプラ、パワードプラ、Mモード、スペクトルドプラ解剖学Mモード、歪み及び歪み率が含まれる。例えば1つまたは複数のモジュールは、Bモード、カラードプラ、パワードプラ、Mモード、解剖学Mモード、歪み、歪み率、スペクトルドプラ画像、及びこれらを組み合わせたものその他を作成することがある。この画像は保存されると共に、各画像と一緒にメモリ内にその画像を収集した時点を示すタイミング情報を記録することがある。このモジュールは例えば、画像フレームを極座標からデカルト座標に変換するための走査変換演算を実行するための走査変換モジュールを含むことがある。患者に対して手技を実施しながらメモリから画像を読み取りその画像をリアルタイムで表示するようなビデオプロセッサモジュールを設けることがある。ビデオプロセッサモジュールはこの画像を、そこから画像を読み出し表示させる画像メモリ内に保存することがある。図示した超音波撮像システム100は様々な実施形態に従って、コンソール型システム、カート型システム、あるいはハンドへルド式やラップトップ式システムなどの可搬式システムの形で構成させることがある。図1において構成要素同士を繋いでいる線はケーブルまたはワイヤを通じるなどの物理的な接続を意味することがあり、あるいはさらに別のタイプの電子式通信(例えば、ワイヤレス通信を含む)を意味することがある。さらに探触子105は、別の実施形態に従ってインターネットやイントラネットを介してプロセッサ116に接続されることがある。
【0020】
図2は、一実施形態による超音波撮像システム100からの探触子105の概要図である。探触子105は湾曲した線形探触子であるが、別の実施形態に従った別のタイプの探触子が用いられることもある。図1と図2の間において同一の構造を示すためには同じ参照番号を用いている。図2はさらに、ボタン124と、トランスジューサアレイの中央素子126と、を含む。このボタン124及び中央素子126の機能については、本明細書の以下で検討することにする。
【0021】
図3は、一実施形態による方法300を表した流れ図である。個々のブロックは方法300に従って実行し得る各ステップを表している。方法300の技術的効果は、表示デバイス118(図1参照)などの表示デバイス上に3Dグラフィックモデルの描出を表示させることである。超音波撮像システム100(図1参照)によってこれらのステップが実行されるような一実施形態に従って方法300の各ステップについて説明することにする。方法300を、外科切除する1つまたは複数のリンパ節の位置を特定するために患者の頚部が撮像されるような例示的な一実施形態に従って説明することにする。方法300は、別の実施形態に従った別の構造の特定のためかつ/または別の手技のために用い得ることを理解されたい。
【0022】
図1、2及び3を参照するとステップ302において、3D位置センサ120を用いて超音波技師が第1の位置データを収集する。超音波技師は例えば、探触子105を患者の頚部表面に沿って動かすことがある。探触子105を患者の頚部に沿って動かす間に、3D位置センサ120は患者の頚部表面の少なくとも一部分を規定する第1の位置データを収集する。3D位置センサ120は、この第1の位置データをプロセッサ116に送る。次にステップ304においてプロセッサ116は、この位置データに基づいて3Dグラフィックモデルを作成する。方法300は、収集した第1の位置データの量及び質に応じてステップ304において異なる実行をすることがある。例えば第1の位置データが頚部表面の十分に広い面積にわたって収集された多数のサンプルまたはトラッキング点を含む場合、表面を規定して3Dグラフィックモデルを作成するために第1の位置データの補間が可能となり得る。他方で第1の位置データが含むサンプル数が少ない場合は、3Dグラフィックモデルの作成のためにその構造(この場合では、頚部)に関するアプリオリの情報を用いると有利となり得る。例えば、頚部はその形状が概して円筒形であると仮定される。さらに標準的な探触子を用いているときは、超音波技師が外部表面から走査を行っていると仮定することがある。より多くのトラッキング点が収集されると、より正確性が得られるようにかつアプリオリの知見への依存がより少なくなるようにその表面を更新することがある。本システムはさらに、到来する超音波情報が実際の組織走査を表しているか、あるいは探触子が空間を走査しているか否かを検出することもある。探触子が空間を走査している場合には、これらの3Dトラッキング点が解剖学表面を表しておらず、また3Dグラフィックモデルの作成に使用されることはない。好ましい一実施形態では、3Dグラフィックモデルの描出が超音波システムの表示デバイス上でリアルタイムで更新され、かつライブ超音波画像と並列に表示されることになる。3Dグラフィックモデルの描出は、ライブ超音波画像と隣同士に表示させることや、ライブ超音波画像と上/下にして表示させることがある。別の実施形態ではその3Dグラフィックモデルをライブ画像の上への重ね合わせで表示させることがある。
【0023】
