説明

画像再形成可能な紙

【課題】文書や画像の再形成可能な紙、画像再形成可能な一時的文書もしくは画像形成媒体、ならびにそれらの製造方法および使用方法を提供する。
【解決手段】基体と、前記基体上にコーティングされたフォトクロミック物質およびポリマーバインダーを含む画像形成層とを含み、前記フォトクロミック物質が、前記ポリマーバインダー中で無色状態と着色状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す、画像形成媒体およびその製造方法と、前記画像形成媒体を画像用のUV光で露光することにより、一時的に画像を形成する方法とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、文書、より詳細には画像再形成可能な紙、または画像再形成可能な一時的文書もしくは画像形成媒体、ならびにかかる画像再形成可能な紙の組成、製造法および使用法に関する。特に、実施形態において、本開示は、ポリマーバインダー中に分散されたフォトクロミック化合物を含み、着色状態と透明状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す組成物を用いた画像形成媒体に関する。その結果、析出または相分離した着色形態は非常に暗い灰色、またはほとんど黒色を呈する。対照的に、従来のフォトクロミック物質は、570nm付近においてのみ高い光吸収性を示し、コントラストの小さい紫色の着色を呈する。
【背景技術】
【0002】
本出願と同一の譲受人による米国特許出願第11/123,163号(2005年5月6日出願)には、ポリマーと、ポリマー中に埋め込まれたキレート化基を含むフォトクロミック化合物と、金属塩とを含み、前記フォトクロミック化合物の分子が前記金属塩からの金属イオンによりキレート化される画像形成媒体が開示されている。
【0003】
本出願と同一の譲受人による米国特許出願番号10/835,518(2004年4月29日出願)には、画像を形成する方法であって(a)カラーコントラストおよびカラーコントラストが無い状態を呈することができる、基体およびフォトクロミック物質からなる画像再形成可能な媒体を用意し、(b)前記媒体を、露光領域と非露光領域との間にカラーコントラストが生じ、所定の画像に対応する一時的画像(temporary image)が、可視時間(visible time)の間、見ることができるように所定の画像に対応する画像形成用光(imaging light)で露光し(c)前記一時的画像を、画像消去時間(image erasing time)の間、屋内環境条件におき、カラーコントラストをカラーコントラストのない状態に変化させて、画像消去装置を使うことなく一時的画像を消去し、(d)必要により(b)および(c)の手順を多数回繰り返し、媒体が更に多数回の一時的画像形成および一時的画像消去のサイクルを経る方法が開示されている。
【0004】
本出願と同一の譲受人による米国特許出願番号10/834,722(2004年4月29日出願)には、基体とフォトクロミック物質とを含み、媒体がカラーコントラストのある状態とない状態とを示すことができ、カラーコントラストのない状態を示し、次いで露光領域と非露光領域とをもたらす所定の画像に対応する画像形成光で露光されるときにカラーコントラストが露光領域と非露光領域との間に生じ、可視時間の間に見ることができる所定の画像に対応する一時的画像を形成する特徴を有し、この一時的画像が屋内環境条件に、画像消去時間の間さらされると(i)屋内環境条件が、室温で暗所を含む場合、(ii)屋内環境条件が、室温で屋内環境光を含む場合、(iii)屋内環境条件が、室温での暗所および室温での屋内環境光のどちらも含む場合、ならびに媒体が一時的画像形成および一時的画像消去のサイクルを複数回受けることができる場合のすべてにおいて、カラーコントラストのある状態がカラーコントラストの無い状態に変化して一時的画像を消去する特徴を有する、画像再形成可能な媒体を開示している。
【0005】
上記出願の全開示は、すべて参照として本明細書に組み込まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、文書、より詳細には画像再形成可能な紙、または画像再形成可能な一時的文書もしくは画像形成媒体、ならびにかかる画像再形成可能な紙の組成、製造法および使用法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
媒体上に形成された画像は、用途によっては長時間、例えば2、3時間を超えて、安定な状態を維持することが望ましい。電子ペーパー文書に形成された画像は、ユーザーがこれを見る必要がある間、維持されなければならない。その後、画像はユーザの命令により消去されるか、異なる画像で置換されることができる。数時間以上にわたる可視性を重視する用途における電子文書については、画像は、少なくとも1、2日またはそれ以上安定でなければならない。
【0008】
本開示は、上記および他の必要性に対処すべく、その実施形態において、フォトクロミック化合物およびポリマーバインダーを含む組成物を利用する画像形成媒体であって、着色および透明状態の間の可逆的均一−不均一変化を示す画像形成媒体を提供する。本開示の組成物および方法は、一時的画像を提供するものであり、一時的画像の形成後、画像コントラストが高く、より従来のものに近く、望ましい白黒画像外観を示す、黒に近い色を呈する。本発明の組成物および方法はさらに、自己消去が起こるまで、著しく長時間、例えば2日以上にわたって持続する一時的画像を提供する。これらおよび他の利点は、画像再形成可能な一時的文書の応用範囲をさらに広げるものである。