別の実施形態ではそのプロセッサ116は、目的の構造の変形可能モデルにアクセスすることがある。この変形可能モデルは、表面の形状に関する複数の仮定を含むことがある。プロセッサ116は次いで、3Dグラフィックモデルの作成のために第1の位置データを変形可能モデルに当てはめることがある。上述の技法のうちのいずれか1つはさらに、3Dグラフィックモデルの作成を支援するための1つまたは複数の解剖学的標識の特定を含むことがある。
【0024】
図1、2及び3を参照すると、ステップ306において超音波技師は、探触子105内のトランスジューサ素子104を用いて超音波データを取得する。例示的な一実施形態では超音波技師は2次元Bモード超音波データを取得することがあるが、別の実施形態では3次元データ、1次元データ、カラーデータ、ドプラデータ及びMモードデータを含む別のタイプの超音波データを取得することがあることを理解されたい。
【0025】
ステップ307においてプロセッサは、3D位置センサ120から第2の位置データを収集する。第2の位置データは超音波データを取得している間に収集されることがあり、あるいは別の実施形態では、ステップ306での超音波データの収集前か収集後のいずれかにおいて第2の位置データを収集することもある。
【0026】
ステップ308においてプロセッサ116は、ステップ306で取得した超音波データに基づいて画像を作成する。この画像は任意選択で表示デバイス118上に表示させることがある。ステップ310では、この画像内である構造が特定される。例示的な一実施形態ではその構造をリンパ節とすることがある。ステップ308で作成した画像は表示させることがあり、またユーザはユーザインタフェース112の一部であるマウスやトラックボールを用いてその構造を含む関心対象領域を選択することなどによって、手作業の処理でこの構造の位置を特定することがある。別の実施形態ではプロセッサ116は、所望の構造の形状を検出するための画像処理アルゴリズムを用いてその構造を自動式に特定することがある。上で言及したようにプロセッサ116がリンパ節などの構造を自動式に特定するために用いられる場合は、必ずしも画像の表示を必要としないこともあり得る。しかし一実施形態ではそのユーザは、画像処理アルゴリズムが適当な構造を選択したことを確認する一方法として自動特定した構造をもった画像の観察を希望することがある。
【0027】
ステップ312においてプロセッサ116は、3Dグラフィックモデルに対して構造の箇所を位置合わせする。第2の位置データを用いることによってプロセッサ116は、超音波データを取得した時点の探触子105の位置及び向きを計算することが可能である。プロセッサ116はさらに、特定した構造の超音波データから作成した画像の内部における位置を計算することが可能である。したがって、第1の位置データ及び第2の位置データを利用することによってプロセッサ116は、画像内で特定された構造が3Dグラフィックモデルを基準として配置される箇所を正確に決定することが可能である。
【0028】
さらに図1、2及び3を参照するとステップ314においてユーザは、解剖学表面上で関心対象の位置を特定することがある。例示的な一実施形態では内分泌専門医は、外科医により後で除去させようとする1つまたは複数のリンパ節の位置特定を試みることがある。内分泌専門医は、解剖学表面上の疑わしいリンパ節の箇所に対応する1つまたは複数の点を物理的にマークすることがある。このマークは例えば、外科医がリンパ節へのアクセスのために利用可能な患者皮膚上の挿入箇所を示すことがある。作業フローの1つではその内分泌専門医は、探触子105を用いて患者を走査する間にこのマークを配置させることがある。次いで一実施形態では、内分泌専門医は、探触子105をマークの上に配置させると共に、図2に示したボタン124などのボタンまたはスイッチを起動させることがある。ユーザがボタン124を起動させるたびごとにプロセッサ116は、3D位置センサ120による検出に従って静止基準デバイス122を基準とした探触子105の位置を保存する。別の実施形態では、超音波撮像システム100は位置データを連続して記録することがあり、またボタンの押下により単に中央素子126が特定の箇所にきた時点を特定することがある。別の実施形態では3D位置センサ107は、探触子105を基準とした異なる点に関するデータを取り込むように構成されることがある。例えば探触子105は、3D位置センサ107による位置データの取り込み前に超音波技師が所望の解剖学的標識の各々の上に配置し得る小さなインジケータ(図示せず)または透明なウィンドウ(図示せず)を有することがある。この透明なウィンドウは例えば、超音波技師による所望の解剖学的標識上への探触子105の正確な配置をより容易にすることができる。ユーザは、別の実施形態に従って探触子上で別に位置決めされたボタンまたはスイッチ、ユーザインタフェース112上に配置させたボタンまたはスイッチ、表示デバイス118上に表示されてユーザインタフェース112を通じてアクセスを受けるソフトキーを含む別のユーザインタフェースデバイスを用いて、探触子の箇所またしたがってマークの位置の保存を開始することがある。
【0029】