【0009】
一実施形態において、本開示は、基体と、前記基体上にコーティングされたフォトクロミック物質およびポリマーバインダーを含む画像形成層とを含み、前記フォトクロミック物質がポリマーバインダー中で無色状態と着色状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す、画像形成媒体を提供する。
【0010】
さらにもう一つの実施形態において、本開示は、一時的画像を形成する方法を提供するものであって、基体と、前記基体上にコーティングされたフォトクロミック物質およびポリマーバインダーを含む画像形成層とを有し、前記フォトクロミック物質がポリマーバインダー中で無色状態と着色状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す画像形成媒体を用意すること、及び前記画像形成媒体を画像様にUV光で露光することを含む、一時的画像の形成方法を提供する。
【0011】
さらに別の態様において、本開示は、基体を用意することと、前記基体に、フォトクロミック物質およびポリマーバインダーを含み、前記フォトクロミック物質は、ポリマーバインダー中で無色状態と着色状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す画像形成層を塗布することを含む、画像形成媒体の製造方法を提供する。
【0012】
一般に、様々な例示的態様において、ポリマーバインダー中に完全に、または実質的に、または所望の程度まで分散されたスピロピランなどのフォトクロミック物質を使用して形成され、前記組成物は、ポリマーバインダー中で着色状態と透明状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す、画像再形成可能な紙または画像形成媒体が提供される。ここでの着色状態とは、実施形態において、例えば、可視波長が存在することを意味し、同様に、無色状態とは、実施形態において、例えば、可視波長が完全にまたは実質的に存在しないことを意味する。実施形態において「状態」とは、組成物の一時的形態、例えば、溶媒中のフォトクロミック物質の一時的異性体形態を意味する。実施形態において「均一」とは、例えば、フォトクロミック物質がポリマーバインダー中に均一に、または実質的に均一に分散されている混合物または溶液を意味し、実施形態において、異質とは、例えば、フォトクロミック物質がポリマーバインダー中に均一に分散されていない、例えば、フォトクロミック物質の一部または全部が析出しているか、またはポリマーバインダーから相分離している混合物または溶液を意味する。
【0013】
例えば、フォトクロミック物質およびポリマーバインダーは、フォトクロミック物質がポリマーバインダー中に分散しているとき、フォトクロミック物質がその透明な状態にあるように選択される。しかしながら、フォトクロミック物質が活性化エネルギー(activating energy)、例えば、紫外光で露光される場合、フォトクロミック物質は異性化してより極性の高い形態になり、ポリマーバインダーから可逆的に析出して、結晶または凝集形態などの可視物質を形成する。この析出は可逆的であるため、異性化反応を逆転させ、フォトクロミック物質をポリマーバインダー中に再溶解または再分散させる温度まで溶液を加熱するなどの種々の手段を用いることによって、フォトクロミック物質をその透明な状態に戻し、画像を「消去し」、フォトクロミック紙を白紙状態に戻すことができる。着色状態では、画像は、2日またはそれ以上の期間にわたって可視状態を維持することができ、フォトクロミック紙の有用性が増大する。
【0014】
実施形態において、画像再形成可能な紙は一般に、フォトクロミック物質がポリマーバインダー中に分散された画像形成層を含み、前記画像形成層は、適切な基体材料上に塗布されるか、または第一および第二の基体材料(すなわち、基体材料およびオーバーコート層)の間に挟まれている。
【0015】
フォトクロミック物質は、電磁線放射の吸収により誘発される、異なる吸収スペクトルを有する2つの形態間における化学種の一方または両方向への可逆的変換である、フォトクロミズムを示してもよい。第一の形態は、熱力学的に安定であり、紫外光などの光の吸収により誘発されて、第二の形態に変換することができる。第二形態から第一形態への逆反応は、例えば、熱的に、または光の吸収により起こり得る。2より多い形態間で可逆的変換が起こり得る場合、フォトクロミック物質の種々の例示的態様は、3以上の形態間の化学種の可逆的変換を含む。実施形態のフォトクロミック物質は、それぞれが可逆的に相互変換可能な形態を有する1、2、3、4、またはそれ以上の異なるタイプのフォトクロミック物質からなってもよい。ここで、「フォトクロミック物質」という用語は、その一時的異性形態に関係なく、特定種のフォトクロミック物質の全分子を意味する。例えば、フォトクロミック物質がスピロピランおよびメロシアニンなどの異性形態を示すスピロピラン種である場合、フォトクロミック物質の分子はいつでも全体的にスピロピランであっても、全体的にメロシアニンであっても、またはスピロピランとメロシアニンの混合物であってよい。様々な例示の実施形態において、それぞれのタイプのフォトクロミック物質について、1つの形態は無色であるか、若干着色し、他の形態は異なる色に着色していてもよい。
【0016】
フォトクロミック物質は、その異なる状態の一つにおいて、適当なポリマーバインダーを用いた場合にポリマーバインダーから相分離する限り、例えば有機フォトクロミック物質を含むフォトクロミック紙を提供するのに有用な任意の好適なフォトクロミック物質であってよい。フォトクロミック物質の例としては、スピロピラン類およびスピロオキサジン類、チオスピロピラン類などの関連化合物、ベンゾおよびナフトピラン類(クロメン類)、スチルベン類、アゾベンゼン類、ビスイミダゾール類、スピロジヒドロインドリジン類、キノン類、ペリミジンスピロシクロヘキサジエノン類、ビオロゲン類、フルジド類、フルジミド類、ジアリールエテン類、ヒドラジン類、アニル類、アリールジスルフィド類、アリールチオスルホネート類などが挙げられる。アリールジスルフィド類およびアリールチオスルホネート類において、好適なアリール基としては、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン、およびそれらの置換された基などが挙げられる。これらの物質はさまざまな形で、スピロピラン類およびその関連化合物などは複素環開裂を受け、ヒドラジンおよびアリールジスルフィド化合物などは同素環開裂を受け、アゾ化合物、スチルベン化合物などはシス−トランス異性化を受け、フォトクロミックキノン類などはプロトンまたは基転移光互変異を受け、ビオロゲン類などは電子移動によりフォトクロミズムを受けていてもよい。物質の具体例には、次のものが含まれる。
【0017】
【化1】

【0018】
これらの構造において、様々なR基(すなわち、R、R1、R2、R3、R4)は独立して、これらに限定されないが、水素;シクロプロピル、シクロヘキシルなどの環状アルキル基、およびビニル(H2C=CH−)、アリル(H2C=CH−CH2−)、プロピニル(HC≡CH2−)などの不飽和アルキル基を包含するメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル(前記のそれぞれについて、アルキル基は、1〜約50またはそれ以上、例えば、1〜約30個の炭素原子を有する);フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン、それらの置換された群などを包含し、約6〜約30個の炭素原子、例えば、約6〜約20個の炭素原子を有するアリール;例えば、約7〜約50個の炭素原子、例えば、約7〜約30個の炭素原子を有するアリールアルキル;シリル基;ニトロ基;シアノ基;フルオライド、クロライド、アイオダイド、およびアスタタイドなどのハライド原子;第一、第二、および第三アミンなどのアミン基;ヒドロキシ基;例えば、1〜約50個の炭素原子、例えば、1〜約30個の炭素原子を有するアルコキシ基;例えば、約6〜約30個の炭素原子、例えば、約6〜約20個の炭素原子を有するアリールオキシ基;例えば、1〜約50個の炭素原子、例えば、1〜約30個の炭素原子を有するアルキルチオ基;例えば、約6〜約30個の炭素原子、例えば、約6〜約20個の炭素原子を有するアリールチオ基;アルデヒド基;ケトン基;エステル基;アミド基;カルボン酸基;スルホン酸基などを包含する任意の好適な基であってよい。アルキル、アリール、およびアリールアルキル基は、例えば、シリル基;ニトロ基;シアノ基;フルオライド、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、およびアスタタイドなどのハライド基;第一、第二、および第三アミンなどのアミン基;ヒドロキシ基;例えば、1〜約20個の炭素原子、例えば、1〜約10個の炭素原子を有するアルコキシ基;例えば、約6〜約20個の炭素原子、例えば、約6〜約10個の炭素原子を有するアリールオキシ基;例えば、1〜約20個の炭素原子、例えば、1〜約10個の炭素原子を有するアルキルチオ基;例えば、約6〜約20個の炭素原子、例えば、約6〜約10個の炭素原子を有するアリールチオ基;アルデヒド基;ケトン基;エステル基;アミド基;カルボン酸基;スルホン酸基などの基で置換されてもよい。Ar1およびAr2は、独立して、例えばこれらに限定されないが、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセンなど、およびそれらが前述のアルキル、アリール、およびアリールアルキル基について前述した基によって置換されたものを含む、任意の好適なアリールまたはアリールを含有する基であってもよい。スピロピランの構造式におけるXは、N、O、Sなどの好適なヘテロ原子である。Yは、−N−または−CH−であってもよい。ビオロゲンの構造式におけるX-は、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、BF4-、PF6-、B(C654-等であってもよい。アリールチオスルホネートにおけるX-は、例えば、−O−、S、−NH−等であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態においては、所望のカラーコントラストおよびポリマーバインダー中における可逆的溶解性又は相分離特性を与える物質である限り、任意のフォトクロミック物質を用いることができるが、特に好適なのは、スピロピランおよび関連する化合物である。例えば、スピロピランはUV光の照射または加熱により無色状態(スピロピラン、SP)と着色状態(メロシアニン、MC)との間で可逆的に異性化するので好適である。この化合物に関して、その双極性のためにスピロピラン(SP)は低い極性を有し、一方、メロシアニン(MC)は高い極性を有する。例えば、以下の化合物1では、化合物は以下に示される形態SP−1およびMC−1の間で可逆的に異性化する:
【0020】
【化2】

【0021】
すなわち、紫外光などのエネルギーを付与すると、この物質は、約5Dの低い双極モーメントを有する無色のスピロピラン(SP−1)から、約11Dの高い双極モーメントを有する着色したメロシアニン(MC−1)の高度に共役した構造へ変換する(ここで、単位D(Debye)は1D=3.33×10-30C・mである)。逆異性化反応において、熱などのエネルギーを付与すると、上記物質は、着色したメロシアニン(MC−1)から無色のスピロピラン(SP−1)へと異性化する。
【0022】
しかしながら、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリスチレンなどをポリマーバインダーとした従来のポリマーバインダー系においては、フォトクロミック物質の無色形態と着色形態のいずれの形態もポリマーバインダー中に分散したままである。この場合、着色形態は数時間で無色形態に戻り、所望の長期可視性が得られない。とはいえ、無色形態はポリマーバインダー中に分散したままであるが、着色形態はポリマーバインダーから相分離または析出するような好適なポリマーバインダーが選択されれば、これらのフォトクロミック物質も本開示において用いることができる。
【0023】
ポリマーバインダー、特にPMMAおよびポリスチレンの従来のポリマーバインダー中のフォトクロミック物質の相分離の誘発を増大させるために、追加の官能基をフォトクロミック物質に加えて、選択されたポリマーとの相溶性を低くすることができる。このような官能化フォトクロミック物質では、フォトクロミック物質グループの全体的に低い極性のために、無色異性体はポリマーバインダー中に可溶性である。しかしながら、着色した異性体形態は、官能基により与えられる高い極性のために、ポリマーバインダーから析出または相分離する。
【0024】
例えば、フォトクロミック物質に加えることができる好適な官能基には、これらに限定されないが、SO3H基、カルボン酸(CO2H)基、CONR2基(式中、R基は同一でも異なっていてもよい)、CO2R基、COX基またはSO2X基(式中、Xはハロゲン、例えば、フッ素または塩素である)、スルホンアミド基などが含まれる。スルホンアミド基は、無置換(SO2NH2)であっても、置換されていてもよい(SO2NR2、ここでR基としては、フォトクロミック物質に関して前述したように、H、アルキル、アリール、アリールアルキル基などが挙げられ、同一でも異なっていてもよい)。別の実施形態において、スルホン酸塩(−SO3M)およびカルボン酸塩(COOM)を、着色した異性体を析出させるための好適な官能基とすることができる。これらの塩において、Mは正の対イオンを表し、例えば、Na+、Li+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Zn2+、Cu+、Cu2+などの金属イオンならびに一般式R4+で示されるアンモニウムイオン(式中、Rは、同一でも異なってもよい有機ラジカルを表す)であってもよい。このような官能基は、公知の方法によりフォトクロミック物質中に容易に組み入れることができる。いくつかの実施形態においては、低極性のポリマーとの相溶性が非常に低いことから、官能基はカルボン酸基(−COOH)である。従って、例えば、好適な官能化スピロピランフォトクロミック物質としては、以下の化合物2が挙げられ、これは次のようにSP−2とMC−2の両形態間で可逆的に異性化する。
【0025】
【化3】

【0026】
すなわち、紫外光などのエネルギーを付与されると、上記物質は異性化して、低極性の無色スピロピラン(SP−2)からメロシアニン(MC−2)の高極性・着色した高共役構造になる。逆異性化反応において、熱などのエネルギーを付与すると、この物質は異性化して、着色したメロシアニン(MC−2)から無色スピロピラン(SP−2)になる。
【0027】
所望の色の変化を得るために、フォトクロミック物質は好適なポリマーバインダー中に分散される。溶媒混合物の形成には、任意の好適なポリマーバインダーを用いることができる。いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーとしては、非極性ポリマーは、フォトクロミック物質の極性の低い無色形態とは良好な相溶性を有するが、フォトクロミック物質の極性の高い着色形態、特に官能基を含むものとの相溶性に乏しく、従って以下に示すようにポリマーバインダーの着色形態からの所望の析出または相分離を可能にするので、非極性ポリマーが用いられてもよい。