ステップ316においてプロセッサ116は、3Dグラフィックモデルに対して1つまたは複数の仮想的マークを位置合わせする。ステップ302で3D位置センサにより収集した第1の位置データをステップ314で3D位置センサにより収集した位置データと相関させることによって、解剖学表面を基準として関心対象位置を規定するためにプロセッサ116に対して2つのデータ組を互いに位置合わせさせることが比較的容易な作業となる。
【0030】
次にステップ318において、プロセッサ116は表示デバイス118上に3Dグラフィックモデルの描出を表示させる。図4は、一実施形態による3Dグラフィックモデル400の描出の一例を表している。この3Dグラフィックモデル400の描出は頚部表面に関するものである。3Dグラフィックモデル400の描出は、一実施形態に従った3D画像データの表示に通常使用されるボリュームレンダリング済み画像と同様とすることがある。例えば3Dグラフィックモデル400の描出は、ボリュームレンダリング済み画像の作成に通常使用されるレイキャスティングなどの技法を通じて作成されることがある。典型的なレイキャスティングでは、ボリューム全体からのボクセルをすべて用いて最終のボリュームレンダリング済み画像を作成している。しかし3Dグラフィックモデルでは、その解剖学表面からのボクセルだけが3Dグラフィックモデルの描出に寄与するため従来のボリュームレンダリング済み画像とは異なる。3Dグラフィックモデル400の描出は、解剖学表面の幾何学構成を取り込んでおり、またこれによりさらにユーザは陰影付け、不透明性、色相、その他などの視覚化技法の使用を通じて表面の3次元性状をより適正に理解し観察者がより適正な深度認知を得ることが可能となる。一実施形態ではユーザは、具体的なある領域上に焦点を当てるように3Dグラフィックモデル400の描出に関する1つまたは複数のパラメータを調整することがある。ユーザはさらに、患者の解剖構造に関する理解を向上させるために、3Dグラフィックモデル400の描出に対するズーム、パン、回転及び平行移動を含む画像操作技法を用いることがある。
【0031】
3Dグラフィックモデル400の描出は、一実施形態ではリンパ節とし得るような構造を表したグラフィック指示402と、仮想的マーク403と、を含む。上で記載したようにこの仮想的マーク403は、患者の皮膚に関するユーザが特定したある具体的な箇所に対応させることがある。一実施形態ではその仮想的マークの箇所は、方法300のステップ314(図3参照)の間に特定済みとすることができる。さらに、解剖学表面を基準とした構造の位置に関する追加的な情報をユーザに提供するために、深度インジケータ404などの深度インジケータを用いることがある。図4において深度インジケータ404は、ライン406とテキストボックス408の両方を含む。ライン406は、3Dグラフィックモデル400の描出とグラフィック指示402の間の幾何学的関係を示している。さらにテキストボックス408は、解剖学表面の直ぐ下の構造の深度を示している。図4に示した例示的実施形態では、グラフィック指示402で表したリンパ節が解剖学表面の下側21mmに存在している。別の実施形態は、1つまたは複数のグラフィック指示が示した構造(複数のこともある)の位置に関するより具体的なデータを示すために異なる構成をもつ深度インジケータを用いることがある。例えば別の実施形態は、深度を示すために一定間隔でマーキングを付けたラインを含むような深度インジケータを用いることがある。さらに別の実施形態ではその構造の深度に対して、深度に基づいたカラーコード化を施すことや、深度に基づいた不透明度を割り当てることがある。これらの技法のうちのいずれかを3D表面モデルと連携させることによれば、患者の解剖学表面を基準とした1つまたは複数の構造の位置決めを迅速かつ正確に決定することについてユーザが支援される。図4に示した実施形態はさらに、探触子105(図1参照)のリアルタイム位置を表した第1のアイコン410と、探触子105が取得している画像のリアルタイム位置を表した第2のアイコン412と、を含む。第1のアイコン410と第2のアイコン412の両者は、3Dグラフィックモデル400を基準とした探触子105及び画像の位置を表していると共に、目下の超音波画像と解剖学表面の間の関係に関するユーザによる理解の向上と視覚化を支援する。
【0032】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0033】
100 超音波撮像システム
102 送信器
103 送信ビーム形成器
104 トランスジューサ素子
105 探触子
107 探触子/SAP電子回路
108 受信器
110 受信ビーム形成器
112 ユーザインタフェース
116 プロセッサ
118 表示デバイス
120 3D位置センサ
122 静止基準デバイス
124 ボタン
126 中央素子
300 方法
302 第1の位置データの収集
304 3D表面マップの作成
306 超音波データの取得
307 第2の位置データの収集
308 画像の作成
310 画像内での構造の特定