例えば、ポリマーバインダーの好適な例としては、これらに限定されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリアルキルアクリレート類、ポリカーボネート類、ポリエチレン類、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン類、ポリ(スチレン)−コ−(エチレン)、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリアリールスルホン類、ポリアリールエーテル類、ポリオレフィン類、ポリアクリレート類、ポリビニル誘導体、セルロース誘導体、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリエステル類、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。ポリスチレン−アクリロニトリル、ポリエチレン−アクリレート、塩化ビニリデン−塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニリデン、スチレン−アルキド樹脂などのコポリマー物質も、好適なバインダー物質の例である。コポリマーは、ブロック、ランダムまたは交互コポリマーであってよい。いくつかの実施形態において、コストと広に入手可能性の点で、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンは、このようなポリマーバインダーである。これらのポリマーバインダーは、非官能化フォトクロミック物質が、一般に、無色形態から着色形態へ変換する際にポリマーバインダーから相分離しないため、官能化フォトクロミック物質と共に使用するのに特に望ましい。しかしながら、実施形態においては、ポリマーバインダーおよびフォトクロミック物質が、無色形態から着色形態に変換する際に所望の相分離が得られるように相互に選択されれば、他のポリマーバインダーを用いることができる。実施形態において、ポリマーバインダーは非極性、または実質的に非極性である。加えて、相分離が起こるようにポリマーバインダーとフォトクロミック物質が選択される限り、より極性の高いポリマーバインダーを所望により使用することもできる。
【0028】
組成物の例において、ポリマーバインダーは、任意の所望の量、例えば、全組成物の約5〜約99.5重量%、例えば、約50〜約99重量%で存在することができる。同様に、フォトクロミック物質またはフォトクロミック物質の混合物は、全溶媒混合物の約0.05〜約20重量%、例えば、約0.5〜約5重量%の任意の所望の量で存在することができる。
【0029】
本開示の多くは、相分離または析出した形態にあるときに、相分離して着色状態を与えるフォトクロミック物質により形成される可視画像について言及するが、本開示はこの例に限定されない。別の実施形態において、ポリマーバインダーおよびフォトクロミック物質は、透明または極性の低い状態では不溶性であるが(例えば、ポリマーバインダーから相分離するか、析出する)、着色状態では選択されたポリマーバインダー中に可溶性であるかまたは分散された状態が長時間持続するように選択してもよい。フォトクロミック分子としてのスピロピランと極性ポリマーバインダーとの組み合わせは、好適な一例である。この実施形態において、着色状態は、より極性の高い(着色した)異性体を与えるUV照射により達成することができる。極性ポリマーバインダーは着色した異性体の形成に都合がよいため、この着色状態は、室内光下で安定である。透明状態は、例えば、強い可視光の照射により達成することができる。
【0030】
フォトクロミック物質およびポリマーバインダーは、組み合わせられた物質が、着色状態と透明または無色状態の間で可逆的な均一−不均一変化または相分離を示すように適切に選択される。すなわち、フォトクロミック物質およびポリマーバインダーは、フォトクロミック物質が無色形態の場合、フォトクロミック物質がポリマーバインダー中に分散された状態であるが、着色形態に変換すると、ポリマーバインダーから相分離するかまたは析出するように選択される。理論によって限定されることは望ましくはないが、このフォトクロミック物質の無色形態と着色形態の、ポリマーバインダーとの相溶性の差により、フォトクロミック物質は、無色形態の場合はポリマーバインダー中に分散されるが、着色形態の場合は可視物質としてポリマーバインダーから析出するかまたは相分離する。析出または相分離したときのフォトクロミック物質の着色形態は、数例において結晶か、凝集体を形成する傾向があり、これは可視スペクトルの大半にわたる可視光を吸収する。これらの結晶または凝集体は、サイズが数ミクロン台であり、不透明で多分散系(析出/凝集粒子の全てが同じサイズではないことを意味する)である。その結果、析出または相分離した着色形態は非常に暗い灰色、またはほとんど黒色を呈する。対照的に、従来のフォトクロミック物質は、570nm付近のみで高い光吸収を示し、コントラストの低い紫色の着色をもたらす。
【0031】
ポリマーバインダーおよびフォトクロミック物質の好適な選択は、容易に行うことができる。例えば、物質の好適な選択は、特定のポリマーバインダーまたはポリマーバインダーの混合物中の特定のフォトクロミック物質の無色および着色形態の相対的相溶性の通常の試験、測定、および/または予測により行うことができる。
【0032】
一実施形態において、好適なフォトクロミック物質の選択は、例えば、フォトクロミック物質の無色および着色形態の双極子モーメントにおける相対的な差を比較することにより行うことができる。例えば、着色形態の所望の析出または相分離を可能にするためには、実施形態において、フォトクロミック物質の無色および着色形態が異なる双極子モーメントを有すること、例えば、着色形態が、無色形態のそれよりも高いかあるいは大きな双極性モーメントを有することが望ましい。この実施形態において、着色形態は、例えば、フォトクロミック物質の無色形態の双極子モーメントよりも約3〜約20D、例えば、約4または約5D〜約10、または約15D高い双極性モーメントを有することが望ましい。実施形態において、着色形態は、フォトクロミック物質の無色形態の双極性モーメントよりも約6、例えば約7、または約8〜約10、または約12D高い双極性モーメントを有することができる。
【0033】
同様に、一実施形態において、特定のフォトクロミック物質に対する好適なポリマーバインダーの選択は、たとえば、無色および着色の両形態におけるポリマーバインダー中のフォトクロミック物質の相対的相溶性を比較することにより行うことができる。例えば、着色形態の所望の析出または相分離を可能にするために、実施形態において、フォトクロミック物質の無色および着色の両形態は、ポリマーバインダー中で異なる相溶性を有し、特に無色形態がポリマーバインダーと相溶性であり、一方、着色形態はポリマーバインダーと相溶性でないことが望ましい。この相溶性における変化は、例えば、前述のように、フォトクロミック物質の双極子モーメントの相対的な差、フォトクロミック物質上の官能基の存在などにより生じ得る。
【0034】
実施形態の画像形成層組成物において、フォトクロミック物質は、適当なエネルギーの付与、例えば、紫外光の付与により、無色状態から着色状態に変換される。文書は加熱または適当な波長の可視光を照射することにより消去することができる。しかしながら、実施形態の利点は、フォトクロミック物質が室温または通常の可視光では無色状態に戻らないことである。その結果、フォトクロミック物質の着色形態、従って可視画像は、2日またはそれ以上までの間、安定かつ可視状態が保たれる。
【0035】
フォトクロミック紙は、少なくとも片面上にフォトクロミック物質およびポリマーバインダーの画像形成層がコーティングされた支持基体を含んでいてもよい。所望により、基体は片面のみ、あるいは両面上に、フォトクロミック物質およびポリマーバインダーをコーティングすることができる。フォトクロミック物質の両面がコーティングされている場合、または画像のより高い可視性が所望される場合、支持基体とフォトクロミック物質層の間、あるいは支持基体のフォトクロミック物質層がコーティングされた側と反対側に、不透明層を設けることができる。従って、例えば片面塗布のフォトクロミック紙が望ましい場合、フォトクロミック紙は、片面上にフォトクロミック物質がコーティングされ、他の面に不透明層、例えば白色層がコーティングされた支持基体を含むことができる。さらに、フォトクロミック紙は、片面上にフォトクロミック物質が塗布され、それと支持体との間に不透明層がコーティングされた支持基体を含んでもよい。両面塗布のフォトクロミック紙が望ましい場合、フォトクロミック紙は、両面上に塗布された2つのフォトクロミック物質層と、その間に少なくとも1つの不透明層を有する支持基体を含んでもよい。もちろん、所望により、不透明な支持基体、例えば通常の紙を、支持基体と不透明層とを別にする態様の代わりに用いることができる。
【0036】
任意の好適な支持基体を用いることができる。例えば、支持基体の好適な例としては、これらに限定されないが、ガラス、セラミック、木材、プラスチック、紙、布、織物製品、ポリマーフィルム、金属などの無機物からなる基体が挙げられる。プラスチックは、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどのプラスチックフィルムであってもよい。紙は、例えば、XEROX(登録商標)4024紙、罫線付ノート用紙、上質紙、Sharp Companyシリカコート紙などのシリカコート紙、Jujo紙などの普通紙であってもよい。基体は、単層あるいは各層が同一または異なる材料の多層であってよい。実施形態において、基体は約0.3mm〜約5mmの範囲の厚さを有するが、これ以上またはこれ以下の厚さも所望により使用できる。
【0037】
フォトクロミック紙において不透明層が使用される場合、任意の好適な物質を使用できる。例えば、所望の外観が白紙様である場合、二酸化チタン、または酸化亜鉛、無機炭酸塩などの他の好適な物質の薄いコーティングにより不透明層を形成することができる。不透明層は、例えば、約0.01mm〜約10mm、例えば、約0.1mmから約5mmの厚さを有することができるが、他の厚さとすることもできる。
【0038】
所望により、塗布されたフォトクロミック物質およびポリマーバインダー層の上に、オーバーコーティング層を設けてもよい。耐摩耗性を提供したり、外観および感触などを改善するために、例えば、フォトクロミック物質およびポリマーバインダーを基体上に接着させるために、オーバーコーティング層をさらに設けてもよい。実施形態において、コーバーコーティング層および基体層の少なくとも1つは、形成された画像の可視化を可能にするために透明であるが、オーバーコーティング層は、基体物質と同一であっても、異なっていてもよい。オーバーコーティング層は、他の厚さも使用できるが、例えば、約0.01mmから約10mm、例えば、約0.1mmから約5mmの厚さを有し得る。
【0039】