312 3D表面マップに対する構造の箇所の位置合わせ
314 表面上での関心対象位置の特定
316 3D表面に対する仮想的マークの位置合わせ
318 3D表面マップの描出の表示
400 3Dグラフィックモデルの描出
402 グラフィック指示
403 仮想的マーク
404 深度インジケータ
406 ライン
408 テキストボックス
410 第1のアイコン
412 第2のアイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像ガイド下手技のための超音波撮像システム(100)であって、
トランスジューサ素子アレイを備えた探触子(105)と、
探触子(105)に取り付けられた3D位置センサ(120)と、
表示デバイス(118)と、
探触子(105)、3D位置センサ(120)及び表示デバイス(118)と電子的に連絡したプロセッサ(116)であって、
解剖学表面に沿って探触子(105)を移動させながら3D位置センサ(120)から第1の位置データを収集すること、
第1の位置データに基づいて3Dグラフィックモデルを作成すること、
探触子(105)によって超音波データを取得すること、
探触子(105)が超音波データを取得している間に3D位置センサ(120)から第2の位置データを収集すること、
超音波データに基づいて画像を作成すること、
第1の位置データ及び第2の位置データに基づいて3Dグラフィックモデルに対して画像内の構造の箇所を位置合わせすること、
表示デバイス(118)上に3Dグラフィックモデルの描出を表示すること、
を行うように構成されたプロセッサ(116)と、
を備える超音波撮像システム(100)。
【請求項2】
前記プロセッサ(116)はさらに3Dグラフィックモデルの描出と一緒にグラフィック指示を表示するように構成されており、該グラフィック指示は解剖学表面を基準とした構造の相対的な位置決めを示している、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項3】
前記プロセッサ(116)はさらに3Dグラフィックモデルの描出上に深度インジケータを表示するように構成されており、該深度インジケータは解剖学表面を基準とした構造の深度に関する情報を表している、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項4】
前記探触子(105)はさらに、解剖学表面上の箇所に関する第3の位置データの収集を開始させるように構成されたボタンを備える、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項5】
前記プロセッサ(116)は、3Dグラフィックモデルのボリュームレンダリング済み画像を表示デバイス(118)上の3Dグラフィックモデルの描出として表示するように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項6】
前記プロセッサ(116)はさらに、ユーザによる表示デバイス(118)上での3Dグラフィックモデルのボリュームレンダリング済み画像の回転を可能にするように構成されている、請求項5に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項7】
前記プロセッサ(116)は、当該画像内または追加画像内のいずれかにおける追加的な構造の特定に応答して3Dグラフィックモデルの描出をリアルタイムで更新するように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項8】
前記プロセッサ(116)はさらに、超音波データに基づいてリアルタイムで画像を作成し表示デバイス(118)上に表示するように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項9】
前記プロセッサ(116)はさらに、3Dグラフィックモデルの描出をリアルタイムで作成し表示デバイス(118)上に表示するように構成されている、請求項8に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項10】
前記プロセッサ(116)はさらに、超音波データに基づいた画像を3Dグラフィックモデルの描出と概して同じ時点において表示するように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項11】
前記プロセッサ(116)はさらに、3Dグラフィックモデルの描出を基準とした探触子(105)のリアルタイム位置を表した第1のアイコンを表示するように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項12】
前記プロセッサ(116)はさらに、3Dグラフィックモデルを基準とした画像のリアルタイム位置を表すように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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