フォトクロミック物質が基体上にコーティングされている実施形態において、コーティングは、当該技術において使用可能な任意の好適な方法により行うことができ、特に制限されない。
【0040】
その方法についての観点において、本開示は、基体と、フォトクロミック物質およびポリマーバインダーを含み、カラーコントラストのある状態とカラーコントラストがない状態を示す着色状態と透明状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す画像形成層とからなる画像再形成可能な媒体を提供することを含む。この画像再形成可能な媒体は、所定の画像に対応する画像形成用光で露光され、露光領域と非露光領域とを生じ、この露光領域と非露光領域との間に、所定の画像に対応する一時的画像を裸眼で見ることができるようなカラーコントラストが存在する。
【0041】
一時的画像を形成するために用いられる画像形成用光は、任意の好適な所定の波長範囲、例えば、単一波長または波長帯を有してよい。様々な実施形態において、画像形成用光は、約200nm〜約475nmのUV光波長範囲から選択される単一波長、または狭い波長帯有する紫外線(UV)光、例えば、約365nmの単一波長、または約360nm〜約370nmの波長帯などである。画像を形成するために、画像再形成可能な媒体を、約10ミリ秒から約5分、特に約30ミリ秒〜約1分の間、画像形成用光に露光してもよい。画像形成用光は、約0.1mW/cm2〜約100mW/cm2、特に約0.5mW/cm2〜約10mW/cm2の範囲の強度を有してもよい。
【0042】
様々な例示的実施形態において、所定の画像に対応する画像形成用光を、例えば、コンピュータまたは発光ダイオード(LED)アレイスクリーンにより生成させることができ、媒体を所望の期間、LEDスクリーン上またはその近くに置くことにより、一時的画像が画像再形成可能な媒体上に形成される。他の例示的実施形態において、画像状のパターンのUV光を発生させるために、UVラスター出力スキャナー(ROS)を使用することができる。使用できる他の好適な画像形成技術には、これらに限定されないが、マスクをとおして画像形成媒体上にUV光を照射すること、画像形成媒体上を画像様にピンポイントUV光源で、例えばライトペンなどを用いて照射することなどが含まれる。
【0043】
一実施形態において、フォトクロミック紙から画像を消去するために、画像を担持するフォトクロミック紙を、カラーコントラストのある状態からカラーコントラストのない状態に変化させるために、画像消去時間の間、屋内環境条件に置くことができる。従って、実施形態において、画像は、画像消去装置または技術を使用することなく消去することができ、ユーザーが画像を見るのに十分な時間のみ可視状態にあることができるが、この期間は、画像形成および画像消去をユーザーが多数回繰り返すことができるようにも制限される。このように、媒体は多数回の画像形成および画像消去のサイクルを受けることができる。例えば、媒体は、約2〜約100回または約500回またはそれ以上、例えば、約2〜または約5回または約10〜約40回または約50回以上の、画像形成および画像消去を経ることができる。従って、画像再形成可能な媒体は、「自己消去性」であると考えられる。しかしながら、実施形態におけるフォトクロミック物質の着色形態は安定であるので、環境条件下でのこの自己消去は、2日から2週間以上かかり得るといえる。
【0044】
他の実施形態において、新しい画像を形成できるように消去を早めたい場合、消去はフォトクロミック紙を高温に加熱することにより行うことができる。例えば、加熱は、画像が消去できるように、約50〜約500℃、例えば、約100〜約200℃で行うことができる。特定の理論に限定されないが、この加熱プロセスにより、ポリマーバインダーがフォトクロミック物質を再可溶化または再分散させて、フォトクロミック物質をその無色形態に戻すと考えられる。
【0045】
様々な実施例によれば、画像を観察者に見えるようにするカラーコントラストは、例えば、2、3またはそれ以上の異なる色の間のコントラストであってもよい。「色」なる用語は数々の観点を包含し、例えば、色相、明度および彩度を包含し、これらのうち少なくとも1つの観点において2つの色が異なる場合には、1つの色は、もう1つの色と異なる。例えば、同じ色相および彩度を有するが、明度が異なる2色は、異なる色とみなされる。ユーザーが画像を裸眼で見ることができる限り、カラーコントラストを生成させるために、任意の適当な色、例えば、赤、白、黒、灰、黄、シアン、マゼンタ、青、および紫を用いることができる。様々な実施形態において、白色背景上に紫色の一時的画像、白色背景上に淡黄色の一時的画像、淡紫色背景上に暗紫色の一時的画像および暗紫色背景上に淡紫色の一時的画像といった例示的カラーコントラストを用いることができる。しかしながら、所望の最大カラーコントラストの点で、所望のカラーコントラストは、淡色または白色背景上暗灰色または黒色画像、例えば、白色背景上に灰色、暗灰色、または黒色画像、あるいは淡灰色背景上に灰色、暗灰色、または黒色画像というカラーコントラストが望ましい。
【0046】
様々な例示的実施形態において、カラーコントラストは、例えば、可視時間中に消えるなどの変化をし得るが、「カラーコントラスト」という用語は、可視時間の間にカラーコントラストが変化するか、または一定であるかどうかを問わず、ユーザーに画像を認識させるに十分な程度のカラーコントラストを包含する。
【0047】
様々な例示的実施形態において、フォトクロミック紙上の画像のカラーコントラストは、一定期間、例えば少なくとも1日以上、少なくとも約2日以上、または少なくとも約4日以上、そして最高で約4日、約1、約2、約3、または約4週間以上の間、持続しうる。例えば、長期にわたり電子ペーパーとしての使用を可能にするために、実施形態において、フォトクロミック紙上の一時的画像のカラーコントラストは、少なくとも2日または少なくとも4日〜約1または約2週間、あるいは少なくとも約1週間または少なくとも約2週間から少なくとも3週間または少なくとも約4週間にわたって維持することができる。
【0048】
以下に一実施例を記載するが、これは本開示の実施において用いることができる異なる組成物および条件を例示的に示すものである。比率はすべて、特に記載しない限り、重量基準である。本開示が、多種類の組成物を用いて実施することができ、多方面の異なる用途に用いられ得ることは、上記の開示および以下に示される内容からより明らかとなろう。
【実施例1】
【0049】
カルボン酸官能基を有するスピロピランフォトクロミック物質である化合物2を、次のスキームにしたがって合成した。
【0050】
【化4】

【0051】
合成の全体収率は82%であった。この化合物を無水エタノールから再結晶し、粉末化合物を得た。1H−NMRにより、この化合物が純粋であることが確認された。
【実施例2】
【0052】
50mgの実施例1の化合物2を、THF(2.5ml)を溶媒としたポリスチレンの溶液中に溶解する。ブレードを用いて、紙をこの溶液でコーティングする。シートを乾燥させ、溶媒を除去する。
【0053】
コーティングされた紙を365nmの波長のUV光で1分間照射して、着色状態を得る。最初は、非常に暗い紫色であるが、数分で退色して暗い灰色になる。UV光で露光した直後、着色状態は、析出した物質(黒色)から成り、紫色である。この紫色は、ポリマーバインダー中に依然として分散されている少量のメロシアニン(化合物MC−2、スピロピラン化合物SP−2の着色状態)によるものである。メロシアニンが安定な暗色固体として析出または相分離するよりも、ポリマーバインダー中に分散された状態である場合に、予想されたように、紫色は数時間で退色した。
【0054】
比較例1
実施例2と比較するために、類似しているが、官能化されていないスピロピラン化合物を用いて類似のコーティングされた紙を調製した。すなわち、実施例1の−COOHで官能化された化合物2(SP−2)を用いる代わりに、−COOHで官能化されていない類似の化合物(SP−1、上記)をポリスチレンバインダー中で使用した。このフォトクロミック物質とポリマーバインダーの組み合わせにおいて、フォトクロミック物質は、無色および着色形態の両方においてポリマーバインダー中に相溶性であり、このことは、着色形態のフォトクロミック物質がポリマーバインダーから相分離しないことを意味する。コーティングされた紙を実施例2と同様にしてUV光で露光した。スピロピランの無色および着色形態と相溶性であるポリマーバインダーを用いて調製されたサンプルの場合、照射後約1日で退色した。
【実施例3】
【0055】
紙基体をPETプラスチックシートにより置き換えた以外は実施例2と同様にして、別の一時的文書シートを調製する。この実施例では、実施例2のコーティング溶液をプラスチック(PET)のシートの片面に塗布する。コーティングされた紙に、実施例2のようにして画像を形成する。シートは同程度に長寿命の画像特性を有する。しかしながら、コーティングされたPETシートは、紙基体バージョンと比較した場合、より高い温度で加熱することができるため、さらに速く消去できる点で、コーティングされた紙よりも優れた利点を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体上にコーティングされたフォトクロミック物質およびポリマーバインダーを含む画像形成層とを含み、前記フォトクロミック物質が、前記ポリマーバインダー中で無色状態と着色状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す、画像形成媒体。
【請求項2】
一時的に画像を形成するための方法であって、
基体と、前記基体上にコーティングされたフォトクロミック物質およびポリマーバインダーを含む画像形成層を含み、前記フォトクロミック物質は、前記ポリマーバインダー中で無色状態と着色状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す画像形成媒体を用意することと、前記画像形成媒体を画像様のUV光で露光することと、を含む方法。
【請求項3】
基体を提供することと、前記基体にフォトクロミック物質およびポリマーバインダーを含み、前記フォトクロミック物質がポリマーバインダー中で無色状態と着色状態の間で可逆的均一−不均一変化を示す画像形成層を設けることとを含む、画像形成媒体の製造方法。

【公開番号】特開2007−72467(P2007−72467A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243014(P2006−243014)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】